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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1374490
審判番号 不服2020-6970  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-21 
確定日 2021-05-26 
事件の表示 特願2017- 3918「リチウム電力セルの制御のためのバッテリー管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 85887〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年4月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年4月28日 米国、2011年8月10日 米国)を国際出願日とする特願2014-508158号の一部を平成29年1月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年 2月 9日 :手続補正書の提出
平成30年 2月 2日付け:拒絶理由通知書
平成30年 8月 6日 :意見書、誤訳訂正書の提出
平成30年12月27日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 6月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 6月27日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 1年12月27日 :意見書の提出
令和 2年 1月15日付け:拒絶査定
令和 2年 5月21日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和1年6月7日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
装置に電力を供給するためのバッテリー・パックであって、
複数の再充電式セルであって、その各々が正極端子と負極端子を有し、該複数の再充電式セルが互いに直列に電気的に接続される、複数の再充電式セルと、
前記複数の再充電式セルを充電器又は前記複数の再充電式セルによる電力供給対象装置に接続するコネクタと、
前記コネクタの正極端子に接続された陽極側と前記コネクタの負極端子に接続された陰極側とを有するバスと、
各再充電式セルの充電状態に関係する入力データを監視するためのプロセッサと、
前記バスの前記陽極側に配され、前記プロセッサからの信号に応答して開閉する、電力スイッチと、
前記プロセッサと電気的に接続された監視回路であって、該監視回路は、それぞれの再充電式セルの電圧を監視してそれぞれの再充電式セルについての信号を前記プロセッサに送り、該信号はそれぞれの再充電式セルの負極端子および正極端子の間で測定された電圧レベルを表し、該監視回路は、それぞれの再充電式セルを複数のブリーダー回路の1つに接続する複数のスイッチを含み、前記複数のスイッチの各々が、前記複数のスイッチの少なくとも1つに向けられた前記プロセッサからの過剰電圧信号に反応して前記複数のスイッチの前記少なくとも1つを閉じて前記複数の再充電式セルの少なくとも1つの過剰充電を防ぐ、監視回路と
を備え、
前記電力スイッチは、n-FETである
ことを特徴とするバッテリー・パック。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1について、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び引用文献3に記載の技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2008-148553号公報
引用文献2:特開2011-62070号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2006-320183号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。

ア.「【実施例1】
【0017】
以下、本発明の多直列電池制御システムの実施例を詳細に説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る多直列電池制御システムの構成が示されている。
【0019】
図1において、電池システム1は、4個の電池セル2A,2B,2C,2Dが直列に接続されて1単位を構成する単位電池セル2に、1対の制御IC3(制御ICチップ3Aとセル監視ICチップ3B)が対応して設けられている。この1対の制御IC3は、2個のICで構成されており、1つは制御回路が搭載された制御ICチップ3Aで、他の1つは単位電池セル2を監視するセル監視ICチップ3Bである。この制御ICチップ3Aの一端には、単位電池セル2の電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子が接続されている。また、この制御ICチップ3Aの他端には、高速絶縁手段4を介してメインコントローラ5が接続されている。また、このメインコントローラ5には、絶縁手段6,7を介してセル監視ICチップ3Bの一端が接続されており、このセル監視ICチップ3Bの他端には、単位電池セル2の電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子が接続されている。
【0020】
この1対の制御IC3は、4個の電池セルで構成される単位電池セル毎に設けられている。図1においては、1対の制御ICが3つ示してあるが、各1対の制御IC3間に多数の1対の制御ICが設けられており、この1対の制御ICは、リチウム電池の全電池セルを4個の電池セルを単位とする数設けられている。
【0021】
図2には、制御ICチップ3Aの詳細回路が示されている。ここでは、1つの制御ICチップ3Aの例を示してあるが、本発明における多直列電池制御システムを構成する制御ICチップ4A,・・・・・制御ICチップ5A(図面上は、制御ICチップ3A,制御ICチップ4A,制御ICチップ5Aとなっているが、N個の制御ICチップ)は、同じ構成となっている。
【0022】
図2において、単位電池セル2の電池セル2Aの(+)端子には、V1入力端子を介して制御手段20に接続されている。この選択手段20は、例えばマルチプレクサで構成されている。この選択手段20には、スイッチ20A,20B,20C,20D,20Eが設けられている。そして、V1入力端子には、スイッチ20Aの一方の端子が接続され、スイッチ20Aの他方の端子は、電源21と電圧検出手段22に接続されている。また、単位電池セル2の電池セル2Aの(-)端子で、電池セル2Bの(+)端子には、V2入力端子を介して選択手段20のスイッチ20Bの一方の端子が接続され、スイッチ20Bの他方の端子は、電圧検出手段22に接続されている。」

イ.「【0026】
また、電圧検出手段22は、単位電池セル2の電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子間電圧を検出するもので、検出した電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子間電圧は、演算手段23に出力される。この演算手段23には、電源管理手段24と、記憶手段25と、補正手段26とが設けられている。電源管理手段24は、電源21のON/OFF制御をする。」

ウ.「【0036】
また、単位電池セル2の電池セル2Aの(+)端子は、抵抗R1を介してB1端子に接続されている。このB1端子には、SW状態検出手段28Aの一方の端子が接続されており、このSW状態検出手段28Aの他方の端子には、V2端子を介して単位電池セル2の電池セル2Aの(-)端子が接続されている。そして、この単位電池セル2の電池セル2Aの両端子間には、抵抗R1と直列に接続されたバランシングスイッチ29Aが挿入接続されている。
・・・(中略)・・・
【0041】
また、このバランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dは、単位電池セル2を構成している各直列に接続された電池セル2A,2B,2C,2Dを放電し、単位電池セルを構成する4個の電池セル2A,2B,2C,2Dの各電池セル電圧を合わせるため、抵抗R1,抵抗R2,抵抗R3,抵抗R4をそれぞれ介して電池セル間を短絡するスイッチである。具体的には、MOS形FETで構成されている。また、SW状態検出手段28Aは、バランシングスイッチ29Aが正常に作動しているか否かを検出するもので、SW状態検出手段28Bは、バランシングスイッチ29Bが正常に作動しているか否かを検出するもので、SW状態検出手段28Cは、バランシングスイッチ29Cが正常に作動しているか否かを検出するもので、SW状態検出手段28Dは、バランシングスイッチ29Dが正常に作動しているか否かを検出するものである。すなわち、SW状態検出手段28A?28Dは、それぞれバランシングスイッチ29A?29Dの電圧を常時検出しており、バランシングスイッチ29A,29B,29C,29DがONすると、SW状態検出手段28A,28B,28C,28Dは、0(零)に近い電圧を検出することになる。」

エ.「【0070】
図8には、バランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dをスイッチングするときのバランシングサブルーチンが示されている。すなわち、このバランシングサブルーチンは、単位電池セル2を構成している各直列に接続された電池セル2A,2B,2C,2Dを放電し、単位電池セルを構成する4個の電池セル2A,2B,2C,2Dの各電池セル電圧を合わせるための処理フローである。
【0071】
図8において、メインコントローラ5からは、ステップ400において、図2に図示の通信手段27のRX端子に、各電池セル2A?2Dの電圧データを読み込む指令である各電池セル電圧読込みコマンドを送信する。このステップ400において各電池セル電圧読込みコマンドを送信すると、この各電池セル電圧読込みコマンドは、制御ICチップ3Aの演算手段23において、制御内容を判断し、記憶手段に定期的に書き込まれて記憶されている各電池セル2A,2B,2C,2Dの各電池セル電圧を読み出して、ステップ410において、TX端子からメインコントローラ5に各電池セル電圧データをシリーズに送信する。この制御ICチップ3Aからの各電池セル電圧データを受信すると、メインコントローラ5では、ステップ420において、送信されてきた各電池セル電圧データの内、最小値の電池セル電圧をみて、各電池セルの放電時間を計算するため、最小セル電圧値の計算をする。このステップ420において最小セル電圧値の計算をすると、ステップ430において、各バランシングスイッチ29A,29B,29C,29DのON時間値の計算を行う。この各バランシングスイッチ29A,29B,29C,29DのON時間は、各電池セル電圧値から最小セル電圧を引いた値から求める。
【0072】
このステップ440において、メインコントローラ5から図2に図示の通信手段27のRX端子に、各バランシングスイッチ29A,29B,29C,29DをON制御するバイパスSW制御(ON)コマンドを送信する。このステップ440においてバイパスSW制御(ON)コマンドを送信すると、このバイパスSW制御(ON)コマンドは、制御ICチップ3Aの演算手段23において、制御内容が判断され、ステップ450において、SW駆動手段33を駆動してSW駆動手段33からスイッチ駆動信号(どのスイッチを駆動するものであるかを特定する信号)を電位変換手段32に出力し、選択されたバランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dのいずれかのスイッチが投入(ON)する。このいずれかの選択されたバランシングスイッチ29A,29B,29C,29DがONされると、電池セル2A,2B,2C,2Dのいずれかの電池セルが放電される。」

オ.「【0082】
この制御ICチップ5AのTX端子から絶縁手段9を介してメインコントローラ5のRX端子に送信されてきた制御ICチップ4Aから受信した状態(異常内容)検出コマンドに基づいて異常が検出されると、メインコントローラ5のRelay端子から信号を出力してリレー駆動回路を駆動してリレーをOFFする。」

カ.「【0097】
図12は、本実施例を自動車用のモータジェネレータに応用した例を示してある。
・・・(中略)・・・
【0101】
本構成によれば、エンジンが駆動によって自動車が走行し、この自動車の走行によって駆動ベルトを介して、あるいは、電磁クラッチを投入することによって直接駆動するモータジェネレータ1101によって発電する。このモータジェネレータ1101で発電した電力は、制御変換器1004を介して電池セル101に供給して充電する。この電池セル101の充放電の遷移は、電池管理ICからメインコントローラ5を経由してモータジェネレータ1101が制御する。また、放電するときも電池管理ICから電力をモータの方に供給してタイヤを回転駆動する。制御変換器1004内のMCUも相互に接続されている。」





・上記ア、カによれば、本発明に係る多直列電池制御システムを自動車用のモータジェネレータに応用すること、放電するとき電力をモータの方に供給することが記載されており、「自動車用のモータジェネレータに放電可能な多直列電池制御システム」であるといえる。

・上記ア及び図1を参照すれば、多直列電池制御システムに設けられた電池システム1が、4個の電池セル2A,2B,2C,2Dが直列に接続されて1単位を構成する単位電池セル2を備えることが記載されており、多直列電池制御システムが、4個の電池セル2A,2B,2C,2Dが直列に接続されて1単位を構成する単位電池セル2を備えているといえる。

・上記ア、エ及び図2を参照すれば、電池システム1には制御ICチップ3Aが設けられ、制御ICチップ3Aの他端に高速絶縁手段4を介してメインコントローラ5が接続されること、制御ICチップ3AのTX端子からメインコントローラ5に各電池セル電圧データをシリーズに送信することが記載されており、メインコントローラ5は、各電池セル2A,2B,2C,2Dの電圧データを読み込むものであるといえる。

・上記オ及び図1を参照すれば、電池システム1は、最上位の電池セル2Aに接続された配線および最下位の電池セル2Dに接続された配線を備え、最上位の電池セル2Aに接続された配線に配置され、メインコントローラ5からの信号により動作するリレーが備えられている。

・上記アによれば、制御ICチップ3Aは高速絶縁手段4を介してメインコントローラ5に接続される。

・上記ア、イ、エを参照すれば、電圧検出手段22で、単位電池セル2の電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子間電圧を検出し、メインコントローラ5から通信手段27のRX端子に各電池セル電圧読込みコマンドを送信することに応じて、通信手段27のTX端子からメインコントローラ5に各電池セル電圧データをシリーズに送信することが記載されており、図2の制御ICチップ3Aの詳細回路を参照すれば、電圧検出手段22及び通信手段27は制御ICチップ3Aに備えられたものであるから、制御ICチップ3Aは、単位電池セル2の電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子間電圧を検出し、メインコントローラ5から送信される電圧読込みコマンドに応じて各電池セル電圧データを送信しているといえる。

・上記ウを参照すれば、バランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dは、抵抗R1,R2,R3,R4をそれぞれ介して電池セル間を短絡するスイッチであることが記載されており、図2の制御ICチップ3Aの詳細回路を参照すれば、制御ICチップ3Aがバランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dを備えていることが見て取れる。

・上記エによれば、各電池セル電圧を合わせるための処理フローであって、メインコントローラ5から各バランシングスイッチ29A,29B,29C,29DをON制御するバイパスSW制御(ON)コマンドを送信すると、制御ICチップ3Aでは、選択されたバランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dを投入(ON)し、選択されたバランシングスイッチ29A,29B,29C,29DがONされると、電池セル2A,2B,2C,2Dのいずれかの電池セルが放電されることが記載されており、制御ICチップ3Aに備えられた各バランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dが、メインコントローラ5からのバイパスSW制御(ON)コマンドにより投入されることにより、電池セル2A,2B,2C,2Dのいずれかの電池セルが放電され各電池セル電圧を合わせているといえる。

上記アないしカの記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「自動車用のモータジェネレータに放電可能な多直列電池制御システムであって、
4個の電池セル2A,2B,2C,2Dが直列に接続されて1単位を構成する単位電池セル2と、
各電池セル2A,2B,2C,2Dの電圧データを読み込むメインコントローラ5と、
最上位の電池セル2Aに接続された配線および最下位の電池セル2Dに接続された配線と、
最上位の電池セル2Aに接続された配線に配置され、メインコントローラ5からの信号により動作するリレーと、
高速絶縁手段4を介してメインコントローラ5に接続される制御ICチップ3Aであって、単位電池セル2の電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子間電圧を検出し、メインコントローラ5から送信される電圧読込みコマンドに応じて各電池セル電圧データを送信し、抵抗R1,R2,R3,R4をそれぞれ介して電池セル間を短絡するバランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dを備え、各バランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dが、メインコントローラ5からのバイパスSW制御(ON)コマンドにより投入されることにより、電池セル2A,2B,2C,2Dのいずれかの電池セルが放電され各電池セル電圧を合わせる、制御ICチップ3Aと、
を備えた多直列電池制御システム。」

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「自動車用のモータジェネレータ」は、多直列電池制御システムから放電、すなわち電力供給される装置であるから、本願発明の「電力を供給」される「装置」および「電力供給対象装置」に相当する。
また、引用発明の「多直列電池制御システム」がバッテリーを有し、該バッテリーより「自動車用のモータジェネレータ」に電力を供給することは明らかであるから、引用発明の「多直列電池制御システム」は、本願発明と「装置に電力を供給するためのバッテリー」である点では共通する。
ただし、本願発明は、装置に電力を供給するのは「バッテリー」を「パック」した「バッテリー・パック」であるのに対し、引用発明は「多直列電池制御システム」であって「バッテリー・パック」と特定されていない点で相違する。

イ.引用発明の「4個の電池セル2A,2B,2C,2Dが直列に接続されて1単位を構成する単位電池セル2」は、各電池セルが正極端子と負極端子とを有していることは電池の構造上明らかであるから、本願発明の「複数の再充電式セルであって、その各々が正極端子と負極端子を有し、該複数の再充電式セルが互いに直列に電気的に接続される、複数の再充電式セル」に相当する。

ウ.本願発明は「複数の再充電式セルを充電器又は前記複数の再充電式セルによる電力供給対象装置に接続するコネクタ」を備えているのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

エ.引用発明の「最上位の電池セル2Aに接続された配線および最下位の電池セル2Dに接続された配線」は、本願発明の「陽極側と」「陰極側と」を有する「バス」に相当する。
ただし、本願発明が「コネクタの正極端子に接続された陽極側と前記コネクタの負極端子に接続された陰極側とを有するバス」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。

オ.引用発明の「各電池セル2A,2B,2C,2Dの電圧データを読み込むメインコントローラ5」は、電池セルの電圧が充電状態と相関関係を有することは明らかであるから、本願発明の「各再充電式セルの充電状態に関係する入力データを監視するためのプロセッサ」に相当する。

カ.引用発明の「最上位の電池セル2Aに接続された配線に配置され、メインコントローラ5からの信号により動作するリレー」は、リレーにより電力の流れを制御していることから、本願発明の「前記バスの前記陽極側に配され、前記プロセッサからの信号に応答して開閉する、電力スイッチ」に相当する。
ただし、本願発明の電力スイッチが「n-FET」であるのに対し、引用発明の電力スイッチは「リレー」である点で相違する。

キ.引用発明の「高速絶縁手段4を介してメインコントローラ5に接続される制御ICチップ3A」は、電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子間電圧を検出、すなわち監視するものであるから、本願発明の「前記プロセッサと電気的に接続された監視回路」に相当する。
また、引用発明の「制御ICチップ3A」が「単位電池セル2の電池セル2A,2B,2C,2Dの各端子間電圧を検出し、メインコントローラ5から送信される電圧読込みコマンドに応じて各電池セル電圧データを送信」することは、「各電池セルの電圧データ」が各電池セルの負極端子および正極端子間の電圧レベルであることは明らかであるから、本願発明の「該監視回路は、それぞれの再充電式セルの電圧を監視してそれぞれの再充電式セルについての信号を前記プロセッサに送り、該信号はそれぞれの再充電式セルの負極端子および正極端子の間で測定された電圧レベルを表し、」に相当する。
更に、引用発明の「抵抗R1,R2,R3,R4」は、本願発明の「複数のブリーダー回路」に相当し、引用発明の「制御ICチップ3A」が「抵抗R1,R2,R3,R4をそれぞれ介して電池セル間を短絡するバランシングスイッチ29A,29B,29C,29D」を備えることは、本願発明の「該監視回路は、それぞれの再充電式セルを複数のブリーダー回路の1つに接続する複数のスイッチ」を含むことに相当する。
加えて、引用発明の「バイパスSW制御(ON)コマンド」は、これにより「バランシングスイッチ29A,29B,29C,29D」が「投入され」、「電池セル2A,2B,2C,2Dのいずれかの電池セルが放電され各電池セル電圧を合わせる」ものであるから、他の電池セルよりも余分に充電された電池セルが放電されて、他の電池セルよりも過剰に充電されることを防止していると言い得るから、本願発明の「過剰電圧信号」であると言え、引用発明の「各バランシングスイッチ29A,29B,29C,29Dが、メインコントローラ5からのバイパスSW制御(ON)コマンドにより投入されることにより、電池セル2A,2B,2C,2Dのいずれかの電池セルが放電され各電池セル電圧を合わせる」ことは、本願発明の「前記複数のスイッチの各々が、前記複数のスイッチの少なくとも1つに向けられた前記プロセッサからの過剰電圧信号に反応して前記複数のスイッチの前記少なくとも1つを閉じて前記複数の再充電式セルの少なくとも1つの過剰充電を防ぐ」ことに相当する。

ク.そうすると、本願発明と引用発明とは、
「装置に電力を供給するためのバッテリーであって、
複数の再充電式セルであって、その各々が正極端子と負極端子を有し、該複数の再充電式セルが互いに直列に電気的に接続される、複数の再充電式セルと、
陽極側と陰極側とを有するバスと、
各再充電式セルの充電状態に関係する入力データを監視するためのプロセッサと、
前記バスの前記陽極側に配され、前記プロセッサからの信号に応答して開閉する、電力スイッチと、
前記プロセッサと電気的に接続された監視回路であって、該監視回路は、それぞれの再充電式セルの電圧を監視してそれぞれの再充電式セルについての信号を前記プロセッサに送り、該信号はそれぞれの再充電式セルの負極端子および正極端子の間で測定された電圧レベルを表し、該監視回路は、それぞれの再充電式セルを複数のブリーダー回路の1つに接続する複数のスイッチを含み、前記複数のスイッチの各々が、前記複数のスイッチの少なくとも1つに向けられた前記プロセッサからの過剰電圧信号に反応して前記複数のスイッチの前記少なくとも1つを閉じて前記複数の再充電式セルの少なくとも1つの過剰充電を防ぐ、監視回路と
を備えたバッテリー。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明は「バッテリー・パック」であり、「複数の再充電式セルを充電器又は前記複数の再充電式セルによる電力供給対象装置に接続するコネクタ」を備えているのに対し、引用発明は「多直列電池制御システム」であり、「コネクタ」を備えることについて特定されていない点、それに伴い、本願発明のバスは「コネクタの正極端子に接続された陽極側と前記コネクタの負極端子に接続された陰極側とを有するバス」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。

[相違点2]
本願発明の電力スイッチが「n-FET」であるのに対し、引用発明の電力スイッチは「リレー」である点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。

ア.[相違点1]について
例えば原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開2011-62070号公報、段落[0031]及び図1参照)に記載されているように、複数のバッテリセルを直列接続しコネクタを備えたバッテリー・パックを構成することは周知技術であり、引用発明において当該周知技術を採用し、多直列電池制御システムをバッテリーパックとして構成し、外部機器である充電器や電力供給対象装置にコネクタを介して接続すること、すなわち、「複数の再充電式セルを充電器又は前記複数の再充電式セルによる電力供給対象装置に接続するコネクタ」を備え、バスを「コネクタの正極端子に接続された陽極側と前記コネクタの負極端子に接続された陰極側とを有するバス」として相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ.[相違点2]について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3(特開2006-320183号公報、段落[0050]-[0052]及び図1参照)には、直列接続された複数のバッテリセルを備えたバッテリー装置において、正極側のバスに電力スイッチとしてNMOSトランジスタ(Q1、Q2)を設ける構成について記載されている。
引用発明に記載のリレー、引用文献3に記載のNMOSトランジスタはいずれも、電池セルから外部(外部から電池セル)への電力の通電と遮断を切り替えるという共通の機能を有する部品であり、引用発明において、電力スイッチとしてリレーに代えてNMOSトランジスタを設けて相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。また、車両用途の電力スイッチとしてリレーを用いることもトランジスタを用いることも普通に採用されているものであり、引用発明においてNMOSトランジスタを採用することに何ら阻害要因は存在しない。

ウ.効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術及び引用文献3に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ.請求人の主張について
請求人は、審判請求書にて「いずれの引用文献にも、本願の請求項1に係る発明の『監視回路』が、『それぞれの再充電式セルの電圧を監視してそれぞれの再充電式セルについての信号を前記プロセッサに送り』、『それぞれの再充電式セルを複数のブリーダー回路の1つに接続する複数のスイッチ』の各々が『前記複数のスイッチの少なくとも1つに向けられた前記プロセッサからの過剰電圧信号に反応して前記複数のスイッチの前記少なくとも1つを閉じて前記複数の再充電式セルの少なくとも1つの過剰充電を防ぐ』という構成は記載されていない。・・・(中略)・・・ここで、引用文献1には、これら『バランシングスイッチ』を用いた『電池セル』の放電において、本願発明のように、個々の『電池セル』の電圧または充電状態に基づいて『バランシングスイッチ』を制御することにより『電池セル』の過剰充電を防ぐことは開示されていなく、また何ら示唆されてもいない。」と主張している(以下、「主張点1」とする。)。
しかしながら、上記「第5 対比」の「オ.」でも述べたように、引用発明の「バイパスSW制御(ON)コマンド」は、これにより「バランシングスイッチ29A,29B,29C,29D」が「投入され」、「電池セル2A,2B,2C,2Dのいずれかの電池セルが放電され各電池セル電圧を合わせる」ものであるから、他の電池セルよりも余分に充電された電池セルが放電されて、他の電池セルよりも過剰に充電されることを防止していると言い得るから、本願発明の「過剰電圧信号」であると言え、主張点1に関する構成において本願発明と引用発明との差異は認められない。
また、請求人は、本願発明は個々の電池セルの状態のみに基づいてスイッチの制御を行い過剰充電を防いでいるのに対し、引用発明は各電池セルの状態の比較に基づいてバランシングスイッチの制御を行いアンバランスを解消している点において相違することを主張しているとしても、請求項1に係る発明には、個々の電池セルの状態のみに基づいてスイッチの制御を行って過剰充電を防ぐ構成が記載されていないため、当該主張は請求項1の記載に基づく主張であるとは認められず採用することができない。
なお、個々の電池セルの状態のみに基づいてスイッチの制御を行い過剰充電を防ぐ技術も、例えば特開2000-14030号公報(段落[0006],[0018]及び図1-2,9参照)に記載のように本願出願時には一般的な技術である。

また、請求人は審判請求書にて、上記主張点1の構成と、「前記電力スイッチは、n-FETである」とを組み合わせた構成はいずれの単一の引用文献にも記載されておらず、本願発明は上記構成の組み合わせにより、n-FETを用いることでバッテリーに高い電流負荷耐性および余剰な熱の発生を防ぎつつ、バッテリーの損傷を防ぐという有利な効果を奏する点主張している。
しかしながら、主張点1に係る構成は引用発明に記載されたものであり、それに伴う作用効果(いずれかの電池セルが過剰に充電されることによるバッテリーの損傷を防ぐ点)も引用発明が当然に有するものである。また、引用発明において、電力スイッチとしてリレーに代えてNMOSトランジスタを設けることは当業者が容易になし得たことであり、それに伴う作用効果(バッテリーに高い電流負荷耐性および余剰な熱の発生を防ぐ点)も、例えば特開2007-124768号公報(段落[0002]-[0003]参照)に記載のように、n-FETのオン抵抗が低いこと、すなわち、大電流が流れても発熱が少ないことは一般的に知られた事項であって格別なものではない。そして、主張点1の構成と、「前記電力スイッチは、n-FET」とすることを組み合わせた構成によって格別な効果が生じるものとも認められない。

よって、請求人の審判請求書での主張はいずれも採用することができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明、周知技術及び引用文献3に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-12-18 
結審通知日 2020-12-22 
審決日 2021-01-06 
出願番号 特願2017-3918(P2017-3918)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大手 昌也高橋 優斗佐藤 卓馬  
特許庁審判長 山田 正文
特許庁審判官 山本 章裕
赤穂 嘉紀
発明の名称 リチウム電力セルの制御のためのバッテリー管理システム  
代理人 龍華国際特許業務法人  
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