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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B62M
管理番号 1375555
審判番号 不服2020-12423  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-04 
確定日 2021-07-13 
事件の表示 特願2018-192002号「自転車用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月24日出願公開、特開2019-11056号、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月28日に出願した特願2015-91510号の一部を平成30年10月10日に新たな特許出願としたものであって、平成30年11月9日に手続補正書が提出されるとともに上申書が提出され、令和1年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年10月25日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、同年9月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1?4及び16?20
・刊行物等1、5?8

・請求項5
・刊行物等1、4?8

[刊行物等]
1.特開平6-255558号公報
2.特開2014-58228号公報
3.特開2001-146155号公報
4.特表2012-517382号公報
5.米国特許出願公開第2008/0111342号明細書
6.特開2012-96753号公報
7.特開平7-232686号公報
8.特開2011-126426号公報

当審の判断を行う便宜上、
特開平6-255558号公報、
特開平7-232686号公報、
特開2011-126426号公報、
米国特許出願公開第2008/0111342号明細書、
特開2012-96753号公報、
特表2012-517382号公報、
の順に、以下それぞれ「引用文献1」ないし「引用文献6」という。

なお、上記2.及び3.の文献は、実質的に原査定で引用されていないため、当審の判断の対象とはしない。

第3 本願発明
本願の請求項1?20に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明20」という。)は、令和2年9月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。
「 【請求項1】
自転車の前輪および後輪の少なくとも一方に与えられる制動力を制御するABSユニットと、
前記前輪および前記後輪の少なくとも一方の回転速度を検出する第2検出装置と、
前記第2検出装置から検出結果を受信する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記自転車のブレーキレバーが操作されると前記自転車のクランク軸から入力される人力駆動力にアシスト力を付加するアシストモータの出力を低下させる制御を実行し、前記第2検出装置の検出結果に基づいて、前記自転車が所定の状態であるか否かを判定し、前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、前記アシストモータの出力を低下させる前記制御の実行後、前記ABSユニットを制御するABS制御を実行し、
前記所定の状態は、前記前輪の回転速度と前記後輪の回転速度との差が所定速度以上になった状態、および、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に所定値以上の回転速度の変化が生じた状態の少なくとも一方を含む、自転車用装置。
【請求項2】
前記制御装置によって制御される前記自転車のモータをさらに備える、請求項1に記載の自転車用装置。
【請求項3】
前記ABSユニットは、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に制動力を与える制動装置に油圧を与えるポンプをさらに含み、
前記ポンプは、前記自転車のモータによって駆動される、請求項2に記載の自転車用装置。
【請求項4】
前記自転車のモータは、前記モータが回転するときに前記ポンプを駆動する、請求項3に記載の自転車用装置。
【請求項5】
前記自転車のモータは、前記自転車のクランク軸から入力される人力駆動力にアシスト力を付加するアシストモータである、請求項1から4のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項6】
自転車の前輪および後輪の少なくとも一方に与えられる制動力を制御するABSユニットと、
前記前輪および前記後輪の少なくとも一方の回転速度を検出する第2検出装置と、
前記第2検出装置から検出結果を受信する制御装置と、
前記制御装置によって制御される前記自転車のモータと、を備え、
前記ABSユニットは、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に制動力を与える制動装置に油圧を与えるポンプを含み、
前記自転車のモータは、前記自転車のクランク軸から入力される人力駆動力にアシスト力を付加するアシストモータであり、前記モータが回転するときに前記ポンプを駆動し、
前記制御装置は、前記第2検出装置の検出結果に基づいて、前記自転車が所定の状態であるか否かを判定し、前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、前記ABSユニットを制御するABS制御を実行し、
前記所定の状態は、前記前輪の回転速度と前記後輪の回転速度との差が所定速度以上になった状態、および、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に所定値以上の回転速度の変化が生じた状態の少なくとも一方を含む、自転車用装置。
【請求項7】
前記第2検出装置は、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に隣接する前記自転車のフレームに取り付けられる磁気センサを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項8】
前記第2検出装置は、前記前輪の回転速度を検出する前記前輪の第2検出装置、および、前記後輪の回転速度を検出する前記後輪の第2検出装置を含み、
前記前輪の第2検出装置は、前記前輪に隣接する位置で前記自転車のフレームに取り付けられる磁気センサを含み、
前記後輪の第2検出装置は、前記後輪に隣接する位置で前記自転車のフレームに取り付けられる磁気センサを含む、請求項7に記載の自転車用装置。
【請求項9】
前記前輪の第2検出装置は、前記前輪のディスクローターおよび前記前輪のスポークの一方に取り付けられる磁石をさらに含み、
前記後輪の第2検出装置は、前記後輪のディスクローターおよび前記後輪のスポークの一方に取り付けられる磁石をさらに含む、請求項8に記載の自転車用装置。
【請求項10】
前記前輪の第2検出装置は、前記前輪とともに回転するように周方向に設けられる複数の磁石をさらに含み、
前記後輪の第2検出装置は、前記後輪とともに回転するように周方向に設けられる複数の磁石をさらに含む、請求項8または9に記載の自転車用装置。
【請求項11】
前記自転車のブレーキレバーの操作状態を検出する第1検出装置をさらに備え、
前記第1検出装置は、前記制御装置に検出結果を出力し、
前記制御装置は、前記前輪の第2検出装置、前記後輪の第2検出装置、および、前記第1検出装置の検出結果に基づいて、前記自転車のモータおよび前記ABSユニットを制御する、請求項8から10のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項12】
前記自転車のブレーキレバーの操作状態を検出する第1検出装置をさらに備え、
前記第1検出装置は、前記制御装置に検出結果を出力する、請求項6から10のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項13】
前記第1検出装置は、前記ブレーキレバーのベース部に対する前記ブレーキレバーのレバー部の操作角度を検出する、請求項11または12に記載の自転車用装置。
【請求項14】
前記制御装置は、前記ブレーキレバーが操作されていないことを前記第1検出装置が検出したと判定する場合、前記自転車のモータの回転を停止する、請求項11から13のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記自転車の車速が所定速度未満であると判定する場合、前記自転車のモータの回転を停止する、請求項11から14のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項16】
前記制御装置は、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方の回転状態に基づいて、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に制動力を与える制動装置に与えられる油圧を減圧する、請求項1から15のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項17】
前記ABSユニットの第1のABSユニットに動作可能に連結される前記前輪の制動装置をさらに備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項18】
前記前輪の制動装置は、ディスクブレーキである、請求項17に記載の自転車用装置。
【請求項19】
前記ABSユニットの第2のABSユニットに動作可能に設けられる前記後輪の制動装置をさらに備える、請求項1から18のいずれか一項に記載の自転車用装置。
【請求項20】
前記後輪の制動装置は、ディスクブレーキである、請求項19に記載の自転車用装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。
(1a)
「【請求項1】 ブレーキレバーに連動してブレーキを作動するブレーキ駆動系に設けられ、自転車の前輪及び後輪のうち少なくとも一方のブレーキへの駆動力を間欠的に減少させる駆動力減少機構と、前輪及び後輪の回転数を検出し、各回転数の間に所定値以上の差が生じたとき回転数が小さい方の駆動力減少機構を作動する制御手段とを備えたことを特徴とする自転車用制動装置。」
(1b)
「【0004】本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、急ブレーキ時のスリップ防止に優れた効果を発揮し、しかも実用化に有利な自転車用制動装置を提供することにある。
・・・
【0009】
【実施例】図1乃至図5は本発明の一実施例を示すもので、本発明をワイヤ駆動式の自転車用制動装置に適用したものである。この制動装置は自転車の後輪用として設けられ、自転車の前輪1及び後輪2の回転数をそれぞれ検出するセンサ10,20と、ブレーキワイヤ3の駆動力を間欠的に減少させる駆動力減少機構30と、駆動力減少機構30の動作を制御する制御部40とから構成されている。
【0010】センサ10,20はそれぞれ磁気検知器からなり、前輪1及び後輪2のリム1a,2aに臨んで設置されている。各リム1a,2aにはそれぞれ多数の磁気部11,21が周方向に所定間隔をおいて設けられ、車輪の回転によって移動する磁気部11,21をセンサ10,20が単位時間当たりに検知する回数に基づき、前輪1及び後輪2の回転数がそれぞれ検出されるようになっている。尚、磁気部11,21はリム1a,2aに磁気を記憶させたものであってもよいし、磁気部を有する円板等を車輪1,2に取付けるようにしてもよい。
【0011】駆動力減少機構30は、図2に示すように後輪用ブレーキ4に接続されたブレーキワイヤ3に圧接するプーリ31と、一端にプーリ31を支持するアーム32と、アーム32の他端に係止するカム33と、カム33を回転するモータ34とからなり、プーリ31の両側にはワイヤガイド35が配置されている。ブレーキワイヤ3はブレーキレバー5に接続され、ブレーキレバー5を支軸5aを支点に回動すると、ブレーキワイヤ3が引動されてブレーキ4が作動するようになっている。これにより、モータ34が作動すると、図3に示すようにアーム32に係止するカム33が回転してプーリ31が往復動する。この場合、プーリ31の後退によりブレーキワイヤ3が緩んで張力が減少し、反対にプーリ31の前進によりブレーキワイヤ3が押圧されて元の張力に復帰する。
【0012】制御部40はマイクロコンピュータ等によって構成され、各センサ10,20及び駆動力減少機構30のモータ34に接続されている。この制御部40では各センサ10,20によって検出された前輪1及び後輪2の回転数が連続的に入力され、前輪1の回転数から自転車の速度を換算している。
【0013】ここで、制御部40の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。まず、走行中にブレーキを作動させた際、後輪2と路面との摩擦力が低下して後輪2がロックし、その回転数Nrが前輪1の回転数Nfよりも小さくなると(S1)、駆動力減少機構30のモータ34の回転数nを前輪1の回転数Nfに応じた値に設定し(S2)、駆動力減少機構30を作動する(S3)。これにより、ブレーキへの駆動力が間欠的に減少し、後輪2に作用する制動力が強弱することから、後輪2と路面との摩擦力が減少及び回復を繰り返し、後輪2のスリップが防止される。そして、後輪2がロックしなくなり、その回転数Nrが前輪1の回転数Nfと等しくなったならば(S4)、再びステップS1に戻る。また、ステップS2で設定されるモータ34の回転数nは、前輪1の回転数Nfが大きいときは速く、回転数Nfが小さいときは遅くなる。即ち、ブレーキワイヤ3の張力が間欠的に減少する間隔は自転車の速度が速くなるに従って短くなり、速度に適したスリップの防止効果が得られる。」
(1c)
図1?図7は、以下のとおりである。

(2)引用文献1に記載された発明

摘記(1b)の下線を付した記載などを参照すると、摘記(1a)の請求項1の「前輪及び後輪の回転数を検出し、各回転数の間に所定値以上の差が生じたとき回転数が小さい方の駆動力減少機構を作動する制御手段」は、「自転車の前輪1及び後輪2の回転数をそれぞれ検出するセンサ10及びセンサ20と、各センサ10、20によって検出された前輪1及び後輪2の回転数が連続的に入力され、各回転数の間に所定値以上の差が生じたとき回転数が小さい方の駆動力減少機構30を作動する制御部40」によって構成されていることが、明らかである。

上記ア、摘記(1a)、(1b)及び図1?6(摘記(1c)参照)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「ブレーキレバー5に連動してブレーキ4を作動するブレーキ駆動系に設けられ、自転車の前輪1及び後輪2のうち少なくとも一方のブレーキ4への駆動力を間欠的に減少させる駆動力減少機構30と、
自転車の前輪1及び後輪2の回転数をそれぞれ検出するセンサ10及びセンサ20と、
各センサ10、20によって検出された前輪1及び後輪2の回転数が連続的に入力され、各回転数の間に所定値以上の差が生じたとき回転数が小さい方の駆動力減少機構30を作動する制御部40と
を備えた自転車用制動装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2a)
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の補助動力付自転車では、停車時や停車しようとする時等、車速が所定値以下(0に近い状態)でもペダルに踏力が作用すると常時補助動力が発生するため、例えば信号待ちで停車中に運転者がペダルに足を載せていると、トルクセンサがペダル踏力を検知してモータに電力が供給されることになる。このようにして、停車中に無駄な電力が消費されることにより、電源が消耗しやすくなるいという問題がある。
【0006】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、停車中の電力の消費を低減するようにした補助動力付自転車を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決するために、補助駆動力を発生するモータと、ペダル踏力検出手段と、車速検出手段と、前記ペダル踏力検出手段が検出したペダル踏力および前記車速検出手段が検出した車速に応じて前記モータへの供給電力を制御するコントローラとを備えた補助動力付自転車において、前記コントローラは、車速が所定値以下のとき、前記モータへの電力の供給を停止する給電停止手段を有していることを特徴とする。
【0008】
【作用】このように構成したことにより、車速が所定値以下のときには、ペダル踏力検出手段がペダル踏力を検知してもモータに電力が供給されることがない。」
(2b)
「【0024】次に、本発明の第3実施例について図5および図6を用いて説明する。なお、第3実施例は、上記第1実施例に対して、ブレーキセンサを設けてコントローラ18に制動の有無による制御を追加したものであるから、以下、第1実施例のものと同様の部材には同一の番号を付し、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0025】図5に示すように、第3実施例の補助動力装置2には、ブレーキセンサ21が設けられている。ブレーキセンサ21は、補助動力付自転車1に装備された制動装置(図示せず)の作動を検出してその作動信号をコントローラ18へ出力するようになっている。なお、制動装置の作動は、ブレーキレバー開度の検出、加速度センサまたは車速センサによる減速度の検出、油圧ブレーキの作動による油圧の検出等によって検出することができる。
【0026】第3実施例のコントローラ18では、第1実施例の制御に加えて、ブレーキセンサ21からの信号を受けて制動の有無を検知し、非制動時にはモータ16への電力の供給を許容し、制動時にはモータ16への電力の供給を停止するようになっている。
【0027】第3実施例のコントローラ18による制御フローを図6のフローチャートを用いて説明する。図6に示すように、ステップでは、トルクセンサ19および車速センサ20からの信号を読み込む。ステップでは、トルクセンサ19の検出トルクが所定値以上であるか否かを判断し、トルクが所定値以上であればステップへ進み、トルクが所定値以上でなければステップでモータ16への電力の供給を停止する。ステップでは、車速センサ20の検出車速が所定値以下であるか否かを判断し、車速が所定値以下であればステップへ進み、車速が所定値以下でなければステップでモータ16への電力の供給を停止する。ステップでは、車速が0でないかどうかを判断し、車速が0でなければステップへ進み、車速が0であればステップでモータ16への電力の供給を停止する。ステップでは、ブレーキセンサ21からの信号により制動の有無を判断し、非制動中であればステップへ進み、制動中であればステップでモータ16への電力の供給を停止する。ステップでは、トルクセンサ19の検出トルクに応じてモータ16に電力を供給してペダル踏力にほぼ等しい補助駆動力を発生させる。
【0028】この構成により、上記第1実施例に加えて次のような作用、効果を奏する。すなわち、制動時に補助駆動力が作用すると、制動装置への負荷が増大して減速が不充分となったり制動距離が伸びたり、また、ブレーキシューの摩耗を早めたりする虞があるが、第3実施例によれば、制動時には、ペダル踏力にかかわらず、モータ16への電力の供給が停止されるので、補助駆動力による上記不具合いの発生を防止することができる。また、制動中の無駄な補助駆動力の発生をなくすことにより、消費電力を低減することができる。
【0029】なお、第3実施例では、制動時には、モータ16への電力の供給を完全に停止するようにしているが、ブレーキセンサによって制動力の大きさを検出して、コントローラ18により制動力の大きさに応じてアシスト率を減少させるようにしてもよい。」
(2c)
図5、図6は、以下のとおりである。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3a)
「【0005】
これらの不具合の発生を抑制する手法として、特許文献1等に、ブレーキレバーが操作された際に、補助駆動力を発生しないようにしたものが開示されている。ブレーキレバーと機械式のブレーキとはブレーキワイヤを介して連動するように連結されているが、このブレーキワイヤの移動動作を検知するブレーキスイッチを設け、ブレーキレバーが操作されてブレーキワイヤが所定量移動した場合に、前記ブレーキスイッチが作動して、電動モータへの給電動作を遮断するよう構成されている。また、類似する構成として、ブレーキレバーが操作されて制動された時に、補助駆動力の発生を停止させると同時に、電動モータから発生した電気をバッテリに充電する回生充電機能を作動させるよう構成したものが特許文献2等に開示されている。
【0006】
このようにブレーキレバーが操作された際に、補助駆動力を発生しないように構成すると、踏力がペダルに加えられた場合でも、ブレーキレバーを操作してブレーキスイッチが作動させると補助駆動力が付加されないため、停止時にペダルを踏み込んだ場合でもブレーキスイッチが作動されている限り、急発進を防止することができる。また、走行中などにブレーキレバーを操作して機械式のブレーキを作動させると、踏力がペダルに加えられている場合でも補助駆動力が付加されないため、走行開始時にブレーキレバーをより強く操作しなくても急発進を防止することが可能となる。また、万一、トルクセンサ等の踏力検出器の異常などにより、電動自転車が暴走した場合でも、ブレーキレバーを操作することで、補助駆動力の発生を停止できて、安全に電動自転車を停止させることができる。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている(翻訳は、当審が作成した。)。
「[0051] The above-described method is shown in the state flow diagram of FIG. 5. The state transition arrows indicate that when the wheel is locked up or when the wheel acceleration is greater than a predicted maximum value, which is indicative of excessive wheel slip or an impending wheel lockup, then a transition to the ABS control state 70 is performed. The ABS control starts and surface conditions, i.e. road surface conditions or track surface conditions, are estimated based on the hydraulic pressure measured by the hydraulic pressure sensor 35. Specifically, the surface conditions are estimated based on pressure change rates, the estimated bicycle deceleration, and a predicted maximum wheel deceleration. Furthermore, an initial bicycle speed is set in state 70.」
「[0051] 上述の方法は、図5のフロー図に示されている状態遷移矢印は、車輪がロックした場合、または車輪加速度が予想される最大値であり、これは、過度の車輪スリップまたは車輪のホイールルックアップを示すよりも大きいときには、ABS制御状態70への遷移が行われることを示す。ABS制御が開始され、液圧センサ35により測定された液圧に基づいて推定して、路面状態あるいは路面状態、表面状態である。具体的には、表面状態は、圧力変化率、推定自転車の減速、及び予測された最大車輪減速度に基づいて推定される。また、状態70で設定される初期速度である。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、次の事項が記載されている。
(5a)
「【請求項1】
車両(1)の車輪(WF)の回転速度(V)を検知する前輪回転速度センサ(54)と、前記検知された回転速度(V)に応じて前記車輪(WF)のブレーキ装置のブレーキ圧を制御して前記車輪(WF)のロック状態を解消するアンチロックブレーキ制御を実行するアンチロックブレーキ制御手段(65)とを備えるアンチロックブレーキ制御装置において、
前記アンチロックブレーキ制御手段(65)は、前記検知された回転速度(V)に基づいて算出された減速度(G)が所定値(G1)を超えることで前記前輪(WF)のロック状態を判定すると共に、乗員の操作に応じて発生しているブレーキ圧を開放制御してロック状態を解消し、
前記ブレーキ圧の開放制御に伴って前記前輪(WF)の回転が復帰する際に発生する復帰加速度(Gf)に基づいて、少なくとも路面摩擦の大きさに起因すると共に前記車両(1)の停止しやすさの指標となる推定減速度(Gs)を導出する路面摩擦推定手段(66)を具備し、
前記アンチロックブレーキ制御手段(65)は、前記推定減速度(Gs)に応じて目標前輪回転車速(Vm)を算出し、前記アンチロックブレーキ制御中は、前記回転速度(V)が前記目標前輪回転速度(Vm)に収束するように前記ブレーキ圧を制御することを特徴とするアンチロックブレーキ制御装置。」
(5b)
「【0033】
自動二輪車1は、前輪回転速度センサ54によって検知された前輪回転速度に基づいて乗員のブレーキ操作に伴う前輪WFのロック状態を検知すると、前輪WFのロック状態が継続することを回避するために、ブレーキ圧(ブレーキ液圧)の開放と保持とを繰り返すことでブレーキ制動力のオンオフを繰り返すアンチロックブレーキ制御(以下、ABS制御と示すこともある)を実行するように構成されている。本実施形態では、前輪WF側にのみアンチロックブレーキ制御装置が適用されている。
・・・
【0045】
本実施形態では、前輪WFの加速度Gに基づいて、前輪WFがロック状態に至ったことを判定するように構成されている。時刻t1では、走行中からのブレーキ操作による最初のスリップ(1次スリップ)によって、前輪加速度Gが予め定められた1次スリップ検出閾値G1を下回ったことが検知される、換言すれば、前輪WFの負の加速度(減速加速度)の絶対値が予め定められた所定値を超えたことが検知される。これにより、アンチロックブレーキ制御手段65は、前輪WFがロック状態に至ったものと判定する。」

6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。
(6a)
「【0092】
[電気アシスト]
図1ないし4を参照して説明した第1実施形態と、図5を参照して説明した第1の代替実施形態の両方において、自転車10はサイクリストに電動アシスト(電気的補助)を与えるように構成される。これについて以下で説明する。
・・・
【0100】
[ブレーキ]
上述した実施形態では、自転車は、サイクリストによって可変操作され、サイクリストが自転車を制動したい割合を表す信号を生成するブレーキ入力デバイスを有する。上述の各実施形態の方法は、サイクリストが自転車の制動を望んでいることを表す入力をブレーキ入力デバイスから受け取ると、図7の350で示す制動ルーチンをECU205が実行する。制動ルーチン350は、ECU205がブレーキ入力デバイスからの入力を検出するステップ351で始まる。ステップ352で、発電機として動作する出力モータ/発電機110から引き出され、ブレーキ入力デバイスからの入力によって示される制動率で自転車を減速させる制動トルクを後輪30に作用させる出力電流を決定する。ステップ353で、ECU205は、出力モータ/発電機110が、前のステップで決定された引き出される電流をもつ発電機として動作するように出力コントローラ220を制御する。
【0101】
上述の実施形態では、ECU205は、制動中に出力モータ/発電機110によって発電される電力を用いてバッテリー208を再充電するように、出力コントローラ220とバッテリー管理ユニット207とを操作する。このようにして、回生制動が実現される。バッテリー208が完全に充電されると、駆動装置は、出力モータ/発電機110に抵抗(図示せず)を接続して、発電される電力が抵抗から熱として放散されるようにする。代替実施形態では、ECU205は、例えば各発電機の回転に抵抗が加わるように電流および/または電圧の位相をシフトすることで、出力モータ/発電機110および/または入力モータ/発電機120を発電機として非効率に動作させ、後輪30にブレーキをかける。このような構成では、巻線および金属構造(「鉄」と呼ばれることもある)でエネルギーが放散される。
・・・
【0111】
[アンチロックブレーキ]
上述の任意の実施形態において、アンチロックブレーキシステム(ABS)を含むように自転車をさらに改良することができる。このような改良形態では、従来の手段によって、入力モータ/発電機120および/または出力モータ/発電機110の速度をECU205が検出する。モータ/発電機110、120の一方または両方の所定の割合を超えた減速の判定に応答して、またはモータ/発電機110、120の一方または両方の突然の停止の判定に応答して、ECU205は、急速に減速しているモータ/発電機、場合によっては突然停止したモータ/発電機から引き出す電流を減少させるように動作する。この方法は、モータ/発電機110、120が所定の割合を超えてはもはや減速していないこと、場合によってはもはや停止していないことを一旦判定すると、ECU205が、関連する電流を再び増加させることを含んでもよい。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

自転車の前輪及び後輪のうち少なくとも一方のブレーキへの駆動力を間欠的に減少させれば、自転車の前輪および後輪の少なくとも一方に与えられる制動力が間欠的に変化するから、当該制動力を制御することになることは、明らかである。
このことを踏まえると、引用発明の「自転車の前輪1及び後輪2のうち少なくとも一方のブレーキ4への駆動力を間欠的に減少させる駆動力減少機構30」は、急ブレーキ時のスリップ防止に優れた効果を発揮することを目的としているから、本願発明1の「自転車の前輪および後輪の少なくとも一方に与えられる制動力を制御するABSユニット」に相当する。

引用発明の「自転車の前輪1及び後輪2の回転数をそれぞれ検出するセンサ10及びセンサ20」は、本願発明1の「前記前輪および前記後輪の少なくとも一方の回転速度を検出する第2検出装置」に相当する。

上記イを踏まえると、引用発明の「各センサ10、20によって検出された前輪1及び後輪2の回転数」は、本願発明1の「前記第2検出装置」の「検出結果」に相当する。
このことと上記アを踏まえると、引用発明の「各センサ10、20によって検出された前輪1及び後輪2の回転数が連続的に入力され」る「制御手段40」は、本願発明1の「前記第2検出装置から検出結果を受信する制御装置」に相当する。

引用発明の「各センサ10、20によって検出された前輪1及び後輪2の回転数が連続的に入力され、各回転数の間に所定値以上の差が生じたとき」の「各回転数」が、「各センサ10、20によって検出された前輪1及び後輪2の回転数」のそれぞれを示していることは、明らかである。
そうすると、引用発明の「各回転数の間に所定値以上の差が生じたとき」は、前輪1の回転数と後輪2の回転数との間に所定値以上の差が生じたときを意味しているといえるから、本願発明1の「前記前輪の回転速度と前記後輪の回転速度との差が所定速度以上になった状態」及び「所定の状態」のいずれにも相当し、また、本願発明1の「前記所定の状態は、前記前輪の回転速度と前記後輪の回転速度との差が所定速度以上になった状態、および、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に所定値以上の回転速度の変化が生じた状態の少なくとも一方を含む」ことにも相当する。

上記ウ、エを踏まえると、引用発明の「制御手段40」が「各回転数の間に所定値以上の差が生じたとき回転数が小さい方の駆動力減少機構30を作動する」ことは、本願発明1の「前記制御装置は、」「前記第2検出装置の検出結果に基づいて、前記自転車が所定の状態であるか否かを判定し、前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、」「前記ABSユニットを制御するABS制御を実行」することに相当する。
したがって、引用発明の「制御手段40」が「各回転数の間に所定値以上の差が生じたとき回転数が小さい方の駆動力減少機構30を作動する」ことと、「前記制御装置は、前記自転車のブレーキレバーが操作されると前記自転車のクランク軸から入力される人力駆動力にアシスト力を付加するアシストモータの出力を低下させる制御を実行し、前記第2検出装置の検出結果に基づいて、前記自転車が所定の状態であるか否かを判定し、前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、前記アシストモータの出力を低下させる前記制御の実行後、前記ABSユニットを制御するABS制御を実行」することとは、「前記制御装置は、」「前記第2検出装置の検出結果に基づいて、前記自転車が所定の状態であるか否かを判定し、前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、」「前記ABSユニットを制御するABS制御を実行」することにおいて共通している。

以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「自転車の前輪および後輪の少なくとも一方に与えられる制動力を制御するABSユニットと、
前記前輪および前記後輪の少なくとも一方の回転速度を検出する第2検出装置と、
前記第2検出装置から検出結果を受信する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第2検出装置の検出結果に基づいて、前記自転車が所定の状態であるか否かを判定し、前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、前記ABSユニットを制御するABS制御を実行し、
前記所定の状態は、前記前輪の回転速度と前記後輪の回転速度との差が所定速度以上になった状態、および、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に所定値以上の回転速度の変化が生じた状態の少なくとも一方を含む、自転車用装置。」
<相違点>
前記制御装置は、前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、前記ABSユニットを制御するABS制御を実行することに関して、本願発明1では、前記制御装置は、「前記自転車のブレーキレバーが操作されると前記自転車のクランク軸から入力される人力駆動力にアシスト力を付加するアシストモータの出力を低下させる制御を実行し、」前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、「前記アシストモータの出力を低下させる前記制御の実行後、」前記ABSユニットを制御するABS制御を実行するのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

(2)判断
以下、相違点について検討する。

(ア)
a
引用文献2の摘記(2a)の段落【0005】?【0007】等を参照すると、「停車中の電力の消費を低減するようにした補助動力付自転車を提供する」(段落【0006】)という課題を解決するための手段として、「コントローラは、車速が所定値以下のとき、前記モータへの電力の供給を停止する給電停止手段を有している」(段落【0007】)という構成が必須であるといえる。
また、摘記(2b)の段落【0025】?【0026】等を参照すると、段落【0026】の「制動時」は、ブレーキレバーが操作された「制動時」であることが明らかである。
これらのことと、同段落【0026】の「コントローラ18では、第1実施例の制御に加えて、ブレーキセンサ21からの信号を受けて制動の有無を検知し、・・・制動時にはモータ16への電力の供給を停止するようになっている」との記載から、引用文献2には、「車速が所定値以下のとき、コントローラ18は、ブレーキレバーが操作された制動時にはモータ16への電力の供給を停止する、補助動力付自転車」(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。
一方、引用発明は、「急ブレーキ時のスリップ防止に優れた効果を発揮」(摘記(1b)の段落【0004】)するという課題を解決するために、「駆動力減少機構30を作動する」ものであるところ、電動自転車でないから、「停車中の電力の消費を低減するようにした補助動力付自転車を提供する」という課題(引用文献2)が存在することはあり得ない。
したがって、両者の課題は異なり、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用する動機付けはないといえる。
b
また、本願発明1は、「前記前輪の回転速度と前記後輪の回転速度との差が所定速度以上になった状態、および、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方に所定値以上の回転速度の変化が生じた状態の少なくとも一方を含む」「所定の状態」のときに、要するにスリップなどをしたときに、ABS制御するものであり、車速が所定値以下のときにABS制御するものではないことを踏まえると、仮に、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用できたとしても、引用発明において、車速が所定値以下のときにABS制御するという別の条件が付加されることになるから、前記自転車が前記所定の状態であると判定した場合、前記アシストモータの出力を低下させる前記制御の実行後、前記ABSユニットを制御するABS制御を実行するという事項を備える、上記相違点に係る本願発明1の構成には至らない。
(イ)
a
摘記(3a)の「ブレーキワイヤの移動動作を検知するブレーキスイッチを設け、ブレーキレバーが操作されてブレーキワイヤが所定量移動した場合に、前記ブレーキスイッチが作動して、電動モータへの給電動作を遮断する」及び「ブレーキレバーが操作されて制動された時に、補助駆動力の発生を停止させる」(段落【0005】)という記載と、「急発進を防止することができる」、「電動自転車が暴走した場合でも、ブレーキレバーを操作することで、補助駆動力の発生を停止できて、安全に電動自転車を停止させることができる」(段落【0006】)という記載から、引用文献3には 、「急発進を防止するためや、暴走した場合でも安全に停止させることができるようにするために、ブレーキレバーが操作されて制動された時に、補助駆動力の発生を停止させる、電動自転車」(以下「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。
一方、引用発明は、「急ブレーキ時のスリップ防止に優れた効果を発揮」(摘記(1b)の段落【0004】)するという課題を解決するために、「駆動力減少機構30を作動する」ものであり、急発進を防止するためや、暴走した場合でも安全に停止させることができるようにするために、「駆動力減少機構30を作動する」ものではない。
したがって、両者の課題は異なり、引用発明に引用文献3に記載された技術事項を適用する動機付けはないといえる。
b
また、仮に、上記の適用をして、上記相違点に係る本願発明1の構成を想到しようと試みると、引用発明において、急発進を防止するためや、暴走した場合でも安全に停止させることができるようにするために、ブレーキレバーが操作されて制動された時に、補助駆動力の発生を停止させ、さらに、駆動力減少機構30を作動する(ABS制御を実行する)ことが必要となるが、急発進や暴走した場合は、電動自転車の補助動力の発生すなわちアシストモータの動作により起こり得る事象であって、電動自転車でない引用発明では、アシストモータの動作による急発進や暴走は起こりえないことと、急発進や暴走した場合のブレーキ操作は、加速しないようにするためのものであって、減速に係る「急ブレーキ」操作を行うものではなく、「急ブレーキ時のスリップ防止に優れた効果を発揮」するABS制御を実行することまで想定し得るものではないことを踏まえると、引用発明に引用文献3に記載された技術事項を適用することには、阻害要因も存在するといえる。
(ウ)
そして、引用発明は、そもそも電動自転車ではないから、電動自転車に係る引用文献2ないし3に記載された技術事項を適用しようとする動機付けが存在するとはいえず、さらに、上記(ア)、(イ)のとおりであって、動機付けが存在しないことに加え、阻害要因なども存在するから、引用発明に引用文献2ないし3に記載された技術事項を適用し、上記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

(ア)
引用文献2ないし3に記載された事項は、上記ア(ア)、(イ)のとおりであり、引用文献2ないし3から、ブレーキレバーが操作されて制動された時に補助駆動力の発生を停止させる、という技術事項だけを抽出して、引用発明に適用することはできない。
(イ)
また、引用文献4ないし5には、ABS制御について記載されているが(摘記(4a)、(5a)、(5b))、アシストモータは記載されていない。
さらに、引用文献6には、電気アシスト、ブレーキ、回生制動について記載されており、ABSを設けることも記載されているが(摘記(6a))、ABS制御についての記載はなく、ABS制御がどのようにして実行されるのかについては記載されていない。
(ウ)
このように、アシストモータの出力を低下させる制御とABS制御の両方を備えるものは、いずれの引用文献にも記載も示唆もされていないから、これらの制御のタイミングを連動させようとする根拠は存在せず、自転車が所定の状態であると判定した場合、アシストモータの出力を低下させる制御の実行後、ABSユニットを制御するABS制御を実行することは、いずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。

上記ア、イで述べたことを総合すると、引用発明に引用文献2ないし6に記載された技術事項を適用して、上記相違点に係る本願発明1の構成を想到することは、当業者が容易になし得たとはいえない。

そして、本願発明1は、「ABSユニットを搭載したとしても大型化しにくい」(本願明細書の段落【0019】)という格別に顕著な効果を奏するものである。

(3)本願発明1についてのまとめ
よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?20について
本願発明2?5及び16?20は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
よって、本願発明1?5及び16?20は、引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
令和2年9月4日付けの手続補正により、本願発明1?5及び16?20は、上記相違点に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、上記第5で述べたとおり、拒絶査定において引用された引用発明及び引用文献2ないし6に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明6?15は、原査定で述べたとおり、拒絶理由を解消しているものである。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-06-22 
出願番号 特願2018-192002(P2018-192002)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B62M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 氏原 康宏
出口 昌哉
発明の名称 自転車用装置  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
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