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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1374901
異議申立番号 異議2020-700446  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-25 
確定日 2021-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6626387号発明「皮膚用乳化組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6626387号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-10]について訂正することを認める。 特許第6626387号の請求項6?10に係る特許を維持する。 特許第6626387号の請求項1?5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6626387号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成28年 3月29日に出願され、令和 1年12月6日にその特許権の設定登録がされ、同年12月25日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 2年 6月25日差出:特許異議申立人 山下 桂(以下、「申立人」という。)による特許異議の申し立て
同 年10月 1日付け:取消理由通知書
同 年12月 2日差出:特許権者による意見書及び訂正請求書
令和 3年 1月18日差出:申立人による意見書

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
上記令和 2年12月 2日差出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、一群の請求項である請求項1?6からなる本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。(下線は、訂正箇所を表す。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である請求項1?5の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。」と記載されているのを、「下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10であり、高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール」に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項6の記載について、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である請求項1?5の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。」とあるのを、訂正前の請求項2の記載を根拠に「前記成分Aが、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油である請求項6に記載の皮膚用乳化組成物。」と改め、新たに請求項7とする。

(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項6の記載について、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である請求項1?5の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。」とあるのを、訂正前の請求項3の記載を根拠に「前記成分Bが、分岐脂肪酸と多価アルコールのエステル油、及び/又は分岐脂肪酸と分岐高級アルコールのエステル油である請求項6又は7に記載の皮膚用乳化組成物。」と改め、新たに請求項8とする。

(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項6の記載について、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である請求項1?5の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。」とあるのを、訂正前の請求項4の記載を根拠に「前記成分Aの含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%中、1.5?2.5質量%であり、前記成分Bの含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%中、2.5?15.0質量%である請求項6?8の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。」と改め、新たに請求項9とする。

(10)訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項6の記載について、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である請求項1?5の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。」とあるのを、訂正前の請求項5の記載を根拠に「さらに下記成分Eを含有することを特徴とする請求項6?9の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
成分E:増粘性高分子」と改め、新たに請求項10とする。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1?5
ア 訂正の目的について
訂正事項1?5は、それぞれ対応する請求項1?5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1?5は、それぞれ対応する請求項1?5を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであること
訂正事項1?5は、それぞれ対応する請求項1?5を削除するものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1?5の記載を引用する記載であるところ、請求項間の請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項へ改めるとともに、請求項2?5を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」、及び、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1?5の記載を引用する記載であるところ、請求項間の請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項へ改めるとともに、請求項2?5を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであること
訂正事項6は、訂正前の請求項6が請求項1?5の記載を引用する記載であるところ、請求項間の請求項間の引用関係を解消して、独立形式の請求項へ改めるとともに、請求項2?5を引用しないものとするものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項7
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項6が請求項1?5の記載を引用する記載であるところ、請求項2のみを引用するものとして、請求項の引用請求項数を減少した発明の記載とし、かつ、上記(1)、(2)の訂正事項2、6に伴い、訂正後の請求項6を引用する引用形式の請求項7として書き改めたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項7は、上記アのとおり、実質的な内容を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであること
訂正事項7は、上記アのとおり、実質的な内容を変更するものではないから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項8
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項6が請求項1?5の記載を引用する記載であるところ、請求項3のみを引用するものとして、請求項の引用請求項数を減少した発明の記載とし、かつ、上記(1)?(3)の訂正事項3、6、7に伴い、訂正後の請求項6又は7を引用する引用形式の請求項8として書き改めたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項8は、上記アのとおり、実質的な内容を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであること
訂正事項8は、上記アのとおり、実質的な内容を変更するものではないから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項9
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項6が請求項1?5の記載を引用する記載であるところ、請求項4のみを引用するものとして、請求項の引用請求項数を減少した発明の記載とし、かつ、上記(1)?(4)の訂正事項4、6?8に伴い、訂正後の請求項6?8の何れか一項を引用する引用形式の請求項9として書き改めたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項9は、上記アのとおり、実質的な内容を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであること
訂正事項9は、上記アのとおり、実質的な内容を変更するものではないから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(6)訂正事項10
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項6が請求項1?5の記載を引用する記載であるところ、請求項5のみを引用するものとして、請求項の引用請求項数を減少した発明の記載とし、かつ、上記(1)?(5)の訂正事項5、6?9に伴い、訂正後の請求項6?9の何れか一項を引用する引用形式の請求項10として書き改めたものといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項10は、上記アのとおり、実質的な内容を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであること
訂正事項10は、上記アのとおり、実質的な内容を変更するものではないから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

3 小括
以上のとおり、訂正事項1?10は、特許法第120条の5第2項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-10]について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正によって訂正された請求項6?10に係る発明(以下、「本件発明6?10」といい、これらを総称して「本件発明」ともいう。)は、令和 2年12月 2日差出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項6?10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10であり、
高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール
【請求項7】
前記成分Aが、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油である請求項6に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項8】
前記成分Bが、分岐脂肪酸と多価アルコールのエステル油、及び/又は分岐脂肪酸と分岐高級アルコールのエステル油である請求項6又は7に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項9】
前記成分Aの含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%中、1.5?2.5質量%であり、前記成分Bの含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%中、2.5?15.0質量%である請求項6?8の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項10】
さらに下記成分Eを含有することを特徴とする請求項6?9の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
成分E:増粘性高分子

第4 取消理由の概要及び特許異議申立理由の概要
1 令和 2年10月 1日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?6に係る特許に対して、当審が令和 2年10月 1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)「引用文献1に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明1)
本件発明1、2、5は、引用文献1に記載された発明であるか、あるいは、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件発明4は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、この発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)「引用文献2に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明2)
本件発明1、2は、引用文献2に記載された発明であるか、あるいは、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件発明3?5は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)「引用文献3に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明3)
本件発明1、2は、引用文献3に記載された発明であるか、あるいは、引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件発明3?5は、引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(4)「引用文献4に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明4)
本件発明1、2、5は、引用文献4に記載された発明であるか、あるいは、引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件発明4は、引用文献4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、この発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(5)「引用文献5に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明5)
本件発明1、2、5は、引用文献5に記載された発明であるか、あるいは、引用文献5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件発明4は、引用文献5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、この発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(6)「引用文献6に記載された発明を主引用とする場合」(引用発明6)
本件発明1?5は、引用文献6に記載された発明及び引用文献1?5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、この発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(7)引用文献
引用文献1 特開2003-277220号公報(申立人により提出された甲第1号証(以下、「甲1」という。他の甲号証についても同様。)
引用文献2 特開2003-095842号公報(甲3)
引用文献3 特開2003-095841号公報(甲4)
引用文献4 特開2009-298728号公報(甲5)
引用文献5 特開2009-249366号公報(甲6)
引用文献6 特開2007-153771号公報(甲2)
引用文献7 油脂化学便覧、(1965年)、第3版、p.34(甲7)
引用文献8 特開2014-062056号公報(甲9))
引用文献9 医薬部外品原料規格2006、(2006年)、第1刷、pp.1384、1387(甲8)
)

2 申立理由の概要
申立人は、以下の理由により、本件特許を取り消すべきものである旨主張する。

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
ア 本件発明1、2、4、5は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

イ 本件発明1?3、5は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

ウ 本件発明1、2は、甲3に記載された発明とあり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

エ 本件発明1、2は、甲4に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項)

ア 本件発明1?6は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、この発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

イ 本件発明1?6は、甲2に記載された発明、甲2に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、この発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

ウ 本件発明1?6は、甲3に記載された発明、甲3に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

エ 本件発明1?6は、甲4に記載された発明、甲4に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

オ 本件発明1?6は、甲5に記載された発明、甲5に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

カ 本件発明1?6は、甲6に記載された発明、甲6に記載された事項及び本件特許出願時の周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3(特許法第36条第6項第1号)及び申立理由4(特許法第36条第4項第1号)
本件発明1?6は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件発明1?6についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
また、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本件発明1?6についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(4)申立理由5(特許法第36条第6項第2号)
本件の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件発明1?6についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(5)証拠方法
甲1:特開2003-277220号公報
甲2:特開2007-153771号公報
甲3:特開2003-95842号公報
甲4:特開2011-051944号公報
甲5:特開2009-298728号公報
甲6:特開2009-249366号公報
甲7:「油脂化学便覧」、第3版、p.33?34
甲8:「医薬部外品原料規格2006」、第1刷、p.1378?1387
甲9:特開2014-62056号公報
甲10:特開2012-102060号公報

第5 当審の判断
請求項1?5に係る発明は、上記第2のとおり削除されているから、請求項6に係る発明、及び、請求項6に係る発明についてさらに訂正前の請求項2?5に対応する発明特定事項によりそれぞれ特定された請求項7?10に係る発明について判断する。
取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立ての理由の順で、当審の判断を示す。
1 取消理由通知に記載した取消理由1(特許法第29条第1項第3号)及び取消理由2(特許法第29条第2項)について
(1)引用文献に記載された事項
ア 引用文献1の記載
(ア)「【請求項1】 (A)グリセリンモノ脂肪酸エステル、(B)微生物由来のリポペプチド類、及び(C)25℃で液状の高級脂肪酸を含有することを特徴とする乳化型皮膚外用剤。」

(イ)「【0003】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、グリセリンモノ脂肪酸エステルは製剤中で結晶化することが多く、且つ多量に製剤中に配合した場合、粘度を著しく上昇させる。ゆえに、強く望まれているにもかかわらず、グリセリンモノ脂肪酸エステルを多量に配合しながら、幅広い粘度領域(乳液状?クリーム状?固形状)の製剤を調製すること、そして優れた保存安定性を得ることは非常に困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】かかる事情に鑑み、本発明は、グリセリンモノ脂肪酸エステルを多量に含有しながら幅広い粘度領域を持ち、且つ保存安定性に優れた乳化型皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、種々検討の結果、グリセリンモノ脂肪酸エステルを含有する乳化型皮膚外用剤において、微生物由来のリポペプチド類及び25℃で液状の高級脂肪酸を配合することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0006】すなわち本発明の請求項1は、(A)グリセリンモノ脂肪酸エステル、(B)微生物由来のリポペプチド類、及び(C)25℃で液状の高級脂肪酸を含有することを特徴とする乳化型皮膚外用剤である。
【0007】また本発明の請求項2は、(C)25℃で液状の高級脂肪酸が分岐脂肪酸であることを特徴とする請求項1記載の乳化型皮膚外用剤である。」

(ウ)「【0015】尚、本発明の乳化型皮膚外用剤には上記の必須成分の他に、本発明の目的を達成する範囲で他の成分、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油、パラフィン、ワセリン等の炭化水素類、オリーブスクワラン、米スクワラン、米糠油、オリーブ油、大豆油、米胚芽油、ホホバ油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、マカデミアナッツ油等の植物油、ミツロウ、モクロウ、カルナウバロウ等のロウ類、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル等のエステル油、セタノール、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、コレステロール、フィトステロール等のステロール類、分岐脂肪酸コレステロールエステル、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステロールエステル等のステロール脂肪酸エステル類、セチル硫酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸塩等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、ベタイン型、スルホベタイン型、スルホアミノ酸型等の両性界面活性剤、レシチン、水素添加レシチン、リゾフォスファチジルコリン、セラミド、セレブロシド等の天然系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、硬化油等の加工油類、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等のトリグリセリド、タール系色素、酸化鉄等の着色顔料、パラベン、フェノキシエタノール等の防腐剤、酸化チタン、酸化亜鉛等の顔料、ジブチルヒドロキシトルエン、デヒドロジクレオソール等の抗酸化剤、エタノール等の一級アルコール、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、珪酸ナトリウム等の無機塩類、琥珀酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム等の有機酸塩類、塩酸エタノールアミン、硝酸アンモニウム、塩酸アルギニン、燐酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩、ジイソプロピルアミンジクロロ酢酸塩等の塩類、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等の増粘剤、エデト酸等のキレート剤、水酸化カリウム、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の中和剤、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ジグリセリン、アセチルグルコサミン等の多価アルコール、乳酸等のヒドロキシ酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、シルク蛋白等の生体高分子、乳酸菌、酵母等の培養生成物、カミツレ、センブリ、アロエ、モモ、カロット、スギナ、クワ、桃の葉、セージ、ビワ葉、キュウカンバー、セイヨウキズタ、ハイビスカス、ウコン、ローズマリー、オウゴン、チョウジ、フェンネル、プルーン、甘草等の植物エキス、セリン、スレオニン、N-メチルグリシン、N-メチル-l-セリン、アミノ酪酸、ヒドロキシアミノ酪酸等のアミノ酸類、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルフォン酸塩等の紫外線吸収剤、ビタミンA類、B類、C類、E類等のビタミン類、グリチルリチン酸塩、香料等を用いることができるがこれに限定されるものではない。」

(エ)「【0028】
【実施例】以下、実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、組成の単位は全て質量%である。」
(引用文献等については引用文献等一覧参照)
(オ)「【0029】実施例7?9 (乳液)
下記の組成及び調製法に従い乳液を調製し、前記の試験を実施した。
【0030】
(1)組成
実施例7 実施例8 実施例9
成分a
イソステアリン酸 1.0 1.0 3.0
モノステアリン酸グリセリン 4.0 4.0 4.0
ベヘニルアルコール 2.0 2.0 2.0
サラシミツロウ 1.0 1.0 -
ミリスチン酸セチル 1.0 1.0 1.0
セスキオレイン酸ソルビタン 1.0 1.0 1.0
長鎖分岐脂肪酸コレステリル*1 0.1 0.1 0.1
水素添加レシチン 0.1 0.1 0.1
植物スクワラン 5.0 5.0 5.0
ミリスチン酸オクチルドデシル 5.0 5.0 5.0
成分b
サーファクチンナトリウム 0.1 1.0 0.1
1,3-ブチレングリコール 5.0 10.0 0.5
ソルビトール液 5.0 5.0 5.0
ポリエチレングリコール4000 0.2 0.2 0.2
カルボキシビニルポリマー 0.1 0.1 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.2 0.2 0.2
メバロノラクトン 0.1 0.1 0.1
エデト酸二ナトリウム 0.2 0.2 0.2
ラズベリーケトングルコシド 0.05 0.05 0.05
塩化ナトリウム 0.1 0.1 0.1
ジプロピレングリコール 0.1 0.1 0.1
濃グリセリン 5.0 5.0 5.0
ラフィノース 0.1 0.1 0.1
アスコルビン酸2-グルコシド 0.1 0.1 0.1
カルボキシメチルセルロース 0.05 0.05 0.05
精製水 残 量 残 量 残 量
*1 商品名:YOFCO CLE-NH(日本精化社製)
【0031】(2)調製法
成分a及び成分bを各々80℃で溶解した後混合して、攪拌しつつ冷却し、30℃まで冷却して、乳液を調製した。
【0032】(3)結果
実施例7?9に係る乳液は優れた保存安定性が認められた。」

イ 引用文献2の記載
(ア)「【請求項1】 一般式(1):【化1】

[式中、R_(1)、R_(2)及びR_(3)は同一または異なって水素原子、ヒドロキシル基、もしくは炭素数1?4の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシル基を示すが、またはR_(1)、R_(2)及びR_(3)のうち2個が一緒になってα-メチレンジオキシ基を形成してもよい。ただし、R_(1)、R_(2)及びR_(3)が同時に水素原子になることはない。Xは-O-(R_(4))n-R_(5)又は-NHCOR_(6)を示す。n個のR_(4)は同一または異なって-CH_(2)CH_(2)O-、-CH_(2)CH(CH_(3))O-、または-CH(CH_(3))CH_(2)O-を示し、nは0?3の整数を示す。R_(5)は炭素数1?6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。R_(6)は炭素数6?10の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を示す。]で表わされる成分の少なくとも1つと水を含有し、その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%以上60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0?8.0である化粧料。」
(イ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、特定温感剤の経時安定性に優れた化粧料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定温感剤の少なくとも1つと水を含有し、その水の配合量が化粧料全体の0.5重量%以上60重量%以下であり、かつ化粧料のpHが4.0?8.0に調整すれば、温感剤の経時安定性に優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。」
(ウ)「【0015】本発明では効果を損なわない範囲で周知の成分を配合することができる。周知の成分としては、油性成分(アボカド油、アルモンド油、オリーブ油、グレープシード油、月見草油、ツバキ油、サザンカ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、シアバター、卵黄油、馬脂等の油脂類、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン、ミツロウ等のロウ類、オゾケライト、流動パラフィン、スクワレン、ワセリン等の炭化水素類、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、コレステロール、フィトステロール、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ステアリン酸オクチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸オクチル、ジオレイン酸エチレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、乳酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸コレステリル等のエステル油類、ジメチルシリコーン油、メチルフェニルシリコーン油、環状ジメチルシリコーン油、アルコール変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アミノ変性シリコーン油等のシリコーン油類等)、多価アルコール(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、低級アルコール(エチルアルコール、イソプロパノール等)、高分子(キサンタンガム等の天然高分子、セルロール系高分子、グアガム系高分子、デンプン系高分子、カルボキシビニルポリマーやポリビニルピロリドン等の合成高分子等)、ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、N-アルキルジメチルアミンオキシド、脂肪酸ジエタノールアミド等)、粉体(カオリン、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、タルク、マイカ、セルロース末、シルク末、デンプン、ポリエチレン末、ナイロン末、架橋ポリスチレン等)、着色剤、動植物抽出物、ビタミン、紫外線吸収剤、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、ピロクトンオラミン、クララエキス、ジンクピリチオン、ヒノキチオール等)、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、噴射剤(DME,LPG、窒素ガス、炭酸ガス等)、無機塩(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ボウショウ等)、薬効剤(センブリエキス、塩化カプロニウム、セファランチン、サリチル酸、イノシット、ヨウ化ニンニクエキス、レゾルシン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、オキセンドロン等)、細胞賦活剤(パントテン酸及びその誘導体、プラセンタエキス、ビオチン、モノニトログアヤコール、感光素301、ウシヘマチン等)、抗炎症剤(グリチルリチン酸ジカリウム、塩酸ピリドキシン、オウゴンエキス等)、保湿剤(ピロリドンカルボン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩等)、粘度調整剤、香料等がある。」
(エ)「【0017】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特にことわらない場合「%」は重量%を示す。」
(オ)「【0024】
実施例12 スキンクリーム
成分 配合量(%)
ノニル酸バニリルアミド 0.001
3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール 1.0
POE(20)POP(4)セチルエーテル 1.0
POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 0.25
自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 1.0
ステアリン酸 3.0
ベヘニルアルコール 3.0
ミツロウ 3.0
スクワラン 20.0
2-エチルヘキサン酸セチル 7.0
ホホバ油 5.0
ポリエチレングリコール1500 5.0
メチルポリシロキサン(300cSt) 0.2
パラベン 0.1
香料 0.1
クエン酸 適量
精製水 残量
dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液(50%) 1.0
合計 100.00
(pH 6.0)」

ウ 引用文献3の記載
(ア)「【請求項1】 一般式(1):
【化1】

[式中、R_(1)、R_(2)及びR_(3)は同一または異なって水素原子、ヒドロキシル基、もしくは炭素数1?4の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシル基を示すが、またはR_(1)、R_(2)及びR_(3)のうち2個が一緒になってα-メチレンジオキシ基を形成してもよい。ただし、R_(1)、R_(2)及びR_(3)が同時に水素原子になることはない。Xは-O-(R_(4))n-R_(5)又は-NHCOR_(6)を示す。n個のR_(4)は同一または異なって-CH_(2)CH_(2)O-、-CH_(2)CH(CH_(3))O-、または-CH(CH_(3))CH_(2)O-を示し、nは0?3の整数を示す。R5は炭素数1?6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。R6は炭素数6?10の直鎖または分岐鎖のアルケニル基を示す。]で表わされる成分の少なくとも1つと、ノニル酸バニリルアミドを含有することを特徴とする化粧料。」
(イ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、温感の持続性に優れた化粧料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の温感剤群での組合せを活用すると、温感の持続性に優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成した。」
(ウ)「【0011】本発明では効果を損なわない範囲で周知の成分を配合することができる。周知の成分としては、油性成分(アボカド油、アルモンド油、オリーブ油、グレープシード油、月見草油、ツバキ油、サザンカ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、シアバター、卵黄油、馬脂等の油脂類、ホホバ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン、ミツロウ等のロウ類、オゾケライト、流動パラフィン、スクワレン、ワセリン等の炭化水素類、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸類、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、コレステロール、フィトステロール、セタノール、オレイルアルコール等の高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ステアリン酸オクチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸オクチル、ジオレイン酸エチレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、乳酸セチル、アジピン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸コレステリル等のエステル油類、ジメチルシリコーン油、メチルフェニルシリコーン油、環状ジメチルシリコーン油、アルコール変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アミノ変性シリコーン油等のシリコーン油類等)、多価アルコール(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、低級アルコール(エチルアルコール、イソプロパノール等)、高分子(キサンタンガム等の天然高分子、セルロール系高分子、グアガム系高分子、デンプン系高分子、カルボキシビニルポリマーやポリビニルピロリドン等の合成高分子等)、アニオン界面活性剤(脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルメチルアラニン塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキルスルホコハク酸塩、アシルイセチオン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等)、両性界面活性剤(アミノ酢酸ベタイン型、スルホベタイン型、アミノプロピオン型)、ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、N-アルキルジメチルアミンオキシド、脂肪酸ジエタノールアミド等)、カチオン界面活性剤(脂肪酸アミドアミン塩、アルキル4級アンモニウム塩等)、粉体(カオリン、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、タルク、マイカ、セルロース末、シルク末、デンプン、ポリエチレン末、ナイロン末、架橋ポリスチレン等)、着色剤、動植物抽出物、ビタミン、紫外線吸収剤、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、ピロクトンオラミン、クララエキス、ジンクピリチオン、ヒノキチオール等)、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、噴射剤(DME,LPG、窒素ガス、炭酸ガス等)、無機塩(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ボウショウ等)、薬効剤(センブリエキス、塩化カプロニウム、セファランチン、サリチル酸、イノシット、ヨウ化ニンニクエキス、レゾルシン、エストラジオール、エチニルエストラジオール、オキセンドロン等)、細胞賦活剤(パントテン酸及びその誘導体、プラセンタエキス、ビオチン、モノニトログアヤコール、感光素301、ウシヘマチン等)、抗炎症剤(グリチルリチン酸ジカリウム、塩酸ピリドキシン等)、保湿剤(ピロリドンカルボン酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩、ソルビトールやマルチトールやトレハロース等の糖類等)、冷感剤(l-メントール、ハッカ油、3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-l-メントキシ酪酸エステル等)、アミノ酸及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、粘度調整剤、香料等がある。」
(エ)「【0013】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特にことわらない場合「%」は重量%を示す。
(オ)「【0021】
実施例20 スキンクリーム
成分 配合量(%)
バニリルアルコールn-ブチルエーテル 0.01
ノニル酸バニリルアミド 0.001
ニコチン酸ベンジル 0.001
POE(20)POP(4)セチルエーテル 1.0
POE(50)硬化ヒマシ油 1.0
自己乳化型モノステアリン酸グリセリル 1.0
ステアリン酸 3.0
ベヘニルアルコール 3.0
ミツロウ 3.0
スクワラン 3.0
2-エチルヘキサン酸セチル 7.0
ホホバ油 5.0
ポリエチレングリコール1500 5.0
メチルポリシロキサン(300cSt) 0.2
パラベン 0.1
香料 0.1
クエン酸 適量
精製水 残量
合計 100.00
(pH 6.0)」

エ 引用文献4の記載
(ア)「【請求項1】
クルミ科クルミ属植物の種皮の抽出物を有効成分とする細胞賦活剤。」
(イ)「【0003】
本発明は、天然物由来の成分を利用した、安全性が良好な新規な細胞賦活剤、及びそれを利用した老化防止用皮膚外用剤を提供することを課題とする。」
(ウ)「【0013】
本発明は、本発明の細胞賦活剤であるクルミ種皮抽出物を有効成分として含有する老化防止用皮膚外用剤にも関する。本発明の皮膚外用剤は、クルミ種皮抽出物の細胞賦活作用によって、優れた老化防止効果を奏する。本発明の皮膚外用剤中のクルミ種皮抽出物の含有量は、固形分として、好ましくは0.00001?2質量%(以下単に「%」で示す)であり、より好ましくは0.0001?1%である。この範囲内であれば、前記抽出物を安定に配合することができ、かつ高い老化防止効果を発揮することができる。」
(エ)「【0034】
[例5:クリームの調製例]
以下の組成のクレームを以下の方法で調製した。
(製法)
A.下記成分(1)?(13)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.下記成分(14)?(18)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.AにBを加え乳化し、更に下記成分(19)を加え混合する。
D.Cを冷却し、下記成分(20)及び(21)を加え混合し、乳液を得る。
(成分) %
(1)ステアリン酸 2.5
(2)セタノール 2.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)ワセリン 2.0
(5)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル*1 2.0
(6)ミリスチン酸イソトリデシル 5.0
(7)流動パラフィン 8.0
(8)スクワラン 5.0
(9)ミツロウ 1.0
(10)パルミチン酸セチル 2.0
(11)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.5
(13)防腐剤 適量
(14)トリエタノールアミン 1.2
(15)1,3-ブチレングリコール 8.0
(16)グリセリン 2.0
(17)ポリエチレングリコール20000 0.5
(18)精製水 残量
(19)カルボキシビニルポリマー1%水溶液 5.0
(20)クルミ種皮抽出物*2 1.0
(21)香料 適量
*1:コスモール168AR(日清オイリオグループ社製)
*2 オリザ油化株式会社製 クルミポリフェノール-PC30
【0035】
調製したクリームは、コクのあるなめらかな使用感があり、肌のエモリエント感に優れ、キメを整え、つややはり、弾力のある美しい肌にすることができるクリームであった。」

オ 引用文献5の記載
(ア)「【請求項1】
キク科ヒヒラギギク(学名:Pluchea indica Less)の抽出物を有効成分とするコラーゲン産生促進剤。」
(イ)「【0004】
本発明は、安全性が良好な新規なコラーゲン産生促進剤、及び当該促進剤を有効成分として含有する老化防止用皮膚外用剤を提供することを課題とする。」
(ウ)「【0012】
本発明は、本発明のコラーゲン産生促進剤であるヒヒラギギク抽出物を有効成分として含有する老化防止用皮膚外用剤にも関する。本発明の皮膚外用剤は、ヒヒラギギク抽出物のコラーゲン産生促進作用によって、優れた老化防止効果を奏する。ヒヒラギギク抽出物のコラーゲン産生促進作用は、主には線維芽細胞に対する賦活作用に起因するものと考えられるが、ヒヒラギギク抽出物は、従来の線維芽細胞賦活剤(例えばVC-PMg)と比較して、コラーゲン産生促進作用が特に高いという特徴がある。従って、本発明の皮膚外用剤は、真皮内のコラーゲン量が低下すること、及び真皮内のコラーゲンが老化することに起因する皮膚老化に対して、特に優れた防止効果を奏する。本発明の皮膚外用剤中の前記ヒヒラギギク抽出物の含有量は、固形分として、好ましくは0.00001?2質量%(以下単に「%」で示す)であり、より好ましくは0.0001?1%である。この範囲内であれば、前記抽出物を安定に配合することができ、かつ高い老化防止効果を発揮することができる。」
(エ)「【0042】
[例9:クリームの調製例]
以下の組成のクレームを以下の方法で調製した。
(製法)
A.下記成分(1)?(13)を加熱溶解し、70℃に保つ。
B.下記成分(14)?(18)を加熱溶解し、70℃に保つ。
C.AにBを加え乳化し、更に下記成分(19)を加え混合する。
D.Cを冷却し、下記成分(20)及び(21)を加え混合し、乳液を得る。
(成分) %
(1)ステアリン酸 2.5
(2)セタノール 2.5
(3)親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
(4)ワセリン 2.0
(5)ジペンタエリトリット脂肪酸エステル*1 2.0
(6)ミリスチン酸イソトリデシル 5.0
(7)流動パラフィン 8.0
(8)スクワラン 5.0
(9)ミツロウ 1.0
(10)パルミチン酸セチル 2.0
(11)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(12)モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.) ソルビタン 1.5
(13)防腐剤 適量
(14)トリエタノールアミン 1.2
(15)1,3-ブチレングリコール 8.0
(16)グリセリン 2.0
(17)ポリエチレングリコール20000 0.5
(18)精製水 残量
(19)カルボキシビニルポリマー1%水溶液 5.0
(20)ヒヒラギギク抽出液*2 1.0
(21)香料 適量
*1:コスモール168AR(日清オイリオグループ社製)
*2 例1で調製した抽出液
【0043】
調製したクリームは、コクのあるなめらかな使用感があり、肌のエモリエント感に優れ、キメを整え、つややはり、弾力のある美しい肌にすることができるクリームであった。」

カ 引用文献6の記載
(ア)「【請求項1】
(A)室温で固形の炭化水素、(B)ロウ類及び(C)ポリオキシエチレンソルビットミツロウを含有してなる皮膚用乳化組成物。」
(イ)「【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、延伸性に優れ、塗布後の油性成分特有のべたつき感を低減し、保湿効果の持続性に優れ、更には、幅広い温度範囲における乳化安定性にも優れた皮膚用乳化組成物を提供することを課題とする。」
(ウ)「【0030】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、含有量は、特記しない限り「重量%」を表す。」
(エ)「【0048】
(処方例3:化粧下地)
ワセリン 2.0
ミツロウ 2.0
ポリオキシエチレンソルビットミツロウ 1.5
N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム 1.5
モノステアリン酸グリセリル 1.0
トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン 3.0
ポリエチレングリコール 5.0
ジプロピレングリコール 5.0
キサンタンガム 0.3
ステアリルアルコール 1.0
ステアリン酸 5.0
水添レシチン 0.5
イソノナン酸イソノニル 5.0
トリエタノールアミン 0.3
グリセリン 5.0
色素 適 量
酸化防止剤 適 量
防腐剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0」

キ 引用文献7の記載
(ア)「

」(第34頁表1・20)

ク 引用文献8の記載
(ア)「【0020】
ペンタエリスリトールエステルの具体例として、テトラ(ベヘン酸・安息香酸・エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル〔市販品として「サラコスP-B822」(日清オイリオグループ社製)等〕、テトラ(エチルヘキサン酸/安息香酸)ペンタエリスチル〔市販品として「サラコスP-B8(75)」、「サラコスBO-63」(いずれも日清オイリオグループ社製)等〕、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル〔市販品として「サラコスWO-6」(日清オイリオグループ社製)等〕、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリチル〔市販品として「コスモール168ARV」、「コスモール168AR」(いずれも日清オイリオグループ社製)、「ハイルーセント138DP」(高級アルコール社製)等〕、(ヒドロキシステアリン酸・イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル〔市販品として「コスモール168EV」(日清オイリオグループ社製)、「Pelemol DP72」(Phenix Chemical社製)等〕、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル〔市販品として「コスモール168M」(日清オイリオグループ社製)、「Lanodub N」(Stearinerie Dubois Fils社製)等〕、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル〔市販品として「サラコス5408」(日清オイリオグループ社製)、「ニッコールNS-408」(日光ケミカルズ社製)、「KAK PTO」(高級アルコール工業社製)等〕、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル〔市販品として「サラコス5418V」(日清オイリオグループ社製)、「クロダモールPTIS」(クローダ社製)、「KAK PTI」(高級アルコール工業社製)等〕、(12-ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリトール、(12-ヒドロキシステアリン酸・イソステアリン酸)ジペンタエリスリトール等が挙げられる。」

ケ 引用文献9の記載
(ア)「 ポリエチレングリコール4000
Polyethylene Glycol 4000
本品は,酸化エチレンの重合体で,平均分子量は, 2600?3800である.
性 状 本品は,白色のろう状物質又は粉末で,においはない.」(第1384頁)
(イ)「 ポリエチレングリコール20000
Polyethylene Glycol 20000
本品は,酸化エチレンの重合体で,平均分子量は, 15500?25000である.
性 状 本品は,白色のろう状物質又は粉末で,においはない.」(第1387頁)

(2)引用文献記載の発明
ア 引用文献1記載の発明
引用文献1には、特に上記(1)ア(エ)及び(オ)の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「イソステアリン酸3.0質量%、モノステアリン酸グリセリン4.0質量%、ベヘニルアルコール2.0質量%、ミリスチン酸セチル1.0質量%、セスキオレイン酸ソルビタン1.0質量%、長鎖分岐脂肪酸コレステリル(商品名:YOFCO CLE-NH(日本精化社製) 0.1質量%、水素添加レシチン0.1質量%、植物スクワラン5.0質量%、ミリスチン酸オクチルドデシル5.0質量%、サーファクチンナトリウム0.1質量%、1,3-ブチレングリコール0.5質量%、ソルビトール液5.0質量%、ポリエチレングリコール4000 0.2質量%、カルボキシビニルポリマー0.1質量%、パラオキシ安息香酸メチル0.2質量%、メバロノラクトン0.1質重%、エデト酸ニナトリウム0.2質量%、ラズベリーケトングルコシド0.05質量%、塩化ナトリウム0.1質量%、ジプロピレングリコール0.1質量%、濃グリセリン5.0質量%、ラフィノース0.1質量%、アスコルビン酸2-グルコシド0.1質量%、カルボキシメチルセルロース0.05質量%、精製水 残量からなる乳液」(以下、「引用発明1」という。)
イ 引用文献2記載の発明
引用文献2には、特に上記(1) イ(エ)及び(オ)の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「ノニル酸バニリルアミド0.001重量%、3-(1-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール1.0重量%、POE(20) POP (4)セチルエーテル1.0重量%、POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.25重量%、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル1.0重量%、ステアリン酸3.0重量%、ベヘニルアルコール3.0重量%、ミツロウ3.0重量%、スクワラン20.0重量%、2-エチルヘキサン酸セチル7.0重量%、ホホバ油5.0重量%、ポリエチレングリコール1500 5.0重量%、メチルポリシロキサン(300cSt) 0.2重量%、パラベン0.1重量%、香料0.1重量%、クエン酸 適量、精製水 残量、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液(50%) 1.0重量%、からなるpH6.0のスキンクリーム」(以下、「引用発明2」という。)
ウ 引用文献3記載の発明
引用文献3には、特に上記1(1)ウ(エ)及び(オ)の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「バニリルアルコールn-ブチルエーテル0.01重量%、ノニル酸バニリルアミド0.001重量%、ニコチン酸ベンジル0.001重量%、POE(20) POP (4)セチルエーテル1.0重量%、POE(50)硬化ヒマシ油1.0重量%、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル1.0重量%、ステアリン酸3.0重量%、ベヘニルアルコール3.0重量%、ミツロウ3.0重量%、スクワラン13.0重量%、2-エチルヘキサン酸セチル7.0重量%、ホホバ油5.0重量%、ポリエチレングリコール1500 5.0重量%、メチルポリシロキサン(300cSt) 0.2重量%、パラベン0.1重量%、香料0.1重量%、クエン酸 適量、精製水 残量からなるpH6.0のスキンクリーム」(以下、「引用発明3」という。)
エ 引用文献4記載の発明
引用文献4には、特に上記(1)エ(ウ)及び(エ)の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「ステアリン酸2.5質量%、セタノール2.5質量%、親油型モノステアリン酸グリセリン2.0質量%、ワセリン2.0質量%、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(コスモール168AR(日清オイリオグループ社製))2.0質量%、ミリスチン酸イソトリデシル5.0質量%、流動パラフィン8.0質量%、スクワラン5.0質量%、ミツロウ1.0質量%、パルミチン酸セチル2.0質量%、セスキオレイン酸ソルビタン0.5質量%、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.) ソルビタン1.5質量%、防腐剤 適量、トリエタノールアミン 1.2質量%、1,3-ブチレングリコール8.0質量%、グリセリン2.0質量%、ポリエチレングリコール20000 0.5質量%、精製水 残量、カルボキシビニルボリマー1%水溶液5.0質量%、クルミ種皮抽出物(オリザ油化株式会社製クルミポリフェノール-PC30) 1.0質量%、香料 適量からなるクリーム」(以下、「引用発明4」という。)
オ 引用文献5記載の発明
引用文献5には、特に上記1(1)オ(ウ)及び(エ)の記載からみて、以下の発明が記載されている。
「ステアリン酸2.5質量%、セタノール2.5質量%、親油型モノステアリン酸グリセリン2.0質量%、ワセリン2.0質量%、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(コスモール168AR(日清オイリオグループ社製))2.0質量%、ミリスチン酸イソトリデシル5.0質量%、流動パラフィン8.0質量%、スクワラン5.0質量%、ミツロウ1.0質量%、パルミチン酸セチル2.0質量%、セスキオレイン酸ソルビタン0.5質量%、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.) ソルビタン1.5質量%、防腐剤 適量、トリエタノールアミン 1.2質量%、1,3-ブチレングリコール8.0質量%、グリセリン2.0質量%、ポリエチレングリコール20000 0.5質量%、精製水 残量、カルボキシビニルボリマー1%水溶液5.0質量%、ヒヒラギギク抽出液(例1で調製した抽出液)1.0質量%、香料 適量からなるクリーム」(以下、「引用発明5」という。)
カ 引用文献6記載の発明
引用文献6には、特に上記(1)カ(ウ)及び(エ)の記載からみて、以下の発明が載されている。
「ワセリン2.0重量%、ミツロウ2.0重量%、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ1.5重量%、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム1.5重量%、モノステアリン酸グリセリル1.0重量% 、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン3.0重量%、ポリエチレングリコール5.0重量% 、ジプロピレングリコール5.0重量%、キサンタンガム0.3重量%、ステアリルアルコール1.0重量%、ステアリン酸15.0重量%、水添レシチン0.5重量%、イソノナン酸イソノニル5.0重量%、トリエタノールアミン0.3重量%、グリセリン5.0重量% 、色素 適量、酸化防止剤 適量、防腐剤 適量、精製水 残部からなる化粧下地」(以下、「引用発明6」という。)

(3)対比・判断
ア 引用発明1に対して
(ア)本件発明6について
a 対比
本件発明6と引用発明1を対比する。
引用発明1の「ポリエチレングリコール4000」は、引用文献9の摘記事項(1)ケ(ア)に白色のろう状物質又は粉末であることが記載されていることを踏まえれば、本件発明6の「成分D:室温で固体のポリエチレングリコール」に相当する。
また、引用発明1の「ミリスチン酸セチル」、「ミリスチン酸オクチルドデシル」、「モノステアリン酸グリセリン」、「乳液」、及び「ベヘニルアルコール」は、本件発明6における「成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」、「成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油」、「成分C:非イオン性界面活性剤」、「皮膚用乳化組成物」、及び「高級アルコール」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明1の成分Aである「ミリスチン酸セチル」と成分Bである「ミリスチン酸オクチルドデシル」の質量含有比は1:5であるから、本件発明6の「1:2?1:10」とその範囲内にある点で一致する。
そして、本件発明6は、高級アルコールの含有量についての規定はあるものの、成分A?D以外も含有することができるから、引用発明1に含まれる高級アルコール以外の、成分A?D以外の成分を含む点は、両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明6と引用発明1との一致点と相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール」

<相違点>
本件発明6は、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である」ことが特定されているのに対して、引用発明1では「ベヘニルアルコール2.0質量%」を含む点。

b 判断
(a) 上述のとおり、本件発明6と引用発明1は相違するから、本件発明6は、引用文献1に記載された発明ではない。

(b) 次に、相違点の容易想到性について検討する。
引用文献1の記載によれば、引用発明1の高級アルコールは、任意成分として認識されるものである(上記(1)ア(ア)及び(ウ))。
一方、本件発明6は、高級アルコールを低粘度の乳化組成物に配合した場合に、経時的に粘度上昇して使用感に悪影響があるとの問題があるため、高級アルコールの含有量濃度を減らし、その際の課題を解決しようとするものであるところ、引用文献1には、そのような高級アルコールに対する問題の認識はなく、高級アルコールの含有量を減らすとの動機付けとなる記載はない。そうすると、引用発明1において、ベヘニルアルコールを除く、もしくは、その濃度を0.5質量%以下とし、保存安定性(乳化安定性)に優れ、尚且つ、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮する乳液を得ることは当業者が容易に想到することではない。

(イ)本件発明7?10について
請求項6を引用する本件発明7?10については、上記(ア)と同様の理由により、引用文献1に記載された発明ではなく、引用文献1に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明6?10は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由通知で通知する理由によって取り消されるべきものではない。

イ 引用発明2に対して
(ア)本件発明6について
a 対比
本件発明6と引用発明2を対比する。
引用発明2の「ポリエチレングリコール4000」は、引用文献9の摘記事項(1)ケ(ア)に白色のろう状物質又は粉末であることが記載されていることを踏まえれば、本件発明6の「成分D:室温で固体のポリエチレングリコール」に相当する。
また、引用発明2における「2-エチルヘキサン酸セチル」、「自己乳化型モノステアリン酸グリセリル」、「スキンクリーム」、及び「ベヘニルアルコール」は、本件発明6における「成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油」、「皮膚用乳化組成物」、及び「高級アルコール」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明2における「ミツロウ」は、上記(1)キ(ア)の記載を参照すると、「直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」である「パルミチン酸ミリシル」を23%、「パルミチン酸ラクセリル」を2%、「セロチン酸ミリシル」を12%含むものであり、この割合はミツロウ全体の重量に対する割合である重量%を示すものと認める。そして、引用発明2はミツロウを3重量%含むので、上記(1)キ(ア)を参照した前記記載に基づいて計算すると、「成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」を3重量%×(23+2+12)%=約1.11重量%含むものであって、そうすると、引用発明2における成分Aと成分Bの質量比は1.11:7=1:約6.31であるから、本件発明6の「1:2?1:10」の範囲囲内である点で一致する。
そして、本件発明6は、高級アルコールの含有量についての規定はあるものの成分A?D以外も含有することができるから、引用発明2に含まれる高級アルコール以外の、成分A?D以外の成分を含む点は、両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明6と引用発明2との一致点と相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール」

<相違点>
本件発明6は、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である」ことが特定されているのに対して、引用発明2では「ベヘニルアルコール3.0質量%」を含む点。

b 判断
(a) 上述のとおり、本件発明6と引用発明2とは相違するから、本件発明6は、引用文献2に記載された発明ではない。

(b) 次に、相違点の容易想到性について検討する。
引用文献2の記載によれば、引用発明2の高級アルコールは、任意成分として認識されるものである(上記(1)イ(ア)及び(ウ))。
一方、本件発明6は、高級アルコールを低粘度の乳化組成物に配合した場合に、経時的に粘度上昇して使用感に悪影響があるとの問題があるため、高級アルコールの含有量濃度を減らし、その際の課題を解決しようとするものであるところ、引用文献2には、そのような高級アルコールに対する問題の認識はなく、高級アルコールの含有量を減らすとの動機付けとなる記載はない。
そうすると、引用発明2において、ベヘニルアルコールを除く、もしくは、その濃度を0.5質量%以下とし、保存安定性(乳化安定性)に優れ、尚且つ、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮する乳液を得ることは当業者が容易に想到することではない。

(イ)本件発明7?10について
請求項6を引用する本件発明7?10については、上記(ア)と同様の理由により、引用文献2に記載された発明ではなく、引用文献2に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明6?10は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由通知で通知する理由によって取り消されるべきものではない。

ウ 引用発明3に対して
(ア)本件発明6について
本件発明6と引用発明3を対比する。
引用発明3の「ポリエチレングリコール4000」は、引用文献9の摘記事項(1)ケ(ア)に白色のろう状物質又は粉末であることが記載されていることを踏まえれば、本件発明6の「成分D:室温で固体のポリエチレングリコール」に相当する。
また、引用発明3における「2-エチルヘキサン酸セチル」、「自己乳化型モノステアリン酸グリセリル」、「スキンクリーム」、及び「ベヘニルアルコール」は、本件発明6における「成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油」、「成分C:非イオン性界面活性剤」、「皮膚用乳化組成物」、及び「高級アルコール」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明3における「ミツロウ」は、上記(1)キ(ア)の記載を参照すると、「直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」である「パルミチン酸ミリシル」を23%、「パルミチン酸ラクセリル」を2%、「セロチン酸ミリシル」を12%含むものであり、この割合はミツロウ全体の重量に対する割合である重量%を示すものと認める。
そして、引用発明3はミツロウを3重量%含むので、上記(1)キ(ア)を参照した前記記載に基づいて計算すると、「成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」を3重量%×(23+2+12)%=約1.1重量%含むものであって、そうすると、引用発明3における成分Aと成分Bの質量比は1.11:7=1:約6.31であるから、本件発明6の「1:2?1:10」の範囲囲内である点で一致する。
さらに、本件発明6は、高級アルコールの含有量についての規定はあるものの、成分A?D以外も含有することができるから、引用発明3に含まれる高級アルコール以外の、成分A?D以外の成分を含む点は、両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明6と引用発明3との一致点と相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール」

<相違点>
本件発明6は、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である」ことが特定されているのに対して、引用発明3では「ベヘニルアルコール3.0質量%」を含む点。

以下、相違点について検討する。
a 上述のとおり、本件発明6と引用発明3とは相違するから、本件発明6は、引用文献3に記載された発明ではない。

b 次に、相違点の容易想到性について検討する。
引用文献3の記載によれば、引用発明3の高級アルコールは、任意成分として認識されるものである(上記(1)ウ(ア)及び(ウ))。
一方、本件発明6は、高級アルコールを低粘度の乳化組成物に配合した場合に、経時的に粘度上昇して使用感に悪影響があるとの問題があるため、高級アルコールの含有量濃度を減らし、その際の課題を解決しようとするものであるところ、引用文献3には、そのような高級アルコールに対する問題の認識はなく、高級アルコールの含有量を減らすとの動機付けとなる記載はない。
そうすると、引用発明3において、ベヘニルアルコールを除く、もしくは、その濃度を0.5質量%以下とし、保存安定性(乳化安定性)に優れ、尚且つ、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮する乳液を得ることは当業者が容易に想到しうることではない。

(イ)本件発明7?10について
請求項6を引用する本件発明7?10については、上記(ア)と同様の理由により、引用文献3に記載された発明ではなく、引用文献3に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明6?10は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由通知で通知する理由によって取り消されるべきものではない。

エ 引用発明4に対して
(ア)本件発明6について
本件発明6と引用発明4を対比する。
引用発明4の「ポリエチレングリコール20000」は、引用文献9の摘記事項(1)ケ(イ)に白色のろう状物質又は粉末であることが記載されていることを踏まえれば、本件発明6の「成分D:室温で固体のポリエチレングリコール」に相当する。
また、引用発明4における「パルミチン酸セチル」、「ミリスチン酸イソトリデシル」、「モノオレイン酸ポリエキシエチレン(20E.O.)ソルビタン」、「クリーム」、及び「セタノール」は、本件発明6における「成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」、「成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油」、「成分C:非イオン性界面活性剤」、「皮膚用乳化組成物」、及び「高級アルコール」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明4における「ミツロウ」は、上記(1)キ(ア)の記載を参照すると、「直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」である「パルミチン酸ミリシル」を23%、「パルミチン酸ラクセリル」を2%、「セロチン酸ミリシル」を12%含むものであり、この割合はミツロウ全体の重量に対する割合である重量%を示すものと認める。
そうすると、引用発明4はミツロウを1重量%含むので、引用発明4は「成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」について、2.0質量%(パルミチン酸セチル)+1質量%×(23+2+12)%=2.0質量%+0.37質量%(ミツロウ由来)=2.37質量%含み、「成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油」を5.0質量%含むものであるから、その成分Aと成分Bの質量含有比は、A:B=2.37:5=1:約2.1であって、本件発明6の「1:2?1:10」の範囲囲内である点で一致する。
なお、引用発明4における「ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(コスモール168AR)」は、上記(1)ク(ア)を参照すると「ペンタエリスリトールエステル」の1種であるものの、「ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリチル」であり、成分Aに相当するものではない。
さらに、本件発明6は、高級アルコールの含有量についての規定はあるものの、成分A?D以外も含有することができるから、引用発明4に含まれる高級アルコール以外の、成分A?D以外の成分を含む点は、両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明6と引用発明4との一致点と相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール」

<相違点>
本件発明6は、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である」ことが特定されているのに対して、引用発明4では「セタノール2.5質量%」を含む点。

以下、相違点について検討する。
a 上述のとおり、本件発明6と引用発明4とは相違するから、本件発明6は、引用文献4に記載された発明ではない。

b 次に、相違点の容易想到性について検討する。
本件発明6は、高級アルコールを低粘度の乳化組成物に配合した場合に、経時的に粘度上昇して使用感に悪影響があるとの問題があるため、高級アルコールの含有量濃度を減らし、その際の課題を解決しようとするものであるところ、引用文献4には、そのような高級アルコールに対する問題の認識はなく、高級アルコールの含有量を減らすとの動機付けとなる記載はない。
そうすると、引用発明4において、セタノールを除く、もしくは、その濃度を0.5質量%以下とし、保存安定性(乳化安定性)に優れ、尚且つ、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮する乳液を得ることは当業者が容易に想到しうることではない。

(イ)本件発明7?10について
請求項6を引用する本件発明7?10については、上記(ア)と同様の理由により、引用文献4に記載された発明ではなく、引用文献4に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明6?10は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由通知で通知する理由によって取り消されるべきものではない。

オ 引用発明5に対して
(ア)本件発明6について
本件発明6と引用発明5を対比する。
引用発明5の「ポリエチレングリコール20000」は、引用文献9の摘記事項(1)ケ(イ)に白色のろう状物質又は粉末であることが記載されていることを踏まえれば、本件発明6の「成分D:室温で固体のポリエチレングリコール」に相当する。
また、引用発明5における「パルミチン酸セチル」、「ミリスチン酸イソトリデシル」、「モノオレイン酸ポリエキシエチレン(20E.O.)ソルビタン」、「クリーム」、及び「セタノール」は、本件発明6における「成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」、「成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油」、「成分C:非イオン性界面活性剤」、「皮膚用乳化組成物」、及び「高級アルコール」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明5における「ミツロウ」は、上記(1)キ(ア)の記載を参照すると、「直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」である「パルミチン酸ミリシル」を23%、「パルミチン酸ラクセリル」を2%、「セロチン酸ミリシル」を12%含むものであり、この割合はミツロウ全体の重量に対する割合である重量%を示すものと認める。
そうすると、引用発明5はミツロウを1重量%含むので、引用発明5は「成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」について、2.0質量%(パルミチン酸セチル)+1質量%×(23+2+12)%=2.0質量%+0.37質量%(ミツロウ由来)=2.37質量%含み、「成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油」を5.0質量%含むものであるから、その成分Aと成分Bの質量含有比は、A:B=2.37:5=1:約2.1であって、本件発明6の「1:2?1:10」の範囲囲内である点で一致する。
なお、引用発明5における「ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(コスモール168AR)」は、上記(1)ク(ア)を参照すると「ペンタエリスリトールエステル」の1種であるものの、「ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリチル」であり、成分Aに相当するものではない。
さらに、本件発明6は、高級アルコールの含有量についての規定はあるものの、成分A?D以外も含有することができるから、引用発明5に含まれる高級アルコール以外の、成分A?D以外の成分を含む点は、両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明6と引用発明5との一致点と相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール」

<相違点>
本件発明6は、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である」ことが特定されているのに対して、引用発明5では「セタノール2.5質量%」を含む点。

以下、相違点について検討する。
a 上述のとおり、本件発明6と引用発明5とは相違するから、本件発明6は、引用文献5に記載された発明ではない。

b 次に、相違点の容易想到性について検討する。
本件発明6は、高級アルコールを低粘度の乳化組成物に配合した場合に、経時的に粘度上昇して使用感に悪影響があるとの問題があるため、高級アルコールの含有量濃度を減らし、その際の課題を解決しようとするものであるところ、引用文献5には、そのような高級アルコールに対する問題の認識はなく、高級アルコールの含有量を減らすとの動機付けとなる記載はない。
そうすると、引用発明5において、セタノールを除く、もしくは、その濃度を0.5質量%以下とし、保存安定性(乳化安定性)に優れ、尚且つ、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮する乳液を得ることは当業者が容易に想到しうることではない。

(イ)本件発明7?10について
請求項6を引用する本件発明7?10については、上記(ア)と同様の理由により、引用文献5に記載された発明ではなく、引用文献5に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明6?10は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由通知で通知する理由によって取り消されるべきものではない。

カ 引用発明6に対して
(ア)本件発明6について
本件発明6と引用発明6を対比する。
引用発明6における「イソノナン酸イソノニル」、「ポリエキシエチレンソルビットミツロウ」、「化粧下地」、及び「ステアリルアルコール」は、本件発明6における「成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油」、「成分C:非イオン性界面活性剤」、「皮膚用乳化組成物」、及び「高級アルコール」にそれぞれ相当する。
また、引用発明6における「ミツロウ」は、上記(1)キ(ア)の記載を参照すると、「直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」である「パルミチン酸ミリシル」を23%、「パルミチン酸ラクセリル」を2%、「セロチン酸ミリシル」を12%含むものであり、この割合はミツロウ全体の重量に対する割合である重量%を示すものと認める。
そして、引用発明6はミツロウを2重量%含むので、上記(1)キ(ア)を参照した前記記載に基づいて計算すると、「成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」を2重量%×(23+2+12)%=約0.74重量%含むものであって、引用発明6における成分Aと成分Bの質量含有比は0.74:5.0=1:約6.7であるから、本件発明6の「1:2?1:10」の範囲囲内である点で一致する。
さらに、本件発明6は、高級アルコールの含有量についての規定はあるものの、成分A?D以外も含有することができるから、引用発明6に含まれる高級アルコール以外の、成分A?D以外の成分を含む点は、両発明の相違点とはならない。
そうすると、本件発明6と引用発明6との一致点と相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:約6.7である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:ポリエチレングリコール」

<相違点1>
本件発明6ではポリエチレングリコールが「室温で固形状」であるのに対して、引用発明6ではそのような特定がない点。

<相違点2>
本件発明6は、「高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である」ことが特定されているのに対して、引用発明6では「ステアリルアルコール1.0質量%」を含む点。

以下、相違点について検討する。
a 相違点1について
引用文献1には、乳液においてポリエチレングリコール4000を配合することが記載されており(上記(1)ア(エ))、引用文献2、3には、スキンクリームにおいてポリエチレングリコール1500を配合することが記載されており(上記(1)イ(オ)及び上記(1)ウ(オ))、引用文献4、5には、クリームにおいてポリエチレングリコール20000を配合することが記載されている(上記(1)エ(エ)及び上記(1)オ(エ))。
そして、引用発明6も乳液やクリームと同様に乳化物であるから、引用発明6において、ポリエチレングリコールとして、引用文献1?5のいずれかに記載のものを用いてみることは当業者が容易に想到し得ることである。
b 相違点2について
本件発明6は、高級アルコールを低粘度の乳化組成物に配合した場合に、経時的に粘度上昇して使用感に悪影響があるとの問題があるため、高級アルコールの含有量濃度を減らし、その際の課題を解決しようとするものであるところ、引用文献6には、そのような高級アルコールに対する問題の認識はなく、高級アルコールの含有量を減らすとの動機付けとなる記載はない。
そうすると、引用発明6において、ステアリルアルコールを除く、もしくは、その濃度を0.5質量%以下とし、保存安定性(乳化安定性)に優れ、尚且つ、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮する乳液を得ることは当業者が容易に想到し得ることではない。

(イ)本件発明7?10について
請求項6を引用する本件発明7?10については、上記(ア)と同様の理由により、引用文献6に記載された発明ではなく、引用文献6に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)まとめ
したがって、本件発明6?10は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由通知で通知する理由によって取り消されるべきものではない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 申立理由3(特許法第36条第6項第1号)、及び、申立理由4(特許法第36条第4項第1号)について
ア 申立理由の概要(特許異議申立書及び令和 3年 1月18日差出の意見書)
申立人は特許異議申立書で以下のとおり主張している。
(ア)質量含量比A:Bが請求項1の範囲でありさえすれば、その全範囲において、たとえば成分AまたはBならびにCおよびDの少なくとも1つの成分の含有量が極めて少ないものにおいてまで、本件特許における所期の効果が得られるかどうかについて、本件特許明細書全体の記載および出願時の技術常識を考慮しても不明である。
(イ)質量含量比A:Bが請求項1の範囲でありさえすれば、その全範囲において、あらゆる成分Aを含む態様について、本件特許における所期の効果が得られるかどうかについて、本件特許明細書全体の記載および出願時の技術常識を考慮しても不明である。
(ウ)質量含量比A:Bが請求項1の範囲でありさえすれば、その全範囲において、たとえば成分E、ステアリン酸、濃グリセリン、流動パラフィンおよびエタノールを含まないものや、これらの成分の含有量が実施例1?10と大きく異なるものにおいてまで、本件特許における所期の効果が得られるかどうかについて、本件特許明細書全体の記載および出願時の技術常識を考慮しても不明である。
したがって、本件特許明細書全体の記載および本件特許出願時の技術常識に照らして、請求項1の範囲全体にまで本件特許における上記課題を解決し得るものとして、発明を拡張ないし一般化できるものとは認められない。
よって、出願時の技術常識に照らしても、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、本件発明1についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
また、本件特許明細書に実施例として具体的に記載された組成以外に、上記課題を解決する成分の組み合せを広汎な範囲から見出そうとすれば、当業者といえども過度の試行錯誤を強いられることになる。
よって、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとは言えず、本件発明1についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

さらに、申立人は令和 3年 1月18日差出の意見書で以下のとおり主張している。
(エ)訂正発明6は、成分AおよびBについて、質量含有比A:Bの条件を満たしさえすれば、あらゆる成分AまたはBの含有量のものを含んでおり、また、成分AおよびBに該当する成分はそれぞれ膨大にある。しかしながら、これらのあらゆる組成物においてまで、本件特許の効果が得られるとは到底理解できない。たとえば、成分AまたはBの含有量が極めて少ないもの;成分Aの含有量が極めて多いもの;ならびに成分Bとしてあらゆる成分を用いたものにおいてまで、本件特許における所期の効果が得られることは示されておらず、本件特許明細書全体の記載および出願時の技術常識を考慮してもかかる効果が得られるかどうかが全く明らかでない。

イ 検討
(ア)本件特許明細書に記載された事項
a 「【0007】
本発明は、保存安定性(乳化安定性)に優れ、尚且つ、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮する皮膚用乳化組成物を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、室温で固形状の脂肪酸エステル油と、室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油と、非イオン性界面活性剤と、室温で固形状のポリエチレングリコールとを併用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。」
b 「【0019】
[成分A] 成分Aは、室温で固形状の脂肪酸エステル油である。成分Aとしては、例えば、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油、直鎖脂肪酸と多価アルコールとのエステル油等が挙げられる。
【0020】
上記直鎖脂肪酸としては、特に限定されないが、炭素数12?22の飽和の直鎖脂肪酸が好ましく、……
【0021】
上記直鎖高級アルコールとしては、特に限定されないが、炭素数12?22の飽和の直鎖高級アルコールが好ましく、……
【0022】
上記多価アルコールとしては、特に限定されないが、
……
【0024】
上記成分Aは、コクのある使用感を有し、優れた保湿効果を発揮させる観点から、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油を用いるが好ましく、中でも、炭素数12?22の直鎖飽和脂肪酸と炭素数12?22の直鎖飽和高級アルコールとのエステル油がより好ましく、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸セチルがさらに好ましい。
……
【0026】
成分Aの含有量は、特に限定されないが、コクのある使用感を有し、優れた保湿効果を発揮させる観点から、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%中、1.0?2.5質量%が好ましく、より好ましくは1.5?2.0質量%である。上記成分Aの含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分Aの含有量の合計量である。
c「【0027】
[成分B] 成分Bは、室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油である。成分Bとしては、例えば、分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステル油、分岐脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステル油、分岐脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油、直鎖脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステル油等が挙げられる。
【0028】
上記分岐脂肪酸としては、特に限定されないが、炭素数8?18の飽和又は不飽和の分岐鎖脂肪酸が好ましく、……
【0029】
上記直鎖脂肪酸としては、特に限定されないが、炭素数12?22の飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸が好ましく、……
【0030】
上記多価アルコールとしては、特に限定されないが、……
【0031】
上記分岐高級アルコールとしては、特に限定されないが、炭素数8?22の飽和又は不飽和の分岐高級アルコールが好ましく、……
【0032】
上記直鎖高級アルコールとしては、特に限定されないが、炭素数12?22の飽和又は不飽和の直鎖高級アルコールが好ましく、……
【0037】
上記成分Bは、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮させる観点から、分岐脂肪酸と多価アルコールとのエステル油、及び/又は分岐脂肪酸と分岐高級アルコールとのエステル油を用いるが好ましく、中でも、炭素数8?18の分岐飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル油、炭素数8?18の分岐飽和脂肪酸と炭素数12?22の分岐飽和高級アルコールとのエステル油がより好ましい。
……
【0040】
成分Bの含有量は、特に限定されないが、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮させる観点から、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%中、2.5?15.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0?10.0質量%である。上記成分Bの含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分Bの含有量の合計量である。」
d 「【0041】
特に、本発明は、上記成分Aと成分Bとを併用することで、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮することができる。さらには、高級アルコールを配合した乳化組成物において懸念された経時的な粘度上昇がなく、乳化組成物に優れた保存安定性(乳化安定性)を付与することができる。
【0042】
上記成分Aと成分Bとの質量含有比は、特に限定されないが、格段に優れた「コクのある使用感」、「べたつきのない滑らかな肌触り感」、「保湿効果」を発揮させる観点から、A:B=1:2?1:10の比で調製することが好ましく、より好ましくは、1:2.5?1:6.5である。成分Aの比が大きすぎると、肌上での延展性に劣り、肌になじみ難い傾向がある。また、成分Bの比が大きすぎると、コクのある使用感が得られ難い傾向がある。」
e「【0043】
[成分C] 成分Cは、非イオン性界面活性剤である。本発明の皮膚用乳化組成物は、非イオン性界面活性剤を乳化剤として含有する。
【0044】
上記成分Cとしては、特に限定されないが、……
【0052】
成分Cの含有量は、特に限定されないが、優れた保存安定性(乳化安定性)を付与する観点から、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%中、1.0?3.0質量%が好ましく、より好ましくは1.5?2.5質量%である。上記成分Cの含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分Cの含有量の合計量である。」
f「【0053】
[成分D] 成分Dは、室温で固形状のポリエチレングリコールである。本発明の皮膚用乳化組成物は、室温で固形状のポリエチレングリコールを含有することで、べたつきのない滑らかな肌触り感を更に高めることができる。成分Dとしては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量(Mn)1000以上のポリエチレングリコールが挙げられる。
……
【0057】
成分Dの含有量は、特に限定されないが、べたつきのない滑らかな肌触り感を更に高める観点から、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%中、0.3?2.5質量%が好ましく、より好ましくは0.5?2.0質量%である。上記成分Dの含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分Dの含有量の合計量である。」
g「【0058】
[成分E] 本発明の皮膚用乳化組成物は、製剤の粘度安定性及び乳化安定性を高める観点から、成分Eの増粘性高分子をさらに含有することが好ましい。増粘性高分子としては、水溶性を有する天然高分子、半合成高分子、合成高分子等が挙げられる。
……
【0063】
成分Eの含有量は、特に限定されないが、良好な製剤の粘度安定性及び乳化安定性を付与する観点から、本発明の皮膚用乳化組成物100質量%中、0.05?0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.1?0.3質量%である。上記成分Eの含有量は、本発明の皮膚用乳化組成物中の全ての成分Eの含有量の合計量である。」
h「【0064】
[その他の成分] 本発明の皮膚用乳化組成物には、上記成分A?E以外の成分(その他の成分)を目的に応じて適宜配合してもよい。……」
i「【0071】
(試料の調製)
表1及び2に記した組成に従い、実施例及び比較例の皮膚用乳化組成物を調製し、下記評価試験に供した。結果をそれぞれ表1及び表2に併記する。
……
【0073】
(試験例1;保存安定性の評価)
実施例及び比較例で得られた各試料の調製直後の粘度(25℃)を測定した。次いで、各試料を透明ガラス容器に充填し、45℃の恒温槽に2週間保管後の各試料の粘度を測定した。保管後の粘度値と調製直後の粘度値から、各試料の粘度変動率(%)を下記の如く算出し、保存安定性を以下の評価基準に従って評価した。
なお、粘度測定には、TV-22型粘度計(東機産業株式会社製)を用い、No.4ローター、30rpm、1minの条件下で測定した。
【0074】
粘度変動率は、調製直後の試料の粘度値(T_(0))及び保管後の試料の粘度値(T_(1))を下記式に代入して算出した。
[粘度変動率(%)]=(T_(1)/T_(0))×100
試料の粘度変動率が100前後であれば、保管後に粘度変動が生じておらず保存安定性に優れていると言える。
【0075】
<保存安定性の評価基準>
◎:粘度変動率(%)が、80%以上120%未満である
○:粘度変動率(%)が、70%以上80%未満、若しくは、120%以上130%未満である
△:粘度変動率(%)が、60%以上70%未満、若しくは、130%以上140%未満である
×:粘度変動率(%)が、60%未満、若しくは、140%以上である
【0076】
(試験例2;使用感の評価)
実施例及び比較例で得られた各試料約0.2gを手の甲に塗布し、塗布時の「コク」、並びに、塗布5分後の塗布部分の「肌触り」及び「保湿感」について、下記の評点基準に則って官能評価を行い、下記評価基準に従って判定した。10名の専門評価員が実施した。
【0077】
<コクの評点基準>
2点:コクのある使用感(濃度の高い感触が得られるような使用感)を十分に感じることができる
1点:コクのある使用感(濃度の高い感触が得られるような使用感)を感じることができる
0点:コクのある使用感(濃度の高い感触が得られるような使用感)を全く感じることができない
【0078】
<肌触りの評点基準>
2点:べたつきのない滑らかな肌触り感を十分に感じることができる
1点:べたつきのない滑らかな肌触り感を感じることができる
0点:べたつきのない滑らかな肌触り感を全く感じることができない
【0079】
<保湿感の評点基準>
2点:保湿効果を十分に感じることができる
1点:保湿効果を感じることができる
0点:保湿効果を全く感じることができない
【0080】
<評価基準>
◎:評点平均値が、1.5点以上である
○:評点平均値が、1.0点以上、1.5点未満である
△:評点平均値が、0.5点以上、1.0点未満である
×:評点平均値が、0.5点未満である
【0081】

【0082】


(イ)検討
本件特許の課題は、「保存安定性(乳化安定性)に優れ、尚且つ、コクのある使用感を有しながら、べたつきのない滑らかな肌触り感を付与し、優れた保湿効果を発揮する皮膚用乳化組成物を提供すること」である(段落【0007】)。
そして、本願の発明の詳細においては、必須の成分A?Dについての説明がされ、各成分の含有量の記載もされており(上記b?i)、さらに、任意の成分について、配合できることも具体的に記載されている(上記h)。
また、複数種のA?D成分を組み合わせた実施例が記載されているとともに(上記iにおける【表1】)、必須の成分を欠いた比較例が記載され、これらの対比から、実施例の範囲において、課題を達成していることが理解できる(上記iにおける【表2】)。
ここで、本件発明6?8、10は、成分AとBの質量含有比でのみ特定されており、他の成分の含有量は何ら規定されていない。また、本件発明9については、成分AとBの含有量は規定されているもののその他の成分の含有量は何ら規定されていない。
まず、成分についての含有量の規定がないことに起因して、申立人は成分AまたはBの含有量が極めて少ない場合もしくは極めて多い場合に本件特許における所期の効果が得られるかどうかについて不明である旨主張しているが(上記ア(ア)及び(エ))、成分Aと成分Bとの質量含有比が特定する範囲であれば、含有量に応じて効果が発揮されるといえるし、また、一般に、皮膚用の乳化組成物は、乳化が成立するためある程度の量の油分を含むものであり、当業者であれば、当該乳化組成物であればどの程度の油分を含むのか理解できるから、成分AとBの含有量が規定されていないからといって、サポート要件及び実施可能要件を満たしていないとはいえず、申立人の主張は採用できない。
また、申立人は成分Aと成分Bについて成分AおよびBに該当する成分はそれぞれ膨大にあるのに特定されていない点について主張しているものの(上記ア(イ)及び(エ))、A成分は、構造的にも脂肪酸エステル油を特定した上で、物理的な性質でも特定するものであり、また、B成分も分岐鎖構造を有する脂肪酸油であり、かつ、物理的な性質で特定されるものだから、ある範囲の化合物群に限られており、どのような化合物が含まれるのか見当がつかないほどの膨大なものというわけではない。また、本願の発明の詳細な説明においては、成分A及びBについて、使用可能な化合物が具体的に記載されている上(上記b?h)、実施例でも複数種類のA成分、B成分を用いた結果が記載されているから、特定された成分A、成分Bであれば、同様の効果を奏するであろうことが理解できるから、成分AとBの種類が十分に特定されていないからサポート要件及び実施可能要件を満たしていないとする申立人の主張は採用できない。
さらに、申立人は成分A?D以外の成分の有無やその含有量について規定されていない点について主張しているものの(上記ア(ウ))、皮膚用乳化組成物において、乳化状態を損なわない範囲で、任意の成分を適宜配合し得ることは、本願特許明細書の段落【0064】の記載や実施例、さらに技術常識からも理解できるから、成分A?D以外の成分及びその含有量の規定がないからといって、本件発明6?10が、サポート要件及び実施可能要件を満たさないとすることはできず、申立人の主張は採用できない。
そうすると、本願の発明の詳細な説明及び本願出願時の技術常識に照らしてみれば、本件発明6?10は、サポート要件及び実施可能要件を満たすものである。

ウ 以上のとおり、申立理由3及び申立理由4は理由がない。

(2) 申立理由5(特許法第36条第6項第2号)について
ア 申立理由の概要
請求項1において、成分Aの定義および範囲が明確でない。成分Aが「直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油」である一方、本件特許明細書に「その他成分」として記載されている「ミツロウなどのロウ類」(段落0064)は成分Aを含むから(甲第7号証、第34頁)、これらは重複する成分を含んでおり、成分Aの定義および範囲が不明である。
請求項1を引用する請求項2?6についても同様である。
よって、本件の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件発明1?6についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号)。

イ 検討
上記申立理由について検討する。
本件発明6は
「下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10であり、
高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール」である。
そして、成分A?Dの定義は明確であるから、成分A?D及び高級アルコールにより規定される本件発明6は明確であり、また、明細書の段落【0064】の記載があったとしても第三者に不測の不利益をもたらすほどのものではない。
このことは、本件発明7?10についても同様である。

ウ 以上のとおり、申立理由5は理由がない。

(3)まとめ
よって、申立理由3?5は理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立によっては、本件の請求項6?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項6?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件の請求項1?5に係る特許は、訂正により削除され、特許異議の申立ての対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
下記成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含有することを特徴とする皮膚用乳化組成物であって、
前記成分Aと前記成分Bの質量含有比が、A:B=1:2?1:10であり、
高級アルコールを含まないか、又は高級アルコールを含み且つ高級アルコールの含有量が0.5質量%以下である皮膚用乳化組成物。
成分A:直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油及び直鎖脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル油の少なくとも1種であって、室温で固形状の脂肪酸エステル油
成分B:室温で液状であり、且つ、分岐鎖構造を有する脂肪酸エステル油
成分C:非イオン性界面活性剤
成分D:室温で固形状のポリエチレングリコール
【請求項7】
前記成分Aが、直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油である請求項6に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項8】
前記成分Bが、分岐脂肪酸と多価アルコールのエステル油、及び/又は分岐脂肪酸と分岐高級アルコールのエステル油である請求項6又は7に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項9】
前記成分Aの含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%中、1.5?2.5質量%であり、前記成分Bの含有量が、皮膚用乳化組成物100質量%中、2.5?15.0質量%である請求項6?8の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項10】
さらに下記成分Eを含有することを特徴とする請求項6?9の何れか一項に記載の皮膚用乳化組成物。
成分E:増粘性高分子
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-31 
出願番号 特願2016-66875(P2016-66875)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河野 隆一朗  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 岡崎 美穂
西村 亜希子
登録日 2019-12-06 
登録番号 特許第6626387号(P6626387)
権利者 株式会社マンダム
発明の名称 皮膚用乳化組成物  
代理人 特許業務法人朝日奈特許事務所  
代理人 特許業務法人朝日奈特許事務所  

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