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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1374766
審判番号 不服2020-9327  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-03 
確定日 2021-06-29 
事件の表示 特願2018- 22660「ハードコートフィルム、偏光板及び画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日出願公開、特開2018- 97387、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2018-22660号(以下「本件出願」という。)は、平成26年3月27日(先の出願に基づく優先権主張 平成25年5月13日(以下「本件優先日」という。))を出願日とする、特願2014-65457号の一部を新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成30年10月11日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月20日提出:意見書
令和 元年 7月18日付け:拒絶理由通知書
令和 元年10月 3日提出:意見書
令和 元年10月 3日提出:手続補正書
令和 2年 3月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年 7月 3日提出:審判請求書
令和 3年 2月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 3月29日提出:意見書
令和 3年 3月29日提出:手続補正書


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本件出願の請求項1?5に係る発明は、以下の引用文献A、Bに基づいて、その発明の属する技術における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2011-225486号公報
B.特開平11-7251号公報


第3 当審拒絶理由の概要
令和3年2月2日付け当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 本件出願の請求項1、4?5に係る発明は、以下の引用文献に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
2.特開2011-225486号公報(拒絶査定時の引用文献A)
4.特開2011-237789号公報(当審において新たに引用した文献)
(当合議体注:引用文献2及び4は、いずれも主引用例である。)

2 本件出願の請求項1?5に係る発明は、不明確であり、本件出願は、特許法第36条6項2号に規定する要件を満たしていない。


第4 本件発明
本件出願の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明4」という。)は、令和3年3月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるところ、本件発明1は、以下のとおりのものである。

「 透明フィルムと、該透明フィルム上に設けられたハードコート層と、該ハードコート層の表面上に層間充填剤を介して貼合された前面板と、を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層の表面自由エネルギーが30mN/m以上であり、
前記ハードコート層が、前記透明フィルムの成分と前記ハードコート層の成分が混在している混在領域であり、
前記ハードコート層において、前記透明フィルムの成分が該ハードコート層の層間充填材側の表面に向かうに従って減少し、これにより、該ハードコート層内に界面を有さず、
前記混在領域の屈折率がハードコートフィルムの厚み方向に向かって連続的に変化しており、
式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm^(-1))が0.003≦a≦0.018を満たす、ハードコートフィルム:
a=|nA-nB|/L・・・(1)
式(1)中、nAは前記ハードコート層固有の屈折率、nBは前記透明フィルム固有の屈折率、Lは前記混在領域の厚み(μm)を表す。」

なお、本件発明2?4は、本件発明1の「ハードコートフィルム」に対してさらに他の発明特定事項を付加したものである。


第5 引用文献等の記載事項、及び引用発明
1 引用文献2の記載事項
令和3年2月2日付けの拒絶の理由に引用された、引用文献2には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

(1) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層形成用組成物、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、偏光板、及び画像表示装置に関する。
・・・省略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、フルオロ脂肪族基含有モノマーに由来する繰り返し単位を有するポリマーを用いたハードコート層とその上に積層した反射防止膜との密着性(耐擦傷性)が向上することが記載されているが、近年要求されるより厳しいレベルの密着性に対しては不十分であり、良好な面状とハードコート層とその上に積層した反射防止膜との密着性の両立についてはさらに改良が求められている。また、良好な面状と、透明基材とハードコート層との密着性の両立についてもさらなる改善が求められる。
【0007】
本発明の目的は、先行技術に対して、更に面状ムラの観点で優れるハードコート層形成用組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、透明基材とハードコート層との密着性、及びハードコート層と該ハードコート層上に設けられた他の層との密着性に優れる光学フィルムを提供することである。
本発明の更なる別の目的は、該光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、下記手段により、前記課題を解決し目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
1 .
下記(a)、(b)、(c)、及び(d)を含有するハードコート層形成用組成物。
(a )下記含フッ素ポリマー(1)及び含フッ素ポリマー(2)から選ばれる少なくともいずれかのレベリング剤
含フッ素ポリマー(1):下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに由来する重合単位を全重合単位に対して50質量%より多く含有するポリマー
【0010】
【化1】

【0011】
(上記一般式[1]において、R0は水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上18以下の整数を表す。)
含フッ素ポリマー(2):下記一般式[2]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに由来する重合単位と、ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及びポリ(オキシアルキレン)メタクリレートから選ばれる少なくともいずれかに由来する重合単位とを含むポリマー
【0012】
【化2】

【0013】
(上記一般式[2]において、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子又は-N(R2)-を表し、mは1以上6以下の整数、nは1?3の整数を表す。R2は水素原子又は炭素数1?4のアルキル基を表す。)
(b)炭酸エステル溶剤
(c)不飽和二重結合を有する化合物
(d)光重合開始剤
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、面状ムラの観点で優れるハードコート層形成用組成物を提供することができる。また、透明基材とハードコート層との密着性、及びハードコート層と該ハードコート層上に設けられた他の層との密着性に優れる光学フィルムを提供することができる。
また、該光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供することができる。」


(2) 「【0167】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、透明基材上に前記ハードコート層形成用組成物を用いて形成されたハードコート層を有する。
本発明の光学フィルムは、透明基材上にハードコート層を有し、更に目的に応じて、必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。例えば、反射防止層(低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層など屈折率を調整した層)、防眩層などを設けることができる。
【0168】
本発明の光学フィルムのより具体的な層構成の例を下記に示す。
透明基材/ハードコート層
透明基材/ハードコート層/低屈折率層
透明基材/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
透明基材/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
透明基材/ハードコート層/防眩層
【0169】
本発明の光学フィルムは、透明基材上に、ハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層を有し、ハードコート層中、(a)レベリング剤は該ハードコート層の表面側(透明基材と反対側の界面側)に偏在して存在する。(a)レベリング剤がハードコート層の表面側に存在することで、ハードコート層の面状を改良することができる。また、該ハードコート層上にその他の層を積層した場合、ハードコート層の表面側に存在する(a)レベリング剤は速やかに該その他の層に抽出されて、ハードコート層/その他の層界面に残りにくいため、ハードコート層とその他の層との密着性を向上させることもできる。
【0170】
本明細書において、「(a)レベリング剤が、ハードコート層の表面側(透明基材と反対側の界面側)に偏在して存在する」とは、ハードコート層の最表面にレベリング剤のフルオロ脂肪族基が吸着していることを表し、偏在の度合いは、レベリング剤の添加量を数点振った組成物を用いてハードコート層を作製し、ハードコート層表面の表面自由エネルギーを測定することで推測することが出来る。レベリング剤の添加量を増やすと、表面自由エネルギーは低減しやがて飽和するが、飽和値に到達するのに必要な添加量が少ないほどレベリング剤の偏在性が良いと推測することができる。炭酸エステル溶剤を用いると、他の溶剤と比較してレベリング剤の偏在性に優れるため、表面自由エネルギーが飽和値に到達するのに必要な添加量を少なくすることができる。なお、ハードコート層の表面自由エネルギーは、ハードコート層表面の複数種の標準溶液に対する接触角を測定し、D. K. Owens and R. C. Wendt, J. Appl. Phys. Sci., 13, 1741?1747 (1969)に記載のオーウェンスの式などを用いて算出することが出来る。標準溶液としては、水やヨウ化メチレンが好ましく用いられる。
【0171】
本明細書において、「ハードコート層上にその他の層を積層した場合、ハードコート層の表面側に存在する(a)レベリング剤は速やかに該その他の層に抽出」されることは、ハードコート層のみを形成した光学フィルムを、隣接する反射防止層形成用塗布液に用いる溶媒に浸漬して溶出物を取り除いた後、その表面をX線光電子分析装置(ESCA)で分析したフッ素原子量を測定することで推測することができる。具体的には、炭素原子量に対するフッ素原子量の割合であるF/Cの値を用いることが出来、F/Cが小さい方が、ハードコート層上にその他の層を積層した場合に、レベリング剤がハードコート層/その他の層界面に残りにくいと推測出来る。
【0172】
[透明基材]
本発明の光学フィルムにおいては、透明基材(支持体)として種々用いることができるが、セルロース系ポリマーを含む基材が好ましく、セルロースアシレートフィルムを用いることがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムとしては、特に限定されないが、ディスプレイに設置する場合は、セルローストリアセテートフィルムを偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてそのまま用いることができるため、生産性やコストの点でセルローストリアセテートフィルムが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムの厚さは、通常、25μm?1000μm程度であるが、取り扱い性が良好で、かつ必要な基材強度が得られる40μm?200μmが好ましい。
・・・省略・・・
【0185】
本発明の光学フィルムとして、特に好ましい態様は、セルロースアシレートフィルム基材上に、ハードコート層、及び反射防止層を有する光学フィルムであって、該セルロースアシレートフィルム基材のハードコート層の界面には、基材成分とハードコート層成分が混在した領域が存在し、かつ該反射防止層が前記含フッ素ポリマー(1)であるレベリング剤を含有し、該レベリング剤がハードコート層と反射防止層との界面に存在しない光学フィルムである。
ここで、ハードコート層とは、ハードコート層成分が含まれている部分全体を指し、基材とは、ハードコート層成分を含まない部分を示すこととする。
本発明の光学フィルムでは、基材成分とハードコート層成分が混在した領域が存在している。このように各成分が混じり合うことにより、基材とハードコート層の密着性が向上する。基材成分とハードコート層成分が混在した領域の厚さは、ハードコート層全体の厚さに対して5%以上99%以下であることが好ましく、15%以上98%以下であることが更に好ましく、30%以上95%以下であることが最も好ましい。混在した領域が5%未満であると基材とハードコート層との密着性が不十分になり、また100%であるとハードコート層の最表面に基材成分が露出するため、反射防止層との密着性を阻害する。
また、混在した領域は、フィルムをミクロトームで切削し、断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)で分析した時に、基材成分とハードコート層成分が共に検出される部分として測定することができ、この領域の膜厚も同様にTOF-SIMSの断面情報から測定することができる。
・・・省略・・・
【実施例】
【0231】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0232】
〔反射防止フィルムの作製〕
下記に示す通りに、各層形成用の塗布液を調製し、各層を形成して、反射防止フィルム試料1?27を作製した。
【0233】
(ハードコート層用塗布液の調製)
(フルオロ脂肪族基含有ポリマーP-77の合成)
本文記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマー(P-77)を次のように合成した。
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチルアクリレート31.98質量部、ブレンマーAP-400(日本油脂(株)製)7.95質量部、ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート1.1質量部、2-ブタノン30質量部を加え窒素雰囲気下で6時間78℃に加熱して反応を完結させた。質量平均分子量は34000であった。
【0234】
類似の方法で、本文記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマー(P-74)、(P-75)、(P-191)、(P-194)、(P-62)、及び(P-62)の質量平均分子量をそれぞれ1500、3100、5500、83000に変えたものを合成した。なお、分子量の調整は反応時間と温度の調整により行った。
【0235】
(ハードコート層用塗布液A-1の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液A-1とした。
酢酸エチル300質量部に対して、メチルイソブチルケトン700質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートの混合物(PET30、日本化薬(株)製)970質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)30質量部、フルオロ脂肪族基含有ポリマーP-75(分子量9000)0.5質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液A-1を調製した。
【0236】
ハードコート層用塗布液A-1と類似の方法で、各成分を下記表1のように混合して溶剤に溶解して表1記載の比率になるように調整し、固形分濃度50質量%のハードコート層用塗布液A-2?A-26を作製した。
【0237】
【表1】

・・・省略・・・
【0240】
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0241】
【化60】

【0242】
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
【0243】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm^(2))であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm^(2))に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N-ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった。
【0244】
(中空シリカ粒子分散液Aの調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60-IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
【0245】
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1)の21.0質量部、反応性シリコーン(X22-164C、信越化学(株)製)2.5質量部、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1.5質量部、中空シリカ粒子分散液A137.4質量部をメチルエチルケトンに添加して1000質量部とし、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0246】
(ハードコート層A-1の作製)
層厚80μmの透明支持体としてのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士フイルム(株)製、屈折率1.48)上に、前記ハードコート層用塗布液A-1をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量150mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層A-1を形成した。
【0247】
(低屈折率層の作製)
ハードコート層A-1の上に、低屈折率層用塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布し、厚さ94nmの低屈折率層を形成し、これを反射防止フィルム試料No.1とした。低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm^(2)、照射量600mJ/cm^(2)の照射量とした。
【0248】
同様の方法でハードコート層用塗布液A-2?26を用いてハードコート層A-2?26を、ハードコート層用塗布液B-1を用いてハードコート層B-1をそれぞれ作製し、その上に低屈折率層Aを厚さ94nmになるように形成して反射防止フィルム試料No.2?27を作製した。なお、ハードコート層及び低屈折率層の屈折率の測定は、各層の塗布液を約4μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて測定した。「DR-M2,M4用干渉フィルター546(e)nm 部品番号:RE-3523」のフィルターを使用して測定した屈折率を波長550nmにおける屈折率として採用した。屈折率は、ハードコート層A-1?A-26、及びB-1はいずれも1.52、低屈折率層Aは1.35であった。
【0249】
また、低屈折率層の膜厚は、反射分光膜厚計”FE-3000”(大塚電子(株)製)を用いて算出した。算出の際の各層の屈折率は上記アッベ屈折率計で導出した値を使用して調整した。
【0250】
(ハードコート層の表面自由エネルギーの算出)
各試料の低屈折率層を積層する前段階のハードコート層表面の表面自由エネルギーは水とヨウ化メチレンの接触角を測定し、本文記載のオーウェンスの式より算出した。
・・・省略・・・
【0252】
【表2】

【0253】
表2からわかるように、炭酸エステル溶媒を用いた場合には、(A)含フッ素レベリング剤の添加量が0.05%の場合と0.1%の場合で等しくなっており、添加量0.05%で表面エネルギーが飽和していることがわかる(試料No.2、3)。一方、炭酸エステル溶媒を用いなかった場合には、0.05%では飽和では飽和していないことが明らかである。このことから、炭酸エステル溶媒を用いることにより表面自由エネルギーが飽和値に到達するのに必要な添加量が少なくなっており、含フッ素レベリング剤の表面偏在性が向上していることが推測される。また、炭酸エステル溶剤を用いた場合には、用いない場合と比較してF/Cの値が小さく、ハードコート層/低屈折率層界面にレベリング剤が残らず、レベリング剤がすみやかに低屈折率層形成用塗布液の溶媒に抽出されていることもわかる。
【0254】
(反射防止フィルムの評価)
以下の方法により反射防止フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表3に示す。
・・・省略・・・
【0256】
(2)基材とハードコート層界面の観察
フィルムをミクロトームで切削し、断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)で分析し、界面の状態を観察した。基材成分とハードコート層成分が共に検出される部分を基材とハードコート層成分が混在した領域とし、この領域の膜厚も同じTOF-SIMSの断面情報から測定し、ハードコート層全体の厚さに対する基材成分とハードコート層成分が混在した領域の厚さの割合を算出した。
【0257】
(3)塗布面状ムラ
塗布面側を上にして、裏面側から蛍光灯を照射して光を透過させ、目視による面検にてハジキ、ブツ等の点欠陥、塗布ムラ、乾燥ムラ等の面状ムラの発生頻度について、10m^(2)だけ検査し、その値を10で割って1m^(2)当たりの面状ムラの数を算出し、以下の基準で判定した。
◎ ・・面状ムラが0個
○ ・・面状ムラが1個以上3個未満で、僅かにあるが認識されない
○△・・面状ムラが3個以上5個未満で、僅かにあるがほとんど認識されない
△ ・・面状ムラが5個以上10個未満で、面状ムラが目立ってしまう
× ・・面状ムラが10個以上で、面状ムラが非常に目立つ
(4)密着性評価
JIS-K-5400に記載の碁盤目剥離法にて評価を行った。即ち、試料表面に1mm間隔で100個の碁盤目を入れ、セロハンテープ(ニチバン(株)製)で密着試験を行った。新しいセロハンテープを貼ったあとに剥離し、以下の基準で判定した。
◎・・碁盤目中のマスの剥離が起こらない
○・・碁盤目中のマスの剥離が無いものが90%以上で、僅かに剥離するが問題がない
○△・・碁盤目中のマスの剥離が無いものが70%以上90%未満であり、僅かに剥離するがほとんど問題がない
△・・碁盤目中のマスの剥離が無いものが50%以上70%未満で、やや剥離があり問題となる
×・・碁盤目中のマスの剥離が無いものが50%未満であり、非常に問題である
【0258】
(5)スチールウール耐傷性評価
反射防止フィルムの低屈折率層表面をラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材: スチールウール(日本スチールウール(株)製、ゲレードNo.0000)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定 移動距離(片道):13cm 、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:500g/cm^(2)、1kg/cm^(2)いずれか
先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:10往復
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を評価した。
A :非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
B :非常に注意深く見ると弱い傷が見えるが僅かであり問題にならない。
C :注意深く見ると弱い傷が見えるが、問題にならない
D :中程度の傷が見え、傷が目立ってしまう。
E :一目見ただけで分かる傷があり、非常に目立つ
・・・省略・・・
【0261】
【表3】

【0262】
表3に示すように、本発明のハードコート形形成用組成物を使用すると、面状ムラを改善してかつ、密着性、スチールウール耐擦傷性も両立した反射防止フィルムを得ることができた。特に、炭酸エステル溶媒を用いた試料No.2,3では、炭酸エステル以外の溶媒を用いた試料No.4?8と比べて500g荷重におけるスチールウール耐性に優れていることがわかる。さらに1kg荷重で試験した場合には、試料No.4?8では500g荷重と比べて顕著に傷つきが悪化しているのに対し、試料2,3では500gと同等の傷つき方で悪化がみられず、良好な耐擦傷性レベルを維持できることがわかった。試料No.21,24ではやや強いハジキ状の故障がみられたが、密着性、スチールウール耐擦傷性は優れていた。その他の試料では同様のハジキは見られなかった。また、試料No.2はlogSRが14.0であったのに対して試料No.27は9.4と低下してごみ付き性もAランクになり、上記に加えて良好なごみ付き防止性も付与することができた。」

2 引用発明2
引用文献2の表2には、ハードコード層試料No.2の表面自由エネルギーが、30mN/mであることが記載されており、【0250】の記載によれば、表2の表面自由エネルギーは、試料の低屈折率層を積層する前段階のハードコート層表面の表面自由エネルギーである。また、表3には、試料No.2の混在領域の割合が50%であることが記載されており、【0256】の記載によれば、混在領域は、フィルムの断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)で分析したときに、基材成分とハードコート層成分が共に検出される部分を基材とハードコート層成分が混在した領域であり、表3の混在領域の割合は、ハードコート層全体の厚さに対する基材成分とハードコート層成分が混在した領域の厚さの割合である。
そうすると、上記1の記載に基づけば、引用文献2には、試料No.2として、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「層厚80μmの透明支持体としてのトリアセチルセルロースフィルム(屈折率1.48)上に、ハードコート層用塗布液A-2をグラビアコーターを用いて塗布し、乾燥した後、窒素パージしながら紫外線を照射して塗布層を硬化させて、厚さ12μm、屈折率1.52のハードコート層A-2を形成し、その上に低屈折率層用塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布し、低屈折率層Aを厚さ94nmになるように形成して作製した反射防止フィルム試料であって、
試料の低屈折率層を積層する前段階のハードコート層表面の表面自由エネルギーが30mN/mであり、フィルムの断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)で分析したときに、基材成分とハードコート層成分が共に検出される部分を基材とハードコート層成分が混在した領域とし、ハードコート層全体の厚さに対する混在領域の厚さの割合が50%である、反射防止フィルム試料。」

3 引用文献4の記載事項
令和3年2月2日付けの拒絶の理由に引用された、引用文献4には、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、
前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、
前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、前記反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、屈折率が厚み方向に連続的に変化している、
ハードコートフィルム。
【請求項2】
透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、
前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、
前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、
前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している、ハードコートフィルム。
・・・省略・・・
【請求項4】
前記ハードコート層の表面に反射防止層がさらに設けられている、請求項1?3の何れか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記界面から透明フィルムの厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、
前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している、請求項1?4の何れか一項に記載のハードコートフィルム。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルム、それを有する偏光板及び画像表示装置、並びに、ハードコートフィルムの製造方法に関する。
・・・省略・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、干渉縞の発生をより抑制でき、更に、高硬度で且つ密着性に優れたハードコートフィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、前記ハードコートフィルムを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することである。
本発明の他の目的は、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記特許文献1及び2のハードコートフィルムにあっては、透明フィルムとハードコート層とを区画する界面に起因する、干渉縞を抑制できると考えられる。
しかしながら、かかるハードコートフィルムは、全体として見れば、干渉縞が依然生じている。
この原因として、本発明者らは、前記透明フィルムとハードコート層とを区画する界面以外に、新たな別の界面が存在していることが原因である推察した。具体的には、特許文献1及び2のハードコートフィルムは、硬化型樹脂と溶媒を含むハードコート層形成材料を透明フィルム上に塗工し且つ塗膜を硬化させることによって得られる。この溶媒が透明フィルムの表面を膨潤させるので、透明フィルムを形成する成分が前記塗膜中に溶出する。そして、前記塗膜中に拡散し且つ浸透した、前記透明フィルムを形成する成分が、前記新たな別の界面を生じさせる原因と推察される。この新たな別の界面の存在により、従来のハードコートフィルムは、現実的には干渉縞の発生を十分に抑制できない。特に、ハードコート層の厚みが小さい場合に、前記別の界面に起因する干渉縞が生じやすい。この干渉縞は、ハードコート層の表面に反射防止層が設けられたときに、外観上、特に顕著に視認される。
このような知見の下、本発明者らは、以下の手段により、本発明の課題を解決した。
【0008】
本発明の第1のハードコートフィルムは、透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、前記反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、屈折率が厚み方向に連続的に変化している。
【0009】
本発明の第2のハードコートフィルムは、透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している。
【0010】
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記ハードコート層の厚みが3μm?15μmである。
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記ハードコート層の表面に反射防止層がさらに設けられている。
本発明の好ましいハードコートフィルムは、前記界面から透明フィルムの厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している。
【0011】
本発明の別の局面によれば、偏光板が提供される。
この偏光板は、上記ハードコートフィルムを有する。
【0012】
本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。
この画像表示装置は、上記ハードコートフィルムを有する。
・・・省略・・・
【0016】
本発明のハードコートフィルムは、傷付き難く、さらに、干渉縞の発生をより抑制できる。さらに、本発明のハードコートフィルムは、透明フィルムとハードコート層の密着性にも優れているので、耐久性にも優れている。
かかるハードコートフィルムを有する偏光板及び画像表示装置は、耐傷性、耐久性、及び視認性に優れている。
本発明の製造方法によれば、干渉縞の発生が抑制されたハードコートフィルムを簡易に製造できる。」

(3)「【発明を実施するための形態】
【0018】
<ハードコートフィルム>
図1は、本発明の1つの実施形態に係るハードコートフィルムを厚み方向に切断した断面図である。
図2は、本発明の他の実施形態に係るハードコートフィルムを厚み方向に切断した断面図である。
ただし、各図に示すハードコートフィルム、透明フィルム、及びハードコート層のそれぞれの厚みや長さは、実際のものと異なっていることに留意されたい。
【0019】
図1に於いて、1つの実施形態に係るハードコートフィルム1は、透明フィルム2と、前記透明フィルム2の上に設けられたハードコート層3と、を有し、前記透明フィルム2とハードコート層3の間には、界面5が存在している。
【0020】
図2に於いて、もう1つの実施形態に係るハードコートフィルム1は、透明フィルム2と、前記透明フィルム2の上に設けられたハードコート層3と、前記ハードコート層3の上に設けられた反射防止層6と、を有し、前記透明フィルム2とハードコート層3の間には、界面5が存在している。なお、図2のハードコートフィルム1は、反射防止層6が設けられていることを除いて、図1のハードコートフィルム1と同様である。そのため、図2には、図1と同様の部材に対して図1と同じ符号を付している。
【0021】
前記界面5は、反射スペクトルの解析によって検出できる。前記界面5からハードコート層3の厚み方向中途部までの領域31において、その厚み方向に屈折率が連続的に変化している。以下、界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域を、第1領域と記す場合がある。なお、前記ハードコート層3の厚み方向中途部は、前記界面5とハードコート層3の表面3aとの間の厚み方向の中央部を意味するわけではないことに留意されたい。
この第1領域31における屈折率の連続的な変化は、透明フィルムを形成する成分がハードコート層3の表面3aに向かって減少していることによって実現されている。
本明細書において、ハードコート層の表面とは、透明フィルムに積層されたハードコート層の積層面(界面)とは反対側の面を指す。
・・・省略・・・
【0024】
前記透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は特に限定されず、干渉縞の発生を防止するためには、両者の屈折率の差が零であることが理論上望ましい。もっとも、透明フィルム2の屈折率とハードコート層3の屈折率が同じ値となる材料を選択することは現実的には困難である。本発明のハードコートフィルム1は、第1領域31において屈折率が厚み方向に連続的に変化し且つこの第1領域31中に界面を有しない(なお、第1領域31と後述する領域32との間にも反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を有しない)構造であるため、干渉縞の発生を抑制できる。
・・・省略・・・
【0025】
本発明において、前記界面5は、構造上、ハードコート層3と透明フィルム4とを区画する面である。この界面5は、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面である。この界面5は、ハードコートフィルム1の厚み方向において、1つだけ存在している。つまり、ハードコートフィルム1は、前記1つの界面5を除いて、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面が存在しない。換言すると、ハードコート層3中及び透明フィルム2中には、それぞれ反射スペクトルの解析によって検出できる界面が存在しない。
前記界面5は、瞬間マルチ測光システム(大塚電子(株)製、製品名「MCPD3700])を用いて検出可能である。具体的な方法は、下記実施例の[界面などの測定方法]に従って行うことできる。
・・・省略・・・
【0028】
前記第1領域31は、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在した混在領域である。
以下、透明フィルムを形成する成分を、「フィルム成分」と、ハードコート層を形成する成分を、「ハードコート成分」とそれぞれ略記する場合がある。
前記第1領域31中のフィルム成分は、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層3の表面3aに向かうに従って減少している。この第1領域31の存在によって、透明フィルム2とハードコート層3は密着性に優れている。従って、前記ハードコートフィルム1を長期間使用しても、透明フィルム2とハードコート層3が剥がれにくい。本発明のハードコートフィルム1は、耐久性に優れている。また、第1領域31の存在によって、透明フィルム2とハードコート層3の屈折率の差は、低減されている。従って、本発明のハードコートフィルム1は、透明フィルム2とハードコート層3との間の界面5に起因する干渉縞も抑制されている。
第1領域31とハードコート層3の表面3aの間の領域32は、実質的にハードコート成分からなる。このハードコート層3の表面側に前記領域32を有することにより、高硬度のハードコート層3を構成できる。ただし、前記領域32中には、前記フィルム成分が僅かに含まれていることもある。前記第1領域31と領域32との間にも反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を有しない。すなわち、ハードコート層3において、第1領域31と領域32とは、反射スペクトルの解析によって検出可能な光学的な界面を生じることなく繋がっている。
・・・省略・・・
【0031】
(透明フィルムについて)
透明フィルムは、少なくとも可視光の光線透過率に優れ、透明性に優れるものであれば特に限定されない。前記透明フィルムの可視光に於ける光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ただし、光線透過率は、フィルム厚100μmで、分光光度計(日立製作所製、製品名「U-4100型」)で測定されたスペクトルデータを基に視感度補正を行ったY値をいう。
前記透明フィルムのヘイズ値は、好ましくは3%以下、より好ましくは1% 以下である。ただし、前記ヘイズ値は、JIS-K7105に準じて測定された値をいう。
・・・省略・・・
【0048】
(反射防止層)
反射防止層は、ハードコート層の表面に設けられる。本発明のハードコートフィルムは、前記反射防止層が設けられていてもよいし、又は設けられていなくてもよい。
反射防止層を設けることにより、ハードコート層の表面における光の反射を更に低減できる。
前記反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることによって反射防止機能を発揮する。一般に、ハードコート層の表面に低反射処理を行うと(すなわち、反射防止層を形成すると)、ハードコート層の表面に干渉縞が目立ち易くなる。この点、本発明のハードコートフィルムにあっては、ハードコート層に反射防止層を設けた場合に見られる、干渉縞の発生をも効果的に抑制できる。従って、本発明は、低反射処理を行うハードコートフィルムとしても有効である。
・・・省略・・・
【0064】
<ハードコートフィルムの用途>
ハードコートフィルムは、擦傷を防止したい部分に設けるための部材として使用できる。代表的には、ハードコートフィルムは、液晶表示装置などの画像表示装置の画面の保護部材、タッチパネルの表面保護部材、計器類のカバー部材、光学レンズ等として使用できる。ハードコートフィルムを画像表示装置に使用する場合、ハードコートフィルムは、それ単独で画像表示装置の画面に貼付されるか、或いは、前記画面に組み込まれた光学フィルムに貼付される。また、ハードコートフィルムは、各種光学フィルムに積層することにより、ハードコート積層体の態様で画像表示装置に組み込まれる。本発明のハードコートフィルムは、特に液晶表示装置などのディスプレイの前面に用いられるクリアハードコートフィルムとして有用である。
【0065】
ハードコートフィルムを積層する光学フィルムとしては、偏光子、位相差板、輝度向上フィルム及びこれらの積層体;偏光子に保護フィルムが積層された偏光板;偏光子に保護フィルム及び位相差板が積層された楕円偏光板などが挙げられる。
偏光板の偏光子としては、例えば、二色性色素で染色された親水性ポリマーフィルムが挙げられる。
前記ハードコートフィルムと光学フィルムは、通常、公知の粘着剤又は接着剤を介して接着される。前記粘着剤又は接着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ゴム系ポリマーなどのベースポリマーとする粘着剤又は接着剤が挙げられる。
【0066】
本発明のハードコートフィルムを組み込んだ画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELディスプレイ(ELD)、ブラウン管テレビなどが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
なお、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
・・・省略・・・
【0070】
[界面などの測定方法]
各実施例及び各比較例のハードコートフィルムについて、界面の存在及び屈折率の変化を確認するため、下記測定方法に従って反射スペクトルを測定した。
各ハードコートフィルムの透明フィルムの裏面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製。厚み2.0mm)を、厚み約20μmの透明なアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。このハードコートフィルムのハードコート層の表面の反射スペクトルを、下記の条件下で、瞬間マルチ測光システム(大塚電子(株)製、製品名「MCPD3700])を用いて測定した。
【0071】
(測定条件)
リファレンス:AL
アルゴリズム:FFT法
計算波長:450nm?950nm
屈折率:ハードコート層1.53、透明フィルム1.49
(検出器条件)
露光時間:20ms
ランプゲイン:ノーマル
積算回数:1回
(FFT法)
検出膜厚値の範囲:0.5μm?12.0μm
データ個数:212
膜厚分解能:24nm
ベル関数:有り
【0072】
[干渉縞の観察方法]
各実施例及び各比較例のハードコートフィルムの透明フィルムの裏面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製。厚み2.0mm)を、厚み約20μmの透明なアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた。暗室中において、三波長光源を用いて、このハードコートフィルムの表面の干渉縞を観察した。
干渉縞の観察の結果は、下記の基準に従って区別した。
AA:殆ど干渉縞が視認されなかった。
A:僅かに干渉縞が視認された。
B:干渉縞が視認された。
C:明確に干渉縞が視認された。
・・・省略・・・
【0077】
[実施例1]
ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17-806」。固形分濃度80%)に、その溶液中の固形分100部当たり、光重合開始剤(チバ・ジャパン(株)製、製品名「IRGACURE906」)を5部、レベリング剤(DIC(株)製、製品名「GRANDIC PC4100」)を0.03部添加した。その後、前記溶液中の固形分濃度が75%となるように、前記溶液に酢酸ブチルを加えた。さらに、前記溶液中の固形分濃度が50%となるように、前記溶液にシクロペンタノン(以下、「CPN」と記す)を加えた。このようにしてハードコート層を形成するためのハードコート層形成材料を作製した。
【0078】
このハードコート層形成材料の全量を1とした場合、ハードコート層形成材料中の良溶媒(CPN)の含有比(質量比)は、0.33であった。
このハードコート層形成材料中に含まれる紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーは、様々な分子量のウレタンアクリレートの集合物である。その紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーの全量を1とした場合、低分子量成分(分子量800以下の紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマー)の含有比(質量比)は、0.482であった。
【0079】
表1は、各実施例及び各比較例で使用したハードコート層形成材料の組成、及び、各実施例及び各比較例の塗膜の厚みの一覧表である。表1のaは、低分子量成分の含有比を表し、表1のbは、良溶媒(CPN)の含有比を表す。表1のtは、塗膜の厚み(μm)を表す。
【0080】
【表1】

【0081】
前記ハードコート層形成材料を、透明なトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム(株)製、製品名「TD80UL」。厚み80μm。屈折率1.49)上に、ダイコータを用いて塗工して塗膜を形成した。ハードコート層形成材料は、硬化後の塗膜(ハードコート層)の厚みが7.5μmとなるように、厚み13.8μmに塗工した。すなわち、溶媒がフィルムに浸透しないと仮定した場合に、硬化後の塗膜(ハードコート層)の厚みが7.5μmとなるように塗工した。
【0082】
前記塗膜を、80℃で2分間乾燥した。その後、前記塗膜に、高圧水銀ランプを用いて積算光量300mJ/cm^(2)の紫外線を照射することにより、樹脂モノマーを重合させた。このようにしてトリアセチルセルロースフィルム上にハードコート層を作製した。
このハードコート層の固有の屈折率は、1.53であった。
得られたハードコートフィルムについて、上記[界面などの測定方法]、[干渉縞の観察方法]、[密着性試験]及び[表面硬度試験]により、界面の存在や屈折率の変化などを測定した。その結果を表2に示す。
これらの測定を行った後、次に示す反射防止層を形成した。
【0083】
前記ハードコート層の表面全体に、下記に示す反射防止層の形成材料を、ダイコーターを用いて均一に塗布した。その塗膜を90℃で2分間加熱し、紫外線照射を行って硬化させることにより、ハードコート層の表面全体に厚み0.1μmの反射防止層を形成した。この反射防止層の屈折率は、1.38であった。
反射防止層の形成材料は、低屈折材料(JSR(株)製、商品名「JUA204」。固形分濃度9.5%)に、混合溶剤(MIBK:TBA=50:50)を加えて希釈し、固形分濃度2.0%に調整したものである。前記低屈折材料は、エチレン性不飽和基を有するフッ素化合物と、アクリレートと、重合開始剤と、有効成分に対して約50%の中空ナノシリカと、を含む紫外線硬化型樹脂である。
【0084】
反射防止層を形成した後の前記ハードコートフィルムについて、上記[反射率の測定方法]及び[干渉縞の観察方法]に準じて、反射防止層の表面の反射率及び反射防止層の表面から見た干渉縞を観察した。その結果を表2に示す。
【0085】
[実施例2]
CPNに代えて、CPNとプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PM」と記す)の混合溶媒(CPN:PM(質量比)=4:1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。その結果を表2に示す。
実施例2で使用したハードコート層形成材料中の低分子量成分の含有比及び良溶媒の含有比、並びに塗膜の厚みは、表1の通りである。以下の各実施例及び各比較例のこれらの含有比などについても、表1の通りである。
【0086】
[実施例3]
CPNに代えて、CPNとPMの混合溶媒(CPN:PM(質量比)=1:4)を用いたこと、及び、樹脂溶液として、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0087】
[実施例4]
樹脂溶液として、ペンタエリスリトールアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが溶解された樹脂溶液(新中村化学工業株式会社製、商品名「A-DPH」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
【0088】
[実施例5]
樹脂溶液として、上記樹脂溶液(DIC(株)製、商品名「ユニディック17-806」)と上記樹脂溶液(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート#300」)を、質量比7:3の割合で混合したものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムを形成し、所定の測定を行った。さらに、反射防止層を形成した後のハードコートフィルムについて、実施例1と同様にして、所定の測定を行った。
・・・省略・・・
【0099】
【表2】

【0100】
表2のFTTピーク1及びFTTピーク2は、反射スペクトルの強度のピークを表す。表2の膜厚は、強度のピークが認められる部分の、ハードコート層の表面からの距離を表す。
また、図3及び図4は、実施例1及び2の反射スペクトルの測定結果のグラフを示し、図5?図10は、比較例1?6の反射スペクトルの測定結果のグラフを示し、図11は、比較例9の反射スペクトルの測定結果のグラフを示す。
【0101】
前記反射スペクトルの測定結果から、強度のピークが出た部分に界面が存在していると言える。また、ピークの強度の値が小さい場合、そのピークに対応した界面からハードコート層の表面に向かって屈折率が連続的に変化していると言える。一方、ピークの強度の値が大きい場合、屈折率の変化が大きく(屈折率が急激に変化しており)、屈折率の変化が連続的でないと言える。
具体的には、表2のFFTピーク2について、比較例4(透明フィルムが殆ど膨潤していない形態)の強度55の半分以下である実施例1?5は、界面からハードコート層の表面に向かって屈折率が連続的に変化していることが分かる。
【0102】
前記反射スペクトルの測定結果から(表2や各グラフ図を参照)、実施例1?5の各ハードコートフィルムにおいては、膜厚6.5μm前後からハードコート層側に、透明フィルムを形成する成分が次第に減少していることが分かる。さらに、実施例1?5は、膜厚6.5前後に強度15前後のFFTピークがあり、これ以外の部分にFFTピークが無かった。このため、実施例1?5の各ハードコートフィルムは、透明フィルムとハードコート層の間に1つの界面が存在し且つその界面以外には界面が存在していないことが分かる。
・・・省略・・・
【0107】
[評価]
以上の結果から、透明フィルムとハードコート層の間に界面が存在し、且つ界面からハードコート層に向かって屈折率が厚み方向に連続的に変化している実施例1?5の各ハードコートフィルムは、表面硬度及び密着性に優れ且つ干渉縞が生じにくかった。
また、反射防止層を形成した後の、実施例1?5の各ハードコートフィルムは、干渉縞は生じなかった。一方、比較例1?10の各ハードコートフィルムは、反射防止層を形成すると干渉縞が顕著に発生した。」

(4)図1「



(5)図2「



4 引用発明4
上記3の記載に基づけば、引用文献4の請求項2には、ハードコートフィルムとして、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「 透明フィルムと、前記透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有し、
前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、
前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在しており、
前記領域中の透明フィルムを形成する成分が、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している、ハードコートフィルム。」

5 引用文献Bの記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、引用文献Bには、以下の記載事項がある。なお、当合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】本発明は、前面板に関する。
【0003】
【従来の技術】近年、表示面積が大きく、しかも平坦なディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されている。しかし、プラズマディスプレイにはその画面などから発生する電磁波や近赤外線を遮蔽するための前面板が必要である。かかる前面板は通常、周囲の景色の映り込みによって視認性が低下することを防ぐために、その一方の面または両面に反射防止処理が施されて用いられている。かかる反射防止処理としては、例えば蒸着などによって反射防止層を前面板の表面に形成させる処理などが知られているが(特公平7-89597号公報など)、大型のプラズマディスプレイにあわせた前面板を製造するには大型の真空設備が必要であるなど、容易に処理できるものではなかった。そこで、簡便に反射防止処理を施すために、予め反射防止層などが形成されたフィルムを透明基板に積層することにより、反射防止処理を施す方法が提案されている。また、プラズマディスプレイから発生する近赤外線を遮蔽するために、近赤外線フィルムを積層する方法が提案されている。さらに、前面板表面の傷付きを防止するたの保護フィルムが積層されて用いられる場合もある。
【0004】しかしながら、プラズマディスプレイは比較的高温になるため、かかるフィルムが積層された前面板をプラズマディスプレイに用いた場合、長期間の使用によってフィルムが透明基板から剥離し易くなるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者らは、高温下における長期間の使用においても積層されたフィルムが透明基板から容易には剥がれにくい前面板を開発するべく鋭意検討した結果、透明基板にハードコート層を設けることによって、積層されたフィルムは容易には剥離しないことを見出し、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、ハードコート層が形成された透明基板の該ハードコート層の上にフィルムが積層されてなることを特徴とする前面板を提供するものである。」

(2)「【0007】
【発明の実施の形態】本発明の前面板における透明基板は、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体などの合成樹脂などからなるものであり、目的とする大きさに容易に加工できる点および本発明の効果が顕著である点ででアクリル樹脂が好ましい。また、かかる透明基板の厚みは通常0.01?10mm、好ましくは0.5?10mm程度であり、板状のもののみならず、フィルム状またはシート状のものも含まれる。その面積は目的とするディスプレイの画面サイズに応じて適宜選択される。かかる透明基板は、実用上透明であればよく、染料、顔料などによって着色されていてもよい。通常、波長400?600nmにおける光線透過率は50%以上、好ましくは60%以上である。
・・・省略・・・
【0009】かかる透明基板には、フィルムが積層される側の表面に予めハードコート層が形成されている。透明基板の一方の面にフィルムが積層される場合には、少なくとも該一方の面にハードコート層を形成させておけばよく、両面にフィルムが積層される場合には、透明基板の両面にハードコート層を形成させておけばよい。
・・・省略・・・
【0016】かくして透明基板の表面に形成されるハードコート層の厚みは特に限定されるものではないが好ましくは1?20μm程度である。厚みが1μm以下であるとハードコート層に起因する干渉縞が発生し易くなり、20μmを越えるとハードコート層にひびが入り易くなる傾向にある。なお、透明基板とハードコート層との密着性を向上させるために、透明基板とハードコート層の間に接着層が設けられていてもよい。
・・・省略・・・
【0023】かかるフィルムと透明基板を積層するには、例えば粘着剤を用いて積層すればよい。粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤などが挙げられる。積層は、例えばフィルムの一方の面に粘着剤を塗布したのち、該フィルムと透明基板とをロール貼合機、枚葉貼合機などを用いて圧着すればよい。なお、フィルムに反射防止層などの層が形成される場合、粘着剤は通常、該層が形成された面とは反対側のフィルム面に塗布される。また、透明基板に粘着剤を塗布した後にフィルムを積層してもよい。
【0024】かくして本発明の前面板が得られるが、かかる前面板に積層されたフィルムの上には、その用途に応じて、さらに他のフィルム、例えば反射防止フィルム、導電性フィルム、近赤外線遮蔽フィルム、保護フィルムなどが積層されてもよい。
【0025】
【発明の効果】本発明の前面板は、高温下での長期間の使用においても、積層されたフィルムが透明基板から容易には剥がれにくいので、プラズマディスプレイ用前面板として優れている。」


第6 対比・判断
1 引用発明2を主引用例とした場合
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。

(ア)透明フィルム、ハードコート層、ハードコートフィルム
引用発明2の「透明支持体」及び「ハードコート層A-2」は、技術的にみて、それぞれ、本件発明1の「透明フィルム」及び「ハードコート層」に相当する。
また、引用発明2の「反射防止フィルム試料」は、その作製手順からみて、「透明支持体」の上に「ハードコート層A-2」を有している。そうすると、引用発明2の「反射防止フィルム試料」は、本件発明1の「ハードコートフィルム」に相当するといえる。
そして、引用発明2の「反射防止フィルム試料」は、本件発明1の「ハードコートフィルム」における、「透明フィルムと、該透明フィルム上に設けられたハードコート層と」、「を有する」とする要件を満たす。

(イ)混在領域
引用発明2の「反射防止フィルム試料」は、「フィルムの断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)で分析したときに、基材成分とハードコート層成分が共に検出される部分を混在領域」としたときの「ハードコート層全体の厚さに対する混在領域の厚さの割合が50%」である。そうすると、上記構成及び上記(ア)の記載からみて、引用発明2の「混在領域」は、本件発明1の「混在領域」に相当し、本件発明1の「混在領域」における、本件発明1の「前記透明フィルムの成分と前記ハードコート層の成分が混在している」という要件を満たす。
また、上記記載からみて、引用発明2の「ハードコート層A-2」は、引用発明2の「混在領域」を有しているものといえる。そうしてみると、引用発明2の「ハードコート層A-2」は、本件発明1の「ハードコート層」と、「前記透明フィルムの成分と前記ハードコート層の成分が混在している混在領域」を有する点で共通する。
また、引用発明2の「混在領域」は、その作製手順からみて、「透明支持体」の「基材成分」と「ハードコート層用塗布液A-2」の「ハードコート層成分」とが、低屈折率層用塗布液Aを塗布した後に互いに浸透して形成されたものといえる。そうすると、引用発明2は、本件発明1の「ハードコート層において、前記透明フィルムの成分が該ハードコート層の」「表面に向かうに従って減少し」ているという要件、及び本件発明1の「混在領域」の、「前記混在領域の屈折率がハードコートフィルムの厚み方向に向かって連続的に変化」しているという要件を満たす。

さらに、引用発明2の「反射防止フィルム試料」における屈折率変化傾斜(μm^(-1))について検討すると、以下のとおりである。
ハードコート層固有の屈折率:1.52
透明フィルム固有の屈折率nB:1.48
混在領域の厚み:6μm=12μm×50/100
(当合議体注:ハードコート層の厚みが12μmであり、ハードコート層全体の厚さに対する混在領域の厚さの割合が50%である。)
屈折率変化傾斜:0.00667(μm^(-1))≒|1.52-1.48|/6μm
したがって、引用発明2の「反射防止フィルム試料」は、本件発明1の「式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm^(-1))が0.003≦a≦0.018」を満たす。

イ 一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明2とは、
「 透明フィルムと、該透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が、前記透明フィルムの成分と前記ハードコート層の成分が混在している混在領域を有し、
前記ハードコート層において、前記透明フィルムの成分が該ハードコート層の表面に向かうに従って減少し、
前記混在領域の屈折率がハードコートフィルムの厚み方向に向かって連続的に変化しており、
式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm^(-1))が0.003≦a≦0.018を満たす、ハードコートフィルム:
a=|nA-nB|/L・・・(1)
式(1)中、nAは前記ハードコート層固有の屈折率、nBは前記透明フィルム固有の屈折率、Lは前記混在領域の厚み(μm)を表す。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「ハードコートフィルム」が、本件発明1は、「ハードコート層の表面上に層間充填剤を介して貼合された前面板」「を有する」のに対して、引用発明2は、ハードコート層の表面上に低屈折率層Aを有し、層間充填剤及び前面板を有さない点。

(相違点2)
「ハードコート層」及び「混在領域」の関係が、本件発明1では、「ハードコート層が」「混在領域であ」るとされているのに対して、引用発明2では、「ハードコート層全体の厚さに対する混在領域の厚さの割合が50%である」とされている点。

(相違点3)
「ハードコート層において」、本件発明1は、「透明フィルムの成分が該ハードコート層の層間充填材側の表面に向かうに従って減少し、これにより、該ハードコート層内に界面を有さ」ないのに対して、引用発明2は、どちら側の表面か特定されておらず、また、ハードコート層内に界面を有さないのか不明である点。

(相違点4)
「ハードコート層」が、本件発明1では、「表面自由エネルギーが30mN/m以上」という要件を満たすのに対して、引用発明2では、この要件を満たすか明らかとはいえない点。
(当合議体注:引用発明2は、「ハードコート層表面の表面自由エネルギーが30mN/mであ」るものの、表面自由エネルギー」の測定方法が、本件発明1における表面自由エネルギーの測定方法と同一であるとは限らない。)

ウ 判断
事案に鑑み、相違点1について検討する。

(ア)引用文献2には、記載事項(2)に「本発明の光学フィルムは、透明基材上にハードコート層を有し、更に目的に応じて、必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。例えば、反射防止層(低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層など屈折率を調整した層)、防眩層などを設けることができる。」(【0167】)と記載されている。
上記記載に基づけば、引用文献2には、ハードコート層上に、必要な機能層を設けることが示唆されているといえる。しかしながら、必要とされる機能層については、反射防止層及び防眩層が例示されるにとどまり、ハードコート層の表面上に「層間充填剤」を介して貼合された「前面板」を設けることについては、記載も示唆もされていない。

(イ)さらに進んで検討すると、引用文献2の記載事項(1)における「該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供する」(【0016】)との記載に基づけば、引用発明2の「反射防止フィルム試料」は、偏光板や画像表示装置に用いられるところ、偏光板や画像表示装置において、透明フィルム上にハードコート層を設け、さらに、そのハードコート層の表面上に「層間充填剤」を介して貼合された「前面板」を設けることが知られていたかについて検討する。
引用文献Bには、記載事項(1)に「ハードコート層が形成された透明基板の該ハードコート層の上にフィルムが積層されてなることを特徴とする前面板」(【0006】)が記載されているものの、当該前面板は、ハードコート層の表面上に層間充填剤を介して貼合されたものではなく、当該前面板自体がハードコート層を有するというものである。そして、引用文献Bの記載事項(2)には、「なお、透明基板とハードコート層との密着性を向上させるために、透明基板とハードコート層の間に接着層が設けられていてもよい。」(【0016】)と記載されているものの、ハードコート層の表面上に層間充填剤を介して前面板を貼合することは記載されていない。また、他に、透明フィルム上にハードコート層を設け、さらに、そのハードコート層の表面上に「層間充填剤」を介して貼合された板状の部材を設けることを示唆した文献を見いだすことができない。
そうすると、本件優先権日前において、偏光板や画像表示装置において、透明フィルム上にハードコート層を設け、さらに、そのハードコート層の表面上に「層間充填剤」を介して貼合された「前面板」を設けることが、当業者に知られていたということはできない。

(ウ)また、引用文献2の記載事項(1)には「本発明の目的は、先行技術に対して、更に面状ムラの観点で優れるハードコート層形成用組成物を提供すること」、「本発明の別の目的は、透明基材とハードコート層との密着性、及びハードコート層と該ハードコート層上に設けられた他の層との密着性に優れる光学フィルムを提供することである。」(【0007】)、「本発明によれば、面状ムラの観点で優れるハードコート層形成用組成物を提供することができる。また、透明基材とハードコート層との密着性、及びハードコート層と該ハードコート層上に設けられた他の層との密着性に優れる光学フィルムを提供することができる。」(【0016】)との記載がある。上記記載に基づけば、引用発明2は、ハードコート層上に設けられた他の層にあたる「低屈折率層A」について、「ハードコート層A-2」との密着性に優れる光学フィルムを提供することを、発明が解決しようとする課題としているといえる。そうすると、当業者であっても、引用発明2において、ハードコート層上に直接設けられた「低屈折率層A」を、層間充填剤を介して貼合される「前面板」に置き換えることを考慮するとは考え難く、引用発明における「低屈折率層A」を、層間充填剤を介して貼合される「前面板」とする動機付けがあるとはいえない。

(エ)以上のとおりであるから、当業者であっても、引用発明2において、引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて、本件発明1の相違点1に係る構成とすることは、容易になし得たこととはいえない。

エ 小括
したがって、本件発明1は、引用文献2に記載された発明及び引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、引用発明2の代わりに、引用文献2の記載事項(2)の表3における、試料No.10又は試料No.13を、引用発明としても、判断は同様である。

(2)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明2?4も、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献2に記載された発明及び引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 引用発明4を主引用例とした場合
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明4とを対比する。

(ア)透明フィルム、ハードコート層、ハードコートフィルム
引用発明4の「透明フィルム」、「ハードコート層」及び「ハードコートフィルム」は、その文言からみて、それぞれ、本件発明1の「透明フィルム」、「ハードコート層」及び「ハードコートフィルム」に相当する。
また、引用発明4の「ハードコートフィルム」は、「透明フィルム上に設けられたハードコート層」を有している。
そうすると、引用発明4の「ハードコートフィルム」は、本件発明1の「ハードコートフィルム」における、「透明フィルムと、該透明フィルム上に設けられたハードコート層と」、「を有する」とする要件を満たす。

(イ)混在領域
引用発明4の「ハードコートフィルム」は、「前記透明フィルムとハードコート層の間に、反射スペクトルの解析によって検出可能な界面が存在し、前記界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域において、透明フィルムを形成する成分とハードコート層を形成する成分が混在して」いるものである。上記構成からみて、引用発明4の「界面からハードコート層の厚み方向中途部までの領域」は、本件発明1の「混在領域」に相当し、本件発明1の「混在領域」における、本件発明1の「前記透明フィルムの成分と前記ハードコート層の成分が混在している」という要件を満たす。
また、上記記載からみて、引用発明4の「ハードコート層」は、本件発明1の「ハードコート層」において、本件発明1の「前記透明フィルムの成分と前記ハードコート層の成分が混在している混在領域」を有する点で共通する。
さらに、引用発明4は、「前記透明フィルムとハードコート層の間に」「存在」する「界面からハードコート層の厚み方向中途部までの」「領域中の透明フィルムを形成する成分が、反射スペクトルの解析による界面を生じることなく、前記ハードコート層の表面に向かうに従って減少している」ものである。上記構成からみて、引用発明4は、本件発明1の「ハードコート層において、前記透明フィルムの成分が該ハードコート層の」「表面に向かうに従って減少し、これにより、該ハードコート層内に界面を有さず」という要件、及び本件発明1の「混在領域」の、「前記混在領域の屈折率がハードコートフィルムの厚み方向に向かって連続的に変化」しているという要件を満たす。

イ 一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明4とは、
「 透明フィルムと、該透明フィルム上に設けられたハードコート層と、を有するハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が、前記透明フィルムの成分と前記ハードコート層の成分が混在している混在領域を有しており、
前記ハードコート層において、前記透明フィルムの成分が該ハードコート層の表面に向かうに従って減少し、これにより、該ハードコート層内に界面を有さず、
前記混在領域の屈折率がハードコートフィルムの厚み方向に向かって連続的に変化している、ハードコートフィルム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「ハードコートフィルム」が、本件発明1は、「ハードコート層の表面上に層間充填剤を介して貼合された前面板」「を有する」のに対して、引用発明4は、そのように特定されていない点。

(相違点2)
「ハードコート層の表面自由エネルギー」が、本件発明1では、「30mN/m以上である」のに対して、引用発明4では、不明である点。

(相違点3)
「ハードコート層において」、本件発明1は、「透明フィルムの成分が該ハードコート層の層間充填材側の表面に向かうに従って減少し」ているのに対して、引用発明2は、どちら側の表面か特定されていない点。

(相違点4)
「式(1)に規定する屈折率変化傾斜a(μm^(-1))」が、本件発明1では、「0.003≦a≦0.018」という要件を満たすのに対して、引用発明4では、この要件を満たすか不明である点。ここで、式(1)の表記は省略した。

ウ 判断
事案に鑑み、相違点1について検討する。
(ア)引用文献4には、記載事項(2)に「反射防止層は、ハードコート層の表面に設けられる。本発明のハードコートフィルムは、前記反射防止層が設けられていてもよいし、又は設けられていなくてもよい。反射防止層を設けることにより、ハードコート層の表面における光の反射を更に低減できる。」(【0048】)と記載されているが、ハードコート層の表面上に「層間充填剤」を介して貼合された「前面板」を設けることについては、記載も示唆もされていない。

(イ)さらに進んで検討すると、引用文献4の記載事項(1)における「本発明は、ハードコートフィルム、それを有する偏光板及び画像表示装置、並びに、ハードコートフィルムの製造方法に関する。」(【0001】)との記載に基づけば、引用発明4の「ハードコートフィルム」は、偏光板や画像表示装置に用いられるところ、偏光板や画像表示装置において、透明フィルム上にハードコート層を設け、さらに、そのハードコート層の表面上に「層間充填剤」を介して貼合された「前面板」を設けることは、上記「第6」1(1)ウ(イ)で検討したように、当業者に知られていたということはできない。

(ウ)以上のとおりであるから、当業者であっても、引用発明4において、本件発明1の上記相違点1に係る構成とすることは、容易になし得たこととはいえない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献4に記載された発明及び引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、引用発明4の代わりに、引用文献4の記載事項(2)の実施例1?5における、ハードコートフィルムを、引用発明としても、同様である。

2 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1の構成を全て具備するものであるから、本件発明2?4も、本件発明1と同じ理由により、引用文献4に記載された発明及び引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第7 当合議体が通知した特許法第36条6項2号の理由について
令和3年3月29日に提出された手続補正書による補正で、当合議体が通知した拒絶の理由(上記「第3」2)は解消された。


第8 原査定の概要についての判断
上記第5、第6(1)で述べたように、本件発明1?4は、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献2)及び引用文献Bに記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-06-09 
出願番号 特願2018-22660(P2018-22660)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 草野 顕子  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 井口 猶二
井亀 諭
発明の名称 ハードコートフィルム、偏光板及び画像表示装置  
代理人 籾井 孝文  
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