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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1374595
審判番号 不服2020-4297  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-01 
確定日 2021-06-22 
事件の表示 特願2016- 60514「情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日出願公開、特開2017-174214、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年3月24日の出願であって、令和1年12月19日付けで拒絶理由通知がなされ、令和2年2月12日に手続補正がなされたが、同年3月12日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年4月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において、令和3年1月28日付けで拒絶理由通知がなされ、同年2月17日に手続補正がなされたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和3年2月17日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

<本願発明1>
「【請求項1】
利用者の操作を検出する複数の操作手段と、
前記操作に関する情報である操作情報を表示する垂直方向に配置された複数の表示手段と、
前記利用者の頭部の高さを検出する検出手段と、
前記頭部の高さに対応する前記表示手段及び前記操作手段を選択し、選択した前記表示手段に、選択した前記操作手段が検出した操作に関する前記操作情報を表示する制御手段と
を含み、
前記制御手段が、前記利用者の誤操作に対する表示を、前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段に表示する
情報処理装置。」

なお、本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
本願発明7は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の制御手段に係る処理をコンピュータに実行させるプログラムとした発明である。


第3 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-61063号公報)には、第3の実施の形態について次の事項が記載されている。なお、第3の実施の形態は、第2の実施の形態との差分として記載されているので(下記オ参照)、第2の実施の形態の記載も引用する(下線は、当審において付与した。)。

(第2の実施の形態)
ア.「【0018】
ATM20は、現金自動預け払い機とも呼ばれ、金融機関における現金の入金、出金や振り込み等の取引を自動化した装置である。特にコンビニエンスストア等に設置されるATM20では、図3に示すように、表示部を垂直面に設けた構造のものが採用されている。」

イ.「【0022】
(中略)表示部22は、ATM20の前面に垂直又はそれに近い角度で配置され、様々な身長の利用者に対して見やすい位置に表示データを表示できる高さに設置される。表示部22は、利用者の身長に応じて表示する表示域を高さ方向に変えて表示することにより、利用者が見やすい位置に表示域を表示できる高さ方向の大きさを持つものとする。
【0023】
また、表示部22は、その表面に透明タッチパネルを装備し、操作用の画面を表示することにより、入力装置としての機能も有している。ただし、ATM20は、キーボードやタッチパッドのような入力装置を表示部22とは独立して装備するように構成することもできる。」

(第3の実施の形態)
ウ.「【0044】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。本発明の第3の実施の形態は、表示制御装置10として、ATM30を使用した構成について説明する。図8はATM30の構成を示した図であり、図9はATM30の外観図である。(中略)例えば、図8、図9は表示部22を高さ方向に2つの表示装置に分割した構成を示しているが、3つ以上に分割する構成とすることもできる。」

エ.図8及び図9には、カメラ21と、上部表示装置32と、下部表示装置33と、制御部34とを備えたATM30が記載されている。

オ.「【0045】
ATM30は、ATM20の表示部22を上部表示装置32と下部表示装置33とに置き替えた構成を有する。ATM30の上部表示装置32と下部表示装置33以外の構成は、ATM20の表示部22以外の構成に相当し、同じ機能のものには同じ符号を付している。以降は差分を中心に説明する。
【0046】
上部表示装置32と下部表示装置33は、表示部22と同様の表示装置であり、高さ方向が表示部22の半分程度の大きさとなっている。上部表示装置32と下部表示装置33は、同じ表示機能を備えた装置を上下に2段積みした構造となっていて、上部表示装置32が上段に実装され、下部表示装置33が下段に実装される。
【0047】
制御部34は、記憶部25の代わりに記憶部35を含む。記憶部35は、記憶部25が保持する現基準高値の代わりに装置指定値を保持し、基準高表は保持する必要はない。装置指定値は、画面を表示する表示装置を指定する情報である。図8の場合、上部表示装置32に表示するか下部表示装置33に表示するかを指定する値となる。例えば、装置指定値が“1”のとき制御部34は上部表示装置32に画面を表示し、装置指定値が“2”のとき制御部34は下部表示装置33に画面を表示し、」

カ.「【0049】
図10は第3の実施の形態の表示域決定の動作を示すフローチャートである。図10を参照すると、制御部34は、カメラ21を一定間隔で撮影させ、撮影した画像を解析して顔が検出できるか否か監視する。顔が検出されると、制御部23は画像から身体位置を特定する(S71)。ここで、身体位置は目の高さとする。」

キ.「【0050】
身体位置の高さが特定されると、制御部34は特定された身体位置の高さと記憶部35に保持される境界値表内の境界値とを比較する(S72)。(中略)
【0051】
身体位置が境界値と同じかそれ以上のとき(S73/Yes)、制御部34は記憶部35の装置指定値を上部表示装置32を指定する値である“1”とする(S74)。一方、身体位置が境界値未満のとき(S73/No)、制御部34は記憶部35の装置指定値を下部表示装置33を指定する値である“2”とする(S75)。これにより、利用者の身体位置すなわち身長に応じて、上部表示装置32と下部表示装置33のうち見やすい方の表示部を選択することができる。
【0052】
次に、制御部34は、ステップS52やステップS54において画面を表示する際に、記憶部35の装置指定値を参照して画面を表示する表示装置を決定する。従って、第3の実施の形態では、利用者が見やすい方の表示部(上部表示装置32と下部表示装置33のいずれか)へ画面を表示することができる。
【0053】
このように、第3の実施の形態では、利用者の身長に応じた高さの表示装置を選択して生成した表示データを表示するので、時間的に遅れることなくすぐに表示データを利用者が見やすい位置に表示することができる。」

前記ア?キによれば、引用文献1には、第3の実施の形態に係る現金自動預け払い機(ATM30)について、次の事項が記載されているといえる。

(ATM30の全体構成)
前記エのカメラ21と、上部表示装置32と、下部表示装置33と、制御部3とを備えたATM30の記載、及び、前記アの「ATM20は、現金自動預け払い機とも呼ばれ」によれば、引用文献1には「カメラ21と、上部表示装置32と、下部表示装置33と、制御部34とを備えた現金自動預け払い機」が記載されている。

(入力装置)
第3の実施の形態に係る、前記ウの「図8、図9は表示部22を高さ方向に2つの表示装置に分割した構成を示している」、及び、前記キの「第3の実施の形態では、利用者の身長に応じた高さの表示装置を選択して生成した表示データを表示する」の記載、第2の実施の形態に係る前記イの「表示部22は、利用者の身長に応じて表示する表示域を高さ方向に変えて表示することにより、利用者が見やすい位置に表示域を表示できる高さ方向の大きさを持つものとする。」の記載によれば、第3の実施の形態は、第2の実施の形態の表示部22を高さ方向に2つの表示装置に分割した構成であり、第2の実施の形態では表示域を高さ方向に変えることで、利用者の身長に応じた高さに表示していたのに対し、第3の実施の形態では表示装置を選択することで、利用者の身長に応じた高さに表示するようにしたものである。
前記イの「表示部22は、その表面に透明タッチパネルを装備し、操作用の画面を表示することにより、入力装置としての機能も有している」の記載によれば、第2の実施の形態では表示部22がATMの入力装置として機能するが、第3の実施の形態においてもこの機能に変更はなく、上部表示装置32と下部表示装置33は、それぞれ透明タッチパネルを備え、操作用の画面を表示することにより入力装置として機能するものと認められる。
したがって、引用文献1には、「上部表示装置32及び下部表示装置33は、表面に透明タッチパネルを装備し、操作用の画面を表示することにより、入力装置としての機能を有する」ことが記載されている。

(表示装置)
前記イの「表示部22は、ATM20の前面に垂直又はそれに近い角度で配置され」の記載、前記ウの「図8、図9は表示部22を高さ方向に2つの表示装置に分割した構成を示している」の記載、前記オの「上部表示装置32と下部表示装置33は、同じ表示機能を備えた装置を上下に2段積みした構造となっていて」の記載によれば、上部表示装置32と下部表示装置33は、第2の実施の形態の表示部22と同様に垂直に配置され、同じ表示機能を備えた装置を上下に2段積みした構造を有するといえる。
したがって、引用文献1には、「上部表示装置32と下部表示装置33は垂直に配置され、同じ表示機能を備えた装置を上下に2段積みした構造であり」が記載されている。

(目の高さの特定)
前記カの「制御部34は、カメラ21を一定間隔で撮影させ、撮影した画像を解析して顔が検出できるか否か監視する。顔が検出されると、制御部23は画像から身体位置を特定する(S71)。ここで、身体位置は目の高さとする」の記載によれば、引用文献1には「制御部34は、カメラ21を一定間隔で撮影させ、撮影した画像を解析して顔が検出されると、画像から目の高さを特定する」が記載されている。

(表示装置の選択)
前記カの「身体位置は目の高さとする」の記載、前記キの「制御部34は特定された身体位置の高さと記憶部35に保持される境界値表内の境界値とを比較する(S72)」及び「身体位置が境界値と同じかそれ以上のとき(S73/Yes)、制御部34は記憶部35の装置指定値を上部表示装置32を指定する値である“1”とする(S74)。一方、身体位置が境界値未満のとき(S73/No)、制御部34は記憶部35の装置指定値を下部表示装置33を指定する値である“2”とする(S75)。これにより、利用者の身体位置すなわち身長に応じて、上部表示装置32と下部表示装置33のうち見やすい方の表示部を選択することができる。」の記載によれば、引用文献1には「制御部34は、特定された目の高さを境界値とを比較し、目の高さが境界値と同じかそれ以上のとき、記憶部35の装置指定値を上部表示装置32を指定する値である“1”とし、一方、目の高さが境界値未満のとき、前記装置指定値を下部表示装置33を指定する値である“2”とし、これにより、利用者の身長に応じて上部表示装置32と下部表示装置33のうち見やすい方の表示装置を選択する」ことが記載されている。

(画面の表示)
前記オの「例えば、装置指定値が“1”のとき制御部34は上部表示装置32に画面を表示し、装置指定値が“2”のとき制御部34は下部表示装置33に画面を表示し」の記載、前記キの「制御部34は、ステップS52やステップS54において画面を表示する際に、記憶部35の装置指定値を参照して画面を表示する表示装置を決定する。従って、第3の実施の形態では、利用者が見やすい方の表示部(上部表示装置32と下部表示装置33のいずれか)へ画面を表示することができる」の記載によれば、引用文献1には「制御部34は、装置指定値が“1”のとき上部表示装置32に画面を表示し、装置指定値が“2”のとき下部表示装置33に画面を表示する」ことが記載されている。

したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「 カメラ21と、上部表示装置32と、下部表示装置33と、制御部34とを備え、
上部表示装置32及び下部表示装置33は、表面に透明タッチパネルを装備し、操作用の画面を表示することにより、入力装置としての機能を有し、
上部表示装置32と下部表示装置33は垂直に配置され、同じ表示機能を備えた装置を上下に2段積みした構造であり、
制御部34は、カメラ21を一定間隔で撮影させ、撮影した画像を解析して顔が検出されると、画像から目の高さを特定し、
制御部34は、特定された目の高さと境界値とを比較し、目の高さが境界値と同じかそれ以上のとき、記憶部35の装置指定値を上部表示装置32を指定する値である“1”とし、一方、目の高さが境界値未満のとき、前記装置指定値を下部表示装置33を指定する値である“2”とし、これにより、利用者の身長に応じて上部表示装置32と下部表示装置33のうち見やすい方の表示装置を選択し、
制御部34は、装置指定値が“1”のとき上部表示装置32に画面を表示し、装置指定値が“2”のとき下部表示装置33に画面を表示する、
現金自動預け払い機。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2005-115099号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
本発明は、金融機関等の営業店等に設置された自動取引装置に広告等を表示する広告表示システムおよびそれに用いる自動取引装置に関する。」

イ.「【0059】
営業店の担当者は広告制御装置8のステップS8において、図4に示す表示中止指定画面から入力コードを組合せて広告表示を中止する装置とその内容指定を入力する。
例えば、装置指定入力コードを「5(現金自動取引装置)」、内容指定入力コードを「1(スケジュール表示中止)」として入力した場合は、装置指定入力コードとして「5」を指定した次画面として現金自動取引装置1の機番の入力画面が表示され、全部または一部の現金自動取引装置1の機番を入力して内容指定入力コードを「1」を実行する現金自動取引装置1を指定する。
【0060】
この指定入力を認識した広告制御装置8は、機番で指定された現金自動取引装置1に対してスケジュール表示中止の旨を記載した中止情報を送信する。
これを受信した現金自動取引装置1のATM制御部21は、ステップSC1においてATM記憶部22の広告表示通知格納エリアを参照した時に、上記の中止情報が保存されている場合は取引前広告の表示を取り止めて通常の初期画面を表示する。」

前記ア、イによれば、引用文献2には次の事項が記載されている。

<引用文献2の記載事項>
「金融機関の営業店に設置された現金自動取引装置に広告を表示する広告表示システムであって、
営業店の担当者が、広告制御装置8の表示中止指定画面に、広告表示を中止する現金自動取引装置の機番と、スケジュール表示中止の内容指定入力コードとを入力すると、広告制御装置8は、機番で指定された現金自動取引装置1に対してスケジュール表示中止の旨を記載した中止情報を送信し、
これを受信した現金自動取引装置1は、取引前広告の表示を取り止めて通常の初期画面を表示する、
広告表示システム。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2011-53750号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0017】
(中略)現金自動支払機として金融機関に設置されるATM101には、顧客110に操作案内を表示して入力操作を受け付けるとともに、この入力操作の状態を検知する表示入力部(操作部)102を備えている。」

イ.「【0021】
そして、ATM101の上部には、第2表示手段としての第2ディスプレイ120が備えられている。」

ウ.「【0030】
次に、図3に示すフローチャートとともに、ATM101での出金取引を一例として、本実施形態に係るATM101の動作を説明する。
顧客110が不在の待機状態では、ATM101の表示入力部102が、主制御部201の制御により省電力状態となり、所謂省エネモード画面を表示している(ステップS301)。(中略)
【0031】
主制御部201は、通信部216を用いて計算センタ130と通信し、情報系サーバ132に対して、第2ディスプレイ120に表示する金融商品の案内情報の他、ATM101の稼動時間やATM101で取扱可能な取引サービス等に関する稼動情報の入手を要求する(ステップS302)。この時、主制御部201は、前記各種情報を情報系サーバ132から受信すると、ATM101の設置施設(キュッシュコーナ)にいる人達に向けて、金融商品の案内情報やATMの稼動情報を第2ディスプレイ120に表示させる(ステップS303)。」

前記ア?ウによれば、引用文献3には次の事項が記載されている。

<引用文献3の記載事項>
「 顧客110に操作案内を表示して入力操作を受け付けるとともに、この入力操作の状態を検知する表示入力部102と、
現金自動支払機の上部に第2ディスプレイ120とを備え、
顧客110が不在の待機状態では、表示入力部102は省エネモード画面を表示し、第2ディスプレイ120は金融商品の案内情報やATMの稼動情報を表示する、
現金自動支払機。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2006-31287号公報)には、第2の実施の形態について、次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0031】
(中略)図5及び図6に示すように、自動取引装置200は、カメラ部101、情報入力部102、表示部103、制御部104、取引処理部105、顔検出部111、および表示調整部211などを有している。」

イ.「【0033】
上記表示調整部211は、上記表示部103が表示する画面の視野角を調整するものであり、調整手段(覗き見防止手段)として機能する。」

ウ.「【0037】
このため、取引中においては、上記カメラ部101が撮影する画像に操作者以外の人物がいない場合(つまり、操作者以外の顔が検出されていない場合)は、図7に示すように、視野角θ1として広い視野角で上記表示部103の画面を表示し、上記カメラ部101が撮影する画像に操作者以外の人物P2が存在する場合(つまり、操作者以外の顔が検出されている場合)は、図8に示すように、視野角θ2として狭い視野角で上記表示部103の画面を表示する。なお、取引を行っていない待機状態においては、図7に示すように、視野角θ2として広い視野角で上記表示部103の画面を表示する。
【0038】
これにより、操作者以外の人物が画面を目視可能な位置に存在しない場合には、広い視野角で画面を表示することにより操作者が見やすい画面を表示することができ、操作者以外の人物が画面を目視可能な位置に存在する場合には、狭い視野角で画面を表示することにより操作者以外の人物が画面を覗き見しにくいようにすることができる。」

前記ア?ウによれば、引用文献4には、次の事項が記載されている。

<引用文献4の記載事項>
「カメラ部101、表示部103、表示調整部211を有し、
表示調整部211は、表示部103が表示する画面の視野角を調整するものであり、覗き見防止手段として機能し、
取引中において、カメラ部101が撮影する画像に操作者以外の人物がいない場合、つまり、操作者以外の顔が検出されていない場合は、広い視野角で表示部103の画面を表示し、カメラ部101が撮影する画像に操作者以外の人物P2が存在する場合、つまり、操作者以外の顔が検出されている場合は、狭い視野角で表示部103の画面を表示し、
これにより、操作者以外の人物が画面を目視可能な位置に存在しない場合には、広い視野角で画面を表示することにより操作者が見やすい画面を表示することができ、操作者以外の人物が画面を目視可能な位置に存在する場合には、狭い視野角で画面を表示することにより操作者以外の人物が画面を覗き見しにくいようにすることができる、
自動取引装置200。」


第4 対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の上部表示装置32と下部表示装置33は、表面に透明タッチパネルを装備しているが、この透明タッチパネルを表示装置とは別の構成として見た場合、当該透明タッチパネルは本願発明1の「利用者の操作を検出する複数の操作手段」に相当するといえる。

イ 引用発明の操作用の画面を表示する、垂直に配置され上下に2段積みした構造を有する上部表示装置32及び下部表示装置33は、本願発明1の「前記操作に関する情報である操作情報を表示する垂直方向に配置された複数の表示手段」に相当する。

ウ 引用発明の制御部34は「カメラ21を一定間隔で撮影させ、撮影した画像を解析して顔が検出されると、画像から目の高さ特定」するが、当該カメラ21と、そのカメラ21の画像から目の高さ特定する手段は、全体として本願発明1の「前記利用者の頭部の高さを検出する検出手段」に相当する。

エ 引用発明の「制御部34は、特定された目の高さと境界値とを比較し、目の高さが境界値と同じかそれ以上のとき、記憶部35の装置指定値を上部表示装置32を指定する値である“1”とし、一方、目の高さが境界値未満のとき、前記装置指定値を下部表示装置33を指定する値である“2”とし、これにより、利用者の身長に応じて上部表示装置32と下部表示装置33のうち見やすい方の表示装置を選択し、
制御部34は、装置指定値が“1”のとき上部表示装置32に画面を表示し、装置指定値が“2”のとき下部表示装置33に画面を表示する」において、表示装置を選択することは、表示装置に装備された透明タッチパネルすなわち操作手段をも選択することといえる。また、選択した表示装置に操作用の画面を表示することは、選択した操作手段が検出した操作に関する操作情報を表示することといえる。
したがって、引用発明の上記制御部は、本願発明1の「前記頭部の高さに対応する前記表示手段及び前記操作手段を選択し、選択した前記表示手段に、選択した前記操作手段が検出した操作に関する前記操作情報を表示する制御手段」に相当する。

オ 引用発明の「現金自動預け払い機」は、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

<一致点>
「 利用者の操作を検出する複数の操作手段と、
前記操作に関する情報である操作情報を表示する垂直方向に配置された複数の表示手段と、
前記利用者の頭部の高さを検出する検出手段と、
前記頭部の高さに対応する前記表示手段及び前記操作手段を選択し、選択した前記表示手段に、選択した前記操作手段が検出した操作に関する前記操作情報を表示する制御手段とを含む、
情報処理装置。」

<相違点>
制御手段が、本願発明1では「前記利用者の誤操作に対する表示を、前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段に表示する」のに対し、引用発明では、利用者の誤操作に対する表示を、操作情報を表示する表示手段の上又は下の表示手段に表示しない点。

(2)判断
引用発明の上部表示装置32と下部表示装置33のうち、選択されなかった表示装置は、上記相違点の「前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段」に相当するものの、この表示装置は、何らかのデータを表示するためには使用されないものである。
引用文献2-4にも、「前記利用者の誤操作に対する表示を、前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段に表示する」構成は記載されていない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2?4の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-5について
本願発明2-5も、本願発明1の「前記利用者の誤操作に対する表示を、前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段に表示する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4の記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明6について
本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記利用者の誤操作に対する表示を、前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段に表示する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4の記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明7について
本願発明7は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の「前記利用者の誤操作に対する表示を、前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段に表示する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-4の記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は、令和2年2月12日の手続補正により補正された請求項1-8について、上記引用文献1-4に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和3年2月17日の手続補正により補正された請求項1-7は、それぞれ「前記利用者の誤操作に対する表示を、前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段に表示する」という事項、または、「前記利用者の誤操作に対する表示を、前記操作情報を表示する前記表示手段の上又は下の表示手段に表示する」に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-7は、上記引用発明及び上記引用文献2-4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について

当審では、請求項3の記載は、制御手段が、利用者の誤操作に対する表示を、操作情報を表示する表示手段の上又は下の表示手段に表示するのか、当該表示を停止するかが不明であるので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知したが、令和3年2月17日の手続補正において請求項3が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび

以上のとおり、本願発明1-7は、当業者が引用発明及び引用文献2-4の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-03 
出願番号 特願2016-60514(P2016-60514)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 537- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹下 翔平山本 雅士  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 畑中 高行
佐藤 聡史
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、及び、プログラム  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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