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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01R 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R |
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管理番号 | 1374700 |
審判番号 | 不服2020-8598 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-06-22 |
確定日 | 2021-06-10 |
事件の表示 | 特願2018- 76162「電気的接触子及び電気的接続装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月26日出願公開、特開2018-116066〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年10月22日に出願された特願2014-215311号の一部を平成30年4月11日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。 平成31年 1月29日付け:拒絶理由通知書 平成31年 4月 4日 :意見書、手続補正書の提出 令和 元年 8月 9日付け:拒絶理由通知書(最後) 令和 元年10月11日 :意見書 令和 2年 3月24日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 2年 3月31日 :原査定の謄本の送達 令和 2年 6月22日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年6月22日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲及び明細書についての補正である。本件補正前(平成31年4月4日に提出された手続補正書による補正の後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次のとおりである(下線は補正箇所を示す。)。 (1)本件補正前 「【請求項1】 第1接触対象及び第2接触対象間を電気的に接触する電気的接触子において、 スプリング機能を発揮する2個のスプリング部が、スプリング機能を発揮し得ない非スプリング部を介して併設されているバレルと、 少なくとも一部が上記バレルの一端から挿入されている、上記第1接触対象に電気的に接触する第1のプランジャーと、 少なくとも一部が上記バレルの他端から挿入されて上記バレルの他端開口を閉塞すると共に、上記第2接触対象に電気的に接触する第2のプランジャーと を有し、 上記第1のプランジャーにおける上記バレル内の端部と、上記第2のプランジャーにおける上記バレル内の端部とが、同一の非スプリング部の内部空間に位置している ことを特徴とする電気的接触子。」 (2)本件補正後 「【請求項1】 第1接触対象及び第2接触対象間を電気的に接触する電気的接触子において、 スプリング機能を発揮する2個のスプリング部が、スプリング機能を発揮し得ない非スプリング部を介して併設されているバレルと、 少なくとも一部が上記バレルの一端から挿入されている、上記第1接触対象に電気的に接触する第1のプランジャーと、 少なくとも一部が上記バレルの他端から挿入されて上記バレルの他端開口を閉塞すると共に、上記第2接触対象に電気的に接触する第2のプランジャーと を有し、 上記バレルの長手方向に沿って配置された上記第1のプランジャーにおける上記バレル内の端部と、上記バレルの長手方向に沿って配置された上記第2のプランジャーにおける上記バレル内の端部とが、上記2個のスプリング部の間にある同一の上記非スプリング部の内部空間で隙間があるように位置している ことを特徴とする電気的接触子。」 2 本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した事項である「第1のプランジャー」及び「第2のプランジャー」について、それぞれ「上記バレルの長手方向に沿って配置された」との記載を追加して、その態様を限定するとともに、「同一の非スプリング部の内部空間に位置している」と記載されていた「上記第1のプランジャーにおける上記バレル内の端部」と「上記第2のプランジャーにおける上記バレル内の端部」の位置関係について、「上記2個のスプリング部の間にある同一の上記非スプリング部の内部空間で隙間があるように位置している」との記載にすることで、その態様を限定するものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討を行う。 3 独立特許要件についての判断 (1)本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)引用文献 以下に示す引用文献1及び3は、いずれも、原査定の拒絶の理由に引用された文献であり、発行日は本願の出願日より前である。 引用文献1:特開2010-281583号公報 引用文献3:特開2006-208329号公報 (3)引用文献に記載された発明等 ア 引用文献1 (ア)引用文献1には、以下の記載がある。下線は当合議体が付した。 「【0044】 [プローブの構造] 図2(A)から図2(D)は、図1の検査用治具に用いることができるプローブのいくつかの実施形態を示す。 【0045】 図2(A)は、図1の検査用治具に用いることができる一実施形態に係るプローブ22を示す。プローブ22は、導電性の円筒状部材から構成されている。例えば、そのプローブとして、外径が、約25から300μmで、内径17が10から250μmのニッケル合金のチューブを用いてもよい。この実施形態では、各プローブの一例として、外径が、約50μm、内径が約30μm、長さが約20mmのニッケル合金のチューブを用いるが、それに限定されるものではない。なお、必要に応じて、プローブの先端部22f及び後端部22rの端面を除いて周面は絶縁被覆してもよい。 【0046】 プローブ22は、円筒形状の先端部22f、中間部22m及び後端部22rを備える。先端部22fは、図1に示すような被検査物50の所定の検査点50dnに接触し、中間部22mは、図1に示すような検査用治具10の保持部14によって保持され、後端部22rは、図1に示すような電極部18と電気的接続を図るように機能する。 【0047】 また、プローブ22は、さらに、先端部22fと中間部22mとの間に、伸縮自在な弾性部22s-1を備え、また、中間部22mと後端部22rとの間に、伸縮自在な弾性部22s-2を備える。弾性部22s-1及び22s-2は、プローブ22の円筒状部材の一部を例えばレーザを用いてらせん状に取り除くことによって、先端部22f、中間部22m及び後端部22rと一体的に形成することができる。 【0048】 図2(A)に示すように、プローブ22の先端部22f及び後端部22rのそれぞれの端面22fe,22reは、平坦に形成されている。」 「【0052】 図2(C)は、図1の検査用治具に用いることができる他の実施形態に係るプローブ26を示す。プローブ26は、図2(A)のプローブ22に、導電性の部材から形成された円柱状の先端ピン30f及び後端ピン30rが組み込まれて構成されている。 【0053】 具体的には、先端部22f及び後端部22rには、それぞれ、先端ピン30f及び後端ピン30rが挿入されており、それらのピンは、例えば先端部22f及び後端部22rの位置Pcを、例えばかしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されている。 【0054】 先端ピン30fは先鋭形状の先端部30feを有しており、その先端部30feは被検査物50の所定の検査点50dn(図1)に接触する。また、後端ピン30rは後端部30reを有しており、その後端部30reは、電極部18と電気的接続を図ることができる。 【0055】 図2(D)は、図1の検査用治具に用いることができる他の実施形態に係るプローブ28を示す。プローブ28も、図2(A)のプローブ22を用いる。具体的には、図2(C)のプローブ26と同様に、先端部22f及び後端部22rには、それぞれ、先端ピン32f及び後端ピン32rが挿入されており、それらのピンは、例えば先端部22f及び後端部22rの位置Pdを、例えばかしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されている。 【0056】 ただし、先端ピン32f及び後端ピン32rの対向する端部からは、それぞれ、ガイド部材35が延出されている。2つのガイド部材35は、それぞれ、弾性部22s-1及び22s-2に挿通されていて、それらが収縮する際に、それらを直線上に保持するガイド又は芯材として機能して、プローブ28が弾性部において曲がるのを防止することができる。」 「図2(C) 」 「図2(D) 」 【0054】、【0055】、図2(C)及び図2(D)より、図2(C)のプローブ26の先端ピン30f及び後端ピン30rと図2(D)のプローブ28の先端ピン32f及び後端ピン32rは、同一の先鋭形状を有し、同一の電気的接続機能を有することが読み取れる。 (イ)引用文献1の前記(ア)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「検査用治具に用いることができるプローブ28であって(【0055】)、 前記プローブ28は、プローブ22の先端部22f及び後端部22rに、それぞれ先端ピン32f及び後端ピン32rが挿入されたものであり(【0055】)、 前記プローブ22は、円筒形状の前記先端部22f、中間部22m及び前記後端部22rを備え、さらに、前記先端部22fと前記中間部22mとの間に、伸縮自在な弾性部22s-1を備え、また、前記中間部22mと前記後端部22rとの間に、伸縮自在な弾性部22s-2を備え(【0046】、【0047】)、 前記先端ピン32f及び前記後端ピン32rは、前記先端部22f及び前記後端部22rの位置Pdを、かしめや抵抗溶接やレーザ溶接することによって固定されており(【0055】)、 前記先端ピン32fは先鋭形状の先端部32feを有しており、その先端部32feは被検査物50の所定の検査点50dnに接触し、また、前記後端ピン32rは後端部32reを有しており、その後端部32reは、電極部18と電気的接続を図ることができ(【0054】、【0055】、図2(c)、図2(D))、 前記先端ピン32f及び前記後端ピン32rの対向する端部からは、それぞれ、ガイド部材35が延出されており、2つの前記ガイド部材35は、それぞれ、前記弾性部22s-1及び22s-2に挿通されていて、それらが収縮する際に、それらを直線上に保持するガイド又は芯材として機能して、前記プローブ28が弾性部において曲がるのを防止することができる(【0056】)、 プローブ28。」 イ 引用文献3 (ア)引用文献3には、以下の記載がある。下線は当合議体が付した。 「【0024】 本発明の第1の実施の形態に係る垂直型コイルスプリングプローブAは、測定対象物である半導体集積回路800の導電パッド810に接触する下側プローブピン200と、この下側プローブピン200の上端の接続部230に接続されるガイド管300と、プローブカード900の導電パターン910に接続される上側プローブピン100と、この上側プローブピン100のガイド軸部130が挿入される圧縮コイルスプリング400とを備えており、前記圧縮コイルスプリング400に挿入されたガイド軸部130の先端が前記ガイド管300に挿入されている。 【0025】 前記上側プローブピン100は、例えばタングステン等の導電性を有する素材から構成されている。かかる上側プローブピン100は、図2等に示すように、3つの部分が軸芯方向に一列に並んだ形状に形成されている。すなわち、この上側プローブピン100は、プローブカードを構成する中間基板600の導電パターン610に接触する上側プローブピン接続部110と、この上側プローブピン接続部110に続き、上側プローブピン接続部110より太く設定された上側プローブピン鍔部120と、この上側プローブピン鍔部120に続き、上側プローブピン鍔部120より細く設定されたガイド軸部130とを有している。 【0026】 前記上側プローブピン接続部110に続き、上側プローブピン100の中間部分に相当する上側プローブピン鍔部120は、円柱形状に形成されている。しかも、この上側プローブピン鍔部120は、前記上側プローブピン接続部110より太くかつ後述する圧縮コイルスプリング400の内径より太く、かつ圧縮コイルスプリング400の外径と同一径に設定されている。従って、この上側プローブピン鍔部120は、圧縮コイルスプリング400の内側には入り込まないようになっている。 【0027】 前記上側プローブピン鍔部120に続くガイド軸部130は、前記上側プローブピン鍔部120より細くかつ後述する圧縮コイルスプリング400の内径より細く設定されている。従って、このガイド軸部130は、圧縮コイルスプリング400の内側に挿入されることになる。また、このガイド軸部130は、自由長、すなわち外力が加えられていない状態の圧縮コイルスプリング400より長く設定されている。従って、このガイド軸部130が圧縮コイルスプリング400に挿入されると、ガイド軸部130の先端は、圧縮コイルスプリング400から突出することになる。 【0028】 一方、前記下側プローブピン200は、例えばタングステン等の導電性を有する素材から構成されている。かかる下側プローブピン200は、図2等に示すように、3つの部分が軸芯方向に一列に並んだ形状に形成されている。すなわち、この下側プローブピン200は、半導体集積回路800の導電パッド810に接触すべく先端が先鋭化された下側プローブピン接触部210と、この下側プローブピン接続部210に続き、下側プローブピン接触部210より太い下側プローブピン鍔部220と、この下側プローブピン鍔部220に続き、下側プローブピン鍔部120より細い接続部230とを有している。 【0029】 下側プローブピン200の下側プローブピン接触部210は、先端が先鋭化されており、それに円柱形が続いた形状に設定されている。なお、図1や図2等においては、下側プローブピン接触部210は、先端が先鋭化されたものを示しているが、被測定対象物である半導体集積回路や発光ダイオードチップ等の導電パッドの形状に応じて種々選択できるものである。 【0030】 下側プローブピン接触部210の形状としては、例えば、先端がアール状に丸くなったもの、先端に4つの突起が形成されたもの、先端がコーン状に先鋭化されたもの、先端に3つの突起が形成されたもの、先端に3つの突起が密接して形成されたもの、先端が三角錐状に形成されたもの、先端が半球状に丸くなったもの、先端が凹んでカップ状になったもの、先端がフラットになったものなどが存在する。 【0031】 前記下側プローブピン接触部210に続く下側プローブピン鍔部220は、後述するガイド管300の内径より太く、かつガイド管300の外径と同一径に設定されている。 【0032】 また、前記下側プローブピン鍔部220に続く接続部230は、前記下側プローブピン接触部210と同一径で、かつガイド管300の内径より若干小さく設定されている。このため、接続部230には、ガイド管300が嵌まり込む状態で接続されることができる。 【0033】 一方、前記圧縮コイルスプリング400は、直径が45μmの線材を巻回して構成したものである。この圧縮コイルスプリング400は、例えばバネ性ステンレス、スプリング用ピアノ線、アモルファス合金等の導電性を有する線材を巻回することから構成されている。かかる圧縮コイルスプリング400の外径は200μm、内径は110μmに設定されている。 【0034】 かかる圧縮コイルスプリング400の自由長は、前記ガイド軸部130より短く設定されている。 【0035】 また、前記ガイド管300は、例えばステンレス等の導電性を有する素材から構成されている。このガイド管300は、前記接続部230において下側プローブピン200と連結されるものである。かかるガイド管300の長さは、垂直型コイルスプリングプローブAとした場合に、外力が加えられていない状態での前記上側プローブピン100のガイド軸部130と下側プローブピン200の接続部230との間にオーバードライブ量(OD量)より大きな距離があるように設定されている。」 「【0043】 このように構成されたプローブカードで半導体集積回路800の電気的諸特性を測定する際には、下側プローブピン200の下側プローブピン接触部210を半導体集積回路800の導電パッド810に接触させ、オーバードライブ(OD)を加える(図3(B)参照)。この垂直型コイルスプリングプローブAを構成するガイド管300は、長さが、外力が加えられていない状態での前記上側プローブピン100のガイド軸部130と下側プローブピン200の接続部230との間にオーバードライブ量より大きな距離があるように設定されているので、図3(B)に示すように、オーバードライブを加えても、上側プローブピン100と下側プローブピン200とが接触することはない。 【0044】 しかも、圧縮コイルスプリング400の内側には、上側プローブピン100のガイド軸部130が挿入されているため、オーバードライブによって、圧縮タイルスプリング400が従来のもののように、歪んで外側に変位することがない。このため、隣接する垂直型コイルスプリングプローブAの間の距離を小さくしても、オーバードライブを加えた時に隣接する垂直型コイルスプリングプローブA同士が接触することがない。 【0045】 上述した垂直型コイルスプリングプローブAの変形例として、本発明の第2の実施の形態に係る垂直型コイルスプリングプローブBについて図5?図8を参照しつつ説明する。 この垂直型コイルスプリングプローブBは、構成部品のうち、上側プローブピン100及び下側プローブピン200は、上述した垂直型コイルスプリングプローブAと同一のものを使用している。 この垂直型コイルスプリングプローブBが垂直型コイルスプリングプローブAと相違する点は、圧縮コイルスプリング400Bの形状と、圧縮コイルスプリング400Bとガイド管300Bとが一体形成されている点である。 【0046】 ガイド管300B自体が、下側プローブピン200の接続部230に接続される点は、上述した垂直型コイルスプリングプローブAと同一である。しかし、このガイド管300Bの上端から圧縮コイルスプリング400Bが連設されている。すなわち、縦長の帯状の金属製板材の上端から斜め上側に向かって細長い帯状部材が連設されたものを筒状に丸めることによって圧縮コイルスプリング400Bと一体になったガイド管300Bを構成することができる。」 「【図5】 」 (イ)引用文献3に記載されているように、以下の2つの技術は周知技術である。 <周知技術1> 「圧縮コイルスプリングとガイド管が一体形成された垂直型コイルスプリングプローブにおいて、下側プローブピンの下側プローブピン鍔部をガイド管の内径より太く設定し、前記下側プローブピン鍔部に続く接続部にガイド管が嵌まり込むように設定すること(【0031】、【0032】、【0045】、【図5】)。」 <周知技術2> 「圧縮コイルスプリングとガイド管が一体形成された垂直型コイルスプリングプローブにおいて、上側プローブピンのガイド軸部を圧縮コイルスプリングの自由長より長く設定し、圧縮コイルスプリングの内側にガイド軸部が挿入されているようにすることで、圧縮コイルスプリングが歪んで外側に変位することがないようにすること(【0027】、【0044】、【0045】、【図5】)。」 (4)対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「電極部18」、「検査点50dn」及び「プローブ28」は、それぞれ、本願発明の「第1接触対象」、「第2接触対象」及び「電気的接触子」に相当する。そして、引用発明の「プローブ28」は、「電極部18」及び「検査点50dn」の双方に接触して電気的接続を図るものである。 よって、本件補正発明と引用発明は、「第1接触対象及び第2接触対象間を電気的に接触する電気的接触子」である点で一致する。 イ 引用発明の「弾性部22s-1」及び「弾性部22s-2」は、本願発明の「スプリング機能を発揮する2個のスプリング部」に相当し、引用発明の「中間部22m」は、本願発明の「スプリング機能を発揮し得ない非スプリング部」に相当する。そして、引用発明の「プローブ22」は、「弾性部22s-1」、「中間部22m」及び「弾性部22s-2」をこの順で備えるものであるから、本願発明の「バレル」に相当する。 よって、本件補正発明と引用発明は、「スプリング機能を発揮する2個のスプリング部が、スプリング機能を発揮し得ない非スプリング部を介して併設されているバレル」を備える点で一致する。 ウ 引用発明の「後端ピン32r」は、本願発明の「第1のプランジャー」に相当する。そして、引用発明の「後端ピン32r」は、「プローブ22」の「後端部22r」に挿入されたものであり、かつ、「電極部18」と電気的接続を図るものである。 よって、本件補正発明と引用発明は、「少なくとも一部が上記バレルの一端から挿入されている、上記第1接触対象に電気的に接触する第1のプランジャー」を備える点で一致する。 エ 引用発明の「先端ピン32f」は、本願発明の「第2のプランジャー」に相当する。そして、引用発明の「先端ピン32f」は、「プローブ22」の「先端部22f」に挿入されたものであり、かつ、「検査点50dn」と接触するものである。 よって、本件補正発明の「少なくとも一部が上記バレルの他端から挿入されて上記バレルの他端開口を閉塞すると共に、上記第2接触対象に電気的に接触する第2のプランジャー」と、引用発明の「先端ピン32f」は、「少なくとも一部が上記バレルの他端から挿入されている、上記第2接触対象に電気的に接触する第2のプランジャー」である点で共通する。 (5)一致点及び相違点 前記(4)の対比の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 ア 一致点 「第1接触対象及び第2接触対象間を電気的に接触する電気的接触子において、 スプリング機能を発揮する2個のスプリング部が、スプリング機能を発揮し得ない非スプリング部を介して併設されているバレルと、 少なくとも一部が上記バレルの一端から挿入されている、上記第1接触対象に電気的に接触する第1のプランジャーと、 少なくとも一部が上記バレルの他端から挿入されている、上記第2接触対象に電気的に接触する第2のプランジャーと、 を有する電気的接触子。」 イ 相違点 (ア)一応の相違点1 本件補正発明は、「第2のプランジャー」が「バレルの他端開口を閉塞」するものであるのに対して、引用発明は、「先端ピン32f」が「プローブ22」の「先端部22f」の開口を閉塞するものであるか不明である点。 (イ)相違点2 本件補正発明は、「上記バレルの長手方向に沿って配置された上記第1のプランジャーにおける上記バレル内の端部と、上記バレルの長手方向に沿って配置された上記第2のプランジャーにおける上記バレル内の端部とが、上記2個のスプリング部の間にある同一の上記非スプリング部の内部空間で隙間があるように位置している」ものであるのに対して、引用発明は、「先端ピン32f」及び「後端ピン32r」の対向する端部から、それぞれ、「ガイド部材35」が延出されているものの、当該「ガイド部材35」の端部が「プローブ22」内のどの位置まで及んでいるか不明である点。 (6)相違点についての判断 ア 一応の相違点1について (ア)引用発明は、先端ピン32fとプローブ22の先端部22fが、位置Pdにおいて、かしめ、抵抗溶接又はレーザ溶接により固定されたものである。ここで、筒状部材に対して円柱状部材を挿入した状態でかしめ、抵抗溶接又はレーザ溶接により固定する場合、筒状部材の全周にわたって固定を行うことは標準的な手法であるから、筒状部材であるプローブ22の先端部22fの開口は円柱状部材である先端ピン32fによって「閉塞」されたものであるといえる。 よって、一応の相違点1は、実質的な相違点ではない。 (イ)仮に、一応の相違点1が実質的な相違点であったとしても、ガイド管に挿入されるプローブピンにガイド管の内径より太い鍔部を設けたプローブは周知であり(前記(3)イ(イ)の周知技術1)、引用発明の先端ピン32fに対して、周知技術1を適用することは当業者にとって格別困難ではない。そして、周知技術1を適用した後の引用発明において、プローブ22の先端部22fの開口が、先端ピン32fに設けた鍔部により「閉塞」されたものとなることは自明である。 よって、一応の相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用発明と周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 イ 相違点2について 引用発明において、先端ピン32f及び後端ピン32rからそれぞれ延出するガイド部材35は、プローブ28が弾性部において曲がるのを防止する機能を果たすものであるから、なるべく長くして当該機能が十分発揮されるようにするのが通常の設計指針である。そして、プローブピンのガイド軸部を圧縮コイルスプリングより長く設定して当該圧縮コイルスプリングが歪まないようにしたプローブは周知である(前記(3)イ(イ)の周知技術2)。 そうすると、引用発明において、先端ピン32f及び後端ピン32rからそれぞれ延出するガイド部材35が、弾性部22s-1及び22s-2より長くなるようにすることは、周知技術2に基づいて当業者が容易になし得たことであり、その結果得られるプローブは、それぞれのガイド部35の端部が同一の中間部22mの内部に位置するものである。そして、それぞれのガイド部35の端部間に隙間がないと弾性部22s-1及び22s-2が伸縮不可能となってしまうから、隙間があるようにすることは当然である。 よって、相違点2に係る本件補正発明の構成は、引用発明と周知技術2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 (7)作用効果について 本件補正発明の奏する作用効果として、引用発明及び周知技術から予測されるものを超える格別顕著なものは、認めることができない。 (8)審判請求人の主張について ア 審判請求人は令和元年10月11日付け意見書の(2-3)において、次のとおり主張している。 「・・・刊行物1の記載技術は、2個の弾性部22s-1及び22s-2を有するプローブ22の上下方向の収縮を維持しつつ、3本のプレート14-1?14-3でプローブ22の中間部22mをしっかりと固定するものであり、中間部22mを湾曲させることとしています。 そうしますと、仮に、先端ピン32f及び後端ピン32rの端部のそれぞれからガイド部材35の端部を中間部22mの内部空間に位置させてしまうと、例えば、各ガイド部35の端部が中間部22mの内壁に接触してしまうことなどが考えられ、その場合には、押し下げによる弾性部22s-1及び22s-2の収縮機能を充分の果たせなかったり、被検査物50の検査点50dnに対するプローブ22の先端部22Fの位置ずれ等が生じてしまうおそれが生じ得ます。 つまり、刊行物2の図4や刊行物3の図8には、各プランジャーの端部が非スプリング部の内部空間に位置していることが開示されておりますが、刊行物1の記載技術に、刊行物2及び3の記載技術を適用すると、刊行物1の記載技術が機能しなくなるおそれがあり、刊行物1の記載技術に、刊行物2及び3の記載技術を適用することが阻害要因となり得ます。」 しかしながら、引用文献1の【0072】には、中間部22mの湾曲が「わずか」であることが記載されており、引用文献1の図2(D)から、ガイド部35の側面と弾性部22s-1及び22s-2の内面の間に隙間があることが見てとれる。また、引用文献1の【0045】によると、プローブ22は一つの筒状部材から構成されているから、弾性部22s-1及び22s-2の内面と中間部22mの内面は面一である。 そうすると、引用発明において、ガイド部35の端部を中間部22mの内部空間に位置させたとしても、中間部22mのわずかな湾曲を許容するのに十分な隙間がガイド部35の側面と中間部22mの内面の間に存在することは自明であるから、引用発明が機能しなくなることは当業者の想定外であり、請求人の主張は採用することができない。 イ 審判請求人は令和2年6月22日付け審判請求書の(4-3)において、次のとおり主張している。 「また、刊行物1の段落0024及び段落0056の記載より、各ガイド部材35は、先端ピン32f及び後端ピン32rの端部に「固定」されており、各ガイド部材35は、先端ピン32f及び後端ピン32rとは「異なる別の部材」であり、「上記バレルの長手方向に沿って配置された上記第1のプランジャーにおける上記バレル内の端部と、上記バレルの長手方向に沿って配置された上記第2のプランジャーにおける上記バレル内の端部とが、・・・」という構成について何ら開示も示唆もなされていない。 各ガイド部材35を先端ピン32f及び32rの端部に固定させる場合、各ガイド部材35と先端ピン32f及び32rの端部との接触箇所(固定箇所)で抵抗値が高くなり、電気的接触子を流れる電気信号の導通特性が低下することが考えられるが、請求項1に係る発明によれば、少ない要素で電気的接触子を実現できる。」 しかしながら、そもそも「上記バレルの長手方向に沿って配置された上記第1のプランジャーにおける上記バレル内の端部と、上記バレルの長手方向に沿って配置された上記第2のプランジャーにおける上記バレル内の端部とが、・・・」なる記載が、ガイド部材と先端ピンが同一の材料により一体に形成された構成を特定するものであるとは認められず、請求人の主張は請求項の記載に基づかないものであって、これを採用することはできない。 仮に上記構成が特定されているとしても、引用文献1の【0025】の「各円柱部材から突出する芯材部」という記載から、「円柱部材」が「芯材部」(ガイド部材)ではないことが明らかであるから、引用文献1の【0024】の「その検査用治具において、プローブの先端部及び後端部の各々に、円柱部材が挿入されて固定されているようにしてもよい。」という記載は、プローブ22の先端部22f及び後端部22rに先端ピン32f及び後端ピン32rが挿入され、それらのピンが、かしめ、抵抗溶接又はレーザ溶接によって固定されていることを意味するのであって(【0055】)、各ガイド部材35が先端ピン32f及び後端ピン32rとは異なる部材であることを意味しない。また、引用文献1の【0056】の「先端ピン32f及び後端ピン32rの対向する端部からは、それぞれ、ガイド部材35が延出されている。」という記載は、先端ピン32f及び後端ピン32rの対向する端部から各ガイド部材35が一体的に延びていることを意味するのであって、各ガイド部材35が先端ピン32f及び後端ピン32rとは異なる部材であることを意味しない。 そうすると、請求人の主張は、引用発明において、各ガイド部材35が先端ピン32f及び後端ピン32rとは「異なる別の部材」であることを前提としているところ、この前提には誤りがあるから、採用することができない。 (9)独立特許要件についての判断のまとめ よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび 以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願に係る発明 本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 本願発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 引用文献1:特開2010-281583号公報(前掲) 引用文献2:特開2011-145279号公報 引用文献3:特開2006-208329号公報(前掲) 3 引用文献に記載された発明等 引用文献1には、前記第2の3(3)ア(イ)において記載したとおりの引用発明が記載されている。また、引用文献3から、前記第2の3(3)イ(イ)において記載したとおりの周知技術1?2が認められる。 4 対比・判断 本願発明は、本件補正発明の「第1のプランジャー」及び「第2のプランジャー」について、それぞれ「上記バレルの長手方向に沿って配置された」という限定を省くとともに、本件補正発明において「上記2個のスプリング部の間にある同一の上記非スプリング部の内部空間で隙間があるように位置している」とされている「上記第1のプランジャーにおける上記バレル内の端部」と「上記第2のプランジャーにおける上記バレル内の端部」の位置関係について、単に「同一の非スプリング部の内部空間に位置している」としたものである。 そうすると、本願発明と引用発明は、前記第2の3(5)アで示した一致点において一致し、前記第2の3(5)イ(ア)で示した一応の相違点1において相違し、かつ次の相違点2’において相違する。 相違点2’ 本願発明は、「上記第1のプランジャーにおける上記バレル内の端部と、上記第2のプランジャーにおける上記バレル内の端部とが、同一の上記非スプリング部の内部空間に位置している」ものであるのに対して、引用発明は、「先端ピン32f」及び「後端ピン32r」の対向する端部から、それぞれ、「ガイド部材35」が延出されているものの、当該「ガイド部材35」の端部が「プローブ22」内のどの位置まで及んでいるか不明である点。 前記第2の3(6)アで示したとおり、一応の相違点1は実質的な相違点ではないか、引用発明と周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。また、相違点2’は相違点2の一部であるから、前記第2の3(6)イで示したのと同様に、相違点2’に係る本願発明の構成は、引用発明と周知技術2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 よって、本願発明は、引用文献1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-31 |
結審通知日 | 2021-04-06 |
審決日 | 2021-04-22 |
出願番号 | 特願2018-76162(P2018-76162) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01R)
P 1 8・ 575- Z (G01R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 島▲崎▼ 純一 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
岸 智史 濱本 禎広 |
発明の名称 | 電気的接触子及び電気的接続装置 |
代理人 | 吉田 倫太郎 |
代理人 | 若林 裕介 |