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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  C03C
審判 全部申し立て 発明同一  C03C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C03C
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  C03C
管理番号 1374872
異議申立番号 異議2020-700178  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-17 
確定日 2021-03-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6576657号発明「光学ガラスおよび光学素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6576657号の特許請求の範囲を、令和 3年 1月28日付け手続補正書により補正された令和 2年 8月11日付けの訂正請求書に添付した前記手続補正書による補正後の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第6576657号の請求項1?5、7、8に係る特許を維持する。 特許第6576657号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6576657号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成27年 3月17日を出願日として特許出願され、令和 1年 8月30日にその請求項1?8に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年 9月18日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項に係る特許に対して、令和 2年 3月17日付けで特許異議申立人 石田祥子(以下、「申立人」という。)により、甲第1?3号証を添付して特許異議の申立てがされ、同年 6月10日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年 8月11日付けで、特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年 9月15日付けで、特許権者より本件訂正請求の訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)についての手続補正書(方式)が提出され、同年11月 2日付けで、申立人より意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出され、同年12月22日付けで当審より訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和 3年 1月28日付けで、特許権者より意見書及び訂正請求書についての手続補正書が提出されたものである。

第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正請求書の補正の適否
本件訂正請求の訂正請求書は、令和 3年 1月28日付け手続補正書により補正されたので、当該補正の適否について検討する。
(1)補正の内容
令和 3年 1月28日付け手続補正書による補正の内容は、同日付けの意見書の記載も参酌すると、全体として以下のア?ウの補正事項に集約されるものである。
ア 訂正請求書の「7 請求の理由」「(2)訂正事項」の「訂正事項6」を以下のとおりに補正する。
「カ 訂正事項6
請求項6を以下のとおり訂正する。
【請求項6】(訂正前)
L2が127.79以上である、請求項4または5に記載の光学ガラス。
【請求項6】(訂正後)
(削除)」

イ 訂正請求書の「7 請求の理由」「(2)訂正事項」に「訂正事項7」として以下の訂正事項を加える。
「キ 訂正事項7
請求項7を以下のとおり訂正する。
【請求項7】(訂正前)
請求項1?6のいずれかに記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。
【請求項7】(訂正後)
請求項1?5のいずれかに記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。」

ウ 訂正請求書の「7 請求の理由」「(2)訂正事項」に「訂正事項8」として以下の訂正事項を加える。
「ク 訂正事項8
請求項8を以下のとおり訂正する。
【請求項8】(訂正前)
請求項1?6のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項8】(訂正後)
請求項1?5のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。」

なお、前記ア?ウの補正に合わせて「訂正特許請求の範囲」も補正後のものが添付されている。

(2)補正の適否
前記(1)アの補正は、訂正事項6を、請求項6を削除するものに変更する補正であり、前記(1)イ、ウの補正は、前記(1)アの補正に伴って、請求項7及び8における他の請求項の引用を整合させるために、訂正事項を追加する補正であり、「訂正特許請求の範囲」の補正は、前記(1)ア?ウの補正に伴って記載事項を整合させるための補正であり、いずれの補正も訂正請求書の要旨を変更するものには該当しない。
したがって、令和 3年 1月28日付け手続補正書による訂正請求書の補正は認められるものである。

2 訂正の内容
前記1(2)のとおり、令和 3年 1月28日付け手続補正書による訂正請求書の補正は認められたので、本件訂正請求の要旨は、前記手続補正書による補正後の訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?8について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項からなるものである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「【請求項1】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.33以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.05以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
アッベ数νdが39.0以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。」
と記載されているのを、
「【請求項1】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.05以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項7?8も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に
「【請求項2】
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.99以下である、請求項1に記載の光学ガラス。」
と記載されているのを
「【請求項2】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.05以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
L1が0.95以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項7?8も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に
「【請求項3】
L1が0.85以上である、請求項1または2に記載の光学ガラス。」
と記載されているのを
「【請求項3】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.08以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
L1が0.95以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項7?8も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4に
「【請求項4】
NWF2に対するRE2の比[RE2/NWF2]が0.35以上、
RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]が0.33以下、
Nb^(5+)およびTa^(5+)の含有量の合計に対するNb^(5+)の含有量のカチオン比[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]が3/4以上、
D2に対するRE2の比[RE2/D2]が0.90以上、
NWF2およびRE2の合計に対するL2の比[L2/(NWF2+RE2)]が1.05以上、
Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上であり、である酸化物ガラスであり、
アッベ数νdが39.0以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラスである:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
NWF2は、B^(3+)、Si^(4+)およびAl^(3+)の合計含有量、
RE2は、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量、
HR2は、Nb^(5+)、Ti^(4+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量、
D2=(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))×6+Zn^(2+)、
L2=(10×Li^(+))+(8×Na^(+))+(4×K^(+))+(4×Zn^(+))+Mg^(2+)+(2×Ca^(2+))+(2×Sr^(2+))+(2×Ba^(2+))+B^(3+)+Nb^(5+)+Ti^(4+)+4×W^(6+)+(4×Bi^(3+))+Ta^(5+)-(2×Si^(4+))-Al^(3+)-(2×Zr^(4+))-La^(3+)-Gd^(3+)-Y^(3+)-Yb^(3+)、
であり、上記各ガラス成分の含有量はカチオン%表示による値である。」
と記載されているのを
「【請求項4】
NWF2に対するRE2の比[RE2/NWF2]が0.35以上、
RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]が0.31以下、
Nb^(5+)およびTa^(5+)の含有量の合計に対するNb^(5+)の含有量のカチオン比[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]が3/4以上、
D2に対するRE2の比[RE2/D2]が0.90以上、
NWF2およびRE2の合計に対するL2の比[L2/(NWF2+RE2)]が1.05以上、
Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上であり、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下である酸化物ガラスであり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラスである:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
NWF2は、B^(3+)、Si^(4+)およびAl^(3+)の合計含有量、
RE2は、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量、
HR2は、Nb^(5+)、Ti^(4+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量、
D2=(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))×6+Zn^(2+)、
L2=(10×Li^(+))+(8×Na^(+))+(4×K^(+))+(4×Zn^(+))+Mg^(2+)+(2×Ca^(2+))+(2×Sr^(2+))+(2×Ba^(2+))+B^(3+)+Nb^(5+)+Ti^(4+)+4×W^(6+)+(4×Bi^(3+))+Ta^(5+)-(2×Si^(4+))-Al^(3+)-(2×Zr^(4+))-La^(3+)-Gd^(3+)-Y^(3+)-Yb^(3+)、
であり、上記各ガラス成分の含有量はカチオン%表示による値である。」
に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項7?8も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「【請求項5】
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.99以下である、請求項4に記載の光学ガラス。」
と記載されているのを
「【請求項5】
NWF2に対するRE2の比[RE2/NWF2]が0.35以上、
RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]が0.31以下、
Nb^(5+)およびTa^(5+)の含有量の合計に対するNb^(5+)の含有量のカチオン比[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]が3/4以上、
D2に対するRE2の比[RE2/D2]が0.90以上、
NWF2およびRE2の合計に対するL2の比[L2/(NWF2+RE2)]が1.05以上、
Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上であり、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下である酸化物ガラスであり、
L2が82.12以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラスである:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
NWF2は、B^(3+)、Si^(4+)およびAl^(3+)の合計含有量、
RE2は、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量、
HR2は、Nb^(5+)、Ti^(4+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量、
D2=(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))×6+Zn^(2+)、
L2=(10×Li^(+))+(8×Na^(+))+(4×K^(+))+(4×Zn^(+))+Mg^(2+)+(2×Ca^(2+))+(2×Sr^(2+))+(2×Ba^(2+))+B^(3+)+Nb^(5+)+Ti^(4+)+4×W^(6+)+(4×Bi^(3+))+Ta^(5+)-(2×Si^(4+))-Al^(3+)-(2×Zr^(4+))-La^(3+)-Gd^(3+)-Y^(3+)-Yb^(3+)、
であり、上記各ガラス成分の含有量はカチオン%表示による値である。」
に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項7?8も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(7)訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。」
と記載されているのを
「【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。」
に訂正する。

(8)訂正事項8
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に
「【請求項8】
請求項1?6のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。」
と記載されているのを
「【請求項8】
請求項1?5のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。」
に訂正する。

(9)一群の請求項について
訂正前の請求項2?3は、いずれも訂正前の請求項1を引用するものであり、訂正前の請求項5?6は、いずれも訂正前の請求項4を引用するものであり、訂正前の請求項7?8は、いずれも訂正前の請求項1、4を引用するものであるから、訂正前の請求項1?8は一群の請求項であり、本件訂正による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1?8について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1において、「RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]」が「0.33以下」であったのを、本件特許明細書の【0069】の記載に基づいて「0.31以下」として、その上限値を減縮し、訂正前の請求項1に、本件特許明細書の【0124】の記載に基づいて、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下」である、との発明特定事項を追加し、更に、訂正前の請求項1において、「アッベ数νd」が「39.0以上45.0以下」であったのを、本件特許明細書の【0045】の記載に基づいて「39.5以上45.0以下」として、その下限値を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2が請求項1を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消して、請求項1を引用していたものについて、独立形式の請求項へ改めるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2が引用していた訂正前の請求項1において、「RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]」が「0.33以下」であったのを、本件特許明細書の【0069】の記載に基づいて「0.31以下」として、その上限値を減縮し、訂正前の請求項2において、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]」が「0.99以下」であったのを、本件特許明細書の【0124】の記載に基づいて「0.80以下」として、その上限値を減縮し、訂正前の請求項2に、本件特許明細書の【0317】【表7A】(試料No.22)の記載に基づいて、「L1が0.95以上」である、との発明特定事項を追加し、更に、訂正前の請求項2が引用していた訂正前の請求項1において、「アッベ数νd」が「39.0以上45.0以下」であったのを、本件特許明細書の【0045】の記載に基づいて「39.5以上45.0以下」として、その下限値を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3が請求項1または2を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消して、請求項1及び2を引用していたものについて、独立形式の請求項へ改めるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3が引用していた訂正前の請求項1において、「RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]」が「0.33以下」であったのを、本件特許明細書の【0069】の記載に基づいて「0.31以下」として、その上限値を減縮し、訂正前の請求項3が引用していた訂正前の請求項1において、「NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]」が「1.05以上」であったのを、本件特許明細書の【0317】【表7A】(試料No.18)の記載に基づいて、「1.08以上」として、その下限値を減縮するものである。
更に、訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項1を引用していた訂正前の請求項3において、本件特許明細書の【0124】の記載に基づいて、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下」である、との発明特定事項を追加し、あるいは、訂正前の請求項3が引用していた訂正前の請求項2において、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]」が「0.99以下」であったのを、本件特許明細書の【0124】の記載に基づいて「0.80以下」として、その上限値を減縮するものであり、訂正前の請求項3において、「L1」が「0.85以上」であったのを、本件特許明細書の【0317】【表7A】(試料No.22)の記載に基づいて、「0.95以上」である、として、その下限値を減縮し、訂正前の請求項3が引用していた訂正前の請求項1において、「アッベ数νd」が「39.0以上45.0以下」であったのを、本件特許明細書の【0045】の記載に基づいて「39.5以上45.0以下」として、その下限値を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4において、「RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]」が「0.33以下」であったのを、本件特許明細書の【0226】の記載に基づいて「0.31以下」として、その上限値を減縮し、訂正前の請求項4に、本件特許明細書の【0256】の記載に基づいて、「La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下」である、との発明特定事項を追加し、更に、訂正前の請求項4において、「アッベ数νd」が「39.0以上45.0以下」であったのを、本件特許明細書の【0216】の記載に基づいて「39.5以上45.0以下」として、その下限値を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項5が請求項4を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消して、請求項4を引用していたものについて、独立形式の請求項へ改めるものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項5が引用していた訂正前の請求項4において、「RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]」が「0.33以下」であったのを、本件特許明細書の【0226】の記載に基づいて「0.31以下」として、その上限値を減縮し、訂正前の請求項5において、「La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]」が「0.99以下」であったのを、本件特許明細書の【0256】の記載に基づいて「0.80以下」として、その上限値を減縮し、訂正前の請求項5に、本件特許明細書の【0319】【表7B】(試料No.22)の記載に基づいて、「L2が82.12以上」である、との発明特定事項を追加し、更に、訂正前の請求項5が引用していた訂正前の請求項4において、「アッベ数νd」が「39.0以上45.0以下」であったのを、本件特許明細書の【0216】の記載に基づいて「39.5以上45.0以下」として、その下限値を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5による訂正は、いずれも、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(6)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。

(7)訂正事項7、8について
訂正事項7、8による訂正は、訂正事項6による訂正により請求項6が削除されたことに伴い、請求項7及び8における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかである。

(8)申立人意見書について
ア 申立人は、申立人意見書において、令和 3年 1月28日付け手続補正書による補正前の本件訂正請求は、請求項5及び6に「L2が82.12以上であり」との発明特定事項を加えるものであり、この訂正は、誤記の訂正に該当するものと解されるが、「L2が127.79以上である」ことは、審査時の令和 1年 5月14日付け手続補正書により加えられたものであり、もともと、訂正前の請求項6に係る発明の特許は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に基づかない補正が看過されて特許されたものであり、特許法第17条の2第3項違反の異議申立理由及び無効理由となる旨、請求項5及び6に「L2が82.12以上であり」との発明特定事項を加える訂正が誤記の訂正を目的とするものであるとしても、特許請求の範囲を拡大する訂正となるので、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に違反する旨を主張している(11頁4行?12頁10行)。

イ そこで検討すると、請求項5に「L2が82.12以上であり」との発明特定事項を加える訂正は、もともと、請求項5には「L2」に関して特定されていなかったのを、新たに、本件特許明細書の【0319】【表7B】(試料No.22)の記載に基づいて「L2」を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、誤記の訂正を目的とするものではない。
そして、「L2」が「82.12」であることは、本件特許明細書の【0319】【表7B】(試料No.22)に記載された事項であるから、訂正事項5の「L2」に関する訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、請求項6は訂正事項6により削除されたので、特許法第17条の2第3項違反の異議申立理由及び無効理由とはならず、請求項6を削除するものである訂正事項6は、特許請求の範囲を拡大する訂正でもないので、申立人の前記アの主張はいずれも採用できない。

3 独立特許要件について
本件特許異議の申立てにおいては、本件訂正前の請求項1?8に係る発明の特許に対して特許異議の申立がされているので、前記請求項1?8に対応する本件訂正後の請求項1?8に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。

4 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
本件訂正が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項1?5、7及び8に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明5」、「本件発明7」及び「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?5、7及び8に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.05以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。
【請求項2】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.05以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
L1が0.95以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。
【請求項3】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.08以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
L1が0.95以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。
【請求項4】
NWF2に対するRE2の比[RE2/NWF2]が0.35以上、
RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]が0.31以下、
Nb^(5+)およびTa^(5+)の含有量の合計に対するNb^(5+)の含有量のカチオン比[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]が3/4以上、
D2に対するRE2の比[RE2/D2]が0.90以上、
NWF2およびRE2の合計に対するL2の比[L2/(NWF2+RE2)]が1.05以上、
Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上であり、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下である酸化物ガラスであり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラスである:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
NWF2は、B^(3+)、Si^(4+)およびAl^(3+)の合計含有量、
RE2は、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量、
HR2は、Nb^(5+)、Ti^(4+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量、
D2=(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))×6+Zn^(2+)、
L2=(10×Li^(+))+(8×Na^(+))+(4×K^(+))+(4×Zn^(+))+Mg^(2+)+(2×Ca^(2+))+(2×Sr^(2+))+(2×Ba^(2+))+B^(3+)+Nb^(5+)+Ti^(4+)+4×W^(6+)+(4×Bi^(3+))+Ta^(5+)-(2×Si^(4+))-Al^(3+)-(2×Zr^(4+))-La^(3+)-Gd^(3+)-Y^(3+)-Yb^(3+)、
であり、上記各ガラス成分の含有量はカチオン%表示による値である。
【請求項5】
NWF2に対するRE2の比[RE2/NWF2]が0.35以上、
RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]が0.31以下、
Nb^(5+)およびTa^(5+)の含有量の合計に対するNb^(5+)の含有量のカチオン比[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]が3/4以上、
D2に対するRE2の比[RE2/D2]が0.90以上、
NWF2およびRE2の合計に対するL2の比[L2/(NWF2+RE2)]が1.05以上、
Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上であり、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下である酸化物ガラスであり、
L2が82.12以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラスである:
nd≧2.235-0.01×νd ・・・ (1)
但し、
NWF2は、B^(3+)、Si^(4+)およびAl^(3+)の合計含有量、
RE2は、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量、
HR2は、Nb^(5+)、Ti^(4+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量、
D2=(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))×6+Zn^(2+)、
L2=(10×Li^(+))+(8×Na^(+))+(4×K^(+))+(4×Zn^(+))+Mg^(2+)+(2×Ca^(2+))+(2×Sr^(2+))+(2×Ba^(2+))+B^(3+)+Nb^(5+)+Ti^(4+)+4×W^(6+)+(4×Bi^(3+))+Ta^(5+)-(2×Si^(4+))-Al^(3+)-(2×Zr^(4+))-La^(3+)-Gd^(3+)-Y^(3+)-Yb^(3+)、
であり、上記各ガラス成分の含有量はカチオン%表示による値である。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。
【請求項8】
請求項1?5のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。」

第4 特許異議申立理由の概要
申立人は、甲第1?3号証を提出して、以下の特許異議申立理由によって、本件訂正前の請求項1?8に係る発明の特許は取り消すべきものである旨を主張している。
甲第1号証:特願2013-232366号(特開2015-93787号)
甲第2号証:特開2013-32232号公報
甲第3号証:上原 進,「光学ガラスの高屈折率化」,光学,第42巻第7号,2013年,p.345?350

1 特許法第29条の2(拡大先願)について
本件訂正前の請求項1?5、7、8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、本件訂正前の請求項1?5、7、8に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 特許法第29条第2項(進歩性)について
本件訂正前の請求項1?5、7、8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1?5、7、8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件訂正前の請求項6に係る発明は、「L2が127.79以上」である、との発明特定事項を有するが、本件特許明細書の【0318】【表5B】【0319】【表6B】【0320】【表7B】には、「L2が127.79以上」である実施例は記載されていないので、本件訂正前の請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないから、本件訂正前の請求項6に係る発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 取消理由の概要
当審の取消理由通知による取消理由の概要は、以下のとおりである。
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件訂正前の請求項6に係る発明は、「L2が127.79以上である」との発明特定事項を有するが、本件特許明細書の【0318】?【0320】によれば、実施例における「L2」は、「試料No.3」の「107.23」が最大であり、「L2が127.79以上である」との発明特定事項を満足する実施例が記載されていないので、本件訂正前の請求項6に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。

2 特許法第29条の2(拡大先願)について
本件訂正前の請求項1?5、7、8に係る発明は、甲第1号証の実施例1?3に記載された発明と同一であるから、本件訂正前の請求項1?5、7、8に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

3 特許法第29条第2項(進歩性)について
本件訂正前の請求項1?5、7、8に係る発明は、甲第2号証の実施例No.2に記載された発明及び甲第2?3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1?5、7、8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第6 取消理由についての判断
1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件訂正により請求項6は削除されたので、前記第5の1の取消理由は理由がない。

2 特許法第29条の2(拡大先願)について
(1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証には、以下(1a)?(1c)の記載事項がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「…」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a)「【特許請求の範囲】【請求項1】 モル%で、B_(2)O_(3)成分を20.0%以上50.0%以下、La_(2)O_(3)成分を5.0%以上30.0%以下、Gd_(2)O_(3)成分を0%超15.0%以下含有し、Ta_(2)O_(5)成分の含有量が10.0%以下であり、1.75以上の屈折率(n_(d))を有し、30以上45以下のアッベ数(ν_(d))を有する光学ガラス。

【請求項20】 請求項1から請求項19のいずれか記載の光学ガラスからなるプリフォーム材。

【請求項22】 請求項1から請求項19のいずれか記載の光学ガラスを母材とする光学素子。」

(1b)「【0089】
【表1】



イ 前記ア(1a)によれば、甲第1号証には「光学ガラス」が記載されており 、同(1b)の実施例1に注目すれば、前記「光学ガラス」は、B_(2)O_(3):39.352モル%、La_(2)O_(3):15.495モル%、Gd_(2)O_(3):3.099モル%、SiO_(2):7.502モル%、Nb_(2)O_(5):2.005モル%、WO_(3):3.204モル%、ZrO_(2):3.376モル%、ZnO:25.968モル%の組成を有するものであり、屈折率(n_(d))が1.81451、アッベ数(ν_(d))が42.4であるものである。

ウ そうすると、甲第1号証には、
「B_(2)O_(3):39.352モル%、La_(2)O_(3):15.495モル%、Gd_(2)O_(3):3.099モル%、SiO_(2):7.502モル%、Nb_(2)O_(5):2.005モル%、WO_(3):3.204モル%、ZrO_(2):3.376モル%、ZnO:25.968モル%の組成を有し、屈折率(n_(d))が1.81451であり、アッベ数(ν_(d))が42.4である、光学ガラス。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

エ また、前記(1a)によれば、甲第1号証には、
「甲1発明の光学ガラスからなるプリフォーム材。」の発明(以下、「甲1’発明」という。)
及び
「甲1発明の光学ガラスを母材とする光学素子。」の発明(以下、「甲1”発明」という。)
が記載されていると認められる。

(2)対比・判断
(2-1)本件発明1について
ア 甲1発明の「光学ガラス」の組成をモル%から質量%に換算すると、甲1発明の「光学ガラス」は、B_(2)O_(3):20.807質量%、La_(2)O_(3):38.340質量%、Gd_(2)O_(3):8.531質量%、SiO_(2):3.423質量%、Nb_(2)O_(5):4.047質量%、WO_(3):5.641質量%、ZrO_(2):3.159質量%、ZnO:16.051質量%の組成を有するものである。

イ これに基づいて、本件発明1の発明特定事項にのっとって、甲1発明のLa_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]を算出すると、[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]=[38.340/(38.340+8.531+0+0)]=0.818であり、これは、本件発明1において、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下」であることと合致しない。

ウ 前記イによれば、本件発明1と甲1発明とを対比した場合、本件発明1が、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下」である、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は前記発明特定事項を有しない点で相違するので、本件発明1が甲1発明と同一であるとはいえない。

(2-2)本件発明2、3について
本件発明2及び3も、本件発明1と同様に、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下」である、との発明特定事項を有するから、前記(2-1)ウに記載したのと同様の理由により、本件発明2及び3も、甲1発明と同一であるとはいえない。

(2-3)本件発明4について
ア 甲1発明の「光学ガラス」の組成をモル%からカチオン%に換算すると、甲1発明の「光学ガラス」は、B^(3+):49.205カチオン%、La^(3+):19.375カチオン%、Gd^(3+):3.875カチオン%、Si^(4+):4.690カチオン%、Nb^(5+):2.507カチオン%、W^(6+):2.003カチオン%、Zr^(4+):2.111カチオン%、Zn^(2+):16.235カチオン%の組成を有するものである。

イ これに基づいて、本件発明4の発明特定事項にのっとってLa^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]を算出すると、[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]=[19.375/(19.375+3.875+0+0)]=0.833であり、これは、本件発明4において、「La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下」であることと合致しない。

ウ 前記イによれば、本件発明4と甲1発明とを対比した場合、本件発明4が、「La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下」である、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は前記発明特定事項を有しない点で相違するので、本件発明4が甲1発明と同一であるとはいえない。

(2-4)本件発明5について
本件発明5も、本件発明4と同様に、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下」である、との発明特定事項を有するから、前記(2-3)ウに記載したのと同様の理由により、本件発明5も、甲1発明と同一であるとはいえない。

(2-5)本件発明7、8について
本件発明7及び8は、いずれも、本件発明1?5のいずれかを引用するものであって、本件発明7と甲1’発明とを対比した場合、及び本件発明8と甲1”発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも、前記(2-1)ウ、(2-3)ウと同じ相違点で相違する。
してみれば、本件発明7が甲1’発明と同一であるとはいえないし、本件発明8が甲1”発明と同一であるともいえない。

(2-6)実施例2、3について
前記(1)ア?エと同様にして、甲1発明、甲1’発明及び甲1”発明を、前記(1)ア(1b)の実施例2及び3に注目して認定した場合、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]を、前記(2-1)ア?イと同様にして算出すると、実施例2では0.866、実施例3では0.826であり、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]を、前記(2-3)ア?イと同様にして算出すると、実施例2では0.877、実施例3では0.841である。
そうすると、甲1発明、甲1’発明及び甲1”発明を前記実施例2、3に注目して認定した場合であっても、これらは、本件発明1?3、7及び8の、「La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下」である、との発明特定事項、及び、本件発明4、5、7及び8の「La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下」である、との発明特定事項を満足しないから、前記(2-1)ウ、(2-2)、(2-3)ウ、(2-4)及び(2-5)に記載したのと同様の理由により、本件発明1?5、7及び8が、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえない。

(2-7)小括
したがって、本件発明1?5、7及び8が、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえないから、前記第5の2の取消理由は理由がない。

3 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)各甲号証の記載事項等
(1-1)甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
ア 甲第2号証には、以下(2a)?(2d)の記載事項がある。
(2a)「【請求項1】
ガラス組成として、質量%で、SiO_(2) 0?10%、B_(2)O_(3) 5?30%、Li_(2)O 0?0.1%未満、ZnO 3.1?14.5%、ZrO_(2) 0?8%、La_(2)O_(3) 25?41%、Gd_(2)O_(3) 0?30%、TiO_(2) 0?8%、Nb_(2)O_(5) 0?10%、Ta_(2)O_(5) 0?12%およびWO_(3) 0?10%を含有し、鉛成分、ヒ素成分およびフッ素成分を実質的に含有せず、かつ、屈折率が1.846以上、アッベ数が30?45、ガラス転移点が650℃以下であることを特徴とする光学ガラス。」

(2b)「【0023】
SiO_(2)はガラス骨格を構成する成分であり、失透を抑制するとともに耐候性を向上させる効果がある。また、アッベ数を高める効果がある。SiO_(2)の含有量は0?10%、0.5?8%、1?7%、特に1.5?6%であることが好ましい。SiO_(2)の含有量が多すぎると、屈折率が低下したり、軟化点が高くなる傾向がある。
【0024】
B_(2)O_(3)はガラス骨格を構成する成分であり、アッベ数を最も高める成分でもある。B_(2)O_(3)の含有量は5?30%、7.5?25%、特に8.5?20%であることが好ましい。B_(2)O_(3)の含有量が多すぎると、屈折率が小さくなるとともに耐候性が低下する傾向がある。一方、B_(2)O_(3)の含有量が少なすぎると、低分散特性が得られにくくなる。また、ガラスが不安定になって耐失透性が低下したり、着色度が低下する傾向がある。」

(2c)「【0062】
次に、本発明の光学ガラスを用いて光ピックアップレンズや撮影用レンズ等を製造する方法を述べる。
【0063】
まず、所望の組成になるようにガラス原料を調合した後、ガラス溶融炉中で溶融する。次に、溶融ガラスをノズルの先端から滴下して液滴状ガラスを作製し、プリフォームガラスを得る。または、溶融ガラスを急冷鋳造して一旦ガラスブロックを作製し、研削、研磨、洗浄してプリフォームガラスを得る。続いて、精密加工を施した金型中にプリフォームガラスを投入し、軟化状態となるまで加熱しながら加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写させる。このようにして光ピックアップレンズや撮影用レンズを得ることができる。」

(2d)「【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
表1?3は本発明の実施例(No.1?30)を、表4は比較例(No.31?33)をそれぞれ示している。なお、表において、例えば「Zr+Ta」は「ZrO_(2)+Ta_(2)O_(5)」(酸化物)を意味する(他も同様)。
【0066】
【表1】



イ 前記ア(2a)によれば、甲第2号証には「光学ガラス」が記載されており、同(2d)の【表1】の実施例No.2に注目すれば、前記「光学ガラス」は、SiO_(2):3.1質量%、B_(2)O_(3):17.1質量%、ZnO:13.6質量%、ZrO_(2):4.2質量%、La_(2)O_(3):35.8質量%、Gd_(2)O_(3):11.5質量%、Nb_(2)O_(5):9.5質量%、WO_(3):5.2質量%、Sb_(2)O_(3):0.05質量%の組成を有するものであり、屈折率ndが1.8601、アッベ数νdが38.7であるものである。

ウ そうすると、甲第2号証には、
「SiO_(2):3.1質量%、B_(2)O_(3):17.1質量%、ZnO:13.6質量%、ZrO_(2):4.2質量%、La_(2)O_(3):35.8質量%、Gd_(2)O_(3):11.5質量%、Nb_(2)O_(5):9.5質量%、WO_(3):5.2質量%、Sb_(2)O_(3):0.05質量%の組成を有し、屈折率ndが1.8601、アッベ数νdが38.7である、光学ガラス。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

エ また、前記ア(2c)によれば、甲第2号証には、甲2発明の「光学ガラス」を用いてプリフォームガラスを得て、精密加工を施した金型中にプリフォームガラスを投入し、軟化状態となるまで加熱しながら加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写させて、光ピックアップレンズや撮影用レンズを得ることが記載されている。

オ そうすると、甲第2号証には、
「甲2発明の光学ガラスを用いて得られたプリフォームガラス。」の発明(以下、「甲2’発明」という。)
及び
「甲2’発明のプリフォームガラスを精密加工を施した金型中に投入し、軟化状態となるまで加熱しながら加圧成形し、金型の表面形状をガラスに転写させて得られた光ピックアップレンズや撮影用レンズ。」の発明(以下、「甲2”発明」という。)
が記載されているといえる。

(1-2)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下(3a)?(3b)の記載事項がある。
(3a)「図7に,ある光学ガラスにおいて酸化ランタン成分から各成分に置換した場合の,屈折率n_(d)とアッベ数ν_(d)の変化量を示す.すなわち,各成分のn_(d),ν_(d)の位置関係を表したものである.」

(3b)「



(2)対比・判断
(2-1)本件発明1について
ア 対比
(ア)甲2発明の「光学ガラス」の組成に基づいて、本件発明1の発明特定事項にのっとってNWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]、RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]、Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]、D1に対するRE1の比[RE1/D1]、NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]を算出すると、NWF1=[2×17.1/69.621]+[3.1/60.084]+[2×0/101.961]=0.543、RE1=[2×35.8/325.809]+[2×11.5/362.498]+[2×0/225.810]+[2×0/394.084]+[0/195.901]+[0/214.245]+[0/145.901]+[0/230.050]=0.283、HR1=[2×9.5/265.810]+[0/79.882]+[5.2/231.839]+[2×0/465.959]=0.094、D1={[2×0/29.882]+[2×0/61.979]+[2×0/94.196]}×3+[13.6/81.389]=0.167、L1=[20×0/29.882]+[16×0/61.979]+[8×0/94.196]+[4×13.6/81.389]+[0/40.304]+[2×0/56.077]+[2×0/81.389]+[2×0/153.326]+[2×17.1/69.621]+[2×9.5/265.810]+[0/79.882]+[4×5.2/231.839]+[8×0/465.959]+[2×0/441.893]-[2×3.1/60.084]-[2×0/101.961]-[2×4.2/123.223]-[2×35.8/325.809]-[2×11.5/362.498]-[2×0/225.810]-[2×0/394.084]-[0/195.901]-[0/214.245]-[0/145.901]-[0/230.050]=0.866であるので、
[RE1/NWF1]=0.283/0.543=0.521、
[HR1/RE1]=0.094/0.283=0.332、
[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]=9.5/(9.5+0)=1.000、
[RE1/D1]=0.283/0.167=1.695、
[L1/(NWF1+RE1)]=0.866/(0.543+0.283)=1.048、
[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]=[35.8/(35.8+11.5+0+0)]=0.757
であり、このうち[RE1/NWF1]=0.521、[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]=1.00、[RE1/D1]=1.695、[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]=0.757であることは、本件発明1において、「[RE1/NWF1]が0.35以上」、「[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上」、「[RE1/D1]が0.90以上」、「[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下」であることと合致する。
また、甲2発明の「光学ガラス」の組成がGd_(2)O_(3):11.5質量%であることは、本件発明1において、「Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であ」ることと合致する。
更に、甲2発明の「光学ガラス」のアッベ数(ν_(d))が38.7であることから、(1)式の右辺は2.235-0.01×38.7=1.848であり、これに対して甲2発明の「光学ガラス」の屈折率(n_(d))は1.8601であって、1.8601≧1.848であるから、甲2発明の「光学ガラス」のアッベ数(ν_(d))と屈折率(n_(d))は、(1)式を満たすものである。

(イ)前記(ア)によれば、本件発明1と甲2発明とを対比した場合、
・相違点1:本件発明1の「光学ガラス」は、「[HR1/RE1]が0.31以下」である、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明の光学ガラスは[HR1/RE1]=0.332である点。
・相違点2:本件発明1の「光学ガラス」は、「[L1/(NWF1+RE1)]が1.05以上」である、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明の光学ガラスは[L1/(NWF1+RE1)]=1.045である点。
・相違点3:本件発明1の「光学ガラス」は、「アッベ数νdが39.5以上45.0以下」、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明の「光学ガラス」は、「アッベ数νdが38.7である」点。
で相違し、その余の点で一致する。

イ 判断
(ア)まず、前記ア(イ)の相違点1について検討すると、本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0063】
<HR1/RE1>
前述のように、光学設計上、アッベ数νdが39.0以上45.0以下である光学ガラスが、(1)式を満たす屈折率ndを有することの意義は大きい。通常、ガラスの屈折率を増加させると、アッベ数が減少し、高分散化する。したがって、上記光学特性を得るには、できるだけアッベ数νdの減少を抑えつつ、屈折率を高めることが重要である。

【0067】
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]を減少させることにより、アッベ数の低下を抑制することができ、さらに、精密プレス成形時のガラスと型材料の反応を抑制し、精密プレス成形によるガラス製光学素子の生産性向上が可能になる。
【0068】
このような理由から、本実施形態に係る光学ガラスにおいて、比[HR1/RE1]は、0.33以下である。
【0069】
さらに、本実施形態に係る光学ガラスにおいて、比[HR1/RE1]の上限は、好ましくは0.32であり、さらには0.31、0.30、0.29、0.28、0.27、0.25の順により好ましい。」
そして、前記記載によれば、本件発明1においては、ガラスの屈折率を増加させると、アッベ数が減少し、高分散化するので、できるだけアッベ数νdの減少を抑えつつ、屈折率を高めることが重要であるが、RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]を減少させることにより、アッベ数の低下を抑制することができ、さらに、精密プレス成形時のガラスと型材料の反応を抑制し、精密プレス成形によるガラス製光学素子の生産性向上が可能になるものであり、比[HR1/RE1]の上限は、好ましくは0.31であるものである。

(イ)これに対して、甲第2号証には、できるだけアッベ数νdの減少を抑えつつ、屈折率を高める、といった目的のために、RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]に着目することは記載も示唆もされておらず、甲2発明において、アッベ数の低下を抑制し、更に、精密プレス成形時のガラスと型材料の反応を抑制し、精密プレス成形によるガラス製光学素子の生産性向上を可能とするために、[HR1/RE1]を減少させて、0.31以下とする動機付けは存在しない。
そして、このことは、甲第3号証の記載事項に左右されるものでもない。

(ウ)前記(イ)によれば、甲2発明において、「光学ガラス」を、「[HR1/RE1]が0.31以下」である、との前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るものではないから、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲2発明及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-2)本件発明2、3について
本件発明2及び3は、いずれも、「[HR1/RE1]が0.31以下」である、との発明特定事項を有するから、本件発明2及び3と甲2発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(2-1)ア(イ)の相違点1の点で相違する。
そうすると、前記(2-1)イ(ウ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2及び3を、甲2発明及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-3)本件発明4について
ア 対比
(ア)甲2発明の「光学ガラス」の組成を質量%からカチオン%に換算すると、甲2発明の「光学ガラス」は、B^(3+):43.80カチオン%、La^(3+):19.60カチオン%、Gd^(3+):5.66カチオン%、Si^(4+):4.60カチオン%、Nb^(5+):6.37カチオン%、W^(6+):2.00カチオン%、Zr^(4+):3.04カチオン%、Zn^(2+):14.90カチオン%、Sb^(2+):0.03カチオン%の組成を有するものである。

(イ)これに基づいて、本件発明4の発明特定事項にのっとってNWF2に対するRE2の比[RE2/NWF2]、RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]、Nb^(5+)およびTa^(5+)の含有量の合計に対するNb^(5+)の含有量のカチオン比[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]、D2に対するRE2の比[RE2/D2]、NWF2およびRE2の合計量に対するL2の比[L1/(NWF1+RE1)]、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]を算出すると、NWF2=43.80+4.60+0=48.40、RE2=19.60+5.66+0+0=25.25、HR2=6.37+0+2.00+0=8.37、D2=(0+0+0)×6+14.90=14.90、L2=(10×0)+(8×0)+(4×0)+(4×14.90)+0+(2×0)+(2×0)+(2×0)+43.80+6.37+0+(4×2.00)+(4×0)+0-(2×4.60)-0-(2×3.04)-19.60-5.66-0-0=77.24であるので、
[RE2/NWF2]=25.25/48.40=0.522、
[HR2/RE2]=8.37/25.25=0.332、
[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]=6.38/(6.38+0)=1.00、
[RE2/D2]=25.25/14.90=1.695、
[L2/(NWF2+RE2)]=77.24/(48.40+25.25)=1.049、
[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]=[19.60/(19.60+5.66+0+0)]=0.772
であり、これらのうち[RE2/NWF2]=0.522、[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]=1.00、[RE2/D2]=1.695、[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]=0.772であることは、本件発明4において「[RE2/NWF2]が0.35以上」、「[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]が3/4以上」、「[RE2/D2]が0.90以上」、「[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下」であることと合致する。
また、甲2発明の「光学ガラス」の組成がGd^(3+):5.66カチオン%であることは、本件発明4において、「Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上であ」ることと合致する。
更に、甲2発明の「光学ガラス」のアッベ数(ν_(d))と屈折率(n_(d))が(1)式を満たすことは、前記(2-1)ア(ア)に記載のとおりである。

(イ)前記(ア)によれば、本件発明4と甲2発明とを対比した場合、
・相違点1’:本件発明4の「光学ガラス」は「[HR2/RE2]が0.31以下」である、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明の光学ガラスは[HR2/RE2]=0.332である点。
・相違点2’:本件発明4の「光学ガラス」は「[L2/(NWF2+RE2)]が1.05以上」である、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明の光学ガラスは[L2/(NWF2+RE2)]=1.049である点。
・相違点3’:本件発明4の「光学ガラス」は、「アッベ数νdが39.5以上45.0以下」、との発明特定事項を有するのに対して、甲2発明の「光学ガラス」は、「アッベ数νdが38.7である」点。
で相違し、その余の点で一致する。

イ 判断
(ア)まず、前記ア(イ)の相違点1’について検討すると、本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0224】
<HR2/RE2>
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、HR2は、高屈折率高分散化成分であるNb^(5+)、Ti^(4+)、W^(6+)およびBi^(3+)の各含有量をカチオン%で表示したときの合計含有量(HR2=Nb^(5+)+Ti^(4+)+W^(6+)+Bi^(3+))である。
【0225】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、RE2に対するHR2の割合:カチオン比[HR2/RE2]は0.33以下である。
【0226】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、カチオン比[HR2/RE2]の上限は、好ましくは0.32であり、さらには0.31、0.30、0.29、0.28、0.27、0.25の順により好ましい。また、カチオン比[HR2/RE2]の下限は、好ましくは0.04であり、さらには0.08、0.10、0.11、0.13、0.15、0.16の順により好ましい。
【0227】
所要の屈折率、アッベ数を実現し、精密プレス成形に好適な光学ガラスを提供する観点から、カチオン比[HR2/RE2]は上記範囲であることが好ましい。」
そして、前記記載によれば、本件発明4においては、所要の屈折率、アッベ数を実現し、精密プレス成形に好適な光学ガラスを提供する観点から、カチオン比[HR2/RE2]を好ましくは0.31以下の範囲とするものである。

(イ)ところが、前記(2-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲2発明において、RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]に着目して、[HR2/RE2]を0.31以下の範囲とする動機付けは存在しないし、このことは、甲第3号証の記載事項に左右されるものでもないから、甲2発明において、「光学ガラス」を、「[HR2/RE2]が0.31以下」である、との前記相違点1’に係る本件発明4の発明特定事項を有するものとすることを、甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易になし得るものではない。
したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明4を、甲2発明及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-4)本件発明5について
本件発明5は、「[HR2/RE2]が0.31以下」である、との発明特定事項を有するから、本件発明5と甲2発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記(2-3)ア(イ)の相違点1’の点で相違する。
そうすると、前記(2-3)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明5を、甲2発明及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-5)本件発明7、8について
本件発明7及び8は、いずれも、本件発明1?5のいずれかを引用するものであって、本件発明7と甲2’発明とを対比した場合、及び本件発明8と甲2”発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも、前記(2-1)ア(イ)の相違点1、(2-3)ア(イ)の相違点1’と同じ点で相違する。
そうすると、前記(2-1)イ(ウ)、(2-3)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明7を、甲2’発明及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないし、本件発明8を、甲2”発明及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

(2-6)申立人意見書について
ア 申立人は、本件発明の進歩性について、甲2発明において、失透傾向等を考慮してNb_(2)O_(5)からLa_(2)O_(3)に1.2%程度置換し、共にLa系ガラスにおけるネットワークフォーマーであるSiO_(2)からB_(2)O_(3)へ1.6%程度置換することは、甲第2号証の記載に基づいて当業者が適宜なし得る設計変更の範囲といえ、そうすることで、令和 3年 1月28日付け手続補正書による補正前の本件訂正請求により訂正された請求項1?8に係る発明の発明特定事項を全て満たす蓋然性が高いから、前記請求項1?8に係る発明は、甲2発明及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、前記請求項1?8に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している(申立人意見書12頁11行?19頁15行)。

イ そこで、前記アの主張について検討すると、前記(1)(1-1)ア(2b)によれば、甲2発明におけるSiO_(2)はガラス骨格を構成する成分であり、失透を抑制するとともに耐候性を向上させる効果があり、また、アッベ数を高める効果があるものであり、B_(2)O_(3)はガラス骨格を構成する成分であり、アッベ数を最も高める成分でもあるものである。
そして、このことからみれば、SiO_(2)とB_(2)O_(3)は共にガラス骨格を構成し、アッベ数を高める成分である点で共通するが、失透の抑制、耐候性の向上及びアッベ数を高める程度の点で、その効果が異なるものであり、これらは、甲2発明において等しい効果を有する成分として置換できるものではないし、SiO_(2)からB_(2)O_(3)へ置換するべき動機付けもみあたらない。
してみれば、仮に、甲2発明において、失透傾向等を考慮してNb_(2)O_(5)からLa_(2)O_(3)に1.2%程度置換することが、甲第2号証の記載に基づいて当業者が適宜なし得る設計変更の範囲といえるとしても、更に進んでSiO_(2)からB_(2)O_(3)へ1.6%程度置換する動機付けがあるとはいえず、そうすることが、甲第2号証の記載に基づいて当業者が適宜なし得る設計変更の範囲であるとはいえないから、本件発明1?5、7及び8は、甲2発明及び甲第2?3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、申立人の前記アの主張は採用できない。

(3)小括
したがって、本件発明1?5、7、8は甲第2号証に記載された発明及び甲第2?3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 特許異議申立理由についての判断
1 特許法第29条の2(拡大先願)について
前記第5の取消理由2は、前記第4の特許異議申立理由1(特許法第29条の2(拡大先願))と同旨であって、前記取消理由2は理由がないことは前記第6の2に記載のとおりであるから、前記特許異議申立理由1も理由がない。

2 特許法第29条第2項(進歩性)について
甲第2号証の実施例No.2に注目した場合、本件発明1?5、7、8は甲第2号証に記載された発明及び甲第2?3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことは、前記第6の3(3)に記載のとおりである。
そして、甲第2号証及び甲第3号証には、本件発明1?3、7、8の発明特定事項である「[RE1/NWF1]」、「[HR1/RE1]」、「[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]」、「[RE1/D1]」、「[L1/(NWF1+RE1)]」、「[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]」及び本件発明4、5、7、8の発明特定事項である「[RE2/NWF2]」、「[HR2/RE2]」、「[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]」、「[RE2/D2]、「[L2/(NWF2+RE2)]」、「[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]」を調節して、好ましい物性を有する光学ガラスとすることが記載も示唆もされていないのであるから、甲第2号証?甲第3号証の記載全体をみても、本件発明1?5、7、8は、甲第2号証に記載された発明及び甲第2?3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、前記第4の特許異議申立理由2も理由がない。

3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア 前記第4の特許異議申立理由3は請求項6に係るものであり、請求項6は本件訂正により削除されたため、前記特許異議申立理由3に係る特許異議申立ては対象となる特許が存在しないから、却下されるべきものである。

イ 申立人は、サポート要件について、新たに、令和 3年 1月28日付け手続補正書による補正前の本件訂正請求により訂正された請求項1?3に係る発明は、「Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上」である、との発明特定事項を有し、同請求項4?6に係る発明は、「Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上」である、との発明特定事項を有するが、本件特許明細書の実施例におけるGd_(2)O_(3)の含有量の下限値は12.64質量%、5.70カチオン%(試料No.9)であり、前記請求項1?6に係る発明の下限値と大きなかい離があり、Gd_(2)O_(3)の含有量を下限値付近にするには、La_(2)O_(3)の含有量が規制されているため、Gd_(2)O_(3)からY_(2)O_(3)またはYb_(2)O_(3)へ多量に置換しなければならないが、Y_(2)O_(3)は熱的安定性に関与する成分であり、Yb_(2)O_(3)は比重増加や近赤外域での吸収に影響し、コストが増大するため上限が規制されており、Gd_(2)O_(3)からY_(2)O_(3)またはYb_(2)O_(3)へ多量に置換した場合に本件発明の課題を満たす組成が存在する蓋然性が高いとまではいえないから、令和 3年 1月28日付け手続補正書による補正前の本件訂正請求により訂正された請求項1?8に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである旨を主張している(申立人意見書19頁16行?20頁4行)。

ウ そこで、前記イの新たな主張について検討すると、本件特許明細書には以下(a)?(c)の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は、製造コストが低減され、熔融性および熱的安定性に優れた高屈折率低分散の光学ガラスに関する。また、本発明は、係る光学ガラスからなる光学素子に関する。

【0003】
一方、光学系の設計において、屈折率が高く、アッベ数も大きい光学ガラスは、色収差を補正し、光学系を高機能化、コンパクト化する上で利用価値が高い。

【0006】
その反面、この種のガラスは、熱的安定性を維持しつつガラス転移温度Tgを低下させるため、特許文献1、2、6に記載されているように、多量の酸化タンタルの導入を必要としてきた。しかし、酸化タンタルは希少価値が高く、ガラス原料として安定的な供給を得ることが容易ではない。また、酸化タンタルは価格が極めて高く、ガラスの価格を上昇させる原因になっている。

【0008】
また、光学ガラスには熔融性の改善が要求される。ガラスの熔融性を改善することにより、透過率および清澄性に対して好ましい改善効果が期待できる。具体的には、以下のとおりである。

【0021】
以上説明したように、熔融性を改善することにより、ガラスの透過率だけでなく清澄性をも改善できる。また、熔融性が改善されることにより、ガラスの熔融によって消費するエネルギーを低減でき、熔融時間も短縮することができるため、生産コストの低減や、生産性の向上をも期待できる。このように、熔融性を改善することは非常に有益といえる。

【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、原材料費等の生産コストを低減でき、熔融性および熱的安定性に優れ、また、低温軟化性を有する高屈折率低分散の光学ガラスを提供することを目的とする。さらに、本発明は、係る光学ガラスからなる光学素子および光学ガラス素材を提供することを目的とする。」

(b)「【0054】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、RE1は、高屈折率低分散化成分であるLa_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、…の各含有量を質量%で表示したときの各数値を、それぞれの酸化物、フッ化物の分子量で割った値に、各分子中に含まれるカチオンの個数を乗じた値の合計値…である。…」

(c)「【0114】
Gd_(2)O_(3)は、前述の働きに加え、ガラスの化学的耐久性を改善する働きも有する。さらに、Gd_(2)O_(3)は、ガラス中においてLa_(2)O_(3)と共存することにより、ガラスの熱的安定性を高める働きも有する。したがって、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性を改善する観点から、Gd_(2)O_(3)の含有量の下限は上記範囲であることが好ましい。また、ガラスの熱的安定性を改善する観点から、Gd_(2)O_(3)の含有量の上限は上記範囲であることが好ましい。

【0116】
Y_(2)O_(3)は、前述の働きに加え、ガラスの化学的耐久性を改善する働きも有する。さらに、Y_(2)O_(3)は、ガラス中においてLa_(2)O_(3)と共存することにより、ガラスの熱的安定性を高める働きも有する。したがって、ガラスの熱的安定性を改善する観点から、Y_(2)O_(3)の含有量は上記範囲であることが好ましい。

【0118】
Yb_(2)O_(3)は、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)およびY_(2)O_(3)と同様に、アッベ数を大幅に低下させることなく、屈折率を高める働きを有するガラス成分である。しかし、Yb_(2)O_(3)は、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)と比べて分子量が大きいため、ガラスの比重を増大させる。…
【0119】
また、Yb_(2)O_(3)は近赤外域に吸収を有する。そのため、Yb_(2)O_(3)の含有量が多いガラスは、近赤外域における光吸収が強く、監視カメラ、暗視カメラなどで近赤外域における高い透過率が求められる用途には好ましくない。…」

エ 前記ウ(a)によれば、本件発明は、製造コストが低減され、熔融性および熱的安定性に優れた高屈折率低分散の光学ガラスに関するものであって、熱的安定性を維持しつつガラス転移温度を低下させるために価格が極めて高い酸化タンタルを多量に導入すると、ガラスの価格が上昇する、また、光学ガラスには熔融性の改善が要求される、といった課題(以下、「本件課題」という。)を解決するものであり、比重増加及び近赤外域での吸収を課題とするものではない。
すると、仮に、Gd_(2)O_(3)からYb_(2)O_(3)へ多量に置換したとき、ガラスの比重を増大させ、また、近赤外域における高い透過率が求められる用途には好ましくないものとなるとしても、そのことにより、本件課題を解決できなくなるものではない。
また、仮に、Gd_(2)O_(3)からY_(2)O_(3)またはYb_(2)O_(3)へ多量に置換したとしても、そのような置換は酸化タンタルを多量に導入するものではなく、置換後の光学ガラスは、酸化タンタルを多量に導入することでガラスの価格が上昇する、という本件課題を解決できるものである。
更に、前記ウ(b)、(c)によれば、Y_(2)O_(3)は、Gd_(2)O_(3)と同様に、高屈折率低分散化成分であって、ガラスの化学的耐久性を改善する働きを有し、更に、ガラス中においてLa_(2)O_(3)と共存することにより、ガラスの熱的安定性を高める働きも有するものであり、Yb_(2)O_(3)は、Gd_(2)O_(3)と同様に、高屈折率低分散化成分であるから、仮に、Gd_(2)O_(3)からY_(2)O_(3)またはYb_(2)O_(3)へ多量に置換したとしても、熔融性および熱的安定性に優れた高屈折率低分散の光学ガラス、という本件発明の特性を損なうものではない。
これらのことからみれば、本件特許明細書の実施例においてGd_(2)O_(3)からY_(2)O_(3)またはYb_(2)O_(3)へ多量に置換した場合であっても、当業者が、高い蓋然性をもって本件課題を解決できると認識できるものであるので、申立人の前記イの主張は採用できない。

オ したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するというべきである。

第8 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1?5、7及び8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5、7及び8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項6は訂正により削除されたため、請求項6に係る特許に対する特許異議の申立てについては対象となる特許が存在しないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.05以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd・・・(1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。
【請求項2】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.05以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
L1が0.95以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd・・・(1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。
【請求項3】
NWF1に対するRE1の比[RE1/NWF1]が0.35以上、
RE1に対するHR1の比[HR1/RE1]が0.31以下、
Nb_(2)O_(5)およびTa_(2)O_(5)の含有量の合計に対するNb_(2)O_(5)の含有量の質量比[Nb_(2)O_(5)/(Nb_(2)O_(5)+Ta_(2)O_(5))]が2/3以上、
D1に対するRE1の比[RE1/D1]が0.90以上、
NWF1およびRE1の合計量に対するL1の比[L1/(NWF1+RE1)]が1.08以上であり、
Gd_(2)O_(3)の含有量が1質量%以上であり、
La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)およびYb_(2)O_(3)の合計含有量[La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3)]に対するLa_(2)O_(3)の含有量の質量比[La_(2)O_(3)/(La_(2)O_(3)+Gd_(2)O_(3)+Y_(2)O_(3)+Yb_(2)O_(3))]が0.80以下であり、
L1が0.95以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラス:
nd≧2.235-0.01×νd・・・(1)
但し、
M(B_(2)O_(3))、M(SiO_(2))、M(Al_(2)O_(3))、M(La_(2)O_(3))、M(Gd_(2)O_(3))、M(Y_(2)O_(3))、M(Yb_(2)O_(3))、M(LaF_(3))、M(GdF_(3))、M(YF_(3))、M(YbF_(3))、M(ZnO)、M(Li_(2)O)、M(Na_(2)O)、M(K_(2)O)、M(ZrO_(2))、M(Nb_(2)O_(5))、M(TiO_(2))、M(WO_(3))、M(Ta_(2)O_(5))、M(Bi_(2)O_(3))、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)を、それぞれ、B_(2)O_(3)、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Gd_(2)O_(3)、Y_(2)O_(3)、Yb_(2)O_(3)、LaF_(3)、GdF_(3)、YF_(3)、YbF_(3)、ZnO、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)、TiO_(2)、WO_(3)、Ta_(2)O_(5)、Bi_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOの分子量としたとき、
NWF1=[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[SiO_(2)/M(SiO_(2))]+[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]
RE1=[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]+[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]+[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]+[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))])+[LaF_(3)/M(LaF_(3))]+[GdF_(3)/M(GdF_(3))]+[YF_(3)/M(YF_(3))]+[YbF_(3)/M(YbF_(3))]
HR1=[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[WO_(3)/M(WO_(3))]+[2×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]
D1={[2×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[2×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[2×K_(2)O/M(K_(2)O)]}×3+[ZnO/M(ZnO)]
L1=[20×Li_(2)O/M(Li_(2)O)]+[16×Na_(2)O/M(Na_(2)O)]+[8×K_(2)O)/M(K_(2)O)]+[4×ZnO/M(ZnO)]+[MgO/M(MgO)]+[2×CaO/M(CaO)]+[2×SrO/M(SrO)]+[2×BaO/M(BaO)]+[2×B_(2)O_(3)/M(B_(2)O_(3))]+[2×Nb_(2)O_(5)/M(Nb_(2)O_(5))]+[TiO_(2)/M(TiO_(2))]+[4×WO_(3)/M(WO_(3))]+[8×Bi_(2)O_(3)/M(Bi_(2)O_(3))]+[2×Ta_(2)O_(5))/M(Ta_(2)O_(5))]-[2×SiO_(2)/M(SiO_(2))]-[2×Al_(2)O_(3)/M(Al_(2)O_(3))]-[2×ZrO_(2)/M(ZrO_(2))]-[2×La_(2)O_(3)/M(La_(2)O_(3))]-[2×Gd_(2)O_(3)/M(Gd_(2)O_(3))]-[2×Y_(2)O_(3)/M(Y_(2)O_(3))]-[2×Yb_(2)O_(3)/M(Yb_(2)O_(3))]-[LaF_(3)/M(LaF_(3))]-[GdF_(3)/M(GdF_(3))]-[YF_(3)/M(YF_(3))]-[YbF_(3)/M(YbF_(3))]であり、上記各ガラス成分の含有量は質量%表示による値である。
【請求項4】
NWF2に対するRE2の比[RE2/NWF2]が0.35以上、
RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]が0.31以下、
Nb^(5+)およびTa^(5+)の含有量の合計に対するNb^(5+)の含有量のカチオン比[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]が3/4以上、
D2に対するRE2の比[RE2/D2]が0.90以上、
NWF2およびRE2の合計に対するL2の比[L2/(NWF2+RE2)]が1.05以上、
Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上であり、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下である酸化物ガラスであり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラスである:
nd≧2.235-0.01×νd・・・(1)
但し、
NWF2は、B^(3+)、Si^(4+)およびAl^(3+)の合計含有量、
RE2は、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量、
HR2は、Nb^(5+)、Ti^(4+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量、
D2=(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))×6+Zn^(2+)、
L2=(10×Li^(+))+(8×Na^(+))+(4×K^(+))+(4×Zn^(+))+Mg^(2+)+(2×Ca^(2+))+(2×Sr^(2+))+(2×Ba^(2+))+B^(3+)+Nb^(5+)+Ti^(4+)+4×W^(6+)+(4×Bi^(3+))+Ta^(5+)-(2×Si^(4+))-Al^(3+)-(2×Zr^(4+))-La^(3+)-Gd^(3+)-Y^(3+)-Yb^(3+)、
であり、上記各ガラス成分の含有量はカチオン%表示による値である。
【請求項5】
NWF2に対するRE2の比[RE2/NWF2]が0.35以上、
RE2に対するHR2の比[HR2/RE2]が0.31以下、
Nb^(5+)およびTa^(5+)の含有量の合計に対するNb^(5+)の含有量のカチオン比[Nb^(5+)/(Nb^(5+)+Ta^(5+))]が3/4以上、
D2に対するRE2の比[RE2/D2]が0.90以上、
NWF2およびRE2の合計に対するL2の比[L2/(NWF2+RE2)]が1.05以上、
Gd^(3+)の含有量が1カチオン%以上であり、
La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量[La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+)]に対するLa^(3+)の含有量のカチオン比[La^(3+)/(La^(3+)+Gd^(3+)+Y^(3+)+Yb^(3+))]が0.80以下である酸化物ガラスであり、
L2が82.12以上であり、
アッベ数νdが39.5以上45.0以下、前記アッベ数νdと、屈折率ndとが下記(1)式を満たす光学ガラスである:
nd≧2.235-0.01×νd・・・(1)
但し、
NWF2は、B^(3+)、Si^(4+)およびAl^(3+)の合計含有量、
RE2は、La^(3+)、Gd^(3+)、Y^(3+)およびYb^(3+)の合計含有量、
HR2は、Nb^(5+)、Ti^(4+)、W^(6+)およびBi^(3+)の合計含有量、
D2=(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))×6+Zn^(2+)、
L2=(10×Li^(+))+(8×Na^(+))+(4×K^(+))+(4×Zn^(+))+Mg^(2+)+(2×Ca^(2+))+(2×Sr^(2+))+(2×Ba^(2+))+B^(3+)+Nb^(5+)+Ti^(4+)+4×W^(6+)+(4×Bi^(3+))+Ta^(5+)-(2×Si^(4+))-Al^(3+)-(2×Zr^(4+))-La^(3+)-Gd^(3+)-Y^(3+)-Yb^(3+)、
であり、上記各ガラス成分の含有量はカチオン%表示による値である。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。
【請求項8】
請求項1?5のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-09 
出願番号 特願2015-53823(P2015-53823)
審決分類 P 1 651・ 857- YAA (C03C)
P 1 651・ 851- YAA (C03C)
P 1 651・ 121- YAA (C03C)
P 1 651・ 854- YAA (C03C)
P 1 651・ 161- YAA (C03C)
P 1 651・ 537- YAA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松本 瞳宮崎 大輔  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 金 公彦
岡田 隆介
登録日 2019-08-30 
登録番号 特許第6576657号(P6576657)
権利者 HOYA株式会社
発明の名称 光学ガラスおよび光学素子  
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人  
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人  

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