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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B
管理番号 1374683
審判番号 不服2020-4290  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-01 
確定日 2021-06-10 
事件の表示 特願2015-555877「導電性粒子,導電材料及び接続構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日国際公開,WO2016/063941〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2015年(平成27年)10月22日(優先権主張 平成26年10月22日)を国際出願日とする出願であって,令和1年8月6日付けの拒絶理由の通知に対し,同年10月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされた後,同年12月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対して令和2年4月1日に審判請求とともに手続補正がなされたものである。
その後,令和2年12月18日付けで当審から拒絶理由の通知がなされ,令和3年2月17日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされた。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は,令和3年2月17日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたとおりのものであるところ,補正された特許請求の範囲の請求項1(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「基材粒子と,銅を含む第1の導電部と,パラジウムを含む第2の導電部と,複数の芯物質とを備え,
前記基材粒子の外表面上に前記第1の導電部が配置されており,前記第1の導電部の外表面上に前記第2の導電部が配置されており,
前記第2の導電部が外表面に複数の突起を有し,
前記芯物質が,前記第2の導電部の前記突起の内側に配置されており,前記芯物質によって前記第2の導電部の外表面が隆起されており,
前記芯物質の材料がアルミナであり,
前記芯物質の平均径が150nm以上,300nm以下である,導電性粒子。」

第3 拒絶の理由
令和2年12月18日付けで当審から通知した拒絶理由は,以下の理由を含むものである。

1 本願発明は,本願の優先日前に日本国内または外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び7に記載された事項に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

2 本願発明は,本願の優先日前に日本国内または外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献7に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された事項に基いて,その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2014/054572号
引用文献2:特開2009-135086号公報
引用文献3:特開2011-204531号公報
引用文献7:国際公開第2013/094636号

第4 引用文献の記載
1 引用文献1
引用文献1には,下記の事項が記載されている(下線は当審で付加。以下同様。)。
「[0008] 上述した特許文献1?3には,導電層の外側の表面に突起を有する導電性粒子が開示されている。導電性粒子により接続される電極,及び導電性粒子の導電層の表面には,酸化被膜が形成されていることが多い。上記導電層の突起は,導電性粒子を介して電極間を圧着する際に,電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を排除して,導電層と電極とを接触させるために形成されている。」

2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には,下記の事項が記載されている。
「【請求項1】
樹脂粒子と,該樹脂粒子の表面に設けられた金属層と,を備え,
前記金属層が,前記樹脂粒子に近い順に,銅又は銅合金を含有する第1の層と,パラジウムを含有する第2の層とが積層された構造を有することを特徴とする導電粒子。」
「【0088】
図1(a)は絶縁被覆導電粒子を接着剤3に分散した異方導電性接着剤である。絶縁被覆導電粒子は導電粒子2と絶縁性子粒子1より成る。次に図1(b)に示すように第一の基板4と第二の基板6を準備し,異方導電性接着剤をその間に配置する。このとき,第一の電極5と第二の電極7が対抗するようにする。次に図3(c)に示すように第一の基板4と第二の基板6を加圧加熱しつつ積層する。ここでいう基板とは,ガラス基板やポリイミド等のテープ基板,ドライバーIC等のベアチップ,リジット型のパッケージ基板等が挙げられる。」
「【実施例】
【0090】
以下,実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが,本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0091】
(導電粒子1)
平均粒径3.8μmの架橋ポリスチレン粒子10gをパラジウム触媒であるアトテックネネオガント834(アトテックジャパン株式会社製:商品名)を8重量%含有するパラジウム触媒化液100mLに添加し,30℃で30分攪拌した後,φ3μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過し,水洗を行った。その後,樹脂微粒子をpH6.0に調整された0.5重量%ジメチルアミンボラン液に添加し,表面が活性化された樹脂微粒子を得た。
その後,蒸留水に表面が活性化された樹脂微粒子を浸漬し,超音波分散した。その後,懸濁液を50℃で攪拌しながら還元剤であるホルマリンと硫酸銅5水和物,水酸化ナトリウム,銅イオンに対する錯形成剤,を主成分とするCUST1610(日立化成工業株式会社製:商品名)を用いて,40℃の条件にてめっき液添加法により約500Åの銅めっき厚を有する導電粒子を得た。
水洗と濾過を行った後,置換パラジウムめっき液であるMCA(株式会社ワールドメタル製:商品名)25℃に導電粒子を浸漬し,約200Åのパラジウム層を形成した。
その後,置換金めっきであるHGS-100(日立化成工業株式会社製:商品名)85℃に
導電粒子を浸漬し,約200Åの金層を形成し,導電粒子1を作製した。」
「【0094】
(導電粒子4)
最外層の金めっきを行わなかったこと以外は導電粒子1と同様の方法で導電粒子4を作製した。
【0095】
(導電粒子5)
最外層の金めっきを行わなかったこと以外は導電粒子3と同様の方法で導電粒子5を作製した。」
「【0143】
実施例,比較例で作製したサンプルの詳細を表2に,上記の測定及び試験の結果を表3に,それぞれ示す。表3に示した様に,従来のニッケル/金めっき(比較例7)に比べて実施例1?10により作製したサンプルは導通抵抗が優れることが分かった。これは従来のニッケルに比べて銅の方が導電性に優れるためである。銅の厚みが300Å未満(比較例6)だと吸湿試験後の導通抵抗平均が5Ω以上になってしまうことが分かった。従って,銅めっき厚みは300Å以上が好ましいと言える。また,銅のマイグレーションストップ層であるPdを用いなかった場合,導電粒子(実施例9と比較例5の比較),絶縁被覆導電粒子(実施例1と比較例1の比較)共に吸湿により絶縁性が低下する。従って,銅を用いた場合はマイグレーションストップ層としてパラジウム層を有することで信頼性が向上する。また,従来技術の様に,マイグレーションストップ層としてニッケルを用いた場合,金の有無により差があるものの小粒子被覆率が低下して絶縁性が低下する(比較例3と比較例4)。また,パラジウム層が厚いとマイグレーション防止効果が大きい(実施例1と実施例3と比較例2の比較)。実用面からは100Å以上の厚みがあれば,十分である。導電粒子の径を比較すると(実施例1と実施例8と実施例10の比較),導電粒子径は4μm以下であることが好ましい。また,置換めっきに比べて還元型の無電解パラジウムめっき(実施例1と実施例6の比較)や還元型の無電解金めっき(実施例1と実施例7の比較)はCu/(Pd+Au)比が小さく,絶縁抵抗の低下率が少なく,より好ましい。金めっきはあった方が絶縁抵抗の低下率が少なく,より好ましい(実施例1と実施例4の比較,実施例3と実施例5の比較)。
【0144】
【表2】

【0145】
【表3】



3 引用文献3に記載された事項
引用文献3には,下記の事項が記載されている。
「【請求項1】
基材粒子と,該基材粒子の表面に設けられた銅層と,該銅層の表面に設けられたパラジウム層とを備え,
前記パラジウム層の平均厚みが5nm以上であり,かつ,
前記パラジウム層は,還元剤としてヒドラジン化合物を含むめっき液を用いて形成されたパラジウム層である,導電性粒子。」

4 引用文献7に記載された事項
引用文献7には,下記の事項が記載されている。
「[請求項1] 基材粒子と,
前記基材粒子を被覆している導電層と,
前記導電層内に埋め込まれている複数の芯物質とを備え,
前記導電層が外側の表面に複数の突起を有し,前記導電層の前記突起の内側に前記芯物質が配置されており,
前記基材粒子と前記芯物質との間に前記導電層が配置されており,前記基材粒子の表面と前記芯物質の表面とが距離を隔てており,前記基材粒子の表面と前記芯物質の表面との間の平均距離が5nmを超える,導電性粒子。」
「[請求項5] 前記導電層が,前記基材粒子を被覆している第1の導電層と,前記第1の導電層及び前記芯物質を被覆している第2の導電層とを備え,
前記芯物質は,前記第1の導電層の表面上に配置されており,かつ前記第2の導電層内に埋め込まれており,
前記第2の導電層が外側の表面に複数の突起を有し,
前記第2の導電層の前記突起の内側に前記芯物質が配置されており,
前記基材粒子と前記芯物質との間に,前記第1の導電層が配置されている,請求項1?4のいずれか1項に記載の導電性粒子。」
「[0003] 上記異方性導電材料は,ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続,及びICチップとITO電極を有する回路基板との接続等に用いられている。例えば,ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後,加熱及び加圧することにより,これらの電極を電気的に接続できる。」
「[0008] 上述した特許文献1?3には,導電層の外側の表面に突起を有する導電性粒子が開示されている。導電性粒子により接続される電極,及び導電性粒子の導電層の表面には,酸化被膜が形成されていることが多い。上記導電層の突起は,導電性粒子を介して電極間を圧着する際に,電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を排除して,導電層と電極とを接触させるために形成されている。」
「[0071] 上記芯物質,上記導電層及び上記第2の導電層に最も多く含まれる金属元素は,錫を含む合金,ニッケル,パラジウム,銅又は金であることが好ましく,ニッケル又はパラジウムであることがより好ましい。
[0072] 導電性粒子1のように,上記導電層は,1つの層により形成されていてもよい。さらに,導電性粒子11,21のように,上記導電層は複数の層により形成されていてもよい。すなわち,導電層は,単層であってもよく,2層以上の積層構造を有していてもよい。導電層が複数の層により形成されている場合には,最外層は,金層,ニッケル層,パラジウム層,銅層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく,金層又はパラジウム層であることがより好ましく,金層であることが特に好ましい。最外層がこれらの好ましい導電層である場合には,電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また,最外層が金層である場合には,耐腐食性がより一層高くなる。」
「[0080] [芯物質]
上記芯物質が上記導電層中に埋め込まれていることによって,上記導電層が外側の表面に複数の突起を有する。
[0081] 上記突起を形成する方法としては,基材粒子の表面上に第1の導電層を形成した後,該第1の導電層上に芯物質を配置し,次に第2の導電層を形成する方法,及び基材粒子の表面上に導電層を形成する途中段階で,芯物質を添加する方法等が挙げられる。
[0082] 上記芯物質を構成する物質としては,導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては,例えば,金属,金属の酸化物,黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては,ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては,シリカ,アルミナ,チタン酸バリウム及びジルコニア等が挙げられる。なかでも,導電性を高めることができ,更に接続抵抗を効果的に低くすることができるので,金属が好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。」
「[0085] 上記芯物質の平均径(平均粒子径)は,好ましくは0.001μm以上,より好ましくは0.05μm以上,好ましくは0.9μm以下,より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が上記下限以上及び上記上限以下であると,電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。」
「[0119] (実施例1)
(1)パラジウム付着工程
粒子径が5.0μmであるジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP-205」)を用意した。この樹脂粒子をエッチングし,水洗した。次に,パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に樹脂粒子を添加し,攪拌した。その後,ろ過し,洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に樹脂粒子を添加し,パラジウムが付着された樹脂粒子を得た。
[0120] (2)無電解ニッケルめっき工程
ニッケル-リン導電層を形成するために,硫酸ニッケル0.25mol/L,次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L,クエン酸ナトリウム0.15mol/L及びモリブデン酸ナトリウム0.01mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.0)を用意した。
[0121] 純水1000mL中に得られたパラジウムが付着された樹脂粒子を添加して,超音波分散器にて分散することにより,懸濁液を得た。得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら,上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し,無電解ニッケルめっきを行った。その後,懸濁液をろ過することにより,粒子を取り出し,水洗し,乾燥することにより,ニッケル-リン層(ニッケル-モリブデン-リン層(Ni-Mo-P層)である第1の導電層(厚み5.2nm)で樹脂粒子を被覆して,第1の導電層が形成された粒子を得た。
[0122] (3)芯物質付着工程及び無電解ニッケルめっき工程
アルミナ(Al_(2)O_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)を用意した。第1の導電層が形成された粒子と金属粒子スラリーとを用いて被覆した。
[0123] ニッケル-リン導電層を形成するために,硫酸ニッケル0.25mol/L,次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L,クエン酸ナトリウム0.15mol/L及びモリブデン酸ナトリウム0.01mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.0)を用意した。
[0124] 得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら,上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し,無電解ニッケルめっきを行い,厚み90nmの第2の導電層(ニッケル-モリブデン-リン層(Ni-Mo-P層)を形成した。その後,懸濁液をろ過することにより,粒子を取り出し,水洗し,乾燥することにより,導電性粒子を得た。得られた導電性粒子は,第2の導電層の外側の表面に突起を有し,第2の導電層の突起の内側に芯物質が配置されていた。また,樹脂粒子と芯物質との間に,第1の導電層が配置されていた。」
「[00127] (実施例4?8)
ニッケル-リン層である第1の導電層の厚みを下記に示す値に変更したこと以外は実施例1と同様にして,導電性粒子を得た。
[0128] 第1の導電層の厚み:
実施例4:10μm
実施例5:20μm
実施例6:100μm
実施例7:750μm
実施例8:860μm」
「[0138] (実施例11)
(1)パラジウム付着工程
実施例1で得られたパラジウムが付着された樹脂粒子を用意した。
[0139] (2)無電解ニッケルめっき工程
硫酸ニッケル0.23mol/L,ジメチルアミンボラン0.92mol/L,クエン酸ナトリウム0.5mol/L及びタングステン酸ナトリウム0.01mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
[0140] 純水1000mL中に得られたパラジウムが付着された樹脂粒子を添加して,超音波分散器にて分散することにより,懸濁液を得た。得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら,上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し,無電解ニッケルめっきを行った。その後,懸濁液をろ過することにより,粒子を取り出し,水洗し,乾燥することにより,ニッケル-タングステン-ボロン層である第1の導電層(厚み5.1nm)で樹脂粒子を被覆して,第1の導電層が形成された粒子を得た。
[0141] (3)芯物質付着工程及び無電解ニッケルめっき工程
アルミナ(Al_(2)O_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)を用意した。第1の導電層が形成された粒子と金属粒子スラリーとを用いて被覆した。
[0142] 硫酸ニッケル0.23mol/L,ジメチルアミンボラン0.92mol/L,クエン酸ナトリウム0.5mol/L及びタングステン酸ナトリウム0.01mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
[0143] 得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら,上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し,無電解ニッケルめっきを行い,厚み90nmの第2の導電層を形成した。その後,懸濁液をろ過することにより,粒子を取り出し,水洗し,乾燥することにより,導電性粒子を得た。得られた導電性粒子は,第2の導電層の外側の表面に突起を有し,第2の導電層の突起の内側に芯物質が配置されていた。また,樹脂粒子と芯物質との間に,第1の導電層が配置されていた。」
「[0145] (実施例13)
ニッケル-タングステン-ボロン層である第1の導電層の厚みを20nmに変更したこと以外は実施例11と同様にして,導電性粒子を得た。」
「[0152] (実施例15)
(1)パラジウム付着工程
実施例1で得られたパラジウムが付着された樹脂粒子を用意した。
[0153] (2)無電解ニッケルめっき工程
硫酸ニッケル0.23mol/L,ジメチルアミンボラン0.92mol/L,クエン酸ナトリウム0.5mol/L及びタングステン酸ナトリウム0.01mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
[0154] 純水1000mL中に得られたパラジウムが付着された樹脂粒子を添加して,超音波分散器にて分散することにより,懸濁液を得た。得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら,上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し,無電解ニッケルめっきを行った。その後,懸濁液をろ過することにより,粒子を取り出し,水洗し,乾燥することにより,ニッケル-タングステン-ボロン層である厚み10nmの第1の導電層で樹脂粒子を被覆して,第1の導電層が形成された粒子を得た。
[0155] (3)芯物質付着工程及び無電解ニッケルめっき工程
チタン酸バリウム(BaTiO_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)を用意した。第1の導電層が形成された粒子と金属粒子スラリーとを用いて,第1の導電層の表面を金属粒子で被覆し,懸濁液を得た。
[0156] 硫酸ニッケル0.23mol/L,ジメチルアミンボラン0.92mol/L及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH7.0)を用意した。
[0157] 得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら,上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し,無電解ニッケルめっきを行い,厚み90nmの第2の導電層を形成した。その後,懸濁液をろ過することにより,粒子を取り出し,水洗し,乾燥することにより,導電性粒子を得た。得られた導電性粒子は,第2の導電層の外側の表面に突起を有し,第2の導電層の突起の内側に芯物質が配置されていた。また,樹脂粒子と芯物質との間に,第1の導電層が配置されていた。」
「[0160] (実施例18)
チタン酸バリウム(BaTiO_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)をアルミナ(Al_(2)O_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)に変更したこと以外は実施例15と同様にして,導電性粒子を得た。
[0161] (実施例19)
チタン酸バリウム(BaTiO_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)をアルミナ(Al_(2)O_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)に変更したこと以外は実施例16と同様にして,導電性粒子を得た。
[0162] (実施例20)
チタン酸バリウム(BaTiO_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)をアルミナ(Al_(2)O_(3))粒子スラリー(平均粒子径100nm)に変更したこと以外は実施例17と同様にして,導電性粒子を得た。」

第5 当審の判断
1 引用文献2に記載された発明を主引用発明とする場合
(1)引用発明2
引用文献2には,特に【請求項1】から,次のとおりの発明が記載されていると認める(以下,「引用発明2」という。)。

「樹脂粒子と,該樹脂粒子の表面に設けられた金属層と,を備え,前記金属層が,前記樹脂粒子に近い順に,銅又は銅合金を含有する第1の層と,パラジウムを含有する第2の層とが積層された構造を有する,導電粒子。」

(2)対比・判断
本願発明と引用発明2を対比する。
引用発明2の「樹脂粒子」,「第1の層」,「第2の層」及び「導電粒子」は,本願発明の「基材粒子」,「第1の導電部」,「第2の導電部」及び「導電性粒子」にそれぞれ相当する。
引用発明2の「粒子に近い順に,銅又は銅合金を含有する第1の層と,パラジウムを含有する第2の層とが積層された構造」は,本願発明の「前記基材粒子の外表面上に前記第1の導電部が配置されており,前記第1の導電部の外表面上に前記第2の導電部が配置されている」構造に相当する。

したがって,本願発明と引用発明2は以下の点で一致する。
「基材粒子と,銅を含む第1の導電部と,パラジウムを含む第2の導電部と,を備え,前記基材粒子の外表面上に前記第1の導電部が配置されており,前記第1の導電部の外表面上に前記第2の導電部が配置されている,導電性粒子。」

そして,本願発明と引用発明2は以下の点で相違する。
本願発明は,「複数の芯物質」を備え,「第2の導電部が外表面に複数の突起を有し,前記芯物質が,前記第2の導電部の前記突起の内側に配置されており,前記芯物質によって前記第2の導電部の外表面が隆起されており,前記芯物質の材料がアルミナであり,前記芯物質の平均径が150nm以上,300nm以下である」と特定されるのに対し,引用発明2はこのような特定がない点(以下,「相違点1」という。)。

上記相違点1について検討する。
加熱及び加圧して電極間を接続するための導電性粒子において,粒子表面の導電層の内側に芯物質を配置することで,導電層の外表面に複数の突起を有するものとし,これによって電極間の接続の際に電極及び導電性粒子の酸化皮膜を排除し,接続抵抗を低減させることは周知の技術事項である(必要ならば引用文献1の[0008],引用文献7の[0003],[0008]を参照。)。また,この芯物質にアルミナを用いること(引用文献7の[0082]及び実施例1,4ないし14及び18ないし20),電極間の接続抵抗を効果的に低くするために芯物質の平均径をより好ましくは0.05μm以上0.2μm以下のレベルで適宜調整することもまた周知の技術事項である(引用文献7の[0085])。
そして,引用発明2の導電粒子は,電極間を加熱加圧することにより導電接続を図るものであって(引用文献2の【0088】を参照。),その際に電極間の接続抵抗を低くすることは当然の課題であり,引用発明2の導電性粒子において,電極の状態を勘案した上で,引用文献1,7に示されるような周知技術を適用し,0.05μm以上0.2μm以下のうち,適切な数値範囲,例えば0.15μm以上0.2μm以下となる,相違点1に係る本願発明の特定事項を満たすものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,本願明細書全体を通じてみても,相違点1に係る本願発明の特定事項を採用したことにより,当業者が予測し得ない効果が奏されるものであるともいえない。
よって,本願発明は,引用発明2,すなわち引用文献2に記載された発明及び引用文献1及び7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明7に記載された発明を主引用発明とする場合
(1)引用発明7
引用文献7には,特に[請求項1],[請求項5]及び実施例1,4ないし14及び18ないし20の記載から,次のとおりの発明が記載されていると認める(以下,「引用発明7」という。)。

「基材粒子と,
前記基材粒子を被覆している導電層と,
前記導電層内に埋め込まれている複数の芯物質とを備え,
前記導電層が外側の表面に複数の突起を有し,前記導電層の前記突起の内側に前記芯物質が配置されており,
前記基材粒子と前記芯物質との間に前記導電層が配置されており,前記基材粒子の表面と前記芯物質の表面とが距離を隔てており,前記基材粒子の表面と前記芯物質の表面との間の平均距離が5nmを超える,導電性粒子であって,
前記導電層が,前記基材粒子を被覆している厚み20または100nmの第1の導電層と,前記第1の導電層及び前記芯物質を被覆している第2の導電層とを備え,
前記芯物質は,前記第1の導電層の表面上に配置されており,かつ前記第2の導電層内に埋め込まれており,
前記第2の導電層が外側の表面に複数の突起を有し,
前記第2の導電層の前記突起の内側に前記芯物質が配置されており,
前記基材粒子と前記芯物質との間に,前記第1の導電層が配置されている,導電性粒子であって,
前記芯物質の材料がアルミナであり,芯物質の平均粒子径が100nmである,導電性粒子。」

(2)対比・判断
本願発明と引用発明7を対比する。
引用発明7の「第1の導電層」及び「第2の導電層」は,本願発明の「第1の導電部」及び「第2の導電部」にそれぞれ相当する。
引用発明7の「前記導電層が外側の表面に複数の突起を有し,前記導電層の前記突起の内側に前記芯物質が配置されており」,「前記基材粒子と前記芯物質との間に前記導電層が配置されており」,「前記導電層が,前記基材粒子を被覆している」「第1の導電層と,前記第1の導電層及び前記芯物質を被覆している第2の導電層とを備え」,「前記芯物質は,前記第1の導電層の表面上に配置されており,かつ前記第2の導電層内に埋め込まれており」,「前記第2の導電層が外側の表面に複数の突起を有し」,「前記第2の導電層の前記突起の内側に前記芯物質が配置されており」,「前記基材粒子と前記芯物質との間に,前記第1の導電層が配置されている」なる構成は,本願発明の「基材粒子の外表面上に」「第1の導電部が配置されており,前記第1の導電部の外表面上に」「第2の導電部が配置されており,前記第2の導電部が外表面に複数の突起を有し」,「芯物質が,前記第2の導電部の前記内側に配置されており,前記芯物質によって前記第2の導電部の外表面が隆起されている」構成をみたす。

したがって,本願発明と引用発明7は以下の点で一致する。
「基材粒子と,第1の導電部と,第2の導電部と,複数の芯物質とを備え,
前記基材粒子の外表面上に前記第1の導電部が配置されており,前記第1の導電部の外表面上に前記第2の導電部が配置されており,
前記第2の導電部が外表面に複数の突起を有し,
前記芯物質が,前記第2の導電部の前記内側に配置されており,前記芯物質によって前記第2の導電部の外表面が隆起されている,導電性粒子。」

一方,本願発明と引用発明7は以下の点で相違する。
・本願発明は,導電部について「銅を含む第1の導電部」,「パラジウムを含む第2の導電部」と特定するのに対し,引用発明7は,このような特定がない点(以下,「相違点2」という。)。
・本願発明は,アルミナの平均径について,「150nm以上,300nm以下」と特定するのに対し,引用発明7はこのように特定しない点(以下,「相違点3」という。)。

上記相違点2について検討する。
引用文献7には,電極間を接続して接続構造体を得るのに用いられる導電性粒子の導電層について「錫を含む合金,ニッケル,パラジウム,銅又は金であることが好ましい」こと([0071]),「導電層が複数の層により形成されている場合には,最外層は,金層,ニッケル層,パラジウム層,導層又は錫と銀とを含む合金層であることが好ましく,金層又はパラジウム層であることがより好まし」いこと([0072])が記載されている。また,導電接続に用いられる導電性粒子について,内側層を銅の層とし,外側層をパラジウムの層とすることは,引用文献2ないし3に記載があるように周知の技術事項であり(引用文献2の【請求項1】,引用文献3の【請求項1】),さらに,引用文献2には,実施例と比較例の対比において,銅及びパラジウムの組み合わせがより優れていることも記載されている(【0143】ないし【0145】)。
してみると,引用発明7の導電性粒子において,導電層の内側層を銅及び外側層をパラジウムとする組み合わせを採用することは当業者が容易に想到し得たことである。

上記相違点3について検討する。
引用文献7の[0082]では,芯物質の平均径について,電極間の接続抵抗を効果的に低くするために芯物質の平均径の下限をより好ましくは0.05μm以上,上限をより好ましくは0.2μm以下とすることも記載されている。
そして,引用発明7において,電極間の接続抵抗を低くすることは当然の課題であるから,引用発明7の導電性粒子において,接続抵抗を低くするために前記芯物質の平均径を電極の状態を勘案した上で調整し,0.05μm以上0.2μm以下のうち,適切な数値範囲,例えば0.15μm以上0.2μm以下となる,相違点3に係る本願発明の特定事項を満たすものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願明細書全体を通じてみても,相違点2及び3に係る本願発明の特定事項を採用したことにより,当業者が予測し得ない効果が奏されるものであるともいえない。

よって,本願発明に係る発明は,引用文献7に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 審判請求人の意見書における主張について
審判請求人は,令和3年2月17日提出の意見書において,おおむね下記の点を主張している。
・本願発明のアルミナ粒子が「150nm?300nm」となる範囲は,本願明細書の段落[0129],[0130]の表1,2に記載の実施例1,4-6,10,11,14-19及び参考例2,3,7-9,12,13と比較例1との対比より,「接続抵抗が効果的に低くなり,導電部の腐食がより一層生じ難くなる。」という効果がより奏されるものである。
・引用文献7には,[0085]に,「上記芯物質の平均径(平均粒子径)は,好ましくは0.001μm以上,より好ましくは0.05μm以上,好ましくは0.9μm以下,より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が上記下限以上及び上記上限以下であると,電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。」と記載されているが,その範囲はかなり広範囲なものであり,さらに引用文献7の実施例では,平均径が100nmである芯物質しか用いられておらず,「150nm?300nm」という範囲とすることは,引用文献7の記載から当業者が容易に想到し得るものではない。

上記主張について検討する。
芯物質の平均径によって接続抵抗が変わることは引用文献7の[0085]に記載されている事項であり,また,芯物質による突起によって電極及び導電性粒子の表面の酸化皮膜を排除することからすれば,用いられる部材の状態に応じて,芯物質の径や突起の高さを調整することは,当業者にとって当然のことといえる。
してみると,引用発明7において,導電接続を図る部材に応じて,芯物質の粒径や突起の高さを適宜調整し,本願発明の特定事項を満たすものとすることは,当業者にとって何ら困難なことではない。
したがって,審判請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-03-26 
結審通知日 2021-03-30 
審決日 2021-04-16 
出願番号 特願2015-555877(P2015-555877)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土谷 慎吾  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 植前 充司
神田 和輝
発明の名称 導電性粒子、導電材料及び接続構造体  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  
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