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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1375397
審判番号 不服2020-4095  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-26 
確定日 2021-07-06 
事件の表示 特願2016- 44455「ホウ素/セレン含有水の処理装置および処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月14日出願公開、特開2017-159205、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成28年3月8日の出願であって、その後の実体審理に関する経緯は以下のとおりである。

令和 1年 7月16日(発送日) 拒絶理由通知書の送付
(起案日 同年 同月 8日)
同年 9月10日(受付日) 意見書の提出
令和 2年 1月21日(発送日) 拒絶査定の送付
(起案日 同年 1月14日)
同年 3月26日(受付日) 審判請求書及び手続補正書の提出
同年 7月 2日(受付日) 上申書の提出

第2 本願発明について
本願の請求項1?4に係る発明は、令和2年3月26日受付の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載される事項によって特定される以下のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を請求項の順に「本願発明1」?「本願発明4」という。)。

「【請求項1】
ホウ素化合物およびセレン化合物のうちの少なくとも1つと、フッ素化合物と、懸濁物質とを含有するホウ素/セレン含有水の処理装置であって、
前記ホウ素/セレン含有水にセリウム含有吸着剤を添加して、前記ホウ素化合物およびセレン化合物のうちの少なくとも1つと、前記フッ素化合物と、前記懸濁物質とを、アルカリ性条件下で凝集または吸着させ、固液分離により処理する第一処理手段と、
前記固液分離により分離した中間処理水にアルミニウム系凝集剤を添加して、前記固液分離処理水中に残留するフッ素化合物を凝集または吸着させ、固液分離により処理する第二処理手段と、
を備え、
前記ホウ素/セレン含有水中の前記懸濁物質の含有量は、50mg/L?1,000mg/Lの範囲であり、
前記セリウム含有吸着剤の添加量は、セリウムの濃度として、ホウ素1molに対して0.5mol?3molの範囲であることを特徴とするホウ素/セレン含有水の処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホウ素/セレン含有水の処理装置であって、
前記第一処理手段におけるアルカリ性条件が、pH8.5以上のアルカリ性条件であることを特徴とするホウ素/セレン含有水の処理装置。
【請求項3】
ホウ素化合物およびセレン化合物のうちの少なくとも1つと、フッ素化合物と、懸濁物質とを含有するホウ素/セレン含有水の処理方法であって、
前記ホウ素/セレン含有水にセリウム含有吸着剤を添加して、前記ホウ素化合物およびセレン化合物のうちの少なくとも1つと、前記フッ素化合物と、前記懸濁物質とを、アルカリ性条件下で凝集または吸着させ、固液分離により処理する第一処理工程と、
前記固液分離により分離した中間処理水にアルミニウム系凝集剤を添加して、前記固液分離処理水中に残留するフッ素化合物を凝集または吸着させ、固液分離により処理する第二処理工程と、
を含み、
前記ホウ素/セレン含有水中の前記懸濁物質の含有量は、50mg/L?1,000mg/Lの範囲であり、
前記セリウム含有吸着剤の添加量は、セリウムの濃度として、ホウ素1molに対して0.5mol?3molの範囲であることを特徴とするホウ素/セレン含有水の処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載のホウ素/セレン含有水の処理方法であって、
前記第一処理工程におけるアルカリ性条件が、pH8.5以上のアルカリ性条件であることを特徴とするホウ素/セレン含有水の処理方法。」

第3 原査定の理由について
原査定の理由は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明は、引用文献4、5の記載に鑑み、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載の技術手段に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に基づき特許を受けることができない、というものである。

<引用文献>
引用文献1:特開2007-326077号公報
引用文献2:特開平9-248577号公報
引用文献3:特開2006-314971号公報
引用文献4:特開2005-95785号公報
引用文献5:特開2013-177575号公報

第4 当審の判断
1 引用文献1(特開2007-326077号公報)に記載された事項
引用文献1には次のことが記載されている。ただし、「・・・」は記載の省略を示す。
(1)「【0009】本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものである。そしてその目的は、主としてセレンを含む排水に対し、pH調整等の前処理を行うことなく、簡易な工程でセレン(セレン酸イオン、亜セレン酸イオン)を効率的に吸着除去し、排水中のセレン含有量を環境基準以下に低減した排水処理を可能にする新たな方法を提供することである。」

(2)「【0013】なお本願明細書において「希土類化合物を含む吸着剤」とは、水酸化セリウムなど本発明の目的で使用できる希土類化合物を主成分として含有する吸着剤を意味するものである。使用できる吸着剤の具体的として、例えば日本板硝子(株)から市販されている粒状、スラリー状又は粉末状の「アドセラ」などを挙げることができるが、それに限定されるものではない。」

(3)「【0020】(処理方法2)本発明の一態様として、セレン含有排水に本発明で用いる吸着剤(例えば4価の水酸化セリウムを含む希土類化合物)を直接投入して攪拌し、次いで、凝集沈澱処理を行うことができる。吸着剤と汚染水を分離する時は、攪拌を止め、1時間程度静置することで、吸着剤が自重で沈降する。沈降後上澄み液を排出することで、吸着割と処理水を分離できる。更に次工程で排水に凝集剤などを添加し、コロイド状粒子を凝結すること、pH領域を調整して溶存成分を不溶化させること、さらに効率的に撹拌すること等により、沈殿物のフロックを形成させ、成長させて粗大化させ、沈降させた成分と水溶液を分離させることにより、凝集処理を行なうことができる。」

(4)「【0022】高分子凝集剤としては、例えばPAC剤(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄などの無機系凝集剤や、ポリアミン系、メラミン酸コロイド系、ジシアンジアミド系、ポリアクリルアミド系、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(DADMAC)系などの有機系凝集剤などの各種凝集剤を用いることが可能である。そのような高分子凝集剤を用いて排水中のセレンをフロック化させ、自重で沈降させ、上澄み液を分離後、沈降した成分を脱水ケーキ状にして排水中のセレンを回収することができる。この方法には静置時間を短縮できるという利点がある。」

(5)「【0025】更に希土頼化合物、特に4価の水酸化セリウムは、セレンだけでなく、ホウ素、フッ素、砒素、アンチモン、モリブデン、インジウム、カドミウム、鉛、銅、クロム(6価)などの吸着性能にも優れており、これらの吸着処理に本発明の処理方法を用いることも可能である。」

(6)「【0028】(処理方法2)4価のセレンを5ppm、6価のセレンを5ppm含有し、pHが9.0であるセレン含有排水200リットルに対して、平均粒径1?40μmの4価の水酸化セリウムを含む希土類化合物(「アドセラスラリー」(商品名)日本板硝子(株)製)5Kgを投入した。室温で30分間攪拌させ、吸着剤と汚染水を効率よく接触させた。凝集剤として、PAC剤(ポリ塩化アルミニウム)を水量に対して1重量%添加して適度に撹拌した。その後1時間静置することで、吸着剤を自重で沈降させ、その後ミクロポアフィルターPFR-500W-1SO(オルガノ株式会社製)のフィルターを通過させ、上澄み液を排出させ、処理水と吸着剤を分離した。なお本実施例で使用した「アドセラスラリー」は、水酸化セリウム(4価)を主成分として含む重金属固定用の吸着剤である。その結果処理水のセレン含有量は環境基準値以下、すなわち4価のセレンと6価のセレンの含量は共に0.01ppm以下であり、pHは8.6であった。」

(7)「【図1】



2 引用文献1に記載された発明(引用発明)の認定
(1)引用文献1の記載事項1(1)には、「主としてセレンを含む排水」が処理の対象とされることが記載されている。

(2)同1(6)の記載を見ると、上記の処理においては、「主としてセレンを含む排水」であるpH9.0というアルカリ性条件下の「セレン含有排水」に「水酸化セリウムを含む希土類化合物」を投入して攪拌し、次いで「凝集沈殿処理」として「PAC(ポリ塩化アルミニウム)」を添加して攪拌して静置し、固液分離することが記載されている。
なお、上記処理に関して、同1(3)の一般的な記載からすると、「処理方法2」では、固液分離が2回行われているようにも解されるが、「処理方法2」の具体例の記載である同1(6)の記載及び同1(7)の図1の開示から、同1(3)での「更に次工程で排水に凝集剤などを添加し、コロイド状粒子を凝結すること、pH領域を調整して溶存成分を不溶化させること、さらに効率的に撹拌すること等により、沈殿物のフロックを形成させ、成長させて粗大化させ、沈降させた成分と水溶液を分離させることにより、凝集処理を行なうこと」は「次いで、凝集沈澱処理を行うこと」にあたるものであって、ここでの固液分離も1回だけ行われているものと理解するのが相当である。

(3)ここで、同1(2)の記載のとおり、「希土類化合物を含む吸着剤」とは、水酸化セリウムなど本発明の目的で使用できる希土類化合物を主成分として含有する吸着剤を意味することから、上記「水酸化セリウムを含む希土類化合物」は、「水酸化セリウムを含有する吸着剤」であるということができる。

(4)また、同1(5)には、上記「水酸化セリウムを含有する吸着剤」に関し、「セレンだけでなく、ホウ素、フッ素、・・・などの吸着性能にも優れ」との記載はあるが、同1(3)、(6)に記載される被処理水は「セレン含有排水」であるため、同排水が「セレン」に加えて「ホウ素、フッ素」も含むとまで解することはできない。

(5)以上から、本願の請求項1の記載に則して整理すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「セレン含有排水の処理装置であって、
前記セレン含有排水に水酸化セリウムを含有する吸着剤を添加して、さらにPAC(ポリ塩化アルミニウム)を添加して、セレン化合物をアルカリ性条件下で凝集沈殿させ、固液分離する手段を備える、セレン含有排水の処理装置。」

3 本願発明1の容易想到性について
(1)引用発明との対比
ア 本願発明1の「ホウ素化合物およびセレン化合物のうちの少なくとも1つと、フッ素化合物と、懸濁物質とを含有するホウ素/セレン含有水」と、引用発明の「セレン含有排水」とは、「セレン含有排水」である点で一致する。

イ 本願発明1の「前記ホウ素/セレン含有水にセリウム含有吸着剤を添加して、前記ホウ素化合物およびセレン化合物のうちの少なくとも1つと、前記フッ素化合物と、前記懸濁物質とを、アルカリ性条件下で凝集または吸着させ、固液分離により処理する第一処理手段」と、引用発明の「前記セレン含有排水に水酸化セリウムを含有する吸着剤を添加して、さらにPAC(ポリ塩化アルミニウム)を添加して、セレンをアルカリ性条件下で凝集沈殿させ、固液分離する手段」とは、「水酸化セリウムを含有する吸着剤」が「セリウム含有吸着剤」にあたるので、両者は、「前記セレン含有水にセリウム含有吸着剤を添加して、セレン化合物をアルカリ性条件下で凝集または吸着させ、固液分離により処理する処理手段」である点で一致する。

ウ 以上から、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「セレン化合物を含有するセレン含有水の処理装置であって、
前記セレン含有水にセリウム含有吸着剤を添加して、前記セレン化合物を、アルカリ性条件下で凝集または吸着させ、固液分離により処理する処理手段を備えるセレン含有水の処理装置。」

(相違点1)
「セレン含有排水」について、本願発明1では「ホウ素化合物およびセレン化合物のうちの少なくとも1つと、フッ素化合物と、懸濁物質とを含有する」のに対して、引用発明では「セレン」が含有されるが、「ホウ素」「フッ素化合物」「懸濁物質」の含有については明らかでない点。

(相違点2)
「処理手段」での処理について、本願発明1では「ホウ素化合物およびセレン化合物のうちの少なくとも1つと、前記フッ素化合物と、前記懸濁物質」を「セリウム含有吸着剤」を添加して処理するのに対して、引用発明では「ホウ素化合物」と「フッ素化合物」と「懸濁物質」を含むか否か明らかでない「セレン化合物」を「水酸化セリウムを含有する吸着剤」と「PAC(ポリ塩化アルミニウム)」を添加して処理する点。

(相違点3)
本願発明では「固液分離により分離した中間処理水にアルミニウム系凝集剤を添加して、前記固液分離処理水中に残留するフッ素化合物を凝集または吸着させ、固液分離により処理する第二処理手段」を備えるのに対して、引用発明では同「第二処理手段」について不明な点。

(相違点4)
本願発明では「ホウ素/セレン含有水中の前記懸濁物質の含有量は、50mg/L?1,000mg/Lの範囲であり」「セリウム含有吸着剤の添加量は、セリウムの濃度として、ホウ素1molに対して0.5mol?3molの範囲である」のに対して、引用発明では「懸濁物質の含有量」、ホウ素に対するセリウムの濃度としての「セリウム含有吸着剤の添加量」は不明な点。

(2)相違点の検討
事案に鑑み、はじめに相違点3について検討する。
ア 引用発明は、引用文献1の記載事項1(6)からみて、具体的には、「セレン含有排水」に「水酸化セリウムを含有する吸着剤」を添加して、さらに「PAC剤(ポリ塩化アルミニウム)」を添加して、アルカリ性条件下で、「セレン化合物」を「凝集または吸着させ、固液分離により処理する」ものであるから、当該固液分離の後にさらに別の固液分離を行うことが原理的に必須であるものではなく、このことは、同1(7)の【図1】に2段目の固液分離装置は記載されていないことからも明らかである。
したがって、引用文献1の記載全体をみても、相違点3に係る本願発明1の特定事項を想起することはできない。

イ そこで他の文献について検討する。
(ア)引用文献2(【0025】?【0031】【図1】)には、「フッ素含有排水」に「CaCl_(2)」を添加して凝集沈降した「CaF_(2)」を固液分離して回収し、「上澄み液」にアルカリ性条件下で「硫酸アルミニウム」を添加して凝集沈殿した「水酸化アルミニウム」を固液分離して回収し、「上澄み液」は放流し、凝集沈殿として回収した「水酸化アルミニウム」をさらにアルカリ性条件下で二酸化炭素を吹き込み凝集沈降した「結晶性水酸化アルミニウム」(フッ素をほぼ吸着しない)を固液分離して回収し、「上澄み液」(フッ素が濃縮されている)を「フッ素含有排水」に戻して「フッ素含有排水」中のフッ素を処理する技術手段が記載されている。
引用文献2では固液分離が全部で3回行われることを必要とするものであり、一連の操作は「フッ素含有排水」中のフッ素の処理に特定されるもので、フッ素以外の排水中の特定成分を認識するものではない。
したがって、セレン化合物の処理のために「水酸化セリウムを含有する吸着剤」を添加して、さらに「PAC剤(ポリ塩化アルミニウム)」を添加して凝集沈殿(セレン化合物を含む)の固液分離を1回行う引用発明において、単に固液分離が複数段で行われているからといって、引用文献2に記載の技術手段を適用できる余地はなく、引用発明に適用しても相違点3に係る本願発明1の特定事項は想起されない。

(イ)引用文献3(【0001】【0044】)には、「半導体製造プロセスで用いられる洗浄用超純水」中の「ホウ素」を除去するために、「含水水酸化セリウム」を「ホウ素選択性吸着剤」として「PAC」と共に添加して「凝集濾過」を1回行う技術手段が記載されている。
したがって、そもそも引用文献3には固液分離を複数段で行う技術手段の記載は無く、引用発明に適用しても相違点3に係る本願発明1の特定事項は想起されない。

(ウ)引用文献4(【0013】?【0028】【図1】)には、ゼオライト製造の排水中のケイ酸塩、フッ素、ヒ素、セレン、ホウ素を除去するために、「鉱酸」「高分子凝集剤」を添加してケイ酸塩、フッ素、ヒ素、セレン、ホウ素を凝集沈殿させて固液分離して除去し、「上澄み」に「鉄塩」「消石灰」を添加して残余のケイ酸塩、フッ素、ヒ素、セレン、ホウ素を凝集沈殿させて固液分離して除去し、「上澄み」を放流する技術手段が記載されている。
引用文献4では固液分離が全部で2回行われることを必要とするものであり、一連の操作は「消石灰」の使用を中心としてなされ、引用発明の「水酸化セリウムを含有する吸着剤」「PAC剤(ポリ塩化アルミニウム)」とは処理剤として全く別剤である。
したがって、セレン化合物の処理のために「水酸化セリウムを含有する吸着剤」を添加して、さらに「PAC剤(ポリ塩化アルミニウム)」を添加して凝集沈殿(セレン化合物を含む)の固液分離を1回行う引用発明において、単に固液分離が2段で行われているからといって、引用文献4に記載の技術手段を適用できる余地はなく、引用発明に適用しても相違点3に係る本願発明1の特定事項は想起されない。
なお、引用文献4(【0004】)には「ゼオライトを製造する際に発生する排水には、溶解したケイ酸塩や、フッ素、ヒ素、セレン、ホウ素及び強アルカリ成分が含まれており、排水を下水道、河川または海洋などに放流するにはこれらの有害物を除去して浄化する必要がある。」と記載され、「フッ素」、「セレン」、「ホウ素」の排水中からの除去の必要性が記載されている。

(エ)引用文献5(【0014】【0015】【0052】)には、汚染水や汚染土壌からヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロムから選択される重金属類やフッ素の他、ホウ素等を除去するために、「鉄粉と金属塩化物」を添加することが記載されており、フィルターで濾過して固液分離する技術手段が記載されている。
したがって、そもそも引用文献5には固液分離を複数段で行う技術手段の記載は無く、引用発明に適用しても相違点3に係る本願発明1の特定事項は想起されない。
なお、引用文献5(【0002】)には「ヒ素、セレン、鉛、カドミウムおよびクロム等の重金属類やフッ素、ホウ素等の汚染物質は、人体に対して有害であり、健康障害をもたらすことから、これらの汚染物質による環境汚染が問題となっている。このうち重金属類は、土壌、地下水、河川水、湖沼水、各種工業排水等に含まれており、環境基準、排水基準が定められている。水中の重金属類がこれらの水質基準を超える場合には、水中からこれらの重金属類を除去する必要がある。」と記載され、「フッ素」、「セレン」、「ホウ素」の排水中からの除去の必要性が記載されている。

ウ 以上から、相違点3は実質的な相違点であり、同相違点に係る本願発明1の特定事項は、引用文献1?5の記載から容易に想到し得るものではない。

(3)本願発明1の容易想到性についてのまとめ
以上のとおりであるから、少なくとも相違点3に係る本願発明1の特定事項は引用文献1?5の記載から容易に想到し得るものとはいえない。
したがって、相違点1、2、4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献4、5の記載に鑑み、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載の技術手段に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明2?4の容易想到性について
本願発明2は、本願発明1を引用するものであるから、本願発明2についても、本願発明1と同様の理由により容易想到のものとはいえない。
また、本願発明1の「ホウ素/セレン含有水の処理装置」と、本願発明3の「ホウ素/セレン含有水の処理方法」とは、発明のカテゴリの相違に起因して、本願発明1で「第一処理手段」、「第二処理手段」とされるものが、本願発明3で「第一処理工程」、「第二処理工程」とされているものの、これらは表面上の違いにすぎないことから、本願発明3と引用文献1に記載されたものとの間には、上記相違点3と同様の相違点が存在するものと認められる。
そうである以上、本願発明3及びその特定事項をすべて有する本願発明4は、引用文献4、5の記載に鑑み、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載の技術手段に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-06-15 
出願番号 特願2016-44455(P2016-44455)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 河野 隆一朗  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 金 公彦
大光 太朗
発明の名称 ホウ素/セレン含有水の処理装置および処理方法  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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