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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A63F
審判 査定不服 特39条先願 補正却下を取り消す 原査定を取り消し、特許すべきものとする  A63F
管理番号 1374543
審判番号 不服2020-4840  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-09 
確定日 2021-06-16 
事件の表示 特願2015-214302号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年5月18日出願公開、特開2017-80276号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月30日の出願であって、平成31年4月16日に上申書及び手続補正書が提出され、令和1年6月17日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月2日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月16日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月18日に意見書が提出され、同年12月2日付けで再度最後の拒絶の理由が通知され、同年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和2年1月8日付け(送達日:同年2月3日)で、令和1年12月12日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和2年4月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原審における補正の却下の決定の当否について
請求人は、審判請求書の請求の趣旨において、「令和2年1月8日になされた補正却下の決定並びに原査定を取り消す。本願発明は特許をすべきものとする、との審決を求める。」としていることから、令和2年1月8日付けの補正の却下の決定の当否について検討する。

[補正の却下の決定の当否の結論]
令和2年1月8日付け補正の却下の決定を取り消す。

[理由]
1 令和1年12月12日付け手続補正の概要
令和1年12月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち令和1年10月2日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正された(下線は補正箇所を示す。)。

本件補正前
「【請求項1】
所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
前記遊技盤が装着される本体枠と、
前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出して、内部に所定空間が形成される膨出部と、
前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿本体と、
前記上皿本体の下方に配置され、所定形状の底壁部と所定高さの立壁部により形成される貯留領域に所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿本体と、
前記下皿本体とは別部材で構成される下皿カバーと
を備え、
前記扉枠は、前記膨出部と前記上皿本体と前記下皿本体とを含んで構成され、
前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、前記第1下皿部と一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部と、を有するものであり、
前記下皿カバーは、前記第2下皿部の天井部を含んで形成されるとともに、前記下皿本体に直接接続する形で設けられ、
前記第2下皿部における左右方向端部の立壁部は、前記所定空間を形成する部材の一部として機能し、
前記下皿カバーは、前記貯留領域の上方空間と前記所定空間との連通を左右方向に遮断する機能を有し、
前記第2下皿部の左右方向幅は、前記第2下皿部の手前側より奥方側が大きくなるようにした
ことを特徴とする遊技機。」

本件補正後
「【請求項1】
所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
前記遊技盤が装着される本体枠と、
前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出して、内部に所定空間が形成される膨出部と、
前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿本体と、
前記上皿本体の下方に配置され、所定形状の底壁部と所定高さの立壁部により形成される貯留領域に所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿本体と、
前記下皿本体とは別部材で構成される下皿カバーと
を備え、
前記扉枠は、前記膨出部と前記上皿本体と前記下皿本体とを含んで構成され、
前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、前記第1下皿部と一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部と、を有するものであり、
前記下皿カバーは、前記第2下皿部の天井部を含んで形成されるとともに、前記下皿本体に直接接続する形で分解可能に設けられ、
前記第2下皿部における左右方向端部の立壁部は、前記所定空間を形成する部材の一部として機能し、
前記下皿カバーは、前記貯留領域の上方空間と前記所定空間との連通を左右方向に遮断する機能を有し、
前記第2下皿部の左右方向幅は、前記第2下皿部の手前側より奥方側が大きくなるようにした
ことを特徴とする遊技機。」

2 令和2年1月8日付けでした、補正の却下の決定の概要
令和2年1月8日付けでした、補正の却下の決定の概要は、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としており、下皿カバーと下皿本体に関して、「下皿カバーは、」「下皿本体に」「分解可能に設けられ」た点を限定する補正であるが、部材を分解可能とするということは、広範な技術分野に亘っての周知技術であるから、本件補正による上記の点の限定は周知技術の追加であり、本件補正後の請求項1に係る発明は、同法第39条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができず、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項により却下するというものである。

3 本件補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「下皿カバー」が「下皿本体に直接接続する形で」「設けられ」る点に関して、下皿カバーが「分解可能に」設けられると限定することを含むものである。
そして、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0404】、図43、図44等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1の「本件補正後」に記載したとおりのものであり、符号AないしNを付して再掲すると、以下のとおりである。

「A 所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
B 前記遊技盤が装着される本体枠と、
C 前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
D 正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出して、内部に所定空間が形成される膨出部と、
E 前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿本体と、
F 前記上皿本体の下方に配置され、所定形状の底壁部と所定高さの立壁部により形成される貯留領域に所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿本体と、
G 前記下皿本体とは別部材で構成される下皿カバーと
を備え、
H 前記扉枠は、前記膨出部と前記上皿本体と前記下皿本体とを含んで構成され、
I 前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、前記第1下皿部と一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部と、を有するものであり、
J 前記下皿カバーは、前記第2下皿部の天井部を含んで形成されるとともに、前記下皿本体に直接接続する形で分解可能に設けられ、
K 前記第2下皿部における左右方向端部の立壁部は、前記所定空間を形成する部材の一部として機能し、
L 前記下皿カバーは、前記貯留領域の上方空間と前記所定空間との連通を左右方向に遮断する機能を有し、
M 前記第2下皿部の左右方向幅は、前記第2下皿部の手前側より奥方側が大きくなるようにした
N ことを特徴とする遊技機。」

(2)先願発明
令和2年1月8日付け補正の却下の決定の理由で引用された、本願の出願前に出願され、その後、特許第6614765号として登録がされた出願である特願2014-248234号(以下、「先願」という。)の特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2には、次の発明(以下、「先願発明1」及び「先願発明2」という。)が記載されている(符号aないしpは、本件補正発明に対応して先願発明1及び先願発明2を分説するために合議体により付与した。)。

「【請求項1】
a 所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
b 前記遊技盤が装着される本体枠と、
c 前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
d 前記扉枠に設けられ、正面視において該遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
e 前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
o 前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置と、
f 前記扉枠に設けられ、所定高さの立壁を設けた下皿本体を有して前記上皿から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
h 前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿本体が設けられ、
i 前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、前記第1下皿部に対し前記内部空間内方側に前記第1下皿部と一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部と、を有するものであり、
k 前記下皿本体は、前記第2下皿部の左右方向端部の側方に前記内部空間の一部が位置するように設けられ、
g さらに、前記第2下皿部の上方を覆うカバー体を前記下皿本体に設け、
l 前記カバー体は、前記内部空間と前記下皿本体の貯留領域との連通を、前記扉枠の開閉状態にかかわらず少なくとも左右方向に遮断する
n ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
a 所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
b 前記遊技盤が装着される本体枠と、
c 前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
d 前記扉枠に設けられ、正面視において該遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部と、
e 前記膨出部の上面側に設けられ、前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿と、
p 前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置と、
f 前記扉枠に設けられ、所定高さの立壁を設けた下皿本体を有して前記上皿から遊技媒体が流入可能な下皿と
を備え、
h 前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿本体が設けられ、
i 前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、前記第1下皿部に対し前記内部空間内方側に前記第1下皿部と一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部と、を有するものであり、
k 前記下皿本体は、前記第2下皿部の左右方向端部の側方に前記内部空間の一部が位置するように設けられ、
g さらに、前記第2下皿部の上方を覆うカバー体を前記下皿本体に設け、
l 前記カバー体は、前記内部空間と前記下皿本体の貯留領域との連通を、前記扉枠の開閉状態にかかわらず少なくとも左右方向に遮断する
n ことを特徴とする遊技機。」

(3)本件補正発明と先願発明1との対比・判断
先願の特許掲載公報の特許請求の範囲には、先願発明1と先願発明2が記載されていることから、まず、本件補正発明と先願発明1とを対比する。

ア 対比

(a-c) 本件補正発明の構成AないしCについて
先願発明1の構成aないしcは、本件補正発明の構成AないしCとそれぞれ文言上一致する。
よって、先願発明1は、本件補正発明の構成AないしCの構成を有する。

(d) 本件補正発明の構成Dについて
先願発明1の構成dにおける「正面視において該遊技領域の下方で前方へ膨出し、所定の内部空間が形成された膨出部」は、本件補正発明の構成Dにおける「正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出して、内部に所定空間が形成される膨出部」に相当する。
よって、先願発明1は、本件補正発明の構成Dに相当する構成を有する。

(e) 本件補正発明の構成Eについて
先願発明1の構成eにおける「遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿」は、本件補正発明の構成Eにおける「遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿本体」に相当する。
よって、先願発明1は、本件補正発明の構成Eに相当する構成を有する。

(f) 本件補正発明の構成Fについて
先願発明1の構成fにおける「前記上皿から遊技媒体が流入可能な下皿」が「下皿本体を有」することと、本件補正発明の構成Fにおける「上皿本体の下方に配置され」た「下皿本体」を「備え」ることとを対比すると、先願発明1において「前記上皿から遊技媒体が流入可能な下皿」は、遊技媒体を流入可能とするために「下皿」が「上皿」の下方に設けられることは明らかであるから、両者は、「前記上皿本体の下方に配置され」る「下皿本体」を備える点で一致する。
また、先願発明1の構成fにおける「所定高さの立壁を設けた下皿本体」と本件補正発明における「所定形状の底壁部と所定高さの立壁部により形成される貯留領域に所定の供給口から遊技媒体が流入可能な下皿本体」とを対比すると、本件補正発明において、「貯留領域」は「下皿本体」の構成要素のであるから、両者は、「所定高さの立壁部を設けた下皿本体」である点で一致する。
以上のことから、先願発明1の構成fと本件補正発明の構成Fとは、「前記上皿本体の下方に配置され、」「所定高さの立壁部を設けた下皿本体」を備える点で一致する。

(g、j) 本件補正発明の構成G、Jについて
先願発明1の構成gにおける「第2下皿部の上方を覆うカバー体を下皿本体に設け」ることと、本件補正発明の構成G及び構成Jにおける「下皿本体とは別部材で構成される下皿カバー」を備え、「前記下皿カバーは、前記第2下皿部の天井部を含んで形成されるとともに、前記下皿本体に直接接続する形で分解可能に設けられ」ることとを対比すると、先願発明1における「カバー体」の「第2下皿部の上方を覆う」部位は、本件補正発明における「下皿カバー」の「第2下皿部の天井部」に相当するから、両者は、「下皿カバー」を備え、「前記下皿カバーは、前記第2下皿部の天井部を含んで形成され」、「前記下皿本体に」「設けられ」る点で一致する。

(h) 本件補正発明の構成Hについて
先願発明1の構成d、構成e及び構成hにおける「前記扉枠に」「膨出部」が「設けられ、」「前記膨出部の上面側に」「上皿」が「設けられ」、「前記膨出部における前記内部空間と左右方向に並設される空間に、前記下皿本体が設けられ」ることは、本件補正発明の構成Hにおける「前記扉枠は、前記膨出部と前記上皿本体と前記下皿本体とを含んで構成され」ることに相当する。
よって、先願発明1は、本件補正発明の構成Hに相当する構成を有する。

(i) 本件補正発明の構成Iについて
先願発明1の構成iにおける「前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、」「前記第1下皿部と一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部と、を有するものであ」ることは、本件補正発明の「前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、前記第1下皿部と一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部と、を有するものであ」ることに相当する。
よって、先願発明1は、本件補正発明の構成Iに相当する構成を有する。

(k) 本件補正発明の構成Kについて
先願発明1の構成kにおける「前記下皿本体は、前記第2下皿部の左右方向端部の側方に前記内部空間の一部が位置するように設けられ」ることと、本件補正発明の構成Kにおける「前記第2下皿部における左右方向端部の立壁部は、前記所定空間を形成する部材の一部として機能」することとを対比すると、本件補正発明において、第2下皿部の立壁部が所定空間を形成する部材の一部として機能するのであれば、その先に所定空間が位置することは明らかであるから、両者は、「前記第2下皿部における左右方向端部の側方には、前記所定空間の一部が位置する」点で一致する。

(l) 本件補正発明の構成Lについて
先願発明1の構成lにおける「前記カバー体は、前記内部空間と前記下皿本体の貯留領域との連通を、」「少なくとも左右方向に遮断する」ことは、本件補正発明の構成Lにおける「前記下皿カバーは、前記貯留領域の上方空間と前記所定空間との連通を左右方向に遮断する機能を有」することに相当する。
よって、先願発明1は、本件補正発明の構成Lに相当する構成を有する。

(m) 本件補正発明の構成Mについて
先願発明1は、本件補正発明の構成Mに相当する構成を有さない。

(n) 本件補正発明の構成Nについて
先願発明1の構成nにおける「遊技機」は、本件補正発明の構成Nにおける「遊技機」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と先願発明1とは、以下の点で一致する。

<一致点>
「A 所定の遊技が行われる遊技領域が形成される遊技盤と、
B 前記遊技盤が装着される本体枠と、
C 前記本体枠に開閉可能に設けられる扉枠と、
D 正面視において前記遊技領域の下方で前方へ膨出して、内部に所定空間が形成される膨出部と、
E 前記遊技領域で遊技を行うための遊技媒体が貯留される上皿本体と、
F’前記上皿本体の下方に配置され、所定高さの立壁部を設けた下皿本体と、
G’下皿カバーと
を備え、
H 前記扉枠は、前記膨出部と前記上皿本体と前記下皿本体とを含んで構成され、
I 前記下皿本体は、遊技機の前方に臨む領域が形成される第1下皿部と、前記第1下皿部と一体的に設けられて遊技機の前方に臨まない領域が形成される第2下皿部と、を有するものであり、
J’前記下皿カバーは、前記第2下皿部の天井部を含んで形成され、前記下皿本体に設けられ、
K’前記第2下皿部における左右方向端部の側方には、前記所定空間の一部が位置し、
L 前記下皿カバーは、前記貯留領域の上方空間と前記所定空間との連通を左右方向に遮断する機能を有する
N 遊技機。」

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点1> (構成Fに関して)
下皿本体の構成に関して、本件補正発明は、下皿本体が、所定形状の底壁部と所定高さの立壁部により形成される貯留領域に所定の供給口から遊技媒体が流入可能な構成とされているのに対して、先願発明1は、下皿本体が所定高さの立壁を設けたものである点は特定されているが、所定形状の底壁部と所定高さの立壁部により形成される貯留領域に所定の供給口から遊技媒体が流入可能であるかどうかは特定されていない点。

<相違点2> (構成G、Jに関して)
下皿カバーに関して、本件補正発明は、下皿カバーは下皿本体とは別部材で構成され、前記下皿本体に直接接続する形で分解可能に設けられているのに対して、先願発明1は、下皿カバーが下皿と別部材であるか否かが特定されていない点。

<相違点3> (構成Kに関して)
第2下皿部と所定空間の関係に関して、本件補正発明は、第2下皿部における左右方向端部の立壁部が、前記所定空間を形成する部材の一部として機能する点が特定されているのに対して、先願発明1は、その点が特定されていない点。

<相違点4> (構成Mに関して)
第2下皿部に関して、本件補正発明は、前記第2下皿部の左右方向幅は、前記第2下皿部の手前側より奥方側が大きくなるようにした点が特定されているのに対して、先願発明1は、その点が特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑みて、まず相違点4について検討する。
本件補正発明は、第2下皿部の左右方向幅は、前記第2下皿部の手前側より奥方側が大きくなるようにした点が特定されているものであり、請求人は、審判請求書において主張するように、本件補正発明は「第2下皿部の左右方向幅は、第2下皿部の手前側より奥方側が大きくなるようにした」との特定事項を有しているので、「第2下皿部における左右方向端部の立壁部は、所定空間を形成する部材の一部として機能し、」との特定事項と相まって、所定空間のうち比較的利用されにくい奥方側を下皿領域として利用し、所定空間をさらに有効活用することが可能となるものである。
してみると、本件補正発明の相違点4に係る構成は、上記の作用効果をもたらすものであるから、当業者が適宜なし得る設計的事項であるとはいえない。

次に、相違点2について検討する。
部材の種類を問わず一般に部材を複数の部品に分解可能とするということ自体は、本願出願前周知の事項といえるが、下皿カバーと下皿本体に関して、両者を別体とすることが、本願出願前周知の事項であるとはいえないことから、先願発明1の下皿カバーにおいて、下皿カバーを下皿本体とは別部材で構成して前記下皿本体に直接接続する形で分解可能に設けるように構成するか否かが課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。
また、本件補正発明は、上記相違点2に係る構成を備えることにより、請求人が審判請求書において主張するように、「第2下皿部は、遊技機の前方に臨まない領域が形成されるものであることから、第2下皿部の天井部を含んで形成され所定空間との連通を左右方向に遮断する機能を有するカバー体に対して、穴をあけるなどの不正行為やいたずらが行われやすい部位であるところ、下皿カバーの修復が必要になったとき、「下皿カバーは、下皿本体とは別部材で構成され、下皿本体に分解可能に設けられ」るので、下皿カバー単独での交換が容易とな」るという作用効果をもたらすものである。
してみると、本件補正発明の相違点2に係る構成は、上記の作用効果をもたらすものであり、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。
したがって、本件補正発明は、上記相違点4に係る構成に加えて、さらに、上記相違点2に係る構成を備えることにより、本件補正発明の他の相違点に係る構成を検討するまでもなく、先願発明1と同一の発明ということはできない。

よって、本件補正発明は、先願発明1と同一の発明ではない。

(4)本件補正発明と先願発明2との対比・判断
続いて、本願補正発明と先願発明2とを対比する。
先願発明1と先願発明2とは、先願発明1が
「o 前記内部空間に収容され、遊技者が操作可能な操作装置と、」
の記載によって特定される構成を有するのに対して、先願発明2が
「p 前記内部空間に収容され、所定の演出効果を奏する演出装置と、」
の記載によって特定される構成を有する点のみにおいて両者は相違するものである。
そして、先願発明2は、先願発明1も有する、構成aないしi、k、l及びnを有するものである。
してみると、本件補正発明と先願発明2とは、上記(3)において検討した本件補正発明と先願発明1との対比における一致点及び相違点1ないし4と同じ一致点及び相違点1ないし4を有するものである。
そして、相違点1ないし4についての判断は、上記(3)イに記載したとおりである。

よって、本件補正発明と先願発明2は同一の発明ではない。

(5)まとめ
したがって、本件補正発明は、先願発明1及び先願発明2のいずれとも同一の発明ではないことから、特許法第39条第1項の規定によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではなく、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由もない。

よって、本件補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)に適合する。

3 むすび
以上のとおりであるので、本件補正は却下することができない。

第3 本願発明について判断
以上のとおり、令和2年1月8日付け補正の却下の決定は取り消されたから、本願の請求項1に係る発明は令和1年12月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願の請求項1に係る発明については、原査定の拒絶の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり、審決する。

 
審決日 2021-06-01 
出願番号 特願2015-214302(P2015-214302)
審決分類 P 1 8・ 4- WYA (A63F)
P 1 8・ 575- WYA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 蔵野 いづみ
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  

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