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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1374781
審判番号 不服2019-9927  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-26 
確定日 2021-06-09 
事件の表示 特願2018-533820「低レイテンシワイヤレス通信でリソースを割り振るための技法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日国際公開、WO2017/116539、平成31年 2月28日国内公表、特表2019-506048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)10月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年(平成27年)12月28日 米国 2016年(平成28年)9月14日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 8月24日 :手続補正書の提出
平成30年11月 5日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月27日 :意見書の提出
平成31年 3月22日付け:拒絶査定
令和 元年 7月26日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
令和 2年 3月17日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 6月 2日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 8月27日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 2年11月26日 :意見書,手続補正書の提出

第2 令和2年11月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年11月26日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「ワイヤレス通信のための方法であって,
第1の送信時間間隔(TTI)を有するレガシワイヤレス通信技術のために構成されたリソースブロック(RB)グループのセットからRBグループのサブセットを決定することと,ここにおいて,前記第1のTTIは,持続期間中の1つのサブフレームに基づいており,各RBグループは,システム帯域幅に基づいて1つまたは複数の連続したRBを含み,所定のインデックスを有し,前記RBグループのサブセットは,複数のRBグループを有する,
前記システム帯域幅に少なくとも部分的に基づいて,RBグループの前記サブセット中のRBグループの数を識別することと,
第2のTTIを有する低レイテンシ通信技術のためのリソース割り振りを決定することと,前記第2のTTIは,持続期間中の1つのサブフレームよりも短く,前記リソース割り振りは,RBグループの前記サブセット中の1つまたは複数のRBグループを備える第1のULLブロックと,前記第1のULLブロックと異なり,RBグループの前記サブセット中の1つまたは複数のRBグループを備える第2のULLブロックとを含む,またはRBグループのサブセット中のすべてのRBグループを備える1つのULLブロックを含み,前記リソース割り振りを決定することは,前記決定されたRBグループのサブセットに基づいて,前記第1のULLブロックおよび/または前記第2のULLブロック,或いは前記1つのULLブロック中の1つまたは複数の低レイテンシRBを含むように決定される,
前記1つまたは複数の低レイテンシRB中のリソース上でデータを通信することと,前記低レイテンシRBは,前記第2のTTIに基づいており,前記リソースは,前記リソース割り振りに関連付けられる,
を備える,方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和2年6月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「ワイヤレス通信のための方法であって,
第1の送信時間間隔(TTI)を有するレガシワイヤレス通信技術のために構成されたリソースブロック(RB)グループのセットからRBグループのサブセットを決定することと,ここにおいて,前記第1のTTIは,持続期間中の1つのサブフレームに基づいており,各RBグループは,システム帯域幅に基づいて1つまたは複数の連続したRBを含み,所定のインデックスを有し,前記RBグループのサブセットは,複数のRBグループを有する,
前記システム帯域幅に少なくとも部分的に基づいて,RBグループの前記サブセット中のRBグループの数を識別することと,
第2のTTIを有する低レイテンシ通信技術のためのリソース割り振りを決定することと,前記第2のTTIは,持続期間中の1つのサブフレームよりも短く,前記リソース割り振りは,RBグループの前記サブセット中の1つまたは複数のRBグループを備える第1のULLブロックと,前記第1のULLブロックと異なり,RBグループの前記サブセット中の1つまたは複数のRBグループを備える第2のULLブロックとを含む,または,またはRBグループのサブセットのすべてを含むULLブロックを含む,
前記1つまたは複数の低レイテンシRB中のリソース上でデータを通信することと,前記低レイテンシRBは,前記第2のTTIに基づいており,前記リソースは,前記リソース割り振りに関連付けられる,
を備える,方法。」

2 補正の適否
本件補正により,補正前の請求項1の「または,またはRBグループのサブセットのすべてを含むULLブロックを含む」との記載が,補正後の請求項1において,「またはRBグループのサブセット中のすべてのRBグループを備える1つのULLブロックを含み」との記載に変更されているところ,この点は,当審が令和2年8月27日付けで通知した拒絶理由(以下,「最後の拒絶理由」という。)における理由1で指摘された誤記や不明な記載を適切な記載に改めるように補正するものであるから,特許法17条の2第5項3号に掲げる誤記の訂正及び同項4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当する。
また,本件補正により,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「リソース割り振りを決定する」ことについて,その具体的な内容に「前記決定されたRBグループのサブセットに基づいて,前記第1のULLブロックおよび/または前記第2のULLブロック,或いは前記1つのULLブロック中の1つまたは複数の低レイテンシRBを含むように決定される」との限定が付加されているところ,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とで産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから,この点は,特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下,「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載,引用発明等
ア 引用文献1
(ア)最後の拒絶理由で引用された,“4G LTE/LTE-Advancedのすべて 上巻”,丸善出版株式会社,日本,平成27年10月20日発行,p.246-249(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある(下線は当審による。以下同様。)。
a 「10.4.6.1 下りリソースブロック割当の信号
リソースブロック割当の信号について,3つの異なる方式がある.表10.6に示されるとおり,タイプ0,1そして2である.リソースブロック割当タイプ0と1はともに,周波数領域における非連続リソースブロック割当をサポートする.ここで,タイプ2は連続配置のみサポートする.なぜリソースブロック割当に対して複数の信号送信方法がサポートされているか,という自然な質問を思いつくが,その回答の手がかりは信号の送信に要求されるビット数にある.端末が受信する下りリンク送信について,そのリソースブロックセットを送信するもっとも柔軟な方法は,セル帯域幅にあるリソースブロック数と等しい大きさのビットマップを利用することである.これにより,端末に対する送信のスケジュールについて,任意のリソースブロックの組合せが許容される.しかし不運にも,セル帯域幅が大きくなるとビットマップの大きさも増大してしまう.たとえば,下りリンクセル帯域幅が100リソースブロックになると,下りリンクPDCCHはビットマップだけで100ビットが要求される.さらに,他の情報も追加しなければならない.これは制御信号のオーバヘッドが大きくなるだけでなく,1つのOFDMシンボルにおけるデータレートが1.4Mbit/sを超えてしまうと,下りリンクに対するカバレッジの問題も発生する.結果として,効率的なリソース割当の柔軟性を保ったまま,ビット数を削減するリソース割当方法が要求される.
リソース割当タイプ0では,周波数領域の個々のリソースブロックを指示せず,連続するリソースブロックのグループを指示することにより,ビットマップの大きさを削減する.これは図10.34の上の図に示されている.そのようなグループの大きさは下りリンクセル帯域幅で決まる.最小の帯域幅においては,このグループには1つのリソースブロックしか存在しない.これは任意のリソースブロックセットがスケジュールできることを表している.一方で,最大のセル帯域幅においては,4リソースブロックで構成されるグループが利用される(図10.34の例においては,セル帯域幅は25リソースブロックであり,グループの大きさは2リソースブロックであることを表している).したがって,100リソースブロックの下りリンクのセル帯域幅であるシステムのビットマップは100から25ビットヘ削減される.しかし,この方式はスケジューリングの粒度が低下してしまうことが欠点である.つまり,割当タイプ0を用いる最大のセル帯域幅においては,単一のリソースブロックはをスケジュールできない.」(246頁5行?248頁3行)

b 図10.34




(イ)上記(ア)から,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「端末が受信する下りリンク信号について,そのリソースブロックセットを送信する方法であって,
リソース割当タイプ0では,連続するリソースブロックのグループを指示し,
グループの大きさが下りリンクセル帯域幅で決まり,最小の帯域幅においては,このグループには1つのリソースしか存在せず,図10.34の例において,セル帯域幅は25リソースブロックであり,グループの大きさは2リソースブロックである,
方法。」

イ 引用文献2
(ア)最後の拒絶理由で引用された,Huawei, HiSilicon,Control signaling enhancements for short TTI[online],3GPP TSG-RAN WG1#83,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_83/Docs/R1-156461.zip>(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

a 「1 Introduction
In the RAN#67 meeting, the Study Item on “Study on Latency reduction techniques for LTE” was approved [1]. For RAN1, TTI shortening and reduced processing times should be studied and documented:
・ Assess specification impact and study feasibility and performance of TTI lengths between 0.5ms and one OFDM symbol, taking into account impact on reference signals and physical layer control signaling
・ backwards compatibility shall be preserved (thus allowing normal operation of pre-Rel 13 UEs on the same carrier);
In [2], it is concluded that “By reducing the TTI length, the network can schedule the UE faster, which reduces the RTT. A reduction in RTT increases the TCP throughput. A reduction of TTI length may also increase the system capacity for small data transmission.”
In this contribution, we will focus on DL control signaling and UL control signaling enhancements for short TTI.」
(当審仮訳: 「1 序章
RAN#67会合において,“LTEのレイテンシ低減技術に関する研究”の研究項目が承認された[1]。RAN1では,TTIの短縮及び低減された処理時間が研究され,記述されるべきである:
・0.5ミリ秒ないし1OFDMシンボルのTTI長について,参照信号と物理層制御信号への影響を考慮しつつ,仕様への影響を評価し,実現可能性及びパフォーマンスを研究せよ。
・後方互換性が保たれなければならない(これにより,同じキャリア上でリリース13前のUEの通常の動作が可能となる)。
[2]では,“TTI長を短くすることにより,ネットワークはUEをより高速にスケジューリングでき,そのことはRTTを減少させる。RTTが減少すると,TCPスループットが向上する。TTI長の減少は,小さいデータの伝送のためのシステム容量を増加させることもあり得る。”と結論付けられている。本寄書では,短いTTIのためのDL制御信号及びUL制御信号の拡張に焦点を当てる。」)

b 「2 Discussion on DL control signaling enhancement
Downlink Control Information (DCI) includes downlink or uplink scheduling information for a UE or group of UEs. Currently, PDCCH and EPDCCH can be used to carry DCI. However, PDCCH and EPDCCH are designed to schedule packet data with 1ms TTI which is not suitable for short TTI, so control channel for short TTI needs to be enhanced. In this paper, 0.5ms TTI, 4 or 3-symbol TTI [3], 2-symbol TTI and 1-symbol TTI are considered. Note that enhanced PDCCH for short TTI is called as sPDCCH in this paper.
2.1 Control channel
Considering backwards compatibility, legacy PDCCH region always exists, so DCI for scheduling packet data in first sTTI (short TTI) of a subframe can be carried by legacy PDCCH, as shown in Figure 2 for 0.5ms TTI and Figure 3 for 4 or 3-symbol TTI.」
(当審仮訳: 「2 DL制御信号の拡張についての議論
DL制御情報(DCI)は,1台のUE又は1群のUEのためのダウンリンク又はアップリンクのスケジューリング情報を含む。現在,PDCCH及びEPDCCHはDCIを搬送するために使用され得る。しかし,PDCCH及びEPDCCHは,短いTTIには適さない1ミリ秒TTIを持つパケットデータをスケジューリングするために設計されているので,短いTTIのための制御チャネルが拡張される必要がある。本稿では,0.5ミリ秒TTI,4又は3シンボルTTI[3],2シンボルTTI及び1シンボルTTIが考慮される。短いTTIのための拡張されたPDCCHは本稿ではsPDCCHと呼ばれることに留意されたい。
2.1 制御チャネル
後方互換性を考慮すると,レガシーPDCCH領域は常に存在するので,サブフレームの最初のsTTI(短いTTI)中のパケットデータをスケジューリングするためのDCIは,0.5ミリ秒TTIの図2及び3又は4シンボルTTIの図3に示すように,レガシーPDCCHによって搬送され得る。」)

c 図3


Figure 3 Scheduling for 4 or 3-symbol TTI」
(当審仮訳: 「図3 4又は3シンボルTTIのためのスケジューリング」)

(イ)図3(上記(ア)c)から,UE1のTTIは1ミリ秒(「1ms TTI」)とされるのに対し,UE2?UE5のTTIは短いTTI(「Short TTI」)である3シンボル又は4シンボル(「sTTI0」?「sTTI3」)とされること,各UEにシステム帯域幅(「System bandwidth」)よりも小さい帯域に相当するリソースを割り当てること,及び,3シンボルTTI又は4シンボルTTIは1サブフレーム(「1 subframe」)よりも短いことが見て取れる。
そして,当該3シンボルTTI又は4シンボルTTIは,上記(ア)aの「LTEのレイテンシ低減技術」によるものであることが明らかである。

(ウ)上記(ア),(イ)から,引用文献2には次の事項(以下,「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「LTEのレイテンシ低減技術であって,システム帯域幅において各UEに割り当てるリソースのTTIを1サブフレームよりも短いTTIとすること。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用文献1の書籍名に現れる「LTE/LTE-Advanced」はワイヤレス通信の規格(以下,「LTE規格」という。)であるから,引用発明は「ワイヤレス通信のための方法」であり,当該規格は本願の優先日において既存のものであることを勘案すると,引用発明が対象とする通信技術は,本件補正発明の「レガシワイヤレス通信技術」に相当する。
また,LTE規格において1つのサブフレームの長さ及びTTIが1ミリ秒であること,つまり,TTIが「持続期間中の1つのサブフレームに基づいている」ことは技術常識であり,当該TTIは,本件補正発明の「第1の送信時間間隔(TTI)」に相当する。

(イ)引用発明の「端末が受信する下りリンク信号について,そのリソースブロックセットを送信する方法」における,「リソース割当タイプ0では,連続するリソースブロックのグループを指示」することに関し,引用文献1の図10.34(上記(2)ア(ア)b,以下同様。)の上段に示されている「タイプ0」では,「0」?「24」の番号が付された全リソースブロックのうちの隣り合う2つのリソースブロックのそれぞれにより,連続するリソースブロックのグループが構成されているといえる。
そして,それらのグループの全体から,「連続するリソースブロックのグループを指示」することに対応して,「1」が付されるとともに黒色で示されるグループ群が決定され,その上で,下りリンク信号を受信する端末に割り当てられること,及び,「0」が付されるとともに白色で示されるグループ群は当該端末には割り当てられないこと,が明らかであり,ここで,上記全体は,本件補正発明の「リソースブロック(RB)グループのセット」に相当し,また,上記グループ群は,本件補正発明の「RBグループのサブセット」に相当し,「複数のRBグループを有する」といえる。
したがって,引用発明は,引用文献1の図10.34に照らして検討すると,「リソースブロック(RB)グループのセットからRBグループのサブセットを決定する」との構成及び「前記RBグループのサブセットは,複数のRBグループを有する」との構成を備えている。

(ウ)引用発明は,「リソース割当タイプ0では,連続するリソースブロックのグループを指示し,グループの大きさが下りリンクセル帯域幅で決まり,最小の帯域幅においては,このグループには1つのリソースしか存在せず,図10.34の例において,セル帯域幅は25リソースブロックであり,グループの大きさは2リソースブロックである」という構成を有するものであり,また,上記(イ)のとおり,引用文献1の図10.34の「タイプ0」では,連続するリソースブロックのグループが構成されるから,引用発明の「連続するリソースブロックのグループ」は,下りリンクセル帯域幅に基づいて,「1つまたは複数の連続したRBを含」むといえる。ここで,「下りリンクセル帯域幅」は,本件補正発明の「システム帯域幅」に相当する。

(エ)上記(イ)において,下りリンクセル帯域幅の全体に対応するリソースブロックの総数(25個)を超えて,黒色で示されるグループ群に含まれるグループの数を設定することはできないから,当該グループの数を何個とするかの特定は,下りリンクセル帯域幅に「少なくとも部分的に基づいて」行うべきものである。したがって,引用発明は,引用文献1の図10.34に照らして検討すると,下りリンクセル帯域幅に「少なくとも部分的に基づいて」,下りリンク信号を受信する端末に割り当てられるグループ群に含まれる(すなわち「RBグループの前記サブセット中の」)グループの数を「識別する」との構成を備えている。

(オ)上記(イ)において,黒色で示されるグループ群が下りリンク信号を受信する端末に割り当てられることは,当該端末への下りリンク信号の受信のためのリソースの割り振りであって,本件補正発明の「リソース割り振りを決定すること」に相当し,また,ここで,「下りリンク信号を受信する」とは,割り振られたリソース上でデータを通信することであって,本件補正発明と引用発明とは,「リソース上でデータを通信する」ことが行われる点で共通する。
そして,上記グループ群,すなわち割り振られたリソースが,そのリソースの割り振りに「関連付けられ」たものであることは当然である。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点は,次のとおりである。
(一致点)
「ワイヤレス通信のための方法であって,
第1の送信時間間隔(TTI)を有するレガシワイヤレス通信技術のために構成されたリソースブロック(RB)グループのセットからRBグループのサブセットを決定することと,ここにおいて,前記第1のTTIは,持続期間中の1つのサブフレームに基づいており,各RBグループは,システム帯域幅に基づいて1つまたは複数の連続したRBを含み,前記RBグループのサブセットは,複数のRBグループを有する,
前記システム帯域幅に少なくとも部分的に基づいて,RBグループの前記サブセット中のRBグループの数を識別することと,
リソース割り振りを決定することと,
リソース上でデータを通信することと,前記リソースは,前記リソース割り振りに関連付けられる,
を備える,方法。」

ウ また,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で相違する。
(相違点1)本件補正発明では,「各RBグループ」が「所定のインデックス」を有するのに対し,引用発明では,「連続するリソースブロックのグループ」に関してそのような特定はない点。

(相違点2)本件補正発明では,「リソース割り振りを決定すること」が「第2のTTIを有する低レイテンシ通信技術のための」ものであり,ここで,「第2のTTI」が,「持続期間中の1つのサブフレームよりも短く,前記リソース割り振りは,RBグループの前記サブセット中の1つまたは複数のRBグループを備える第1のULLブロックと,前記第1のULLブロックと異なり,RBグループの前記サブセット中の1つまたは複数のRBグループを備える第2のULLブロックとを含む,または,またはRBグループのサブセットのすべてを含むULLブロックを含」むものであり,
更に,「前記リソース割り振りを決定すること」が,「前記決定されたRBグループのサブセットに基づいて,前記第1のULLブロックおよび/または前記第2のULLブロック,或いは前記1つのULLブロック中の1つまたは複数の低レイテンシRBを含むように決定される」ものであるのに対し,
引用発明では,「連続するリソースブロックのグループを指示」することが行われるものの,それは「持続期間中の1つのサブフレームよりも短」い「第2のTTIを有する低レイテンシ通信技術のための」ものではなく,何らかの「ULLブロック」に関して行われるものでもない点。

(相違点3)本件補正発明では,「データを通信する」のが「前記1つまたは複数の低レイテンシRB中のリソース上」であり,「前記低レイテンシRBは,前記第2のTTIに基づいて」いるのに対し,引用発明では,「下りリンク信号」を「端末が受信する」ことが「前記1つまたは複数の低レイテンシRB中のリソース上」で行われるものではない点。

(4)判断
以下,各相違点について検討する。
ア 相違点1について
引用文献1の図10.34の「タイプ0」において,各リソースブロックには「0」?「24」の番号が付されているところ,それにより,各リソースブロックを識別することができるといえる。一方,引用発明の「連続するリソースブロックのグループ」のそれぞれには,同図に示されているように「1」又は「0」が個別に付されるから,各グループが識別できることが必要である。
そうすると,引用発明の「連続するリソースブロックのグループ」にリソースブロックと同様の番号を付すこと,すなわち,「連続するリソースブロックのグループ」が「所定のインデックス」を有するものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

イ 相違点2,3について
引用発明は上記(3)ア(ア)のとおりLTE規格に関するものであるところ,引用文献2記載事項は「LTEのレイテンシ低減技術」であって既存のLTE規格の改良を提案するものであるから,引用発明において,低レイテンシ化を図る改良のために引用文献2記載事項を適用して,「下りリンク信号」に割り当てられる「連続するリソースブロックのグループ」のTTIを,「LTEのレイテンシ低減技術」における「1サブフレームよりも短いTTI」とすること,つまり,「リソース割り振りを決定すること」が「第2のTTIを有する低レイテンシ通信技術のための」ものであり,ここで,「第2のTTIは,持続期間中の1つのサブフレームよりも短」いものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
また,引用発明の「連続するリソースブロックのグループを指示」することが行われた「リソースブロックセット」は,指示されたリソースブロックのグループ群の全体を含む,すなわち,「リソース割り振り」は「RBグループのサブセットのすべて」を含むところ,それを引用文献2記載事項により低レイテンシ化したものを「ULLブロック」と称することは,任意であって,当業者が適宜なし得ることである(なお,指示されたリソースブロックのグループ群が,複数のブロックから構成されるものとして扱い(例えば,引用文献1の図10.34に示されている「タイプ0」における「100111010001」が順に付された各リソースブロックのグループのうち,例えば先頭の「1」が付された1グループを第1のブロックとして扱い,当該ブロックから「0」が付された2グループを隔てて存在する「111」がそれぞれ付された3グループを第2のブロックとして扱う等。),それぞれ1又は複数のグループを備える低レイテンシ化した各ブロックを順に「第1のULLブロック」,「第2のULLブロック」等と称することも,当業者が適宜なし得ることである。)。
そして,その場合,上記「リソース割り振りを決定すること」は,必然的に,「連続するリソースブロックのグループを指示」することがなされたグループ群,すなわち「前記決定されたRBグループのサブセット」に「基づいて」,「前記1つのULLブロック中」の「1つまたは複数」の低レイテンシ化された「リソースブロック」すなわち「低レイテンシRB」(あるいは,「記第1のULLブロックおよび/または前記第2のULLブロック中の1つまたは複数の低レイテンシRB」を含むようになされることとなり,また,必然的に,引用発明の「下りリンク信号」を「受信する」こと,すなわち「データを通信する」ことが,「前記1つまたは複数の低レイテンシRB中のリソース上」で行われることとなり,「前記低レイテンシRBは,前記第2のTTIに基づいて」いるものとなる。

ウ そして,相違点1?3を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

(5)したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和2年6月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,当該請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 最後の拒絶理由
最後の拒絶理由のうちの理由3は,この出願の請求項1-24に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1: “4G LTE/LTE-Advancedのすべて 上巻”,丸善出版株式会社,日本,平成27年10月20日発行,p.246-249
引用文献2: Huawei, HiSilicon,Control signaling enhancements for short TTI[online],3GPP TSG-RAN WG1#83,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_83/Docs/R1-156461.zip>,2015年11月 7日,R1-156461

3 引用文献
最後の拒絶理由で引用された引用文献1及び引用文献2並びにそれら記載事項は,前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2[理由]2(1)の本件補正発明から,「リソース割り振りを決定する」ことについての限定事項を削除したものである。なお,当該限定事項とは別に,前記第2[理由]2の冒頭で検討したとおり,本件補正により,補正前の請求項1の誤記や不明な記載が適切な記載に改められているが,当該補正事項に係る発明特定事項に関しては,補正の前後で実質的な差異はない。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2[理由]2(5)のとおり,引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-12-22 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-21 
出願番号 特願2018-533820(P2018-533820)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 友輝  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 丸山 高政
富澤 哲生
発明の名称 低レイテンシワイヤレス通信でリソースを割り振るための技法  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  

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