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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R |
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管理番号 | 1375290 |
審判番号 | 不服2020-15552 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-11-10 |
確定日 | 2021-07-12 |
事件の表示 | 特願2018- 19329号「サッシュモールディングの取付構造」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月22日出願公開,特開2019-137095号,請求項の数(1)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成30年2月6日の出願であって,令和2年2月6日付けで拒絶理由が通知され,同年4月9日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが,同年7月27日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,これに対し,同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1-2 ・引用文献等 1-2 <引用文献等一覧> 1.実願昭62-121040号(実開昭64-25918号)のマイクロフィルム 2.特開2009-214562号公報 第3 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,令和2年11月10日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 車両用ドアフレームのドアサッシュにサッシュモールディングを取り付けるための取付構造であって, 前記ドアサッシュは車室外側にフランジ部を有し,前記フランジ部は前記サッシュモールディングの裏面側を支持する支持部と,前記サッシュモールディングの一方の幅方向内側に設けた第2嵌合部に嵌着する嵌着部と,前記サッシュモールディングの他方の幅方向内側に設けた第1嵌合部に係着する係着部を有し,前記嵌着部は,前記支持部の一部に部分的に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部であり, 前記突出部は前記フランジ部の長手方向に沿って複数箇所に設けてあり, 前記サッシュモールディングは断面が略Cチャンネル形状であり,前記サッシュモールディングの第1嵌合部を前記フランジ部の係着部に係着し,前記サッシュモールディングの第2嵌合部を前記フランジ部の嵌着部に嵌着するとともに,前記サッシュモールディングの裏面側を前記フランジ部の支持部にて支持させるものであることを特徴とするサッシュモールディング取付構造。」 第4 引用文献,引用発明等 (1)引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 ・「2.実用新案登録請求の範囲 (1)ドアパネルと一体にドアガラスの周縁を囲むパネル開口部を形成し,このパネル開口部の内側に沿わせてドアサッシュモールを装着する車両のドアサッシュ構造において,ドアパネルのパネル開口部の外面に,間隔を置いて外方に向いた複数の切起し突起を形成するとともに,該パネル開口部の内周縁に断面略半円形の係止縁を形成し,他方上記ドアサッシュモールには,その外側部分に,パネル開口部の上記切起し突起と係合する断面U字状の抱込係止部を形成し,その内側部分に,パネル開口部内周縁の上記半円形断面の係止縁と弾性係合する係合部を形成したことを特徴とする車両のドアサッシュ構造。 (2)実用新案登録請求の範囲第1項において,ドアサッシュモールの係合部は,パネル開口部内周縁に係合する浅いU字状部と,このU字状部からドアガラス側に連続する,逆U字状部とを有して断面S字状をなしている車両のドアサッシュ構造。」(明細書1ページ4行?2ページ3行) ・「「技術分野」 本考案は,車両のドアサッシュ構造に関し,特にドアパネルに一体に設けたドアガラス用の開口部に,ドアサシュモールを装着するためのドアサッシュ構造に関する。 「従来技術およびその問題点」 車両のドアパネルには,その上縁部に断面略U字状のドアモールディングが装着される。さらに一部には,ドアパネルの一部を上方に延長してドアガラス用の開口部(ドアサッシュ,以下パネル開口部という)を形成し,このパネル開口部に沿わせてドアサッシュモールを取り付けることが行なわれている。」(明細書2ページ5行?17行) ・「「考案の目的」 本考案は,従来のドアサッシュ構造についての上記問題点を解消し,ドアパネル開口部,これに取り付けられるドアサッシュモール,およびドアガラスのフラッシュサーフェス化をより高めることができ,しかも取付作業性に優れたドアサッシュ構造を得ることを目的とする。」(明細書3ページ11?17行) ・「以下図示実施例について本考案を説明する。第3図は本考案のドアサッシュ構造を適用したドアパネルを示すもので,ドアパネル11は,その上部の前後において上方に延長され,ドアガラスドアガラス12を囲むパネル開口部13を構成している。このパネル開口部13の内側に沿ってドアサッシュモール30が装着され,ドアパネル11の上縁部に沿ってドアモールディング14が装着されている。ドアモールディング14は,一般に断面略逆U字状をなすものであるが,本考案は,このドアモールディング14の構造は問わない。 パネル開口部13(ドアパネル11)は,アウタパネル15とインナパネル16とからなっている。アウタパネル15は,その外側部分に車両ボディ29との接離部17を有し,内側部は,インナパネル16に溶接されている。インナパネル16は,ドアガラス12を進退させるランチャンネルを形成すべく略U字状をなし,そのU字状部内に,ドアガラス12が進退する。インナパネル16内には,ドアガラス12と摺接して雨水の進入を防ぐウェザストリップ18が取り付けられる。 以上のパネル開口部13には,本考案の特徴とする切起し突起20が形成され,かつその内周縁には,半円形断面をなす係止縁21が形成されている。切起し突起20は,第1図,第2図に明らかなように,アウタパネル15の外面内側部に形成した係合部22内に,適当間隔を置いて形成したもので,外方を向いている。そしてこのアウタパネル15は,その内端部が外側にU字状に折り返されていて,この折返し部23により,パネル開口部13の内周縁に断面略半円形の係止縁21が形成されている。 以上の構成のパネル開口部13(ドアパネル11)側に対し,ドアサッシュモール30は,一様断面の芯金31と,この芯金31の外側を覆う装飾弾性体32とからなっていて,アウタパネル15の係合部22内に位置し,アウタパネル15と略面一となる。そして芯金31は,その外側部分に切起し突起20に係止されるU字状の抱込係止部33を有し,内側部分に,係止縁21に弾性係合する係合部34が設けられている。抱込係止部33は,切起し突起20の外端部を抱き込むもので,この抱込係止により,ドアサッシュモール30の抜け止めが図られる。 ドアサッシュモール30は,この抱込係止部33と切起し突起20との係合状態において,その係合部近辺を中心に回動(揺動)移動可能であり,この回動移動により,係合部34がパネル開口部13の係止縁21に係止される。すなわち,係合部34は,係止縁21に弾性的に係合する浅いU字状部35と,このU字状部35からドアガラス12側に連続する,逆方向のU字状部36とを有して,断面S字状をなしている。」(明細書4ページ13行?7ページ6行) ・第1図?第3図には,以下の内容が示されている。 ・上記「2.実用新案登録請求の範囲(1)」の「ドアサッシュモールには,その外側部分に,パネル開口部の上記切起し突起と係合する断面U字状の抱込係止部を形成し,その内側部分に,パネル開口部内周縁の上記半円形断面の係止縁と弾性係合する係合部を形成し」ているという記載事項と第1図からみて,抱込係止部33はドアサッシュモール30の一方の幅方向内側に設けられていること,及び,係合部34はドアサッシュモール30の他方の幅方向内側に設けられていることが理解できる。 ・第1図からみて,ドアサッシュモール30は断面が略Cチャンネル形状であることが理解できる。 ・第2図からみて,切起し突起20は,アウタパネル15の長手方向に沿って複数箇所に設けられていることが理解できる。 これらの記載事項及び図示内容からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ドアパネル11と一体にドアガラス12の周縁を囲むパネル開口部13を形成し,このパネル開口部13の内側に沿わせてドアサッシュモール30を装着する車両のドアサッシュ構造において,ドアパネル11のパネル開口部13の外面のアウタパネル15の外面内側部に形成した係合部22内に間隔を置いて外方に向いた複数の切起し突起20を形成するとともに,切起し突起20は,アウタパネル15の長手方向に沿って複数箇所に設けられ,パネル開口部13のアウタパネル15は,その内端部が外側にU字状に折り返されていて,この折返し部23により,該パネル開口部13の内周縁に断面略半円形の係止縁21を形成し,他方上記ドアサッシュモール30には,その外側部分に,パネル開口部13の上記切起し突起20と係合する断面U字状の抱込係止部33を形成し,その内側部分に,パネル開口部内周縁の上記半円形断面の係止縁21と弾性係合する係合部34を形成し,抱込係止部33はドアサッシュモール30の一方の幅方向内側に設けられ,係合部34はドアサッシュモール30の他方の幅方向内側に設けられ,上記係合部34は,パネル開口部内周縁に係合する浅いU字状部35と,このU字状部35からドアガラス12側に連続する,逆U字状部36とを有して断面S字状をなしている車両のドアサッシュ構造であって, パネル開口部13は,アウタパネル15とインナパネル16とからなり,アウタパネル15は,その外側部分に車両ボディ29との接離部17を有し,内側部は,インナパネル16に溶接され, ドアサッシュモール30は断面が略Cチャンネル形状であり,ドアサッシュモール30は,一様断面の芯金31と,この芯金31の外側を覆う装飾弾性体32とからなっていて,アウタパネル15の係合部22内に位置し,アウタパネル15と略面一となり,芯金31は,その外側部分に切起し突起20に係止されるU字状の抱込係止部33を有し,内側部分に,係止縁21に弾性係合する係合部34が設けられている, ドアサッシュモール30を装着する車両のドアサッシュ構造。」 (2)引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は,車両のドアサッシュモールの取付構造に関する。 ・「【0005】 本発明は,以上の問題意識に基づき,ドアサッシュ本体に対するモールの取付性に優れ,しかも,構造上,モールがガラスランとウェザストリップの保持構造に関与するドアサッシュモールの取付構造を得ることを目的とする。 ・「【発明の効果】 【0009】 本発明のドアサッシュモールの取付構造によれば,リベット等の別部材を要することなく,ドアサッシュモール本体にモールを取り付けることができる。また,モールにガラスランの保持機能及びさらにはウェザストリップの保持機能を与えることができ,モールの有効利用を図ることができる。」 ・「【0010】 図3は,本発明によるドアサッシュモールの取付構造を適用する乗用車のドアの側面形状を示している。車両ボディBのドア開口(ボディ開口)Aを開閉する車両ドア10は,ドア本体11の上部にドアサッシュ本体(窓枠)12を備えている。ドアサッシュ本体12は,窓開口12Wを形成するものであり,窓ガラスWの上縁を受け入れる曲折した上枠12aと窓ガラスWの上下方向縁部を受け入れる縦枠12bとを有している。 【0011】 ドアサッシュ本体12(上枠12a)には,その車外側の面に露出する意匠部を有するモール(サッシュモール,光モール)20が取り付けられている。本実施形態は,このドアサッシュ本体12とモール20の取付構造を要旨とするもので,図2,図3(審決注:「図1,図2」の誤記。)はそれぞれ異なる実施形態を示している。図2,図3(審決注:「図1,図2」の誤記。) は,車両ドア10を閉じた状態の長手方向直交断面形状を示しており,図の左側が車内側(内側,内方),右側が車外側(外側,外方)である。ドアサッシュ本体12とモール20は,基本的に一様断面形状を有しており,モール20の側面形状は,ドアサッシュ本体12の上枠12aの側面形状に対応している。実施形態では,ドアサッシュ本体12は金属(鉄系)材料のロール成形品からなっており,モール20は,ステンレス,アルミニウム等の金属材料と合成樹脂材料の押出成形品からなっている。 【0012】 図2(審決注:「図1」の誤記。)の実施形態において,ドアサッシュ本体12は,主に機械的強度を保持するための車内側に位置する袋状部(閉鎖断面形状部)13を有しており,この袋状部13から車外側に向けてかつドア開口Aに接近する方向に斜めに外方延長部14が延びている。この外方延長部14の車外側の先端部には,車外面となるモール取付部15が形成されている。モール取付部15は,外方延長部14の先端部から上方(ボディB側)にのみ延びていて,下方(窓ガラスW側)には形成されていない。 【0013】 モール20は,ドアサッシュ本体12の外方延長部14及びモール取付部15に取り付けられるもので,ドアサッシュ本体12のモール取付部15の外面に沿う意匠部21を有している。この意匠部21は,モール取付部15の外面に沿うだけでなく,モール取付部15より窓ガラスW側に延びている。図示例では,モール取付部15の外面に沿う部分の長さとモール取付部15の窓ガラス側に延びる部分の長さは同程度である。 【0014】 モール20の意匠部21の窓ガラス側端部には,該意匠部21の窓ガラス側端部を内方に曲折させた後さらに上方(ボディB側)に曲折したガラスラン保持縁22が形成されている。一方,ドアサッシュ本体12の袋状部13には,このガラスラン保持縁22(意匠部21)との間にガラスラン保持凹部30を構成する保持凹部13aが形成されている。窓ガラスWを受け入れるガラスラン31は,このガラスラン保持凹部30に保持されている。ガラスラン31は周知であり,その断面形状は問わない。 【0015】 モール20の意匠部21の上端部(ボディB側端部)には,弾性固定縁部23が曲折形成されている。この弾性固定縁部23は,意匠部21の上端部(ボディB側端部)を内方に曲折した内方曲折部23aと,この内方曲折部23aの内側端部を外方延長部14とモール取付部15のコーナ部に向けて折り返した折り返し部23bと,この折り返し部23bの外方端部をさらに,外方延長部14の上面(ドア開口Aに沿う面)に沿って折り返した接触縁23cとを有している。 【0016】 また,モール20の意匠部21の内面には,合成樹脂材料の押出成形により,ドアサッシュ本体12のモール取付部15の下縁(窓ガラスW側の端部)に係合する抜止突条24と,モール取付部15の外面に弾接する触れ止め突条25(審決注:「振れ止め突条25」の誤記。)が一体に形成されている。 【0017】 ドアサッシュ本体12には,モール20の弾性固定縁部23との間に,ウェザストリップ保持凹部32を形成するウェザストリップ保持縁16が形成されている。このウェザストリップ保持凹部32には,車両ドア10を閉じたとき,車両ボディBのドア開口Aとの間の隙間を閉じるウェザストリップ33が保持されている。ウェザストリップ33は,周知であり,その断面形状は種々知られている。また,図示例では,車両ボディBに別のウェザストリップ34が保持されている。 【0018】 上記構成の本ドアサッシュモールの取付構造は,ドアサッシュ本体12(上枠12a)に次のようにモール20を取り付ける。モール20のガラスラン保持縁22と弾性固定縁部23の間の隙間を,ドアサッシュ本体12のモール取付部15に嵌め込んで,モール20をドアサッシュ本体12の上から押し込む。すると,抜止突条24(と振れ止め突条25)がモール取付部15の外面に当接して,意匠部21が弾性変形する。やがて抜止突条24がモール取付部15の下縁(窓ガラスW側の縁部)に達すると,意匠部21が自由になって抜止突条24がモール取付部15の下縁に係合する。このとき,モール20の弾性固定縁部23は,その折り返し部23bと接触縁23cとの接続部がドアサッシュ本体12の外方延長部14とモール取付部15のコーナ部に弾性的に接触し,接触縁23cが外方延長部14の上面(ドア開口Aに沿う面)に沿う。また,振れ止め突条25がモール取付部15の外面に弾性的に接触してモール20がモール取付部15に安定した状態で保持される。」 ・「【0021】 図2の実施形態は,図1の実施形態における振れ止め突条24(審決注:「25」の誤記。)を除去した実施形態である。図1の実施形態の振れ止め突条24(審決注:「25」の誤記。)は,モール本体20のモール取付部15に対する固定強度を高めるために有用であるが,弾性固定縁部23のばね性を高めることにより,振れ止め突条24(審決注:「25」の誤記。)を省略しても,第一の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。」 ・図1,図3には以下の内容が示されている。 これらの事項からみて,引用文献2には,以下の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されているといえる。 「車両のドアサッシュモールの取付構造であって, ドアサッシュ本体12には,その車外側の面に露出する意匠部を有するモール20が取り付けられ, ドアサッシュ本体12は,車内側に位置する袋状部13を有しており,この袋状部13から車外側に向けてかつドア開口Aに接近する方向に斜めに外方延長部14が延び,この外方延長部14の車外側の先端部には,車外面となるモール取付部15が形成され,モール取付部15は,外方延長部14の先端部から上方にのみ延び, モール20は,ドアサッシュ本体12の外方延長部14及びモール取付部15に取り付けられ, モール20の意匠部21の窓ガラス側端部には,該意匠部21の窓ガラス側端部を内方に曲折させた後さらに上方に曲折したガラスラン保持縁22が形成され, モール20の意匠部21の上端部には,弾性固定縁部23が曲折形成され,この弾性固定縁部23は,意匠部21の上端部を内方に曲折した内方曲折部23aと,この内方曲折部23aの内側端部を外方延長部14とモール取付部15のコーナ部に向けて折り返した折り返し部23bと,この折り返し部23bの外方端部をさらに,外方延長部14の上面に沿って折り返した接触縁23cとを有し, モール20の意匠部21の内面には,合成樹脂材料の押出成形により,ドアサッシュ本体12のモール取付部15の下縁に係合する抜止突条24と,モール取付部15の外面に弾接する振れ止め突条25が一体に形成され ドアサッシュ本体12には,モール20の弾性固定縁部23との間に,ウェザストリップ保持凹部32を形成するウェザストリップ保持縁16が形成され, モール20のガラスラン保持縁22と弾性固定縁部23の間の隙間を,ドアサッシュ本体12のモール取付部15に嵌め込み, 振れ止め突条25がモール取付部15の外面に弾性的に接触してモール20がモール取付部15に安定した状態で保持される, 車両のドアサッシュモールの取付構造。」 第5 対比・判断 (1)対比 ア.本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「ドアパネル11」は前者の「車両用ドアフレーム」に相当し,以下同様に,「パネル開口部13」は「ドアサッシュ」に,「ドアサッシュモール30」は「サッシュモールディング」に,「ドアサッシュモール30を装着する車両のドアサッシュ構造」は「サッシュモールディングを取り付けるための取付構造」又は「サッシュモールディング取付構造」に,「アウタパネル15」は「フランジ部」に,「抱込係止部33」は「第2嵌合部」に,「切起し突起20」は「嵌着部」又は「突出部」に,「係合部34」は「第1嵌合部」に,「係止縁21」は「係着部」に,それぞれ相当する。 イ.後者の「ドアパネル11と一体にドアガラス12の周縁を囲むパネル開口部13を形成し,このパネル開口部13の内側に沿わせてドアサッシュモール30を装着する車両のドアサッシュ構造」は前者の「車両用ドアフレームのドアサッシュにサッシュモールディングを取り付けるための取付構造」に相当する。 ウ.後者の「パネル開口部13は,アウタパネル15とインナパネル16とからな」るところ,「アウタパネル15」は,パネル開口部13の車室外側に設けられることは明らかであるから,上記ア.の相当関係を踏まえると,後者の「パネル開口部13」は「アウタパネル15」を有することは,前者の「前記ドアサッシュは車室外側にフランジを有」することに相当する。 エ.後者の「ドアサッシュモール30には,その外側部分に,パネル開口部13の上記切起し突起20と係合する断面U字状の抱込係止部33を形成し,その内側部分に,パネル開口部内周縁の上記半円形断面の係止縁21と弾性係合する係合部34を形成し,抱込係止部33はドアサッシュモール30の一方の幅方向内側に設けられ,係合部34はドアサッシュモール30の他方の幅方向内側に設けられ」ることは,上記ア.の相当関係を踏まえると,前者の「前記サッシュモールディングの一方の幅方向内側に設けた第2嵌合部に嵌着する嵌着部と,前記サッシュモールディングの他方の幅方向内側に設けた第1嵌合部に係着する係着部を有」することに相当する。 オ.後者の「ドアパネル11のパネル開口部13の外面のアウタパネル15の外面内側部に形成した係合部22内に間隔を置いて外方に向いた複数の切起し突起20を形成するとともに,切起し突起20は,アウタパネル15の長手方向に沿って複数箇所に設けられ」ることと,前者の「前記嵌着部は,前記支持部の一部に部分的に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部であり,前記突出部は前記フランジ部の長手方向に沿って複数箇所に設けてあ」ることとは,上記ア.の相当関係を踏まえると,「前記嵌着部は,部分的に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部であり,前記突出部は前記フランジ部の長手方向に沿って複数箇所に設けてあ」ることにおいて共通する。 カ.上記ウ.?オ.の関係を踏まえると,後者の「パネル開口部13」は「アウタパネル15」を有すること,「ドアサッシュモール30には,その外側部分に,パネル開口部13の上記切起し突起20と係合する断面U字状の抱込係止部33を形成し,その内側部分に,パネル開口部内周縁の上記半円形断面の係止縁21と弾性係合する係合部34を形成し,抱込係止部33はドアサッシュモール30の一方の幅方向内側に設けられ,係合部34はドアサッシュモール30の他方の幅方向内側に設けられ」ること,及び「ドアパネル11のパネル開口部13の外面のアウタパネル15の外面内側部に形成した係合部22内に間隔を置いて外方に向いた複数の切起し突起20を形成するとともに,切起し突起20は,アウタパネル15の長手方向に沿って複数箇所に設けられ」ることと,前者の「前記ドアサッシュは車室外側にフランジ部を有し,前記フランジ部は前記サッシュモールディングの裏面側を支持する支持部と,前記サッシュモールディングの一方の幅方向内側に設けた第2嵌合部に嵌着する嵌着部と,前記サッシュモールディングの他方の幅方向内側に設けた第1嵌合部に係着する係着部を有し,前記嵌着部は,前記支持部の一部に部分的に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部であり,前記突出部は前記フランジ部の長手方向に沿って複数箇所に設けてあ」ることとは,「前記ドアサッシュは車室外側にフランジ部を有し,前記フランジ部は,前記サッシュモールディングの一方の幅方向内側に設けた第2嵌合部に嵌着する嵌着部と,前記サッシュモールディングの他方の幅方向内側に設けた第1嵌合部に係着する係着部を有し,前記嵌着部は,部分的に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部であり,前記突出部は前記フランジ部の長手方向に沿って複数箇所に設けてあ」ることにおいて共通する。 キ.後者の「ドアサッシュモール30は断面が略Cチャンネル形状であり,ドアサッシュモール30は,一様断面の芯金31と,この芯金31の外側を覆う装飾弾性体32とからなっていて,アウタパネル15の係合部22内に位置し,アウタパネル15と略面一となり,芯金31は,その外側部分に切起し突起20に係止されるU字状の抱込係止部33を有し,内側部分に,係止縁21に弾性係合する係合部34が設けられている」ことと,前者の「前記サッシュモールディングは断面が略Cチャンネル形状であり,前記サッシュモールディングの第1嵌合部を前記フランジ部の係着部に係着し,前記サッシュモールディングの第2嵌合部を前記フランジ部の嵌着部に嵌着するとともに,前記サッシュモールディングの裏面側を前記フランジ部の支持部にて支持させるものであること」とは,上記ア.カ.の相当関係を踏まえると,「前記サッシュモールディングは断面が略Cチャンネル形状であり,前記サッシュモールディングの第1嵌合部を前記フランジ部の係着部に係着し,前記サッシュモールディングの第2嵌合部を前記フランジ部の嵌着部に嵌着するものである」ことにおいて共通する。 ク.そうすると,両者は, 「車両用ドアフレームのドアサッシュにサッシュモールディングを取り付けるための取付構造であって, 前記ドアサッシュは車室外側にフランジ部を有し,前記フランジ部は,前記サッシュモールディングの一方の幅方向内側に設けた第2嵌合部に嵌着する嵌着部と,前記サッシュモールディングの他方の幅方向内側に設けた第1嵌合部に係着する係着部を有し,前記嵌着部は,部分的に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部であり, 前記突出部は前記フランジ部の長手方向に沿って複数箇所に設けてあり, 前記サッシュモールディングは断面が略Cチャンネル形状であり,前記サッシュモールディングの第1嵌合部を前記フランジ部の係着部に係着し,前記サッシュモールディングの第2嵌合部を前記フランジ部の嵌着部に嵌着するものである, サッシュモールディング取付構造。」 の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。 <相違点> 前記フランジ部,前記サッシュモールディング,前記嵌着部に関して,本願発明では,前記フランジ部は「前記サッシュモールディングの裏面側を支持する支持部」を有し,「前記サッシュモールディングの裏面側を前記フランジ部の支持部にて支持させるものであ」り,前記嵌着部は,「前記支持部の一部に」部分的に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部であるのに対して,引用発明では,アウタパネル15はドアサッシュモール30の裏面を支持する支持部を有さず,ドアサッシュモール30の裏面側をアウタパネル15の支持部にて支持させるものではなく,「パネル開口部13の外面のアウタパネル15の外面内側部に形成した係合部22内に間隔を置いて外方に向いた複数の切起し突起20を形成する」ものである点。 (2)相違点の判断 前述したように,引用文献2には,以下の事項が記載されている。 「車両のドアサッシュモールの取付構造であって, ドアサッシュ本体12には,その車外側の面に露出する意匠部を有するモール20が取り付けられ, ドアサッシュ本体12は,車内側に位置する袋状部13を有しており,この袋状部13から車外側に向けてかつドア開口Aに接近する方向に斜めに外方延長部14が延び,この外方延長部14の車外側の先端部には,車外面となるモール取付部15が形成され,モール取付部15は,外方延長部14の先端部から上方にのみ延び, モール20は,ドアサッシュ本体12の外方延長部14及びモール取付部15に取り付けられ, モール20の意匠部21の窓ガラス側端部には,該意匠部21の窓ガラス側端部を内方に曲折させた後さらに上方に曲折したガラスラン保持縁22が形成され, モール20の意匠部21の上端部には,弾性固定縁部23が曲折形成され,この弾性固定縁部23は,意匠部21の上端部を内方に曲折した内方曲折部23aと,この内方曲折部23aの内側端部を外方延長部14とモール取付部15のコーナ部に向けて折り返した折り返し部23bと,この折り返し部23bの外方端部をさらに,外方延長部14の上面に沿って折り返した接触縁23cとを有し, モール20の意匠部21の内面には,合成樹脂材料の押出成形により,ドアサッシュ本体12のモール取付部15の下縁に係合する抜止突条24と,モール取付部15の外面に弾接する振れ止め突条25が一体に形成され ドアサッシュ本体12には,モール20の弾性固定縁部23との間に,ウェザストリップ保持凹部32を形成するウェザストリップ保持縁16が形成され, モール20のガラスラン保持縁22と弾性固定縁部23の間の隙間を,ドアサッシュ本体12のモール取付部15に嵌め込み, 振れ止め突条25がモール取付部15の外面に弾性的に接触してモール20がモール取付部15に安定した状態で保持される, 車両のドアサッシュモールの取付構造。」 本願発明と引用文献2に記載された事項とを対比すると,後者の「ドアサッシュ本体12」は前者の「ドアサッシュ」に相当し,以下同様に,「ドアサッシュモール」及び「モール20」は「サッシュモールディング」に,「モール取付部15」は「フランジ部」に,それぞれ相当する。 また,モール20の意匠部21の内面には振れ止め突条25が一体に形成されるとともに,振れ止め突条25がモール取付部15の外面に弾性的に接触してモール20がモール取付部15に安定した状態で保持されるから,後者の「モール取付部15の外面」は,前者の「サッシュモールディングの裏面側を支持する支持部」に相当する。 そうすると,引用文献2に記載された事項の「モール取付部15」は「モール取付部15の外面」を有するから,引用文献2に記載された事項は「フランジ部は,サッシュモールディングの裏面側を支持する支持部」を有し,「前記サッシュモールディングの裏面側を前記フランジ部の支持部にて支持させるものであ」るといえる。 しかしながら,引用文献2に記載された事項は,支持部である「モール取付部15の外面」の一部に部分的に変形を加えるものではなく,引用文献2には,上記相違点に係る本願発明の「嵌着部は支持部の一部に部分的に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部である」ことが記載されていないから,引用発明に引用文献2に記載された事項を適用しても,上記相違点における本願発明の発明特定事項には至らない。 そして,本願発明は,嵌着部は,支持部に変形を加えることで幅方向外側に向けて形成した突出部となることにより,ロールフォーミングで連続的に形成した支持部を部分的に変形加工するだけで製造することができるという効果を奏するものである(本願の明細書の段落【0006】参照。)。 したがって,本願発明は,引用発明,引用文献2に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6.むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-06-17 |
出願番号 | 特願2018-19329(P2018-19329) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高橋 武大 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 島田 信一 |
発明の名称 | サッシュモールディングの取付構造 |
代理人 | 大谷 嘉一 |