ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 出願日、優先日、請求日 取り消して特許、登録 G06Q 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q |
---|---|
管理番号 | 1375365 |
審判番号 | 不服2020-17954 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-30 |
確定日 | 2021-07-12 |
事件の表示 | 特願2019-207571「知識管理システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月 3日出願公開、特開2020-194520、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は,令和1年11月18日(優先権主張 特願2019-98163号 令和1年5月26日)の出願であって,令和2年3月6日付けで拒絶理由が通知され,令和2年7月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,令和2年10月6日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたが,これに対し,令和2年12月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,令和3年4月2日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,令和3年5月11日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 令和2年10月6日付けの原査定の概要は以下のとおりである。 本願請求項1-14に係る発明は,以下の引用文献A,Bに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.特開2019-101517号公報 B.特開2005-84754号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は以下のとおりである。 1.(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 本願請求項1に係る発明は,以下の引用文献1,2に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2019-101517号公報(拒絶査定時の引用文献A) 2.特開2005-84754号公報(拒絶査定時の引用文献B) 2.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)「知識エントリー」を「管理」しているのは,「知識エントリー属性記述管理手段」ではなく,「知識エントリー管理手段」であるので,「前記知識エントリー属性記述管理手段で管理されている知識エントリー」は,誤記であると認められる。 (2)請求項1の「文書」は,「属性記述」への「参照リンク」を保持しているのか否かが不明確である。 第4 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,令和3年5月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 知識の記録,管理において,少なくとも一つ存在する知識エントリーを管理する知識エントリー管理手段を備え, 知識エントリーに関する属性記述を記録,管理する知識エントリー属性記述管理手段を備え, 前記属性記述は用いる語彙として,当該語彙を定義ないし説明している他の知識エントリーないし他の知識エントリーの属性記述を用い,併せて当該他の知識エントリーないし他の知識エントリーの属性記述への参照リンクを利用可能とし, 前記知識エントリー管理手段で管理されている知識エントリー又は前記知識エントリー属性記述管理手段で管理されている属性記述を語彙として,さらに当該知識エントリー又は属性記述への参照リンクを保持した文書を作成する,参照語彙を用いた文書作成手段を備えたことを特徴とする知識管理システム。」 第5 引用文献,引用発明等 1.優先権主張について 本願は,令和1年5月26日に出願された特願2019-098163(以下,「先の出願」という。)を先の出願とした,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う出願である。 しかしながら,先の出願の当初明細書等には,段落【0030】,【0049】,【0053】に,文書にリンクを張ることは記載されているが,請求項1に係る発明の「前記知識エントリー管理手段で管理されている知識エントリー又は前記知識エントリー属性記述管理手段で管理されている属性記述を語彙として,さらに当該知識エントリー又は属性記述への参照リンクを保持した文書を作成する,参照語彙を用いた文書作成手段」は記載されていない。 したがって,当該優先権主張は認められず,本願発明1に対して特許法第29条を適用する際の判断の基準となる日は,現実の出願日である令和1年11月18日となる。 2.引用文献1 (1)原査定の拒絶の理由で引用され,現実の出願日前に公開された引用文献1には,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。) 「【請求項1】 知識の記録,管理において, 少なくとも一つの知識ツリーを管理する知識ツリー群管理手段と,前記知識ツリー毎に少なくとも一つ存在する知識エントリーを管理する知識エントリー管理手段を備え, 前記各知識エントリーは,当該知識エントリーに関する属性を記述する知識エントリー属性記述と,当該知識ツリーの他の知識エントリーとの親子関係を記述する知識エントリー親子関係リンクからなり, 前記知識エントリー属性記述は,異なる又は同一の知識ツリーに属する知識エントリー,または当該知識エントリーのエントリー属性記述に対する参照リンクを含んでいることを特徴とする知識管理システム。」 「【0052】 図10は,知識閲覧手段の一例である。 まず左から第1列の名前空間のリストから此処では「医療」を選択している。 この結果,第2列には「医療」名前空間に属する知識ツリー群の名前がリストアップされる。ここで「疾患名」知識ツリーを選択すると,先ず代謝系,循環器系などの大分類のリストが示される。「代謝系」を選択すると,その下の中分類群である「糖代謝系」,「脂質代謝系」などのリストが示される。 「糖代謝系」を選択すると,その下の小分類である「糖尿病」,「糖原病」などがリストアップされる。 「糖尿病」を選択すると,知識エントリー属性カテゴリーである<病態>,<合併症>などが示される。 <病態>を選択すると,<病態>を構成する属性記述である“高血糖”や, “HbA1c高値”などの参照リンクが示される。“高血糖”を選択すると,参照リンク先である「症状/所見」知識ツリー内の「高血糖」知識エントリーの属性カテゴリーである<定義>,<検査法>などが示される。定義を選択すると,当該知識エントリー属性カテゴリーの内容が表示される。」 (2)上記引用文献1の記載(特に下線部の記載)より,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「知識の記録,管理において,少なくとも一つ存在する知識エントリーを管理する知識エントリー管理手段を備え, 当該知識エントリーに関する属性を記述する知識エントリー属性記述は,異なる又は同一の知識ツリーに属する知識エントリー,または当該知識エントリーのエントリー属性記述に対する参照リンクを含んでいることを特徴とし, 「糖尿病」を選択すると,知識エントリー属性カテゴリーである<病態>,<合併症>などが示され,<病態>を選択すると,<病態>を構成する属性記述である“高血糖”や,“HbA1c高値”などの参照リンクが示され,“高血糖”を選択すると,参照リンク先である「症状/所見」知識ツリー内の「高血糖」知識エントリーの属性カテゴリーである<定義>,<検査法>などが示される, 知識管理システム。」 3.引用文献2 (1)原査定の拒絶の理由で引用され,現実の出願日前に公開された引用文献2には,以下の事項が記載されている。 「【0027】 電子辞書装置24は,辞書リンク付文書生成手段12からの要求に応じて語句が辞書に含まれるか否かを表す情報を提供し,辞書引き結果文書生成手段13からの要求に応じて語句に対する説明記述を提供する。また,辞書参照頻度情報管理手段23に対して辞書アクセス情報を提供する。」 「【0059】 図12(A)は,図2のステップ103及び図4の辞書リンク付文書生成手段12における処理によって生成された辞書引きリンクタグが付与された文書を示す画面の例である。この例では,図9の例と図11の例に対応しており,ユーザが,専門分野を「医学」に,難易度情報を「4」に,設定した場合を示す。図9に示したように,語句の専門分野が「医学」であり,かつ,難易度情報が「4」以上の語句である「pneumonia」と,「benign tumor」と,「malignant tumor」には下線が表示され辞書引きリンクタグが付与されていることを表している。一方で,語句の専門分野が「医学」ではない,または,難易度情報が「4」に満たない語句である「cold」と,「influenza」には下線が表示されず辞書引きリンクタグが付与されていないことを表している。」 (2)上記引用文献2の記載(特に下線部の記載)より,上記引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 「電子辞書装置の辞書に含まれる語句に辞書引きリンクタグが付与された文書を生成する辞書リンク付文書生成手段。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比すると,次のことがいえる。 ア.引用発明の「知識エントリー」は,本願発明1の「知識エントリー」に相当する。 イ.引用発明の「知識の記録,管理において,少なくとも一つ存在する知識エントリーを管理する知識エントリー管理手段」は,本願発明1の「知識の記録,管理において,少なくとも一つ存在する知識エントリーを管理する知識エントリー管理手段」に相当する。 ウ.引用発明は,「知識エントリー属性記述」,及び,同様のものを示しているといえる「エントリー属性記述」及び「属性記述」を使用しているので,「知識エントリー属性記述」,「エントリー属性記述」及び「属性記述」を記録,管理する手段を備えていることは明らかである。 エ.引用発明の「当該知識エントリーに関する属性を記述する知識エントリー属性記述は,異なる又は同一の知識ツリーに属する知識エントリー,または当該知識エントリーのエントリー属性記述に対する参照リンクを含んでいる」ところ,一般に,「知識管理システム」(オントロジー)において,知識エントリー及び属性記述は,お互いを定義ないし説明しているものであり,また,語彙として用いられるものであるので,引用発明の「知識エントリー属性記述」,「異なる又は同一の知識ツリーに属する知識エントリー」,「当該知識エントリーのエントリー属性記述」及び「参照リンク」は,それぞれ本願発明1の「属性記述」,「他の知識エントリー」,「他の知識エントリーの属性記述」及び「参照リンク」に相当する。 また,引用発明は,「知識エントリー」である「<病態>を選択すると,<病態>を構成する属性記述である“高血糖”や,“HbA1c高値”などの参照リンクが示され,“高血糖”を選択すると,参照リンク先である「症状/所見」知識ツリー内の「高血糖」知識エントリーの属性カテゴリーである<定義>,<検査法 >などが示される」ところ,引用発明の「参照リンク」は,それによって「参照リンク先」を「示」すことができるので,利用可能である。 したがって,上記ア.?エ.の検討内容を踏まえると,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「知識の記録,管理において,少なくとも一つ存在する知識エントリーを管理する知識エントリー管理手段を備え, 知識エントリーに関する属性記述を記録,管理する知識エントリー属性記述管理手段を備え, 前記属性記述は用いる語彙として,当該語彙を定義ないし説明している他の知識エントリーないし他の知識エントリーの属性記述を用い,併せて当該他の知識エントリーないし他の知識エントリーの属性記述への参照リンクを利用可能としたことを特徴とする知識管理システム。」 (相違点) 本願発明1は,「前記知識エントリー管理手段で管理されている知識エントリー又は前記知識エントリー属性記述管理手段で管理されている属性記述を語彙として,さらに当該知識エントリー又は属性記述への参照リンクを保持した文書を作成する,参照語彙を用いた文書作成手段」を備えるのに対して,引用発明は,そのようなものを備えていない点。 (2)相違点についての判断 令和3年5月11日に提出された意見書にあるように,引用文献2に記載された技術的事項は,文書作成後の後処理として難読が予想される語句に辞書へのリンクを張るだけであり,また,辞書に関しても,語句ごとの単純な記述があるだけで,語句ごとの系統的な参照関係はなく,あくまでの文書作成後の事後処理,索引の自動作成に準じるだけで,文書作成中は,作成者への知識の提供は行われない。 一方,本願発明1は,明細書【0039】第11?12行に,「知識エントリーへの参照リンクを保持した文書を作成することで,知識記述に裏付けられた文書作成を可能とすることである。」とあるように,知識エントリーと属性記述を用いて,新規に文書を作成する技術であり,参照リンク付き文書の作成は,機器操作(マウス)による,ディスプレイ上でのドラッグ&ドロップ操作によって実現が可能である。 このように,本願発明1の「文書を作成する」ことは,引用文献2に記載された技術的事項の「文書を生成する」こととは異なるものであり,本願発明1は,「表記の揺らぎのない系統的な知識の記述を可能にする」という,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項にない効果を奏しており,本願発明1は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者といえども容易に想到できたものではない。 また,上記相違点にかかる上記技術的事項は,現実の出願日前に周知な構成とはいえない。 第7 原査定についての判断 令和3年5月11日の手続補正により補正された請求項1は,上記相違点にかかる構成を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1は,上記引用発明及び上記引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。 したがって,原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由についての判断 1.特許法第29条第2項(進歩性)について 上記第6の1.(2)で検討のとおり,本願発明1は,上記相違点にかかる構成を有しており,そして,上記相違点にかかる上記技術的事項については,上記引用文献2には記載されておらず,また,現実の出願日前に周知な構成であるともいえないから,この拒絶の理由は解消した。 2.特許法第36条第6項第2号(明確性)について 令和3年5月11日の手続補正により,この拒絶の理由は解消した。 第9 むすび 以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-06-18 |
出願番号 | 特願2019-207571(P2019-207571) |
審決分類 |
P
1
8・
03-
WY
(G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鹿野 博嗣 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
塚田 肇 須田 勝巳 |
発明の名称 | 知識管理システム |
代理人 | 大野 浩司 |