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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L |
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管理番号 | 1374755 |
審判番号 | 不服2019-13833 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-10-17 |
確定日 | 2021-06-11 |
事件の表示 | 特願2016-535251「室温硬化性シリコーンゴム組成物およびその用途」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 2日国際公開、WO2015/098119、平成29年 1月 5日国内公表、特表2017-500393〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年12月25日(優先権主張:平成25年12月27日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年12月14日 :手続補正書の提出 平成31年 2月 7日付け:拒絶理由通知 同年 4月22日 :意見書、手続補正書の提出 令和 1年 7月 4日付け:拒絶査定 同年10月17日 :審判請求書、手続補正書の提出 同年11月15日 :審判請求書に対する手続補正書の提出 令和 2年 8月19日付け:拒絶理由通知 同年10月23日 :意見書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1?12に係る発明は、令和1年10月17日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1は、以下のとおりである(以下、「本願発明」という。また、本願の明細書を、「本願明細書」という。)。 「【請求項1】 (A)以下の(A1)および(A2)成分を含む混合物、 (A1)分子鎖中のケイ素原子に、一般式: 【化1】 (式中、R^(1)は同じかまたは異なる脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R^(2)はアルキル基であり、R^(3)は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0?2の整数であり、pは1?50の整数である。) で表されるアルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン (A2)前記アルコキシシリル含有基を一分子中に1個有するオルガノポリシロキサン (B)分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さず、アルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン (C)一般式: R^(4)_(b)Si(OR^(5))_((4-b)) (式中、R^(4)は一価炭化水素基であり、R^(5)はアルキル基であり、bは0?2である。) で表されるアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物、および (D)縮合反応用触媒 を含有し、更に (E)接着促進剤;および (F)補強性充填剤; のうち任意に一つまたは両方の成分を含有する室温硬化性シリコーンゴム組成物。」 第3 当審が通知した拒絶理由の概要 令和2年8月19日付けで当審が通知した拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。 「1.(進歩性)この出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:特開2001-192641号公報 引用文献2:特開2000-169713号公報(原査定の引用文献2) 引用文献3:特開2012-219113号公報(原査定の引用文献3) 引用文献4:特開平02-133490号公報(原査定の引用文献4)」 第4 当審の判断 当審は、当審が通知した上記拒絶理由と同一の理由により、依然として本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断する。 以下、詳述する。 1 引用文献及び参考文献に記載された事項 (1)引用文献1(特開2001-192641号公報)に記載された事項 本願の優先権主張日前の平成13年7月17日に頒布された刊行物である引用文献1には、下記の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 (A)(A-1)一般式: 【化1】 {式中、R^(1)およびR^(2)はアルキル基またはアルコキシアルキル基であり、R^(3)は一価炭化水素基またはハロゲン原子置換一価炭化水素基であり、aは0または1であり、Yは二価炭化水素基または一般式: 【化2】 (式中、R^(3)は前記と同じであり、Zは二価炭化水素基である。)で示される基であり、nは25℃における粘度が20?1,000,000mPa・sとなるような整数を表わす。}で示されるジオルガノポリシロキサン 20?100重量部 と(A-2)一般式: 【化3】 (式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)は前記と同じであり、R^(4)はアルキル基またはアルケニル基であり、Y、a、nは前記と同じである。)で示されるジオルガノポリシロキサン0?80重量部とからなるジオルガノポリシロキサン 100重量部、 (B)一般式:R^(5)_(b)Si(OR^(6))_(4-b) (式中、R^(5)は一価炭化水素基、R^(6)はアルキル基またはアルコキシアルキル基であり、bは0または1である。)で示されるアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物 1?25重量部 (C)有機ジルコニウム化合物触媒または有機アルミニウム化合物触媒 0.01?10重量部 からなるシーリング材組成物。 【請求項2】 (A-1)成分および(A-2)成分中のYがアルキレン基である請求項1記載のシーリング材組成物。 【請求項3】 (C)成分がジルコニウムキレートである請求項1または請求項2に記載のシーリング材組成物。 【請求項4】 建築用シーリング材である請求項1?請求項3のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。 【請求項5】 ガラスの接着用シーリング材である請求項4記載のシーリング材組成物。」(特許請求の範囲) イ「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明者は上記問題点を解消するために鋭意検討した結果、特定のジオルガノポリシロキサンを主剤とする脱アルコール型室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化触媒として、有機ジルコニウム化合物触媒または有機アルミニウム化合物触媒を使用すれば、上記のような問題点が解消することを見出し、本発明を為すに至った。即ち、本発明の目的は、保存安定性に優れ、硬化後は、接着耐久性に優れ、屋外で長期間にわたって使用しても接着力を保持し得るシーリング材となり得るシーリング材組成物を提供することにある。」(段落【0003】) ウ「【0009】本発明組成物は上記(A)成分?(C)成分からなるが、組成物を粘稠にし、硬化後の機械的強度を向上させるために無機質充填剤を含有することが好ましい。無機質充填剤としては、乾式法シリカ、湿式法シリカ等の微粉末状シリカ、これらの表面がオルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、ヘキサオルガノジシラザン、シラノール封鎖ジオルガノシロキサンオリゴマー、ジオルガノシクロシロキサンオリゴマー等の有機ケイ素化合物で疎水化処理された微粉末状シリカ;石英微粉末;炭酸カルシウム粉末;煙霧質二酸化チタン;けいそう土;水酸化アルミニウム粉末;アルミナ粉末;酸化マグネシウム粉末;酸化亜鉛粉末、炭酸亜鉛粉末が例示される。これらの無機質充填剤の配合量は、通常、(A)成分100重量部に対して5?200重量部の範囲である。また、硬化時に接触している基材に対する接着性をさらに向上させるために、接着性向上剤、例えば、アミノ基含有アルコキシシラン、エポキシ基含有アルコキシシラン、メルカプト基含有アルコキシシラン等のシランカップリング剤を含有することが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いても良いし、2種以上のシランカップリング剤を組み合わせても良い。また、アミノ基含有アルコキシ シランとエポキシ基含有アルコキシシランの反応混合物を用いても良い。これらの中でも、アミノ基含有アルコキシシランとエポキシ基含有アルコキシシランの反応混合物が、接着性向上の効果が大きく有効である。これらの接着性向上剤の配合量は、通常、(A)成分100重量部に対して0.01?5重量部の範囲である。また、硬化後のシリコーンゴムを低モジュラスにするために、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等の2官能性アルコキシシラン類、末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマーを添加配合しても良い。 【0010】さらに、これらの成分に加えて、室温硬化性シリコーンゴム組成物に配合することが公知とされる各種添加剤を配合することは本発明の目的を損なわない限り差し支えない。このような添加剤としては、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、耐熱剤、可塑剤、チクソ性付与剤、硬化促進剤、顔料が例示される。」(段落【0009】?【0010】) (2)引用文献2(特開2000-169713号公報)に記載された事項 本願の優先権主張日前の平成12年6月20日に頒布された刊行物である引用文献2には、下記の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 下記の工程から成ることを特徴とする、水分架橋にさらしたときにエラストマーを生成する室温加硫(RTV)シリコーン組成物の製造法: (i)(A)式 -SiR^(1)_(2)OH (I) で表される分子当り平均少なくとも1.2の連鎖末端基又は式 -SiR^(1)_(x)Y_(3-x) (II) で表される分子当り平均少なくとも1.2の連鎖末端基を有するポリジオルガノシロキサン〔式中の各R^(1)は炭素原子数が1?18の一価の炭化水素基から独立に選び、各Yは、アルコキシ、アシルオキシ、ケトキシモ、アミノオキシ、アミド又はアミノから独立に選び、xは0又は1である〕100重量部、(B)式 R^(1)_(z)SiX_(4-z) (III) で表されるシラン〔式中の各R^(1)は炭素原子数が1?18の一価の炭化水素基から独立に選び、各Xは、アルコキシ、アシルオキシ、ケトキシモ、アミノオキシ、アミド又はアミノから独立に選び、zは0,1又は2である〕3?15重量部、(C)充填剤5?250重量部、及び(D)触媒0.01?5重量部から成る出発材料を軸流混合タービンに供給する工程;その軸流混合タービンは、近位端及び遠位端を有するケーシング、ケーシングの縦軸に沿って配置されケーシングの縦軸に垂直な方向に回転するブレードを有するシャフト、出発材料がブレードの方向に流れるようにケーシングの近位端に装着された出発材料供給開口、及び混合材料を排出すべくケーシングの遠位端に配置の排出開口から成る; (ii)連行するガス及び揮発分を有する均一混合体を生成する回転速度でブレードを回転させることによって(A)、(B)、(C)、(D)を混合する工程; (iii)工程(ii)によって生成した混合体を真空脱ガス装置に導入する工程;及び (iv)その混合体から脱ガス及び揮発分を除去する工程から成る。 【請求項2】 前記ブレードの回転速度が、500?4000rpmであって、1?11mmギャップ間隔があることを特徴とする請求項1記載の方法。 【請求項3】 前記方法が連続法で操作されることを特徴とする請求項1記載の方法。」(特許請求の範囲) イ「【0029】本法に使用される部分(C)は、RTVシリコーンシーラントに有用であると知られているものから選択する充てん剤である。それらの充てん剤は、粉砕、沈降及びコロイド炭酸カルシウム(それらはステアレート又はステアリン酸のような化合物で処理又は非処理);ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカゲル及び疎水化シリカのような補強用シリカ及びシリカゲル;破砕石英、粉砕石英、アルミナ、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、けいそう土、酸化鉄、カーボンブラック及び黒鉛を含む。シリカ及び炭酸カルシウムがそれぞれ好適な充てん剤であり、特にフュームドシリカ及び沈降炭酸カルシウムが望ましい。 【0030】添加する充てん剤の量は、RTVシリコーン組成物に必要な物理的性質に依存する。本法によって製造されるTVシリコーン組成物に有用な充てん剤の量は成分(A)の100重量部を基準にして5?250重量部、望ましくは8.5?150重量部の量で添加される。その充てん剤は単一種又は2種以上の混合物にできる。 【0031】本法に使用される成分(D)は、組成物の室温加硫を促進するのに有効な触媒である。シリコーンシラント混合物の硬化に有用な触媒は、成分(A)及び(B)の反応性基に左右される、そしてオクタン酸鉄、オクタン酸コバルト、オクタン酸マンガン、ナフテン酸スズ及びオクタン酸スズを含む金属カルボキシレ-トのような化合物;ジブチルスズアセテート、ジブチルスズオクトエート及びジブチルスズジラウレートのような有機スズ化合物;テトライソプロピルチタネート、、テトラ-tert-ブチルチタネート及びテトラ-tert-アミルチタネートを含むテトラアルキルチタネートのようなチタン化合物;ジアルコキシアセチルアセトネート・キレート及びジアルコキシエチルアセトアセテートチタネート・キレートを含むチタネート・キレート化合物(そのアルコキシ基は、イソプロポキシ又はイソブトキシ又はオルガノシロキシ-チタン化合物を含む);ジルコニウムアルコキシド及びキレート;及びアルコキシアルミニウム化合物を含む。有機スズ化合物又はチタン化合物を使用することが望ましい。アルコキシ基が組成物に存在するときには、有機スズ化合物を使用することがさらに望ましい、そしてアルコキシ基が組成物に存在するときには、テトラアルキルチタネート又はチタネート・キレート化合物を使用することが望ましい。 【0032】本法によって製造されるRTVシリコーン組成物に有用な触媒の量は、成分(A)の100重量を基準にして0.01?5重量部、望ましくは0.025?3重量部である。その触媒は単一種又は2種以上の混合物にできる。」(段落【0029】?【0032】) ウ「【0033】RTVシリコーン組成物に通常使用される接着促進剤、レオロジー添加物、殺カビ剤、着色剤、顔料及び可塑剤のような他の成分も本法に添加できる。」(段落【0033】) エ「【0043】 【実施例】実施例1 軸流混合タービン(スイスのBuss AG社製の商品名MT-170)又はフロージェットミキサー(日本のFunnken社製の商品名FJM-300)を使用して、次の成分を20?25℃で添加した。粘度が110Pa・sのトリエトキシシリルエチレン末端封鎖ポリジエチルシロキサン重合体100重量部、粘度が0.1Pa・sのトリメチルシリルを末端基としたポリジメチルシロキサン18.6重量部、メチルトリメトキシシラン8.57重量部、テトラ-t-ブチルチタネート3.93重量部、見掛けのかさ密度が約120g/Lのヒュームドシリカ14.3重量%、及びシリコーングリコール流体1.43重量%を100kg/hrの全流量で連続的に各ミキサー中へ計量し、そしてドラムに排出した 。混合タービンにおいて配合されたシーラントの出口温度は、110℃そしてフロージェットミキサーで配合したシーラントでは108℃であった。 【0044】両方のミキサーに対して、最適の充てん剤分散系を得るべくプロセス条件を選んだ。軸流混合タービンの回転速度は、3000rpm(線速度=62.5m/sec)で、ギャップ幅が2.5mmであった。フロージェットミキサーの回転速度は、900rpm(線速度=25.4m/sec)で、ギャップ幅が15mmであった。 【0045】周期的に、試料を収集して、小チェンジカンミキサーにおいて真空(68kPa?95kPa)下5?10分間混合することによって連行ガス及び揮発分を除去した。次に2mm厚さのスラブを20?25℃及び50±5%相対湿度で7日間硬化し、試験した物理的性質及び外観を評価した。 【0046】充てん剤の分散系はシーラントの外観に影響を与えるから、各シーラントの外観は充てん剤分散系を評価することによって評価した。硬化スラブはスクリーン上に像を投影した被照明表面に置いた。充てん剤の分散は、非分散充てん剤凝集物の数を計測することによって測定し、一定の面積に対して投影上のダークスポットとして同定した。表1に示した結果は、混合タービンで配合したシーラントがフロージェットミキサーで配合したシーラントと比較して非分散充てん剤凝集物の数が低いことを示す。物理的性質の試験は表2に示す。 【表1】 【表2】 【0047】実施例2 重合体の粘度が60Pa・sであったこと及びシリカの密度が約80g/Lであったことを除いて、実施例1に記載したものと同一の成分を連続的に配合して、実施例1に記載のように試験した。混合タービンで配合したシーラントの出口温度は、110℃そしてフロージェットミキサーで配合したシーラントでの温度は90℃であった。 【0048】表3に示した結果は、混合タービンで配合したシーラントがフロージェットミキサーで配合したシーラントと比較して非分散充てん剤凝集物の数が低いことを示す。物理的性質の試験は表4に示す。 【表3】 【表4】 【0049】実施例3 軸流混合タービン又は・フロージェットミキサーを使用して、次の成分を20?25℃で連続的に配合した。重合体の一つのタイプが式 【化15】 によって記載され、重合体の別のタイプが式 【化16】 によって表されるポリジメチルシロキサンの混合体〔この重合体の混合体において連鎖末端基の20%はオルガノシリル連鎖末端基であり、fは重合体の混合体の全粘度が65Pa・sであるような平均値を有した〕100重量部、メチルトリメトキシシラン5.6重量部、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタネート1.5重量%、テトラ-n-ブチルチタネート0.43重量%、沈降炭酸カルシウム73重量%、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.25重量%及びエチレンジアミンプロピルトリメトキシシラン0.2重量%を100kg/hrの全流量で連続的に各ミキサー中へ計量し、そしてドラムに排出した。混合タービンにおいて配合されたシーラントの出口温度は、134℃そしてフロージェットミキサーで配合したシーラントでは97℃であった。 【0050】両方のミキサーに対して、最適の充てん剤分散系を得るべくプロセス条件を選んだ。軸流混合タービンの回転速度は、2000?3000rpm(線速度=41.7-62.5m/sec)で、ギャップ幅が2.5mmであった。フロージェットミキサーの回転速度は、900?1200rpm(線速度=25.4?33.8m/sec)で、ギャップ幅が15mmであった。 【0051】周期的に、試料を収集して、小チェンジカンミキサーにおいて真空(68kPa?95kPa)下5?10分間混合することによって連行ガス及び揮発分を除去した。次に2mm厚さのスラブを20?25℃及び50±5%相対湿度で7日間硬化し、試験した物理的性質及び外観を評価した。外観は次のように定義した評価により数値尺度で評価した: 1.優れた外観、滑らかな表面、粒状状態又は充てん剤凝集物の証拠なし。 2.良好な外観、ときどき凝集物又は少しの粒状状態が見られる。 3.並の外観、若干の凝集物又は少しの粒状状態が見られる。 4.乏しい外観、表面に著しい粒状状態又は多数の凝集物が見られる。 5.悪い外観、全面が粒状状態又は充てん剤の凝集物によって特徴付けられる。 【0052】軸流混合タービンでは、上記評価尺度が1?2の外観評価を示す配合シーラントが得られた。フロージェットミキサーの配合シーラントは、上記評価尺度が4?5であった。物理的性質の試験結果を表5に示す。 【表5】 【0053】実施例4 軸流混合タービン又は・フロージェットミキサーを使用して、次の成分を20?25℃で添加した。粘度が17Pa・sのポリジエチルシロキサン(85%ヒドロキシル末端封鎖/15%トリメチル末端封鎖)100重量部、メチルトリアセトキシシランとエチルトリアセトキシシランの50/50重量%混合物5.24重量%、ヒュームドシリカ11.7重量%、及びジブチルスズジアセテート0.0263重量%を100kg/hrの全流量で連続的に各ミキサー中へ計量し、そしてドラムに排出した。混合タービンにおいて配合されたシーラントの出口温度は、102℃そしてフロ-ジェットミキサーで配合したシーラントでは67℃であった。 【0054】両方のミキサーに対して、最適の充てん剤分散系を得るべくプロセス条件を選んだ。軸流混合タービンの回転速度は、1000?3000rpm(線速度=20.8?62.5m/sec)で、ギャップ幅が2.5mmであった。フロージェットミキサーの回転速度は、900rpm(線速度=25.4m/sec)で、ギャップ幅が15mmであった。 【0055】周期的に、試料を収集して、小チェンジカンミキサーにおいて真空(68kPa?95kPa)下5?10分間混合することによって連行ガス及び揮発分を除去した。次に2mm厚さのスラブを20?25℃及び50±5%相対湿度で7日間硬化し、試験した物理的性質及び外観を評価した。外観は実施例3で定義した評価で数値尺度により格付けした。軸流混合タービンでは、上記評価尺度が2?3の外観評価を示す配合シーラントが得られた。フロージェットミキサーの配合シーラントは、同じ尺度で4の外観評価を有した。物理的性質の試験結果を表4に示す。 【表6】 」(段落【0043】?【0055】) (3)引用文献3(特開2012-219113号公報)に記載された事項 本願の優先権主張日前の平成24年11月12日に頒布された刊行物である引用文献3には、下記の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 (A)分子鎖中のケイ素原子に、一般式: 【化1】 (式中、R^(1)は同じかまたは異なる脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R^(2)はアルキル基であり、R^(3)は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0?2の整数であり、pは1?50の整数である。) で表されるアルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン 100質量部、 (B)分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサン 1?100質量部、 (C)一般式: R^(4)_(b)Si(OR^(5))_((4-b)) (式中、R^(4)は一価炭化水素基であり、R^(5)はアルキル基であり、bは0または1である。) で表されるアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物 0.5?30質量部、 および (D)縮合反応用触媒 0.1?10質量部 から少なくともなる室温硬化性シリコーンゴム組成物。 【請求項2】 (A)成分の25℃における粘度が100?1,000,000mPa・sである、請求項1記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。 【請求項3】 (A)成分が、分子鎖両末端のケイ素原子にアルコキシシリル含有基を有する直鎖状のオルガノポリシロキサンである、請求項1記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。 【請求項4】 (A)成分中のアルコキシシリル含有基が、式: 【化2】 で表される基である、請求項1記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。 【請求項5】 (B)成分の25℃における粘度が10?1,000,000mPa・sである、請求項1記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物 【請求項6】 さらに、(E)接着促進剤を(A)成分100質量部に対して0.01?10質量部含有する、請求項1記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。 【請求項7】 (E)成分が、エポキシ基含有アルコキシシラン、アクリル基含有アルコキシシラン、アミノ基含有アルコキシシラン、およびエポキシ基含有アルコキシシランとアミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物からなる群より選択される少なくとも一種の接着促進剤である、請求項6記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。 【請求項8】 さらに、(F)補強性充填剤を(A)成分100質量部に対して0.1?50質量部含有する、請求項1記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。 【請求項9】 (F)成分が、ヒュームドシリカ微粉末、沈降性シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、およびヒュームド酸化チタン微粉末からなる群より選択される少なくとも一種の補強性充填剤である、請求項8記載の室温硬化性シリコーンゴム組成物。」(特許請求の範囲) イ「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の目的は、空気中の水分と接触することにより室温で硬化し、硬化途上で接触している基材に対して良好な接着性を示す室温硬化性シリコーンゴム組成物を提供することにある。」(段落【0005】) ウ「【0021】 (B)成分は、本組成物の接着性を向上させるための成分であり、分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンである。(B)成分中のケイ素原子に結合する水酸基およびアルコキシ基以外の基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、特に好ましくは、メチル基、ビニル基、フェニル基である。(B)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状が挙げられ、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状である。(B)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、10?1,000,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは、50?100,000mPa・sの範囲内である。(B)成分の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られるシリコーンゴムから(B)成分のブリードアウトを抑制でき、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の取扱作業性が向上する。 【0022】 (B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1?100質量部の範囲内であり、好ましくは、1?80質量部の範囲内であり、さらに好ましくは、1?70質量部の範囲内であり、特に好ましくは、1?60質量部の範囲内である。(B)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の接着性が良好となり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られるシリコーンゴムから(B)成分のブリードアウトを抑制できる。特に、有機樹脂に対する接着性が良好であることから、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、15?60質量部の範囲内であることが好ましい。」(段落【0021】?【0022】) エ「【0028】 本組成物は、硬化途上で接触している有機樹脂に対する接着性を向上させるため、(E)接着促進剤を含有することが好ましい。(E)成分の接着促進剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、4-オキシラニルブチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有アルコキシシラン;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;上記エポキシ基含有アルコキシシランと上記アミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物が挙げられ、特に、上記エポキシ基含有アルコキシシランと上記アミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物が好ましい。このようなエポキシ基含有アルコキシシランとアミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物を調製する方法としては、例えば、特公昭55-41702号公報や特公平7-113083号公報に記載の方法が挙げられる。 【0029】 (E)成分の含有量は、本組成物が硬化途上で接触する有機樹脂に十分な接着性を付与できる量であれば限定されないが、好ましくは、(A)成分100質量部に対して0.01?10質量部の範囲内であり、好ましくは、0.01?5質量部の範囲内である。(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、有機樹脂に対する接着性が十分であり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物が空気中の水分と接触することにより速やかに硬化する。 【0030】 本組成物には、接着性をさらに向上させるため、(F)補強性充填剤を含有することが好ましい。(F)成分としては、例えば、ヒュームドシリカ微粉末、沈降性シリカ微粉末、焼成シリカ微粉末、ヒュームド二酸化チタン微粉末、およびこれらの表面をオルガノシラン類、シラザン類、シロキサンオリゴマー等で表面処理して疎水化した微粉末が挙げられる。このような(F)成分の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.1?50質量部の範囲内であることが好ましい。 【0031】 また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、例えば、石英微粉末、炭酸カルシウム微粉末、けいそう土微粉末、水酸化アルミニウム微粉末、アルミナ微粉末、水酸化マグネシウム微粉末、マグネシア微粉末、酸化亜鉛微粉末、炭酸亜鉛微粉末、およびこれらの表面をオルガノシラン類、シラザン類、シロキサンオリゴマー等で表面処理して疎水化した非補強性充填剤;その他、有機溶剤、防カビ剤、難燃剤、耐熱剤、可塑剤、チクソ性付与剤、硬化促進剤、顔料を含有してもよい。 【0032】 本組成物は、(A)成分?(D)成分、および必要に応じて、(E)成分、(F)成分、その他任意の成分を湿気遮断下で均一に混合することにより製造することができる。このようにして調製された本組成物は、湿気遮断下、密閉容器中に封入することにより長期間貯蔵することができ、空気中の水分と接触することにより速やかに硬化して、シリコーンゴムを形成することができる。」(段落【0028】?【0032】) オ「【実施例】 【0033】 本発明の室温硬化性シリコーンゴム組成物を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中、粘度は25℃における値である。また、室温硬化性シリコーンゴム組成物の接着性は次の方法により評価した。 【0034】 <室温硬化性シリコーンゴム組成物の接着性の評価方法> 室温硬化性シリコーンゴム組成物を、基材{ガラス板、アルミニウム板(Al板)、アルマイト処理アルミニウム板(アルマイト処理Al板)、銅板、フェノール樹脂板、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂板、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂板、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂}上にビード状に塗布した。その後、温度23±2℃、湿度50±5%の条件下で7日間静置して、室温硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させた。次に、得られたシリコーンゴムをヘラで基材から引き剥がし、シリコーンゴムの接着面積に対する凝集破壊したシリコーンゴムの面積の割合(CF率)を求めた。すなわち、CF率が100%であることは、基材に対してシリコーンゴムが良好な接着性を示したことを意味し、CF率が0%であることは、基材に対してシリコーンゴムが界面剥離したことを意味する。 【0035】 (A-1)成分:粘度が10,000mPa・sであり、分子鎖両末端のケイ素原子に、式: 【0036】 【化11】 で表されるトリメトキシシリルエチル含有基を有するジメチルポリシロキサン (A-2)成分:粘度が500mPa・sであり、分子鎖両末端のケイ素原子に、 式: 【0037】 【化12】 で表されるトリメトキシシリルエチル含有基を有するジメチルポリシロキサン (B-1)成分:粘度が500mPa・sであり、分子鎖両末端のケイ素原子にトリメチルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン (B-2)成分:粘度が100mPa・sであり、分子鎖両末端のケイ素原子にトリメチルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン (B-3)成分:粘度が9,000mPa・sであり、分子鎖両末端のケイ素原子にジメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン (B-4)成分:粘度が40,000mPa・sであり、分子鎖両末端のケイ素原子にジメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン (B-5)成分:粘度が400mPa・sであり、分子鎖両末端のケイ素原子にジメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン (C-1)成分:メチルトリメトキシシラン (D-1)成分:チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート) (E-1)成分:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと3-アミノプロピルトリメトキシシランとをモル比2:1で反応させてなる反応混合物 (F-1)成分:BET法による比表面積が130m^(2)/gであり、表面がヘキサメチルジシラザンで処理されたヒュームドシリカ微粉末 【0038】 [実施例1?12,比較例1] 湿気遮断下、(A-1)成分、(B-1)成分、(B-2)成分、(B-3)成分、(B-4)成分、(C-1)成分、(D-1)成分、および(E-1)成分を表1に示される配合量で均一に混合して室温硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。この室温硬化性シリコーンゴム組成物の接着性を評価し、その結果を表1に示した。 【0039】 【表1】 【0040】 [実施例13?16、比較例2] 湿気遮断下、(A-2)成分、(B-1)成分、(B-5)成分、(C-1)成分、(D-1)成分および(E-1)成分を表2に示される配合量で均一に混合して室温硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。この室温硬化性シリコーンゴム組成物の接着性を評価し、その結果を表2に示した。 【0041】 【表2】 【0042】 [実施例17?18、比較例3] 湿気遮断下、(A-2)成分、(B-1)成分、(C-1)成分、(D-1)成分、(E-1)成分、および(F-1)成分を表3に示される配合量で均一に混合して室温硬化性シリコーンゴム組成物を調製した。この室温硬化性シリコーンゴム組成物の接着性を評価し、その結果を表3に示した。 【0043】 【表3】 」(段落【0033】?【0043】) (4)参考文献1(特開2013-124343号公報)に記載された事項 本願の優先権主張日前の平成25年6月24日に頒布された刊行物である参考文献1には、下記の事項が記載されている。 ア「【請求項1】 (A1)一般式: 【化1】 (式中、R^(1)は1価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基およびシアノアルキル基から選ばれる基、R^(2)はアルキル基、Xは2価の酸素(オキシ基)または2価の炭化水素基、nは25℃における粘度が0.02?1000Pa・sとなるような正数を表す。)で表される両末端がトリアルコキシシリル基で封鎖されたポリオルガノシロキサンと、 (A2)一般式: 【化2】 (式中、R^(3)は1価炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基およびシアノアルキル基から選ばれる基、R^(4)はアルキル基、Xは2価の酸素(オキシ基)または2価の炭化水素基、mは25℃における粘度が0.02?1000Pa・sとなるような正数を表す。)で表される両末端がジアルコキシシリル基で封鎖されたポリオルガノシロキサンとからなる混合物(A)であり、 該(A)成分中のアルコキシ基を有する末端基の合計に対する前記(A2)成分中のアルコキシ基を有する末端基の割合が、40?80モル%であるポリオルガノシロキサン混合物(A)100重量部と、 (B)一般式: 【化3】 (式中、R^(5)は1価炭化水素基、lは25℃における粘度が0.02?1000Pa・sPa・sとなり、かつ成分(A)成分の粘度より低くなるような正数を表す。)で表されるジオルガノポリシロキサン1?50重量部と、 (C)無機充填剤1?300重量部と、 (D)一般式: R^(6)_(a)Si(OR^(7))_(4-a) (式中、R^(6)は1価炭化水素基、R^(7)はアルキル基またはアルコキシ置換アルキル基、aは0、1、または2である。) で表されるアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物0.5?15重量部と、 (E)チタンキレート触媒0.1?10重量部、および (F)接着性付与剤0.01?5重量部 を含有することを特徴とする室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。 【請求項2】 前記(F)接着性付与剤として、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートを含有することを特徴とする請求項1に記載の室温硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。」(特許請求の範囲) イ「【0033】 本発明の実施形態において、(B)成分の一般式: 【化6】 で表されるジポリオルガノシロキサンは、組成物の接着性を顕著に向上させる成分である。式中、R^(5)は1価炭化水素基であり、前記したR^(1)と同様の1価炭化水素基が挙げられる。メチル基が特に好ましい。 【0034】 (B)成分のジポリオルガノシロキサンは、25℃における粘度が0.02?1000Pa・s、好ましくは0.02?100Pa・s、より好ましくは0.05?3Pa・sである。また、(B)成分の粘度は前記(A)成分の粘度より低いことが必須である。具体的には、(A1)成分および(A2)成分として、粘度が0.1?30Pa・s(25℃)のものを使用し、(B)成分として粘度0.05?3Pa・sのものを使用する組み合せが好ましい。 【0035】 この(B)成分は、系中では反応せず、また基材とも反応しないため、通常は接着向上剤としては機能しないものであるが、本発明の(A)成分や、後述する(C)成分、(D)成分と組み合わせることにより、基材との濡れ性が増し、接着性を向上させる。(B)成分の配合量は、前記(A)成分100重量部に対して1?50重量部、より好ましくは5?30重量部である。1重量部未満では効果が得られず、50重量部を超えるとブリードすることがある。」(【0033】?【0035】) 2 引用文献2に記載された発明 引用文献2の実施例3には、軸流混合タービン又はフロージェットミキサーを使用した製造法により得られるシーラントが記載されており(上記1(2)エ)、具体的には、「重合体の一つのタイプが式 【化15】 によって記載され、重合体の別のタイプが式 【化16】 によって表されるポリジメチルシロキサンの混合体〔この重合体の混合体において連鎖末端基の20%はオルガノシリル連鎖末端基であり、fは重合体の混合体の全粘度が65Pa・sであるような平均値を有した〕100重量部、メチルトリメトキシシラン5.6重量部、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタネート1.5重量%、テトラ-n-ブチルチタネート0.43重量%、沈降炭酸カルシウム73重量%、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.25重量%及びエチレンジアミンプロピルトリメトキシシラン0.2重量%を100kg/hrの全流量で連続的に各ミキサー中へ計量し、そしてドラムに排出」し、「周期的に、試料を収集して、小チェンジカンミキサーにおいて真空(68kPa?95kPa)下5?10分間混合することによって連行ガス及び揮発分を除去」することにより得られるシーラントが記載されている。 そして、引用文献2の特許請求の範囲には、「水分架橋にさらしたときにエラストマーを生成する室温加硫(RTV)シリコーン組成物の製造法」が記載され(上記1(2)ア)、上記実施例3は、その製造法の実施例であるから、上記シーラントは、水分架橋にさらしたときにエラストマーを生成する室温加硫(RTV)シリコーン組成物である。 そうすると、引用文献2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「重合体の一つのタイプが式 【化15】 によって記載され、重合体の別のタイプが式 【化16】 によって表されるポリジメチルシロキサンの混合体〔この重合体の混合体において連鎖末端基の20%はオルガノシリル連鎖末端基であり、fは重合体の混合体の全粘度が65Pa・sであるような平均値を有した〕100重量部、メチルトリメトキシシラン5.6重量部、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタネート1.5重量%、テトラ-n-ブチルチタネート0.43重量%、沈降炭酸カルシウム73重量%、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.25重量%及びエチレンジアミンプロピルトリメトキシシラン0.2重量%を100kg/hrの全流量で連続的に軸流混合タービン又はフロージェットミキサー中へ計量し、そしてドラムに排出し、周期的に、試料を収集して、小チェンジカンミキサーにおいて真空(68kPa?95kPa)下5?10分間混合することによって連行ガス及び揮発分を除去することにより得られる、水分架橋にさらしたときにエラストマーを生成する室温加硫(RTV)シリコーン組成物。」(以下、「引用発明2」という。) 3 本願発明と引用発明2との対比・判断 (1)対比 引用発明2の「ポリジメチルシロキサンの混合体」における重合体の一つのタイプである式【化15】 は、両末端に2つの-CH_(2)CH_(2)Si(Me)_(2)OSi(Me)_(2)CH_(2)CH_(2)Si(OMe)_(3)の化学構造を有するポリジメチルシロキサンであり、当該化学構造中の2つの「CH_(2)CH_(2)」は、いずれも「アルキレン基」であるから、本願発明の一般式:【化1】(式は省略)における「R^(3)」に該当し、当該化学構造中の「Si(Me)_(2)OSi(Me)_(2)」の「Me」は、「脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基」であるから、本願発明の一般式:【化1】(式は省略)におけるp=1の場合の「R^(1)」に該当し、当該化学構造中の「Si(OMe)_(3)」の「Me」は、「アルキル基」であるから、本願発明の一般式:【化1】(式は省略)におけるa=0の場合の「R^(2)」に該当するものであるから、引用発明2の「式【化15】 」は、本願発明の「(A1)分子鎖中のケイ素原子に、一般式: 【化1】 (式中、R^(1)は同じかまたは異なる脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R^(2)はアルキル基であり、R^(3)は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0?2の整数であり、pは1?50の整数である。) で表されるアルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン」に相当する。 引用発明2の「ポリジメチルシロキサンの混合体」における重合体の一つのタイプである式【化16】 は、末端に-CH_(2)CH_(2)Si(Me)_(2)OSi(Me)_(2)CH_(2)CH_(2)Si(OMe)_(3)を1個有し、もう一方の末端に「-CH=CH_(2)」を有する化学構造のポリジメチルシロキサンであり、当該化学構造中の2つの「CH_(2)CH_(2)」は、いずれも「アルキレン基」であるから、本願発明の一般式:【化1】(式は省略)における「R^(3)」に該当し、当該化学構造中の「Si(Me)_(2)OSi(Me)_(2)」の「Me」は、「脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基」であるから、本願発明の一般式:【化1】(式は省略)におけるp=1の場合の「R^(1)」に該当し、当該化学構造中の「Si(OMe)_(3)」の「Me」は、「アルキル基」であるから、本願発明の一般式:【化1】(式は省略)におけるa=0の場合の「R^(2)」に該当するものであるから、引用発明2の「式【化16】 」は、本願発明の「(A2)前記アルコキシシリル含有基を一分子中に1個有するオルガノポリシロキサン」に相当する。 以上のことから、引用発明2の「重合体の一つのタイプが式【化15】(式は省略)によって記載され、重合体の別のタイプが式【化16】(式は省略)によって表されるポリジメチルシロキサンの混合体」は、本願発明の「(A1)および(A2)成分を含む混合物」に相当するといえる。 引用発明2の「メチルトリメトキシシラン」は、CH_(3)Si(OMe_(3))_(3)の化学構造を有するものであり、上記「CH_(3)」は、「一価炭化水素基」であるから、本願発明の(C)一般式:R^(4)_(b)Si(OR^(5))_((4-b))におけるb=1の場合の「R^(4)」に該当し、上記「Me」は、「アルキル基」であるから、本願発明の(C)一般式:R^(4)_(b)Si(OR^(5))_((4-b))におけるb=1の場合の「R^(5)」に該当するから、引用発明2の「メチルトリメトキシシラン」は、本願発明の「(C)一般式:R^(4)_(b)Si(OR^(5))_((4-b))(式中、R^(4)は一価炭化水素基であり、R^(5)はアルキル基であり、bは0?2である。)で表されるアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物」に相当する。 引用発明2の「ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタネート」、「テトラ-n-ブチルチタネート」は、組成物の室温加硫を促進するのに有効な触媒であり(上記1(2)イ)、また、本願明細書の段落【0039】に挙げられている「テトラ(n-ブトキシ)チタン」、「ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン」と同じ縮合反応用触媒であるから、本願発明の「(D)縮合反応用触媒」に相当する。 引用発明2の「沈降炭酸カルシウム」は、室温加硫(RTV)シリコーンシーラントに有用な充填剤であり(上記1(2)イ)、一般的に炭酸カルシウム等の充填剤は、組成物を補強するものであるから、本願発明の「(F)補強性充填剤」に相当する。 引用発明2の「エチレンジアミンプロピルトリメトキシシラン」は、本願明細書の段落【0042】に記載の「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン」と同じ化合物であるから、本願発明の「(E)接着促進剤」に相当する。 また、引用発明2の「水分架橋にさらしたときにエラストマーを生成する室温加硫(RTV)シリコーン組成物」は、室温で架橋してエラストマーを生成するものであるから(引用文献2の段落【0001】,【0007】)、本願発明の「室温硬化性シリコーンゴム組成物」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明2は以下の点で一致する。 「(A)以下の(A1)および(A2)成分を含む混合物、 (A1)分子鎖中のケイ素原子に、一般式: 【化1】 (式中、R^(1)は同じかまたは異なる脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R^(2)はアルキル基であり、R^(3)は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0?2の整数であり、pは1?50の整数である。) で表されるアルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン (A2)前記アルコキシシリル含有基を一分子中に1個有するオルガノポリシロキサン (C)一般式: R^(4)_(b)Si(OR^(5))_((4-b)) (式中、R^(4)は一価炭化水素基であり、R^(5)はアルキル基であり、bは0?2である。) で表されるアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物、および (D)縮合反応用触媒 を含有し、更に (E)接着促進剤;および (F)補強性充填剤; のうち任意に一つまたは両方の成分を含有する室温硬化性シリコーンゴム組成物。」 そして、両者は下記の点で相違する。 ・相違点1:本願発明は、「(B)分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さず、アルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン」を含有するのに対し、引用発明2はそのような特定がない点。 (2)判断 上記相違点1について検討すると、引用文献2には、RTVシリコーン組成物に通常使用される接着促進剤、レオロジー添加物、・・・可塑剤のような他の成分も添加できることが記載されている(上記1(2)ウ)。 これに対して、引用文献1には、引用文献2に記載の主剤と同様に、アルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンである下記(A)成分 「(A)(A-1)一般式: 【化1】 {式中、R^(1)およびR^(2)はアルキル基またはアルコキシアルキル基であり、R^(3)は一価炭化水素基またはハロゲン原子置換一価炭化水素基であり、aは0または1であり、Yは二価炭化水素基または一般式: 【化2】 (式中、R^(3)は前記と同じであり、Zは二価炭化水素基である。)で示される基であり、nは25℃における粘度が20?1,000,000mPa・sとなるような整数を表わす。}で示されるジオルガノポリシロキサン 20?100重量部 と(A-2)一般式: 【化3】 (式中、R^(1)、R^(2)、R^(3)は前記と同じであり、R^(4)はアルキル基またはアルケニル基であり、Y、a、nは前記と同じである。)で示されるジオルガノポリシロキサン0?80重量部とからなるジオルガノポリシロキサン」 を主剤とする「室温硬化性シリコーンゴム組成物」において、硬化後のシリコーンゴムを低モジュラスにするために、末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマーを添加配合しても良いことが記載されている(上記1(1)ア?ウ、特にイの段落【0009】)。 さらに、引用文献3にも、同じくアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンである下記(A)成分 「(A)分子鎖中のケイ素原子に、一般式: 【化1】 (式中、R^(1)は同じかまたは異なる脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基であり、R^(2)はアルキル基であり、R^(3)は同じかまたは異なるアルキレン基であり、aは0?2の整数であり、pは1?50の整数である。) で表されるアルコキシシリル含有基を一分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン」 を主剤とする「室温硬化性シリコーンゴム組成物」において、接着性を向上させるために、分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンを含有させることが記載されている(上記1(3)ア?ウ、特にウの段落【0021】)。 以上によれば、アルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンを主剤とする室温硬化性シリコーンゴム組成物において、低モジュラスや接着性の向上のために、さらに他のオルガノポリシロキサンを使用することは一般的なことといえる。 そして、引用文献3の実施例においては、上記分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンとして、その両末端にアルケニル基を有する(B-3)成分、(B-4)成分(分子鎖両末端のケイ素原子にジメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン)が用いられており、ジメチルポリシロキサンは一般に直鎖のポリマーであるといえる。そして、当該ジメチルポリシロキサン20質量部を配合した場合(実施例5,6)には、それを配合しない場合(比較例1)と比較して、接着性が向上することが示されている(上記1(3)オ)。 ここで、引用発明2に係る室温加硫(RTV)シリコーン組成物と引用文献1,3に記載された室温硬化性シリコーンゴム組成物とは、いずれも、アルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンを主剤とし、アルコキシシラン、触媒を含有する組成物であり、接着性が求められるシーリング剤(封止剤)に用いられる点で共通する。 そうすると、引用発明2に係る「室温加硫(RTV)シリコーン組成物」において、接着性を考慮して、さらに、「分子鎖両末端のケイ素原子にジメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン」を配合することは、当業者が容易に想到することである。 (3)本願発明の効果について 本願発明において顕著な効果を奏するか否かを検討するに際しては、本願発明の効果のうち引用発明と比較したときの効果を検討するものである。 本願発明の効果は、本願明細書の段落【0021】によれば、空気中の水分により室温で硬化して良好な接着性を示すとともにオイルブリード(オイル成分の滲み出し)の発生を抑制できるシリコーンゴム硬化物を形成することであるといえ、同【0051】以降の【実施例】において、(A2)成分及び(B-1)成分を含有しない比較例に比して、それらを含有する実施例が接着性やオイルブリード抑制の効果に優れることがデータとともに記載されている。 一方、引用発明と比較したときの効果としては、上記3で述べた相違点である(B)成分を配合したときの効果であるといえるところ、これは実施例、比較例において直接引用発明に対する具体例な記載がないので実施例からは理解されない。そして、本願明細書の段落【0033】には、「(B)成分は、本組成物から得られるシリコーンゴム硬化物を適度な柔らかさにするとともに接着性を向上させるための成分であり」と記載されているから、「適度な柔らかさ」と「接着性の向上」について検討する。 引用文献3には、アルコキシル基を有するポリオルガノシロキサンを主剤とする室温硬化性組成物に(B)成分に相当する化合物を配合させると接着性が向上することが明示され(上記1(3)ウ)、また、引用文献3には、シリコーンゴムが得られると記載されている(上記1(3)エの段落【0032】)ことからすれば適度な柔軟性を有するといえる。そうすると、引用発明と比較したときの効果は当業者の予測の範囲内であり、格別顕著であるとはいえない。 念のため本願発明の効果である「良好な接着性」と「オイルブリードの発生の抑制」についても検討してみるが、引用文献3には、上述のとおりアルコキシル基を有するポリオルガノシロキサンを主剤とする室温硬化性組成物に(B)成分に相当する化合物を配合させると接着性が向上することが明示され、また、(B)成分に相当する化合物の粘度や配合量を特定することでブリードアウトを抑制できることも記載されている(上記1(3)ウ)。さらに、参考文献1(上記1(4)ア及びイ)にも引用文献3と同様に、アルコキシル基を有するポリオルガノシロキサンを主剤とする室温硬化性組成物に(B)成分に相当する化合物を配合させると接着性が向上することが記載され、また、(B)成分を一定量以上配合することにより、ブリードすることがあることが記載されており、これは、本願明細書の比較例3,4における(B-2)成分の配合割合が増加するとオイルブリードが発生することを示す記載であるといえ、このことは、本願発明がオイルブリードの発生がないことを示唆することであるといえる。そうすると、室温硬化性組成物に所定量以下の(B)成分に配合させたものは、接着性が向上し、ブリードアウトも抑制できるものといえ、本願発明の効果も当業者の予測の範囲内であり、格別顕著であるとはいえない。 以上のことから、本願発明の効果は、上記した引用文献2及び3に記載された効果から予測の範囲内であるといえ、引用発明2に係る室温加硫(RTV)シリコーン組成物において、さらに、分子鎖両末端のケイ素原子にシメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサンを配合することに対して、格別顕著なものとはいえない。 4 請求人の主張について 請求人は、令和2年10月23日提出の意見書において、副引例である引用文献1,3について、 「本願発明の組成物について、モジュラスの低下は特に技術的効果として求めておらず、引用文献1においては接着性向上のために添加する組成物にはこれらの物質は挙げられておりません。よって、引用文献2の組成物に(B)分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さず、アルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンを添加する動機付けとはなりません。 また、引用文献3には(E)接着促進剤が開示されていますが、これは様々なアルコキシシランとその反応混合物が例示されており、これらは「、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、4-オキシラニルブチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有アルコキシシラン;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有アルコキシシラン;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシラン;上記エポキシ基含有アルコキシシランと上記アミノ基含有アルコキシシランとの反応混合物」が挙げられ、いずれも「分子鎖両末端のケイ素原子にシメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン」ではありません。」旨主張する。 しかしながら、上記3で述べたとおり、引用文献1には、接着性と同様に接着破断に関係するモジュラスを低くするために、末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマーを添加配合しても良いことが記載され(上記1(1)ア?ウ)、アルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンの具体的な記載はないものの、室温硬化性シリコーンゴム組成物において、さらに他のオルガノポリシロキサンを使用することは当業者に公知のことである。 また、引用文献3にも、接着性を向上させるために、分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンを含有させることが記載されており(上記1(3)ア?ウ)、上記引用文献1,3の記載から、室温硬化性シリコーンゴム組成物において、低モジュラスや接着性の向上のために、さらに他のオルガノポリシロキサンを使用することは当業者に公知のことといえる。 そして、引用文献3の実施例においては、上記分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンとして、分子鎖両末端のケイ素原子に「アルケニル基」である「ビニル基」を含むシメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン((B-3)成分?(B-4)成分)が用いられている。この点について、請求人は、引用文献3の(E)接着促進剤の開示内容を示して、いずれも「分子鎖両末端のケイ素原子にシメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサン」ではないとしているが、上記分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さないオルガノポリシロキサンは、引用文献3における(B)成分であり、それが本願発明の「(B)分子鎖中のケイ素原子に水酸基およびアルコキシ基を有さず、アルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン」に相当するものであり、引用文献3の上記1(3)ウの段落【0021】からみて「接着性を良好」にするための成分であるといえる。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 さらに、請求人は、同意見書において、本願発明の効果について、 「本発明は組成物発明であり、その技術的効果である顕著な接着性はガラス等の基材に対してのみならずナイロン66に代表される難接着性の基材に対しても発揮され、その構成成分の選択および組み合わせにより発現された効果であり、その組成物自身の内在的性質であります。すなわち、易接着性の基材のみならず、ナイロン66に代表される難接着性の基材(プラスチック製基材)に対しても顕著な接着性を有することが、本発明が引例2、引例4に対する各段顕著な技術的効果であります。更に、本願発明の組成物はオイルブリードの発生を抑制できるという効果も示します。」旨主張する。 しかしながら、引用文献3の【0005】には、基材に対して良好な接着性を示す室温硬化性シリコーンゴム組成物を提供することが記載され(上記1(3)イ)、さらに、上記イで述べたとおり、引用文献3の実施例においては、分子鎖両末端のケイ素原子にシメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサンが用いられており、当該ジメチルポリシロキサン20質量部を配合した場合(実施例5,6)には、それを配合しない場合(比較例1)と比較して、ガラス板、PET樹脂版等に対しても良好な接着性を示すことが記載されている(上記1(3)オ)。 そうすると、分子鎖両末端のケイ素原子にシメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサンを含む室温硬化性シリコーンゴム組成物は、ガラス板のみならずPET樹脂版等のプラスチック製基材に対しても良好な接着性を示すものであるから、請求人も述べているとおり、同じプラスチック製基材の代表例であるナイロン66に対しても良好な接着性を示すことは、当業者の予測の範囲内のことである。 また、引用文献3の【0021】,【0022】に記載されているように、分子鎖両末端のケイ素原子にシメチルビニルシロキシ基を有するジメチルポリシロキサンの粘度や含有量を調節してブリードアウトを抑制することは当業者に公知のことであり(上記1(3)ウ)、オイルブリードの発生を抑制できるという効果も、格別顕著なものとは認められない。 したがって、請求人の上記主張は採用できない。 5 小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1,3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1,3に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-03-29 |
結審通知日 | 2021-03-31 |
審決日 | 2021-04-14 |
出願番号 | 特願2016-535251(P2016-535251) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C08L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 楠 祐一郎、三原 健治 |
特許庁審判長 |
杉江 渉 |
特許庁審判官 |
佐藤 健史 安田 周史 |
発明の名称 | 室温硬化性シリコーンゴム組成物およびその用途 |