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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
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管理番号 | 1374659 |
審判番号 | 不服2019-4359 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-03 |
確定日 | 2021-06-10 |
事件の表示 | 特願2014- 51875「画像形成装置、画像形成装置の制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 5日出願公開、特開2015-174298〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月14日を出願日とする出願であって、平成29年12月21日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月29日付けで拒絶理由が通知され、同年8月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月25日付けで拒絶査定がなされたのに対し、平成31年4月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、令和2年10月6日付けで当審において拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月8日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1ないし9に係る発明は、令和2年12月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 画像形成装置であって、 画面を色反転するか否かを示す色反転情報を、ユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて個人設定情報として記憶し、前記画面を色反転するか否かを示す色反転情報を、前記個人設定情報とは独立したデバイス設定情報として記憶する記憶手段と、 前記画像形成装置にユーザをログインさせるためのログイン処理を実行する実行手段と、 前記画像形成装置にユーザがログインしたことに従って、前記画像形成装置にログインしたユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて前記記憶手段に記憶された色反転情報に基づいて操作画面を表示する表示手段と、 を有し、 前記実行手段は、前記画像形成装置から、前記ユーザをログアウトさせるログアウト処理を実行させ、 前記表示手段は、前記画像形成装置に前記ユーザがログインしている状態である間は、当該ユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて前記記憶手段に記憶された色反転情報に基づいて操作画面を表示し、前記画像形成装置からユーザがログアウトしたことに従って、前記記憶手段に前記デバイス設定情報として記憶された色反転情報に基づいて操作画面を表示することを特徴とする画像形成装置。」 第3 当審拒絶理由 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由は、この出願の請求項1、2、8、9に係る発明は下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、請求項3に係る発明は下記の引用文献1、2、3に記載された発明に基づいて、請求項4、5に係る発明は下記の引用文献1、2、3、4に記載された発明に基づいて、請求項6、7に係る発明は下記の引用文献1、2、3、4、5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2011-123824号公報 引用文献2:特開2013-131875号公報 引用文献3:特開2004-341813号公報 引用文献4:特開2011-59958号公報 引用文献5:特許第4182099号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 (1)引用文献1の記載 当審拒絶理由で引用された引用文献1には以下の記載がある。(なお、下線は強調のために当審が付した。以下同じ) ア 「【0038】 ログインボタン32は、MFP1に対するユーザのログイン/ログアウトに係る処理を受け付けるボタンである。MFP1は、ユーザがログインしなくてもコピー機能及びファクシミリ機能等を利用することができる構成であるが、ユーザがログインして使用することによって、利便性及びセキュリティ等に優れた利用環境をユーザに対して提供することができる。MFP1は、登録されたユーザのID及びパスワード等をROM11に認証情報として記憶しており、この認証情報に基づいてログイン処理を行う。 【0039】 例えばMFP1にユーザがログインしていない状態でログインボタン32が操作された場合、MFP1は、タッチパネル31の表示面311に、ユーザのID及びパスワードを入力するためのログイン画面(図示は省略する)を表示する。MFP1は、タッチパネル31へのタッチ操作又はテンキー48のプッシュ操作等によりID及びパスワードの入力を受け付け、認証情報を参照することによりログインの可否を決定する。またMFP1にユーザがログインしている状態でログインボタン32が操作された場合、MFP1は、ログイン中のユーザのログアウト処理を行う。これらのユーザ認証に係る処理は、MFP1の処理部10の認証処理部101により行われる。・・・ 【0064 】 共通ショートカット画面120のショートカットボタン121?126及び個別ショートカット画面140 のショートカットボタン141?146とMFP1の機能との対応付けは、対応情報としてMFP1のROM11に記憶される。図8は、ショートカットボタンの対応情報の一構成例を示す模式図である。ROM11に記憶されるショートカットボタンの対応情報には、ユーザID、初期画面、ボタン番号及び機能の情報が含まれている。 【0065】 ユーザIDは、MFP1を利用するユーザを識別するための情報であり、MFP1へのログインを行う際にユーザが入力する情報である。図示の例では、例えば”USER001”及び”USER002”のユーザIDが登録されている。なお、ユーザIDが”全ユーザ”の箇所は共通ショートカット画面120のショートカットボタン121?126に関する設定であり、これ以外の箇所は個別ショートカット画面140のショートカットボタン141?146に関する設定である。 【0066】 上述のように、各ユーザはログイン後にタッチパネル31の表示面311に表示させる画面の設定を行うことができ、この設定は対応情報の初期画面として登録されている。図示の例においてMFP1は、”USER001”がログインした場合にMFP1は個別ショートカット画面140を表示し、”USER002”がログインした場合にMFP1は共通ショートカット画面120を表示する。また”全ユーザ”に関する初期画面の設定は、いずれのユーザもMFP1に対してログインしていない状態で、MFP1が表示面311に表示する画面の設定である。・・・ 【0069】 ログインボタン32が操作された場合(S1:YES)、MFP1は、操作がなされる以前にユーザがログイン中であったか否かを判定する(ステップS2)。ユーザがログイン中であった場合(S2:YES)、MFP1は、このユーザのログアウト処理を行って(ステップS3)、ROM11に記憶した対応情報の”全ユーザ”に登録された初期画面をタッチパネル31の表示面311に表示して(ステップS4)、処理を終了する。 【0070】 ユーザがログイン中でなかった場合(S2:NO)、MFP1は、タッチパネル31の表示面311に、ユーザID及びパスワード等の情報の入力を受け付けるための認証情報入力画面を表示する(ステップS5)。次いで、MFP1は、認証情報入力画面に対する情報の入力が完了したか否かを判定し(ステップS6)、入力が完了していない場合には(S6:NO)、ステップS5へ処理を戻す。入力が完了した場合(S6:YES)、MFP1は、ROM11から認証情報を読み出して(ステップS7)、入力された情報と読み出した認証情報とが一致するか否かに応じて、認証が成功したか否かを判定する(ステップS8)。認証に失敗した場合(S8:NO)、MFP1は、ステップS5へ処理を戻し、正しい情報の入力を促す。認証に成功した場合(S8:YES)、MFP1は、入力された情報に係るユーザをログインさせ、このユーザに対して設定された初期画面をタッチパネル31の表示面311に表示し(ステップS9)、処理を終了する。・・・ 【0083】 図14は、MFP1が行う初期画面の設定受付処理の手順を示すフローチャートであり、MFP1の処理部10の表示設定受付部105が行う処理である。例えばMFP1において、初期画面の設定は、操作部30の設定ボタン45の操作に応じてタッチパネル31の表示面311に表示される設定メニューから初期画面設定の項目を選択することで行うことができる。MFP1は、設定メニューから初期画面設定の項目が選択されたか否かを判定し(ステップS71)、初期画面設定の項目が選択されていない場合には(S71:NO)、初期画面設定の項目が選択されるまで待機する。 【0084】 初期画面設定の項目が選択された場合(S71:YES)、MFP1は、ユーザ毎に個別に設定可能な初期画面の設定か、又は、全ユーザに共通の初期画面の設定かに係る選択を受け付ける画面をタッチパネル31の表示面311に表示する。この画面に対するタッチ操作に応じて、MFP1は、ユーザ毎の初期画面の設定が選択されたか否かを判定する(ステップS72)。ユーザ毎の初期画面の設定が選択されていない場合S72:NO)、MFP1は、ステップS75へ処理を進める。 【0085】 ユーザ毎の初期画面の設定が選択された場合(S72:YES)、MFP1は、既にユーザがログイン中であるか否かを更に判定する(ステップS73)。ユーザがログイン中の場合(S73:YES)、MFP1は、ステップS75へ処理を進める。ユーザがログイン中でない場合(S73:NO)、MFP1は、表示面311への認証情報入力画面の表示、ユーザからの情報入力の受け付け、認証情報及び入力情報の一致/不一致の判定等の認証処理を行う(ステップS74)。ステップS74にて行う認証処理は、図9に示したフローチャートのステップS5?S8にて行う処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。認証情報に成功した場合、MFP1は、ステップS75へ処理を進める。 【0086】 次いでMFP1は、タッチパネル31の表示面311に、初期画面の設定を受け付ける設定画面を表示する(ステップS75)。この設定画面は、例えば初期画面として設定可能な画面(コピー機能の設定画面110、共通ショートカット画面120及び個別ショートカット画面140等)の名称を一覧表示し、表示されたいずれかの名称に対するタッチ操作に応じて初期画面の選択を受け付ける構成とすることができる。MFP1は、設定画面に対するタッチ操作により、初期画面の選択入力が完了したか否かを判定し(ステップS76)、完了していない場合には(S76:NO)、ステップS75へ処理を戻し、選択入力が完了するまで待機する。 【0087】 初期画面の選択入力が完了した場合(S76:YES)、MFP1は、選択された初期画面に応じて、ROM11に記憶した対応情報を更新し(ステップS77)、更新した対応情報に基づく初期画面をタッチパネル31の表示面311に表示して(ステップS78)、処理を終了する。」が記載されている。 図8は次のものである。 図14は次のものである。 イ 前記「ア」の「【0064 】・・・対応情報としてMFP1のROM11に記憶される。図8は、ショートカットボタンの対応情報の一構成例を示す模式図である。ROM11に記憶されるショートカットボタンの対応情報には、ユーザID、初期画面、ボタン番号及び機能の情報が含まれている。」と記載されている。 図8をみると、対応情報の構成は、ユーザIDの情報毎にそれぞれ、初期画面、ボタン番号及び機能の各情報が対応づけられているものであることが理解できる。 前記段落【0064】と図8の記載をふまえると、MFPのROMにはユーザIDの情報毎にそれぞれ、初期画面、ボタン番号及び機能の各情報が対応づけられた対応情報が記憶されているといえる。 ウ 前記「ア」の「【0065】・・・図示の例では、例えば”USER001”及び”USER002”のユーザIDが登録されている。なお、ユーザIDが”全ユーザ”の箇所は共通ショートカット画面120のショートカットボタン121?126に関する設定であり、これ以外の箇所は個別ショートカット画面140のショートカットボタン141?146に関する設定である。」との記載から「ユーザID」として登録されるのは「”USER001”」、「”USER002”」、「全ユーザ」である。 前記「ア」の「【0066】・・・各ユーザはログイン後にタッチパネル31の表示面311に表示させる画面の設定を行うことができ、この設定は対応情報の初期画面として登録されている。図示の例においてMFP1は、”USER001”がログインした場合にMFP1は個別ショートカット画面140を表示し、”USER002”がログインした場合にMFP1は共通ショートカット画面120を表示する。・・・」の記載をふまえれば、前記「”USER001”」、「”USER002”」とは、各ユーザ毎のIDのことであることが理解できる。 よって、ユーザIDの情報は、各ユーザ毎のIDと”全ユーザ”からなるものであるといえる。 エ 前記「ア」の「【0038】・・・ログイン処理を行う。」の「ログイン処理」と、「【0070】・・・ユーザをログインさせ、このユーザに対して設定された初期画面をタッチパネル31の表示面311に表示し・・・」の「ログインさせ」ることは、いずれも同じことを意味していると解されるから、それぞれを「ログイン処理」と用語を統一して認定することとする。 オ 前記「ア」の段落【0084】ないし【0086】の記載及び図14のフローチャートによれば、「初期画面の設定を受け付ける設定画面を表示する」ステップ75(段落【0086】)は、「ユーザ毎の初期画面の設定が選択された場合」(ステップ72においてYES)と、「ユーザ毎の初期画面の設定が選択されていない場合」(ステップ72においてNO)のいずれの場合にも実行される」ことが理解できる。 そして、段落【0084】の「ユーザ毎に個別に設定可能な初期画面の設定か、又は、全ユーザに共通の初期画面の設定かに係る選択を受け付ける画面をタッチパネル31の表示面311に表示する。この画面に対するタッチ操作に応じて、MFP1は、ユーザ毎の初期画面の設定が選択されたか否かを判定する(ステップS72)」との記載によれば、「ユーザ毎の初期画面の設定が選択された場合」(ステップ72においてYES)とは、ユーザ毎の初期画面の設定が選択された場合であり、「ユーザ毎の初期画面の設定が選択されていない場合」(ステップ72においてNO)とは、全ユーザに共通の初期画面の設定をする場合のことであると解されるので、「初期画面の設定を受け付ける設定画面を表示する」ステップ75は、「ユーザ毎の初期画面の設定が選択された場合」と「全ユーザに共通の初期画面の設定をする場合」の両方において行われるものであるといえる。 カ 前記「ア」の「【0086】・・・初期画面の設定を受け付ける設定画面を表示する(ステップS75)。この設定画面は、例えば初期画面として設定可能な画面(コピー機能の設定画面110、共通ショートカット画面120及び個別ショートカット画面140等)の名称を一覧表示し、表示されたいずれかの名称に対するタッチ操作に応じて初期画面の選択を受け付ける構成とすることができる。」の記載を整理すると、「初期画面の設定を受け付ける設定画面を表示する」(ステップ75)は、「初期画面として設定可能な複数の画面の名称を一覧表示し、その中から選択を受け付ける画面を表示すること」であるといえる。 (3)引用文献1記載の発明 以上によれば、引用文献1には、つぎの発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「MFPへ対するユーザのログイン処理及びログアウト処理はMFPの処理部により行われ、ユーザ毎の初期画面の設定及び全ユーザに共通の初期画面の設定は、初期画面として設定可能な複数の画面の名称を一覧表示し、その中から選択を受け付ける画面を表示することによっておこなわれ、MFPのROMにはユーザIDの情報毎にそれぞれ、初期画面、ボタン番号及び機能の各情報が対応づけられた対応情報が記憶され、ユーザIDは、各ユーザ毎のIDと”全ユーザ”からなり、ログアウト処理を行った場合、ROMに記憶した対応情報の”全ユーザ”に登録された初期画面をタッチパネルの表示面に表示し、ユーザのログイン処理を行った場合、このユーザに対して対応情報の初期画面として登録された初期画面をタッチパネルの表示面に表示するMFP。」 (4)当審の判断 ア 本願発明と引用発明との対比 (ア)引用発明の「MFP」、「ログイン処理」、「ログアウト処理」、「各ユーザ毎のID」、「タッチパネルの表示面」はそれぞれ、本願発明の「画像形成装置」、「ログイン処理」、「ログアウト処理」、「ユーザを識別するためのユーザ識別情報」、「表示手段」に相当する。 (イ)引用発明の「処理部」は、「MFPへ対するユーザのログイン処理及びログアウト処理」を行うものであるから、本願発明の「画像形成装置にユーザをログインさせるためのログイン処理を実行する実行手段」及び「前記画像形成装置から、前記ユーザをログアウトさせるログアウト処理を実行させ」る「実行手段」に相当する。 (ウ)引用発明において「ユーザ毎の初期画面」及び「全ユーザに共通の初期画面」は、MFPのROMに記憶され、「タッチパネルの表示面に表示」する内容を示す「情報」であるといえるから、当該「ユーザ毎の初期画面」及び「全ユーザに共通の初期画面」と本願発明の「画面を色反転するか否かを示す色反転情報」とは、「表示手段の表示態様を決定する情報」という点で共通する。 (エ)引用発明の「ユーザ毎の初期画面」は、ユーザ毎に名称一覧から選択して設定して記憶された情報であるから、本願発明の「個人設定情報」に相当する。 引用発明において、「MFPのROMにはユーザIDの情報毎にそれぞれ初期画面」・・・の「情報が対応づけられた対応情報が記憶され」ることは、本願発明の「ユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて個人設定情報として記憶」することに相当する。 (オ)本願発明の「デバイス設定情報」について、本願発明の詳細な説明を参照すると「デバイス設定情報(共有設定情報)」(段落【0024】)と記載されているので、「デバイス設定情報」とは共有設定情報、すなわち、そのデバイスを使用するユーザ間で共有される設定情報のことを意味するものと解される。 そして、引用発明の「全ユーザに共通の初期画面」は、MFPを使用するユーザに共通して用いられる初期画面であることは明らかであるから、引用発明の「全ユーザに共通の初期画面」は、本願発明の「デバイス設定情報」に相当する。 (カ)引用発明において、「MFPのROMにはユーザIDの情報毎にそれぞれ初期画面、ボタン番号及び機能の各情報が対応づけられた対応情報が記憶され」ており、「ユーザIDは、各ユーザ毎のIDと”全ユーザ”からな」るものであるから、前記「初期画面」には、各ユーザ毎のIDに対応づけられたものと、”全ユーザ”に対応づけられたものがあり、それらの「初期画面」はそれぞれ個別に設定可能な情報である。そして、前記各ユーザ毎のIDそれぞれに対応づけられた情報である「各ユーザ毎の初期画面」(本願発明の「個人設定情報」に相当。)と、「”全ユーザ”」に対応づけられた情報である「全ユーザに共通の初期画面」(本願発明の「デバイス設定情報」に相当。)がそれぞれ個別に設定可能なものであることからすれば、引用発明の各ユーザ毎のIDにそれぞれ対応付けられて記憶された「各ユーザ毎の初期画面」の「情報」は、本願発明の「個人設定情報とは独立したデバイス設定情報」であることに相当する。 (キ)引用発明は「MFPのROMにはユーザIDの情報毎に」「各ユーザ毎の初期画面」の「情報」が記憶されるものであり、前記「ユーザIDは、各ユーザ毎のIDと”全ユーザ”からな」るから、引用発明の「ユーザ毎の初期画面」及び「全ユーザに共通の初期画面」を記憶する「ROM」は、本願発明の「個人設定情報」と「デバイス設定情報」を「記憶する記憶手段」に相当する。 (ク)前記(ウ)で検討したとおり、引用発明の「全ユーザに共通の初期画面」の情報と本願発明の「画面を色反転するか否かを示す色反転情報」とは、「表示手段の表示態様を決定する情報」という点で共通するから、引用発明の「ログアウト処理を行った場合、ROMに記憶した対応情報の”全ユーザ”に登録された初期画面をタッチパネルの表示面に表示」することと、本願発明の「前記画像形成装置からユーザがログアウトしたことに従って、前記記憶手段に前記デバイス設定情報として記憶された色反転情報に基づいて操作画面を表示すること」とは、「前記画像形成装置からユーザがログアウトしたことに従って、前記記憶手段に前記デバイス設定情報として記憶された表示手段の表示態様を決定する情報に基づいて操作画面を表示すること」で共通する。 (ケ)前記(ウ)で検討したとおり、引用発明の「ユーザ毎の初期画面」の「情報」と本願発明の「画面を色反転するか否かを示す色反転情報」とは、「表示手段の表示態様を決定する情報」という点で共通するから、引用発明の「ログイン処理を行った場合、このユーザに対して対応情報の初期画面として登録された初期画面をタッチパネルの表示面に表示する」ことと、本願発明の「ユーザがログインしたことに従って、前記画像形成装置にログインしたユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて前記記憶手段に記憶された色反転情報に基づいて操作画面を表示する」とは、「ユーザがログインしたことに従って、前記画像形成装置にログインしたユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて前記記憶手段に記憶された表示手段の表示態様を決定する情報に基づいて操作画面を表示する」ものである点で共通する。 (コ)引用発明の「MFPは、このユーザのログアウト処理を行って、ROMに記憶した対応情報の全ユーザに共通の初期画面をタッチパネルの表示面に表示」することと、本願発明の「画像形成装置からユーザがログアウトしたことに従って、前記記憶手段に前記デバイス設定情報として記憶された色反転情報に基づいて操作画面を表示すること」とは、「画像形成装置からユーザがログアウトしたことに従って、前記記憶手段に前記デバイス設定情報として記憶された表示手段の表示態様を決定する情報に基づいて操作画面を表示すること」で共通する。 イ 一致点・相違点 前記「ア」の検討をふまえれば、本願発明と引用発明とは、つぎの一致点で一致し、相違点で相違するものである。 <一致点> 「画像形成装置であって、 表示手段の表示態様を決定する情報を、ユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて個人設定情報として記憶し、前記表示手段の表示態様を決定する情報を、前記個人設定情報とは独立したデバイス設定情報として記憶する記憶手段と、 前記画像形成装置にユーザをログインさせるためのログイン処理を実行する実行手段と、 前記画像形成装置にユーザがログインしたことに従って、前記画像形成装置にログインしたユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて前記記憶手段に記憶された表示手段の表示態様を決定する情報に基づいて操作画面を表示する表示手段と、 を有し、 前記実行手段は、前記画像形成装置から、前記ユーザをログアウトさせるログアウト処理を実行させ、 前記画像形成装置からユーザがログアウトしたことに従って、前記記憶手段に前記デバイス設定情報として記憶された表示手段の表示態様を決定する情報に基づいて操作画面を表示することを特徴とする画像形成装置。」 <相違点> 相違点1:本願発明において「表示手段の表示態様を決定する情報」が「画面を色反転するか否かを示す色反転情報」であるのに対して、引用発明においては「設定された初期画面」の情報である点。 相違点2:本願発明において「ユーザがログインしている状態である間は、当該ユーザを識別するためのユーザ識別情報に関連付けて前記記憶手段に記憶された色反転情報に基づいて操作画面を表示」するのに対して、引用発明は、ユーザがログインしている状態である間、ユーザに対して対応情報の初期画面として登録された初期画面」が表示されるか否かが不明である点。 ウ 相違点についての当審の判断 (ア)相違点1について 相違点1について検討する。 例えば、本願出願日前に出願公開された特開2013-131875号公報には「・・・図4は画像形成装置のユーザーがタッチパネル部201の画面色を反転表示させる際の設定画面の一例を示す。操作部0112のキー入力部202中の設定キー204を押下することで各種設定画面に遷移する。該各種設定画面中の設定項目から画面色反転設定用の項目を選択することで画面401が表示される。画面色反転設定画面401では画面色の反転を有効にするONボタン402と無効にするOFFボタン403があり、OKボタン405を押下することで設定が反映され、キャンセルボタン404を押下すると設定が破棄される。画面色反転としてはRGB反転等があるがこれに限定しない。」(段落【0023】)と記載されているように、画像形成装置の操作部の設定画面の画面色を反転表示させるか否かを設定可能とする技術は周知技術である。 引用発明における「初期画面の設定」は、個別のユーザの好みに応じて設定されるものであるところ、「操作部の設定画面の画面色を反転表示させるか否かの設定」もユーザが好みに応じて設定するものであることは、技術常識に照らせば明らかである。 してみると、引用発明において、各ユーザと全ユーザに対応して初期画面の設定に加えて、個別のユーザに好みに応じて周知技術である操作画面の画面色を反転表示させるか否かの設定を加えるようにすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項というべきである。 (イ)相違点2について a 引用発明において、「ユーザがログインしている状態である間」、当該ユーザは画像形成装置を操作するために初期画面以外の画面の表示をすると想定されるから、「ユーザーがログインしている間」常に「初期画面」の表示がされるとは限らない。 しかしながら、ユーザの好みに応じて設定されるところの「表示画面の画面色を判定表示させるか否かの設定」は、通常、当該ユーザが使用している間に表示される表示画面においても同様に表示されるよう設定されているものであることは、技術常識に照らせば当業者にとって明らかであるから、上記(ア)で検討したように、引用発明において、各ユーザと全ユーザに対応して、「初期画面の設定」に加えて、「表示画面の画面色を反転表示させるか否かの設定」を加えるようにした場合においては、「ユーザーがログインしている間」に表示される画面が初期画面から初期画面以外の画面に変わっても、画面を色反転するか否かの設定は変更されないように設計することは、当業者であれば当然採用すべき設計的事項であるというべきである。 してみると、相違点2は、引用発明に周知の周知技術である操作画面の画面色を反転表示させるか否かの色反転の設定を加えるようにすることに応じて適宜なし得る程度の設計的事項にすぎない。 b 令和2年12月8日提出の意見書における主張について 審判請求人は前記意見書において以下の主張をしている。 「すなわち、引用文献1には、ユーザがログインした直後に表示される初期画面を予め登録しておくことが開示されていますが、開示されている内容はログインしたユーザがタッチ操作等を行うと、画面の表示は切り替わるというものです。したがって、この引用文献1に記載の内容に対して、引用文献2に記載されているような「色反転情報の設定」を加えた場合、ユーザがログインした直後に表示される初期画面が色反転情報にしたがって表示されるようにすることは容易に想到し得るかもしれません。しかしながら、引用文献1に記載の内容は、上述したように、ログイン後に、当該ログインしたユーザがタッチ操作すると設定画面を切り替わるものですので、本願のように「ユーザがログインしている間は、そのユーザのユーザ識別情報に関連づけられた色反転情報に基づく操作画面の表示を継続する」ことは、引用文献1、2に開示も示唆もされておらず、引用文献1、2の発明から容易に想到できるものではないと思料致します。 したがって、特許法第29条第2項による拒絶理由は解消されているものと思料致します。」(3頁20行ないし32行。) しかしながら、前記「a」で検討したとおり、引用発明において、各ユーザと全ユーザに対応して、「初期画面の設定」に加えて、「表示画面の画面色を反転表示させるか否かを設定」することは、当業者であれば容易に想到し得る程度のことであり、引用発明において「初期画面の設定」に「表示画面の画面色を反転表示させるか否かの設定」を加えた場合、「画面を色反転するか否かの設定」は、画像形成装置を使用するユーザの好みに応じて設定されるものであるから、技術常識的にみて引用発明において「ユーザーがログインしている間」に表示される画面が初期画面から初期画面以外の画面に変わっても、画面を色反転するか否かの設定は変更されないように設計することは、当業者であれば当然採用すべき技術事項であるというべきである。 (ウ)本願発明の効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものであって格別のものではない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-04-12 |
結審通知日 | 2021-04-13 |
審決日 | 2021-04-26 |
出願番号 | 特願2014-51875(P2014-51875) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B41J)
P 1 8・ 537- WZ (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大浜 登世子 |
特許庁審判長 |
藤田 年彦 |
特許庁審判官 |
尾崎 淳史 畑井 順一 |
発明の名称 | 画像形成装置、画像形成装置の制御方法及びプログラム |
代理人 | 國分 孝悦 |