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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1374906
異議申立番号 異議2020-700374  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-02 
確定日 2021-04-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6613879号発明「反射性遮光性積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6613879号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6613879号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6613879号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年12月25日にした出願であって、令和元年11月15日にその特許権の設定登録がされ、令和元年12月4日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年6月2日 :特許異議申立人 鶴谷裕二(以下、「申立人」という。)による請求項1?4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年8月21日付け :取消理由通知
令和2年10月23日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正を「本件訂正」という。)の提出
令和2年12月24日 :申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6613879号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを求めるものであり、訂正箇所の下線を付すと、本件訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「少なくとも基材層、遮蔽層、及び遮光層がこの順に積層された反射性遮光性積層体」を「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層された反射性遮光性積層体」に、また、「該遮光層は、バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む遮光インキよりなる印刷層であり」を「該遮光層は、バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む銀インキよりなる印刷層であり」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2?4も同様に訂正する。)
(2)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1?4について、請求項2?4は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正前の請求項1?4に対応する本件訂正後の請求項1?4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件訂正前の請求項1の「少なくとも基材層、遮蔽層、及び遮光層がこの順に積層された反射性遮光性積層体」を「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層された反射性遮光性積層体」とする訂正は、「積層体」を構成する「基材層」、「遮蔽層」及び「遮光層」がそれぞれ一層であるものに限定し、また、「該遮光層は、バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む遮光インキよりなる印刷層であり」を「該遮光層は、バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む銀インキよりなる印刷層であり」とする訂正は、「遮光層」である「印刷層」の「遮光インキ」の色を「銀」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、「【0011】・・・<1>本発明の積層体及びそれを用いた包装材料の層構成 ・・・本発明の積層体は、図1に示すように、基材層1と、遮蔽層2と、該遮蔽層2上に印刷してなる遮光層3とからなる構成を基本構造とするものである。・・・」と記載され、図1には、「基材層」、「遮蔽層」及び「遮光層」がそれぞれ一層であるものが図示され、また、本件特許明細書には「【0026】<7>白色度 本発明の積層体は、遮光層が銀色を呈するため、・・・」、「【実施例】【0034】(実施例1)(反射性遮光性積層体の製造) 遮光インキとして、ウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体及びセルロース樹脂からなるバインダ樹脂中に、ノンリーフィングタイプアルミニウムペースト(大日精化工業株式会社製TFG遮光シルバー、鱗片状アルミニウム粒子、粒子の平均粒径7μm及び平均厚み0.2μm、アルミニウム粒子含有量約10質量%)及び各種添加剤を添加し、溶剤を用いて混錬した銀インキを用意した。・・・」、「【0035】・・・次いで、該遮蔽層上に、上記銀インキをグラビア印刷法により印刷し、厚さ0.3μmの遮光層を設け、本発明の反射性遮光性積層体を製造した。」及び「【0039】・・・次いで、該遮蔽層上に、銀インキをグラビア印刷法により印刷し、厚さ0.3μmの遮光層を設け、本発明の反射性遮光性積層体を製造した。」と記載されているから、新規事項の追加に該当しない。
また、本件訂正は、本件訂正前の請求項1の「少なくとも基材層、遮蔽層、及び遮光層がこの順に積層された反射性遮光性積層体」及び「遮光インキ」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.申立人の意見について
申立人は、「(1)訂正要件違反について ・・・訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「少なくとも」の記載を削除し、「のそれぞれ各一層」の記載を追加したことによって、訂正発明1の遮蔽層が1層なのか、2層以上であってもよいのかが不明確となり、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)を全体として不明確とするものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たるか否かを判断することができないものであって、結局、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正ということはできず、また、誤記、誤訳の訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正ということもできない・・・以上の理由により、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号?第3号を目的とするものではないため、訂正要件違反である。」(令和2年12月24日提出の意見書2ページ3?24行)と主張する。
しかし、本件訂正後の請求項1の記載は、「遮蔽層」は「一層」であり、その「一層」の「遮蔽層」が、「白インキからなる1層又は2層以上の印刷層であ」ることを特定しているから、何ら不明確な点はない。
したがって、申立人の主張は当を得ておらず、採用できない。

4.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層された反射性遮光性積層体において、
該遮蔽層は、白インキよりなる1層又は2層以上の印刷層であり、
該白インキは、白色顔料とバインダ樹脂との質量配合比が、白色顔料:バインダ樹脂=4?5:1?0.8であり、
該遮光層は、バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む銀インキよりなる印刷層であり、
積層体の絵柄印刷層を設けていない部分において、基材層の遮蔽層を設けた側と反対側から測定したL*a*b*表色系の明度L*値が82以上である、上記の反射性遮光性積層体。
【請求項2】
基材層と遮蔽層との間に、印刷インキよりなる絵柄印刷層を配置した、請求項1に記載の反射性遮光性積層体。
【請求項3】
基材層の遮蔽層を設けた面と反対側の面に、印刷インキよりなる絵柄印刷層を配置した、請求項1に記載の反射性遮光性積層体。
【請求項4】
前記遮光層上に、さらに、ヒートシール層を配置した、請求項1?3のいずれか1項に記載の反射性遮光性積層体。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1?4に係る特許に対して、当審が令和2年8月21日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1又は引用文献2に記載された発明及び引用文献3?5に例示される周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献1:特開2003-200966号公報(甲第2号証)
引用文献2:特開2005-219396号公報(甲第3号証)
引用文献3:特開2015-224062号公報(甲第4号証)
引用文献4:特開平11-105201号公報(甲第5号証)
引用文献5:特開2009-210781号公報(甲第7号証)

2.引用文献の記載事項、引用発明
以下、下線は、強調のため、当審が付した。
(1)引用文献1
引用文献1には、次の記載がある。
「【0004】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究の結果、熱収縮性合成樹脂フィルムの上に、全面ベタ刷りの白色インキ層と全面ベタ刷りのアルミペーストを含有する白色インキ層を順次重ねる層を設けることで、可視光線、紫外光線域での遮光性に優れ、また、白色隠蔽性(白色度)に優れた遮光性シュリンクフィルムを見いだすに至った。本発明は、熱収縮性合成樹脂フィルムの上に、全面ベタ刷りの白色インキ層と全面ベタ刷りのアルミペーストを含有する白色インキ層を順次重ねる構成とすることを特徴とする遮光性シュリンクフィルムを提供することである。上記において、前記の全面ベタ刷りのアルミペーストを含有する白色インキ層において、インキ中のアルミペースト量が、10%重量以下で含有していることを特徴とする請求項1記載の遮光性シュリンクフィルムを提供することもできる。また、380?780nmの可視光線の透過率が、35%以下で、300?380nmの紫外線の透過率が、3%以下で、かつ、白色度(白色隠蔽度)がL*値で50%以上であることを特徴とする請求項1、2のいずれかに記載の遮光性シュリンクフィルムを提供することもできる。」
「【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。図1は、本発明の遮光性シュリンクフィルム10の一例を示す断面図である。遮光性シュリンクフィルム10は、熱収縮性合成樹脂フィルム1/絵柄印刷層2/白色インキ(全面ベタ刷り)層3/アルミペーストを含有する白色インキ(全面ベタ刷り)層4であるフィルムから構成される。」
「【0008】本発明に係る遮光性シュリンクフィルム10を構成する白色インキ(全面ベタ刷り)層3に使用される白色インキは、熱収縮性合成樹脂フィルム1や印刷絵柄層2と接着性があり、必要な耐性を有している白色インキが使用できる。白色インキ(全面ベタ刷り)層3に使用される白色インキは、白色隠蔽性を向上させるために、コンクタイプの白インキを使用する、若しくは、白インキを重ね刷りすることが望ましい。白色インキ(全面ベタ刷り)層3の厚みとしては、特に限定されないが、1?8μm位が好ましく、2?5μm位が望ましい。
【0009】本発明に係る遮光性シュリンクフィルム10を構成するアルミペーストを含有する白色インキ(全面ベタ刷り)層4に使用される白色インキは、白色インキ(全面ベタ刷り)層3と接着性があり、必要な耐性を有している白色インキであること以外に、380?780nmの可視光線の透過率が35%以下で、300?380nmの紫外線の透過率3%以下である遮光性を有する顔料を含むインキを使用することが必要である。このような顔料として、アルミペーストを挙げることができる。該アルミペーストの含有量としては、10重量%以下の白色インキが必要で、1?5重量%以下の白色インキを使用することが望ましい。該アルミペーストの含有量が10重量%を超えると、遮光性はアップするが、白色隠蔽性は不充分となり、好ましくない。」
以上の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「熱収縮性合成樹脂フィルム1/絵柄印刷層2/白色インキ(全面ベタ刷り)層3/アルミペーストを含有する白色インキ(全面ベタ刷り)層4であるフィルムから構成される遮光性シュリンクフィルム10であって、
白色インキ(全面ベタ刷り)層3に使用される白色インキは、白色隠蔽性を向上させるために、コンクタイプの白インキを使用する、若しくは、白インキを重ね刷りしており、
アルミペーストを含有する白色インキ(全面ベタ刷り)層4に使用される白色インキは、380?780nmの可視光線の透過率が35%以下で、300?380nmの紫外線の透過率3%以下である遮光性を有する顔料であるアルミペーストを含むインキであり、
L*a*b*表色系の明度L*値が50%以上である、
遮光性シュリンクフィルム10。」

(2)引用文献2
引用文献2には、次の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のフィルムでは、ボトルの外側に向けた白色隠蔽性は向上しても、ボトルの内側の白色度は向上していないために暗く、購買者がボトルの中身を底や蓋側から覗き込んだ場合に暗く見えてしまい、内容物の見栄えが悪くなるという問題があった。
【0007】
そこでこの発明は、ボトルの外側だけでなく、内側に対しても白色度が十分に高い、ボトル用遮光性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、
プラスチックフィルム上に、順に白インキ層/灰色インキ層/白インキ層、又は、白インキ層/銀色インキ層/白インキ層の構成を有する遮光インキ層を設け、この遮光インキ層と上記プラスチックフィルムとの間に絵柄を有する印刷インキ層を設けたボトル用ラベルフィルムにより、上記の課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0009】
この発明にかかるラベルフィルムにより、ボトルの中身に太陽光などが入り込むことを広範囲に防ぐことができるだけの遮光性を与えることが出来る。さらに、ラベル上に設ける銀色インキ層又は灰色インキ層の両側に、白色度の高い白インキ層を設けることで、表面の白色度を上げて明るくして外観の見栄えをよくすることができ、かつ、ボトルの底や蓋側からボトルの中を覗き込んだ際の白色度も上げて中身の見栄えも良くすることができる。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明について詳細に説明する。
この発明は、図1のように、フィルム11と遮光インキ層13との間に、絵柄を有する印刷インキ層12を設けたボトル用ラベルフィルムである。
【0011】
上記フィルム11は、ガラス瓶やペットボトル等のボトルに対して、熱収縮によって密着させるシュリンクラベルや、巻きつけて接着剤によりボトルに固定するタックラベル、その他、これらのようにボトルに密着させるラベル用のプラスチックフィルムであれば特に制限されるものではない。このようなフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンやポリスチレン製のフィルムが挙げられる。
【0012】
上記遮光インキ層13とは、上記フィルム11に遮光性を持たせ、かつ白色度を上げるためのものである。上記遮光インキ層13は、絵柄側から順に白インキ層14/灰色インキ層15a/白インキ層14、又は白インキ層14/銀色インキ層15b/白インキ層14となる構成を有するものである。これらの層は、上記フィルム11の出来るだけ広い範囲に存在することが望ましく、上記フィルム11の全面を覆っているとより望ましい。被覆率が高いほど、遮光効果が高いためである。
【0013】
まず、上記灰色インキ層15aとは、黒色インキを含有する白色系インキにより形成されたインキ層をいう。また、上記銀色インキ層15bとは、アルミなどの金属ペーストを含有するインキにより形成されたインキ層をいう。なお、銀色インキ層15bが黒色インキを含有してもよく、灰色インキ層15aが金属ペーストを含有してもよい。また、白色系インキとは、ベージュ色、乳白色、白色などに見えるインキを言う。
【0014】
また、上記白インキ層14とは、上記灰色インキ層15aより白色度が高いインキ層であり、人間の目にベージュ色、乳白色又は白色として見えるものであると望ましい。上記白インキ層14は、上記灰色インキ層15a又は上記銀色インキ層15bが存在することによるラベルフィルムの見た目の暗化をできるだけ小さく抑えることが求められる。外側から見た人間の目には、白色度の高い上記白インキ層14の色のみが上記絵柄の背景として見えることが望ましく、底部又は蓋側から覗き込んだ人間の目には、上記灰色インキ層15a又は銀色インキ層15bの影響で内容物が暗く感じ取れることが極力少ないことが望ましい。」
「【0018】
以下、実施例を用いてこの発明をより具体的に説明する。
まず、用いるインキについて説明する。
・白インキ(サカタインクス(株)製:PS-985 白 150PR-65)
・灰色インキ(上記白インキに、全体の5重量%となる黒インキ(サカタインクス(株)製:PS-985 墨1000)を添加する。)
・銀色インキ(サカタインクス(株)製:PS-985 銀 RE-17(アルミペースト含有))
【0019】
上記のそれぞれのインキ100重量部を、イソプロピルアルコール(IPA)40%、酢酸エチル60%からなる溶剤40重量部で希釈した。これらの粘度をザーンカップ粘度計No.3にて測定した。希釈後のインキの粘度及びインキ中の樹脂、顔料、溶剤の比率を表1に示す。なお、インキ中の樹脂はいずれもアクリル/セルロース系樹脂である。また、これら以外に、元々のインキに由来するワックス、滑剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤などからなる添加剤が1%未満含まれている。
【0020】
これらのインキをそれぞれ、延伸ポリスチレン製フィルム(シーアイ化成(株)製:EPS45TD 厚み60μm 以下、「OPS」と略す。)に対して、彫刻(ヘリオ)30μmベタ版にて、印刷速度100m/分でグラビア印刷し、60℃で瞬間的に乾燥させた。
【0021】
【表1】


以上の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「フィルム11と遮光インキ層13との間に、絵柄を有する印刷インキ層12を設け、遮光インキ層13は、絵柄側から順に、白インキ層14/銀色インキ層15b/白インキ層14となる構成を有するものであるボトル用ラベルフィルムであって、
白インキ層14の白インキ中の樹脂、顔料、溶剤の比率が、樹脂14重量%、顔料29重量%、溶剤57重量%であり、
銀色インキ層15bは、アルミなどの金属ペーストを含有するインキにより形成されたインキ層であり、
フィルム11に対して、インキをグラビア印刷した、
ボトル用ラベルフィルム。」

3.当審の判断
(1)引用発明1を主引用発明とした場合
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「熱収縮性合成樹脂フィルム1」は、その機能・構成からみて、本件発明1の「基材層」に相当し、引用発明1の「白色隠蔽性を向上させるために、コンクタイプの白インキを使用する、若しくは、白インキを重ね刷りし」た「白色インキ(全面ベタ刷り)層3」は、その機能・構成からみて、本件発明1の「白インキよりなる1層又は2層以上の印刷層であ」る「遮蔽層」に相当する。
引用発明1の「380?780nmの可視光線の透過率が35%以下で、300?380nmの紫外線の透過率3%以下である遮光性を有する顔料であるアルミペーストを含むインキである」「白色インキ」を使用した「アルミペーストを含有する白色インキ(全面ベタ刷り)層4」は、本件発明1の「バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む銀インキよりなる印刷層」と、「バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む遮光インキよりなる印刷層」という点で一致する。
引用発明1の「熱収縮性合成樹脂フィルム1/絵柄印刷層2/白色インキ(全面ベタ刷り)層3/アルミペーストを含有する白色インキ(全面ベタ刷り)層4であるフィルムから構成される」ことと、本件発明1の「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層された」ことは、「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層が積層された」点で一致する。
引用発明1の「遮光性シュリンクフィルム10」は、本件発明1の「反射性遮光性積層体」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層が積層された反射性遮光性積層体において、
該遮蔽層は、白インキよりなる1層又は2層以上の印刷層であり、
該遮光層は、バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む遮光インキよりなる印刷層である、
反射性遮光性積層体。」
[相違点1-1]
「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層が積層された」ことについて、本件発明1は「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層され」ているのに対し、引用発明1は「熱収縮性合成樹脂フィルム1/絵柄印刷層2/白色インキ(全面ベタ刷り)層3/アルミペーストを含有する白色インキ(全面ベタ刷り)層4」の順に積層されている点。
[相違点1-2]
「遮蔽層」の「白インキ」について、本件発明1は「白色顔料とバインダ樹脂との質量配合比が、白色顔料:バインダ樹脂=4?5:1?0.8であ」るのに対し、引用発明1は「L*a*b*表色系の明度L*値が50%以上である」点。
[相違点1-3]
「遮光インキ」について、本件発明1は「銀インキ」であるのに対し、引用発明1は「380?780nmの可視光線の透過率が35%以下で、300?380nmの紫外線の透過率3%以下である遮光性を有する顔料であるアルミペーストを含むインキである」「白色インキ」である点。
[相違点1-4]
本件発明1は「積層体の絵柄印刷層を設けていない部分において、基材層の遮蔽層を設けた側と反対側から測定したL*a*b*表色系の明度L*値が82以上である」のに対し、引用発明1はその点不明である点。

事案に鑑み、まず相違点1-3について検討する。
引用文献1には、発明が解決しようとする課題として「【0003】【発明が解決しようとする課題】・・・しかしながら、該シュリンクフィルムに、白インキ層を別途設けて重ねた場合、外観が灰色を帯びて、白色度(白色隠蔽性)が低くなり、内容物に白色イメージが重視される乳飲料等の商品に対し、外観上の問題がある。・・・該シュリンクフィルムに、白インキ層を別途設けて重ねた場合、外観が灰色を帯びて、白色度(白色隠蔽性)が低くなり、商品に対し、外観上の問題がある。」と記載され、「白色インキ(全面ベタ刷り)層4」について「【0009】本発明に係る遮光性シュリンクフィルム10を構成するアルミペーストを含有する白色インキ(全面ベタ刷り)層4に使用される白色インキは、白色インキ(全面ベタ刷り)層3と接着性があり、必要な耐性を有している白色インキであること以外に、380?780nmの可視光線の透過率が35%以下で、300?380nmの紫外線の透過率3%以下である遮光性を有する顔料を含むインキを使用することが必要である。このような顔料として、アルミペーストを挙げることができる。該アルミペーストの含有量としては、10重量%以下の白色インキが必要で、1?5重量%以下の白色インキを使用することが望ましい。該アルミペーストの含有量が10重量%を超えると、遮光性はアップするが、白色隠蔽性は不充分となり、好ましくない。」と記載されているところ、白色インキを銀インキに置換した場合には、白色度(白色隠蔽性)が低くなるから、引用発明1の「380?780nmの可視光線の透過率が35%以下で、300?380nmの紫外線の透過率3%以下である遮光性を有する顔料であるアルミペーストを含むインキである」「白色インキ」を銀インキに置換することには阻害要因が存在する。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2?4は、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2?4は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用発明2を主引用発明とした場合
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「フィルム11」は、その機能・構成からみて、本件発明1の「基材層」に相当し、引用発明2の「白インキ層14」は、その機能・構成からみて、本件発明1の「白インキよりなる1層の印刷層であ」る「遮蔽層」に相当し、引用発明2の「アルミなどの金属ペーストを含有するインキにより形成されたインキ層であ」る「銀色インキ層15b」は、その機能・構成からみて、本件発明1の「バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む遮光インキよりなる印刷層」に相当する。
から、引用発明2の「フィルム11と遮光インキ層13との間に、絵柄を有する印刷インキ層12を設け、遮光インキ層13は、絵柄側から順に、白インキ層14/銀色インキ層15b/白インキ層14となる構成を有するものである」ことは、その構成からみて、本件発明1の「少なくとも基材層、遮蔽層、及び遮光層がこの順に積層された」ことに相当し、引用発明2の「ボトル用ラベルフィルム」は、本件発明1の「反射性遮光性積層体」に相当する。
引用発明2の「フィルム11と遮光インキ層13との間に、絵柄を有する印刷インキ層12を設け、遮光インキ層13は、絵柄側から順に、白インキ層14/銀色インキ層15b/白インキ層14となる構成を有する」ことと、本件発明1の「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層された」ことは、「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層が積層された」点で一致する。
引用発明2の「ボトル用ラベルフィルム」は、本件発明1の「反射性遮光性積層体」に相当する。

したがって、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
[一致点]
「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層が積層された反射性遮光性積層体において、
該遮蔽層は、白インキよりなる1層又は2層以上の印刷層であり、
該遮光層は、バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む遮光インキよりなる印刷層である、
反射性遮光性積層体」
[相違点2-1]
「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層が積層された」ことについて、本件発明1は「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層され」ているのに対し、引用発明2は「フィルム11」、「絵柄を有する印刷インキ層12」、「絵柄側から順に、白インキ層14/銀色インキ層15b/白インキ層14となる構成を有する」「遮光インキ層13」の順に積層されている点。
[相違点2-2]
「遮蔽層」の「白インキ」について、本件発明1は「白色顔料とバインダ樹脂との質量配合比が、白色顔料:バインダ樹脂=4?5:1?0.8であ」るのに対し、引用発明2は「樹脂含有率が14重量%、顔料含有率が29重量%」である点。
[相違点2-3]
本件発明1は「積層体の絵柄印刷層を設けていない部分において、基材層の遮蔽層を設けた側と反対側から測定したL*a*b*表色系の明度L*値が82以上である」のに対し、引用発明2はその点不明である点。

まず相違点2-1について検討する。
引用文献2には、発明が解決しようとする課題として「【発明が解決しようとする課題】・・・【0007】 そこでこの発明は、ボトルの外側だけでなく、内側に対しても白色度が十分に高い、ボトル用遮光性フィルムを提供することを目的とする。」と記載され、「白インキ層」について「【発明の効果】【0009】 この発明にかかるラベルフィルムにより、ボトルの中身に太陽光などが入り込むことを広範囲に防ぐことができるだけの遮光性を与えることが出来る。さらに、ラベル上に設ける銀色インキ層又は灰色インキ層の両側に、白色度の高い白インキ層を設けることで、表面の白色度を上げて明るくして外観の見栄えをよくすることができ、かつ、ボトルの底や蓋側からボトルの中を覗き込んだ際の白色度も上げて中身の見栄えも良くすることができる。」と記載されているところ、「銀色インキ層15b」の「白インキ層14」を削除することには阻害要因が存在する。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2?4は、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2?4は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.申立人の意見について
申立人は「(3)進歩性について・・・(3-1)引用発明1’および周知技術に基づく進歩性・・・以上の理由により、訂正発明1は引用発明1’および周知技術から容易に発明できたものであるため、訂正発明1は、進歩性(特許法第29条第2項)の取消理由(特許法第113条第1項第2号)を有する。・・・(3-2)引用文献2を主引用文献とした場合の進歩性について・・・以上の理由により、訂正発明1は引用発明2および周知技術から容易に発明できたものであるため、訂正発明1は、進歩性(特許法第29条第2項)の取消理由(特許法第113条第1項第2号)を有する。」(3ページ8行?14ページ6行)と主張する。
しかし、上述(3.(1)、(2))のとおり、本件発明1と引用発明1及び引用発明2との間には、上記相違点1-3及び相違点2-1があり、これらの構成を想到するには、上記阻害要因があるから、申立人の上記主張は採用できない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.甲第1号証に記載された発明に基づく進歩性の有無について
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項1?4に係る発明は、甲第1号証(特開2005-169772号公報)に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものである旨を主張する。
甲第1号証に記載された発明は「透明な基材層の少なくとも一方の面に無機酸化物の蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層を積層した透明ガスバリアフィルムのガスバリア性被膜層面に、白色インキの乾燥被膜からなる2層構成の白色層、アルミニウム金属粉含有の白色インキの乾燥被膜からなる遮蔽層、接着剤層、シーラント層を順次積層した積層体からなることを特徴とする遮光性バリア包装材料。」(特許請求の範囲請求項1)であり、「基材層」、「遮蔽層」及び「遮蔽層」が、それぞれ本件発明1の「基材層」、「遮蔽層」及び「遮光層」に対応するものである。
そうすると、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、少なくとも、本件発明1は「基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層された」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、「基材層」と「遮光層」との間に「無機酸化物の蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層を積層」が積層されている点、及び、本件発明1の「遮光層」が「バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む銀インキよりなる印刷層であ」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明の「遮蔽層」は「、アルミニウム金属粉含有の白色インキの乾燥被膜からなる」点で相違する。
そして、甲第1号証には、発明が解決しようとする課題として「【発明が解決しようとする課題】・・・【0004】 本発明の課題は、アルミニウム箔を使用しないで、高ガスバリア性、高遮光性、高隠蔽性及び白色層の高白濃度性を兼ね備える包装材料を提供することにある。」と記載されているから、甲第1号証に記載された発明において、「基材層」と「遮光層」との間に「積層」された「無機酸化物の蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層」を削除することには阻害要因がある。
また、甲第1号証には、「遮光性バリア包装材料」の評価について「【0030】〈評価〉 実施例1の本発明の遮光性バリア包装材料及び実施例2の比較用の遮光性バリア包装材料の遮光性、隠蔽性、白濃度及び水蒸気透過度を以下の測定方法で測定し、評価した。その結果を表1に示す。・・・(3)白濃度測定方法 白板上に遮光性バリア包装材料を置き、GretagMacbeth社製の分光光度計を用いて明度を測定した。数値が大きい方が白濃度がある。・・・」と記載され、「遮光性バリア包装材料」の「白濃度」の高さを求めているから「遮蔽層」の「白色インキ」を銀インキに置換することには阻害要因がある。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2?4は、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2?4は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。

2.サポート要件について
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明に関し、遮蔽層の厚さが特定されていないため、本件特許発明の課題である「優れた白色度を有する遮光性積層体を提供すること」を解決することができない旨、及び、白色顔料:バインダ樹脂=4?5:1?0.8の全範囲で本件特許発明の課題を解決できることを何ら説明していない旨主張する。
しかし、本件特許には「【0017】 また、白色顔料とバインダ樹脂との質量配合比は、所望の白色度・明度や遮蔽層の厚み等に応じて、当業者が適宜に選択することができ・・・」と記載され、インキ内の顔料含有量とインキの厚さの兼ね合いによって、層の色の濃淡が変化することは当業者の技術常識であるから、「遮蔽層」の厚さと「白色顔料:バインダ樹脂」の範囲とは、互いに、求める「白色度」に応じて変化するだけのことであるから、本件発明1?4に「遮蔽層」の厚さが特定されないこと、及び発明の詳細な説明において、「白色顔料:バインダ樹脂=4?5:1?0.8」の全範囲における検証結果が説明されないことをもって、ただちに、本件発明1?4が、発明の詳細な説明に記載されたものではないとは言うことはできない。
したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、遮蔽層、及び遮光層のそれぞれ各一層がこの順に積層された反射性遮光性積層体において、
該遮蔽層は、白インキよりなる1層又は2層以上の印刷層であり、該白インキは、白色顔料とバインダ樹脂との質量配合比が、白色顔料:バインダ樹脂=4?5:1?0.8であり、
該遮光層は、バインダ樹脂及びアルミニウム粒子を含む銀インキよりなる印刷層であり、積層体の絵柄印刷層を設けていない部分において、基材層の遮蔽層を設けた側と反対側から測定したL*a*b*表色系の明度L*値が82以上である、上記の反射性遮光性積層体。
【請求項2】
基材層と遮蔽層との間に、印刷インキよりなる絵柄印刷層を配置した、請求項1に記載の反射性遮光性積層体。
【請求項3】
基材層の遮蔽層を設けた面と反対側の面に、印刷インキよりなる絵柄印刷層を配置した、請求項1に記載の反射性遮光性積層体。
【請求項4】
前記遮光層上に、さらに、ヒートシール層を配置した、請求項1?3のいずれか1項に記載の反射性遮光性積層体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-29 
出願番号 特願2015-253398(P2015-253398)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 石井 孝明
藤井 眞吾
登録日 2019-11-15 
登録番号 特許第6613879号(P6613879)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 反射性遮光性積層体  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  
代理人 竹林 則幸  
代理人 結田 純次  

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