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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1374721
審判番号 不服2020-12606  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-09 
確定日 2021-06-10 
事件の表示 特願2018- 63465「ワイヤレス送電装置、ワイヤレス電力伝送システム及びワイヤレス受電装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月10日出願公開、特開2019-176643〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年3月29日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 2年 2月13日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 4月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月 1日付け:拒絶査定
令和 2年 9月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年9月9日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和2年9月9日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
令和2年9月9日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、請求項1について、
本件補正前に、
「【請求項1】
ワイヤレスにより送電を行う送電コイルと、
外部から指令が入力される入力部と、
前記入力部に入力された指令を送電オンのみにより表す出力パターン、又は、前記入力部に入力された指令を送電オフのみにより表す出力パターン、又は、前記入力部に入力された指令を送電オンと送電オフの両方により表す出力パターンを出力するパターン生成回路と、
前記パターン生成回路から出力される送電オンにより前記送電コイルへ交流電力を供給し、且つ、前記パターン生成回路から出力される送電オフにより前記送電コイルへの交流電力の供給を停止する送電回路と、
を備え、
前記パターン生成回路は、前記入力部に指令が入力されると、前記出力パターンを出力する前に所定期間送電オフになる開始パターンを出力し、
前記パターン生成回路は、前記開始パターンの出力後、所定時間経過後に前記出力パターンを出力する、
ワイヤレス送電装置。」とあったところを、
本件補正により、
「【請求項1】
ワイヤレスにより送電を行う送電コイルと、
外部から指令が入力される入力部と、
前記入力部に入力された指令を送電オンのみにより表す出力パターン、又は、前記入力部に入力された指令を送電オフのみにより表す出力パターン、又は、前記入力部に入力された指令を送電オンと送電オフの両方により表す出力パターンを出力するパターン生成回路と、
前記パターン生成回路から出力される送電オンにより前記送電コイルへ交流電力を供給し、且つ、前記パターン生成回路から出力される送電オフにより前記送電コイルへの交流電力の供給を停止する送電回路と、
を備え、
前記パターン生成回路は、前記入力部に指令が入力されると、前記出力パターンを出力する前に所定期間送電オフになる開始パターンを出力し、
前記パターン生成回路は、前記開始パターンの出力後、所定時間経過後に前記出力パターンを出力し、
前記開始パターンと前記出力パターンとの間は前記送電回路によって送電オンを維持する、
ワイヤレス送電装置。」とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。

上記の補正は、パターン生成回路について、「前記開始パターンと前記出力パターンとの間は前記送電回路によって送電オンを維持する」ことを限定したものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、上記補正事項は出願当初の明細書又は図面に記載されており、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正により補正された請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下検討する。

2.引用文献、引用発明等
(1)特開2010-220284号公報
原査定の拒絶の理由で引用された特開2010-220284号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0023】
<給電装置4>
給電装置4は、例えば電気自動車が停車される場所の地面に配置される。
この給電装置4は、電磁誘導により受電装置3へ電力を供給するものである。
【0024】
給電装置4は、給電コイル2、受信回路(給電側)5、送信回路(給電側)6、給電回路12、及び給電コイルセレクター13を備える。」

イ.「【0028】
送信回路(給電側)6は、図1に示すように、給電コイル2A、2Bの端子間をそれぞれ短絡状態(ショート)又は開放状態(オープン)にするスイッチにより構成される。
そして、送信回路(給電側)6は、給電コイル2に供給される交流電流を、送信データに応じて変調する。
例えば、符号化した送信データにおいて、データの符号に応じて給電コイル2の端子間をショート/オープンして、当該給電コイル2に供給される高周波電流の振幅を変調する2値ASKを行う。
また、送信回路(給電側)6は、複数の給電コイル2のうち、交流電流が供給されてない給電コイル2の端子間をオープンにする。詳細は後述する。
【0029】
給電回路12は、複数の給電コイル2のうち、受電装置3に給電が可能な給電コイル2を選択し、当該給電コイル2に高周波(例えば数十kHz以上)の交流電流(以下「高周波電流」という。)を供給する。」

ウ.「【0039】
次に、給電装置4の送信回路(給電側)6は、図2のスイッチ制御22に示すように、スイッチのON、及びOFF制御を行い、給電コイル2Aの端子間をショート/オープンにする。
これにより、図2の振幅変調データ23に示すように、給電コイル2に供給する高周波電流である給電電流21を、所定の間隔でオンオフ(変動)させる。
ここでは、所定の間隔として、一定期間Lowレベルの後、Hiレベルを継続する。」

エ.「【0048】
なお、図2の例では、給電装置4からの送信データは、1箇所がLowレベルになっているだけであるが、これに限らず、データ列を送信するようにしても良い。
例えば図3のように、送信回路(給電側)6は、送信データ31に応じて高周波電流をオンオフした後、給電回路12は、一定レベルの受信データ用無変調波32を出力する。
そして、受電装置3の受信回路(受電側)7は、給電装置4からの送信データ31を受信した後、受信データ33のデータ列に応じて、送信回路(受電側)8の負荷変動スイッチを制御して、受信データ用無変調波32を振幅変調する。
このような動作により、給電装置4と受電装置3との間でデータ列を送受信するようにしても良い。」

オ.「【0088】
(構成)
図7は実施の形態3に係る非接触受給電装置の構成を示す図である。
図7に示すように、本実施の形態3における受電装置3は、上記実施の形態1の構成に加え、通信制御回路(受電側)61、結合回路(受電側)62、及び受電側接続手段63を備える。
また、本実施の形態3における給電装置4は、上記実施の形態1の構成に加え、通信制御回路(給電側)71、結合回路(給電側)72、給電側接続手段73、及び整流回路74を備える。」

カ.「【0097】
(動作)
まず、電力線搬送通信方式を用いて、給電装置4側から受電装置3側に対する情報伝達について説明する。
【0098】
例えば宅内やビルに配置された情報通信機器から電力線に対して、電力線搬送通信の信号が重畳される。
給電装置4の結合回路(給電側)72は、給電側接続手段73を介して接続された電力線(AC電源)と結合し、電力線に重畳された電力線搬送通信の信号(通信データ)を取得する。
【0099】
次に、給電装置4の通信制御回路(給電側)71は、電力線搬送通信の信号(通信データ)をASK信号に変換する。
そして、送信回路(給電側)6は、ASK信号に応じて、給電コイル2に給電される高周波電流を変調する。この変調動作は上記実施の形態1と同様である。」

キ.「【0113】
(効果)
以上のように本実施の形態においては、受電装置3及び給電装置4が接続される電力線を介して、電力線搬送通信方式を用いてデータを送受信する。
これにより、給電装置4に電源を供給する例えば宅内から、音楽データ、映像データ、カーナビゲーションシステムの更新データを例えば電気自動車内の機器に転送することが可能となる。また、例えば宅内の機器から電気自動車内の機器へ、暖気運転指示、不審者威嚇のための警笛をならすなどの操作を行うこともできる。
また、例えば電気自動車内の警報装置により、車両の振動等を検出し、不審者の通知の情報を、例えば宅内の機器に伝達したり、また、受電装置3の蓄電池11の充電量を検出し、深夜電力の時間帯に充電可能であれば、深夜電力の時間帯に充電するように、宅内から制御、監視するなどのアプリケーションが実現可能である。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



「【図7】



上記アには、「給電コイル2」、「送信回路(給電側)6」、「給電回路12」「を備え」た「給電装置4」が記載されている。また、上記オには、「給電装置4は、上記実施の形態1の構成に加え」「通信制御回路(給電側)71」、「結合回路(給電側)72」「を備える」ことが記載されている。したがって、上記ア、オによれば、「給電コイル2」「結合回路(給電側)72」「通信制御回路(給電側)71」「送信回路(給電側)6」「給電回路12」「を備え」た「給電装置4」が記載されている。

上記アには、「電磁誘導により」「電力を供給する」「給電装置4」が記載されており、給電装置4が備える給電コイル2は、「電磁誘導により」「電力を供給する」「給電コイル2」といえる。

上記カには、「宅内やビルに配置された情報通信機器から電力線に対して、電力線搬送通信の信号が重畳される」こと、「結合回路(給電側)72は」「電力線に重畳された電力線搬送通信の信号(通信データ)を取得する」ことが記載されており、上記キには、「電力線搬送通信方式を用いてデータを送受信する」ための通信データとして「暖気運転指示」「など」が記載されている。したがって、上記カ、キによれば、「宅内やビルに配置された情報通信機器から」「電力線に重畳された」「暖機運転指示」「など」の「電力線搬送通信の信号(通信データ)を取得する」「結合回路(給電側)72」が記載されている。

上記カには、「電力線搬送通信の信号(通信データ)をASK信号に変換する」「通信制御回路(給電側)71」が記載されている。

上記カには、「送信回路(給電側)6は、ASK信号に応じて、給電コイル2に給電される高周波電流を変調する。この変調動作は上記実施の形態1と同様である」と記載されている。また、実施の形態1の変調動作を記載した上記イには、「送信回路(給電側6)は」「スイッチにより構成される」と記載されており、上記ウには、「送信回路(給電側)6は」「スイッチのON、及びOFF制御を行い」「給電コイル」「の端子間をショート/オープンに」して「給電コイル2に供給する高周波電流である給電電流21を、所定の間隔でオンオフ(変動)させる」と記載されており、上記エには、「送信回路(給電側)6は、送信データ31に応じて高周波電流をオンオフ」することが記載されている。したがって、上記イないしエ及びカによれば、「ASK信号に応じて」「スイッチのON、及びOFF制御を行い」「給電コイル」「の端子間をショート/オープンに」して「給電コイル2に供給する高周波電流である給電電流21を、所定の間隔でオンオフ(変動)させる」「スイッチにより構成される」「送信回路(給電側)6」が記載されている。

上記イには、「給電コイル2に」「高周波電流」「を供給する」「給電回路12」が記載されている。

したがって、上記アないしキの記載事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電磁誘導により電力を供給する給電コイル2と、
宅内やビルに配置された情報通信機器から電力線に重畳された暖機運転指示などの電力線搬送通信の信号(通信データ)を取得する結合回路(給電側)72と、
電力線搬送通信の信号(通信データ)をASK信号に変換する通信制御回路(給電側)71と、
ASK信号に応じてスイッチのON、及びOFF制御を行い、給電コイルの端子間をショート/オープンにして、給電コイル2に供給する高周波電流である給電電流21を、所定の間隔でオンオフ(変動)させる、スイッチにより構成される送信回路(給電側)6と、
給電コイル2に高周波電流を供給する給電回路12と、
を備えた給電装置4。」

(2)特開平5-135226号公報
原査定の拒絶の理由で引用された特開平5-135226号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、非接触型情報媒体に関し、詳しくは、非接触電磁結合のICカード等のカード形情報媒体やペンダント形あるいはコイン形情報媒体等において電力エネルギーとデータとを同時に1伝送系統でしかもこれらを安定に伝送することができ、かつ、小型化、薄型化に適するような非接触型情報媒体に関する。」

イ.「【0024】なお、以上の場合、データの送信開始や送信終了は、調歩同期の場合と同じように送信データの最初にスタートビット、最後にストップビットを挿入すればよい。前記の実施例では、通常の電力伝送時点では、図3(a)のA_(1)の状態にあるので、これは、送信データでは“1”を示している。そこで、スタートビットあるいはストップビットは、“0”の状態を複数ビット挿入することで検出することができる。もちろん、“0”と“1”とはキャリア信号の振幅に対して相対的に割当てればよく、A_(1)の状態を“0”としてもよい。」

上記ア及びイの記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
「電力エネルギーとデータとを同時に1伝送系統で伝送するデータ伝送システムにおいて、データの送信開始は、調歩同期の場合と同じように送信データの最初にスタートビットを挿入し、通常の電力伝送時点では、送信データでは“1”を示し、スタートビットは、“0”の状態を複数ビット挿入する
技術。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「電磁誘導により電力を供給する給電コイル2」は、本願補正発明の「ワイヤレスにより送電を行う送電コイル」に相当する。また、引用発明の「給電装置4」は「電磁誘導により電力を供給する」装置であるから、本願補正発明の「ワイヤレス送電装置」に相当する。

(2)引用発明の「宅内やビルに配置された情報通信機器から電力線に重畳された暖機運転指示などの電力線搬送通信の信号(通信データ)を取得する結合回路(給電側)72」は、給電装置4の外部にある「宅内やビルに配置された情報通信機器」からの「指示」「を取得」するものであるから、本願補正発明の「外部から指令が入力される入力部」に相当する。

(3)引用発明の「通信制御回路(給電側)71」は、「通信データ」を「ASK信号」に「変換」して出力する回路であるから、本願補正発明の「パターン生成回路」に相当する。

(4)ア.引用発明における、「スイッチの」「OFF」に対応する「ASK信号」は、「通信データ」が「通信制御回路(給電側)71」で「変換」されて出力される信号であって、「給電コイル2に供給する高周波電流である給電電流21を、」「オン」「させる」信号であるから、本願補正発明における「パターン生成回路から出力される送電オン」に相当する。

イ.引用発明における「スイッチのON」に対応する「ASK信号」は、「通信データ」が「通信制御回路(給電側)71」で「変換」されて出力される信号であって、「給電コイル2に供給する高周波電流である給電電流21を、」「オフ」「させる」信号であるから、本願補正発明における「パターン生成回路から出力される送電オフ」に相当する。

ウ.引用発明における「ASK信号に応じてスイッチのON」「制御を行い、給電コイルの端子間をショート」「にして、給電コイル2に供給する高周波電流である給電電流21を」「オフ」「させる」ことが、本願補正発明における「送電オフにより前記送電コイルへの交流電力の供給を停止する」ことに相当する。

エ.引用発明における「ASK信号に応じてスイッチの」「OFF制御を行い、給電コイルの端子間を」「オープンにして、給電コイル2に供給する高周波電流である給電電流21を」「オン」「させる」ことが、本願補正発明における「送電オンにより前記送電コイルへ交流電力を供給」することに相当する。

オ.上記アないしエを踏まえれば、引用発明における「スイッチにより構成される送信回路(給電側6)」及び「給電回路12」が、本願補正発明における「送電回路」に相当する。

(5)本願補正発明は、「前記パターン生成回路は、前記入力部に指令が入力されると、前記出力パターンを出力する前に所定期間送電オフになる開始パターンを出力し、前記パターン生成回路は、前記開始パターンの出力後、所定時間経過後に前記出力パターンを出力し、前記開始パターンと前記出力パターンとの間は前記送電回路によって送電オンを維持する」のに対し、引用発明にはそのようなことが特定されていない点で相違する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「ワイヤレスにより送電を行う送電コイルと、
外部から指令が入力される入力部と、
前記入力部に入力された指令を送電オンのみにより表す出力パターン、又は、前記入力部に入力された指令を送電オフのみにより表す出力パターン、又は、前記入力部に入力された指令を送電オンと送電オフの両方により表す出力パターンを出力するパターン生成回路と、
前記パターン生成回路から出力される送電オンにより前記送電コイルへ交流電力を供給し、且つ、前記パターン生成回路から出力される送電オフにより前記送電コイルへの交流電力の供給を停止する送電回路と、
を備えたワイヤレス送電装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明は、「前記パターン生成回路は、前記入力部に指令が入力されると、前記出力パターンを出力する前に所定期間送電オフになる開始パターンを出力し、前記パターン生成回路は、前記開始パターンの出力後、所定時間経過後に前記出力パターンを出力し、前記開始パターンと前記出力パターンとの間は前記送電回路によって送電オンを維持する」のに対し、引用発明にはそのようなことが特定されていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。

引用文献2に記載された技術を再掲すれば、次のとおりである。
「電力エネルギーとデータとを同時に1伝送系統で伝送するデータ伝送システムにおいて、データの送信開始は、調歩同期の場合と同じように送信データの最初にスタートビットを挿入し、通常の電力伝送時点では、送信データでは“1”を示し、スタートビットは、“0”の状態を複数ビット挿入する
技術。」

また、データ通信において、「開始パターンの後、無信号状態(であるスペース)を設けること」も、例えば原査定の拒絶の理由で引用された特開2012-182703号公報の段落[0073]及び図5に記載されているとおり、周知技術である。

そして、引用発明と引用文献2に記載された技術とは、「電力」とともに「データ」を伝送する技術である点で、同じ技術分野に属するから、引用文献2に記載されたデータ伝送についての技術を引用発明における「通信データ」の伝送に適用し、引用発明において、
「通信制御回路(給電側)71」が「結合回路(給電側)72」から「通信データ」を取得して「ASK信号」に「変換」して出力するとき(本願補正発明における「前記パータン生成回路は、前記入力部に指令が入力されると」に相当する。以下、同じ。)、調歩同期の場合と同じように、「通信データ」に「変換」された「ASK信号」の最初に「スタートビット」の「“0”」、つまり引用発明における「給電電流21」が「オフ」になる「スイッチのON」信号、を挿入し(「前記出力パターンを出力する前に所定期間送電オフになる開始パターンを出力し」)、その後、「通信制御回路(給電側)71」が「通信データ」に「変換」された「ASK信号」を出力する(「前記パターン生成回路は、前記開始パターンの出力後、」「前記出力パターンを出力」する)ようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、その際、周知技術にあるとおり、「開始パターン」である「スタートビット」の出力後、「通信データ」の出力に先立って、無信号状態(であるスペース)、すなわち「OFF」の「ASK信号」を「通信制御回路(給電側)71」が出力する期間を設け、「給電コイル2」に「給電電流21」を「供給」し続けること(「開始パターンの出力後、所定時間経過後に前記出力パターンを出力し」、「前記開始パターンと前記出力パターンとの間は前記送電回路によって送電オンを維持する」こと)も、当業者が適宜なし得たことである。

この点に関し、請求人は令和2年9月9日の審判請求書にて、本願発明1は、送電中に送電オンオフパターンを用いて、送電装置から受電装置にデータ転送を可能とするものであり、本願の図2に示されるように、開始パターンと出力パターンとの間は送電オンが維持されるという特徴を有するのに対し、原査定の拒絶の理由で引用された何れの文献にも、開始パターンと出力パターンとの間は送電オンが維持されることについて開示されていない旨の主張を行っている。
しかしながら、引用文献1に記載の発明において、開始パターンの後、無信号状態(であるスペース)を設ける上記周知技術を採用した場合、無信号状態ではスイッチ制御を行わない(すなわち、スイッチがオフ状態である)通常の電力伝送状態となるから、無信号状態である所定時間は送電がオンされた状態となることは明らかであって、請求人の上記審判請求書での主張は採用することができない。

したがって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和2年9月9日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、令和2年4月27日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
ワイヤレスにより送電を行う送電コイルと、
外部から指令が入力される入力部と、
前記入力部に入力された指令を送電オンのみにより表す出力パターン、又は、前記入力部に入力された指令を送電オフのみにより表す出力パターン、又は、前記入力部に入力された指令を送電オンと送電オフの両方により表す出力パターンを出力するパターン生成回路と、
前記パターン生成回路から出力される送電オンにより前記送電コイルへ交流電力を供給し、且つ、前記パターン生成回路から出力される送電オフにより前記送電コイルへの交流電力の供給を停止する送電回路と、
を備え、
前記パターン生成回路は、前記入力部に指令が入力されると、前記出力パターンを出力する前に所定期間送電オフになる開始パターンを出力し、
前記パターン生成回路は、前記開始パターンの出力後、所定時間経過後に前記出力パターンを出力する、
ワイヤレス送電装置。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載の技術及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1.特開2010-220284号公報
2.特開平5-135226号公報
3.特開2012-182703号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2015/114796号(周知技術を示す文献)

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.引用文献、引用発明等」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]1.本件補正」で検討した本願補正発明から、パターン生成回路について、「前記開始パターンと前記出力パターンとの間は前記送電回路によって送電オンを維持する」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記限定事項を付加した本願補正発明が、前記「第2[理由]3.対比、4.判断、5.むすび」に記載したとおり、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-03-30 
結審通知日 2021-04-06 
審決日 2021-04-21 
出願番号 特願2018-63465(P2018-63465)
審決分類 P 1 8・ 56- Z (H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 竜也羽鳥 友哉  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 赤穂 嘉紀
山本 章裕
発明の名称 ワイヤレス送電装置、ワイヤレス電力伝送システム及びワイヤレス受電装置  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 荻野 彰広  
代理人 飯田 雅人  
代理人 荒 則彦  
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