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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1374915
異議申立番号 異議2020-700090  
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-19 
確定日 2021-04-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6564496号発明「難燃性ポリウレタン樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6564496号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕、7、8について訂正することを認める。 特許第6564496号の請求項1、3ないし5、7に係る特許を維持する。 特許第6564496号の請求項2、6、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6564496号は平成27年7月14日に出願された特願2015-537055号(優先日 平成26年7月14日)の一部を、平成30年5月15日に新たな特許出願としたものであって、令和元年8月2日に特許権の設定登録がなされ、同年同月21日にその特許公報が発行され、その後、請求項1?8に係る特許に対して、令和2年2月19日に特許異議申立人 本間賢一(以下、「申立人A」という。)から、同年同月21日に特許異議申立人 御園貴美代(以下、「申立人B」という。)から、それぞれ特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。

令和2年 5月28日付け:取消理由の通知
同年 7月22日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年10月14日 :意見書の提出(申立人B)
同年10月16日 :意見書の提出(申立人A)
令和3年 1月 7日付け:取消理由の通知<決定の予告>
同年 2月15日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)

令和3年2月15日に特許権者から訂正の請求があったため、令和2年7月22日提出の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、下記第2 1に示すように、令和3年2月15日提出の訂正の請求の内容は、請求項8を削除することを含むものである。これは、令和2年7月22日提出の訂正の請求によって訂正された特許請求の範囲において、請求項1?7については訂正をせず、請求項8を削除するのみのものである。この点に鑑みると、実質的に決定の予告で取り消す対象となった請求項の削除のみに相当するものであるから、申立人A及びBに対して意見書を提出する機会を与えることを要さないものと判断した。

第2 訂正の可否
1 訂正の内容
令和3年2月15日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1?6、7、8はそれぞれ一群の請求項である。

訂正事項1:特許請求の範囲の請求項1の
「該添加剤が赤リンと、赤リン以外の難燃剤とを含有し、」を、
「該添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含有し、」と訂正する。

訂正事項2:特許請求の範囲の請求項2を削除する。

訂正事項3:特許請求の範囲の請求項3の
「請求項1または2に」を、
「請求項1に」と訂正する。

訂正事項4:特許請求の範囲の請求項4の
「請求項1?3のいずれかに」を、
「請求項1または3のいずれかに」と訂正する。

訂正事項5:特許請求の範囲の請求項5の
「請求項1?4のいずれかに」を、
「請求項1、3、4のいずれかに」と訂正する。

訂正事項6:特許請求の範囲の請求項6を削除する。

訂正事項7:特許請求の範囲の請求項7の
「添加剤として赤リンと、赤リン以外の難燃剤とを含む」を、
「添加剤として赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含む」と訂正する。

訂正事項8:特許請求の範囲の請求項8を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る「添加剤」成分に関し、訂正前の請求項6の規定「前記添加剤が、前記赤リン以外にリン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1?5のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。」に基づき限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項2、6、8は、請求項2、6、8を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項3?5は、請求項3?5において、訂正事項2により削除された請求項2を引用しない形式に書き改めたものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
訂正事項7は、訂正前の請求項7に係る「添加剤」成分に関し、訂正事項1と同様の限定をするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号あるいは第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の各規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1?8に係る発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」等といい、まとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物であって、
該添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含有し、
該難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における、^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間であり、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である
ことを特徴とする難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記添加剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として4.5重量部?70重量部の範囲である、請求項1に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記三量化触媒が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として0.1?10重量部の範囲である、請求項1または3のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記発泡剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として0.1?30重量部の範囲である、請求項1、3、4のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間であり、かつ
前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である難燃性ウレタン樹脂組成物を形成するための、(A)ポリイソシアネート化合物を含有する第1液、(B)ポリオール化合物を含有する第2液、(C)三量化触媒、(D)発泡剤、(E)整泡剤および(F)添加剤として赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含むシステム。
【請求項8】
(削除)」

第4 <決定の予告>における取消理由通知について
当審は、<決定の予告>において、令和2年7月22日提出の訂正の請求によって訂正された請求項8に係る発明に関し、概要、以下のとおりの取消理由を通知した。
(以下、本件設定登録時の請求項1?8に係る発明を、それぞれ「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)

「A (実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
B (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
C (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。」

しかし、上記第3で示したとおり、請求項8は削除された。したがって、<決定の予告>で示した取消理由は存在しない。

第5 その他の取消理由通知について
1 取消理由通知の概要
当審は、上記第4で示したものを除き、令和2年5月28日付けで、概要、以下のとおりの取消理由を通知した。

「A (実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
B (サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
C (明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
D (同日出願)下記の請求項に係る発明は、同日出願された下記の出願に係る発明と同一と認められ、かつ、下記の出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないものであり、特許法第39条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、取り消すべきものである。


2 理由A、Bについて
本件請求項1には「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物であって、
該添加剤が赤リンと、赤リン以外の難燃剤とを含有し、」と規定されている。

しかし、本件明細書【0065】?【0109】のみならず本件明細書のいかなる箇所においても、「赤リン以外の難燃剤」についての記載は、「リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤」以外見いだせない。「リン酸エステル」及び「金属水酸化物」は「添加剤」との記載に留まり、「難燃剤」として認識できるものとはいえない。
仮に、「リン酸エステル」及び「金属水酸化物」を、本件明細書の記載から「難燃剤」として認識できるものとしても、任意の「赤リン以外の難燃剤」を本件発明1の「添加剤」として認識し得ない。

このため、本件発明1において、本件請求項1に規定される該総発熱量をどのようにすれば調整しうるのか、本件発明の詳細な説明のいかなる記載を参酌しても理解することができない。
よって、本件発明の詳細な説明は、本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
そして、本件発明1は、本件発明の課題をどのように実施することで解決しうるのか、明らかではない。
よって、本件発明1は、本件発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
本件発明1を引用する本件発明2?6、同様の規定がある本件発明7及び8についても同様である。

3 理由Cについて
本件請求項1には「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物」と規定されている。
しかし、「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む」組成物によって(難燃性)ウレタン樹脂は製造可能であると解されるが、該組成物自体は(難燃性)ウレタン樹脂ではなく、その原料に過ぎない。
このため、上記のように規定される本件発明1は何を実態としているのか理解できない。
よって、本件発明1は明確でない。
本件発明1を引用する本件発明2?6、同様の規定がある本件発明7及び8についても同様である。

5 理由Dについて
出願1:特願2015-537055号(特許第6460995号)
本件発明1?8は、出願1に係る発明と同一である。
…」

2 「2 理由A、Bについて」で示した取消理由
本件訂正発明は、添加剤が「赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つ」となった。
本件明細書【0065】?【0109】には本件訂正発明に係る「添加剤」に関する記載があり、特に【0065】?【0067】には以下の記載がある。
「【0065】
次に本発明に使用する添加剤について説明する。
【0066】
…別の実施形態において、添加剤は、赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つとを含む。…
【0067】
添加剤は、好ましくは赤リンを含む。使用する添加剤の好ましい組み合わせとしては、例えば、下記の(a)? (i)のいずれか等が挙げられる。添加剤はより好ましくは、赤リンと、リン酸塩含有難燃剤とを含む。
(a)赤リンおよびリン酸エステル
(b)赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤
(c)赤リンおよび臭素含有難燃剤
(d)赤リンおよびアンチモン含有難燃剤
(e)赤リンおよび金属水酸化物
(f)赤リン、リン酸エステルおよびリン酸塩含有難燃剤
(g)赤リン、リン酸エステルおよび臭素含有難燃剤
(h)赤リン、リン酸塩含有難燃剤および臭素含有難燃剤
(i)赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤および臭素含有難燃剤
…」
また、本件発明の詳細な説明【0119】?【0124】には本件訂正発明に係る「ウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」に関する記載があり、特に、【0119】?【0121】には以下の記載がある。
「【0119】
本発明の難燃性ウレタン樹脂組成物は、硬化後の難燃性ウレタン樹脂組成物を固体^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピーク(B)に対するイソシアヌレートのカルボニル基のピーク(A)の強度比(A/B)が0.3?3.5の間であることにより特徴付けられる。
【0120】
上記の比が0.3未満の場合には、難燃性ポリウレタン組成物が軟らかくて易燃性となり形状保持性に劣る。上記の比が3.5を超えるとフォームの強度が硬くなり、脆いものとなりやすい。本願によれば、固体^(13)C NMRにより難燃性ポリウレタン組成物におけるヌレート化率の定量が初めて可能となり、上記の比が0.3?3.5の範囲にあるときに、難燃性ポリウレタン組成物は高い難燃性を発現でき、かつ形状保持性に優れるため、取扱いにも優れている。
【0121】
一実施形態では、難燃性ウレタン樹脂組成物は、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として、0.1?10重量部の範囲の三量化触媒と、0.1?30重量部の発泡剤と、0.1重量部?10重量部の範囲の整泡剤と、4.5重量部?70重量部の範囲の添加剤とを含み、^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間である。」
そして、本件発明の詳細な説明【0142】?【0149】の実施例及び比較例の記載、特に総発熱量や残渣状態のデータの対比から、本件訂正発明の添加剤として、「赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つ」を用いることにより、本件訂正発明は、総発熱量が抑えられ、残渣状態が良好なものであることが確認できる。
すなわち、上記の「添加剤」及び「ウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」、並びに、実施例の記載に鑑みると、本件訂正発明の課題と解される高い難燃性や優れた形状保持性(【0120】)が解決するように実施しうるものと解することができる。
このため、「2 理由A、Bについて」で示した点については、本件発明の詳細な説明は、本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、本件訂正発明は、本件発明の詳細な説明に記載したものといえる。
よって、「2 理由A、Bについて」で示した取消理由には、理由がない。

3 「3 理由Cについて」で示した取消理由
特許権者は、令和2年7月22日提出の意見書において、参考資料1?7
参考資料1:特許第6499347号公報
参考資料2:特許第6138325号公報
参考資料3:特許第6012837号公報
参考資料4:特許第5865537号公報
参考資料5:特許第5761879号公報
参考資料6:特許第5568187号公報
参考資料7:特許第5550161号公報
を提示し、以下のように主張する。
「当業界における技術常識として、「ウレタン樹脂」ないし「ポリウレタン」は、熱硬化性樹脂の範疇に属し、ポリイソシアネート、ポリオール及び添加剤・配合剤を含む混合物を、反応硬化させてウレタン結合を形成させ架橋硬化物であるウレタン樹脂ないしポリウレタンを得ています。
したがって、本件訂正発明1の上記「難燃性ウレタン樹脂組成物」は、難燃性ウレタン樹脂を形成する組成物を意味することは、当業界における技術常識です。
よって、本件訂正発明1は、組成物を意味していることは明らかであり、明確な記載であるといえます。」
上記主張のとおり、本件訂正発明は、難燃性ウレタン樹脂を形成する組成物を意味することで明確であるといえる。
申立人Bは「本件請求項1には、「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物」と記載されているのであって、「?を含む組成物であって、難燃性ウレタン樹脂を形成する組成物」と記載されているのではない。」と主張する。
しかし、「ウレタン樹脂」あるいはその組成物は、ポリイソシアネート、ポリオール及び添加剤・配合剤を含む混合物から得られることは、本件出願時における技術常識であり、本件訂正発明は「難燃性ウレタン樹脂組成物」に係るものであることから、特許権者が主張するとおり、「難燃性ウレタン樹脂を形成する組成物」に限定解釈できるものと認められる。
このため、「3 理由Cについて」で示した点については、本件訂正発明は明確であるといえる。
よって、「3 理由Cについて」で示した取消理由には、理由がない。

4 「5 理由Dについて」で示した取消理由
(1)出願1記載の発明
出願1の特許請求の範囲には、以下のとおり規定されている。
「【請求項1】
ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物であって、
該添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含有し、
該難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における、^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間であり、
前記ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスが125?1000の範囲であり、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下であり、かつ20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である
ことを特徴とする難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記添加剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として4.5重量部?70重量部の範囲である、請求項1に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記三量化触媒が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として0.1?10重量部の範囲である、請求項1または2に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記発泡剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として0.1?30重量部の範囲である、請求項1?3のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間であり、
ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスが125?1000の範囲であり、かつ
前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下であり、かつ20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である難燃性ウレタン樹脂組成物を形成するための、(A)ポリイソシアネート化合物を含有する第1液、(B)ポリオール化合物を含有する第2液、(C)三量化触媒、(D)発泡剤、(E)整泡剤および(F)添加剤として赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含むシステム。
【請求項6】
(A)ポリイソシアネート化合物を含有する第1液と反応させて生じた難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間であり、
ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスが125?1000の範囲であり、かつ
前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、10分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下であり、かつ20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である
難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を形成するための、ポリオール化合物を含有する第2液であって、
前記第2液が、(B)ポリオール化合物、(C)三量化触媒、(D)発泡剤、(E)整泡剤および(F)添加剤として赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含む、ポリオール化合物を含有する第2液。」
(以下、出願1請求項1?6に係る発明を、それぞれ「出願1発明1」等といい、まとめて「出願1発明」という。)

(2)対比及び判断
上記第2で示したとおり、本件訂正前の請求項2は削除されたため、本件訂正発明には、ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスに係る規定が存在しない。このため、例えば本件訂正発明1と出願1発明1とは、少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1
出願1発明1は「ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスが125?1000の範囲」であるのに対し、本件訂正発明1は「ウレタン樹脂のイソシアネートインデックス」に係る規定が存在しない。

本件訂正発明1に関し、イソシアネートインデックスが125?1000であると解される本件優先日時点の技術常識があるとはいえないから、相違点1は実質的な相違点であり、本件訂正発明1と出願1発明1とは、同一とはいえない。また、対応する本件訂正発明3と出願1発明2、本件訂正発明4と出願1発明3、本件訂正発明5と出願1発明4、本件訂正発明7と出願1発明5の各々についても同様に、それぞれ同一とはいえない。

(3)まとめ
よって、「5 理由Dについて」で示した取消理由には、理由がない。

第6 異議申立ての理由についての検討
1 申立人の異議申立ての理由について
各申立人の異議申立ての理由は、概要、以下のとおりである。

(1)申立人Aの異議申立ての理由
甲第1号証:特開昭57-36114号公報
甲第2号証:特公昭41-13154号公報
甲第3号証:特開2010-53267号公報
甲第4号証:特開2006-321882号公報
(以下、申立人Aが提出した甲第1?4号証を「甲A1」?「甲A4」という。)

・申立ての理由A1
本件発明8は、甲A1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由A2
本件発明1?8は、甲A1に記載された発明及び甲A3?A4あるいは甲A2?A4に記載された技術的事項に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由A3
本件発明1?8は、組成要件に記載されている各成分を混合するのみで、どのようにすれば本件発明の物性要件を満たす難燃性ウレタン樹脂組成物を製造することができるのか理解できない。(A3-1)
本件発明1?8は、添加剤の含有量や添加剤の種類が特定されていない。(A3-2)
したがって、本件発明1?8は発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
また、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?8を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明1?8に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由A4
本件発明1?8は、明細書の記載を参酌しても、係る「難燃性ウレタン樹脂組成物」が、「ウレタン樹脂を製造するための材料」を意味するのか、あるいは、「ウレタン樹脂の硬化物」を意味するのか等、「難燃性ウレタン樹脂組成物」が何を意味するのか不明確である。(A4-1)
本件発明8の物性要件は、「ポリオール化合物を含有する第2液」のみで決まるものではなく、「(A)ポリイソシアネート化合物を含有する第1液」との配合割合や、製造条件等により決まることは明らかであるから、また、本件明細書には、「(A)ポリイソシアネート化合物を含有する第1液」の種類や量に関係なく、「ポリオール化合物を含有する第2液」によって、本件発明8の物性要件を満たすことは記載されていないから、本件発明8の「ポリオール化合物を含有する第2液」は、特許を受けようとする発明の範囲が不明確である。(A4-2)
したがって、本件特許請求の範囲に記載された発明は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明1?8に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立人Bの異議申立ての理由
甲第1号証:中国特許第102585148号明細書
甲第2号証:特開2008-88356号公報
甲第3号証:日本ウレタン工業協会火災問題対策委員会
「硬質ポリウレタンフォームの火災及び防災に関する
Q&A集 第2版 2009年5月」
2011年5月一部修正追加
甲第4号証:特開昭47-8544号公報
甲第5号証:米国特許第3330783号明細書
甲第6号証:A.Zhang, et al., Advanced Materials Research,
vols.374-377, 2011, 1563-1566
甲第7号証:特開2004-123972号公報
甲第8号証:特許第3950980号公報
甲第9号証:特開2003-64209号公報
甲第10号証:特開平10-168150号公報
甲第11号証:西原一監修「難燃性高分子材料の高性能化技術」
シーエムシー出版、平成14年6月20日、
172?177頁
甲第12号証:西沢仁著「【新しい】難燃剤・難燃化技術
-講演データ資料集&最新特許情報-」、技術情報協会
平成20年7月31日、52?53頁
甲第13号証:佐藤進他、工業化学雑誌、70(9),1967,1592-1598
甲第14号証:特願2015-537055号(本件の親出願)の
平成30年3月5日提出の意見書
甲第15号証:特願2018-94044号(本件)の
平成31年3月22日付け拒絶理由通知書
(以下、申立人Bが提出した甲第1?15号証を「甲B1」?「甲B15」という。)

・申立ての理由B1
本件発明1?8は、甲B1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件発明1?8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由B2
本件発明1?8は、甲B1に記載された発明及び甲B3に記載された技術的事項に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(B2-1)
また、本件発明1?8は、甲B2に記載された発明及び甲B4?B13に記載された技術的事項に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(B2-2)
よって、本件発明1?8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由B3
20分経過時の総発熱量の規定に関し、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?8を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明1?8に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由B4
20分経過時の総発熱量の規定に関し、本件発明1?8は発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明1?8に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・申立ての理由B5
^(13)C NMRのピーク強度の規定に関し、本件特許請求の範囲に記載された発明は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものである。
よって、本件発明1?8に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

2 申立ての理由A1、A2について
(1)甲A1に記載された発明
甲A1の記載(特許請求の範囲、2頁右下欄1?6行、4頁右下欄14行?5頁左上欄10行、第1表、実施例(1)?(3))によれば、特に実施例(1)(4頁右下欄14行?5頁左上欄10行、第1表)に着目すると、甲A1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「ポリオールA(OH価約50のポリエーテルポリオール(グリセリン系)) 50pbw、
触媒A(N、N’、N’’-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン)0.9pbw、
触媒B(酢酸カリウムのジエチレングリコール溶液)7.5pbw、
シリコーンオイル 1.0pbw、
水 0.3pbw、
フレオン11 2.0pbw、
被覆した赤リン(NOVARED#120(燐化学工業))4pbw(2wt%)、
を含む反応混合物に、
粗製MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)145重量部
を加えた、ポリイソシアヌレートフォームを得るための原料。」(以下、「甲A1発明」という。)

(2)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲A1発明とを対比する。
甲A1発明における「粗製MDI」、「ポリオールA」は、それぞれ、本件訂正発明1における「ポリイソシアネート化合物」、「ポリオール化合物」に相当する。
甲A1発明における「触媒A」、「触媒B」は、甲A1の記載(4頁左下欄1?9行)からみて、いずれも、本件訂正発明1における「三量化触媒」に相当する。
甲A1発明における「水」は、甲A1の記載(特許請求の範囲の請求項3)からみて、本件訂正発明1における「発泡剤」に相当する。
甲A1発明における「シリコーンオイル」は、甲A1の記載(4頁左下欄10?17行)からみて、本件訂正発明1における「整泡剤」に相当する。
甲A1発明における「被覆した赤リン」に含まれる「赤リン」は、甲A1の記載(3頁左上欄18行?右上欄6行)からみて、本件訂正発明1における「赤リン」である「添加剤」に相当する。
以上の対比を踏まえると、甲A1発明における「ポリイソシアヌレートフォームを得るための原料」は、本件訂正発明1における「難燃性ウレタン樹脂組成物」に相当するといえる。
以上によれば、本件訂正発明1と甲A1発明とは、
「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物であって、
該添加剤が、赤リンを含有する、
難燃性ウレタン樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点2
本件訂正発明1では、添加剤として、赤リンと、「リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つ」とを含有するのに対して、甲A1発明では、赤リンのみ含む点。
・相違点3
本件訂正発明1では、「該難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における、^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間」であるのに対して、甲A1発明では、原料を用いて得られたポリイソシアヌレートフォームにおける「^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間」であるかどうか不明である点。
・相違点4
本件訂正発明1では、「前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」のに対して、甲A1発明では、原料を用いて得られたポリイソシアヌレートフォームを、「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」かどうか不明である点。

イ 検討
事案に鑑み、相違点4について検討する。
甲A1発明に係る原料を用いて得られたポリイソシアヌレートフォームを「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」か否かは不明であり、また、そもそも上記総発熱量が達成できるか否かも不明である。この点に関し、甲A1発明において、さらに赤リン以外の難燃剤を含有させた場合についても、同様である。
加えて、甲A2?A4に記載された技術的事項を参照しても、上記総発熱量を達成できるか否かも不明である。
そうすると、甲A1発明において、原料を用いて得られたポリイソシアヌレートフォームを、「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」と特定することが、当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲A1に記載された発明並びに甲A2?A4に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件訂正発明7について
本件訂正発明7と甲A1発明との間には、上記の本件訂正発明1と甲A1発明と同様の相違点2?4が存在する。
そうすると、本件訂正発明7は甲A1に記載された発明とはいえず、上記(2)イで検討したことと同様、本件訂正発明7は、甲A1に記載された発明並びに甲A2?A4に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)イで述べたとおり、本件訂正発明1が甲A1に記載された発明並びに甲A2?A4に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明3?5についても同様、甲A1に記載された発明並びに甲A2?A4に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1、3?5、7は、いずれも、甲A1に記載された発明並びに甲A2?A4に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立ての理由A1、A2には理由がない。

3 申立ての理由A3について
本件訂正発明は、添加剤が「赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つ」となった。
このため、上記第5 2と同旨により、本件発明の詳細な説明は、本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、本件訂正発明は、本件発明の詳細な説明に記載したものといえる。
よって、申立ての理由A3には理由がない。

4 申立ての理由A4について
理由A4-1において申立人Aが主張する点については、上記第5 3と同旨により、本件訂正発明は明確であるといえる。
よって、申立ての理由A4には理由がない。

5 申立ての理由B1、B2-1について
(1)甲B1に記載された発明
甲B1の訳文として、申立人Bが提出した抄訳を用いる。以下、記載箇所の特定は、訳文に基づいて行う。
甲B1の記載(請求の範囲、[0008]、[0046]、[0053]?[0077]、実施例1?7)によれば、特に実施例1、4、6([0046]、[0053]?[0075])に着目すると、甲B1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「ポリオール3(無水フタル酸、テレフタル酸とDEGの重縮合で得られる、水酸基価が260mgKOH/gで平均官能価が2のポリオール)5重量%、
ポリオール5(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、テレフタル酸とDEGの重縮合で得られる、水酸基価が250mgKOH/gで平均官能価が3のポリオール)15重量%、
ポリオール6(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを開始剤として、エピクロロヒドリンと開環重合させて得られる、水酸基価が286mgKOH/gで平均官能価が3のポリオール)10重量%、
ポリオール7(エチレンジアミンを開始剤としてポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドと重合させて得られる、重量平均分子量が300で、平均官能価が4のポリオール)7重量%、
活性水素原子を含む低分子量ポリオール(グリセリン)1重量%、
反応性難燃剤(FR-130(広東万華栄威ポリウレタン有限公司製造、テトラブロモビスフェノールAとエチレンオキシド/プロピレンオキシドとの反応生成物を主体とする反応性難燃剤、水酸基価が130mgKOH/g)5重量%、
固体難燃剤1(RM4-7081(道康寧公司製造、シリコーン難燃剤)5重量%
固体難燃剤2(HP1250(上海洽普化工有限公司製造、赤リン)5重量%、
液体有機難燃剤(トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート60wt%とトリエチルホスフェート40wt%の混合物)30重量%、
水(蒸留水)1.5重量%、
触媒(15wt%のPC5、25wt%のPC8、25wt%のPC46、35wt%のTMR-2、の混合物(PC5、PC8、PC46、TMR-2はいずれも、ガス製品・化学公司が製造するアミン及び第4級アンモニウム塩型触媒))4重量%、
泡安定剤(B8525(高斯米特公司製造、ポリシロキサン化合物)1.5重量%、
発泡剤(HCFC-141b(浙江三美公司製造、ジクロロフルオロエタン)10重量%、
ポリイソシアネート(煙台万華ポリウレタン股分有限公司製造のPM400、そのNCO含量は30.9%)135重量%、
を含む、高難燃性ポリイソシアヌレートフォーム調製用の原材料。」(以下、「甲B1発明1」という。)

「ポリオール2(無水フタル酸とDEGの重縮合で得られる、水酸基価が200mgKOH/gで平均官能価が2のポリオール)25重量%、
ポリオール4(ジメチルテレフタレート、DEG、アジピン酸を原料として、エステル交換反応や重縮合などの反応により得られる、水酸基価が250mgKOH/gで平均官能価が2のポリオール)10重量%、
ポリオール7(エチレンジアミンを開始剤としてポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドと重合させて得られる、重量平均分子量が300で、平均官能価が4のポリオール)3重量%、
反応性難燃剤(FR-130(広東万華栄威ポリウレタン有限公司製造、テトラブロモビスフェノールAとエチレンオキシド/プロピレンオキシドとの反応生成物を主体とする反応性難燃剤、水酸基価が130mgKOH/g)8重量%、
固体難燃剤1(RM4-7081(道康寧公司製造、シリコーン難燃剤)5重量%
固体難燃剤2(HP1250(上海洽普化工有限公司製造、赤リン)10重量%、
液体有機難燃剤(トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート60wt%とトリエチルホスフェート40wt%の混合物)13重量%、
水(蒸留水)2重量%、
触媒(15wt%のPC5、25wt%のPC8、25wt%のPC46、35wt%のTMR-2、の混合物(PC5、PC8、PC46、TMR-2はいずれも、ガス製品・化学公司が製造するアミン及び第4級アンモニウム塩型触媒))3重量%、
泡安定剤(B8525(高斯米特公司製造、ポリシロキサン化合物)3重量%、
発泡剤(HCFC-141b(浙江三美公司製造、ジクロロフルオロエタン)18重量%、
ポリイソシアネート(煙台万華ポリウレタン股分有限公司製造のPM400、そのNCO含量は30.9%)160重量%、
を含む、高難燃性ポリイソシアヌレートフォーム調製用の原材料。」(以下、「甲B1発明2」という。)

「ポリオール5(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、テレフタル酸とDEGの重縮合で得られる、水酸基価が250mgKOH/gで平均官能価が3のポリオール)38重量%、
ポリオール6(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを開始剤として、エピクロロヒドリンと開環重合させて得られる、水酸基価が286mgKOH/gで平均官能価が3のポリオール)14重量%、
ポリオール7(エチレンジアミンを開始剤としてポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドと重合させて得られる、重量平均分子量が300で、平均官能価が4のポリオール)2重量%、
反応性難燃剤(FR-130(広東万華栄威ポリウレタン有限公司製造、テトラブロモビスフェノールAとエチレンオキシド/プロピレンオキシドとの反応生成物を主体とする反応性難燃剤、水酸基価が130mgKOH/g)6重量%、
固体難燃剤2(HP1250(上海洽普化工有限公司製造、赤リン)3重量%、
液体有機難燃剤(トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート60wt%とトリエチルホスフェート40wt%の混合物)18重量%、
水(蒸留水)0.3重量%、
触媒(15wt%のPC5、25wt%のPC8、25wt%のPC46、35wt%のTMR-2、の混合物(PC5、PC8、PC46、TMR-2はいずれも、ガス製品・化学公司が製造するアミン及び第4級アンモニウム塩型触媒))1.5重量%、
泡安定剤(B8525(高斯米特公司製造、ポリシロキサン化合物)2重量%、
発泡剤(HCFC-141b(浙江三美公司製造、ジクロロフルオロエタン)15.2重量%、
ポリイソシアネート(煙台万華ポリウレタン股分有限公司製造のPM400、そのNCO含量は30.9%)170重量%、
を含む、高難燃性ポリイソシアヌレートフォーム調製用の原材料。」(以下、「甲B1発明3」という。)

(2)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲B1発明1?3とを対比する。
甲B1発明1?3における「ポリイソシアネート」は、本件訂正発明1における「ポリイソシアネート化合物」に相当する。
甲B1発明1?3における「ポリオール2」?「ポリオール7」は、いずれも、本件訂正発明1における「ポリオール化合物」に相当する。
甲B1発明1?3における「触媒」は、「アミン及び第4級アンモニウム塩型触媒」であるが、このうち、「第4級アンモニウム塩型触媒」は、本件明細書の記載(【0049】、【0050】)及び技術常識からみて、本件訂正発明1における「三量化触媒」に相当する。
甲B1発明1?3における「水」、「発泡剤」は、本件明細書の記載(【0052】)及び技術常識からみて、いずれも、本件訂正発明1における「発泡剤」に相当する。
甲B1発明1?3における「泡安定剤」は、甲B1の記載([0048])からみて、本件訂正発明1における「整泡剤」に相当する。
甲B1発明1?3における「固体難燃剤2」は、「赤リン」を含むものであるから、本件訂正発明1における「赤リン」である「難燃剤」に相当する。
甲B1発明1?3における「液体有機難燃剤」は、「トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート60wt%とトリエチルホスフェート40wt%の混合物」であるから、本件訂正発明1における「赤リン以外」の「難燃剤」である「リン酸エステル」に相当する。
以上の対比を踏まえると、甲B1発明1?3における「高難燃性ポリイソシアヌレートフォーム調製用の原材料」は、本件訂正発明1における「難燃性ウレタン樹脂組成物」に相当するといえる。
以上によれば、本件訂正発明1と甲B1発明1?3とは、
「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物であって、
前記添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも一つとを含有する、
難燃性ウレタン樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点5
本件訂正発明1では、「該難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における、^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間」であるのに対して、甲B1発明1?3では、原料を用いて得られたポリイソシアヌレートフォームにおける「^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間」であるかどうか不明である点。
・相違点6
本件訂正発明1では、「前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」のに対して、甲B1発明1?3では、原料を用いて得られたポリイソシアヌレートフォームを、「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」かどうか不明である点。

イ 検討
(ア)事案に鑑み、まず相違点6が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲B1発明1?3は、固体難燃剤2(赤リン)及び液体有機難燃剤を含むものであるから、一定程度は難燃性に優れていると解されるものの、甲B1発明1?3に係る原材料を用いて調製したポリイソシアヌレートフォームを、「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」かどうかは、不明というほかなく、また、そのように認めるに足りる証拠もない。
以上によれば、相違点6は実質的な相違点である。
したがって、本件訂正発明1は、甲B1に記載された発明であるとはいえない。

(イ)次に、相違点6の容易想到性について検討する。
甲B3には、建築防火材料用難燃性試験基準に関し、準不燃材料では、コーンカロリメーター試験(ISO 5660-1 at 50KW/m^(2))で、「≦8MJ/m^(2) and ≦200kw/m^(2)」(加熱時間10分)であること、不燃材料では、同試験で、「≦8MJ/m^(2) and ≦200kw/m^(2)」(加熱時間20分)であることが記載されている。
そして、申立人Bは、「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」ことは、実質的に難燃性に関するISO規格であり、「発明が解決しようとする課題(効果)そのものを構成要素としたもの」であることは明らかである旨、主張する。
しかし、「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」ことが難燃性に関するISO規格であるとしても、上記(ア)で述べたとおり、甲B1発明1?3に係る原材料を用いて調製したポリイソシアヌレートフォームを、「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」かどうかは、不明であり、また、そもそも、そのような総発熱量が達成できるかどうかも不明である。
このため、申立人Bの上記主張を採用することはできない。
そうすると、甲B1発明1?3において、原材料を用いて調製したポリイソシアヌレートフォームを、「ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」と特定することが、当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲B1に記載された発明並びに甲B3に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件訂正発明7について
本件訂正発明7と甲B1発明との間には、上記の本件訂正発明1と甲B1発明と同様の相違点5?6が存在する。
そうすると、上記(2)イで検討したことと同様、本件訂正発明7は、甲B1に記載された発明並びに甲B3に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)イで述べたとおり、本件訂正発明1が甲B1に記載された発明並びにその余の甲各号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明3?5についても同様、甲B1に記載された発明並びに甲B3に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1、3?5、7は、いずれも、甲B1に記載された発明であるとはいえない。
また、本件訂正発明1、3?5、7は、いずれも、甲B1に記載された発明及び甲B3に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立ての理由B1、B2-1には理由がない。

6 申立ての理由B2-2について
(1)甲B2に記載された発明
甲B2の記載(請求項1、【0006】、【0022】?【0025】、【0033】、【0038】?【0043】、表1、表2、実施例1?8)によれば、特に実施例1?8(表1、表2)に着目すると、甲B2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「ポリオール化合物 100重量部、
トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート 10重量部、
整泡剤(SH-193、Si含有率=30wt%、ポリオキシアルキレングリコール=ポリオキシエチレングリコール、東レダウコーニングシリコン)6重量部、
触媒A(オクチル酸カリウム)2.4重量部、
触媒B(カオライザーNo.420(花王))0.4重量部、
触媒C(カオライザーNo.1(Kao-No.1)(花王))0.5重量部、
発泡剤(水)2.0重量部、
発泡剤(シクロペンタン)15.0重量部、
を含むポリオール組成物に、
ポリイソシアネート成分(高官能粗製MDI(粘度400mPa・s、市販品))を、NCO/OH当量比が3.5となるよう混合した、硬質ポリウレタンフォームを形成するための原料であって、
当該原料を用いて形成した硬質ポリウレタンフォームを、ISO-5660に準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて20分間加熱したときの総発熱量が3.5?7.6MJ/m^(2)である、
硬質ポリウレタンフォームを形成するための原料。」(以下、「甲B2発明」という。)

(2)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲B2発明とを対比する。
甲B2発明における「ポリイソシアネート成分」は、本件訂正発明1における「ポリイソシアネート化合物」に相当する。
甲B2発明における「ポリオール化合物」は、本件訂正発明1における「ポリオール化合物」に相当する。
甲B2発明における「触媒A(オクチル酸カリウム)」、「触媒B(カオライザーNo.420(花王))」は、甲B2の記載(【0030】)からみて、本件訂正発明1における「三量化触媒」に相当する。
甲B2発明における「発泡剤(水)」、「発泡剤(シクロペンタン)」は、本件訂正発明1における「発泡剤」に相当する。
甲B2発明における「整泡剤」は、本件訂正発明1における「整泡剤」に相当する。
甲B2発明における「トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート」は、甲B2の記載(【0033】)からみて、本件訂正発明1における「添加剤」のうち「リン酸エステル」に相当する。
甲B2発明における「ISO-5660に準拠し、放射熱強度50kW/m^(2)にて20分間加熱したときの総発熱量が3.5?7.6MJ/m^(2)である」ことは、本件訂正発明1における「前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である」ことに一致する。
以上の対比を踏まえると、甲B2発明における「硬質ポリウレタンフォームを形成するための原料」は、本件訂正発明1における「難燃性ウレタン樹脂組成物」に相当するといえる。
以上によれば、本件訂正発明1と甲B2発明とは、
「ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物であって、
前記添加剤が、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも一つを含有する、
難燃性ウレタン樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
・相違点7
本件訂正発明1では、添加剤が「赤リン」を含むものであるのに対して、甲B2発明では、「赤リン」を含むものではない点。
・相違点8
本件訂正発明1では、「該難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における、^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間」であるのに対して、甲B2発明では、原料を用いて得られたポリイソシアヌレートフォームにおける「^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間」であるかどうか不明である点。

イ 検討
(ア)相違点7について検討する。
甲B2には、難燃剤について、好適な難燃剤としては、ハロゲン含有化合物、有機リン酸エステル類、水酸化アルミニウム等の金属化合物が例示され、その中でも有機リン酸エステル類の使用が好ましいことが記載されている(【0032】、【0033】)。現に、実施例1?8(表2)においても、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TMCCP)が用いられている。
しかし、甲B2には、難燃剤として赤リンを使用することについては、何ら記載されていないから、甲B2発明において、難燃剤として赤リンをさらに含有させることが動機付けられるとはいえない。

(イ)また、甲B2においては、コーンカロリー試験による不燃性規格をクリアする難燃性を有する硬質ポリウレタンフォームを形成することができるポリオール組成物を提供することを目的の一つとするものであり(【0006】)、実際、実施例1?8においても、硬質ポリウレタンフォームを、ISO-5660に準拠し、放射熱強度50kW/m^(2)にて20分間加熱したときの総発熱量が「8MJ/m^(2)以下」を満たす必要があるとして、その総発熱量を測定している。
甲B2発明は、上記のとおり、実施例に着目して認定したものであるが、実施例における総発熱量は既に「8MJ/m^(2)以下」を満たすものである。
そうすると、甲B4?B13に、難燃性を向上させるために赤リンを添加することや、赤リンと赤リン以外の難燃剤を併用することについて記載されているとしても、そもそも、上記のような甲B2発明において、敢えて、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TMCCP)以外の難燃剤をさらに含有させる必要性はなく、そのような動機付けを見いだすことはできない。

(ウ)以上によれば、甲B2発明において、難燃剤として赤リンをさらに含有させることが、当業者が容易に想到することができたということはできない。
したがって、相違点8について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲B2に記載された発明並びに甲B4?B13に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件訂正発明7について
本件訂正発明7と甲B2発明との間には、上記の本件訂正発明1と甲B2発明と同様の相違点7?8が存在する。
そうすると、上記(2)イで検討したことと同様、本件訂正発明7は、甲B2に記載された発明並びに甲B4?B13に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)イで述べたとおり、本件訂正発明1が甲B2に記載された発明並びにその余の甲各号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明3?5についても同様、甲B2に記載された発明並びに甲B4?B13に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件訂正発明1、3?5、7は、いずれも、甲B2に記載された発明並びに甲B4?B13に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立ての理由B2-2には理由がない。

7 申立ての理由B3、B4について
上記第5 2と同旨である。
よって、申立ての理由B3、B4には理由がない。

8 申立ての理由B5について
申立人Bは「明細書には、この「ベースライン」をどこにとるのかが全く記載されていない。ベースラインをどこにとるかによってピークトップまでの高さは異なるため、結果として、同一硬化物を13C NMRで測定したとしても、ベースラインの場所に依存した、複数のピーク強度比となる。したがって、ベースラインのとりかたが不明であるため、発明が不明確である。」と主張する。
しかし、NMRスペクトルに応じて、適切なベースラインを設定する必要があることは、本件出願時における技術常識である(必要であれば、https://www.jeol.co.jp/applications/detail/1787.html参照。)から、本件訂正発明においても、「^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比」が適切に測定できるよう、適切なベースラインを設定することは明らかである。
したがって、本件訂正発明は明確である。
よって、申立ての理由B5には理由がない。

9 まとめ
以上のことから、両申立人が主張する申立ての理由にはいずれも理由がなく、これらの申立ての理由によっては本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1、3?5、7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2、6、8に係る特許については、上述のとおり、これらの請求項を削除する訂正を含む本件訂正が認容されるため、特許異議の申立ての対象となる特許が存在しないものとなったことから、同請求項に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、三量化触媒、発泡剤、整泡剤および添加剤を含む難燃性ウレタン樹脂組成物であって、
該添加剤が赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含有し、
該難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における、^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間であり、
前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である
ことを特徴とする難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記添加剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として4.5重量部?70重量部の範囲である、請求項1に記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記三量化触媒が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として0.1?10重量部の範囲である、請求項1または3のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記発泡剤が、前記ポリイソシアネート化合物および前記ポリオール化合物からなるウレタン樹脂100重量部を基準として0.1?30重量部の範囲である、請求項1、3、4のいずれかに記載の難燃性ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物における^(13)C NMRで測定したときのウレタンのカルボニル基のピークに対するイソシアヌレートのカルボニル基のピークの強度比が0.3?3.5の間であり、かつ
前記難燃性ウレタン樹脂組成物の硬化物を、ISO-5660の試験方法により準拠して、放射熱強度50kW/m^(2)にて加熱したときに、20分経過時の総発熱量が8MJ/m^(2)以下である難燃性ウレタン樹脂組成物を形成するための、(A)ポリイソシアネート化合物を含有する第1液、(B)ポリオール化合物を含有する第2液、(C)三量化触媒、(D)発泡剤、(E)整泡剤および(F)添加剤として赤リンと、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤、及び金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つとを含むシステム。
【請求項8】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-03-31 
出願番号 特願2018-94044(P2018-94044)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08G)
P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 536- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小森 勇  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 大熊 幸治
橋本 栄和
登録日 2019-08-02 
登録番号 特許第6564496号(P6564496)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 難燃性ポリウレタン樹脂組成物  
代理人 石井 豪  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 田口 昌浩  
代理人 虎山 滋郎  
代理人 田口 昌浩  
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