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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B01D
審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  B01D
審判 一部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B01D
管理番号 1374913
異議申立番号 異議2020-700387  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-04 
確定日 2021-04-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6615995号発明「溶媒回収装置および溶媒回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6615995号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正することを認める。 特許第6615995号の請求項1、2、5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6615995号の請求項1?17に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)6月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2016年6月16日 (KR)大韓民国)を国際出願日とする特許出願(特願2018-523811号)に係るものであって、令和1年11月15日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月4日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許についてなされた特許異議の申立ての手続きの経緯は、以下のとおりである。

令和 2年 6月 4日 特許異議申立人である星正美により、
請求項1、2、5に係る特許に対する
特許異議の申立て
同年 7月28日付け 取消理由通知
同年10月29日 訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)

なお、特許権者から令和2年10月29日に訂正の請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年12月1日付けで特許異議申立人星正美(以下、「異議申立人」という。)に通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、意見書は提出されなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求の内容
令和2年10月29日になされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、一群の請求項を形成する請求項1?17に対して請求されたものであって、その「請求の趣旨」は、「特許第6615995号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?17について訂正することを求める。」というものである。また、その内容は、以下の訂正事項1?6からなるものである。

・訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「溶媒回収装置。」を、「溶媒回収装置であって、前記配管システムは、前記第1蒸留塔の再沸器と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第2熱交換ラインをさらに含む溶媒回収装置。」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。

・訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

・訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4における「請求項3に記載の溶媒回収装置」を、「請求項1または2に記載の溶媒回収装置」に訂正する。
併せて、請求項4を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項4を訂正したことに伴う訂正をする。

・訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5における「請求項1?4のいずれか一項に記載の溶媒回収装置」を、「請求項1?2および4のいずれか一項に記載の溶媒回収装置」に訂正する。
併せて、請求項5を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項5を訂正したことに伴う訂正をする。

・訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6における「請求項3?5のいずれか一項に記載の溶媒回収装置」を、「請求項4?5のいずれか一項に記載の溶媒回収装置」に訂正する。
併せて、請求項6を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項6を訂正したことに伴う訂正をする。

・訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7における「請求項1?6のいずれか一項に記載された溶媒回収装置」を、「請求項1?2および4?6のいずれか一項に記載された溶媒回収装置」に訂正する。
併せて、請求項7を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、請求項7を訂正したことに伴う訂正をする。

2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「溶媒回収装置」について、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3の記載に基づき「前記配管システムは、前記第1蒸留塔の再沸器と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第2熱交換ラインをさらに含む溶媒回収装置」と限定し、さらに請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4?17も同様に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3の記載に基づき、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、訂正事項1によって本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「溶媒回収装置」が限定されたことによって、実質的に特許請求の範囲が拡張・変更されているといえるものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3?6について
訂正事項3?6に係る請求項4?7の訂正は、いずれも選択的引用請求項の一部を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項4?7を直接又は間接的に引用する他の請求項も同様である。

(4)独立特許要件について
訂正事項1?6は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるところ、これらの訂正の対象となる一群の請求項である訂正前の請求項3、4、6?17には、特許異議の申立てがされていないから、本件訂正により削除された請求項3以外の、訂正後の請求項4、6?17に係る発明については、特許法第120条の5第9項に読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)について検討する必要がある。
しかしながら、訂正前の請求項4、6?17に係る発明は、拒絶理由を発見しないとして特許されたものであり、また、訂正後の請求項4、6?17に係る発明は、下記「第3 特許異議申立について」において検討する、訂正後の請求項1、2及び5に係る発明と同様に、新たな拒絶理由が生じるものではないから、訂正後の請求項4、6?17に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項?第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正することを認める。

第3 特許異議申立について
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、2、4?17に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4?17に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許異議の申立てがされた請求項1、2、5に係る特許の発明(以下、「本件発明1」などという。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
水供給タンクおよび高分子成分と溶媒を含む混合物から前記高分子成分と前記溶媒を分離し得る脱去装置を含む溶媒分離部;前記溶媒分離部で回収された溶媒を精製し得る精製部であって、互いに連結されており、それぞれ再沸器と凝縮機を有する第1蒸留塔と第2蒸留塔を含む精製部;および配管システムを含み、
前記配管システムは、前記水供給タンクからの水を前記混合物と混合した後に前記脱去装置に導入できるように形成された第1ライン;
前記溶媒分離部から回収された溶媒を前記第1蒸留塔に導入できるように形成された第2ライン;および
前記第1蒸留塔で精製された溶媒を前記第2蒸留塔に導入できるように形成された第3ラインを含み、
前記配管システムは、前記混合物と混合する前の水と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第1熱交換ラインをさらに含む、溶媒回収装置であって、
前記配管システムは、前記第1蒸留塔の再沸器と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第2熱交換ラインをさらに含む溶媒回収装置。
【請求項2】
第1熱交換ラインには熱交換器および第2蒸留塔の凝縮機が設置されており、前記熱交換器および第2蒸留塔の凝縮機は第2蒸留塔の塔頂生成物が前記熱交換器で水と熱交換された後に前記第2凝縮機に導入されるように前記第1熱交換ラインに設置されている、請求項1に記載の溶媒回収装置。
・・・
【請求項5】
第1ラインにスチームを供給できるように設置されたスチーム供給ラインをさらに含む、請求項1?2および4のいずれか一項に記載の溶媒回収装置。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、5に係る特許に対して、令和2年7月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。

<特許法第29条第2項の取消理由>
引用する刊行物一覧
・国際公開第2013/084671号(異議申立人が提出した甲第2号証。)
・国際公開第2004/007567号(異議申立人が提出した甲第3号証。)
・特表2016-502463号公報(異議申立人が提出した甲第4号証。)
なお、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証をそれぞれ「甲2」、「甲3」、「甲4」という(以下、同様である。)。


訂正前の請求項1、2及び5に係る発明は、甲2に記載された発明、及び甲3、4の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 刊行物に記載されている事項
(1)甲2の記載事項(当審注:「・・・」は省略を表す。以下、同じ。) 甲2には以下の事項が記載されている。
ア 「[0012]
・・・15;蒸留塔、16;加熱器、17;冷却器・・・21;原料溶媒供給管、22;抜出管、23;留出管、・・・25;蒸留塔、26;加熱器、27;冷却器・・・d;溶媒分、e;蒸留塔15の塔底抜出物・・・」

イ 「[0032]
(a)脱溶媒工程は、重合反応及び変性反応、又は水素付加反応の後に、変性重合体若しくはその水素付加物が溶解している反応溶液を、炭化水素系溶媒を含有する溶媒分と、変性重合体若しくはその水素付加物を含有する固形分とに分離する工程である。脱溶媒の方法は特に限定されないが、例えば、変性重合体等が含有される反応溶液を、脱溶媒槽中の熱水に投入し、分散させて、エマルションを生成させ、その後、脱溶媒槽の底部から吹き込まれる水蒸気により、変性重合体等から溶媒を分離させ、除去する、所謂、スチームストリッピング法等が挙げられる。」

ウ 「[0042]
・・・この場合、溶媒を再利用するための各工程は、例えば、図2のような装置を用いて行うことができる。
反応溶液を、スチームストリッピング等の方法により炭化水素系溶媒を含有する溶媒分と、変性重合体又は水素付加物を含有する固形分とに分離する。その後、溶媒分dを原料溶媒供給管21から蒸留塔15に供給し、炭化水素系溶媒及びシラノール化合物を含有する軽沸分を塔頂から留出させる。また、塔底の抜出管22からシラノール化合物の大部分が除去された炭化水素系溶媒が抜出物eとして抜き出される。次いで、軽沸分を留出管23から蒸留塔25に供給し、・・・」

エ 「



(2)甲3の記載事項
甲3には以下の事項が記載されている。
カ (請求の範囲)「1. ポリマー溶液とスチームとを接触させてスチームストリッビングにより溶媒を除去する脱溶媒方法において、・・・」

キ (20頁22行目?25行目)「・・・また、脱溶媒タンク1の頂部からはポリマー溶液から除去された溶媒が溶媒回収用配管15を介して回収され、・・・溶媒は精製された後、回収される。」

ク (9頁26行目?10頁10行目)「尚、ポリマー溶液を脱溶媒夕ンクに移送する配管の構造は特に限定されないが、例えば、第1図のように、第2図にその外観を拡大して示す気液混合器21をポリマ一溶液移送用配管2に配設することができる。このようにポリマー溶液移送用配管2に気液混合器21を配設した場合は、気液混合器21内のポリマー溶液に、気液混合器用スチーム供給配管212からスチームを供給し、ポリマーとスチ一ムとを十分に接触させることにより、ポリマーを数mm、特に4?7mm程度の径のクラムにしてより効率よく脱溶媒することができ好ましい。
更に、配管内でスチームとポリマー溶液とが接触する前に、ポリマー溶液に温水を供給することも好ましい。このようにすると、その後のスチームとポリマー溶液との接触効率が向上し、より効率よく脱溶媒することができる。この温水を供給する位置は、スチームとポリマー溶液とが接触する前であれば特に限定されないが、・・・第28図のように、ポリマ一溶液移送用配管2に温水供給源22から温水供給用配管221を介してポンプ等の供給具(図示せず)により供給することができる。」

ケ 「



コ 「



(3)甲4の記載事項
甲4には以下の事項が記載されている。
サ 「【0014】
・・・分離壁型蒸留塔100の・・・前記分離型塔頂流れ120のうち一部は、分離型凝縮器102を通過し、分離壁型蒸留塔100に還流されることができる。・・・排出された前記分離型塔底流れ130のうち一部は、分離型再沸器103を通過し、分離壁型蒸留塔100に還流されることができる。・・・前記分離壁型蒸留塔100に連結された一般型蒸留塔200・・・前記一般型蒸留塔200では、・・・前記排出された一般型塔頂流れ220のうち一部は、一般型凝縮器202を通過し、一般型蒸留塔200に還流されることができる。・・・前記排出された一般型塔底流れ230のうち一部は、一般型再沸器203を通過し、一般型蒸留塔200に還流されることができる。・・・」

シ 「【0015】
図4・・・は、本発明の第2実施例・・・による前記装置を示す図であり、前記製造装置は、・・・または一般型凝縮器の前段に位置し、前記分離壁型蒸留塔及び一般型蒸留塔の流入または流出流れのうち1つ以上の一部または全部を熱交換させることができる熱交換器を含むことができる。例えば、前記熱交換器は、分離型凝縮器及び/または一般型凝縮器の前段で前記分離型塔頂流れ及び一般型塔頂流れのうち1つ以上の流れの一部または全部を外部の水と熱交換させる・・・」

ス 「【0018】
・・・前記スチーム生成用熱交換器300、310で生成された高温のスチームは、例えば、・・・脱去塔(Stripping Column)または・・・などの熱源として使用されることができる。・・・」

セ 「【0022】
前記一般型蒸留塔200の一般型塔頂流れ220は、前記一般型スチーム生成用熱交換器310を経由し、外部の水と熱交換をすることによって、スチームを生成することができ、前記一般型スチーム生成用熱交換器310で生成されたスチームは、前記分離壁型蒸留塔100に流入される原料110の温度を高めるためのヒーター・・・で使用されるエネルギー消耗量を減らすことができる。・・・」

ソ 「



4 取消理由に対する当審の判断
(1)甲2に記載されている発明
甲2には、上記3(1)イの記載事項によれば、脱溶媒槽中に熱水を投入するスチームストリッピング法が記載されているから、該スチームストリッピングのための装置には、熱水を脱溶媒槽に投入する手段が存在するといえる。
また、上記3(1)ア及びウの記載事項を参酌すると、上記3(1)エの記載事項からは、蒸留塔15は加熱器16及び冷却器17を、蒸留塔25は加熱器26及び冷却器27を、それぞれ有していることが見て取れる。
すると、上記3(1)ア?エの記載事項によれば、甲2には、
「変性重合体若しくはその水素付加物が溶解している反応溶液をスチームストリッピング法により変性重合体若しくはその水素付加物を含有する固形分と炭化水素系溶媒を含有する溶媒分とに分離する脱溶媒槽、熱水を脱溶媒槽に投入する手段、分離された溶媒分が原料溶媒供給管21を通じて供給され、塔底からシラノール化合物の大部分が除去された炭化水素系溶媒が抜出物eとして抜き出される蒸留塔15、蒸留塔15の塔頂から留出させた軽沸分が留出管23を通じて供給される蒸留塔25、蒸留塔15に設けられた加熱器16及び冷却器17、蒸留塔25に設けられた加熱器26及び冷却器27、を含む炭化水素系溶媒の再利用装置。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明における「変性重合体若しくはその水素付加物が溶解している反応溶液」、「変性重合体若しくはその水素付加物を含有する固形分」、「炭化水素系溶媒を含有する溶媒分」、「加熱器」、「冷却器」は、それぞれ、本件発明1における「高分子成分と溶媒を含む混合物」、「高分子成分」、「溶媒」、「再沸器」、「凝縮器」に相当する。
また、甲2発明における「スチームストリッピング法により・・・分離する脱溶媒槽」は、本件発明1における「脱去装置」に相当し、「溶媒分離部」を構成するものともといえる。
そして、甲2発明における「蒸留塔15」及び「蒸留塔25」は、「炭化水素系溶媒を含有する溶媒分」を精製するものであり、「留出管23」を通じて互いに連結されているものであり、それぞれ「加熱器」及び「冷却器」を有するものであるから、それぞれ、本件発明1における「第1蒸留塔」及び「第2蒸留塔」に相当し、「精製部」を構成するものといえる。
さらに、甲2発明における「原料溶媒供給管21」は「炭化水素系溶媒を含有する溶媒分」を「蒸留塔15」に導入出来るよう形成された配管ラインであり、「留出管23」は「蒸留塔15」で精製された溶媒を「蒸留塔25」に導入できるように形成された配管ラインであるから、甲2発明における「原料溶媒供給管21」及び「留出管23」は、それぞれ、本件発明1における「第2ライン」及び「第3ライン」に相当し、「配管システム」を構成するものである。
そして、甲2発明は「炭化水素系溶媒の再利用装置」であることから、「溶媒回収装置」である。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
(一致点)
「高分子成分と溶媒を含む混合物から前記高分子成分と前記溶媒を分離し得る脱去装置を含む溶媒分離部;前記溶媒分離部で回収された溶媒を精製し得る精製部であって、互いに連結されており、それぞれ再沸器と凝縮機を有する第1蒸留塔と第2蒸留塔を含む精製部;および配管システムを含み、
前記配管システムは、前記溶媒分離部から回収された溶媒を前記第1蒸留塔に導入できるように形成された第2ライン;および
前記第1蒸留塔で精製された溶媒を前記第2蒸留塔に導入できるように形成された第3ラインを含む、溶媒回収装置。」
である点で一致すると認められる。
一方で、両発明は、
(相違点1)
本件発明1は溶媒分離部が「水供給タンク」をさらに含むのに対して、甲2発明は相当するタンクについて記載のない点
(相違点2)
本件発明1は「水供給タンクからの水を前記混合物と混合した後に前記脱去装置に導入できるように形成された第1ライン」を有するのに対して、甲2発明は、熱水を脱溶媒槽に投入する手段を有するものの、相当するラインについて記載のない点
(相違点3)
本件発明1は「混合物と混合する前の水と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第1熱交換ライン」を有するのに対して、甲2発明は相当するラインについて記載のない点
(相違点4)
本件発明1は「前記第1蒸留塔の再沸器と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第2熱交換ライン」を有するのに対して、甲2発明は相当するラインについて記載のない点
で相違すると認められる。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みまず、相違点4について検討する。
上記(2)アで検討したとおり、甲2発明における「蒸留塔15」及び「蒸留塔25」は、それぞれ、本件発明1における「第1蒸留塔」及び「第2蒸留塔」に相当するものの、甲2には、「前記第1蒸留塔の再沸器と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第2熱交換ライン」を有するとの技術事項は記載も示唆もされていない。また、当該技術事項は、甲3、4にも記載も示唆もされていないし、そのような技術常識が存在する証拠もない。
してみれば、相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明1は、相違点1?3について検討するまでもなく、甲2に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(3)本件発明2、5について
本件発明2、5は、本件発明1を引用し、さらに限定したものに該当するから、本件発明1と同様に、甲2に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。

(4)小括
したがって、取消理由に理由はない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
(1)異議申立書における特許異議申立理由(甲第1号証を主引例とする特許法第29条第2項)について
異議申立人は、本件発明1、2、5は、甲1に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。

刊行物一覧
・米国特許第4436902号明細書(甲1)
・国際公開第2004/007567号(甲3)
・特表2016-502463号公報(甲4)

(2)甲1の記載事項
甲1には以下の事項が記載されている。
ア 甲1の第1カラムの41?44行目には、"Another object of this invention is to provide a process for the purification of a diluent in a polymerization system to permit recycle and reuse of the purified diluent in the polymerization system."と記載されており、当該記載は、『本発明の別の目的は、重合システムにおいて、希釈剤を精製し、精製された希釈剤のリサイクルおよび再利用を可能にするプロセスを提供することである。』と訳される。

イ 甲1の第1カラムの55?61行目には、"In accordance with this invention, it has been discovered that purification of a liquid containing contaminants such as water and polymer is enhanced by utilizing a first fractionating column in conjunction with a second fractionating column. The first fractionating column can be used to remove water and other impurities from a liquid to be purified. "と記載されており、当該記載は、『本発明によれば、第2の分留カラムと連結された第1の分留カラムを利用することにより、水やポリマーなどの汚染物質を含む液体の精製が向上することが発見された。第1の分留カラムを利用することにより、精製される液体から水やその他の不純物を除去することができる。』と訳される。

ウ 甲1の第12カラムの8?11行目には、"Preferably substantially all the contents of the polymerization means 10 pass via conduit 30 to finishing means 12. A first finishing reagent such as water can be added via conduit 27 to the finishing means 12." と記載されており、当該記載は、『好ましくは、重合手段10の実質的に全ての内容物は、配管30を通じて重合停止手段12に移動する。水などの第1の重合停止剤は配管27を経由して重合停止手段12に添加することができる。』と訳される。

エ 甲1の第12カラムの16?20行目には、"The finishing means 12 can be operated under conditions such that a portion of the excess diluent, polar activator, and finishing compound can flash or vaporize and pass from the finishing means via conduit 31."と記載されており、当該記載は、『重合停止手段12は、過剰な希釈剤、極性活性剤、および重合停止化合物の一部がフラッシュまたは気化して、配管31を経由して重合停止手段から移動するような条件で運転することができる。』と訳される。

オ 甲1の第12カラムの26?29行目には、"At least a portion of the contents of the finishing means 12 comprising the coupled copolymer and some diluent, polar activator, and finishing compound passes via conduit 32 to mixing means 14." と記載されており、当該記載は、『カップリングされた共重合体と一部の希釈剤、極性活性剤、および重合停止化合物を含む重合停止手段12の内容物の少なくとも一部は、配管32を経由して混合手段14へと移動する。』と訳される。

カ 甲1の第12カラムの37?41行目には、"Also, the mixing means 14 can be operated under conditions such that a portion of the diluent, polar activator, finishing compound, and/or additive can flash or vaporize and pass from the mixing means 14 via conduit 33." と記載されており、当該記載は、『また、混合手段14は、希釈剤、極性活性剤、重合停止化合物、および/または添加剤の一部がフラッシュまたは気化して、配管33を経由して混合手段14から移動するような条件で運転することができる。』と訳される。

キ 甲1の第12カラムの53?56行目には、"The concentration means 18 is preferably operated under conditions conducive to the removing of excess diluent, polar activator, finishing compound, and/or additive from the coupled copolymer." と記載されており、当該記載は、『好ましくは、濃縮手段18は、過剰な希釈剤、極性活性剤、重合停止化合物、および/または添加物をカップリングされた共重合体から除去することを促進する条件で作動する。』と訳される。

ク 甲1の第12カラムの60?62行目には、"A process stream comprising substantially diluent, polar activator, and finishing compound pass from the concentration means 18 via conduit 35." と記載されており、当該記載は、『実質的に希釈剤、極性活性剤、および重合停止化合物を含むプロセス流れは、配管35を経由して濃縮手段18から移動する。』と訳される。

ケ 甲1の第12カラムの63行目?第13カラムの3行目には、“A process stream comprising substantially coupled copolymer and having a reduced content of diluent passes from the concentration means 18 via conduit 38 to a polymer recovery means 19. The polymer recovery means 19 can be an extrusion means, a pump means, and the like whereby excess diluent, activator, finishing compound and additive can be removed from the coupled copolymer and passed from the polymer recovery means via conduit 37"と記載されており、当該記載は、『カップリングされた共重合体を実質的に有し、希釈剤の含有量が減少したプロセス流れは、濃縮手段18から配管38を経由してポリマー回収手段19に移動する。ポリマー回収手段19は、押出手段、ポンプ手段などであってもよく、それにより、過剰の希釈剤、活性剤、重合停止化合物、および添加剤が、カップリングされた共重合体から除去され、配管37を経由してポリマー回収手段から移動する。』と訳される。

コ 甲1の第13カラムの9?11行目には、"A process stream in conduit 31, 33, 35, and/or 37 can pass via conduit 39 to a first fractionating column 50. The process stream in conduit 39 comprises diluent and one or more contaminants." と記載されており、当該記載は、『配管31、33、35、および/または37内のプロセス流れは、配管39を経由して第1の分留カラム50に移動することができる。配管39内のプロセス流れは、希釈剤と、1つ以上の汚染物質とを含む。』と訳される。

サ 甲1の第13カラムの22?28行目には、"In the first fractionating column, the feedstream is separated into a first overhead fraction, a first side draw fraction, and a first bottom fraction. The first overhead fraction in the first fractionating column 50 comprises substantially a contaminant having a volatility less than that of the liquid to be purified." と記載されており、当該記載は、『第1の分留カラムでは、供給流れは、第1の塔頂留分、第1の側方抜き出し留分、および第1の塔底留分に分離される。第1の分留カラム50における第1の塔頂留分は、精製されるべき液体の揮発性よりも低い揮発性を有する汚染物質を実質的に含む。』と訳される。

シ 甲1の第13カラムの32?37行目には、"The first overhead fraction passes from the first fractionating column 50 via conduit 60 and can pass in contact with a heat exchange device 62 wherein the contaminant-enriched stream is condensed and passed to a storage means 64 such as an accumulator."と記載されており、当該記載は、『第1の塔頂留分は、配管60を経由して第1の分留カラム50から移動し、熱交換装置62と接触して移動することができる。熱交換装置62では、汚染物質に富む流れが凝縮されてアキュムレータのような貯蔵手段64に移動する。』と訳される。

ス 甲1の第13カラムの54?60行目には、"The first bottom fraction of the first fractionating column 50 can pass via conduit 52 in contact with a heat exchange means 54. A heat exchange means 54 can be a reboiler and a portion of the first bottom fraction in conduit 52 can exit the heat exchange device 54 in substantially vapor form and pass via conduit 56 back to the first fractionating column 50." と記載されており、当該記載は、『第1の分留カラム50の第1の塔底留分は、熱交換手段54と接触して配管52を経由して通過することができる。熱交換手段54は、リボイラーであってもよく、配管52内の第1の塔底留分の一部は、実質的に蒸気の形態で熱交換装置54を出て、配管56を経由して第1の分留カラム50に戻ることができる。』と訳される。

セ 甲1の第13カラムの63?68行目には、"The first bottom fraction preferably comprises diluent and any contaminant having a volatility less than or equal to the volatility of the diluent. At least a portion of the first bottom fraction in conduit 52 passes via conduit 58 to a second fractionating column 70." と記載されており、当該記載は、『第1の塔底留分は、好ましくは、希釈剤と、希釈剤の揮発性以下の揮発性を有する任意の汚染物質とを有する。配管52内の第1の塔底留分の少なくとも一部は、配管58を経由して第2の分留カラム70に移動する。』と訳される。

ソ 甲1の第14カラムの10?13行目には、"At least a portion of the second bottom fraction of the second fractionating column can pass via conduit 76 in contact with heat exchange means 77. Heat exchange means 77 can be a reboiler." と記載されており、当該記載は、『第2の分留カラムの第2の塔底留分の少なくとも一部は、熱交換手段77と接触して配管76を経由して移動することができる。熱交換手段77は、リボイラーであってもよい。』と訳される。

タ 甲1の図1には、重合停止手段12、混合手段14、濃縮手段18およびポリマー回収手段19が記載されている。また、重合停止手段12、混合手段14、濃縮手段18およびポリマー回収手段19から、それぞれ、第1の分留カラム50に向かう配管31、33、35、37及び39が示されている。また、図1には、第1の分留カラム50、熱交換手段54、熱交換手段62、第2の分留カラム70および熱交換手段77が記載されている。また、第1の分留カラム50と第2の分留カラム70とを連結する配管52および58が示されている。

(3)甲1に記載されている発明
上記(2)ア、イによると、重合システムにおいて、第1分留カラム50と第2分留カラム70とを利用して希釈剤を精製し、精製された希釈剤はリサイクルされ、再使用されるところ、甲1には、希釈剤等の溶媒を回収するための装置が開示されているといえる。
上記(2)ウ?ケ、タによると、重合工程を行うための装置として、重合手段10と、重合停止手段12と、混合手段14と、濃縮手段18と、ポリマー回収手段19とが存在し、重合手段10においては、液体である希釈剤および極性活性剤と、第1重合反応生成物、第2重合反応生成物、および第3重合反応生成物との存在下で、共重合体生成物が形成され、希釈剤および極性活性剤と共に、重合停止手段12に移送される。
そして、重合停止手段12においては、水等の第1の重合停止剤が添加され、混合物 (共重合体生成物、希釈剤、極性活性剤および重合停止化合物)から、過剰な一部の希釈剤、極性活性剤および重合停止化合物がフラッシュまたは気化する。すなわち、共重合体組成物と、希釈剤と水等の混合物から、少なくとも一部の希釈剤が分離されている。
したがって、重合停止手段12は脱去装置であるといえる。
また、重合停止手段12における混合物(共重合体、希釈剤、極性活性剤およ び重合停止化合物)は、混合手段14に移送されるものであり、混合手段14において、希釈剤、極性活性剤、重合停止化合物、および/または添加剤の一部がフラッシュまたは気化する。
したがって、混合手段14は、重合停止手段12と同様に脱去装置である。
さらに、混合手段14の混合物(共重合体、希釈剤、極性活性剤および重合停止化合物)は、熱交換器16を経て、濃縮手段18に移送されるものであり、濃縮手段18は、高表面積薄膜蒸発器、加熱撹拌槽反応器等であって、濃縮手段18において、共重合体から過剰の希釈剤、極性活性剤、重合停止化合物が分離される。
したがって、濃縮手段18は、重合停止手段12と同様に脱去装置である。
してみれば、甲1には、「共重合体組成物と希釈剤を含む混合物から前記共重合体組成物と前記希釈剤を分離し得る脱去装置を含む希釈剤分離部」が開示されているといえる。
上記(2)エ、カ、ク、コ?タによると、重合停止手段12と、混合手段14と、濃縮手段18とにおいて、フラッシュまたは気化した希釈剤等が、第1分留カラム50において精製され、希釈剤を含む第1の塔底留分が、第2分留カラム70に移送される。
また、第1分留カラム50と第2分留カラム70とは、配管52および58を通じて連結されている。さらに、第1分留カラム50は、リボイラーである熱交換手段54と、 第1分留カラム50の塔頂からの留出分を凝縮する熱交換装置62とを有している。第2分留カラム70は、リボイラーである熱交換手段77を有している。したがって、第1分留カラム50は、再沸器および凝縮器を有しており、第2分留カラム70は再沸器を有している。
上記(2)エ、カ、ク、コ、セ、タによると、フラッシュまたは気化した希釈剤、極性活性剤、第1重合停止化合物(水)が、配管31、33、35および39を通して第1分留カラム50に導入される。
また、第1分留カラム50の第1塔底留分が配管52および58を通じて第2分留カラム70に導入される。
してみれば、甲1には、
「共重合体組成物と希釈剤を含む混合物から前記共重合体組成物と前記希釈剤を分離し得る脱去装置を含む希釈剤分離部;前記希釈剤分離部で回収された希釈剤を精製し得る精製部であって、互いに連結されており、熱交換手段54、77と熱交換装置62を有する第1分留カラム50と第2分留カラム70を含む精製部;および配管システムを含み、前記希釈剤分離部から回収された希釈剤を前記第1分留カラム50に導入できるように形成された配管31、33、35および39;および前記第1分留カラム50で精製された希釈剤を前記第2分留カラム70に導入できるように形成された配管52および58を含む、希釈剤回収装置。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(4)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明における「共重合体組成物」及び「希釈剤」は、それぞれ本件発明1における「高分子成分」及び「溶媒」に相当する。
そして、甲1発明における「第1分留カラム50」及び「第2分留カラム70」は、それぞれ本件発明1における「第1蒸留塔」及び「第2蒸留塔」に相当する。
また、甲1発明における「熱交換手段54」及び「熱交換手段77」は、本件発明1における「再沸器」に相当し、甲1発明における「熱交換装置62」は、本件発明1における「凝縮機」に相当する。
さらに、甲1発明における「配管31、33、35および39」は、本件発明1における「第2ライン」に相当し、甲1発明における「配管52および58」は、本件発明1における「第3ライン」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
(相違点A)
本件発明1は「前記第1蒸留塔の再沸器と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第2熱交換ライン」を有するのに対して、甲1発明は相当するラインについて記載のない点
で少なくとも相違すると認められる。

イ 相違点についての判断
上記相違点Aについて検討する。
甲1発明における「第1分留カラム50」及び「第2分留カラム70」は、それぞれ、本件発明1における「第1蒸留塔」及び「第2蒸留塔」に相当するものの、甲1には、「前記第1蒸留塔の再沸器と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第2熱交換ライン」を有するとの技術事項は記載も示唆もされていない。また、上記4(2)イで検討したとおり、当該技術事項は、甲3、4にも記載も示唆もされていないし、そのような技術常識が存在する証拠もない。
してみれば、相違点Aに係る本件発明1の構成は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明1は、その他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(5)本件発明2、5について
本件発明2、5は、本件発明1を引用し、さらに限定したものに該当するから、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明及び甲3、4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。

(6)小括
以上のとおりであるから、上記(1)の特許異議申立理由は採用できない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水供給タンクおよび高分子成分と溶媒を含む混合物から前記高分子成分と前記溶媒を分離し得る脱去装置を含む溶媒分離部;前記溶媒分離部で回収された溶媒を精製し得る精製部であって、互いに連結されており、それぞれ再沸器と凝縮機を有する第1蒸留塔と第2蒸留塔を含む精製部;および配管システムを含み、
前記配管システムは、前記水供給タンクからの水を前記混合物と混合した後に前記脱去装置に導入できるように形成された第1ライン;
前記溶媒分離部から回収された溶媒を前記第1蒸留塔に導入できるように形成された第2ライン;および
前記第1蒸留塔で精製された溶媒を前記第2蒸留塔に導入できるように形成された第3ラインを含み、
前記配管システムは、前記混合物と混合する前の水と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第1熱交換ラインをさらに含む、溶媒回収装置であって、
前記配管システムは、前記第1蒸留塔の再沸器と前記第2蒸留塔の塔頂生成物を熱交換させることができるように設置された第2熱交換ラインをさらに含む
溶媒回収装置。
【請求項2】
第1熱交換ラインには熱交換器および第2蒸留塔の凝縮機が設置されており、前記熱交換器および第2蒸留塔の凝縮機は第2蒸留塔の塔頂生成物が前記熱交換器で水と熱交換された後に前記第2凝縮機に導入されるように前記第1熱交換ラインに設置されている、請求項1に記載の溶媒回収装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
第2熱交換ラインには第1蒸留塔の再沸器および第2蒸留塔の凝縮機が設置されており、前記第1蒸留塔の再沸器および第2蒸留塔の凝縮機は第2蒸留塔の塔頂生成物が前記第1蒸留塔の再沸器を経た後に前記第2凝縮機を経ることができるように前記第2熱交換ラインに設置されている、請求項1または2に記載の溶媒回収装置。
【請求項5】
第1ラインにスチームを供給できるように設置されたスチーム供給ラインをさらに含む、請求項1?2および4のいずれか一項に記載の溶媒回収装置。
【請求項6】
前記第1および第2熱交換ラインは、第2蒸留塔の塔頂生成物の一部が溶媒分離部の水と熱交換された後に第2蒸留塔の凝縮機を経て第2蒸留塔に還流され、前記第2蒸留塔の塔頂生成物の他の一部が第1蒸留塔の再沸器および前記第2蒸留塔の凝縮機を順に経た後に前記第2蒸留塔に還流するように形成されている、請求項4?5のいずれか一項に記載の溶媒回収装置。
【請求項7】
請求項1?2および4?6のいずれか一項に記載された溶媒回収装置を用いて溶媒を回収する方法であって、
高分子成分と溶媒を含む混合物を水供給タンクからの水と混合した後に脱去装置に導入する工程を含む溶媒回収段階;および溶媒回収段階で回収された溶媒を第1および第2蒸留塔で精製する溶媒精製段階を含むものの、
配管システムを通じて前記第2蒸留塔の塔頂生成物を前記混合物と混合する前の水と熱交換させる段階を遂行する、溶媒回収方法。
【請求項8】
水と熱交換される前の前記第2蒸留塔の塔頂生成物の温度Tiおよび前記第2蒸留塔の塔頂生成物と熱交換された後の水の流出流れの温度Taが下記の一般式1を満足するように制御する、請求項7に記載の溶媒回収方法。
【数7】
[一般式1]
|Ti-Ta|≦60℃
【請求項9】
水と熱交換される前の前記第2蒸留塔の塔頂生成物の温度Tiが110?160℃の範囲内にある、請求項8に記載の溶媒回収方法。
【請求項10】
前記第2蒸留塔の塔頂生成物と熱交換された後の水の流出流れの温度Taが90?140℃の範囲内にある、請求項8または9に記載の溶媒回収方法。
【請求項11】
前記第2蒸留塔の塔頂生成物の一部を前記混合物と混合する前の水と熱交換させ、前記第2蒸留塔の塔頂生成物の他の一部を前記第1蒸留塔の再沸器と熱交換させる段階を遂行する、請求項7?10のいずれか一項に記載の溶媒回収方法。
【請求項12】
第1蒸留塔の再沸器に導入される前の第2蒸留塔の塔頂生成物の温度Tiおよび前記第2蒸留塔の塔頂生成物と熱交換された後の前記再沸器の流出流れの温度Tbの差Ti-Tbが下記の一般式2を満足するように制御する、請求項11に記載の溶媒回収方法。
【数8】
[一般式2]
|Ti-Tb|≦25℃
【請求項13】
第1蒸留塔の再沸器に導入される前の第2蒸留塔の塔頂生成物の温度Tiが130?160℃の範囲内にある、請求項12に記載の溶媒回収方法。
【請求項14】
第1蒸留塔および第2蒸留塔の圧力は下記の一般式3を満足する、請求項7?13のいずれか一項に記載の溶媒回収方法。
【数9】
[一般式3]
0.6≦P2-P1≦2.5barg、3.5≦P1≦5.0barg
ここで、P2は第2蒸留塔の圧力であり、P1は第1蒸留塔の圧力である。
【請求項15】
水と熱交換される第2蒸留塔の塔頂生成物の流量Aと第1蒸留塔の再沸器と熱交換される第2蒸留塔の塔頂生成物の流量Bの比率が0.40?0.65である、請求項11?14のいずれか一項に記載の溶媒回収方法。
【請求項16】
第1蒸留塔の塔頂運転温度は95?105℃の範囲内であり、塔底運転温度は125?140℃の範囲内である、請求項7?15のいずれか一項に記載の溶媒回収方法。
【請求項17】
第2蒸留塔の塔頂運転温度は110?160℃の範囲内であり、塔底運転温度は120?165℃の範囲内である、請求項7?16のいずれか一項に記載の溶媒回収方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-30 
出願番号 特願2018-523811(P2018-523811)
審決分類 P 1 652・ 851- YAA (B01D)
P 1 652・ 856- YAA (B01D)
P 1 652・ 121- YAA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 目代 博茂  
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 金 公彦
末松 佳記
登録日 2019-11-15 
登録番号 特許第6615995号(P6615995)
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 溶媒回収装置および溶媒回収方法  
代理人 特許業務法人池内アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人池内アンドパートナーズ  

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