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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G02B
管理番号 1374862
異議申立番号 異議2019-700222  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-19 
確定日 2021-03-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6393685号発明「顕微鏡、及び顕微鏡による試料検査方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6393685号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし16〕について訂正することを認める。 特許第6393685号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6393685号(以下,「本件特許」という。)に係る出願は,平成25年9月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年10月19日,ドイツ)を国際出願日とする外国語特許出願であって,平成30年8月31日にその特許権の設定登録がされたものである。
同年9月19日に本件特許について特許掲載公報の発行がなされたところ,平成31年3月19日に特許異議申立人(以下,「申立人」という。)より請求項1ないし16に係る特許について本件特許異議の申立てがされ,令和1年10月25日付けで取消理由が通知され,令和2年2月18日に特許権者より意見書が提出され,同年3月26日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ,同年7月21日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正の請求(以下,当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされ,同年10月9日に申立人より意見書が提出された。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は,本件特許の明細書及び特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし16について訂正することを求める,というものであるところ,本件訂正は,次の訂正事項からなる。
なお,訂正前の請求項2ないし16は,本件訂正により訂正される請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されているから,請求項1ないし16は一群の請求項である。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に「前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が割り当て可能に構成され,前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)は,測定中に調整可能である,顕微鏡。」とあるのを,「前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々,夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が割り当て可能に構成され,前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)は,測定中に調整可能であり,かくして,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する,顕微鏡。」と訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項8に「前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が割り当て可能であり,かくして,検出信号が前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)に取り込まれ,前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)は,測定中に調整可能である,方法。」とあるのを,「前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々,夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が割り当て可能であり,かくして,検出信号が前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)に取り込まれ,前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)は,測定中に調整可能であり,かくして,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する,方法。」と訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の明細書の【0010】に「具体的には,上記の課題を解決するために,本発明の第1の視点により,試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと,試料からの検出信号のための検出装置を有する顕微鏡,とりわけ共焦点顕微鏡が提供される。該顕微鏡においては,該検出装置が予め設定可能な異なる波長領域を検出するために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネルを有するよう構成され,前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々複数の時間的検出ウィンドウが割り当て可能に構成され,前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウは,測定中に調整可能である(形態1・第1基本構成)。」とあるのを,「具体的には,上記の課題を解決するために,本発明の第1の視点により,試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと,試料からの検出信号のための検出装置を有する顕微鏡,とりわけ共焦点顕微鏡が提供される。該顕微鏡においては,該検出装置が予め設定可能な異なる波長領域を検出するために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネルを有するよう構成され,前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々,夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウが割り当て可能に構成され,前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウは,測定中に調整可能であり,かくして,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する(形態1・第1基本構成)。」と訂正するとともに,「更に,上記の課題を解決するために,顕微鏡,とりわけ共焦点顕微鏡,とりわけ上記形態1?7の何れかの顕微鏡,によって試料を検査するための方法が提供される。該方法においては,該顕微鏡が,試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと,該試料からの検出信号のための検出装置を有し,該検出装置が,予め設定可能な異なる波長領域の検出のために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネルを有し,前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々複数の時間的検出ウィンドウが割り当て可能であり,かくして,検出信号が前記複数の時間的検出ウィンドウに取り込まれ,前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウは,測定中に調整可能である(形態8・第2基本構成)。」とあるのを,「更に,上記の課題を解決するために,顕微鏡,とりわけ共焦点顕微鏡,とりわけ上記形態1?7の何れかの顕微鏡,によって試料を検査するための方法が提供される。該方法においては,該顕微鏡が,試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと,該試料からの検出信号のための検出装置を有し,該検出装置が,予め設定可能な異なる波長領域の検出のために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネルを有し,前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々,夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウが割り当て可能であり,かくして,検出信号が前記複数の時間的検出ウィンドウに取り込まれ,前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウは,測定中に調整可能であり,かくして,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する(形態8・第2基本構成)。」と訂正する。

2 訂正の目的について
訂正事項1は,請求項1に係る発明及び当該請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載された請求項2ないし16に係る発明における「複数の時間的検出ウィンドウ」を,「夫々異なる現象を検出するための」もののみに限定するとともに,各発明の顕微鏡を,「複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する」もののみに限定する訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項2は,請求項8に係る発明及び当該請求項8の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載された請求項9ないし16に係る発明における「複数の時間的検出ウィンドウ」を,「夫々異なる現象を検出するための」もののみに限定するとともに,各発明の方法を,「複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する」もののみに限定する訂正であるから,同号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
訂正事項3は,訂正事項1及び2による訂正に伴って,請求項1及び8の記載と不整合となる明細書の【0010】の記載を,訂正後の請求項1及び8の記載に整合させる訂正であるから,同項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」に該当する。
したがって,本件訂正は,特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものである。

3 新規事項の追加について
本件訂正前の明細書の【0009】には,「本発明の課題は,冒頭に掲げたタイプの顕微鏡及び冒頭に掲げたタイプの顕微鏡により試料を検査するための方法であって,検査の際の複数の現象のとりわけ良好な分離により,異なる現象(複数)を考慮したとりわけ多面的な使用を可能にする顕微鏡及び試料検査方法を提供することである。」と記載され,【0011】には,「試料検査中に異なる現象(複数)を互いに分離し評価することが,測定方法を巧妙に構成及び実行することによって可能であることが,本発明において初めて認識された。」と記載され,【0012】には,「従って,本発明の顕微鏡及び本発明の試料検査方法によって,検査中の複数の現象のとりわけ良好な分離により,異なる現象(複数)を考慮したとりわけ多面的な使用が可能にされる。」と記載されているから,訂正事項1及び2による限定事項のうち,顕微鏡及び方法が,「複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する」点は,本件訂正前の明細書に記載された事項である。
また,本件訂正前の明細書の【0011】には,「試料検査中に異なる現象(複数)を互いに分離し評価することが,測定方法を巧妙に構成及び実行することによって可能であることが,本発明において初めて認識された。このため,具体的態様においては,スペクトル検出チャンネル(複数)において夫々複数の時間的検出ウィンドウが調整可能に構成され,かくして,検出信号(複数)が調整可能な時間的検出ウィンドウに取り込まれることができる。従って,この場合,検出信号の時間依存性,例えば極めて迅速に出現する反射光及び通常はより遅れて出現する蛍光光,が考慮される。これに関して実行される時間的検出ウィンドウによる時間的分離によって,反射信号及び蛍光信号の相互の妨害(ないし干渉)は大幅に回避される。従って,これら2つ現象は,互いに独立に検査及び評価されることができる。」と記載されているところ,当該記載中の「極めて迅速に出現する反射光及び通常はより遅れて出現する蛍光光」が「複数の異なる現象」の具体例であることは,文脈上明らかであるから,訂正事項1及び2による限定事項のうちの残余の,複数の時間的検出ウィンドウが「夫々異なる現象を検出するための」ものである点は,本件訂正前の明細書の記載から自明な事項である。
また,訂正事項3は,訂正事項1及び2による訂正に伴って,請求項1及び8の記載と不整合となる明細書の【0010】の記載を,訂正後の請求項1及び8の記載に整合させる訂正であるから,訂正事項1及び2による訂正が,本件訂正前の明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導き出される技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでない以上,訂正事項3による訂正も,本件訂正前の明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導き出される技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではない。
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

なお,申立人は,令和2年10月9日に提出した意見書において,本件訂正前の明細書には,「複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する」ことにより「多面的な使用を可能にする顕微鏡及び試料検査方法を提供する」という課題は提示されているものの,具体的には,時間的検出ウィンドウについては,反射光及び蛍光以外の「異なる現象を検出する」ことについては開示されていないにもかかわらず,本件訂正後の請求項1及び8の「夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウ」は,反射光及び蛍光や検出信号の時間依存性に関わりのない,任意の異なる現象を含み,また,本件訂正後の「かくして,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する」ことは,反射光及び蛍光や検出信号の時間依存性に関わりのない,任意の異なる現象を分離し評価することまで含むため,本件訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものではないなどと主張する。
しかしながら,顕微鏡及び方法が,「複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する」点は,本件訂正前の明細書の【0009】,【0011】及び【0012】に記載された事項であり,複数の時間的検出ウィンドウが「夫々異なる現象を検出するための」ものである点は,本件訂正前の明細書の【0011】の記載から自明な事項である。本件訂正前の明細書において,「複数の異なる現象」の具体例が,反射光及び蛍光しか開示されていないからといって,顕微鏡及び方法が,「複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する」ものであり,複数の時間的検出ウィンドウが「夫々異なる現象を検出するための」ものであるとする本件訂正が,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものではないとすることはできない。
したがって,申立人の主張は採用できない。

4 特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
訂正事項1及び2は,特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
また,訂正事項3は,訂正事項1及び2による訂正に伴って,請求項1及び8の記載と不整合となる明細書の【0010】の記載を,訂正後の請求項1及び8の記載に整合させる訂正であるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

5 小括
前記2ないし4のとおり,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1ないし16〕について訂正することを認める。

第3 本件特許の請求項1ないし16に係る発明
前記第2のとおり,本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下,それぞれを「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明16」といい,これらを総称して「本件訂正発明」という。)は,それぞれ,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,当該請求項1ないし16の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと,試料からの検出信号のための検出装置を有する顕微鏡又は共焦点顕微鏡であって,
該検出装置が予め設定可能な異なる波長領域(1,2)を検出するために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)を有するよう構成され,
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々,夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が割り当て可能に構成され,
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)は,測定中に調整可能であり,
かくして,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する,
顕微鏡。
【請求項2】
前記スペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)の波長領域(1,2)及び/又は前記時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)は,測定中,調整可能及び/又は描出ないし表示可能である,
請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記波長領域(1,2)及び/又は前記時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)は夫々異なる値を有する,
請求項1又は2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
各スペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に対し,1つの独立の評価電子装置又は独立の評価チャンネルが割り当てられるか又は複数の独立の評価チャンネルが割り当てられる,
請求項1?3の何れかに記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記評価電子装置における前記1つの評価チャンネルにおける又は前記複数の評価チャンネルにおける評価は,前記時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)に時間的に関連する制御信号によって活性化可能又は不活性化可能である,
請求項4に記載の顕微鏡。
【請求項6】
2又は3以上の時間的検出ウィンドウが,データ取り込み中又はデータ取り込み後に互いに関連付け可能である,
請求項1?5の何れかに記載の顕微鏡。
【請求項7】
異なる時間的検出ウィンドウに対し異なるレーザが割り当て可能である,
請求項1?6の何れかに記載の顕微鏡。
【請求項8】
顕微鏡又は共焦点顕微鏡又は請求項1?7の何れかに記載の顕微鏡によって試料を検査するための方法であって,
該顕微鏡が,試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと,該試料からの検出信号のための検出装置を有し,該検出装置が,予め設定可能な異なる波長領域(1,2)の検出のために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)を有し,
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々,夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が割り当て可能であり,かくして,検出信号が前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)に取り込まれ,
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)は,測定中に調整可能であり,
かくして,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する,
方法。
【請求項9】
取り込まれるべき検出信号の評価は並行的又は順次的に実行される,
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各スペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に対し,1つの独立の評価電子装置又は独立の評価チャンネルが割り当てられるか又は複数の独立の評価チャンネルが割り当てられる,
請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記評価電子装置における前記1つの評価チャンネルにおける又は前記複数の評価チャンネルにおける評価は,前記時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)に時間的に関連する制御信号によって活性化又は不活性化される,
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
順次的評価の場合,時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)の終端において前記制御信号を不活性化する毎に,アドレスカウンタがインクリメントされる,
請求項9?11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)の評価された画像情報を含む各記憶セルは,個別に予め設定可能なマークが配される,
請求項8?12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
取り込まれるべき検出信号の評価は,トラック・アンド・ホールド回路によって実行され,ゲーティングパルスの各スタートによって,データ蓄積が開始される,
請求項8に記載の方法。
【請求項15】
2又は3以上の時間的検出ウィンドウは,データ取り込み中又はデータ取り込み後に互いに関連付けられ,有利には,該関連付けの結果が描出ないし表示される,
請求項8?14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
異なる時間的検出ウィンドウに対し異なるレーザが割り当てられる,
請求項8?15の何れかに記載の方法。」

第3 通知された取消理由の概要
令和1年10月25日付けの取消理由通知及び令和2年3月26日付け取消理由通知(決定の予告)により,本件訂正前の請求項1ないし16に係る特許に対して通知された取消理由(以下,「予告理由」という。)は,概略次のとおりである。
本件特許の請求項1ないし4,8ないし10に係る発明は,本件特許の優先権主張の日より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,その特許は,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない発明に対してされたものであるか,少なくとも,本件特許の優先権主張の日より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
また,本件特許の請求項5ないし7,11ないし16に係る発明は,本件特許の優先権主張の日より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

前記予告理由において引用された引用例は,次のとおりである。
甲1:Wolfgang Becher,“The bh TCSPC Handbook Forth Edition”,[online],2011年10月23日,Becker & Hickl GmbH,[令和元年10月4日検索],<URL:http://bio4.fizyka.amu.edu.pl/Soft/SPC-handbook-4ed-30a.pdf>

第4 判断
1 引用例
(1)甲1の記載
甲1は,ベッカー&ヒックル社製の時間相関単一光子計数(TCSPC)モジュールであるSPC-130,SPC-134,SPC-140,SPC-144,SPC-150,SPC-154,SPC-630,SPC-730及びSPC-830並びにマルチSPCソフトウェアに関するハンドブックであるところ,当該甲1は,本件特許の優先権主張の日より前である2011年(平成23年)10月23日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった(甲1の掲載日については,インターネットアーカイブhttps://web.archive.org/web/20111023163839/http://www.becker-hickl.com/を参照。)。
しかるに,甲1には,次の記載がある。(日本語訳における下線は,後述する甲1発明及び甲1方法発明の認定の根拠となる箇所を示すために,付したものである。なお,章,節,項等のタイトルについては,章のタイトルは空白無しで表示し,節のタイトルは1つの空白の後に表示し,項のタイトルは2つの空白の後に表示する等といった形式で表現した。また,図や表に付されたタイトルについては,空白無しで表示した。また,日本語訳において,図や表は省略した。さらに,記載箇所を示す行数は,図,表及びそれらのタイトルはカウントせず,本文のみをカウントした値である。)
ア 「
Overview about bh TCSPC Instrumentation
Becker & Hickl deliver a wide range of TCSPC modules, detectors, experiment control modules, picosecond diode lasers, and complete TCSPC and fluorescence lifetime imaging instruments. This handbook applies to the Becker & Hickl SPC-130/134, SPC-150/154, SPC-630, and SPC-830 time-correlated single photon counting modules. The general information provided in this book applies also to older SPC modules.
General Features of the bh TCSPC Devices
The bh SPC modules contain complete electronic systems for recording fast light signals by time-correlated single photon counting (TCSPC) on single PC boards. The Constant Fraction Discriminators (CFDs), the Time-to-Amplitude Converter (TAC), a fast Analog-to-Digital Converter (ADC), the data processing logics, and the data memory are integrated on the board.
・・・(中略)・・・
The boards can be used at count rates in excess of 5・106 photons/s. Thus, fluorescence decay curves or other optical waveforms can be recorded at acquisition times in the ms range. All bh TCSPC devices can be operated in packages of one, two, three, or four parallel TCSPC modules. Parallel operation substantially increases the count rate that can be obtained in a TCSPC experiment. ・・・(中略)・・・
All SPC boards use bh’s proprietary multi-dimensional TCSPC technique.
The boards can be operated both in the photon distribution mode or in the time-tag mode.
・・・(中略)・・・Multi-dimensional TCSPC also includes excitation wavelength multiplexing by a number of multiplexed lasers. Depending on the operation mode and the configuration of the optical system single optical waveforms (decay curves), multi-wavelength decay patterns, sequences of single decay curves or multiwavelength decay patterns, FLIM images, sequences of FLIM images, multi-spectral FLIM images, or time-resolved spectra can be recorded. ・・・(中略)・・・
All functions of the SPC modules are controlled by the SPCM ‘Multi SPC Software’. The software provides functions such as measurement control, online calculation and display of data, set-up of measurement parameters, 2-dimensional and 3-dimensional display of measurement results, mathematical operations, selection of subsets from multi-dimensional data sets, loading and saving of results and system parameters, control of the measurement in the selected operation mode. The SPCM software includes also the control of the bh DCS-120 confocal scanning FLIM system, resulting in a seamless interaction of TCSPC operation and scanning. The Multi SPC Software runs under Windows 2000, Windows NT, Windows XP, VISTA, and Windows 7 and is able to control up to four TCSPC modules simultaneously.
Although all bh TCSPC devices are an excellent choice for the traditional fluorescence lifetime experiments there true strength are advanced applications, such as multi-spectral fluorescence lifetime spectroscopy, single- and multi-wavelength fluorescence lifetime imaging, laser scanning microscopy, fast sequential recording of time-of-flight distributions in diffuse optical tomography, measurement of transient fluorescence lifetime effects in biological systems, combined fluorescence correlation (FCS) and lifetime spectroscopy, and spectroscopy of single molecules, quantum dots and semiconductor nano-structures by FCS, FIDA, and BIFL techniques.
TSPC Module Types
・・・(中略)・・・
SPC-150 Modules
The SPC-150 module have large internal memory and a fast bus interface, combined with the largest set of functions and operating modes of all bh TCSPC modules. The SPC-150 board can be used for traditional fluorescence lifetime experiments, diffuse optical tomography, stopped flow experiments, single molecule detection combined FCS/lifetime experiments, fluorescence correlation, and fluorescence and phosphorescence lifetime imaging. One or more SPC-150 modules are used the bh DCS-120 confocal FLIM system. They are also the basis of the standard FLIM systems for the Zeiss LSM 710 and 510 microscopes and various other confocal and multiphoton laser scanning microscopes.」(1ページ1行ないし5ページ33行)
[日本語訳]

bh TCSPC機器についての概要
ベッカー&ヒックルは,広範囲にわたるTCSPCモジュール,検出器,実験制御モジュール,ピコ秒レーザ,及び完全なTCSPCと蛍光寿命画像観察の機器を提供する。このハンドブックは,ベッカー&ヒックルSPC-130/134,SPC-150/154,SPC-630及びSPC-830の時間相関単一光子計数モジュールに,適用される。また,この本に示される一般的な情報は,以前のSPCモジュールにも適用される。
bh TCSPCデバイスの一般的な機能
bh SPCモジュールは,単一のPCボードの上で時間相関単一光子計数法(TCSPC)によって迅速に光信号を記録するための完全な電子システムを含む。低比率弁別器(CFD),時間振幅変換器(TAC),迅速なアナログ・デジタル変換器(ADC),データ処理ロジック,及びデータメモリは,ボードに統合されている。
・・・(中略)・・・
このボードは,5・106 光子/秒を上回るカウントレートで使用できる。したがって,蛍光減衰曲線又は他の光学波形は,ミリ秒の範囲の取得時間で記録できる。全てのbh TCSPCデバイスは,1台,2台,3台又は4台の並列のTCSPCモジュールのパッケージで作動することができる。並列での作用は,TCSPC実験で得ることができるカウントレートを大幅に上昇させる。・・・(中略)・・・
全てのSPCボードは,bh独自の多次元TCSPC技術を使用する。このボードは,光子分布モード,また時間タグモードの両方で,作動できる。
・・・(中略)・・・多次元TCSPCはさらに,いくつかの多重化レーザによる励起波長多重化を含む。操作モードと光学系の構成に従い,1つの光学波形(減衰曲線),多波長減衰パターン,1つの減衰曲線又は多波長の減衰パターンのシーケンス,FLIM画像,FLIM画像のシーケンス,マルチスペクトルFLIM画像,又は時間分解されたスペクトルが記録できる。・・・(中略)・・・
SPCモジュールの全ての機能は,SPCM‘マルチSPCソフトウェア’によって制御される。このソフトウェアは,諸機能を提供する。例えば,測定制御,オンライン計算とデータの表示,測定パラメータの設定,測定結果の二次元表示と三次元表示,数学演算,多次元データセットからのサブセットの選択,結果とシステムパラメータのロード及び保存,選択された操作モードの測定の制御を提供する。SPCMソフトウェアは,bh DCS-120共焦点走査FLIMシステムの制御を含み,TCSPC動作及び走査のシームレスな相互作用をもたらす。マルチSPCソフトウェアはウィンドウズ2000,ウィンドウズNT,ウィンドウズXP,VISTA及びウィンドウズ7の下で作動し,同時に最高4台のTCSPCモジュールを制御することができる。
全てのbh TCSPCデバイスが従来からの蛍光寿命実験のための優れた選択肢であるが,それらの真の強みは,例えば,マルチスペクトル蛍光寿命分光法,1つの波長及びマルチ波長の蛍光寿命画像観察,レーザ走査顕微鏡検査,拡散光断層撮影の飛行時間型の分配の迅速な順次記録,生体システム中の一時的蛍光寿命効果の測定,蛍光相関関係(FCS)と寿命分光法の組合せ,及びFCS・FIDA・BIFL技術による単一分子・量子ドット・半導体ナノ構造の分光法といった先進的な応用にある。
TSPCモジュールタイプ
・・・(中略)・・・
SPC-150モジュール
SPC-150モジュールには,大容量の内部メモリと高速バスインターフェイスがあり,全てのbh TCSPCモジュールの機能と操作モードの最大セットと組み合わされている。SPC-150ボードは,従来の蛍光寿命実験,拡散光トモグラフィー,ストップフロー実験,単一分子検出FCS/寿命実験の組み合わせ,蛍光相関,及び蛍光・燐光寿命イメージングに使用できる。bh DCS-120共焦点FLIMシステムでは,1つ以上のSPC-150モジュールが使用される。また,ツァイスLSM 710及び510顕微鏡並びにその他のさまざまな共焦点及び多光子レーザー走査顕微鏡用の標準FLIMシステムの基盤でもある。」

イ 「
Measurement Modes of the bh TCSPC Modules
‘Single’ Mode
In the ‘Single’ mode the intensity versus time (usually a fluorescence decay curve) is measured, see Fig. 16, left. The ‘Single’ mode is the traditional TCSPC mode used in classic TCSPC devices.・・・(中略)・・

fi(T) and fi(ext): Spectrum scan modes
The ‘fi(ext)’ and ‘fi(T)’ modes record a time-controlled sequence of decay curves. However, instead of storing the complete decay curves, gated intensities in selectable time windows are stored. Up to eight independent time windows can be defined on the measured waveforms. The intensities within these windows are displayed as functions of time or of an externally variable parameter. The mode is also called spectrum scan mode because it was originally introduced to record time-resolved spectra.

Fig. 21: fi(t,T) mode: Time resolved spectra in 8 time-windows, recorded during a wavelength scan of a monochromator
・・・(中略)・・・
Excitation wavelength multiplexing FLIM
Several lasers of a laser scanning microscope can be multiplexed on a pixel-by-pixel, line-by-line, or frame-by-frame basis, and separate images recorded within the same scan. The high multiplexing rate avoids artefacts by photobleaching or dynamic effects in the sample. In the bh DCS-120 scanning system excitation wavelength multiplexing is integrated in the scanner control [34].」(9ページ1行ないし16ページ14行)
[日本語訳]

bh TCSPCモジュールの測定モード
‘シングル’モード
‘シングル’モードでは,強度と時間(通常は蛍光減衰曲線)が測定される(図16左を参照)。‘シングル’モードは,従来のTCSPCデバイスで使用されている従来のTCSPCモードである。・・・(中略)・・・
fi(T)及びfi(ext):スペクトル走査モード
‘fi(ext)’と‘fi(T)’モードは,減衰曲線の時間制御されたシーケンスを記録する。しかし,完全な減衰曲線を保存する代わりに,選択可能なタイムウィンドウによりゲーティングされた強度が保存される。独立した最大8個のタイムウィンドウは,測定された波形の上で定められることができる。これらのウィンドウの中の強度は,時間の関数,又は外部可変パラメーターの関数として表示される。時間分解スペクトルを記録するために当初導入されたので,このモードはスペクトル走査モードとも呼ばれる。

図21:fi(t,T)モード:モノクロメータの波長走査の間に記録された,8つのタイムウィンドウ中の時間分解されたスペクトル
・・・(中略)・・・
励起波長多重化FLIM
レーザー走査型顕微鏡の複数のレーザーは,ピクセルごと,ラインごと,又はフレームごとに多重化し,同じ走査内で別々の画像を記録できる。高い多重化率により,サンプルの光退色又は動的効果によるアーチファクトが回避される。bh DCS-120走査システムでは,励起波長多重化がスキャナー制御に組み込まれている[34]。」

ウ 「
bh DCS-120 Confocal Scanning FLIM Systems
The DCS-120 is a complete confocal laser scanning microscope system for fluorescence lifetime imaging. The system is based on picosecond diode laser excitation, fast galvanometermirror scanning, confocal detection, and bh’s multi-dimensional TCSPC technique. The DCS-120 scan head has two input channels for bh BDL-SMC lasers, two confocal detection paths, internal beamsplitters and filters, individually selectable pinholes, and two outputs for directcoupled detectors. The TCSPC electronics includes one or two SPC-830 modules, one or two SPC-150 modules, a DCC-100 detector controller, and a GVD-120 scan controller. The operating software of the scanner is integrated in the standard SPCM software of the bh TCSPC systems.
A variety of different system configurations is available. The DCS-120 can be delivered with one or two lasers of different wavelength. On the detector side, one or two PMC-100 detectors, one or two R3809U MCP-PMTs, one or two HPM-100-40 hybrid detector modules. Moreover or one or two bh MW-FLIM multi-wavelength detector assemblies can be used. The standard TCSPC module of the DCS-120 system is the SPC-150. Systems with one detector contain one, systems with two detectors two SPC-150 modules. The DCS-120 scanner can be adapted to almost any conventional microscope. Complete DCS-120 systems are available with a Nikon TE 2000 U microscope, a Zeiss Axio Observer or an Olympus IX microscope. Please contact bh for availability of optical adapters. For technical details please see DCS-120 handbook [34] and page 164 of this handbook.

Fig. 34: DCS-120 Confocal Scanning FLIM system. Left: TCSPC and control electronics, in Simple-Tau 152 system. Right: DCS-120 confocal scanner with Zeiss Axio Observer microscope
The essential features of the DCS-120 system are summarised below.
Suppression of out-of-focus light
・・・(中略)・・・
Dual-Wavelength FLIM
With two detection channels the DCS-120 system records in two wavelength intervals simultaneously. The signals are detected by separate detectors and processed by separate TCSPC modules. There is no intensity or lifetime crosstalk due to counting loss or pile-up. Even if one channel overloads the other channel is still able to produce correct data.

Fig. 38: Dual-wavelength detection. BPAE cells stained with Alexa 488 phalloidin and Mito Tracker Red. Left: 484 nm to 560 nm. Right: 590 nm to 650 nm.
Multi-Wavelength FLIM
The bh multispectral FLIM systems detect simultaneously in 16 wavelength intervals [64, 75]. There is no time gating, no wavelength scanning and, consequently, no loss of photons by rejecting any part of the signal. The system thus reaches near-ideal recording efficiency. Moreover, dynamic effects in the sample or photobleaching do not cause distortions in the spectra or decay functions. Please see also page 251 and page 252.

Fig. 39: Multi-wavelength FLIM. Human epithelium cells, autofluorescence. Excitation at 405 nm.
Laser Wavelength Multiplexing
The two lasers of the DCS-120 system can be multiplexed on a pixel-by-pixel, line-by-line, or frame-by-frame basis. Laser multiplexing helps discriminate the signals of several fluorophores, or allows one to excite two fluorophores that cannot efficiently be excited at the same wavelength. The capability of fast multiplexing avoids artefacts by photobleaching or dynamic effects in the sample. An example of a wavelength-multiplexed recording is shown in Fig. 315, page 247.
」(18ページ1行ないし20ページ14行)
[日本語訳]

bh DCS-120共焦点走査FLIMシステム
DCS-120は,蛍光寿命画像観察のための完璧な共焦点レーザ走査顕微鏡システムである。このシステムは,ピコ秒ダイオードレーザ励起,高速ガルバノミラーの走査,共焦点検出,及びbhの多次元TCSPC技術に基づく。DCS-120走査ヘッドは,bh BDL-SMCレーザー用の2つの入力チャネル,2本の共焦点検出経路,内部ビームスプリッタ及びフィルタ,個別に選択可能な複数のピンホール,並びに検出器を直接結合するための2つの出力を持つ。TCSPCエレクトロニクスは,1つか2つのSPC-150モジュール,1つのDCC-100検出器コントローラ,及び1つのGVD-120走査コントローラを含む。スキャナの操作用ソフトウェアは,bh TCSPCシステムの標準的なSPCMソフトウェアで統合される。
いろいろな異なるシステム構成が,利用できる。DCS-120は,波長が異なる1つか2つのレーザーで提供できる。検出器側は,1つか2つのPMC-100検出器,1つか2つのR3809U MCP-PMTs,また1つか2つのHPM-100-40ハイブリッド検出器モジュールが使用できる。さらに,1つか2つのbh MW-FLIM多波長検出器アセンブリが使用できる。DCS-120システムの標準的なTCSPCモジュールは,SPC-150である。1台の検出器によるシステムは1つのSPC-150を含み,2つの検出器によるシステムは2つのSPC-150モジュールを含む。DCS-120スキャナは,ほとんどどんな従来の顕微鏡にも適合可能である。ニコンTE 2000U顕微鏡,ツァイスAxioオブザーバー,又はオリンパスIX顕微鏡を備えた完全なDCS-120システムが利用可能である。光学アダプターが入手できるかどうかについては,bhに連絡されたい。技術的な詳細については,DCS-120ハンドブック[34],及びこのハンドブックの164ページを参照されたい。

図34:DCS-120共焦点走査FLIMシステム。左:シンプルTau 152システムでのTCSPC及び制御エレクトロニクス。右:ツァイスAxioオブザーバー顕微鏡を伴うDCS-120共焦点スキャナ
DCS-120システムの重要な特徴は,次のように要約される。
非合焦の光の抑制
・・・(中略)・・・
二波長FLIM
2つの検出チャネルを用いて,DCS-120システムは,同時に2つの波長間隔で記録を行う。信号は別の検出器で見つけられ,別のTCSPCモジュールで処理される。カウントの損失又はパイルアップに起因する強さ又は寿命のクロストークは存在しない。たとえ1つのチャネルが過負荷になったときであっても,やはりまだ他のチャネルが正しいデータを作成することができる。

図38:二波長検出。Alexa 488ファロイジン及び胃Mito TrackerRexdで染色したBPAE細胞。左484nmから560nm:右590nmから650nm
多波長FLIM
bhマルチスペクトルFLIMシステムは,16の波長間隔[64,75]で同時に検出する。時間でのゲーティング,波長走査はなく,したがって,信号の任意の部分を拒絶することによる光子の損失はない。したがって,このシステムは,理想に近い記録効率に達する。さらに,試料又は光退色のダイナミックな影響は,スペクトル又は減衰機能で歪みを引き起こさない。251ページと252ページをさらに参照されたい。

図39:多波長FLIM。人間の上皮細胞,自己発光。405nmで励起
レーザ波長多重化
DCS-120システムの2つのレーザは,ピクセルごと,ラインごと,又はフレームごとを基礎として多重化することができる。レーザ多重化は,いくつかの蛍光色素の信号を識別するのに役立つか,又は,同じ波長で効率的に励起することができない2つの蛍光色素を励起することを可能にする。迅速な多重化の能力は,試料での光退色又はダイナミックな影響によるアーチファクトを回避する。波長多重化された記録の例は,図315,247ページに示される。」

エ 「
Multi-Dimensional TCSPC
In 1993 bh introduced a new generation of TCSPC devices.・・・(中略)・・・Advanced TCSPC devices use a multi-dimensional recording process [73]. The idea behind multi-dimensional TCSPC is illustrated in Fig. 80.
The classic TCSPC principle, shown Fig. 80, left records a photon distribution over the time in the signal period. The result is one-dimensional, i.e. a curve that represents the waveform of the optical signal. If the shape of the curve is to be observed in dependence of a additional parameter the experiment has to be repeated for different values of that parameter. This is time-consuming, and, if the parameter cannot be actively controlled, inefficient.
Multi-dimensional TCSPC is shown right. It records the photon density not only as a function of the time in the signal period, but also of additional parameters, P. These can be the wavelength, spatial coordinates, location within a scanning area, the time from the start of the experiment, or any other parameter that describes the individual photons, or the state of the system investigated.

Fig. 80: Left: Principle of classic TCSPC. The result is a one-dimensional photon distribution over the time in the signal period. Right: Multidimensional TCSPC. The result is a multi-dimensional distribution over the time in the signal period and one or several additional parameters determined for the individual photons.
・・・(中略)・・・
Multi-Module TCSPC Systems
The maximum count rate of a single TCSPC channel is limited by the counting loss due to the ‘dead time’ of the TCSPC channel, by pile-up effects, and by the counting capability of the detector.
・・・(中略)・・・
The solution to the count-rate problem is multi-module operation. Splitting the light into several detectors connected to independent TCSPC modules proportionally increases the counting capability.」(45ページ1行ないし63ページ12行)
[日本語訳]

多次元TCSPC
1993年にbhは新世代のTCSPCデバイスを導入した。・・・(中略)・・・高度なTCSPCデバイスは,多次元記録プロセスを使用する[73]。多次元TCSPCの背後にある考え方を図80に示す。
図80に示す古典的なTCSPCの原理は,信号周期の時間にわたる光子分布を記録する。結果は1次元,つまり,光信号の波形を表す曲線である。追加のパラメーターに依存して曲線の形状を観察する場合,そのパラメーターの異なる値について実験を繰り返す必要がある。これには時間がかかり,パラメーターをアクティブに制御できない場合は非効率的である。
多次元TCSPCを右に示す。光子密度を,信号周期の時間の関数としてだけでなく,追加のパラメーターPの関数として記録する。これらは,波長,空間座標,走査領域内の位置,実験開始からの時間,又は個々の光子を説明するその他のパラメーター,又は調査対象のシステムの状態である。

図80:左:古典的なTCSPCの原理。結果は,信号周期の時間にわたる1次元の光子分布である。右:多次元TCSPC。結果は,信号周期の時間にわたる多次元分布と,個々の光子に対して決定された1つ又は複数の追加パラメーターである。
・・・(中略)・・・
マルチモジュールTCSPCシステム
1つのTCSPCチャネルの最大カウントレートは,TCSPCチャネルの‘デッドタイム’によるカウント損失,パイルアップ効果,及び検出器のカウント機能によって制限される。
・・・(中略)・・・
カウント率の問題の解決策は,マルチモジュール操作である。独立したTCSPCモジュールに接続された複数の検出器に光を分割すると,計数能力が比例して増加する。」

オ 「
Architecture of the bh TCSPC Modules
General Principle
The bh SPC modules contain all the building blocks of TCSPC on a single PCI-compatible PC board. The general principle of the modules is shown in Fig. 103.

Fig. 103: General principle of the bh TCSPC modules
CFD and SYNC circuits
TCSPC is based on the measurement of the time differences between the single-photon pulses from a detector (or from a number of detectors) and reference pulses. For fluorescence decay measurements the reference pulses are derived from the excitation pulse sequence; in photon correlation experiments the reference pulses are single-photon pulses from a second detector. Accurate time measurement means accurate triggering on the single-photon pulses of the detectors and the reference pulses from the light source. Unfortunately, these pulses are far from being stable.・・・(中略)・・・
Therefore constant-fraction discriminators (CFDs) are used both at the detector and at the reference input. A CFD triggers at a constant fraction of the pulse amplitude, thus avoiding pulse-height-induced timing jitter.・・・(中略)・・・
TAC
The time-to-amplitude converter, TAC, measures the time of a detected photon from the pulse at the detector input to the next pulse at the reference input. This ‘reversed start-stop’ method is the key to process high photon count rates at high pulse repetition rates. It reduces the speed requirements to the TAC because its working cycle (start-stop-reset) has to be performed only at the photon detection rate instead of the considerably higher pulse repetition rate, see Fig. 79, page 43.
When the TAC is started by a pulse at the start input, it generates a linear ramp voltage until a stop pulse appears at the stop input. Thus the TAC generates an output voltage depending linearly on the temporal position of the photon. The TAC output voltage is fed to the programmable gain amplifier, PGA. The PGA is used to stretch a selectable part of the TAC characteristic over the complete measurement time window. To increase the effective count rate at high PGA gains, the output voltage of the PGA is checked by the window discriminator WD which rejects the processing of events outside the time window of interest. For details of the TACs of the bh SPC modules, see ‘Detailed Description of Building Blocks’, page 72.
ADC
The analog-digital converter, ADC, converts the amplified TAC signal into the address of the memory, MEM.」(65ページ1行ないし66ページ34行)
[日本語訳]

bh TCSPCモジュールのアーキテクチャ
一般的な原理
bh SPCモジュールには,単一のPCI互換PCボード上のTCSPCの全ての構成要素が含まれている。モジュールの一般的な原理を図103に示す。

図103:bh TCSPCモジュールの一般的な原理
CFD及びSYNC回路
TCSPCは,検出器(又は複数の検出器)からの単一光子パルスと基準パルス間の時間差の測定に基づいている。蛍光減衰測定の場合,基準パルスは励起パルスシーケンスから得られる。光子相関実験では,基準パルスは2番目の検出器からの単一光子パルスである。正確な時間測定とは,検出器の単一光子パルスと光源からの参照パルスの正確なトリガーを意味する。残念ながら,これらのパルスは安定しているとはほど遠い。・・・(中略)・・・
したがって,検出器と参照入力の両方で,定数分数弁別器(CFD)が使用される。CFDはパルス振幅の一定の割合でトリガーするため,パルスの高さによるタイミングジッタが回避される。・・・(中略)・・・
TAC
時間-振幅変換器TACは,検出器入力のパルスから基準入力の次のパルスまでの検出された光子の時間を測定する。この「逆スタート-ストップ」方式は,高いパルス繰り返し率で高い光子カウント率を処理するための鍵である。作業サイクル(start-stop-reset)は,かなり高いパルス繰り返し率ではなく,光子検出率でのみ実行する必要があるため,TACの速度要件が軽減される(43ページの図79を参照)。
TACは,開始入力のパルスによって開始されると,停止パルスが停止入力に現れるまで線形ランプ電圧を生成する。したがって,TACは光子の時間的位置に線形に依存する出力電圧を生成する。TAC出力電圧は,プログラマブルゲインアンプPGAに供給される。PGAは,完全なタイムウィンドウの測定にわたってTAC特性の選択可能な部分を引き伸ばすために使用される。高いPGAゲインで実効カウントレートを上げるために,PGAの出力電圧は,対象のタイムウィンドウ外のイベントの処理を拒否するウィンドウ弁別器WDによってチェックされる。bh SPCモジ
ュールのTACの詳細については,‘ビルディングブロックの詳細な説明’,72ページを参照されたい。
ADC
アナログ-デジタル変換器ADCは,増幅されたTAC信号をメモリMEMのアドレスに変換する。」
カ 「
FLIM Systems
・・・(中略)・・・
Basic Principle of a TCSPC FLIM System
The general setup of a TCSPC FLIM system is shown in Fig. 196. The essential parts of the optical system are shown as black boxes. FLIM requires
- a high-repetition rate pulsed laser to excite fluorescence in the sample
- a timing reference signal from the laser
- a scanning device that scans a spot of the excitation light over the sample
- an electrical output of the scan clock pulses, pixel clock, line clock, and frame clock, to synchronise the data acquisition in the SPC module with the scanning
- an optical port from the scanner or another part of the optical system that delivers the fluorescence photons to a detector
- a fast photon counting detector that detects the photons
- a TCSPC module that builds up a photon distribution over the arrival time of the photons in the laser pulse period and the scan coordinates
The recording process works as described under ‘FLIM: Scan Sync In mode’ and ‘FIFO Imaging Mode’: The scanner runs a repetitive raster scan over the sample. The SPC module tracks the scanner position by continuously counting the scan clock pulses delivered by the scanner. When the SPC module detects a photon pulse it determines the time of the photon in the laser pulse period. By doing so for a large number of photons, the SPC module builds up the distribution of the photons over the time in the laser period and the scan coordinates. The result is a data array that represents the pixels of the scan, with a large number of time channels in each pixels. The photon numbers in these time channels represent the fluorescence decay function, see Fig. 196, right.

Fig. 196: Basic principle of a TCSPC FLIM system
Adding more Detector Channels: Parallel TCSPC
More detector channels can be added as shown in Fig. 197. Within the optical system, the light is split into several spectral (or polarisation) components. The components are detected by separate detectors which are connected to separate SPC modules. The advantage of using parallel TCSPC channels is that the maximum count rate of the system is multiplied by the number of modules. Moreover, there is no electrical crosstalk between the channels. Even if one TCSPC channels saturates in bright pixels, the other one still delivers correct data. Because of these advantages all bh FLIM systems with two detector channels currently use parallel TCSPC architecture [34, 36]. A system with 8 parallel channels has been described in [54] and [77].

Fig. 197: Recording in two detector channels by parallel TCSPC modules
・・・(中略)・・・
DCS-120 Confocal Scanning FLIM System
General System Architecture
The bh DCS-120 confocal scanning FLIM system [34] is a complete laser scanning FLIM microscope bases on an inverted microscope, the bh DCS-120 scan head, and bh TCSPC electronics.
The optical principle of the DCS-120 scan head is shown in Fig. 220. The scan head has two input channels for bh BDL-SMC lasers, two confocal detection paths, internal beamsplitters and filters, individually selectable pinholes, and two outputs for detectors. The detectors are attached to the back of the scan head. Free-beam coupling is used to minimise coupling loss and reflections. Scanning is performed by fast galvanometer mirrors. For details please see handbook of the DCS-120 system [34].

Fig. 220: Schematic diagram of the DCS-120 scan head with characteristics of standard filters and dichroics
The electronic system components are shown schematically in Fig. 221. The scanner is controlled by a bh GVD-120 scan controller and a bh GDA-120 scan amplifier. The GVD-120 controls also the lasers. Laser control includes beam blanking during the flyback, laser multiplexing, and intensity regulation.
A wide variety of detectors can be used, e.g. the bh PMC-100, the Hamamatsu H7422-40 and R3809U, and the id-Quantique id100-50 SPADs. Multi-wavelength FLIM is available by using the bh MW FLIM assembly. Two MW FLIM assemblies can be coupled to the output ports of the DCS-120 scan head via the usual fibre bundle [32]. The detectors are controlled via a DCC-100 detector controller card.
The standard TCSPC system of the DCS-120 system contains two parallel SPC-150 modules, a DCC-100 detector controller, and a GVD-120 scan controller in an extension box of a laptop PC. The control of the DCS-120 is fully integrated in the bh SPCM data acquisition software, see ‘Scanner Control’ page 465. An example of the main panel of a DCS-120 system is shown in Fig. 222. Please see DCS-120 handbook for details.

Fig. 221: DCS-120 confocal scanning FLIM system. Standard configuration with two parallel SPC-150 modules.

Fig. 222: SPCM main panel of a DCS-120 scanning system. Dual-SPC-150 system. Images of both channels displayed, scanner control and detector control panels open」(144ページ1行ないし165ページ2行)
[日本語訳]

FLIMシステム
・・・(中略)・・・
TCSPC FLIMシステムの基本原理
TCSPC FLIMシステムの一般的なセットアップを図196に示す。光学システムの重要な部分は黒いボックスで示されている。FLIMでは,以下が要求される
- サンプル内の蛍光を励起する高繰り返し速度のパルスレーザー
- レーザーからのタイミング基準信号
- 励起光のスポットをサンプル上で走査する走査装置
- SPCモジュールでのデータ収集を走査と同期するための走査クロックパルス
,ピクセルクロック,ラインクロック,及びフレームクロックの電気出力
- スキャナーからの光学ポート,又は蛍光光子を検出器に送る光学システムの別の部分
- 光子を検出する高速光子計数検出器
- レーザーパルス周期と走査座標内の光子の到着時間にわたって光子分布を構築するTCSPCモジュール
記録プロセスは,‘FLIM:走査同期モード’及び‘FIFOイメージングモード’で説明されているように機能する。スキャナーは,サンプルに対して繰り返しラスター走査を実行する。SPCモジュールは,スキャナーから送信される走査クロックパルスを継続的にカウントすることにより,スキャナーの位置を追跡する。SPCモジュールは,光子パルスを検出すると,レーザーパルス周期内の光子の時間を決定する。多数の光子に対してこれを行うことにより,SPCモジュールは,レーザー周期と走査座標の時間にわたる光子の分布を構築する。結果は,走査のピクセルを表すデータ配列であり,各ピクセルには多数の時間チャネルがある。これらの時間チャネルの光子数は,蛍光減衰関数を表す。図196右を参照されたい。

図196:TCSPC FLIMシステムの基本原理
検出器チャネルの追加:並列TCSPC
図197に示すように,さらに検出器チャネルを追加できる。光学システム内では,光はいくつかのスペクトル(又は偏光)成分に分割される。成分は,個別のSPCモジュールに接続されている個別の検出器によって検出される。並列TCSPCチャネルを使用する利点は,システムの最大カウントレートにモジュール数が乗算されることである。さらに,チャネル間に電気的なクロストークはない。1つのTCSPCチャネルが明るいピクセルで飽和しても,もう1つのチャネルは正しいデータを提供する。これらの利点があるため,2つの検出器チャネルを持つ全てのbh FLIMシステムは,現在,並列TCSPCアーキテクチャを使用している[34,36]。8つの並列チャネルを持つシステムは,[54]及び[77]で説明されている。

図197:並列TCSPCモジュールによる2つの検出器チャネルでの記録
・・・(中略)・・・
DCS-120共焦点走査FLIMシステム
一般的なシステムアーキテクチャ
bh DCS-120共焦点走査FLIMシステム[34]は,倒立顕微鏡,bh DCS-120走査ヘッド,及びbh TCSPCエレクトロニクスに基づく完全なレーザースキャニングFLIM顕微鏡ベースである。
DCS-120走査ヘッドの光学原理を図220に示す。走査ヘッドには,bh BDL-SMCレーザー用の2つの入力チャネル,2つの共焦点検出経路,内部ビームスプリッター及びフィルター,個別に選択可能な複数のピンホール,並びに検出器用の2つの出力がある。検出器は走査ヘッドの背面に取り付けられている。結合損失と反射を最小限に抑えるために,フリービーム結合が使用される。走査は,高速ガルバノミラーによって実行される。詳細については,DCS-120システムのハンドブックを参照されたい[34]。

図220:標準フィルターとダイクロイックの特性を備えたDCS-120走査ヘッドの概略図
電子システムのコンポーネントを図221に示す。スキャナは,bh GVD-120走査コントローラーとbh GDA-120走査アンプによって制御される。GVD-120はレーザーも制御する。レーザー制御には,フライバック中のビームブランキング,レーザー多重化,及び強度調整が含まれる。
さまざまな検出器を使用できる。例えば,bh PMC-100,Hamamatsu H7422-40及びR3809U,id-Quantique id100-50SPAD。多波長FLIMは,bh MW FLIMアセンブリを使用して利用できる。2つのMW FLIMアセンブリは,通常のファイバーバンドルを介してDCS-120走査ヘッドの出力ポートに結合できる[32]。検出器は,DCC-100検出器コントローラーカードを介して制御される。
DCS-120システムの標準TCSPCシステムは,ラップトップPCの拡張ボックス中の2つの並列SPC-150モジュール,DCC-100検出器コントローラー,及びGVD-120走査コントローラーを含んでいる。DCS-120の制御は,bh SPCMデータ収集ソフトウェアに完全に統合されている。465ページの‘Scanner Control’を参照されたい。DCS-120システムのメインパネルの例を図222に示す。詳細についてはDCS-120ハンドブックを参照されたい。

図221:DCS-120共焦点走査FLIMシステム。2つの並列SPC-150モジュールの標
準構成。

図222:DCS-120走査システムのSPCMメインパネル。Dual-SPC-150システム。両方のチャネルの画像が表示され,スキャナー制御パネルと検出器制御パネルが開いている。」

キ 「
TCSPC Applications
Measurement of Luminescence Decay Curves
・・・(中略)・・・
Biological FLIM Applications
Measurement of Local Environment Parameters
・・・(中略)・・・
Fluorescence Resonance Energy Transfer (FRET)
FRET is an interaction of two fluorophore molecules with the emission band of one dye overlapping the absorption band of the other. In this case the energy from the first dye, the donor, can be transferred immediately to the second one, the acceptor. The energy transfer itself does not involve any light emission and absorption [230, 384]. Forster(決定注:「o」に付されたウムラウト記号は省略した。以下,同様。) resonance energy transfer (FRET), or resonance energy transfer (RET), are synonyms of the same effect. The energy transfer rate from the donor to the acceptor decreases with the sixth power of the distance. Therefore it is noticeable only at distances shorter than 10 nm [384]. FRET results in an extremely efficient quenching of the donor fluorescence and, consequently, decrease of the donor lifetime.

Fig. 368: Fluorescence resonance energy transfer
Because of its dependence on the distance FRET has become an important tool of cell biology [473]. Different proteins are labelled with the donor and the acceptor; FRET is then used to verify whether the proteins are physically linked and to determine distances on the nm scale.
・・・(中略)・・・
Double-exponential FRET
TCSPC FLIM solves the problem of interacting and non-interacting donor by doubleexponential lifetime analysis. The resulting donor decay functions can be approximated by a double exponential model, with a slow lifetime component from the non-interacting (unquenched) and a fast component from the interacting (quenched) donor molecules. If the labelling is complete, as it can be expected if the cell is expressing fusion proteins of the GFP variants, the decay components directly represent the fractions of interacting and non-interacting proteins. The composition of the donor decay function is illustrated in Fig. 370.

Fig. 370: Fluorescence decay components in FRET systems
Double exponential decay analysis delivers the lifetimes, τ_(0) and τ_(fret), and the intensity factors (amplitudes), a and b, of the two decay components. From these parameters can be derived the true FRET efficiency, E_(fret), the ratio of the distance and the Forster radius, r/r_(0), and the ratio of the number of interacting and non-interacting donor molecules, N_(fret)/ N_(0) :
E_(fret) = 1-τ_(fret)/τ_(0)
(r/r_(0))^(6) = τ_(fret)/(τ_(0)-τ_(fret)) or (r/r_(0))^(6)=1/E_(fret)-1
N_(fret)/N_(0) = a/b」(215ページ1行ないし285ページ下から3行)
[日本語訳]

TCSPCアプリケーション
発光減衰曲線の測定
・・・(中略)・・・
生物学的FLIMアプリケーション
局所環境パラメーターの測定
・・・(中略)・・・
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)
FRETは,2つのフルオロフォア分子の1つの色素の発光バンドが他の色素の吸収バンドに重複する相互作用である。この場合,最初の色素であるドナーからのエネルギーは,すぐに2番目の色素であるアクセプターに移動する。エネルギー移動自体には,光の放出と吸収は含まれない[230,384]。フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)又は共鳴エネルギー移動(RET)は,同じ効果の同義語である。ドナーからアクセプターへのエネルギー伝達率は,距離の6乗で減少する。したがって,10nmより短い距離でのみ顕著である[384]。FRETにより,ドナーの蛍光が非常に効率的に消光され,その結果,ドナーの寿命が短くなる。

図368:蛍光共鳴エネルギー移動
距離に依存するため,FRETは細胞生物学の重要なツールになった[473]。ドナーとアクセプターで異なるタンパク質が標識されている。次に,FRETを使用して,タンパク質が物理的にリンクされているかどうかを確認し,nmスケールで距離を決定する。
・・・(中略)・・・
二重指数FRET
TCSPC FLIMは,二重指数関数寿命分析により,相互作用及び非相互作用ドナーの問題を解決する。結果のドナー減衰関数は,非相互作用(非消光)からの遅い寿命成分と相互作用(消光)ドナー分子からの高速成分を持つ二重指数モデルで近似できる。細胞がGFP変異体の融合タンパク質を発現している場合に予想されるように,ラベルリングが完了している場合,崩壊成分は相互作用及び非相互作用タンパク質の画分を直接表す。ドナー減衰関数の構成を図370に示す。

図370:FRETシステムの蛍光減衰成分
二重指数関数的減衰解析は,2つの減衰成分の寿命τ_(0) とτ_(fret) ,及び強度係数(振幅)aとbを提供する。これらのパラメーターから,真のFRET効率E_(fret) ,距離とフェルスター半径の比r/r_(0) ,及び相互作用するドナー分子と相互作用しないドナー分子の数の比N_(fret)/N_(0) を導き出すことができる:
E_(fret)=1-τ_(fret)/τ_(0)
(r/r_(0))^(6)=τ_(fret)/(τ_(0)-τ_(fret))又は(r/r_(0))^(6)=1/E_(fret)-1
N_(fret)/N_(0)=a/b」

ク 「
SPCM Software
All bh TCSPC modules come with the ‘Multi SPC Software’, SPCM, a comfortable software package that allows the user to operate up to four SPC-600/630, SPC-700/730, SPC-830, SPC-130, SPC-140 or SPC-150 modules or one SPC-134, 144 or 154 package. SPCM also controls the DPC-230 16-channel photon correlator. The software includes measurement parameter setting, measurement control, scanner control, loading and saving of measurement and setup data, and data display and evaluation in 2-dimensional and 3-dimensional modes.・・・(中略)・・・
The SPCM software can be started with or without an SPC module being installed in the computer. When the software is started the initialisation window shown in Fig. 471 appears.・・・(中略)・・・
When the initialisation window appears, click on ‘OK’. This opens the main panel of the SPCM Software, see Fig. 472. The upper part of main panel contains one or several windows that display data, e.g. decay curves, images, FCS curves or photon counting histograms. The lower part displays information about the count rates and the status of the measurement, and allows the user easy access to the most frequently used system and measurement control parameters. Functions like load and save, conversion of file formats, definition of the TCSPC system parameters and operation modes, display configuration and display routines are accessible via a menu bar at the top of the main panel.
Overview
Configuration of the SPC Main Panel
・・・(中略)・・・
Module Select (Multi-SPC Systems)
The Multi SPC Software is able to control up to four TCSPC channels, i.e. up to four SPC-6, -7 or -8 modules or one SPC-134 or SPC-144 package.Many (though not all) system parameters can be set differently in the individual modules. The parameters shown in the ‘Main Panel’ and in the ‘System Parameters’ panel belong to the only one of the modules that is selected in the ‘Select SPC’ panel, see figure right. This small panel can be placed anywhere in the screen area.」(371ページ1行ないし378ページ26行)
[日本語訳]

SPCMソフトウェア
全てのbh TCSPCモジュールには,ユーザーが最大4台のSPC-600/630,SPC-700/730,SPC-830,SPC-130,SPC-140若しくはSPC-150モジュール,又は1つのSPC-134,144若しくは154パッケージを操作できる快適なソフトウェアパッケージである‘マルチSPCソフトウェア’SPCMが付属している。SPCMは,DPC-23016チャネル光子相関器も制御する。ソフトウェアには,測定パラメータの設定,測定制御,スキャナー制御,測定データと設定データのロードと保存,並びに2次元及び3次元モードでのデータ表示と評価が含まれる。・・・(中略)・・・
SPCMソフトウェアは,SPCモジュールをコンピューターにインストールしてもしなくても起動できる。ソフトウェアが開始されると,図471に示す初期化ウィンドウが表示される。・・・(中略)・・・
初期化ウィンドウが表示されたら,‘OK’をクリックする。これにより,SPCMソフトウェアのメインパネルが開く。図472を参照されたい。メインパネルの上部には,例えば減衰曲線,画像,FCS曲線,又は光子計数ヒストグラムなどのデータを表示する1つ又は複数のウィンドウがある。下部には,カウントレートと測定のステータスに関する情報が表示され,ユーザーは最も頻繁に使用されるシステム及び測定制御パラメーターに簡単にアクセスできる。ロードと保存,ファイル形式の変換,TCSPCシステムパラメータと操作モードの定義,表示設定と表示ルーチンなどの機能は,メインパネルの上部にあるメニューバーからアクセスできる。
概要
SPCメインパネルの構成
・・・(中略)・・・
モジュール選択(マルチSPCシステム)
マルチSPCソフトウェアは,最大4つのTCSPCチャネル,つまり最大4つのSPC-6,-7若しくは-8モジュール,又は1つのSPC-134若しくはSPC-144パッケージを制御できる。全てではないが,多くのシステムパラメータは,個々のモジュールで別々に設定できる。‘メインパネル’と‘システムパラメータ’パネルに表示されるパラメータは,‘SPCの選択’パネルで選択されるモジュールのうちの1つにのみ属する。右図を参照されたい。この小さなパネルは,画面領域のどこにでも配置できる。」

ケ 「
System Parameters
The ‘System Parameters’ contain all parameters defining the internal functions of the SPC module hardware and the data transfer between the hardware and the software. The system parameter define the operation mode, including the control of sequential measurements, page stepping, repeat, accumulation and autosave functions. Furthermore, the system parameters control the settings of the CFD, SYNC, TAC and ADC parameters as well as the routing and scanning parameters. Because not all parameters may be applicable to all operation modes and SPC modules some details of the system parameter panel change with the operation mode and module type. The typical system parameter panel of the Multi SPC Software is shown Fig. 500.

Fig. 500: System parameter panel
The panel contains a measurement control part that allows you to set the operation mode, to configure the measurement procedure by defining page stepping, cycle, accumulate and autosave functions, and to define the action of the experiment trigger. Due to different hardware in different SPC modules the measurement control part of the panel changes with the module type and with the operation mode selected.
・・・(中略)・・・
‘More Parameters’ opens an additional panel that contains hardware parameters which are specific for the particular operation mode.
Operation Modes
When the bh SPC modules are operated via the SPCM software a wide variety of operation modes is available, see Fig. 501.

Fig. 501: Operation modes available in different SPC modules
An overview of the operation modes is given in the table below.

‘Single’ Mode
・・・(中略)・・・
fi(EXT) Mode
The measurement of a single waveform is repeated in intervals of ‘Repeat Time’ and for different settings of an externally variable parameter, typically for variable wavelength. The counts in the channels of each curve are averaged within selectable time intervals (see ‘Window Intervals’, page 455). The results of the averaging procedure represent the intensities in the selected time windows. The fi(EXT) mode records of these intensity values versus the external parameter, see Fig. 507. Up to eight time intervals can be defined. Consequently, to eight spectra are obtained for each detector channel.

Fig. 507: fi(EXT) mode. Intensities within selectable time windows are calculated and displayed as functions of an external parameter
To control the external parameter the stepping motor controller STP-340 is used (see data sheet or www.becker-hickl.de). The STP-340 is an additional PC module which is controlled directly by the SPC software. The device is configured by the file STP.CFG which includes limiting values for the position, step width, motor speed, the unit of the controlled parameter etc. (see STP-240 description).
Steps
The number of subsequent intensity values is defined by ‘Steps’. The stepping function can be combined with routing, i.e. several detector channels can be measured in each step.
The photon collection for each step is controlled by the parameters ‘Stop T’ and the options under ‘Overflow’. The measurement of each step stops
- at the end of ‘Collection Time’ if ‘Stop T’ is set
- at the first overflow if ‘Stop Ovfl’ is set
If both stop conditions are set the measurement stops in both cases. If the results run out of the data range 0...65535 the overflowing parts are clipped. Please note that ‘Stop T’ must be set for reasonable operation of the fi(ext) mode.

Cycles and Autosave
The sequence described above can be repeated for a defined number of ‘Cycles’.
The ‘Autosave’ function can be used to write the results of subsequent cycles to the hard disc. To activate Autosave for each cycle, click on ‘Autosave’, ‘Each Cycle’. ‘Autosave’ can also be used at the end of the measurement, i.e. after the last cycle only. The ‘End of Measurement’ option is normally used in conjunction with ‘Accumulate’.

Accumulate
The ‘Accumulate’ function accumulates the results of several ‘Cycles’, i.e. several intensity sequences. If you want to save the results automatically at the end of the accumulation, use ‘Autosave’, ‘End of Measurement’.
Trigger
Either the ‘Steps’ or the ‘Cycles’ of the measurement sequence can be triggered. To activate the trigger, select ‘rising edge’ or ‘falling edge’ as ‘Trigger Condition’.

Repeat
By pushing the ‘Repeat’ button the complete measurement sequence can be repeated until the measurement is stopped by the operator.
fi(EXT) Multidetector Operation
The fi(T)(決定注:「fi(EXT)」の誤記と解される。) mode can be used in combination with multi-detector operation or multiplexing. In these cases individual spectra are obtained for the individual detector or multiplexing channels, see Fig. 508.

Fig. 508: fi(EXT mode, multi-detector operation
The number of detector channels is defined under ‘Page Control’, ‘Routing Channels X’ or ‘Routing Channels Y’, see page 440. The maximum number of detector channels for an fi(EXT) measurement depends on the module type, the ADC Resolution, the number of Time Windows and the number of Routing Channels used.
fi(EXT) Display
The display of the results is controlled by the ‘Trace Parameters’. You can select spectra obtained in different time windows and recorded by different detectors of a multi-detector arrangement. Two typical settings are shown in Fig. 509.

Fig. 509: Trace parameters for the fi modes. Left: Spectra of detector 1 in subsequent time windows. Right: Spectra in time window 1 for different detectors
Intermediate results can be displayed after each step and after each cycle by switching on ‘Display after each Step’ and ‘Display after each Cycle’. However, displaying intermediate results requires some time. The ‘Display after each Step’ option and should be used for collection times longer than a one second only.
Continuous Flow Mode
・・・(中略)・・・
Sequential Recording in the Scan Sync Out mode
Scanning in the Scan Sync Out is fully hardware-controlled. The SPC module uses a sequencer that steps through the memory blocks of the subsequent pixels in accurately defined time intervals. Therefore the Scan Sync Out mode can also be used for sequential recording. The stepping time can be as short as 100 ns, the start of the sequence can be triggered, and an extremely large number of waveform blocks is available. Thus, the Scan Sync Out mode can be used both for recording single sequences and fast triggered accumulation of sequences.・・・(中略)・・・
FIFO Mode
The ’FIFO’ mode differs from the other modes in that it does not build up any histograms of the photon detection times. Instead, the detection time of each individual photon in the laser pulse sequence is stored together with the time from the start of the experiment and the detector channel number. The memory is configured as a FIFO (First In First Out) buffer. It receives the photon data at the input and is continuously read at the output. Therefore, the FIFO mode produces a continuous stream of photon data which is stored in the main memory of the computer or on the hard disk (see also ‘Parameter-Tag Recording’ page 57).・・・(中略)・・・
Parameter Management for Multi-Module SPC systems
In multi-module SPC systems each module has its own system parameters, and the currently displayed System Parameter panel refers to one of the modules only. To specify the module to which the parameters refer a small ‘Select SPC’ panel is displayed, see figure right. It can be conveniently placed anywhere in the screen area.

」(393ページ1行ないし442ページ6行)
[日本語訳]

システムパラメータ
‘システムパラメータ’には,SPCモジュールハードウェアの内部機能と,ハードウェアとソフトウェア間のデータ転送を定義する全てのパラメータが含まれている。システムパラメータは,連続測定,ページ移動,繰り返し,累積,自動保存機能の制御など,操作モードを定義する。さらに,システムパラメータは,CFD,SYNC,TAC,及びADCパラメータの設定と,ルーティング及び走査パラメータを制御する。全てのパラメーターが全ての操作モードとSPCモジュールに適用できるわけではないため,システムパラメーターパネルの一部の詳細は操作モードとモジュールタイプによって異なる。マルチSPCソフトウェアの典型的なシステムパラメータパネルを図500に示す。

図500:システムパラメータパネル
パネルには,操作モードの設定,ページのステップ,サイクル,累積,自動保存機能の定義による測定手順の設定,及び実験トリガーのアクションの定義を可能にする測定制御部が含まれている。異なるSPCモジュールの異なるハードウェアにより,パネルの測定制御部分は,モジュールタイプと選択された操作モードによって変わる。
・・・(中略)・・・
[その他のパラメーター]を選択すると,特定の操作モードに固有のハードウェアパラメーターを含む追加のパネルが開く。
操作モード
bh SPCモジュールがSPCMソフトウェアを介して操作される場合,さまざまな操作モードが利用できる。図501を参照されたい。

図501:異なるSPCモジュールで利用可能な操作モード
操作モードの概要を次の表に示す。

‘シングル’モード
・・・(中略)・・・
fi(EXT)モード
単一の波形の測定は,外部可変パラメーター(典型的には可変波長)の異なる設定に対して,‘繰り返し時間’の間隔で繰り返される。各曲線のチャネルのカウントは,選択可能なタイムインターバル内で平均化される(‘ウィンドウインターバル’,455ページを参照)。平均化手順の結果は,選択したタイムウィンドウの強度を表す。fi(EXT)モードは,これらの強度値と外部パラメータを記録する。図507を参照されたい。最大8つのタイムインターバルを定義できる。その結果,各検出器チャネルに対して8つのスペクトルが取得される。

図507:fi(EXT)モード。選択可能なタイムウィンドウ内の強度が計算され,外部パラメーターの関数として表示される
外部パラメーターを制御するには,ステッピングモーターコントローラーSTP-340を使用する(データシート又はwww.becker-hickl.deを参照)。STP-340は,SPCソフトウェアによって直接制御される追加のPCモジュールである。デバイスは,位置,ステップ幅,モーター速度,制御パラメーターの単位などの制限値を含むファイルSTP.CFGで構成される(STP-240の説明を参照)。
ステップ
後続の強度値の数は,‘ステップ’で定義される。ステッピング機能はルーティングと組み合わせることができる。つまり,各ステップで複数の検出器チャンネルを測定できる。
各ステップの光子コレクションは,パラメーター‘Stop T’と‘オーバーフロー’の下のオプションによって制御される。次のときに各ステップの測定が停止する。
- ‘Stop T’が設定されている場合,‘収集時間’の終わり
- ‘Stop Ovfl’が設定されている場合,最初のオーバーフロー
両方の停止条件が設定されている場合,測定は両方の場合で停止する。結果がデータ範囲0...65535を超えると,オーバーフロー部分がクリップされる。fi(ext)モードを適切に操作するには,‘Stop T’を設定する必要があることに注意されたい。

サイクルと自動保存
上記のシーケンスは,定義された数の‘サイクル’で繰り返すことができる。
‘自動保存’機能を使用して,次のサイクルの結果をハードディスクに書き込むことができる。各サイクルで自動保存を有効にするには,‘自動保存’,‘各サイクル’をクリックする。‘自動保存’は,測定の最後,つまり最後のサイクルの後にのみ使用することもできる。‘測定の終了’オプションは,通常‘累積’と組み合わせて使用される。

累積
‘累積’機能は,複数の‘サイクル’の結果,つまり複数の強度シーケンスを累積する。累積の最後に結果を自動的に保存する場合は,‘自動保存’,‘測定の終了’を使用する。
トリガー
測定シーケンスの‘ステップ’又は‘サイクル’のいずれかをトリガーできる。トリガーを有効にするには,‘トリガー条件’として‘立ち上がりエッジ’又は‘立ち下がりエッジ’を選択する。

リピート
‘リピート’ボタンを押すと,オペレーターが測定を停止するまで,測定シーケンス全体を繰り返すことができる。
fi(EXT)マルチ検出器の動作
fi(EXT)モードは,マルチ検出器操作又は多重化と組み合わせて使用できる。これらの場合,個々の検出器又は多重チャネルについて個々のスペクトルが取得される。図508を参照されたい。

図508:fi(EXT)モード,マルチ検出器操作
検出器チャネルの数は,‘ページ制御’,‘ルーティングチャネルX’又は‘ルーティングチャネルY’で定義される。440ページを参照されたい。fi(EXT)測定の検出器チャネルの最大数は,モジュールタイプ,ADC解像度,タイムウィンドウの数,及び使用されるルーティングチャネルの数によって異なる。
fi(EXT) 表示
結果の表示は,‘トレースパラメータ’によって制御される。異なるタイムウィンドウで取得され,マルチ検出器アレンジメントの異なる検出器によって記録されたスペクトルを選択できる。2つの典型的な設定を図509に示す。

図509:fiモードのトレースパラメーター。左:後続のタイムウィンドウでの検出器1のスペクトル。右:異なる検出器のタイムウィンドウ1のスペクトル
‘各ステップの後に表示’と‘各サイクルの後に表示’をオンにすると,各ステップの後に,各サイクルの後に中間結果を表示できる。ただし,中間結果を表示するには時間がかかる。[各ステップの後に表示]オプションは,1秒より長いコレクション時間にのみ使用する必要がある。
連続フローモード
・・・(中略)・・・
走査同期出力モードでのシーケンシャル記録
走査同期出力での走査は完全にハードウェア制御される。SPCモジュールは,正確に定義された時間間隔で後続のピクセルのメモリブロックをステップスルーするシーケンスを使用する。そのため,走査同期出力モードは,シーケンシャル記録にも使用できる。ステップ時間は100nsにまで短縮でき,シーケンスの開始をトリガーでき,非常に多くの波形ブロックを使用できる。したがって,走査同期出力モードは,単一シーケンスの記録とシーケンスの高速トリガー蓄積の両方に使用できる。・・・(中略)・・・
FIFOモード
‘FIFO’モードは,光子検出時間のヒストグラムを作成しないという点で他のモードと異なる。代わりに,レーザーパルスシーケンスでの個々の光子の検出時間は,実験の開始からの時間と検出器チャネル番号とともに保存される。メモリは,FIFO(先入れ先出し)バッファーとして構成される。入力で光子データを受け取り,出力で連続的に読み取られる。したがって,FIFOモードは,コンピューターのメインメモリ又はハードディスクに保存される光子データの連続ストリームを生成する(‘パラメータータグの記録’57ページも参照)。・・・(中略)・・・
マルチモジュールSPCシステムのパラメーター管理
マルチモジュールSPCシステムでは,各モジュールに独自のシステムパラメーターがあり,現在表示されている[システムパラメーター]パネルはモジュールの1つのみを参照する。パラメーターが参照するモジュールを指定するには,小さな‘Select SPC’パネルが表示される。右図を参照されたい。画面領域のどこにでも便利に配置できる。」

コ 「
Window Intervals
The display routines of the SPCM software display subsets of multi-dimensional data arrays. These can be images within specified time windows or ranges of detector channels, decay curves along one coordinate within a spatial interval of the other coordinate, time-controlled sequences of waveforms within a range of detector channels, or intensity values along a onedimensional scan within specified time windows.
The required window definitions are provided by the ‘Window Intervals’. The Window Interval panel for the SPC-600/630 and for the SPC-134 modules is shown in Fig. 556. It contains Time Windows, Routing X Windows and Routing Y Windows. The windows are used for the 3D display modes, for the 2D display in the ‘Block Mode’, and for the fi(T) and fi(EXT) spectrum modes.

Fig. 556: Window Interval panel of the SPC-600/630 and SPC-134 modules
For the SPC-700/730, SPC-830, and SPC-140/144 the ‘Window Interval’ panel contains also a ‘Scan X’ and a ‘Scan Y’ window, see Fig. 557.

Fig. 557: Window Interval panel of the SPC-700/730, -830, and SPC-140/144modules
Time Windows
The ‘Time Windows’ are used for calculating integral photon numbers in selected time intervals of decay curves or other waveforms. The time windows are used by the 3D display modes and by the spectrum modes fi(ext) and fi(t).
f(xyt) Mode Data
・・・(中略)・・・
fi Mode Data
In the ‘fi’ (spectrum) modes the measurement of a single waveform is repeated in intervals of 'Repeat Time' for different settings of an external parameter. From the waveform of each measurement step integral photon numbers are calculated within the ‘T Windows’. The results (i.e. the intensities) are displayed as functions of the time from the start of the measurement or as a function of an external parameter (e.g. wavelength). Up to eight time intervals can be defined. Thus, up to eight spectra can be generated up for each detector channel. The principle is shown in Fig. 560.
The spectrum modes can be used with routing. In this case individual sets of spectra with different T Windows are calculated for the individual channels or selected ranges of detector channels. Please see also ‘fi(T) Mode’, page 402.

Fig. 560: A sequence of decay curve is recorded during a wavelength scan. For each decay curve integral photon numbers are calculated within defined time windows and displayed as functions of the wavelength
・・・(中略)・・・
Auto Set Functions
For all window parameters up to eight independent intervals can be defined. The intervals can be defined manually or set automatically by the 'Auto Set' function. To control 'Auto Set' the following options are provided.
Equidistant: The available window range is divided into eight equal intervals. If the number of points cannot divided by 8 (this can happen for X and Y) the last window can be wider than the windows 1 to 7.
Non Equidistant: The start values of the intervals are set by the operator. The end values are set by the autoset function in a way that the intervals fit closely together.
No of Windows: Number of windows to be set by the autoset function.
After a change in the ADC resolution, the number of detector channels, or the number of pixels of a scan the window intervals are re-calculated automatically.」(455ページ1行ないし461ページ末行)
[日本語訳]

ウィンドウインターバル
SPCMソフトウェアの表示ルーチンは,多次元データ配列のサブセットを表示する。これらは,指定されたタイムウィンドウ又は検出器チャネルの範囲内の画像,他の座標の空間的間隔内のある座標に沿った減衰曲線,検出器チャネルの範囲内の時間制御された波形シーケンス,又は指定されたタイムウィンドウ内の1次元走査に沿った強度値である。
必要なウィンドウ定義は,‘ウィンドウインターバル’によって提供される。SPC-600/630及びSPC-134モジュールのウィンドウインターバルパネルを図556に示す。これには,タイムウィンドウ,ルーティングXウィンドウ,ルーティングYウィンドウが含まれる。ウィンドウは,3D表示モード,‘ブロックモード’での2D表示,及びfi(T)とfi(EXT)スペクトルモードに使用される。

図556:SPC-600/630及びSPC-134モジュールのウィンドウインターバルパネル
SPC-700/730,SPC-830,及びSPC-140/144の場合,[Window Interval]パネルには[Scan X]及び[Scan Y]ウィンドウも含まれる。図557を参照されたい。

図557:SPC-700/730,-830,及びSPC-140/144モジュールのウィンドウインターバルパネル
タイムウィンドウ
‘タイムウィンドウ’は,減衰曲線又はその他の波形の選択されたタイムインターバルでの整数光子数の計算に使用される。タイムウィンドウは,3D表示モードとスペクトルモードfi(ext)及びfi(t)で使用される。
f(xyt)モードデータ
・・・(中略)・・・
fiモードデータ
‘fi’(スペクトル)モードでは,外部パラメータの異なる設定に対して,‘繰り返し時間’の間隔で単一の波形の測定が繰り返される。各測定ステップの波形から,光子数が‘Tウィンドウ’内で計算される。結果(すなわち,強度)は,測定の開始からの時間の関数として,又は外部パラメーター(例えば,波長)の関数として表示される。最大8つのタイムインターバルを定義できる。したがって,各検出器チャネルに対して最大8つのスペクトルを生成できる。原理を図560に示す。
スペクトルモードはルーティングで使用できる。この場合,個々のチャネル又は検出器チャネルの選択範囲に対して,異なるTウィンドウを持つスペクトルの個々のセットが計算される。402ページの‘fi(T)モード’も参照されたい。

図560:波長走査中に一連の減衰曲線が記録される。減衰曲線ごとに,整数の光子数が定義された時間枠内で計算され,波長の関数として表示される
・・・(中略)・・・
自動設定機能
全てのウィンドウパラメータについて,最大8つの独立した間隔を定義できる。間隔は手動で定義するか,‘自動設定’機能によって自動的に設定できる。‘自動設定’を制御するために,次のオプションが提供されている。
等距離:利用可能なウィンドウ範囲は8つの等間隔に分割される。ポイントの数を8で割ることができない場合(これはXとYで発生する可能性がある),最後のウィンドウはウィンドウ1?7よりも広くなる可能性がある。
非等距離:間隔の開始値はオペレーターによって設定される。終了値は,間隔が密接に適合するように自動設定機能によって設定される。
ウィンドウの数:オートセット機能によって設定されるウィンドウの数。
ADCの解像度,検出器チャネルの数,又は走査のピクセル数の変更後,ウィンドウインターバルは自動的に再計算される。」

サ 「
Starting and Stopping a Measurement
Start
The ’Start’ button in the menu bar starts the measurement in the selected operation mode.・・・(中略)・・・
During the measurement the main menu remains active and the results are shown in the display window.・・・(中略)・・・
Most (though not all) system and display parameters can be changed during the measurement.
The effect becomes visible with the display of the next result.
Interrupt
'Interrupt' interrupts a running measurement so that the measurement sequence goes into a ‘hold’ state. 'Interrupt' can be used when the system parameters or an external set-up require re-adjustment. When the measurement is in the ‘hold’ state it can be restarted from the current state by clicking on the 'Start' button. Of course, ‘interrupt’ cannot be used within a sequential measurement, a FIFO measurement or any other recording procedure that requires accurate timing.」(477ページ1行ないし31行)
[日本語訳]

測定の開始と停止
開始
メニューバーの[開始]ボタンは,選択した操作モードで測定を開始する。・・・(中略)・・・
測定中,メインメニューはアクティブなままで,結果が表示ウィンドウに表示される。・・・(中略)・・・
ほとんどの(全てではないが)システム及びディスプレイパラメーターは,測定中に変更できる。次の結果を表示すると,効果が明らかになる。
割り込み
‘割り込み’は,実行中の測定を中断し,測定シーケンスが‘ホールド’状態になるようにする。‘割り込み’は,システムパラメータ又は外部設定で再調整が必要な場合に使用できる。測定が‘ホールド’状態の場合,‘開始’ボタンをクリックして現在の状態から再開できる。もちろん,‘割り込み’は,シーケンシャル測定,FIFO測定,又は正確なタイミングを必要とするその他の記録手順では使用できない。」

(2)甲1の記載から把握される発明
前記(1)カの「図220:標準フィルターとダイクロイックの特性を備えたDCS-120走査ヘッドの概略図」から,DCS-120走査ヘッドが,2本の共焦点検出経路(二次ダイクロイックビームスプリッターホイールから検出器1へ向かう経路と,二次ダイクロイックビームスプリッターホイールから検出器2へ向かう経路)に分岐する位置に設けられた二次ダイクロイックビームスプリッターホイールと,各共焦点検出経路にそれぞれ設けられたフィルタースライダーを有していることが看取される。そして,ダイクロイックビームスプリッターが,入射した光を異なる波長領域の光に分離する機能を有する光学部材であることは技術常識であるから,検出器1及び検出器2が,二次ダイクロイックビームスプリッターホイールにより分離された異なる波長領域の蛍光を検出するものであることが理解できる。
また,前記(1)カの「図221:DCS-120共焦点走査FLIMシステム。2つの並列SPC-150モジュールの標準構成」から,2つのSPC-150モジュールがそれぞれ異なる検出器(HPM-100-40,PMC-100,H7422-40,R3809U,又はMW FLIM)に接続されていることが看取される。
そして,前記(1)コには,SPC-150モジュールのウィンドウインターバルパネルの図示はないものの(図556にはSPC-600/630及びSPC-134モジュールのウィンドウインターバルパネルが,図557にはSPC-700/730,-830,及びSPC-140/144モジュールのウィンドウインターバルパネルが図示されている。),前記(1)アの「SPC-150モジュールには,・・・(中略)・・・全てのbh TCSPCモジュールの機能と操作モードの最大セットと組み合わされている。」という記載等を参酌すると,前記(1)コに記載されたウィンドウインターバルの定義に関する説明は,SPC-150モジュールにも適用されるものであると,すなわち,SPC-150モジュールにおいても,他のbh TCSPCモジュールと同様に,タイムウィンドウがウィンドウインターバルパネルによって手動で定義できるように構成されているものと理解される。
しかるに,前記(1)アないしサで摘記した記載,及び前述した図220及び図221から看取される事項から,2つのbh BDL-SMCレーザーと2つの検出器と2つのSPC-150モジュールを有するbh DCS-120共焦点走査FLIMシステムに関する発明を把握することができるところ,当該発明の構成は次のとおりである。(なお,甲1の記載において,「bh DCS-120共焦点走査FLIMシステム」が,SPC-150モジュール等を装着するコンピュータ(前記(1)カの「ラップトップPC」)や顕微鏡までをも含む顕微鏡システム全体を指す語句として用いられているのか,それとも,当該顕微鏡システムからコンピュータや顕微鏡を除外したものを指す語句として用いられているのかは定かでないが,次に示す発明の認定では,前者を指す語句として用いた。また,甲1の記載中の「Tウィンドウ」が「タイムウィンドウ」の略称であることは明らかであるから,「タイムウィンドウ」に統一して認定した。)

「bh BDL-SMCレーザー用の2つの入力チャネル,2本の共焦点検出経路,前記2本の共焦点検出経路に分岐する位置に設けられた二次ダイクロイックビームスプリッターホイール,各共焦点検出経路にそれぞれ設けられたフィルタースライダー,個別に選択可能な複数のピンホール,並びに検出器用の2つの出力を持つDCS-120走査ヘッドと,
波長が異なる2つのbh BDL-SMCレーザーと,
2つの検出器と,
ニコンTE 2000U顕微鏡,ツァイスAxioオブザーバー,又はオリンパスIX顕微鏡と,
拡張ボックス中に,それぞれが異なる検出器に接続された2つのSPC-150モジュール,1つのDCC-100検出器コントローラ,及び1つのGVD-120走査コントローラを有するラップトップPCと,
を備えたbh DCS-120共焦点走査FLIMシステムであって,
前記2つのbh BDL-SMCレーザーは,いくつかの蛍光色素の信号を識別するか,又は,同じ波長で効率的に励起することができない2つの蛍光色素を励起することを可能にするために,ピクセルごと,ラインごと,又はフレームごとを基礎として多重化することができ,
前記2つの検出器は,前記二次ダイクロイックビームスプリッターホイールにより分離された異なる波長領域の蛍光を検出するよう構成され,
前記SPC-150モジュールは,時間相関単一光子計数法(TCSPC)によって迅速に光信号を記録するモジュールであって,検出器入力のパルスすなわち検出器からの単一光子パルスから,基準入力の次のパルスすなわち励起パルスシーケンスから得られる基準パルスにおける次のパルスまでの時間を測定し,光子の時間的位置に線形に依存する出力電圧を生成する時間-振幅変換器TACと,TAC信号をメモリMEMのアドレスに変換するアナログ-デジタル変換器ADCとを有しており,
SPC-150モジュールが実行可能な測定モードの1つに,外部パラメータの異なる設定に対して,‘繰り返し時間’の間隔で単一の波形の測定を繰り返し,各測定ステップの波形から,光子数をタイムウィンドウ内で計算して,タイムウィンドウによりゲーティングされた強度とし,これらの強度値と外部パラメータを記録するfi(EXT)モードがあり,前記タイムウィンドウは,ウインドウインターバルパネルによって,手動で,最大8つまで独立して定義することができ,前記fi(EXT)モードは,マルチ検出器操作又は多重化と組み合わせて使用でき,
前記fi(EXT)モードにより測定されたタイムウィンドウ内の強度は,前記外部パラメーターの関数として表示することができ,
全てではないが,多くのシステムパラメータは,個々のSPC-150モジュールで別々に設定でき,
システムパラメータ又は外部設定で再調整が必要な場合に‘割り込み’を使用すると,実行中の測定を中断し,測定シーケンスが‘ホールド’状態にして,全てではないが,ほとんどのシステム及びディスプレイパラメーターを,測定中に変更することができ,その後,‘開始’ボタンをクリックすると,現在の状態から測定を再開できるが,前記‘割り込み’は,シーケンシャル測定,FIFO測定,又は正確なタイミングを必要とするその他の記録手順では使用できない,
bh DCS-120共焦点走査FLIMシステム。」(以下,「甲1発明」という。)

2 本件訂正発明1について
(1)対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「bh BDL-SMCレーザー」,「2つの検出器」及び「タイムウィンドウ」は,技術的にみて,本件訂正発明1の「レーザ」。「検出装置」及び「時間的検出ウィンドウ」にそれぞれ対応する。

イ 本件特許明細書の「本発明の一実施例では,検出されるフォトンの付加的特性として,着色物質(色素)の励起後,生成されたフォトンが検出器に衝突(到達)するまでの時間(期間)ないし時間ウィンドウが使用される。」(【0028】)という記載,及び「複数のパルスレーザがシステムに存在する場合,これらは,同時に又は利用者によって選択可能な順序で交互にパルスを生成する,即ち励起光を放出することができる。」(【0036】)という記載等を参酌すると,本件訂正発明1の「照明光」とは,少なくとも着色物質(色素)を励起する励起光を包含する概念であると解するのが相当である。
ここで,甲1発明において,fi(EXT)モードでの測定に際して,「bh BDL-SMCレーザー」(本件訂正発明1の「レーザ」に対応する。以下,「ア 対比」欄において,「」で囲まれた甲1発明の構成に付した()内の文言は,当該甲1発明の構成に対応する本件訂正発明1の発明特定事項を指す。)により生成されたレーザー光は,蛍光色素を励起するための励起光であるところ,当該励起光により励起される蛍光色素が,ニコンTE 2000U顕微鏡,ツァイスAxioオブザーバー,又はオリンパスIX顕微鏡にセットされた試料中に存在する蛍光色素であること,したがって,前記励起光が,試料に照射されることは明らかであるから,甲1発明の「bh BDL-SMCレーザーが生成する励起光」は,本件訂正発明1の「試料のための照明光」に相当する。
そして,甲1発明は,2つの「bh BDL-SMCレーザー」を備えている。
したがって,甲1発明は,本件訂正発明1の「試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザ」「を有する」との発明特定事項に相当する構成を具備している。

ウ 「検出信号」とは,一般に,検出対象(放射線,化学物質等)を検出したときに検出装置が出力する,検出されたことを示す信号を指す用語であるから,本件訂正発明1の「試料からの検出信号のための検出装置」とは,試料から到来する何らかの検出対象を検出して検出信号を出力する検出装置を指していると解するのが相当である。
ここで,甲1発明の「2つの検出器」(検出装置)は,それぞれ,試料内の励起された蛍光色素が発する蛍光(単一光子)を検出すると,それぞれに接続されたSPC-150モジュールに「単一光子パルス」を出力するものであるから,甲1発明の「単一光子パルス」は,本件訂正発明1の「試料からの検出信号」に相当し,甲1発明の「検出装置」は,本件訂正発明1の「試料からの検出信号のための検出装置」に相当する。
したがって,甲1発明は,本件訂正発明1の「試料からの検出信号のための検出装置」「を有する」との発明特定事項に相当する構成を具備している。

エ 本件特許の請求項1の末尾の「顕微鏡。」は,当該請求項1の第1段落末尾の「顕微鏡又は共焦点顕微鏡であって,」という記載からみて,顕微鏡及び共焦点顕微鏡の双方を包含する概念として用いられていると解するのが相当である。
ここで,甲1発明の「bh DCS-120共焦点走査FLIMシステム」は,共焦点顕微鏡である。
したがって,甲1発明は,本件訂正発明1の「顕微鏡又は共焦点顕微鏡であって,」「顕微鏡。」であるとの発明特定事項に相当する構成を具備している。

オ 甲1発明の「二次ダイクロイックビームスプリッターホイール」が,回転させることによって,透過光の波長領域及び反射光の波長領域を変更できる光学素子であること,また,甲1発明の「フィルタースライダー」が,スライドさせることによって,透過光の波長領域を変更できる光学素子であることは,前記1(1)カの図220において,「二次ダイクロイックビームスプリッターホイール」には,2つの異なる「T」のスペクトル(縦軸「T」は透過率。横軸は波長で,単位はnm。)が示され,「フィルタースライダー」には,5つの異なる「T」のスペクトルが示されていることや,技術常識から,自明である。
したがって,甲1発明において,「2つの検出器」(検出装置)は,互いに異なる波長領域の蛍光を検出するものであり,fi(EXT)モードによる測定を行うに際して,各波長領域は,「二次ダイクロイックビームスプリッターホイール」を回転させたり,「フィルタースライダー」をスライドさせることによって,所望の範囲に設定されるものと認められる。
そうすると,甲1発明の「2つの検出器」からなる検出装置は,予め設定可能な異なる波長領域を検出するために調整可能な2つのスペクトル検出チャンネルを有しているといえる。
したがって,甲1発明は,本件訂正発明1の「予め設定可能な異なる波長領域(1,2)を検出するために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)を有するよう構成され」るとの発明特定事項に相当する構成を具備している。

カ 甲1発明では,マルチ検出器操作と組み合わされたfi(EXT)モードにおいて,「2つの検出器」(検出装置)のそれぞれが,互いに異なる波長領域の蛍光について,「外部パラメータの異なる設定に対して,‘繰り返し時間’の間隔で単一の波形の測定を繰り返し,各測定ステップの波形から,光子数をタイムウィンドウ内で計算して,タイムウィンドウによりゲーティングされた強度とし,これらの強度値と外部パラメータを記録する」ことになるのであるから,「2つの検出器」からなる検出装置が有する2つのスペクトル検出チャンネル(前記オを参照)に,それぞれ最大8つまでの「タイムウィンドウ」(時間的検出ウィンドウ)を設定することができるものといえる(前記1(1)ケの図508を参照。検出器1及び検出器2が取得した各スペクトルのいずれにも3つのタイムウィンドウが設定されている。)。
したがって,甲1発明と本件訂正発明1は,「複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が割り当て可能に構成され」ている点で共通する。

キ 甲1発明の「(測定中に変更することができる)全てではないが,ほとんどのシステム及びディスプレイパラメーター」と,本件訂正発明1の「複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)」とは,測定に係る設定である点で共通するから,甲1発明と本件訂正発明1は,「測定に係る設定のうちの少なくとも1つは,測定中に調整可能である」点で共通する。

ク 甲1発明では,2つのbh BDL-SMCレーザーが,いくつかの蛍光色素の信号を識別するか,又は,同じ波長で効率的に励起することができない2つの蛍光色素を励起することを可能にするために,ピクセルごと,ラインごと,又はフレームごとを基礎として多重化することができ,2つの検出器が,二次ダイクロイックビームスプリッターホイールにより分離された異なる波長領域の蛍光を検出するよう構成されているから,異なる蛍光色素が発した異なる波長領域の蛍光を,分離して検出し,異なる波長領域の蛍光ごとにタイムウィンドウ内の強度を,外部パラメーターの関数として表示することができるものである。
ここで,異なる蛍光色素が異なる波長領域の蛍光を発することを「複数の異なる現象」ということができるから,甲1発明は,本件訂正発明1の「複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する」との発明特定事項に相当する構成を具備しているといえる。

ケ 前記アないしクに照らせば,本件訂正発明1と甲1発明は,
「試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと,試料からの検出信号のための検出装置を有する顕微鏡又は共焦点顕微鏡であって,
該検出装置が予め設定可能な異なる波長領域(1,2)を検出するために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)を有するよう構成され,
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が割り当て可能に構成され,
測定に係る設定のうちの少なくとも1つは,測定中に調整可能であり,
かくして,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する,
顕微鏡。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本件訂正発明1では,「複数の時間的検出ウィンドウ」が,夫々異なる現象を検出するためのものであり,これによって,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価するのに対して,
甲1発明では,「最大8つのタイムウィンドウ」は,励起された蛍光色素が発する蛍光(単一光子)を検出するためのものであって,夫々異なる現象を検出するためのものではなく,二次ダイクロイックビームスプリッターホイールによって,複数の異なる現象を互いに分離する点。

相違点2:
本件訂正発明1では,複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1,Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1,Ch.1.2,Ch.1.3,Ch.2.1,Ch.2.2,Ch.2.3)が,測定中に調整可能であるのに対して,
甲1発明では,「全てではないが,ほとんどのシステム及びディスプレイパラメーター」が,測定中に調整可能であるものの,タイムウィンドウの定義が測定中に調整可能であることは特定されていない点。

コ なお,申立人は,令和2年10月9日に提出した意見書において,甲1の45ページ4段落,46ページ2段落の2つ目の点,220ページ1段落及び図288には,本件訂正発明における,複数の時間的検出ウィンドウが各々異なる現象を検出し,これらの複数の減少を互いに分離して評価するとの発明特定事項に相当する事項が開示されている旨主張する。
そこで検討するに,甲1の45ページ4段落には,前記1(1)エに示したとおりの記載があるところ,当該記載は,多次元TCSPCの原理を説明したものであって,甲2システム発明においては,2つの検出器が,夫々,二次ダイクロイックビームスプリッターホイールにより分離された異なる波長領域の蛍光を検出することに対応するものであり,当該箇所には,複数の時間的検出ウィンドウが,夫々異なる現象を検出するためのものであることは記載されていない。
また,甲1の46ページ2段落の2つ目の点には,「- マルチ検出器動作:マルチアノードPMTのいくつかの個別の検出器又はいくつかのチャネルが使用される。「ルーター」は,どの検出器が現在の光子を検出したかを示す「チャネル」情報を生成する。光学系に応じて,スペクトル分解能,空間分解能,又は異なる偏光の光子の分離を得ることができる。」と記載されているのみであって,申立人がいう「異なる偏光の光子」が,異なる現象に基づいて発生するものなのか定かではなく,かつ,異なる検出器により,異なる偏光の光子を検出しているのであるから,少なくとも,「異なる偏光の光子」がタイムウィンドウにより分離して検出されるものとはいえない。
また,甲1の220ページ1段落ないし221ページ図288には,「マルチスペクトル寿命実験
蛍光寿命機器の同時マルチ波長動作は,ダイクロイックミラーのシステムと対応する数の個別の検出器を使用することで実現できる。一般的な光学セットアップを図288に示す。蛍光は,レンズ1によって収集され,コリメートされる。フィルタは散乱励起光を遮断する。蛍光は,いくつかのダイクロイックミラーによってスペクトル的に分割され,レンズ2からレンズ4を介して複数の検出器に集束される。レンズ1の開口数を比較的大きくすることができるので,高い収集効率が達成される。このセットアッ プは,TCSPCレーザ走査顕微鏡法[66,67]および単一分子分光法[490]にしばしば用いられる。適切なビームスプリッター/検出器アセンブリはbhから入手できる。31ページの「TCSPC顕微鏡用の検出器,シャッター,ビームスプリッターアセンブリ」を参照されたい。

図288:ダイクロイックビームスプリッターを備えた多波長検出システム」と記載されているが,当該記載は,45ページ4段落の記載と同様に,ダイクロイックビームスプリッターホイールにより分離された異なる波長領域の蛍光を,複数の検出器により検出することが説明されているのであって,複数の時間的検出ウィンドウが,夫々異なる現象を検出するためのものであることは記載されていない。
以上のとおり,申立人が指摘する箇所には,いずれにも,複数のタイムウィンドウが,夫々異なる現象を検出するためのものであることは記載されていないから,申立人の主張は採用できない。

(2)本件訂正発明1の新規性について
本件訂正発明1と甲1発明の間に,相違点が存在する以上,本件訂正発明1と甲1発明が同一であるとはいえない。
したがって,本件訂正発明1は,本件特許の優先権主張の日より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明ではなく,その特許は,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない発明に対してされたものではない。

(3)本件訂正発明1の進歩性について
ア 甲1には,タイムウィンドウを,夫々異なる現象を検出するために用いることによって,甲1発明の「bh DCS-120共焦点走査FLIMシステム」を,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価できるように構成することは,記載も示唆もされていない。
また,甲1発明が属する技術分野において,タイムウィンドウを,夫々異なる現象を検出するために用いることによって,複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価できるようにする技術が,本件特許の優先権主張の日より前に,当業者に知られていたことを示す証拠も見当たらない。

イ 申立人は,令和2年10月9日に提出した意見書において,参考資料1として特開2012-42467号公報を提示し,本件特許の優先権主張の日より前に,反射及び蛍光によって得られた光子を分離すること,及びその有用性,並びに,分離された信号を分析できること等は,当業者に公知であったから,甲1発明を,相違点1に係る本件訂正発明1のように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである旨主張する。
そこで検討するに,参考資料1には,次の記載がある。
(ア) 「【背景技術】
【0002】
本件は、具体的な適用/使用に関わらず、ごく一般的な光学装置の光路において検知信号を分離する方法である。最も重要なのは、異なる由来と品質を有する検知信号が時系列に生成されるということである。このような光学装置は、例えば、蛍光顕微鏡、具体的には共焦点レーザ顕微鏡であり得る。蛍光顕微鏡法を用いる場合、対応する染料を用いて生体試料をマーキングする。これらの染料は通常、発光するように、レーザ光により励起される。この蛍光光は撮像のために検知される。
【0003】
問題となるのは、直接試料表面上において、また励起光が例えば空気からガラス又はその逆など、一方の光学媒体から他方へと移行する際に発生する反射である。最終的には妨害となる迷光がここで生じる。
【0004】
さらに、蛍光光が励起用のレーザ光よりも約100万倍弱いことが問題となる。
【0005】
したがって、画像化にとっては反射された励起光又は迷光及び蛍光光又はこれらの信号を可能な限り効果的に互いから分離することが必須である。
【0006】
ここで注意すべきなのは、基本的には光学装置の光路における検知信号の分離に関し、蛍光顕微鏡法は単に一例として挙げられているということである。したがって本発明の方法は、一定の時系列にて生成される「混合された」検知信号の分離に関する場合には常に適用可能である。」

(イ) 「【実施例】
【0039】
図1は、それぞれ共焦点蛍光顕微鏡で検出された反射信号と蛍光信号が一定期間毎に繰り返される時系列が表れる形を示した概略図である。この図は自明のものである。まずは試料からの反射信号から始まる。その後、時間の経過とともに継続的に平坦化する蛍光信号が続いた後、顕微鏡からの反射信号が続くが、その場合の信号は、次の主パルス又は反射信号までの先行パルスであると理解することができる。最終的には一定時間毎に反復される時系列を有する連続図となる。
【0040】
図1の要点は、蛍光信号及び反射信号が励起レーザパルスに対して時間的に固定された距離を有するということである。これにより、具体的には共焦点蛍光顕微鏡法での反射信号及び蛍光光であるのか、又はそれ以外の時間的に分離可能な定義された異なる信号であるのかにかかわらず、本発明の方法によってそれぞれパルスの既知の又は特定可能又は確認可能な時系列に基づき各信号の抑制又は分離を実施することが可能となる。
【0041】
図2の上の図には、2つの期間を含んだ、一定期間毎に繰り返される図1の時系列が示されている。これは最終的には検出信号に関するものである。検出信号から得られる電気信号は、制御信号を用いて適宜ゲーティングされる。このゲーティングに関与する信号は、下の図に示されている。
【0042】
例えば直接励起光にて特定された同期信号に基づき行われるゲーティングに応じて、下の図に示すような出力がゲートにて定義され、この図によると下方へカーブする蛍光部分又は蛍光信号のみが残る。」

(ウ) 「【0046】
図3は、本発明の方法を用いた光学的装置の基本構造と機能方法を概略図として示している。
【0047】
蛍光励起に用いられるレーザ光1は、パルス状のレーザ2によって提供される。励起光/照明光として機能するレーザ光1は、適当な光学系3を介して試料4(生体試料であってもよい)に到達する。試料4は、蛍光性の染料を用いてマーキングされている。したがって、試料4に存在する蛍光染料をレーザ光1が励起して光を発光させる。以下で検出光5と簡潔に称する、戻り方向の光は,一方では蛍光染料の発光から得られる蛍光光6と,他方では試料4からの別の反射光7とを含む。検出光5が光学系3を通過する又は通り抜ける際に,反射光7は光学系3からの別の反射又は散乱を追加される。したがって蛍光光6とともに別の反射又は散乱を補充された反射光7が,検出器8に到達する。
【0048】
従来の光学的装置と比べると,検出器8と前記検出器8の電気信号を積分又は加算する積分器9との間にはゲート10が設けられており,このゲートを用いて,同期信号11によって異なる信号を定義された時系列にて検出光から得られる全信号からフィルタリング又は互いに分離することができる。いずれにしても,ゲート10は励起光のパルスに同期されており,同期信号11は直接レーザドライバで取得することができる。
【0049】
したがって,積分器9に到達するのはゲート10によって許可された又はフィルタリングされなかった信号であり,ここで選択した共焦点蛍光顕微鏡の実施例では蛍光信号だけであり,これらが積分器9で加算され,その後の画像形成12に利用される。」

(エ) 「【図1】

【図2】

【図3】



前記(ア)ないし(エ)から,参考資料1に,「共焦点蛍光顕微鏡において,反射された励起光又は迷光と蛍光光とを分離するために,励起光にて特定された同期信号に基づき行われるゲーティングにより,検出光のうち蛍光光のみを検出器に入力するように構成する技術」(以下,「参考資料1技術」という。)が記載されていると認められる。
ここで,甲1発明においても,検出光として,蛍光ばかりでなく,反射された励起光や迷光までもが,2つの検出器に到達するおそれがあることは,当業者に自明であるから,甲1発明において,参考資料1技術を適用する動機付けは存在するといえる。
そして,甲1発明に参考資料1技術を適用した場合,励起光にて特定された同期信号に基づき行われるゲーティングにより,検出光のうち蛍光光のみを検出器に入力する構成となるところ,「反射された励起光又は迷光」と「蛍光光」は「複数の異なる現象」に相当し,「ゲーティングにより検出器への入力が許可される期間」を「時間的検出ウィンドウ」ということができるから,参考資料1技術を適用した甲1発明は,複数の異なる現象を互いに分離するものといえる。
しかしながら,参考資料1技術を適用した甲1発明において,「時間的検出ウィンドウ」は,異なる現象のうちの一つを検出するためのものであって,異なる現象の夫々を検出するためのものではなく,当該「時間的検出ウィンドウ」を用いて評価されるのは,異なる現象のうちの一つのみであって,複数の異なる現象を評価するものではないから,甲1発明に参考資料1技術を適用しても,本件訂正発明1の構成には至らない。
したがって,申立人の主張は採用できない。

ウ 以上のとおりであるから,甲1発明において,相違点1に係る本件訂正発明1の発明特定事項のように構成することは,当業者が容易に想到し得たことではない。
したがって,相違点2について検討するまでもなく,本件訂正発明1は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)小括
予告理由によって,本件訂正発明1に係る特許を取り消すことはできない。

3 本件訂正発明2ないし4,8ないし10について
本件訂正後の請求項2ないし4は,本件訂正後の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明2ないし4は,本件訂正発明1の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに相当するところ,本件訂正発明1が,甲1発明と同一でなく,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正発明2ないし4も,甲1発明と同一でなく,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また,甲1の記載から,甲1発明を用いて,時間相関単一光子計数法(TCSPC)に基づいて,タイムウィンドウ内の強度を測定する方法に関する発明(以下,「甲1方法発明」という。)を把握することができる。そして,本件訂正発明8は,カテゴリーは異なるものの,本件訂正発明1の全ての発明特定事項と同様の発明特定事項を有するものであり,本件訂正発明9及び10は,本件訂正発明8の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに相当するところ,本件訂正発明8ないし10と甲1方法発明を対比すると,両者は,少なくとも,相違点1及び2と実質的に同じ点で相違するから,本件訂正発明8ないし10は,甲1方法発明と同一ではない。
また,前記2(3)で述べたのと同様の理由で,甲1方法発明において,相違点1に係る本件訂正発明8ないし10の発明特定事項のように構成することは,当業者が容易に想到し得たことではないから,本件訂正発明8ないし10は,甲1方法発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,予告理由によって,本件訂正発明2ないし4,8ないし10に係る特許を取り消すことはできない。

4 本件訂正発明5ないし7,11ないし16について
本件訂正後の請求項5ないし7は,本件訂正後の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明5ないし7は,本件訂正発明1の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに相当するところ,本件訂正発明1が,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正発明5ないし7も,甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また,本件訂正後の請求項11ないし16は,本件訂正後の請求項8の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明11ないし16は,本件訂正発明8の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに相当するところ,本件訂正発明8が,甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,本件訂正発明11ないし16も,甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって,予告理由によって,本件訂正発明5ないし7,11ないし16に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は,特許異議申立書において,請求項5ないし7,11ないし16に係る発明は,甲1に記載された発明と同一であるから,その特許は,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができない発明に対してされたものである旨主張する。
しかしながら,本件訂正後の請求項5ないし7及び11ないし16は,それぞれ本件訂正後の請求項1及び8の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,本件訂正発明5ないし7及び11ないし16は,それぞれ本件訂正発明1及び8の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに相当する。
そして,前記第4 2(1)ケ及び前記3で述べたとおり,本件訂正発明1と甲1発明及び本件訂正発明8と甲1方法発明が,相違点1及び2で相違するものである以上,それぞれ本件訂正発明1及び8の発明特定事項を全て有し,これに限定を加えたものに相当する本件訂正発明5ないし7及び11ないし16も,甲1発明及び甲1方法発明との間には,相違点が存在する。
したがって,申立人のかかる主張は,採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件特許の請求項1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
顕微鏡、及び顕微鏡による試料検査方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと、試料からの検出信号のための検出装置を有する顕微鏡、とりわけ共焦点顕微鏡、に関する。更に、本発明は、顕微鏡、とりわけ共焦点顕微鏡、によって試料を検査するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に掲げたタイプの顕微鏡及びそのような顕微鏡による試料の検査方法は実用上知られており、種々多様な実施の態様が存在する。例えば、共焦点レーザ顕微鏡法の場合、通常、生物学的試料は着色物質(色素)でマークされる(標識される)。その際、しばしば、異なるオルガネラ(複数)が異なる着色物質(複数)でマークされる。これらの着色物質は、1つのレーザ又は複数のレーザによって生成される照明光によって励起されて光を放出する。試料内に複数(の種類)の着色物質が存在する場合、これらは、大抵、検出装置内における波長分離によって異なる画像チャンネル(複数)に描出(ないし表示)される(dargestellt)。 その際、相応の検出信号(複数)が、検出のために予め設定可能な異なる波長領域(複数)が調整可能であるか又は構成されている検出チャンネル(複数)を通り抜ける。
【0003】
着色物質の放出スペクトルは互いに重なりあうことが多い。更に、大抵、反射された励起光は、着色物質の放出スペクトルの中に入り込む。例えば自家蛍光、第2高調波発生又は共鳴エネルギ移動のような現象も、単なる波長分離によっては、「正常な」蛍光フォトンから区別することはできない。これらの現象は試料に関する付加的情報を提供するか或いは純粋な蛍光画像に妨害的に重畳するため、検出において、これらの現象を本来的な蛍光信号から分離可能にすることが望まれる。
【0004】
例えば共焦点レーザ顕微鏡の場合、蛍光光は検出の前にしばしば色的に分割(分解)される。これは、カスケード状に配置された複数の光学的ビームスプリッタによって、1つのプリズムによって、又は1つの格子を含む装置によって達成される。スペクトル分割後、光は、異なる検出チャンネル(複数)を形成するための異なる検出器(複数)に入射する。従って、各検出器ないし各検出器チャンネルには、1つの特定の波長領域が割り当てられる。
【0005】
更に、蛍光寿命の測定のために、2つの方法が知られている。第1の方法は、個別フォトンカウント(Einzelphotonenzaehlung)であり、この方法では、各フォトンについて、励起と検出信号の間の時間が測定される。その際、極めて多数の個別測定について統計的処理が行われる。この場合、減衰曲線、従って、着色物質分子の寿命を求めることが、その目的である。必要なデータ量が多いため、評価は、大抵、オフラインで実行される。尤も、寿命の概算であれば、測定された個別値の平均をとることによりオンラインで行うことも可能である。
【0006】
蛍光寿命を測定するための第2の既知の方法は、いわゆるゲーティング(Gating)法であり、この方法では、フォトン(複数)が、測定前に規定される時間ウィンドウ(複数)に分類して入れられる。この場合、測定後に着色物質の寿命を計算可能にするために、個別フォトン測定の場合のように、統計的処理が行われる。既知のゲーティング法では、ゲーティング・ウィンドウ毎に夫々1つの測定が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP 2 253 983 A2
【特許文献2】WO 2004/113987 A1
【特許文献3】EP 1 308 715 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既知の顕微鏡及び試料を検査するための既知の方法の場合、試料に関する情報を運搬する多数の現象が検出の際に認識(識別)できないことが問題である。これらの現象の検出信号は、しばしば、使用されずに抑圧ないし除去(unterdrueckt)されたり、少なくとも低減されるため、他の現象の測定の際に最早障害を引き起こさない可能性がある。しかしながら、この場合、場合によって利用可能な検出信号までも無駄になる(利用不能になる)。
【0009】
それゆえ、本発明の課題は、冒頭に掲げたタイプの顕微鏡及び冒頭に掲げたタイプの顕微鏡により試料を検査するための方法であって、検査の際の複数の現象のとりわけ良好な分離により、異なる現象(複数)を考慮したとりわけ多面的な使用を可能にする顕微鏡及び試料検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、上記の課題は、請求項1に記載の顕微鏡によって、及び、請求項8に記載の顕微鏡による試料検査方法によって解決される。
具体的には、上記の課題を解決するために、本発明の第1の視点により、試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと、試料からの検出信号のための検出装置を有する顕微鏡、とりわけ共焦点顕微鏡が提供される。該顕微鏡においては、該検出装置が予め設定可能な異なる波長領域を検出するために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネルを有するよう構成され、
前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々、夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウが割り当て可能に構成され、前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウは、測定中に調整可能であり、
かくして、複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する(形態1・第1基本構成)。
(形態2)上記の顕微鏡において、前記スペクトル検出チャンネルの波長領域及び/又は前記時間的検出ウィンドウは、測定中、調整可能及び/又は描出ないし表示可能であることが好ましい。
(形態3)上記の顕微鏡において、前記波長領域及び/又は前記時間的検出ウィンドウは夫々異なる値を有することが好ましい。
(形態4)上記の顕微鏡において、各スペクトル検出チャンネルに対し、1つの独立の評価電子装置又は独立の評価チャンネルが割り当てられるか又は複数の独立の評価チャンネルが割り当てられ、有利には各評価チャンネルに対し、1つの時間的検出ウィンドウ又は複数の時間的検出ウィンドウが割り当てられることが好ましい。
(形態5)上記の顕微鏡において、前記評価電子装置における前記1つの評価チャンネルにおける又は前記複数の評価チャンネルにおける評価は、前記時間的検出ウィンドウに時間的に関連する制御信号によって活性化可能又は不活性化可能であることが好ましい。
(形態6)上記の顕微鏡において、2又は3以上の時間的検出ウィンドウが、データ取り込み中又はデータ取り込み後に互いに関連付け可能であり、有利には、該関連付けの結果は描出ないし表示可能であることが好ましい。
(形態7)上記の顕微鏡において、異なる時間的検出ウィンドウに対し異なるレーザが割り当て可能であることが好ましい。
更に、上記の課題を解決するために、顕微鏡、とりわけ共焦点顕微鏡、とりわけ上記形態1?7の何れかの顕微鏡、によって試料を検査するための方法が提供される。該方法においては、該顕微鏡が、試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと、該試料からの検出信号のための検出装置を有し、該検出装置が、予め設定可能な異なる波長領域の検出のために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネルを有し、
前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々、夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウが割り当て可能であり、かくして、検出信号が前記複数の時間的検出ウィンドウに取り込まれ、前記複数のスペクトル検出チャンネルに夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウは、測定中に調整可能であり、
かくして、複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する(形態8・第2基本構成)。
(形態9)上記の方法において、取り込まれるべき検出信号の評価は並行的又は順次的に実行されることが好ましい。
(形態10)上記の方法において、各スペクトル検出チャンネルに対し、1つの独立の評価電子装置又は独立の評価チャンネルが割り当てられるか又は複数の独立の評価チャンネルが割り当てられ、有利には各評価チャンネルに対し、1つの時間的検出ウィンドウ又は複数の時間的検出ウィンドウが割り当てられることが好ましい。
(形態11)上記の方法において、前記評価電子装置における前記1つの評価チャンネルにおける又は前記複数の評価チャンネルにおける評価は、前記時間的検出ウィンドウに時間的に関連する制御信号によって活性化又は不活性化されることが好ましい。
(形態12)上記の方法において、順次的評価の場合、時間的検出ウィンドウの終端において前記制御信号を不活性化する毎に、アドレスカウンタがインクリメントされることが好ましい。
(形態13)上記の方法において、時間的検出ウィンドウの評価された画像情報を含む各記憶セルは、個別に予め設定可能なマークが配されることが好ましい。
(形態14)上記の方法において、取り込まれるべき検出信号の評価は、トラック・アンド・ホールド回路によって実行され、ゲーティングパルスの各スタートによって、データ蓄積が開始されることが好ましい。
(形態15)上記の方法において、2又は3以上の時間的検出ウィンドウは、データ取り込み中又はデータ取り込み後に互いに関連付けられ、有利には、該関連付けの結果が描出ないし表示されることが好ましい。
(形態16)上記の方法において、異なる時間的検出ウィンドウに対し異なるレーザが割り当てられることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
試料検査中に異なる現象(複数)を互いに分離し評価することが、測定方法を巧妙に構成及び実行することによって可能であることが、本発明において初めて認識された。このため、具体的態様においては、スペクトル検出チャンネル(複数)において夫々複数の時間的検出ウィンドウが調整可能に構成され、かくして、検出信号(複数)が調整可能な時間的検出ウィンドウに取り込まれることができる。従って、この場合、検出信号の時間依存性、例えば極めて迅速に出現する反射光及び通常はより遅れて出現する蛍光光、が考慮される。これに関して実行される時間的検出ウィンドウによる時間的分離によって、反射信号及び蛍光信号の相互の妨害(ないし干渉)は大幅に回避される。従って、これら2つ現象は、互いに独立に検査及び評価されることができる。従って、本発明の顕微鏡及び本発明の方法によって、波長選択と検出される時間ウィンドウの選択の間のダイナミックな協働、従って例えば画像コントラストの最適化が可能になる。更に、両者の選択方法即ち波長と時間的検出ウィンドウの選択方法を組み合わせることによって、例えば共焦点画像生成における付加的情報を生成することが可能になる。とりわけ、利用者は、画像生成に関し、直ちにヴィジュアル的なフィードバックを取得することができ、場合によっては、測定中においても、検出チャンネル及び検出ウィンドウの調整を適正化することができる。
【0012】
従って、本発明の顕微鏡及び本発明の試料検査方法によって、検査中の複数の現象のとりわけ良好な分離により、異なる現象(複数)を考慮したとりわけ多面的な使用が可能にされる。
【0013】
具体的には、スペクトル検出チャンネル(複数)の波長領域(複数)は、測定中に調整可能及び/又は描出(表示)可能にされることができる(であろう)。これによって、その都度の使用例に対する測定の調整の適正化が可能になる。この場合、画像生成によるヴィジュアル的フィードバックは有益であり得る(であろう)。これに対し代替的に又は追加的に、時間的検出ウィンドウは測定中に調整可能及び/又は描出(表示)可能にされることができる(であろう)。これによっても、例えば画像コントラストの適正化のために既存の測定状況への適合化が可能にされる。画像による描出ないし表示(Darstellung)は測定を容易化し、より快適に(便宜的に)する。
【0014】
更なる有利な一形態では、波長領域(複数)は異なる大きさを有することができる(であろう)。これによっても、その都度の使用例を考慮した測定条件の適正化が可能になる。使用例次第では、波長領域(複数)は同じ大きさにすることもできるであろう。これに対し代替的に又は付加的に、時間的検出ウィンドウ(複数)はその都度異なる大きさを有することができる(であろう)。これによって、検出信号(複数)の個別の時間的推移に対する適合化が可能になる。
【0015】
検出信号のとりわけ快適(便宜的)かつ多面的な評価を考慮し、各スペクトル検出チャンネルに対し1つの独立の評価電子装置又は1つの独立の評価チャンネルを割り当てることができる(であろう)。これに対し代替的に(その代わりに)、個別の検査状況に対しとりわけフレキシブルに評価を適合可能にするために、各スペクトル検出チャンネルに対し複数の独立の評価チャンネルを割り当てることもできる(であろう)。更にフレキシブルな態様では、その際、各評価チャンネルに対し1つの時間的検出ウィンドウ又は複数の時間的検出ウィンドウを割り当てることができる(であろう)。
【0016】
取り込まれるべき検出信号(複数)の評価は、この場合、使用例に応じて、並行(並列)的(parallel)又は順次(直列)的(seriell)に実行することもできる(であろう)。1つのスペクトル検出チャンネルに複数の独立の(別々の)評価チャンネルが割り当てられる場合、並行的評価が可能であり、その際、更に、各評価チャンネルに対し、予め設定可能な数の検出ウィンドウを割り当てることができる(であろう)。単独の評価チャンネルの場合(評価チャンネルが1つの場合)、取り込まれるべき検出信号(複数)の順次的評価を実行することができる(であろう)が、この場合、その都度1つの検出ウィンドウが順次的に評価されるべきであろう。
【0017】
更なる有利な一形態では、評価電子装置における、1つの評価チャンネルにおける又は複数の評価チャンネルにおける評価は、時間的検出ウィンドウ(複数)に時間的に対応する(関連する:korrelieren)制御信号(複数)によって活性化(作動)又は不活性化(停止)されることができる(であろう)。制御信号(複数)により評価を活性化する場合、評価は、(1つの)制御信号を受領してから実行される。不活性化の場合は、制御信号の受領後、評価は最早実行されない。使用例によっては、活性化モードに応じた又は不活性化モードに応じた、適切な制御プロセスを選択することもできる。
【0018】
更なる有利な一形態では、2又は3以上の時間的検出ウィンドウが、データ取り込み中又はデータ取り込み後に、互いに関連付けられることができる(であろう)。有利には、この関連付け(Verrechnung)の結果は、例えばディスプレイに出力することによって、描出(表示)可能(darstellbar)にすることができる(であろう)。
【0019】
更なる有利な形態では、異なる時間的検出ウィンドウ(複数)に対し、異なるレーザ(複数)を割り当て可能にすることができる(であろう)。その限りにおいて、例えば、各時間的検出ウィンドウに対して又は複数の時間的検出ウィンドウのグループ(複数)に対しても、夫々、異なるレーザ(複数)を割り当て可能に構成することができる(であろう)。更には、単独の(1つの)時間的検出ウィンドウ又は複数の時間的検出ウィンドウの1つのグループに対して、夫々、複数のレーザを割り当て可能に構成することもできる(であろう)。これについては、その都度の使用例が考慮されるべきである。
【0020】
相応の一形態では、好適な態様で構成された顕微鏡による試料検査方法において、有利な態様で、2又は3以上の時間的検出ウィンドウが、データ取り込み中又はデータ取り込み後に、互いに関連付けられ、そして、有利には、その関連付けの結果が描出されることができる(であろう)。同様に、好適な方法において、異なる時間的検出ウィンドウ(複数)に対し、異なるレーザ(複数)が割り当てられることができる(であろう)。
【0021】
順次的評価の場合、時間的検出ウィンドウの終端における制御信号の不活性化の都度、アドレスカウンタをインクリメントすることができる(であろう)。これにより、画像撮像(記録)中における個々の時間セグメント(複数)の分離された描出ないし表示(Darstellung)が可能になる。各時間セグメントないし各時間的検出ウィンドウに対し評価された画像情報は、アドレスカウンタのインクリメントによって、独自の(専属の)記憶セルに存在することができる(であろう)。順次的評価において、複数の時間セグメントないし複数の検出ウィンドウが統合される(まとめられる)べき場合には、並行的評価の場合には簡単に達成可能であるように、これは、割り当てられた記憶セルの内容の後続の(その後に行われる)関連付けによって、順次的評価の場合にも容易に達成されることができる(であろう)。
【0022】
このような順次的評価の場合においても、画像信号の特定の時間セグメントの目標を定めた抑圧ないし除去(Unterdrueckung)を可能にする評価の反転(Invertierung)を達成することができる(であろう)。このため、(1つの)時間的検出ウィンドウの評価された画像情報を含む各記憶セルに、個別に予め設定可能なマーク(ないし標識)が配されることができる(であろう)。このマークは、後続の評価において、この時間セグメントないし検出ウィンドウの内容を全体画像から差し引くことを可能にする。
【0023】
評価の更に有利な態様では、取り込まれるべき検出信号の評価はトラック・アンド・ホールド回路によって実行することができる(であろう)。この場合、ゲーティングパルスの開始によって、その都度、データ蓄積が開始されることができる(であろう)。
【0024】
提示した方法によって有益な情報を与えるデータを取得するために、一方ではデータを高い繰返し率で取り込むこと、他方では高い時間的解像度を達成することは、有用である。この場合、80MHzの繰返し率は有利である。上述の2つの要求ないし要件は、設計上の実装によってFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application-Specific Integrated Circuit)においてとりわけ有利な態様で適合されることができるが、この場合、FPGA/ASICとスキャン(ないしサンプリング)ないしデータ取り込みのための可及的に少ない超高速モジュールの組み合わせは、とりわけ好都合である。
【0025】
まとめると、共焦点レーザ顕微鏡法の画像生成は、従来、検出信号の時間的依存を考慮していなかったことは、ここで確認しておくべきことである。従って、試料に関する情報を運搬する多くの現象は検出の際に認識(識別)されることはできない。更に、蛍光顕微鏡法における時間的現象を測定するための既存の方法は、専ら、着色物質分子の寿命を可及的に正確に量的に求めることを目標として有する。更に、この場合、測定中におけるパラメータの適合化は行われない。とりわけ、波長選択と検出される時間ウィンドウの選択の間のダイナミックな協働は、既知の方法では不可能である。
【0026】
本発明の教示を有利な態様で構成及び発展させる種々の可能性が存在する。このために、一方では、添付の請求の範囲が、他方では、図面を参照した本発明の好ましい実施例の以下の説明が参照されるべきである。図面を参照した本発明の好ましい実施例の説明と関連して、本発明の教示の一般的に好ましい実施形態及び発展形態も説明される。なお、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】複数の検出チャンネル及び夫々に割り当てられた複数の時間的検出ウィンドウについての本発明の構成の一例の模式図。
【図2】図1の構成例を有する異なる検出ウィンドウ(複数)及び異なる検出チャンネル(複数)によって取り込まれた複数の画像データの一例の模式図。
【図3】並行的評価のための3つの評価チャンネルの一構成例のダイアグラム。
【図4】並行的評価の一例の模式図。
【図5】順次的評価の場合の複数の検出ウィンドウの時間的順序の一例のダイアグラム。
【図6】順次的評価の一例の模式図。
【図7】トラック・アンド・ホールド回路の一例の模式図。
【図8a】複数の異なる検出器の検出ウィンドウ(複数)と1つのレーザとの関連付けの一例の模式図。
【図8b】複数の異なる検出器の検出ウィンドウ(複数)と複数の異なるレーザとの関連付けの一例の模式図。
【図8c】1つの検出器の複数の検出ウィンドウと複数の異なるレーザとの関連づけの一例の模式図。
【図8d】1つのピクセル上での順次的画像取り込みによるクロス信号(Kreuzsignal)の除去の一例の模式図。
【図8e】データ評価のための、1つのピクセル上での順次的画像取り込みの際の、クロス信号の使用の一例の模式図。
【実施例】
【0028】
本発明の一実施例では、検出されるフォトンの付加的特性として、着色物質(色素)の励起後、生成されたフォトンが検出器に衝突(到達)するまでの時間(期間)ないし時間ウィンドウが使用される。例えば、反射、自家蛍光及び蛍光はその特性において互いに相違するため、これらを検出の際に互いに分離することが可能になる。
【0029】
この実施例では、時間的検出ウィンドウは、共焦点レーザ顕微鏡法の画像生成において、検出波長領域と並んで、複数の検出信号の分離のための第2の基準として導入される。図1は、このために、ユーザインタフェースにおける2つの独立チャンネルCh.1及びCh.2のための調整可能性の一例を模式的に示す。この場合、波長領域1及び2の数、及び、時間的検出ウィンドウCh.1.1、Ch.1.2及びCh.1.3ないしCh.2.1、Ch.2.2及びCh.2.3の数については、夫々、視認性の観点から、図1においては、2つの波長領域、及び、波長領域ないし検出チャンネル当たり3つの時間的検出ウィンドウに限定されている。しかしながら、一層より多くの波長領域及び一層より多くの時間的検出ウィンドウを使用することも可能である。
【0030】
図1に示した実施例における画像生成は、図2に基づいて以下のように説明できるであろう:Ch.1は緑色光-輪郭が破線で示されたもの-のみを受け取り、Ch.2は赤色光-輪郭が実線で示されたもの-のみを検出する。検出ウィンドウ内のシンボルの一重の輪郭は、この実施例では、Ch.1.3及びCh.2.3に示されているように、極めて早期に生成される反射光を表す。他方、二重の輪郭を有するシンボルは蛍光信号を表す。例えば、この場合、ハート(のシンボル)は長寿命の蛍光であり、これに対し、顔(のシンボル)は短寿命の蛍光であることが示されている。
【0031】
蛍光顕微鏡法では、例えば、以下の実用的使用が可能であるが、これらに限定されないことに留意すべきである。
【0032】
蛍光光と反射光の分離を実行することができる(であろう)。この場合、2又は3以上の検出チャンネルにおいて互いに重なりあう波長領域(複数)を有する複数の検出チャンネルの同時表示を達成することができる。一方では、反射光は、蛍光光の画像生成に対し妨害的に作用し得る。他方、純粋な反射画像は、例えば光学的境界面の位置及び状態に関する更なる情報を提供することができる。反射信号の単純な(純粋な)抑圧(消滅)は、この情報を喪失させるであろう。
【0033】
更なる使用領域は、第2高調波発生(Second Harmonic Generation、SHG)とMP蛍光の分離を描出(表示)できる(であろう)。この場合、SHG信号は、まさに反射のように、極めて高速な信号であり、従って、蛍光から時間的に容易に分離されることができる。これに対し、純粋なスペクトル分離は困難であるか不可能であり、特に、とりわけ蛍光の放出波長がSHGの波長と重なる場合には困難ないし不可能である。とりわけ試料が容易に退色するものである場合又は試料が高速に運動するものである場合、利用者はSHGと蛍光信号を同時に検出することができ、2つの測定プロセスを要しないため有利である。
【0034】
更に、自家蛍光と蛍光の分離は一使用例を構成する。自家蛍光は植物標本にしばしば現れる。この場合、自家蛍光の寿命及び波長は極めて多様である。付加的基準として、時間的検出ウィンドウは、蛍光と自家蛍光の分離をより容易にすることができる。
【0035】
原理的には、2又は3以上の時間的検出ウィンドウ又は検出チャンネルはデータ取り込み中(オンライン)に又はデータ取り込み後(オフライン)に互いに関連付けられることができ、有利には、該関連付けの結果が描出されることができるように構成することも可能である。一例として、FRET描出(表示)が可能であろう。FRETの場合、しばしば、専らドナー蛍光の弱い減少(退色)と同時に寿命の短縮が現れ、他方、アクセプタでは、強度の小さい増大と同時により平坦な増大勾配(Anstiegsflanke)が現れる。ドナーの長寿命の蛍光の強度がアクセプタの短寿命の強度によって分割される場合、これは、純粋な強度測定又は純粋な寿命測定によるよりもより感度が高い測定方法を提供する。時間的検出ウィンドウ又は検出チャンネルが減算、加算、乗算及び/又は任意的に相互に関連付けされる(miteinander verrechnet)ことができる他の種々の応用例も可能である。
【0036】
複数のパルスレーザがシステムに存在する場合、これらは、同時に又は利用者によって選択可能な順序で交互にパルスを生成する、即ち励起光を放出することができる。利用者によって調整可能な複数の検出器の時間的検出ウィンドウ(複数)はすべて1つのレーザに関連付けられること(図8a参照)ができる。また、複数の検出器の時間的検出ウィンドウ(複数)が複数のレーザに関連付けられること(図8b参照)又は1又は複数の検出器の時間的検出ウィンドウ(複数)が交互に複数のレーザに関連付けられること(図8c参照)も可能である。レーザパルス及び時間的検出ウィンドウの時間的関係のこのフレキシブルな割り当てにより、とりわけ、ピクセルレベルでの順次的データ取り込みが可能になる(図8d参照)。かくして、スペクトル的に相互に近接する蛍光色素におけるクロス励起(Kreuzanregung)とクロス放出(Kreuzemission)は、ハードウェアレベルで互いに分離されることができる。ライン毎又は画像毎の順次的スキャンと比べると、ピクセル毎の順次的データ取り込みでは、高速に運動する試料の場合、個別の検出チャンネル間でのピクセルシフト(ずれ)は起こらない。更に、クロス励起チャンネルとクロス放出チャンネルも一緒に取り込まれる場合、オンライン・データ評価は、「正常な(normal)」クロス放出とFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)放出の区別を可能にする(図8e参照)。なお、図8a?図8eのすべてにおいて、時間軸は図示左側から右側に進行する即ち水平軸ないしx軸が時間軸を形成する。
【0037】
更に、異方性(Anisotropie)現象の描出も1つの使用例を構成する。異方性は、着色物質の過剰に長いないし過剰に短い崩壊時間をもたらし得る。既述の方法は、寿命の定量化には使用されないが、長寿命の強度による短寿命の強度の単純な分割によって、寿命変化は良好に可視化されることができる。
【0038】
更に、ゲーティッド(Gated)FCS(Fluorescence Correlation Spectroscopy)も1つの使用例を構成する。極めて微弱なFCS試料の場合、水による散乱光が測定結果に影響を及ぼし得る。この散乱光は、時間的選択によって、FCS測定の際に容易に同定されることができ、検出チャンネルのために不可視化されることができる。更に、妨害的な自家蛍光の影響は、FCS検出時間ウィンドウを適切に選択することにより最小化することができる。
【0039】
フォトン(複数)の時間的(一次的)衝突(到達)後の検出の分離は、検出器に後置される(下流に配設される)電子装置において実行される。原理的には、電子装置の並行(並列)的構成及び順次(直列)的構成の何れも可能である。
【0040】
順次的構成の場合、光源から放出されるパルス(列)と検出ユニットから到着するパルス(列)は、シリアル/パラレル的に動作する高速スキャン(サンプリング)ユニットによってスキャン(サンプリング)される。この場合、パルス(列)は、極めて高速なADC(Analog to Digital Converter)モジュールによってスキャンされることができ、パルス(列)の到着の時点は相応の処理アルゴリズムによって求めることができる。次いで、光源からの(1つの)パルスと検出ユニットからの(1つの)パルス又はパルス列との間の1つないし複数の時間的間隔(期間)が求められる。持続時間(期間)に関するこの情報は、適切な方法によって、相応の時間セグメントないし部分(複数)又は検出ウィンドウ(複数)に割り当てることができる。
【0041】
並行的構成は、図3に応じて達成することができる(であろう)。この場合、試料放出の検出されるべき時間セグメントは、電気的信号で表す(描出する)ことができる。各電気的評価チャンネルに対し、1又は複数の時間ウィンドウ又は検出ウィンドウが割り当てられる。これらの評価チャンネルを用いることによって、画像情報の評価を実行する更なる電気回路要素を制御することができる。図3は、3つの評価チャンネルに配分された全体で5つの時間セグメントないし検出ウィンドウを有する3つの評価チャンネルの一例を示す。尤も、評価チャンネル及び時間セグメントの数は図示の数に限定されるものではなく、この数は単なる例示のために選択されたに過ぎない。
【0042】
図示の評価チャンネルの各々は、専属の評価電子装置を制御する。各時間セグメントは、共焦点顕微鏡法の際に、検出信号又は共焦点信号の評価を開始及び停止する。これに関し、図4は、制御信号によってその都度活性化(実行)される並行的評価の一例を示す。図示の構成例の場合、予め規定される(1つの)スペクトルチャンネルは任意の数の時間セグメントに分割されることができ、これらの時間セグメントは互いに分離されて(別々に)評価されることができる。この場合、スペクトル検出チャンネルの各々に対し、制御論理(回路)及び評価(装置)からなる図示の構成が達成される。
【0043】
或いは、制御信号を用いることによって評価を停止し、かくして、所定の信号成分を目標を定めて絞る(消去する:ausblenden)ことを可能にする逆方向の使用を実行することも可能である。
【0044】
順次的評価の一例では、図5に応じた評価を実行することができる。この場合、1つの評価チャンネルのために1つの制御信号のみが存在する。この制御信号内において、検出されるべきすべての時間セグメントが調整される。
【0045】
この種の制御信号が、評価電子装置を制御するために利用される。画像撮像(記録)中において個々の時間セグメントの分離された(別々の)描出(ないし表示)を達成するために、(夫々の)時間セグメントの終端(終了時)において制御信号を不活性化する都度、アドレスカウンタがインクリメントされる。この構成の原理的構造は図6に示されている。この図において、順次的評価及びアドレスカウンタのインクリメントをとりわけ良好に見出すことができる。
【0046】
各時間セグメントについて評価された画像情報は、アドレスカウンタのインクリメントによって固有の(専属の)記憶セルに存在する。並行的評価の場合に可能であるように、複数の時間セグメントが統合される(まとめられる)べき場合、これは、割り当てられた記憶セルの内容の後続の(その後に行われる)関連付け(Verrechnung)によって達成されることができる。
【0047】
画像信号の所定の時間セグメントの目標を定めた抑圧ないし消去(Unterdrueckung)を可能にする評価の反転は、順次的評価によって同様に達成することができる。このため、後続の評価においてこの時間セグメントの内容を全体画像から差し引くことを可能にするマークが記憶セルに配される。
【0048】
他の態様の評価の一例は、図7に応じ、トラック・アンド・ホールド回路によって達成することができる。この場合、ゲーティング信号(Gating-Signal)が、順次的信号として、トラック・アンド・ホールド段T/Hのクロック入力部に供給される。
【0049】
ゲーティングパルスの開始によって、その都度、トラック・アンド・ホールド段において画像データの蓄積が開始される。時間ウィンドウの終端において、トラック・アンド・ホールド段のメモリに含まれる電荷がアナログ・デジタル変換器によってスキャン(サンプリング)され、更に処理される。この種の信号処理の結果は、ゲーティング期間に亘って積算(積分)される、検出されるフォトン数に比例する値である。
【0050】
本発明の教示の更なる有利な実施形態については、反復を回避するために、明細書の概説部分及び添付の請求の範囲の参照を指摘する。
【0051】
最後に、上述の実施例は保護を要求する教示を説明するためのものに過ぎず、この教示はこれらの実施例に限定されるものではないことを明確に指摘する。
【符号の説明】
【0052】
1 波長領域
2 波長領域
Ch.1 検出チャンネル
Ch.2 検出チャンネル
Ch.1.1 検出ウィンドウ
Ch.1.2 検出ウィンドウ
Ch.1.3 検出ウィンドウ
Ch.2.1 検出ウィンドウ
Ch.2.2 検出ウィンドウ
Ch.2.3 検出ウィンドウ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと、試料からの検出信号のための検出装置を有する顕微鏡又は共焦点顕微鏡であって、
該検出装置が予め設定可能な異なる波長領域(1、2)を検出するために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)を有するよう構成され、
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)に夫々、夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)が割り当て可能に構成され、
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)は、測定中に調整可能であり、
かくして、複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する、
顕微鏡。
【請求項2】
前記スペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)の波長領域(1、2)及び/又は前記時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)は、測定中、調整可能及び/又は描出ないし表示可能である、
請求項1に記載の顕微鏡。
【請求項3】
前記波長領域(1、2)及び/又は前記時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)は夫々異なる値を有する、
請求項1又は2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
各スペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)に対し、1つの独立の評価電子装置又は独立の評価チャンネルが割り当てられるか又は複数の独立の評価チャンネルが割り当てられる、
請求項1?3の何れかに記載の顕微鏡。
【請求項5】
前記評価電子装置における前記1つの評価チャンネルにおける又は前記複数の評価チャンネルにおける評価は、前記時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)に時間的に関連する制御信号によって活性化可能又は不活性化可能である、
請求項4に記載の顕微鏡。
【請求項6】
2又は3以上の時間的検出ウィンドウが、データ取り込み中又はデータ取り込み後に互いに関連付け可能である、
請求項1?5の何れかに記載の顕微鏡。
【請求項7】
異なる時間的検出ウィンドウに対し異なるレーザが割り当て可能である、
請求項1?6の何れかに記載の顕微鏡。
【請求項8】
顕微鏡又は共焦点顕微鏡又は請求項1?7の何れかに記載の顕微鏡によって試料を検査するための方法であって、
該顕微鏡が、試料のための照明光を生成するための1又は複数のレーザと、該試料からの検出信号のための検出装置を有し、該検出装置が、予め設定可能な異なる波長領域(1、2)の検出のために調整可能な複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)を有し、
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)に夫々、夫々異なる現象を検出するための複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)が割り当て可能であり、かくして、検出信号が前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)に取り込まれ、
前記複数のスペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)に夫々割り当て可能に構成された前記複数の時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)は、測定中に調整可能であり、
かくして、複数の異なる現象を互いに分離しかつ評価する、
方法。
【請求項9】
取り込まれるべき検出信号の評価は並行的又は順次的に実行される、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各スペクトル検出チャンネル(Ch.1、Ch.2)に対し、1つの独立の評価電子装置又は独立の評価チャンネルが割り当てられるか又は複数の独立の評価チャンネルが割り当てられる、
請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記評価電子装置における前記1つの評価チャンネルにおける又は前記複数の評価チャンネルにおける評価は、前記時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)に時間的に関連する制御信号によって活性化又は不活性化される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
順次的評価の場合、時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)の終端において前記制御信号を不活性化する毎に、アドレスカウンタがインクリメントされる、
請求項9?11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
時間的検出ウィンドウ(Ch.1.1、Ch.1.2、Ch.1.3、Ch.2.1、Ch.2.2、Ch.2.3)の評価された画像情報を含む各記憶セルは、個別に予め設定可能なマークが配される、
請求項8?12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
取り込まれるべき検出信号の評価は、トラック・アンド・ホールド回路によって実行され、ゲーティングパルスの各スタートによって、データ蓄積が開始される、
請求項8に記載の方法。
【請求項15】
2又は3以上の時間的検出ウィンドウは、データ取り込み中又はデータ取り込み後に互いに関連付けられ、有利には、該関連付けの結果が描出ないし表示される、
請求項8?14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
異なる時間的検出ウィンドウに対し異なるレーザが割り当てられる、
請求項8?15の何れかに記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-09 
出願番号 特願2015-537145(P2015-537145)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (G02B)
P 1 651・ 121- YAA (G02B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 殿岡 雅仁  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 清水 康司
藤田 年彦
登録日 2018-08-31 
登録番号 特許第6393685号(P6393685)
権利者 ライカ ミクロジュステムス ツェーエムエス ゲーエムベーハー
発明の名称 顕微鏡、及び顕微鏡による試料検査方法  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 加藤 朝道  
代理人 伊東 忠重  
代理人 加藤 朝道  
代理人 大貫 進介  
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