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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1375500
審判番号 不服2020-11051  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-07 
確定日 2021-06-24 
事件の表示 特願2016- 81345「医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日出願公開、特開2017-189460〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月14日の出願であって、令和元年12月2日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月20日付けで拒絶査定されたところ(送達日:同年5月7日)、同年8月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和2年8月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年8月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
被検体を含むボリュームデータを取得するポートと、
前記ボリュームデータに基づいて表示画像を生成するプロセッサと、
前記表示画像を表示するディスプレイと、
を備え、
前記表示画像の少なくとも1つの画素の画素値は、
前記ボリュームデータに対して投射される仮想光線上の任意の範囲におけるボクセルのボクセル値の統計値と、
前記仮想光線上の任意の位置における前記被検体の輪郭の陰影値と、
に基づいて定められ、
前記統計値と前記輪郭の陰影値は独立した値であり、
前記プロセッサは、前記表示画像を生成する際に、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、前記輪郭の陰影の透明度を設定する、
医用画像処理装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年2月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
被検体を含むボリュームデータを取得するポートと、
前記ボリュームデータに基づいて表示画像を生成するプロセッサと、
前記表示画像を表示するディスプレイと、
を備え、
前記表示画像の少なくとも1つの画素の画素値は、
前記ボリュームデータに対して投射される仮想光線上の任意の範囲におけるボクセルのボクセル値の統計値と、
前記仮想光線上の任意の位置における前記被検体の輪郭の陰影値と、
に基づいて定められ、
前記統計値と前記輪郭の陰影値は独立した値である、
医用画像処理装置。」

2 補正の適否
本件補正は、「前記プロセッサは、前記表示画像を生成する際に、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、前記輪郭の陰影の透明度を設定する」旨の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、国際公開第2007/043310号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は当審にて付した。以下同様である。)

(引1a)「[0015] 本発明の第1の実施形態を、図1?5を用いて説明する。図1は、第1の実施形態の医用画像診断システムのシステム構成図である。この医用画像診断システムは、被検体から三次元ボリュームデータを取得する医用画像診断装置10と、医用画像診断装置10が取得したボリュームデータを記憶するボリュームデータ記憶部11と、ボリュームデータ記憶部11が記憶したボリュームデータに基づいてMIP画像を作成するMIP画像作成部12と、三次元空間の切断面を作成する切断面作成部13と、MIP画像と切断面との相互位置関係を表す位置関係表示画像を作成する位置関係表示画像作成部14と、位置関係表示画像作成部14が作成した位置関係表示画像を表示する表示部15と、CPU(Central Processing Unit)からなり上記各構成要素の制御を行う制御部16と、マウス、トラックボール、キーボード等からなり、検者の指示を制御部16に与える操作部17と、を含む。」

(引1b)「[0018] MIP画像作成部12は、ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP法を用いてMIP画像を作成する。MIP法では、ボリュームデータに対し、検者が指定した視点及び投影面に対応した配置関係で二次元構造体である投影面を三次元空間に配置する。そして、ボリュームデータの投影面上の各画素への投影値として、投影線上にあるデータのうち値が最も大きなデータの値を求める。このようにして求めた投影値を各画素の値として、これら複数の画素に基づいてMIP画像を表示する。」

(引1c)「[0059] 次に、本発明の第2の実施形態を、図9及び10を用いて説明する。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、表示画像として被検体の体表画像を加えて、MIP画像と切断面と体表画像との相互位置関係を表すように、位置関係表示画像が作成され表示されることである。体表画像が加えられた位置関係表示画像は、リアルタイムバーチャルソノグラフィ(RVS)のガイド画像として用いることができる。RVSとは、超音波診断装置により被検体の超音波画像が撮像される際に、撮像中の超音波画像の表示断面に一致するリファレンス画像(例えばCT断層画像)が、種々の医用画像診断装置(例えばCT画像診断装置)により事前に取得された被検体に関する三次元ボリュームデータから抽出され、抽出されたリファレンス画像が撮像中の超音波画像と並列に表示画面に表示される技術である。これにより、超音波診断装置において、撮像中の超音波画像と同一断面のリファレンス画像をリアルタイムで描画することができる。
[0060] 図9は、第2の実施形態の医用画像診断システムのシステム構成図である。超音波診断装置57は、被検体との間で超音波を送受する超音波探触子(以下、探触子という)50と、探触子50に駆動信号を供給する共に探触子50から出力される受信信号を処理して受信データを出力する超音波送受信部51と、超音波送受信部51から出力された受信データに基づいて超音波画像を再構成する超音波画像作成部52と、超音波画像作成部52から出力された超音波画像を表示する表示部56と、を含む。
[0061] 超音波診断装置57は、更に、医用画像診断装置10により取得された被検体に関するボリュームデータを取り込んで記憶するボリュームデータ記憶部11を備えている。」

(引1d)「 [0065] ボリュームデータ記憶部11は、医用画像診断装置10が取得したボリュームデータをその三次元位置座標とともにメモリなどに記憶するものであり、様々な画像診断装置が取得した複数種類のボリュームデータを記憶することもできる。
[0066] リファレンス画像構成部55は、超音波断層面座標算出部54から出力された探触子50の位置データに基づき、ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータからリファレンス画像用データを抽出してリファレンス画像を再構成する。このリファレンス画像用データは、リアルタイム撮像のときは、現に撮像されている超音波画像のスキャン面に対応する。リファレンス画像は、撮像されている超音波画像と同一断面の断層像として表示部56に表示される。
[0067] 超音波診断装置57は、探触子50のガイド情報を作成する手段として、ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP画像及びサーフェイスレンダリング(SR)画像を作成してそれらを合成する三次元画像作成部58と、三次元空間の切断面を作成する切断面作成部13と、MIP画像と切断面との相互位置関係を表す位置関係表示画像を作成する位置関係表示画像作成部14と、を備えている。位置関係表示画像作成部14で作成された位置関係表示画像が探触子50のガイド情報となり、検者はガイド情報に基づいて探触子50を移動させる。なお、超音波診断装置57は、各構成要素を制御する制御部及び操作部(不図示)を備えている。
[0068] ここで、ガイド情報の作成について詳細に説明する。三次元画像作成部58は、ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいて第1の実施形態で説明したMIP法を用いてMIP画像を作成すると共に、ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてサーフェイスレンダリング(SR)法やボリュームレンダリング(VR)法を用いて被検体の体表を表す画像(ここでは、SR画像と称することとする)を作成する。
[0069] サーフェイスレンダリング法では、ボリュームデータに対して視点及び投影面が検者により設定され、ボリュームデータから閾値処理などによって被検体の表面境界が抽出され、投影面上の各画素(座標(X,Y))への投影値として、視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果が投影値に反映される。このとき、奥行き情報(Z座標)には表面境界のZ座標が採用される。
[0070] ボリュームレンダリング法では、ボリュームデータに対して視点及び投影面が検者により設定され、投影面上の各画素(座標(X,Y))への投影値として、視線上にあるボクセルの輝度が各画素の不透明度によって重み付けされながら加算される。このとき、奥行き情報(Z座標)には、輝度値がある閾値より大きくなった個所のZ座標又は輝度勾配がある閾値より大きくなった個所のZ座標が採用される
[0071] 三次元画像作成部58は、血管部分の画像をMIP法で作成し被検体の体表の画像をサーフェイスレンダリング法やボリュームレンダリング法で作成して三次元画像を作成する際、三次元空間におけるMIP画像及びSR画像の奥行き情報(Z座標)を併せて算出する。
[0072] 三次元画像作成部58は、上述の通り作成したMIP画像とSR画像とを合成する。三次元画像作成部58は、MIP画像とSR画像とを合成する際、MIP画像のZ座標とSR画像のZ座標とを比較することにより、MIP画像及びSR画像のうち視点21からより遠く他方の陰になって見えない一方に対して陰面処理を施す。通常、血管の画像(MIP画像)が体表の画像(SR画像)より奥側に配置される。このとき、MIP画像及びSR画像に対してそれぞれ不透明度を設定しておき、不透明度に応じた係数及びZ座標値に応じた割合でMIP画像の輝度値とSR画像の輝度値とをブレンドすることで、手前側のSR画像が半透明に表示され、奥側のMIP画像がSR画像を透過して表示されるようにする。この合成された三次元画像は、被検体体表と血管との位置関係を表現しているので、被検体内のどこの血管が表示されているか、また、血管のどの位置からどの方向を観察しているかを、検者に明確に把握させることができる。
[0073] 切断面作成部13は、位置データ算出部59から出力された磁気センサ53の位置データ(探触子50の三次元位置と傾き(ねじれ))に基づいて、三次元空間内における切断面を作成する。具体的には、切断面作成部13は、探触子50の三次元位置に基づいて第1の実施形態で説明した平面式(式(2))において(X_(0),Y_(0),Z_(0))を変化させることにより、切断面の三次元位置を探触子50の三次元位置に応じて移動させる。また、切断面作成部13は、探触子50の傾き(ねじれ)に基づいて第1の実施形態で説明した回転成分R(式(1))を変化させて、切断面を切断面の中心を支点として回転させることにより、切断面を、探触子50の回転に応じて、切断面の中心を通る切断面の法線を軸として回転させる。
[0074] 位置関係表示画像作成部14は、三次元画像作成部58で作成されたMIP画像とSR画像とが合成された三次元画像と、切断面作成部13で作成された切断面との相互位置関係を表す位置関係表示画像を作成する。」

(引1e)「[0077] 図10に示すように、表示部56は、位置関係表示画像部14で作成された位置関係表示画像60、超音波画像作成部52で作成された超音波画像63、及びリファレンス画像構成部55で作成されたリファレンス画像64を表示する。
[0078] 位置関係表示画像60では、MIP画像として表示された血管31、32、33の画像と共に切断面34が表示されているので、検者は、血管31、32及び33のそれぞれと切断面34との位置関係から、血管32が最も手前側に位置し、血管31が最も奥側に位置し、血管33が血管32と血管31との間に位置することを把握することができ、血管31、32及び33の奥行き関係を把握することができる。更に、合成画像60では、被検体の体表を表すSR画像36が血管31、32、33の画像及び切断面34と共に表示されているので、検者は、被検体の体表と血管31、32及び33との立体的な位置関係を把握することができる。」

(イ)引用文献1に記載された発明
a 上記(引1a)より、引用文献1には、「第1の実施形態の医用画像診断システム」として、以下の事項が記載されている。

「被検体から三次元ボリュームデータを取得する医用画像診断装置10と、
医用画像診断装置10が取得したボリュームデータを記憶するボリュームデータ記憶部11と、
ボリュームデータ記憶部11が記憶したボリュームデータに基づいてMIP画像を作成するMIP画像作成部12と、
三次元空間の切断面を作成する切断面作成部13と、MIP画像と切断面との相互位置関係を表す位置関係表示画像を作成する位置関係表示画像作成部14と、
位置関係表示画像作成部14が作成した位置関係表示画像を表示する表示部15と、
CPU(Central Processing Unit)からなり、
上記各構成要素の制御を行う制御部16と、
マウス、トラックボール、キーボード等からなり、検者の指示を制御部16に与える操作部17と、を含む
第1の実施形態の医用画像診断システム。」

b 上記(引1b)より、「第1の実施形態の医用画像診断システム」の「MIP画像作成部12は、ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP法を用いてMIP画像を作成」するものであり、「MIP法では、ボリュームデータに対し、検者が指定した視点及び投影面に対応した配置関係で二次元構造体である投影面を三次元空間に配置する」ものであって、「ボリュームデータの投影面上の各画素への投影値として、投影線上にあるデータのうち値が最も大きなデータの値を求め」、「求めた投影値を各画素の値として、これら複数の画素に基づいてMIP画像を表示する」ものである旨記載されている。

c 上記(引1c)?(引1e)の「位置関係表示画像」、「位置関係表示画像60」及び「合成画像60」は、何れも同じものを指しているから、「位置関係表示画像60」として整理する。そして、上記(引1c)?(引1e)より、引用文献1には、「第2の実施形態の医用画像診断システム」として、以下の事項が記載されている。

「 超音波診断装置57を備える第2の実施形態の医用画像診断システムにおいて、
超音波診断装置57は、
探触子50と、
探触子50に駆動信号を供給する共に探触子50から出力される受信信号を処理して受信データを出力する超音波送受信部51と、
超音波送受信部51から出力された受信データに基づいて超音波画像を再構成する超音波画像作成部52と、
超音波画像作成部52から出力された超音波画像を表示する表示部56と、
を含み、
医用画像診断装置10により取得された被検体に関するボリュームデータを取り込んで記憶するボリュームデータ記憶部11と、
ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP画像及びサーフェイスレンダリング(SR)画像を作成してそれらを合成する三次元画像作成部58と、
三次元空間の切断面を作成する切断面作成部13と、
MIP画像と切断面との相互位置関係を表す位置関係表示画像60を作成する位置関係表示画像作成部14と、
各構成要素を制御する制御部及び操作部と、
を備え、

ボリュームデータ記憶部11は、
医用画像診断装置10が取得したボリュームデータをその三次元位置座標とともにメモリなどに記憶し、

三次元画像作成部58は、
ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいて第1の実施形態で説明したMIP法を用いてMIP画像を作成すると共に、
ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてサーフェイスレンダリング(SR)法やボリュームレンダリング(VR)法を用いて被検体の体表を表すSR画像を作成し、
MIP画像とSR画像とを合成し、
MIP画像とSR画像とを合成する際、MIP画像のZ座標とSR画像のZ座標とを比較することにより、MIP画像及びSR画像のうち視点21からより遠く他方の陰になって見えない一方に対して陰面処理を施し、
MIP画像及びSR画像に対してそれぞれ不透明度を設定しておき、不透明度に応じた係数及びZ座標値に応じた割合でMIP画像の輝度値とSR画像の輝度値とをブレンドすることで、手前側のSR画像が半透明に表示され、奥側のMIP画像がSR画像を透過して表示されるようにし、

サーフェイスレンダリング法では、
ボリュームデータに対して視点及び投影面が検者により設定され、ボリュームデータから閾値処理などによって被検体の表面境界が抽出され、投影面上の各画素(座標(X,Y))への投影値として、視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果が投影値に反映され、

位置関係表示画像作成部14は、
三次元画像作成部58で作成されたMIP画像とSR画像とが合成された三次元画像と、切断面作成部13で作成された切断面との相互位置関係を表す位置関係表示画像60を作成し、

表示部56は、
位置関係表示画像部14で作成された、被検体の体表を表すSR画像36が血管31、32、33の画像及び切断面34と共に表示されている位置関係表示画像60を表示する
第2の実施形態の医用画像診断システム。」

d 上記(引1c)において、「第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、表示画像として被検体の体表画像を加えて、MIP画像と切断面と体表画像との相互位置関係を表すように、位置関係表示画像が作成され表示されることである」旨記載されていることから、上記(引1a)?(引1e)より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「超音波診断装置57を備える医用画像診断システムにおいて、
超音波診断装置57は、
探触子50と、
探触子50に駆動信号を供給する共に探触子50から出力される受信信号を処理して受信データを出力する超音波送受信部51と、
超音波送受信部51から出力された受信データに基づいて超音波画像を再構成する超音波画像作成部52と、
超音波画像作成部52から出力された超音波画像を表示する表示部56と、
CPU(Central Processing Unit)と、
を含み、
被検体から三次元ボリュームデータを取得する医用画像診断装置10と、
医用画像診断装置10により取得された被検体に関するボリュームデータを取り込んで記憶するボリュームデータ記憶部11と、
ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP画像及びサーフェイスレンダリング(SR)画像を作成してそれらを合成する三次元画像作成部58と、
三次元空間の切断面を作成する切断面作成部13と、
MIP画像と切断面との相互位置関係を表す位置関係表示画像60を作成する位置関係表示画像作成部14と、
各構成要素を制御する制御部及び操作部と、
を備え、

ボリュームデータ記憶部11は、
医用画像診断装置10が取得したボリュームデータをその三次元位置座標とともにメモリなどに記憶し、

三次元画像作成部58は、
ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいて第1の実施形態で説明したMIP法を用いてMIP画像を作成すると共に、
ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてサーフェイスレンダリング(SR)法やボリュームレンダリング(VR)法を用いて被検体の体表を表すSR画像を作成し、
MIP画像とSR画像とを合成し、
MIP画像とSR画像とを合成する際、MIP画像のZ座標とSR画像のZ座標とを比較することにより、MIP画像及びSR画像のうち視点21からより遠く他方の陰になって見えない一方に対して陰面処理を施し、
MIP画像及びSR画像に対してそれぞれ不透明度を設定しておき、不透明度に応じた係数及びZ座標値に応じた割合でMIP画像の輝度値とSR画像の輝度値とをブレンドすることで、手前側のSR画像が半透明に表示され、奥側のMIP画像がSR画像を透過して表示されるようにし、

MIP法では、
ボリュームデータに対し、検者が指定した視点及び投影面に対応した配置関係で二次元構造体である投影面を三次元空間に配置するものであって、ボリュームデータの投影面上の各画素への投影値として、投影線上にあるデータのうち値が最も大きなデータの値を求め、求めた投影値を各画素の値として、これら複数の画素に基づいてMIP画像を表示し、

サーフェイスレンダリング法では、
ボリュームデータに対して視点及び投影面が検者により設定され、ボリュームデータから閾値処理などによって被検体の表面境界が抽出され、投影面上の各画素(座標(X,Y))への投影値として、視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果が投影値に反映され、

位置関係表示画像作成部14は、
三次元画像作成部58で作成されたMIP画像とSR画像とが合成された三次元画像と、切断面作成部13で作成された切断面との相互位置関係を表す位置関係表示画像60を作成し、

表示部56は、
位置関係表示画像部14で作成された、被検体の体表を表すSR画像36が血管31、32、33の画像及び切断面34と共に表示されている位置関係表示画像60を表示する
医用画像診断システム。」

イ 参考文献について
本件補正により追加された「前記プロセッサは、前記表示画像を生成する際に、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、前記輪郭の陰影の透明度を設定する」点についての技術を示す文献として、以下の文献を示す。

(ア)特開平09-245191号公報(以下「参考文献1」という。)に記載された事項
参考文献1には、以下の事項が記載されている。

(参1a)「【0006】ところが、従来技術では、このような頂点の透明度から各ピクセルの透明度を算定するに当たって、各ポリゴンの視線方向に対する角度や光源の方向を考慮することなく、単純に頂点の透明度から個々のピクセルの透明度を補完して求めていた。そのため、この角筒Mを図7のように正面から見た場合に、個々のポリゴンの面と視線方向との角度が異なっているにもかかわらず、どのポリゴンであっても同じ透明度を持つ画像として表現されることになる。その結果、図9のように、この角筒Mが他の物体(例えば三角形の物体)Nの前方に配置された場合に、角筒Mのどの面でもその背後の物体Nが同程度に透視された画像が表示される。このような画像の表示は、平板状の半透明な物体を物体Nの前方に重ね合わせた場合と同様なものであって、物体Nの前方に配置されている物体が立体的な角筒であることを明確に認識できるものではなかった。
【0007】すなわち、現実の世界に配置された物体を考えた場合、材質の透明度が変化しなくても、物体そのものの透明度は光源や視線の方向によって変化する。従って、現実の世界では、視線に対して正面を向いているポリゴンと視線に対して角度を持っているポリゴンとでは、その背後の物体を透視できる程度が異なっている。しかし、従来技術は、ポリゴンの角度などに応じて透視できる程度を変化させることが不可能であるため、物体に立体感を与えることができなかった。
【0008】また、現実の世界では、物体の透明度は、その物体が置かれた環境によって変化する。例えば、日中や明るい照明の下と、夕暮れなどの光量の少ない環境下では同じ材質の物体でも背後の物体を透視できる程度が異なる。そのため、ポリゴンが同じ角度傾いた場合でも、その物体の環境によって透明度が変化する割合が異なってくる。また、着色された物体にあっては、その色によってポリゴンが同じ角度傾いた場合でも、透明度が変化する割合が異なってくる。しかし、従来技術では、このような物体の置かれた環境やその色によって透明度が変化する割合を考慮することなく、単に各ポリゴンの頂点に付与された透明度に従って各ピクセルの透明度を算定していたため、現実感に優れた立体画像を表示することが不可能であった。
【0009】本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するために提案されたもので、その主たる目的は、半透明をしたポリゴンなどの多角形によって画面上に物体を表現するに当たり、多角形の透明度をその平面の傾斜角度に応じて変化させることで、表現された物体に優れた立体感を与えることができる透明度変換方法及びその装置を提供することにある。」

(参1b)「【0031】例えば、図3において、頂点の単位法線ベクトルのZ成分Nzが1(視線方向に対して単位法線ベクトルの方向が0度であって、ポリゴンの平面と視線方向とが直角の場合)に近い程、出力される透明度αout は入力された透明度αinに近づく。逆に、Z成分Nzが0(視線方向に対して単位法線ベクトルの方向が90度であって、ポリゴンの平面と視線方向が平行の場合)に近い程、出力される透明度αout は入力された透明度αinよりも透明度が低くなる。」

(参1c)「【0037】(ステップ4)…透明度の補正変換
透明度変換回路40に入力された各頂点の透明度は、変換器41において、頂点の単位法線ベクトルのZ成分Nzとパラメータレジスタ42にセットされたパラメータ値Pに基づいて補正された後、輝度計算回路5に出力される。すなわち、図5から解るように、各頂点における法線ベクトルNの大きさが等しい場合であっても、そのZ成分の大きさはポリゴンの平面と視線方向とのなす角度によって異なり、ポリゴンの平面と視線方向が直角に近くなるほど単位法線ベクトルのZ成分は大きくなる。従って、角筒の中央部の頂点c,dにおいては、単位法線ベクトルのZ成分が大きい(Z成分が1に近い)ので、透明度変換回路40から出力される補正された頂点の透明度αout は、透明度変換回路40への入力値αinに近い値になる。一方、角筒の側面になるほど、単位法線ベクトルのZ成分が小さくなる(Z成分が0に近くなる)ので、補正後の頂点の透明度αout は透明度変換回路40への入力値αinに比べて低くなる。」

(イ)特開2010-033252号公報(以下「参考文献2」という。)に記載された事項
参考文献2には、以下の事項が記載されている。

(参2a)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記画像生成装置の目的はオブジェクトの視認性を高めることであり、リアリティのある半透明物体を表現することは考慮されていなかった。本発明の目的は、視点との位置関係によって透明度が変化するような物体をリアルに表現することが可能なプログラム、情報記憶媒体および画像生成システムを提供することである。」

(参2)「【0042】
例えば図3の描画ピクセルpb1のα値を求める場合について説明する。描画ピクセルpb1の法線ベクトルは、法線ベクトルNabとNbcが補間されて求められる。描画ピクセルpb1は、ポリゴン202bのほぼ中央にあるので、その法線ベクトルは視線ベクトルNvとほぼ正対する。従って、視線ベクトルNvと描画ピクセルpb1の法線ベクトルの内積は、-1に近い値となる。ここで、本実施形態では、内積のべき乗をテクスチャ座標のU座標として、図4(A)のαテクスチャを参照する。図4(A)のαテクスチャでは、U=1に近いテクセルにはα=0に近い値が設定されている。従って、描画ピクセルpb1は、α=0に近い値でαブレンディングされ、ポリゴン202bの後ろにあるオブジェクト200がはっきりと透けて見える画像(描画ピクセルpb1の透明度が高い画像)が描画される。一方、図3の描画ピクセルpc1のα値を求める場合について説明する。描画ピクセルpc1の法線ベクトルは、法線ベクトルNbcとNceが補間されて求められる。視線ベクトルと描画ピクセルpc1の法線ベクトルのなす角が120°だとすると、内積は-0.5となる。上記と同様に内積のべき乗をテクスチャ座標のU座標として図4(A)のαテクスチャを参照すると、U=0.25のテクセルにはα=0.75が設定されている。従って、描画ピクセルpc1はα=0.75で背景色とαブレンディングされ、描画ピクセルpc1の色とオブジェクト200の色が3:1の割合で合成される。このようにして、法線ベクトルの向きが視線ベクトルの向きと正対する基準方向からずれている描画ピクセルpc1の透明度は、描画ピクセルpb1の透明度よりも低くなる。」

(ウ)特開2008-067992号公報(以下「参考文献3」という。)に記載された事項
参考文献3には、以下の事項が記載されている。

(参3a)「【0027】
ボリュームデータ補正部32は、ボリュームデータ選択部31によって選択された上述の第1の画素群及び第2の画素群の画素値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正する。一方、不透明度・色調設定部33は、補正された画素値に基づいて不透明度や色調を設定し、更に、共通/差分領域検出部6から供給される領域判定信号に基づいて共通領域及び差分領域の各々の画素群に対して異なる色調を設定する。」

(エ)特開2011-224117号公報(以下「参考文献4」という。)に記載された事項
参考文献4には、以下の事項が記載されている。

(参4a)「【0042】
ボリュームデータ補正部51は、ボリュームデータ生成部4のボリュームデータ記憶部44から読み出した門脈系ボリュームデータ、肝動脈系ボリュームデータ及び肝静脈系ボリュームデータのボクセル値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正し、不透明度・色調設定部52は、補正されたボクセル値に基づいて不透明度や色調を設定する。」

(オ)周知技術について
a 上記(ア)より、参考文献1には、

「各ポリゴンの視線方向に対する角度や光源の方向を考慮することなく、単純に頂点の透明度から個々のピクセルの透明度を補完して求めていた・・・ため、・・・正面から見た場合に、個々のポリゴンの面と視線方向との角度が異なっているにもかかわらず、どのポリゴンであっても同じ透明度を持つ画像として表現されることになる・・・結果、・・・角筒Mが他の物体(例えば三角形の物体)Nの前方に配置された場合に、角筒Mのどの面でもその背後の物体Nが同程度に透視された画像が表示され・・・画像の表示は、平板状の半透明な物体を物体Nの前方に重ね合わせた場合と同様なものであって、物体Nの前方に配置されている物体が立体的な角筒であることを明確に認識できるものではなかった。
・・・
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解消するために・・・半透明をしたポリゴンなどの多角形によって画面上に物体を表現するに当たり、多角形の透明度をその平面の傾斜角度に応じて変化させることで、表現された物体に優れた立体感を与えることができる透明度変換方法・・・を提供することにある。」(参1a)

「単位法線ベクトルのZ成分Nzが1(視線方向に対して単位法線ベクトルの方向が0度であって、ポリゴンの平面と視線方向とが直角の場合)」(参1b)

「各頂点における法線ベクトルNの大きさが等しい場合であっても、そのZ成分の大きさはポリゴンの平面と視線方向とのなす角度によって異なり、ポリゴンの平面と視線方向が直角に近くなるほど単位法線ベクトルのZ成分は大きくなる。従って、・・・単位法線ベクトルのZ成分が大きい(Z成分が1に近い)ので、透明度変換回路40から出力される補正された頂点の透明度αoutは、透明度変換回路40への入力値αinに近い値になる。一方、角筒の側面になるほど、単位法線ベクトルのZ成分が小さくなる(Z成分が0に近くなる)ので、補正後の頂点の透明度αout は透明度変換回路40への入力値αinに比べて低くなる。」(参1c)

旨記載されており、上記記載より参考文献1には、「半透明をしたポリゴンなどの透明度をその平面の傾斜角度に応じて変化させることで、表現された物体に優れた立体感を与えるために、透明度を単位法線ベクトルの視線方向に対するZ成分の大きさに応じ、大きさが大きい場合は透明度を高く、大きさが小さい場合は、透明度を低く設定する」技術事項(以下「技術事項1」という)が記載されているといえる。

b 上記(イ)より、参考文献2には、

「視点との位置関係によって透明度が変化するような物体をリアルに表現することが可能なプログラムであって、
視線ベクトルNvと描画ピクセルpb1の法線ベクトルの内積のべき乗をテクスチャ座標のU座標としてαテクスチャを参照し、
αテクスチャでは、U=1に近いテクセルにはα=0に近い値が設定され、
内積は-0.5となる内積のべき乗をテクスチャ座標のU座標としてαテクスチャを参照すると、U=0.25のテクセルにはα=0.75が設定され、
描画ピクセルpc1はα=0.75で背景色とαブレンディングされ、描画ピクセルpc1の色とオブジェクト200の色が3:1の割合で合成され、
法線ベクトルの向きが視線ベクトルの向きと正対する基準方向からずれている描画ピクセルpc1の透明度は、描画ピクセルpb1の透明度よりも低くなる」

旨記載されており、「描画ピクセルpb1」は「U=1に近いテクセルにはα=0に近い値が設定され」、「描画ピクセルpc1」は「U=0.25のテクセルにはα=0.75が設定され」ており、結果として「描画ピクセルpc1の透明度は、描画ピクセルpb1の透明度よりも低くな」っているおり、「視線ベクトルNv」と「法線ベクトルの内積のべき乗をテクスチャ座標のU座標として」いるから、参考文献2には、「視線ベクトルNv」と「法線ベクトルの内積のべき乗」が0.25の場合の透明度は、1に近い場合の透明度より低くなる、すなわち、描画ピクセルの透明度を「視線ベクトルNv」と「法線ベクトルの内積のべき乗」に応じ、大きさが大きい場合は透明度を高く、大きさが小さい場合は透明度を低く設定する旨記載されているといえる。
そうすると、参考文献2には、「視点との位置関係によって透明度が変化するような物体をリアルに表現するために、描画ピクセルの透明度を視線ベクトルNvと法線ベクトルの内積のべき乗に応じ、大きさが大きい場合は透明度を高く、大きさが小さい場合は透明度を低く設定する」技術事項(以下「技術事項2」という。)が記載されているといえる。

c 技術事項1の「半透明をしたポリゴンなどの透明度をその平面の傾斜角度に応じて変化させることで、表現された物体に優れた立体感を与える」こと及び技術事項2の「視点との位置関係によって透明度が変化するような物体をリアルに表現する」ことは、何れも、「表現された物体」の「立体的な位置関係を把握する」ためのものである。
また、技術事項1の「単位法線ベクトル」及び「視線方向」と、技術事項2の「法線ベクトル」及び「視線ベクトルNv」とは、それぞれ、本件補正発明の「前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線」及び「前記仮想光線の進行方向」に相当する。
そして、技術事項1の「単位法線ベクトルの視線方向に対するZ成分の大きさ」が「大きい場合」と、技術事項2の「描画ピクセルの透明度を視線ベクトルNvと法線ベクトルの内積のべき乗」の「大きさが大きい場合」は、何れも、本件補正発明の「前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角」が「小さい場合」に相当する。
すると、技術事項1及び2は、何れも「表現された物体の立体的な位置関係を把握するために、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、透明度を設定する技術」であるといえるから、「表現された物体の立体的な位置関係を把握するために、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、透明度を設定する技術」は周知技術(以下「周知技術1」という。)であるといえる。

d 上記(ウ)より、参考文献3には「画素値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正し、不透明度は、補正された画素値に基づいて設定される」旨記載され、上記(エ)より、参考文献4には、「ボクセル値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正し、不透明度は、補正されたボクセル値に基づいて設定される」旨記載されている。参考文献3の「画素値」及び参考文献4の「ボクセル値」は、何れも引用発明の「投影値」に相当するから、参考文献3及び4には、何れも「投影値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正し、不透明度は、補正された投影値に基づいて設定される」技術が記載されているといえる。
そうすると、「投影値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正し、不透明度は、補正された投影値に基づいて設定される」技術は、周知技術(以下「周知技術2」という。)であるといえる。

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「医用画像診断システム」は「ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP画像及びサーフェイスレンダリング(SR)画像を作成してそれらを合成する」ものであるから、本件補正発明の「医用画像処理装置」に相当する。

(イ)引用発明の「ボリュームデータ記憶部11」は、「医用画像診断装置10により取得された被検体に関するボリュームデータを取り込んで記憶する」ものであるから、「医用画像診断装置10により取得された被検体に関するボリュームデータを取り込」むためのポートを有しているといえる。
そうすると、引用発明の「医用画像診断装置10により取得された被検体に関するボリュームデータを取り込」むためのポートは、本件補正発明の「被検体を含むボリュームデータを取得するポート」に相当する。

(ウ)引用発明の「三次元画像作成部58」は、「ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP画像及びサーフェイスレンダリング(SR)画像を作成してそれらを合成する」ものであるが、通常、画像の作成や合成は、「CPU(Central Processing Unit)」において行われるものであるから、引用発明の「三次元画像作成部58」が行う、「ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP画像及びサーフェイスレンダリング(SR)画像を作成してそれらを合成する」処理も、「CPU(Central Processing Unit)」において行われているものである。
そうすると、「ボリュームデータ記憶部11に記憶されたボリュームデータに基づいてMIP画像及びサーフェイスレンダリング(SR)画像を作成してそれらを合成する」「CPU(Central Processing Unit)」は、本件補正発明の「前記ボリュームデータに基づいて表示画像を生成するプロセッサ」に相当する。

(エ)引用発明の「位置関係表示画像60」及び「表示部56」は、それぞれ、本件補正発明の「表示画像」及び「ディスプレイ」に相当する。そして、引用発明の「表示部56」は、「位置関係表示画像60を表示する」から、引用発明の「位置関係表示画像60を表示する」「表示部56」は、本件補正発明の「前記表示画像を表示するディスプレイ」に相当する。

(オ)引用発明の「MIP画像」は「MIP法を用いて」作成されるものであって、「MIP法」は、「ボリュームデータに対し、検者が指定した視点及び投影面に対応した配置関係で二次元構造体である投影面を三次元空間に配置するものであって、ボリュームデータの投影面上の各画素への投影値として、投影線上にあるデータのうち値が最も大きなデータの値を求め、求めた投影値を各画素の値として、これら複数の画素に基づ」くものであり、「ボリュームデータに対し、検者が指定した視点及び投影面に対応した配置関係で二次元構造体である投影面を三次元空間に配置するものであって、ボリュームデータの投影面上の各画素への投影値」は、「ボリュームデータに対し、検者が指定した視点」からの投射される仮想光線上の任意の範囲におけるボクセルのボクセル値であるといえ、「データのうち値が最も大きなデータの値を求め、求めた投影値」は、統計値であるといえるから、引用発明の「ボリュームデータに対し、検者が指定した視点及び投影面に対応した配置関係で二次元構造体である投影面を三次元空間に配置するものであって、ボリュームデータの投影面上の各画素への投影値として、投影線上にあるデータのうち値が最も大きなデータの値を求め、求めた投影値」は、本件補正発明の「前記ボリュームデータに対して投射される仮想光線上の任意の範囲におけるボクセルのボクセル値の統計値」に相当する。

(カ)引用発明の「SR画像」は、「サーフェイスレンダリング(SR)法を用いて」作成されるものであって、「サーフェイスレンダリング法」は、「ボリュームデータに対して視点及び投影面が検者により設定され、ボリュームデータから閾値処理などによって被検体の表面境界が抽出され、投影面上の各画素(座標(X,Y))への投影値として、視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果が投影値に反映され」る方法であり、「ボリュームデータに対して視点及び投影面が検者により設定され、ボリュームデータから閾値処理などによって被検体の表面境界が抽出され、投影面上の各画素(座標(X,Y))への投影値として、視線ベクトルと境界面」は、「検者により設定され」た「視点」からの前記仮想光線上の任意の位置における前記被検体の輪郭であるといえる。そうすると、引用発明の「サーフェイスレンダリング(SR)法を用いて」作成される「SR画像」の「ボリュームデータに対して視点及び投影面が検者により設定され、ボリュームデータから閾値処理などによって被検体の表面境界が抽出され、投影面上の各画素(座標(X,Y))への投影値として、視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果」として「反映され」た「投影値」は、本件補正発明の「前記仮想光線上の任意の位置における前記被検体の輪郭の陰影値」に相当する。

(キ)引用発明の「位置関係表示画像60」は、「三次元画像作成部58で作成されたMIP画像とSR画像とが合成された三次元画像と、切断面作成部13で作成された切断面との相互位置関係を表す」画像として「作成」されることから、「MIP画像とSR画像と」に基づいて作成されるものであるといえる。そうすると、上記(オ)及び(カ)より、引用発明の「位置関係表示画像60」の画素値は、「MIP画像とSR画像と」に基づいて定められるものであるから、本件補正発明の「前記ボリュームデータに対して投射される仮想光線上の任意の範囲におけるボクセルのボクセル値の統計値と、前記仮想光線上の任意の位置における前記被検体の輪郭の陰影値と、に基づいて定められ」る「前記表示画像の少なくとも1つの画素の画素値」に相当する。

(ク)引用発明の「MIP法」による「投影値」は、「投影線上にあるデータのうち値が最も大きなデータの値を求め」ることによるものであり、「サーフェイスレンダリング法」による「投影値」は、「投影面上の各画素(座標(X,Y))への投影値として、視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果」を反映したものであるから、「MIP法」による「投影値」と「サーフェイスレンダリング法」による「投影値」は独立した値であるといえる。
そうすると、引用発明の「MIP法」による「投影値」と「サーフェイスレンダリング法」による「投影値」は独立した値であることは、本件補正発明の「前記統計値と前記輪郭の陰影値は独立した値であ」ることに相当する。

(ケ)引用発明の「三次元画像作成部58」は、「MIP画像及びSR画像に対してそれぞれ不透明度を設定しておき、不透明度に応じた係数及びZ座標値に応じた割合でMIP画像の輝度値とSR画像の輝度値とをブレンドすることで、手前側のSR画像が半透明に表示され、奥側のMIP画像がSR画像を透過して表示されるようにし」ており、上記(ウ)で検討したとおり、引用発明の「三次元画像作成部58」が行う処理は、「CPU(Central Processing Unit)」において行われているものであって、該「三次元画像作成部58」は、「MIP画像の輝度値とSR画像の輝度値とをブレンドする」際に、「手前側のSR画像」の「不透明度を設定」しているから、引用発明の「三次元画像作成部58」の処理を行う「CPU(Central Processing Unit)」は、「MIP画像の輝度値とSR画像の輝度値とをブレンドする」際に、「手前側のSR画像」の「不透明度を設定」することと、本件補正発明の「前記プロセッサは、前記表示画像を生成する際に、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、前記輪郭の陰影の透明度を設定する」こととは、「前記プロセッサは、前記表示画像を生成する際に、前記輪郭の陰影の透明度を設定する」ことで共通する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)「被検体を含むボリュームデータを取得するポートと、
前記ボリュームデータに基づいて表示画像を生成するプロセッサと、
前記表示画像を表示するディスプレイと、
を備え、
前記表示画像の少なくとも1つの画素の画素値は、
前記ボリュームデータに対して投射される仮想光線上の任意の範囲におけるボクセルのボクセル値の統計値と、
前記仮想光線上の任意の位置における前記被検体の輪郭の陰影値と、
に基づいて定められ、
前記統計値と前記輪郭の陰影値は独立した値であり、
前記プロセッサは、前記表示画像を生成する際に、前記輪郭の陰影の透明度を設定する
医用画像処理装置。」

(相違点)プロセッサによる前記輪郭の陰影の透明度の設定が、本件補正発明は、「前記表示画像を生成する際に、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように」設定しているのに対し、引用発明は「MIP画像のZ座標とSR画像のZ座標とを比較することにより、MIP画像及びSR画像のうち視点21からより遠く他方の陰になって見えない一方に対して陰面処理を施し、MIP画像及びSR画像に対してそれぞれ不透明度を設定しておき、不透明度に応じた係数及びZ座標値に応じた割合でMIP画像の輝度値とSR画像の輝度値とをブレンドすることで、手前側のSR画像が半透明に表示され、奥側のMIP画像がSR画像を透過して表示されるように」設定している点。

(4)判断
ア 相違点について
以下、相違点について検討する。
(ア)上記(2)イ(オ)cで検討したとおり、「表現された物体の立体的な位置関係を把握するために、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、透明度を設定する技術」は周知技術である。

(イ)引用発明の「MIP画像のZ座標とSR画像のZ座標とを比較することにより、MIP画像及びSR画像のうち視点21からより遠く他方の陰になって見えない一方に対して陰面処理を施し、MIP画像及びSR画像に対してそれぞれ不透明度を設定しておき、不透明度に応じた係数及びZ座標値に応じた割合でMIP画像の輝度値とSR画像の輝度値とをブレンドすることで、手前側のSR画像が半透明に表示され、奥側のMIP画像がSR画像を透過して表示されるように」設定することは、「被検体の体表と血管31、32及び33との立体的な位置関係を把握する」((引1e)参照。)ためのものであるから、「SR画像を透過して表示される」設定における「SR画像」の不透明度の係数の設定として、「表現された物体の立体的な位置関係を把握するため」の技術である上記周知技術1を適用し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。
そうすると、本件補正発明は、引用発明及び参考技術事項に基づいて、当業者が容易に想到できたことであるといえる。

(ウ)周知技術2の「予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正し」することは、引用発明の「視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果」を「反映する」ことに相当する。
すると、周知技術2の「予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正」された「投影値」は、引用発明の「視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果が」「反映され」た「投影値」に相当する。

(エ)上記(2)イ(オ)cで検討したとおり、周知技術2は、「投影値を予め設定された3次元表示用の視線ベクトルと臓器境界面に対する法線ベクトルとの内積値に基づいて補正し、不透明度は、補正された投影値に基づいて設定される」技術であって、「前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、透明度を設定する技術」であるから、引用発明の「SR画像に対」する「不透明度」の「設定」を、「視線ベクトルと境界面の法線ベクトルとのなす角度をもととした陰影処理結果が」「反映され」た「投影値」に基づいた設定とし、その際の透明度の設定を、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように設定することは、当業者が容易に想到できたことであるといえるから、相違点に係る構成は、この点からも容易に想到できたことであるといえる。

イ 作用効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、引用文献1及び参考文献1?4に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年8月7日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和2年2月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、6-8、11-13に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、また、この出願の請求項1-8、11-13に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、この出願の請求項9-10に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.国際公開第2007/043310号
引用文献2.特開平6-189952号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.国際公開第2011/149087号(周知技術を示す文献)
引用文献4.特開2005-86228号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記プロセッサは、前記表示画像を生成する際に、前記仮想光線の進行方向と、前記仮想光線と交差する点でのサーフィスに対する法線と、の成す角度であるシェーディング角に基づいて、前記シェーディング角が小さい場合に陰影の透明度が高い値となり、前記シェーディング角が大きい場合に陰影の透明度が低い値となるように、前記輪郭の陰影の透明度を設定する」旨の限定事項を削除したものであって、前記第2の[理由]2(3)において検討した相違点は、本件補正により限定された事項により生じた相違点であるから、本願発明と引用発明との間の相違点はないものとなり、本願発明は引用発明であるといえる。仮に、本願発明と引用発明との間に相違点があったとしても、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当するか、又は、同条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-04-14 
結審通知日 2021-04-20 
審決日 2021-05-10 
出願番号 特願2016-81345(P2016-81345)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 伊藤 幸仙
福島 浩司
発明の名称 医用画像処理装置、医用画像処理方法、及び医用画像処理プログラム  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
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