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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 G07G 審判 全部無効 2項進歩性 G07G |
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管理番号 | 1375560 |
審判番号 | 無効2019-800088 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2019-10-18 |
確定日 | 2021-06-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第6532075号発明「読取装置及び情報提供システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許6532075号(以下「本件特許」という。)に係る特願2019-79933号は、平成29年5月9日に出願された特願2017-93449号(以下「原出願」という。)の一部を、平成31年1月16日に新たな特許出願とした特願2019-5597号の一部を、さらに平成31年4月19日に新たな特許出願としたものであって、令和1年5月31日にその発明について特許権の設定登録がなされた。 そして、本件無効審判に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和1年10月18日 審判請求書提出 甲第1?14号証提出 令和2年 2月 3日 審判事件答弁書提出 乙第1号証提出 同年 6月25日付け 書面審理通知書及び審尋 同年 7月 1日 上申書(請求人)提出(回答期限延長の 求め) 同年 7月 7日付け 通知書(請求人宛)(延長許可) 同年 7月13日 回答書(被請求人)提出 同年 7月27日 回答書(請求人)提出 同年 8月18日付け 審尋 同年 9月 4日 回答書(2)(請求人)提出 同年 9月 7日 回答書(被請求人)提出 令和3年 2月20日差出 参加申請書提出 同年 2月25日付け 手続続行通知書(請求人及び被請求人 宛て) 同年 4月 1日付け 参加許否の決定 なお、上記の手続続行通知は、本件特許権の移転があり(移転登録申請書令和3年1月6日受付)、その承継人を本審判事件の被請求人として、本審判事件に関する手続の続行を通知したものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?5に係る発明(以下それぞれ「本件発明1?5」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりの以下のものと認める。 「【請求項1】 物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部と、 前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部と、 を備え、 前記物品が前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取ることを特徴とする、読取装置。 【請求項2】 物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部と、 前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品を収容する買物カゴが載置される載置部と、 を備え、 前記買物カゴが前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取ることを特徴とする、読取装置。 【請求項3】 前記シールド部は、前記電波を吸収する電波吸収層と前記電波を反射する電波反射層の いずれか一方または両方を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の読取装置。 【請求項4】 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の読取装置と、 前記情報に基づいて前記物品に関する情報を表示するタブレット端末と、 を備える情報提供システム。 【請求項5】 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の読取装置と、 前記情報に基づいて前記物品に関する情報を表示するモバイル端末と、 を備える情報提供システム。」 第3 請求人の主張について 1 主張概要 請求人は、「特許第6532075号の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、甲第1?14号証を添付した令和1年10月18日付け審判請求書、令和2年7月27日付け回答書、同年9月4日付け回答書(2)を提出し、以下の(1)?(3)に示す無効理由1?3により、本件特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものであると主張している。 なお、各無効理由の枝番は対応する請求項の番号である。 また、以下、証拠については「甲○」等と略記し、条文についても「特許法」や「第」を略することもある。 (1)無効理由1(甲1を主引例) ア 無効理由1-1(29条2項) 本件発明1は、甲1に記載された発明に、甲1に記載された技術的事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 無効理由1-3(29条2項) 本件発明3は、甲1に記載された発明に、甲1に記載された技術的事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 無効理由1-4(29条2項) 本件発明4は、甲1に記載された発明に、甲1に記載された技術的事項を適用し、甲3?8、11に示された技術常識を勘案し、甲4、5、8、11に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 無効理由1-5(29条2項) 本件発明5は、甲1に記載された発明に、甲1に記載された技術的事項を適用し、甲3?8、11に示された技術常識を勘案し、甲4、5、8、11に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)無効理由2(甲2を主引例) ア 無効理由2-1(29条1項3号、29条2項) (ア)本件発明1は、甲2に記載された発明である。 (イ)本件発明1は、甲2に記載された発明に、甲2に記載された技術的事項を適用し、または、周知技術(甲1参考)を適用することにより、当業者が容易に発明することができたものである。 イ 無効理由2-4(29条2項) (ア)本件発明4は、甲2に記載された発明に、甲3?8、11に示された技術常識を勘案し、甲4、5、8、11に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件発明4は、甲2に記載された発明に、甲2に記載された技術的事項または周知技術(甲1参考)を適用し、甲3?8、11に示された技術常識を勘案し、甲4、5、8、11に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 無効理由2-5(29条2項) (ア)本件発明5は、甲2に記載された発明に、甲3?8、11に示された技術常識を勘案し、甲4、5、8、11に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件発明5は、甲2に記載された発明に、甲2に記載された技術的事項または周知技術(甲1参考)を適用し、甲3?8、11に示された技術常識を勘案し、甲4、5、8、11に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)無効理由3(甲3を主引例) ア 無効理由3-2(29条2項) 本件発明2は、甲3に記載された発明に、甲1、2、4?7に示された普遍的な課題を勘案し、甲1、2に記載された技術的事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 無効理由3-3(29条2項) 本件発明3は、甲3に記載された発明に、甲1、2、4?7に示された普遍的な課題を勘案し、甲1、2に記載された技術的事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 無効理由3-4(29条2項) (ア)本件発明4は、甲3に記載された発明に、甲1、2、4?7に示された普遍的な課題を勘案し、甲1、2に記載された技術的事項を適用し、かつ、甲4、5、8、11に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件発明4は、甲3に記載された発明に、甲1、2、4?7に示された普遍的な課題を勘案し、甲1、2に記載された技術的事項を適用し、かつ、甲9、10に記載された技術的事項ないし周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 無効理由3-5(29条2項) (ア)本件発明5は、甲3に記載された発明に、甲1、2、4?7に示された普遍的な課題を勘案し、甲1、2に記載された技術的事項を適用し、かつ、甲4、5、8、11に記載された周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件発明5は、甲3に記載された発明に、甲1、2、4?7に示された普遍的な課題を勘案し、甲1、2に記載された技術的事項を適用し、かつ、甲9、10に記載された技術的事項ないし周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 証拠方法 請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 甲1 :特開2008-99266号公報 甲2 :特表2007-523563号公報 甲3 :特開2007-72681号公報 甲4 :特開2015-64673号公報 甲5 :特開2010-267010号公報 甲6 :米国特許第9245162号明細書 甲7 :特開2015-207119号公報 甲8 :国際公開第2016/018895号 甲9 :国際公開第2013/132515号 甲10:米国特許出願公開第2016/0364710号明細書 甲11:特開2007-34789号公報 甲12:「weblio辞書」のウェブページの「タブレット型端末」, https://www.weblio.jp/content/タブレット型端末 甲13:「コトバンク」のウェブページの「タブレット端末」, https://kotobank.jp/word/タブレット端末-562557 甲14:知財高裁判決 平成30年(ネ)第10010号の判決文 第4 被請求人の主張について 1 主張概要 (1)無効理由について 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、乙第1号証を添付した令和2年2月3日付け審判事件答弁書、同年7月13日付け回答書、同年9月7日付け回答書を提出して、請求人の主張する無効理由によっては本件特許を無効とすべきでないと主張している。 (2)請求の理由の補正について また、被請求人は、令和2年9月7日付け回答書の「6(1)」の項において、請求人が令和2年7月27日付け回答書で行った請求の理由の補正について、当審の令和2年8月18日付け審尋で要旨変更を指摘する箇所(無効理由2において、甲1を直接的な証拠として引用した箇所)について同意せず、また、上記の指摘をする箇所を除いた無効理由1及び2に対する補正は、要旨変更でなかったとしても認められるべきでない旨を主張している。 2 証拠方法 被請求人の提出した証拠方法は、以下のとおりである。 乙1:特開2006-127219号公報 第5 当審の判断 1 無効理由について 被請求人は、請求人が令和2年7月27日付け回答書で行った請求の理由の補正について、上記「第4 1(2)」のとおり、主張している。 しかしながら、当該補正のうち当審が要旨変更を指摘する箇所(無効理由2において、甲1を直接的な証拠として引用した箇所)については、請求人の令和2年9月4日付け回答書(2)により再度補正され、甲1は周知技術を示す参考文献とされ、要旨を変更するとはいえないものとなった(上記「第3 1(2)」)。また、その他の補正の箇所(請求人の令和2年7月27日付け回答書の「6-1」?「6-3」の項における上記の要旨変更を指摘する箇所を除いたもの。)については、当審の令和2年6月25日付け審尋における無効理由の整理の求めに対応してなされたものであり、補正内容について検討しても要旨を変更するとはいえないものである。 以上のとおり、請求人の令和2年7月27日付け回答書及び同年9月4日付け回答書(2)による請求の理由の補正は要旨を変更するものではないため(特許法第131条の2)、被請求人の主張は採用できず、審理すべき無効理由は、上記「第3 1」のとおりである。 2 各甲号証の記載事項等 甲1?11は、いずれも原出願の出願日である平成29年5月9日より前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である。 (1)甲1 ア 甲1に記載された事項 甲1には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。以下同様。)。 (1a)「【請求項1】 リーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置の通信環境を改善するための通信改善装置であって、 各トランスポンダが配置されるトランスポンダ配置領域と、リーダアンテナとの間またはリーダアンテナの部分的な周囲に設けられ、リーダアンテナとトランスポンダとの間の無線通信に用いられる電波または不要電波を吸収および遮蔽する電波吸収体から成り、無線通信に用いられる電波を透過可能な透過領域が形成され、その透過領域を介してリーダアンテナとトランスポンダとが無線通信するように配置したり、または透過領域を有す電波吸収体形成体に透過領域からトランスポンダを搬入することで、リーダアンテナの電波指向性を制御し、かつ他の周囲への電波を吸収および遮蔽することを特徴とする通信改善装置。 【請求項2】 無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層と電波吸収層が積層された電波吸収体であることを特徴とする請求項1記載の通信改善装置。 ・・・ 【請求項8】 単数もしくは複数のリーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置と、 請求項1?6のいずれか1つに記載の通信改善装置とを備える通信システム。」 (1b)「【0003】 リーダアンテナ106は、そのリーダアンテナ106の通信可能領域107に、搬送装置103によって搬送される各物品102の移動経路が含まれるように設けられる。各ICタグ105は、リーダアンテナ106の通信可能領域107に存在する場合、リーダアンテナ106からの要求信号に応答して、物品102の情報を表す応答信号を送信する。したがってリーダアンテナ106は、搬送装置103によって搬送される物品102が通信可能領域107を通過するときに、物品102に装着されているICタグ105から物品102の情報を読取ることができる。」 (1c)「【0044】 物品情報取扱設備20は、各物品21を搬送する搬送装置22と、各物品21にそれぞれ装着される複数のトランスポンダ23および各トランスポンダ23との間で無線通信可能なリーダアンテナ24を有する通信装置25と、通信装置25の通信環境を良好にするための通信改善装置26とを備える。通信装置25と通信改善装置26とを含んで通信システムが構成される。さらに物品情報取扱設備20には、制御装置27を備え、この制御装置27は、リーダアンテナ24に通信可能に有線接続されている。リーダアンテナ24とトランスボンダ23の位置関係は図1に限定されることはなく、リーダアンテナ24が搬送装置22の下方にあることも、横方向にあることもその他の位置にあることもまた搬送装置22を用いない場合があるのは前述の通りである。」 (1d)「【0047】 図2は、本発明の実施の他の形態の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。リーダアンテナ24の位置は、物品の横方向、上下方向や斜め方向などが任意に選択することができる。リーダアンテナ24は複数であってもよい。図1との違いは、物品が縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過する場合を示している。さらにリーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、物品21に面する方向に透過領域を有している。 【0048】 図3は、物品21を示す斜視図である。図1を併せて参照して、各トランスポンダ23は、たとえばタグによって実現されるが、タグに限定されるものではない。またタグは、シート状であってもよいし、チップ状であってもよいし、ボタン状、ラベル状、カード状等であってもよい。さらにタグは、ICなどの半導体装置を備える構成であってもよいし、半導体装置を備えていない構成であってもよい。」 (1e)「【0053】 リーダ-ICタグの通信周波数は、電波方式である300MHz帯、430MHz帯、UHF帯、2.4GHz帯、5.8GHz帯等を想定しているが、他の周波数でも構わない。ミリ波帯域を利用することも可能である。ここでいうUHF帯とは800MHz?1GHzの中の周波数を部分的に使用する通信電波の帯域であり、各国で認可された周波数帯域がある。2.4GHz帯は、2,400MHz以上2,500MHz未満の電波であり、具体的にはRFID用では、日本では2,400MHz以上2483.5MHz以下の範囲を含む電波である。」 (1f)「【0055】 制御装置27は、リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの応答信号を受信させる。制御装置27は、たとえばリーダアンテナ24によって各トランスポンダ23から読取らせた情報を、表示しまたは他の装置に与える構成であってもよいし、リーダアンテナ24によって各トランスポンダ23から読取らせた情報を利用して、他の装置を制御する構成であってもよい。また制御装置27は、たとえばリーダアンテナ24によって各トランスポンダ23に書込みさせる情報を生成してリーダアンテナ24に与える構成であってもよい。 【0056】 図4は、通信改善装置26の電波吸収体30を示す斜視図である。図1を併せて参照して、通信改善装置26は、簡便な構造でリーダアンテナ24から放射される電波の到達領域を制限可能な装置であり、リーダアンテナ24として既存のリーダアンテナを用い、既存の出力で電波を放射させるように用いて、電波の到達領域をトランスポンダ23のある位置および周辺領域に限定しようとするものである。つまり通信改善装置26は、電波の到達領域を小さく制限することによって、通信可能領域27を小さく絞り込む装置であり、これによって本来通信すべきリーダアンテナ24とトランスポンダ23との通信環境が良い状態となるようにする装置である。 【0057】 したがって通信改善装置26は、前述の通信装置25における通信環境を改善する装置であり、リーダアンテナ24と各トランスポンダ23との間の通信環境を改善して良好にする装置である。この通信改善装置26は、電波吸収体または電波遮蔽体に周波数選択表面(Frequency Selective Surface;略称F.S.S)技術を組み合わせたものであり、本実施の形態では、電波吸収体30を備える。これは透過領域33をスロットアンテナとして動作させて、そのアンテナ部分で再放射される電波でICタグ23と通信しようとするものである。電波吸収体30に用いた導体層35に周波数に合わせた切り込みを入れることでこれを実現している。ただし、切り込み部分は厳密にアンテナ化していなくても隙間部分から漏れる電波を利用することで通信することも可能である。電波吸収体30は、図示しない支持装置によって支持されて、トランスポンダ配置領域28と、リーダアンテナ24との間に設けられる。この電波吸収体30は、電波を吸収する吸収体であるが、電波を遮蔽する機能も併せて有している。」 (1g)「【0059】 図5は、電波吸収体30の一部を示す断面図である。電波吸収体30は、通信装置25において無線通信に用いられる電波(以下「利用電波」という)を吸収するシートから成る。電波吸収体30は、利用電波を吸収可能な構成であれば、特に限定されるものではなく、どのような構成であってもよい。あくまでも一例ではあるが、電波吸収体30は、導電性材料から成る導体層35を有し、この導体層35の厚み方向の少なくとも一方側に積層されて、吸収層36を有する。 【0060】 導体層35は、たとえばアルミニウム、銅などの金属または導電性インクから成る。導体層35としては、金属板、金属箔および金属蒸着フィルム、導電インク層などを用いることができるが利用電波の波長よりも小さい寸法の空隙を有するメッシュ構造物、導電性織布、導電性不織布、導電性発泡体などを用いることも可能である。 【0061】 電波吸収体30が電波吸収体として動作するためには、背面部に電磁波反射層となる導体層35(本発明では電波遮蔽層を兼ねる。)が必要である。しかし、背面方向に金属板を用いるなど、導体層35を代用するものがある場合は、電波吸収体30に導体板35が一体化していなくてよい。 【0062】 吸収層36は、少なくとも損失層を有し、この損失層によって電波のエネルギを損失させて吸収する。損失層は、磁性損失および誘電損失の少なくともいずれか一方を利用して電波を吸収する構成である。また吸収層は、導電性材料から成る導体パターンが形成されるパターン層を有する構成でもよい。本発明では、磁性損失および誘電損失の両方を利用している。磁性損失の利用が好適であるが、近傍界の電波吸収効果が少なくなってもよい場合もあり、効果は落ちるが、誘電損失のみの利用の場合もある。」(合議体注;段落【0059】の「少なくとも一方側に積層されて、吸収層36を有する」は、「少なくとも一方側に積層された、吸収層36を有する」の誤記と認める。) (1h)「【0067】 RFIDタグシステム用途における電波吸収体30は、特定周波数(通信周波数)の反射波を発生しない電波遮蔽体として機能する。電波遮蔽体としては金属板などを利用すれば有効であるが、その場合は反射波が発生し、進行波との間で干渉し定在波が発生して読み取り不良が生じる。電波吸収体30のような反射波も透過波も生じない電波遮蔽体が、RFID通信改善用途には適している。」 (1i)「【0076】 また図2の場合は、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設けている。側面部分や背面部分電波吸収体30が存在することで、リーダアンテナ24の横方向や後方向に放射される電波を吸収および遮蔽したり、且つ他から進入してくる電波を抑えることができ、透過領域により電波の指向性を高めることと合わせて、リーダアンテナ24と所望の一単位の各トランスポンダ23との間で好適に無線通信を可能にする。」 (1j)「【0095】 図16の構成の通信改善装置26に対して、図に示す通りz方向の寸法を可変にしてリーダアンテナ24を被覆して、アンテナ指向性を計算した。なお図16は背面板を有している。結果を表1に示す。自由空間の場合に比べてz方向の通信到達距離を近くあるいはそれ以上としながら(表1の鉛直方向の絶対利得が自由空間に匹敵する値をとりながら)も指向性の尺度となる半値角を小さくすることができている。・・・半値角は、リーダアンテナから電波が放射される方向(鉛直方向)をz方向として描く電界放射パターンに於いて、そのz軸方向の絶対利得が3dB低下したところを半径として円を描き、最初の電界放射パターンとの交点を求め、z軸に対してその交点が何度ずれているかを求めることで決めている。実際の電波の放射角はこの半値角の2倍となるが、指向性を決める指針としてこの半値角が用いられる。 ・・・ 【0097】 通信改善装置26のサイズを横(x)500mm、縦(y)500mm、高さ(z)300mmとし、開口部の寸法hyを変更して放射特性を計算した結果を図17に示す。・・・図2の場合のように物品の積載方向には半値角を大きくして、物品の搬送方向には半値角を小さくしたいというような場合は、この開口部寸法のx方向を広くして、y方向を狭くすれば、好適な半値角を提供することが可能となる。 【0098】 さらに通信改善装置26の寸法を変更した場合の構成を図18に示し、結果を表2および図19,20に示す。・・・ 【0100】 奥行き寸法であるzを150mm、350mmとしたところ、開口部寸法(x方向)と奥行き寸法(z方向)に依存して、・・・」 (1k)【図2】は次のとおりである。 (1l)【図5】は次のとおりである。 (1m)【図18】は次のとおりである。 イ 認定事項 (ア)【図2】の右下にZ、Xの方向の矢印が記載されており、【図18】の左下のX、Y、Zの方向の矢印の記載、及び、段落【0097】の「通信改善装置26のサイズを横(x)500mm、縦(y)500mm、高さ(z)300mmとし」、同【0100】の「奥行き寸法であるzを150mm、350mmとしたところ、開口部寸法(x方向)と奥行き寸法(z方向)に依存して」という記載等を併せると、【図2】に記載される「リーダアンテナ24」は、縦方向(y方向)に積載した「物品21」が「リーダアンテナ24」の前を通過する位置において、当該縦方向(y方向)に積載した「物品21」に対し横方向(側方)(z方向)に配置されていると理解するのが自然と考えられる(要するに、【図2】上ではZの矢印が上向きに記載されているが、模式図であり、実際には横方向を示すと解釈される。補足すれば、段落【0047】に【図2】が「物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図」であると記載されているが、【図2】上で「物品21」は断面図ではなく横方向からみた外観の図として記載されており、「物品情報取扱装置20」のみが断面図として示されていることからも、【図2】は「物品21」の積載方向と「電波吸収体30」が開口する方向の位置関係を特定した図面ではないことが理解でき、上述の「実際には横方向を示す」という解釈は、段落【0097】の「図2の場合のように物品の積載方向には半値角を大きくして、物品の搬送方向には半値角を小さくしたいというような場合」という記載とも整合するものである。 ここで、段落【0047】の「リーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、物品21に面する方向に透過領域を有している。」という記載、段落【0076】の「透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設けている。側面部分や背面部分電波吸収体30が存在する」という記載、及び、【図2】の「電波吸収体30」の記載より、「電波吸収体30」は、開口しているのは明らかであって、上記の理解を併せれば、横方向に開口しているといえる。そして、その開口は「透過領域」であることも明らかである。 (イ)【図2】において、「物品21」が縦方向に積載されているものは、技術常識も踏まえれば台車であることは明らかである。また、【図2】の下方の「制御」と記載される部材は符号の記載がないが、「制御装置27」であることも明らかである。 (ウ)背景技術を説明する段落【0003】の「各ICタグ105は、・・・物品102の情報を表す応答信号」という記載より、段落【0055】の「制御装置27は、リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの応答信号を受信させる」という記載における「応答信号」も「物品21の情報を表す応答信号」であることが技術的に明らかである。 ウ 甲1に記載された発明及び技術的事項 (ア)甲1-1発明、甲1-1技術 上記ア、イより、甲1には次の発明及び技術的事項(以下「甲1-1発明」又は「甲1-1技術」という。)が記載されているものと認める。 「各物品21にそれぞれ装着される複数のトランスポンダ23および各トランスポンダ23との間で無線通信可能なリーダアンテナ24を有する通信装置25と、 通信装置25の通信環境を良好にするため、電波吸収体30を備え、電波の到達領域を小さく制限することによって、通信可能領域27を小さく絞り込む通信改善装置26と、 リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの物品21の情報を表す応答信号を受信させる制御装置27と、 を備える物品情報取扱装置20に用いられる、リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27であって、 各トランスポンダ23は、RFIDタグによって実現され、 物品21が台車に縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過し、 リーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設け、側面部分や背面部分に電波吸収体30が存在し、電波吸収体30は物品21に面する方向である横方向に開口する透過領域を有している、 リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27。」 (イ)甲1-2発明、甲1-2技術 上記(ア)に加え、さらに、段落【0059】、【0061】の記載より、甲1には次の発明及び技術的事項(以下「甲1-2発明」又は「甲1-2技術」という。)も記載されているものと認める(下線部は「甲1-1発明」又は「甲1-1技術」に追加した事項。以下同様に追加した事項に下線を引くこととする。)。 「各物品21にそれぞれ装着される複数のトランスポンダ23および各トランスポンダ23との間で無線通信可能なリーダアンテナ24を有する通信装置25と、 通信装置25の通信環境を良好にするため、電波吸収体30を備え、電波の到達領域を小さく制限することによって、通信可能領域27を小さく絞り込む通信改善装置26と、 リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの物品21の情報を表す応答信号を受信させる制御装置27と、 を備える物品情報取扱装置20に用いられる、リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27であって、 各トランスポンダ23は、RFIDタグによって実現され、 物品21が台車に縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過し、 リーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設け、側面部分や背面部分に電波吸収体30が存在し、電波吸収体30は物品21に面する方向である横方向に開口する透過領域を有しており、 電波吸収体30は、導電性材料から成る電磁波反射層となる導体層35を有し、この導体層35の厚み方向の少なくとも一方側に積層された吸収層36を有する、 リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27。」 (ウ)甲1-3発明 上記(ア)、(イ)に加え、さらに、【請求項8】の記載より、次の発明(以下まとめて「甲1-3発明」という。)も記載されているものと認める。 「各物品21にそれぞれ装着される複数のトランスポンダ23および各トランスポンダ23との間で無線通信可能なリーダアンテナ24を有する通信装置25と、 通信装置25の通信環境を良好にするため、電波吸収体30を備え、電波の到達領域を小さく制限することによって、通信可能領域27を小さく絞り込む通信改善装置26と、 リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの物品21の情報を表す応答信号を受信させる制御装置27と、 を備える物品情報取扱装置20に用いられる、リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27であって、 各トランスポンダ23は、RFIDタグによって実現され、 物品21が台車に縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過し、 リーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設け、側面部分や背面部分に電波吸収体30が存在し、電波吸収体30は物品21に面する方向である横方向に開口する透過領域を有している、 リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27、 を備える通信システム。」 又は、 「各物品21にそれぞれ装着される複数のトランスポンダ23および各トランスポンダ23との間 で無線通信可能なリーダアンテナ24を有する通信装置25と、 通信装置25の通信環境を良好にするため、電波吸収体30を備え、電波の到達領域を小さく制限することによって、通信可能領域27を小さく絞り込む通信改善装置26と、 リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの物品21の情報を表す応答信号を受信させる制御装置27と、 を備える物品情報取扱装置20に用いられる、リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27であって、 各トランスポンダ23は、RFIDタグによって実現され、 物品21が台車に縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過し、 リーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設け、側面部分や背面部分に電波吸収体30が存在し、電波吸収体30は物品21に面する方向である横方向に開口する透過領域を有しており、 電波吸収体30は、導電性材料から成る電磁波反射層となる導体層35を有し、この導体層35の厚み方向の少なくとも一方側に積層された吸収層36を有する、 リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27、 を備える通信システム。」 (2)甲2 ア 甲2に記載された事項 甲2には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (2a)「【請求項1 】 無線識別(RFID)タグとの通信用の電磁界を形成するアンテナであって、実質的に平面形状を有するアンテナと、 前記アンテナの周囲であって、前記アンテナに平行な面内に位置決めされた、実質的に連続する導電性シールドと、 を備えるRFIDシステム。」 ・・・ 【請求項3】 前記導電性シールドが、非遮蔽内側領域を形成するように配向された平面導電領域を備えるとともに、さらに前記アンテナが前記非遮蔽内側領域内に配置され、且つ、前記平面導電領域と平行に配置されている請求項1に記載のRFIDシステム。 【請求項4】 前記導電領域が、前記導電性シールドが前記アンテナの周囲に閉導電ループを形成するのを防止する、少なくとも1つの切断領域を規定する請求項3に記載のRFIDシステム。」 (2b)「【0006】 RFIDリーダ用の従来のアンテナは、単一の誘電ループを有して比較的高い周波数範囲、例えば3メガヘルツ(MHz)?30MHzで動作する。その結果、これらのアンテナは「ホール」、すなわちRFIDタグをアンテナの比較的近くに配置しても、RFIDタグが読み取ることができない領域のある磁界を生成しやすい。例えば、RFIDタグが取り付けられた物品の配向および場所に拠って、ある状況では、RFIDタグは問い合わせ時にアンテナの誘電ループの単一巻の上方に中心が位置し得る。この状況では、実質的に等しい電流がRFIDタグの両側に印加される場合があり、相殺作用をもたらす。その結果、RFIDタグはリーダとのRFID通信を達成することができない虞がある。 【0007】 さらに、卓上型RFIDリーダと共に用いられる従来のアンテナは、アンテナの周縁部を超えて水平に延びる磁界を生成しやすい。従ってアンテナ付近、例えば卓上でアンテナの隣に配置された物品は、リーダによって不用意に読み取られる場合があり、これは望ましくない結果をもたらす虞がある。例えば、1人の図書館利用者が所持するとともに、図書館管理システムのアンテナの隣に置かれた本が、他の利用者へ不用意に貸し出される場合がある。」 (2c)「【0014】 図1は本明細書に説明する技術を組み込んだ好的なRFIDシステム2を図示するブロック図である。図1の図示例においては、RFIDシステム2は、本、書類、ファイルまたは他の物品を追跡するのに使用されている。RFIDシステムは、例えば図書館、法律事務所、政府機関、または事業、犯罪および医療記録などの書類およびファイルを作製および/または保管する他の施設に配備され得る。これらの物品は物品を一意に識別するRFIDタグを含む。さらに、各R FIDタグは物品を説明する情報、物品の移動が許可されているか否かを示す状況情報も含む。RFIDタグをタグが実質的に感知されないように物品内に埋め込むことにより、改ざんを低減または防止し得る。」 (2d)「【0019】 さらにRFIDシステム2は返却/ 貸出領域11を含み、それにより許可された人、例えば図書館利用者またはスタッフ人員は、物品を処理して移動または返却する。具体的には返却/貸出領域11は、物品に取り付けられたRFIDタグに問い合わせるとともに、それらの状況を所望のもの、例えば物品を返却または貸出に変更するRFIDリーダ18を含む。」 (2e)「【0024】 さらに返却/貸出領域11は、導電性シールド16を利用してアンテナ13により生成された磁界をさらに精密化および整形する。例えば、図示のようにアンテナ13を机面15上、内または下にほぼ水平に載置し得る。導電性シールド16をアンテナ13に平坦に且つ通常は取り囲むように配置して、電磁界がアンテナの周縁部を越えて水平に延びないようにする。その結果、通常はアンテナ13の上方および下方に突出し、RFIDタグを読み取ることができる、通常は垂直通信ゾーンを規定する電磁界が生成される。導電性シールド16を机面15上に、または図書館利用者および人員の視界外の机面の下方または内に載置し得る。導電性シールド16は本明細書に説明するように、磁界を形成するために必ずしも電気的に接地されている必要はない。」 (2f)「【0035】 導電性シールド66は、閉ループがアンテナ60の周囲に形成されるのを防止する切断領域63を含むことにより、電流が導電性シールド内に生じるのを防止する。一般に、切断領域63は導電性シールド66内に電気的切断を生成するのに十分であるとともに、導電性シールドの遮蔽効果を実質的に低減しない最小距離D4の間隙を有し得る。例えば導電性シールド66は、従来の銅または他の導電性シールディングであってもよく、距離D4は数ミリメートルを超える必要はない。」 (2g)「【0043】 図8Aは、アンテナ102と導電性シールド104とが表面106の下方に載置された、返却/貸出領域100の一実施形態の側面図を示す透視図である。この例では、アンテナ102と導電性シールド104とが、表面106の上方にRFIDタグ通信ゾーン107を生成する。表面106は、通信ゾーンの周縁部を識別する視覚標識を含み得る。このようにして、導電性シールド104は規定された通信ゾーン107を超える領域108におけるRFIDタグの不用意な読み取りを防止する。 【0044】 図8Bは、返却/貸出領域110の他の実施形態の側面図を図示する透視図である。この例では、机面116は凹部120を形成し、その下方にアンテナ112が載置されている。導電性シールド114は、机面116の非凹部上にアンテナ112を取り囲むように載置されている。この例ではアンテナ112と導電性シールド114とがRFIDタグ通信ゾーン117を生成し、導電性シールドは規定された通信ゾーンを超える領域118におけるRFIDタグの不用意な読み取りを防止する。他の実施形態では、机面116は凹部120を形成せず、アンテナ112は机面の下方に載置される。」 (2h)【図1】は次のとおりである。 (2i)【図5】は次のとおりである。 (2j)【図8A】は次のとおりである。 (2k)【図8B】は次のとおりである。 イ 認定事項 (ア)【図8A】に係る実施形態の「返却/貸出領域100」も、アンテナやシールディングの配置構造を除けば、【図1】に係るブロック図と概略同様の構成を有していると解され、段落【0024】の「机面15」という記載及び【図1】の符号15の記載、並びに、他の実施形態を説明する段落【0044】の「机面116」という記載及び【図8B】の符号116の記載も参酌すれば、【図8A】で最上方に記載される横線は、実質的には「机面」を示すことは自明のことといえる。 そして、「机面」が設けられるものは、【図1】の記載を参酌すれば「机」であることは明らかであり、さらに、段落【0019】の「返却/貸出領域11は・・・RFIDリーダ18を含む」という記載及び【図1】の符号18の記載を参酌すれば、当該「机」は、「RFIDリーダ」が設置される「机」であることも明らかといえる。 (イ)段落【0043】に「アンテナ102と導電性シールド104とが表面106の下方に載置され」と記載されているが、「載置」とは「物体を台や装置に載せて置くこと。」(大辞林第三版)を意味する用語であるから、技術的には「・・・取り付けられ」とするのが適切であるといえる(なお、甲2に対応する国際公開第2005/083836号の段落[0052]では、「an antenna 102 and conductive shield 104 are mounted below a surface 106」と記載されている。)。 ウ 甲2に記載された発明及び技術的事項 (ア)甲2-1発明、甲2-1技術 上記ア、イより、特に、実施形態の【図8A】に着目すると、甲2には次の発明及び技術的事項(以下「甲2-1発明」又は「甲2-1技術」という。)が記載されているものと認める(ただし、符号104は、【図8A】では「シールディング」と記載されているが、段落【0043】に記載の「導電性シールド」という用語を用いることとする。)。 「物品内に埋め込まれるRFIDタグとの通信用の電磁界を形成するアンテナ102であって、実質的に平面形状を有するアンテナ102と、 前記アンテナ102の周囲であって、前記アンテナ102に平行な面内に位置決めされた、実質的に連続する導電性シールド104と、 を備えるRFIDシステム2の返却/貸出領域100におけるRFIDリーダが設置される机であって、 アンテナ102と導電性シールド104とが、表面106の下方に取り付けられ、 アンテナ102と導電性シールド104とが、表面106の上方にRFIDタグ通信ゾーン107を生成し、 導電性シールド104は規定された通信ゾーン107を超える領域108におけるRFIDタグの不用意な読み取りを防止する、RFIDシステム2の返却/貸出領域100におけるRFIDリーダが設置される机。」 (イ)甲2-2発明 上記(ア)に加え、さらに、甲2には次の発明(以下「甲2-2発明」という。)も記載されているものと認める。 「物品内に埋め込まれるRFIDタグとの通信用の電磁界を形成するアンテナ102であって、実質的に平面形状を有するアンテナ102と、 前記アンテナ102の周囲であって、前記アンテナ102に平行な面内に位置決めされた、実質的に連続する導電性シールド104と、 を備えるRFIDシステム2の返却/貸出領域100におけるRFIDリーダが設置される机であって、 アンテナ102と導電性シールド104とが、表面106の下方に取り付けられ、 アンテナ102と導電性シールド104とが、表面106の上方にRFIDタグ通信ゾーン107を生成し、 導電性シールド104は規定された通信ゾーン107を超える領域108におけるRFIDタグの不用意な読み取りを防止する、RFIDシステム2の返却/貸出領域100におけるRFIDリーダが設置される机、 を有するRFIDシステム2。」 (3)甲3 ア 甲3に記載された事項 甲3には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (3a)「【請求項1】 RFID(Radio Frequency Identification)タグとの交信制御にアンチコリジョン方式を用いることで複数のRFIDタグからデータを一括読取可能なRFIDタグリーダの制御装置において、 一括読取りされたRFIDタグのデータを破棄するデータ破棄モードと当該データを取込むデータ取込モードとを識別するモード識別情報の記憶手段と、 前記RFIDタグリーダでRFIDタグのデータが一括読取りされる毎に前記モード識別情報が前記データ破棄モードを示すのか前記データ取込モードを示すのかを判定するモード判定手段と、 前記モード識別情報が前記データ破棄モードを示すとき、前記RFIDタグリーダで読取られたデータの中に予め設定された取込許可タグのデータが存在するか検索する破棄モード時タグ検索手段と、 この破棄モード時タグ検索手段により前記取込許可タグのデータが存在しないことが確認されると、前記RFIDタグリーダで読取られたRFIDタグのデータを破棄するデータ破棄手段と、 前記破棄モード時タグ検索手段により前記取込許可タグのデータが存在することが確認されると、前記モード識別情報を前記データ取込モードの情報に切替える取込モード移行手段と、 前記モード識別情報が前記データ取込モードを示すとき、前記RFIDタグリーダで読取られたデータを取込み、コントローラへ供給するデータ取込処理手段と、 を具備したことを特徴とするRFIDタグリーダ制御装置。」 (3b)「【0004】 ところで、POS端末に接続されているバーコードリーダは、POS端末の商品登録業務が起動している間、常に読取りのスタンバイ状態となっている。このため、バーコードをバーコードリーダにかざす、あるいはバーコードリーダをバーコードにかざすことによって、即座にバーコードの読取りが実行される。 【0005】 そこで、これと同様に、RFIDタグリーダも常に読取りのスタンバイ状態とすることが考えられる。しかしその場合には、代金精算以外の目的でレジカウンタに商品を載せたり商品を近づけたりすると、その商品に付されたRFIDタグのデータが読取られ、POS端末に入力されてしまうといった問題が生じる。このため、POS端末に設けられた特定のキーが操作されると、RFIDタグリーダを一定時間読取り動作させるように構成することによって、不要なデータがPOS端末に入力されるのを防止する技術が従来知られていた(例えば、特許文献1参照)。 【特許文献1】特開2004-326256号公報([0038]?[0039]) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特定のキー操作に応じてRFIDタグリーダを読取り動作させる構成では、キー操作があって初めてRFIDタグリーダは読取りのスタンバイ状態となり、その後、アンテナの交信領域内にRFIDタグが近づくとそのタグデータを読取っていたので、RFIDタグリーダの立ち上がりが遅いという問題があった。 【0007】 本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、RFIDタグリーダを常に読取りのスタンバイ状態としておいても、不要なRFIDタグデータがRFIDタグリーダの接続機器に供給されることがないRFIDタグリーダ制御装置及びRFIDタグリーダ制御プログラムを提供しようとするものである。」 (3c)「【0012】 図1は本実施の形態における商品販売登録装置を示す概略構成図であり、コンピュータを主体とするPOS端末11にRFIDタグリーダ12が接続されている。POS端末11は、主制御部としてのコントローラ13と、該コントローラ13によって処理される各種プログラムやデータ等を記憶するための記憶部14と、ストアコントローラ等の外部装置との通信部15と、RFIDタグリーダ12を制御するリーダ制御装置としてのドライバ16と、このドライバ16が使用するワークRAM17と、キーボード等の操作部18、オペレータ用ディスプレイ,客用ディスプレイ等の表示部19及びレシートプリンタ等の印刷部20等の周辺機器で構成されている。」 (3d)「【0015】 RFIDタグリーダ12には、タグ交信用アンテナ30が接続されている。タグ交信用アンテナ30は、図2に示すように、店の会計場所に設けられたレジカウンタ31に埋め込まれている。これにより、レジカウンタ31にRFIDタグが近づけられると、RFIDタグリーダ12がそのRFIDタグとアンテナ30を介して非接触で交信を行って、RFIDタグが有するICチップメモリ内のデータを読取るものとなっている。」 (3e)「【0018】 さて、本実施の形態では、店で販売される各商品32に対してそれぞれ商品識別用RFIDタグ33が設けられている。また、各キャッシャがそれぞれ携帯するキャッシャカード34に対してそれぞれ取込許可用RFIDタグ35が設けられている。商品識別用RFIDタグ33が有するICチップのメモリには、図3(a)に示すように、固定のIDの他、当該RFIDタグが商品識別用RFIDタグ33であることを示すタグ区分情報として“0”が記憶されている。また、当該商品識別用RFIDタグ33が付されている商品の商品識別コード,商品名,価格等の商品情報が記憶されている。一方、取込許可用RFIDタグ35が有するICチップのメモリには、図3(b)に示すように、固定のIDの他、当該RFIDタグが取込許可用RFIDタグ35であることを示すタグ区分情報として“1”が記憶されている。また、当該取込許可用RFIDタグ35が付されているキャッシャカード34を所持しているキャッシャのキャッシャコード,キャッシャ名等のキャッシャ情報が記憶されている。 【0019】 また本実施の形態では、RFIDタグとRFIDタグリーダ12との交信制御にアンチコリジョン(衝突防止)という方式を用いている。これにより、1つのRFIDタグリーダ12の交信可能範囲内に複数のRFIDタグが存在していた場合には、各RFIDタグのデータが一括してRFIDタグリーダ12によって読取られ、POS端末11に入力される。したがって、図2に示すように、客の買上げ商品を収容するための買い物籠36をレジカウンタ31に載せるだけで、その買い物籠36内の各商品32にそれぞれ付された商品識別用RFIDタグ33のデータがRFIDタグリーダ12で一括して読取られ、POS端末11に入力されることとなる。」 (3f)「【0050】 ここで、客が買上げ商品32の代金を精算するためにレジカウンタに来ると、POS端末11を操作するキャッシャは、キャッシャカード34をレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置く。そうすると、このキャッシャカード34に付されている取込許可用RFIDタグ35のデータがRFIDタグリーダ12によって読取られる。これにより、ドライバ16の動作モードがデータ取込モードとなる。また、この取込許可用RFIDタグ35のメモリデータであるIDとキャッシャ情報がワークRAM17のキャッシャタグエリア41に書き込まれる。そして、キャッシャ情報がドライバ16から制御部13に出力されて、記憶部14に記憶される。これにより、キャッシャ名が表示部19に表示される。また、レシートに印字される責任者情報として管理される。 【0051】 その後、ドライバ16から制御部13に登録開始コマンドに出力される。これにより、制御部13では、1商取引の商品登録に備えるために取引メモリが初期化される。この状態で、客の買上げ商品32を収容した買い物籠36がレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置かれると、この買い物籠36に収容されている各商品32にそれぞれ付されている商品識別用RFIDタグ33のメモリデータがRFIDタグリーダ12により一括して読取られる。そして、この一括して読取られた商品識別用RFIDタグ33のメモリデータであるIDと商品情報がワークRAM17の商品タグエリア42に順次書き込まれる。ただしこの際、IDが同一の商品情報が商品タグエリア42に既に記憶されている場合には、その商品情報は破棄される。つまり、同一商品32に付された商品識別用RFIDタグ33のメモリデータは、当該商品32がレジカウンタ31に載せられている間何度でも読取られるが、商品タグエリア42に重複して書き込まれることはない。 【0052】 また、商品タグエリア42に書き込まれた商品情報は、ドライバ16から制御部13に出力され、取引メモリに順次記憶される。さらに、当該商品情報中の商品名,価格等の情報が表示部19に表示出力される。そこでキャッシャは、表示部19に表示された商品情報の内容と買い物籠36に収容されている商品32の内容とを照合し、買い物籠36に収容されている商品32が全て登録されたことを確認したならば、キャッシャカード34をレジカウンタ31から拾い上げる。そうすると、RFIDタグリーダ12によって取込許可用RFIDタグ35のデータが読取られなくなるので、ドライバ16から制御部13に登録終了コマンドが出力される。また、ドライバ16の動作モードがデータ破棄モードに戻る。これにより、POS端末11においては、登録業務のアプリケーションプログラムに従い、取引メモリに記憶された各商品情報に基づいて商品売上登録処理が実行され、請求金額が算出される。そこでキャッシャは、請求金額に見合った支払いを客から受ける。そして、支払い方法に該当した締めキー22を操作する。そうすると、同アプリケーションプログラムに従い、決済処理が実行され、印刷部20が動作してレシートが印字発行される。 【0053】 ところで、キャッシャがキャッシャカード34をレジカウンタ31から拾い上げた後も、買い物籠36がレジカウンタ31に載せられている間は、買い物籠36内の各商品32にそれぞれ付されている商品識別用RFIDタグ33のメモリデータがRFIDタグリーダ12により一括して読取られる。しかし、上述したようにドライバ16の動作モードはデータ破棄モードに戻っているので、これらのRFIDタグデータは全てドライバ16で破棄され、制御部13に入力されることはない。 【0054】 このように本実施の形態によれば、POS端末11において登録業務のアプリケーションプログラムが起動している間、RFIDタグリーダ12をスタンバイ状態とし、タグ交信用アンテナ30が埋設されているレジカウンタ31の近傍にRFIDタグが近づけられると、このRFIDタグのメモリデータを一括して読取るようにしている。しかしながら、キャッシャカード34がレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置かれない限り、つまりはキャッシャカード34に付されている取込許可用RFIDタグ35のメモリデータが読取られていない限り、一括読取されたR FIDタグのメモリデータはドライバ16で破棄される。したがって、例えば代金精算以外の目的でレジカウンタ31に商品を載せたり商品を近づけたりしても、その商品に付された商品識別用RFIDタグ33のメモリデータがPOS端末11の制御部13に入力され、アプリケーションプログラムによって処理されるといった問題は生じ得ない。」 (3g)【図1】は次のとおりである。 (3h)【図2】は次のとおりである。 イ 甲3に記載された発明 (ア)甲3-1発明 上記アより、甲3には次の発明(以下「甲3-1発明」という。)が記載されているものと認める(ただし、甲3において、符号13は「コントローラ」、「制御部」と異なる用語が用いられているが、「制御部」という用語に統一し、各タグのデータについても「データ」、「メモリデータ」と異なる用語が用いられているが、「メモリデータ」という用語に統一する。)。 「各商品32に対してそれぞれ商品識別用RFIDタグ33が設けられ、 各キャッシャがそれぞれ携帯するキャッシャカード34に対してそれぞれ取込許可用RFIDタグ35が設けられ、 POS端末11にRFIDタグリーダ12が接続され、 RFIDタグリーダ12には、タグ交信用アンテナ30が接続され、 POS端末11は、制御部13と、該制御部13によって処理される各種プログラムやデータ等を記憶するための記憶部14と、RFIDタグリーダ12を制御するドライバ16と、操作部18、表示部19及び印刷部20等の周辺機器を有し、 タグ交信用アンテナ30は、店の会計場所に設けられたレジカウンタ31に埋め込まれている、 RFIDタグリーダ12、及び、タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31であって、 客が買上げ商品32の代金を精算するためにレジカウンタに来ると、POS端末11を操作するキャッシャは、キャッシャカード34をレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置き、 このキャッシャカード34に付されている取込許可用RFIDタグ35のメモリデータがRFIDタグリーダ12によって読取られ、これにより、ドライバ16の動作モードがデータ取込モードとなり、 その後、ドライバ16から制御部13に登録開始コマンドに出力され、制御部13では、1商取引の商品登録に備えるために取引メモリが初期化され、 この状態で、客の買上げ商品32を収容した買い物籠36がレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置かれると、この買い物籠36に収容されている各商品32にそれぞれ付されている商品識別用RFIDタグ33のメモリデータがRFIDタグリーダ12により一括して読取られ、 キャッシャカード34に付されている取込許可用RFIDタグ35のメモリデータが読取られていない限り、一括読取された商品識別用RFIDタグ33のメモリデータはドライバ16で破棄される、 RFIDタグリーダ12、及び、タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31。」 (イ)甲3-2発明 「RFIDタグリーダ12、及び、タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31」は、その「RFIDタグリーダ12」が「POS端末11」に「接続」されるものであるから、「POS端末11」を含めた全体として「RFIDタグリーダシステム」を構成するといえる。 そうすると、上記(ア)に加え、甲3には次の発明(以下「甲3-2発明」という。)も記載されているものと認める。 「各商品32に対してそれぞれ商品識別用RFIDタグ33が設けられ、 各キャッシャがそれぞれ携帯するキャッシャカード34に対してそれぞれ取込許可用RFIDタグ35が設けられ、 POS端末11にRFIDタグリーダ12が接続され、 RFIDタグリーダ12には、タグ交信用アンテナ30が接続され、 POS端末11は、制御部13と、該制御部13によって処理される各種プログラムやデータ等を記憶するための記憶部14と、RFIDタグリーダ12を制御するドライバ16と、操作部18、表示部19及び印刷部20等の周辺機器を有し、 タグ交信用アンテナ30は、店の会計場所に設けられたレジカウンタ31に埋め込まれている、 RFIDタグリーダ12、及び、タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31であって、 客が買上げ商品32の代金を精算するためにレジカウンタに来ると、POS端末11を操作するキャッシャは、キャッシャカード34をレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置き、 このキャッシャカード34に付されている取込許可用RFIDタグ35のメモリデータがRFIDタグリーダ12によって読取られ、これにより、ドライバ16の動作モードがデータ取込モードとなり、 その後、ドライバ16から制御部13に登録開始コマンドに出力され、制御部13では、1商取引の商品登録に備えるために取引メモリが初期化され、 この状態で、客の買上げ商品32を収容した買い物籠36がレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置かれると、この買い物籠36に収容されている各商品32にそれぞれ付されている商品識別用RFIDタグ33のメモリデータがRFIDタグリーダ12により一括して読取られ、 キャッシャカード34に付されている取込許可用RFIDタグ35のメモリデータが読取られていない限り、一括読取された商品識別用RFIDタグ33のメモリデータはドライバ16で破棄される、 RFIDタグリーダ12、及び、タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31、 を有するRFIDタグリーダシステム。」 (4)甲4 甲4には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (4a)「【0010】 図2は、第1の実施形態に係る薬剤監査装置14の外観を示す斜視図である。薬剤監査装置14は、大別すると、タブレットPC(Personal Computer)100と、読取部200と、BOX部300とを有している。タブレットPC100は、薬剤監査装置14の制御主体である。読取部200は、薬剤に付された各種情報を光学的に読み取る。BOX部300は、取り揃えた薬剤を収納する。 【0011】 タブレットPC100は、各種情報を表示するディスプレイ110と、ディスプレイ110に表示された各種情報に対する各種操作を入力するタッチパネル120とを有する。 【0012】 BOX部300は、箱部310と、RFID(Radio Frequency IDentification)リーダライタ320と、電源装置340とを有する。箱部310は、上面開口の箱形状であり薬剤を入れる収納部である。」 (4b)「【0024】 識別手段1010は、読取手段2010による読み取り結果として得られた情報(コード情報または外面情報)に基づいて薬剤を識別して薬剤情報を抽出する。または、識別手段1010は、薬剤に付されているRFIDタグから、読取装置であるRFIDリーダライタ320が読み取ったコード情報から薬剤情報を抽出する。」 (4c)「【0027】 表示制御手段1013は、ディスプレイ110に、識別手段1010が識別した薬剤情報の一覧の表示を制御する。」 (4d)「【0045】 (第2の実施形態) 次に、第2の実施形態に係る薬剤監査装置14aについて説明を行う。なお、第1の実施形態で説明した部分と共通する部分は説明を省略する。 【0046】 第2の実施形態は、BOX部300aのRFIDリーダライタ320a、制御部321a、アンテナ322a及び電源装置340aが、箱部310aの側面に備えられている点が第1の実施形態と異なっている。ここで、図14は、第2の実施形態に係る薬剤監査装置14aの外観を示す斜視図である。第2の実施形態に係る薬剤監査装置14aは、RFIDリーダライタ320a及び電源装置340aが箱部310aの側面に備える。そして、第2の実施形態に係る薬剤監査装置14aは、他の面に遮断板350が備えられている点が第1の実施形態に係る薬剤監査装置14と異なっている。 【0047】 第2の実施形態に係る薬剤監査装置14aは、箱部310aに薬剤が入れられた場合に、薬剤に付されているRFIDタグから薬剤を識別するコード情報を読み取る。よって、RFIDリーダライタ320aは、薬剤を収集する箱部310aに入れられた薬剤のRFIDタグからコード情報を読み取れる程度の電波強度を有していればよい。よって、RFIDリーダライタ320aの通信可能距離は、1m程度あればよい。すなわち、RFIDリーダライタ320aは、13.56MHzの周波数を用いる電子誘導方式での通信を行うタイプが好ましい。 【0048】 また、第2の実施形態に係る薬剤監査装置14aは、箱部310aの側面にアンテナ322aが備えられていることから、外側にある薬剤のRFIDタグを読み取ってしまう可能性がある。そこで、箱部310aは、アンテナ322aが備えられていない側面に、電波を遮断する遮断板350を備えればよい。遮断板350は、例えば、アルミなどの電波を遮断する金属製の板である。または、遮断板350は、例えば、電波を吸収する電波吸収パネルなどでもよい。 【0049】 また、遮断板350は、アンテナ322aが備えられている側面の箱部310aの外側に備えられてもよい。更に、箱部310aの上面や、底面に備えられてもよい。 【0050】 以上のように、第2の実施形態によれば、箱部310aの側面にRFIDリーダライタ320a及びアンテナ322aを備える。そして、第2の実施形態にかかる箱部310aは、他の側面に遮断板350を備える。これにより、外側にある薬剤のRFIDタグを読み取ってしまうことを防止する。よって、RFIDリーダライタ320aの仕様に合わせて箱部310aの底面の大きさ、形状などを変える必要がないことから設計の自由度を向上させることが可能となる。 (4e)「【0054】 タブレットPC100bは、第1の実施形態に係るタブレットPC100bと同様の機能を有するタブレットPC100bである。しかし、第3の実施形態に係るタブレットPC100bは、カート400から着脱可能となっている点が異なっている。読取部200bは、第1の実施形態に係る読取部200と同様の機能を有する読取部200bである。しかし、第3の実施形態にかかる読取部200bは、タブレットPC100bから着脱可能となっている。タブレットPC100b及び読取部200bは、取り外し可能とすることで、より柔軟に取り扱うことが可能である。」 (4f)【図2】は次のとおりである。 (4g)【図14】は次のとおりである。 (4h)【図15】は次のとおりである。 (5)甲5 甲5には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (5a)「【0007】 このため、間隔を詰めて複数のゲートを設けた場合、無線タグリーダのアンテナから発信される電波が隣のゲートまで届いてしまい、誤って隣のゲートを通過するカート内の商品情報を読取ってしまう虞がある。このような誤読を防ぐためには、例えばゲートを電波吸収材で覆う方法が考えられるが、そうした場合にはゲートそのものが大型化するため、省スペースが求められる店舗利用には好ましくない。」 (5b)「【0025】 また、筐体51の天板52の前端部側には、無線タグ読取処理装置2を構成する決済手段としての決済処理部37が設けられている。決済処理部37の前面部には操作表示部としてのタッチパネル付きディスプレー7が設けられている。 【0026】 上記した上下部のアンテナ6A,6Bは、ショッピングカート5のカゴ5a,5b内に収容された商品、あるいは該カート5を押す買物客が所持する商品に取り付けられている無線タグと無線通信を行い、その無線タグからタグID、すなわち商品IDを受信する。 【0027】 タッチパネル付ディスプレイ7は、後述する精算案内画面、登録商品画面、決済画面、決済中止画面等を表示するとともに、各画面に表示されるボタンの入力装置として機能する。」 (5c)「【0041】 まず、上下のカゴ5a,5b内に無線タグ付きの商品を収納したショッピングカート5が決済位置1A(1B,1C)に押し込まれて無線タグ読取処理装置の筐体51内に位置し、カート検出センサ46、及び下段商品検出センサ55によって検出されると(ステップST1)、その検出情報が決済処理部37に通知される。この通知があると、タッチパネル付きディスプレー7に例えば、図7に示すような案内画面が表示される(ステップST2)。顧客はこの案内画面を見てその読取開始ボタン7aを押圧操作する。これにより、無線タグ読取装置20がその上下部の無線タグ読取用のアンテナ6A,6Bから電波を放射して商品の無線タグの読取を開始する(ステップST3)。無線タグ読取装置20は無線タグの読取を完了するまで、無線タグから読み取った商品情報(商品ID)を決済処理部37に送信する。」 (5d)「【0043】 決済処理部37は商品情報を受信すると、例えば、図8に示すように画面表示を更新する(ステップST4)。ショッピングカート5のカゴ5a、5b内の全ての無線タグの読取を完了した場合には、顧客は読取完了ボタン7bを押圧操作し、完了しなければ商品再読み取りボタン7cを押圧操作する(ステップST5)。読取完了ボタン7bが押圧操作された場合には、決済処理部37はタッチパネル付きディスプレー7に図9に示すように支払い意思確認表示を行なう(ステップST6)。なお、無線タグの読取の完了は、例えば、無線タグ読取装置から無線タグに向けたインベントリ操作に対して無線タグからの応答がなくなったことに基づいて読取が完了したと判断するようにしてもよい。」 (5e)【図1】は次のとおりである。 (5f)【図2】は次のとおりである。 (6)甲6 甲6には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、翻訳は請求人が提出した訳文を採用した。甲8?10についても同様である。)。 (6a)「The reading/writing device according to the invention therefore makes it possible to carry out a reading/writing of one or more RFID tags each carried by objects deposited in a depositing cavity the entrance of which is surrounded by one or more protective walls attenuating waves between said depositing cavity and the outside of said depositing cavity. In other words, the protective wall(s) form a screen for protection principally against the tag activation waves originating from the depositing cavity and directed towards the outside and optionally, in the case where these activation waves have succeeded in leaving the cavity, against the waves emitted in response originating from the outside and directed towards the depositing cavity.」(2欄4?16行) 「したがって、本発明による読取り/書込みデバイスは、載置キャビティと前記載置キャビティの外側との間で電波を減衰する1つまたは複数の防壁によって入口が取り囲まれた、前記載置キャビティの中に載置された対象物がそれぞれ保持する、1つまたは複数のRFIDタグの読取り/書込みを実施することを可能にする。換言すれば、防壁は、主に載置キャビティから生じて外部へと向けられるタグ作動電波に対する、また任意に、これらの作動電波がキャビティを成功裏に離れた場合に、それに応答して放射される、外部から生じて載置キャビティへと向けられる電波に対する保護を行うスクリーンを形成する。」 (6b)「A description will now be given of an example of the method of collection according to the invention, which can be implemented by a collection terminal according to the invention, such as for example the collection terminal described with reference to FIG. 1. A user introduces objects placed in a bag for collection of payment in the depositing cavity, via the access opening and the insertion aperture. The reading/writing device, in particular via the weighing means, detects the presence of the objects in the depositing cavity and actuates the reading of the RFID tags affixed to each of the objects, namely the emission of a predetermined signal by the reading/writing means allowing the activation of the tags situated in the depositing cavity. The information read is then displayed on a screen, for example the screen 118. Such information can comprise the price of the object the tag of which is read, the reference of the object and additional information (composition, calories, weight, brand, use-by date etc.). These data will have previously been entered into the RFID chip and/or into a database that can be consulted from the terminal and from which it is possible to extract the data stored in combination with an item of data read from the corresponding tag. Other information can be displayed on the screen such as the total number of objects read, the total price, etc., calculated by a calculation module in the central unit.」(10欄1?26行) 「次に、例えば図1を参照して記載した会計端末など、本発明による会計端末によって実現することができる、本発明による会計方法の一例について説明する。 ユーザは、支払い会計のためにバッグに入れられた対象物を、アクセス開口部および挿入アパーチャを介して、載置キャビティに導入する。 読取り/書込みデバイスは、特に重量測定手段を介して、対象物が載置キャビティ内に存在することを検出し、対象物それぞれに貼付されたRFIDタグの読取りを作動させ、即ち読取り/書込み手段によって所定の信号を放射させて、載置キャビティ内に位置するタグの作動を可能にする。 次に、読み取られた情報は、スクリーン上に、例えばスクリーン118上に表示される。かかる情報は、タグを読み取った対象物の価格、対象物の問い合わせ番号、および追加情報(組成、カロリー、重量、銘柄、消費期限など)を含むことができる。これらのデータは、RFIDチップに、ならびに/あるいは端末から調べることができるデータベースに予め入力されるようにされ、格納されたデータをそこから、対応するタグから読み取られたデータの項目と組み合わせて抽出することができる。 主装置の計算モジュールによって計算された、読み取られた対象物の総数、合計価格などの、他の情報をスクリーン上に表示することができる。」 (6c)FIG.1は次のとおりである。 (6d)FIG.2は次のとおりである。 (7)甲7 甲7には、図面とともに次の事項が記載されている。 (7a)「【0004】 ところで、RFIDタグの読取装置を、セルフチェックアウト装置に適用した場合、客自身がRFIDタグの読み取りを行うことになる。しかしながら、従来の読取装置の構成では、平板状アンテナがRFIDタグの読み取りを行う空間と、客等が存在する空間とが連続している。そのため、自装置周辺の環境(空間)がRFIDタグの読み取りに影響を及ぼす場合があり、効率的な読み取りを妨げる可能性もある。」 (7b)「【0010】 本体2の右側には、商品Gに付されたRFID(Radio Frequency IDentifier)タグT(図3参照)を読み取るための読取装置10が備えられる。読取装置10は、図示しないケーブル等によりセルフチェックアウト装置1に接続され、商品Gに付されているRFIDタグTから読み取った各種の情報を、セルフチェックアウト装置1に出力(送信)する。ここで、各商品Gには当該商品Gを識別するための商品コード等を記録したRFIDタグTが付されているものとする。また、RFIDタグTには、後述する登録済フラグを書き込むための記憶領域が用意されているものとする。この登録済フラグの書き込みは、商品Gが未決済のまま店舗から持ち出されることを防止するためのものである。登録済みフラグの有無は、例えば、店舗の出入り口に設置されたゲートでチェックされ、登録済みフラグがないものはブザー等の報知手段により警告が行われる。」 (7c)「【0016】 このような構造を備える読取装置10によれば、読取室13に買物カゴCを収容することで、買物カゴCの中の商品G(RFIDタグT)を一括で読み取ることができる。また、RFIDアンテナ15が読み取りを行う読取室13を、客等が存在する空間から隔離することで、読み取りの最中に商品Gが抜き取られる等の不正な操作が行われることを抑制することができる。また、読取装置10(筐体11及び開閉フタ12)の外面を電波反射材や電波吸収材で覆うことで、読取室13を外部の電波(ノイズ)から遮蔽することができるため、誤動作等の発生を防ぐことができる。このように、読取装置10を用いることで、自装置周辺の環境が読み取り動作に及ぼす影響を低減することができるため、RFIDタグTの読み取りを効率的に行うことができる。」 (7d)「【0050】 セルフチェックアウト装置1では、通信制御部203が読取装置10から商品コードを受信すると、表示制御部201は、その商品コードに対応する商品情報を商品マスタから読み出し、ディスプレイ3bに表示する(ステップS12)。」 (7e)【図3】は次のとおりである。 (8)甲8 甲8には、図面とともに次の事項が記載されている。 (8a)「[0013] ・・・For example, the sensor 116 may scan an identifier on the item 120, such as a bar code or RFID tag, and transmit the identifying information (e.g. Universal Product Code (UPC) or Electronic Product Code (EPC)) to the user device 130 via the transmitter 114.・・・」 「[0013]・・・例えば、センサ116は、バーコードまたはRFIDタグなどのアイテム120上の識別子をスキャンし、識別情報(例えば、ユニバーサル製品コード(UPC)または電子製品コード(EPC))をユーザデバイス130にトランスミッタ114を介して送ることができる。・・・」 (8b)「[0018] The user device 130 may be any processor-based device used by the shopper to build a shopping list. The user device 130 may be a Smartphone, a tablet computer, a wearable computer device, and the like.・・・」 「[0018]ユーザデバイス130は、買い物客が買い物リストを作成するために使用する任意のプロセッサベースのデバイスとすることができる。ユーザデバイス130は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピュータデバイスなどとすることができる。・・・」 (8c)「[0026] ・・・ In some embodiments, when the user device receives identifying information of an item, it retrieves additional information about the item from a server. For example, the sensor unit may provide a universal product code (UPC) to the user device. The user device may then query a server for one or more of a name, an image, a description, and a price for the item. The shopping list may be displayed with the retrieved information. For example, when a shopper takes out their user device to verify the items on the shopping list, the shopping list may display each item with one or more of item name, item image, and item price. The total price of items on the shopping list may also be determined and displayed based on the retrieved information.・・・」 「[0026]・・・いくつかの実施形態では、ユーザデバイスがアイテムの識別情報を受信すると、サーバからアイテムに関する追加情報を取得する。たとえば、センサーユニットは、ユニバーサルデバイスコード(UPC)をユーザーデバイスに提供する。次に、ユーザーデバイスは、アイテムの名前、画像、説明、および価格の1つまたは複数についてサーバーに照会することができる。買い物リストは、取得した情報とともに表示される。たとえば、買い物客がユーザーのデバイスを取り出して買い物リストの商品を確認すると、買い物リストには各商品が商品名、商品画像、商品価格の1つ以上と一緒に表示される。買い物リスト上の商品の合計価格も、検索された情報に基づいて決定および表示される。・・・」 (8d)FIG.1は次のとおりである。 (9)甲9 甲9には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、行数はページ左方に記載された数字による。 (9a)「BACK GROUND OF INVENTION:- Mobile devices are gaining ground in the markets today. Experts say that people would easily migrate from mobile phone to mobile computing devices (MCD) like tablet PCs before owning a full-fledged computer. Tablet PC and such Mobile computing devices (MCD) offer mobility as well as power to program application on it. However, tablet PCs come with limited peripherals because adding peripherals would add to the weight, power-requirement, and other internal resources, thereby making the mobility ineffective. Having said this, a peripheral device in form of docking station with specific functionality will help many users to use MCD in their work or home. OBJECT OF INVENTION:- It is an object of invention to provide a docking system is a multi-functional peripheral device to Mobile Computing Device (MCD) which adds specific functionality to MCD. It is another object of invention to provide docking system to make MCD as point of sale machine.」(1ページ13?30行) 「発明の背景:- モバイル機器は今日の市場で地位を獲得している。専門家は、本格的なコンピューターを所有する前に、人々は簡単に携帯電話からタブレットPCなどのモバイルコンピューティングデバイス(MCD)に移行すると述べている。タブレットPCおよびそのようなモバイルコンピューティングデバイス(MCD)は、モビリティを提供し、その上でアプリケーションをプログラムできる。ただし、周辺機器を追加すると重量、電力要件、およびその他の内部リソースが増加し、モビリティの効果が少なくなるため、タブレットPCには周辺機器が限られている。そうは言っても、特定の機能を備えたドッキングステーション形式の周辺機器は、多くのユーザーが職場や自宅でMCDを使用するのに役立つ。 発明の目的:- 本発明の目的は、特定の機能をMCDに追加するモバイルコンピューティングデバイス(MCD)への多機能周辺機器であるドッキングシステムを提供することである。本発明の別の目的は、MCDをPOS機器として作成するドッキングシステムを提供することである。」 (10)甲10 甲10には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (10a)「[0006] The present disclosure provides a POS peripherals controlling device for controlling POS peripherals, and more particularly, to a POS peripherals controlling device for easily using electronic devices such as tablet PCs or smartphones as a POS terminal (for example, a host device).」 「[0006] 本開示は、POS周辺機器を制御するためのPOS周辺機器制御装置、より詳細には、タブレットPCやスマートフォンなどの電子機器をPOS端末(例えばホスト機器)として容易に使用するためのPOS周辺機器制御装置に関する。」 (11)甲11 甲11には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (11a)「【0030】 ショッピングカート1は、このような一般的なショッピングカートの基本的な構成要素とともに、電気的な構成要素を備えている。すなわち、ハンドル23の前方には、顧客8に各種の情報を示すための表示パネル111を備えたコンソール部11が設けられている。この表示パネル111は、タッチパネルとして機能を有し、各種のユーザ操作を受け付けることが可能である。」 (11b)「【0033】 また、コンソール部11の内部には、ショッピングカート1の電気的な構成要素を統括的に制御する制御部が設けられている。図3は、このような制御部10を含むショッピングカート1の電気的な構成要素を模式的に示すブロック図である。」 (11c)「【0040】 < 4.商品テーブル> 本実施の形態のショッピングカート1では、収容カゴ21に収容されている各商品のICタグから商品データが取得され、その商品データに基づいて商品テーブルがCPU101により作成され、RAM103に記憶されるようになっている。」 (11d)「【0043】 このような商品テーブルTは、その時点において収容カゴ21に収容されている全商品のリストとなる。したがって、商品テーブルTの「売価」フィールドの合計値は、それら全商品の合計売価となる。この合計売価は、CPU101により導出され、表示パネル111に表示される。これにより、ショッピングカート1のユーザたる顧客8は、精算処理の前に合計売価を参照することができ、予算に合わせて購入を希望する商品を選択できるようになっている。」 (11e)【図2】は次のとおりである。 3 対比・判断 (1)無効理由1(甲1を主引例)について ア 無効理由1-1(29条2項) (ア)対比 本件発明1と甲1-1発明とを対比する。 a 後者の「物品21」は、前者の「物品」に相当し、以下同様に、「リーダアンテナ24」は、「アンテナ」に、「電波吸収体30」は、「シールド部」にそれぞれ相当する。 また、後者の「トランスポンダ23」は、「RFIDタグによって実現され」るものであるから、前者の「RFタグ」に相当する。 そして、後者の「物品21の情報を表す応答信号」は、前者の「情報」に相当する。 b 後者の「リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27」からなるものは、「トランスポンダ23からの応答信号を受信させる制御装置27」を含むものであり、「トランスポンダ23からの物品21の情報を表す応答信号を受信させる」というものであるから、前者の「読取装置」に相当する。 c 後者の「リーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設け、側面部分や背面部分に電波吸収体30が存在し」ているということは、「収容」の字義が「人や物品を一定の位置におさめ入れること。」(広辞苑第六版)であることと、甲1の【図2】(摘示(1k))の記載も参酌すると、「電波吸収体30」が「リーダアンテナ24」を収容しているということができる。 d 後者の「台車」と、前者の「載置部」とは、「載置手段」であることにおいて共通するといえる。 e 後者の「リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27」は、「物品21が台車に縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過」させるものであるから、「据置式」といえるものである。 そうすると、上記a、bを踏まえると、後者の 「各物品21にそれぞれ装着される複数のトランスポンダ23および各トランスポンダ23との間で無線通信可能なリーダアンテナ24を有する通信装置25と、 通信装置25の通信環境を良好にするため、電波吸収体30を備え、電波の到達領域を小さく制限することによって、通信可能領域27を小さく絞り込む通信改善装置26と、 リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの物品21の情報を表す応答信号を受信させる制御装置27と、 を備える物品情報取扱装置20に用いられる、リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27であって、 各トランスポンダ23は、RFIDタグによって実現され」 ることは、前者の 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、」「を備え」 ることに相当するといえる。 f 上記a、cを踏まえると、後者の「リーダアンテナ24の周囲を」「囲い、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に」「設け」られ、「側面部分や背面部分に」「存在し」ている「電波吸収体30」と、前者の「前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部」とは、「前記アンテナを収容し、開口したシールド部」であることにおいて共通するといえる。 g 後者は、「物品21が台車に縦方向に積載され」た状態において「トランスポンダ23」から情報を読み取ることは自明のことである。 そうすると、上記a、b、dを踏まえると、後者の「物品21が台車に縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過する」ことと、前者の「前記物品が前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取ること」とは、「前記物品が載置手段に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る」ことにおいて共通するといえる。 h 以上のことより、本件発明1と甲1-1発明とは、次の一致点1-1で一致し、相違点1-1で相違すると認める(なお、相違点や対比において、甲1-1発明の事項に対し()内に本件発明1の対応する事項を記載することもある。以下同様。)。 〔一致点1-1〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、開口したシールド部と、 を備え、 前記物品が載置手段に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置。」 〔相違点1-1〕 「開口したシールド部」、「載置手段」、及び、「RFタグから情報を読み取る」ことについて、 本件発明1は、それぞれ、 「上向きに」開口したシールド部であり、 「据置式の読取装置」に「備え」られる「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部」であって、 「前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るものであるのに対し、 甲1-1発明は、それぞれ、 「物品21に面する方向である横方向に」開口する透過領域を有している電波吸収体30(シールド部)であり、 「物品21が」「縦方向に積載され」る「台車」であって、 台車に積載された物品21が「リーダアンテナ24の前を通過」するときに、トランスポンダ23(RFタグ)の情報を読み取るものである点。 (イ)判断 上記相違点1-1について検討する。 a 甲1の段落【0047】(摘示(1d))には「リーダアンテナ24の位置は、物品の横方向、上下方向や斜め方向などが任意に選択することができる。」と記載されていることから、甲1-1発明において、「リーダアンテナ24」の設置位置を物品に対し下方向に変更すること(例えば「台車」がその上を移動する床状の部材(以下便宜的に「搬送床」という。【図2】に当審が加筆した次の参考図の左下の矢印で示す部材。)上や、当該搬送床に対し半埋め込みないし埋め込むように、「リーダアンテナ24」及び「電波吸収体30」を配置すること等。)が一応は想定できる。そして、その場合、「電波吸収体30」(シールド部)は、上向きに開口したものとなる。 〔参考図〕 しかしながら、その場合であっても、甲1-1発明の「載置手段」は「台車」であって、「リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27」(据置式の読取装置)とは別の装置であるため、本件発明1の「据置式の読取装置」に「備え」られる「載置部」という事項を有するものには至らない。また、甲1-1発明は、「物品21が台車に縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過」するもの、すなわち、「台車」は「リーダアンテナ24、電波吸収体30を備える通信改善装置26及び制御装置27」(据置式の読取装置)に対して移動するものであるから、本件発明1の「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ」るという事項を有するものにも至らない。 b 請求人は、令和2年7月27日付け回答書の6ページ11?15行において、予備的に「なお、上記甲1発明では、物品21は搬送面上を移動できる構成ですが、【0044】に記載されたように、搬送装置を用いない構成も示唆されています。すなわち、甲1発明において移動できる載置部を用いないで、搬送面を載置面として物品21を載置面に載せてもよいことが示唆されていますので、その場合には、物品21を載置面(載置部に相当)に載置する構成も容易想到です。」と主張する。 しかしながら、甲1の段落【0044】(摘示(1c))に記載されるのは、【図1】に係る実施の形態の変形例のことであり、【図2】に係る実施の形態に対応する甲1-1発明とは直接関係のない記載であるので、当該段落【0044】に記載される事項が、甲1-1発明に直ちに適用可能であるとはいえない。 また、甲1の段落【0047】(摘示(1d))に示唆があるとはいえ、そもそも「リーダアンテナ24」及び「電波吸収体30」の設置位置を物品に対し下方に変更することは、「縦方向に積載され」た「物品21」のうち上の方に積載された物品と「リーダアンテナ24」との間の距離が大きくなることになるため、読み取りのしやすさの点からみれば不利な変更となることが想定され、さらに設置位置を搬送床の下にすることは、読み取りのしやすさの点からみればより一層不利となることが想定され、そのような設置位置にあえて変更する動機付けがあるとはいえない。 さらに、「リーダアンテナ24」及び「電波吸収体30」を、搬送床の下に配置するよう変更したものを検討すると、甲1-1発明は、「物品21」を縦方向に積載した「台車」を用いるという構成より、「リーダアンテナ24」及び「電波吸収体30」の前を「台車」が次々に移動することにより(甲1の【図2】(摘示(1k))、多数の「物品21」の「トランスポンダ23」の情報の連続的な読み取りをすることが可能なものであることが理解できるが、台車を使わない場合、搬送床の「リーダアンテナ24」及び「電波吸収体30」に対応する箇所に、予め縦方向に積載された「物品21」を載置するか、あるいは、「物品21」を縦方向に積み上げていって載置して、読み取りを行った後、次の読み取りのためにそれら「物品21」を撤去して、次の載置の作業を繰り返すことになる。 そうすると、搬送床の「リーダアンテナ24」及び「電波吸収体30」に対応する箇所を「載置部」とすることは、甲1-1発明に比して大幅に作業性や読み取り効率が悪化するおそれがあることが想定でき、あえてそのように変更する動機付けがあるとはいえない。 以上のとおりであるから、甲1-1発明において、「リーダアンテナ24」及び「電波吸収体30」を「台車」が移動する搬送床の下に配置するように変更し、その上でさらに「台車」を用いることを止めて、搬送床の「リーダアンテナ24」及び「電波吸収体30」に対応する箇所を載置部とするように変更する動機付けがあるとはいえず、請求人の上記主張は採用できない。 c したがって、本件発明1は、甲1-1発明及び甲1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 無効理由1-3(29条2項) (ア)対比 本件発明3と甲1-2発明とを対比する。 a 本件発明3の事項のうち、本件発明1の事項との対比については、上記「ア(ア)」のとおりである。 b 後者の「導体層35」は、前者の「電波反射層」に相当し、同様に、「吸収層36」は、「電波吸収層」に相当する。 そうすると、上記aを踏まえると、後者の「電波吸収体30は、導電性材料から成る電磁波反射層となる導体層35を有し、この導体層35の厚み方向の少なくとも一方側に積層された、吸収層36を有する」ことは、前者の「前記シールド部は、前記電波を吸収する電波吸収層と前記電波を反射する電波反射層のいずれか一方または両方を含む」ことに相当するといえる。 c 以上のことより、本件発明3と甲1-2発明とは、次の一致点1-2で一致し、相違点1-2で相違すると認める。 〔一致点1-2〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、開口したシールド部と、 を備え、 前記シールド部は、前記電波を吸収する電波吸収層と前記電波を反射する電波反射層のいずれか一方または両方を含む、 前記物品が載置手段に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置。」 〔相違点1-2〕 「開口したシールド部」、「載置手段」、及び、「RFタグから情報を読み取る」ことについて、 本件発明3は、それぞれ、 「上向きに」開口したシールド部であり、 「据置式の読取装置」に「備え」られる「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部」であって、 「前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るものであるのに対し、 甲1-2発明は、それぞれ、 「物品21に面する方向である横方向に」開口する透過領域を有している電波吸収体30(シールド部)であり、 「物品21が」「縦方向に積載され」る「台車」であって、 台車に積載された物品21が「リーダアンテナ24の前を通過」するときに、トランスポンダ23(RFタグ)の情報を読み取るものである点。 (イ)判断 上記相違点1-2は、上記相違点1-1と実質的に同一であり、その判断については、上記「ア(イ)」で述べたとおりである。 したがって、本件発明3は、甲1-2発明及び甲1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 無効理由1-4(29条2項) (ア)対比 本件発明4と甲1-3発明とを対比する。 a 本件発明4の事項のうち、本件発明1あるいは本件発明3の事項との対比については、上記「ア(ア)」、「イ(ア)」のとおりである。 b 後者の「通信システム」は、情報を提供するものであることは自明のことであるから、前者の「情報提供システム」に相当する。 c 以上のことより、本件発明4と甲1-3発明とは、次の一致点1-3(請求項1を引用する場合)あるいは一致点1-4(請求項3を引用する場合)で一致し、相違点1-3、1-4で相違すると認める。 〔一致点1-3〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、開口したシールド部と、 を備え、 前記物品が載置手段に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置を備える情報提供システム。」 〔一致点1-4〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、開口したシールド部と、 を備え、 前記シールド部は、前記電波を吸収する電波吸収層と前記電波を反射する電波反射層のいずれか一方または両方を含む、 前記物品が載置手段に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置を備える情報提供システム。」 〔相違点1-3〕 「開口したシールド部」、「載置手段」、及び、「RFタグから情報を読み取る」ことについて、 本件発明4は、それぞれ、 「上向きに」開口したシールド部であり、 「据置式の読取装置」に「備え」られる「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部」であって、 「前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るものであるのに対し、 甲1-3発明は、それぞれ、 「物品21に面する方向である横方向に」開口する透過領域を有している電波吸収体30(シールド部)であり、 「物品21が」「縦方向に積載され」る「台車」であって、 台車に積載された物品21が「リーダアンテナ24の前を通過」するときに、トランスポンダ23(RFタグ)の情報を読み取るものである点。 〔相違点1-4〕 本件発明4が、「前記情報に基づいて前記物品に関する情報を表示するタブレット端末と、を備える」という事項を有するのに対し、甲1-3発明は、当該事項の特定がない点。 (イ)判断 a まず、上記相違点1-4について検討する。 甲3の摘示(3a)?(3h)(特に摘示(3c)参照。)、甲4の摘示(4a)?(4h)(特に摘示(4a)、(4c)参照。)、甲5の摘示(5a)?(5f)(特に摘示(5b)参照。)、甲6の摘示(6a)?(6d)(特に摘示(6b)参照。)、甲7の摘示(7a)?(7e)(特に摘示(7d)参照。)、甲8の摘示(8a)?(8d)(特に摘示(8c)参照。)、甲11の摘示(11a)?(11e)(特に摘示(11d)参照。)に、RFタグを読み取ってRFタグが付された物品に関する情報を表示端末に表示する技術が示されており、当該技術はRFタグを用いる際の技術常識(以下「技術常識A」という。)といえるものである。 そして、甲4の摘示(4a)?(4c)、(4e)(「タブレットPC100b」が本件発明4の「タブレット端末」に相当する。)、甲8の摘示(8a)?(8d)(「タブレットコンピュータ」が本件発明4の「タブレット端末」に相当する。)に示されるように、RFタグの情報に基いて物品に関する情報を表示するタブレット端末を用いることは周知技術(以下「周知技術B」という。)であるといえる。 そして、甲1-3発明においても、上記技術常識Aに鑑みれば、「物品に関する情報」を表示するという要求は、当業者であれば十分把握可能な課題であり、このような課題を解決すべく、甲1-3発明に上記周知技術Bを適用して、上記相違点1-4に係る本件発明4の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 しかしながら、上記相違点1-3については、上記相違点1-1と実質的に同一であり、その判断については、上記「ア(イ)」で述べたとおりである。 したがって、本件発明4は、甲1-3発明、甲1に記載された技術的事項、甲3?8、11に示される技術常識、及び、甲4、8に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 b 請求人は、審判請求書の36ページ末行?37ページ8行等において、甲5、甲11にもタブレット端末に係る技術が記載されている旨主張するので、以下検討すると、まず、甲12の「タブレット型端末とは、PCやモバイル端末のうち、タッチインターフェースを搭載した液晶でディスプレイを主な入出力インターフェースとする、板状の、持ち運び可能なコンピュータの総称である。」との記載、及び、甲13の「タブレット端末 タブレット(平板)型でキーボードは付いておらず、液晶の画面に指先をあてながら操作する『タッチパネル』が採用されている。ノートパソコンより小さく軽いため、片手で持ちながら利用できる。」、「タブレットたんまつ【タブレット端末】 薄い板状の筐体(きょうたい)をもつ、軽量のパソコンの一種。筐体の片側前面が液晶画面になっており、キーボードはなく、タッチパネル式の入力インターフェースをもつ。バッテリーが内蔵されており、持ち運びに向く。」との記載に示されるように、「タブレット端末」とは、一般的には、タッチパネル式の入力インターフェースを有する持ち運び可能な板状のコンピュータを示す用語であるといえる。 しかしながら、甲5の記載を検討しても、タッチパネル付きディスプレイ7を設けた「決済処理部37」が、筐体51の天板52から取り外して任意に持ち運び可能なコンピュータであることまでは記載されておらず、当該「決済処理部37」が、一般的意味でいうタブレット端末であることが記載されているとはいえない。同様に、甲11の記載を検討しても、タッチパネルとしての機能を有する表示パネル111を備えた「コンソール11」が、ショッピングカート1から取り外して任意に持ち運び可能なコンピュータであることまでは記載されておらず、当該「コンソール11」が、一般的意味でいうタブレット端末であることが記載されているとはいえない。 そして、本件の願書に添付された明細書の段落【0024】の「モバイル端末22は、店舗の店員S (図1(b)が所有するタブレット端末やスマートフォンなどのスマートデバイスであって、図2に示すように、主に、CPU66と、メモリ68と、wifiモジュール70と、液晶ディスプレイ72と、タッチセンサ74と、を備えるコンピュータによって実現されている。」という記載及び次に示す【図1】の記載からみて、本件特許において、タブレット端末という用語について、一般的な意味と異なる定義(例えば、単に形状が板状であるタッチパネル式の端末)がされているとも認められないことから、上記主張は採用できない。 【図1】 エ 無効理由1-5(29条2項) (ア)対比 本件発明5と甲1-3発明とを対比する。 a 本件発明5の事項のうち、本件発明1あるいは本件発明3の事項との対比については、上記「ア(ア)」、「イ(ア)」のとおりである。 b 後者の「通信システム」は、情報を提供するものであることは自明のことであるから、前者の「情報提供システム」に相当する。 c 以上のことより、本件発明5と甲1-3発明とは、本件発明5が請求項1を引用する場合、次の一致点1-5で一致し、相違点1-5、1-6で相違し、また、本件発明5が請求項3を引用する場合、一致点1-6で一致し、相違点1-5、1-6で相違すると認める。 〔一致点1-5〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、開口したシールド部と、 を備え、 前記物品が載置手段に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置を備える情報提供システム。」 〔一致点1-6〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、開口したシールド部と、 を備え、 前記シールド部は、前記電波を吸収する電波吸収層と前記電波を反射する電波反射層のいずれか一方または両方を含む、 前記物品が載置手段に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置を備える情報提供システム。」 〔相違点1-5〕 「開口したシールド部」、「載置手段」、及び、「RFタグから情報を読み取る」ことについて、 本件発明5は、それぞれ、 「上向きに」開口したシールド部であり、 「据置式の読取装置」に「備え」られる「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部」であって、 「前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るものであるのに対し、 甲1-3発明は、それぞれ、 「物品21に面する方向である横方向に」開口する透過領域を有している電波吸収体30(シールド部)であり、 「物品21が」「縦方向に積載され」る「台車」であって、 台車に積載された物品21が「リーダアンテナ24の前を通過」するときに、トランスポンダ23(RFタグ)の情報を読み取るものである点。 〔相違点1-6〕 本件発明5が、「前記情報に基づいて前記物品に関する情報を表示するモバイル端末と、を備える」という事項を有するのに対し、甲1-3発明は、当該事項の特定がない点。 (イ)判断 a まず、上記相違点1-6について検討する。 甲4の摘示(4a)?(4d)(「タブレットPC」は「モバイル端末」の一種である。)、甲8の摘示(8a)?(8d)(「スマートフォン」、「タブレットコンピュータ」、「ウェアラブルコンピュータデバイス」はいずれも「モバイル端末」の一種である。)に示されるように、RFタグの情報に基いて物品に関する情報を表示するモバイル端末を用いることは周知技術(以下「周知技術C」という。)であるといえる。 そして、上記「ウ(イ)」で述べたように、甲1-3発明においても、上記技術常識Aに鑑みれば、「物品に関する情報」を表示するという要求は、当業者であれば十分把握可能な課題であり、このような課題を解決すべく、甲1-3発明に上記周知技術Cを適用して、上記相違点1-3に係る本件発明4の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 しかしながら、上記相違点1-5については、上記相違点1-1と実質的に同一であり、その判断については、上記「ア(イ)」で述べたとおりである。 したがって、本件発明5は、甲1-3発明、甲1に記載された技術的事項、甲3?8、11に示される技術常識、及び、甲4、8に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 b なお、請求人は、審判請求書の36ページ末行?37ページ8行等において、甲5、甲11にもモバイル端末に係る技術が記載されている旨主張するが、上記「ウ(イ)b」と同様に、それら証拠に「決済処理部37」や「コンソール11」が持ち運び可能なものであることは記載されておらず、それら証拠にモバイル端末が記載されているとはいえないことから、上記主張は採用できない。 オ 小括 以上のとおり、本件発明1、3?5は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。 したがって、本件発明1、3?5についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当しないから、無効とすることはできない。 よって、請求人が主張する無効理由1-1、1-3、1-4、1-5は、いずれも理由がない。 (2)無効理由2(甲2を主引例)について ア 無効理由2-1(29条1項3号、29条2項) (ア)対比 本件発明1と甲2-1発明とを対比する。 a 後者の「物品」は、前者の「物品」に相当し、以下同様に、「RFIDタグ」は、「RFタグ」に、「アンテナ102」は、「アンテナ」に、「導電性シールド104」は、「シールド部」にそれぞれ相当する。 また、後者の「RFIDタグとの通信」や「RFIDタグの」「読み取り」ということは、「RFIDタグ」の情報を読み取るものであることが、技術的に明らかである。 b 上記aを踏まえると、「RFIDシステムの返却/貸出領域100におけるRFIDリーダが設置される机」は、「RFIDリーダ」を含むものであり、「RFIDタグ」の情報を読み取るものであるから、前者の「読取装置」に相当する。 c 後者の「RFIDシステムの返却/貸出領域100におけるRFIDリーダが設置される机」は、「据置式」といえるものである。 そうすると、上記a、bを踏まえると、後者の 「物品内に埋め込まれるRFIDタグとの通信用の電磁界を形成するアンテナ102であって、実質的に平面形状を有するアンテナ102と、」 「を備えるRFIDシステムの返却/貸出領域100におけるRFIDリーダが設置される机であって」 ということは、前者の 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、」 「を備え」 ていることに相当するといえる。 d 上記aを踏まえると、後者の「前記アンテナ102の周囲であって、前記アンテナ102に平行な面内に位置決めされた」ものであり、「アンテナ102と導電性シールド104とが、表面106の下方に取り付けられ」る「実質的に連続する導電性シールド104」と、前者の「前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部」とは、「シールド部」であることにおいて共通するといえる。 e 後者の「RFIDタグ」を読み取るのは「規定された通信ゾーン107」内であることは自明のことであるが、読み取りの際に、当該「規定された通信ゾーン107」に対応する「表面106」の箇所に「物品」を載置するかどうかまでは特定されていない。 そうすると、上記aを踏まえると、後者の 「アンテナ102と導電性シールド104とが、表面106の上方にRFIDタグ通信ゾーン107を生成し、 導電性シールド104は規定された通信ゾーン107を超える領域108におけるRFIDタグの不用意な読み取りを防止する」 ことと、前者の 「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部と、 を備え、 前記物品が前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る」 こととは、 「前記RFタグから情報を読み取る」 ことであることにおいて共通するといえる。 f 以上のことより、本件発明1と甲2-1発明とは、次の一致点2-1で一致し、相違点2-1で相違すると認める。 〔一致点2-1〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 シールド部と、 を備え、 前記RFタグから情報を読み取る、読取装置。」 〔相違点2-1〕 「シールド部」、及び、「RFタグから情報を読み取る」ことについて、 本件発明1は、それぞれ、 「前記アンテナを収容し、上向きに開口した」シールド部であり、 「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部と、を備え、前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るものであるのに対し、 甲2-1発明は、それぞれ、 「前記アンテナ102の周囲であって、前記アンテナ102に平行な面内に位置決めされた」ものであり、「アンテナ102と」とともに「表面106の下方に取り付けられ」る「実質的に連続する導電性シールド104」であり、 読み取りの際の具体的な態様が明らかでない点。 (イ)判断 a 29条1項3号について 本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、上記相違点2-1が存在する。 そして、次の「b(a)」で述べるように、上記相違点2-1に係る本件発明1の事項のうち、少なくとも「前記物品が載置される載置部と、を備え、前記物品が前記載置部に載置された状態で」読み取るという事項を除いたものは実質的な相違点であるから、本件発明1は甲2-1発明であるとはいえない。 b 29条2項について 上記相違点2-1について検討する。 (a)まず、相違点2-1に係る本件発明1の事項のうちの「前記物品が載置される載置部と、を備え、前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るという事項(以下「事項A」という。)について検討する。 甲2-1発明は、「机」に係るものであり、「物品」としては具体的には段落【0014】(摘示(2b))に「本、書類、ファイル」が例示されている。そして、甲2-1発明は、そのような「物品」を「机」の「規定された通信ゾーン107」に対応する「表面106」の箇所に載置してRFIDタグを読み取るという使用形態が可能な構成であり、また、具体的に例示されている「物品」の種類からみても、そのような使用形態が自然であると解される。 そうすると、甲2-1発明の「規定された通信ゾーン107」に対応する「表面106」の箇所が、本件発明1の「載置部」に相当することになり、甲2-1発明も実質的に上記事項Aに相当する構成を有しているといえる(なお、被請求人の令和2年9月7日付け回答書の6ページ下から3行?7ページ1行に「請求人は請求人回答書の第8頁第6?8行において、表面106の通信ゾーンがRFIDタグの付された物品の『載置部』といえると主張する。物品は確かにかかる通信ゾーンに載置されるものであるが、」と記載されており、上記の使用形態は被請求人も認めるところである。)。 仮に、甲2-1発明が上記事項Aを実質的に有しているとまではいえないとしても、甲2-1発明において、上記の使用形態として、上記事項Aを有するものとすることは、当業者であれば所望により適宜なし得た程度のことである。 (b)次に、当該相違点2-1のうちの上記事項A以外の「前記アンテナを収容し、上向きに開口した」シールド部、及び、「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ」、「前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るという事項について、「収容」の字義は、「人や物品を一定の位置におさめ入れること。」(広辞苑第六版)であること、「開口」の字義は、「外に向かって穴が開くこと。また、その穴。」(広辞苑第六版)であることを踏まえて以下検討する。 i 甲2-1発明の「導電性シールド104」について検討すると、前提として「アンテナ102」は「実質的に平面形状を有する」ものであるから、高さ方向の厚みはさほどないものと解され、「導電性シールド104」は「前記アンテナ102の周囲であって、前記アンテナ102に平行な面内に位置決めされた」ものであるから、当該「導電性シールド104」も高さ方向の厚みはさほどないものと解される。 そのような理解は、甲2-1発明の前提となる、甲2の段落【0024】(摘示(2e))の「導電性シールド16をアンテナ13に平坦に且つ通常は取り囲むように配置して、電磁界がアンテナの周縁部を越えて水平に延びないようにする。その結果、通常はアンテナ13の上方および下方に突出し、RFIDタグを読み取ることができる、通常は垂直通信ゾーンを規定する電磁界が生成される。」という記載とも整合するものである。 そうすると、甲2-1発明の「導電性シールド104」は、「電磁界がアンテナの周縁部を越えて水平に延びないようにする」ことに足りる程度の高さで、単に「実質的に平面形状のアンテナ102」とともに、当該「アンテナ102」の周囲を取り囲むように「表面106」の下方に取り付けられているにすぎず、そのような態様のものは、「アンテナ102」を「収容」(すなわち、「アンテナ102」をおさめ入れる)しているとはいえないので、甲2発明の「導電性シールド104」(シールド部)は、上記相違点2-1に係る本件発明1の「前記アンテナを収容し」ていることに相当する事項を有しているとはいえない。 そして、甲2-1発明において、「導電性シールド104」が「アンテナ102」を収容するように「導電性シールド104」の高さ方向の厚みを大きくするよう変更することを検討しても、上記段落【0024】に記載されるように、そもそも「導電性シールド」は「電磁界がアンテナの周縁部を越えて水平に延びないようにす」れば足りるのであり、さらに、高さ方向の厚みを大きくしようとする場合、甲2-1発明の「アンテナ102と導電性シールド104とが、表面106の下方に取り付けられ」ているという構成からみて、大きくする方向は「表面106」に対し下向きの方向であって、RFIDタグを読み取る側である上向きの方向ではないのであるから、仮に高さ方向の厚みを大きくしたところで、甲2発明が課題とする段落【0007】(摘示(2b))に記載の「アンテナの隣に配置された物品は、リーダによって不用意に読み取られる」ことを防止する性能が特に向上するわけでもないと解されることから、あえてそのように変更する動機付けがあるとはいえない。 ii また、甲2-1発明における「導電性シールド104」が「実質的に連続する」という事項について検討すると、甲2において、「連続する」の前に「実質的に」を付加しているのは、具体的には、段落【0035】(摘示(2f))の「導電性シールド66は、閉ループがアンテナ60の周囲に形成されるのを防止する切断領域63を含むことにより、電流が導電性シールド内に生じるのを防止する。一般に、切断領域63は導電性シールド66内に電気的切断を生成するのに十分であるとともに、導電性シールドの遮蔽効果を実質的に低減しない最小距離D4の間隙を有し得る。」との記載及び【図5】(摘示(2i))の記載より、完全には連続していないことを示すものと解される。 そうすると、甲2-1発明の「導電性シールド104」は、完全には連続していないものであるから、「穴」を有する態様とはなっておらず、外に向かって開く「穴」すなわち「開口」をそもそも有しているとはいえず、したがって、「上向きの開口」を有しているとはいえない。 よって、甲2-1発明は、上記相違点2-1に係る本件発明1の「上向きに開口したシールド部」に相当する事項を有しているとはいえない。また、甲2-1発明の「導電性シールド104」は「開口」を有していないから、甲2-1発明の「規定された通信ゾーン107」に対応する「表面106」の箇所(載置部)も、同様に、上記相違点2-1に係る本件発明1の「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ」ることに相当する事項を有しているとはいえない。 そして、甲2-1発明において、開口を有するように「完全に連続する」よう変更することを検討すると、上記段落【0035】の「電流が導電性シールド内に生じるのを防止する」という記載に鑑みれば、電流が「導電性シールド104」内に生じるおそれがあるため、そのような変更をする動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害要因があるといえる。 iii したがって、本件発明1は、甲2-1発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 iv また、請求人は、甲1を周知技術の参考文献として、「甲2において、電波の指向性を高めるために、甲2のアンテナとシールディングの構成を、甲1の図2、【0076】に記載された『アンテナ24を電波吸収体30の底面に設けて開口部(透過領域)から電波を放射する』構成とすることは、容易想到です。」(令和2年7月27日付け回答書9ページ下から4行?末行)とも主張する。 しかしながら、上記(b)で述べたとおり、甲2-1発明においては、そもそも「導電性シールド」の機能としては「電磁界がアンテナの周縁部を越えて水平に延びないようにす」ればよく、「導電性シールド104」は「前記アンテナ102の周囲であって、前記アンテナ102に平行な面内に位置決めされた」もので足りるのである。 そうすると、甲1に示される「リーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設け、側面部分や背面部分に電波吸収体30が存在」するという技術(上記「甲1-1技術」も参照。)が周知技術といえたとしても、甲2-1発明の「表面106の下方に取り付けられ」た「アンテナ102」を、「表面106」から分離してまで、当該技術を適用する動機付けがあるとはいえないので、上記主張は採用できない。 v したがって、本件発明1は、甲2-1発明及び周知技術(甲1参考)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 無効理由2-4(29条2項) (ア)対比 本件発明4と甲2-2発明とを対比する。 a 本件発明4の事項のうち、本件発明1の事項との対比については、上記「ア(ア)」のとおりである。 b 後者の「RFIDシステム2」は、情報を提供するものであることは自明のことであるから、前者の「情報提供システム」に相当する。 c 以上のことより、本件発明4と甲2-2発明とは、次の一致点2-2で一致し、相違点2-2、2-3で相違すると認める。 〔一致点2-2〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 シールド部と、 を備え、 前記RFタグから情報を読み取る、読取装置を備える情報提供システム。」 〔相違点2-2〕 「シールド部」、及び、「RFタグから情報を読み取る」ことについて、 本件発明4は、それぞれ、 「前記アンテナを収容し、上向きに開口した」シールド部であり、 「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部と、を備え、前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るものであるのに対し、 甲2-2発明は、それぞれ、 「前記アンテナ102の周囲であって、前記アンテナ102に平行な面内に位置決めされた」ものであり、「アンテナ102と」とともに「表面106の下方に取り付けられ」る「実質的に連続する導電性シールド104」であり、 読み取りの際の具体的な態様が明らかでない点。 〔相違点2-3〕 本件発明4が、「前記情報に基づいて前記物品に関する情報を表示するタブレット端末と、を備える」という事項を有するのに対し、甲2-2発明は、当該事項の特定がない点。 (イ)判断 a まず、上記相違点2-3について検討する。 上記「(1)ウ(イ)a」で述べたのと同様の理由により、甲2-2発明においても、上記技術常識Aに鑑みれば、「物品に関する情報」を表示するという要求は、当業者であれば十分把握可能な課題であり、このような課題を解決すべく、甲2-2発明に上記周知技術B((1)ウ(イ)a)を適用して、上記相違点2-2に係る本件発明4の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 しかしながら、上記相違点2-2については、上記相違点2-1と実質的に同一であり、その判断については、上記「ア(イ)b」で述べたとおりである。 したがって、本件発明4は、甲2-2発明、甲2に記載された技術的事項または周知技術(甲1参考)、甲3?8、11に示される技術常識、及び、甲4、8に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、甲5、甲11については、上記「(1)ウ(イ)b」で述べたのと同様である。 ウ 無効理由2-5(29条2項) (ア)対比 本件発明5と甲2-2発明とを対比する。 a 本件発明5の事項のうち、本件発明1の事項との対比については、上記「ア(ア)」のとおりである。 b 後者の「RFIDシステム2」は、情報を提供するものであることは自明のことであるから、前者の「情報提供システム」に相当する。 c 以上のことより、本件発明5と甲2-2発明とは、次の一致点2-3で一致し、相違点2-4、2-5で相違すると認める。 〔一致点2-3〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 シールド部と、 を備え、 前記RFタグから情報を読み取る、読取装置を備える情報提供システム。」 〔相違点2-4〕 「シールド部」、及び、「RFタグから情報を読み取る」ことについて、 本件発明5は、それぞれ、 「前記アンテナを収容し、上向きに開口した」シールド部であり、 「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品が載置される載置部と、を備え、前記物品が前記載置部に載置された状態で」RFタグから情報を読み取るものであるのに対し、 甲2-2発明は、それぞれ、 「前記アンテナ102の周囲であって、前記アンテナ102に平行な面内に位置決めされた」ものであり、「アンテナ102と」とともに「表面106の下方に取り付けられ」る「実質的に連続する導電性シールド104」であり、 「規定された通信ゾーン107」に対応する「表面106」の箇所を「物品」を載置する載置部とし、「物品」が当該載置部に載置された状態で読み取るのか明らかでない点。 〔相違点2-5〕 本件発明5が、「前記情報に基づいて前記物品に関する情報を表示するモバイル端末と、を備える」という事項を有するのに対し、甲2-2発明は、当該事項の特定がない点。 (イ)判断 まず、上記相違点2-5について検討する。 上記「(1)エ(イ)a」で述べたのと同様の理由により、甲2-2発明においても、上記技術常識Aに鑑みれば、「物品に関する情報」を表示するという要求は、当業者であれば十分把握可能な課題であり、このような課題を解決すべく、甲2-2発明に上記周知技術Cを適用して、上記相違点2-3に係る本件発明5の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 しかしながら、上記相違点2-4については、上記相違点2-1と実質的に同一であり、その判断については、上記「ア(イ)b」で述べたとおりである。 したがって、本件発明5は、甲2-2発明、甲2に記載された技術的事項または周知技術(甲1参考)、甲3?8、11に示される技術常識、及び、甲4、8に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、甲5、甲11については、上記「(1)エ(イ)b」で述べたのと同様である。 エ 小括 以上のとおり、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法第29条第1項の規定により、特許を受けることができないとはいえず、また、本件発明1、4、5は、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。 したがって、本件発明1、4、5についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当しないから、無効とすることはできない。 よって、請求人が主張する無効理由2-1、2-4、2-5は、いずれも理由がない。 (3)無効理由3(甲3を主引例)について ア 無効理由3-2(29条2項) (ア)対比 本件発明2と甲3-1発明とを対比する。 a 後者の「商品32」及び「買上げ商品32」は、前者の「物品」に相当し、以下同様に、「商品識別用RFIDタグ33」は、「RFタグ」に、商品識別用RFIDタグ33の「メモリデータ」は、「情報」に、「タグ交信用アンテナ30」は、「アンテナ」に、「買い物籠36」は、「買物カゴ」にそれぞれ相当する。 b 上記aを踏まえると、後者の「RFIDタグリーダ12、及び、タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31」は、「商品識別用RFIDタグ33」の「メモリデータ」を読取るものであるから、前者の「読取装置」に相当する。 c 後者の「タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31」は、「店の会計場所に設けられた」ものであって、移動することは想定されていないから「据置式」であることが明らかである。そして、甲3には「RFIDタグリーダ12」がどこに設置されるのか明示がないものの、当該「RFIDタグリーダ12」は「タグ交信用アンテナ30」に「接続」されているものであり、「RFIDタグリーダ12」のみを移動式にする理由もないことから、常識的にみて「RFIDタグリーダ12、及び、タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31」は、「据置式」といえるものである。 そうすると、上記a、bを踏まえると、後者の 「各商品32に対してそれぞれ商品識別用RFIDタグ33が設けられ、 各キャッシャがそれぞれ携帯するキャッシャカード34に対してそれぞれ取込許可用RFIDタグ35が設けられ、」 「RFIDタグリーダ12には、タグ交信用アンテナ30が接続され、」 「タグ交信用アンテナ30は、店の会計場所に設けられたレジカウンタ31に埋め込まれている、 RFIDタグリーダ12、及び、タグ交信用アンテナ30が埋め込まれたレジカウンタ31であって」 ということと、前者の 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部と、」 「を備え」 ていることとは、 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、」 「を備え」 ていることにおいて共通するといえる。 d 後者の「レジカウンタ31のアンテナ埋設部」は、「客の買上げ商品32を収容した買い物籠36が」「置かれる」ものであるから、前者の「載置部」に相当するといえる。 そうすると、上記a、cを踏まえると、後者の 「客の買上げ商品32を収容した買い物籠36がレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置かれると、この買い物籠36に収容されている各商品32にそれぞれ付されている商品識別用RFIDタグ33のメモリデータがRFIDタグリーダ12により一括して読取られ」 ることと、前者の 「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ、前記物品を収容する買物カゴが載置される載置部と、 を備え、 前記買物カゴが前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る」 こととは、 「前記物品を収容する買物カゴが載置される載置部と、 を備え、 前記買物カゴが前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る」 ことにおいて共通するといえる。 e 以上のことより、本件発明2と甲3-1発明とは、次の一致点3-1で一致し、相違点3-1で相違すると認める。 〔一致点3-1〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記物品を収容する買物カゴが載置される載置部と、 を備え、 前記買物カゴが前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置。」 〔相違点3-1〕 本件発明2が、「前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部と」を備えており、載置部は「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ」るという事項を有するものであるのに対し、甲3-1発明は、当該事項の特定がない点。 (イ)判断 甲3-1発明は、甲3の段落【0005】?【0007】(記載事項(3b))に記載される「RFIDタグリーダも常に読取りのスタンバイ状態とすることが考えられる。しかしその場合には、代金精算以外の目的でレジカウンタに商品を載せたり商品を近づけたりすると、その商品に付されたRFIDタグのデータが読取られ、POS端末に入力されてしまうといった問題が生じる。このため、POS端末に設けられた特定のキーが操作されると、RFIDタグリーダを一定時間読取り動作させるように構成することによって、不要なデータがPOS端末に入力されるのを防止する技術が従来知られていた・・・しかしながら、特定のキー操作に応じてRFIDタグリーダを読取り動作させる構成では、キー操作があって初めてRFIDタグリーダは読取りのスタンバイ状態となり、その後、アンテナの交信領域内にRFIDタグが近づくとそのタグデータを読取っていたので、RFIDタグリーダの立ち上がりが遅いという問題があった。・・・本発明はこのような事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、RFIDタグリーダを常に読取りのスタンバイ状態としておいても、不要なRFIDタグデータがRFIDタグリーダの接続機器に供給されることがないRFIDタグリーダ制御装置及びRFIDタグリーダ制御プログラムを提供しようとするものである。」ということを課題として発明されたものである。 そして、当該課題を解決するために、「各キャッシャがそれぞれ携帯するキャッシャカード34に対してそれぞれ取込許可用RFIDタグ35」を用いて、「客が買上げ商品32の代金を精算するためにレジカウンタに来ると、POS端末11を操作するキャッシャは、キャッシャカード34をレジカウンタ31のアンテナ埋設部に置き、このキャッシャカード34に付されている取込許可用RFIDタグ35のデータがRFIDタグリーダ12によって読取られ、これにより、ドライバ16の動作モードがデータ取込モードとなり、その後、ドライバ16から制御部13に登録開始コマンドに出力され、制御部13では、1商取引の商品登録に備えるために取引メモリが初期化され、」「キャッシャカード34に付されている取込許可用RFIDタグ35のメモリデータが読取られていない限り、一括読取されたRFIDタグのメモリデータはドライバ16で破棄される」という構成を採用しているものである。 すなわち、甲3-1発明は、「キャッシャ」が「客」を確認してから、「キャッシャカード34」を「アンテナ埋設部」に置くという操作をすることによって「データ取込モード」になるのであって、その操作なしでは、常に読み取り可能な状態である「RFIDタグリーダ12」及び「タグ交信用アンテナ30」により、「キャッシャ」が会計を意図しない状況で「商品32」に設けられた「商品識別用RFIDタグ33」のメモリデータが読み取られることがあっても、そのメモリデータは破棄されるものであるから、不要な「商品識別用RFIDタグ33」のメモリデータの供給を防止するために、シールド部等他の手段を更に設けようとすることの動機付けがあるとまでは直ちにはいえない。 b 請求人は、甲1、2、4?7を示して、「すなわち、甲1、甲2、甲4?甲7に記載されているように、RFタグ読取装置においては『RFタグ読取空間外の他のRFタグの読み取りを防止する必要』があることは周知であり、これはRFタグ読取装置における普遍的な課題といえる。この課題は、甲3発明?1の技術においても、当然に存在する課題である。」(審判請求書40ページ18?21行)と主張し、上記「2(1)、(2)、(4)?(7)」における各記載事項からみて、それら各証拠からそのような課題が把握できる。 しかしながら、被請求人が答弁書13ページ14行?14ページ16行で主張するように、請求人の主張する「RFタグ読取空間外の他のRFタグの読み取りを防止する必要」という課題に言及することがなく、他のRFタグの読み取りを防止する手段を有していない文献も複数存在し、また、RFタグ読取装置は種々の状況で使用されることが想定され、読取空間外の近傍に別のRFタグが存在しないこともあり得るのであるから、当該課題は、「周知の課題」とはいえても「普遍的な課題」であるとまではいえない。 したがって、「RFタグ読取空間外の他のRFタグの読み取りを防止する必要」という課題が周知の課題であるとして、以下、甲1、2に記載された技術的事項の適用について検討する。 c まず、甲1について検討すると、甲1には上記「2(1)ウ(ア)」で述べた甲1-1技術が記載されていると認める(本件発明2のうち本件発明1と同様の事項と甲1-1技術の対応については、上記「(1)ア(ア)」も参照。)。 c-1 上記aで述べたように、甲3-1発明は、シールド部等他の手段を更に設ける必要がないものであるから、上記bで述べた周知の課題があったとしても、甲3-1発明に甲1-1技術を適用する動機付けがあるとまでは直ちにはいえない。 また、甲3-1発明が、「レジカウンタ31」に置かれた「客の買上げ商品32を収容した買い物籠36」を置いて「商品識別用RFIDタグ33」(本件発明2の「RFタグ」に相当する。以下、かっこ書きで本件発明2の事項に相当する構成を記載することもある。)の「メモリデータ」(情報)を読み取るものであるのに対し、甲1-1技術は、「物品21が台車に縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過し」て、「RFIDによって実現される」「トランスポンダ23」(RFタグ)の「物品21の情報を表す応答信号」(情報)を読み取るというものであり、前提構成を大きく異にするものであって、この点からみても、甲3-1発明に甲1-1技術を適用する動機付けがあるとまでは直ちにはいえない。 c-2 仮に、上記周知の課題に鑑み、甲3-1発明において、さらに読み取りの範囲を限定する要求があったとして、甲3-1発明に甲1-1技術の「電波吸収体30」(シールド部)に係る事項を適用したとしても、甲1-1技術の「電波吸収体30」は「物品21に面する方向である横方向に開口する透過領域を有している」ものであるから、適用により得られるものは、「タグ交信用アンテナ30」(アンテナ)を収容し、横方向に開口する「電波吸収体」(シールド部)を「レジカウンタ31」における「買い物籠36」が置かれる箇所(載置部)に対し横方向に配置したものとなり、上記相違点3-1に係る本件発明3の事項を有するものには至らない。 c-3 また、甲3-1発明の「タグ交信用アンテナ30は、店の会計場所に設けられたレジカウンタ31に埋め込まれている」という事項を維持したまま、甲1-1技術の適用を想定すると、甲1-1技術から「リーダアンテナ24」の位置を変更したものを、さらに甲3-1発明に適用するということになり、当業者であっても容易想到とはいえない。 さらに、上記「(1)ア(イ)b」で述べたように、甲1-1技術において、「台車」がその上を移動する床状の部材(「(1)ア(イ)b」では便宜的に「搬送床」と称した。)を載置部とすることは、甲1に記載されているとはいえないし、また、容易想到ともいえないことから、甲1-1技術は、上記相違点3-1に係る本件発明2の事項を示唆するものでなく、甲3-1発明において、上記相違点3-1に係る本件発明2の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。 c-4 また、甲1-1技術の適用にあたり、甲3-1発明の「タグ交信用アンテナ30は、店の会計場所に設けられたレジカウンタ31に埋め込まれている」という事項から、「タグ交信用アンテナ30」を「レジカウンタ31に埋め込まれる」という事項を変更して「レジカウンタ31」の下方へ移設して、「レジカウンタ31」の「アンテナ埋設部」に相当する箇所を、本件発明2の「載置部」とすることを検討しても、甲3-1発明から「タグ交信用アンテナ30」の位置を変更したものに、さらに甲1-1技術を適用することになり、当業者であっても容易想到とはいえない。 さらに、上記c-3と同様の理由により、甲1-1技術は、上記相違点3-1に係る本件発明2の事項を示唆するものでなく、甲3-1発明において、上記相違点3-1に係る本件発明2の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。 d 次に、甲2について検討すると、甲2には上記「2(2)ウ(ア)」で述べた甲2-1技術が記載されていると認める(本件発明2のうち本件発明1と同様の事項と甲2-1技術の対応については、上記「(2)ア(ア)」も参照。)。 d-1 上記aで述べたように、甲3-1発明は、シールド部等他の手段を更に設ける必要がないものであるから、上記bで述べた周知の課題があったとしても、甲3-1発明に甲2-1技術を適用する動機付けがあるとまでは直ちにはいえない。 d-2 仮に、上記周知の課題に鑑み、甲3-1発明において、さらに読み取りの範囲を限定する要求があったとして、甲2の段落【0024】(摘示(2e))に「アンテナ13を机面15上、内または下にほぼ水平に載置し得る」と記載されていることから、「レジカウンタ31」に「アンテナ30が埋め込まれた」甲3-1発明に、甲2-1技術の「導電性シールド104」(シールド部)に係る事項の適用が、当業者にとって容易想到とした場合であったとしても、甲2-1技術の「導電性シールド104」は、上記「(2)ア(イ)b」で述べたとおり、本件発明2の「前記アンテナを収容し」ていることに相当する事項を有しているとはいえないし、また、「上向きに開口した」ということに相当する事項を有しているともいえず、当然載置部が「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ」ることに相当する事項を有しているともいえないので、上記相違点3-1に係る本件発明2の事項を有するものには至らない。 d-3 また、甲2-1技術の適用にあたり、甲2-1技術の「導電性シールド104」(シールド部)が「アンテナ102」(アンテナ)を収容し、かつ、「上向きに開口」するように変更して、甲3-1発明に適用することを検討しても、甲2-1技術の構成を変更した上で、甲3-1発明を適用するということになり、当業者であっても容易想到とはいえない。 さらに、そのようなことを検討したとしても、上記「(2)ア(イ)b」で述べたように、そもそも、甲2-1技術において、「導電性シールド104」(シールド部)が「アンテナ102」(アンテナ)を収容し、かつ、「上向きに開口」するように変更することは容易想到ともいえず、上記相違点3-1に係る本件発明2の事項を示唆するものではなく、甲3-1発明において、上記相違点3-1に係る本件発明2の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。 e したがって、本件発明2は、甲3-1発明、甲1、2、4?7に示された周知の課題及び甲1、2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 無効理由3-3(29条2項) (ア)対比 本件発明3と甲3-1発明とを対比する。 a 本件発明3の事項のうち、本件発明1の事項との対比については、上記「ア(ア)」のとおりである。 b 以上のことより、本件発明3と甲3-1発明とは、次の一致点3-2で一致し、相違点3-2、3-3で相違すると認める。 〔一致点3-2〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記物品を収容する買物カゴが載置される載置部と、 を備え、 前記買物カゴが前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置。」 〔相違点3-2〕 本件発明3が、「前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部と」を備えており、載置部は「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ」るという事項を有するものであるのに対し、甲3-1発明は、当該事項の特定がない点。 〔相違点3-3〕 本件発明3が、「前記シールド部は、前記電波を吸収する電波吸収層と前記電波を反射する電波反射層のいずれか一方または両方を含む」という事項を有するものであるのに対し、甲3-1発明は、当該事項の特定がない点。 (イ)判断 まず、相違点3-3について検討する。 上記「2(1)ウ(イ)」で述べたように、甲1には、「電波吸収体30は、導電性材料から成る電磁波反射層となる導体層35を有し、この導体層35の厚み方向の少なくとも一方側に積層された、吸収層36を有する」という事項を有する甲1-2技術が記載されており、本件発明3と甲1-2技術の対比については、上記「(1)イ(ア)」と同様であって、当該甲1-2技術は、上記相違点3-3に係る本件発明3の事項を有しているといえる。 しかしながら、相違点3-3が前提とする相違点3-2については、上記相違点3-1と実質的に同一であり、その判断については、上記「ア(イ)」のとおりである。 したがって、本件発明3は、甲3-1発明、甲1、2、4?7に示された周知の課題及び甲1、2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 無効理由3-4(29条2項) (ア)対比 本件発明4と甲3-2発明とを対比する。 a 本件発明4の事項のうち、本件発明2あるいは本件発明3の事項との対比については、上記「ア(ア)」、「イ(ア)」のとおりである。 b 後者の「RFIDタグリーダシステム」は、情報を提供するものであることは自明のことであるから、前者の「情報提供システム」に相当する。 c 以上のことより、本件発明4と甲3-2発明とは、本件発明4が本件発明2を引用する場合、次の一致点3-3で一致し、相違点3-4、3-5で相違し、また、本件発明4が本件発明3を引用する場合、一致点3-3で一致し、相違点3-4、3-6、3-5で相違すると認める。 〔一致点3-3〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記物品を収容する買物カゴが載置される載置部と、 を備え、 前記買物カゴが前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置。」 〔相違点3-4〕 本件発明4が、「前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部と」を備えており、載置部は「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ」るという事項を有するものであるのに対し、甲3-2発明は、当該事項の特定がない点。 〔相違点3-5〕 本件発明4が、「前記情報に基づいて前記物品に関する情報を表示するタブレット端末と、を備える」という事項を有するのに対し、甲3-2発明は、当該事項を有していない点。 〔相違点3-6〕 本件発明4が、「前記シールド部は、前記電波を吸収する電波吸収層と前記電波を反射する電波反射層のいずれか一方または両方を含む」という事項を有するものであるのに対し、甲3-2発明は、当該事項の特定がない点。 (イ)判断 a まず、上記相違点3-5について検討する。 甲3-2発明は、表示に関して、「表示部19」を有する「POS端末11」を用いているものであり、当該「表示部19」が「商品32」に関する情報を表示するものであることは、POS端末の表示部に係る技術常識から自明のことである。 そして、当該「POS端末11」に対し、上記周知技術B((1)ウ(イ)a)を適用して、上記相違点3-5に係る本件発明4の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 しかしながら、上記相違点3-4、3-6については、上記相違点3-1、3-2と実質的に同一であり、その判断については、上記「ア(イ)」、「イ(イ)」で述べたとおりである。 したがって、本件発明4は、甲3-2発明、甲1、2、4?7に示された周知の課題、甲1、2に記載された技術的事項及び甲4、8に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、甲5、甲11については、上記「(1)ウ(イ)b」で述べたのと同様である。 b また、甲9の摘示(9a)(「タブレットPC」が「タブレット端末」に相当する。)、甲10の摘示(10a)(「タブレットPC」が「タブレット端末」に相当する。)には、タブレット端末をPOS端末として用いる技術的事項が記載されており、また、当該技術的事項は周知技術であるともいえる。 そして、上記aと同様に、甲3-2発明の「POS端末11」に対し、上記技術的事項ないし周知技術を適用して、上記相違点3-5に係る本件発明4の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 しかしながら、上記相違点3-4、3-6の判断については、上記aで述べたとおりである。 したがって、本件発明4は、甲3-2発明、甲1、2、4?7に示された周知の課題、甲1、2に記載された技術的事項及び甲9、10に記載された技術的事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 無効理由3-5(29条2項) (ア)対比 本件発明5と甲3-2発明とを対比する。 a 本件発明5の事項のうち、本件発明2あるいは本件発明3の事項との対比については、上記「ア(ア)」、「イ(ア)」のとおりである。 b 後者の「RFIDタグリーダシステム」は、情報を提供するものであることは自明のことであるから、前者の「情報提供システム」に相当する。 c 以上のことより、本件発明5と甲3-2発明とは、本件発明5が本件発明2を引用する場合、次の一致点3-5で一致し、相違点3-7、3-8で相違し、また、本件発明5が本件発明3を引用する場合、一致点3-5で一致し、相違点3-7、3-9、3-8で相違すると認める。 〔一致点3-5〕 「物品に付されたRFタグから情報を読み取る据置式の読取装置であって、 前記RFタグと交信するための電波を放射するアンテナと、 前記物品を収容する買物カゴが載置される載置部と、 を備え、 前記買物カゴが前記載置部に載置された状態で、前記RFタグから情報を読み取る、読取装置。」 〔相違点3-7〕 本件発明5が、「前記アンテナを収容し、上向きに開口したシールド部と」を備え、「載置部」が「前記シールド部の前記開口の上側に設けられ」るという事項を有するものであるのに対し、甲3-2発明は、当該事項の特定がない点。 〔相違点3-8〕 本件発明5が、「前記情報に基づいて前記物品に関する情報を表示するタブレット端末と、を備える」という事項を有するのに対し、甲3-2発明は、当該事項を有していない点。 〔相違点3-9〕 本件発明5が、「前記シールド部は、前記電波を吸収する電波吸収層と前記電波を反射する電波反射層のいずれか一方または両方を含む」という事項を有するものであるのに対し、甲3-2発明は、当該事項の特定がない点。 (イ)判断 a まず、上記相違点3-8について検討する。 上記「ウ(イ)a」で述べたのと同様の理由により、甲3-2発明の「POS端末11」に対し、上記周知技術C((1)ウ(イ)a)を適用して、上記相違点3-8に係る本件発明5の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 しかしながら、上記相違点3-7、3-9については、上記相違点3-1、3-2と実質的に同一であり、その判断については、上記「ア(イ)」、「イ(イ)」で述べたとおりである。 したがって、本件発明5は、甲3-2発明、甲1、2、4?7に示された周知の課題、甲1、2に記載された技術的事項及び甲4、8に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、甲5、甲11については、上記「(1)ウ(イ)b」で述べたのと同様である。 b また、甲9の摘示(9a)(「タブレットPCなどのモバイルコンピューティングデバイス」が「モバイル端末」に相当する。)、甲10の摘示(10a)(「タブレットPCやスマートフォンなどの電子機器」が「モバイル端末」に相当する。)には、モバイル端末をPOS端末として用いる技術的事項が記載されており、また、当該技術的事項は周知技術であるともいえる。 そして、上記aと同様に、甲3-2発明の「POS端末11」に対し、上記技術的事項ないし周知技術を適用して、上記相違点3-8に係る本件発明5の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことということができる。 しかしながら、上記相違点3-7、3-9の判断については、上記aで述べたとおりである。 したがって、本件発明5は、甲3-2発明、甲1、2、4?7に示された周知の課題、甲1、2に記載された技術的事項及び甲9、10に記載された技術的事項ないし周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 小括 以上のとおり、本件発明2?5は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。 したがって、本件発明2?5についての特許は、同法第123条第1項第2号に該当しないから、無効とすることはできない。 よって、請求人が主張する無効理由3-2、3-3、3-4、3-5は、いずれも理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件請求項1?5に係る発明についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2021-04-14 |
結審通知日 | 2021-04-19 |
審決日 | 2021-05-06 |
出願番号 | 特願2019-79933(P2019-79933) |
審決分類 |
P
1
113・
113-
Y
(G07G)
P 1 113・ 121- Y (G07G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 望月 寛 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 一ノ瀬 覚 |
登録日 | 2019-05-31 |
登録番号 | 特許第6532075号(P6532075) |
発明の名称 | 読取装置及び情報提供システム |
代理人 | 浅野 哲平 |
代理人 | 浅野 哲平 |
代理人 | 一宮 誠 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |