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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 C08L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08L |
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管理番号 | 1374890 |
異議申立番号 | 異議2020-700346 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-05-19 |
確定日 | 2021-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6607182号発明「ホットメルト組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6607182号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6607182号の請求項3及び請求項4に係る特許に対する申立を却下する。 特許第6607182号の請求項1、2、5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6607182号(請求項の数5。以下、「本件特許」という。)は、平成28年12月27日を出願日とする特許出願(特願2016-253672号)に係るものであって、令和元年11月1日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和元年11月20日である。)。 その後、令和2年5月19日に、本件特許の請求項1?5に係る特許に対して、特許異議申立人である星正美(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 (1)特許異議申立の経緯 令和2年 5月19日 特許異議申立書 同年 7月30日付け 取消理由通知書 同年10月12日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年10月29日付け 通知書(申立人あて) 同年12月 4日 意見書(申立人) (2)証拠方法 ア 申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 (ア)特許異議申立書に添付した証拠 ・甲第1号証:特開2017-214479号公報 ・甲第2号証:特開2017-186527号公報 ・甲第3号証:特開2011-190287号公報 ・甲第4号証:「石油系可塑剤および展延剤の分類(ロスラー法)とその技術的特徴について」「日本ゴム協会誌」、p. 538-552、第 7 号、第33巻、1960 年) ・甲第5号証:特表2009-513781号公報 ・甲第6号証:特開2000-10357号公報 ・甲第7号証:特開2011-153227号公報 ・甲第8号証:特開2012-246400号公報 ・甲第9号証:特開2011-80021号公報 ・甲第10号証:特開2012-17392号公報 ・甲第11号証:特開2016-60758号公報 ・甲第12号証:特開2011-162747号公報 イ 申立人が令和2年12月4日に提出した意見書添付した証拠方法は以下のとおりである。 ・参考資料1:相田博ら、「ポリスチレン標準試料のGPC共同測定とその精度」、高分子論文集、vol.48、No.8、pp.507-515、1991年8月 第2 訂正の適否についての判断 令和2年10月12日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。 (以下、訂正事項をまとめて「本件訂正」という。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。) 1 訂正の内容 (1)特許請求の範囲の訂正 ア 訂正事項1 訂正前の請求項1の 「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、 粘着付与剤と、 重量平均分子量が1,000以上のパラフィンオイル1と、 重量平均分子量が1,000未満のパラフィンオイル2と、を含有し、 前記粘着付与剤が、芳香族系粘着付与剤を含み、 前記粘着付与剤の含有量が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上である、ホットメルト組成物。」 とあるのを 「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、 粘着付与剤と、 重量平均分子量が1500?3000以上のパラフィンオイル1と、 重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2と、を含有し、 前記粘着付与剤が、芳香族系粘着付与剤を含み、 前記粘着付与剤の含有量が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上であり、 前記パラフィンオイル2に対する前記パラフィンオイル1の質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5であり、 前記パラフィンオイル1及び前記パラフィンオイル2の含有量の合計が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部である、 ホットメルト組成物。」 に訂正する。 イ 訂正事項2 訂正前の請求項3を削除する。 ウ 訂正事項3 訂正前の請求項4を削除する。 エ 訂正事項4 訂正前の請求項5の「自動車ランプに使用される、請求項1?4のいずれか1項に記載のホットメルト組成物。」とあるのを 「自動車ランプに使用される、請求項1又は2に記載のホットメルト組成物。」 に訂正する。 (2)一群の請求項 訂正事項1?4に係る訂正前の請求項1?5について、請求項2?5はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。 2 判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1における「パラフィンオイル1」の「重量平均分子量」について「1,000以上」とあるのを「1500?3000」と限定し、「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」について「1,000未満」とあるのを「900以下」と限定し、「ホットメルト組成物」中の「パラフィンオイル2」に対する「パラフィンオイル1」の「質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)」について「5/95?95/5」と特定するとともに、「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の含有量の合計について「スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部」と限定するものである。 したがって、この訂正は、訂正前の「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」について限定し、「ホットメルト組成物」中の「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の配合量について限定するものであり、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を同一にするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正前の請求項1における「パラフィンオイル1」の「重量平均分子量」について「1,000以上」とあるのを「1500?3000」と限定する訂正については、本件特許明細書等の【0020】に「上記パラフィンオイル1の重量平均分子量は、1,000?3,000とすることができる」と記載され、段落【0033】、【0038】、【0039】の実施例1?3で用いられている「パラフィンオイル1-1」は「PW-380」であり「Mw1500」、すなわち「重量平均分子量」が「1500」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。 訂正前の請求項1における「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」について「1,000未満」とあるのを「900以下」と限定する訂正については、本件明細書の段落【0023】に「本発明において、上記パラフィンオイル2の重量平均分子量は、1,000未満である」と記載され、段落【0033】、【0038】、【0039】の実施例1?3で用いられている「パラフィンオイル2-1」は「PW-90」であり「Mw900」、すなわち「重量平均分子量」が「900」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。 また、「ホットメルト組成物」中の「パラフィンオイル2」に対する「パラフィンオイル1」の「質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)」について「5/95?95/5」と特定する訂正、及び、「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の含有量の合計について「スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部」と特定する訂正は、それぞれ訂正前の請求項3及び請求項4を根拠とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。 さらに、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (2)訂正事項2、3について ア 訂正の目的 訂正事項2、3は、それぞれ請求項3、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項2、3は、請求項を削除するものであるから、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (3)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、上記の訂正事項2及び3による請求項の削除に合わせて,引用請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項4は,本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1?4による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 特許請求の範囲の記載 上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6607182号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?5の以下のとおりのものである(以下、請求項1?5に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件訂正後の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件訂正後の特許明細書等」という。本件の願書に添付した明細書については、訂正の対象ではなく、本件訂正により訂正されていないので、本件訂正の前後にかかわらず「本件明細書」という。)。 「【請求項1】 重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、 粘着付与剤と、 重量平均分子量が1500?3000以上のパラフィンオイル1と、 重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2と、を含有し、 前記粘着付与剤が、芳香族系粘着付与剤を含み、 前記粘着付与剤の含有量が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上であり、 前記パラフィンオイル2に対する前記パラフィンオイル1の質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5であり、 前記パラフィンオイル1及び前記パラフィンオイル2の含有量の合計が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部である、 ホットメルト組成物。 【請求項2】 前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、SEEPSである、請求項1に記載のホットメルト組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 自動車ランプに使用される、請求項1又は2に記載のホットメルト組成物。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 取消理由通知の概要 当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)取消理由A(実施可能要件) 本件訂正前の発明の詳細な説明は、下記ア、イの点で、当業者が本件訂正前の請求項1?5に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本件訂正前の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 ア 本件訂正前の請求項1に係る発明の「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」の測定方法について、本件明細書の段落【0013】には「スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である」とのみしか記載されていない。 一方、本件明細書の段落【0033】、【0038】、【0039】の実施例1で用いられている「スチレン系熱可塑性エラストマー1」は「セプトン4099」で「SEEPS(Mw48万)」と「重量平均分子量」が「48万」と記載されているところ、甲第3号証、甲第7号証、甲第8?9号証、甲第11号証には、「セプトン4099」について異なる「重量平均分子量」が記載されていることから、本件訂正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」をどのようにして測定すれば再現可能に安定した値を得ることができるのか(より具体的には、例えば、「セプトン4099、SEEPS(Mw48万)、クラレ」の「重量平均分子量」を、どのようにして測定すれば再現可能に安定的に「48万」の「重量平均分子量」の値として得ることができるのか)、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとはいえない。 本件訂正前の請求項1を引用する請求項2?5についても同様である。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?5に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 イ 本件訂正前の請求項1に係る発明の「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」の測定方法について、本件明細書の段落【0021】には「パラフィンオイル1、2の重量平均分子量は、それぞれ、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。また、測定器としてカラム(Polymer Laboratories製MIXED-E)を使用した」とのみしか記載されていない。 一方、本件明細書の段落【0033】、【0038】、【0039】の実施例1で用いられている「パラフィンオイル1」について、「パラフィンオイル1-1」は「PW-380」であり「Mw1500」、すなわち「重量平均分子量」が「1500」と記載されているところ、甲第8?10号証、甲第11号証、甲第12号証には、「PW-380」について異なる「重量平均分子量」が記載されている。 また、本件明細書の段落【0033】、【0038】、【0039】の実施例1で用いられている「パラフィンオイル2」について、「パラフィンオイル2-1」は「PW-90」であり「Mw900」、すなわち「重量平均分子量」が「900」と記載されているところ、甲第9?10号証、甲第11号証、甲第12号証には、「PW-90」について異なる「重量平均分子量」が記載されている。 そうすると、本件訂正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」をどのようにして測定すれば再現可能に安定した値を得ることができるのか、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとはいえない。 本件訂正前の請求項1を引用する請求項2?5についても同様である。 よって、発明の詳細な説明には、当業者が本件訂正前の請求項1?5に係る発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されているはいえない。 (2)取消理由B(サポート要件) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?5の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で、本件訂正前の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 本件訂正前の請求項1に係る発明は、「・・・重量平均分子量が1,000以上のパラフィンオイル1と、重量平均分子量が1,000未満のパラフィンオイル2と、を含有し、・・・ホットメルト組成物」と、「パラフィンオイル1」と、「パラフィンオイル2」の両者を含有し、両者の区別を「重量平均分子量」が「1,000以上」であるか「1,000未満」であるかで区別することを発明特定事項として含む発明である。 本件訂正前の請求項1に係る発明の課題は、本件明細書の段落【0004】の記載からみて「耐揮発性、作業性、耐流動性(具体的には例えば、得られる接着剤が高温条件下で軟化又は変形しにくいこと。以下同様)、及び、密着性に優れるホットメルト組成物を提供する」ことであるといえる。 しかしながら、例えば、本件明細書の上記実施例1?3において、「パラフィンオイル1」として「重量平均分子量」が「1000」のものを用いた場合でも同様の効果を奏するのか、また、申立人が特許異議申立書の第31?32頁の「(4.3.3)特許法第36条第6項第1号」で主張する、「パラフィンオイル1」として「重量平均分子量」がその下限の「1000」のものを、「パラフィンオイル2」としてそのほぼ上限の「重量平均分子量」が「999」のものを用いた場合にも同様の効果を奏するのか、さらには、「重量平均分子量」が「1000」の「パラフィンオイル」を単独で用いた場合や「999」の「パラフィンオイル」を単独で用いた場合に比べて有利な効果を奏するのかについて、技術常識からみて、本件明細書の比較例1?2と比較した実施例1?3と同様の効果を奏するとは認められない。 そうすると、本件訂正前の請求項1に係る発明は、上記課題に照らして、技術常識を参酌しても、実施例・比較例において十分に裏付けられているとはいえず、当業者であっても上記課題を解決できると認識できるともいえないから、本件明細書の詳細な説明に記載されているとは認められない。また、本件訂正前の請求項1に係る発明を引用する請求項2?5も同様である。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明はサポートされているとはいえない。 (3)取消理由C(進歩性) 本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第3号証に記載された発明及び甲第7?10、12号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 2 特許異議申立理由の概要 申立人が特許異議申立書でした申立理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)申立理由1(拡大先願) 本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって,本件特許の出願後に出願公開がされた甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と、甲第4?6号証に記載の技術的事項を参酌すると、同一であり,しかも,本件特許の出願の発明者がその出願の日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができないものである(以下「申立理由1ア」という。)。 また、本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって,本件特許の出願後に出願公開がされた甲第2号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許の出願の発明者がその出願の日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,また本件特許の出願時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができないものである(以下「申立理由1イ」という。)。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(進歩性)(取消理由Cと同旨。) 本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第3号証に記載された発明及び甲第8?10号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1?3に係る発明の特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件)(取消理由Bと同旨。) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?5の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、本件訂正前の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 申立理由3の具体的な理由は、上記取消理由Bと同旨である。 (4)申立理由4(実施可能要件)(取消理由Aと同旨。) 本件訂正前の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正前の請求項1?5に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本件訂正前の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 申立理由4の具体的な理由は、上記取消理由Aと同旨である。 (5)申立理由5(明確性) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?5の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 GPCによる重量平均分子量の測定値は測定機器、測定条件により誤差が生じることは明らかであるにもかかわらず、本件明細書には「スチレン系熱可塑性エラストマー」及び「パラフィンオイル」に関して重量平均分子量の測定機器および測定条件が詳細に記載されていない。 そうすると、具体的な「スチレン系熱可塑性エラストマー」及び「パラフィンオイル」が、訂正前の請求項1に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できないことになるから、当業者は訂正前の請求項1に記載された発明を明確に把握することはできない。 したがって、訂正前の請求項1に記載された発明及び請求項1を引用する請求項2?5に記載された発明は明確でない。 第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項 1 本件明細書に記載された事項 本件明細書には、以下の事項が記載されている。 (本a)「【技術分野】 【0001】 本発明はホットメルト組成物に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にしてホットメルト組成物を調製しこれを評価したところ、このような組成物には、揮発性がある、粘度が高く作業性が低い、得られる接着剤が流動若しくは軟化する、又は、基材に対する密着性が低いということが明らかとなった。組成物に揮発性がある場合、自動車灯具のレンズ内において曇の原因となる。 そこで、本発明は、耐揮発性、作業性、耐流動性(具体的には例えば、得られる接着剤が高温条件下において軟化又は変形しにくいこと。以下同様)、及び、密着性に優れる、ホットメルト組成物を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、重量平均分子量が所定の範囲のスチレン系熱可塑性エラストマーと、粘着付与剤とに対して、重量平均分子量の範囲が異なる所定のパラフィンオイル1、2を組合せて使用することによって、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。 ・・・ 【発明の効果】 【0007】 本発明のホットメルト組成物は、耐揮発性、作業性、耐流動性、及び、密着性に優れる。」 (本b)「【0010】 <スチレン系熱可塑性エラストマー> 本発明の組成物は、重量平均分子量(Mw)が30万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する。 【0011】 上記スチレン系熱可塑性エラストマーは、スチレン又はスチレン誘導体によって形成される繰り返し単位を有する、熱可塑性のポリマーであれば特に制限されない。 上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。 【0012】 なかでも、本発明の効果により優れるという観点から、SEBS、SEEPSが好ましく、SEEPSがより好ましい。 【0013】 <スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量> 本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は30万以上である。 スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、本発明の効果により優れ、耐熱性や機械特性に優れるという観点から、30万?60万が好ましく、45万?55万がより好ましい。 本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。 【0014】 スチレン系熱可塑性エラストマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。 スチレン系熱可塑性エラストマーはその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。」 (本c)「【0015】 <粘着付与剤> 本発明の組成物に含有される粘着付与剤は、ホットメルト性の組成物に粘着性を付与できるものであれば特に制限されない。 上記粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、芳香族系粘着付与剤、アタクチックポリプロピレン(APP)、アモルファスポリオレフィン(APAO)が挙げられる。 芳香族系粘着付与剤は、組成物に粘着性を付与することができ、芳香族炭化水素基を有する化合物を意味する。 アモルファスポリオレフィン(APAO)は、主鎖骨格がα-オレフィンから誘導される、アモルファス状の重合体を意味する。 【0016】 上記粘着付与剤は、本発明の効果(特に密着性)により優れ、耐熱性に優れるという観点から、芳香族系粘着付与剤を含むことが好ましい。 芳香族系粘着付与剤は、重合体が好ましい態様の1つとして挙げられる。 粘着付与剤としての芳香族系炭化水素基を有する重合体としては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体(例えば、4-メチル-α-メチル-スチレン)とインデンとの共重合体が挙げられる。 粘着付与剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。 粘着付与剤はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。 【0017】 なお、本発明において上記粘着付与剤はスチレン系熱可塑性エラストマー及びパラフィンオイルを含まない。 【0018】 (粘着付与剤の含有量) 上記粘着付与剤の含有量は、本発明の効果により優れ、特に熱時での密着性に優れるという観点から、上記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましく、200?400質量部がより好ましい。」 (本d)「【0019】 <パラフィンオイル1> 本発明の組成物は、重量平均分子量(Mw)が1,000以上のパラフィンオイル1を含有する。 本発明において、パラフィンオイル(パラフィンオイルはパラフィンオイル1、2を含む。以下同様)は、石油留分または残油を水素添加し、精製したもの、または、分解により得られる潤滑油基油を意味する。 パラフィンオイルは、例えば、式C_(n)H_(2n+2)が好ましい態様の1つとして挙げられる。なお、本発明において、上記nはパラフィンオイル1、2の重量平均分子量にそれぞれ応じた値とできる。 また、パラフィンオイルは、例えば、室温条件下で液体であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。 【0020】 本発明において、上記パラフィンオイル1の重量平均分子量は、1,000以上である。 上記パラフィンオイル1の重量平均分子量は、1,000?3,000とすることができる。 【0021】 本発明において、パラフィンオイル1、2の重量平均分子量は、それぞれ、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。また、測定器としてカラム(Polymer Laboratories製MIXED-E)を使用した。 【0022】 <パラフィンオイル2> 本発明の組成物は、重量平均分子量(Mw)が1,000未満のパラフィンオイル2を含有する。 【0023】 本発明において、上記パラフィンオイル2の重量平均分子量は、1,000未満である。 上記パラフィンオイル2の重量平均分子量は、500?1,000未満とすることができる。 【0024】 (パラフィンオイル1/パラフィンオイル2) 上記パラフィンオイル2に対する上記パラフィンオイル1の質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)は、5/95?95/5が好ましく、90/10?50/50がより好ましい。 【0025】 (パラフィンオイル1、2の含有量の合計) 上記パラフィンオイル1及び上記パラフィンオイル2の含有量の合計は、本発明の効果により優れ、耐熱性に優れるという観点から、上記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3000質量部が好ましく、500?1500質量部がより好ましい。」 (本e)「【0026】 本発明の組成物は必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー以外のゴム、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、パラフィンオイル以外の軟化剤又は可塑剤、補強剤が挙げられる。添加剤の量は適宜決定することができる。」 (本f)「【実施例】 【0033】 以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。 <組成物の製造> 下記表1に示す、スチレン系熱可塑性エラストマー1?4のいずれかとパラフィンオイル2-1又はパラフィンオイル1-1とを同表に示す量(質量部)で用いて、これらを1L双腕型ニーダー(日本スピンドル社製)に仕込み、220℃の条件下で40分間攪拌し、混合物を得た。次に、上記混合物に同表に示す粘着付与剤1,2及び老防(老化防止剤)を添加し、これらをさらに1時間混練し、ホットメルト組成物を得た。 【0034】 <評価> 上記のとおり製造された組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。 (作業性) 上記のとおり製造した組成物を220℃の条件下で30分間溶融した後、BF型粘度計(ブルックフィールド型粘度計)を用い、No.29号ローターを用いて回転させ、5rpmにおいて、JIS K 6833-1に準じて、上記組成物の粘度を測定し、評価を行った。 粘度が10万mPa・s以下であった場合を「◎」(作業性に非常に優れる)、10万mPa・sを超え20万mPa・s以下であった場合を「○」(作業性にやや優れる)、20万mPa・sを超えた場合を「×」(作業性が悪い)と評価した。 【0035】 (耐流動性) 上記のとおり製造された組成物を20℃の条件下で冷却し、上記組成物からJISダンベル2号形(JIS K 6251)(厚さ2mm)の試験片を採取した。次に、上記試験片を130℃のオーブン内に置く加熱試験を10日間行った。加熱試験後、試験片の形状を目視で観察した。 試験片が加熱試験前後で形状を保持していた場合を「○」(耐流動性に優れる)、加熱試験前後の試験片が形状を保持できず軟化又は変形していたものを「×」(耐流動性が悪い)と評価した。 【0036】 (密着性) 上記のとおり製造された組成物を220℃に加熱し、溶融し、PP板(ポリプロピレン製、縦25mm×横75mm×厚さ3mm)にホットショットガンにて塗布した。塗布後直ちにPP板に、PC板(ポリカーボネート製、縦25mm×横75mm×厚さ3mm)を十字になるように重ね、接着面積25mm×25mm=6.25cm2で1mm厚まで組成物を圧着し、20℃、50%RHの条件下に1日間置いて養生させ、試験片を得た。 得られた試験片について、引張試験機を用いて、20℃、10mm/minの引張速度の条件下で引張試験を行い、上記試験片の剥離強度及び破断時伸びを測定した。 各試験片について測定された、最大の剥離強度を最大強度(N)、破断時伸びを最大伸び(mm)として表1に結果を示す。 【0037】 (耐揮発性) 試験管に上記のとおり製造された組成物を3g入れ、試験管の上部をガラス板で密閉した。120℃のオイルバスに試験管を浸して加熱した。 加熱開始から24時間後、上記ガラス板の内側表面(試験管と密閉空間を構成した部分)の汚れの有無を目視で確認した。 【0038】 【表1】 【0039】 表1に示した各成分の詳細は以下のとおりである。 【表2】 【0040】 表1に示す結果から明らかなように、所定のパラフィンオイル1を含有しない比較例1は、耐揮発性が悪かった。 所定のパラフィンオイル2を含有しない比較例2は、高粘度となり作業性が悪かった。 スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が所定の範囲を外れる比較例3は耐流動性及び密着性が悪かった。 【0041】 これに対して、本発明の組成物は耐揮発性、作業性、耐流動性、及び、密着性に優れた。」 2 各甲号証に記載された事項 (1)甲第1号証に記載された事項 甲第1号証(以下「先願明細書1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (先1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A1)スチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)と、 (B1)アニリン点が135℃以上の炭化水素系オイルと を含むホットメルト組成物。 【請求項2】 さらに、(A2)スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)を含む、請求項1に記載のホットメルト組成物。 【請求項3】 (A1)スチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)100重量部に対する、(A2)スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)の含有量が5?100重量部である、請求項2に記載のホットメルト組成物。 【請求項4】 さらに、(C1)軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂を含む、請求項1?3のいずれかに記載のホットメルト組成物。 【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載のホットメルト組成物を介し、レンズ部とハウジング部とが接合された灯具。」 (先1b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、ホットメルト組成物、特に高温での接着剤の変形を防止し、灯具解体時には容易に離形できるホットメルト組成物に関する。 【背景技術】 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1に記載されているホットメルト接着剤組成物は、高温での接着剤の変形を完全に防止することができなかった。また、特許文献2に記載されているホットメルト組成物は、経時試験後の解体性が低く、高温での接着剤の変形を完全に防止することができなかった。 【0007】 したがって、灯具からの離形が可能で、高温でも変形し難いホットメルト接着剤の開発が急務であった。特に近年、灯具の長期間使用を考慮し、ホットメルト接着剤にも、長期間使用しても接着強度の経時的な上昇が小さく、灯具からの離形が容易であることが強く望まれていた。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ホットメルト組成物が、特定の熱可塑性ブロック共重合体と、アニリン点が高温の炭化水素系液状軟化剤とを含むことにより、高温で変形し難く、灯具等に対して接着力が十分でかつ離形が容易となることを見い出し、本発明を完成させるに至った。」 (先1c)「【0022】 <(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体> ・・・ 【0026】 「水素添加型ブロック共重合体」の水素添加された割合を、「水素添加率」で示すことができる。「水素添加型ブロック共重合体」の「水素添加率」とは、共役ジエン化合物に基づくブロックに含まれる全脂肪族二重結合を基準とし、その中で、水素添加されて飽和炭化水素結合に転換された二重結合の割合をいう。この「水素添加率」は、赤外分光光度 計及び核磁器共鳴装置等によって測定することができる。本発明に用いられる、スチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)の水素添加率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。 【0027】 (A)熱可塑性ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、50000?500000であることが好ましく、150000?400000であることがより好ましい。(A)熱可塑性ブロック共重合体の重量平均分子量が上記範囲内にあることにより、形態維持性と剪断接着力、解体性に優れる。なお、本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量を換算して求められる。 ・・・ 【0030】 (A1)SEEPSは、プロセスオイル等の液状軟化剤で膨潤され、ホットメルト組成物にゴム弾性の性質を付与し、高い耐熱性、密着性、およびシール剤としての強度を発現させることができる。ホットメルト組成物の塗布時、加温によって、SEEPSは熱可塑性樹脂としての流動性を発現する。SEEPSとして市販品として、クラレ社製のセプトン4033、セプトン4044、セプトン4055、セプトン4077、セプトン4099が挙げられる。 【0031】 本発明のホットメルト組成物において、(A)熱可塑性ブロック共重合体は、(A1)SEEPSに加えて、別の水素添加型ブロック共重合体である「(A2)スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)」を含むのが好ましい。 ・・・ 【0037】 ホットメルト組成物の総量に対する(A)熱可塑性ブロック共重合体の含有量は、3重量%以上が好ましく、4重量%?20重量%がより好ましく、4重量%?10重量%であることがさらに好ましい。(A)熱可塑性ブロック共重合体の含有量が3重量%以上であることにより、ホットメルト組成物が、耐熱性、密着性および強度に優れたものになる。また、20重量%以下であることにより、ホットメルト組成物のせん断接着力が高くなり過ぎず、解体しやすくなる。」 (先1d)「【0038】 <(B)炭化水素系液状軟化剤> (B)炭化水素系液状軟化剤(単に「成分(B)」とも記載する)は、ホットメルト組成物の溶融粘度調整、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合される。炭化水素系液状軟化剤は、炭素と水素を主体とし、室温(約20℃)で液状である。炭化水素系液状軟化剤は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい。炭化水素系液状軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系または芳香族系のプロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン及び液状ポリイソプレン等の液状樹脂、流動パラフィン、オレフィンプロセスオイルが挙げられる。市販品のプロセスオイルとして、出光興産社製のダイアナプロセスオイルが挙げられる。 【0039】 本発明において、(B)炭化水素系液状軟化剤は、「(B1)アニリン点が135℃以上の炭化水素系オイル」(単に「成分(B1)」とも記載する)を含む。成分(B1)は、通常のホットメルト組成物に汎用されているオイルに比べてアニリン点が高いため、ホットメルト組成物の溶融粘度が高くなる。これにより、本発明のホットメルト組成物は、高温での形態維持が可能となり、変形が抑制され、優れた形態維持性を実現できる。成分(B1)の炭化水素系オイルのアニリン点の上限は、特に限定されないが、170℃以下が好ましい。 ・・・ 【0041】 本発明の成分(B1)の炭化水素系オイルは、アニリン点が135℃以上と高く、分子量が高いため、揮発性が少なく、また(A)熱可塑性ブロック共重合体のミッドブロック部(共役ジエン化合物に基づくブロック部分)とも親和性が高い。 【0042】 従来のホットメルト接着剤でシールされた灯具を長期間使用すると、組成物中のオイルの揮発等によって、ホットメルト接着剤は接着強度が高くなり、解体性が悪化するという問題があった。一方、本発明のホットメルト組成物は、成分(B1)が(A)熱可塑性ブロック共重合体のミッドブロック部に浸透し続けるため、ホットメルト組成物の接着強度が経時的に増加し続けることがなく、長期間の使用においても安定した解体性が保つことができる。 【0043】 また、本発明のホットメルト組成物は、(A)熱可塑性ブロック共重合体と、(B1)アニリン点が135℃以上のオイルとを含み、成分(B1)が高分子量であるためホットメルト組成物の粘度を高めることができ、形態維持性を高めることができる。 【0044】 このように、本発明のホットメルト組成物は、(B1)アニリン点が135℃以上の炭化水素系オイルを含むことにより、特に自動車等の灯具用のシール材に適しており、灯具の修理時の解体性に優れ、かつ、長期での安定した物性、塗布性、高い形態維持性を両立させることができ、優れた性能を発揮することができる。 【0045】 (B1)アニリン点が135℃以上の炭化水素系オイルとしては、パラフィン系原油由来のパラフィン系オイル、アロマ系オイル、ナフテン系原油由来の、ナフテン系オイル、アロマ系オイルなどのプロセスオイルであって、アニリン点が135℃以上のものを用いることができる。市販品としては、例えば、ダイアナプロセスオイルPW-380が挙げられる。成分(B1)として、一種を単独で含んでも二種以上を組み合わせて含んでもよい。 【0046】 (B)炭化水素系液状軟化剤は、(B1)アニリン点が135℃以上の炭化水素系オイルに加えて、(B2)その他の炭化水素系液状軟化剤(「成分(B2)」とも記載する)を含んでもよい。 【0047】 本発明のホットメルト組成物において、成分(B)100重量部に対する成分(B1)の含有量は30重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましく、60重量部以上がさらに好ましく、100重量部であってもよい。また、ホットメルト組成物の総量中の成分(B1)の含有量は10重量%?70重量%程度が好ましい。 【0048】 (B2)その他の炭化水素系液状軟化剤のアニリン点は、135℃未満であるのが好ましく、130℃以下であるのがより好ましく、下限は、特に限定されないが100℃以上であるのが好ましい。また、成分(B2)は、炭化水素系オイルであるのが好ましい。 【0049】 本発明の一態様において、ホットメルト組成物は、成分(B1)と成分(B2)の両方を含むと、比較的低粘度な組成物が得られ、より高い塗布性が得られるので好ましい。 【0050】 ホットメルト組成物の総量中の(B)炭化水素系液状軟化剤の含有量は、30重量%以上が好ましく、40?80重量%がより好ましく、40?70重量%であることがさらに好ましい。成分(B)の含有量が30重量%以上であることにより、ホットメルト組成物が、高温での形態維持性に優れ、かつ長時間の使用後でも解体性に優れたものになる。また、80重量%以下であることにより、ホットメルト組成物の適切な形態維持性を得ることが出来る。」 (先1e)「【0051】 <(C)粘着付与樹脂> 本発明のホットメルト組成物の一態様は、さらに(C)粘着付与樹脂(「成分(C)」とも記載する)を含むのが好ましい。成分(C)は、「(C1)軟化点が120℃以上の粘着付与樹脂」を含むのが好ましい。ここで、本明細書において、軟化点は、JIS K 2207に基づき、石油アスファルト試験に準拠した自動軟化点装置(環球式)で測定された値とする。粘着付与樹脂の軟化点が上記範囲にあることによって、本発明のポリマー組成物の流動性が安定化する。 ・・・ 【0053】 粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、フェノール系樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体樹脂等が挙げられる。密着性の観点から、スチレン系の粘着付与樹脂をベースに芳香族炭化水素系テルペン樹脂を用いるのが好ましい。市販品としては、例えば、イーストマン社製のイーストタックシリーズ、エンデックスシリーズが挙げられる。 【0054】 (C)粘着付与樹脂は、一種を単独で用いても二種以上を併用してもよい。 【0055】 ホットメルト組成物の総量に対する(C)粘着付与樹脂の含有量は、0重量%であってもよいが、20重量%以上が好ましく、30?50重量%がより好ましく、30?40重量%であることがさらに好ましい。成分(C)の含有量が20重量%以上であることにより、ホットメルト組成物の接着力が高くなる。また、50重量%以下であることにより、ホットメルト組成物の解体性が得られやすくなる。」 (先1f)「【0066】 本発明のホットメルト組成物は、ホットメルト組成物に通常使用される添加剤を含んでもよく、本発明が目的とするホットメルト組成物を得ることができる限り、特に制限されることはない。そのような添加剤として、例えば、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料、およびレオロジー調整剤、ワックス等を添加することができる。 【0067】 「酸化防止剤」として、例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤を例示できる。」 (先1g)「【実施例】 【0082】 以下、本発明を実施例および比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。 【0083】 実施例および比較例のホットメルト組成物に用いた各成分を以下に示す。 【0084】 (A)熱可塑性ブロック共重合体 (A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%) (A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%) (A1-3)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4099,スチレン含有量30重量%) (A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%) (A3)SEPS(クラレ製 商品名 セプトン2005 スチレン含有量20重量%) 【0085】 (B)炭化水素系液状軟化剤 (B1-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW380,アニリン点142.7℃) (B1-2)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPS430,アニリン点138℃) (B2-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW90,アニリン点124.8℃) (B2-2)パラフィン系プロセスオイル(カネダ製 商品名 ハイコールK350,アニリン点122.4℃) (B2-3)パラフィン系プロセスオイル(エクソンモービル製 商品名 プライモールN382,アニリン点121.9℃) 【0086】 (C)粘着付与樹脂 (C1)水添C5系樹脂(イーストマンケミカル製 商品名 イーストタックレジンH142R、重量平均分子量1030、軟化点142℃) (C2)水添DCPD系樹脂(エクソンモービル製 商品名 エスコレッツ5320、軟化点125℃) (C3)純C9モノマー樹脂(イーストマンケミカル製 商品名 エンデックス155、軟化点152℃) (C4)芳香族系炭化水素樹脂(三井化学製 商品名 FMR150、軟化点150℃) (C5)テルペンフェノール樹脂(アリゾナケミカル製 商品名 SILVERES TP2019、軟化点125℃、水酸基価80) 【0087】 (D)酸化防止剤 (D1)ヒンダートフェノール酸化防止剤(BASF製 商品名 イルガノックス1010)」 (先1h)「【0090】 これらの成分を表4?6に示す配合割合にて配合し、200℃設定のトーシン製加温ニーダー(TKV0.5-1型)により減圧下で4時間溶融混練し、実施例1?17、比較例1?10のホットメルト組成物を得た。なお、表4?6のホットメルト組成物の組成(配合)に関する数値の単位は、すべて重量部である。 【0091】 各ホットメルト組成物について、形態維持性、溶融粘度、剪断試験、PC密着性、初期解体性、耐熱サイクル後の解体性、および耐フォギング性を評価した。各評価の概要について以下記載する。各ホットメルト組成物の評価結果は表4?6に示す。 ・・・ 【0107】 【表4】 【0108】 【表5】 【0109】 【表6】 」 (2)甲第2号証に記載された事項 甲第2号証(以下「先願明細書2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (先2a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)と、 動粘度(40℃)が100?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)と、 軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)と、 テルペン樹脂(D)と、を含み、 ポリプロピレンワックスを含まないことを特徴とする易解体性ホットメルト組成物。 【請求項2】 芳香族系石油樹脂(C)が、α-メチルスチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1記載の易解体性ホットメルト組成物。 【請求項3】 自動車灯具に用いられることを特徴とする請求項1又は2記載の易解体性ホットメルト組成物。」 (先2b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、易解体性ホットメルト組成物に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明が解決しようとする課題は、ポリプロピレン樹脂に対する剥離性が良好であり、解体する際の作業性にも優れ、高温領域下においても粘度低下の変化率が小さいことから、十分な耐熱性を有している易解体性ホットメルト組成物を提供することである。 ・・・ 【発明の効果】 【0009】 本発明にかかる易解体性ホットメルト組成物は、ポリプロピレン樹脂に対する剥離性が良好であり、解体する際の作業性にも優れ、高温領域下においても粘度低下の変化率が小さいことから、十分な耐熱性を有している効果がある。」 (先2c)「【0010】 <SEEPSブロックコポリマー> 本発明では、重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)を用いる。当該(A)成分は、本発明にかかる組成物のベースポリマーとして用いられる。当該(A)成分の重量平均分子量は、GPC法により測定した数値において、15万以上である必要があり、15万以上40万未満であることが好ましく、15万以上30万未満であることがより好ましく、20万以上25万未満であることが特に好ましい。また、当該(A)成分の配合量としては、組成物全体に対して、1?50重量%配合することが好ましく、3?30重量%配合することがさらに好ましく、5?15重量%配合することが特に好ましい。この範囲内であることにより、組成物自体の弾力性を維持したままで、被着体との密着性を向上させることができる。 【0011】 当該(A)成分のスチレン含有量としては、10?70重量%であることが好ましく、20?40重量%であることが特に好ましい。この範囲内であることにより、組成物を塗布する際の作業性が良好となり、また塗布した後の解体性が向上する傾向がある。」 (先2d)「【0012】 <パラフィンオイル> 本発明では、動粘度(40℃)が100?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル(B)を用いる。本発明にかかる組成物においては、当該(B)成分を配合することにより、高温領域下に放置した際の、粘度低下の変化率を抑えることができる。当該(B)成分は、比較的に高分子量の脂肪族系飽和炭化水素化合物であり、その動粘度としては、JIS K2283による40℃における測定値にて、100?1000mm^(2)/sである必要があり、200?800mm^(2)/sであることが好ましく、300?600mm^(2)/sであることがさらに好ましく、350?500mm^(2)/sであることが特に好ましい。また、同様に、100℃における測定値にて、15?45mm^(2)/sであることが好ましく、20?40mm^(2)/sであることがさらに好ましく、25?35mm^(2)/sであることが特に好ましい。この範囲内であることにより、組成物を塗布する際の作業性が良好となり、また粘度低下の変化率を抑えられることから、耐熱性が向上する傾向がある。当該(B)成分として適する市販品としては、ダイアナプロセスオイルPW-380(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):409mm^(2)/s、動粘度(100℃):31mm^(2)/s)がある。 【0013】 当該(B)成分の配合量としては、上記(A)成分100重量部に対して、300?2000重量部配合することが好ましく、400?1500重量部配合することがさらに好ましく、500?1000重量部配合することが特に好ましい。この範囲内において、配合することにより、組成物を塗布する際の作業性が良好となり、また粘度低下の変化率を抑えられることから、耐熱性が向上する傾向がある。 【0014】 また、当該(B)成分に加えて、塗布する際の作業性を損なわない範囲において、動粘度が上記規格による40℃における測定値にて、100mm^(2)/s未満のパラフィンオイルを配合することもできる。この成分として適する市販品としては、ダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):91mm^(2)/s、動粘度(100℃):11mm^(2)/s)がある。」 (先2e)「【0015】 <芳香族系石油樹脂> 本発明では、軟化点が100℃以上の芳香族系石油樹脂(C)を用いる。本発明にかかる組成物においては、当該(C)成分を配合することにより、耐熱性を向上させることができる。その軟化点としては、熱機械分析方法(TMA)により測定した数値において、100℃以上である必要があり、100℃?250℃であることが好ましく、120℃?200℃であることがより好ましく、140℃?180℃であることが特に好ましい。この範囲内であることにより、十分な耐熱性を付与できる上、組成物自体の弾力性が向上する傾向がある。当該(C)成分として適する市販品としては、エンデックス155(イーストマンケミカルジャパン社、商品名、α-メチルスチレン系共重合体、軟化点:155℃)がある。 【0016】 当該(C)成分の配合量としては、上記(A)成分100重量部に対して、30?500重量部配合することが好ましく、50?400重量部配合することがさらに好ましく、70?300重量部配合することが特に好ましい。この範囲内において、配合することにより、組成物自体の弾力性が良好なものとなる上、高温下における粘度低下の変化率を抑えられることから、耐熱性が向上する傾向がある。 【0017】 <粘着付与剤> 本発明では、粘着付与剤として、テルペン樹脂(D)を用いる。本発明にかかる組成物においては、当該(D)成分を配合することにより、剥離性や解体性を向上させることができる上、高温領域下においても、粘度低下の変化率を抑えることができる。粘着付与剤としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C_(5)?C_(9)水添脂環族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、テルペン樹脂を用いることにより、ポリプロピレン樹脂に対する、解体性を向上させることができる。当該(D)成分としては、テルペン樹脂であれば、水添したものであっても構わない。その一方で、テルペンフェノール樹脂を用いた場合、解体性に劣る傾向がある。 【0018】 当該(D)成分の配合量としては、上記(A)成分100重量部に対して、10?600重量部配合することが好ましい。この範囲内において、配合することにより、剥離性や解体性を向上させることができる上、高温領域下においても、粘度低下の変化率を抑えることができる傾向がある。 【0019】 本発明にかかる組成物においては、上記(A)?(D)成分を必須とするが、表面タック性を低下させるために、さらに、ポリエチレンワックスを配合してもよい。当該成分は、常温で固体の化学物質であり、その配合量としては、上記(A)成分100重量部に対して、1?100重量部配合することが好ましく、3?50重量部配合することがさらに好ましく、5?30重量部配合することが特に好ましい。この範囲内において、配合することにより、表面タック性が低下する傾向がある。」 (先2f)「【0021】 その他の成分として、熱による劣化を防止するために、老化防止剤を配合することができる。当該成分としては、亜リン酸塩系、ナフチルアミン系、p-フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、ビス・トリス・ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系などの化合物が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、一次酸化防止剤のヒンダードフェノール系、二次酸化防止剤の亜リン酸塩系を併用したものが好ましい。当該成分として適する市販品としては、ノクラックTD(大内新興化学工業株式会社、商品名)、ノンフレックスRD(精工化学株式会社、商品名)、AL-122(共同薬品株式会社、商品名)が挙げられる。当該成分の配合量としては、上記(A)成分100重量部に対して、0.1?20重量部配合することが好ましい。0.1重量部未満では、熱劣化防止効果が十分ではなく、20重量部を超えて配合を行っても、それ以上効果が得られない。 【0022】 また、充填性、軽量化、流動性の調整などに加え、沈降防止のために、中空フィラーを配合することもできる。当該成分は、平均粒子径(重量による累積50%D50)が100μm以下、見かけ比重が1.0以下のガラスマイクロバルーン、パーライト、シリカバルーン、アルミナバルーン、カーボンバルーン、アルミノシリケートバルーンを使用することが好ましい。この範囲内において、配合することにより、外観不良が発生したり、本発明にかかる組成物が溶融する際にフィラーが沈降したりするのを抑えることができる。」 (先2g)「【実施例】 【0023】 <実施例及び比較例> 表1に示す配合において、2軸エクストルーダーにて220℃で十分に混練し、実施例及び比較例の易解体性ホットメルト組成物を得た。以下に、使用した原材料を示す。 SEEPSブロックコポリマー:セプトン4055(株式会社クラレ、商品名、重量平均分子量:23万、Mw/Mn:1.3) パラフィンオイル1:ダイアナプロセスオイルPW-380(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):409mm^(2)/s、動粘度(100℃):31mm^(2)/s) パラフィンオイル2:ダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):91mm^(2)/s、動粘度(100℃):11mm^(2)/s) 芳香族系石油樹脂:エンデックス155(イーストマンケミカルジャパン社、商品名、α-メチルスチレン系共重合体、軟化点:155℃) 粘着付与剤1:YSレジンPX1250(ヤスハラケミカル株式会社、商品名、テルペン樹脂) 粘着付与剤2:エスコレッツ5320(エクソンモービル社、商品名、水添脂環族系炭化水素樹脂) 粘着付与剤3:YSポリスターU130(ヤスハラケミカル株式会社、商品名、テルペンフェノール樹脂) ポリエチレンワックス:サンワックスLEL250(三洋化成工業株式会社、商品名) ポリプロピレンワックス:AC-1089(ハネウェル社、商品名) 老化防止剤:AL-122(共同薬品株式会社、商品名) 着色料:旭サーマルカーボン(旭カーボン株式会社、商品名、カーボンブラック) 【0024】 【表1】 」 (3)甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には、以下の事項が記載されている。 (甲3a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 スチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-(エチレン/ブタジエン)-スチレンブロック共重合体(SEBS)、の少なくとも何れか一つを含むスチレン系熱可塑性エラストマーと、炭化水素系可塑剤と、スチレン系樹脂とを含み、 前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、前記炭化水素系可塑剤500質量部以上2000質量部以下を配合すると共に、 前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、前記スチレン系樹脂50質量部以上500質量部以下を含有してなることを特徴とするホットメルト接着剤組成物。 ・・・ 【請求項4】 請求項1?3の何れか一項に記載のホットメルト接着剤組成物を用いてなることを特徴とするシール材。」 (甲3b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、自動車や車両等のホットメルト接着剤として好適に用いられるホットメルト接着剤組成物及びシール材に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、従来のホットメルト組成物では、120℃程度の温度領域で長期間放置すると、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)が分解し液状化する、という問題がある。 【0008】 本発明は、前記問題に鑑み、熱老化安定性を向上させたホットメルト接着剤組成物を提供することである。」 (甲3c)「【0016】 スチレン系熱可塑性エラストマーとして含まれるSEPS、SEEPS、SEBSの質量平均分子量は、20万以上のものであれば特に制限されるものではなく、20万以上50万以下であるのが好ましく、25万以上50万以下であるのがより好ましく、30万以上40万以下であるのが更に好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーとして含まれるSEPS、SEEPS、SEBSの質量平均分子量が20万以上であると、本発明の組成物から得られる硬化物は柔らかく解体性に優れるからである。・・・なお、本発明において質量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置によって測定され、質量平均分子量は、ポリスチレンを標準としてGPC法で求められる値である。」 (甲3d)「【0022】 <炭化水素系可塑剤> 炭化水素系可塑剤について説明する。本発明の組成物に含有される炭化水素系可塑剤は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。炭化水素系可塑剤としては、特に制限されるものではなく、従来より公知の可塑剤を用いることができ、例えば、パラフィン系、ナフテン系若しくは芳香族系のプロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン及び液状ポリイソプレン等の液状樹脂、流動パラフィン、オレフィンプロセスオイル、及びこれらを2種以上混合した混合物等が挙げられる。なかでも、ベースポリマーとの相溶性および耐熱性の点から、パラフィン系プロセスオイルが好ましい。 【0023】 炭化水素系可塑剤の含有量は、組成物が基材に対して施される際、基材の形状に対して密着でき、硬化物の解体性により優れるという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500質量部以上2000質量部以下であり、600質量部以上1800質量部以下であるのが好ましく、700質量部以上1600質量部以下であるのがより好ましい。」 (甲3e)「【0028】 また、本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、炭化水素系可塑剤以外の可塑剤、シランカップリング剤、顔料、染料、ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、安定剤、分散剤、溶剤、発泡防止剤などが挙げられる。これらの中の2種類以上を含有してもよい。」 (甲3f)「【0044】 本発明の組成物の用途は特に限定されないが、本発明の組成物は、以上のような優れた特性を有することから、本発明の組成物は、例えば、自動車や車両(新幹線、電車)、電気、建材・木工及び製本包装等の用途に使用することができる。自動車関連の用途としては、天井、ドア、シート等の内装材の接着、ランプなどの自動車照明灯具、サイドモール等の外装材の接着等を挙げることができる。具体的には、自動車照明灯具を製造する際にレンズとハウジングとを接着、シールするのに好適に用いることができる。」 (甲3g)「【実施例】 【0054】 以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。 【0055】 <1.ホットメルト接着剤組成物の調整> ホットメルト接着剤組成物を調整した。ホットメルト接着剤組成物を調整する際に用いた各成分と、その添加量(質量部)を表1、2に示す。表1、2に示す成分を表1、2に示す量で、200℃に加熱して混合し、各ホットメルト接着剤組成物を調製した。 【0056】 【表1】 【0057】 【表2】 」 (甲3h)「【0058】 上記表1、2に示される各成分は、以下のとおりである。 ・スチレン系熱可塑性エラストマー SEEPS:セプトン4099(質量平均分子量40万、スチレン含有量30質量%)、クラレ社製 ・・・ ・炭化水素系可塑剤:パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製) ・スチレン系樹脂1:芳香族系炭化水素樹脂(FMR150、三井化学社製) ・・・ ・ヒンダードフェノール系酸化防止剤1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) ・・・ ・着色剤:カーボンブラック、酸化チタン ・紫外線吸収剤1:紫外線吸収剤(チヌビン326、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) ・・・」 (甲3i)「【0062】 以上のように、本発明にかかるホットメルト接着剤組成物は、熱老化安定性に優れるため、例えば自動車等の照明灯具のシール材として好適に用いることができる。」 (4)甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、以下の事項が記載されている。 (甲4a)「粘度 油の流れ易さ及び乳化の容易さに関係があると共に平均分子量にも大体比例する数値である」(第540頁左欄下から7?5行) (甲4b)「アニリン点(AP)および混合アニリン点(MAP) これらの数値は試料炭化水素とアニリンの溶解度を示す温度でパラフィン度の高いものほど高温でなければ溶解しない。 ・・・ △AP(またが△MAP) アニリン点及び混合アニリン点も分子量の増大すると共に高温度を与えるので、油の平均分子量を考慮に入れる必要がある。・・・」(第541頁第14?26行) (5)甲第5号証に記載された事項 甲第5号証には、以下の事項が記載されている。 (甲5a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 a)100℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤と、 b)リン酸アミンの混合物と、 c)酸ハーフエステル、無水物、酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたアルケニルコハク酸化合物と を含み、完成潤滑剤の25重量パーセント未満の量で使用したときに4時間TORT B錆試験の合格をもたらす錆止め剤。 【請求項2】 溶解度改良剤が、50℃未満のアニリン点を有する、請求項1に記載の錆止め剤。 【請求項3】 溶解度改良剤が、20℃未満のアニリン点を有する、請求項2に記載の錆止め剤。 【請求項4】 溶解度改良剤が、1種又は複数のフェノール系抗酸化剤である、請求項1に記載の錆止め剤。 【請求項5】 溶解度改良剤が、アルキル化芳香族、有機エステル、アルキル化シクロペンタジエン、アルキル化シクロペンテン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の錆止め剤。 【請求項6】 アルキル化芳香族がアルキル化ナフタレンである、請求項5に記載の錆止め剤。 ・・・ 【請求項32】 潤滑油の全重量に対して約0.10重量%から約10重量%の間である、10℃未満のアニリン点を有する溶解度改良剤を、潤滑油に配合するステップを含み、前記配合するステップによって、前記潤滑油が4時間TORT B錆試験に合格することが可能になる、潤滑油の錆止めを改良する方法。 【請求項33】 アニリン点が5℃未満である、請求項32に記載の方法。 【請求項34】 溶解度改良剤が、1種又は複数のフェノール系抗酸化剤を含む、請求項32に記載の方法。 【請求項35】 潤滑油が、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループII、ASTM D 3238により65%超のパラフィン鎖炭素を有するAPIグループIII、ポリ内部オレフィン、APIグループIV、及びこれらの混合物からなる群から選択された過半量の基油を含む、請求項32に記載の方法。」 (甲5b)「【0018】 溶解度改良剤: 本発明で有用な溶解度改良剤は、潤滑基油と適合するアニリン点を有する液体である。溶解度改良剤は、潤滑基油範囲内の動粘度(100℃で2.0?75cSt)を有することが好ましい。これらのアニリン点は、100℃未満であり、好ましくは50℃未満であり、より好ましくは20℃未満である。アニリン点は、分子量又は粘度とともにともに上昇する傾向があり、またナフテン系及び芳香族系の含量が上昇すると共に低下する傾向がある。適切な溶解度改良剤の例は、ある特定の従来の鉱油、及びアルキル化芳香族や有機エステル、アルキル化シクロペンタジエン、アルキル化シクロペンテンなどの合成潤滑剤である。天然に生ずるエステル及び合成有機エステルを、溶解度改良剤として使用してもよい。」 (6)甲第6号証に記載された事項 甲第6号証には、以下の事項が記載されている。 (甲6a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 電気的に絶縁性のキャリア液中にトナーを分散させた電子写真用液体現像剤において、前記トナーは、着色剤としてColor IndexPigment Yellow 180に分類される化合物及び(又は)その誘導体を含むとともに、前記キャリア液はアニリン点が80℃?100℃であることを特徴とする電子写真用液体現像剤。 【請求項2】 電気的に絶縁性のキャリア液中にトナーを分散させた電子写真用液体現像剤において、前記トナーは、着色剤としてColor IndexSolvent Yellow 162に分類される化合物及び(又は)その誘導体を含むとともに、前記キャリア液はアニリン点が80℃?100℃であることを特徴とする電子写真用液体現像剤。」 (甲6b)「【0014】また、キャリア液としてアニリン点が80℃以上の液体を用いているため、トナー中のPY180に分類される化合物、SY162に分類される化合物等のキャリア液への溶出が抑制される。それにより、トナーの荷電性の低下、キャリア液中に溶出した成分によるキャリア液の電気抵抗値の低下等が抑制されて、その結果現像速度の低下、画像濃度の変化、画像ボケや画像の飛び散り等の画質不良の発生、保存時のトナーの凝集等が抑制されたものとなる。なお、キャリア液のアニリン点を100℃以下としたのは、同族列の溶媒ではアニリン点が高くなるほど分子量が大きくなってその粘度が高くなるため、アニリン点の上限を定めることでキャリア液の粘度上昇による現像速度の過度の低下を回避しようとしたものである。キャリア液のアニリン点は、より好ましくは80℃以上90℃以下とする。」 (7)甲第7号証に記載された事項 甲第7号証には、以下の事項が記載されている。 (甲7a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(s)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(b)とからなるブロック共重合体(Z)の水素添加物である、重量平均分子量が180,000?500,000の水添熱可塑性スチレン系エラストマー、 (B)40℃での動粘度が20?1000mm^(2)/sのパラフィンオイル、及び (C)密度が870?940kg/m^(3)、メルトマスフローレイトが100g/10min以下のポリエチレン を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物であって、前記パラフィンオイルの含有量が、前記水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、50?300質量部であり、前記ポリエチレンの含有量が、前記水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、10?200質量部である、熱可塑性エラストマー組成物。」 (甲7b)「【技術分野】 【0001】 本発明は、シール材・パッキン・制振部材・チューブ・工業用品、雑貨、スポーツ用途等に用いられる熱可塑性エラストマー組成物に関する。」 (甲7c)「【0017】 パラフィンオイルの40℃での動粘度は、20?1000mm^(2)/sである。動粘度が低すぎると、揮発し易く、得られる組成物の保存安定性が低下することがあるため、20mm^(2)/s以上であり、・・・である。また、動粘度が高すぎると製造時における操作性に不備が生じるため、1000mm^(2)/s以下であり、・・・である。これらの観点から、パラフィンオイルの40℃での動粘度は、好ましくは25?700mm^(2)/s、より好ましくは30?500mm^(2)/sである。 【0018】 パラフィンオイルの含有量は、水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、50?300質量部である。パラフィンオイルの含有量が少なすぎると、各種配合成分の分散性が低下するため、水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、50質量部以上であり、好ましくは55質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。また、パラフィンオイルの含有量が多すぎると、オイルブリードが生じ、物性等の劣化にもつながるため、水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、300質量部以下であり、好ましくは290質量部以下、より好ましくは280質量部以下である。これらの観点から、パラフィンオイルの含有量は、水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部に対して、好ましくは55?290質量部、より好ましくは60?280質量部である。」 (甲7d)「【実施例】 【0044】 実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。 【0045】 〔水添熱可塑性エラストマーの重量平均分子量(Mw)〕 以下の測定条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算で分子量を測定し、重量平均分子量を求める。 【0046】 測定機器:SIC Autosampler Model109 Sugai U-620 COLUMN HEATER Uniflows UF-3005S2B2 検出器:MILLIPORE Waters 410 Differential Refractometer カラム:Shodex KF806M×2本 オーブン温度:40℃ 溶離液:テトラヒドロフラン(THF)1.0ml/min 標準試料:ポリスチレン 試料溶液:濃度が0.020g/10mlとなるように、試料を2,6-ジ-t-ブチル-p-フェノール(BHT)を0.2質量%添加したTHFと混合し、室温で攪拌して溶解させる。 試料溶液の注入量:100μl 補正:検量線測定時と試料測定時とのBHTのピークのずれを補正して、分子量計算を行う。」 (甲7e)「【0050】 実施例及び比較例で使用した表1、2に記載の原料の詳細は以下の通り。 【0051】 〔SBC(水添熱可塑性スチレン系エラストマー)〕 ・・・ SEEPS:セプトン4099(クラレ社製)、Mw422,000、ブロック単位(s)の含有量 30質量% 【0052】 〔オイル〕 パラフィンオイルA:PW-90(出光興産社製)、動粘度(40℃) 84mm^(2)/s パラフィンオイルB:ルーカントHC-100(三井化学社製)、動粘度(40℃) 1300mm^(2)/s ・・・ 【0068】 【表1】 【0069】 【表2】 」 (8)甲第8号証に記載された事項 甲第8号証には、以下の事項が記載されている。 (甲8a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)ビニル芳香族化合物単位を含有する重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体100質量部、 (B)ポリプロピレン0.5?20質量部及び (C)軟化点95?145℃のポリフェニレンエーテル樹脂5?100質量部 を含有する熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項2】 さらに(D)非芳香族系軟化剤0.5?250質量部含有する、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項3】 前記(A)成分が、ポリスチレン-水添ポリブタジエン-ポリスチレンのトリブロック共重合体、ポリスチレン-水添ポリイソプレン-ポリスチレンのトリブロック共重合体及びポリスチレン-水添ブタジエン/イソプレン共重合体-ポリスチレンのトリブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項4】 前記(A)成分の重量平均分子量が30万?70万である、請求項1?3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。」 (甲8b)「【0009】 ((A)水添ブロック共重合体) (A)成分である、ビニル芳香族化合物単位を含有する重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)に特に制限は無いが、熱可塑性エラストマー組成物の機械的特性及び圧縮永久歪の観点から、好ましくは10万?70万、好ましくは30万?70万、より好ましくは30万?45万、さらに好ましくは33万?42万、特に好ましくは35万?42万である。・・・。 なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、単分散ポリスチレンを基準としてポリスチレン換算で求めた値である。 【0010】 ・・・ (A)成分としては、具体的には、・・・、ポリスチレン-水添ブタジエン/イソプレン共重合体-ポリスチレンのトリブロック共重合体(以下、SEEPSと略す。)などが好ましく挙げられ、SEEPSがより好ましい。 ・・・ 【0012】 SEEPSにおいては、ポリスチレンブロックの含有率に特に制限は無いが、好ましくは10?70質量%、より好ましくは20?40質量%である。また、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの水素添加率に特に制限は無いが、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70?100モル%である」 (甲8c)「【0020】 ((D)非芳香族系軟化剤) 本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、(D)成分として非芳香族系軟化剤を含有していてもよい。 ・・・ また、非芳香族系軟化剤のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200?2,000、より好ましくは300?1,000、さらに好ましくは300?800であり、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1?1.5、より好ましくは1?1.3、さらに好ましくは1?1.2である。 【0021】 上記のような(D)成分として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、シリコーンオイル、植物系オイルなどを利用できる。これらの中でも、相溶性の観点から、パラフィン系オイル、シリコーンオイルが好ましく、パラフィン系オイルがより好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、相溶性が良好であれば、2種以上を併用してもよい。 パラフィン系オイルとしては、例えば「ダイアナプロセスオイルPW32」(商品名、出光興産株式会社製、Mw=400、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=31mm^(2)/S、パラフィン系オイル)、「ダイアナプロセスオイルPW380」(商品名、出光興産株式会社製、Mw=750、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=380mm^(2)/S、パラフィン系オイル)などを利用可能である。 ・・・ (D)成分は、1種を単独で使用してもよいし、動粘度を調整するなどのために2種以上を併用してもよい。 (D)成分の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物を低硬度にしながらもブリードアウトを抑制するという観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.5?350質量部、より好ましくは5?300質量部、より好ましくは10?300質量部、より好ましくは50?300質量部、より好ましくは50?250質量部、さらに好ましくは150?250質量部、特に好ましくは180?250質量部である。」 (甲8d)「【0028】 <実施例1?5、比較例1?4> 表1又は2に示した配合量(単位:質量部)で各成分を予め混合し、次いでベント式二軸混練機を用いて、組成物中の(C)成分が溶融し切るように(比較例2を除く。)表1中に記載の溶融混練温度にて混練し、ストランド状に押し出しながらカッターにてカットし、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。 得られたペレットのショアA硬度、圧縮永久歪、機械的特性(破断強度及び破断伸び)を以下のようにして測定・評価した。結果を表1及び2に示す。」 (甲8e)「【0030】 【表1】 」 (甲8f)「【0031】 1):「セプトン(登録商標)4099」、SEEPS、Mw=40万、ポリスチレンブロック含有率30%、株式会社クラレ製 ・・・ 8):「ダイアナプロセスオイルPW380」、パラフィン系オイル、Mw=750、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=380mm^(2)/sec、出光興産株式会社製 9):「ダイアナプロセスオイルPW32」、パラフィン系オイル、Mw=400、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=31mm^(2)/sec、出光興産株式会社製」 (甲8g)「【産業上の利用可能性】 【0033】 本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、圧縮永久歪が小さく、かつ機械的特性に優れるなどの特性を有するため、高温での繰り返し耐久性にも優れている。そのため、幅広い用途、例えばシール材、ガスケット材、防振材、衝撃吸収材、カバー材(例えばインクジェットプリンター用インクのカバー剤)、緩衝材、音響用部材(例えばスピーカーエッジ)などの用途に利用可能である。」 (9)甲第9号証に記載された事項 甲第9号証には、以下の事項が記載されている。 (甲9a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体であって、重量平均分子量が30万?45万である水添ブロック共重合体100質量部、 (B)(i)40℃における動粘度が90mm^(2)/sec以下であり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤30?80質量%及び(ii)40℃における動粘度が350?400mm^(2)/secであり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤70?20質量%からなる、非芳香族系ゴム用軟化剤170?270質量部及び (C)ポリプロピレン3?15質量部 を含有する、ショアA硬度が4?12度の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項2】 前記(B)成分において、(i)成分の非芳香族系ゴム用軟化剤の含有率が50?70質量%であり、(ii)成分の非芳香族系ゴム用軟化剤の含有率が50?30質量%である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項3】 (A)成分である水添ブロック共重合体が、ポリスチレン-水添ポリブタジエン-ポリスチレンのトリブロック共重合体、ポリスチレン-水添ポリイソプレン-ポリスチレンのトリブロック共重合体及びポリスチレン-水添ブタジエン/イソプレン共重合体-ポリスチレンのトリブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。」 (甲9b)「【0009】 [(A)水添ブロック共重合体] (A)成分である、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、30万?45万である必要があり、好ましくは33万?42万、より好ましくは35万?40万である。・・・。 なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、単分散ポリスチレンを基準としてポリスチレン換算で求めた値である。 【0010】 ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体としては、例えば・・・、ポリスチレン-水添ブタジエン/イソプレン共重合体-ポリスチレンのトリブロック共重合体(以下、SEEPSと略す。)などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」 (甲9c)「【0014】 [(B)非芳香族系ゴム用軟化剤] 本発明では、(B)成分として、(i)動粘度(40℃)が90mm^(2)/sec以下であり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤[以下、非芳香族系ゴム用軟化剤(i)又は成分(i)と称することがある。]と、(ii)動粘度(40℃)が350?400mm^(2)/secであり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤[以下、非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)又は成分(ii)と称することがある。]とを組み合わせて用いる。なお、動粘度はJIS K2283に準じて測定した値である。 非芳香族系ゴム用軟化剤(i)の動粘度(40℃)は、タック性及び非芳香族系ゴム用軟化剤保持性(以下、オイル保持性と称する。)の観点から、5?80mm^(2)/secが好ましく、10?70mm^(2)/secがより好ましく、15?60mm^(2)/secがより好ましく、20?50mm^(2)/secがさらに好ましい。また、非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)の動粘度(40℃)は、タック性及びオイル保持性の観点から、360?400mm^(2)/secが好ましく、370?400mm^(2)/secがより好ましく、370?390mm^(2)/secがさらに好ましい。 非芳香族系ゴム用軟化剤(i)及び(ii)の分子量分布は、いずれも1?1.25が好ましく、1?1.2がより好ましい。 【0015】 上記非芳香族系ゴム用軟化剤(i)と非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)の組み合わせの比率としては、成分(i)30?80質量%に対して成分(ii)70?20質量%であり、タック性及び圧縮永久歪の観点からは、好ましくは成分(i)40?80質量%に対して成分(ii)60?20質量%、より好ましくは成分(i)50?80質量%に対して成分(ii)50?20質量%、さらに好ましくは成分(i)50?70質量%に対して成分(ii)50?30質量%である。 上記特定の動粘度及び分子量分布を有する非芳香族系ゴム用軟化剤(i)と非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)とを、上記特定比率で用いない場合、得られる熱可塑性エラストマー組成物から(B)成分がブリードアウトすることがあり、また、タック性が高くなって、成形時や製品輸送時の取り扱い性が悪化するという問題や、他にも圧縮永久歪が大きくなるという問題が生じる。 【0016】 上記のような(B)成分として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、シリコーンオイル、植物系オイルなどを利用できる。これらの中でも、相溶性の観点から、パラフィン系オイル、シリコーンオイルが好ましく、パラフィン系オイルがより好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、相溶性が良好であれば、2種以上を併用してもよい。 パラフィン系オイルとしては、例えばダイアナプロセスオイルPW32(商品名、出光興産株式会社製、Mw=400、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=31mm^(2)/S、パラフィン系オイル)などを非芳香族系ゴム用軟化剤(i)として利用可能であり、例えばダイアナプロセスオイルPW380(商品名、出光興産株式会社製、Mw=750、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=380mm^(2)/S、パラフィン系オイル)などを非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)として利用可能である。 ・・・ (B)成分の配合量は、熱可塑性エラストマー組成物のショアA硬度を4?12度にしながらもブリードアウトを抑制するという観点から、(A)成分100質量部に対して170?270質量部である必要があり、好ましくは180?270質量部、より好ましくは200?270質量部、より好ましくは230?270質量部、さらに好ましくは240?265質量部である。」 (甲9d)「【実施例】 【0028】 次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。 【0029】 <実施例1?6、比較例1?11> 表1、表2に示した配合量(単位:質量部)で各成分を予め混合し、次いで二軸混練機(東芝機械株式会社製、TEM58BS型、スクリュー全長/シリンダ径=62.5、スクリュー全長に対する混練帯域の長さの比率=62%)にて180℃で混練し、ストランド状に押し出しながらカッターにてカットし、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られたペレットのショアA硬度、圧縮永久歪、タック性及びオイル保持性を以下のようにして測定・評価した。結果を表1及び2に示す。」 (甲9e)「【0031】 【表1】 」 (甲9f)「【0033】 ・・・ 2):「セプトン4099」、SEEPS、Mw=40万、ポリスチレンブロック含有率30%、株式会社クラレ製 ・・・ 5):「ダイアナプロセスオイルPW32」、パラフィン系オイル、Mw=400、Mw /Mn=1.15、動粘度(40℃)=31mm^(2)/sec、出光興産株式会社製 6):「ダイアナプロセスオイルPW380」、パラフィン系オイル、Mw=750、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=380mm^(2)/sec、出光興産株式会社製 7):「ダイアナプロセスオイルPW90」、パラフィン系オイル、Mw=530、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=96mm^(2)/sec、出光興産株式会社製 ・・・」 (甲9g)「【産業上の利用可能性】 【0035】 本発明のショアA硬度が4?12度の熱可塑性エラストマー組成物は、タック性が低く、圧縮永久歪が小さく、超低硬度に設計したにもかかわらずオイル保持性が高いなどの特性を有するため、幅広い用途、例えばシール材、ガスケット材、防振材、衝撃吸収材、カバー材、緩衝材などの用途の利用可能である。」 (10)甲第10号証に記載された事項 甲第10号証には、以下の事項が記載されている。 (甲10a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体であって、重量平均分子量が30万?70万である水添ブロック共重合体100質量部、(B)ポリプロピレン3?15質量部及び(C)ポリフェニレンエーテル樹脂10?200質量部からなる樹脂成分100質量部相当に対して、(D)(i)40℃における動粘度が90mm^(2)/sec以下であり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤30?80質量%及び(ii)40℃における動粘度が350?400mm^(2)/secであり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤70?20質量%からなる非芳香族系ゴム用軟化剤170?270質量部を含有する、熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項2】 前記(D)成分において、(i)成分の非芳香族系ゴム用軟化剤の含有率が50?70質量%であり、(ii)成分の非芳香族系ゴム用軟化剤の含有率が50?30質量%である、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項3】 (A)成分である水添ブロック共重合体が、ポリスチレン-水添ポリブタジエン-ポリスチレンのトリブロック共重合体、ポリスチレン-水添ポリイソプレン-ポリスチレンのトリブロック共重合体及びポリスチレン-水添ブタジエン/イソプレン共重合体-ポリスチレンのトリブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。 【請求項4】 前記樹脂成分中の(C)成分の含有量が20?50質量部である、請求項1?3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。」 (甲10b)「【0009】 [(A)水添ブロック共重合体] (A)成分である、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体の重量平均分子量は、30万?70万である必要があり、好ましくは30万?45万、より好ましくは33万?42万、さらに好ましくは35万?40万である。 ・・・ なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、単分散ポリスチレンを基準としてポリスチレン換算で求めた値である。 【0010】 ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体としては、例えば・・・、ポリスチレン-水添ブタジエン/イソプレン共重合体-ポリスチレンのトリブロック共重合体(以下、SEEPSと略す。)などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 ・・・ 【0013】 SEEPSにおいては、ポリスチレンブロックの含有率に特に制限は無いが、好ましくは10?70質量%、より好ましくは20?40質量%である。また、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの水素添加率に特に制限は無いが、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70?100モル%である。 SEEPSの製造方法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。また、SEEPSは市販されており、重量平均分子量が前記範囲である市販品を使用してもよい。」(段落【0009】?【0013】を参照) (甲10c)「【0020】 [(D)非芳香族系ゴム用軟化剤] 本発明では、(D)成分として、(i)動粘度(40℃)が90mm^(2)/sec以下であり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤[以下、非芳香族系ゴム用軟化剤(i)又は成分(i)と称することがある。]と、(ii)動粘度(40℃)が350?400mm^(2)/secであり、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した分子量分布(Mw/Mn)が1.3以下である非芳香族系ゴム用軟化剤[以下、非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)又は成分(ii)と称することがある。]とを特定の比率で組み合わせて用いる。なお、動粘度はJIS K2283に準じて測定した値である。 非芳香族系ゴム用軟化剤(i)の動粘度(40℃)は、タック性及び非芳香族系ゴム用軟化剤保持性(オイル保持性)の観点から、5?80mm^(2)/secが好ましく、10?70mm^(2)/secがより好ましく、15?60mm^(2)/secがより好ましく、20?50mm^(2)/secがさらに好ましい。また、非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)の動粘度(40℃)は、タック性及びオイル保持性の観点から、360?400mm^(2)/secが好ましく、370?400mm^(2)/secがより好ましく、370?390mm^(2)/secがさらに好ましい。 非芳香族系ゴム用軟化剤(i)及び(ii)の分子量分布は、いずれも1?1.25が好ましく、1?1.2がより好ましい。 【0021】 上記非芳香族系ゴム用軟化剤(i)と非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)の組み合わせの比率としては、成分(i)30?80質量%に対して成分(ii)70?20質量%であり、タック性及び圧縮永久歪の観点からは、好ましくは成分(i)30?70質量%に対して成分(ii)70?30質量%、より好ましくは成分(i)40?80質量%に対して成分(ii)60?20質量%、より好ましくは成分(i)50?80質量%に対して成分(ii)50?20質量%、さらに好ましくは成分(i)50?70質量%に対して成分(ii)50?30質量%である。 上記特定の動粘度及び分子量分布を有する非芳香族系ゴム用軟化剤(i)と非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)とを、上記特定比率で用いない場合、得られる熱可塑性エラストマー組成物から(D)成分がブリードアウトすることがあり、また、タック性が高くなって、成形時や製品輸送時の取り扱い性が悪化するという問題や、他にも圧縮永久歪が大きくなるという問題が生じる。 【0022】 上記のような(D)成分として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、シリコーンオイル、植物系オイルなどを利用できる。これらの中でも、相溶性の観点から、パラフィン系オイル、シリコーンオイルが好ましく、パラフィン系オイルがより好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、相溶性が良好であれば、2種以上を併用してもよい。 パラフィン系オイルとしては、例えば「ダイアナプロセスオイルPW32」(商品名、出光興産株式会社製、Mw=400、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=31mm^(2)/S、パラフィン系オイル)などを非芳香族系ゴム用軟化剤(i)として利用可能であり、例えば「ダイアナプロセスオイルPW380」(商品名、出光興産株式会社製、Mw=750、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=380mm^(2)/S、パラフィン系オイル)などを非芳香族系ゴム用軟化剤(ii)として利用可能である。 ・・・ (D)成分の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物を超低硬度にしながらもブリードアウトを抑制するという観点から、樹脂成分である(A)?(C)成分の合計100質量部に対して170?270質量部である必要があり、好ましくは175?270質量部、より好ましくは180?260質量部である。」 (甲10d)「【実施例】 【0028】 次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。 【0029】 <実施例1?8、比較例1?12> 表1?3に示した配合量(単位:質量部)で各成分を予め混合し、次いで二軸混練機(東芝機械株式会社製、TEM58BS型、スクリュー全長/シリンダ径=62.5、スクリュー全長に対する混練帯域の長さの比率=62%)にて180℃で混練し、ストランド状に押し出しながらカッターにてカットし、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られたペレットのショアA硬度、圧縮永久歪、タック性、耐溶剤性及びオイル保持性を以下のようにして測定・評価した。結果を表1?3に示す。」 (甲10e)「【0032】 【表1】 」 (甲10f)「【0035】 ・・・ 2):「セプトン(登録商標)4099」、SEEPS、Mw=40万、ポリスチレンブロック含有率30%、株式会社クラレ製 3):「ダイアナプロセスオイルPW32」、パラフィン系オイル、Mw=400、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=31mm^(2)/sec、出光興産株式会社製 4):「ダイアナプロセスオイルPW380」、パラフィン系オイル、Mw=750、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=380mm^(2)/sec、出光興産株式会社製 5):「ダイアナプロセスオイルPW90」、パラフィン系オイル、Mw=530、Mw/Mn=1.15、動粘度(40℃)=96mm^(2)/sec、出光興産株式会社製 ・・・」 (甲10g)「【産業上の利用可能性】 【0037】 本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、超低硬度に設計したにもかかわらずオイル保持性が高く、タック性及び圧縮永久歪が小さく、且つ耐溶剤性に優れるなどの特性を有するため、幅広い用途、例えばシール材、ガスケット材、防振材、衝撃吸収材、カバー材(例えばインクジェットプリンター用インクのカバー剤)、緩衝材などの用途に利用可能である。」 (11)甲第11号証に記載された事項 甲第11号証には、以下の事項が記載されている。 (甲11a)「【0018】 前記ブロック共重合体(a)の重量平均分子量は8万?40万の範囲内が好ましく、よりしっとりとした感触を得るためには10万?35万の範囲内が好ましい。8万以下ではタック感があり、しっとりとした感触を得られない。40万以上では流動性不足により生産できない。なお、本明細書でいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。 【0019】 測定条件: GPC;LC Solution (SHIMADZU製) 検出器:示差屈折率計 RID-10A(SHIMADZU製) カラム:TSKgelG4000Hxlを2本直列(TOSOH製) ガードカラム:TSKguardcolumnHxl-L(TOSOH製) 溶媒:テトラヒドロフラン 温度:40℃ 流速:1ml/min 濃度:2mg/ml」(段落【0018】?【0019】を参照) (甲11b)「 【0020】 <炭化水素系ゴム用軟化剤(b)> 本発明の炭化水素系ゴム用軟化剤(b)としては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィン等が挙げられ、中でもパラフィン系オイル、ナフテン系オイル等のプロセスオイルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 【0021】 本発明のブロー成形用樹脂組成物においては、前記ブロック共重合体(a)100重量部に対して、前記炭化水素系ゴム用軟化剤(b)が5?120重量部含有していることが、しっとりとした感触を出す点で重要である。前記炭化水素系ゴム用軟化剤(b)の含有量が5重量部より少ないと流動性不足による生産性の問題があり、120重量部より多いとブリードが発生し、べたつく問題がある。前記ブロック共重合体(a)100重量部に対する、前記炭化水素系ゴム用軟化剤(b)の配合量は好ましくは10?100重量部、より好ましくは50?100重量部である。」 (甲11c)「【0034】 <実施例1?16 及び比較例1?7> 二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して、下記の各構成成分を表1に示す配合に従って混合した後、220℃で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。これらの樹脂組成物を用いて、ブロー成形機(230℃)で成形体を作製した。 【0035】 <ブロック共重合体(a)><ブロック共重合体(a)> ・成分(a-1) ・・・ 製品名:セプトン4099、製造会社名:(株)クラレ、種類:スチレン-イソプレン・ブタジエン-スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、スチレンの含有量: 30質量%、重量平均分子量330000 ・・・ 【0036】 <炭化水素系ゴム用軟化剤(b)> ・成分(b-1) ダイアナプロセスオイルPW90(商品名)、出光石油化学株式会社製、パラフィン系オイル、動粘度(40℃):95.5mm^(2)/s、環分析パラフィン:71%、環分析ナフテン:29%、重量平均分子量:790 ・成分(b-2) ダイアナプロセスオイルPW380(商品名)、出光石油化学株式会社製、パラフィン系オイル、動粘度(40℃):381.6mm^(2)/s、環分析パラフィン:73%、環分析ナフテン:27%、重量平均分子量:1304 ・・・ 【0038】 【表1】 」 (12)甲第12号証に記載された事項 甲第12号証には、以下の事項が記載されている。 (甲12a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 スチレン系ブロック共重合物(A)5?40重量部、粘着付与樹脂(B)25?60重量部及び可塑剤(C)20?50重量部を合計が100重量部になるように配合してなるホットメルト型粘着組成物であって、 スチレン系ブロック共重合物(A)は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合物の水素添加物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合物の水素添加物及びスチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレンブロック共重合物の水素添加物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、 粘着付与樹脂(B)は、ホットメルト型粘着組成物100重量部中5重量部以上の割合を占めるスチレン樹脂と、石油系樹脂及び/又はテルペン系樹脂とを含み、 可塑剤(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算重量平均分子量が700?10000である、 ことを特徴とするホットメルト型粘着組成物。」(特許請求の範囲を参照) (甲12b)「【0027】 本発明のホットメルト型粘着組成物を構成するスチレン系ブロック共重合物(A)、粘着付与樹脂(B)、及び可塑剤(C)の合計を100重量部としたとき、粘着付与樹脂(B)の配合量は25?60重量部である。好ましくは30?55重量部である。粘着付与樹脂(B)の配合量が25重量部未満であると、粘着性が低下することがある。粘着付与樹脂(B)の配合量が60重量部を超えると、低温領域でタックが消失してしまうことがある。 【0028】 本発明に用いられるホットメルト型粘着組成物を構成する可塑剤(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下、「GPC」とも略記する)によるポリスチレン換算重量平均分子量は700?10000である。好ましくは1000?9000である。可塑剤(C)の重量平均分子量が700未満であると、ブリードが起こる傾向にある。可塑剤(C)の重量平均分子量が10000を超えてしまうと、溶融時の流動性が低下する傾向にある。 可塑剤の種類としては、パラフィン成分が60重量%以上を占めるパラフィン系鉱物油軟化剤、流動パラフィン、ポリブテン等が挙げられる。好ましくはパラフィン系鉱物油軟化剤が挙げられる。 【0029】 可塑剤(C)の市販品としては、商品名「ダイアナプロセス PW-90」(出光興産社製)、商品名「ダイアナプロセス PS-90」(出光興産社製)、商品名「ダイアナプロセス PW-380」(出光興産社製)、・・・等を挙げることができる。」 (甲12c)「【実施例】 【0048】 以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。 なお、例中、「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」をそれぞれ表すものとする。 本発明におけるGPCによる重量平均分子量とは、ゲル状の粒子を充填したカラムに希薄な樹脂の溶液を流し、分子の大きさによって流出するまでの異なる時間を測定することにより得られる、ポリスチレン換算された重量平均分子量である。 具体的な測定条件は、以下の通りである。 装置:島津製作所社製 Prominence カラム:TOSOH製 TSKgel GMH ×2本連結 検出器:RID-10A 溶媒:THF(テトラヒドロフラン) カラム温度:40℃ 流速:1mL/分」 (甲12d)「【0049】 (製造例1?15) 表1に示した部数で、撹拌機を備えたニーダーにスチレン系ブロック共重合物(A)、粘着付与樹脂(B)、可塑剤(C)、必要に応じて(A)、(B)、(C)以外のその他の成分を添加し、160℃で3時間撹拌し、ホットメルト型粘着組成物を得た。 【0050】 【表1】 ・・・ 【0053】 表1に記載の可塑剤(C)の略号を以下に示す。 ダイアナプロセス PW-32:出光興産社製「ダイアナプロセス PW-32」、重量平均分子量500 ダイアナプロセス PW-90:出光興産社製「ダイアナプロセス PW-90」、重量平均分子量750 ・・・ ダイアナプロセス PW-380:出光興産社製「ダイアナプロセス PW-380」、重量平均分子量1200 イ ・・・」 (甲12e)「【産業上の利用可能性】 【0061】 ・・・ また、本発明のホットメルト型粘着組成物は、一般ラベル、シールの他、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着付与樹脂、接着剤、積層構造体用接着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング用等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、シート(ラミネート接着剤、保護シート等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、また、各種樹脂添加剤及びその原料等としても非常に有用に使用できる。」 (13)参考資料1に記載された事項 参考資料1には、以下の事項が記載されている。 (参1)「要旨 ラジカル重合によって得られたポリスチレン試料について同一の手順を用いたGPCの共同測定が21研究室によって行われ、得られた平均分子量のばらつきが詳しく検討された。数平均、重量平均、及びz-平均分子量の平均変動係数(標準偏差を平均値で割った値)はそれぞれ11.0、11.3、及び21.1%である。計算法、検出器の種類およびクロマトグラムの分割数は得られる平均分子量に著しい影響を与えない。同一カラムを用いる異なる研究室によって得られた平均分子量は20%を越える変動を示す。平均変動係数を10%以下に減らすには、カラムの分解能、溶媒の流量などの操作条件のわずかな変化に十分注意を払う必要がある。」(第507頁「要旨」) (14)引用文献Aに記載された事項 当審で参考までに引用する、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2014-177504号公報には、以下の事項が記載されている。 (引Aa)「【0051】 <<スチレンブロック共重合体>> SEBS-1:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、株式会社クラレ製「セプトン8006」、Mw:280,000、スチレン含有量33重量% SEEPS-1:スチレン-エチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体、株式会社クラレ製「セプトン4055」、Mw:280,000、スチレン含有量30重量% SEEPS-2:スチレン-エチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体、株式会社クラレ製「セプトン4077」、Mw:360,000、スチレン含有量30% SEEPS-3:スチレン-エチレン-(エチレン/プロピレン)-スチレンブロック共重合体、株式会社クラレ製「セプトン4099」、Mw:430,000、スチレン含有量30% SEBS-2:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、TSRC CORPORATION製「タイポール SEBS-6159」、Mw:390,000、スチレン含有量30重量% なお、上記重量平均分子量(Mw)は、サイズ排除クロマトグラフ測定方法を用いて測定した値である。」 第6 当審の判断 当審は、当審が通知した取消理由A?C及び申立人がした申立理由1?5によっては、いずれも、本件発明1、2、5に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 以下では、上記「第4 2」で示した申立人がした申立理由のうち、取消理由と同旨と記載した申立理由は、当審が取消理由通知で通知した取消理由とまとめて検討した。 1 申立ての却下 上記「第2 訂正の適否についての判断」及び「第3 特許請求の範囲の記載」で示したとおり、請求項3及び請求項4は、本件訂正により削除されているので、請求項3及び請求項4についての申立てを却下する。 2 取消理由について (1)取消理由Aについて(申立理由4と同旨) 取消理由Aア及びイの概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「1 取消理由通知の概要」「(1)取消理由A(実施可能要件)」で示したとおりであるところ、以下(ア)に再掲する。申立理由4の概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(4)申立理由4(実施可能要件)(取消理由Aと同旨。)」に記載したとおりであり、取消理由Aと同旨である。 (ア)取消理由A ア 本件訂正前の請求項1に係る発明の「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」の測定方法について、本件明細書の段落【0013】には「スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である」とのみしか記載されていない。 一方、本件明細書の段落【0033】、【0038】、【0039】の実施例1で用いられている「スチレン系熱可塑性エラストマー1」は「セプトン4099」で「SEEPS(Mw48万)」と「重量平均分子量」が「48万」と記載されているところ、甲第3号証、甲第7号証、甲第8?9号証、甲第11号証には、「セプトン4099」について異なる「重量平均分子量」が記載されていることから、本件訂正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」をどのようにして測定すれば再現可能に安定した値を得ることができるのか(より具体的には、例えば、「セプトン4099、SEEPS(Mw48万)、クラレ」の「重量平均分子量」を、どのようにして測定すれば再現可能に安定的に「48万」の「重量平均分子量」の値として得ることができるのか)、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとはいえない。 本件訂正前の請求項1を引用する請求項2?5についても同様である。 イ 本件訂正前の請求項1に係る発明の「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」の測定方法について、本件明細書の段落【0021】には「パラフィンオイル1、2の重量平均分子量は、それぞれ、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。また、測定器としてカラム(Polymer Laboratories製MIXED-E)を使用した」とのみしか記載されていない。 一方、本件明細書の段落【0033】、【0038】、【0039】の実施例1で用いられている「パラフィンオイル1」について、「パラフィンオイル1-1」は「PW-380」であり「Mw1500」、すなわち「重量平均分子量」が「1500」と記載されているところ、甲第8?10号証、甲第11号証、甲第12号証には、「PW-380」について異なる「重量平均分子量」が記載されている。 また、本件明細書の段落【0033】、【0038】、【0039】の実施例1で用いられている「パラフィンオイル2」について、「パラフィンオイル2-1」は「PW-90」であり「Mw900」、すなわち「重量平均分子量」が「900」と記載されているところ、甲第9?10号証、甲第11号証、甲第12号証には、「PW-90」について異なる「重量平均分子量」が記載されている。 そうすると、本件訂正前の請求項1に係る発明における発明特定事項である「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」をどのようにして測定すれば再現可能に安定した値を得ることができるのか、当業者が実施できるように明確かつ十分に記載されているとはいえない。 本件訂正前の請求項1を引用する請求項2?5についても同様である。 (イ)判断 a 上記アについて 上記アの「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」の測定方法について、本件明細書の段落【0013】には「スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である」と記載されている。 そして、特許権者が令和2年10月12日に提出した意見書において、「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」の測定方法に関して、以下の詳細な測定条件が記載されている。 「スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量のGPCによる測定条件について、詳細は以下のとおりである。 GPC:LC Solution (SHIMAZU製) 検出器:SPD-20A(SHIMAZU製) カラム:ALPHA-5000(TOSO製)を直列に2本つなぐ 溶媒:テトラヒドロフラン 温度:40℃ 流速:0.5ml/min 試料濃度:2mg/ml 上記測定条件によるセプトン4099の重量平均分子量は480,000である(本件明細書[0039])。」 上記本件明細書の段落【0013】に記載の測定方法に加え、上記意見書の記載を参酌すれば、請求項1に係る発明における発明特定事項である「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」を再現可能に安定的に測定できるといえるから、取消理由Aアは解消されたといえる。 b 上記イについて 上記イの「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」の測定方法について、本件明細書の段落【0021】には「パラフィンオイル1、2の重量平均分子量は、それぞれ、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。また、測定器としてカラム(Polymer Laboratories製MIXED-E)を使用した」と記載されている。 そして、特許権者が令和2年10月12日に提出した意見書において、「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」の測定方法に関して、以下の詳細な測定条件が記載されている。 「スチレン系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量のGPCによる測定条件について、詳細は以下のとおりである。 GPC:LC Solution (SHIMAZU製) 検出器:SPD-20A(SHIMAZU製) カラム: MIXED-E(Polymer Laboratories製) 溶媒:テトラヒドロフラン 温度:40℃ 流速:0.5ml/min 試料濃度:2mg/ml 上記測定条件によるパラフィンオイル2-1(PW-90)の重量平均分子量は900であり、パラフィンオイル1-1(PW-380)の重量平均分子量は1500である。(本件明細書[0039])。」 上記本件明細書の段落【0021】に記載の測定方法に加え、上記意見書の記載を参酌すれば、請求項1に係る発明における発明特定事項である「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」を再現可能に安定的に測定できるといえるから、取消理由Aイも解消されたといえる。 (ウ)申立人の主張について a 申立人の主張 申立人は、令和2年12月4日に提出した意見書において、「実施可能要件は、本件特許明細書の発明な詳細な説明が、請求項に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていることを求める要件である。ところが、意見書において、本件特許権者は、本件特許明細書に記載されている測定条件に関する説明と、本件特許の出願時の技術常識と、に基づいて、どのように測定すれば再現可能に安定した重量平均分子量が得られるのかについて、何ら説明していない。ここで、参考資料1に示すように、ポリスチレン標準試料であってもGPCにより測定される平均分子量が、測定機器、使用カラム、カラム温度、試料濃度、溶媒種、溶媒流量等の条件によりバラつくことは本件特許の出願前から公知であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている程度の事項から、再現可能に安定した重量平均分子量が得られるという技術常識は存在しない。東京高裁平成15年3月13日判決/平成13年(行ケ)第209号事件も同様の趣旨を判示している。なお、意見書には詳細な測定条件が記載されているが、意見書は本件特許明細書ではない」旨主張している。 b 申立人の主張の検討 まず、上記(イ)a及びbで検討したとおり、「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」について、上述した本件明細書の段落【0013】の測定方法の記載に加え、上記の意見書の記載を参酌すれば、請求項1に係る発明における発明特定事項である「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」を再現可能に安定的に測定できるといえる。また、「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」についても、上述した本件明細書の段落【0021】の測定方法の記載に加え、上記意見書の記載を参酌すれば、請求項1に係る発明における発明特定事項である「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」を再現可能に安定的に測定できるといえる。この点は、申立人も「意見書には詳細な測定条件が記載されている」と述べているとおりである。 次に、「スチレン系熱可塑性エラストマー」や「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」について、本件明細書に記載されていない測定条件について意見書に記載されている場合の、意見書の参酌の可否について検討する。 「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」について、本件明細書の段落【0013】には、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)」の測定値であること、「標準ポリスチレン換算値」であること、「テトラヒドロフラン(THF)」を溶媒とすることが記載されている。また、「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」については、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)」の測定値であること、「標準ポリスチレン換算値」であること、「テトラヒドロフラン(THF)」を溶媒とすることに加え、「測定器としてカラム(Polymer Laboratories製MIXED-E)を使用した」ことも記載されている。確かに、「スチレン系熱可塑性エラストマー」及び「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」の測定条件について、本件明細書には、「測定機器」、「検出器」、「温度」、「流速」、「試料濃度」について記載されておらず、「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」の測定条件についてはさらに「カラム」について記載されていない。しかしながら、これらの測定条件は、取消理由通知や異議申立書で引用した甲第3号証、甲第8?10号証も本件明細書と同程度の測定条件の記載がないことからすれば、意見書で示された「重量平均分子量」の測定条件は当業者が適宜に設定できる事項であるといえるし、また、甲第7号証の(甲7d)、甲第11号証の(甲11a)、甲第12号証の(甲12c)の記載からみて、意見書で示された「重量平均分子量」の測定条件は当業者からみて特異な条件ではないといえるから、本件明細書の段落【0013】及び【0022】の記載に加え、意見書で開示された測定条件も参照できるといえる。 したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。 (エ)小括 以上のとおり、取消理由A及び申立理由4は、理由がない。 (2)取消理由Bについて(申立理由3と同旨) 取消理由Bの概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「1 取消理由通知の概要」「(1)取消理由B(サポート要件)」で示したとおりであるところ、以下(ア)に再掲する。申立理由3の概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(4)申立理由3(サポート要件)(取消理由Bと同旨。)」に記載したとおりであり、取消理由Bと同旨である。 (ア)取消理由B 本件訂正前の請求項1に係る発明は、「・・・重量平均分子量が1,000以上のパラフィンオイル1と、重量平均分子量が1,000未満のパラフィンオイル2と、を含有し、・・・ホットメルト組成物」と、「パラフィンオイル1」と、「パラフィンオイル2」の両者を含有し、両者の区別を「重量平均分子量」が「1,000以上」であるか「1,000未満」であるかで区別することを発明特定事項として含む発明である。 本件訂正前の請求項1に係る発明の課題は、本件明細書の段落【0004】の記載からみて「耐揮発性、作業性、耐流動性(具体的には例えば、得られる接着剤が高温条件下で軟化又は変形しにくいこと。以下同様)、及び、密着性に優れるホットメルト組成物を提供する」ことであるといえる。 しかしながら、例えば、本件明細書の上記実施例1?3において、「パラフィンオイル1」として「重量平均分子量」が「1000」のものを用いた場合でも同様の効果を奏するのか、また、申立人が特許異議申立書の第31?32頁の「(4.3.3)特許法第36条第6項第1号」で主張する、「パラフィンオイル1」として「重量平均分子量」がその下限の「1000」のものを、「パラフィンオイル2」としてそのほぼ上限の「重量平均分子量」が「999」のものを用いた場合にも同様の効果を奏するのか、さらには、「重量平均分子量」が「1000」の「パラフィンオイル」を単独で用いた場合や「999」の「パラフィンオイル」を単独で用いた場合に比べて有利な効果を奏するのかについて、技術常識からみて、本件明細書の比較例1?2と比較した実施例1?3と同様の効果を奏するとは認められない。 そうすると、本件訂正前の請求項1に係る発明は、上記課題に照らして、技術常識を参酌しても、実施例・比較例において十分に裏付けられているとはいえず、当業者であっても上記課題を解決できると認識できるともいえないから、本件明細書の詳細な説明に記載されているとは認められない。また、本件訂正前の請求項1に係る発明を引用する請求項2?5も同様である。 よって、本件訂正前の請求項1?5に係る発明はサポートされているとはいえない。 (イ)判断 この点について、判断する。 本件訂正により、訂正前の請求項1における「パラフィンオイル1」の「重量平均分子量」について「1,000以上」とあるのを「1500?3000」と限定し、「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」について「1,000未満」とあるのを「900」以下と限定されたため、「パラフィンオイル1」として「重量平均分子量」が「1000」のものを用いた場合や、また、申立人が特許異議申立書の第31?32頁の「(4.3.3)特許法第36条第6項第1号」で主張する、「パラフィンオイル1」として「重量平均分子量」がその下限の「1000」のものを、「パラフィンオイル2」としてそのほぼ上限の「重量平均分子量」が「999」のものを用いた場合は本件発明1の範囲外となり、「パラフィンオイル1」と「パラフィンオイル2」について「重量平均分子量」の点からは、十分な差をもって明確に区別できるものとなった。さらに、本件明細書の実施例1?3では、「重量平均分子量」が「1500」である「パラフィンオイル1-1」、「重量平均分子量」が「900」である「パラフィンオイル2-1」を用いて、本願発明の課題が解決できることが示されているため、取消理由Bは、本件訂正により解消されたといえる。 (ウ)申立人の主張について a 申立人の主張 申立人は、令和2年12月4日に提出した意見書において、「本件特許明細書の実施例には、重量平均分子量が1500であるパラフィンオイル1-1と重量平均分子量が900であるパラフィンオイル2-1とを含む構成しか記載されていない。そうすると、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、パラフィンオイルの重量平均分子量が1500より大きい範囲及びパラフィンオイル2の重量平均分子量が900よりも小さい範囲まで、本件特許明細書の実施例の内容を拡張ないし一般化できるとはいえない」と主張している。 b 申立人の主張の検討 本件訂正後の本件発明1は、「パラフィンオイル1」の「重量平均分子量」について「1500?3000」と限定され、「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」について「900以下」と限定された。 本件明細書の実施例では、「パラフィンオイル1」として「重量平均分子量」が「1500」である「パラフィンオイル1-1」を、「パラフィンオイル2」として「重量平均分子量」が「900」である「パラフィンオイル2-1」を用いて、本願発明の課題が解決できることが示されており、(本i)の段落【0040】には「表1に示す結果から明らかなように、所定のパラフィンオイル1を含有しない比較例1は、耐揮発性が悪かった。所定のパラフィンオイル2を含有しない比較例2は、高粘度となり作業性が悪かった」ことが記載されており、「パラフィンオイル1」は「耐揮発性」に優れたものにする作用を有し、「パラフィンオイル2」は「作業性」、「耐流動性」に優れたものにする作用を有するといえる。 そして、本件明細書には本件発明の課題を解決できる「ホットメルト組成物」における「パラフィンオイル1」について、「重量平均分子量」が「1500?3000」の範囲のものであれば、「重量平均分子量」が「1500」である「パラフィンオイル1-1」と同様に「耐揮発性」に優れたものになると、当業者であれば理解できるといえる。また、「パラフィンオイル2」について「重量平均分子量」の下限は特定されていないものの、「パラフィンオイル」となるためには一定以上の「重量平均分子量」を有することは明らかであるし、本件明細書において、「重量平均分子量」が「900」のものが本願発明の課題を解決できることが具体的なデータとともに記載されているから、「パラフィンオイル2」として「重量平均分子量」が「900以下」であれば、「耐流動性」、「作業性」に優れたものになると、当業者であれば理解できるといえる。 これに対して、申立人は、具体的な反証、例えば、「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」について、具体的に課題を解決できない例を挙げた上で主張している訳ではない。 したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。 (エ)小括 以上のとおり、取消理由B及び申立理由3は、理由がない。 (3)取消理由Cについて(申立理由2(進歩性)と同旨) ア 甲第3号証に記載された発明について 甲第3号証の上記摘記(甲3g)には、実施例1に着目すると、 「スチレン系熱可塑性エラストマーのSEEPSを100質量部、 炭化水素系可塑剤を1000質量部、 スチレン系樹脂1を150質量部、 ヒンダードフェノール系酸化防止剤1を5質量部、 着色剤を10部、 紫外線吸収剤1を1質量部とを、 加熱して混合したホットメルト接着剤組成物」の発明が記載されている。 また、上記摘記(甲3h)には、「スチレン系熱可塑性エラストマー」である「SEEPS」が「セプトン4099」であること、「炭化水素系可塑剤」が「パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製)」であること、「スチレン系樹脂1」が「芳香族系炭化水素樹脂(FMR150、三井化学社製)」であることが記載されているから、甲第3号証には、 「スチレン系熱可塑性エラストマーのSEEPSである「セプトン4099」を100質量部、 炭化水素系可塑剤である「パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製)」を1000質量部、 スチレン系樹脂1である「芳香族系炭化水素樹脂(FMR150、三井化学社製)」を150質量部、 ヒンダードフェノール系酸化防止剤1を5質量部、 着色剤を10部、 紫外線吸収剤1を1質量部とを、 加熱して混合したホットメルト接着剤組成物」 の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「スチレン系熱可塑性エラストマーのSEEPSである「セプトン4099」」は、本件明細書の(本f)の段落【0039】の【表2】には「セプトン4099」は「Mw48万」と記載されているから、本件発明1の「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー」であるといえる。 甲3発明の「パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製)」は、「パラフィンオイル」であるといえ、特開2016-37555号公報の段落【0066】には、その重量平均分子量が600であることが記載されているから、本件発明1の「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2」に相当する。 甲3発明の「スチレン系樹脂1である「芳香族系炭化水素樹脂(FMR150、三井化学社製)」は、本件明細書の(本f)の段落【0039】の【表2】には「粘着付与剤1」が「FMR0150」であり「芳香族系粘着付与剤」で「三井化学」社製であることが記載されているから、本件発明1の「芳香族系粘着付与剤」に相当する。 また、甲3発明は、「スチレン系熱可塑性エラストマーのSEEPSである「セプトン4099」を100質量部に対して、「スチレン系樹脂1である「芳香族系炭化水素樹脂(FMR150、三井化学社製)」を150質量部含んでいることから、本件発明1の「前記粘着付与剤の含有量が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上である」との構成を満たすといえる。 本件発明1の「ホットメルト組成物」は、本件明細書の上記摘記(本a)の段落【0004】からみて接着剤としての利用も意図しているといえるから、甲3発明の「ホットメルト接着剤組成物」は本件発明1の「ホットメルト組成物」であるといえる。 甲3発明の「ホットメルト接着剤組成物」は、諸成分を「加熱して混合」して得たものであるが、本件発明1の「ホットメルト組成物」も本件明細書の(本f)の段落【0033】の記載からみて加熱条件下で混合して得たものであるといえる。 そうすると、両者は、 「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、 粘着付与剤と、 重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2と、を含有し、 前記粘着付与剤が、芳香族系粘着付与剤を含み、 前記粘着付与剤の含有量が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上である、ホットメルト組成物」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:「パラフィンオイル」について、本件発明1では、「重量平均分子量が1500?3000のパラフィンオイル1」と「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2」の両方を含有するのに対し、甲3発明では、「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル」のみを有する点。 相違点2:「パラフィンオイル」について、本件発明1では、「パラフィンオイル2」に対する「パラフィンオイル1」の「質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5」であるのに対し、甲3発明では、「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル」のみを有するので、上記質量比が特定されていない点。 相違点3:「記スチレン系熱可塑性エラストマー」100質量部に対する「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の含有量の合計について、本件発明1では、「500?3,000質量部」であるのに対し、甲3発明では、「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル」のみを「1000質量部」含有している点。 相違点4:「ホットメルト組成物」について、甲3発明では、「ヒンダードフェノール系酸化防止剤1を5質量部、着色剤を10部、紫外線吸収剤1を1質量部」も含有するのに対し、本件発明1では、他の添加剤を含むか明らかでない点。 (イ)判断 上記相違点1?3を併せて検討する。 甲第3号証には、上記相違点1?3に関する「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2」に加えて「重量平均分子量が1500?3000のパラフィンオイル1」を併用することが記載されていないから、「パラフィンオイル2」に対する「パラフィンオイル1」の「質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5」とすること、「スチレン系熱可塑性エラストマー」100質量部に対する「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の含有量の合計について「500?3,000質量部」とすることも記載されていない。 上記相違点1の「パラフィンオイル」等の「炭化水素系可塑剤」の併用について、(甲3d)には「炭化水素系可塑剤としては、特に制限されるものではなく、従来より公知の可塑剤を用いることができ、例えば、パラフィン系、ナフテン系若しくは芳香族系のプロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン及び液状ポリイソプレン等の液状樹脂、流動パラフィン、オレフィンプロセスオイル、及びこれらを2種以上混合した混合物等が挙げられる」ことが記載されており、「炭化水素系可塑剤」について、「2種以上混合した混合物」を用いることができることが記載されているものの、これは、「公知の可塑剤」である「パラフィン系、ナフテン系若しくは芳香族系のプロセスオイル、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン及び液状ポリイソプレン等の液状樹脂、流動パラフィン、オレフィンプロセスオイル」の「2種以上混合」して用いることができることと解され、同じ1種の「可塑剤」である「パラフィンオイル」について「重量平均分子量が900以下」のものと「重量平均分子量が1500?3000」のものの、「重量平均分子量」が異なる「パラフィンオイル」を「2種以上混合」して用いることまで記載されているとはいえない。 したがって、甲第3号証からは、甲3発明において、「パラフィンオイル」について、「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル」に加えて、「重量平均分子量が1500?3000パラフィンオイル」をさらに配合して、「重量平均分子量」が異なる「2種以上混合」して用いることを動機づけることはできない。 甲第8?10号証には、「シール材」等に用いる「熱可塑性エラストマー組成物」において、可塑剤・非芳香族系ゴム用軟化剤として、パラフィン系オイルを用いること、2種以上混合したものを用いてよいことが記載されている(甲第8号証の上記摘記(甲8a)、(甲8c)、(甲8g)、甲第9号証の上記摘記(甲9a)、(甲9c)、(甲9g)、甲第10号証の上記摘記(甲10a)、(甲10c)、(甲10g)を参照)。さらに、甲第8号証の上記摘記(甲8d)?(甲8f)の実施例1?5、及び甲第9号証の上記摘記(甲9d)?(甲9f)の実施例3、4、6、甲第10号証の上記摘記(甲10d)?(甲10f)の実施例2,4、6、8には、「ダイアナプロセスオイルPW380」と「ダイアナプロセスオイルPW32」とを併用した例が記載されている。これらの実施例において、「ダイアナプロセスオイルPW380」は「重量平均分子量」が「1500?3000」の範囲内であり、「ダイアナプロセスオイルPW32」は「ダイアナプロセスオイルPW90」より重量平均分子量が小さいから「重量平均分子量」が「900以下」の範囲内といえる。また、これらの実施例における「ダイアナプロセスオイルPW32」に対する「ダイアナプロセスオイルPW380」の「質量比」は5/95?95/5」の範囲内であるものの、「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー」である「セプトン4099」100質量部に対する「ダイアナプロセスオイルPW380」及び「ダイアナプロセスオイルPW32」の含有量の合計は「500?3,000質量部」の範囲内ではない。 ここで、甲第8?10号証の「(D)非芳香族系軟化剤」あるいは「(B)非芳香族系ゴム用軟化剤 」を配合する目的と配合割合について一般記載をみると、甲第8号証の段落【0020】?【0021】には「((D)非芳香族系軟化剤)・・・(D)成分の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物を低硬度にしながらもブリードアウトを抑制するという観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.5?350質量部、・・・である」と「(A)水添ブロック共重合体)」である「(A)成分100質量部」に対して「350質量部」以下であることが記載され、甲第9号証の段落【0014】?【0016】には「[(B)非芳香族系ゴム用軟化剤]・・・(B)成分の配合量は、熱可塑性エラストマー組成物のショアA硬度を4?12度にしながらもブリードアウトを抑制するという観点から、(A)成分100質量部に対して170?270質量部である必要があり、・・・である]と「(A)水添ブロック共重合体」である「(A)成分100質量部」に対して「270質量部」以下であることが記載され、甲第10号証の(甲10a)の【請求項1】には「(A)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなるブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体であって、重量平均分子量が30万?70万である水添ブロック共重合体100質量部、・・・、(D)(i)・・・及び(ii)・・・からなる非芳香族系ゴム用軟化剤170?270質量部を含有する、熱可塑性エラストマー組成物」と「(A)・・・水添ブロック共重合体100質量部」に対して「(D)・・・非芳香族系ゴム用軟化剤170?270質量部」と記載されている。 一方、甲第3号証の段落【0023】には、「炭化水素系可塑剤の含有量は、組成物が基材に対して施される際、基材の形状に対して密着でき、硬化物の解体性により優れるという観点から、スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500質量部以上2000質量部以下」であることが記載されている。 そうすると、甲第3号証において配合される「炭化水素系可塑剤」と甲第8?10号証で配合される「(D)非芳香族系軟化剤」あるいは「非芳香族系ゴム用軟化剤」とは、その配合の目的は異なり、そして、配合量も異なるものであり重複する範囲もないことから、甲3発明において、炭化水素系可塑剤である「パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製)」に代えて、そのまま「ダイアナプロセスオイルPW380」と「ダイアナプロセスオイルPW32」を併用したものを用いることはできないといえる。 したがって、いくら甲第8?10号証の記載をみても、甲3発明において、炭化水素系可塑剤である「パラフィン系プロセスオイル(ハイコールK350、カネダ株式会社製)」に代えて「ダイアナプロセスオイルPW380」と「ダイアナプロセスオイルPW32」を併用すること、さらには「ダイアナプロセスオイルPW32」に対する「ダイアナプロセスオイルPW380」の「質量比」を「5/95?95/5」の範囲内とすること、「セプトン4099」100質量部に対する「ダイアナプロセスオイルPW380」及び「ダイアナプロセスオイルPW32」の含有量の合計を「500?3,000質量部」の範囲内とすることを動機づけることはできない。 甲第7号証には、「シール材」等に用いる、パラフィンオイルを含む「熱可塑性エラストマー組成物」において、「動粘度が低すぎると、揮発し易く、得られる組成物の保存安定性が低下することがある・・・。また、動粘度が高すぎると製造時における操作性に不備が生じる・・・」こと(上記摘記(甲7a)、(甲7b)、(甲7c)を参照)等が記載されているものの、「重量平均分子量」の異なる2種の「パラフィンオイル」を併用することまでは記載されていない。 甲第12号証の上記摘記(甲12a)、(甲12b)、(甲12e)には、「シール材」等に用いる「ホットメルト型粘着剤組成物」を構成する「可塑剤」について、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下、「GPC」とも略記する)によるポリスチレン換算重量平均分子量は700?10000である。好ましくは1000?9000である。可塑剤(C)の重量平均分子量が700未満であると、ブリードが起こる傾向にある。可塑剤(C)の重量平均分子量が10000を超えてしまうと、溶融時の流動性が低下する傾向にある」こと、「可塑剤(C)」の市販品として「商品名「ダイアナプロセス PW-90」(出光興産社製)、・・・、商品名「ダイアナプロセス PW-380」(出光興産社製)・・・が挙げることができる」ことが記載されてものの、「重量平均分子量」の異なる2種の「パラフィンオイル」を併用することまでは記載されていない。 甲第11号証には、段落【0020】には、「本発明の炭化水素系ゴム用軟化剤(b)としては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィン等が挙げられ、中でもパラフィン系オイル、ナフテン系オイル等のプロセスオイルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい」ことが記載されているものの、「重量平均分子量が1500?3000のパラフィンオイル」と「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル」を併用することまでは記載されていない。 また、甲第4?6号証には、「スチレン系熱可塑性エラストマー」を含む「ホットメルト組成物」において、「重量平均分子量」の異なる2種の「パラフィンオイル」を併用することは記載されていない。 したがって、相違点1?3は、甲3発明及び甲第4?12号証に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人の主張について a 申立人の主張 申立人は、令和2年12月4日に提出した意見書において、「当業者は、甲第3号証においてハイコールK350の一部を、ハイコールK350よりも重量平均分子量が高いパラフィン系オイル、例えば、ダイアナプロセスオイルPW380で置換して、重量平均分子量が高いパラフィン系オイルと、重量平均分子量が低いパラフィン系オイルとを併用することは容易に想到できる。ダイアナプロセスオイルPW32とダイアナプロセスオイルPE380との併用についても同様である」と主張している。 b 申立人の主張の検討 上記(イ)で判断したとおり、甲第4?12号証からは、甲3発明において、「重量平均分子量が1500?3000のパラフィンオイル1」をさらに添加するものとし、「重量平均分子量が1,000未満のパラフィンオイル2」と本件発明1の特定の割合で組み合わせて、さらに、これらの合計の配合量を「スチレン系熱可塑性エラストマー」対して本件発明1の特定の配合割合で配合することを動機づけることはできない。 したがって、上記申立人の主張を採用することはできない。 (エ)小括 以上のとおり、上記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3号証に記載された発明及び甲第4?12号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ 本件発明2、5について 本件発明2、5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2、5は、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証?甲第12号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ まとめ 以上のとおり、取消理由C及び申立理由2の理由によっては、本件発明1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、取消理由A?C、及び、申立人がした申立理由2?4によっては、本件発明1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。 3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について ここでは、上記「第4 2」で示した申立理由のうち、上記「2 取消理由について」で判断しなかった、以下の点について検討する。 ・申立理由1ア(拡大先願):特許異議申立書の理由1ア(拡大先願) ・申立理由1イ(拡大先願):特許異議申立書の理由1イ(拡大先願) ・申立理由5(明確性):特許異議申立書の理由5(明確性) 以下、事案に鑑みて、申立理由5(明確性)について検討した後に、申立理由1ア及び申立理由1イを検討する。 (1)申立理由5(明確性)について 申立理由5の概要は、上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(5)申立理由5(明確性)」で示したとおりであるところ、以下(ア)に再掲する。 (ア)申立理由5 上記「第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要」「2 特許異議申立理由の概要」「(4)申立理由4(実施可能要件)(取消理由Aと同旨。)」で述べたように、GPCによる重量平均分子量の測定値は測定機器、測定条件により誤差が生じることは明らかであるにもかかわらず、本件明細書には「スチレン系熱可塑性エラストマー」及び「パラフィンオイル」に関して重量平均分子量の測定機器および測定条件が詳細に記載されていない。 そうすると、具体的な「スチレン系熱可塑性エラストマー」及び「パラフィンオイル」が、訂正前の請求項1に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できないことになるから、当業者は訂正前の請求項1に記載された発明を明確に把握することはできない。 したがって、訂正前の請求項1に記載された発明及び請求項1を引用する請求項2?5に記載された発明は明確でない。 (イ)判断 上記「2 取消理由について」「(1)取消理由Aについて(申立理由4と同旨)」「(イ)判断」で述べたとおり、「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」について、本件明細書の段落【0013】に記載の測定方法に加え、上記意見書の記載を参酌すれば再現可能に安定的に測定できるといえるから、具体的な「スチレン系熱可塑性エラストマー」について上記意見書の測定条件を参酌すれば、訂正後の請求項1に係る発明の範囲に入るか否かを当業者は理解できるといえる。 また、「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」についても、本件明細書の段落【0021】に記載の測定方法に加え、上記意見書の記載を参酌すれば、再現可能に安定的に測定できるといえるから、具体的な「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」について上記意見書の測定条件を参酌すれば、訂正後の請求項1に係る発明の範囲に入るか否かを当業者は理解できるといえる。 そして、「スチレン系熱可塑性エラストマー」や「パラフィンオイル1」及び「パラフィンオイル2」の「重量平均分子量」について、本件明細書に記載されていないが、意見書に記載されている測定条件の参酌が可能であることは、上記「2 取消理由について」「(1)取消理由Aについて(申立理由4と同旨)」「(ウ)申立人の主張について」「b 申立人の主張の検討」で述べたとおりである。 よって、本件発明1は、明確でないとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、申立理由5は、理由がない。 (2)申立理由1ア(拡大先願)について ア 甲第1号証(先願明細書1)に記載された発明について 甲第1号証(先願明細書1)には、(先1g)、(先1h)の段落【0107】の【表1】のうち、実施例5に着目すると、 「(A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%) 30重量部 (A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%) 70重量部 (A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%) 60重量部 (B1-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW380,アニリン点142.7℃) 500重量部 (B2-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW90,アニリン点124.8℃) 400重量部 (C1)水添C5系樹脂(イーストマンケミカル製 商品名 イーストタックレジンH142R、重量平均分子量1030、軟化点142℃) 360重量部 (C2)水添DCPD系樹脂(エクソンモービル製 商品名 エスコレッツ5320、軟化点125℃) 340重量部 (C3)純C9モノマー樹脂(イーストマンケミカル製 商品名 エンデックス155、軟化点152℃) 20重量部 (D1)ヒンダートフェノール酸化防止剤(BASF製 商品名 イルガノックス1010) 10重量部 を配合したホットメルト組成物」の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と先願発明1とを対比する。 先願発明1の「(A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%)」、「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」、「(A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%)」は、本件明細書の(本b)の段落【0011】及び先願明細書1の(先1c)の【0031】の記載からみて、「スチレン系熱可塑性エラストマー」であるといえる。 このうち「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」は、本件明細書の(本f)の段落【0039】の【表2】からみて、「重量平均分子量」が「39万」であるといえる。 「(A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%)」は、引用文献Aの(引Aa)の記載からみて「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」よりも小さい「重量平均分子量」のものであり、「39万」よりも小さいものであるといえる。 「(A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%)」の「重量平均分子量」は明らかでない。 そうすると、先願発明1の「(A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%)」、「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」、「(A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%)」は、本件発明1の「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー」と、「スチレン系熱可塑性エラストマー」である限りにおいて一致する。 先願発明1の「(C1)水添C5系樹脂(イーストマンケミカル製 商品名 イーストタックレジンH142R、重量平均分子量1030、軟化点142℃)」、「(C2)水添DCPD系樹脂(エクソンモービル製 商品名 エスコレッツ5320、軟化点125℃)」、「(C3)純C9モノマー樹脂(イーストマンケミカル製 商品名 エンデックス155、軟化点152℃)」は、先願明細書1の(先1g)の段落【0086】の記載からみて、本件発明1の「粘着付与剤」に相当するといえる。 先願発明1において、「(C1)水添C5系樹脂(イーストマンケミカル製 商品名 イーストタックレジンH142R、重量平均分子量1030、軟化点142℃)」、「(C2)水添DCPD系樹脂(エクソンモービル製 商品名 エスコレッツ5320、軟化点125℃)」及び「(C3)純C9モノマー樹脂(イーストマンケミカル製 商品名 エンデックス155、軟化点152℃)」の合計量は「720重量部」(=360重量部+340重量部+20重量部)であり、「(A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%)」、「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」及び「(A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%)」の合計量は「160重量部」(=30重量部+70重量部+60重量部)であるから、本願発明1と同様に、「粘着付与剤の含有量が、・・・スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上」であるといえる。 先願発明1における「(B1-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW380,アニリン点142.7℃)」は、本件明細書の(本f)の段落【0039】の【表2】からみて、本件発明1における「重量平均分子量が1500?3000以上のパラフィンオイル1」に相当するといえる。 また、先願発明1における「(B2-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW90,アニリン点124.8℃)」は、本件明細書の(本f)の段落【0039】の【表2】からみて、本件発明1における「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2」であるといえる。 先願発明1において、「(B1-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW380,アニリン点142.7℃)」は「500重量部」、「(B2-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW90,アニリン点124.8℃)」は「400重量部」含有されているから、本件発明1と同様に、「パラフィンオイル2に対する・・・パラフィンオイル1の質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5」の範囲で配合されているといえる。 また、先願発明1において、「(B1-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW380,アニリン点142.7℃)」と「(B2-1)パラフィン系プロセスオイル(出光興産製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW90,アニリン点124.8℃)」の含有量は合計で「900重量部」(=500重量部+400重量部)であり、「(A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%)」、「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」及び「(A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%)」の含有量の合計は「160重量部」であるから、本件発明1と同様に、「パラフィンオイル1及び・・・パラフィンオイル2の含有量の合計が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部」であるといえる。 そうすると、本件発明1と先願発明1とは、 「スチレン系熱可塑性エラストマーと、 粘着付与剤と、 重量平均分子量が1500?3000以上のパラフィンオイル1と、 重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2と、を含有し、 前記粘着付与剤の含有量が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上であり、 前記パラフィンオイル2に対する前記パラフィンオイル1の質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5であり、 前記パラフィンオイル1及び前記パラフィンオイル2の含有量の合計が、前記スチレン 系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部である、 ホットメルト組成物」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点5:「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」について、本件発明1では、「45万以上」のものを用いるのに対し、先願発明1では、「重量平均分子量」が「39万」以下である「(A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%)」、「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」と、「重量平均分子量」が不明な「(A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%)」を用いている点。 相違点6:「粘着付与剤」について、本件発明1では、「芳香族系粘着付与剤」を含むのに対し、先願発明では、芳香族系粘着付与剤」を含まない点。 (イ)判断 上記相違点5について検討する。 先願発明1の「スチレン系熱可塑性エラストマー」である「(A1-1)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4055,スチレン含有量30重量%)」及び「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」は「重量平均分子量」が「45万」より小さいものであり、「(A2)SEP(クレイトンポリマー製 商品名 KRATON G1702HU スチレン含有量28重量%、ジブロック含有量100重量%)」は「重量平均分子量」が不明であるから、先願発明1は「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー」を含有していると判断できないから、先願明細書1に本願発明1が記載されているとはいえない。 先願明細書1の(先1c)の段落【0030】には「SEEPSとして市販品として、クラレ社製のセプトン4033、セプトン4044、セプトン4055、セプトン4077、セプトン4099が挙げられる」と「重量平均分子量」は「48万」である「セプトン4099」が例示されているものの、(先1g)の段落【0084】及び(先1h)の段落【0107】?【0109】の【表4】?【表6】をみると、「セプトン4099」は実施例1?17では用いられず、比較例8で用いられているにすぎず、(先1c)の段落【0027】には「熱可塑性ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、50000?500000であることが好ましく」に加えて「150000?400000であることがより好ましい」とも記載されているから、先願発明1において、「重量平均分子量」が「400000」より大きい「セプトン4099」を用いる積極的な動機付けがあるとはいえず、先願明細書1に「セプトン4099」を用いた態様が具体的に記載されているともいえない。 甲第4号証?甲第6号証には、可塑剤や潤滑油、キャリア液のアニリン点についての記載はあるものの、「スチレン系熱可塑性エラストマー」に関する記載はなく、先願発明1において、「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー」を用いることについての動機付けとなる記載はない。 (エ)小括 以上のとおり、先願明細書1には、本件発明1が記載されているとはいえない。 ウ 本件発明2、5について 本件発明2、5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2、5は、上記イで示した理由と同じ理由により、先願明細書1に記載されているとはいえない。 エ まとめ 以上のとおり、申立理由1アは、理由がない。 (3)申立理由1イ(拡大先願)について ア 甲第2号証(先願明細書2)に記載された発明について 先願明細書2の(先2g)の段落【0023】の記載及び【0024】の【表1】には、実施例1に着目すると、 「SEEPSブロックコポリマーであるセプトン4055(株式会社クラレ、商品名、重量平均分子量:23万、Mw/Mn:1.3) 100重量部 パラフィンオイル1であるダイアナプロセスオイルPW-380(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):409mm^(2)/s、動粘度(100℃):31mm^(2)/s) 600重量部 パラフィンオイル2であるダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):91mm^(2)/s、動粘度(100℃):11mm^(2)/s) 200重量部 芳香族系石油樹脂であるエンデックス155(イーストマンケミカルジャパン社、商品名、α-メチルスチレン系共重合体、軟化点:155℃) 120重量部 粘着付与剤1であるYSレジンPX1250(ヤスハラケミカル株式会社、商品名、テルペン樹脂) 50重量部 老化防止剤であるAL-122(共同薬品株式会社、商品名) 10重量部 着色料である旭サーマルカーボン(旭カーボン株式会社、商品名、カーボンブラック) 5重量部 の配合で、2軸エクストルーダーにて220℃で十分に混練して得た易解体性ホットメルト組成物」の発明(以下「先願発明2」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と先願発明2とを対比する。 先願発明2の「SEEPSブロックコポリマーであるセプトン4055(株式会社クラレ、商品名、重量平均分子量:23万、Mw/Mn:1.3)」は、本件明細書の(本f)の段落【0039】の【表2】及び引用文献Aの(引Aa)の記載からみて「(A1-2)SEEPS(クラレ製 商品名:セプトン4077,スチレン含有量30重量%)」よりも小さい「重量平均分子量」のものであり、「39万」よりも小さいものであるといえる。 先願発明2の「SEEPSブロックコポリマーであるセプトン4055(株式会社クラレ、商品名、重量平均分子量:23万、Mw/Mn:1.3)」は、本件発明1の「重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマー」と、「スチレン系熱可塑性エラストマー」である限りにおいて一致する。 先願発明2の「芳香族系石油樹脂であるエンデックス155(イーストマンケミカルジャパン社、商品名、α-メチルスチレン系共重合体、軟化点:155℃)」及び「粘着付与剤1であるYSレジンPX1250(ヤスハラケミカル株式会社、商品名、テルペン樹脂)」は、本件明細書の(本1e)の段落【0053】の記載からみて、本件発明1の「粘着付与剤」に相当するといえる。 また、先願発明2の「芳香族系石油樹脂であるエンデックス155(イーストマンケミカルジャパン社、商品名、α-メチルスチレン系共重合体、軟化点:155℃)」は、「芳香族」である「α-メチルスチレン」を重合成分として含む共重合体であるから、本件発明1の「芳香族系粘着付与剤」であるといえる。 先願発明2の「芳香族系石油樹脂であるエンデックス155(イーストマンケミカルジャパン社、商品名、α-メチルスチレン系共重合体、軟化点:155℃)」及び「粘着付与剤1であるYSレジンPX1250(ヤスハラケミカル株式会社、商品名、テルペン樹脂)」は合計で「170重量部」(=120重量部+50重量部)配合され、「スチレン系熱可塑性エラストマー」である「SEEPSブロックコポリマーであるセプトン4055(株式会社クラレ、商品名、重量平均分子量:23万、Mw/Mn:1.3)」は「100重量部」配合されているから、本件発明1と同様に、「粘着付与剤の含有量が、・・・スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上」であるといえる。 先願発明2の「パラフィンオイル1であるダイアナプロセスオイルPW-380(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):409mm^(2)/s、動粘度(100℃):31mm^(2)/s)」は、本件明細書の(本f)の段落【0039】の【表2】からみて、本件発明1における「重量平均分子量が1500?3000以上のパラフィンオイル1」に相当するといえる。 また、先願発明2の「パラフィンオイル2であるダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):91mm^(2)/s、動粘度(100℃):11mm^(2)/s)」は、本件明細書の(本f)の段落【0039】の【表2】からみて、本件発明1における「重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2」であるといえる。 先願発明2において、「パラフィンオイル1であるダイアナプロセスオイルPW-380(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):409mm^(2)/s、動粘度(100℃):31mm2/s)」は「600重量部」、「パラフィンオイル2であるダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):91mm^(2)/s、動粘度(100℃):11mm^(2)/s)」は「200重量部」含有されているから、本件発明1と同様に、「パラフィンオイル2に対する・・・パラフィンオイル1の質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5」の範囲で配合されているといえる。 また、先願発明2において、「パラフィンオイル1であるダイアナプロセスオイルPW-380(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):409mm^(2)/s、動粘度(100℃):31mm2/s)」と「パラフィンオイル2であるダイアナプロセスオイルPW-90(出光興産株式会社、商品名、動粘度(40℃):91mm^(2)/s、動粘度(100℃):11mm^(2)/s)」の含有量は合計で「800重量部」(=600重量部+200重量部)であり、「SEEPSブロックコポリマーであるセプトン4055(株式会社クラレ、商品名、重量平均分子量:23万、Mw/Mn:1.3)」の含有量は「100重量部」であるから、本件発明1と同様に、「パラフィンオイル1及び・・・パラフィンオイル2の含有量の合計が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部」であるといえる。 そうすると、本件発明1と先願発明2とは、 「スチレン系熱可塑性エラストマーと、 粘着付与剤と、 重量平均分子量が1500?3000以上のパラフィンオイル1と、 重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2と、を含有し、 前記粘着付与剤が、芳香族系粘着付与剤を含み、 前記粘着付与剤の含有量が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上であり、 前記パラフィンオイル2に対する前記パラフィンオイル1の質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5であり、 前記パラフィンオイル1及び前記パラフィンオイル2の含有量の合計が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部である、 ホットメルト組成物」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点7:「スチレン系熱可塑性エラストマー」の「重量平均分子量」について、本件発明1では、「45万以上」のものを用いるのに対し、先願発明2では、「重量平均分子量」が「39万」よりも小さい「SEEPSブロックコポリマーであるセプトン4055(株式会社クラレ、商品名、重量平均分子量:23万、Mw/Mn:1.3)」を用いている点。 (イ)判断 上記相違点7について検討する。 先願発明2の「スチレン系熱可塑性エラストマー」である「SEEPSブロックコポリマーであるセプトン4055(株式会社クラレ、商品名、重量平均分子量:23万、Mw/Mn:1.3)」が「45万」より小さいものであるから、先願明細書2に本願発明1が記載されているとはいえない。 先願明細書2の(先2c)の段落【0010】には、「本発明では、重量平均分子量が15万以上のSEEPSブロックコポリマー(A)を用いる。・・・当該(A)成分の重量平均分子量は、GPC法により測定した数値において、15万以上である必要があり、15万以上40万未満であることが好ましく、15万以上30万未満であることがより好ましく、20万以上25万未満であることが特に好ましい」と記載されていることから、先願発明2において、「SEEPSブロックコポリマー」として「重量平均分子量」が「45万以上」のものを動機づけることはできず、先願明細書2に本件発明1が記載されているとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、先願明細書2には、本件発明1が記載されているとはいえない。 ウ 本件発明2、5について 本件発明2、5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2、5は、上記イで示した理由と同じ理由により、先願明細書2に記載されているとはいえない。 エ まとめ 以上のとおり、申立理由1イは、理由がない。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、申立人がした申立理由1、5によっては、本件発明1、2、5を取り消すことはできない。 第7 むすび 特許第6607182号号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-5]について訂正することを認める。 本件発明3?4に係る特許に対する申立は、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下する。 当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、本件発明1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件発明1、2、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量平均分子量が45万以上のスチレン系熱可塑性エラストマーと、 粘着付与剤と、 重量平均分子量が1500?3000のパラフィンオイル1と、 重量平均分子量が900以下のパラフィンオイル2と、を含有し、 前記粘着付与剤が、芳香族系粘着付与剤を含み、 前記粘着付与剤の含有量が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、100質量部以上であり、 前記パラフィンオイル2に対する前記パラフィンオイル1の質量比(パラフィンオイル1/パラフィンオイル2)が、5/95?95/5であり、 前記パラフィンオイル1及び前記パラフィンオイル2の含有量の合計が、前記スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対して、500?3,000質量部である、ホットメルト組成物。 【請求項2】 前記スチレン系熱可塑性エラストマーが、SEEPSである、請求項1に記載のホットメルト組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 自動車ランプに使用される、請求項1又は2に記載のホットメルト組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-03-25 |
出願番号 | 特願2016-253672(P2016-253672) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 161- YAA (C08L) P 1 651・ 121- YAA (C08L) P 1 651・ 113- YAA (C08L) P 1 651・ 537- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大久保 智之 |
特許庁審判長 |
佐藤 健史 |
特許庁審判官 |
安田 周史 杉江 渉 |
登録日 | 2019-11-01 |
登録番号 | 特許第6607182号(P6607182) |
権利者 | 横浜ゴム株式会社 |
発明の名称 | ホットメルト組成物 |
代理人 | 武藤 三千代 |
代理人 | 三橋 史生 |
代理人 | 伊東 秀明 |
代理人 | 伊東 秀明 |
代理人 | 町田 洋一郎 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 町田 洋一郎 |
代理人 | 三橋 史生 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 武藤 三千代 |