ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61N 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61N |
---|---|
管理番号 | 1374905 |
異議申立番号 | 異議2020-700301 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-04-27 |
確定日 | 2021-04-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6600481号発明「身体の運動機能障害を回復させる電流刺激装置及び電流刺激方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6600481号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]、7について訂正することを認める。 特許第6600481号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
理 由 第1 手続の経緯 特許第6600481号の請求項1ないし7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成27年4月20日に出願され、令和1年10月11日にその特許権の設定登録がされ、同年10月30日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 2年 4月27日 特許異議申立人オージー技研株式会社(以 下「申立人」という。)による請求項1な いし7に係る特許に対する特許異議の申立 て 令和 2年 8月20日付け 取消理由通知書 令和 2年10月23日 特許権者による意見書および訂正請求書の 提出 令和 3年 1月14日 申立人による意見書の提出 以下、令和2年10月23日提出の訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。 第2 本件訂正について 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、以下の(1)?(4)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記電気信号は、筋力を向上させるために使用される電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、」と記載されているのを、「前記電気信号は、命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記電気信号は、筋力を低下させるために使用される電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、」と記載されているのを、「前記電気信号は、命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、」に訂正する。 (請求項2の記載を引用する請求項6も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記第1の電気信号は、筋力を向上させるために使用される電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、」と記載されているのを、「前記第1の電気信号は、命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、」に訂正し、「前記第2の電気信号は、筋力を低下させるために使用される電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、」と記載されているのを、「前記第2の電気信号は、命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、」と訂正する。 (請求項3の記載を引用する請求項4?6も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7に「前記第1の電気信号は、筋力を向上させるために使用される電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、」と記載されているのを、「前記第1の電気信号は、命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、」に訂正し、「前記第2の電気信号は、筋力を低下させるために使用される電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、」と記載されているのを、「前記第2の電気信号は、命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、」と訂正する。 2 本件訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1の発明特定事項である「電気信号」について、訂正前に「筋力を向上させるために使用される」とされていたのを、「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる」と訂正することにより、電気信号をより具体的に限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、本件特許の明細書の段落【0016】には「本発明について、この筋に伝わる約60%?70%の命令量を増やす事を促通と定義し、命令量を減らす事を抑制と定義する。つまり、「促通」を選択すると筋出力が向上し、「抑制」を選択すると、筋出力を低下させる。」と記載されており、本件特許の明細書の段落【0021】には「第1の出力モードは、図3aに示すように、ランプアップタイムとランプダウンタイムを1秒より大きくした出力モードであり、筋出力を向上させるモードである。(以下、促通モードといいう。)」と記載されていることから、訂正事項1は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2の発明特定事項である「電気信号」について、訂正前に「筋力を低下させるために使用される」とされていたのを、「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる」と訂正することにより、電気信号をより具体的に限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、本件特許の明細書の段落【0016】には「本発明について、この筋に伝わる約60%?70%の命令量を増やす事を促通と定義し、命令量を減らす事を抑制と定義する。つまり、「促通」を選択すると筋出力が向上し、「抑制」を選択すると、筋出力を低下させる。」と記載されており、本件特許の明細書の段落【0025】には「第2の出力モードは、図3bに示すようにランプアップタイムとランプダウンタイムを1秒より小さくした出力モードであり、筋出力を低下させるモードである。つまり、必要以上に筋収縮を起こしている状態の筋肉の収縮を弛緩し、抑制するモードである。(以下、抑制モードという。)」と記載されていることから、訂正事項2は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項3の発明特定事項である「第1の電気信号」について、訂正前に「筋力を向上させるために使用される」とされていたのを、「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる」と訂正することにより、第1の電気信号をより具体的に限定したものであり、訂正前の請求項3の発明特定事項である「第2の電気信号」について、訂正前に「筋力を低下させるために使用される」とされていたのを、「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる」と訂正することにより、第2の電気信号をより具体的に限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、本件特許の明細書の段落【0016】には「本発明について、この筋に伝わる約60%?70%の命令量を増やす事を促通と定義し、命令量を減らす事を抑制と定義する。つまり、「促通」を選択すると筋出力が向上し、「抑制」を選択すると、筋出力を低下させる。」と記載されており、本件特許の明細書の段落【0021】には「第1の出力モードは、図3aに示すように、ランプアップタイムとランプダウンタイムを1秒より大きくした出力モードであり、筋出力を向上させるモードである。(以下、促通モードといいう。)」と記載されており、本件特許の明細書の段落【0025】には「第2の出力モードは、図3bに示すようにランプアップタイムとランプダウンタイムを1秒より小さくした出力モードであり、筋出力を低下させるモードである。つまり、必要以上に筋収縮を起こしている状態の筋肉の収縮を弛緩し、抑制するモードである。(以下、抑制モードという。)」と記載されていることから、訂正事項3は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項7の発明特定事項である「第1の電気信号」について、訂正前に「筋力を向上させるために使用される」とされていたのを、「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる」と訂正することにより、第1の電気信号をより具体的に限定したものであり、「第2の電気信号」について、訂正前に「筋力を低下させるために使用される」とされていたのを、「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる」と訂正することにより、第2の電気信号をより具体的に限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、本件特許の明細書の段落【0016】には「本発明について、この筋に伝わる約60%?70%の命令量を増やす事を促通と定義し、命令量を減らす事を抑制と定義する。つまり、「促通」を選択すると筋出力が向上し、「抑制」を選択すると、筋出力を低下させる。」と記載されており、本件特許の明細書の段落【0021】には「第1の出力モードは、図3aに示すように、ランプアップタイムとランプダウンタイムを1秒より大きくした出力モードであり、筋出力を向上させるモードである。(以下、促通モードといいう。)」と記載されており、本件特許の明細書の段落【0025】には「第2の出力モードは、図3bに示すようにランプアップタイムとランプダウンタイムを1秒より小さくした出力モードであり、筋出力を低下させるモードである。つまり、必要以上に筋収縮を起こしている状態の筋肉の収縮を弛緩し、抑制するモードである。(以下、抑制モードという。)」と記載されていることから、訂正事項4は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 (5)独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、請求項1?7の全請求項に係る特許について特許異議の申立てがなされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の要件(独立特許要件)については検討しない。 (6)一群の請求項について 訂正前の請求項5は、請求項1を直接的に引用するものであるから、訂正事項1によって訂正される請求項1,5は一群の請求項である。 訂正前の請求項6は、請求項2を直接的に引用するものであるから、訂正事項2によって訂正される請求項2,6は一群の請求項である。 訂正前の請求項4?6は、請求項3を直接的に引用するものであるから、訂正事項3によって訂正される請求項3?6は一群の請求項である。 そして、以上の引用関係から、訂正事項1?3によって訂正される請求項1?6は一群の請求項である。 よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、令和2年10月23日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]、7について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正が認められたため、本件特許発明は令和2年10月23日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ、「本件特許発明1ないし7」という。)。 【請求項1】 電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、 命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記ランプアップタイム及び前記ランプダウンタイムがそれぞれ1秒より大きい電気信号であることを特徴とする電流刺激装置。 【請求項2】 電気信号を、患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、 命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記ランプアップタイムおよび前記ランプダウンタイムがそれぞれ1秒より小さい電流である ことを特徴とする電流刺激装置。 【請求項3】 電気信号を、患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、第1のモードによる第1の電気信号か第2のモードによる第2の電気信号であり、 前記第1の電気信号は、 命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記第2の電気信号は、 命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成される ことを特徴とする電流刺激装置。 【請求項4】 前記第1の出力モードと前記第2の出力モードのいずれかを任意に選択するモード設定手段を備え、選択されたモードに従って前記第1の電気信号または前記第2の電気信号を出力することを特徴とする請求項3に記載の電流刺激装置。 【請求項5】 前記第1の出力モードのランプアップタイムとランプダウンタイムは1.1秒以上4秒以下であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の電流刺激装置。 【請求項6】 前記第2の出力モードのランプアップタイムとランプダウンタイムは0.1秒以上0.9秒以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電流刺激装置。 【請求項7】 電気信号を、患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、第1のモードによる第1の電気信号か第2のモードによる第2の電気信号であり、 前記第1の電気信号は、 命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、1000μA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記第2の電気信号は、 命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、1000μA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成される ことを特徴とする電流刺激装置。 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、当審が令和2年8月20日付けで特許権者に対して通知した取消理由は、概ね次のとおりである。 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし7に係る発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:携帯型電気刺激治療器 ELPHA3000のカタログ,2002年9月,株式会社日本メディックス(以下、「甲1」という。) 2 甲号証の記載 (1)甲1 ア「 」 イ「 」 甲1の上記各図、各写真及び記載事項から、以下のことがいえる。 ウ 上記アの写真より、携帯型電気刺激治療器は、電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給するものであるといえる。 エ 上記イの刺激モードP4?P6に示される信号の波形より、携帯型電気刺激治療器は、電流の振幅が漸増時間において徐々に大きくなる電気信号と、電流の振幅が一定となる電気信号と、電流の振幅が漸減時間において徐々に小さくなる電気信号から構成される電気信号を印可する刺激モードP4?P6を備えている。 オ 上記イの下段の表より、刺激モードP4?P6では、設定出力を0?100mAの範囲で1mA毎に変更することが可能であり、漸増時間及び漸減時間をそれぞれ0.5?2.0secの範囲で0.5sec毎に変更することが可能である。 上記ア?オからみて、甲1には以下の発明(以下、「引用発明1」、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明1) 「電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給する携帯型電気刺激治療器であって、 前記電気信号は、 電流の振幅が漸増時間において徐々に大きくなる電気信号と、0?100mAの範囲で1mA毎に変更することが可能な電気信号と、電流の振幅が漸減時間において徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記漸増時間及び前記漸減時間がそれぞれ0.5?2.0secの範囲で0.5sec毎に変更することが可能である電気信号である携帯型電気刺激治療器。」 (引用発明2) 「電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給する携帯型電気刺激治療器であって、 前記電気信号は、刺激モードP5による電気信号か刺激モードP4による電気信号であり、 刺激モードP5による電気信号は、電流の振幅が漸増時間において徐々に大きくなる電気信号と、0?100mAの範囲で1mA毎に変更することが可能な電気信号と、電流の振幅が漸減時間において徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 刺激モードP4による電気信号は、電流の振幅が漸増時間において徐々に大きくなる電気信号と、0?100mAの範囲で1mA毎に変更することが可能な電気信号と、電流の振幅が漸減時間において徐々に小さくなる電気信号から構成される 携帯型電気刺激治療器。」 3 当審の判断 (1)特許法第29条第1項第3号について ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1における「携帯型電気刺激治療器」は本件特許発明1における「電流刺激装置」に相当し、以下同様に、「漸増時間」は「ランプアップタイム」に、「漸減時間」は「ランプダウンタイム」に相当する。 (イ)引用発明1においては、設定出力を0?100mAの範囲で1mA毎に変更することが可能であることから、電気信号を20mA以下に設定することが可能であるといえる。 (ウ)引用発明1においては、漸増時間及び漸減時間がそれぞれ0.5?2.0secの範囲で0.5sec毎に変更することが可能であることから、漸増時間及び漸減時間がそれぞれ1秒より大きい時間に設定することが可能であるといえる。 したがって、本件特許発明1と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。 (一致点) 「電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記ランプアップタイム及び前記ランプダウンタイムがそれぞれ1秒より大きい電気信号である電流刺激装置。」 (相違点1) 電気信号に関し、本件特許発明1においては、命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であるのに対し、引用発明1においては、そのような特定がない点。 上記相違点1について検討する。甲1には、電気信号が「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」による電気信号である点は記載されていない。また、相違点1が当業者からみて自明な事項であることを裏付けるような証拠はない。 よって、上記相違点1は実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明1は、引用発明1であるとはいえない。 イ 本件特許発明2について 本件特許発明2と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1における「携帯型電気刺激治療器」は本件特許発明2における「電流刺激装置」に相当し、以下同様に、「漸増時間」は「ランプアップタイム」に、「漸減時間」は「ランプダウンタイム」に相当する。 (イ)引用発明1においては、設定出力を0?100mAの範囲で1mA毎に変更することが可能であることから、電気信号を20mA以下に設定することが可能であるといえる。 (ウ)引用発明1においては、漸増時間及び漸減時間がそれぞれ0.5?2.0secの範囲で0.5sec毎に変更することが可能であることから、漸増時間及び漸減時間がそれぞれ1秒より小さい時間に設定することが可能であるといえる。 したがって、本件特許発明2と引用発明1との一致点、相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記ランプアップタイム及び前記ランプダウンタイムがそれぞれ1秒より小さい電気信号である電流刺激装置。」 (相違点2) 電気信号に関し、本件特許発明2においては、命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であるのに対し、引用発明1においては、そのような特定がない点。 上記相違点2について検討する。甲1には、電気信号が「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号である点は記載されていない。また、相違点2が当業者からみて自明な事項であることを裏付けるような証拠はない。 よって、上記相違点2は実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明2は、引用発明1であるとはいえない。 ウ 本件特許発明3について 本件特許発明3と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2における「携帯型電気刺激治療器」は本件特許発明3における「電流刺激装置」に相当し、以下同様に、「漸増時間」は「ランプアップタイム」に、「漸減時間」は「ランプダウンタイム」に、「刺激モードP5による電気信号」は「第1のモードによる第1の電気信号」に、「刺激モードP4による電気信号」は「第2のモードによる第2の電気信号」に相当する。 (イ)引用発明2においては、設定出力を0?100mAの範囲で1mA毎に変更することが可能であることから、電気信号を20mA以下に設定することが可能であるといえる。 したがって、本件特許発明3と、引用発明2との一致点、相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、第1のモードによる第1の電気信号か第2のモードによる第2の電気信号であり、 前記第1の電気信号は、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記第2の電気信号は、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成される 電流刺激装置。」 (相違点3) 第1の電気信号に関し、本件特許発明3においては、命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であるのに対し、引用発明2においては、そのような特定がない点。 (相違点4) 第2の電気信号に関し、本件特許発明3においては、命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であるのに対し、引用発明2においては、そのような特定がない点。 上記相違点3について検討する。甲1には、電気信号が「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」による電気信号である点が記載されていない。また、相違点3が当業者からみて自明な事項であることを裏付けるような証拠はない。 上記相違点4について検討する。甲1には、電気信号が「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号である点が記載されていない。また、相違点4が当業者からみて自明な事項であることを裏付けるような証拠はない。 したがって、上記相違点3及び4はいずれも実質的な相違点であるから、本件特許発明3は、引用発明2であるとはいえない。 エ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、本件特許発明1ないし3のいずれかを発明特定事項に含むものであり、上記ア?ウで示した相違点1ないし4のいずれかの相違点が認められることから、本件特許発明4ないし6についても、引用発明1または引用発明2であるとはいえない。 オ 本件特許発明7について 本件特許発明7と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2における「携帯型電気刺激治療器」は本件特許発明7における「電流刺激装置」に相当し、以下同様に、「漸増時間」は「ランプアップタイム」に、「漸減時間」は「ランプダウンタイム」に、「刺激モードP5による電気信号」は「第1のモードによる第1の電気信号」に、「刺激モードP4による電気信号」は「第2のモードによる第2の電気信号」に相当する。 (イ)引用発明2においては、設定出力を0?100mAの範囲で1mA毎に変更することが可能であることから、電気信号を1000μA以下に設定することが可能であるといえる。 したがって、本件特許発明7と引用発明2との一致点、相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、第1のモードによる第1の電気信号か第2のモードによる第2の電気信号であり、 前記第1の電気信号は、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、1000μA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記第2の電気信号は、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、1000μA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成される 電流刺激装置。」 (相違点5) 第1の電気信号に関し、本件特許発明7においては、命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であるのに対し、引用発明2においては、そのような特定がない点。 (相違点6) 第2の電気信号に関し、本件特許発明7においては、命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であるのに対し、引用発明2においては、そのような特定がない点。 上記相違点5について検討する。甲1には、電気信号が「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」による電気信号である点が記載されていない。また、相違点5が当業者からみて自明な事項であることを裏付けるような証拠はない。 上記相違点6について検討する。甲1には、電気信号が「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号である点が記載されていない。また、相違点6が当業者からみて自明な事項であることを裏付けるような証拠はない。 したがって、上記相違点5及び6はいずれも実質的な相違点であるから、本件特許発明7は、引用発明2であるとはいえない。 カ 小括 以上により、本件特許発明1ないし7は、引用発明1または2であるとはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないとすることはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 申立人は、異議申立書において、請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証ないし甲第9号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない旨を主張しているため、この理由について検討する。 1 甲各号証の記載 甲第1号証の他に、申立人の提出した甲第2?9号証(以下、それぞれ「甲2?甲9」という。)は、以下のとおりである。 甲2:電気刺激装置 GD-611 低周波治療器 IVES+(アイビスプラス)取扱説明書(表紙、12,34,41,65,66,68,72頁、裏表紙):2012年9月作成:オージー技研株式会社、写し 甲3:EMGコントロール筋刺激装置 オートムーブ800 カタログ:1998年10月作成:株式会社日本メディックス、写し 甲4:中周波筋刺激専用機器 エムスティム ウィット カタログ:2006年7月作成:株式会社日本メディックス、写し 甲5:レコーディング クロナキシーメーター CX-31 取扱説明書(表紙、26,27,28,40頁、裏表紙):2003年9月作成:オージー技研株式会社、写し 甲6:特表2009-538654号公報 甲7:理学療法学Supplement Vol.37 Suppl.No.2(第45回日本理学療法学術大会抄録集)の一般演題(ポスター)「感覚閾値電気刺激は即時的に足指間圧力を向上させる」の抄録を記載したウェブページ、写し、生野公貴他、編集・発行:公益社団法人 日本理学療法士協会(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2009/0/2009_0_A4P2026/_article/-char/ja/)出力日:2020年4月17日、公開日:2010年5月25日 甲8:実用新案登録第31310920号公報 甲9:順天堂医学56巻1号(2010)29?36頁「リハビリテーションにおける電気刺激療法の展望」、公開日:2010年、写し (1)甲2に記載の技術的事項 甲2の各記載事項から、次のことがいえる。 ア 「低周波治療器アイビスプラス」は、出力電圧の振幅が漸増し、一定となり、漸減する波形を印可するノーマルモード、トリガー/外部トリガーモード及びセンサートリガーモードを備えている(65、66、68頁)。 イ ノーマルモード、トリガー/外部トリガーモード及びセンサートリガーモードの各モードでは、立上時間及び立下時間をそれぞれ0.0?10.0秒の範囲で0.1秒単位で変更可能である(41頁)。 ウ 調節ツマミによって出力を調整し治療を行うことができる(12、34頁)。 エ 最大出力電流が35mArms(周波数:100Hz、負荷抵抗:500Ω)である(72頁)。 上記ア?エより、甲2には以下の技術的事項が記載されている。 「低周波治療器(アイビスプラス)において、電気信号は、出力電圧の振幅が立上時間において徐々に大きくなる電気信号と、35mA以下の電気信号と、出力電圧の振幅が立下時間において徐々に小さくなる電気信号から構成され、立上時間及び立下時間をそれぞれ0.0?10.0秒の範囲で0.1秒単位で変更可能である。」 (2)甲3に記載の技術的事項 甲3の各記載事項から、次のことがいえる。 ア 出力電流は0?60mAであり、漸増時間及び漸減時間はそれぞれ0.5?10secである。(2頁仕様欄) イ 電気信号波形に漸増時間及び漸減時間が設定されていることから、「EMGコントロール筋刺激装置 オートムーブ800」が出力する電気信号は、振幅が漸増し、漸減する波形である。 上記ア?イより、甲3には以下の技術的事項が記載されている。 「EMGコントロール筋刺激装置 オートムーブ800において、電気信号は、振幅が漸増し、漸減する波形を有し、出力電流は0?60mAであり、漸増時間及び漸減時間はそれぞれ0.5?10secである。」 (3)甲4に記載の技術的事項 甲4の各記載事項から、次のことがいえる。 ア 「中周波筋刺激専用機器エムスティム ウィット」は、振幅が漸増し、一定となり、漸減する波形を印可して刺激する治療器である。(3頁図面) イ 出力電流は49.5mA以下であり、漸増時間、漸減時間は0.1?10秒の間で0.1秒ステップである。(4頁仕様欄) 上記ア?イより、甲4には以下の技術的事項が記載されている。 「中周波筋刺激専用機器エムスティム ウィットにおいて、電気信号は、振幅が漸増し、一定となり、漸減する波形を有し、出力電流は49.5mA以下であり、漸増時間、漸減時間は0.1?10秒の間で0.1秒ステップである。」 (4)甲5に記載の技術的事項 甲5の各記載事項から、次のことがいえる。 ア 「レコーディングクロナキシーメーター CX-31」は、振幅が漸増し、一定となり、漸減する波形を印可して低周波治療を行うことができる電気刺激装置である(26頁?28頁)。 イ 立上時間及び立下時間をそれぞれ0?10秒の範囲で変更可能である(28頁、40頁)。 ウ 出力電流は出力調整器で調整可能である(27頁)。 エ 最大出力電流は45mArms(500Ω負荷時)である(40頁)。 上記ア?エより、甲5には以下の技術的事項が記載されている。 「レコーディングクロナキシーメーター CX-31において、電気信号は、振幅が漸増し、一定となり、漸減する波形を有し、出力電流出力電流で調整可能であり、最大出力電流は45mArmsであり、立上時間及び立下時間をそれぞれ0?10秒の範囲で変更可能である。」 (5)甲6に記載の技術的事項 甲6には、下記の記載がある。 ア「【0038】 図6は、最大信号振幅V、ランプアップ時間RU、収縮時間CTと、ランプダウン時間RDと、オフ時間RTと、変調タイプと、変調の深さMとによって記述され得る振幅変調パルス列の主要な要素を示している。」 イ「【0039】 表Aは、治療セグメントのパルス列を指定するために要求されるデータと、出現する値の典型的な範囲とを要約している。」 ウ「【0044】 電気刺激療法システムにおいては多くの場合に、選択されてもよいさらなる選択肢が存在する。」 上記ア、イ、及び、甲6の表A、【図6】より、次のことがいえる エ 表Aより、ランプアップ時間及びランプダウン時間は0.0?9.9秒であり、最大振幅は10?100mAである。 オ 上記ア及び【図6】より、ランプアップ時間RUでは振幅が漸増し、収縮時間CTでは振幅が一定となり、ランプダウン時間RDでは振幅が漸減している。 上記ア?オより、甲6には以下の技術的事項が記載されている。 「電気刺激療法システムにおいて、電気信号は、振幅が漸増し、一定となり、漸減する波形を有し、ランプアップ時間及びランプダウン時間は0.0?9.9秒であり、最大振幅は10?100mAである。」 (6)甲7の技術的事項 甲7には、以下の記載がある。 ア 「刺激パラメータは単相矩形波,パルス幅1ms,周波数10Hz,50%デューティサイクルとした。刺激強度は,筋収縮が起きない感覚閾値程度とし,刺激時間は1時間とした。」(項目【方法】の8?10行) イ 「総腓骨神経刺激により前脛骨筋の運動野の興奮性が増大し,結果として足指間圧力が向上したと考えられた。」(項目【考察】の3?4行) ウ 「上肢に対するPNSと同様に,下肢に対するPNSにおいても刺激神経特異性があると考えられる。PNSは,目的とする筋の支配神経に刺激をすると筋力や関連するパフォーマンスが即時的に改善する可能性があり,運動麻痺を有する脳損傷患者に応用できるかもしれない。」(項目【考察】の4?7行) エ 「本研究は,上肢と同様に下肢においても刺激神経特異的に筋力が即時的に向上することを示した初めての報告である。」(項目【理学療法研究としての意義】3?4行) 上記ア?エより、甲7には以下の技術的事項が記載されている。 「単相矩形波,パルス幅1ms,周波数10Hz,50%デューティサイクルとした刺激パラメータ、及び、筋収縮が起きない感覚閾値程度の刺激強度の刺激により、筋力が即時的に向上する。」 (7)甲8の技術的事項 甲8には、以下の記載がある。 ア「【0004】 本考案の主な目的は、微弱電流を筋肉の特定のトリガーポイントに誘導することにより筋肉の収縮・弛緩を促進し、筋肉の緊張を緩和することが可能である筋肉の収縮・弛緩を刺激する装置を提供することである。」 イ「【0008】 (中略)また痙攣した筋肉を迅速に弛緩させれば受傷した組織または炎症を起こした組織を速やかに修復することが可能である。(中略)」 ウ「【0012】 (中略)微弱電流は1ミリアンペア(mA)から30ミリアンペアの定電流である。(中略)」 エ「【0013】 臨床実験では、筋肉の収縮・弛緩を刺激する装置100により870名の筋膜痛の患者に対し筋肉の収縮・弛緩を刺激した。実験統計の結果、疼痛自覚を10段階に設定した場合、刺激を受けてすぐ症状が改善したと感じる患者は83.15%、改善してないと感じる患者は16.85%である。(中略)」 上記ア?エより、甲8には以下の技術的事項が記載されている。 「筋肉の収縮・弛緩を刺激する装置100により、1ミリアンペア(mA)から30ミリアンペアの微弱電流による電気刺激を870名の筋膜痛の患者に対し与え筋肉の収縮・弛緩を刺激したところ、疼痛自覚を10段階に設定した場合、刺激を受けてすぐ症状が改善したと感じる患者は83.15%、改善してないと感じる患者は16.85%であった。」 (8)甲9の技術的事項 甲9には、以下の記載がある。 ア「刺激条件は,刺激部位や目的などにより,適宜変更する必要がある.さらに,電気刺激による効果は,被験者により個人差が大きい.そのため,刺激目的によって大まかに刺激条件を決め(表-1,2),細かい調節は被験者の感じ方や筋収縮の状態を見ながら行うのが良いとされる.」(30頁右上欄5?10行) イ「 」 上記ア?イより、甲9には以下の技術的事項が記載されている。 「痙性抑制のための電気刺激の強さを収縮閾値以下とすること。」 2 当審の判断 (1)特許法第29条第2項について ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と上記「第4 2」で認定した引用発明1とを対比すると、上記「第4 3(1)ア 本件特許発明1について」で示したとおりの一致点、及び、相違点1が認められるため、相違点1について検討する。 上記1(1)?(8)をふまえると、甲2ないし9には、上記相違点1に係る、電気信号が「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」による電気信号である点は記載されていない。 また、この点が技術常識であるとする証拠もない。 したがって、本件特許発明1は、引用発明1及び甲2ないし9に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)申立人の主張 申立人は、令和3年1月14日提出の意見書において、以下のように主張している。 「ここで、異議申立書(令和2年4月27日提出)の26-27頁で説明しましたように、甲第7号証には、筋収縮が起きない強度の総腓骨神経刺激により、前脛骨筋の運動野の興奮性が増大し、結果として足指間圧力が向上していることが記載され、このことは、筋肉が収縮を起こさない微弱な電流による刺激によって、筋に伝わる命令量を増やすことで筋力が向上することを示しています。また、甲第7号証には筋力が即時的に向上することが記載されています。 甲第7号証は微弱電流を用いた電気刺激の文献であり、甲第1号証及び甲第7号証は同じ電気刺激に関する文献ですので、甲第1号証と甲第7号証とを組み合わせる動機付けがあると思料します。また、甲第1号証の治療器では、漸増時間及び漸減時間をそれぞれ0.5,1,1.5,2秒の4通りに設定できます。ここで、特許権者は前記意見書において、「甲第1号証は、本願発明のように、「脳が新見を通じて筋に与える電子信号の量(命令量)」に着目し、ランプアップとランプダウン時間をコントロールして当該電子信号の量(命令量)を自在に増減させることに特化した装置とは考えられません。」と主張しています。 しかしながら、当業者であれば、甲第7号証の記載事項に基づいて、甲第1号証の治療器において、促通を引き起こすために、設定出力を20mA以下に設定し、漸増時間及び漸増時間を1秒より大きい数値(1.5,2秒)に設定できるようにすることは容易であると思料します。したがって、甲第7号証と甲第1号証とを組み合わせることによって特許発明1を得ることは、当業者にとって容易であり、特許発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと思料します。」(上記意見書2頁2?22行) (ウ)申立人の主張について 申立人の主張は、甲7には、「総腓骨神経刺激により前脛骨筋の運動野の興奮性が増大し,結果として足指間圧力が向上したと考えられた。」(項目【考察】の3?4行)、「上肢に対するPNSと同様に,下肢に対するPNSにおいても刺激神経特異性があると考えられる。PNSは,目的とする筋の支配神経に刺激をすると筋力や関連するパフォーマンスが即時的に改善する可能性があり,運動麻痺を有する脳損傷患者に応用できるかもしれない。」(項目【考察】の4?7行)との記載があり、これらの記載は、本件特許発明1の「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号」と共通する効果が示されており、甲7と甲1とを組み合わせることによって本件特許発明1を得ることは、当業者にとって容易である旨を主張しているように思われる。 ここで、甲7について検討する。甲7には、「刺激パラメーターは単相矩形波,パルス幅1ms,周波数10Hz,50%デューティサイクルとした。」と記載されていることから、甲7における電気信号は「単相矩形波」であると認められ、「ランプアップタイムの電気信号」と、「20mA以下の電気信号」と、「ランプダウンタイムの電気信号」の3つで構成される電気信号であるとはいえない。そうすると、引用発明1における電気信号と、甲7に示される電気信号の波形が異なることから、引用発明1における電気信号が、直ちに甲7で示される電気信号と同じ作用・効果を奏する電気信号であるということはできない。また、甲7における電気信号は、「ランプアップタイム及びランプダウンタイムがそれぞれ1秒より大きい電気信号」であるとはいえないから、甲7に記載の技術的事項から、引用発明1において、1秒より大きいランプアップタイムの電気信号、20mA以下の電気信号、1秒より大きいランプダウンタイムの電気信号の3つで構成される電気信号を、「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号」として設定する動機は見当たらない。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 イ 本件特許発明2について (ア)本件特許発明2と引用発明1とを対比すると、上記「第4 3(1)イ 本件特許発明2について」で示したとおりの一致点、及び、相違点2が認められるため、相違点2について検討する。 甲2ないし9には、相違点2に係る、電気信号が「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号である点は記載されていない。 また、この点が技術常識であるとする証拠もない。 したがって、本件特許発明2は、引用発明1及び甲2ないし9に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)申立人の主張 申立人は、令和3年1月14日提出の意見書において、以下のように主張している。 「しかしながら、甲第10号証には、本来使用されないランプアップとランプダウンを有する微弱な電気信号波形が記載されており、このような電気信号波形は本件特許の出願時には公知でした。 次に、前記異議申立書の27頁で説明しましたように、甲第8号証には、1mA?20mAの微弱電流の刺激によって筋肉の緊張を緩和できること、刺激を受けてすぐ筋肉の緊張を緩和できることが記載されています。 また、前記異議申立書の27-28頁で説明しましたように、甲第9号証には筋緊張亢進(痙性)を抑制するために、筋収縮を起こさない刺激強度(収縮閾値以下)の電気刺激を行うことが記載されています。 以上のように、甲第8号証、甲第9号証及び甲第10号証は微弱電流を用いた電気刺激の文献であり、甲第1号証、甲第8号証、甲第9号証及び甲第10号証は同じ電気刺激に関する文献ですので、甲第1号証と甲第8号証、甲第9号証又は甲第10号証とを組み合わせる動機付けがあると思料します。当業者であれば、甲第8号証、甲第9号証又は甲第10号証の記載に基づいて、甲第1号証の治療器において、抑制を引き起こすために、設定出力を20mA以下に設定し、漸増時間及び漸減時間を1秒より小さい数値(0.5秒)に設定できるようにすることは容易であると思料します。したがって、甲第8号証、甲第9号証又は甲第10号証と甲第1号証とを組み合わせることによって特許発明2を得ることは当業者にとって容易であり、特許発明2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと思料します。」(上記意見書3頁15行?4頁5行)) (ウ)申立人の主張について 令和3年1月14日提出の意見書とともに提出された甲第10号証(以下、「甲10」という。)は、特許異議の申立ての時点において提出されていない新たな証拠であり、甲10に基づいた主張は、実質的に新たな理由を提示するものである。したがって、合議体は甲10に基いた主張は採用しない。 また、甲10を新たな証拠として採用したとしても、甲10には、電気信号が「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号である点は記載されていない。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 ウ 本件特許発明3について (ア)本件特許発明3と引用発明2とを対比すると、上記「第4 3(1)ウ 本件特許発明3について」で示したとおりの一致点、及び、相違点3、相違点4が認められるため、相違点3、相違点4について検討する。 甲2ないし9には、相違点3及び相違点4の、電気信号が「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」による電気信号である点、及び、「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号である点は記載されていない。そして、引用発明2における「第1の電気信号」を、「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」による電気信号とする動機や示唆は見当たらない。また、引用発明2における「第2の電気信号」を、「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号とする動機や示唆は見当たらない。 したがって、本件特許発明3は、引用発明2及び甲2ないし9に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)申立人の主張 申立人は、令和3年1月14日提出の意見書において、以下のように主張している。 「前記項目3-1.で説明しましたように、当業者であれば、甲第7号証の記載事項に基づいて、甲第1号証の治療器において、促通を引き起こすために、設定出力を20mA以下に設定し、漸増時間及び漸減時間を1秒より大きい数値(1.5,2秒)に設定できるようにすることは容易であると思料します。 前記項目3-2.で説明しましたように、当業者であれば、甲第8号証、甲第9号証又は甲第10号証の記載事項に基づいて、甲第1号証の治療器において、抑制を引き起こすために設定出力を20mA以下に設定し、漸増時間及び漸減時間を1秒より小さい数値(0.5秒)に設定するようにすることは容易であると思料します。 そして、前記異議申立書の39-41頁で説明しましたように、甲第1号証に記載された、例えば刺激モードP5、P4がそれぞれ第1モード、第2モードに相当するものであります。 したがって、甲第7号証と、甲第8号証、甲第9号証又は甲第10号証と、甲第1号証とを組み合わせることによって特許発明3を得ることは、当業者にとって容易であり、特許発明3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと思料します。」(上記意見書4頁16行?5頁3行)) (ウ)申立人の主張について 申立人の主張のとおり、甲1に記載の発明の刺激モードP5、P4が、それぞれ、第1モード、第2モードに相当すると認定したとしても、甲1の記載から、これらの「刺激モードP5、P4」が、それぞれ、「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」、「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」であるといえる根拠は見いだせない。刺激モードP4、5以外の、刺激モードP1?3、6についても同様に、「促通モード」、「抑制モード」であるといえる根拠は見いだせない。 よって、申立人の上記主張を採用することはできない。 エ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、本件特許発明1ないし3のいずれかを発明特定事項に含むものであり、上記「第4 3(1)ア?ウ」で示した相違点1ないし4のいずれかの相違点が認められることから、本件特許発明4ないし6についても、引用発明1または引用発明2及び甲2ないし9に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 本件特許発明7について (ア)本件特許発明7と引用発明2とを対比すると、上記「第4 3(1)オ 本件特許発明7について」で示したとおりの一致点、及び、相違点5、相違点6が認められるため、相違点5、相違点6について検討する。 甲2ないし9には、相違点5及び相違点6の、電気信号が「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」による電気信号である点、及び、「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号である点が記載されていない。そして、引用発明2における「第1の電気信号」を、「命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モード」による電気信号とする動機や示唆は見当たらない。また、引用発明2における「第2の電気信号」を、「命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モード」による電気信号とする動機や示唆は見当たらない。 したがって、本件特許発明7は、引用発明2及び甲2ないし9に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)令和3年1月14日提出の意見書における本件特許発明7に対する主張は、本件特許発明3に対する主張と同様の内容であり、上記「ウ(ウ)申立人の主張について」で説示したのと同様である。 カ 小括 以上のとおり、本件特許発明1ないし7は、引用発明1または2並びに甲2ないし9に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 電気信号を、患者の患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、 命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記ランプアップタイム及び前記ランプダウンタイムがそれぞれ1秒より大きい電気信号であることを特徴とする電流刺激装置。 【請求項2】 電気信号を、患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、 命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記ランプアップタイムおよび前記ランプダウンタイムがそれぞれ1秒より小さい電流である ことを特徴とする電流刺激装置。 【請求項3】 電気信号を、患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、第1のモードによる第1の電気信号か第2のモードによる第2の電気信号であり、 前記第1の電気信号は、 命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記第2の電気信号は、 命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、20mA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成される ことを特徴とする電流刺激装置。 【請求項4】 前記第1の出力モードと前記第2の出力モードのいずれかを任意に選択するモード設定手段を備え、選択されたモードに従って前記第1の電気信号または前記第2の電気信号を出力することを特徴とする請求項3に記載の電流刺激装置。 【請求項5】 前記第1の出力モードのランプアップタイムとランプダウンタイムは1.1秒以上4秒以下であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の電流刺激装置。 【請求項6】 前記第2の出力モードのランプアップタイムとランプダウンタイムは0.1秒以上0.9秒以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電流刺激装置。 【請求項7】 電気信号を、患部に配置した導子を使用して患部に供給する電流刺激装置であって、 前記電気信号は、第1のモードによる第1の電気信号か第2のモードによる第2の電気信号であり、 前記第1の電気信号は、 命令量を増やすことで即時的に筋出力の向上を行う促通に使用されるために設けられた促通モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電気信号であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、1000μA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成されるものであり、 前記第2の電気信号は、 命令量を減らすことで即時的に筋出力の低下を行う抑制に使用されるために設けられた抑制モードによる電気信号であるとともに筋肉が収縮を起こさない微弱な電流であって、 電流の振幅がランプアップタイムにおいて徐々に大きくなる信号である電気信号と、1000μA以下の電気信号と、電流の振幅がランプダウンタイムにおいて徐々に小さくなる電気信号から構成される ことを特徴とする電流刺激装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-03-29 |
出願番号 | 特願2015-85998(P2015-85998) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A61N)
P 1 651・ 113- YAA (A61N) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 敏長 |
特許庁審判長 |
内藤 真徳 |
特許庁審判官 |
宮崎 基樹 井上 哲男 |
登録日 | 2019-10-11 |
登録番号 | 特許第6600481号(P6600481) |
権利者 | 伊藤超短波株式会社 |
発明の名称 | 身体の運動機能障害を回復させる電流刺激装置及び電流刺激方法 |
代理人 | 福地 武雄 |
代理人 | 福地 武雄 |