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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1374626
審判番号 不服2020-11395  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-18 
確定日 2021-06-24 
事件の表示 特願2016- 69007「光学フィルム、剥離方法及び光学表示パネルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017-181788、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2016-69007号(以下「本件出願」という。)は、平成28年3月30日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年 2月14日付け:拒絶理由通知書
令和2年 4月14日提出:意見書
令和2年 5月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和2年 8月18日提出:審判請求書
令和2年 8月18日提出:手続補正書
令和3年 2月10日付け:拒絶理由通知書
令和3年 4月 7日提出:意見書
令和3年 4月 7日提出:手続補正書


第2 本件発明
本件出願の請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明11」という。)は、令和3年4月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるところ、本件発明1は、以下のとおりのものである。

「 離型フィルム、第1粘着剤層、偏光フィルムおよび表面保護フィルムがこの順に積層されている枚葉状の光学フィルムであって、
前記偏光フィルムは、厚みが60μm以下であり、かつ、
前記表面保護フィルムは、基材フィルムを含み、さらに、第2粘着剤層および剥離処理層の少なくとも一つの層を含むことができ、前記第2粘着剤層および前記剥離処理層の少なくとも一つの層を含む場合の表面保護フィルムの厚みは、前記基材フィルム並びに前記第2粘着剤層および前記剥離処理層の少なくとも一つの層の合計厚みであり、前記第2粘着剤層を含む場合は、前記表面保護フィルムは、前記第2粘着剤層を介して偏光フィルム側に配置され、前記剥離処理層を含む場合は、前記剥離処理層は前記基材フィルムに対して前記第2粘着剤層を設ける面とは反対側の面に設けられ、
前記光学フィルムの総厚みにおける中間位置の平面方向を仮想中心面fとする場合に、
前記仮想中心面fと前記表面保護フィルムが前記偏光フィルムに貼り合わされている面との距離x(μm)と前記仮想中心面fと前記離型フィルムが前記第1粘着剤層に貼り合わされている面との距離y(μm)とが、x-y>-20、の関係にあり、
前記離型フィルムの剥離力(1)が、前記表面保護フィルムの剥離力(2)より大きいことを特徴とする光学フィルム。」

なお、本件発明2?8は、本件発明1の「光学フィルム」に対してさらに他の発明特定事項を付加したものである。
また、本件発明9は、本件発明1の「光学フィルム」から離型フィルムを剥離する「離型フィルムの剥離方法」の発明であり、本件発明10?11は、本件発明1の「光学フィルム」を用いた「光学表示パネルの製造方法」の発明である。


第3 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
1 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献2002-210879号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、離型フィルムに関し、更に詳細には本発明は、製品検査の容易な偏光板に好適に用いられる離型フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、偏光板は、反射防止フィルターやメガネ等に使用されてきたが、近年、時計や電卓用の小型汎用品の液晶表示体、更にはOA用、液晶テレビ、あるいは車載用の高付加価値商品への用途が拡大され、商品の信頼性がなお一層、要求されるようになってきた。
【0003】偏光板は、通常、図1に示す如く偏光フィルム1、表面保護フィルム2、粘着剤層3、および離型フィルム4で構成されている。偏光フィルム1は、沃素や二色性染料などの偏光素子をポリビニルアルコール系フィルムのような親水性フィルムに吸着配向させた偏光軸と吸着軸とを有する偏光子を、上下からセルロース系フィルムで被覆するか、あるいは、アクリル系樹脂をコーティングしてしてなるものである。表面保護フィルム2には、ポリエステルフィルムのような透湿性が少なく、伸び等の変形が少ない透明なプラスチックフィルムが使用されている。また、表面保護フィルム2と偏光フィルム1は、通常、接着剤(図示省略)で被着されており、その接着剤は表面保護フィルム2とは強固に接着するが、偏光フィルム1とは経日でも容易に剥離し得るものが使用されている。また、粘着剤層3は、偏光フィルム1を液晶セル(図示省略)に粘着するための感圧型粘着剤等からなり、そして離型フィルム4は、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムからなる。
・・・省略・・・
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、耐薬品性、耐擦傷性、取扱性に優れ、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間で光学的評価を伴う液晶表示板の検査で消光状態を保つことができ、その結果、検査を容易にすることができ、かつ、液晶表示板へのゴミの付着防止に優れる等の特性を有するとともに、偏光板または位走査板の保護の役目を果たした後に不要物として剥離除去される際、剥離帯電を抑制する効果があり、剥離帯電により液晶表示板と接続されている回路の破損等を防止することができる、要するに加工性が良好で、色相検査性が良好な離型フィルムを提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の離型フィルムは、少なくとも一方向に延伸されたポリエステルフィルムにおいて、少なくとも片面の最表層の中心線平均粗さ(Ra)が1nm以上50nm未満、かつそのピーク個数(RMS-n)が40(個/0.5mm)以上500(個/0.5mm)以下であり、かつ、本文で定義される該ポリエステルフィルムの曲げ剛性B値が0.1(N・cm^(2)/cm)以上10(N・cm^(2)/cm)以下であることを特徴とするものである。
【0009】【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、つまり加工性が良好で色相検査性が良好な離型フィルムについて、鋭意検討し、最表層の中心線平均粗さ(Ra)が特定で、かつ、そのピーク個数(RMS-n)が特定であり、かつ、曲げ剛性B値が特定であるポリエステルフィルムで離型フィルムを構成してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0010】すなわち、本発明の離型フィルムは、少なくとも片面の最表層の中心線平均粗さ(Ra)が1nm以上50nm未満、より好ましくは1nm以上35nm未満、さらに好ましくは1nm以上25nm未満であることが必要である。この範囲を外れた場合、耐擦傷性、取扱性が不良になる。
・・・省略・・・
【0042】(7)色相検査性
沃素をポリビニルアルコールに吸着配向せしめ上下よりトリアセチルセルロースで被覆した厚み200μmの偏光フィルム上面に、10μmの粘着剤を塗布した厚み40μmのポリエステル保護フィルムよりなる表面保護フィルムを貼着し、また偏光フィルムの下面には25μm厚みの粘着剤を塗布した厚み65μmの本発明の離型フィルムとして貼着し、図1に示す構造の偏光板を作成した。得られた偏光板を内部に光源を有しその上部に偏光フィルムを配設し偏光のみをとりだせるようにした装置上に剥離フィルム側から光が透過するように偏光板を配置し、偏光フィルムの色相変化を検査した。判定基準は次のとおりである。
・色相変化及び光の透過がなく、正確な検査が可能 →○
・色むら、光抜けを生じ、正確な検査が困難 →×
(8)加工性
A4サイズに切り出した上記200μmの偏光フィルムと10μmの粘着剤を塗布した本発明の保護フィルムを張力をかけながら、70℃に加熱されたシリコンゴムロールで圧力をかけながら張り合わせた。判定基準は次のとおりである。
・張り合わせが良好に行えて、保護フィルムにしわや気泡がない。→○
・張り合わせ不良、または保護フィルムにしわや気泡が発生。 →×」

(2)図1


2 引用発明
引用文献2の上記1の【0042】の記載に基づけば、引用文献2には、偏光板として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「沃素をポリビニルアルコールに吸着配向せしめ上下よりトリアセチルセルロースで被覆した厚み200μmの偏光フィルム上面に、10μmの粘着剤を塗布した厚み40μmのポリエステル保護フィルムよりなる表面保護フィルムを貼着し、また偏光フィルムの下面には25μm厚みの粘着剤を塗布した厚み65μmの離型フィルムとして貼着し、作成した偏光板。」


第4 対比・判断
1 本件発明1
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

ア 離型フィルム、第1粘着剤層、偏光フィルム、表面保護フィルム
引用発明の「偏光板」は、「偏光フィルム上面に」、「粘着剤を塗布した」「ポリエステル保護フィルムよりなる表面保護フィルムを貼着し」、「偏光フィルムの下面には」「粘着剤を塗布した」「離型フィルムとして貼着し」、「作成した」ものである。
上記構成からみて、引用発明の「離型フィルム」、「偏光フィルム」及び「表面保護フィルム」は、その文言どおり、それぞれ、本件発明1の「離型フィルム」、「偏光フィルム」及び「表面保護フィルム」に相当する。
ここで、引用発明の「離型フィルム」に塗布した「粘着剤」が層をなすことは明らかである。また、上記構成からみて、引用発明の「離型フィルム」に塗布した「粘着剤」は、「離型フィルム」と「偏光フィルム」の間に配置されているといえる。
これに対して、本件発明1においては、「離型フィルム」と「偏光フィルム」の間に配置されている「粘着剤層」を「第1粘着剤層」としている。
そうしてみると、引用発明の「離型フィルム」に塗布した「粘着剤」は、本件発明1の「第1粘着剤層」に相当する(以下、「(1)対比」において、引用発明の「「離型フィルム」に塗布した「粘着剤」を「(第1)粘着剤」という。)。

イ 光学フィルム
上記アの構成からみて、引用発明の「偏光板」が枚葉状であることは明らかである(当合議体注:このことは、引用文献2の図1からも確認できる。)。また、引用発明の「偏光板」がフィルム状であることも明らかである。さらに、引用発明の「偏光板」は、「離型フィルム」、「(第1)粘着剤」、「偏光フィルム」及び「表面保護層」がこの順に積層されているといえる(当合議体注:引用発明の「偏光板」が、「離型フィルム」、「(第1)粘着剤」、「偏光フィルム」及び「表面保護層」の順に積層されているか、あるいは、「表面保護層」、「偏光フィルム」、「(第1)粘着剤」及び「離型フィルム」の順に積層されているかは、随意である。)。
そうしてみると、引用発明の「偏光板」は、本件発明1の「光学フィルム」に相当する。また、引用発明の「偏光板」は、本件発明1の「光学フィルム」の「離型フィルム、第1粘着剤層、偏光フィルムおよび表面保護フィルムがこの順に積層されている枚葉状」であるとの要件を満たす。

ウ 基材フィルム、第2粘着剤層
引用発明の「表面保護フィルム」は、「粘着剤を塗布した」「ポリエステル保護フィルムよりな」り、「偏光フィルム上面に」、「貼着」されるものである。
上記構成からみて、引用発明の「表面保護フィルム」は、「ポリエステル保護フィルム」を含み、さらに、「粘着剤」を含む。また、引用発明の「粘着剤」が層をなすことは明らかである。そうしてみると、引用発明の「表面保護フィルム」の厚みは、「ポリエステル保護フィルム」および「粘着剤」の合計厚みであるといえる。さらに、上記構成からみて、引用発明の「表面保護フィルム」は、「ポリエステル保護フィルム」に塗布した「粘着剤」を介して「偏光フィルム」側に配置されているといえる。
これに対して、本件発明1においては、「表面保護フィルム」に含まれる「粘着剤層」を「第2粘着剤層」としている。
以上、勘案すると、引用発明の「ポリエステル保護フィルム」は、本件発明1の「基材フィルム」に相当する。また、引用発明の「ポリエステル保護フィルム」に塗布した「粘着剤」は、本件発明1の「第2粘着剤層」に相当する(以下、「(1)対比」において、引用発明の「ポリエステル保護フィルム」に塗布した「粘着剤」を「(第2)粘着剤」という。)。さらに、引用発明の「表面保護フィルム」は、本件発明1の「表面保護フィルム」の「基材フィルムを含み、さらに、第2粘着剤層および剥離処理層の少なくとも一つの層を含むことができ、前記第2粘着剤層および前記剥離処理層の少なくとも一つの層を含む場合の表面保護フィルムの厚みは、前記基材フィルム並びに前記第2粘着剤層および前記剥離処理層の少なくとも一つの層の合計厚みであり、前記第2粘着剤層を含む場合は、前記表面保護フィルムは、前記第2粘着剤層を介して偏光フィルム側に配置され、前記剥離処理層を含む場合は、前記剥離処理層は前記基材フィルムに対して前記第2粘着剤層を設ける面とは反対側の面に設けられ」との要件を満たす。

エ 仮想中心面
引用発明の「偏光板」において、「離型フィルム」の厚みは「65μm」、「(第1)粘着剤」の厚みは「25μm」、「偏光フィルム」の厚みは「200μm」、「(第2)粘着剤」の厚みは「10μm」、「ポリエステル保護フィルム」の厚みは「40μm」である。
上記構成より、引用発明の「偏光板」の総厚みは、340μm(65+25+200+10+40)である。
そうしてみると、引用発明において、「偏光板」における中間位置の平面方向を仮想中心面とする場合に、前記仮想中心面と「表面保護フィルム」が「偏光フィルム」に貼り合わされている面との距離から、前記仮想中心面と「離型フィルム」が「(第1)粘着剤」に貼り合わされている面との距離を引くと、15μm((340/2-(10+40))-(340/2-65))となる。
したがって、引用発明の「偏光板」は、本件発明1の「光学フィルム」の「前記光学フィルムの総厚みにおける中間位置の平面方向を仮想中心面fとする場合に、前記仮想中心面fと前記表面保護フィルムが前記偏光フィルムに貼り合わされている面との距離x(μm)と前記仮想中心面fと前記離型フィルムが前記第1粘着剤層に貼り合わされている面との距離y(μm)とが、x-y>-20、の関係にあり」との要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明とは、
「 離型フィルム、第1粘着剤層、偏光フィルムおよび表面保護フィルムがこの順に積層されている枚葉状の光学フィルムであって、
前記表面保護フィルムは、基材フィルムを含み、さらに、第2粘着剤層および剥離処理層の少なくとも一つの層を含むことができ、前記第2粘着剤層および前記剥離処理層の少なくとも一つの層を含む場合の表面保護フィルムの厚みは、前記基材フィルム並びに前記第2粘着剤層および前記剥離処理層の少なくとも一つの層の合計厚みであり、前記第2粘着剤層を含む場合は、前記表面保護フィルムは、前記第2粘着剤層を介して偏光フィルム側に配置され、前記剥離処理層を含む場合は、前記剥離処理層は前記基材フィルムに対して前記第2粘着剤層を設ける面とは反対側の面に設けられ、
前記光学フィルムの総厚みにおける中間位置の平面方向を仮想中心面fとする場合に、
前記仮想中心面fと前記表面保護フィルムが前記偏光フィルムに貼り合わされている面との距離x(μm)と前記仮想中心面fと前記離型フィルムが前記第1粘着剤層に貼り合わされている面との距離y(μm)とが、x-y>-20、の関係にある光学フィルム。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「偏光フィルム」が、本件発明1は、「厚みが60μm以下であ」るのに対して、引用発明は、「厚み200μm」である点。

(相違点2)
本件発明1は、「前記離型フィルムの剥離力(1)が、前記表面保護フィルムの剥離力(2)より大きい」のに対して、引用発明の「離型フィルム」及び「表面保護フィルム」の剥離力はいずれも不明であり、「離型フィルム」及び「表面保護フィルム」の剥離力の関係も明らかでない点。

(3)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
まず、引用文献2には、「離型フィルム」及び「表面保護フィルム」の剥離力並びに「離型フィルム」及び「表面保護フィルム」の剥離力の関係について、記載も示唆もない。そもそも、引用文献2の課題は、引用文献2の【0007】に「耐薬品性、耐擦傷性、取扱性に優れ、クロスニコル状態の2枚の偏光板の間で光学的評価を伴う液晶表示板の検査で消光状態を保つことができ、その結果、検査を容易にすることができ、かつ、液晶表示板へのゴミの付着防止に優れる等の特性を有するとともに、偏光板または位走査板の保護の役目を果たした後に不要物として剥離除去される際、剥離帯電を抑制する効果があり、剥離帯電により液晶表示板と接続されている回路の破損等を防止することができる、要するに加工性が良好で、色相検査性が良好な離型フィルムを提供せんとするもの」であって、引用文献2において、「離型フィルム」の剥離力を「表面保護フィルム」の剥離力よりも大きくする動機付けはない。かえって、剥離する順序を考慮するならば、引用発明の「離型フィルム」の剥離力は、「表面保護フィルム」の剥離力よりも小さくするのが素直である。
そして、本件発明1は、上記相違点2に係る本件発明1の構成を採用することにより、本件明細書の【0020】に記載されているような、引用発明の構成からは予測することができない効果を奏するものと理解される。
したがって、当業者であっても、引用発明に基づいて上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることが、容易になし得たということはできない。

なお、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2013-68942号公報(以下、同じく「引用文献1」という。)にも、引用発明において上記相違点2に係る本件発明1の構成を採用することが容易であることを窺わせる記載はない。
また、引用文献1に記載された発明を主引例とした場合であっても、引用文献2に記載された発明を主引例とした場合と同様である。

(4)小括
以上のとおりであるから、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。

3 本件発明2?11について
本件発明2?11は、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明2?11も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1?2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということができない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、理由1(委任省令要件違反)本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない、理由2(進歩性)本件出願の請求項1?12に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-68942号公報
引用文献2:特開2002-210879号公報
(当合議体注:引用文献1?2は主引例である。)

2 原査定についての判断
(1)理由1(委任省令要件違反)について
本件出願の課題は、本件明細書の【0007】に記載された「本発明は、離型フィルム、第1粘着剤層、偏光フィルムおよび表面保護フィルムがこの順に積層されている枚葉状の光学フィルムであって、薄型の偏光フィルムを用いた場合であっても、離型フィルムを容易に剥離することができる光学フィルムを提供することを目的とする」ものである。これに対して、本件明細書の【0092】の【表1】において、偏光フィルムの厚みが60μm以下であり、かつ、光学フィルムの総厚みにおける中間位置の平面方向を仮想中心面fとする場合に、前記仮想中心面fと前記表面保護フィルムが前記偏光フィルムに貼り合わされている面との距離x(μm)と前記仮想中心面fと前記離型フィルムが前記第1粘着剤層に貼り合わされている面との距離y(μm)とが、x-y>-20の関係にあるものは、剥離試験の評価が高く、上記関係にないものは、剥離試験の評価が低いものとなっている。
そうしてみると、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されている。
したがって、本件出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法36条4項1号に規定する委任省令要件を満たしている。

(2)理由2(進歩性)について
上記第4で述べたように、本件発明1?11は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1?2に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができたということができない。

3 まとめ
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第6 当合議体が通知した拒絶の理由について
令和3年4月7日に提出された手続補正書により補正されたので、当合議体が通知した拒絶の理由は解消された。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-10 
出願番号 特願2016-69007(P2016-69007)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 後藤 慎平  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 井亀 諭
井口 猶二
発明の名称 光学フィルム、剥離方法及び光学表示パネルの製造方法  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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