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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B05B |
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管理番号 | 1374968 |
異議申立番号 | 異議2020-701022 |
総通号数 | 259 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-28 |
確定日 | 2021-06-22 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6749741号発明「気体噴出装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6749741号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6749741号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)10月1日(優先権主張 平成30年10月8日)を国際出願日とする出願であって、令和2年8月14日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、特許掲載公報が同年9月2日に発行され、その後、その特許に対し、同年12月28日に特許異議申立人 イースタン技研株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 以下、請求項の番号に応じて各発明を「本件特許発明1」のようにいう。 【請求項1】 複数のノズルを近接して配置した気体噴出装置であって、 前記ノズルは互いの回転を阻害しないように近接して配置され、かつすべて同一方向に回転させる筐体と、 気体を受け入れる流体流路を備え、回転可能に保持された回転体と、 前記回転体から内部が遮られずに延び、前記気体をオリフィスから噴射させるノズル部材と、 前記回転体および前記ノズル部材を収容する保護カバーと 保護カバー内部で、前記オリフィスを収容する空間を画定する底板と、 を備える前記ノズルと を有し、 前記ノズル部材は、前記回転体に接合され、前記回転体との接合部から前記ノズル部材の内径を保持して前記オリフィスまで屈曲して延びる、気体噴出装置。 【請求項2】 前記ノズル部材は、前記流体流路と前記オリフィスとの間に延び、前記底板に対して周方向および垂直方向に対して傾斜して延びる、請求項1に記載の気体噴出装置。 【請求項3】 前記ノズル部材は、垂直に対して5?60°傾斜して前記底板にまで延びる、請求項1または2に記載の気体噴射装置。 【請求項4】 前記流体流路の最下部の断面積Sと、前記ノズル部材の断面積S1との比、S/S1が、2?100である、請求項1?3のいずれか1項に記載の気体噴射装置。 【請求項5】 前記流体流路の上端は、前記ノズルの上端よりも低い位置まで延びて、クリアランスを提供する、請求項1?4のいずれか1項に記載の気体噴射装置。 【請求項6】 前記流体流路は、前記ノズル部材に至るまで径が拡大するように形成された、請求項1?5のいずれか1項に記載の気体噴射装置。 第3 特許異議申立理由の概要 特許異議申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由は、おおむね次のとおりである。 1 申立理由(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如) 本件特許発明1ないし6は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 特許異議申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。 ・甲第1号証:特開2011-20077号公報 ・甲第2号証:特開2005-131502号公報 ・甲第3号証:特開平10-88800号公報 ・甲第4号証:特開2006-122846号公報 ・甲第5号証:特開2008-36617号公報 以下、順に「甲1」のようにいう。 第4 当審の判断 当審は、以下に述べるように、申立理由には理由はないと判断する。 1 甲1の記載事項 甲1には、「洗浄ノズル及びこの洗浄ノズルを備えた洗浄装置」に関し、以下の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同様。)。 ・「【請求項1】 回転自在に支持された回転ヘッドと、前記回転ヘッドに設けられたエアー噴射口と、前記回転ヘッドに設けられた水噴射口とを備え、前記エアー噴射口から噴射されたエアーによって前記回転ヘッドを回転させて渦状の気流を発生させ、前記水噴射口から噴射された水を前記渦状の気流に巻き込ませて被洗浄物に衝突させることを特徴とする洗浄ノズル。 ・・・ 【請求項3】 請求項1または2に記載した洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルのエアー噴射口から噴射させるエアーを供給するエアー供給手段と、前記洗浄ノズルの水噴射口から噴射させる水を供給する水供給手段とを備え、洗浄時には、前記エアー供給手段から供給されたエアーによる渦状の気流に前記水供給手段から供給された水を巻き込ませた上で被洗浄物に衝突させ、乾燥時には、前記エアー供給手段から供給されたエアーによる渦状の気流をそのまま被洗浄物に衝突させることを特徴とする洗浄装置。 【請求項4】 請求項3に記載した洗浄装置において、 被洗浄物の搬送方向へ直列配置された複数の洗浄ノズルを備え、前記搬送方向に隣り合う洗浄ノズルの回転ヘッドは互いに異なる方向に回転することを特徴とする洗浄装置。 【請求項5】 請求項4に記載した洗浄装置において、 被洗浄物の搬送方向へ直列及び並列配置された複数の洗浄ノズルを備え、並列方向では回転ヘッドは端部側が重なりながら互い違いになっていることを特徴とする洗浄装置。」 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は洗浄ノズル及びこの洗浄ノズルを備えた洗浄装置に係り、特にエアーと水の両方を噴射する洗浄ノズル及びこの洗浄ノズルを備えた洗浄装置に関するものである。」 ・「【0006】 本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、被洗浄物に付着した汚れを確実に除去することができる洗浄ノズル及びこの洗浄ノズルを備えた安価な洗浄装置を提供することを、その目的とする。」 ・「【発明を実施するための形態】 【0014】 本発明の第1の実施の形態に係る洗浄装置1を図1から図7にしたがって説明する。 図1において符号3は装置本体を示し、この装置本体3はケース103を備えている。ケース103内には支持ボックス101が備えられており、この支持ボックス101はケース103の天板103aから吊り下げられた状態で備えられている。 ・・・ 即ち、支持ボックス101には、開口105、開口109、雌ネジ孔107及び雌ネジ孔111を一組とするノズル取付部112が四組設けられている。 【0015】 四組のノズル取付部112には、洗浄ノズル5が下向きにそれぞれ取り付けられている。・・・ 洗浄ノズル5aは固定ベース部7、支持ケース部9、一対のボールベアリング11、ノズル本体13、プレート部15、取付板16及び蓋体17によって構成されている。 ・・・ 【0017】 支持ケース部9の構成について説明する。 符号41はカバー部を示し、このカバー部41は短寸法の円筒状に形成されている。カバー部41は一方側(図3において上側)が開口しており、他方側には底板41aが形成されている。この底板41aの中心部には円筒管43が貫通する状態で連結されており、円筒管43の一端部(図3において上端部)は僅かに底板41aから突出している。円筒管43の他端部には矩形の固定板45が取り付けられており、この固定板45には円筒管43に連通する開口47(図4参照)が形成されている。 また、固定板45の四隅にはネジ挿通孔49がそれぞれ形成されている。【0018】 ノズル本体13の構成について説明する。 符号51は円筒管を示し、この円筒管51の一端部側の外周面(図3において上端部側の外周面)には一対のパイプ55が取り付けられている。一対のパイプ55の基端部は円筒管51の外周面を貫通して円筒管51の内部と連通している。また一対のパイプ55の先端部は、先端側開口であるエアー噴射口57が図6において時計回りの方向を向き、且つ図3において斜め上方(図1において斜め下方)を向くように曲げられている。 ・・・ 【0023】 蓋体17の構成について説明する。 蓋体17は円盤状を為しており、この蓋体17には長円形の一対の穴93が形成されている。一対の穴93はノズル本体13のパイプ55のエアー噴射口57に対応して配置されている。 蓋体17には、円形の穴から成る一対の水噴射口95が形成されており、水噴射口95どうしは互いに離間して蓋体17の縁部近傍に配置されている。 回転ヘッド115はノズル本体13、プレート部15、取付板16および蓋体17によって構成されている。 【0024】 洗浄ノズル5aは図4、図5に示すように組み立てられている。 固定ベース7は支持ボックス101の上面(図4では上面が下側を向いている。)に当接させられる。この状態でネジ113によって固定ベース7が支持ボックス101に固定されている。 ・・・ 【0025】 支持ケース部9は支持ボックス101の下面(図4では下面が上側を向いている。)に備えられており、ネジ113によって支持ケース部9が支持ボックス101に固定されている。 ボールベアリング11のステータ側11aは支持ケース部9の円筒管43に固定され、ロータ側11bはノズル本体13の円筒管51に固定されており、ステータ側11aとロータ側11bとの間にはボール11cが介装されている。従って、ノズル本体13は支持ケース部9に対し回転自在に支持されている。 ・・・ 【0028】 図6に示すように洗浄ノズル5c、5dの一対のパイプ55の先端部は、洗浄ノズル5a、5bとは逆に、エアー噴射口57が図6において反時計回りの方向を向くように曲げられている。 4つの洗浄ノズル5は千鳥状に配置されており、洗浄ノズル5a、5cは後述する被洗浄物してのコンテナCの搬送方向(図6において左右方向)に直列配置され、洗浄ノズル5b、5dもコンテナCの搬送方向に直列配置されている。即ち、搬送方向に対して二列に並列配置されている。並列方向では、洗浄ノズル5a、5cと洗浄ノズル5b、5dは、回転ヘッド115の端部側が重なりながら互い違いになっている。従って、洗浄ノズル5a、5b、5c、5dの各洗浄領域は重なり合っており、搬送されてくるコンテナCを完全にカバーしている。」 ・「【0031】 次に、洗浄装置1の動作について説明する。 洗浄装置1の図示しないスイッチを入れるとエアー用ポンプが作動し、エアーがエアー供給管121、支持ボックス101に流れて洗浄ノズル5に供給される。そして洗浄ノズル5に供給されたエアーが図5の矢印に示すようにノズル本体13の円筒管51、パイプ55に流れて、エアー噴射口57から噴射される。 また、水用ポンプが作動し、水が給水ホース123に流れて洗浄ノズル5に供給される。そして洗浄ノズル5に供給された水が図4の矢印に示すように給水管27、凹部73、水路溝79に流れて、水噴射口95から噴射される。 【0032】 エアー噴射口57から噴射されたエアーにより、図6の矢印に示すように洗浄ノズル5a、5bの回転ヘッド115が反時計回りの方向に回転し、洗浄ノズル5c、5dの回転ヘッド115が時計回りの方向に回転する。即ち、搬送方向に隣り合う洗浄ノズル5a、5cまたは洗浄ノズル5b、5dの回転ヘッド115は互いに異なる方向に回転する。 【0033】 回転ヘッド115が回転すると、一対のパイプ55のエアー噴射口57が円形の軌道xを描くように移動するので、洗浄ノズル5の下側に渦状の気流が発生する。そして、水噴射口95から噴射された水は、この渦状の気流に巻き込まれる。従って、水は渦巻状に噴射されることになる。回転ヘッド115が回転することによってエアー噴射口57が描く円形の軌道xに囲まれた領域内に水噴射口95が配置されているので、水噴射口95から噴射された水は、渦状の気流に確実に巻き込まれる。なお、ここでエアー噴射口57が描く円形の軌道xに囲まれた領域内とは、エアー噴射口57が描く円形の軌道x上を含む領域をいう。 ・・・ 【0035】 また、前述したように搬送方向に隣り合う洗浄ノズル5a、5cまたは洗浄ノズル5b、5dの回転ヘッド115は互いに異なる方向に回転するため、これらの洗浄ノズル5a、5cまたは洗浄ノズル5b、5dの下側には互いに逆回転となる渦状に水が噴射される。従って、コンテナCの内側の底面や側面に多方向から水を確実に当てることができる。 しかも、洗浄ノズル5a、5cと洗浄ノズル5b、5dの一部どうしが互いにコンテナCの搬送方向に交差する方向において重なって配置されているので、洗浄ノズル5a、5cと洗浄ノズル5b、5dとの境界部分におけるコンテナCの洗い残しを完全に防止することができる。 【0036】 コンテナC等の被洗浄物に多方向から水を衝突させることができるため、被洗浄物に付着した防錆剤、切削油、切削屑等の汚れに対して衝撃を与えることができる。これにより水噴射口95から噴射される水の圧力をそれほど高くしなくても、被洗浄物に付着した汚れを十分に除去できる。従って、高価な高水圧用ポンプを設ける必要がない。」 ・「【0037】 次に、水用ポンプが停止し、水噴射口95から噴射されていた水を止める。なおエアー用ポンプは作動状態のままである。そして載置台133に載せられたコンテナCが図1において仮想線で示す位置から左方向に搬送されて、コンテナCが乾燥させられる。前述したように洗浄ノズル5の下側には渦状の気流が発生しているため、コンテナCが洗浄ノズル5の下側を通るときには、図7に示すようにコンテナCの内側の底面等に多方向からエアーが当たる。従って、洗浄によってコンテナCに付着した水を確実に除去することができる。 【0038】 ・・・ また、エアー噴射口57から噴射されるエアーを、被洗浄物の洗浄と被洗浄物の乾燥とに兼用しているため、別途乾燥装置を設ける必要がない。 上記したように洗浄装置1は乾燥装置、高水圧用ポンプ及びヒーターを設ける必要がないため、コストを低く抑えることが可能となる。」 ・「【図5】 ![]() 【図6】 ![]() 」 2 甲1に記載された発明 甲1には、第一の実施の形態に係る洗浄装置の記載、【図5】及び【図6】から、以下の発明が記載されていると認める。 <甲1発明> 「洗浄装置において、装置本体3はケース103を備え、ケース103内には支持ボックス101が備えられており、支持ボックス101に設けられた四組のノズル取付部112には、洗浄ノズル5が下向きにそれぞれ取り付けられており、 洗浄ノズル5は、固定ベース部7、支持ケース部9、一対のボールベアリング11、ノズル本体13、プレート部15、取付板16及び蓋体17によって構成され、 支持ケース部9は、短寸法の円筒状に形成され一方側が開口しているカバー部41を有し、 ノズル本体13は、円筒管51を有し、その一端部側の外周面には一対のパイプ55が取り付けられ、一対のパイプ55の基端部は円筒管51の外周面を貫通して円筒管51の内部と連通し、一対のパイプ55の先端部は、先端側開口であるエアー噴射口57が時計回りの方向を向き、且つ斜め上方を向くように曲げられており、 蓋体17は、円盤状を為しており、一対の穴93がノズル本体13のパイプ55のエアー噴射口57に対応して配置され、一対の水噴射口95が互いに離間して蓋体17の縁部近傍に配置されており、 回転ヘッド115は、ノズル本体13、プレート部15、取付板16および蓋体17によって構成され、 支持ケース部9は、支持ボックス101の下面に固定され、ノズル本体13は支持ケース部9に対し回転自在に支持されており、 4つの洗浄ノズル5は、千鳥状に配置され、搬送方向に対して二列に並列配置され、並列方向では、洗浄ノズル5a、5cと洗浄ノズル5b、5dは、回転ヘッド115の端部側が重なりながら互い違いになっており、搬送方向に隣り合う洗浄ノズル5a、5cまたは洗浄ノズル5b、5dの回転ヘッド115は、互いに異なる方向に回転する、 洗浄装置。」 3 甲2の記載事項 甲2には、「基板又はシート等における塵埃或いは汚染微粒子の除塵方法と、この除塵方法を利用した基板又はシート等の除塵装置」に関し、以下の事項が記載されている。 ・「【技術分野】 【0001】 この発明は、製造工程において、基板又はシートの表面に付着する塵埃や汚染微粒子(以下、「塵埃等」とする。)の除塵方法と、この方法を利用した基板又はシート等の除塵装置に関するものである。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 この発明が解決しようとする問題点は、直接粘着ゴムロールが接触することができない被洗浄物に使用される非接触型の除塵装置において、単に空気を吹き付けるだけでは除去できないほど強力に固着している塵埃或いは汚染微粒子を、周囲に飛散させることなく効率よく、且つ確実に除去することができるようにする点である。 【課題を解決するための手段】 【0008】 そのため、この発明は、その表面において、圧縮空気を噴射する圧縮空気噴射孔と、高圧で吸引する高圧吸入孔とを、その中心から互いに一定の角度θを以て放射状となるように一対として配置してなる回転ノズルを、基板又はシート等の表面に近接させて、該回転ノズルと基板又はシート等との間で幅狭な空間を形成すると共に、該回転ノズルを回転させながら、該幅狭な空間内に、回転ノズルの圧縮空気噴射孔から圧縮空気を噴射して高密度の空気層を形成しながら、同時に、高圧吸入孔から高圧で吸引を行うことで、該幅狭な空間内に圧縮空気噴射孔から高圧吸入孔に至る気流を発生させると共に、基板又はシート等の表面に固着する塵埃等に対して圧縮空気の噴射による押圧及び高圧の吸引による引張を、交互に反復して作用させて細かく振動させることにより、基板又はシート等表面との固着力を弱め、該圧縮空気噴射孔から高圧吸入孔に至るよう形成される気流により、基板又はシート等の表面に固着する塵埃或いは汚染微粒子を離脱させると同時に、吸引除去しようとするものである。」 ・「【実施例1】 【0011】 図1乃至図3において示すのは、この発明の実施例である基板又はシート等の除塵装置(1)である。・・・ 【0012】 ・・・例えば、図13において示すように、回転ノズル(13)を基板又はシート等(2)の搬出入方向に互い違いに複数列で設置した除塵ユニット集合体(10’)とすることにより、回転ノズル(13)を直列に単一列で設置する場合に比べ、回転ノズル(13)間が、その間に互い違いとなって設置される他の回転ノズル(13)によって補われるものとなる。そのため、回転ノズル(13)は基板又はシート等(2)の搬出入方向に対して直角方向に隙間無く配置されるので、回転ノズルを保持する除塵ユニット(11’)からなる除塵ユニット集合体(10’)を基板又はシート等の搬出入方向にスキャニングすることで、該基板又はシート等(2)を隙間無く完全に除塵できるものである。 ・・・ 尚、各除塵ユニット(11)を構成する各回転ノズル(13)は前記ギア(19)が小ギア(19’)を介して噛合することにより、全て同一方向に同期して回転することとなる。」 ・「【図13】 ![]() 」 4 対比・検討 (1) 本件特許発明1について ア 本件特許発明1における「筐体」の解釈について 本件特許発明1は、上記第2において認定したとおりのものであって、本件特許発明1における「筐体」は、「前記ノズルは互いの回転を阻害しないように近接して配置され、かつすべて同一方向に回転させる筐体」と特定される。 ここで、本件特許発明1における「ノズル」は、本件特許明細書の段落【0024】の「ノズル120を構成する保護カバー130、底板131、回転体126、オリフィス121a,121b」及び「保護カバー130は、回転体126、オリフィス121a,121bといった高速回転する部材を外部から遮蔽する。」との記載からみて、その全体が回転するものではないが、この「筐体」の解釈における「ノズル」の「回転」は、ノズルにおける回転する部材の「回転」を指すことは、当業者であれば明らかである。 よって、以下、本件特許発明1における「筐体」は、ノズルにおける回転する部材の回転を互いに阻害しない程度に近接してノズルを配置させるものであって、かつ、ノズルが配置された状態において、ノズルにおける回転する部材の回転がすべて同一方向であるものと解釈して検討する。 イ 対比 上記アの解釈を踏まえ、本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「洗浄装置」は、「エアー噴射口57」を有する「洗浄ノズル5」から、気体を噴出するものであるから、本件特許発明1の「ノズル」を配置した「気体噴出装置」に相当する。 そして、甲1発明の洗浄ノズル5は、装置本体3のケース103内の支持ボックス101に下向きに取り付けられており、4つの洗浄ノズル5は千鳥状に配置され、回転ヘッド115の端部側が重なりながら互い違いになっていることから、甲1発明において、複数の洗浄ノズルが近接して配置され、ノズルは互いの回転を当然阻害しないようになっていると理解できるから、甲1発明の「支持ボックス101」は、本件特許発明1の「ノズルは互いの回転を阻害しないように近接して配置され、かつ回転させる筐体」である点で相当する。 また、甲1発明の「円筒管51」に関し、「エアーがエアー供給管121、支持ボックス101に流れて洗浄ノズル5に供給される。そして洗浄ノズル5に供給されたエアーが図5の矢印に示すようにノズル本体13の円筒管51、パイプ55に流れて、エアー噴射口57から噴射される。」(甲1【0031】)及び「ボールベアリング11のステータ側11aは支持ケース部9の円筒管43に固定され、ロータ側11bはノズル本体13の円筒管51に固定されており、ステータ側11aとロータ側11bとの間にはボール11cが介装されている。従って、ノズル本体13は支持ケース部9に対し回転自在に支持されている。」(甲1【0025】)との記載から、甲1発明の「円筒管51」はエアーが供給され、ボールベアリング11を介して支持ケース部9に対して回転自在に支持されていることが理解できるから、本件特許発明1の「気体を受け入れる流体流路を備え、回転可能に保持された回転体」に相当する。 そして、甲1発明の「パイプ55」は、その基端部が円筒管51の外周面を貫通して内部と連通し、その先端部においてエアー噴射口57が時計回りの方向を向き、且つ斜め上方を向くように曲げられていることから、甲1発明の「パイプ55」及び「エアー噴射口57」は、本件特許発明1の「ノズル部材」及び「オリフィス」にそれぞれ相当する。 甲1発明の「支持ケース部9」及び「蓋体17」は、本件特許発明1の「保護カバー」及び「底板」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、それぞれ次のとおりである。 <一致点> 複数のノズルを近接して配置した気体噴出装置であって、 前記ノズルは互いの回転を阻害しないように近接して配置され、かつ回転させる筐体と、 気体を受け入れる流体流路を備え、回転可能に保持された回転体と、 前記回転体から内部が遮られずに延び、前記気体をオリフィスから噴射させるノズル部材と、 前記回転体および前記ノズル部材を収容する保護カバーと 保護カバー内部で、前記オリフィスを収容する空間を画定する底板と、 を備える前記ノズルと を有し、 前記ノズル部材は、前記回転体に接合され、前記回転体との接合部から前記ノズル部材の内径を保持して前記オリフィスまで屈曲して延びる、気体噴出装置。」 <相違点> 近接して配置された複数のノズルにおける、回転する部材の回転方向に関し、甲1発明は「互いに異なる方向に回転する」のに対し、本件特許発明1は、「すべて同一方向に回転させ」られることが特定される点。 ウ 相違点についての検討 甲1発明における、ノズルの回転ヘッドの回転方向について、甲1には、以下の記載がなされている。 (ア)「回転ヘッド115が回転すると、一対のパイプ55のエアー噴射口57が円形の軌道xを描くように移動するので、洗浄ノズル5の下側に渦状の気流が発生する。そして、水噴射口95から噴射された水は、この渦状の気流に巻き込まれる。従って、水は渦巻状に噴射されることになる。」(【0033】) (イ)「搬送方向に隣り合う洗浄ノズル5a、5cまたは洗浄ノズル5b、5dの回転ヘッド115は互いに異なる方向に回転するため、これらの洗浄ノズル5a、5cまたは洗浄ノズル5b、5dの下側には互いに逆回転となる渦状に水が噴射される。従って、コンテナCの内側の底面や側面に多方向から水を確実に当てることができる。」(【0035】) (ウ)「コンテナC等の被洗浄物に多方向から水を衝突させることができるため、被洗浄物に付着した防錆剤、切削油、切削屑等の汚れに対して衝撃を与えることができる。これにより水噴射口95から噴射される水の圧力をそれほど高くしなくても、被洗浄物に付着した汚れを十分に除去できる。従って、高価な高水圧用ポンプを設ける必要がない。」(【0036】) 上記(ア)の記載から、甲1発明における回転ヘッドの回転は、その回転によって発生する渦状の気流を用いて洗浄ノズルから水を渦巻状に噴射させることを目的にしていることが理解でき、(イ)及び(ウ)の記載から、甲1発明において、搬送方向に隣り合う洗浄ノズルから発生する、互いに逆回転となる渦状の水の噴射によって、被洗浄物に多方向から水を衝突させ、噴射される水の圧力をそれほど高くしなくても、被洗浄物に付着した汚れを十分に除去でき、高価な高水圧用ポンプを設ける必要がないという効果を奏するものであると理解できる。 そうすると、甲1発明において、隣り合うノズルの回転ヘッドの回転方向について、すべて同一方向にすることは、上記効果を滅却するものといえ、その動機付けもなく、阻害事由があるともいうことができる。 一方、本件特許発明1は、ノズルを近接配置し、かつすべて同一方向に回転させることによって、本件特許明細書の段落【0030】に「隣接したノズル120は同一の方向に回動するようにノズル121が配置されている。このため、2つのノズル120の間の相対回転速度はノズル120の回転速度の2倍となり、また、互いに対向するノズル120の回転に伴って粘性抵抗により隣接するノズル120の隙間に侵入する気体の侵入が阻まれ、その結果、物体方向に向かう別の空気流を形成し、より洗浄効率を改善することが可能となる。」と記載されるように、ノズル間の相対回転速度を2倍とし、洗浄効率を改善するという格別顕著な効果を奏するものである。 なお、甲1には、洗浄後の「乾燥時には、前記エアー供給手段から供給されたエアーによる渦状の気流をそのまま被洗浄物に衝突させる」(【請求項3】や【0037】)ことが記載されるが、水を噴射させない乾燥時においても、「洗浄ノズル5の下側には渦状の気流が発生しているため、コンテナCが洗浄ノズル5の下側を通るときには、図7に示すようにコンテナCの内側の底面等に多方向からエアーが当たる。従って、洗浄によってコンテナCに付着した水を確実に除去することができる。」(【0037】)と記載されるように、多方向からのエアーによって乾燥効率を向上させるものであるから、水流を発生させた洗浄時と同様、隣り合うノズルの回転ヘッドの回転方向を同一方向にする動機付けはない。 エ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書第9ページにおいて、おおむね以下の主張をしている。 「甲第2号証の同明細書の段落【0012】の第10行目?第13行目の「回転ノズル(13)を直列に単一列で設置する場合に比べ、回転ノズル(13)間が、その間に互い違いとなって設置される他の回転ノズル(13)によって補われるものとなる。」との記載がある。 ・・・この趣旨乃至要旨は、「ノズルは互いの回転を阻害しないように近接して配置されている。」ことになる。つまり、「ジグザグ配列とすべて同一方向に回転させる構成」(甲2に記載された発明)となっている。 ・・・したがって、請求項1の発明は、甲第1号証(甲1に記載された発明)に、甲第2号証(甲2に記載された発明)を適用することで、当業者が容易に構成を想到することができ、効果の点でも特有性は存在せず、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号の規定により、特許を取り消しとすべきである。」 上記主張を検討する。 甲2において、隣り合うノズルの回転方向を同一にする理由は、「尚、各除塵ユニット(11)を構成する各回転ノズル(13)は前記ギア(19)が小ギア(19’)を介して噛合することにより、全て同一方向に同期して回転することとなる。」(【0012】)との記載から、ギアを用いた回転駆動系の構成に起因することが理解できる。 そうすると、回転をギアでは無く、エアー噴射口57から噴射されたエアーにより、洗浄ノズルの回転ヘッドを回転させる駆動力とする甲1発明において、別の駆動力を採用し、隣り合う洗浄ノズルの回転ヘッドの回転方向を同一方向にする動機付けはない。 また、かかる回転方向の特定によって、本件特許発明1は、洗浄効率を改善するという格別顕著な効果を奏するものである。 よって、特許異議申立人の上記主張は、採用できない。 オ 本件特許発明1についての小括 よって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2) 本件特許発明2ないし6について 本件特許発明1が、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないのは上記(1)のとおりであるから、本件特許発明1の特定事項をすべて有し、更に限定する本件特許発明2ないし6についても同様に甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 5 当審の判断のまとめ したがって、申立理由には理由がない。 第5 むすび したがって、特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-06-07 |
出願番号 | 特願2020-526051(P2020-526051) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B05B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鏡 宣宏 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
細井 龍史 大畑 通隆 |
登録日 | 2020-08-14 |
登録番号 | 特許第6749741号(P6749741) |
権利者 | 小林 正樹 |
発明の名称 | 気体噴出装置 |
代理人 | 特許業務法人エム・アイ・ピー |
代理人 | 岩堀 邦男 |