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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1374719 |
審判番号 | 不服2020-11958 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-08-26 |
確定日 | 2021-06-10 |
事件の表示 | 特願2015-216035「化合物半導体装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開,特開2017- 92083〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年11月2日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成31年 4月15日付け:拒絶理由通知書 令和 1年 6月21日 :意見書,手続補正書の提出 令和 1年10月11日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 1年12月27日 :意見書,手続補正書の提出 令和 2年 5月14日付け:令和1年12月27日の手続補正についての補正の却下の決定,拒絶査定(原査定) 令和 2年 8月26日 :審判請求書,手続補正書の提出 令和 2年10月 8日付け:前置報告書 令和 2年11月12日 :上申書の提出 第2 令和2年8月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年8月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし6を,補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6と補正するものであり,そのうちの,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである。(下線部は,補正箇所である。) 「【請求項1】 基板と, 前記基板上方のチャネル層と, 前記チャネル層上方のキャリア供給層と, 前記チャネル層及び前記キャリア供給層上方のゲート電極,ソース電極及びドレイン電極と, 前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間で前記キャリア供給層を覆う絶縁膜と, を有し, 前記絶縁膜は, 前記ゲート電極下で前記ゲート電極と直接的に接触する,陰イオンを含有する第1の領域と, 前記第1の領域よりも前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側に前記第1の領域よりも陰イオンの含有量が小さい第2の領域と, を有し, 前記キャリア供給層の上方は,リセス領域を有し, 前記ゲート電極は,平面視で前記リセス領域に重なり合う部分と前記リセス領域に重なり合わない部分とを有し, 前記絶縁膜の前記第1の領域は,前記リセス領域に合わせて下方に窪み, 前記第2の領域は,前記ゲート電極と直接的に接触する前記第1の領域のうち前記リセス領域に合わせて下方に窪んでいない部分と同じ層内に存することを特徴とする化合物半導体装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の,令和1年6月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6のうちの,特許請求の範囲の請求項1は,以下のとおりである。 「【請求項1】 基板と, 前記基板上方のチャネル層と, 前記チャネル層上方のキャリア供給層と, 前記チャネル層及び前記キャリア供給層上方のゲート電極,ソース電極及びドレイン電極と, 前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間で前記キャリア供給層を覆う絶縁膜と, を有し, 前記絶縁膜は, 前記ゲート電極下で前記ゲート電極と直接的に接触する,陰イオンを含有する第1の領域と, 前記第1の領域よりも前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側に前記第1の領域よりも陰イオンの含有量が小さい第2の領域と, を有し, 前記第2の領域は,前記ゲート電極と直接的に接触する前記第1の領域と同じ層内に存することを特徴とする化合物半導体装置。」 2 補正の適否 本件補正は,請求項1についての補正事項(以下「補正事項1」という。)を含むものであるところ,当該補正事項1は,本件補正前の請求項1について,「キャリア供給層」について,「キャリア供給層の上方は,リセス領域を有し」と限定する補正と,「ゲート電極」について,「平面視で前記リセス領域に重なり合う部分と前記リセス領域に重なり合わない部分とを有し」と限定する補正と,「絶縁膜」について,「絶縁膜の前記第1の領域は,前記リセス領域に合わせて下方に窪み」と限定する補正と,「第2の領域」の位置について,第1の領域のうちの「前記リセス領域に合わせて下方に窪んでいない部分」と同じ層内であることを限定する補正を含むものあって,本件補正前の発明と本件補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって,当該補正事項1は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下において検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記「1(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項及び引用発明 ア 引用文献2 (ア)引用文献2の記載 原査定の拒絶理由で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2011-14789号公報(原査定で引用された引用文献2。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。) 「【請求項1】 ヘテロ接合界面をチャネルとする窒化物系半導体電界効果トランジスタにおいて, 制御ゲート電極と窒化物系半導体の間に負の電荷を有する第三の層を有し, 前記ヘテロ接合を形成する前記窒化物半導体中に負のイオンを含むことを特徴とする窒化物系半導体電界効果トランジスタ。」 「【請求項7】 前記負の電荷を有する第三の層が,負のイオンを含んだ絶縁体層よりなることを特徴とする請求項1記載の窒化物系半導体電界効果トランジスタ。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は,窒化物系半導体デバイスに関し,さらに詳しくは,ゲート電圧が印加されていない時にドレイン電流が流れない,いわゆるノーマリオフ型の窒化物系半導体ヘテロ接合電界効果トランジスタ(Hetero-junction Field Effect Transistor:HFET)に関する。 【背景技術】 【0002】 GaN,AlGaN,InGaNなどのIII族窒化物半導体は,エネルギーバンドギャップが大きい等の材料の本質的特性から,従来のSi,GaAs等の半導体に比べ耐圧が高く,高電流密度が得られ,高温動作が可能であり,パワーデバイスへの適用が期待されている。 特に,GaN系半導体は,AlGaN/GaN等のヘテロ接合の形成が可能であり,窒化物系半導体ヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET),別名,高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)が開発されている。 【0003】 AlGaN/GaNヘテロ接合FETは,窒化物半導体の結晶構造による自発分極と,界面の歪によるピエゾ分極によりAlGaN中で分極が起こり,その結果,AlGaN/GaN界面のGaN側にマイナスの電荷(電子)が蓄積し,高濃度の二次元電子ガスを形成する。この二次元電子ガスの形成により,AlGaN/GaNヘテロ接合FETは,AlGaNにドーピングを行わなくてもチャネル抵抗(HFETのオン抵抗)を低く抑えることが可能で,高出力動作を達成できるという利点がある。 【0004】 しかしながら,AlGaN/GaN系HFETは,ゲート電圧がゼロの場合でも二次元電子ガスを無くすことは難しいため,ゲート信号が入っていない時にもFETに電流が流れるノーマリオンのデバイスであり,ゲート信号が入っていない時にFETに電流が流れない,いわゆるノーマリオフ状態(エンハンスメント・モード)を達成しにくい。 電源回路,モータ制御等のパワーデバイスに適用する場合には,ノーマリオフ動作が必須であり,AlGaN/GaN系HFETのノーマリオフ動作を達成するための方法が提案されている(例えば,非特許文献1,非特許文献2,特許文献1)。 【0005】 非特許文献1は,AlGaN層を薄くし,分極の効果を減少させる方法を提案している。また,非特許文献2は,サンプルをCF_(4)プラズマに曝すことによりAlGaN層にフッ素イオン(F^(-)イオン)を注入し,AlGaN層を負に帯電させる方法を提案している。さらに,特許文献1は,制御ゲート電極とAlGaN層の間のゲート絶縁膜中に,AlGaN層中の正の電荷を相殺して余りある電子あるいはイオンを注入した負の電荷を有する浮遊ゲート等の層を設けることにより,AlGaN/GaN系HFETのしきい値電圧(V_(th))を正の値に制御し,ノーマリオフを実現する方法を提案している。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開2008-130672号公報 【非特許文献】 【0007】 【非特許文献1】M.A.Kahn他著,Applied Physics Letter,68巻,4号,1996年1月,514?516頁 【非特許文献2】Di Song他著,IEEE Electron Device Letters,28巻,3号,2007年3月,189?191頁 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら,非特許文献1の方法では,完全にノーマリオフにすることが難しく,また,ゲートに正のバイアスを加えても,ゲートに順方向電流が流れてしまうため,十分な二次元電子ガス濃度,すなわち,十分なチャネル電流を得ることは困難という問題がある。AlGaN上にAl_(2)O_(3)等の薄い絶縁膜を付けてゲート順方向電流を抑える方法も検討されているが,Al_(2)O_(3)/AlGaN界面の界面準位を減らすことが難しく,電子がトラップされてチャネル電荷を増やすことができない。 【0009】 非特許文献2の方法では,CF_(4)プラズマによりAlGaN層がエッチングされたり,AlGaN層にダメージが入ったりして制御性が悪く,しきい値電圧をノーマリオフになるように精密に制御することが難しいという問題がある。 さらに,特許文献1の方法は,ゲート電極とAlGaN層の間の浮遊ゲート等の負に電荷を持つ層に付加する負の電荷量によってノーマリオフを実現することが可能であるが,相当量の電子あるいは負のイオンを付与する必要があるとい う問題がある。」 「【0022】 図1に示すように,第1の実施形態に係る窒化物系半導体電界効果トランジスタ1A(以下AlGaN/GaN系HFETと呼ぶ)は,サファイア基板9と,サファイア基板9上に形成されたGaN層10と,GaN層10上に形成されたAlGaN層11と,ソース電極(S)21と,ドレイン電極(D)22と,ソース電極21およびドレイン電極22との間の動作領域上に化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition:CVD)により堆積された酸化Si(SiO_(2))からなるゲート酸化膜31と,ゲート電極(G)34で構成される。 【0023】 このAlGaN/GaN系HFET(1A)では,バンドギャップの広いAlGaN層11と,AlGaN層11よりもバンドギャップの狭いGaN層10とのヘテロ接合界面が形成される。 【0024】 本発明のAlGaN/GaN系HFET(1A)では,ゲート酸化膜31のゲート電極34直下の領域中40には,イオンの注入により,例えばフッ素イオンF^(-)等の負のイオンが添加され,また,AlGaN層11にも,例えばフッ素イオンF^(-)等の負のイオンが添加される。 【0025】 図2は,第1の実施形態に係るAlGaN/GaN系HFET(1A)の概略構造を示す断面図(a)と,エネルギーバンド図(b),空間電荷を示す図(c)である。同図は,ゲート酸化膜31のみに負のイオンが添加されている場合を示している。 図2(a)に示すAlGaN/GaN系HFET(1A)の概略構造を示す断面図は,図1の図と同様である。 【0026】 図2(b)および図2(c)に示すように,GaN層10とAlGaN層11のヘテロ接合により,AlGaN層11中には,自発分極とピエゾ分極により,ゲート絶縁膜31側には負の電荷51が,GaN層10側には正の電荷52ができる。 【0027】 ゲート絶縁膜31には負の電荷40が付与されており,AlGaN層11中の正の電荷52からの電気力線は全てゲート絶縁膜31中の負の電荷40に向かい,GaN層10側に負の電荷が誘起されることはない。 ゲート絶縁膜31の負の電荷40がAlGaN層11中の正の電荷52を補償して余りある十分な量ある場合には,GaN層10中にも正の電荷53が誘起される。この正の電荷53は,イオン化した残留ドナーあるいはGaN層10中に誘起される正孔によってもたらされ,AlGaN/GaN系HFET(1A)のしきい値電圧V_(th)を正の方向に移動させることが可能である。」 「 」 図1から,ソース電極(S)21,ドレイン電極(D)22及びゲート電極(G)34は,GaN層10及びAlGaN層11の上方に形成されていること,ゲート酸化膜31は,ソース電極(S)21とドレイン電極(D)22の間でAlGaN層11を覆う領域を有すること,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40はゲート電極(G)34に接触した領域であること,ゲート酸化膜31のうちソース電極(S)21とドレイン電極(D)22の間でAlGaN層11を覆う領域であって,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40以外の領域は,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40と同じ層であり,且つ,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40よりもソース電極(S)21とドレイン電極(D)22側に位置する領域を有することがみてとれる。 (イ)引用発明 したがって,上記(ア)から,引用文献2には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「サファイア基板9と,サファイア基板9上に形成されたGaN層10と,GaN層10上に形成されたAlGaN層11と,ソース電極(S)21と,ドレイン電極(D)22と,ソース電極21およびドレイン電極22との間の動作領域上に化学気相堆積法(Chemical Vapor Deposition:CVD)により堆積された酸化Si(SiO_(2))からなるゲート酸化膜31と,ゲート電極(G)34で構成され, ソース電極(S)21,ドレイン電極(D)22及びゲート電極(G)34は,GaN層10及びAlGaN層11の上方に形成されており, ゲート酸化膜31は,ソース電極(S)21とドレイン電極(D)22の間でAlGaN層11を覆う領域を有し, バンドギャップの広いAlGaN層11と,AlGaN層11よりもバンドギャップの狭いGaN層10とのヘテロ接合界面が形成され, 窒化物半導体の結晶構造による自発分極と,界面の歪によるピエゾ分極によりAlGaN中で分極が起こり,その結果,AlGaN/GaN界面のGaN側にマイナスの電荷(電子)が蓄積し,高濃度の二次元電子ガスを形成され, ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40には,イオンの注入により,例えばフッ素イオンF^(-)等の負のイオンが添加され, ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40はゲート電極(G)34に接触した領域であり, ゲート酸化膜31のうちソース電極(S)21とドレイン電極(D)22の間でAlGaN層11を覆う領域であって,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40以外の領域は,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40と同じ層であり,且つ,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40よりもソース電極(S)21とドレイン電極(D)22側に位置する領域を有する, 窒化物系半導体電界効果トランジスタ1A。」 イ 引用文献4 (ア)引用文献4の記載 前置報告書において引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2012-124441号公報(前置報告書で引用された引用文献4。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0002】 窒化物半導体であるGaN,AlN,InNまたは,これらの混晶からなる材料等は,広いバンドギャップを有しており,高出力電子デバイスまたは短波長発光デバイス等として用いられている。このうち,高出力デバイスとしては,電界効果型トランジスタ(FET:Field effect transistor),特に,高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)に関する技術が開発されている(例えば,特許文献1)。このような窒化物半導体を用いたHEMTは,高出力・高効率増幅器,大電力スイッチングデバイス等に用いられる。 【0003】 ところで,このような用途に用いられるHEMTは,ノーマリーオフであること,絶縁耐圧が高いこと等が求められている。特に,ノーマリーオフは安全動作の観点から重要であることから,ノーマリーオフ化のための様々な方法が検討されている。ノーマリーオフ化の為の方法の一つとして,ゲート電極の直下の半導体層の一部を除去することによりゲートリセスを形成する方法がある。この方法により形成されるゲートリセス構造では,電極間の抵抗成分を増加させることなく,閾値電圧を正にすることが可能である等の利点を有している。また,電力用途に用いられるノーマリーオフの半導体デバイスでは,高いドレイン耐圧やゲート耐圧が求められるため,横型構造のFETやHEMTにおいては,ゲート絶縁膜となる絶縁膜を形成したMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造が用いられている。このように,GaN系の半導体材料を用いたHEMTにおいては,ゲートリセス構造及びMIS構造を組み合わせた構造とすることにより,電力用途に適した半導体デバイスとすることができる。」 「【0024】 次に,図3(c)に示すように,塩素成分を含むガスを用いたRIE等のドライエッチングを行なうことにより,レジストパターン21が形成されていない領域,即ち,開口領域21aにおける電子供給層13の一部又は全部を除去し,ゲートリセス22を形成する。」 「【0034】 次に,図5(a)に示すように,ゲートリセス22が形成されている領域上に,絶縁膜31を介しゲート電極32を形成する。具体的には,絶縁膜31上にフォトレジストを塗布し,露光装置による露光,現像を行なうことにより,ゲート電極32が形成される領域に開口領域を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後,真空蒸着により厚さが約30nmのNi膜,厚さが約400nmのAu膜を順次成膜することにより金属膜を形成する。更に,この後,有機溶剤等を用いたリフトオフを行なうことにより,レジストパターン上に形成された金属膜がレジストパターンとともに除去され,レジストパターンの形成されていない領域に成膜されている金属膜によりゲート電極32が形成される。」 「【図5】(b) 」 図5(b)から,ゲート電極32は,ゲートリセス22にまたがるように,すなわち,ゲートリセス22よりも幅広に形成されていること,また,ゲート電極32がゲートリセス22よりも幅広に形成されることにより,ゲート電極32は,平面視でゲートリセス22に重なる領域とゲートリセス22に重ならない領域とを有し,絶縁膜31のうち,ゲート電極32に接触する領域は,ゲートリセス22に合わせて下方に窪んだ領域と,絶縁膜31のうちゲート電極32に接触する領域以外の領域と同じ層内に位置する領域とを有することがみてとれる。 (イ)上記記載から,引用文献4には,次の技術が記載されていると認められる。 a HEMTにおいて,ノーマリーオフ化の為の方法の一つとして,ゲート電極の直下の半導体層の一部を除去することによりゲートリセスを形成する方法があり,この方法により形成されるゲートリセス構造では,電極間の抵抗成分を増加させることなく,閾値電圧を正にすることが可能である等の利点を有していること。(段落【0003】) b 引用文献4に記載されたHEMTにおいて,ゲート電極32は,ゲートリセス22にまたがるように,すなわち,ゲートリセス22よりも幅広に形成されていること,また,ゲート電極32がゲートリセス22よりも幅広に形成されることにより,ゲート電極32は,平面視でゲートリセス22に重なる領域とゲートリセス22に重ならない領域とを有し,絶縁膜31のうち,ゲート電極32に接触する領域は,ゲートリセス22に合わせて下方に窪んだ領域と,絶縁膜31のうちゲート電極32に接触する領域以外の領域と同じ層内に位置する領域とを有すること。(【図5】(b)) ウ 引用文献5 (ア)引用文献5の記載 前置報告書で引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2014-207287号公報(前置報告書で引用された引用文献5。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は,高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)を備えた半導体装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来より,ノーマリオフ型のHEMTを備えた半導体装置が提案されている(例えば,特許文献1参照)。 【0003】 具体的には,この半導体装置では,電子走行層上に電子供給層がヘテロ接合されて積層された基板を用いて構成されている。そして,電子供給層には,電子走行層に達し,電子走行層と電子供給層との界面に垂直となるゲートリセスが形成されており,ゲートリセス上には絶縁膜を介してゲート電極が形成されている。また,電子供給層上には,ソース電極およびドレイン電極が形成されている。 【0004】 このような半導体装置では,電子走行層に達するゲートリセスが形成されており,電子走行層のうちゲートリセスの底面直下に位置する部分には,ヘテロ接合による2次元電子ガス層が生成されない。 【0005】 そして,ゲート電極に所定の閾値以上の電圧を印加すると,電子走行層のうちゲート電極の直下に位置する部分にゲート電圧による2次元電子ガス層が生成される。このため,ヘテロ接合による2次元電子ガス層とゲート電圧による2次元電子ガス層とによってソース電極とドレイン電極との間に電流経路(チャネル)が形成され,ソース電極-ドレイン電極間に電流が流れてオン状態となる。 【0006】 つまり,上記HEMTを備えた半導体装置では,ゲート電極に所定の閾値以上のゲート電圧を加えない状態において,ソース電極-ドレイン電極間がオフ状態となるノーマリオフ特性を得ることができる。」 「【0016】 (第1実施形態) 本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のHEMTを備えた半導体装置は,支持基板1,バッファ層2,電子走行層3,電子供給層4が順に積層された基板5を用いて構成されている。なお,本実施形態では,電子供給層4が本発明の第1半導体層に相当し,電子走行層3が本発明の第2半導体層に相当している。」 「【0018】 電子走行層3は,電子供給層4側の一面近傍に電流経路(チャネル)として機能する電子密度の高い第1,第2-2次元電子ガス層6a,6bが生成されるものであり,例えば,窒化ガリウム(GaN)が用いられる。 【0019】 電子供給層4は,電子走行層3よりも大きいバンドキャップを有するものが用いられ,電子走行層3とヘテロ接合されている。これにより,電子走行層3には,自発分極およびピエゾ分極により,電子供給層4との界面近傍に第1-2次元電子ガス層6aが生成されている。このような電子供給層4としては,例えば,窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)が用いられる。 【0020】 そして,電子供給層4には,電子走行層3に達するゲートリセス7が形成されている。」 「【0022】 また,ゲートリセス7の壁面および電子供給層4上には絶縁膜8が形成されており,ゲートリセス7の壁面に形成された絶縁膜8上には,ポリシリコンや金属等で形成されるゲート電極9が埋め込まれている。」 「【0040】 なお,上記では,ゲートリセス7が電子走行層3に達するものを説明したが,ゲートリセス7は,図3に示されるように,電子走行層3に達していなくてもよい。この場合,ゲートリセス7は,ノーマリオフ特性を得るため,第1-2次元電子ガス層6aを実質的に分断する深さとされていることが必要である。本発明者らが検討したところ,電子走行層3には,電子供給層4の厚さが5nm以下の場合に実質的なチャネルとして機能するための電子密度を有する第1-2次元電子ガス層6aが生成されないことを見出した。このため,図3のゲートリセス7は,ゲートリセス7の底面直下の電子供給層4が5nm以下となる深さとされている。」 「 」 図3から,ゲート電極9は,ゲートリセス7にまたがるように,すなわち,ゲートリセス7よりも幅広に形成されていること,また,ゲート電極9がゲートリセス7よりも幅広に形成されることにより,ゲート電極9は,平面視でゲートリセス7に重なる領域とゲートリセス7に重ならない領域とを有し,絶縁膜8のうち,ゲート電極9に接触する領域は,ゲートリセス7に合わせて下方に窪んだ領域と,絶縁膜8のうちゲート電極9に接触する領域以外の領域と同じ層内に位置する領域とを有することがみてとれる。 (イ)上記記載から,引用文献5には,次の技術が記載されていると認められる。 a 従来より,ノーマリオフ型のHEMTを備えた半導体装置が提案されており,この半導体装置では,電子走行層上に電子供給層がヘテロ接合されて積層された基板を用いて構成されており,電子供給層には,電子走行層に達し,電子走行層と電子供給層との界面に垂直となるゲートリセスが形成されており,ゲートリセス上には絶縁膜を介してゲート電極が形成されており,ゲート電極に所定の閾値以上のゲート電圧を加えない状態において,ソース電極-ドレイン電極間がオフ状態となるノーマリオフ特性を得ることができること。(段落【0002】,【0003】,【0006】) b 引用文献5に記載されたHEMTにおいて,ゲート電極9は,ゲートリセス7にまたがるように,すなわち,ゲートリセス7よりも幅広に形成されていること,また,ゲート電極9がゲートリセス7よりも幅広に形成されることにより,ゲート電極9は,平面視でゲートリセス7に重なる領域とゲートリセス7に重ならない領域とを有し,絶縁膜8のうち,ゲート電極9に接触する領域は,ゲートリセス7に合わせて下方に窪んだ領域と,絶縁膜8のうちゲート電極9に接触する領域以外の領域と同じ層内に位置する領域とを有すること。(【図3】) (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「サファイア基板9」は,本件補正発明の「基板」に相当する。 (イ)本件補正発明の「前記基板上方のチャネル層」と引用発明の「GaN層10」とを対比する。 引用発明の「GaN層10」は,「サファイア基板9上に形成され」,「AlGaN/GaN界面のGaN側にマイナスの電荷(電子)が蓄積し,高濃度の二次元電子ガスを形成され」るものであるので,本件補正発明の「前記基板上方のチャネル層」に相当する。 (ウ)本件補正発明の「前記チャネル層上方のキャリア供給層」と引用発明の「AlGaN層11」とを対比する。 引用発明の「AlGaN層11」は,「GaN層10上に形成され」,「AlGaN中で分極が起こり,その結果,AlGaN/GaN界面のGaN側にマイナスの電荷(電子)が蓄積し,高濃度の二次元電子ガスを形成され」る層であるので,本件補正発明の「前記チャネル層上方のキャリア供給層」に相当する。 (エ)引用発明の「ゲート電極(G)34」,「ソース電極(S)21」,「ドレイン電極(D)22」は,それぞれ本件補正発明の「ゲート電極」,「ソース電極」,「ドレイン電極」に相当する。 また,引用発明の「ソース電極(S)21,ドレイン電極(D)22及びゲート電極(G)34は,GaN層10及びAlGaN層11の上方に形成されて」いることから,本件補正発明と引用発明とは「前記チャネル層及び前記キャリア供給層上方のゲート電極,ソース電極及びドレイン電極」を有する点で一致する。 (オ)引用発明の「ゲート酸化膜31」は,「ソース電極(S)21とドレイン電極(D)22の間でAlGaN層11を覆う領域を有」するので,本件補正発明の「前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間で前記キャリア供給層を覆う絶縁膜」に相当する。 (カ)本件補正発明の「前記絶縁膜は,前記ゲート電極下で前記ゲート電極と直接的に接触する,陰イオンを含有する第1の領域と,前記第1の領域よりも前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側に前記第1の領域よりも陰イオンの含有量が小さい第2の領域と,を有」することと,引用発明の「ゲート酸化膜31」とを対比する。 引用発明の「ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40には,イオンの注入により,例えばフッ素イオンF^(-)等の負のイオンが添加され」ており,「ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40」は「ゲート電極(G)34に接触した領域である」ことから,引用発明の「ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40」は本件補正発明の「第1の領域」に相当し,本件補正発明と引用発明は「前記絶縁膜は,前記ゲート電極下で前記ゲート電極と直接的に接触する,陰イオンを含有する第1の領域」を有する点で一致する。 また,引用発明における「ゲート酸化膜31のうちソース電極(S)21とドレイン電極(D)22の間でAlGaN層11を覆う領域であって,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40以外の領域」は,「ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40よりもソース電極(S)21とドレイン電極(D)22側に位置する領域を有」し,「フッ素イオンF^(-)等の負のイオンが添加され」る「ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40」よりも陰イオンの含有量が少ないことは明らかであるから,本件補正発明と引用発明とは「前記第1の領域よりも前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側に前記第1の領域よりも陰イオンの含有量が小さい第2の領域」を有する点で一致する。 したがって,本件補正発明と引用発明とは,「前記絶縁膜は,前記ゲート電極下で前記ゲート電極と直接的に接触する,陰イオンを含有する第1の領域と,前記第1の領域よりも前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側に前記第1の領域よりも陰イオンの含有量が小さい第2の領域と,を有」する点で一致する。 (キ)本件補正発明の「前記第2の領域は,前記ゲート電極と直接的に接触する前記第1の領域のうち前記リセス領域に合わせて下方に窪んでいない部分と同じ層内に存する」ことと,引用発明の「ゲート酸化膜31のうちソース電極(S)21とドレイン電極(D)22の間でAlGaN層11を覆う領域であって,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40以外の領域は,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40と同じ層であ」ることとを対比する。 引用発明の「ゲート酸化膜31のうちソース電極(S)21とドレイン電極(D)22の間でAlGaN層11を覆う領域であって,ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40以外の領域」は,「ゲート酸化膜31のゲート電極(G)34直下の領域中40と同じ層であ」るので,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,「前記第2の領域は,前記ゲート電極と直接的に接触する前記第1の領域と同じ層内に存する」点で共通する。 (ク)引用発明の「窒化物系半導体電界効果トランジスタ1A」は,本件補正発明の「化合物半導体装置」に対応する。 イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 【一致点】 「基板と, 前記基板上方のチャネル層と, 前記チャネル層上方のキャリア供給層と, 前記チャネル層及び前記キャリア供給層上方のゲート電極,ソース電極及びドレイン電極と, 前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間で前記キャリア供給層を覆う絶縁膜と, を有し, 前記絶縁膜は, 前記ゲート電極下で前記ゲート電極と直接的に接触する,陰イオンを含有する第1の領域と, 前記第1の領域よりも前記ソース電極側又は前記ドレイン電極側に前記第1の領域よりも陰イオンの含有量が小さい第2の領域と, を有し, 前記第2の領域は,前記ゲート電極と直接的に接触する前記第1の領域と同じ層内に存する化合物半導体装置。」 【相違点1】 本件補正発明は,「前記キャリア供給層の上方は,リセス領域を有」するのに対し,引用発明では「AlGaN層11」がリセス領域を有することについて特定されていない点。 【相違点2】 本件補正発明では,「前記ゲート電極は,平面視で前記リセス領域に重なり合う部分と前記リセス領域に重なり合わない部分とを有」するのに対し,引用発明では当該構成が特定されていない点。 【相違点3】 本件補正発明では,「前記絶縁膜の前記第1の領域は,前記リセス領域に合わせて下方に窪」むものであるのに対し,引用発明では,当該構成について特定されていない点。 【相違点4】 本件補正発明では,「第2の領域」は,「第1の領域のうち前記リセス領域に合わせて下方に窪んでいない部分」と同じ層内に存するものであるのに対し,引用発明では,ゲート酸化膜31のうちの上記領域中40(第1の領域)以外の領域(第2の領域)について,当該構成は特定されていない点。 (4)判断 以下,相違点について検討する。 ア 相違点1?4について 相違点1?4についてまとめて検討する。 (ア)前記2(2)イ(イ)及び2(2)ウ(イ)のとおり,引用文献4及び5には,HEMTにおいて,ゲート電極の直下の半導体層の一部を除去しゲートリセスを形成することにより,ノーマリーオフ化を達成できることが,従前より知られていることが記載されており,当該事項は本願出願時における周知技術であるといえるから,引用発明において,ゲート電極(G)34の直下の「AlGaN層11」にリセスを形成することは,当業者が容易に想到し得るものである。 (イ)したがって,引用発明において,引用文献4及び5に記載の周知技術に基づき,相違点1に係る本件補正発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。 (ウ)また,引用発明において,「AlGaN層11」にリセスを形成することにより,「AlGaN層11を覆う」「ゲート酸化膜31」についても,「AlGaN層11」のリセスに沿って窪んだ形状となることは自明であることから,引用発明において,引用文献4及び5に記載の周知技術に基づき,相違点3に係る本件補正発明の構成を採用することも,当業者が容易になし得たことであるといえる。 (エ)さらに,前記2(2)イ(イ)及び2(2)ウ(イ)のとおり,引用文献4及び5において,ゲート電極がゲートリセスよりも幅広に形成されていることから,引用発明において,「AlGaN層11」にリセスを形成するならば,それに際して,当該リセスをゲート電極(G)34よりも狭い幅とすることは,当業者にとって容易である。 そして,引用発明において,「AlGaN層11」にゲート電極(G)34よりも狭い幅のリセスを形成することにより,ゲート電極(G)34は,平面視でリセスに重なる領域とリセスに重ならない領域とを有すること,及び,ゲート酸化膜31のうち,ゲート電極(G)34に接触する領域は,リセスに合わせて下方に窪んだ領域と,ゲート酸化膜31のうちゲート電極(G)34に接触する領域以外の領域と同じ層内に位置する領域とを有することは自明である。 したがって,引用発明において,引用文献4及び5に記載の技術に基づき,相違点2及び4に係る本件補正発明の構成を採用することも,当業者が容易になし得たことであるといえる。 イ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献4,5に記載された周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 ウ したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献4,5に記載された周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和1年6月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?3,6に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり,この出願の請求項1?4,6に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2記載された発明に基づいて,その出願前にその発明に属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 2.特開2011-14789号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2,並びにその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は,前記第2[理由]2 で検討した本件補正発明において,(ア)「前記キャリア供給層の上方には,リセス領域が形成されて」いるとの事項を有さず,(イ)「前記ゲート電極は,平面視で前記リセス領域に重なり合う部分と前記リセス領域に重なり合わない部分とを有」するとの事項を有さず,(ウ)「前記絶縁膜の前記第1の領域は,前記リセス領域に合わせて下方に窪」むとの事項を有さず,前記第2の領域の位置する層が,第1の領域のうち,(エ)「前記リセス領域に合わせて下方に窪んでいない部分」と同じであるとの事項を有さないものである。 そして,上記(ア)?(エ)の事項は,前記第2[理由]2(3)イで指摘した,相違点1?4に係る構成にそれぞれ相当するものである。 そこで,本願発明と引用発明とを対比すると,前記第2[理由]2(3)アのとおりであるから,同イ に記載した本件補正発明と引用発明との【一致点】と同じ点で一致し,両者に相違点は認められない。 したがって,本願発明は,引用文献2に記載された発明である。 5 本願発明についてのむすび 以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し,特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-31 |
結審通知日 | 2021-04-06 |
審決日 | 2021-04-26 |
出願番号 | 特願2015-216035(P2015-216035) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 綿引 隆、柴垣 宙央 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
井上 和俊 小川 将之 |
発明の名称 | 化合物半導体装置及びその製造方法 |
代理人 | 國分 孝悦 |