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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1374709 |
審判番号 | 不服2020-10580 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-07-30 |
確定日 | 2021-06-10 |
事件の表示 | 特願2017-233076号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月24日出願公開、特開2019- 97949号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年12月5日の出願であって、令和1年10月7日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月5日付けで意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和2年6月2日付け(送達日:令和2年6月9日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年7月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和2年7月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年7月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正により、令和1年12月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における 「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 遊技の進行を制御する手段であって、設定された設定値にもとづいて前記有利状態に関する制御を実行可能な遊技制御手段と、 前記遊技制御手段が遊技の進行を制御するための遊技情報を少なくとも記憶可能な遊技情報記憶手段と、 電源投入時の遊技機の状態を検出可能な検出手段と、 前記検出手段により検出された電源投入時の遊技機の状態を特定可能な状態情報を記憶可能な状態情報記憶手段と、 を備え、 前記遊技制御手段は、 前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第1条件が成立しているときに、前記遊技情報の消去を伴う前記遊技情報記憶手段の初期化を行うための初期化処理を実行可能であり、 前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第2条件が成立しているときに、前記設定値を変更するための設定変更処理を実行可能であるとともに、該設定変更処理の実行後において、前記第1条件が成立した場合に実行する前記初期化処理と共通の初期化処理を、前記状態情報記憶手段に記憶されている状態情報にもとづいて実行可能であり、 前記設定値が変更された場合は、前記設定値が変更されなかった場合と異なる態様にて前記設定値が変更されたことを報知可能である、 ことを特徴とする遊技機。」 は、審判請求時に提出された手続補正書(令和2年7月30日付け)における 「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 遊技の進行を制御する手段であって、設定された設定値にもとづいて前記有利状態に関する制御を実行可能な遊技制御手段と、 前記遊技制御手段が遊技の進行を制御するための情報であって前記設定値を含む遊技情報を少なくとも記憶可能な遊技情報記憶手段と、 電源投入時の遊技機の状態を検出可能な検出手段と、 前記検出手段により検出された電源投入時の遊技機の状態を特定可能な状態情報を記憶可能な状態情報記憶手段と、 を備え、 前記遊技制御手段は、 前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第1条件が成立しているときに、前記遊技情報の消去を伴う前記遊技情報記憶手段の初期化を行うための初期化処理を実行可能であり、 前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第2条件が成立しているときに、前記設定値を変更するための設定変更処理を実行可能であるとともに、該設定変更処理の実行後において、前記第1条件が成立した場合に実行する前記初期化処理と共通の初期化処理を、前記状態情報記憶手段に記憶されている状態情報にもとづいて実行可能であり、 前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であり、 前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であり、 前記設定値が変更された場合は、前記設定値が変更されなかった場合と異なる態様にて前記設定値が変更されたことを報知可能であり、 前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、前記設定値を含む遊技情報が初期化される、 ことを特徴とする遊技機。」 に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。 2 補正の適否 2-1 補正の目的及び新規事項について 本件補正は、補正前の請求項1に記載の「前記遊技制御手段が遊技の進行を制御するための遊技情報」に関して、「前記設定値を含む」ことを限定し、補正前の請求項1に記載の「遊技制御手段」に関して、「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であ」って、「前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であ」ることを限定し、さらに、補正前の請求項1に記載の「初期化処理」に関して、「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、前記設定値を含む遊技情報が初期化される」ことを限定するものである。 そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。 また、本件補正は、「前記遊技制御手段が遊技の進行を制御するための遊技情報」に関する補正、「遊技機制御手段」が「送信可能」な「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報」に関する補正、及び「初期化処理」に関する補正のいずれについても、願書に最初に添付した明細書の【0340】、【0448】?【0469】、【0506】の記載、および、願書に最初に添付した図面の【図9-29】?【図9-31】の図示内容からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。 2-2 独立特許要件について そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Jは、分説するため当審で付した。)。 「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 B 遊技の進行を制御する手段であって、設定された設定値にもとづいて前記有利状態に関する制御を実行可能な遊技制御手段と、 C 前記遊技制御手段が遊技の進行を制御するための情報であって前記設定値を含む遊技情報を少なくとも記憶可能な遊技情報記憶手段と、 D 電源投入時の遊技機の状態を検出可能な検出手段と、 E 前記検出手段により検出された電源投入時の遊技機の状態を特定可能な状態情報を記憶可能な状態情報記憶手段と、 を備え、 F 前記遊技制御手段は、 F1 前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第1条件が成立しているときに、前記遊技情報の消去を伴う前記遊技情報記憶手段の初期化を行うための初期化処理を実行可能であり、 F2 前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第2条件が成立しているときに、前記設定値を変更するための設定変更処理を実行可能であるとともに、該設定変更処理の実行後において、前記第1条件が成立した場合に前記初期化処理と共通の初期化処理を、前記状態情報記憶手段に記憶されている状態情報にもとづいて実行可能であり、 G1 前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であり、 G2 前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であり、 H 前記設定値が変更された場合は、前記設定値が変更されなかった場合と異なる態様にて前記設定値が変更されたことを報知可能であり、 I 前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、前記設定値を含む遊技情報が初期化される、 J ことを特徴とする遊技機。」 (2)先願明細書等の記載事項 原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2017-225019号(特開2019-92860号。当該特許出願を以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 ア 記載事項 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は弾球遊技機、回胴遊技機などの遊技機に係るものであり、特には、遊技者に有利な遊技状態に当選させるか否かの確率についての段階を表す設定値を操作に基づき設定可能とされた遊技機に係る技術分野に関する。」 (イ)「【0038】 [2-1.主制御部] 主制御部20は、CPU(Central Processing Unit)201(主制御CPU)を内蔵したマイクロプロセッサを搭載するとともに、遊技動作制御手順を記述した制御プログラムの他、遊技動作制御に必要な種々のデータを格納するROM(Read Only Memory)202(主制御ROM)と、ワーク領域やバッファメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)203(主制御RAM)とを搭載し、全体としてマイクロコンピュータを構成している。 本例では、CPU201はZ80のマイクロプロセッサーとされる。」 (ウ)「【0052】 ここで、主制御部20は、設定キースイッチ94、及びRAMクリアスイッチ98が接続されており、これらスイッチからの検出信号を受信可能とされている。 【0053】 RAMクリアスイッチ98は、RAM203の所定領域を初期化することを指示入力するための例えば押しボタン式のスイッチとされる。 設定キースイッチ94は、電源投入時にホールスタッフが所持する設定鍵を挿入してON/OFF操作することにより設定変更モード(ON操作時)に切り替えるためのキースイッチとされる。ここで、設定変更モードは、設定値Veを変更可能なモードである。設定値Veは、遊技者に有利な遊技状態に当選させるか否かの確率についての段階を表す値である。 【0054】 RAMクリアスイッチ98は、前枠2が開放された状態で操作可能に設けられたRAMクリアボタンの操作に応じてON/OFFされる。また、設定キースイッチ98は、上記した設定鍵を挿抜可能とされたキーシリンダが対応して設けられており、該キーシリンダに挿入された設定鍵が順方向に回動されることでON、該ONの状態から逆方向に回動されることでOFFとなる。キーシリンダは、前枠2が開放された状態で設定鍵の挿入による操作が可能となるように設けられている。なお、キーシリンダは、設定鍵が挿入されることで操作可能とされた操作子として機能する。」 (エ)「【0060】 (設定値の変更操作について) 設定値Veを変更するためには、本例では、遊技機1の電源がオフとされ前枠2が解放された状態において、設定キースイッチ94をON操作(設定変更モード側に操作)し且つRAMクリアボタンを押圧した状態(RAMクリアスイッチ98がONの状態)で遊技機1への電源を投入する。すると、現在の設定値Veが設定・性能表示器97に表示され、設定値Ve(例えば1?6)の変更操作が可能な「設定変更モード」に移行される。」 (オ)「【0062】 設定変更モードへの移行後において、設定値Veの変更操作子として機能するRAMクリアボタンがON操作されると、設定・性能表示器97の現在の表示値が「1→2→3→4→5→6→1→2→3→・・・」のように1?6の範囲で循環式に切り替えられる。そして希望する設定値Veとなったところで、設定キースイッチ94がOFFされると、設定値Veが確定され、確定した設定値Veの情報がRAM203の所定領域に格納(記憶)される。 また、設定キースイッチ94がOFFされると、設定変更モードが終了され、設定・性能表示器97の表示がクリアされる。 設定変更モードが終了すると、遊技進行を許容する状態に移行される。」 (カ)「【0068】 本実施形態では、通常状態中の総払出個数(通常時払出個数)と、通常状態中の総アウト球数(通常時アウト個数)とをリアルタイムで計測し、通常時払出個数を通常時アウト個数で除した値に百を乗じた値(通常時払出個数÷通常時アウト個数×100で算出される値)を性能情報(以下「通常時比率情報」と称する)として表示する。なお、この際の表示値は、小数点第1位を四捨五入した値とする。 従って、通常時払出個数、通常時アウト個数、通常時比率情報の各データが、RAM203の該当領域(特定中総賞球数格納領域、特定中アウト個数格納領域、特定比率情報格納領域)にそれぞれ格納(記憶)されるようになっている。但し、単に永続的に計測して性能情報を表示するのではなく、総アウト球数が所定の規定個数(例えば、60000個)に達した場合、一旦、計測を終了する。この規定個数とは、通常状態の総アウト球数ではなく、全遊技状態中(当り遊技中を含む)の総アウト球数(以下「全状態アウト個数」と称する)である。この全状態アウト個数もリアルタイムに計測され、RAM203の該当領域(全状態アウト個数格納領域)に格納される。以下、説明の便宜のために、特定中総賞球数格納領域、特定中アウト個数格納領域、特定比率情報格納領域、全状態アウト個数格納領域を「計測情報格納領域」と略称する。」 (キ)「【0082】 (特別図柄変動表示ゲーム) 本実施形態の遊技機1では、所定の始動条件、具体的には、遊技球が上始動口34又は下始動口35に遊技球が入球(入賞)したことに基づき、主制御部20において乱数抽選による「大当り抽選」が行なわれる。主制御部20は、その抽選結果に基づき、特別図柄表示装置38a、38bに特別図柄1、特別図柄2を変動表示して特別図柄変動表示ゲームを開始させ、所定時間経過後に、その結果を特別図柄表示装置に導出表示して、これにより特別図柄変動表示ゲームを終了させる。」 (ク)「【0087】 この「大当り」となった場合、具体的には、特別図柄変動表示ゲームが終了して、これに伴い装飾図柄変動表示ゲームが終了し、その結果として「大当り」の図柄態様が導出表示された後、特別変動入賞装置52の大入賞口ソレノイド52cが作動して開放扉52bが所定のパターンで開閉動作を行い、これにより大入賞口50が開閉され、通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態(大当り遊技)が発生する。この大当り遊技では、開放扉52bにより、大入賞口の開放時間が所定時間(最大開放時間:たとえば、29.8秒)経過するまでか、又は大入賞口に入賞した遊技球数(大入賞口50への入賞球)が所定個数(最大入賞数:役物の1回の作動によりその入口が開き、または拡大した入賞口に対して許容される入賞球数の上限個数:たとえば、9個)に達するまで、その入賞領域が開放または拡大され、これら何れかの条件を満した場合に大入賞口が閉鎖される、といった「ラウンド遊技」が、予め定められた規定ラウンド数(たとえば、最大16ラウンド)繰り返される。」 (ケ)「【0118】 ここで、上記説明から理解されるように、本実施形態では、上始動口34又は下始動口35に入賞が発生して新たに保留球が生じたことに基づいて、当該保留球についての先読み判定として、当該保留球に係る図柄変動表示ゲームについての大当り抽選が行われる。後述するように、主制御部20は、このような先読み判定として行った大当たり抽選の結果を表す情報を、RAM203の該当記憶領域に保留記憶する。 先読み判定時に得られた大当り抽選結果の情報は、図柄変動表示ゲームにおける図柄変動パターンを選択(抽選)するために用いられるものであり、いわば「変動パターン選択用情報」と換言することができる。従って、主制御部20は、先読み判定を行って、その結果得られる「変動パターン選択用情報」をRAM203の所定領域に保留記憶していると言うことができる。」 (コ)「【0133】 (初期設定後の処理) CPU201は、上記の初期設定処理を終えたことに応じ、図5に示すステップS102に進む。 ステップS102でCPU201は、入力ポートn(すなわち所定の入力ポート)の情報を取得し、Wレジスタにコピーする。 ここで、入力ポートnは1バイト(8ビット)のポートとされ、本例では、次の各信号が入力される。なお、以下に示す「b0」?「b7」はビット位置を表す。 b0:設定キー(設定キースイッチ94からの入力信号) b1:補給切れ検出信号 b2:計数エラー信号 b3:断線検出信号1 b4:断線検出信号2 b5:扉開放信号(前扉開放センサ61の検出信号) b6:RAMクリアボタン(RAMクリアスイッチ98からの入力信号) b7:電源投入時信号及び払出通信確認信号 ここで、b0の設定キーについては、「0」が設定キースイッチ94=OFF、「1」が設定キースイッチ94=ONを意味する。また、b5の扉開放信号については、「0」が扉閉鎖(前枠2が閉鎖)、「1」が扉開放を意味する。さらに、b6のRAMクリアボタンについては、「0」がRAMクリアスイッチ98=OFF(ボタン非操作状態)、「1」がRAMクリアスイッチ98=ON(ボタン操作状態)を意味する。 【0134】 ステップS102に続くステップS103でCPU201は、Wレジスタの値をマスクする。具体的には、以下で説明する設定変更処理(S115)、RAMクリア処理(少なくともS117及びS118)、設定確認処理(S109)、バックアップ復帰処理(S111)の移行判定を行うにあたって必要とされる値である設定キー(b0)、RAMクリアボタン(b6)、扉開放信号(b5)以外の値をマスクする処理を行う。 先の説明から理解されるように、設定変更処理への移行条件としては、起動時において、前枠2が開放された状態で設定キーとRAMクリアボタンの双方が操作状態とされることとされている。 また、本例において、RAMクリア処理への移行条件は、操作の面では、起動時において設定キーが非操作状態、RAMクリアボタンが操作状態とされることとされている。 また、設定確認処理への移行条件は、操作の面では、前枠2が開放された状態において、設定キーが操作状態、RAMクリアボタンが非操作状態とされることとされている。 さらに、バックアップ復帰処理への移行条件は、操作の面では、起動時において設定キー、RAMクリアボタンの双方が非操作状態とされることとされている。」 (サ)「【0138】 説明を図5に戻す。 CPU201は、ステップS103のマスク処理を行ったことに応じ、ステップS104で設定変更条件成立判定処理を実行する。具体的には、設定変更モードに移行すべきか否かを判定するべく、ステップS103のマスク後の値(3ビット)が「111」であるか否かを判定する。 マスク後の値が「111」であり、設定変更条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合、CPU201はステップS115の設定変更処理を実行する。すなわち、RAMクリアボタンや設定キーの操作に応じて設定値Veを新たに設定するための処理を行う。 なお、ステップS115の設定変更処理の詳細については後に改めて説明する。」 (シ)「【0140】 ステップS115の設定変更処理を実行したことに応じ、CPU201はステップS116でRAMクリア時のコマンド送信処理を実行し、続くステップS117で領域内RAM初期化処理を実行した上で、ステップS118のRAMクリア時処理を実行する。 ステップS116のコマンド送信処理は、RAMクリアが行われる旨を演出制御部24に通知するための演出制御コマンド(RAMクリアコマンド(BA02H)等)を送信する処理となるが、詳細は後述する。 ステップS117の初期化処理は、RAM203におけるワーク領域を含む所定領域(使用領域)内の値を初期化(クリア)する処理となる。但し、このステップS117の初期化処理では、ワーク領域における設定値Veの格納領域については初期化の対象外とされている。 ステップS118のRAMクリア時処理では、図9に示すように、RAMクリア報知タイマの設定処理(S401)を行った上で、RAMの一部初期値設定処理(S402)を行う。RAMクリア報知タイマは、ステップS116で送信されるコマンドに応じて演出制御部24が実行するRAMクリア報知の時間を設定する処理であり、本例では30sを設定する。ステップS402の一部初期値設定処理では、例えばRAM203のワーク領域を除いた一部領域に初期値を設定する。 CPU201は、ステップS118のRAMクリア時処理を実行したことに応じ、ステップS119に処理を進める。 【0141】 なお、上述した性能情報については、RAM203における使用領域外の領域に格納されており、従ってステップS117やS118のRAMクリア処理ではクリアされない。 RAMクリア処理でクリア対象となるのは、通常の遊技進行の際に必要な各種のフラグやタイマやカウンタ等のRAM領域(通常データ格納領域)のデータである。これらのデータには、例えば次のようなものがある。すなわち、遊技状態指定に係るデータ(通常状態、確変状態、時短状態、潜確状態など、現在の遊技状態を特定する遊技状態フラグ)、当り遊技中であるか否かを指定するフラグ(条件装置作動フラグ)、当り遊技の実行に係る各種データ(現在のラウンド数、最大ラウンド数等)、大当り抽選結果に係るデータ(大当り判定フラグ:当落抽選結果情報、特別図柄判定データ:図柄抽選結果情報)、作動保留球に関する保留データ(作動保留球数、大当り抽選に利用される各種乱数値、補助当り抽選に利用される各種乱数値、変動パターン用乱数)、特別図柄動作ステータス、遊技進行を管理するタイマ(特別図柄役物動作タイマ)、スイッチ・センサ類に係る入出力データ、入賞口の入賞球数をカウントする各種の入賞カウンタ、電サポ状態の有無を指定するフラグ(開放延長フラグ)、電サポの残余回数をカウントする電サポ回数カウンタ、高確率状態の残余回数をカウントするカウンタ(特図確変回数カウンタ、普図確変回数カウンタ)、各種エラーフラグ(RAMエラーフラグを除く)、及び払出関連のデータ等である。何れにしても、RAMクリア処理が実行されると、特定のデータ(設定値Veや性能情報)以外のすべてのデータが初期状態に設定される。」 (ス)「【0143】 続いて、先のステップS104において、ステップS103によるマスク後の値が「111」ではなく、設定変更条件が成立していないとの否定結果が得られた場合、CPU201はステップS105に進んでRAM異常か否かを判定する。具体的には、RAM203のワーク領域に格納されている設定値Veが正常な範囲外の値(本例では設定1?6に対応した設定値Ve=0?5の範囲外)であるか否かを少なくとも判定する。 ここで、実際にCPU201が扱う設定値Veとしては、例えば1バイトの値とされ、設定1?設定6に対応する値として00H(0)?05H(5)の値が定められている。なお、「H」は16進数を意味する(以下、同様)。ステップS105の判定処理では、ワーク領域に格納された設定値Veが00H?05Hの範囲の値であるか否かを判定する。 【0144】 ステップS105において、設定値Veが上記の正常な範囲外の値であり、RAM異常であると判定した場合、CPU201はステップS112以降に続く電源再投入を待機するための処理に以降する。 具体的に、ステップS112でCPU201は、電源再投入時のコマンド送信処理として、パチンコ遊技機1の電源再投入且つ設定変更を促すための報知が行われるように指示するための演出制御コマンド(設定変更待ちコマンド)を演出制御部24に送信する処理を行う。起動時においてRAM異常が検知された場合には、強制的に設定変更モードに移行させて設定値Veの変更(設定)を受け付ける。このためCPU201は、先ずステップS112で、設定変更待ちコマンドにより設定変更モードに移行する旨を演出制御部24側に通知する。 該設定変更待ちコマンドを受け演出制御部24は、例えば「扉を開けて設定を変更して下さい」等の文字を含む画面等、設定変更操作を促すための画面表示を液晶表示装置36に実行させる。このとき、演出制御部24は、該画面表示と共に対応する光演出(例えば光表示装置45aにおける全LED点灯)や音演出を現出させる制御を行ってもよい。 【0145】 ステップS112に続くステップS113でCPU201は、バックアップフラグを00H(つまりOFF)とした上で、ステップS114の電源異常チェック処理(図7参照)を繰り返す。このステップS114の電源異常チェック処理はパチンコ遊技機1の電源が遮断されるまで繰り返され、電源が再投入されると主制御側メイン処理としてステップS101以降の処理が再び実行される。このとき、上記の画面表示等に応じて設定変更モードへの移行操作が行われていれば、設定変更モードへの移行が行われ、RAM異常状態の解消が図られる。 【0146】 上記したステップS105において、設定値Veが正常範囲外の値ではなく、RAM異常ではないと判定した場合、CPU201はステップS106に進んでバックアップフラグがON状態か否か(本例ではバックアップフラグ=5AHがON状態)を判定する。 遊技機1において、電源遮断時には、主制御側タイマ割込み処理における後述する電源チェック・バックアップ処理(ステップS901、図24参照)により、RAM203の記憶情報についてバックアップのための処理が行われる。電源遮断時に適正にバックアップ処理が行われた場合には、バックアップフラグがON状態とされる(図25のステップS1010参照)。このため上記のステップS106ではバックアップフラグを確認して、バックアップ復帰可能であるか否かの判定を行う。具体的に、ステップS106では、RAM203の所定領域に格納されたバックアップフラグがON状態(5AH)である否かを判定する。 【0147】 ステップS106でバックアップフラグがONでないと判定した場合、CPU201は上述したステップS112に処理を進める。これにより、バックアップ復帰条件を満たさない場合には、先に説明したRAM異常が認められた場合と同様、強制的に設定変更モードへの移行が行われる。 【0148】 ここで、前述したように、ステップS106の判定処理は、設定確認処理の実行有無を問わず、バックアップ復帰処理が行われる状態への移行可否を判定する処理に相当するものである。 【0149】 一方、ステップS106でバックアップフラグがONであると判定した場合、CPU201は、ステップS107でRAMクリア条件(RAMクリア処理への移行条件)が成立しているか否かを判定する。具体的には、Wレジスタの6ビット目の値が「1」か否かを判定する。 Wレジスタの6ビット目の値が「1」であり、RAMクリア条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合、CPU201は上述したステップS116に処理を進める。これにより、上述したRAMクリア処理が実行される。」 (セ)「【0334】 ステップS1501において、設定エラーフラグがOFFであり設定エラーではないと判定した場合、CPU201はステップS1502の大当り乱数判定処理を実行した上で、ステップS1503の図柄抽選処理に進む。 ステップS1502の大当り乱数判定処理は、大当り判定用乱数(内部抽選用乱数)、大当り判定テーブル、及び設定値Veに基づいて大当り/はずれの当落種別を抽選により選択(判定)するものである。 なお、実施形態としての大当り乱数判定処理の詳細については図31及び図32を参照して改めて説明する。」 (ソ)「【図5】 ![]() 」 (タ)「【図8】 ![]() 」 イ 先願発明 上記(ア)?(タ)の記載事項を総合すると、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?jは、本願発明の記号A?Jに対応させて付した。)。 「a-b 遊技者に有利な遊技状態に当選させるか否かの確率についての段階を表す設定値を操作に基づき設定可能とされた遊技機であって(【0001】)、主制御部20は、CPU201(主制御CPU)を内蔵したマイクロプロセッサを搭載するとともに、遊技動作制御手順を記述した制御プログラムの他、遊技動作制御に必要な種々のデータを格納するROM202(主制御ROM)と、ワーク領域やバッファメモリとして機能するRAM203(主制御RAM)とを搭載し、全体としてマイクロコンピュータを構成し(【0038】)、遊技球が上始動口34又は下始動口35に遊技球が入球(入賞)したことに基づき、主制御部20において乱数抽選による「大当り抽選」が行なわれ、主制御部20は、その抽選結果に基づき、特別図柄表示装置38a、38bに特別図柄1、特別図柄2を変動表示して特別図柄変動表示ゲームを開始させ、所定時間経過後に、その結果を特別図柄表示装置に導出表示して、これにより特別図柄変動表示ゲームを終了させ(【0082】)、特別図柄変動表示ゲームが終了して、これに伴い装飾図柄変動表示ゲームが終了し、その結果として「大当り」の図柄態様が導出表示された後、特別変動入賞装置52の大入賞口ソレノイド52cが作動して開放扉52bが所定のパターンで開閉動作を行い、これにより大入賞口50が開閉され、通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態(大当り遊技)が発生し(【0087】)、CPU201は大当り乱数判定処理を実行し、大当り乱数判定処理は、大当り判定用乱数(内部抽選用乱数)、大当り判定テーブル、及び設定値Veに基づいて大当り/はずれの当落種別を抽選により選択(判定)するものであり(【0334】)、 c 確定した設定値Veの情報がRAM203の所定領域に格納(記憶)され(【0062】)、主制御部20は、先読み判定として行った大当たり抽選の結果を表す情報を、RAM203の該当記憶領域に保留記憶し(【0118】)、 d 主制御部20は、設定キースイッチ94、及びRAMクリアスイッチ98が接続されており、これらスイッチからの検出信号を受信可能とされ(【0052】)、RAMクリアスイッチ98は、RAM203の所定領域を初期化することを指示入力するための例えば押しボタン式のスイッチとされ、 設定キースイッチ94は、電源投入時にホールスタッフが所持する設定鍵を挿入してON/OFF操作することにより設定変更モード(ON操作時)に切り替えるためのキースイッチとされ、設定変更モードは、設定値Veを変更可能なモードであり(【0053】)、RAMクリアスイッチ98は、前枠2が開放された状態で操作可能に設けられたRAMクリアボタンの操作に応じてON/OFFされ、設定キースイッチ98は、上記した設定鍵を挿抜可能とされたキーシリンダが対応して設けられており、該キーシリンダに挿入された設定鍵が順方向に回動されることでON、該ONの状態から逆方向に回動されることでOFFとなり、キーシリンダは、前枠2が開放された状態で設定鍵の挿入による操作が可能となるように設けられ、キーシリンダは、設定鍵が挿入されることで操作可能とされた操作子として機能し(【0054】)、遊技機1の電源がオフとされ前枠2が解放された状態において、設定キースイッチ94をON操作(設定変更モード側に操作)し且つRAMクリアボタンを押圧した状態(RAMクリアスイッチ98がONの状態)で遊技機1への電源を投入すると、設定値Ve(例えば1?6)の変更操作が可能な「設定変更モード」に移行され(【0060】)、 e ステップS102でCPU201は、入力ポートn(すなわち所定の入力ポート)の情報を取得し、Wレジスタにコピーし、ここで、入力ポートnは1バイト(8ビット)のポートとされ、次の各信号が入力され、以下に示す「b0」?「b7」はビット位置を表し、 b0:設定キー(設定キースイッチ94からの入力信号) b1:補給切れ検出信号 b2:計数エラー信号 b3:断線検出信号1 b4:断線検出信号2 b5:扉開放信号(前扉開放センサ61の検出信号) b6:RAMクリアボタン(RAMクリアスイッチ98からの入力信号) b7:電源投入時信号及び払出通信確認信号 ここで、b0の設定キーについては、「0」が設定キースイッチ94=OFF、「1」が設定キースイッチ94=ONを意味し、また、b5の扉開放信号については、「0」が扉閉鎖(前枠2が閉鎖)、「1」が扉開放を意味し、さらに、b6のRAMクリアボタンについては、「0」がRAMクリアスイッチ98=OFF(ボタン非操作状態)、「1」がRAMクリアスイッチ98=ON(ボタン操作状態)を意味し(【0133】)、ステップS102に続くステップS103でCPU201は、Wレジスタの値をマスクし、具体的には、設定キー(b0)、RAMクリアボタン(b6)、扉開放信号(b5)以外の値をマスクする処理を行い、設定変更処理への移行条件としては、起動時において、前枠2が開放された状態で設定キーとRAMクリアボタンの双方が操作状態とされることとされ、RAMクリア処理への移行条件は、操作の面では、起動時において設定キーが非操作状態、RAMクリアボタンが操作状態とされることとされ(【0134】)、 f2-i CPU201は、ステップS103のマスク処理を行ったことに応じ、ステップS104で設定変更条件成立判定処理を実行し、具体的には、設定変更モードに移行すべきか否かを判定するべく、ステップS103のマスク後の値(3ビット)が「111」であるか否かを判定し、マスク後の値が「111」であり、設定変更条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合、CPU201はステップS115の設定変更処理を実行し、すなわち、RAMクリアボタンや設定キーの操作に応じて設定値Veを新たに設定するための処理を行い(【0138】)、ステップS115の設定変更処理を実行したことに応じ、CPU201はステップS116でRAMクリア時のコマンド送信処理を実行し、続くステップS117で領域内RAM初期化処理を実行した上で、ステップS118のRAMクリア時処理を実行し、ステップS117の初期化処理では、ワーク領域における設定値Veの格納領域については初期化の対象外とされ(【0140】)、RAMクリア処理でクリア対象となるのは、通常の遊技進行の際に必要な各種のフラグやタイマやカウンタ等のRAM領域(通常データ格納領域)のデータであって、遊技状態指定に係るデータ(通常状態、確変状態、時短状態、潜確状態など、現在の遊技状態を特定する遊技状態フラグ)、当り遊技中であるか否かを指定するフラグ(条件装置作動フラグ)、当り遊技の実行に係る各種データ(現在のラウンド数、最大ラウンド数等)、大当り抽選結果に係るデータ(大当り判定フラグ:当落抽選結果情報、特別図柄判定データ:図柄抽選結果情報)、作動保留球に関する保留データ(作動保留球数、大当り抽選に利用される各種乱数値、補助当り抽選に利用される各種乱数値、変動パターン用乱数)、特別図柄動作ステータス、遊技進行を管理するタイマ(特別図柄役物動作タイマ)、スイッチ・センサ類に係る入出力データ、入賞口の入賞球数をカウントする各種の入賞カウンタ、電サポ状態の有無を指定するフラグ(開放延長フラグ)、電サポの残余回数をカウントする電サポ回数カウンタ、高確率状態の残余回数をカウントするカウンタ(特図確変回数カウンタ、普図確変回数カウンタ)、各種エラーフラグ(RAMエラーフラグを除く)、及び払出関連のデータ等であり(【0141】)、 f1-i ステップS104において、ステップS103によるマスク後の値が「111」ではなく、設定変更条件が成立していないとの否定結果が得られた場合、CPU201はステップS105に進んでRAM異常か否かを判定し(【0143】)、ステップS105において、設定値Veが上記の正常な範囲外の値であり、RAM異常であると判定した場合、CPU201はステップS112以降に続く電源再投入を待機するための処理に移行し、具体的に、ステップS112でCPU201は、電源再投入時のコマンド送信処理として、パチンコ遊技機1の電源再投入且つ設定変更を促すための報知が行われるように指示するための演出制御コマンド(設定変更待ちコマンド)を演出制御部24に送信する処理を行い、起動時においてRAM異常が検知された場合には、強制的に設定変更モードに移行させて設定値Veの変更(設定)を受け付け、このためCPU201は、先ずステップS112で、設定変更待ちコマンドにより設定変更モードに移行する旨を演出制御部24側に通知し、該設定変更待ちコマンドを受け演出制御部24は、例えば「扉を開けて設定を変更して下さい」等の文字を含む画面等、設定変更操作を促すための画面表示を液晶表示装置36に実行させ(【0144】)、ステップS105において、設定値Veが正常範囲外の値ではなく、RAM異常ではないと判定した場合、CPU201はステップS106に進んでバックアップフラグがON状態か否か(本例ではバックアップフラグ=5AHがON状態)を判定し(【0146】)、ステップS106でバックアップフラグがONであると判定した場合、CPU201は、ステップS107でRAMクリア条件(RAMクリア処理への移行条件)が成立しているか否かを判定し、具体的には、Wレジスタの6ビット目の値が「1」か否かを判定し、Wレジスタの6ビット目の値が「1」であり、RAMクリア条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合、CPU201は上述したステップS116に処理を進め、これにより、RAMクリア処理が実行される(【0149】)、 j 遊技機(【0001】)。」 (3)対比 本願補正発明と先願発明とを対比する(対比にあたっては、本願補正発明の構成A?Jと先願発明の構成a?jについて、それぞれ(a)?(j)の見出しを付けて行った。)。 (a)先願発明の構成a-bの「通常遊技状態よりも遊技者に有利な特別遊技状態(大当り遊技)が発生」する「遊技機」は、本願補正発明の構成Aの「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。 したがって、先願発明における構成a-bは、本願補正発明における構成Aに相当する構成を有している。 (b)先願発明の構成a-bの ・「設定値Ve」 ・「遊技球が上始動口34又は下始動口35に遊技球が入球(入賞)したことに基づき、乱数抽選による「大当り抽選」が行なわれ、その抽選結果に基づき、特別図柄表示装置38a、38bに特別図柄1、特別図柄2を変動表示して特別図柄変動表示ゲームを開始させ、所定時間経過後に、その結果を特別図柄表示装置に導出表示して、これにより特別図柄変動表示ゲームを終了させ」ること ・「大当り判定用乱数(内部抽選用乱数)、大当り判定テーブル、及び設定値Veに基づいて大当り/はずれの当落種別を抽選により選択(判定)するものである」「大当り乱数判定処理を実行」すること は、それぞれ本願補正発明の構成Bの ・「設定値」 ・「遊技の進行を制御する」こと ・「設定された設定値にもとづいて前記有利状態に関する制御を実行」すること に相当する。 そうすると、先願発明の構成a-bの「主制御部20」は、「遊技球が上始動口34又は下始動口35に遊技球が入球(入賞)したことに基づき、乱数抽選による「大当り抽選」が行なわれ、その抽選結果に基づき、特別図柄表示装置38a、38bに特別図柄1、特別図柄2を変動表示して特別図柄変動表示ゲームを開始させ、所定時間経過後に、その結果を特別図柄表示装置に導出表示して、これにより特別図柄変動表示ゲームを終了させ」る手段であって、「大当り乱数判定処理を実行し、大当り乱数判定処理は、大当り判定用乱数(内部抽選用乱数)、大当り判定テーブル、及び設定値Veに基づいて大当り/はずれの当落種別を抽選により選択(判定)するものである」「大当り乱数判定処理を実行」することが可能な「CPU201」を内蔵したマイクロプロセッサを搭載するものであるから、本願補正発明の「遊技の進行を制御する手段であって、設定された設定値にもとづいて前記有利状態に関する制御を実行可能な遊技制御手段」に相当する。 したがって、先願発明における構成a-bは、本願補正発明における構成Bに相当する構成を有している。 (c)先願発明の構成a-bによれば、「主制御部20」は、「大当り抽選」の「抽選結果に基づき、特別図柄表示装置38a、38bに特別図柄1、特別図柄2を変動表示して特別図柄変動表示ゲームを開始させ、所定時間経過後に、その結果を特別図柄表示装置に導出表示して、これにより特別図柄変動表示ゲームを終了させ」ることから、先願発明の構成cの ・「主制御部20」 ・「大当たり抽選の結果を表す情報」 は、それぞれ本願補正発明の構成Cの ・「前記遊技制御手段」 ・「遊技の進行を制御するための情報」 に相当する。 先願発明の構成cの「RAM203」は、「大当たり抽選の結果を表す情報」と「確定した設定値Veの情報」を記憶するものであるから、本願補正発明の「前記遊技制御手段が遊技の進行を制御するための情報であって前記設定値を含む遊技情報を少なくとも記憶可能な遊技情報記憶手段」に相当する。 したがって、先願発明における構成cは、本願補正発明における構成Cに相当する。 (d)先願発明の構成dの ・「遊技機1への電源を投入する」とき ・「RAMクリアボタン」の状態 は、それぞれ本願補正発明の構成Dの ・「電源投入時」 ・「遊技機の状態」 に相当する。先願発明の構成dにおいて、「設定キースイッチ94をON操作(設定変更モード側に操作)し且つRAMクリアボタンを押圧した状態(RAMクリアスイッチ98がONの状態)で遊技機1への電源を投入すると、設定値Ve(例えば1?6)の変更操作が可能な「設定変更モード」に移行され」ることから、「RAMクリアスイッチ98」は、「遊技機1への電源を投入」したときの「RAMクリアボタン」の状態を検出可能な検出手段であるといえ、本願補正発明の「電源投入時の遊技機の状態を検出可能な検出手段」に相当する。 したがって、先願発明における構成dは、本願補正発明における構成Dに相当する。 (e)先願発明の構成eの「RAMクリアスイッチ98」によって検出される「起動時」の「RAMクリアボタン」の状態は、本願補正発明の「前記検出手段により検出された電源投入時の遊技機の状態」に相当する。 そして、先願発明の構成eの「Wレジスタ」の「ビット位置」「b6」は、「RAMクリアボタン(RAMクリアスイッチ98からの入力信号)」が「コピー」されるから、本願補正発明の「前記検出手段により検出された電源投入時の遊技機の状態を特定可能な状態情報を記憶可能な状態情報記憶手段」に相当する。 したがって、先願発明における構成eは、本願補正発明における構成Eに相当する。 (f1)先願発明のf1-iの「Wレジスタの6ビット目の値」は、「Wレジスタ」の「ビット位置」「b6」であって、「RAMクリアボタン(RAMクリアスイッチ98からの入力信号)」が「コピー」されるものであるから、上記(e)でみたように、「前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態」の情報を示すものである。 そうすると、先願発明の構成f1-iの ・「Wレジスタの6ビット目の値が「1」であり、RAMクリア条件が成立しているとの肯定結果が得られた」こと ・「ステップS104において、ステップS103によるマスク後の値が「111」ではなく、設定変更条件が成立していないとの否定結果が得られた場合、CPU201はステップS105に進んでRAM異常か否かを判定し」、「ステップS105において、設定値Veが正常範囲外の値ではなく、RAM異常ではないと判定した場合、CPU201はステップS106に進んでバックアップフラグがON状態か否か(本例ではバックアップフラグ=5AHがON状態)を判定し」、「ステップS106でバックアップフラグがONであると判定した場合、CPU201は、ステップS107でRAMクリア条件(RAMクリア処理への移行条件)が成立しているか否かを判定し、具体的には、Wレジスタの6ビット目の値が「1」か否かを判定し、Wレジスタの6ビット目の値が「1」であり、RAMクリア条件が成立しているとの肯定結果が得られた」とき ・「RAMクリア処理」 は、それぞれ本願補正発明の構成F1の ・「前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であること」、 ・「前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第1条件が成立しているとき」 ・「前記遊技情報の消去を伴う前記遊技情報記憶手段の初期化を行うための初期化処理」 に相当する。 そうすると、先願発明の構成f1-iの 「ステップS104において、ステップS103によるマスク後の値が「111」ではなく、設定変更条件が成立していないとの否定結果が得られた場合、CPU201はステップS105に進んでRAM異常か否かを判定し」、「ステップS105において、設定値Veが正常範囲外の値ではなく、RAM異常ではないと判定した場合、CPU201はステップS106に進んでバックアップフラグがON状態か否か(本例ではバックアップフラグ=5AHがON状態)を判定し」、「ステップS106でバックアップフラグがONであると判定した場合、CPU201は、ステップS107でRAMクリア条件(RAMクリア処理への移行条件)が成立しているか否かを判定し、具体的には、Wレジスタの6ビット目の値が「1」か否かを判定し、Wレジスタの6ビット目の値が「1」であり、RAMクリア条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合、CPU201は上述したステップS116に処理を進め、これにより、RAMクリア処理が実行され」ること は、本願補正発明の構成F1の 「前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第1条件が成立しているときに、前記遊技情報の消去を伴う前記遊技情報記憶手段の初期化を行うための初期化処理を実行可能であ」ること に相当する。 したがって、先願発明における構成f1-iは、本願補正発明における構成F1に相当する構成を備えている。 (f2)先願発明の構成f2-iの「マスク後の値が「111」であ」るとき、先願発明の構成eから、設定キー(b0)、RAMクリアボタン(b6)、扉開放信号(b5)が、それぞれ「1」であると認められる。そして、RAMクリアボタン(b6)が「1」であることは、上記(f1)で検討した「Wレジスタの6ビット目の値が「1」であり、RAMクリア条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合」にあたり、本願補正発明の構成F2の「前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であること」に相当する。 そうすると、先願発明の構成f2-iの(Wレジスタの)「マスク後の値が「111」であ」るときは、本願補正発明の構成F2の「前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第2条件が成立しているとき」に相当する。 また、先願発明の構成f2-iの「ステップS115の設定変更処理を実行し、すなわち、RAMクリアボタンや設定キーの操作に応じて設定値Veを新たに設定するための処理を行」うことは、本願補正発明の「前記設定値を変更するための設定変更処理を実行可能であ」ることに相当する。 したがって、先願発明の構成f2-iの 「CPU201は、ステップS103のマスク処理を行ったことに応じ、ステップS104で設定変更条件成立判定処理を実行し、具体的には、設定変更モードに移行すべきか否かを判定するべく、ステップS103のマスク後の値(3ビット)が「111」であるか否かを判定し、マスク後の値が「111」であり、設定変更条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合、CPU201はステップS115の設定変更処理を実行し、すなわち、RAMクリアボタンや設定キーの操作に応じて設定値Veを新たに設定するための処理を行」うこと は、本願補正発明の構成F2の 「前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第2条件が成立しているときに、前記設定値を変更するための設定変更処理を実行可能である」こと に相当する。 そして、先願発明の構成f2-iの 「ステップS115の設定変更処理を実行したことに応じ、CPU201はステップS116でRAMクリア時のコマンド送信処理を実行し、続くステップS117で領域内RAM初期化処理を実行した上で、ステップS118のRAMクリア時処理を実行」すること は、本願補正発明の構成F2の「該設定変更処理の実行後において」、「初期化処理を、前記状態情報記憶手段に記憶されている状態情報にもとづいて実行可能であ」ること に相当する。 さらに、先願発明の構成f2-iの「ステップS115の設定変更処理を実行した」後に実行される、「ステップS116」での「RAMクリア時のコマンド送信処理」、「ステップS117」での「領域内RAM初期化処理」及び「ステップS118」での「RAMクリア時処理」と、先願発明の構成f1-iの「RAMクリア条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合」に「ステップS116に処理を進め、これにより」実行される「RAMクリア処理」は、いずれもステップS116において行われる共通の初期化処理である。 したがって、先願発明における構成f2-i及び構成f1-iは、本願補正発明における構成F2に相当する構成を備えている。 (i)先願発明の構成f2-iの「ステップS116でRAMクリア時のコマンド送信処理を実行し、続くステップS117で領域内RAM初期化処理を実行した上で、ステップS118のRAMクリア時処理を実行し、ステップS117の初期化処理では、ワーク領域における設定値Veの格納領域については初期化の対象外とされ」ることは、本願補正発明の構成Hの「前記設定値を含まない遊技情報が初期化され」ることに相当する。先願発明の構成f1-iの「CPU201は上述したステップS116に処理を進め、これにより、RAMクリア処理が実行される」ことも、上記と同様に、本願補正発明の構成Hの「前記設定値を含まない遊技情報が初期化され」ることに相当する。 先願発明の構成f1-iの(CPU201がステップS116に処理を進めることにより、実行される)「RAMクリア処理」は、「ステップS105において、設定値Veが正常範囲外の値ではなく、RAM異常ではないと判定した場合」に行われるものであるから、本願補正発明の構成Hと「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され」る点で一致する。 先願発明の構成f2-iの「ステップS116でRAMクリア時のコマンド送信処理を実行し、続くステップS117で領域内RAM初期化処理を実行した上で、ステップS118のRAMクリア時処理を実行し、ステップS117の初期化処理では、ワーク領域における設定値Veの格納領域については初期化の対象外とされ」ることは、RAM異常の有無の判定を経ることなく、ステップS115の設定変更処理を実行したことに応じて実行されるものであるから、RAM異常がないときにも実行されるものであり、本願補正発明の構成Iと「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され」る点で一致する。 (j)先願発明の構成jの「遊技機」は、本願補正発明の構成Jの「遊技機」に相当する。 以上のとおりであるから、本願補正発明と先願発明とは、 「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、 B 遊技の進行を制御する手段であって、設定された設定値にもとづいて前記有利状態に関する制御を実行可能な遊技制御手段と、 C 前記遊技制御手段が遊技の進行を制御するための情報であって前記設定値を含む遊技情報を少なくとも記憶可能な遊技情報記憶手段と、 D 電源投入時の遊技機の状態を検出可能な検出手段と、 E 前記検出手段により検出された電源投入時の遊技機の状態を特定可能な状態情報を記憶可能な状態情報記憶手段と、 を備え、 F 前記遊技制御手段は、 F1 前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第1条件が成立しているときに、前記遊技情報の消去を伴う前記遊技情報記憶手段の初期化を行うための初期化処理を実行可能であり、 F2 前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第2条件が成立しているときに、前記設定値を変更するための設定変更処理を実行可能であるとともに、該設定変更処理の実行後において、前記第1条件が成立した場合に実行する前記初期化処理と共通の初期化処理を、前記状態情報記憶手段に記憶されている状態情報にもとづいて実行可能であり、 I’ 前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化される、 J 遊技機。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 相違点1(特定事項G1、G2) 本願補正発明では、「遊技制御手段」が「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能」であり、「前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能」であるのに対して、先願発明では、「CPU201」が「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能」ではなく、「前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能」ではない点。 相違点2(特定事項H) 設定値が変更された場合、本願補正発明では、「前記設定値が変更されなかった場合と異なる態様にて前記設定値が変更されたことを報知可能であ」るのに対して、先願発明では、「前記設定値が変更されなかった場合と異なる態様にて前記設定値が変更されたことを報知可能」であるか不明な点。 相違点3(特定事項I) 「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは」、本願補正発明では、「前記設定値を含む遊技情報が初期化される」のに対して、先願発明では、「前記設定値を含む遊技情報が初期化」されるか不明な点。 (4)判断 ア 相違点1について検討する。 (ア) 遊技機において、遊技制御手段が前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であり、前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であることは、以下(イ)に示す文献に記載されているように、本願出願日前に周知技術である(以下、「周知技術1」という。)。したがって、相違点1は、先願発明に周知技術1を付加したものにすぎず、新たな効果を奏するものでもないから、実質的な相違点とはいえない。 (イ)周知技術1を示す周知例 (周知例1-1)特開2017-184794号公報 (相違点1に関連する箇所に下線を付した。以下同様。) 「【0002】 従来、遊技者により、メダルやコイン等の遊技媒体が投入(以下、「投入操作」という。)され、スタートレバーが操作(以下、「開始操作」という。)されると、複数の図柄がそれぞれの表面に配された複数のリールの回転が開始し、ストップボタンが操作(以下、「停止操作」という。)されると、複数のリールの回転が停止し、その結果表示された図柄の組合せに応じて特典が付与される、いわゆるパチスロ機と称される遊技機が知られている。 【0003】 このような遊技機では、出玉率(投入した遊技媒体に対する払い出された遊技媒体の割合)を定める複数段階の設定値(例えば、設定1?設定6)が設けられており、これら複数段階の設定値のうちのいずれかが設定され、運用されている。遊技者にとってみれば、出玉率の高い設定値(いわゆる高設定)の遊技機ほど多くの遊技媒体を得られる可能性が高まるため、遊技中に自身が遊技を行っている遊技機の設定値を把握することを望む。 【0004】 遊技中の遊技者が設定値を把握可能にするための工夫は、これまでいくつかなされており、近年では、ボーナス状態の終了時などに設定値に応じて表示内容が異なる演出を行うことで、遊技者が設定値を推測可能にした遊技機が知られている。 【0005】 演出は、通常、サブ(副制御部)側で制御されるため、このような設定を示唆する演出(以下、「設定示唆演出」と呼ぶことがある)を行う場合には、メイン(主制御部)側からサブ側に設定値を送信する必要がある。この点、特許文献1には、メイン側からサブ側に設定情報を毎ゲーム送信する遊技機が開示されている。」 「【0201】 <設定値変換テーブル> 続いて、図23を参照して、メイン(主制御回路91)側からサブ(副制御回路101)側に送信する設定値に関連する情報(変換データ)を決定する際に参照される設定値変換テーブルについて説明する。設定値変換テーブルは、設定値毎に設けられ、変換データに対応する抽籤値の情報を規定する。本実施形態のパチスロ機1では、サブ側の制御のもとに、設定を示唆する設定示唆演出を行うが、この設定示唆演出を行うためにメイン側からサブ側に設定値をそのまま送信することなく、設定値を変換した変換データを送信することとしている。設定値変換テーブルは、メイン側で設定されている設定値を、サブ側に送信する変換データに変換するために用いられる。」 「【0249】 (設定示唆演出を実行するタイミング) 図32に示すように、パチスロ機1においてサブCPU102は、「変換データを受信した遊技」やそれ以外の遊技において、メイン側から受信した変換データに基づき設定示唆演出を実行することができる。すなわち、サブCPU102は、メイン側から変換データを受信すると、この受信を契機に当該遊技において設定示唆演出を実行することとしてもよく、また、この受信とは関係なく任意の遊技において設定示唆演出を実行することとしてもよい。」 「【0254】 (設定示唆演出の実行方法) パチスロ機1では、設定値を示唆する設定示唆演出を実行する際に、メイン側からサブ側に対して設定値をそのまま送信することなく、設定値から変換した変換データを送信する。これにより、メイン側からサブ側へ送信される情報を不正に盗み見られてしまったとしても、設定値が把握されることがない。また、変換データは、図32に示すように様々なタイミングでメイン側からサブ側に送信するため、変換データを盗み見るタイミングが特定し難くなり、不正行為による被害を軽減することができる。」 当該文献には、 パチスロ機1において、サブ側の制御のもとに、設定を示唆する設定示唆演出を行うが、この設定示唆演出を行うためにメイン側からサブ側に設定値をそのまま送信することなく、設定値を変換した変換データを送信することとし(【0201】)、メイン側から受信した変換データに基づき設定示唆演出を実行する(【0249】) 技術が記載されている。 当該技術における ・「パチスロ機1」 ・「設定値」 ・「設定値から変換した変換データ」 ・「メイン(主制御回路91)側」が「設定値を変換した変換データを送信する」こと ・「メイン側から受信した変換データに基づき設定示唆演出を実行すること」 は、それぞれ周知技術1の ・「遊技機」 ・「設定値」 ・「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値」 ・「遊技制御手段が前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能」であること ・「前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であること」 に相当するから、上記記載は、周知技術1 「遊技機において、遊技制御手段が前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であり、前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であること」 を示すものである。 (周知例1-2)特開2017-153700号公報 「【0208】 <設定値変換テーブル> 続いて、図23を参照して、メイン(主制御回路91)側からサブ(副制御回路101)側に送信する設定値に関連する情報(変換データ)を決定する際に参照される設定値変換テーブルについて説明する。設定値変換テーブルは、設定値毎に設けられ、変換データに対応する抽籤値の情報を規定する。本実施形態のパチスロ機1では、サブ側の制御のもとに、設定を示唆する設定示唆演出を行うが、この設定示唆演出を行うためにメイン側からサブ側に設定値をそのまま送信することなく、設定値を変換した変換データを送信することとしている。設定値変換テーブルは、メイン側で設定されている設定値を、サブ側に送信する変換データに変換するために用いられる。」 「【0256】 (設定示唆演出を実行するタイミング) 図32に示すように、パチスロ機1においてサブCPU102は、「変換データを受信した遊技」やそれ以外の遊技において、メイン側から受信した変換データに基づき設定示唆演出を実行することができる。すなわち、サブCPU102は、メイン側から変換データを受信すると、この受信を契機に当該遊技において設定示唆演出を実行することとしてもよく、また、この受信とは関係なく任意の遊技において設定示唆演出を実行することとしてもよい。」 「【0261】 (設定示唆演出の実行方法) パチスロ機1では、設定値を示唆する設定示唆演出を実行する際に、メイン側からサブ側に対して設定値をそのまま送信することなく、設定値から変換した変換データを送信する。これにより、メイン側からサブ側へ送信される情報を不正に盗み見られてしまったとしても、設定値が把握されることがない。また、変換データは、図32に示すように様々なタイミングでメイン側からサブ側に送信するため、変換データを盗み見るタイミングが特定し難くなり、不正行為による被害を軽減することができる。」 周知例1-2には、周知例1-1と同様の記載があることから、周知例1-2も周知例1-1と同じく、周知技術1を示すものである。 イ 相違点2について検討する。 (ア) 遊技機において、設定値が変更された場合、設定値が変更されなかった場合と異なる態様にて設定値が変更されたことを報知可能とすることは、以下(イ)に示す文献に記載されているように、本願出願日前に周知技術である(以下、「周知技術2」という。)。 先願発明は、「設定変更条件が成立しているとの肯定結果が得られた場合、CPU201はステップS115の設定変更処理を実行し、すなわち、RAMクリアボタンや設定キーの操作に応じて設定値Veを新たに設定するための処理を行」うものである(f2-i)ところ、RAMクリアボタンや設定キーの操作を行っている操作者が、「設定値Veを新たに設定するための処理」が行われたことを認識する必要があることは自明であって、相違点2は、当該自明な事項により先願発明に周知技術2を付加したものにすぎず、新たな効果を奏するものでもない。 したがって、相違点2は、実質的には相違点とはいえないものである。 (イ)周知技術2を示す周知例 (周知例2-1)特開2014-221342号公報(原査定で引用) (相違点2に関連する箇所に下線を付した。以下同様。) 「【0182】 その後、遊技制御装置50は、出目導出(リール停止)まで待機する(S912)。具体的には、タイマ割込み処理により、ステップ911でセットされたリール更新情報で示される各リール4a?4cのステップ数分だけ、各リール4a?4cを初期位置から回転させる。これにより、遊技機1aの設定値と出目振分テーブルとに基づいて、設定値を示唆する出目(例えば、「7揃い」、「BAR揃い」、「スイカ揃い」又は「チェリー揃い」)を自動的に導出することができる。 【0183】 以上に示す出目導出制御処理を実行することにより、遊技場の開店後(朝一)の時間帯において、遊技者は各遊技機1aに示された出目に基づいて、各遊技機1aの設定値を予測することができる。すなわち遊技機1aを選択する際の興趣を簡易に向上させることができる。なお、出目導出制御処理は、遊技機1aの設定が変更された場合にのみ実行するようにしてもよい。」 (周知例2-2)特開2017-109081号公報(原査定で引用) 「【0058】 さらに、パチンコ機50では、設定変更がされたことを示唆する設定変更演出が行われる。設定変更演出は、設定変更により当選確率が増加した場合(以後、設定増加)と、設定変更により当選確率が低下した場合(以後、設定低下)とに加え、RAMクリアは行われたが当選確率は変化していない場合(以後、設定変化無し)にも行われる。なお、設定変化無しの場合の設定変更演出は、所謂ガセの演出となる。」 「【0132】 一方、S1110では、主制御装置80は、変更フラグの値を判定する。そして、変更フラグが0の場合(設定変更無しの場合)には、S1115に、変更フラグが2の場合(設定増加の場合)には、S1120に、変更フラグが1の場合(設定低下の場合)には、S1125に移行する。 S1115?S1125では、S520,S525と同様、主制御装置80は、抽選に当選すると設定変更演出を行うことを決定する。なお、一例として、S1115での抽選(設定変化無しの場合の抽選)の当選確率P0は、40%であり、S1120での抽選(設定増加の場合の抽選)の当選確率P2は、65%であり、S1125での抽選(設定低下の場合の抽選)の当選確率P1は、20%であっても良い。無論、各場合の当選確率はこれに限らず、P2>P0>P1となっていれば良い。また、各場合の当選確率の大小関係は、これに限らず、例えば、P2>P1>P0となっていても良い。また、例えば、P0=0、つまり、設定変化無しの場合には、設定変更演出を行わない構成としても良い。」 「【0135】 具体的には、次のような態様で設定変更演出を行っても良い。例えば、待機画面において表示されたオブジェクト(例えば、例えば、機種名やパチンコ機50の製造メーカ名等を示す文字,図形や、各種キャラクタ等)の色を替えたり、点滅させたり、搖動させても良いし、オブジェクトを通常の待機画面とは異なる位置に配置しても良いし、オブジェクトに対する付加画像表示を行っても良い。また、待機画面においてオブジェクトが動く場合であれば、オブジェクトの動きを異ならせることで、設定変更演出を行っても良い。」 ウ 相違点3について検討する。 (ア)遊技機分野の初期化処理において、RAM異常が検知されない場合に、設定値を含まない遊技情報が初期化され、RAM異常が検知された場合に、設定値を含む遊技情報が初期化されることは、以下(イ)に示す文献に記載されているように、本願出願日前に周知技術である(以下、「周知技術3」という。)。 先願発明は、「ステップS112でCPU201は」、「起動時においてRAM異常が検知された場合には、強制的に設定変更モードに移行させて設定値Veの変更(設定)を受け付け」るものであるから、「変更(設定)を受け付け」る前の「設定値Ve」は、ステップS112で変更(設定)されるため、記憶しておく必要がなく、初期化してもよいことは明らかである。したがって、相違点3は、先願発明に周知技術3を付加したものにすぎず、新たな効果を奏するものでもないから、実質的には相違点とはいえないものである。 (イ)周知技術3を示す周知例 (周知例3-1)特開2016-214436号公報 (相違点3に関連する箇所に下線を付した。以下同様。) 「【0273】 ステップS16では、メイン制御基板60は、電源断復帰データを所定のレジスタ(たとえば、Bレジスタ)に記憶する。ここで、電源断処理済みフラグが正常値であり、かつRWM61のチェックサムデータが正常値であると判断したときは、電源断復帰データとして正常値を記憶する。一方、電源断処理済みフラグが異常値であったとき(ステップS13で「No」のとき)、及び/又はRWM61のチェックサムデータが異常値である(ステップS14で算出された、全範囲のチェックサムデータ値が「0」でない)と判断したときは、電源断復帰データとして異常値を記憶する。」 「【0280】 図29は、ステップS22における設定変更処理(M_RANK_SET)を示すフローチャートである。 先ず、ステップS801において、RWM61の初期化範囲として、「所定範囲」をレジスタに記憶する。ここでは、電源断処理が正常に実行されたと判断した場合に備えるためのセットであり、設定値データ(アドレス「F000」)、遊技状態(たとえば、RT状態)データ、当選フラグ(持ち越しているフラグ)を初期化しない(含まない)ようにした初期化範囲を「所定範囲」とする。なお、これに限らず、「所定範囲」は、設定値データを含まない範囲であればよく、遊技状態(RT状態等)データや当選フラグの記憶範囲を含めるか否かは任意である。 【0281】 次にステップS802に進み、メイン制御基板60は、電源断復帰データ(図28のステップS16で記憶した値)が正常値であるか否かを判断する。電源断復帰データが正常値であると判断されたときは、ステップS804に進み、ステップS801における「所定範囲」の記憶を維持する。一方、ステップS802において電源断復帰データが正常値でないと判断されたときはステップS803に進み、メイン制御基板60は、RWM61の初期化範囲として、「特定範囲」をレジスタに記憶する。ここで、電源断が正常でないと判断したときは、設定値データ(アドレス「F000」の「_NB_RANK」)、遊技状態、当選フラグ(たとえばアドレス「F049」の「_NB_CND_BNS 」)についても初期化の対象とした初期化範囲として、「特定範囲」とする。 【0282】 そして、ステップS804に進み、ステップS801でセットした所定範囲又はステップS803でセットした特定範囲の初期化を開始する。これにより、電源断復帰データが正常値であるときは、RWM61の設定値データ等は初期化されずに所定範囲が初期化される。一方、電源断復帰データが異常値であるときは、RWM61の設定値データを含む特定範囲が初期化される。次のステップS805では、ステップS804で開始した初期化が終了したか否かを判断する。初期化が終了したと判断したときはステップS806に進む。 なお、ステップS804において特定範囲が初期化されると、アドレス「F000」の設定値データの値は「0」となる。」 当該文献には、 「電源断処理済みフラグが正常値であり、かつRWM61のチェックサムデータが正常値であると判断したときは、電源断復帰データとして正常値を記憶し、電源断処理済みフラグが異常値であったとき(ステップS13で「No」のとき)、及び/又はRWM61のチェックサムデータが異常値である(ステップS14で算出された、全範囲のチェックサムデータ値が「0」でない)と判断したときは、電源断復帰データとして異常値を記憶し(【0273】)、 設定変更処理において、電源断処理が正常に実行されたと判断した場合に備えるためのセットであり、設定値データ(アドレス「F000」)を初期化しない(含まない)ようにした初期化範囲を「所定範囲」とし(【0280】)、 電源断が正常でないと判断したときは、設定値データについても初期化の対象とした初期化範囲として、「特定範囲」とし(【0281】、) 電源断復帰データが異常値であるときは、RWM61の設定値データを含む特定範囲が初期化される(【0282】)」こと という技術が記載されており、上記記載における「RWM61」はRAMであると認められるから、上記記載は、 設定値を変更する処理において、RAM異常が検知されない場合(RWM61のチェックサムデータが正常値であると判断し、電源断処理が正常に実行されたと判断した場合)に、設定値を含まない遊技情報が初期化され(設定値データ(アドレス「F000」)を初期化しない(含まない)ようにした初期化範囲を「所定範囲」とすること)、RAM異常が検知された場合(RWM61のチェックサムデータが異常値であると判断し、電源断が正常でないと判断したとき)に、設定値を含む遊技情報が初期化される(設定値データについても初期化の対象とした初期化範囲として、「特定範囲」とすること) という周知技術3を示すものである。 (周知例3-2)特開2016-220929号公報 「【0084】 初期化0は、設定キースイッチ37がOFFの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されているとき、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されているときに行う初期化であり、初期化0では、使用可能領域全ての領域が初期化される。初期化1は、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されていないときに行う初期化であり、初期化1では、使用可能領域のうち重要ワーク及び特別ワーク以外の領域が初期化される。初期化2は、特定の遊技状態の終了時に行う初期化であり、初期化2では、使用可能領域のうち一般ワーク、未使用領域及び未使用スタック領域が初期化される。初期化3は、1ゲーム終了時に行う初期化であり、初期化3では、使用可能領域のうち、未使用領域及び未使用スタック領域が初期化される。尚、設定値や遊技状態を示すデータの格納領域は、特別ワークに割り当てられており、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されていないとき、すなわちRAM41cのデータが正常で設定変更される場合には、設定値や遊技状態を示すデータが保持されることとなる。また、後述のタイマカウンタの格納領域は、特別ワークに割り当てられており、ゲームの終了時や特定の遊技状態の終了時には初期化されることなく保持されることとなる。」 当該文献には、 「初期化0は、設定キースイッチ37がOFFの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されているとき、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されているときに行う初期化であり、初期化0では、使用可能領域全ての領域が初期化され、初期化1は、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されていないときに行う初期化であり、初期化1では、使用可能領域のうち重要ワーク及び特別ワーク以外の領域が初期化され、設定値や遊技状態を示すデータの格納領域は、特別ワークに割り当てられ」ること という技術が記載されている。「設定値を示すデータの格納領域は、特別ワークに割り当てられている」ことから、「使用可能領域全ての領域が初期化され」る「初期化0」では、設定値が初期化され、「使用可能領域のうち重要ワーク及び特別ワーク以外の領域が初期化され」る「初期化1」では、設定が初期化されないと認められる。 したがって、上記記載は、 設定値を変更する処理において、RAM異常が検知されない場合(RAM41cのデータが破壊されていないとき)に、設定値を初期化せず(初期化1では、使用可能領域のうち重要ワーク及び特別ワーク以外の領域が初期化され)、RAM異常が検知された場合(RAM41cのデータが破壊されているとき)に、設定値を初期化すること(初期化0では、使用可能領域全ての領域が初期化され) という周知技術3を示すものである。 (周知例3-3)特開2017-143882号公報 「【0081】 初期化0は、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されているときに行う初期化であり、初期化0では、使用可能領域全ての領域が初期化される。初期化1は、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されていないときに行う初期化であり、初期化1では、遊技RAM領域の特別ワーク以外の領域、非遊技RAM領域の全ての領域が初期化される。初期化2は、設定キースイッチ37がONの状態での起動で設定変更状態が終了された後に行う初期化であり、初期化2では、遊技RAM領域のうち特別ワーク及び遊技スタック領域(使用中)以外の領域が初期化される。初期化3は、特定の遊技状態の終了時に行う初期化であり、初期化3では、遊技RAM領域のうち一般ワーク、未使用領域3及び遊技スタック領域(未使用)が初期化される。初期化4は、1ゲーム終了時に行う初期化であり、初期化4では、遊技RAM領域の未使用領域3及び遊技スタック領域(未使用)が初期化される。尚、設定値や遊技状態を示すデータの格納領域は、特別ワークに割り当てられており、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されていないとき、すなわちRAM41cのデータが正常で設定変更される場合には、設定値や遊技状態を示すデータが保持されることとなる。また、後述のタイマカウンタの格納領域は、重要ワークに割り当てられており、ゲームの終了時や特定の遊技状態の終了時には初期化されることなく保持されることとなる。」 当該文献には、 「初期化0は、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されているときに行う初期化であり、初期化0では、使用可能領域全ての領域が初期化され、初期化1は、設定キースイッチ37がONの状態での起動時でRAM41cのデータが破壊されていないときに行う初期化であり、初期化1では、遊技RAM領域の特別ワーク以外の領域、非遊技RAM領域の全ての領域が初期化され、設定値や遊技状態を示すデータの格納領域は、特別ワークに割り当てられ」ること という技術が記載されており、上記の(周知例3-2)と同様に、周知技術3を示すものである。 ウ したがって、本願補正発明は、先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。 (5)請求人の主張について 請求人は、令和2年7月30日付けの審判請求書の「【本発明が特許されるべき理由】」「(4)本発明と引用文献との対比」において、以下の旨主張する。 (主張1)「本発明は、特に、「前記遊技制御手段は、前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第1条件が成立しているときに、前記遊技情報の消去を伴う前記遊技情報記憶手段の初期化を行うための初期化処理を実行可能であり、前記検出手段により検出される電源投入時の遊技機の状態が特殊状態であることを含む第2条件が成立しているときに、前記設定値を変更するための設定変更処理を実行可能であるとともに、前記第1条件が成立した場合に実行する前記初期化処理と共通の初期化処理を、前記状態情報記憶手段に記憶されている状態情報にもとづいて実行可能であり」という構成により、第1条件の成立時と第2条件の成立時とで初期化処理を共通化することができるので、初期化処理の処理プログラムの記憶容量が増大してしまうことを防ぐことができるという効果を奏する。 つまり、第1条件の成立時としては、例えば、クリアスイッチがON状態であって錠スイッチ122SG051が操作されていない状態であるときなどであり、また、第2条件の成立時としては、例えば、クリアスイッチがON状態であって錠スイッチ122SG051が操作されており、且つ、扉開放センサ122SG090がON状態であるときなどであるので、第1条件の成立時と第2条件の成立時とで初期化処理を共通化することができるので、初期化処理の処理プログラムの記憶容量が増大してしまうことを防ぐことができるという効果を奏する。」 (主張2)「このような初期化処理を行う構成において、本発明では、さらに「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、前記設定値を含む遊技情報が初期化される、」という構成により、設定値を含む遊技情報については、遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときに初期化されるため、不適切な設定値が引き継がれてしまうことを防止することができるとともに、初期化された設定値により遊技を行うことができるという効果を奏する。 つまり、遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、設定値を含まない遊技情報が初期化され、設定値については初期化されずそのまま引き継いで遊技を行うことができる一方で、遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、設定値を含む遊技情報が初期化されるため、遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容が正常ではないときに、不適切な設定値が引き継がれてしまうことを防止することができ、さらに初期化された設定値により遊技を行うことができるというようにしている。 更に、本発明は、上記構成に加えて「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であり、前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、 該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であり、」なる特徴構成を有しているので、設定値が知得されてしまうことを著しく防ぎつつ、設定値に応じた演出を実行することができる。 つまり、設定値に応じた演出を実行する場合にあっては、演出を制御する手段に対して設定値を送信して、該通知した設定値を記憶しておき、該記憶した設定 値を読み出して設定値に応じて異なる演出を制御する手段が実行する必要があり、これら設定値自体を送信して記憶するようにしてしまうと、送信時に設定値が不正に知得されてしまったり、記憶されている設定値が不正に読み出されて知得されてしまったりする可能性があるが、本発明によれば、送信されて記憶されるのは、設定値自体ではなく設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値であるので、設定値が知得されてしまうことを著しく防ぎつつ、設定値に応じた演出を実行することができるようになる。 これに対して、先願1には、上記したように、RAMクリア処理の実行時と設定変更処理の実行時に、初期化処理として設定値Ve以外のすべてのデータが初期化される点が記載されているが、段落0144に「ステップS105において、設定値Veが上記の正常な範囲外の値であり、RAM異常であると判定した場合、CPU201はステップS112以降に続く電源再投入を待機するための処理に以降する。具体的に、ステップS112でCPU201は、電源再投入時のコマンド送信処理として、パチンコ遊技機1の電源再投入且つ設定変更を促すための報知が行われるように指示するための演出制御コマンド(設定変更待ちコマンド)を演出制御部24に送信する処理を行う。起動時においてRAM異常が検知された場合には、強制的に設定変更モードに移行させて設定値Veの変更(設定)を受け付ける。」と記載されているように、RAM異常が検知された場合には、強制的に設定変更モードに移行させて設定値Veの変更(設定)を受け付けるような構成であるため、RAM異常であると判定した場合に設定値を含む遊技情報を全て初期化するような構成については、何ら記載されていない。 このように、先願1では、本発明の「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、前記設定値を含む遊技情報が初期化される、」という上記したしたような特徴ある効果を奏する構成、並びに「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であり、前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であり、」という上記したような特徴ある効果を奏する構成についても、何ら記載されていないものと思料する。 また、本発明の「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、前記設定値を含む遊技情報が初期化される、」という上記したような特徴ある効果を奏する構成、並びに「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であり、前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であり、」という上記したような特徴ある効果を奏する構成についても、引用文献2?4にも何ら記載されておらず、従来周知の技術的事項でもないと思料する。尚、上記した「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、前記設定値を含む遊技情報が初期化される、」なる構成が仮に周知技術であったとしても、上記したように、先願1では、RAM異常が検知された場合には、強制的に設定変更モードに移行させて設定値Veの変更(設定)を受け付けるような構成であるため先願1に周知技術を付加することはできないものと思料する。」 主張1について検討する。先願発明において、 第1条件の成立時(「ステップS104において、ステップS103によるマスク後の値が「111」ではなく、設定変更条件が成立していないとの否定結果が得られた場合、CPU201はステップS105に進んでRAM異常か否かを判定し」、「ステップS105において、設定値Veが正常範囲外の値ではなく、RAM異常ではないと判定した場合、CPU201はステップS106に進んでバックアップフラグがON状態か否か(本例ではバックアップフラグ=5AHがON状態)を判定し」、「ステップS106でバックアップフラグがONであると判定した場合、CPU201は、ステップS107でRAMクリア条件(RAMクリア処理への移行条件)が成立しているか否かを判定し、具体的には、Wレジスタの6ビット目の値が「1」か否かを判定し、Wレジスタの6ビット目の値が「1」であり、RAMクリア条件が成立しているとの肯定結果が得られた」とき)に行われる初期化処理(「ステップS116」での「RAMクリア時のコマンド送信処理」、「ステップS117」での「領域内RAM初期化処理」及び「ステップS118」での「RAMクリア時処理」) と、 第2条件の成立時(Wレジスタの「マスク後の値が「111」であ」るとき)に行われる初期化処理(「ステップS116に処理を進め、これにより」実行される「RAMクリア処理」) は、共通化されていることから、先願発明も「初期化処理の処理プログラムの記憶容量が増大してしまうことを防ぐことができる」という主張1の効果を奏する。 主張2について検討する。「前記初期化処理において、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常がないときは、前記設定値を含まない遊技情報が初期化され、前記遊技情報記憶手段に記憶されている記憶内容に異常があるときは、前記設定値を含む遊技情報が初期化される、」との本願補正発明の構成は、上記「(4)判断」の相違点2についての検討で引用した周知例3-1?周知例3-3に記載されているように、周知の技術である。また、先願発明は、RAM異常が検知された場合には、強制的に設定変更モードに移行させて設定値Veの変更(設定)を受け付けるものであることは、主張2のとおりであるが、周知3-1?周知例3-3に記載の周知技術は、RAM異常が検知された場合、設定変更モードに移行するという先願発明と同様の状況において、設定値を含む遊技情報を初期化するものであり、先願発明に当該周知技術を付加することを妨げる事情は存在しない。 さらに、「前記設定値とは異なる数値であって該設定値を特定可能な特定値を含む設定値制御情報を送信可能であり、 前記遊技制御手段から送信された前記設定値制御情報に含まれる特定値を記憶するとともに、該特定値から特定した設定値に応じた演出を実行可能であり」 との本願補正発明の構成については、上記「(4)判断」の相違点1についての検討で引用した周知例1-1?周知例1-2に記載されているように周知の技術であり、特徴ある効果を奏する構成とはいえない。 よって、請求人の主張1及び主張2を採用することはできない。 (6)小括 上記(4)、(5)において検討したように、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 まとめ 上記2において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年12月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 拒絶の理由(令和1年10月7日付け) 原査定の拒絶の理由は、 「(拡大先願)この出願の請求項1に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」 というものである。 <引用文献等一覧> 1.特願2017-225019号(特開2019-092860号) 3 先願明細書等の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願2017-225019号(特開2019-092860号)(前記「第2 2-2(2)」における「先願」に対応する。)の記載事項及び先願発明の認定については、前記「第2 2-2(2)先願明細書等の記載事項」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明(上記第2[理由]1)は、本願補正発明(上記第2[理由]2-2(1))から、 ア (遊技情報記憶手段が記憶可能な)「前記遊技制御手段が遊技の進行を制御するための情報であって前記設定値を含む遊技情報」について、「設定値を含む」という発明特定事項を削除し、 イ さらに、上記相違点1及び相違点3に係る発明特定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明と先願発明とは、上記相違点2でのみ一応相違するが、上記第2[理由]2-2(4)イで示した理由と同様の理由により、相違点2は、実質的には相違点とはいえないものであるから、本願発明も、先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-25 |
結審通知日 | 2021-03-30 |
審決日 | 2021-04-14 |
出願番号 | 特願2017-233076(P2017-233076) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(A63F)
P 1 8・ 537- Z (A63F) P 1 8・ 55- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大浜 康夫 |
特許庁審判長 |
▲吉▼川 康史 |
特許庁審判官 |
澤田 真治 北川 創 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 林 修身 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 石川 好文 |
代理人 | 堅田 多恵子 |
代理人 | 大久保 岳彦 |
代理人 | 重信 和男 |