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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1374899
異議申立番号 異議2020-700197  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-24 
確定日 2021-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6579206号発明「硬化性組成物、及び硬化物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6579206号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6579206号の請求項1ないし3及び5ないし7に係る特許を維持する。 特許第6579206号の請求項4に係る特許に対する本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6579206号に係る出願(特願2018-41253号、以下「本願」ということがある。)は、平成30年3月7日に出願人AGC株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、令和元年9月6日に特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、令和元年9月25日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき、令和2年3月23日付け(差出日同月24日)で特許異議申立人林法子(以下「申立人」ということがある。)により、「特許第6579206号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」ということがある。)

3.審理すべき範囲
上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6579206号の特許請求の範囲の請求項1ないし7に係る発明についての特許を審理の対象とすべきものであって、本件特許異議の申立てに係る審理の対象外となるものはない。

4.以降の手続の経緯
令和2年 7月30日付け 取消理由通知
令和2年 9月16日 意見書・訂正請求書
令和2年10月 8日付け 通知書(申立人あて)
令和2年11月11日 意見書(申立人)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人が主張する取消理由は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第6号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下の(1)ないし(3)が存するとしている。

(1)本件の請求項1ないし7の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1ないし7に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。)
(2)本件の請求項1ないし7の記載は、いずれも記載不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1ないし7に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。)
(3)本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、いずれも甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由3」という。)

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:国際公開第2016/002907号
甲第2号証:特開2008-37937号公報
甲第3号証:特開2017-214541号公報
甲第4号証:特開2014-234396号公報
甲第5号証:特開2017-115004号公報
甲第6号証:国際公開第2006/112340号
(以下、上記「甲第1号証」ないし「甲第6号証」を、それぞれ、「甲1」ないし「甲6」と略記することがある。)

第3 当審が通知した取消理由の概要
当審は、本件特許第6579206号に対する下記第2に示す特許異議の申立てを審理した上、以下の取消理由を通知した。

●本件の請求項1ないし3及び5ないし7の記載は、いずれも下記の理由により記載不備であり、特許法第36条第6項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由」という。)

第4 令和2年9月16日付訂正請求による訂正の適否

1.訂正内容
令和2年9月16日付訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、訂正前の請求項1及び同請求項1を引用する請求項2ないし7の全ての請求項を一群の請求項ごとに訂正するものであって、以下の訂正事項を含むものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「主鎖末端における末端基が、下式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、1分子中に含まれる活性水素含有基の数は、平均して0.3個以下であり、1つの主鎖末端に平均して1.0個より多くの前記反応性ケイ素基を有し、前記末端基の合計に対する前記反応性ケイ素基の数の割合で表されるシリル化率が50モル%超、97モル%以下であるオキシアルキレン重合体と、主鎖末端に下式1で表される反応性ケイ素基を有し、数平均分子量が15,000?80,000であり、分子量分布が1.8以下である(メタ)アクリル酸エステル重合体を含む硬化性組成物。」とあるのを、
「主鎖末端における末端基が、下式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、1分子中に含まれる活性水素含有基の数は、平均して0.3個以下であり、1つの主鎖末端に平均して1.0個より多くの前記反応性ケイ素基を有し、前記末端基の合計に対する前記反応性ケイ素基の数の割合で表されるシリル化率が50モル%超、97モル%以下であるオキシアルキレン重合体と、主鎖末端に下式1で表される反応性ケイ素基を有し、数平均分子量が15,000?80,000であり、分子量分布が1.8以下である(メタ)アクリル酸エステル重合体を含み、下記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有し、かつ1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む硬化性組成物。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2?7についても同様に訂正する。
なお、請求項4は、下記のとおり、削除される。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」とあるのを、「請求項1?3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」とあるのを、「請求項1?3、5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」とあるのを、「請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」に訂正する。

2.検討
以下の検討において、本件訂正前の請求項1ないし7をそれぞれ項番に従い「旧請求項1」のようにいい、訂正後の請求項1ないし7についてそれぞれ項番に従い「新請求項1」のようにいう。)

(1)訂正の目的

ア.訂正事項1及び2に係る訂正
上記訂正事項1に係る訂正では、旧請求項1について、旧請求項4に記載されていた「式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有し、かつ1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む」との事項を付加することにより、旧請求項1に対してその特許請求の範囲を減縮して新請求項1としていることが明らかであって、さらに訂正事項2に係る訂正では、旧請求項4に係る事項を全て削除しているから、訂正事項1及び訂正事項2に係る各訂正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ.訂正事項3ないし5に係る訂正
上記訂正事項3ないし5に係る各訂正では、旧請求項4を引用して記載された旧請求項5ないし7について、訂正事項2に係る訂正により旧請求項4に記載された事項が全て削除されたことに伴い、明瞭でないものとなった各請求項の引用関係を単に正したものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

ウ.小括
したがって、本件訂正における上記訂正事項1ないし5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる目的要件に適合する。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の有無
上記(1)でそれぞれ説示したとおり、訂正事項1及び2に係る各訂正は、旧請求項4の記載に基づき、旧請求項1に係る特許請求の範囲を実質的に減縮していることが明らかであり、また、訂正事項3ないし5に係る訂正は、旧請求項4を引用する旧請求項5ないし7につき、旧請求項4に記載された事項が全て削除されたことに伴い、明瞭でないものとなった引用関係を単に正したものであるから、訂正事項1ないし5に係る訂正は、いずれも、新たな技術的事項を導入するものではなく、訂正前の各請求項に係る特許請求の範囲を実質的に変更又は拡張するものでもない。
したがって、上記各訂正事項に係る訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、請求項1ないし7の全ての請求項についてされているから、本件訂正に係る訂正の適否の検討において、独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。

3.訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項並びに第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正を認める。

第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項
訂正後の本件特許に係る請求項1ないし7には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
主鎖末端における末端基が、下式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、1分子中に含まれる活性水素含有基の数は、平均して0.3個以下であり、1つの主鎖末端に平均して1.0個より多くの前記反応性ケイ素基を有し、前記末端基の合計に対する前記反応性ケイ素基の数の割合で表されるシリル化率が50モル%超、97モル%以下であるオキシアルキレン重合体と、主鎖末端に下式1で表される反応性ケイ素基を有し、数平均分子量が15,000?80,000であり、分子量分布が1.8以下である(メタ)アクリル酸エステル重合体を含み、下記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有し、かつ1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む硬化性組成物。
-SiX_(a)R_(3-a) 式1
[式中、Rは炭素数1?20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。aは1?3の整数である。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。aが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。]
【請求項2】
前記オキシアルキレン重合体は、少なくとも1つの主鎖末端が下式2で表される原子団である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化1】

(式中、R^(1),R^(3)はそれぞれ独立に2価の炭素数1?6の結合基を示し、結合基中の炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。R^(2),R^(4)はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1?10の炭化水素基を示す。nは1から10の整数を示す。R^(5)はそれぞれ独立に、炭素数1?20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Yはそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基を示す。bは1?3の整数である。R^(5)が複数存在する場合、R^(5)は互いに同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、Yは互いに同一でも異なってもよい。)
【請求項3】
前記オキシアルキレン重合体が、1分子中に主鎖末端を2個有し、各主鎖末端に前記末端基を2個有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(削 除)
【請求項5】
1つの主鎖末端における末端基が、不活性な1価の有機基であり、1つの主鎖末端に平均して前記式1で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
シーリング材用途である、請求項1?3、5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。」
(以下、各請求項に記載された事項で特定される発明を項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明7」といい、「本件発明」と総称することがある。)

第6 当審の判断
当審は、
当審が通知した上記取消理由及び申立人が主張する上記取消理由についてはいずれも理由がなく、ほかに各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきものであり、
また、請求項4に係る本件特許異議の申立ては、訂正により請求項の内容が全て削除されたことにより、審理すべき対象を欠く不適法なものとなって、さらに当該不適法を治癒することができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきもの、
と判断する。
以下、まず、当審が通知した取消理由につき検討し、次に、申立人が主張する取消理由につき検討・詳述する。

I.当審が通知した取消理由について

1.取消理由の内容
当審が通知した取消理由は、本件訂正前の請求項1ないし3及び5ないし7の記載は、いずれも下記の理由により記載不備であり、特許法第36条第6項(柱書)に規定する要件を満たしていないから、本件訂正前の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許は、上記要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるというものであり、より具体的に要約すると、当業者が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、たとえ当業者の技術常識に照らしたとしても、請求項1に記載された事項を具備する発明であれば、本件発明の解決課題を解決することができると認識できるものではないし、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7についても、請求項4及び同項を引用する部分の請求項5ないし7の場合を除き、請求項2、3及び5ないし7についても、請求項1に係る上記理由と同一の理由により、各請求項に記載された事項を具備する発明であれば、本件発明の解決課題を解決することができると認識できるものではないから、本件の請求項1ないし3及び5ないし7の記載では、各請求項に係る発明が本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということはできないことにより、本件の請求項1ないし3及び5ないし7の記載は、特許法第36条第6項第1号(いわゆる明細書のサポート要件)に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないというものである。

2.検討
適法にされた本件訂正後の新請求項1ないし7について、上記の点につき再度検討すると、新請求項1は、旧請求項1につき旧請求項4に記載された事項を付加して減縮されたものであるから、新請求項1の記載は、同項に係る発明が明細書の発明の詳細な説明に記載したものとなったものといえる。
そして、新請求項2、3及び5ないし7は、いずれも新請求項1を引用するものであるから、新請求項2、3及び5ないし7の記載は、同各項に係る発明が明細書の発明の詳細な説明に記載したものとなったものといえる。
してみると、本件の請求項1ないし3及び5ないし7の各記載は、同各項に係る発明が明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるということができる。

3.当審が通知した取消理由についてのまとめ
したがって、当審が通知した取消理由は、理由がない。

II.申立人が主張する取消理由1ないし3について
申立人が主張する上記第2に示した取消理由1ないし3について以下それぞれ検討する。

1.取消理由1について

(1)取消理由1の内容
申立人が主張する取消理由1は、申立書(第21頁?第23頁「イ.理由1」の欄)の記載からみて、本件訂正を踏まえて整理すると、
(a)本件の新請求項1における「主鎖末端における末端基が、下式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、・・1つの主鎖末端に平均して1.0個より多くの前記反応性ケイ素基を有」する「オキシアルキレン重合体」(以下「重合体A」という。)との事項、「主鎖末端に下式1で表される反応性ケイ素基を有」する「(メタ)アクリル酸エステル重合体」(以下「重合体B」という。)との事項及び「下記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有し、かつ1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するオキシアルキレン重合体」(以下「重合体C」という。)との事項並びに新請求項5における「1つの主鎖末端における末端基が、不活性な1価の有機基であり、1つの主鎖末端に平均して前記式1で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有するオキシアルキレン重合体」(以下「重合体D」という。)との事項において、「主鎖末端に」という規定では「全ての主鎖末端」及び「一部の主鎖末端」のいずれを意味するのか明確でなく、「1つの主鎖末端に」という規定では「ただ1つの主鎖末端」、「少なくとも1つの主鎖末端」及び「各主鎖末端」のいずれを意味するのか明確でないから、新請求項1又は5並びに同各項を直接又は間接的に引用する新請求項2、3、6及び7の記載では、同各項に係る発明が明確でないというもの(「1)理由1-1」の欄)、
(b)本件の新請求項1(旧請求項4)における重合体Cに係る事項における前段の「1つの主鎖末端に」と後段の「1つの主鎖末端に」とが、同じ主鎖末端を意味するのか、異なる主鎖末端を意味するのか明確でなく、後段の「1つの主鎖末端に平均して」との規定が、前段の「1つの主鎖末端」における平均を意味するのか、上記「オキシアルキレン重合体の全ての主鎖末端」における平均を意味するのか明確でないから、新請求項1及び同項を引用する新請求項2、3及び5ないし7の記載では、同各項に係る発明が明確でないというもの(「2)理由1-2」の欄)、並びに
(c)本件の新請求項5における重合体Dに係る事項における前段の「1つの主鎖末端に」と後段の「1つの主鎖末端に」との関係において、後段の「1つの主鎖末端に平均して」との規定が、前段の「1つの主鎖末端」における平均を意味するのか、上記「オキシアルキレン重合体の全ての主鎖末端」における平均を意味するのか明確でないから、新請求項5及び同項を引用する新請求項6及び7の記載では、同各項に係る発明が明確でないというもの(「3)理由1-3」の欄)、
との上記(a)ないし(c)を総合すると、請求項1又は5及び請求項1を引用する請求項2、3、6及び7の記載では、同各項に係る特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでなく、同法同条同項(柱書)に規定された要件を満たしておらず、本件の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきであるというものと認められる。

(2)検討
上記(a)ないし(c)の点につき併せて検討すると、本件の各請求項の上記各記載における「主鎖末端」なる表現は、文字どおり、重合体主鎖に存在する末端部を意味するものと解され、この点は請求項2において「主鎖末端」が「式2で表される原子団である」と規定されていることに照らして裏付けられるところである。
そして、請求項1の「主鎖末端における末端基」との表現からすれば、当該各「主鎖末端」は「末端基」を含むものであるところ、重合体Aに係る「1つの主鎖末端に平均して1.0個より多くの前記反応性ケイ素基を有」するとの規定、重合体Cに係る「1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有する」との規定及び重合体Dに係る「1つの主鎖末端に平均して前記式1で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有する」との規定は、いずれも各重合体分子に存在する全ての主鎖末端について、1つの主鎖末端あたりの反応性ケイ素基の平均個数を規定したものと理解することができる。
それに対して、重合体Bに係る「主鎖末端に下式1で表される反応性ケイ素基を有」するとの規定は、全ての主鎖末端に反応性ケイ素基を有することを意味し、重合体Cに係る「下記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有し」との規定及び重合体Dに係る「1つの主鎖末端における末端基が、不活性な1価の有機基であり」との規定は、いずれも各末端基を含む主鎖末端が1個存在すればよいことを意味するものと認められる。
してみると、上記各請求項における「主鎖末端」の技術的意味、「1つの主鎖末端に」なる表現の技術的意味及びそれらの対応関係については、明確であるから、請求項1ないし3及び5ないし7の記載では、同各項に係る発明が明確でないということはできない。

(3)取消理由1に係るまとめ
したがって、申立人が主張する上記取消理由1は理由がない。

2.取消理由2について

(1)取消理由2の内容
申立人が主張する取消理由2は、申立書(第23頁?第26頁「ウ.理由2」の欄)の記載に基づき整理すると、概略、以下のとおりであると解される。
本件発明1の解決課題は、「硬化物の引張強度及び伸び物性に優れるとともに、耐疲労性にも優れる硬化性組成物の提供」にあるものと認められるところ、
(a)本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例(比較例)に係る記載から、重合体A及び重合体Bに加えて重合体Cを使用した場合については、上記解決課題を解決できることが看取できるものの、重合体A及び重合体Bを含むことのみが規定され、重合体Cを含むことが規定されていない本件の旧請求項1に係る発明について、本件特許に係る出願時の技術常識を考慮しても、上記課題を解決できると当業者が認識できるとはいえない。旧請求項1を引用する旧請求項2ないし7についても同様である。(「1)理由2-1」の欄)
及び
(b)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、重合体Aと重合体Bとの含有量比につき「重合体Bの含有量は、重合体Aの100質量部に対して、5?200質量部が好ましく、10?180質量部がより好ましく、15?150質量部がさらに好ましい」とされ「重合体Bの含有量が上記範囲の下限値以上であると機械強度や耐候性に優れやすく、上限値以下であると粘度が低くなりやすく、作業性に優れやすい」と記載されており(【0044】)、実施例(比較例)に係る記載では、重合体Bの含有量が重合体Aの100質量部に対して50質量部である限られた実施例が記載されているだけであって(【0092】【表3】)、ほかに本件特許明細書には重合体Aと重合体Bとを配合することにより、上記解決課題が解決できる作用機構が説明されていないから、重合体Aと重合体Bとの配合比率が規定されていない本件の旧請求項1に係る発明について、本件特許に係る出願時の技術常識を考慮しても、上記課題を解決できると当業者が認識できるとはいえない。旧請求項1を引用する旧請求項2ないし7についても同様である。(「2)理由2-2」の欄)
そして、上記(a)及び(b)の点により、本件の旧請求項1ないし7に係る発明が、本件特許に係る出願時の技術常識を考慮しても、上記課題を解決できると当業者が認識できるとはいえないから、発明の詳細な説明に記載したものであるということはできず、本件の旧請求項1ないし7の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものでなく、同法同条同項(柱書)に規定された要件を満たしておらず、本件の請求項1ないし7に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきであるというものと認められる。

(2)検討
まず、上記(a)の点につき検討すると、本件訂正により旧請求項1は重合体Cを配合することが付加され、重合体A及び重合体Bに加えて重合体Cを配合することが規定された新請求項1に訂正され、新請求項2、3及び5ないし7はいずれも新請求項1を引用するものであるから、新請求項1ないし3及び5ないし7につき、上記(a)の点は理由がないものとなったことが明らかである。
次に、上記(b)の点につき検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を本件特許に係る出願時の技術常識に照らしつつ検討しても、重合体A及び重合体Bに加えて重合体Cを配合することが規定されそれらの配合比につき規定されていない新請求項1に係る発明が、上記課題を解決できない場合があることを当業者が認識できるような技術的要因があるものとは認められないから、新請求項1において重合体A、重合体B及び重合体Cの配合比に係る規定がないからといって、上記課題を解決できない場合があることを当業者が認識することはできない。
してみると、当業者は、本件の新請求項1に記載された事項を具備する発明であれば、上記課題を解決できると認識することができるものと認められるから、上記(b)の点は理由がない。
したがって、上記(a)及び(b)の点はいずれも理由がなく、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、新請求項1に記載された事項を具備する発明であれば、上記課題を解決できることを認識することができるものと認められる。

(3)取消理由2に係る検討のまとめ
よって、申立人が主張する上記取消理由2は理由がない。

3.取消理由3について

(1)各甲号証に記載された事項及び記載された発明
上記申立人が主張する取消理由3は、特許法第29条に基づく取消理由であるから、まず、申立人が提示した各甲号証に記載された事項を確認し、記載された事項に基づき、甲1に記載された発明の認定を行う。

ア.甲1

(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「反応性ケイ素基を1つの末端部位に平均して1.0個より多く有する反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)、及び
一般式(1):
-SiRX_(2) (1)
(式中、Rはヘテロ原子含有基又はハロゲン原子からなる置換基を有していてもよい炭素原子数が1?20の炭化水素基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。)
で表される反応性ケイ素基を1分子あたり平均して1.0個以上有する反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)
を含有する硬化性組成物。」([請求項1])が記載され、
「反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)が、ホモポリマーのガラス転移点が80℃以下であり、反応性ケイ素基を有さない反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体(b2)の単位を40重量%以上含有する、請求項1?5のいずれか1項に記載の硬化性組成物」([請求項8])及び「反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)の数平均分子量が、4,000以上である、請求項8に記載の硬化性組成物」([請求項9])も記載されている。

(イ)甲1に記載された発明
甲1には、上記(ア)の記載事項からみて、
「反応性ケイ素基を1つの末端部位に平均して1.0個より多く有する反応性ケイ素基含有ポリオキシアルキレン系重合体(A)、及び
一般式(1):
-SiRX_(2) (1)
(式中、Rはヘテロ原子含有基又はハロゲン原子からなる置換基を有していてもよい炭素原子数が1?20の炭化水素基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表す。)
で表される反応性ケイ素基を1分子あたり平均して1.0個以上有する数平均分子量が4,000以上である反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)
を含有する硬化性組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。

イ.甲2
甲2には、
「以下の二成分:
(A)架橋性官能基を少なくとも1個有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が15000以上30000以下のポリエーテル系重合体(I)、および、
(B)前記ポリエーテル系重合体(I)と相溶し、架橋性官能基を重合体末端に少なくとも1個有する、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が35000以上50000以下のビニル系重合体(II)
を含有する硬化性組成物。」(【請求項1】)が記載され、
「前記ビニル系重合体(II)がアクリル酸アルキル由来の構造単位を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。」(【請求項2】)、「前記ビニル系重合体(II)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比が1.8未満の重合体である、請求項1?8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」(【請求項9】)、「前記ポリエーテル系重合体(I)の架橋性官能基が架橋性シリル基である、請求項1?10記載のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」(【請求項10】)及び「前記ビニル系重合体(II)の末端架橋性官能基が架橋性シリル基である、請求項1?12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」(【請求項13】)も記載されている。

ウ.甲3
甲3には、
「1分子中に2個の主鎖末端基を有し、主鎖末端基1個当たりの分子量が2,000以上である、直鎖構造を有する重合体(A)と、
1分子中に3個以上の主鎖末端基を有し、主鎖末端基1個当たりの分子量が2,000以上である、分岐構造を有する重合体(B)を含有する硬化性組成物であって、
重合体(A)および重合体(B)の主鎖末端基は、下記式(1)で表わされる反応性ケイ素基を有し、
前記重合体(A)と前記重合体(B)の主鎖末端基1個当たりの分子量が下記式(2)を満たすことを特徴とする硬化性組成物。
-SiX_(a)R_(3-a)・・・(1)
[式中、Rは炭素数1?20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基または加水分解性基を示す。aは1?3の整数である。aが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なっていてもよい。]
[2×(重合体(A)の主鎖末端基1個当たりの分子量)]-(重合体(B)の主鎖末端基1個当たりの分子量)≦7,500・・・(2)」(【請求項1】)が記載され、「前記重合体(A)および前記重合体(B)が、主鎖骨格にアルキレンオキシド単量体に基づく繰り返し単位を含む重合体である請求項1に記載の硬化性組成物。」(【請求項2】)及び「前記重合体(A)の分子量分布が1.8以下であり、前記重合体(B)の分子量分布が1.8以下である請求項1または2に記載の硬化性組成物。」(【請求項3】)も記載されている。

エ.甲4
甲4には、
「1分子中に平均して2個以上の反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)と、1分子中に平均して1個以上のトリアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有する硬化性組成物であって、
(i)重合体(A)が、一般式(1)に示される反応性ケイ素基と一般式(2)
-SiR^(1)_(1)X_(2) (1)
-SiY_(3) (2)
(一般式(1)中、R^(1)は炭素数1?20の置換あるいは非置換の炭化水素基である。一般式(1)(2)中のX、Yは水酸基または加水分解性基を示す)に示される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A1)である、および/または、
(ii)重合体(A)が、一般式(1)に示される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A2)および一般式(2)に示される反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A3)を含有することを特徴とする硬化性組成物。」(【請求項1】)が記載され、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)が、一分子中に平均して1.27個以上のトリメトキシシリル基を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の硬化性組成物。」(【請求項9】)も記載されている。

オ.甲5
甲5には、
「(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体100重量部、(B)モノおよび/またはジアルキルアリールスルホンアミド20重量部以上150重量部以下および(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤2重量部以上10重量部未満を含み、(B)アルキルアリールスルホンアミド100重量部に対して(C)酸化防止剤10重量部以上25重量部未満であることを特徴とする車両用硬化性組成物。」(【請求項1】)が記載され、「(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体が、(A1)反応性ケイ素基を有するポリオキシアルキレン系重合体および/または(A2)反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体であることを特徴とする請求項1に記載の車両用硬化性組成物。」(【請求項2】)及び「(A)成分の反応性ケイ素基が下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の車両用硬化性組成物。
-SiR^(1)_(3-a)X_(a) (1)
(ここで、一般式(1)において、R^(1)はそれぞれ独立に炭素原子数1?20のアルキル基、炭素原子数6?20のアリール基、炭素原子数7?20のアラルキル基、または-OSi(R’)_(3)(式中、R’はそれぞれ独立に炭素原子数1?20の炭化水素基を示す)で示されるトリオルガノシロキシ基を示す。Xはそれぞれ独立に水酸基または加水分解性基を示す。aは1?3の整数である。)」(【請求項5】)も記載されている。

カ.甲6
甲6には、
「[1] 成分として
(A)反応性ケイ素基を有する有機重合体、
(B)二価のカルボン酸錫塩、
(C)反応性ケイ素基を有しない、アミン化合物
を含有する、湿気硬化性組成物。」及び
「[4] (A)成分が、反応性ケイ素基を有するポリオキシプロピレン系重合体と、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体との混合物である請求項1に記載の硬化性組成物。」(いずれも「請求の範囲」)が記載されている。

(2)本件発明1に係る検討

ア.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
「1つの主鎖末端に平均して1.0個より多くの前記反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体と、下式1で表される反応性ケイ素基を有し、数平均分子量が15,000?80,000である(メタ)アクリル酸エステル重合体を含む硬化性組成物。
-SiX_(a)R_(3-a) 式1
[式中、Rは炭素数1?20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。aは1?3の整数である。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。aが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。]」
で重複一致するものと認められ、少なくとも下記の2点で相違する。

相違点1:「(メタ)アクリル酸エステル重合体」について、本件発明1では「主鎖末端に下式1で表される反応性ケイ素基を有し、・・分子量分布が1.8以下である(メタ)アクリル酸エステル重合体を含」むのに対して、甲1発明では「一般式(1)(式及びその説明は省略)で表される反応性ケイ素基を1分子あたり平均して1.0個以上有する数平均分子量が4,000以上である反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)を含有する」であり、「反応性ケイ素基」の位置及び分子量分布が特定されていない点
相違点2:本件発明1では「式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有し、かつ1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む」のに対して、甲1発明では当該「オキシアルキレン重合体を含む」ことにつき特定されていない点

イ.相違点に係る検討
上記相違点1につき検討すると、甲1の記載をみても、甲1発明における「反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)」として、反応性ケイ素基を側鎖に有するものを使用することが記載されているのみであって、反応性ケイ素基を重合体の主鎖末端に有するものを使用することにつき、記載も示唆もされていない。
また、他の甲号証の記載を検討しても、甲1発明における「反応性ケイ素基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体(B)」として、反応性ケイ素基を重合体の主鎖末端に有するものを使用することを動機付けられるものとは認められない。
してみると、上記相違点1は、甲1発明において当業者が適宜なし得ることということはできない。

ウ.小括
したがって、本件発明1は、上記相違点2につき検討するまでもなく、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証に記載された知見を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということができない。

(3)本件発明2、3及び5ないし7について
本件発明2、3及び5ないし7は、いずれも本件発明1を引用するものであるところ、本件発明1については、上記(2)で説示したとおりの理由により、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証に記載された知見を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということができないのであるから、本件発明2、3及び5ないし7についても、同一の理由により、甲1に記載された発明に基づいて、たとえ他の甲号証に記載された知見を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということができない

(4)取消理由3に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3及び5ないし7は、いずれも、甲1に記載された発明に基づいて、たとえ甲1ないし6に記載された知見を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、本件請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条に違反してされたものではなく、取消理由3は理由がないから、各特許を取り消すことはできない。

4.小括
以上のとおり、申立人が主張する取消理由1ないし3は、いずれも理由がなく、本件の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

III.当審の判断のまとめ
よって、本件の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許は、当審が通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由につき、いずれも理由がなく、取り消すことができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正については適法であるからこれを認める。
また、本件の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許は、当審が通知した理由並びに申立人が主張する理由及び提示した証拠によっては、取り消すことができない。
ほかに、本件の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖末端における末端基が、下式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかであり、1分子中に含まれる活性水素含有基の数は、平均して0.3個以下であり、1つの主鎖末端に平均して1.0個より多くの前記反応性ケイ素基を有し、前記末端基の合計に対する前記反応性ケイ素基の数の割合で表されるシリル化率が50モル%超、97モル%以下であるオキシアルキレン重合体と、主鎖末端に下式1で表される反応性ケイ素基を有し、数平均分子量が15,000?80,000であり、分子量分布が1.8以下である(メタ)アクリル酸エステル重合体を含み、下記式1で表される反応性ケイ素基、活性水素含有基又は不飽和基のいずれかである末端基を1つの主鎖末端に1個有し、かつ1つの主鎖末端に平均して反応性ケイ素基を0.5個超1.0個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む硬化性組成物。
-SiX_(a)R_(3-a) 式1
[式中、Rは炭素数1?20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。aは1?3の整数である。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。aが2以上の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。]
【請求項2】
前記オキシアルキレン重合体は、少なくとも1つの主鎖末端が下式2で表される原子団である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化1】

(式中、R^(1),R^(3)はそれぞれ独立に2価の炭素数1?6の結合基を示し、結合基中の炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。R^(2),R^(4)はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1?10の炭化水素基を示す。nは1から10の整数を示す。R^(5)はそれぞれ独立に、炭素数1?20の1価の有機基であって、加水分解性基以外の有機基を示し、Yはそれぞれ独立に水酸基又は加水分解性基を示す。bは1?3の整数である。R^(5)が複数存在する場合、R^(5)は互いに同一でも異なってもよい。Yが複数存在する場合、Yは互いに同一でも異なってもよい。)
【請求項3】
前記オキシアルキレン重合体が、1分子中に主鎖末端を2個有し、各主鎖末端に前記末端基を2個有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(削 除)
【請求項5】
1つの主鎖末端における末端基が、不活性な1価の有機基であり、1つの主鎖末端に平均して前記式1で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有するオキシアルキレン重合体をさらに含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
シーリング材用途である、請求項1?3、5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1?3、5、6のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-31 
出願番号 特願2018-41253(P2018-41253)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 橋本 栄和
近野 光知
登録日 2019-09-06 
登録番号 特許第6579206号(P6579206)
権利者 AGC株式会社
発明の名称 硬化性組成物、及び硬化物  
代理人 特許業務法人 志賀国際特許事務所  
代理人 特許業務法人志賀国際特許事務所  

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