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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
管理番号 1374911
異議申立番号 異議2020-700257  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-14 
確定日 2021-04-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6592461号発明「高吸水性樹脂の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6592461号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6592461号の請求項8に係る特許を維持する。 特許第6592461号の請求項1ないし7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第6592461号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)6月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年(平成26年)6月12日 同年12月10日 2015年(平成27年)6月11日 大韓民国)を国際出願日とする出願であって、令和1年9月27日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、特許掲載公報が同年10月16日に発行されたものである。
なお、後記第8の1で検討のとおり、令和2年11月24日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)後の本件特許に係る優先日は、2014年12月10日になると判断される。

本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年 4月14日 :特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「 特許異議申立人」という。)による特許異議の 申立て(対象請求項:全請求項)
同年 8月24日付け:取消理由通知書
同年11月24日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和3年 1月22日 :特許異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし5のとおりである。なお、下線は、訂正箇所について付したものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1ないし7を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を以下の事項により特定されるとおりの請求項8として訂正する。

「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記表面架橋は、前記ベース樹脂に表面架橋剤を添加して表面架橋反応を行うとき、表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され、
前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式a及び式bの関係式を満たし、
【数1】
[式a]

上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示し、
【数2】
[式b]

上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す、高吸水性樹脂の製造方法。」

(3)訂正事項3
本件特許明細書の段落【0011】ないし【0014】を以下の記載のとおりの段落【0011】ないし【0014】として訂正する。

「【0011】
本発明は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、下記式aの関係式を満たし、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記表面架橋は、前記ベース樹脂に表面架橋剤を添加して表面架橋反応を行うとき、表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行される、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【数1】
[式a]

上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示す。
【0012】
このような高吸水性樹脂は、各物性が下記式2の関係式を満たすことができる。
【数2】
[式b]

上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す。
【0013】
前記高吸水性樹脂は、CRCが約26?32g/gになることができ、AUPが約22?26g/gになることができ、水平方向ゲル強度G’が約6,000?12,000Pa、あるいは約7,000?12,000Paになることができる。また、前記高吸水性樹脂は、生理食塩水に対する生理食塩水流れ誘導性(SFC)が約40?約85・10^(-7)cm^(3)・s/gあるいは約50?約75・10^(-7)cm^(3)・s/gになることができる。
【0014】
この時、前記高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度G’は、
30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させて膨潤させる段階;
前記膨潤された高吸水性樹脂を所定の間隔を有するレオメーターのプレートの間に位置させ、両プレート面を加圧する段階;
振動下のレオメーターを用いて剪断変形(shear strain)を増加させながら、貯蔵弾性率(storage modulus)と、損失弾性率(loss modulus)が一定の線状粘弾性状態(linear viscoelastic regime)区間の剪断変形を確認する段階;および
前記確認された剪断変形下で前記膨潤された高吸水性樹脂の貯蔵弾性率と、損失弾性率をそれぞれ測定し、前記貯蔵弾性率の平均値をゲル強度として測定する段階を含む方法で測定され得る。」

(4)訂正事項4
本件特許明細書の段落【0043】を以下の記載のとおりの段落【0043】として訂正する。

「【0043】
1)30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させて膨潤させる段階と、
2)前記膨潤された高吸水性樹脂を所定の間隔を有するレオメーターのプレートの間に位置させ、両プレート面を加圧する段階と、
3)振動下のレオメーターを用いて剪断変形を増加させながら、貯蔵弾性率(storage modulus)と、損失弾性率(loss modulus)が一定の線状粘弾性状態(linear viscoelastic regime)区間の剪断変形を確認する段階と、
4)前記確認された剪断変形下で前記膨潤された高吸水性樹脂の貯蔵弾性率と、損失弾性率をそれぞれ測定し、前記貯蔵弾性率の平均値をゲル強度として測定する段階と、を含む方法。」

(5)訂正事項5
本件特許明細書の【発明の名称】において、「高吸水性樹脂」とあるのをを、「高吸水性樹脂の製造方法」に訂正する。

(6)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2ないし8は、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そして、訂正事項1及び2は、訂正前の一群の請求項〔1ないし8〕に対して請求されたものである。また、訂正事項3ないし5は、明細書の訂正であって、訂正前の一群の請求項〔1ないし8〕に対して請求されたものである。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-8〕に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

3 訂正の適否についての検討
(1)訂正事項1に係る請求項1ないし7の訂正について
訂正事項1は、訂正前の請求項1ないし7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1による請求項1ないし7についての訂正は、本件特許の国内書面に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、単に「本件特許明細書等」ともいう。)に記載した事項の範囲内のものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2に係る請求項8の訂正について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項8について、引用していた請求項6が請求項2のみを引用した部分のみについて独立形式に改めるとともに、以下の訂正をするものである。
・「炭素数2?8のジオールまたはポリオールを含む表面架橋剤」から、 「1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤」にする減縮。
・高吸水性樹脂を、硫酸アルミニウムを含まないものにする減縮。
・高吸水性樹脂がみたす関係式[式1]を、その左辺の値が、 「>15Pa^(2)」から「=25?95Pa^(2)」の関係を満たす [式a]にする減縮。
・式a中のG’の算出に係る高吸水性樹脂を、「30?50メッシュの篩 で篩って得られた高吸水性樹脂」にする減縮。
そうすると、訂正事項2に係る請求項8の訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3に係る段落【0011】ないし【0014】及び訂正事項4に係る段落【0043】の訂正について
訂正事項3に係る訂正前の段落【0011】ないし【0014】の訂正及び訂正事項4に係る段落【0043】の訂正は、当該段落の記載内容を上記訂正事項2に係る請求項8の訂正に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項5に係る【発明の名称】の訂正について
訂正事項5に係る訂正前の段落【発明の名称】の訂正は、上記訂正事項1ないし4に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、この訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、訂正後の本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」といい、まとめて「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】(削除)
【請求項8】少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記表面架橋は、前記ベース樹脂に表面架橋剤を添加して表面架橋反応を行うとき、表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され、
前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式a及び式bの関係式を満たし、
【数1】
[式a]

上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示し、
【数2】
[式b]

上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す、高吸水性樹脂の製造方法。」

第4 特許異議の申立ての理由の概要
特許異議申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。

1 申立理由1(実施可能要件)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

本件特許の訂正前の請求項1及び8に係る発明に関し、表面架橋前のベース樹脂の水平方向ゲル強度G’の上限値が規定されていないことから、本件特許発明には表面架橋によってゲル強度が低下する高吸水性樹脂の製造方法が包含される。一方、本件特許明細書にはそのような方法が記載されていないから、請求項1及び8に係る発明を実施することができない。
また、請求項2ないし7にかかる発明に係る明細書の記載も同様である。

2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(1)本件特許の訂正前の請求項1及び8に係る発明の課題を解決し得ることが具体的に実施例によって確認されているのは、特定の「水溶性エチレン系不飽和単量体(中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム)」と、一種類の「内部架橋剤(ポリエチレングリコールジアクリレート0.069モル%)」と、一種類の「表面架橋剤(1,3-プロパンジオール(5重量%)とプロピレングリコール(5重量%)の併用)」との組み合わせだけである。
したがって、本件特許明細書の実施例の記載に基づいて、「水溶性エチレン系不飽和単量体」、「内部架橋剤」及び「(本件請求項8で規定されるポリオール以外の化合物を含む)表面架橋剤」のあらゆる組み合わせを含む範囲にまで、本件特許の請求項1及び8に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できない。
また、請求項2ないし7の記載も同様である。

(2)本件特許の訂正前の請求項8に係る発明の課題を解決し得ることが具体的に実施例によって確認されているのは、ベース樹脂として「中和率75モル%のポリアクリル酸ナトリウム(ポリオールと反応できる酸性基は25モル%)」を用い、表面架橋剤として「1,3-プロパンジオール(5重量%)とプロピレングリコール(5重量%)」を併用)を用いた場合だけであって、この記載に基づいて、請求項8で特定される反応条件(反応温度および反応時間)にまで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できない。

3 申立理由3(明確性要件)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(1)本件特許の訂正前の請求項1及び8で特定される高吸水性樹脂のゲル強度(G’)に関し、その測定時の温度条件が請求項1及び8並びに本件特許明細書に記載されていないから、高吸水性樹脂のゲル強度(G’)の数値範囲を一義的に決めることができないので、請求項1及び8に係る発明は不明確である。
請求項2ないし7に係る発明も同様である。

(2)本件特許の訂正前の請求項1及び8で特定される高吸水性樹脂のゲル強度(G’)に関し、測定する高吸水性樹脂試料の粒度(分布)が請求項1及び8並びに本件特許明細書において明確にされていないから、高吸水性樹脂のゲル強度(G’)の数値範囲を一義的に決めることができないので、請求項1及び8に係る発明は不明確である。
請求項2ないし7に係る発明も同様である。

4 申立理由4-1(甲1に基づく新規性)
本件特許の訂正前の請求項1、2及び4ないし7に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項1、2及び4ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

5 申立理由4-2(甲2に基づく新規性)
本件特許の訂正前の請求項1、2及び4ないし7に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項1、2及び4ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

6 申立理由4-3(甲3に基づく新規性)
本件特許の訂正前の請求項1、2及び4ないし7に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項1、2及び4ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

7 申立理由4-4(甲4に基づく新規性)
本件特許の訂正前の請求項1、2及び4ないし7に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第4号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項1、2及び4ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

8 申立理由4-5(甲9に基づく新規性)
本件特許の訂正前の請求項8に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された甲第9号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

9 申立理由5-1(甲1に基づく進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

10 申立理由5-2(甲2に基づく進歩性)
本件特許の訂正前の訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

11 申立理由5-3(甲3に基づく進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

12 申立理由5-4(甲4に基づく進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

13 申立理由5-5(甲1ないし4及び甲9に基づく進歩性)
本件特許の訂正前の請求項8に係る発明は、甲第1ないし4号証に記載されたいずれかの発明及び甲第9号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

14 申立理由5-6(甲9に基づく進歩性)
本件特許の訂正前の請求項8に係る発明は、甲第9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

15 証拠方法
甲第1号証 :特表2009-531158号公報
甲第2号証 :国際公開第2008/120742号
甲第3号証 :国際公開第2009/113679号
甲第4号証 :特開2005-344103号公報
甲第5号証 :特表2009-531158号公報(甲第1号証)の
実施例1および実施例3を追試した実験成績証明書
甲第6号証 :国際公開第2008/120742号(甲第2号証)の
実施例3を追試した実験成績証明書
甲第7号証 :国際公開第2009/113679号(甲第3号証)の
実施例2を追試した実験成績証明書
甲第8号証 :特開2005-344103号公報(甲第4号証)の
製造例2および実施例19を追試した実験成績証明書
甲第9号証 :米国特許出願公開第2014/0058048号明細書
甲第10号証 :Modern Superabsorbent Polymer Technology (1998)
p.55-60,p.97-103, p.167-172
甲第11号証 :本件特許と甲第1号証?甲第4号証との対比表
甲第12号証 :国際公開第2014/178588号
甲第13号証 :INTERNATIONAL STANDARD ISO 4664-1 (2005) p.1-24
甲第14号証 :THE PHYSICS OF RUBBER ELASTICITY (2009),
Oxford Classic Texts, p.59-65
甲第15号証 :特表2016-516877号公報
甲第16号証 :NONWOVENS WORLD (October-November 2000) p.73-83;
SUPERABSORBENT POLYMERS FOR CABLE APPLICATION
甲第17号証 :特許第3768235号公報
以下、甲第1号証ないし甲第17号証を、それぞれ「甲1」ないし「甲17」などという。表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。

第5 令和2年8月24日付け取消理由の概要
当審が令和2年8月24日付けで特許権者に通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。

1 取消理由1(明確性要件)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
申立理由3と同じ理由(上記第4の3参照)。

2 取消理由2(新規性)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
・ 引用文献等:甲1ないし甲4

3 取消理由3(進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
・ 引用文献等:甲1ないし甲4

第6 取消理由についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、令和2年11月24日にされた訂正請求によって訂正された請求項8に係る特許は、取消理由1ないし3及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできないと判断する。

1 取消理由1(明確性要件)について
(1)ゲル強度G’測定時の温度条件について
本件特許発明8の方法によって製造される高吸水性樹脂は、本件特許明細書の段落【0094】の[発明の効果]に「前述した製造方法により得られた高吸水性樹脂は、保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たして、式1および2の関係式などを満たすことができ、おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる。」と記載されるように、その使用環境として、常温環境の物性を意図している。
そして、本件特許明細書には、高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)を常温で、加圧吸水能(AUP)を23±2℃で測定することが記載されており、また、温度が特に表記されない場合の物性の計測は、常温で行ったものと理解することは、当業者にとって技術常識といえる。
そうすると、本件特許発明8におけるゲル強度G’測定は、常温にて行うと解するのが相当である。
よって、本件特許発明8におけるゲル強度G’測定時の温度条件は明確である。

(2)ゲル強度G’測定時の高吸水性樹脂試料の粒度(分布)について
本件訂正によって、本件特許発明8における、水平方向ゲル強度G’は30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂を測定対象とすることが特定された。
よって、本件特許発明8におけるゲル強度G’測定時の高吸水性樹脂試料の粒度(分布)は明確である。

(3)まとめ
そうすると、本件特許発明8において特定される高吸水性樹脂のゲル強度(G’)の数値範囲は、上記(1)及び(2)で述べたように、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和3年1月22日に提出した意見書において、上記(1)について、「常温(23±2℃)」の範囲内であっても、上下限である21℃と25℃で水平方向ゲル強度G’が変化し、その数値範囲が一義的に決定しない旨主張する。
しかしながら、この常温の範囲で水平方向ゲル強度G’を測定すればよいことは明らかであるから、本件特許発明8における、水平方向ゲル強度G’の測定時の温度条件は明確に特定されている。

(5)取消理由1(明確性要件)のむすび
よって、本件特許発明8に関して、特許請求の範囲の記載は明確性要件を充足する。
したがって、取消理由1は、理由がない。

2 取消理由2及び3(新規性及び進歩性)について
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1の記載事項
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水剤及びこれを用いた吸水体、並びに吸水剤の製造方法に関するものであり、詳細には、紙おむつや生理ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等に好適に用いることができる吸水剤及び吸水体、並びに吸水剤の製造方法に関するものである。」

・「【発明の開示】
【0018】
しかしながら、上記従来の技術では、吸水性樹脂の諸物性を満足し、かつ、吸水性樹脂の製造工程において粉塵量が抑制された吸水剤を提供することができないという問題点を有する。
【0019】
具体的には、吸水性樹脂を実際に使用する上で、遠心分離機保持容量、食塩水流れ誘導性、加圧下での吸収力、固定された高さ吸収、質量平均粒子径、液拡散性等の物性を良好な値で備えていることが吸水性樹脂に要求されるものの、従来の技術ではこれらの物性を十分満たすには至っていない。その一要因として、吸水性樹脂において重要な物性である遠心分離機保持容量と食塩水流れ誘導性とは、一方の物性が向上すれば他方の物性が低下する関係にあり、これらの物性を両立させ難いことが挙げられる。
【0020】
また、従来の技術において、無機粒子を吸水性樹脂に添加した場合、上記無機粒子に起因する粉塵が生じ得るという問題が新たに生じ得る。このような粉塵が生じた場合、吸水性樹脂を製造する工程において製造効率が低下する、吸水性樹脂の物性が低下する、又は安全衛生上の問題が生じる等の問題が生じることとなる。特に、無機粒子の使用量が吸水性樹脂に対し0.2質量%以上である場合には、用いる無機粒子の使用量が多いため粉塵が発生し易いという問題点がある。
【0021】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、優れた物性を備え、かつ、粉塵の生じ難い吸水剤及び吸水体、並びに吸水剤の製造方法を提供することにある。」

・「【0067】
表面架橋処理に用いることのできる表面架橋剤としては、吸水性樹脂粒子の有する官能基、特に、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する有機表面架橋剤及び/又は水溶性無機表面架橋剤が挙げられる。好ましくは水溶性有機表面架橋剤を用いることができる。
【0068】
例えば、エチレングリコール、・・・1,3-プロパンジオール、・・・等が挙げられる。
【0069】
これら表面架橋剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でもヒドロキシル基を少なくとも一つ有する表面架橋剤が好ましく、その中でも多価アルコールは、安全性が高く、吸水性樹脂粒子表面の親水性を向上させることができる点で好ましい。」

・「【0077】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合した後、通常、加熱処理を行い、架橋反応を遂行させることが好ましい。上記加熱処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、40℃以上250℃以下が好ましく、150℃以上250℃以下がより好ましい。加熱処理温度が40℃未満の場合には、AAPやSFC等の吸収特性が十分に改善されないおそれがある。加熱処理温度が250℃を越える場合には、吸水性樹脂粒子の劣化を引き起こし、各種物性が低下する場合があり注意を要する。加熱処理時間は、好ましくは1分以上2時間以下、より好ましくは5分以上1時間以下である。」

・「【0235】
<遠心分離機保持容量(CRC)>
遠心分離機保持容量(CRC)は0.90質量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。尚、CRCは、無加圧下吸収倍率と称されることもある。
・・・
【0237】
・・・
圧力に対する吸収力(AAP)は0.90質量%食塩水に対する4.83kPaで60分の吸収倍率を示す。尚、AAPは、4.83kPaでの加圧下吸収倍率と称されることもある。図1は、AAPの測定装置10を示す断面図である。
・・・
【0241】
・・・
<食塩水流れ誘導性(SFC)>
食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水性樹脂粒子又は吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど、吸水性樹脂粒子又は吸水剤は、高い液透過性を有することとなる。本実施例においては、米国特許第5849405号明細書記載のSFC試験に準じて行った。図2は、SFCの測定装置20を示す概略図である。」

・「【0264】
・・・
<ペイントシェーカーテスト>
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されている。
【0265】
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。
【0266】
振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子又は吸水剤が得られる。」

・「【0292】
(実施例1)
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸436.4g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4617.9g、純水381.0g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)11.40gを溶解させて反応液とした。次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気した。続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液38.76g及び0.1質量%L-アスコルビン酸水溶液24.22gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、25?95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されていた。
【0293】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)341μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得た。吸水性樹脂粒子(1)の遠心分離機保持容量(CRC)は35.4g/g、水可溶分は7.3質量%であった。
得られた吸水性樹脂粒子(1)100質量部に1,4-ブタンジオール0.384質量部、プロピレングリコール0.632質量部、純水3.39質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で加熱処理した。加熱時間を30分、35分、40分、45分としたものをそれぞれ作製した。さらに、これらの粒子をそれぞれ目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、これら粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子を得た。加熱時間30分のものを吸水性樹脂粒子(1-30)、加熱時間35分のものを吸水性樹脂粒子(1-35)、加熱時間40分のものを吸水性樹脂粒子(1-40)、加熱時間45分のものを吸水性樹脂粒子(1-45)とした。」

・「【0311】
(実施例3)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸220.81g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.154g、及び、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.35gを混合した溶液(A1)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液184.49gと50℃に調温したイオン交換水179.94gを混合した溶液(B1)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A1)に(B1)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
【0312】
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液12.26gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
【0313】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0314】
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。
【0315】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)329μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.31の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(3)を得た。吸水性樹脂粒子(3)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.0g/g、水可溶分は9.0質量%であった。
【0316】
得られた吸水性樹脂粒子(3)100質量部に1,4-ブタンジオール0.36質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.2質量部の混合液からなる表面架橋剤をレーディゲミキサーで混合した後、混合物を200℃で50分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3-50)を得た。
【0317】
得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3-50)100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.40質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.002質量部からなる混合液を添加した。添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、この粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に上記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、得られた粒子を吸水性樹脂粒子(3-50A)とした。
【0318】
得られたこの吸水性樹脂粒子(3-50A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを、0.020質量部添加したものを吸水剤(3-1)、0.040質量部添加したものを吸水剤(3-2)、0.060質量部添加したものを吸水剤(3-3)、0.080質量部添加したものを吸水剤(3-4)、0.0990質量部添加したものを吸水剤(3-5)、0.1250質量部添加したものを吸水剤(3-6)、0.1500質量部添加したものを吸水剤(3-7)とした。」

・「【0330】
【表1】



・「【0339】
【表3】



イ 甲1に記載された発明
甲1の段落【0292】ないし【0293】、【0311】ないし【0318】、【0330】の【表1】及び【0339】の【表3】の記載からみて、甲1には、甲1の実施例1及び3として記載される、表面架橋時の加熱時間40分である吸水性樹脂粒子(1-40)、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3-50)をさらに処理して得られた吸水性樹脂粒子(3-50A)及び吸水剤(3-1)の製造方法の発明として、次のとおりの発明が記載されている。

<甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明>
「表面が架橋された吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸436.4g、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4617.9g、純水381.0g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)11.40gを溶解させて反応液とし、次にこの反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気し、続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液38.76g及び0.1質量%L-アスコルビン酸水溶液24.22gを攪拌しながら添加したところ、およそ25秒後に重合が開始し、そして、生成したゲルを粉砕しながら、25?95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出し、得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化されており、
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)341μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.33の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得、吸水性樹脂粒子(1)の遠心分離機保持容量(CRC)は35.4g/g、水可溶分は7.3質量%であり、
得られた吸水性樹脂粒子(1)100質量部に1,4-ブタンジオール0.384質量部、プロピレングリコール0.632質量部、純水3.39質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部の混合液からなる表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で加熱処理し、加熱時間を40分としたものを作製し、さらに、この粒子をそれぞれ目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、次に、この粒子にペイントシェーカーテスト1を行うことにより得られた、CRCが27.8g/gであり、AAPが25.5g/gであり、SFCは49(・10^(-7)cm^(3)・s/g)である、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(1-40)の製造方法。
ここで、ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されており、
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1とし、
振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子又は吸水剤が得られる。」

<甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明>
「吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸220.81g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.154g、及び、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.35gを混合した溶液(A1)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液184.49gと50℃に調温したイオン交換水179.94gを混合した溶液(B1)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A1)に(B1)を開放系ですばやく加えて混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液を得、
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液12.26gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ、ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されており、
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始し、水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮し、この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得、
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)329μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.31の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(3)を得、吸水性樹脂粒子(3)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.0g/g、水可溶分は9.0質量%であり、
得られた吸水性樹脂粒子(3)100質量部に1,4-ブタンジオール0.36質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.2質量部の混合液からなる表面架橋剤をレーディゲミキサーで混合した後、混合物を200℃で50分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、次に、この粒子にペイントシェーカーテスト1を行い、こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3-50)を得、
得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3-50)100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.40質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.002質量部からなる混合液を添加し、添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、この粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、次に、この粒子にペイントシェーカーテスト2を行うことにより得られた、CRCが27.3g/gであり、AAPが23.9g/gであり、SFCは65(・10^(-7)cm^(3)・s/g)である、吸水性樹脂粒子(3-50A)の製造方法。
ここで、ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されており、
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とし、
振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子又は吸水剤が得られる。」

<甲1吸水剤(3-1)製法発明>
「吸水剤を製造する方法であって、
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸220.81g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)1.154g、及び、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.35gを混合した溶液(A1)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液184.49gと50℃に調温したイオン交換水179.94gを混合した溶液(B1)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A1)に(B1)を開放系ですばやく加えて混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液を得、
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液12.26gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ、ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されており、
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始し、水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮し、この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得、
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き710μmと目開き175μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径(D50)329μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.31の不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(3)を得、吸水性樹脂粒子(3)の遠心分離機保持容量(CRC)は33.0g/g、水可溶分は9.0質量%であり、
得られた吸水性樹脂粒子(3)100質量部に1,4-ブタンジオール0.36質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.2質量部の混合液からなる表面架橋剤をレーディゲミキサーで混合した後、混合物を200℃で50分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、次に、この粒子にペイントシェーカーテスト1を行い、こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3-50)を得、
得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子(3-50)100質量部に、硫酸アルミニウム27.5質量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.40質量部、乳酸ナトリウム60質量%水溶液0.134質量部、プロピレングリコール0.002質量部からなる混合液を添加し、添加後、無風条件下、60℃で1時間乾燥した後、この粒子を目開き710μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、次に、この粒子にペイントシェーカーテスト2を行い、こうして、得られた粒子を吸水性樹脂粒子(3-50A)とし、
得られたこの吸水性樹脂粒子(3-50A)100質量部に、WACKER社製HDK(登録商標)H2050EPを、0.020質量部添加したものである、CRCが27.3g/gであり、AAPが23.4g/gであり、SFCは78(・10^(-7)cm^(3)・s/g)である、吸水剤(3-1)の製造方法。
ここで、ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子又は吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されており、
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とし、
振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子又は吸水剤が得られる。」

(2)甲2の記載事項等
ア 甲2の記載事項
・「[0001] 本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤及びその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、吸水性能を損なうことなく、かつ乾燥状態及び吸湿時の流動性、かさ密度の安定性等の粉体特性に優れ、安定した吸収特性を示す粒子状吸水剤であり、該粒子状吸水剤を紙オムツや生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料の吸収体中に用いた場合に、戻り量の少ない、優れた吸収特性を有する粒子状吸水剤及びその製造方法に関するものである。」

・「[0023] 本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、空気輸送状態に優れ、かつ通液性向上剤の効果を低減することなく、空気輸送後の流動性、耐ダメージ性等の物性に優れた粒子状吸水剤及びその製造方法を提供することにある。」

・「[0096] 本発明で用いることのできる有機表面架橋剤としては、具体的には、米国特許6228930号、同6071976号、同6254990号等に例示されているものを挙げることができる。例えば、・・・1,3-ブタンジオール、・・・等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
[0097] これらの有機表面架橋剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。本発明の効果を最大限にするために、これらの架橋剤の中でも少なくとも脱水反応性架橋剤、特に多価アルコールを用いることが好ましく、炭素数2?10、好ましくは炭素数3?8の多価アルコールを用いることがより好ましい。」

・「[0104] 有機表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は、加熱処理されることが好ましい。上記加熱処理を行う際の条件としては、加熱温度(吸水性樹脂温度若しくは熱媒温度)は、通常80?300℃、好ましくは100?250℃、より好ましくは150?250℃、さらに好ましくは180?240℃である。また、加熱時間は、好ましくは1分?2時間の範囲である。加熱温度と加熱時間との組み合わせの好適な例としては、180℃で0.1?1.5時間、200℃で0.1?1時間である。」

・「[0196] 粒子状吸水剤の質量平均粒子径は、目的やその必要に応じて不溶性微粒子や親水性溶媒、好ましくは水を添加混合してさらに造粒して調整してもよい。好ましくは吸水性樹脂ないし粒子状吸水剤の質量平均粒子径は250?600μm、さらに好ましくは300?500μm、350?450μm程度に制御される。」

・「[0231] 〔製造例1〕
重合工程(ベルト上での静置重合)、ゲル細粒化(解砕)工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程(表面架橋剤の噴霧工程、加熱工程)、冷却工程、整粒工程、各工程間の輸送工程、がそれぞれ連結され、各工程を連続して行うことができる吸水性樹脂の連続製造装置(1時間当たり約1500kgの生産能力)を用いて粒子状吸水性樹脂を連続製造した。
[0232] 具体的には、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数(平均重合度)9)を0.06モル%(対単量体)を含む75モル%が中和されたアクリル酸部分ナトリウム塩水溶液(濃度38質量%)を、単量体水溶液(1)として、得られた単量体水溶液(1)を定量ポンプで連続フィードを行い、輸送管の途中で窒素ガスを連続的に吹き込み、酸素濃度を0.5ppm以下にした。
[0233] 次に、単量体水溶液(1)に、さらに過硫酸ナトリウム/L-アスコルビン酸=0.14(g)/0.005(単量体mol)をラインミキシングで連続混合して、両端に堰を有する平面スチールベルトに厚み約30mmで供給して、連続的に30分間静置水溶液重合を行った。こうして得られた含水ゲル状架橋重合体(2)を孔径7mmのミートチョッパーで約1mmに細分化し、これを連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に厚みが50mmとなるように広げて載せ、185℃で30分間乾燥し乾燥重合体を得た。
[0234] 当該乾燥重合体の全量を3段ロールミル(ロールギャップが上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給することで粉砕した後、目開き850μmおよび150μmの金属篩網を有する篩い分け装置で分級して、粒径850?150μmが約98質量%の粒子状吸水性樹脂(3)(CRC=35g/g)を得た。」

・「[0239] 〔実施例2〕
製造例1で得られた吸水性樹脂(3)を高速連続混合機(タービュライザー、1000rpm)に1500kg/hrで連続供給して、吸水性樹脂100質量部に対して、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面処理剤溶液をスプレーで噴霧し混合した。
[0240] 次いで、得られた混合物をパドルドライヤーにより連続的に198℃にて40分間加熱処理した後、同様のパドルドライヤーを用いて60℃まで強制冷却した(冷却工程)。さらに、篩い分け装置で850μm通過物を分級し、目開き850μmの篩網の上に残留する物は再度粉砕した後、上記850μm通過物と混合することで、全量が850μm通過物である整粒された製品としての吸水性樹脂(A)を得た。得られた吸水性樹脂(A)の物性を測定した結果を表3に示した。」

・「[0241] 〔実施例3〕
上記冷却工程の際に、冷却機装置内の約90℃のゾーンで吸水性樹脂100質量部当たり、通液性向上剤としての硫酸アルミニウム14?18水塩粉末(関東化学株式会社製、質量平均粒子径182μm、かさ比重0.60g/cm^(3))1.0質量部を添加して均一に混合した後、冷却機装置内の約70℃のゾーンで、滑り性向上剤としての10質量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート水溶液(商品名:「レオドールTW-S120V」、花王株式会社製)0.02質量部を添加して均一に混合したこと以外は実施例2と同様の操作を行うことにより、全量が850μm通過物である整粒された製品としての吸水性樹脂組成物を得た。得られた吸水性樹脂組成物(B1)の物性を測定した結果を表3に示した。」

・「[0268] <無加圧下吸収倍率(CRC)>
吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物0.2gを、不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、25℃に調温した大過剰(例えば100g以上)の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の質量W_(2)(g)を測定した。また、同様の操作を、吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物を用いないで行い、そのときの質量W_(1)(g)を測定した。そして、これら質量W_(1)、W_(2)から、下記(式1)に従って、無加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
[0269] 無加圧下吸収倍率(g/g)=(質量W_(2)(g)-質量W_(1)(g))/吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物の質量(g)-1 ・・(式1)
<4.83kPa加圧下での加圧下吸収倍率(AAP)>
4.83kPa(0.7Psi)の圧力になるように調製した荷重を準備した。そして、底に400メッシュ(目開き38μm)の金網を貼着した直径60mmのプラスチック円筒の金網上に、吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物0.90gを均一に散布した。その上に、上記荷重を載せて、この測定装置一式の質量W_(3)(g)を測定した。
[0270] 次に、直径150mmのペトリ皿の内側に、直径90mmのガラスフィルター(株式会社相互理化学硝子製作所製、細孔直径100?120μm)を置き、0.90重量%の塩化ナトリウム水溶液(20?25℃)を、ガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。
[0271] その上に、直径90mmのろ紙(商品名:「JIS P 3801 No.2」、ADVANTEC東洋株式会社製、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
[0272] 上記測定装置一式を、上記湿ったろ紙上に載せ、液を荷重下で吸収させた。1時間(60分)後、測定装置一式を持ち上げ、その質量W_(4)(g)を測定した。そして、これら質量W_(3)、W_(4)から、下記(式2)に従って、加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
[0273] 4.83kPa加圧下での加圧下吸収倍率(g/g)=(W_(4)(g)-W_(3)(g))/吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物の質量(g) ・・(式2)
<生理食塩水流れ誘導性(SFC)>
生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。ここで、米国公開特許US2004-0106745の生理食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
[0274] 具体的には、セルに均一に入れた吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物0.90gを、人工尿中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル層の高さを記録した。次に、0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%塩化ナトリウム水溶液を、一定の静水圧でタンクから膨潤したゲル層に通液させる。
・・・
[0277] なお、SFC試験は、室温(20?25℃)で行った。・・・
なお、加圧下通液速度の単位は、(10^(-7)×cm^(3)×s×g^(-1))である。」

・「[0279] [表3]



イ 甲2に記載された発明
甲2の段落[0241]及び[0279]の[表3]の記載からみて、甲2には、甲2の実施例3として記載されている吸水性樹脂組成物(B1)を製造する方法として、以下の発明が記載されている。

<甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明>
「吸水性樹脂組成物を製造する方法であって、
内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数(平均重合度)9)を0.06モル%(対単量体)を含む75モル%が中和されたアクリル酸部分ナトリウム塩水溶液(濃度38質量%)を、単量体水溶液(1)として、得られた単量体水溶液(1)を定量ポンプで連続フィードを行い、輸送管の途中で窒素ガスを連続的に吹き込み、酸素濃度を0.5ppm以下にし、
次に、単量体水溶液(1)に、さらに過硫酸ナトリウム/L-アスコルビン酸=0.14(g)/0.005(単量体mol)をラインミキシングで連続混合して、両端に堰を有する平面スチールベルトに厚み約30mmで供給して、連続的に30分間静置水溶液重合を行い、こうして得られた含水ゲル状架橋重合体(2)を孔径7mmのミートチョッパーで約1mmに細分化し、これを連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に厚みが50mmとなるように広げて載せ、185℃で30分間乾燥し乾燥重合体を得、
当該乾燥重合体の全量を3段ロールミル(ロールギャップが上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給することで粉砕した後、目開き850μmおよび150μmの金属篩網を有する篩い分け装置で分級して、粒径850?150μmが約98質量%の粒子状吸水性樹脂(3)(CRC=35g/g)を得、
得られた吸水性樹脂(3)を高速連続混合機(タービュライザー、1000rpm)に1500kg/hrで連続供給して、吸水性樹脂100質量部に対して、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面処理剤溶液をスプレーで噴霧し混合し、
次いで、得られた混合物をパドルドライヤーにより連続的に198℃にて40分間加熱処理した後、同様のパドルドライヤーを用いて60℃まで強制冷却し(冷却工程)、さらに、篩い分け装置で850μm通過物を分級し、目開き850μmの篩網の上に残留する物は再度粉砕した後、上記850μm通過物と混合することで、全量が850μm通過物である整粒された製品としての吸水性樹脂(A)を得、
上記冷却工程の際に、冷却機装置内の約90℃のゾーンで吸水性樹脂100質量部当たり、通液性向上剤としての硫酸アルミニウム14?18水塩粉末(関東化学株式会社製、質量平均粒子径182μm、かさ比重0.60g/cm^(3))1.0質量部を添加して均一に混合した後、冷却機装置内の約70℃のゾーンで、滑り性向上剤としての10質量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート水溶液(商品名:「レオドールTW-S120V」、花王株式会社製)0.02質量部を添加して均一に混合した、全量が850μm通過物である整粒された製品として得られた、CRCが30.0g/gであり、AAPが24.5g/gであり、SFCは65(・10^(-7)cm^(3)・s/g)である、吸水性樹脂組成物(B1)の製造方法。」

(3)甲3の記載事項等
ア 甲3の記載事項
・「[0001] 本発明は、吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤の製造方法に関するものである。詳しくは、その製造過程で発生する微粉を収集しつつ粒子状吸水剤を製造しうる粒子状吸水剤の製造方法に関する。更に詳しくは、その製造過程で発生する微粉を捕集する際に用いるフィルターの内部への微粉の貫通を抑制し、微粉を効率的に収集し、更にフィルターに付着した微粉を物理的衝撃により容易に払落すことができるメンブレンフィルターを用いた、粒子状吸水剤の製造方法に関する。」

・「[0010] 上記公報に記載の方法で微粉のリサイクルが図られているものの、粒子状吸水剤に含まれる微粉の除去は未だ充分ではないのが現状である。微粉の除去が不充分なので、粒子状吸水剤の、通液性、加圧下吸水倍率等の諸物性が充分に向上されえないという問題がある。
[0011] 微粉は、オムツ等の吸収性物品中に粒子状吸水剤が組み込まれる際に飛散しやすい。この際、微粉は、生産性に影響するばかりか粉塵として作業環境中に舞ってしまう。したがって、微粉の飛散は、作業環境の悪化を招来してしまう。
[0012] 不織布などの繊維のみで作られたフィルターを用いた場合、微粉を収集する際に、微粉がフィルター内部に入り込んでしまう。特に、添加剤を多く含んでいる微粉1の場合は、フィルター内部に入り込む微粉量が多く、場合によってはその微粉がフィルターを貫通し、系外に排出される。また、フィルターに付着した微粉を払い落とす際に物理的衝撃(空気のパルス波など)を加えても払い落とされないために、徐々にフィルターの捕集効率が低下する。このため、その度にフィルター交換を行う必要があり、非効率的である。更に、フィルター交換の際には微粉の飛散などにより作業環境が悪化することも生じうる。
[0013] そこで、本発明が解決しようとする課題は、微粉の少ない粒子状吸水剤の製造方法及びその製造方法で製造された粒子状吸水剤を提供することにある。」

・「[0070] 表面架橋工程で用いることができる表面架橋剤としては、米国特許第6228930号明細書、米国特許第6071976号明細書、米国特許第6254990号明細書等に例示されている従来公知の表面架橋剤が好適に用いられる。好ましくは、オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物、多価アルコール化合物、またはオキセタン化合物よりなる群から選択される脱水エステル化反応性表面架橋剤の1種または2種以上を用いることが好ましい。かかる表面架橋工程においては、高物性の粒子状吸水剤が得られるものの、脱水エステル化反応を高温下で行う必要があり、該粒子状吸水剤の含水率は低くなる。したがって、微粉や粉塵が発生することもあるが、かかる問題を解決するために、本発明を好ましく適用することができる。
[0071] 具体的には、特に限定されないが、2-オキサゾリジノン等の(モノ、ジ、またはポリ)オキサゾリジノン化合物・・・1,3-プロパンジオール、・・・等の多価アルコール化合物;・・・が挙げられる。中でも炭素数2?10の多価アルコール及び炭素数2?10のオキセタン化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。炭素数3?8の多価アルコールが特に好ましい。・・・
[0078] 表面架橋工程では、粒子状吸水性樹脂と上記表面架橋剤溶液との混合物は、室温でも表面架橋を行うことができる。ただし、反応の促進並びに添加された水及び溶媒の除去の観点から、粒子状吸水性樹脂と表面架橋剤との混合後、更に、加熱処理を行い、粒子状吸水性樹脂の表面近傍を架橋させることが好ましい。該加熱処理において、処理温度は、選定される表面架橋剤にもよるが、80℃以上が好ましい。処理温度が80℃未満の場合には、加熱処理に時間がかかるので、生産性の低下が引き起こされる上に、均一な表面架橋が達成されない。この場合、粒子状吸水剤の、加圧下における吸収特性が低下する上に、未反応の表面架橋剤の残存が懸念される。処理温度が250℃を超える場合は、粒子状吸水性樹脂の劣化が引き起こされて、表面架橋により得られる粒子状吸水剤の性能が低下する為、好ましくない。この観点から、処理温度(熱媒温度又は材料温度/特に熱媒温度)としては、好ましくは100?250℃の範囲内、より好ましくは150?250℃の範囲内(特に、上記脱水エステル化反応性表面架橋剤では好適)である。加熱時間としては、1分?2時間の範囲内が好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせの好適例としては180℃で0.1?1.5時間、200℃で0.1?1時間である。」

・「[0178] (CRCの測定)
無加圧下吸水倍率(CRC)の測定では、約0.2gに粒子状吸水剤が準備される。この粒子状吸水剤の質量W_(1)が、測定される。この粒子状吸水剤が、不織布製の袋(60mm×85mm)に均一に入れられる。この袋が、25±2℃に調温された生理食塩水(約200g)中に30分間浸漬される。次に、この袋が引き上げられて、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式H-122小型遠心分離機)に投入される。この遠心分離機が、250G(250×9.81m/s^(2))の条件で3分間運転される。その後の袋の質量W_(2)(g)が測定される。一方、粒子状吸水剤を含まない袋についても同様の処理が行われ、その質量W3(g)が測定される。下記数式により、無加圧下吸水倍率(CRC)が算出される。
[0180] (AAPの測定)
加圧下吸水倍率(AAP)の測定では、内径が60mmであるプラスチック製の支持円筒が準備される。この支持円筒の底には、ステンレススチール製の金網が溶着されている。この金網の目数は、400メッシュ(目開き38μm)である。一方、外径が60mmより僅かに小さく、支持円筒の壁面との間に隙間が生じず、かつ上下に摺動しうるピストン(cover plate)も準備される。上記金網の上に、質量がW_(4)(具体的には約0.900g)である吸水剤が均一に散布される。この吸水剤の上にピストンが載置され、支持円筒、吸水剤及びピストンの質量W_(5)(g)が測定される。このピストンにおもりが載置されることにより、吸水剤に対して4.8kPa(50g/cm^(2))の圧力が均一に加えられる。直径が150mmであるペトリ皿の内側に、直径が90mmであり厚さが5mmであるガラスフィルターが置かれる。ペトリ皿に、25±2℃に調温した生理食塩水が、ガラスフィルターの上面と同レベルになるように注がれる。このガラスフィルターの上面に、直径が9cmである濾紙(トーヨー濾紙(株)製、No.2)が1枚載せられる。この濾紙の全表面が、食塩水で濡れる。その後、過剰の食塩水が除かれる。この濾紙に金網が接触するように、支持円筒及びピストンがペトリ皿に置かれる。吸水剤は、加圧下にて、食塩水を吸収する。食塩水の水面がガラスフィルターの上面より下がった場合には、食塩水が補充されて、水面レベルが一定に保持される。1時間後にペトリ皿から支持円筒及びピストンがピックアップされ、おもりを取り除いた質量W6(g)が測定される。この質量W6(g)には、生理食塩水によって膨潤した吸水剤の質量が含まれる。下記数式により、加圧下吸水倍率(AAP)が算出される。
[0181][数5]
AAP(g/g)=(W6-W5)/W4
[0182]なお、測定は、23±2℃の環境下で行われる。このような測定方法は、米国特許第6071976号に開示されている。
[0183] (SFCの測定)
食塩水流れ誘導性(SFC)の測定では、0.900gの吸水剤が容器に均一に入れられる。この吸水剤が人工尿に浸漬されつつ、2.07kPaで加圧させられる。60分後に、膨潤した吸水剤(ゲル層)の高さが記録される。吸水剤が2.07kPaで加圧された状態で、0.69質量%食塩水が、ゲル層を通される。このときの室温は、20℃から25℃に調整される。コンピューターと天秤とを用いて、ゲル層を通過する液体量が20秒間隔で記録されて、通過する液体の流速Fs(T)が算出される。流速Fs(T)は、増加質量(g)を増加時間(s)で割ることにより算出される。食塩水の静水圧が一定となり安定した流速が得られた時間がTsとされて、このTsから10分の間に計測されたデータのみが流速計算に使用される。Tsから10分の間に計測される流速から、Fs(T=0)の値が得られる。この値は、ゲル層を通過する最初の流速である。Fs(T)が時間に対してプロットされて、最小2乗法により得られる結果に基づいてFs(T=0)が計算される。食塩水流れ誘導性(SFC)は、下記数式によって算出される。
[0184][数6]
SFC=Fs(t=0)・L0)/(ρ・A・ΔP)
[0185]この数式において、L0はゲル層の高さ(cm)であり、ρは食塩水の密度(g/cm^(3))であり、Aはゲル層の断面積A(cm^(2))であり、ΔPはゲル層にかかる静水圧(dyne/cm^(2))である。上記人工尿は、0.25gの塩化カルシウムの二水和物、2.0gの塩化カリウム、0.50gの塩化マグネシウムの六水和物、2.0gの硫酸ナトリウム、0.85gのリン酸二水素アンモニウム、0.15gのリン酸水素二アンモニウム及び994.25gの純水が混合されて得られる。このような評価は、米国特許第5849405号の明細書に記載されたSFC試験に準じて行われる。」

・「[0186] [実施例1]
・・・
[0187] この実施例1では、まず、モノマーとしての75モル%が中和されたアクリル酸部分ナトリウム塩と、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(ポリエチレングリコール鎖中のエチレン鎖の重合度の平均数で示されるエチレンオキシドの平均付加モル数nが9である。)とを含んだ水溶液が、モノマー溶液として準備された。このモノマー溶液において、モノマー濃度は、38質量%に調整された。内部架橋剤の濃度は、モノマーに対して0.06モル%となるように調整された。
[0188] 次に、このモノマー溶液を定量ポンプで連続フィードしつつ、窒素ガスを連続的に吹き込むことにより、このモノマー溶液の酸素濃度が0.5ppm以下に調整された。次に、モノマー溶液に、過硫酸ナトリウム及びL-アスコルビン酸が、モノマー1モルに対して過硫酸ナトリウム/L-アスコルビン酸の質量が0.14g/0.005gとなるようにラインミキシングで混合された。
[0189] 次に、その両側に堰を有する平面スチールベルトにその厚みが約25mmとなるように、モノマー溶液を供給して、水溶液重合が95℃で30分間実施されて、含水状態にある重合ゲルが得られた(重合工程)。
[0190] 次に、この重合ゲルが粉砕されて、更にこの粉砕された重合ゲルが孔径7mmのミートチョッパーで約1mmに細分化された。これをバンド乾燥機の多孔板上に薄く拡げて載せて、180℃で30分間熱風乾燥して、重合ゲルの乾燥物としての粒子状吸水性樹脂が得られた(乾燥工程)。
[0191] 次に、この乾燥物が粉砕されて、粒子状の乾燥物が得られた。この粒子状の乾燥物の全量が、3段ロールミル(ロールギャップの構成は、上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給されて更に粉砕された(粉砕工程)。
[0192] その後、目開き850μmの金属篩網及び目開き150μmの金属篩網を有する分級装置で分級されて(分級工程)、粒子状吸水性樹脂が得られた。この粒子状吸水性樹脂の約98質量%が、その粒径が150μmから850μmである粒子状吸水性樹脂であった。なお、この粒子状吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(CRC)は、35g/gであった。
[0193] 次に、表面処理剤溶液が準備された。この表面処理剤溶液は、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール及び純水からなり、粒子状吸水性樹脂100質量部に対して、1,4-ブタンジオールが0.30質量部、プロピレングリコールが0.50質量部、純水が2.70質量部となるように調整された。次に、この粒子状吸水性樹脂を高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)に1000kg/時間で連続供給して、上記表面処理剤溶液がスプレーで噴霧されて、この表面処理剤溶液と粒子状吸水性樹脂とが混合された。次に、この表面処理剤溶液が混合された粒子状吸水性樹脂が、200℃に調整されたパドルドライヤーで40分間加熱された(表面架橋工程)。
[0194] その後、パドルドライヤー(溝型攪拌式乾燥機)を用いて60℃に冷却された(冷却工程)。
[0195] 冷却(冷却工程)後、目開き850μmの金属篩網及び目開き150μmの金属篩網を用いて分級されて、その粒径が150μmから850μmである製品としての粒子状吸水剤1が得られた(整粒工程)。」

・「[0202] [実施例2]
冷却工程において、50%の硫酸アルミニウム水溶液が吸水性樹脂に対して1質量%添加された他は実施例1と同様にして、粒子状吸水剤2を製造した。」

・「[0213] [表1]



イ 甲3に記載された発明
甲3の段落[0202]及び[0213]の[表1]の記載からみて、甲3には、甲3の実施例2として記載されている粒子状吸水剤2を製造する方法として、以下の発明が記載されている。

<甲3粒子状吸水剤2製法発明>
「粒子状吸水剤を製造する方法であって、
モノマーとしての75モル%が中和されたアクリル酸部分ナトリウム塩と、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(ポリエチレングリコール鎖中のエチレン鎖の重合度の平均数で示されるエチレンオキシドの平均付加モル数nが9である。)とを含んだ水溶液が、モノマー溶液として準備され、このモノマー溶液において、モノマー濃度は、38質量%に調整され、内部架橋剤の濃度は、モノマーに対して0.06モル%となるように調整され、
次に、このモノマー溶液を定量ポンプで連続フィードしつつ、窒素ガスを連続的に吹き込むことにより、このモノマー溶液の酸素濃度が0.5ppm以下に調整され、次に、モノマー溶液に、過硫酸ナトリウム及びL-アスコルビン酸が、モノマー1モルに対して過硫酸ナトリウム/L-アスコルビン酸の質量が0.14g/0.005gとなるようにラインミキシングで混合され、
次に、その両側に堰を有する平面スチールベルトにその厚みが約25mmとなるように、モノマー溶液を供給して、水溶液重合が95℃で30分間実施されて、含水状態にある重合ゲルが得られ(重合工程)、
次に、この重合ゲルが粉砕されて、更にこの粉砕された重合ゲルが孔径7mmのミートチョッパーで約1mmに細分化され、これをバンド乾燥機の多孔板上に薄く拡げて載せて、180℃で30分間熱風乾燥して、重合ゲルの乾燥物としての粒子状吸水性樹脂が得られ(乾燥工程)、
次に、この乾燥物が粉砕されて、粒子状の乾燥物が得られ、この粒子状の乾燥物の全量が、3段ロールミル(ロールギャップの構成は、上から1.0mm/0.55mm/0.42mm)に連続供給されて更に粉砕され(粉砕工程)、
その後、目開き850μmの金属篩網及び目開き150μmの金属篩網を有する分級装置で分級されて(分級工程)、粒子状吸水性樹脂が得られ、この粒子状吸水性樹脂の約98質量%が、その粒径が150μmから850μmである粒子状吸水性樹脂であり、なお、この粒子状吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(CRC)は、35g/gであり、
次に、表面処理剤溶液が準備され、この表面処理剤溶液は、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール及び純水からなり、粒子状吸水性樹脂100質量部に対して、1,4-ブタンジオールが0.30質量部、プロピレングリコールが0.50質量部、純水が2.70質量部となるように調整され、次に、この粒子状吸水性樹脂を高速連続混合機(タービュライザー/1000rpm)に1000kg/時間で連続供給して、上記表面処理剤溶液がスプレーで噴霧されて、この表面処理剤溶液と粒子状吸水性樹脂とが混合され、次に、この表面処理剤溶液が混合された粒子状吸水性樹脂が、200℃に調整されたパドルドライヤーで40分間加熱され(表面架橋工程)、
その後、パドルドライヤー(溝型攪拌式乾燥機)を用いて60℃に冷却され(冷却工程)、
冷却(冷却工程)後、目開き850μmの金属篩網及び目開き150μmの金属篩網を用いて分級されて、その粒径が150μmから850μmである製品としての粒子状吸水剤1が得られ(整粒工程)、
その冷却工程において、50%の硫酸アルミニウム水溶液が吸水性樹脂に対して1質量%添加されて製造された、CRCが30.5g/gであり、AAPが24.3g/gであり、SFCは53(・10^(-7)cm^(3)・s/g)である、粒子状吸水剤2の製造方法。」

(4)甲4の記載事項等
ア 甲4の記載事項
・「【0001】
本発明は、紙おむつや生理ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料などに好適に用いられる吸水剤およびその製造方法に関するものである。」

・「【0007】
本発明が解決しようとする課題は、吸水性樹脂粒子と金属化合物(金属塩や金属カチオンなど)とを混合して吸水剤を製造するにあたって、金属成分が吸水性樹脂粒子内部に浸透することを抑制するとともに、金属成分が吸水性樹脂表面全体に細かい点状で均一に付着できるような、吸水剤の製造方法を提供することにある。」

・「【0026】
表面架橋処理に用いることのできる表面架橋剤としては、吸水性樹脂粒子の有する官能基、特に、カルボキシル基と反応し、架橋構造を形成し得る有機架橋剤や多価金属化合物が挙げられる。特に好ましくは以下に挙げられる有機架橋剤が用いられる。例えば、・・・1,3-プロパンジオール・・・等の多価アルコール;・・・等が挙げられる。これら表面架橋剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも多価アルコールは、安全性が高く、吸水性樹脂粒子表面の親水性を向上させることができる点で好ましい。また、多価アルコールを使用することで、吸水性樹脂粒子表面の多価金属粒子との馴染みが良くなり、多価アルコール残基と多価金属粒子表面との相互作用により吸水性樹脂粒子表面近傍に多価金属粒子をより均一に存在(局在)させることが可能となる。
・・・
【0033】
吸水性樹脂粒子と表面架橋剤とを混合した後、通常、加熱処理を行い、架橋反応を遂行させることが好ましい。上記加熱処理温度は、用いる表面架橋剤にもよるが、40℃以上250℃以下が好ましく、150℃以上250℃以下がより好ましい。加熱処理温度が40℃未満の場合には、加圧下の吸収倍率等の吸収特性が十分に改善されない場合がある。加熱処理温度が250℃を超える場合には、吸水性樹脂粒子の劣化を引き起こし、各種性能が低下する場合があり注意を要する。加熱処理時間は、好ましくは1分?2時間、より好ましくは5分?1時間である。」

・「【0088】
<遠心分離機保持容量(CRC)>
遠心分離機保持容量(CRC)は0.90質量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。なお、CRCは、無加圧下吸収倍率と称されることもある。
【0089】
吸水性樹脂粒子または吸水剤0.200gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP-22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてヒートシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.90質量%食塩水(塩化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H-122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1-99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の質量W1(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂粒子または吸水剤を用いずに行い、その時の質量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)を算出した。
【0090】
遠心分離機保持容量(CRC)(g/g)
=(W1(g)-W0(g))/(吸水性樹脂粒子または吸水剤の質量(g))-1
<圧力に対する吸収力(AAP)>
圧力に対する吸収力(AAP)は0.90質量%食塩水に対する4.83kPaで60分の吸収倍率を示す。なお、AAPは、4.83kPaでの加圧下吸収倍率と称されることもある。
・・・
【0094】
・・・
<食塩水流れ誘導性(SFC)>
食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水性樹脂粒子または吸水剤の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。
【0095】
特表平9-509591号公報記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
【0096】
図2に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水性樹脂粒子または吸水剤(0.900g)を人工尿(1)中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69質量%食塩水33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。このSFC試験は室温(20?25℃)で行った。コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は増加質量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。
【0097】
食塩水流れ誘導性(SFC)
=(Fs(t=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(Fs(t=0)×L0)/139506
ここで、
Fs(t=0):g/sで表した流速
L0:cmで表したゲル層の高さ
ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm^(3))
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm^(2))
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm^(2))
およびSFC値の単位は(10^(-7)・cm^(3)・s・g^(-1))である。」

・「【0116】
・・・
<ペイントシェーカーテスト>
ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子または吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されている。
【0117】
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とする。
【0118】
浸透後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子または吸水剤が得られる。」

・「【0123】
(実施例1)
水道用液体硫酸アルミニウム27質量%溶液(浅田化学工業株式会社製)2質量部に対し、90%乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製)0.02質量部を混合し、透明な均一溶液を得た。
【0124】
吸水性樹脂粒子(A)100質量部にこの水溶液2.02質量部を攪拌下均一に混合し、60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト2を行った。こうして、吸水剤(1)を得た。」

・「【0132】
(実施例5)
90%乳酸の代わりに50%乳酸ナトリウム水溶液(株式会社武蔵野化学研究所製)0.02質量部を用いた以外は実施例1と同様に行った。水道用液体硫酸アルミニウム27質量%溶液と50%乳酸ナトリウム水溶液とを混合して得られた溶液(2.02質量部)は透明で均一な溶液であった。こうして、吸水剤(5)を得た。
【0133】
吸水剤(5)についての各種物性を表1に示した。
【0134】
(実施例6)
50%乳酸ナトリウム水溶液の混合量を0.4質量部に変更した以外は実施例5と同様に行った。水道用液体硫酸アルミニウム27質量%溶液と50%乳酸ナトリウム水溶液とを混合して得られた溶液(2.4質量部)は透明で均一な溶液であった。こうして、吸水剤(6)を得た。」

・「【0162】
(製造例2)
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸185.4g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.942g(0.07モル%:対アクリル酸)、および、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.13gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液148.53gと50℃に調温したイオン交換水159.71gを混合した溶液(B)を、マグネチィックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系ですばやく加えて混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られた。
【0163】
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液4.29gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されていた。
【0164】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0165】
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得た。
【0166】
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径450μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(2)を得た。吸水性樹脂(2)の遠心分離機保持容量(CRC)は36.0g/g、水可溶分は12.0質量%であった。
【0167】
得られた吸水性樹脂(2)100質量部に1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(B)を得た。
【0168】
吸水性樹脂粒子(B)についての各種物性を表1に示した。
【0169】
また、得られた吸水性樹脂(2)100質量部に1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で40分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行った。こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(C)を得た。」

・「【0171】
(実施例19)
実施例6において、吸水性樹脂粒子(B)を用いた以外は実施例6と同様に行った。こうして、吸水剤(19)を得た。」

・「【0204】
【表1】



イ 甲4に記載された発明
(ア)甲4の段落【0162】ないし【0169】、【0171】及び【0204】の【表1】の記載からみて、甲4には、甲4の製造例2及び実施例19として記載されている吸水性樹脂粒子(C)及び吸水剤(19)を製造する方法として、以下の発明が記載されている。

<甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明>
「表面が架橋された吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸185.4g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.942g(0.07モル%:対アクリル酸)、および、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.13gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液148.53gと50℃に調温したイオン交換水159.71gを混合した溶液(B)を、マグネチィックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系ですばやく加えて混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られ、
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液4.29gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱され、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されており、
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮し、この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得、
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径450μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(2)を得、吸水性樹脂(2)の遠心分離機保持容量(CRC)は36.0g/g、水可溶分は12.0質量%であり、
また、得られた吸水性樹脂(2)100質量部に1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で40分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、次に、この粒子に前記ペイントシェーカーテスト1を行って得られた、CRCが29g/gであり、AAPが25g/gであり、SFCは51(・10^(-7)cm^(3)・s/g)である、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(C)の製造方法。
ここで、ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子または吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されており、
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1とし、
浸透後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子または吸水剤が得られる。」

<甲4吸水剤(19)製法発明>
「吸水剤を製造する方法であって、
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸185.4g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.942g(0.07モル%:対アクリル酸)、および、1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.13gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液148.53gと50℃に調温したイオン交換水159.71gを混合した溶液(B)を、マグネチィックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系ですばやく加えて混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液が得られ、
得られた単量体水溶液に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液4.29gを加え、数秒攪拌した後に、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000、(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ、ステンレス製バット型容器は、そのサイズが底面250×250mm、上面640×640mm、高さ50mmであり、中心断面が台形で、上面が開放されており、
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始し、水蒸気を発生して上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮し、この膨張収縮は約1分以内に終了し、4分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、
得られた含水重合体を、ダイス径9.5mmのミートチョッパー(ROYAL MEAT CHOPPER VR400K、飯塚工業株式会社製)により粉砕し、細分化された含水重合体を得、
この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径450μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(2)を得、吸水性樹脂(2)の遠心分離機保持容量(CRC)は36.0g/g、水可溶分は12.0質量%であり、
得られた吸水性樹脂(2)100質量部に1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.0質量部の混合液からなる表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で30分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕した。次に、この粒子にペイントシェーカーテスト1を行い、こうして、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(B)を得、
水道用液体硫酸アルミニウム27質量%溶液(浅田化学工業株式会社製)2質量部に対し、50%乳酸(株式会社武蔵野化学研究所製)0.4質量部を混合し、透明な均一溶液(2.02質量部)を得、
吸水性樹脂粒子(B)100質量部にこの水溶液2.02質量部を攪拌下均一に混合し、60℃で1時間乾燥させ、得られた乾燥物を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、次に、この粒子にペイントシェーカーテスト2を行って、得られたCRCが30g/gであり、AAPが23g/gであり、SFCは50(・10^(-7)cm^(3)・s/g)である、吸水剤(19)の製造方法。
ここで、ペイントシェーカーテスト(PS)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂粒子または吸水剤30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されており、
振盪時間を30分間としたものをペイントシェーカーテスト1、10分間としたものをペイントシェーカーテスト2とし、
浸透後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去し、ダメージを与えられた吸水性樹脂粒子または吸水剤が得られる。」

(5)本件特許発明8と甲1に記載された発明の対比及び検討
ア 甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明との対比及び検討
甲5(実験成績証明書)によれば、甲1における吸水性樹脂粒子(1-40)の測定温度22℃における水平方向ゲル強度G’は、10938Paであり、その表面架橋前には、5567Paであり、式aの左辺が102.9Pa^(2)、式bの左辺が124.2である。
また、甲1の吸水性樹脂粒子(1-40)が通過する、目開き710μmのJIS標準篩は、22メッシュに相当する。

そうすると、本件特許発明8と甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式bの関係式を満たし、
【数2】
[式b](省略)
上記式b中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示し、
SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す、高吸水性樹脂の製造方法。

そして、以下の点で相違する。
<相違点1>
式aの左辺の値に関し、本件特許発明8は、「25?95Pa^(2)」であるのに対し、甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明は、甲5によれば「102.9Pa^(2)」であって、式aの関係式を満たさない点。

<相違点2>
表面架橋に関し、表面架橋剤として、本件特許発明8は、「1,3-プロパンジオールを含む」ものを用いるのに対し、甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明は、「1,4-ブタンジオール0.384質量部、プロピレングリコール0.632質量部、純水3.39質量部、過硫酸ナトリウム0.1質量部の混合液からなる表面架橋剤」を用いることが特定され、
また、表面架橋に係る温度条件に関し、本件特許発明8は、「表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され」るのに対し、甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明は、「表面架橋剤を均一に混合した後、混合物を212℃で加熱処理し、加熱時間を40分」とする点。

<相違点3>
G’を測定する際の高吸水性樹脂の分級に関し、本件特許発明8は、「30?50メッシュの篩」で篩うのに対し、甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明は、「目開き710μmのJIS標準篩」(22メッシュに相当)の篩で篩うことが特定される点。

事案に鑑み、相違点2から検討する。
水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂において、表面架橋条件は高吸水性樹脂の性能に大きく影響するところ、甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明において、架橋剤としての「1,3-プロパンジオール」は甲1の段落【0068】に記載されるものの、それを選択する動機付けとなる記載は、甲1にはみられない。
また、甲1の【0077】には、架橋時の温度について記載はあるものの、相違点2に係る温度プロファイルの操作について、甲1には、記載も示唆もなされておらず、また、その条件は、表面架橋剤にも依拠するものでもあり、相違点2に係る特定事項を甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明に適用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件特許発明8は、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たし」、「おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる」という甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点1及び3を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲1吸水性樹脂粒子(1-40)製法発明ではなく、また、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明との対比及び検討
甲5(実験成績証明書)によれば、甲1における吸水性樹脂粒子(3-50A)の測定温度22℃における水平方向ゲル強度G’は、10724Paであり、その表面架橋前には、5525Paであり、式aの左辺が86.1Pa^(2)、式bの左辺が134.7である。
また、甲1の吸水性樹脂粒子(3-50A)が通過する、目開き710μmのJIS標準篩は、22メッシュに相当する。

そうすると、本件特許発明8と甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式a及び式bの関係式を満たし、
【数1】
[式a](省略)
上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示し、
【数2】
[式b](省略)
上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す、高吸水性樹脂の製造方法。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点4>
表面架橋に関し、表面架橋剤として、本件特許発明8は、「1,3-プロパンジオールを含む」ものを用いるのに対し、甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明は、「1,4-ブタンジオール0.36質量部、プロピレングリコール0.6質量部、純水3.2質量部の混合液からなる表面架橋剤」を用いることが特定され、
また、表面架橋に係る温度条件に関し、本件特許発明8は、「表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され」るのに対し、甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明は、「表面架橋剤をレーディゲミキサーで混合した後、混合物を200℃で50分間加熱処理」する点。

<相違点5>
G’を測定する際の高吸水性樹脂の分級に関し、本件特許発明8は、「30?50メッシュの篩」で篩うのに対し、甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明は、「目開き710μmのJIS標準篩」(22メッシュに相当)の篩で篩うことが特定される点。

<相違点6>
高吸水性樹脂に関し、本件特許発明8は、「硫酸アルミニウムを含ま」ないが、甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明では、表面架橋後に添加された、硫酸アルミニウムを含む点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点4について、上記アにおいて、相違点2について述べたのと同様、相違点4に係る特定事項を甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明に適用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件特許発明8は、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たし」、「おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる」という甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点5及び6を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明ではなく、また、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 甲1吸水剤(3-1)製法発明との対比及び検討
甲1吸水剤(3-1)製法発明は、上記イで検討した甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明に、「WACKER社製HDK(登録商標)H2050EP」を添加する工程が追加されたものであって、該「H2050EP」は、表面変性されたシリカであって、高吸水性樹脂ではないことから、この追加工程は高吸水性樹脂を製造する工程とはいえないので、吸水性樹脂の製造方法として、甲1吸水剤(3-1)製法発明は、上記イで検討した甲1吸水性樹脂粒子(3-50A)製法発明と実質上相違しない。
そうすると、本件特許発明8は、甲1吸水剤(3-1)製法発明ではなく、また、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件特許発明8と甲1に記載された発明の対比及び検討のまとめ
したがって、本件特許発明8は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件特許発明8と甲2に記載された発明の対比及び検討
ア 甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明との対比及び検討
甲6(実験成績証明書)によれば、甲2吸水性樹脂組成物(B1)の測定温度22℃における水平方向ゲル強度G’は、8774Paであり、その表面架橋前には、4760Paであり、式aの左辺が53.2Pa^(2)、式bの左辺が126.2である。
また、甲2の吸水性樹脂組成物(B1)が通過する、目開き850μmのJIS標準篩は、18メッシュに相当する。

そうすると、本件特許発明8と甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式a及び式bの関係式を満たし、
【数1】
[式a](省略)
上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示し、
【数2】
[式b](省略)
上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す、高吸水性樹脂の製造方法。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点7>
表面架橋に関し、表面架橋剤として、本件特許発明8は、「1,3-プロパンジオールを含む」ものを用いるのに対し、甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明は、「1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、純水2.7質量部の混合液からなる表面処理剤溶液」を用いることが特定され、
また、表面架橋に係る温度条件に関し、本件特許発明8は、「表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され」るのに対し、甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明は、「混合物をパドルドライヤーにより連続的に198℃にて40分間加熱処理した後、同様のパドルドライヤーを用いて60℃まで強制冷却」する点。

<相違点8>
G’を測定する際の高吸水性樹脂の分級に関し、本件特許発明8は、「30?50メッシュの篩」で篩うのに対し、甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明は、「目開き850μmのJIS標準篩」(18メッシュに相当)の篩で篩うことが特定される点。

<相違点9>
高吸水性樹脂に関し、本件特許発明8は、「硫酸アルミニウムを含ま」ないが、甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明では、表面架橋後の冷却工程において添加された、硫酸アルミニウムを含む点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点7について、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂において、表面架橋条件は高吸水性樹脂の性能に大きく影響するところ、甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明において、架橋剤としての「1,3-プロパンジオール」は甲2の段落[0096]および[0097]に記載されるものの、それを選択する動機付けとなる記載は、甲2にはみられない。
また、甲2の段落[0104]には、有機表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は、加熱処理の加熱温度と加熱時間は記載されるものの、相違点7に係る温度プロファイルの操作について、甲2には、記載も示唆もなされておらず、また、その条件は、表面架橋剤にも依拠するものでもあり、相違点7に係る特定事項を甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明に適用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件特許発明8は、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たし」、「おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる」という甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点8及び9を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲2吸水性樹脂組成物(B1)製法発明ではなく、また、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明8と甲2に記載された発明の対比及び検討のまとめ
したがって、本件特許発明8は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件特許発明8と甲3に記載された発明の対比及び検討
ア 甲3粒子状吸水剤2製法発明との対比及び検討
甲7(実験成績証明書)によれば、甲3粒子状吸水剤2製法発明の測定温度22℃における水平方向ゲル強度G’は、8517Paであり、その表面架橋前には、4611Paであり、式aの左辺が45.0Pa^(2)、式bの左辺が116.2である。
また、甲3の甲3粒子状吸水剤2が通過する、目開き850μmのJIS標準篩は、18メッシュに相当する。

そうすると、本件特許発明8と甲3粒子状吸水剤2製法発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式a及び式bの関係式を満たし、
【数1】
[式a](省略)
上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示し、
【数2】
[式b](省略)
上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す、高吸水性樹脂の製造方法。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点10>
表面架橋に関し、表面架橋剤として、本件特許発明8は、「1,3-プロパンジオールを含む」ものを用いるのに対し、甲3粒子状吸水剤2製法発明は、「表面処理剤溶液は、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール及び純水からなり」と特定され、
また、表面架橋に係る温度条件に関し、本件特許発明8は、「表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され」るのに対し、甲3粒子状吸水剤2製法発明は、「200℃に調整されたパドルドライヤーで40分間加熱され(表面架橋工程)、その後、パドルドライヤー(溝型攪拌式乾燥機)を用いて60℃に冷却され(冷却工程)」る点。

<相違点11>
G’を測定する際の高吸水性樹脂の分級に関し、本件特許発明8は、「30?50メッシュの篩」で篩うのに対し、甲3粒子状吸水剤2製法発明は、「目開き850μmのJIS標準篩」(18メッシュに相当)の篩で篩うことが特定される点。

<相違点12>
高吸水性樹脂に関し、本件特許発明8は、「硫酸アルミニウムを含ま」ないが、甲3粒子状吸水剤2製法発明では、表面架橋後の冷却工程において添加された、硫酸アルミニウムを含む点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点10について、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂において、表面架橋条件は高吸水性樹脂の性能に大きく影響するところ、甲3粒子状吸水剤2製法発明において、架橋剤としての「1,3-プロパンジオール」は甲3の段落[0071]に記載されるものの、それを選択する動機付けとなる記載は、甲3にはみられない。
また、甲3の段落[0078]には、粒子状吸水性樹脂と表面架橋剤溶液との混合物の加熱処理の加熱温度と加熱時間は記載されるものの、相違点10に係る温度プロファイルの操作について、甲3には、記載も示唆もなされておらず、また、その条件は、表面架橋剤にも依拠するものでもあり、相違点10に係る特定事項を甲3粒子状吸水剤2製法発明に適用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件特許発明8は、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たし」、「おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる」という甲3粒子状吸水剤2製法発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点11及び12を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲3粒子状吸水剤2製法発明ではなく、また、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明8と甲3に記載された発明の対比及び検討のまとめ
したがって、本件特許発明8は、甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件特許発明8と甲4に記載された発明の対比及び検討
ア 甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明との対比及び検討
甲8(実験成績証明書)によれば、甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明の測定温度22℃における水平方向ゲル強度G’は、8943Paであり、その表面架橋前には、4786Paであり、式aの左辺が57.8Pa^(2)、式bの左辺が115.5である。
また、甲4の吸水性樹脂粒子(C)が通過する、目開き850μmのJIS標準篩は、18メッシュに相当する。

そうすると、本件特許発明8と甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式a及び式bの関係式を満たし、
【数1】
[式a](省略)
上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示し、
【数2】
[式b](省略)
上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す、高吸水性樹脂の製造方法。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点13>
表面架橋に関し、表面架橋剤として、本件特許発明8は、「1,3-プロパンジオールを含む」ものを用いるのに対し、甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明は、「表面処理剤溶液は、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール及び純水からなり」と特定され、
また、表面架橋に係る温度条件に関し、本件特許発明8は、「表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され」るのに対し、甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明は、「表面処理剤を均一に混合した後、混合物を200℃で40分間加熱処理」する点。

<相違点14>
G’を測定する際の高吸水性樹脂の分級に関し、本件特許発明8は、「30?50メッシュの篩」で篩うのに対し、甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明は、「目開き850μmのJIS標準篩」(18メッシュに相当)の篩で篩うことが特定される点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点13について、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂において、表面架橋条件は高吸水性樹脂の性能に大きく影響するところ、甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明において、架橋剤としての「1,3-プロパンジオール」は甲4の段落【0026】に記載されるものの、それを選択する動機付けとなる記載は、甲4にはみられない。
また、甲4の段落【0033】には、吸水性樹脂粒子と表面架橋剤との混合物の加熱処理の加熱処理温度と加熱処理時間は記載されるものの、相違点13に係る温度プロファイルの操作について、甲4には、記載も示唆もなされておらず、また、その条件は、表面架橋剤にも依拠するものでもあり、相違点13に係る特定事項を甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明に適用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件特許発明8は、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たし」、「おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる」という甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点14を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲4吸水性樹脂粒子(C)製法発明ではなく、また、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 甲4吸水剤(19)製法発明との対比及び検討
甲8(実験成績証明書)によれば、甲4吸水剤(19)製法発明の測定温度22℃における水平方向ゲル強度G’は、8672Paであり、その表面架橋前には、4710Paであり、式aの左辺が45.1Pa^(2)、式bの左辺が108.9である。
また、甲4の甲4吸水剤(19)が通過する、目開き600μmのJIS標準篩は、26メッシュに相当する。

そうすると、本件特許発明8と甲4吸水剤(19)製法発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式aの関係式を満たし、
【数1】
[式a](省略)
上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示す、高吸水性樹脂の製造方法。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点15>
式bの左辺の値に関し、本件特許発明8は、「115?145」であるのに対し、甲4吸水剤(19)製法発明は、甲8によれば「108.9」であって、式bの関係式を満たさない点。

<相違点16>
表面架橋に関し、表面架橋剤として、本件特許発明8は、「1,3-プロパンジオールを含む」ものを用いるのに対し、甲4吸水剤(19)製法発明は、「表面処理剤溶液は、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール及び純水からなり」と特定され、
また、表面架橋に係る温度条件に関し、本件特許発明8は、「表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され」るのに対し、甲4吸水剤(19)製法発明は、「200℃に調整されたパドルドライヤーで40分間加熱され(表面架橋工程)、その後、パドルドライヤー(溝型攪拌式乾燥機)を用いて60℃に冷却され(冷却工程)」る点。

<相違点17>
G’を測定する際の高吸水性樹脂の分級に関し、本件特許発明8は、「30?50メッシュの篩」で篩うのに対し、甲4吸水剤(19)製法発明は、「目開き600μmのJIS標準篩」(26メッシュに相当)の篩で篩うことが特定される点。

<相違点18>
高吸水性樹脂に関し、本件特許発明8は、「硫酸アルミニウムを含ま」ないが、甲4吸水剤(19)製法発明では、表面架橋後の冷却工程において添加された、硫酸アルミニウムを含む点。

事案に鑑み、相違点16から検討する。
水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂において、表面架橋条件は高吸水性樹脂の性能に大きく影響するところ、甲4吸水剤(19)製法発明において、架橋剤としての「1,3-プロパンジオール」は甲4の段落【0026】に記載されるものの、それを選択する動機付けとなる記載は、甲4にはみられない。
また、甲4の段落【0033】には、吸水性樹脂粒子と表面架橋剤との混合物の加熱処理の加熱処理温度と加熱処理時間は記載されるものの、相違点16に係る温度プロファイルの操作について、甲4には、記載も示唆もなされておらず、また、その条件は、表面架橋剤にも依拠するものでもあり、相違点18に係る特定事項を甲4吸水剤(19)製法発明に適用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件特許発明8は、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たし」、「おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる」という甲4吸水剤(19)製法発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点15、17及び18を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲4吸水剤(19)製法発明ではなく、また、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件特許発明8と甲4に記載された発明の対比及び検討のまとめ
したがって、本件特許発明8は、甲4に記載された発明ではなく、また、甲4に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)取消理由2(新規性)及び取消理由3(進歩性)についてのまとめ
したがって、本件特許発明8は、甲1ないし甲4のいずれかに記載された発明ではなく、またそれらの発明をそれぞれ主たる引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、取消理由2及び3には理由がない。

第7 取消理由で採用しなかった申立理由について
取消理由1は、申立理由3に、取消理由2は、申立理由4-1ないし4-4に、取消理由3は、申立理由5-1ないし5-4にそれぞれ相当する。
そうすると、取消理由として採用しなかった申立理由は、申立理由1、2、4-5、5-5及び5-6である。
そこで、これらの申立理由について検討する。

1 申立理由1(実施可能要件)について
(1)判断基準
本件特許発明8は「高吸水性樹脂の製造方法」という物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明の実施とは、その方法の使用及び生産した物の使用等をする行為であるから、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用及びその方法により生産した物の使用等をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載
・「【0046】
一方、一実施形態の高吸水性樹脂は、代表的に少なくとも一部のカルボン酸がナトリウム塩などで中和されたアクリル酸のように、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させて得ることができる。より具体的に、前記高吸水性樹脂は、前記単量体を内部架橋剤の存在下に架橋重合させて粉末形態のベース樹脂を得た後、所定の表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を製造することによって得ることができる。
【0047】
このような高吸水性樹脂は、内部架橋構造を有するアクリル酸など水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体粒子の形態になることができ、このような架橋重合体粒子の表面が一層架橋されて架橋度が一層向上した形態になることができる。以下でより詳細に説明するが、一実施形態の高吸水性樹脂は、内部架橋工程や表面架橋工程などが最適化されて、より適切な内部および表面架橋構造を有することによって、前述した一実施形態の諸般物性を示すことができる。
・・・
【0049】
また、このような単量体を架橋重合するための内部架橋剤としては・・・
【0050】
より具体的に、このような特定の内部架橋剤を一定の含有量で用いることによって、表面架橋前のゲル強度(G’;Pa)が約4500Pa以上、あるいは約4600Pa以上、あるいは約4600?7000Paであるベース樹脂を得ることができ、これに対して後述する特定の条件下に表面架橋段階を行うことによって、式1および/または2の関係を満たす一実施形態の高吸水性樹脂を得ることができる。
【0051】
例えば、前記特定の内部架橋剤を単量体に含まれている未中和状態のアクリル酸1モルを基準に、約0.005モル以上、あるいは約0.005?0.1モル、あるいは約0.005?0.05モル(あるいはアクリル酸の100重量部に対して約0.3重量部以上、あるいは約0.3?0.6重量部)の比率で用いることができる。このような内部架橋剤の含有量範囲により、表面架橋前のゲル強度(G’;Pa)が約4500Pa以上であるベース樹脂を適切に得ることができ、これを用いて式1および/または2の関係を満たす一実施形態の高吸水性樹脂を得ることができる。
【0052】
そして、前記内部架橋剤を用いて単量体を重合させた後は、乾燥、粉砕および分級などの工程を経て粉末形態のベース樹脂を得ることができるが、このような粉砕および分級などの工程を通じて、ベース樹脂およびこれから得られる高吸水性樹脂は、約150?850μmの粒径を有するように製造および提供されることが適切である。より具体的に、前記ベース樹脂およびこれから得られる高吸水性樹脂の少なくとも約95重量%以上が約150?850μmの粒径を有し、約150μm未満の粒径を有する微粉が約3重量%未満、あるいは約1重量%未満になることができる。
【0053】
このように前記ベース樹脂および高吸水性樹脂の粒径分布が好ましい範囲に調節されることによって、前記一実施形態の高吸水性樹脂が前述した物性およびより優れた通液性を示すことができる。
【0054】
また、一実施形態の高吸水性樹脂は、前記ベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含むようになるが、このような表面架橋は、炭素数2?8のジオールまたはポリオールを含む表面架橋剤の存在下に行われ得る。このような表面架橋剤の存在下に、表面架橋を行うことによって、表面架橋構造が最適化した一実施形態の高吸水性樹脂が適切に得られ、このような高吸水性樹脂が前述した式1および2の関係式など前述した諸般物性をより適切に満たすことができる。
【0055】
このような表面架橋剤として使用可能な炭素数2?8のジオールまたはポリオールのより適切な例としては、1,3-プロパンジオール、・・・
などが挙げられ、これらの中で選択された2種以上を共に用いることもできることはもちろんである。」

・「【実施例】
【0098】
・・・
【0099】
以下の実施例および比較例で、各高吸水性樹脂の物性は次の方法で測定および評価した。
【0100】
(1)粒径評価
実施例および比較例で用いられたベース樹脂および高吸水性樹脂の粒径は、ヨーロッパ不織布産業協会(・・・)規格EDANA WSP 220.3方法により測定した。
【0101】
(2)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
ヨーロッパ不織布産業協会(・・・)規格EDANA WSP 241.3により実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、無荷重下の吸水倍率による遠心分離保水能(CRC)を測定した。
・・・
【0105】
(3)加圧吸水能(Absorbing under Pressure、AUP)
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、ヨーロッパ不織布産業協会(・・・)規格EDANA WSP 242.3の方法により加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)を測定した。
・・・
【0110】
(4)ゲル強度(Gel Strength;G’)
実施例1?6および比較例1?3の高吸水性樹脂に対して、水平方向ゲル強度(Gel Strength)を測定した。
【0111】
まず、実施例1?6および比較例1?3の高吸水性樹脂試料(30?50Mesh)を篩に篩って0.5gを称量した。秤量された試料を生理食塩水50gに1時間にかけて十分に膨潤させた。その後、吸収されない溶媒は吸引器(aspirator)を用いて4分間除去し、表面につけた溶媒は濾過紙に均一に分布させて1回ぬぐい取った。
【0112】
膨潤された高吸水性樹脂試料2.5gをレオメーター(Rheometer)と2つの平行板(直径25mm、下部に2mm程度のサンプルが抜け出ないようにする壁がある)の間に置き、二つの平行板の間隔を1mmに調節した。この時、膨潤された高吸水性樹脂試料が平行板面にすべて接触するように約3Nの力で加圧して前記平行板の間隔を調節した。
【0113】
前記レオメーターを用いて10rad/sの振動周波数(Oscilation frequency)で、剪断変形を増加させながら、貯蔵弾性率(storage modulus)と、損失弾性率(loss modulus)が一定の線状粘弾性状態(linear viscoelastic regime)区間の剪断変形を確認した。一般に膨潤された高吸水性樹脂試料で、剪断変形0.1%は前記線状粘弾性状態区間内にある。
【0114】
一定した10rad/sの振動周波数(Oscilation frequency)で、線状粘弾性状態区間の剪断変形値で60秒間膨潤された高吸水性樹脂の貯蔵弾性率と、損失弾性率をそれぞれ測定した。この時、得られた貯蔵弾性率値を平均とし、水平方向ゲル強度を求めた。参考までに、損失弾性率は貯蔵弾性率に比べて非常に小さい値と測定される。
【0115】
(5)生理食塩水流れ誘導性(SFC;saline flow conductivity)
米国公開特許第2009-0131255号のコラム16の[0184]?[0189]に開示された方法により測定した。」

・「【0127】
(実施例7)
アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.5g、50%苛性ソーダ(NaOH)83.3gおよび水89.8gを混合して、単量体濃度が45重量%であるモノマー水溶液組成物比を有するように製造した。
【0128】
以降、前記モノマー水溶液810gを先に、0.18%アスコルビン酸溶液30.54gと、1%過硫酸ナトリウム溶液33gを先に混合し、0.15%過酸化水素溶液30.45gと共に連続に重合を行いながらニーディングを行うことができる重合機の供給部を通じて投入して重合を実施した。この時、重合機の温度は80℃に維持し、重合の最高温度は110℃、重合時間は1分15秒である。以降、継続してニーディングを実施し、20分間重合とニーディングを実施した。以降、生成された重合体の大きさは0.2cm以下に分布した。この時、最終形成された含水ゲル重合体の含水率は51重量%であった。
【0129】
次に、前記含水ゲル重合体に対して180℃温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥された含水ゲル重合体をピンミル紛砕機で粉砕した。その後、篩(sieve)を用いて粒径が約150μm未満である重合体と、粒径が約150μm?850μmである重合体を分級した。
【0130】
以降、製造されたベース樹脂に1,3-プロパンジオール5重量%およびプロピレングリコール5重量%を含む表面処理溶液を噴射し、常温で攪拌してベース樹脂に表面処理溶液が均一に分布するように混合した。以降、このようなベース樹脂を表面架橋反応機に入れて表面架橋反応を行った。このような表面架橋反応機内で、ベース樹脂は約60℃近傍の初期温度で漸進的に昇温することが確認され、約15分経過後に約185℃の最大反応温度に到達するように操作した。このような最大反応温度に到達した以降に、約30分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような実施例7の表面架橋反応条件は、下記表3に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂の製品に約150μm以下の粒径を有する微粉の含有量は、約1重量%未満であった。
【0131】
(実施例8、9および比較例4) 下記表3に示したように、表面架橋反応時の反応時間、最大反応温度および昇温速度を異にしたことを除き、実施例7と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0132】
(実施例10)
内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.8gを用いたことを除き、実施例7と同様な方法で分級工程までを行ってベース樹脂を製造した。
【0133】
そして、表面架橋反応時の初期温度から最大反応温度である185℃に到達する時間を15分と操作し、最大反応温度に到達した後に20分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような実施例10の表面架橋反応条件は、下記表3に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂の製品に約150μm以下の粒径を有する微粉の含有量は、約1重量%未満であった。
【0134】
(比較例5)
内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.8gを用いたことを除き、実施例7と同様な方法で分級工程までを行ってベース樹脂を製造した。
【0135】
そして、表面架橋反応時の初期温度から最大反応温度である180℃に到達する時間を30分と操作し、最大反応温度に到達した後に10分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような比較例5の表面架橋反応条件は、下記表3に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。
【0136】
(比較例6)
内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.2gを用いたことを除き、実施例7と同様な方法で分級工程までを行ってベース樹脂を製造した。
【0137】
そして、表面架橋反応時の初期温度から最大反応温度である180℃に到達する時間を15分と操作し、最大反応温度に到達した後に20分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような比較例6の表面架橋反応条件は、下記表3に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。
【0138】
【表3】

【0139】
前述した方法で測定された実施例7?10および比較例4?6の物性を表4に整理した。そして、前記測定されたCRC、AUP、G’、SFCから、式1および2の関係式の左辺値を算出して、共に示した。
【0140】
【数6】

【0141】
【表4】

【0142】
前記表4に示したように、実施例で得られた高吸水性樹脂は、CRC、AUP、G’、およびSFCが全般的に優れており、前述した式1の値が15Pa^(2)以上である関係式を満たすだけでなく、式2の値が100以上である関係式を満たすことに比べ、比較例4?6は、前記物性中の一つ以上が劣悪で、上記式1および2の関係式を満たすことができないことが確認された。特に、比較例4?6は、表面架橋前のゲル強度、表面架橋工程での昇温条件、または反応条件(最大反応温度での維持時間など)が実施例とは異なり、実施例に比べてG’またはSFCなどが劣悪で、通液性などが劣悪に現れることが確認された。」

(3)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0046】ないし【0055】には、本件特許発明8に係る製造方法の原料及び製法についての記載があり、【0127】ないし【0142】には、実施例7ないし10として、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の具体的な製法が記載されている。
そして、実施例7ないし10及び比較例についての記載を比べることにより、当業者は、本件特許発明8に規定される式a及びbの条件を満たすことで、優れたCRC、AUP、G’及びSFCの高吸水性樹脂を得ることが理解することができ、そのためには、内部架橋剤、表面架橋剤および粒径分布の適用とその含有量の調整、表面架橋前のゲル強度、表面架橋工程での昇温条件、または反応条件(最大反応温度での維持時間など)を調整すればよいことが理解される。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明8の製造方法に係る物を生産する方法の使用及びその方法により生産した物の使用等をすることができる程度の記載があるといえ、本件特許発明8に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

(4)特許異議申立人の主張について
令和3年1月22日に特許異議申立人が提出した意見書において、特許異議申立人は、以下の主張をしている。
本件特許発明8において「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂」は、中和率によって、1,3-プロパンジオールを用いた表面架橋ができない場合や、所期の値のCRC、AUP、G’及びSFCの高吸水性樹脂が得られない場合のものも包含される。
上記主張を検討すると、本件特許の発明の詳細な説明の記載から上記(3)で述べたように、技術常識に基づき、適切な中和率の酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を選択し、所期の高吸水性樹脂を得ることに当業者の過度の試行錯誤を要しないことは明らかである。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(5)申立理由1についてのむすび
したがって、申立理由1によっては、本件特許の請求項8に係る特許を取り消すことはできない。

2 申立理由2(サポート要件)について
(1)判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、上記1(2)及び以下のとおりである。
・「【0002】
本発明は、保水能、加圧吸水能、通液性およびゲル強度が最適化されて、全体的にバランスが取れており、より優れた物性を示す高吸水性樹脂に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百?1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なるように命名している。このような高吸水性樹脂は、生理用具として実用化し始め、現在は乳幼児用紙おむつなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水材、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における新鮮度保持剤、および湿布用などの材料として幅広く使用されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、保水能、加圧吸水能、通液性およびゲル強度が最適化されて、全体的にバランスがよく、より優れた物性を示す高吸水性樹脂を提供するものである。」

・「【0011】
本発明は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、下記式aの関係式を満たし、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記表面架橋は、前記ベース樹脂に表面架橋剤を添加して表面架橋反応を行うとき、表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行される、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【数1】
[式a]

上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示す。
【0012】
このような高吸水性樹脂は、各物性が下記式2の関係式を満たすことができる。
【数2】
[式b]

上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す。
【0013】
前記高吸水性樹脂は、CRCが約26?32g/gになることができ、AUPが約22?26g/gになることができ、水平方向ゲル強度G’が約6,000?12,000Pa、あるいは約7,000?12,000Paになることができる。また、前記高吸水性樹脂は、生理食塩水に対する生理食塩水流れ誘導性(SFC)が約40?約85・10^(-7)cm^(3)・s/gあるいは約50?約75・10^(-7)cm^(3)・s/gになることができる。
【0014】
この時、前記高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度G’は、
30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させて膨潤させる段階;
前記膨潤された高吸水性樹脂を所定の間隔を有するレオメーターのプレートの間に位置させ、両プレート面を加圧する段階;
振動下のレオメーターを用いて剪断変形(shear strain)を増加させながら、貯蔵弾性率(storage modulus)と、損失弾性率(loss modulus)が一定の線状粘弾性状態(linear viscoelastic regime)区間の剪断変形を確認する段階;および
前記確認された剪断変形下で前記膨潤された高吸水性樹脂の貯蔵弾性率と、損失弾性率をそれぞれ測定し、前記貯蔵弾性率の平均値をゲル強度として測定する段階を含む方法で測定され得る。」

(4)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0003】ないし【0010】によると、本件特許発明8の発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「保水能、加圧吸水能、通液性およびゲル強度が最適化されて、全体的にバランスがよく、より優れた物性を示す高吸水性樹脂を提供する」ことである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0011】ないし【0014】には、本件特許発明8に対応する記載があり、【0046】ないし【0055】及び【0099】ないし【0115】には、本件特許発明8の発明特定事項について具体的な記載があり、【0127】ないし【0142】には、本件特許発明8の実施例が記載され、該実施例において、優れたCRC、AUP、G’及びSFCの高吸水性樹脂を得ることを確認している。
そうすると、当業者は「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂であって、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有するものに、1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤を、表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行させ、式a及びbの関係式を満たすようにする高吸水性樹脂の製造方法」は発明の課題を解決できる手段であると認識する。
そして、本件特許発明8は、上記課題解決手段を含むものである。
したがって、本件特許発明8に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、サポート要件に適合する。

(5)特許異議申立人の主張について
令和3年1月22日に特許異議申立人が提出した意見書において、特許異議申立人は、以下の主張をしている。

本件特許発明8において「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂」は、中和率によって、1,3-プロパンジオールを用いた表面架橋ができない場合や、所期の値のCRC、AUP、G’及びSFCの高吸水性樹脂が得られない場合のものも包含される。
上記主張を検討すると、本件特許明細書の【0051】には次の記載がある。
「例えば、前記特定の内部架橋剤を単量体に含まれている未中和状態のアクリル酸1モルを基準に、約0.005モル以上、あるいは約0.005?0.1モル、あるいは約0.005?0.05モル(あるいはアクリル酸の100重量部に対して約0.3重量部以上、あるいは約0.3?0.6重量部)の比率で用いることができる。このような内部架橋剤の含有量範囲により、表面架橋前のゲル強度(G’;Pa)が約4500Pa以上であるベース樹脂を適切に得ることができ、これを用いて式1および/または2の関係を満たす一実施形態の高吸水性樹脂を得ることができる。」
そうすると、本件特許明細書のこの記載をみれば、当業者は、水溶性エチレン系不飽和単量体の中和状態を適切に設定し、内部架橋による表面架橋前のゲル強度G’を調整すること及び表面架橋によって、本件特許発明8の式a及びbの関係式を満たす高吸水性樹脂を得ることができるといえるから、本件特許明細書には、本件特許発明8の特定事項について記載されているということができる。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(6)申立理由2についてのむすび
したがって、申立理由2によっては、本件特許の請求項8に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由4-5及び5-6(甲9に基づく新規性進歩性)について
(1)甲9の記載事項等
ア 甲9の記載事項
甲9には、以下の事項が記載されている。なお、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した翻訳文を摘記した。

・「[0007] 本発明の一態様は、微細粉末の発生が少ない高吸収性ポリマーの調製方法であって、保水能力および加圧下吸収力が優れているだけでなく、水溶性成分の含有量が低くもある、調製方法を提供する。」

・「[0060] 本発明によれば、微細粉末の発生が少ない高吸収性ポリマーの調製方法であって、保水能力および加圧下吸収力が優れているだけでなく、水溶性成分の含有量が低くもある、調製方法、および、当該方法によって調製される高吸収性ポリマーを提供し得る。」

・「調製実施例1
ポリマー粉末の調製
[0062]
モノマー濃度が50重量%であるモノマー組成物を、アクリル酸100gと、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.1gと、苛性ソーダ(NaOH)38.9gと、水103.9gとを混合して調製した。
[0063]
それから、モノマー組成物を、モノマー供給部を介して連続移動コンベアベルトの上に置き、そこに、3%過硫酸ナトリウム水溶液10gを重合開始剤として混合した。重合開始剤を混合して1分後に重合が開始され、内部温度が99℃である反応器内で4分間、重合反応を行った。このようにして重合した含水ゲル相ポリマー(含水量50%)をカッターまで運び、含水ゲル相ポリマーの重量平均粒子径が2mmとなるように粉砕した。
[0064]
粉砕し排出した含水ゲル相ポリマーを、それから、180℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させた。次いで、乾燥させたポリマーをピンミルで微粉砕し、篩を用いて分級し、粒子径150?850μmの微粉砕ポリマーを得た。
[0065]
このようにして調製したポリマー粉末は、保水能力が41g/g、水溶性成分含有量が16%であった。」

・「実施例5
高吸収性ポリマーの調製
[0074]
1,3-プロパンジオール1.0重量部および水1.0重量部を、調製例1に従って調製したポリマー粉末100重量部にスプレーし、混合した。上記混合プロセスのあと、表面架橋剤を添加したポリマーの温度は60℃であった。
[0075]
混合ポリマーを反応器に入れ、当該反応器の温度を、オイルヒーターおよび電気ヒーターによって上昇させた。このとき、表面架橋反応温度は180℃であり、温度上昇速度は3℃/分であり、温度が180℃まで上昇した後の表面架橋反応時間は20分間であった」

・「



イ 甲9に記載された発明
甲9の調製実施例1及び実施例5の記載からみて、甲9には、次のとおりの発明が記載されている。

<甲9発明>
「モノマー濃度が50重量%であるモノマー組成物を、アクリル酸100gと、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート0.1gと、苛性ソーダ(NaOH)38.9gと、水103.9gとを混合して調製し、モノマー組成物を、モノマー供給部を介して連続移動コンベアベルトの上に置き、そこに、3%過硫酸ナトリウム水溶液10gを重合開始剤として混合し、重合開始剤を混合して1分後に重合が開始され、内部温度が99℃である反応器内で4分間、重合反応を行い、このようにして重合した含水ゲル相ポリマー(含水量50%)をカッターまで運び、含水ゲル相ポリマーの重量平均粒子径が2mmとなるように粉砕し、
粉砕し排出した含水ゲル相ポリマーを、それから、180℃の熱風乾燥機で1時間乾燥させ、次いで、乾燥させたポリマーをピンミルで微粉砕し、篩を用いて分級し、粒子径150?850μm、保水能力が41g/g、水溶性成分含有量が16%の微粉砕ポリマーを得、
1,3-プロパンジオール1.0重量部および水1.0重量部を、調製したポリマー粉末100重量部にスプレーし、混合し、上記混合プロセスのあと、表面架橋剤を添加したポリマーの温度は60℃であり、
混合ポリマーを反応器に入れ、当該反応器の温度を、オイルヒーターおよび電気ヒーターによって上昇させ、このとき、表面架橋反応温度は180℃であり、温度上昇速度は3℃/分であり、温度が180℃まで上昇した後の表面架橋反応時間は20分間である高吸収性ポリマーの調製方法。」

(2)本件特許発明8と甲9発明との対比及び検討
甲9発明の「アクリル酸」、「架橋剤」、「含水ゲル相ポリマー」及び「微粉砕ポリマー」は、それぞれ、本件特許発明8の「少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体」、「内部架橋剤」、「含水ゲル状重合体」及び「ベース樹脂」に相当し、甲9発明でアクリル酸は熱重合していると解される。
また、甲9発明において、表面架橋における昇温時間は、60℃から180℃まで、温度上昇速度は3℃/分で行うから、40分となる。

そうすると、本件特許発明8と甲9発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記表面架橋は、前記ベース樹脂に表面架橋剤を添加して表面架橋反応を行うとき、表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され、
前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まない、高吸水性樹脂の製造方法。

そして以下の点で相違する。
<相違点19>
ベース樹脂に関し、本件特許発明8は、「表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有」するのに対し、甲9発明には、そのようには特定されない点。

<相違点20>
高吸水性樹脂の性状に関し、本件特許発明8は、「高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式a及び式bの関係式を満た」すものであるのに対し、甲9発明は、そのようには特定されない点。

そこで、相違点について検討する。
相違点19に関し、甲9には、表面架橋前の水平方向ゲル強度(G’)に関する記載も示唆もなく、実質的な相違点である。
また、高吸水性樹脂のG’を表面架橋前に取得することは、当業者にとって技術常識ともいえないし、その採用に関する動機付けもない。
そして、高吸水性樹脂の製造方法において、本件特許発明8の相違点19に係る特定事項である、表面架橋前の水平方向ゲル強度(G’)を所期の値に調整することによって、架橋後の式a及びbの関係を満たす高吸水性樹脂を得、その結果、所望のCRC、AUP、G’及びSFCの値を有する高吸水性樹脂が得ることができるという格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点20について検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲9に記載された発明ではなく、該発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)申立理由4-5及び5-6についてのむすび
したがって、申立理由4-5及び5-6によっては、本件特許の請求項8に係る特許を取り消すことはできない。

4 申立理由5-5(甲1ないし4及び甲9に基づく進歩性)について
甲1ないし4に記載された発明を主引用発明とした場合の進歩性に関しては、取消理由3として上記第6 2にて検討したように、甲1ないし甲4に記載された発明において、いずれも少なくとも1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤を採用する動機付けもないし、かかる表面架橋剤を採用し、さらに、表面架橋時の温度プロファイルを本件特許発明8に特定される所定のものを採用する動機付けもない。
そして、表面架橋剤としての1,3-プロパンジオールの採用及び本件特許発明8に特定される表面架橋時における所定の温度プロファイルの採用によって、本件特許発明8は、所望のCRC、AUP、G’及びSFCの値を有する高吸水性樹脂が得ることができるという格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、申立理由5-5によっては、本件特許の請求項8に係る特許を取り消すことはできない。

5 小括
したがって、取消理由で採用しなかった特許異議申立理由には、いずれも理由がない。

第8 令和3年1月22日に特許異議申立人が提出した意見書において主張する新たな取消理由について
令和3年1月22日に特許異議申立人が提出した意見書において、特許異議申立人は、甲12に基づく本件特許発明8の進歩性欠如について、新たな取消理由を主張するので、これについて検討する。

1 本件特許発明8の新規性進歩性の判断の基準となる日について
本件特許発明8における高吸水性樹脂のCRC、AUP、G及びSFC並びに式a及び式bの右辺の数値範囲について、本件訂正によって訂正された事項の根拠となる記載は、本件特許のパリ条約による優先権の基礎とする出願のうち、最先の出願日である、韓国特許出願10-2014-0071547には記載されていないから、本件特許発明8の新規性進歩性の判断の基準となる日は、他の基礎出願である、韓国特許出願10-2014-0177736の出願日である2014年12月10日となる。

2 甲12の記載事項等
(1)甲12の記載事項
本件特許の上記の優先日前である2014年11月6日に国際公開された甲12には、以下の事項が記載されている。
なお、翻訳文として、甲12のパテントファミリである、甲15を採用して摘記する。

・「【請求項1】
生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が28g/g以上であり、生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が22g/g以上であり、溶液透過度(SFC)が20×10^(-7)cm^(3)*sec/g以上であり、ゲル強度が7,000乃至11,000Paである高吸水性樹脂。
【請求項2】
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体を炭素数2乃至20のポリオールのジ(メタ)アクリレート、および炭素数2乃至20のポリオールのポリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上の内部架橋剤で重合させた粉末形態のベース樹脂を、ハンセン溶解度パラメータによって定義されるδ_(p)がδ_(p)<12(J/cm^(3))^(1/2)を満たす物質、δ_(H)が4<δ_(H)<6(J/cm^(3))^(1/2)を満たす物質、およびδ_(tot)がδ_(tot)>31(J/cm^(3))^(1/2)を満たす物質からなる群より選択される1種以上で表面架橋させた架橋重合体を含む請求項1に記載の高吸水性樹脂。
・・・
【請求項7】
前記δ_(tot)がδ_(tot)>31(J/cm^(3))^(1/2)を満たす物質は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、およびグリセロールからなる群より選択される1種以上である請求項2に記載の高吸水性樹脂。」

・「【0103】
実施例1
アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.5g、50%苛性ソーダ(NaOH)81.1gおよび水97.5gを混合してモノマー水溶液を製造した。
【0104】
その後、前記モノマー水溶液800gを0.26%アスコルビン酸溶液56.4gと、2.1%過硫酸ナトリウム溶液57.4gを混合して0.7%過酸化水素溶液56.2gと共に連続で重合を行いながらニーディングを行うことができる重合反応器の供給部を通じて投入して重合を実施した。この時、重合器の温度は80℃で維持し、重合の最高温度は110℃、重合時間は1分15秒である。その後、継続してニディンを実施して20分間重合とニディンを実施した。その後、生成された重合体の大きさは0.2cm以下に分布された。この時、最終形成された含水ゲル重合体の含水率は51重量%であった。
【0105】
その次に、前記含水ゲル重合体に対して180℃温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥された含水ゲル重合体をピンミル粉砕機で粉砕した。その後、ふるい(sieve)を用いて粒度(平均粒径大きさ)が150μm未満である重合体と粒度150μm乃至850μmの重合体を分級した。
【0106】
その後、製造されたベースポリマーに対して1,3-プロパンジオール0.5重量%およびプロピレングリコール0.5重量%を含む表面処理溶液を噴射して高吸水性樹脂の表面を処理した。また、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を一つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間含水ゲル重合体の表面架橋反応を行った。この時、ベースポリマー(Resin)の温度を直接モニターした値を表2に示した。
【0107】
前記表面処理後、ふるい(sieve)を用いた工程を通じて平均粒径大きさ150乃至850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂の製品に150μm以下の含量は2%未満であった。
【0108】
実施例2?4および比較例1?4
下記表2に示したような反応時間、反応温度、昇温条件などを異にしたことを除いては、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。」(第20ページ第14行ないし第21ページ第13行)

・「【0123】
(5)ゲル強度(Gel Strength)
実施例1?4および比較例1?4の高吸水性樹脂に対して、次のような方法によってゲル強度(GelStrength)を測定した。
【0124】
まず、実施例1?4および比較例1?4で得られた樹脂試料(30?50Mesh)をふるいに掛けて0.5gを秤量した。秤量された試料を0.9%Nacl溶液50gに1時間十分に膨潤させた。その後に、ろ過紙(Filter Paper)が覆われているブフナー漏斗(Buchner funnel)の上に膨潤されたゲル(Gel)を広げて置いて真空で3分間残っている流体を除去した。前記ゲル(Gel)はテストが準備されるまで密閉された容器に維持させた。
【0125】
前記ゲル(Gel)をレオメータ(Rheometer)と平行板の間に置く前にテスティング(Testing)する間に粒子の間の残存する水がないようにろ過紙(Filter Paper)で吸い込んだ。
【0126】
前記膨潤されたゲル(Gel)2gを持ってレオメータ(Rheometer)で測定実行した。この時、レオメータの試験条件は、Plate Gap Size 2mm;Strain amplitude 1%;Oscilation frequency 10 radian/sec;ambient tempeature 22℃;plate 25mm、TA Instruments-AR Seriesで測定した。測定値は5分間測定した後に平均値を取った。」(第23ページ第22行ないし第24ページ第8行)

・「【0127】
【表2】

【0128】
上記表2に示したように、本発明による実施例1?4の高吸水性樹脂は比較例1?4に比べて向上した通液性および優れた吸水性を示し、超薄型技術が適用されたおむつなどを生産することができる。」(第24ページ第10ないし14行)

(2)甲12に記載された発明
甲12には、実施例1として、以下の発明が記載されている。
なお、甲12に記載される「ニディン」は、「ニーディング」の誤訳として認定した。

<甲12発明>
「アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.5g、50%苛性ソーダ(NaOH)81.1gおよび水97.5gを混合してモノマー水溶液を製造し、前記モノマー水溶液800gを0.26%アスコルビン酸溶液56.4gと、2.1%過硫酸ナトリウム溶液57.4gを混合して0.7%過酸化水素溶液56.2gと共に連続で重合を行いながらニーディングを行うことができる重合反応器の供給部を通じて投入して重合を実施し、この時、重合器の温度は80℃で維持し、重合の最高温度は110℃、重合時間は1分15秒であり、その後、継続してニーディングを実施して20分間重合とニーディングを実施し、
その次に、前記含水ゲル重合体に対して180℃温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥された含水ゲル重合体をピンミル粉砕機で粉砕し、その後、ふるい(sieve)を用いて粒度(平均粒径大きさ)が150μm未満である重合体と粒度150μm乃至850μmの重合体を分級し、
その後、製造されたベースポリマーに対して1,3-プロパンジオール0.5重量%およびプロピレングリコール0.5重量%を含む表面処理溶液を噴射して高吸水性樹脂の表面を処理し、前記表面を処理する段階で、分級された含水ゲル状重合体を一つの表面架橋反応器に供給し、180℃以上の温度で40分間含水ゲル重合体の表面架橋反応を行い、
前記表面処理後、ふるい(sieve)を用いた工程を通じて平均粒径大きさ150乃至850μmの表面処理された高吸水性樹脂であって、
CRC30.2g/gであり、AUPは25.7g/gであり、水平方向ゲル強度G’は8,773Paであり、かつSFCは29(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であるものを得る方法。」

3 本件特許発明8と甲12に記載された発明との対比・検討
甲12における「ゲル強度」は、本件特許発明8の「水平方向ゲル強度G’」に相当し、甲12の明細書の記載から、甲12におけるゲル強度は、「30?50メッシュ」でふるいにかけ、秤量された試料を0.9%Nacl溶液50gに1時間膨潤させて測定するものである。
甲12発明で得られた高吸水性樹脂に関し、本件特許発明8に係る式aの左辺の値は55.7、式bの左辺の値は84.3と計算される。

そうすると、本件特許発明8と甲12発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、
前記高吸水性樹脂は、下記式aの関係式を満たす、
【数1】
[式a](省略)
上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示す、高吸水性樹脂の製造方法。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点21>
ベース樹脂に関し、本件特許発明8は、「表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有」するのに対し、甲12発明には、そのようには特定されない点。

<相違点22>
高吸水性樹脂の生理食塩水に対する生理食塩水流れ誘導性(SFC)に関し、本件特許発明8は、「40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)」であるのに対し、甲12発明は、「29」である点。

<相違点23>
表面架橋に係る温度条件に関し、本件特許発明8は、「表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され」るのに対し、甲12発明は、「180℃以上の温度で40分間含水ゲル重合体の表面架橋反応を行」うと特定される点。

<相違点24>
本件特許発明8は、式bの関係式の左辺は「115?145」である一方、甲12発明は、「84.3」と特定され、式bの関係を満たさない点。

事案に鑑み、相違点21及び23について検討する。
相違点21に関し、甲12には、表面架橋前の水平方向ゲル強度(G’)に関する記載も示唆もなく、高吸水性樹脂のG’を表面架橋前に取得することは、当業者にとって技術常識ともいえないし、その採用に関する動機付けもない。
そして、高吸水性樹脂の製造方法において、本件特許発明8の相違点21に係る特定事項である、表面架橋前の水平方向ゲル強度(G’)を所期の値に調整することによって、架橋後の式a及びbの関係を満たす高吸水性樹脂を得、その結果、所望のCRC、AUP、G’及びSFCの値を有する高吸水性樹脂が得ることができるという甲12発明からみて格別顕著な効果を奏するものである。
また、相違点23に関し、水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂において、表面架橋条件は高吸水性樹脂の性能に大きく影響するところ、甲12には、相違点23に係る温度プロファイルの操作について、記載も示唆もなされておらず、相違点23に係る特定事項を甲12発明に適用することは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件特許発明8は、「保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たし」、「おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる」という甲12発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、相違点22及び24を検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 令和3年1月22日に特許異議申立人が提出した意見書において主張する新たな取消理由についてのまとめ
したがって、特許異議申立人が提出した意見書において主張する、甲12に基づく新たな取消理由によっては、本件特許の請求項8に係る特許を取り消すことはできない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、本件特許の請求項8に係る特許を取り消すことはできないし、他に取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、本件訂正の請求により削除された。これにより、請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高吸水性樹脂の製造方法
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年6月12日付韓国特許出願第10-2014-0071547号、2014年12月10日付韓国特許出願第10-2014-0177736号、および2015年6月11日付韓国特許出願第10-2015-0082881号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、保水能、加圧吸水能、通液性およびゲル強度が最適化されて、全体的にバランスが取れており、より優れた物性を示す高吸水性樹脂に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百?1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なるように命名している。このような高吸水性樹脂は、生理用具として実用化し始め、現在は乳幼児用紙おむつなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水材、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における新鮮度保持剤、および湿布用などの材料として幅広く使用されている。
【0004】
最も多い場合に、このような高吸水性樹脂は、おむつや生理用ナプキンなど衛生材分野で幅広く使用されているが、このような用途のために水分などに対する高い吸収力を示す必要があり、外部の圧力にも吸収された水分が抜け出ず、これに加えて、水を吸収して体積膨張(膨潤)された状態でも形態をよく維持して優れた通液性(permeability)を示す必要がある。
【0005】
特に、前記高吸水性樹脂がおむつなど衛生材に使用されてより優れた物性および性能を示すためには、前述した吸収力、圧力下の吸水維持力および形態維持力(通液性)などをバランスよくすべて優秀に示す必要があるところ、以前からこれらの諸般物性をバランスよく向上させるための多様な研究が行われてきている。
【0006】
特に、最近は高吸水性樹脂の形態維持力(通液性)の向上がより大きく要求されているが、このような通液性などの向上のためには適切な方向のゲル強度がより高く現れることが要求される。これは前記ゲル強度が大きい高分子は、水を吸収することによって体積が増加してもその形態をよく維持することができるためである。しかし、以前は通液性と直接的関連性がある適切な方向のゲル強度を高い信頼性で測定する方法が好ましく提案されていないだけでなく、優れた通液性に対応する優れたゲル強度と共に、前記吸収力および圧力下の吸水維持力を適切な水準に維持する高吸水性樹脂は好ましく開発されていないのが事実である。
【0007】
そのため、まだこれらの3つの側面の物性のすべてを優秀に示す高吸水性樹脂は、好ましく開発されていない実情であり、これによって高吸水性樹脂の物性向上に関する継続的な研究が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国公開特許第2009-0131255号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Reinhold Schwalmの著書「UV Coatings:Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」のp115
【非特許文献2】Odianの著書「Principle of Polymerization(Wiley, 1981)」のp203
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、保水能、加圧吸水能、通液性およびゲル強度が最適化されて、全体的にバランスがよく、より優れた物性を示す高吸水性樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、下記式aの関係式を満たし、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記表面架橋は、前記ベース樹脂に表面架橋剤を添加して表面架橋反応を行うとき、表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行される、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【数1】

上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示す。
【0012】
このような高吸水性樹脂は、各物性が下記式bの関係式を満たす。
【数2】

上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す。
【0013】
前記高吸水性樹脂は、CRCが約26?32g/gになることができ、AUPが約22?26g/gになることができ、水平方向ゲル強度G’が約6,000?12,000Pa、あるいは約7,000?12,000Paになることができる。また、前記高吸水性樹脂は、生理食塩水に対する生理食塩水流れ誘導性(SFC)が約40?約85・10^(-7)cm^(3)・s/gあるいは約50?約75・10^(-7)cm^(3)・s/gになることができる。
【0014】
この時、前記高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度G’は、
30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させて膨潤させる段階;
前記膨潤された高吸水性樹脂を所定の間隔を有するレオメーターのプレートの間に位置させ、両プレート面を加圧する段階;
振動下のレオメーターを用いて剪断変形(shear strain)を増加させながら、貯蔵弾性率(storage modulus)と、損失弾性率(loss modulus)が一定の線状粘弾性状態(linear viscoelastic regime)区間の剪断変形を確認する段階;および
前記確認された剪断変形下で前記膨潤された高吸水性樹脂の貯蔵弾性率と、損失弾性率をそれぞれ測定し、前記貯蔵弾性率の平均値をゲル強度として測定する段階を含む方法で測定され得る。
【0015】
一方、前記高吸水性樹脂において、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メト)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メト)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メト)アクリルアミド、N-置換(メト)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メト)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メト)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メト)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メト)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メト)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0016】
そして、前記ベース樹脂は、炭素数8?12のビス(メト)アクリルアミド、炭素数2?10のポリオールのポリ(メト)アクリレートおよび炭素数2?10のポリオールのポリ(メト)アリルエーテルからなる群より選択された1種以上の内部架橋剤の存在下に、前記単量体が架橋重合された高分子を含むことができる。
【0017】
また、前記高吸水性樹脂の架橋重合体は、炭素数2?8のジオールまたはポリオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂の表面を架橋させて得られたものになることができる。
【0018】
付加して、前記高吸水性樹脂は、約150?850μmの粒径を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の具体的な実施形態による高吸水性樹脂などについてより詳細に説明する。ただし、これは発明の一つの例示として提示されるものであり、これによって発明の権利範囲が限定されるのではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0020】
追加的に、本明細書全体で特別な言及がない限り、「含む」または「含有する」とは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なしに含むことを称し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くと解釈されてはならない。
【0021】
発明の一実施形態によれば、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂であって、下記式1の関係式を満たす高吸水性樹脂が提供される。
【0022】
【数3】

【0023】
上記式1中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、前記高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示す。
【0024】
また、このような一実施形態の高吸水性樹脂は、各物性が下記式2の関係式を満たすことができる。
【0025】
【数4】

【0026】
上記式2中、AUP、CRC、G’は、式1で定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す。
【0027】
高吸水性樹脂の物性をバランスよく向上させるために本発明者らが研究を継続した結果、後述する高吸水性樹脂の製造工程の条件、例えば、後述する内部架橋剤の種類、含有量および内部架橋重合の条件や、表面架橋剤の種類および表面架橋条件などの進行方法などを最適化することによって、内部および表面架橋構造が最適化した高吸水性樹脂が得られることが確認された。
【0028】
このように架橋構造などが最適化した高吸水性樹脂は、その基本的な吸収力を反映する遠心分離保水能(CRC)と、圧力下の吸水維持力を反映する加圧吸水能(AUP)を共に優秀に発現および維持できることが確認された。また、高吸水性樹脂は、前記水平方向ゲル強度(G’)が優秀に現れることによって、衛生材内で水分吸収および膨潤された後にもその形態を維持する特性に優れており、その結果、このような高吸水性樹脂を通じて液体が良好に流動して優れた通液性を示すことができることが確認された。
【0029】
このような保水能(CRC)、加圧吸水能(AUP)、通液性(生理食塩水流れ誘導性;SFC)および水平方向ゲル強度(G’)がバランスよく全体的に優れた特性を示すことによって、上記式1のように、これらから導き出される関係式が約15Pa^(2)以上、あるいは約15?100Pa^(2)、あるいは約25?95Pa^(2)の値を満たすことが確認された。また、これと共に、上記式2のような関係式が100以上、あるいは約100?約150、好ましくは、約115?約145の値を満たすことが確認された。
【0030】
このように、一実施形態の高吸水性樹脂は、これに要求される吸収力、圧力下の吸水維持力および形態維持力(通液性)などの諸般物性のすべてをバランスよく優秀に示すことによって、おむつおよび生理用ナプキンなど各種衛生材に適用された時、非常に優れた性能の発現を可能にし、ひいては、超薄型技術が適用された次世代おむつなどを提供することができるようにする。
【0031】
一方、前記高吸水性樹脂は、遠心分離保水能(CRC)が約25?35g/g、あるいは約26?32g/gになることができる。
【0032】
この時、前記生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)は、高吸水性樹脂を30分にかけて生理食塩水に吸収させた後、次のような計算式1により算出され得る。
【0033】
[計算式1]
CRC(g/g)={[W_(2)(g)-W_(1)(g)-W_(0)(g)]/W_(0)(g)}
前記計算式1中、
W_(0)(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、W_(1)(g)は、高吸水性樹脂を使用せず、生理食塩水に30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した装置重量であり、W_(2)(g)は、常温で生理食塩水に高吸水性樹脂を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後、高吸水性樹脂を含んで測定した装置重量である。
【0034】
また、一方、前記高吸水性樹脂は、前記加圧吸水能(AUP)が約21?30g/g、あるいは約22?26g/gになることができる。
【0035】
このような加圧吸水能(AUP)は、高吸水性樹脂を1時間にかけて約0.7psiの加圧下に生理食塩水に吸収させた後、下記計算式2により算出され得る。
【0036】
[計算式2]
AUP(g/g)=[W_(4)(g)-W_(3)(g)]/W_(0)(g)
前記計算式2中、
W_(0)(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、W_(3)(g)は、高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与できる装置重量の総和であり、W_(4)(g)は、荷重(0.7psi)下に1時間にかけて前記高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させた後、高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与できる装置重量の総和である。
【0037】
一実施形態の高吸水性樹脂が前述した範囲の遠心分離保水能(CRC)および加圧吸水能(AUP)を示すことによって、前記高吸水性樹脂の基本的な吸収力および圧力下の吸水維持力などが優秀に発現して各種衛生材に適合に用いることができる。
【0038】
一方、前記一実施形態の高吸水性樹脂は、前述したCRCおよびAUPと共に、水平方向ゲル強度G’が約6,000?12,000Pa、あるいは約7,000?12,000Paである特性を示すことができる。
【0039】
前記水平方向ゲル強度G’は、本発明者らが新たに測定した高吸水性樹脂の物性であり、前記高吸水性樹脂の実際の使用環境下での優れた通液性をよりよく反映することができる。つまり、従来は主に高吸水性樹脂に垂直方向に力を加えながら高吸水性樹脂の垂直方向ゲル強度を測定したが、通常、高吸水性樹脂の通液性は、このような高吸水性樹脂がおむつなど衛生材に含まれた場合、水平方向に加えられる力にもかかわらず、優れた形態維持性および高いゲル強度を示しているか否かにより一層関連性高く決定されることが明らかになった。
【0040】
そのため、本発明者らは、このような高吸水性樹脂の実際の使用環境下での優れた通液性をより効果的に反映および予測できる新たなパラメータの測定方法を考案しており、このようなパラメータが前記水平方向ゲル強度G’である。
【0041】
このような水平方向ゲル強度G’が前述した範囲を満たす一実施形態の高吸水性樹脂は、前述のような優れたCRCおよびAUPと共に、優れた通液性を示すことによって、おむつなど衛生材に非常に好適に使用可能であることが確認された。
【0042】
このような水平方向ゲル強度G’は、高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水を吸収させた後、商用化されたレオメーターを用いて次の各段階を含む方法で測定され得る。
【0043】
1)30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させて膨潤させる段階と、
2)前記膨潤された高吸水性樹脂を所定の間隔を有するレオメーターのプレートの間に位置させ、両プレート面を加圧する段階と、
3)振動下のレオメーターを用いて剪断変形を増加させながら、貯蔵弾性率(storage modulus)と、損失弾性率(loss modulus)が一定の線状粘弾性状態(linear viscoelastic regime)区間の剪断変形を確認する段階と、
4)前記確認された剪断変形下で前記膨潤された高吸水性樹脂の貯蔵弾性率と、損失弾性率をそれぞれ測定し、前記貯蔵弾性率の平均値をゲル強度として測定する段階と、を含む方法。
【0044】
このような方法下に測定された水平方向ゲル強度G’が前述した高い範囲を満たす高吸水性樹脂は、前述したCRCと、AUP間の関係において前述した式1の関係を満たすことができ、CRC、AUPおよびSFCの関係において式2の関係を満たすことができる。そのため、高吸水性樹脂に要求される全般的な物性がバランスよく優秀に現れるため、おむつなど衛生材に非常に適合に使用され得る。
【0045】
付加して、一実施形態の高吸水性樹脂は、生理食塩水に対する生理食塩水流れ誘導性(SFC)が約40?約85・10^(-7)cm^(3)・s/gあるいは約50?約75・10^(-7)cm^(3)・s/gでありうる。このような生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、以前から当業者によく知られた方法、例えば、米国公開特許第2009-0131255号のコラム16の[0184]?[0189]に開示された方法により測定および算出することができる。また、このようなSFCの測定値に基づいて前述した式2の左辺値を算出することにおいては、「・10^(-7)cm^(3)・s/g」のスケールおよび単位部分を除き、式2の左辺に代入して算出することができる。
【0046】
一方、一実施形態の高吸水性樹脂は、代表的に少なくとも一部のカルボン酸がナトリウム塩などで中和されたアクリル酸のように、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させて得ることができる。より具体的に、前記高吸水性樹脂は、前記単量体を内部架橋剤の存在下に架橋重合させて粉末形態のベース樹脂を得た後、所定の表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を製造することによって得ることができる。
【0047】
このような高吸水性樹脂は、内部架橋構造を有するアクリル酸など水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体粒子の形態になることができ、このような架橋重合体粒子の表面が一層架橋されて架橋度が一層向上した形態になることができる。以下でより詳細に説明するが、一実施形態の高吸水性樹脂は、内部架橋工程や表面架橋工程などが最適化されて、より適切な内部および表面架橋構造を有することによって、前述した一実施形態の諸般物性を示すことができる。
【0048】
このような高吸水性樹脂において、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メト)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メト)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メト)アクリルアミド、N-置換(メト)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メト)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メト)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メト)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メト)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メト)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メト)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を含むことができる。この中でも、アクリル酸またはその塩、例えば、アクリル酸の少なくとも一部が中和されたアクリル酸および/またはそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩を用いることができるが、このような単量体を用いてより優れた物性を有する高吸水性樹脂の製造が可能になる。前記アクリル酸のアルカリ金属塩を単量体として用いる場合、アクリル酸を苛性ソーダ(NaOH)のような塩基性化合物で中和させて用いることができる。
【0049】
また、このような単量体を架橋重合するための内部架橋剤としては、炭素数8?12のビス(メト)アクリルアミド、炭素数2?10のポリオールのポリ(メト)アクリレートおよび炭素数2?10のポリオールのポリ(メト)アリルエーテルからなる群より選択された1種以上を用いることができる。より具体的に、前記内部架橋剤としては、ポリエチレングリコールジ(メト)アクリレート、ポリプロピレンオキシジ(メト)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレートおよびトリメチロールトリアクリレートからなる群より選択された一つ以上のポリオールのポリ(メト)アクリレートを適切に用いることができる。この中でも、前記ポリエチレングリコールジ(メト)アクリレートなどの内部架橋剤を用いることによって、内部架橋構造がより最適化したベース樹脂および高吸水性樹脂が得られることが確認されており、これによって一実施形態の物性を満たす高吸水性樹脂がより適切に得られることが明らかになった。
【0050】
より具体的に、このような特定の内部架橋剤を一定の含有量で用いることによって、表面架橋前のゲル強度(G’;Pa)が約4500Pa以上、あるいは約4600Pa以上、あるいは約4600?7000Paであるベース樹脂を得ることができ、これに対して後述する特定の条件下に表面架橋段階を行うことによって、式1および/または2の関係を満たす一実施形態の高吸水性樹脂を得ることができる。
【0051】
例えば、前記特定の内部架橋剤を単量体に含まれている未中和状態のアクリル酸1モルを基準に、約0.005モル以上、あるいは約0.005?0.1モル、あるいは約0.005?0.05モル(あるいはアクリル酸の100重量部に対して約0.3重量部以上、あるいは約0.3?0.6重量部)の比率で用いることができる。このような内部架橋剤の含有量範囲により、表面架橋前のゲル強度(G’;Pa)が約4500Pa以上であるベース樹脂を適切に得ることができ、これを用いて式1および/または2の関係を満たす一実施形態の高吸水性樹脂を得ることができる。
【0052】
そして、前記内部架橋剤を用いて単量体を重合させた後は、乾燥、粉砕および分級などの工程を経て粉末形態のベース樹脂を得ることができるが、このような粉砕および分級などの工程を通じて、ベース樹脂およびこれから得られる高吸水性樹脂は、約150?850μmの粒径を有するように製造および提供されることが適切である。より具体的に、前記ベース樹脂およびこれから得られる高吸水性樹脂の少なくとも約95重量%以上が約150?850μmの粒径を有し、約150μm未満の粒径を有する微粉が約3重量%未満、あるいは約1重量%未満になることができる。
【0053】
このように前記ベース樹脂および高吸水性樹脂の粒径分布が好ましい範囲に調節されることによって、前記一実施形態の高吸水性樹脂が前述した物性およびより優れた通液性を示すことができる。
【0054】
また、一実施形態の高吸水性樹脂は、前記ベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含むようになるが、このような表面架橋は、炭素数2?8のジオールまたはポリオールを含む表面架橋剤の存在下に行われ得る。このような表面架橋剤の存在下に、表面架橋を行うことによって、表面架橋構造が最適化した一実施形態の高吸水性樹脂が適切に得られ、このような高吸水性樹脂が前述した式1および2の関係式など前述した諸般物性をより適切に満たすことができる。
【0055】
このような表面架橋剤として使用可能な炭素数2?8のジオールまたはポリオールのより適切な例としては、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、または2-メチル-2,4-ペンタンジオールなどが挙げられ、これらの中で選択された2種以上を共に用いることもできることはもちろんである。
【0056】
また、前記表面架橋剤と共に、多価の金属陽イオンを添加して表面架橋を行うことによって、高吸水性樹脂の表面架橋構造をより最適化することができる。これはこのような金属陽イオンが高吸水性樹脂のカルボキシ基(COOH)とキレートを形成することによって架橋距離をより減らすことができるためと予測される。
【0057】
一方、以下で前述した一実施形態の高吸水性樹脂、より具体的に、式1および2の関係式など前述した諸般物性を満たす高吸水性樹脂を製造できる方法について各段階別により具体的に説明する。ただし、前述した単量体、内部架橋剤、表面架橋剤および粒径分布などについては重複説明を省略し、残りの工程構成および条件を段階別に説明する。
【0058】
前記高吸水性樹脂の製造方法は、水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階と、を含むことができる。特に、このような製造方法のうち、前述した内部架橋剤、表面架橋剤および粒径分布を適用する一方、後述する内部および/または表面架橋剤の含有量や、これらを用いた架橋重合工程および/または表面架橋工程などの進行条件を最適化することによって、式1および2の関係式などの諸般物性を満たす一実施形態の高吸水性樹脂が得られる。
【0059】
このような製造方法において、前記単量体組成物は、水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含むが、前記単量体の種類に関しては前述したとおりである。
【0060】
また、このような組成物のうち、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、前述した各原料物質および溶媒を含む単量体組成物全体に対して約20?約60重量%、あるいは約40?約50重量%になることができ、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度になることができる。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなれば、高吸水性樹脂の収率が低く、経済性に問題が生じることがあり、反対に濃度が過度に高くなれば、単量体の一部が析出されたり重合された含水ゲル状重合体の粉砕時に粉砕効率が低く示されるなど、工程上の問題が生じることがあり、高吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0061】
また、前記重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般に用いられるものであれば、特に限定されない。
【0062】
具体的に、前記重合開始剤は、重合方法により熱中合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を用いることができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの照射により一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するため、追加的に熱中合開始剤を含むこともできる。
【0063】
前記光重合開始剤は、紫外線のような光によりラジカルを形成することができる化合物であれば、その構成の限定なしに用いることができる。
【0064】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を用いることができる。一方、アシルホスフィンの具体的な例としては、商用のlucirin TPO、つまり、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を用いることができる。より多様な光開始剤に対しては、Reinhold Schwalmの著書「UV Coatings:Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」のp115に明示されており、前述した例に限定されない。
【0065】
前記光重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.01?約1.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の濃度が過度に高い場合、高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になることがある。
【0066】
また、前記熱中合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を用いることができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na_(2)S_(2)O_(8))、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K_(2)S_(2)O_(8))、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH_(4))_(2)S_(2)O_(8))があり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱中合開始剤に対しては、Odianの著書「Principle of Polymerization(Wiley, 1981)」のp203によく明示されており、前述した例に限定されない。
【0067】
前記熱中合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.001?約0.5重量%の濃度で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱中合がほとんど起こらず、熱中合開始剤の追加による効果が微小であるおそれがあり、熱中合開始剤の濃度が過度に高い場合、高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になることがある。
【0068】
そして、前記単量体組成物に共に含まれる内部架橋剤の種類については前述したとおりであり、このような内部架橋剤は、前記単量体組成物に対して約0.01?約0.5重量%の濃度で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。また、前述のように、前記内部架橋剤は単量体中に含まれている未中和状態のアクリル酸1モルを基準に、約0.005モル以上、あるいは約0.005?0.1モル、あるいは約0.005?0.05モル(あるいはアクリル酸の100重量部に対して約0.3重量部以上、あるいは約0.3?0.6重量部)の比率で用いることができる。このような内部架橋剤がこのような含有量範囲で用いられることによって、前述した表面架橋前のゲル強度の範囲を適切に満たすことができ、これを用いて前述した一実施形態の物性をより適切に満たす高吸水性樹脂が製造され得る。
【0069】
また、前記単量体組成物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0070】
前述した水溶性エチレン系不飽和単量体、光重合開始剤、熱中合開始剤、内部架橋剤および添加剤のような原料物質は、溶媒に溶解された単量体組成物溶液の形態で準備され得る。
【0071】
この時、使用可能な前記溶媒は、前述した成分を溶解することができればその構成の限定なしに用いることができ、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
前記溶媒は、単量体組成物の総含有量に対して前述した成分を除いた残量で含まれ得る。
【0073】
一方、このような単量体組成物を熱中合または光重合して含水ゲル状重合体を形成する方法も通常用いられる重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0074】
具体的に、重合方法は、重合エネルギー源により大きく熱中合および光重合に区分され、通常、熱中合を行う場合、ニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応機で行われ、光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応機で行われ得るが、前述した重合方法は一例に過ぎず、本発明は前述した重合方法に限定されない。
【0075】
一例として、前述のように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)のような反応機に、熱風を供給したり反応機を加熱して熱中合して得られた含水ゲル状重合体は、反応機に具備された攪拌軸の形態により、反応機排出口で排出される含水ゲル状重合体は、数cm?数mmの形態でありうる。具体的に、得られる含水ゲル状重合体の大きさは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などにより多様に現れ得るが、通常、重量平均粒径が約2?50mmである含水ゲル状重合体が得られる。
【0076】
また、前述のように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応機で光重合を行う場合、通常、得られる含水ゲル状重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル状重合体でありうる。この時、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度により変わるが、通常、約0.5?約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低くて好ましくなく、シート状の重合体の厚さが5cmを超える場合には、過度に厚い厚さのため、重合反応が厚さの全体にかけて均一に起こらないことがある。
【0077】
この時、このような方法で得られた含水ゲル状重合体の通常の含水率は、約40?約80重量%でありうる。一方、本明細書全体で「含水率」とは、含水ゲル状重合体の全体重量に対して占める水分の含有量であり、含水ゲル状重合体の重量で乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じて重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、約180℃で維持する方式であり、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分と設定して、含水率を測定する。
【0078】
次に、得られた含水ゲル状重合体を乾燥する段階を行う。
【0079】
この時、必要に応じて前記乾燥段階の効率を高めるために乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。
【0080】
この時、用いられる紛砕機の構成に限定はないが、具体的に、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式紛砕機(Rotary cutter mill)、切断式紛砕機(Cutter mill)、円板紛砕機(Disc mill)、断片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパー(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、前述した例に限定されない。
【0081】
この時、粗粉砕段階は、含水ゲル状重合体の粒径が約2?約10mmになるように粉砕することができる。
【0082】
粒径を2mm未満に粉砕するのは、含水ゲル状重合体の高い含水率のため技術的に容易でなく、また粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径を10mm超過に粉砕する場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果が微小である。
【0083】
前記のように粗粉砕されたり、あるいは粗粉砕段階を経なかった重合直後の含水ゲル状重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は、約150?約250℃でありうる。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下するおそれがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面だけが乾燥されて、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下するおそれがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は、約150?約200℃の温度で、より好ましくは、約160?約180℃の温度で行われ得る。
【0084】
一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20?約90分間行われ得るが、これに限定されない。
【0085】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程として通常用いられるものであれば、その構成の限定なしに選択して用いることができる。具体的に、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行うことができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1?約10重量%でありうる。
【0086】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体を粉砕する段階を行う。
【0087】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が約150?約850μmでありうる。このような粒径に粉砕するために用いられる紛砕機は、具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョッグミル(jog mill)などを用いることができるが、前述した例に限定されない。
【0088】
そして、このような粉砕段階の以降に最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径に応じて分級する別途の過程を経ることができる。好ましくは、粒径が約150?約850μmである重合体を分級して、このような粒径を有する重合体粉末だけに対して表面架橋反応段階を経て製品化することができる。このような過程を通じて得られたベース樹脂の粒径分布に関しては前述したため、これに関するそれ以上の具体的な説明は省略する。
【0089】
前述したベース樹脂の表面架橋前の水平方向ゲル強度(G’)は、約4500Pa以上、あるいは約4600Pa以上、あるいは約4600?7000Paである範囲を満たすことができ、表面架橋前のベース樹脂のゲル強度が前記範囲にある場合、後述する表面架橋反応を通じて製造される高吸水性樹脂が、前記物性や、式1および2の関係を満たすことができる。
【0090】
一方、前述した粉砕および/または分級工程を経てベース樹脂を得た後は、表面架橋工程を通じて一実施形態の高吸水性樹脂を製造することができる。このような表面架橋工程で使用可能な表面架橋剤の種類に関しては前述したため、関連説明は省略する。
【0091】
前記表面架橋剤をベース樹脂に添加する方法についてはその構成の限定はない。例えば、表面架橋剤とベース樹脂を反応槽に入れて混合したり、ベース樹脂に表面架橋剤を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーにベース樹脂と表面架橋剤を連続的に供給して混合する方法などを用いることができる。
【0092】
前記表面架橋剤の添加時、追加的に水およびメタノールを共に混合して添加することができる。水およびメタノールを添加する場合、表面架橋剤がベース樹脂に均一に分散可能な利点がある。この時、追加される水およびメタノールの含有量は、表面架橋剤の均一な分散を誘導し、ベース樹脂粉末の凝集現象を防止すると同時に、架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的でベース樹脂100重量部に対する添加比率を調節して適用することができる。
【0093】
前記表面架橋剤が添加されたベース樹脂粉末に対して約160℃以上、あるいは約180?200℃で約20分以上加熱させることによって表面架橋結合反応が行われ得る。特に、一実施形態による物性をより適切に満たす高吸水性樹脂を製造するために、前記表面架橋工程条件は、最大反応温度約180?200℃、最大反応温度での維持時間約20分以上、あるいは約20分以上1時間以下、あるいは約20分?50分の条件になることができる。また、最初反応開始時の温度、つまり、表面架橋剤を含む反応液とベース樹脂の初期混合温度である約60℃以上、あるいは約100?170℃の温度で、前記最大反応温度に至るまでの昇温時間を約10分以上、あるいは約10分以上60分以下、あるいは約10分以上40分以下に制御することができ、前述した表面架橋工程条件の充足により一実施形態の物性を適切に満たす高吸水性樹脂が製造され得ることが確認された。
【0094】
表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給したり、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱油のような昇温した流体などを用いることができるが、これに限定されず、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては、電気を通じた加熱、ガスを通じた加熱方法が挙げられるが、前述した例に限定されない。
[発明の効果]
前述した製造方法により得られた高吸水性樹脂は、保水能と加圧吸水能などの物性を低下させることなく、優れた水平方向ゲル強度および通液性などを満たして、式1および2の関係式などを満たすことができ、おむつなど衛生材に適切に使用可能な優れた諸般物性を示すことができる。
【0095】
本発明によれば、高吸水性樹脂の製造工程、例えば、内部および/または表面架橋工程などを制御して、基本的な吸収力を反映する遠心分離保水能(CRC)と、圧力下の吸水維持力を反映する加圧吸水能(AUP)を共に優れるように発現および維持できながらも、水平方向ゲル強度(G’)が優秀に現れることによって、衛生材内で水分吸収および膨潤された後にもその形態を維持する特性に優れ、生理食塩水流れ誘導性(通液性;SFC)に優れた、高吸水性樹脂が提供され得る。
【0096】
このような高吸水性樹脂は、前記保水能(CRC)、加圧吸水能(AUP)、水平方向ゲル強度(G’)および通液性がバランスよく全体的に優れた特性を示すことによって、前述した式1および2のような関係式の物性を満たすことができる。
【0097】
このように、本発明の高吸水性樹脂がこれに要求される吸収力、圧力下の吸水維持力および形態維持力(通液性)などの諸般物性のすべてをバランスよく優秀に示すことによって、おむつおよび生理用ナプキンなど各種衛生材に適用された時、非常に優れた性能の発現を可能にし、ひいては、超薄型技術が適用された次世代おむつなどを提供することができるようにする。
【実施例】
【0098】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されない。
【0099】
以下の実施例および比較例で、各高吸水性樹脂の物性は次の方法で測定および評価した。
【0100】
(1)粒径評価
実施例および比較例で用いられたベース樹脂および高吸水性樹脂の粒径は、ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP 220.3方法により測定した。
【0101】
(2)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP 241.3により実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、無荷重下の吸水倍率による遠心分離保水能(CRC)を測定した。
【0102】
つまり、実施例および比較例の樹脂W_(0)(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液になる生理食塩水に浸水した。30分後に封筒を遠心分離機を用いて250Gで3分間水気を除去した後に封筒の質量W_(2)(g)を測定した。また樹脂を利用せずに同一の操作を行った後にその時の質量W_(1)(g)を測定した。
【0103】
このように得られた各質量を用いて次の計算式1によりCRC(g/g)を算出して保水能を確認した。
【0104】
[計算式1]
CRC(g/g)={[W_(2)(g)-W_(1)(g)-W_(0)(g)]/W_(0)(g)}
前記計算式1中、
W_(0)(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、
W_(1)(g)は、高吸水性樹脂を使用せず、生理食塩水に30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した装置重量であり、
W_(2)(g)は、常温で生理食塩水に高吸水性樹脂を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後、高吸水性樹脂を含んで測定した装置重量である。
【0105】
(3)加圧吸水能(Absorbing under Pressure、AUP)
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association)規格EDANA WSP 242.3の方法により加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)を測定した。
【0106】
まず、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製の400メッシュ鉄網を装着させた。23±2℃の温度および45%の相対湿度条件下で鉄網上に実施例1?6および比較例1?3で得られた樹脂W_(0)(g、0.90g)を均一に散布し、その上に4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一にさらに付与できるピストン(piston)は、外径が60mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨害されないようにした。この時、前記装置の重量W_(3)(g)を測定した。
【0107】
直径150mmのペトロ皿の内側に直径125mで厚さ5mmのガラスフィルターを置き、0.90重量%塩化ナトリウムから構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一のレベルになるようにした。その上に直径120mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間吸収した。1時間後、測定装置を持ち上げ、その重量W_(4)(g)を測定した。
【0108】
このように得られた各質量を用いて次の計算式2によりAUP(g/g)を算出して加圧吸水能を確認した。
【0109】
[計算式2]
AUP(g/g)=[W_(4)(g)-W_(3)(g)]/W_(0)(g)
前記計算式2中、
W_(0)(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、
W_(3)(g)は、高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与できる装置重量の総和であり、
W_(4)(g)は、荷重(0.7psi)下に1時間にかけて前記高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させた後、高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与できる装置重量の総和である。
【0110】
(4)ゲル強度(Gel Strength;G’)
実施例1?6および比較例1?3の高吸水性樹脂に対して、水平方向ゲル強度(Gel Strength)を測定した。
【0111】
まず、実施例1?6および比較例1?3の高吸水性樹脂試料(30?50Mesh)を篩に篩って0.5gを称量した。秤量された試料を生理食塩水50gに1時間にかけて十分に膨潤させた。その後、吸収されない溶媒は吸引器(aspirator)を用いて4分間除去し、表面につけた溶媒は濾過紙に均一に分布させて1回ぬぐい取った。
【0112】
膨潤された高吸水性樹脂試料2.5gをレオメーター(Rheometer)と2つの平行板(直径25mm、下部に2mm程度のサンプルが抜け出ないようにする壁がある)の間に置き、二つの平行板の間隔を1mmに調節した。この時、膨潤された高吸水性樹脂試料が平行板面にすべて接触するように約3Nの力で加圧して前記平行板の間隔を調節した。
【0113】
前記レオメーターを用いて10rad/sの振動周波数(Oscilation frequency)で、剪断変形を増加させながら、貯蔵弾性率(storage modulus)と、損失弾性率(loss modulus)が一定の線状粘弾性状態(linear viscoelastic regime)区間の剪断変形を確認した。一般に膨潤された高吸水性樹脂試料で、剪断変形0.1%は前記線状粘弾性状態区間内にある。
【0114】
一定した10rad/sの振動周波数(Oscilation frequency)で、線状粘弾性状態区間の剪断変形値で60秒間膨潤された高吸水性樹脂の貯蔵弾性率と、損失弾性率をそれぞれ測定した。この時、得られた貯蔵弾性率値を平均とし、水平方向ゲル強度を求めた。参考までに、損失弾性率は貯蔵弾性率に比べて非常に小さい値と測定される。
【0115】
(5)生理食塩水流れ誘導性(SFC;saline flow conductivity)
米国公開特許第2009-0131255号のコラム16の[0184]?[0189]に開示された方法により測定した。
【0116】
(実施例1)
アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.5g、50%苛性ソーダ(NaOH)83.3gおよび水89.8gを混合して、単量体濃度が45重量%であるモノマー水溶液組成物比を有するように製造した。
【0117】
以降、前記モノマー水溶液810gを先に、0.18%アスコルビン酸溶液30.54gと、1%過硫酸ナトリウム溶液33gを先に混合し、0.15%過酸化水素溶液30.45gと共に連続に重合を行いながらニーディングを行うことができる重合機の供給部を通じて投入して重合を実施した。この時、重合機の温度は80℃に維持し、重合の最高温度は110℃、重合時間は1分15秒である。以降、継続してニーディングを実施して20分間重合とニーディングを実施した。以降、生成された重合体の大きさは0.2cm以下に分布された。この時、最終形成された含水ゲル重合体の含水率は51重量%であった。
【0118】
次に、前記含水ゲル重合体に対して180℃温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥された含水ゲル重合体をピンミル紛砕機で粉砕した。その後、篩(sieve)を用いて粒径が約150μm未満である重合体と、粒径が約150μm?850μmである重合体を分級した。
【0119】
以降、製造されたベース樹脂に1,3-プロパンジオール5重量%およびプロピレングリコール5重量%を含む表面処理溶液を噴射し、常温で攪拌してベース樹脂に表面処理溶液が均一に分布するように混合した。以降、このようなベース樹脂を表面架橋反応機に入れて表面架橋反応を行った。このような表面架橋反応機内で、ベース樹脂は約160℃近傍の初期温度から漸進的に昇温することが確認され、約30分経過後に約185℃の最大反応温度に到達するように操作した。このような最大反応温度に到達した以降、約30分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような実施例1の表面架橋反応条件は、下記表1に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂の製品に約150μm以下の粒径を有する微粉の含有量は約2重量%未満であった。
【0120】
(実施例2?6)
表面架橋反応工程において、反応開始時のベース樹脂初期温度、最大反応温度、初期温度→最大反応温度の昇温時間および最大反応温度での維持時間のような表面架橋反応条件を下記表1のように異にしたことを除き、実施例1と同様な方法で実施例2?6の高吸水性樹脂を製造した。
【0121】
(比較例1?3)
表面架橋反応工程において、反応開始時のベース樹脂初期温度、最大反応温度、初期温度→最大反応温度の昇温時間および最大反応温度での維持時間のような表面架橋反応条件を下記表1のように異にしたことを除き、実施例1と同様な方法で比較例1?3の高吸水性樹脂を製造した。
【0122】
【表1】

【0123】
前記実施例1?6および比較例1?3の高吸水性樹脂に対してCRC、AUP、ゲル強度(G’)の物性測定および評価を行い、測定された物性値は下記表2に示すとおりである。また、前記測定されたCRC、AUP、ゲル強度から、式1の関係式の左辺値を算出して、下記表2に共に示した。
【0124】
【数5】

【0125】
【表2】

【0126】
前記表2に示したように、実施例1?6は、CRC、AUPおよびゲル強度が全般的に優れており、式1の値が15Pa^(2)以上である関係式を満たすことに比べ、比較例1?3は、前記3つの物性中の一つ以上が劣悪で、上記式1の関係式を満たすことができないことが確認された。特に、比較例1?3は、表面架橋工程での昇温条件または反応条件が実施例とは異なるものであり、実施例に比べてゲル強度またはAUPなどが劣悪で、通液性などが劣悪に現れると予測される。
【0127】
(実施例7)
アクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.5g、50%苛性ソーダ(NaOH)83.3gおよび水89.8gを混合して、単量体濃度が45重量%であるモノマー水溶液組成物比を有するように製造した。
【0128】
以降、前記モノマー水溶液810gを先に、0.18%アスコルビン酸溶液30.54gと、1%過硫酸ナトリウム溶液33gを先に混合し、0.15%過酸化水素溶液30.45gと共に連続に重合を行いながらニーディングを行うことができる重合機の供給部を通じて投入して重合を実施した。この時、重合機の温度は80℃に維持し、重合の最高温度は110℃、重合時間は1分15秒である。以降、継続してニーディングを実施し、20分間重合とニーディングを実施した。以降、生成された重合体の大きさは0.2cm以下に分布した。この時、最終形成された含水ゲル重合体の含水率は51重量%であった。
【0129】
次に、前記含水ゲル重合体に対して180℃温度の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥された含水ゲル重合体をピンミル紛砕機で粉砕した。その後、篩(sieve)を用いて粒径が約150μm未満である重合体と、粒径が約150μm?850μmである重合体を分級した。
【0130】
以降、製造されたベース樹脂に1,3-プロパンジオール5重量%およびプロピレングリコール5重量%を含む表面処理溶液を噴射し、常温で攪拌してベース樹脂に表面処理溶液が均一に分布するように混合した。以降、このようなベース樹脂を表面架橋反応機に入れて表面架橋反応を行った。このような表面架橋反応機内で、ベース樹脂は約60℃近傍の初期温度で漸進的に昇温することが確認され、約15分経過後に約185℃の最大反応温度に到達するように操作した。このような最大反応温度に到達した以降に、約30分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような実施例7の表面架橋反応条件は、下記表3に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂の製品に約150μm以下の粒径を有する微粉の含有量は、約1重量%未満であった。
【0131】
(実施例8、9および比較例4)
下記表3に示したように、表面架橋反応時の反応時間、最大反応温度および昇温速度を異にしたことを除き、実施例7と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0132】
(実施例10)
内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.8gを用いたことを除き、実施例7と同様な方法で分級工程までを行ってベース樹脂を製造した。
【0133】
そして、表面架橋反応時の初期温度から最大反応温度である185℃に到達する時間を15分と操作し、最大反応温度に到達した後に20分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような実施例10の表面架橋反応条件は、下記表3に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。前記高吸水性樹脂の製品に約150μm以下の粒径を有する微粉の含有量は、約1重量%未満であった。
【0134】
(比較例5)
内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.8gを用いたことを除き、実施例7と同様な方法で分級工程までを行ってベース樹脂を製造した。
【0135】
そして、表面架橋反応時の初期温度から最大反応温度である180℃に到達する時間を30分と操作し、最大反応温度に到達した後に10分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような比較例5の表面架橋反応条件は、下記表3に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。
【0136】
(比較例6)
内部架橋剤として、ポリエチレングリコールジアクリレート(Mw=523)0.2gを用いたことを除き、実施例7と同様な方法で分級工程までを行ってベース樹脂を製造した。
【0137】
そして、表面架橋反応時の初期温度から最大反応温度である180℃に到達する時間を15分と操作し、最大反応温度に到達した後に20分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。このような比較例6の表面架橋反応条件は、下記表3に整理されたとおりである。前記表面架橋工程後、篩(sieve)を用いて粒径が約150?850μmである表面架橋された高吸水性樹脂を得た。
【0138】
【表3】

【0139】
前述した方法で測定された実施例7?10および比較例4?6の物性を表4に整理した。そして、前記測定されたCRC、AUP、G’、SFCから、式1および2の関係式の左辺値を算出して、共に示した。
【0140】
【数6】

【0141】
【表4】

【0142】
前記表4に示したように、実施例で得られた高吸水性樹脂は、CRC、AUP、G’、およびSFCが全般的に優れており、前述した式1の値が15Pa^(2)以上である関係式を満たすだけでなく、式2の値が100以上である関係式を満たすことに比べ、比較例4?6は、前記物性中の一つ以上が劣悪で、上記式1および2の関係式を満たすことができないことが確認された。特に、比較例4?6は、表面架橋前のゲル強度、表面架橋工程での昇温条件、または反応条件(最大反応温度での維持時間など)が実施例とは異なり、実施例に比べてG’またはSFCなどが劣悪で、通液性などが劣悪に現れることが確認された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を重合させた粉末形態のベース樹脂を表面架橋させた架橋重合体を含む高吸水性樹脂の製造方法であって、
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体、内部架橋剤および重合開始剤を含む単量体組成物に熱重合または光重合を行って含水ゲル状重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、
前記乾燥された重合体を粉砕および分級してベース樹脂を形成する段階と、
1,3-プロパンジオールを含む表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂に対して表面架橋を行う段階を含み、
前記ベース樹脂は、表面架橋前に4500Pa以上の水平方向ゲル強度(G’)を有し、
前記表面架橋は、前記ベース樹脂に表面架橋剤を添加して表面架橋反応を行うとき、表面架橋反応の最初反応開始温度が60?170℃であり、最大反応温度が180?200℃であり、前記最初反応開始温度から最大反応温度に至るまでの昇温時間が10?40分であり、前記最大反応温度での維持時間が20?50分である条件下で進行され、
前記高吸水性樹脂は、硫酸アルミニウムを含まず、
前記高吸水性樹脂のCRCは26?32g/gであり、AUPは22?26g/gであり、水平方向ゲル強度G’は6000?12,000Paであり、かつ前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示すSFCは40?85(・10^(-7)cm^(3)・s/g)であり、
前記高吸水性樹脂は、下記式a及び式bの関係式を満たし、
【数1】

上記式a中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示し、
G’は、30?50メッシュの篩で篩って得られた高吸水性樹脂に1時間にかけて生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)を吸収させて膨潤させた後、レオメーターを用いて測定した高吸水性樹脂の水平方向ゲル強度を示し、
【数2】

上記式b中、AUP、CRC、G’は、式aで定義したとおりであり、SFCは、前記高吸水性樹脂に対する生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(・10^(-7)cm^(3)・s/g)を示す、高吸水性樹脂の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-29 
出願番号 特願2016-568684(P2016-568684)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 飛彈 浩一  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大畑 通隆
大島 祥吾
登録日 2019-09-27 
登録番号 特許第6592461号(P6592461)
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 高吸水性樹脂の製造方法  
代理人 特許業務法人池内アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人池内アンドパートナーズ  

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