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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F21S
管理番号 1375572
審判番号 不服2020-9860  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-14 
確定日 2021-06-28 
事件の表示 特願2018-226881号「照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成31年4月4日出願公開、特開2019-54001号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月27日(以下「原出願日」という。)に出願した特願2013-111369号を原出願とし、さらに、特願2014?58429号(出願日:平成26年3月20日)、特願2017?136099号(出願日:平成29年7月12日)を新たな出願とした後に、同特願2017?136099号の一部を平成30年12月3日に新たな出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年12月 3日付け:上申書の提出
令和 1年 9月 5日付け:拒絶理由通知書
令和 1年11月 7日付け:意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月 7日付け:拒絶査定
令和 2年 7月14日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年7月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「【請求項1】
支持体とカバーと保持部材を有し、前記カバーが前記支持体に支持された基板を覆う長尺状の光源モジュールを着脱可能に支持する器具本体であって、
前記光源モジュールの少なくとも一部を収容する凹部を有する筐体と;
前記筐体に設けられ、前記凹部に収容された前記光源モジュールの前記保持部材と係合することにより、前記光源モジュールの前記凹部から抜ける方向への移動を規制する取付バネと;
を備え、
前記筐体は、
前記光源モジュールと対向する対向面と、前記対向面と反対側を向く反対面と、を有する底板部と、
前記底板部の両側端から前記対向面の向く方向に延び、前記底板部とともに前記凹部を形成する一対の側板部と、
前記一対の側板部の前記底板部と反対側の端部から前記反対面の向く方向かつ前記底板部よりも外側に向かって斜めに延びる一対の傾斜板部と、
前記一対の傾斜板部の前記一対の側板部と反対側の端部から前記一対の側板部側に向かって延びる一対の端板部と、
を有し、
前記一対の端板部は、前記底板部よりも前記反対面の向く側に位置し、前記筐体を天井に設置する際に、天井面に当接し、
前記底板部は、前記反対面よりも前記反対面の向く方向に突出した突起部を有し、
前記突起部は、前記取付ばねの近傍に設けられ、前記突起部の前記反対面からの高さは、前記一対の端板部の前記反対面からの高さ以下であることを特徴とする器具本体。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和1年11月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
長尺状の光源モジュールを着脱可能に支持する器具本体であって、
前記光源モジュールの少なくとも一部を収容する凹部を有する筐体と;
前記筐体に設けられ、前記凹部に収容された前記光源モジュールと係合することにより、前記光源モジュールの前記凹部から抜ける方向への移動を規制する取付バネと;
を備え、
前記筐体は、
前記光源モジュールと対向する対向面と、前記対向面と反対側を向く反対面と、を有する底板部と、
前記底板部の両側端から前記対向面の向く方向に延び、前記底板部とともに前記凹部を形成する一対の側板部と、
前記一対の側板部の前記底板部と反対側の端部から前記反対面の向く方向かつ前記底板部よりも外側に向かって斜めに延びる一対の傾斜板部と、
前記一対の傾斜板部の前記一対の側板部と反対側の端部から前記一対の側板部側に向かって延びる一対の端板部と、
を有し、
前記一対の端板部は、前記底板部よりも前記反対面の向く側に位置し、前記筐体を天井に設置する際に、天井面に当接し、
前記底板部は、前記反対面に設けられ、前記反対面よりも前記反対面の向く方向に突出した突起部を有し、
前記突起部の前記反対面からの高さは、前記一対の端板部の前記反対面からの高さ以下であることを特徴とする器具本体。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「長尺状の光源モジュール」に関し、「支持体とカバーと保持部材を有し、前記カバーが前記支持体に支持された基板を覆う」ことを限定し、「取付バネ」に関し、「光源モジュールの前記保持部材と係合すること」を限定し、「突起部」に関し、「前記突起部は、前記取付ばねの近傍に設けられ」ることを限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項等
(2-1)引用文献1
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の原出願日前に頒布された引用文献である、特開2012-3993号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同様。)

「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、LED等の発光素子を光源として用いる照明器具に関する。」

「【0011】
図1乃至図4において、天井面へ設置される天井直付けタイプの照明器具が示されており、この照明器具は、逆富士型をなしていて、横長であって長尺状をなす器具本体1と、この器具本体1に配設された光源部2及び点灯装置3と、光源部2を器具本体1に取付けて保持する係止部材4とを備えている。
【0012】
図6及び図7の参照を加えて示すように、器具本体1は、亜鉛めっき鋼板を折曲して形成され、長手方向に沿って略中央部に収容凹部11が形成されている。収容凹部11は、天板部11aと、この天板部11aの両側から前面側に直角に垂下するように折曲されて形成された側壁11bとから構成されている。また、収容凹部11の開口部側であって幅方向の両側、すなわち、側壁11bの前面側の両側は、側面視、略V字状に折曲されて収容凹部11に沿って側板部11cが形成されている。したがって、側板部11cは、側面形状が背面方向へ拡がる傾斜面を備えている。
【0013】
この収容凹部11及び側板部11cは板材を折曲して一体的に形成されており、少なくともこれらの前面側の表面は、光の反射率が高くなるように白色の塗装が施されている。したがって、側板部11cの傾斜面における表面は、反射面をなしていて、側板部11cは、反射板として機能するようになっている。
【0014】
収容凹部11の側板部11cにおける長手方向の両端部には、一対の係止爪通過孔11dが形成されている。この係止爪通過孔11dには、後述する係止部材4の係止爪4aが配置されるようになっている。また、この一対の係止爪通過孔11dと対向するように側板部11cには、解除孔11eが形成されている。この解除孔11eは、後述するように係止部材4の係止爪4aを解除操作するために用いられる。
【0015】
また、主として図2及び図6に示すように、器具本体1の背面側、すなわち、天板部11aの両端側には、一対の取付穴11fが形成されている。この取付穴11fには、天井の構造体に設けられた一対の取付ボルトBtが外面側から貫通し、器具本体1が天井面に設置されるようになっている。なお、取付穴11fの周囲には、取付穴11fを補強するために、背面側へドーム状に突出する補強部11gが形成されている。さらに、器具本体1の長手方向の両端には、略逆台形状の端板12が取付けられている。
光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とを備えている。
【0016】
図8及び図9の参照を加えて示すように、取付部材21は、器具本体1と同様に、横長であって長尺状に形成されており、長手方向に沿って平坦な取付面21aと、この取付面21aの両側から背面方向へ直角に立ち上がった第1の側壁21bと、この第1の側壁21bから水平方向に延出し、さらに背面方向に向かって内側に傾斜状に立ち上がった第2の側壁21cとを有している。また、第1の側壁21bにおける取付面21a側には、複数の切起し片21dが略等間隔に幅方向の外側に突出して形成されている。
取付部材21には、亜鉛めっき鋼板やアルミニウムの板材等の熱伝導が良好な材料が用いられている。
【0017】
基板23は、略長方形状に形成されており、複数、すなわち、4枚の基板23が直線状に並べられて取付部材21の取付面21aにねじ止め等によって、その裏面側が取付面21aに密着するように取付けられている。この基板23の表面側には、複数の発光素子22が実装されている。」

「【0023】
このように構成されたカバー部材24は、複数の発光素子22が実装された基板23を覆うように取付部材21に取付けられている。具体的には、図4に示すように、カバー部材24の一対の嵌合溝24aに取付部材21の切起し片21dがスライドして嵌合し、取付けられるようになっている。 以上のように、光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とが組合わされて一体化されて構成されている。」

「【0027】
係止部材4は、図12及び図13の参照を加えて示すように、ステンレス材料等のばね材によって略コ字状に折曲して形成されている。また、係止部材4の両端には、係止爪4aが内側に折曲して形成されている。この係止部材4は、図2乃至図4に示すように、器具本体1の収容凹部11の両端部側に外側から重合するように一対取付けられる。より詳しくは、図4に示すように、係止爪4aが収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置され、収容凹部11の外側にねじ等の固定手段(図3参照)によって取付けられるようになっている。
このように構成された係止部材4には、図5に示すように、光源部2が取付けられる。つまり、収容凹部11の開口部側を覆うように光源部2が配設される。
【0028】
光源部2を器具本体1に対して図示矢印方向に移動すると、取付部材21の傾斜状の第2の側壁21cが係止部材4の係止爪4aに当接する。この状態からさらに光源部2の移動を進め、係止爪4aの弾性に抗して収容凹部11に押し込むようにすることにより、係止爪4aが第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、光源部2が収容凹部11内へ移動する。そして、第2の側壁21cが所定量収容凹部11内へ入ると、係止爪4aの弾性変形が解かれ、取付部材21が係止爪4aによって所定位置に係合保持される(図4参照)。
この場合、第2の側壁21cは、傾斜状に形成されているので、係止爪4aとの関係において、光源部2の取付けを円滑に行うことができる。」

「【0030】
まず、設置にあたっては、図5に示すように、天井の構造体に設けられた一対の取付ボルトBtを外面側から器具本体1の天板部11aの取付穴11fに通し、この取付ボルトBtに天板部11aの内面側からワッシャを介してナットNtを締め付ける。これにより、天板部11aの外面側の補強部11g及び側板部11cの背面側一端部が天井面Cに密着して器具本体1は、天井面Cに設置される。この場合、図15に示すように、取付ボルトBtが通り、ナットNtによって締め付けられる取付穴11f(図示上、左側)は、点灯装置3が配置される部位の近傍に形成されているので、上述の補強効果でその締め付け力によって器具本体1が変形するのを抑制することができる。」

以下の図面が示されている。



イ 認定事項
段落【0011】の「光源部2を器具本体1に取付けて保持する係止部材4とを備えている。」との記載から、引用文献1には、光源部2を取付けて保持する係止部材4を備えている器具本体1が記載されているものと認められるところ、さらに以下の事項が認定できる。

(ア)
・段落【0012】の「器具本体1は、亜鉛めっき鋼板を折曲して形成され、長手方向に沿って略中央部に収容凹部11が形成されている。」との記載、段落【0027】の「図5に示すように、光源部2が取付けられる。つまり、収容凹部11の開口部側を覆うように光源部2が配設される。」との記載、及び【図5】等から、器具本体1は、亜鉛めっき鋼板を折曲して形成され、長手方向に沿って略中央部に、開口部側を覆うように光源部2が配設される収容凹部11が形成されること。
・段落【0012】の「収容凹部11は、天板部11aと、この天板部11aの両側から前面側に直角に垂下するように折曲されて形成された側壁11bとから構成されている。また、収容凹部11の開口部側であって幅方向の両側、すなわち、側壁11bの前面側の両側は、側面視、略V字状に折曲されて収容凹部11に沿って側板部11cが形成されている。したがって、側板部11cは、側面形状が背面方向へ拡がる傾斜面を備えている。」との記載、及び【図4】、【図6】等から、天板部11aは、光源部2と対向する内面と前記内面と反対側を向く外面とを有すること、及び、側壁11bは一対形成されていることが看取できるから、収容凹部11は、光源部2と対向する内面と前記内面と反対側を向く外面とを有する天板部11aと、この天板部11aの両側から前面側に直角に垂下するように折曲されて形成された一対の側壁11bとから構成され、前記収容凹部11の前記側壁11bの前面側の両側は、側面視、略V字状に折曲されて前記収容凹部11に沿って側板部11cが形成され、この側板部11cは、側面形状が背面方向へ拡がる傾斜面を備えること。
・段落【0030】の「側板部11cの背面側一端部が天井面Cに密着して器具本体1は、天井面Cに設置される。」との記載、及び【図4】?【図7】等から、一対の側板部11cの一対の側壁11bと反対側の端部から前記一対の側板部11c側に向かって延びる一対の背面側一端部が形成されること。
・段落【0027】の「係止部材4は、図12及び図13の参照を加えて示すように、ステンレス材料等のばね材によって略コ字状に折曲して形成されている。また、係止部材4の両端には、係止爪4aが内側に折曲して形成されている。この係止部材4は、図2乃至図4に示すように、器具本体1の収容凹部11の両端部側に外側から重合するように一対取付けられる。より詳しくは、図4に示すように、係止爪4aが収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置され、収容凹部11の外側にねじ等の固定手段(図3参照)によって取付けられるようになっている。」との記載、及び【図3】等によれば、この収容凹部11の外側は、収容凹部11の天板部11aの外側であることが看取できるから、係止部材4は、ばね材によって略コ字状に折曲して形成されているとともに、前記係止部材4の両端には、係止爪4aが内側に折曲して形成され、この係止爪4aは、収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置されるとともに、前記収容凹部11の天板部11aの外側にねじ等の固定手段によって取付けられるようになっていること。
・段落【0014】の「収容凹部11の側板部11cにおける長手方向の両端部には、一対の係止爪通過孔11dが形成されている。この係止爪通過孔11dには、後述する係止部材4の係止爪4aが配置されるようになっている。また、この一対の係止爪通過孔11dと対向するように側板部11cには、解除孔11eが形成されている。この解除孔11eは、後述するように係止部材4の係止爪4aを解除操作するために用いられる。」との記載、及び【図6】、【図7】等から、収容凹部11の一対の側壁11bには、一対の係止爪通過孔11dが形成され、この係止爪通過孔11dには、係止部材4の係止爪4aが配置されるようになっており、また、この一対の係止爪通過孔11dと対向するように側板部11cには、前記係止爪4aを解除操作するために用いられる解除孔11eが形成されていること。

(イ)
・段落【0023】の「光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とが組合わされて一体化されて構成されている。」との記載、及び段落【0016】の「取付部材21は、器具本体1と同様に、横長であって長尺状に形成されており、長手方向に沿って平坦な取付面21aと、この取付面21aの両側から背面方向へ直角に立ち上がった第1の側壁21bと、この第1の側壁21bから水平方向に延出し、さらに背面方向に向かって内側に傾斜状に立ち上がった第2の側壁21cとを有している。」との記載から、光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とが組合わされて一体化されて構成され、前記取付部材21は、器具本体1と同様に、横長であって長尺状に形成されており、長手方向に沿って平坦な取付面21aと、この取付面21aの両側から背面方向へ直角に立ち上がった第1の側壁21bと、この第1の側壁21bから水平方向に延出し、さらに背面方向に向かって内側に傾斜状に立ち上がった第2の側壁21cとを有すること。
・段落【0017】の「基板23は、略長方形状に形成されており、複数、すなわち、4枚の基板23が直線状に並べられて取付部材21の取付面21aにねじ止め等によって、その裏面側が取付面21aに密着するように取付けられている。」との記載から、基板23は、取付部材21の取付面21aにねじ止め等によって、その裏面側が前記取付面21aに密着するように取付けられること。
・段落【0023】の「 このように構成されたカバー部材24は、複数の発光素子22が実装された基板23を覆うように取付部材21に取付けられている。具体的には、図4に示すように、カバー部材24の一対の嵌合溝24aに取付部材21の切起し片21dがスライドして嵌合し、取付けられるようになっている。」との記載から、カバー部材24は、このカバー部材24の一対の嵌合溝24aに取付部材21の切起し片21dがスライドして嵌合し、複数の発光素子22が実装された基板23を覆うように取付部材21に取付けられていること。

(ウ)段落【0028】の「光源部2を器具本体1に対して図示矢印方向に移動すると、取付部材21の傾斜状の第2の側壁21cが係止部材4の係止爪4aに当接する。この状態からさらに光源部2の移動を進め、係止爪4aの弾性に抗して収容凹部11に押し込むようにすることにより、係止爪4aが第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、光源部2が収容凹部11内へ移動する。そして、第2の側壁21cが所定量収容凹部11内へ入ると、係止爪4aの弾性変形が解かれ、取付部材21が係止爪4aによって所定位置に係合保持される(図4参照)。」との記載から、光源部2を器具本体1に対して移動すると、取付部材21の傾斜状の第2の側壁21cが係止部材4の係止爪4aに当接し、この状態からさらに前記光源部2の移動を進め、前記係止爪4aの弾性に抗して収容凹部11に押し込むようにすることにより、前記係止爪4aが前記第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、前記光源部2が前記収容凹部11内へ移動し、そして、前記第2の側壁21cが所定量前記収容凹部11内へ入ると、前記係止爪4aの弾性変形が解かれ、前記取付部材21が前記係止爪4aによって所定位置に係合保持されること。

(エ)段落【0015】の「器具本体1の背面側、すなわち、天板部11aの両端側には、一対の取付穴11fが形成されている。この取付穴11fには、天井の構造体に設けられた一対の取付ボルトBtが外面側から貫通し、器具本体1が天井面に設置されるようになっている。なお、取付穴11fの周囲には、取付穴11fを補強するために、背面側へドーム状に突出する補強部11gが形成されている。」との記載及び【図6】等によれば「器具本体1の背面側」は、天板部11aの外面側といえることから、天板部11aの外面側には取付穴11fが形成され、この取付穴11fには、天井の構造体に設けられた取付ボルトBtが外面側から貫通し、前記器具本体1が天井面に設置されるようになっており、前記取付穴11fの周囲には、前記取付穴11fを補強するために、表面側へドーム状に突出する補強部11gが形成されていること。
段落【0030】の「天板部11aの外面側の補強部11g及び側板部11cの背面側一端部が天井面Cに密着して器具本体1は、天井面Cに設置される。」との記載から、天板部11aの外面側の補強部11g及び側板部11cの背面側一端部が天井面Cに密着して設置される器具本体1であること。

ウ 上記ア、イから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「光源部2を取付けて保持する係止部材4を備えている器具本体1であって、
前記器具本体1は、亜鉛めっき鋼板を折曲して形成され、長手方向に沿って略中央部に、開口部側を覆うように光源部2が配設される収容凹部11が形成され、この収容凹部11は、光源部2と対向する内面と前記内面と反対側を向く外面とを有する天板部11aと、この天板部11aの両側から前面側に直角に垂下するように折曲されて形成された一対の側壁11bとから構成され、前記収容凹部11の前記側壁11bの前面側の両側は、側面視、略V字状に折曲されて前記収容凹部11に沿って側板部11cが形成され、この側板部11cは、側面形状が背面方向へ拡がる傾斜面を備えるとともに、前記一対の側板部11cの前記一対の側壁11bと反対側の端部から前記一対の側板部11c側に向かって延びる一対の背面側一端部が形成され、
前記係止部材4は、ばね材によって略コ字状に折曲して形成されているとともに、前記係止部材4の両端には、係止爪4aが内側に折曲して形成され、この係止爪4aが前記収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置され、前記収容凹部11の前記天板部11aの外側にねじ等の固定手段によって取付けられるようになっており、
前記収容凹部11の前記一対の側壁11bにには、前記一対の係止爪通過孔11dが形成され、この係止爪通過孔11dには、前記係止部材4の係止爪4aが配置されるようになっており、また、この一対の係止爪通過孔11dと対向するように前記側板部11cには、係止爪4aを解除操作するために用いられる解除孔11eが形成され、
前記光源部2は、取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とが組合わされて一体化されて構成され、
前記取付部材21は、前記器具本体1と同様に、横長であって長尺状に形成されており、長手方向に沿って平坦な取付面21aと、この取付面21aの両側から背面方向へ直角に立ち上がった第1の側壁21bと、この第1の側壁21bから水平方向に延出し、さらに背面方向に向かって内側に傾斜状に立ち上がった第2の側壁21cとを有し、
前記基板23は、前記取付部材21の前記取付面21aにねじ止め等によって、その裏面側が前記取付面21aに密着するように取付けられ、
前記第1の側壁21bにおける前記取付面21a側には、複数の切起し片21dが略等間隔に幅方向の外側に突出して形成され、前記カバー部材24は、このカバー部材24の一対の嵌合溝24aに前記取付部材21の前記切起し片21dがスライドして嵌合し、前記複数の発光素子22が実装された前記基板23を覆うように前記取付部材21に取付けられており、
前記光源部2を前記器具本体1に対して移動すると、前記取付部材21の傾斜状の前記第2の側壁21cが前記係止部材4の前記係止爪4aに当接し、この状態からさらに前記光源部2の移動を進め、前記係止爪4aの弾性に抗して前記収容凹部11に押し込むようにすることにより、前記係止爪4aが前記第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、前記光源部2が前記収容凹部11内へ移動し、そして、前記第2の側壁21cが所定量前記収容凹部11内へ入ると、前記係止爪4aの弾性変形が解かれ、前記取付部材21が前記係止爪4aによって所定位置に係合保持され、
前記天板部11aの外面側には、取付穴11fが形成され、この取付穴11fには、天井の構造体に設けられた取付ボルトBtが外面側から貫通し、前記器具本体1が天井面に設置されるようになっており、前記取付穴11fの周囲には、前記取付穴11fを補強するために、外面側へドーム状に突出する補強部11gが形成され、
前記天板部11aの外面側の前記補強部11g及び前記側板部11cの前記背面側一端部が天井面Cに密着して設置される器具本体1。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)後者の「基板23」は、前者の「基板」に相当する。後者の「前記基板23は、前記取付部材21の取付面21aにねじ止め等によって、その裏面側が前記取付面21aに密着するように取付けられ」との事項の内の「取付面21a」は、「基板23」を支持するものといえるので、前者の「支持体」に相当する。
(イ)後者の「カバー部材24」は、前者の「カバー」に相当する。
(ウ)前者の「保持部材」は本願明細書の段落【0014】の「保持部材13は、カバー12を支持体11に保持する」との記載から、カバー12を保持するものと理解できる。他方、後者の「前記第1の側壁21bにおける前記取付面21a側には、複数の切起し片21dが略等間隔に幅方向の外側に突出して形成され、前記カバー部材24は、このカバー部材24の一対の嵌合溝24aに前記取付部材21の前記切起し片21dがスライドして嵌合し、前記複数の発光素子22が実装された前記基板23を覆うように前記取付部材21に取付けられており」との事項から、「第1の側壁21b」に形成された「複数の切起し片21d」が「カバー部材24」の「一対の嵌合溝24a」に嵌合して、「第1の側壁21b」に「カバー部材24」が取付けられているものであって、「第1の側壁21b」が「カバー部材24」を保持するものといえるから、後者の「取付面21aの両側から背面方向へ直角に立ち上がった第1の側壁21bと、この第1の側壁21bから水平方向に延出し、さらに背面方向に向かって内側に傾斜状に立ち上がった第2の側壁21c」とを併せた構成は、前者の「保持部材」に相当する。
(エ)後者の「このカバー部材24の一対の嵌合溝24aに前記取付部材21の前記第1の側壁に形成された前記切起し片21dがスライドして嵌合し、前記複数の発光素子22が実装された前記基板23を覆うように前記取付部材21に取付けられており」との構成は、前者の「前記カバーが前記支持体に支持された基板を覆う」との構成に相当する。また、「光源部2」は「横長であって長尺状に形成され」た「取付部材21」を備えるものであるから、「取付部材21」と同様に長尺状であること、及び後者の「取付部材21と、複数の発光素子22が実装された基板23と、カバー部材24とが組合わされて一体化されて構成され」た「光源部2」は、「前記光源部2が前記収容凹部11内へ移動し」との事項、及び【図5】等を参照すると、「取付部材21」、「基板23」、及び「カバー部材24」とが一体化されて器具本体1の収容凹部11に移動するものであって、ユニット化されているものといえることから、後者のかかる「光源部2」は、前者の「前記カバーが前記支持体に支持された基板を覆う長尺状の光源モジュール」に相当する。
(オ)後者の「光源部2を取付けて保持する係止部材4を備える器具本体1」は、後者の「前記収容凹部11の前記側壁11bにおける長手方向の両端部には、一対の係止爪通過孔11dが形成され、この係止爪通過孔11dには、前記係止部材4の係止爪4aが配置されるようになっており、また、この一対の係止爪通過孔11dと対向するように前記側板部11cには、係止爪4aを解除操作するために用いられる解除孔11eが形成され」との事項によれば、「光源部2」を着脱可能に支持することは明らかであるから、前者の「光源モジュールを着脱可能に支持する器具本体」に相当する。
(カ)上記(ア)?(オ)を総合すると、後者の「光源部2を取付けて保持する係止部材4を備える器具本体1」は、前者の「支持体とカバーと保持部材を有し、前記カバーが前記支持体に支持された基板を覆う長尺状の光源モジュールを着脱可能に支持する器具本体」に相当する。
(キ)後者の「器具本体1」に形成される「亜鉛めっき鋼板を折曲して形成され、長手方向に沿って略中央部に、開口部側を覆うように光源部2が配設される収容凹部11」は、【図4】等を参照すると、光源部2の少なくとも一部を収容する凹部を有することは明らかであるから、前者の「前記光源モジュールの少なくとも一部を収容する凹部を有する筐体」に相当する。
(ク)後者の「光源部2を取付けて保持する係止部材4」は、「ばね材によって略コ字状に折曲して形成されている」ものであって、「前記光源部2を前記器具本体1に対して移動すると、前記取付部材21の傾斜状の前記第2の側壁21cが前記係止部材4の前記係止爪4aに当接し、この状態からさらに前記光源部2の移動を進め、前記係止爪4aの弾性に抗して前記収容凹部11に押し込むようにすることにより、前記係止爪4aが前記第2の側壁21cによって外側に弾性変形し、前記光源部2が前記収容凹部11内へ移動し、そして、前記第2の側壁21cが所定量前記収容凹部11内へ入ると、前記係止爪4aの弾性変形が解かれ、前記取付部材21が前記係止爪4aによって所定位置に係合保持され」るものであるから、前者の「前記筐体に設けられ、前記凹部に収容された前記光源モジュールの前記保持部材と係合することにより、前記光源モジュールの前記凹部から抜ける方向への移動を規制する取付バネ」に相当する。
(ケ)後者の「光源部2と対向する内面」及び「前記内面と反対側を向く外面」は、前者の「光源モジュールと対向する対向面」及び「前記対向面と反対側を向く反対面」に相当し、後者の「光源部2と対向する内面と前記内面と反対側を向く外面を有する天板部11a」は、前者の「前記光源モジュールと対向する対向面と、前記対向面と反対側を向く反対面と、を有する底板部」に相当する。
(コ)後者の「この天板部11aの両側から前面側に直角に垂下するように折曲されて形成された一対の側壁11b」は、天板部11aとともに凹部を形成することは明らかであるから、前者の「前記底板部の両側端から前記対向面の向く方向に延び、前記底板部とともに前記凹部を形成する一対の側板部」に相当する。
(サ)後者の「前記収容凹部11の前記側壁11bの前面側の両側は、側面視、略V字状に折曲されて前記収容凹部11に沿って側板部11cが形成され、この側板部11cは、側面形状が背面方向へ拡がる傾斜面を備える」との事項における「側板部11c」は、前者の「前記一対の側板部の前記底板部と反対側の端部から前記反対面の向く方向かつ前記底板部よりも外側に向かって斜めに延びる一対の傾斜板部」に相当する。
(シ)後者の「前記側板部11cの前記一対の側壁11bの前面側と反対側の端部から前記側板部11c側に向かって延びる一対の背面側一端部」は、前者の「前記一対の傾斜板部の前記一対の側板部と反対側の端部から前記一対の側板部側に向かって延びる一対の端板部」に相当する。
(ス)上記(ケ)?(シ)より、後者の「この収容凹部11は、光源部2と対向する内面と前記内面と反対側を向く外面を有する天板部11aと、この天板部11aの両側から前面側に直角に垂下するように折曲されて形成された一対の側壁11bとから構成され、前記収容凹部11の前記側壁11bの前面側の両側は、側面視、略V字状に折曲されて前記収容凹部11に沿って側板部11cが形成され、この側板部11cは、側面形状が背面方向へ拡がる傾斜面を備えるとともに、前記側板部11cの前記一対の側壁11bの前面側と反対側の端部から前記側板部11c側に向かって延びる一対の背面側一端部が形成され」との構成は、前者の「前記筐体は、前記光源モジュールと対向する対向面と、前記対向面と反対側を向く反対面と、を有する底板部と、前記底板部の両側端から前記対向面の向く方向に延び、前記底板部とともに前記凹部を形成する一対の側板部と、前記一対の側板部の前記底板部と反対側の端部から前記反対面の向く方向かつ前記底板部よりも外側に向かって斜めに延びる一対の傾斜板部と、前記一対の傾斜板部の前記一対の側板部と反対側の端部から前記一対の側板部側に向かって延びる一対の端板部と、を有し」との構成に相当する。
(セ)後者の「前記側板部11cの前記背面側一端部が天井面Cに密着して設置される」との構成は、【図4】等を参照すると、背面側一端部が天板部11aよりも外面の向く側に位置することは明らかであるから、前者の「前記一対の端板部は、前記底板部よりも前記反対面の向く側に位置し、前記筐体を天井に設置する際に、天井面に当接し」との構成に相当する。
(ソ)後者の「外面側へドーム状に突出する補強部11g」は、前者の「反対面の向く方向に突出した突起部」に相当し、後者の「前記取付穴11fの周囲には、前記取付穴11fを補強するために、外面側へドーム状に突出する補強部11gが形成され」との構成は、前者の「前記底板部は、前記反対面よりも前記反対面の向く方向に突出した突起部を有」する構成に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「支持体とカバーと保持部材を有し、前記カバーが前記支持体に支持された基板を覆う長尺状の光源モジュールを着脱可能に支持する器具本体であって、
前記光源モジュールの少なくとも一部を収容する凹部を有する筐体と;
前記筐体に設けられ、前記凹部に収容された前記光源モジュールの前記保持部材と係合することにより、前記光源モジュールの前記凹部から抜ける方向への移動を規制する取付バネと;
を備え、
前記筐体は、
前記光源モジュールと対向する対向面と、前記対向面と反対側を向く反対面と、を有する底板部と、
前記底板部の両側端から前記対向面の向く方向に延び、前記底板部とともに前記凹部を形成する一対の側板部と、
前記一対の側板部の前記底板部と反対側の端部から前記反対面の向く方向かつ前記底板部よりも外側に向かって斜めに延びる一対の傾斜板部と、
前記一対の傾斜板部の前記一対の側板部と反対側の端部から前記一対の側板部側に向かって延びる一対の端板部と、
を有し、
前記一対の端板部は、前記底板部よりも前記反対面の向く側に位置し、前記筐体を天井に設置する際に、天井面に当接し、
前記底板部は、前記反対面よりも前記反対面の向く方向に突出した突起部を有する器具本体。」

【相違点】
本件補正発明は、「前記突起部は、前記取付ばねの近傍に設けられ、前記突起部の前記反対面からの高さは、前記一対の端板部の前記反対面からの高さ以下である」のに対し、
引用発明は、「補強部11g」と「係止部材4」の配置関係の特定がなく、「前記天板部11aの外面側の前記補強部11g及び前記側板部11cの前記背面側一端部が天井面Cに密着して設置される」点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 「前記突起部の前記反対面からの高さは、前記一対の端板部の前記反対面からの高さ以下である」ことについて
本件補正発明の「前記突起部の前記反対面からの高さは、前記一対の端板部の前記反対面からの高さ以下である」ことは、突起部の反対面からの高さが、一対の端板部の反対面からの高さが同じであることを含むものである。そして、その技術的意味は、本願明細書の段落【0091】に記載されているように「突起126の高さは、各端部123a、124aの高さ以下であることが好ましい。これにより、各端部123a、124aと天井面との間に隙間が生じてしまうことを抑制することができる。但し、突起126の高さと各端部123a、124aの高さとの差が大きくなると、筐体112の変形を抑える効果が弱くなってしまう。このため、突起126の高さと各端部123a、124aの高さとの差は、例えば、5mm以下であることが好ましい。そして、突起126の高さが、各端部123a、124aの高さと実質的に同じであることが、最も好適である。」ということであり、「突起126の高さが、各端部123a、124aの高さと実質的に同じであること」を「最も好適である。」としているものである。
これに対し、引用発明は、「前記天板部11aの外面側の前記補強部11g及び前記側板部11cの前記背面側一端部が天井面Cに密着して設置される」ものであるから、「補強部11g」の「天板部11a」の外面からの高さと「一対の背面側一端部」の「天板部11a」の外面からの高さとは同一のものといえる。
したがって、引用発明も、「補強部11g」の「天板部11a」の外面からの高さは、「一対の背面側一端部」の「天板部11a」の外面からの高さ以下といえるものである。

イ 「前記突起部は、前記取付ばねの近傍に設けられ」について
本件補正発明の「突起部」に相当する引用発明の「補強部11g」の配置は、引用発明の「前記天板部11aの外面側には、取付穴11fが形成され、この取付穴11fには、天井の構造体に設けられた取付ボルトBtが外面側から貫通し、前記器具本体1が天井面に設置されるようになっており、前記取付穴11fの周囲には、前記取付穴11fを補強するために、外面側へドーム状に突出する補強部11gが形成され」との事項から、取付穴11fの周囲に配置されるものであるが、さらに、引用発明の「前記収容凹部11の前記一対の側壁11bには、一対の係止爪通過孔11dが形成され、この係止爪通過孔11dには、前記係止部材4の係止爪4aが配置されるようになっており」との事項から、係止部材4の係止爪4aを配置するための一対の係止爪通過孔11dが一対の側壁11bに形成されているところ、引用文献1の【図2】、【図3】、及び【図6】等から、器具本体1の長手方向において、「補強部11g」と「一対の係止爪通過孔11d」は近傍に配置されていることが看取できる。
そして、引用発明の「係止部材4」は、「ばね材によって略コ字状に折曲して形成されているとともに、前記係止部材4の両端には、係止爪4aが内側に折曲して形成され、この係止爪4aが前記収容凹部11の係止爪通過孔11dを通って配置され」ているものであるから、引用発明の「補強部11g」も「係止部材4」の近傍に設けられているものといえる。

ウ 以上ア及びイから、上記相違点は、実質的な相違とはいえないから、本件補正発明は引用発明である。

エ 仮に、引用発明の「補強部11g」が「係止部材4」の近傍に設けられているとまでいえない場合について、以下の(ア)と(イ)の二通りの理由に分けて検討する。
(ア)引用文献1には、「係止部材4」の器具本体1の長手方向における配置に関し、特に、特定の場所に設けなければならない旨、記載されていないことに基づけば、該「係止部材4」の配置は、適宜変更可能なものといえるから、該「係止部材4」を「補強部11g」に接近させて、当該「係止部材4」を「補強部11g」の近傍と位置づけ得る場所に設けることは、当業者であれば、適宜なし得ることである。
そして、引用発明は「第2の側壁21cが所定量前記収容凹部11内へ入ると、前記係止爪4aの弾性変形が解かれ、前記取付部材21が前記係止爪4aによって所定位置に係合保持され」るものであって、「光源部2」の荷重は、「係止爪4a」が形成された「略コ字状に折曲して形成されている」「係止部材4」を介して「天板部11aの外面側」にかかるものであるから、該「係止部材4」を「補強部11g」の近傍と位置づけ得る場所に設ければ、「補強部11g」により、荷重がかかる当該「天板部11aの外面側」を補強することになるものである。

(イ)引用発明の「補強部11g」は、「取付穴11fを補強するため」のもの、つまり、「取付穴11f」の周囲の「天板部11a」を補強するものといえる。
そして、上記(ア)で検討したように、引用発明の「係止部材4」が配置される「天板部11aの外面側」には、「光源部2」の荷重がかかるものであるところ、荷重がかかる構造体に突起等を設けて補強することは、機械分野において、一般的によく行われていることであるから、該「天板部11aの外面側」を補強するために、「係止部材4」を「補強部11g」に接近させるか、若しくは、該「天板部11aの外面側」の近傍に別途「補強部11g」を配置して、「係止部材4」を「補強部11g」の近傍と位置づけ得る場所に設けることは、当業者であれば格別な困難性をともなうことなくなし得ることである。

オ 上記エで述べた各理由から、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

カ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

キ 請求人の主張について
(ア)請求人は、令和2年7月14日に提出された審判請求書の(5)で、
「すなわち、本願は取付バネの近傍に突起部配設していることから、光源ユニットの着脱の際かかる取付バネの弾性力による筐体への変形を抑制することができるので、光源ユニットの着脱を容易にすることができるという効果を奏することができるのです。」
と主張するので、検討する。

(イ)検討
引用発明の「係止部材4」を「補強部11g」の近傍と位置づけ得る場所に設ければ、「光源部2」の着脱の際かかる「係止部材4」の弾性力による「収容凹部11」への変形を抑制することは明らかであるから、「光源部2」の着脱を容易にすることができるという効果は、当業者が予測しうる程度のものである。
よって、請求人の主張は、採用できない。

ク 以上のとおり、上記ア?キを総合すると、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。また、本件補正発明と引用発明との間に相違点が存在するとしても、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年7月14日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和1年11月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
(1)この出願の請求項1に係る発明は、本願の原出願日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)この出願の請求項1に係る発明は、本願の原出願日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その原出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2012-3993号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明から、「光源モジュール」について「支持体とカバーと保持部材を有し、前記カバーが前記支持体に支持された基板を覆う」との事項を、「突起部」について「前記取付ばねの近傍に設けられ」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明であるか、また、相違点が存在するとしても、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明であるか、また、相違点が存在するとしても、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。また、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2021-04-20 
結審通知日 2021-04-22 
審決日 2021-05-13 
出願番号 特願2018-226881(P2018-226881)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21S)
P 1 8・ 113- Z (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河村 勝也  
特許庁審判長 佐々木 一浩
特許庁審判官 氏原 康宏
島田 信一
発明の名称 照明器具  
代理人 河野 仁志  
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