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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1375687
審判番号 不服2020-8385  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-17 
確定日 2021-06-30 
事件の表示 特願2018-558470「資源取得方法および関係した装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日国際公開,WO2017/133496,平成31年 3月 7日国内公表,特表2019-506696〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2017年1月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年2月2日(以下,「優先日」という。),中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 8月29日 :出願審査請求書,手続補正書の提出
令和 1年 6月27日付け:拒絶理由通知
令和 1年 9月17日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 2月14日付け:拒絶査定
令和 2年 6月17日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 2年 8月27日 :前置報告
令和 2年11月27日 :上申書の提出

第2 令和2年6月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年6月17日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項1を「補正後の請求項1」という。)

「 【請求項1】
マシンツーマシンM2M通信システムに適用される資源取得方法であって:
受付部によって、資源を取得するために資源要求者によって送られた第一の要求を受領する段階であって、前記第一の要求は前記資源の資源識別子を担持し、前記資源が、前記資源の有効期間を示すために使われる時間属性および最終修正時刻属性を含む、段階と;
前記受付部によって、前記資源識別子に基づいて、前記受付部が前記資源を記憶していることを判別する段階と;
前記受付部によって、前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れかどうかを判別する段階とを含み、
前記受付部が前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れでないことを判別する場合、当該方法はさらに:
前記受付部によって、前記受付部に記憶されている前記資源の値を前記資源要求者に送る段階を含み、
前記受付部が、前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れであることを判別する場合、当該方法はさらに:
前記受付部によって、前記資源サーバーから受領された属性値内容に基づいて前記受付部に記憶されている前記資源の値を更新する段階であって、前記受領された属性値内容は、前記受付部に記憶されている前記資源の属性値に対して変化している属性値内容であり、前記受付部に記憶されている最終修正時刻属性値は前記資源サーバーに記憶されている最終修正時刻属性値と異なる、段階と;
前記受付部によって、前記資源の前記更新された値を前記資源要求者に送る段階であって、前記資源の前記更新された値は、前記受付部に記憶されており変化しない属性値内容と、前記資源サーバーから受領された属性値内容とを含む、段階とを含む、
方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の,令和1年9月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項1を「補正前の請求項1」という。)

「 【請求項1】
マシンツーマシンM2M通信システムに適用される資源取得方法であって:
受付部によって、資源を取得するために資源要求者によって送られた第一の要求を受領する段階であって、前記第一の要求は前記資源の資源識別子を担持し、前記資源が、前記資源の有効期間を示すために使われる時間属性および最終修正時刻属性を含む、段階と;
前記受付部によって、前記資源識別子に基づいて、前記受付部が前記資源を記憶していることを判別する段階と;
前記受付部によって、前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れかどうかを判別する段階とを含み、
前記受付部が前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れでないことを判別する場合、当該方法はさらに:
前記受付部によって、前記受付部に記憶されている前記資源の値を前記資源要求者に送る段階を含み、
前記受付部が、前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れであることを判別する場合、当該方法はさらに:
前記受付部によって、前記資源サーバーから受領された属性値内容に基づいて前記受付部に記憶されている前記資源の値を更新する段階であって、前記受領された属性値内容は、前記受付部に記憶されている前記資源の属性値に対して変化している属性値内容であり、前記受付部に記憶されている最終修正時刻属性値は前記資源サーバーに記憶されている最終修正時刻属性値と異なる、段階と;
前記受付部によって、前記資源の前記更新された値を前記資源要求者に送る段階とを含む、
方法。」

2 補正の適否

本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である,資源の更新された値について,「前記受付部に記憶されており変化しない属性値内容と、前記資源サーバーから受領された属性値内容とを含む」との限定を付加するものである。
そして,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,本件補正は,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は,上記「1(1)」に記載された下記のとおりのものである(再掲)。

「 マシンツーマシンM2M通信システムに適用される資源取得方法であって:
受付部によって、資源を取得するために資源要求者によって送られた第一の要求を受領する段階であって、前記第一の要求は前記資源の資源識別子を担持し、前記資源が、前記資源の有効期間を示すために使われる時間属性および最終修正時刻属性を含む、段階と;
前記受付部によって、前記資源識別子に基づいて、前記受付部が前記資源を記憶していることを判別する段階と;
前記受付部によって、前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れかどうかを判別する段階とを含み、
前記受付部が前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れでないことを判別する場合、当該方法はさらに:
前記受付部によって、前記受付部に記憶されている前記資源の値を前記資源要求者に送る段階を含み、
前記受付部が、前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れであることを判別する場合、当該方法はさらに:
前記受付部によって、前記資源サーバーから受領された属性値内容に基づいて前記受付部に記憶されている前記資源の値を更新する段階であって、前記受領された属性値内容は、前記受付部に記憶されている前記資源の属性値に対して変化している属性値内容であり、前記受付部に記憶されている最終修正時刻属性値は前記資源サーバーに記憶されている最終修正時刻属性値と異なる、段階と;
前記受付部によって、前記資源の前記更新された値を前記資源要求者に送る段階であって、前記資源の前記更新された値は、前記受付部に記憶されており変化しない属性値内容と、前記資源サーバーから受領された属性値内容とを含む、段階とを含む、
方法。」

(2)引用文献等の記載事項

(2-1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明

ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2002-55870号公報(平成14年2月20日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。)

A 「【0023】図3は本実施形態におけるデータ取得装置2の構成を示す機能ブロック図である。図3において、入力部201はユーザによって入力操作されるもので、例えばキーボード、マウス等によって構成されるものである。データ保存部202は、自装置で取得したデータを保存するもので、例えばハードディスク装置等によって構成されるものである。データ検索部203は、データ保存部202に保存されたデータの内容を検索するものである。データ取得要求部204は、データ提供装置1に対してデータの取得要求を行うもので、その要求形態には差分データの取得要求と全データの取得要求がある。
【0024】データ受信部205は、データ取得要求部204によるデータの取得要求の応答としてデータ提供装置1から送信された応答データを受信するものである。データ判別部206は、データ受信部205で受信した応答データが差分データであるか否かを判別するものである。データ更新部207は、データ受信部205で受信した応答データを用いて所定のデータ更新処理を行うものである。データ出力部208は、モニター等の画像表示装置やプリンタ等の画像形成装置に対してデータを出力するものである。」

B 「【0026】図4はデータ取得装置2の処理手順を示すフローチャートである。先ず、ユーザは、入力部201を用いた入力操作により、所望するデータがネットワーク3上のどこに格納されているかを示す位置情報、即ちデータの取得先情報となるURL(Universal Resource Locator)を入力し、データの取得実行を指示する。そうすると、データ検索部203は、ユーザにより入力されたURLが指し示すデータが自装置のデータ保存部202に保存されているかどうかを検索する(ステップS101)。この検索は、データ保存部202が保持しているキャッシュテーブルを参照することによって行う。キャッシュテーブルとは、データ取得装置2で以前取得してデータ保存部202に保存したデータの一覧を示すテーブルのことである。このキャッシュテーブルには、例えば図5に示すように、データの取得先情報となるURLと、このURLが指し示すデータが自装置上で保存されている位置(キャッシュの位置)と、データの最終更新日時とが組(対)になって保存される。
【0027】ユーザにより指定されたURLのデータがキャッシュテーブル上に存在する場合は、そのキャッシュテーブルにおいて該当するURLに対応するデータの更新情報をデータ取得要求部204が読み出す(ステップS102)。ここで記述するデータの更新情報とは、データ取得装置2のデータ保存部202に保存されたデータの更新情報をいい、本実施形態においてはデータの最終更新日時がそれに該当する。
【0028】次に、データ取得要求部204は、差分データの取得であることを示す情報を付加して、データの取得要求をデータ提供装置1に送信する(ステップS103)。ここで、差分データの取得要求であることを示す情報としては、通常のデータ取得の要求に、例えば "X-diff-since: Sun, 21 May 2000 08:12:23 GMT" というヘッダ情報を付加する。このヘッダ情報のなかで、"X-diff-since" というヘッダが差分データの取得要求である旨を示し、"Sun, 21 May 2000 08:12:23 GMT" という値がデータ取得装置2上でのデータの最終更新日時を示す。このヘッダ情報は、指定した日時以降に更新された部分の差分データのみを取得要求することを示す。
【0029】一方、指定されたURLのデータがキャッシュテーブル上に存在しない場合は、該当するデータがデータ取得装置2上に保存されていないため、データ取得要求部204は、通常どおり全てのデータを取得する旨の取得要求をデータ提供装置1に送信する(ステップS104)。
【0030】このようにデータ取得装置2においてデータ保存部202に保存された過去のデータを検索し、その検索結果に基づいて差分データ又は全データの取得要求を行うことにより、ユーザがいちいち過去に取得したデータを参照しなくても、差分データの取得要求を自動的に実行させることができる。
【0031】続いて、上述のようにステップS103又はS104でデータの取得要求を送信した後、その応答としてデータ提供装置1からデータが送信されると、データ受信部205は、先の取得要求に対するデータ提供装置1からの応答データを受信する(ステップS105)。
【0032】次に、データ受信部205で受信した応答データが差分データであるか否かをデータ判別部206で判別する(ステップS106)。ここで、応答データが差分データであるか否かを判別するには、例えば、HTTPの "Content-type:"ヘッダを参照することによって行う。"Content-type:" ヘッダの値が "application/x-diff" という値であった場合、応答に含まれるデータが差分データであると判別し、それ以外の値であった場合には差分データではないと判別する。この判別結果において、応答データが差分データであると判別された場合は、その差分データを基にしてデータ更新部207で更新データを生成する(ステップS107)。
【0033】ここで、更新データを生成するにあたっては、先ず、前述したキャッシュテーブルを参照して、該当するデータがデータ保存部202に保存されている位置(キャッシュの位置)を取得する。次いで、その取得した位置に保存されている保存データと、応答に含まれる差分データとを合成し、これによって更新データを生成する。これにより、データ取得装置2においては、データ提供装置1から差分データを取得するだけで、データ提供装置1に保存された最新のデータと同等のデータ(更新データ)を得ることができる。」

C 「【0052】続いて、本発明の他の実施形態について説明する。図7は本発明の他の実施形態に係るデータ処理システムの構成例を示す図である。図7においては、データ提供装置4及びプロキシ装置5がネットワーク6を介して接続されている。データ提供装置4は、外部装置(本形態ではプロキシ装置5)からの取得要求に応じて各種のデータを提供するものである。プロキシ装置5は、データ取得装置7からの要求に応じてデータ提供装置4に対して代理でデータの取得要求を行い、これによって取得したデータをデータ取得装置7に送信するものである。ネットワーク6は、インターネットでもよいし、LANでもよい。また、インターネットとLANを相互に接続したものでもよい。
【0053】プロキシ装置5は、本発明におけるデータ取得装置に相当するものであり、ネットワーク8を介して複数のデータ取得装置7と接続されている。データ取得装置7は、プロキシ装置5に対してデータの取得要求を行い、これによって取得したデータをモニターの画面に表示したりプリンタで印刷したりするものである。データ取得装置7は、本発明を適用した先述のデータ取得装置2でもよいし、本発明を適用しない従来のデータ取得装置でもよい。また、ネットワーク8は、インターネットでもよいし、LANでもよいし、これらを相互に接続したものでもよい。このネットワーク8は、ネットワーク6とは直接接続されないLANで構成され、閉じたネットワークを形成することが多い。」

D 「【0061】なお、上記の説明では、プロキシ装置5がデータ取得装置7からデータの取得要求を受け付けたとき必ずデータ提供装置4にデータの取得要求を行うとしているが、例えば、データの取得要否を判定するための判定基準を予め設け、その判定基準に基づいて、データ保存部501から応答用のデータを取り出すか、実際にデータ提供装置4にデータの取得要求を行って応答用のデータを取得するかを決定してもよい。具体的には、例えば、上記の判定基準を1時間とし、データ取得装置7からデータの取得要求があった日時から1時間以内のデータがプロキシ装置5のデータ保存部501に残っている場合は、データ提供装置4にデータの取得要求を行わず、データ保存部501に保存されているデータを応答としてデータ取得装置7に送信してもよい。」


E 「図3


上記Aの記載及び図3から,データ取得装置2は,入力部201,データ保存部202,データ検索部204、データ取得要求部204,データ受信部205,データ更新部207を備えていることが読み取れる。

F 「図4



G 「図5




H 「図7




(ア)上記Cの,特に下線部の記載に注目すると,引用文献1には,
「データ提供装置及びプロキシ装置がネットワークを介して接続されており,プロキシ装置は,データ取得装置からの要求に応じてデータ提供装置に対して代理でデータの取得要求を行い,これによって取得したデータをデータ取得装置に送信するものであり,
プロキシ装置はデータ取得装置に相当するものである」
という技術事項が記載されていると認められる。

(イ)また,上記Aの,特に下線部の記載,並びに上記Eの図3から,引用文献1には,
「データ取得装置は,入力部,データ保存部,データ検索部、データ取得要求部,データ受信部,データ更新部を備えている」
という技術事項が記載されていると認められる。

(ウ)また,上記Bの,特に下線部の記載に注目すると,引用文献1には,
「データ取得装置の処理手順は,
ユーザは,入力部を用いた入力操作により,所望するデータがネットワーク上のどこに格納されているかを示す位置情報,即ちデータの取得先情報となるURL(Universal Resource Locator)を入力し,データの取得実行を指示し,
データ検索部は,ユーザにより入力されたURLが指し示すデータが自装置のデータ保存部に保存されているかどうかを検索するものであり,この検索は,データ保存部が保持しているキャッシュテーブルを参照することによって行うものであって,
このキャッシュテーブルには,データの取得先情報となるURLと,このURLが指し示すデータが自装置上で保存されている位置(キャッシュの位置)と,データの最終更新日時とが組(対)になって保存されるものであり,
ユーザにより指定されたURLのデータがキャッシュテーブル上に存在する場合は,そのキャッシュテーブルにおいて該当するURLに対応するデータの更新情報をデータ取得要求部が読み出すものであり,ここでデータの更新情報とは,データの最終更新日時であり,
次に,データ取得要求部は,差分データの取得であることを示す情報を付加して,データの取得要求をデータ提供装置に送信し,
データ受信部は,先の取得要求に対するデータ提供装置からの応答データを受信し,
応答データが差分データであると判別された場合は,データ更新部で更新データを生成するものであって,更新データを生成するにあたっては,先ず,前述したキャッシュテーブルを参照して,該当するデータがデータ保存部に保存されている位置(キャッシュの位置)を取得し,次いで,その取得した位置に保存されている保存データと,応答に含まれる差分データとを合成し,これによって更新データを生成する」
という技術事項が記載されていると認められる。

ウ よって,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「データ提供装置及びプロキシ装置がネットワークを介して接続されており,プロキシ装置は,データ取得装置からの要求に応じてデータ提供装置に対して代理でデータの取得要求を行い,これによって取得したデータをデータ取得装置に送信するものであり,
プロキシ装置はデータ取得装置に相当するものであって,
データ取得装置は,入力部,データ保存部,データ検索部、データ取得要求部,データ受信部,データ更新部を備えており,
データ取得装置の処理手順は,
ユーザは,入力部を用いた入力操作により,所望するデータがネットワーク上のどこに格納されているかを示す位置情報,即ちデータの取得先情報となるURL(Universal Resource Locator)を入力し,データの取得実行を指示し,
データ検索部は,ユーザにより入力されたURLが指し示すデータが自装置のデータ保存部に保存されているかどうかを検索するものであり,この検索は,データ保存部が保持しているキャッシュテーブルを参照することによって行うものであって,
このキャッシュテーブルには,データの取得先情報となるURLと,このURLが指し示すデータが自装置上で保存されている位置(キャッシュの位置)と,データの最終更新日時とが組(対)になって保存されるものであり,
ユーザにより指定されたURLのデータがキャッシュテーブル上に存在する場合は,そのキャッシュテーブルにおいて該当するURLに対応するデータの更新情報をデータ取得要求部が読み出すものであり,ここでデータの更新情報とは,データの最終更新日時であり,
次に,データ取得要求部は,差分データの取得であることを示す情報を付加して,データの取得要求をデータ提供装置に送信し,
データ受信部は,先の取得要求に対するデータ提供装置からの応答データを受信し,
応答データが差分データであると判別された場合は,データ更新部で更新データを生成するものであって,更新データを生成するにあたっては,先ず,前述したキャッシュテーブルを参照して,該当するデータがデータ保存部に保存されている位置(キャッシュの位置)を取得し,次いで,その取得した位置に保存されている保存データと,応答に含まれる差分データとを合成し,これによって更新データを生成するものである,
データ取得装置の処理手順。」

(2-2)引用文献2に記載されている技術的事項

ア 原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許出願公開第2015/0055557号明細書(2015年2月26日出願公開。以下,「引用文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。

I 「[0089] Embodiments for managing the caching of the resource ( in this example) will be explained with reference to the example of FIG. 6.」
(当審訳;「[0089] リソースのキャッシング(この例では,)を管理するための実施形態は,図6の例を参照して説明する。」)

J 「[0092] FIG. 10 shows an example structure 1002 for the cached resource in accordance with one embodiment. may have three more attributes and one more sub-resource compared to contentInstance, as shown in FIG. 10. The attribute 1004 may include origin URI, maxAge, and accessRightID. The attribute origin URI keeps record of the original URI of the cached resource. The attribute maxAge indicates that a cached resource is to be considered not fresh after its age is greater than the specified number of seconds. The attribute accessRightID enables security down to the level of cached content instance. With the sub-resource subscriptions, clients may subscribe to each cached content instance.」
(当審訳;「[0092] 図10は,一実施形態による,キャッシュされたリソースの例示的なキャッシュコンテンツ構造1002を示す。キャッシュコンテンツは,図1に示すように,コンテンツインスタンスと比較してさらに3つの属性と1つのサブリソースを有することができる。属性1004は,起点URI,maxAge,およびaccessRightIDを含み得る。属性originURIは,キャッシュされたリソースの元のURIの記録を保持する。属性maxAgeは,キャッシュされたリソースの年齢が指定された秒数を超えた後は,キャッシュされたリソースは新鮮ではないと見なされることを示す。属性accessRightIDは,キャッシュされたコンテンツのインスタンスのレベルのセキュリティを可能にする。サブリソースサブスクリプションを使用すると,クライアントはキャッシュされた各コンテンツインスタンスに加入できる。」)

K 「[0098] NA2 issues a resource discovery request (e.g., GET /discovery) to M2M server1, (i.e., ) (1122). Since the NSCL of M2M server1 cached the resource representation of , M2M server1 may send a response to NA2 (1124). M2M server1 may return NA2 with the original URI and the local URI of the discovered resource. Alternatively, M2M server1 may return NA2 with the original URI of the discovered resource. Alternatively, M2M server1 may return NA2 with the local URI of the discovered resource.」
(当審訳;「[0098] NA2は,M2M server1(すなわち,)にリソース検索要求(たとえば,GET / Discovery)を発行する(1122)。M2M server1のNSCLはのリソース表現をキャッシュしたため,M2M server1はNA2に応答を送信することができる(1124)。M2M server1は,検出されたリソースの元のURIとローカルURIをNA2に返信することができる。あるいは,M2M server1は,検出されたリソースの元のURIをNA2に返信することができる。あるいは,M2M server1は,検出されたリソースのローカルURIをNA2に返信することができる。」)

L 「[0101] When M2M server1 receives the request from NA2, M2M server1 may find a cached copy by mapping the original URI to the originURI attribute of all cached resources (1128). M2M server1 also checks the maxAge attribute of the cached resource (1128). M2M server1 may return the cached resource directly if its maxAge is still over 0. If the maxAge has expired, M2M server1 may issue an update request or forward NA2's request to the original resource on M2M gateway1 (1130). M2M server1 receives a response including resource representation of from M2M gateway1 and forwards it to NA2 (1132, 1134). As a result, a fresh resource may be returned to NA2.
[0102] Alternatively, NA2 may issue a retrieve request to M2M gateway1 using the local URI of the cached resource (1136). M2M server1 checks the maxAge attribute of the cached resource (1138). M2M server1 may return the resource representation with the locally cached copy if its maxAge is still over 0. If the maxAge has expired, M2M server1 may issue an update request or forward NA2's request to the original resource on M2M gateway1 (1140). M2M server1 receives a response including resource representation of from M2M gateway1 and forwards it to NA2 (1142, 1144). As a result, a fresh resource may be returned to NA2.」
(当審訳;「[0101] M2M server1がNA2からの要求を受信すると,M2M server1は,元のURIをすべてのキャッシュされたリソースのoriginURI属性にマッピングすることによって,キャッシュされたコピーを見つけることができる(1128)。M2M server1は,キャッシュされたリソースのmaxAge属性もチェックする(1128)。M2M server1は,maxAgeがまだ0を超えている場合,キャッシュされたリソースを直接返す場合がある。maxAgeの有効期限が切れている場合,M2M server1は更新要求を発行するか,NA2の要求をM2Mゲートウェイ1の元のリソースに転送する(1130)。M2Mサーバー1は,M2Mゲートウェイ1からのリソース表現を含む応答を受信し,それをNA2に転送する(1132,1134)。その結果,新しいリソースがNA2に返される可能性がある。
[0102] あるいは,NA2は,キャッシュされたリソース(1136)のローカルURIを使用してM2Mゲートウェイ1に取得要求を発行する場合がある。M2M server1は,キャッシュされたリソース(1138)のmaxAge属性をチェックする。M2M server1は,maxAgeがまだ0を超えている場合,ローカルにキャッシュされたコピーでリソース表現を返す場合がある。maxAgeの有効期限が切れている場合,M2M server1は更新要求を発行するか,NA2の要求をM2Mゲートウェイ1の元のリソースに転送する(1140)。M2Mサーバー1は,M2Mゲートウェイ1からのリソース表現を含む応答を受信し,それをNA2に転送する(1142,1144)。その結果,新しいリソースがNA2に返される可能性がある。」)

M 「図6



N 「図10



イ 上記I?Nの,特に下線部の記載に注目すると,引用文献2には以下の技術が記載されているといえる。

「リソースのキャッシングであって,
キャッシュコンテンツは属性を有することができ,属性はmaxAgeを含み得るものであり,属性maxAgeは,キャッシュされたリソースの年齢が指定された秒数を超えた後は,キャッシュされたリソースは新鮮ではないと見なされることを示すものであり,
NA2は,M2M server1にリソース検索要求を発行し,
M2M server1は,NA2からの要求を受信すると,キャッシュされたコピーを見つけることができるものであって,
M2M server1は,キャッシュされたリソースのmaxAge属性をチェックし,maxAgeがまだ0を超えている場合,キャッシュされたリソースを直接返す場合があり,maxAgeの有効期限が切れている場合,M2M server1は更新要求を発行する,
リソースのキャッシング。」

(3)対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明は,「データ提供装置及びプロキシ装置がネットワークを介して接続されており,プロキシ装置は,データ取得装置からの要求に応じてデータ提供装置に対して代理でデータの取得要求を行い,これによって取得したデータをデータ取得装置に送信するもの」であって,「プロキシ装置はデータ取得装置に相当するもの」であるところ,前記「データ提供装置」及び「プロキシ装置」は,いずれも“マシン”であり,前記「ネットワーク」は“通信システム”に他ならず,前記「データ」は“資源”であるといえる。
してみると,引用発明における,「ネットワークを介して接続され」た「データ提供装置及びプロキシ装置」における「データ取得装置の処理手順」は,通信システムを介して接続されたマシンとマシンの間において,資源を取得する手順であるといえる。
よって,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“マシンツーマシンM2M通信システムに適用される資源取得方法”である点で一致する。

(イ)引用発明は,「ユーザは,入力部を用いた入力操作により,所望するデータがネットワーク上のどこに格納されているかを示す位置情報,即ちデータの取得先情報となるURL(Universal Resource Locator)を入力し,データの取得実行を指示」するものであって,「データ提供装置及びプロキシ装置がネットワークを介して接続されており,プロキシ装置は,データ取得装置からの要求に応じてデータ提供装置に対して代理でデータの取得要求を行」うものである。
ここで,「データの取得実行を指示」する「ユーザ」は,“データ要求者”に他ならず,「データ取得装置からの要求に応じてデータ提供装置に対して代理でデータの取得要求を行う」「プロキシ装置」は,データ取得装置からデータの取得要求を受信しているものであるから,“データを取得するために資源要求者によって送られた第一の要求を受領する”“受付部”であるといえ,引用発明の「データ取得装置の処理手順」は,“受付部によって,データを取得するためにデータ要求者によって送られた第一の要求を受領する段階を含む”といえる。
そして,引用発明の「データの取得先情報となるURL(Universal Resource Locator)」は,“データの資源識別子”であるといえ,引用発明において,「ユーザ」が「データの取得先情報となるURL(Universal Resource Locator)を入力し,データの取得実行を指示」することは,ユーザが指示する取得要求に当該URLが含まれていることを示すものであるから,“第一の要求はデータのデータ識別子を担持し”ているといえる。
さらに,引用発明は,「データ検索部は,ユーザにより入力されたURLが指し示すデータが自装置のデータ保存部に保存されているかどうかを検索するものであり,この検索は,データ保存部が保持しているキャッシュテーブルを参照することによって行う」ところ,「前記キャッシュテーブルには,データの取得先情報となるURLと,このURLが指し示すデータが自装置上で保存されている位置(キャッシュの位置)と,データの最終更新日時とが組(対)になって保存される」ものである。
してみると,引用発明は,「自装置のデータ保存部が保持しているキャッシュテーブル」に,「URLが指し示す」「データの最終更新日時」が保存されているものであって,前記「データの最終更新日時」は“データの最終修正時刻属性”に他ならないから,“データが最終修正時刻属性を含む”といえる。
よって,上記(ア)の検討も踏まえると,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“受付部によって,資源を取得するために資源要求者によって送られた第一の要求を受領する段階であって,前記第一の要求は前記資源の資源識別子を担持し,前記資源が最終修正時刻属性を含む,段階”を含む点で一致する。

(ウ)引用発明において,「データ検索部は,ユーザにより入力されたURLが指し示すデータが自装置のデータ保存部に保存されているかどうかを検索する」ことは,“URLに基づいて,データ検索部が,データを記憶していることを判別する”ことに他ならない。
そして,引用発明は,「プロキシ装置は,データ取得装置からの要求に応じてデータ提供装置に対して代理でデータの取得要求を行」うものであって,「プロキシ装置はデータ取得装置に相当するものであって」,「データ取得装置は,入力部,データ保存部,データ検索部,データ受信部,データ取得要求部,データ更新部を備えて」いるものであるから,プロキシ装置のデータ検索部が“URLに基づいて,データを記憶していることを判別する”ものであるといえ,引用発明の「データ取得装置の処理手順」は,“プロキシ装置によって,URLに基づいて,プロキシ装置がデータを記憶していることを判別する段階を含む”といえる。
よって,上記(ア)及び(イ)の検討も踏まえると,本件補正発明と引用発明とは,“受付部によって,資源識別子に基づいて,前記受付部が前記資源を記憶していることを判別する段階”を含む点で一致する。

(エ)引用発明は,「データ受信部は,先の取得要求に対するデータ提供装置からの応答データを受信し」,「応答データが差分データであると判別された場合は,データ更新部で更新データを生成するものであって,更新データを生成するにあたっては,先ず,前述したキャッシュテーブルを参照して,該当するデータがデータ保存部に保存されている位置(キャッシュの位置)を取得し,次いで,その取得した位置に保存されている保存データと,応答に含まれる差分データとを合成し,これによって更新データを生成する」ものである。
ここで,「データ提供装置からの応答データ」とは,データ提供装置から「受信」したデータであって,「データ」は“内容”といえるから,“データ提供装置から受領された属性値内容”といえるものであり,「更新データを生成する」ことは,“データの値を更新する”ことに他ならず,「応答に含まれる差分データ」とは,“データ保存部に保存されているデータの属性値に対して変化している属性値内容”であるといえる。
そして,引用発明は,上記(ウ)で検討したように,「プロキシ装置はデータ取得装置に相当する」ものであって,「データ提供装置」は「データ更新部」及び「データ保存部」を備えるものであるから,プロキシ装置のデータ更新部が,プロキシ装置のデータ保存部に記憶されているデータの値を更新するものであるといえ,引用発明の「データ取得装置の処理手順」は,“プロキシ装置によって,データ提供装置から受領された属性値内容に基づいてプロキシ装置に記憶されているデータの値を更新する段階を含む”といえる。
よって,上記(ア)及び(ウ)の検討も踏まえると,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“受付部によって,資源サーバーから受領された属性値内容に基づいて前記受付部に記憶されている前記資源の値を更新する段階であって,前記受領された属性値内容は,前記受付部に記憶されている前記資源の属性値に対して変化している属性値内容である,段階”を含む点で一致する。

(オ)引用発明は,「プロキシ装置は,データ取得装置からの要求に応じてデータ提供装置に対して代理でデータの取得要求を行い,これによって取得したデータをデータ取得装置に送信する」ものであるから,「プロキシ装置」は,「取得したデータをデータ取得装置に送信する」ものであって,これは「データの取得実行を指示し」た「ユーザ」に「送信する」ことに他ならないから,引用発明の「データ取得装置の処理手順」は,“取得したデータをユーザに送る段階を含む”といえる。
そして,引用発明は「データ更新部で更新データを生成するものであって,更新データを生成するにあたっては,先ず,前述したキャッシュテーブルを参照して,該当するデータがデータ保存部に保存されている位置(キャッシュの位置)を取得し,次いで,その取得した位置に保存されている保存データと,応答に含まれる差分データとを合成し,これによって更新データを生成するもの」であるところ,前記「その取得した位置に保存されている保存データ」,「応答に含まれる差分データ」とは,上記(イ)及び(ウ)の検討も踏まえると,それぞれ“受付部に記憶されており変化しない属性値内容”,“資源サーバーから受領された属性値内容”といえるので,「その取得した位置に保存されている保存データと,応答に含まれる差分データとを合成し」て「生成」された前記「更新データ」は,“受付部に記憶されており変化しない属性値内容”及び“資源サーバーから受領された属性値内容”を含むといえる。
よって,上記(ア)?(ウ)の検討も踏まえると,本件補正発明と引用発明とは,“受付部によって,資源の更新された値を資源要求者に送る段階であって,前記資源の前記更新された値は,前記受付部に記憶されており変化しない属性値内容と,前記資源サーバーから受領された属性値内容とを含む,段階”とを含む点で一致する。

イ 上記(ア)?(オ)の検討から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

<一致点>
「マシンツーマシンM2M通信システムに適用される資源取得方法であって:
受付部によって,資源を取得するために資源要求者によって送られた第一の要求を受領する段階であって,前記第一の要求は前記資源の資源識別子を担持し,前記資源が,最終修正時刻属性を含む,段階と;
前記受付部によって,前記資源識別子に基づいて,前記受付部が前記資源を記憶していることを判別する段階と;
前記受付部によって,前記資源サーバーから受領された属性値内容に基づいて前記受付部に記憶されている前記資源の値を更新する段階であって,前記受領された属性値内容は,前記受付部に記憶されている前記資源の属性値に対して変化している属性値内容である,段階と;
前記受付部によって,前記資源の前記更新された値を前記資源要求者に送る段階であって,前記資源の前記更新された値は,前記受付部に記憶されており変化しない属性値内容と,前記資源サーバーから受領された属性値内容とを含む,段階とを含む,
方法。」

<相違点1>
本件補正発明は、資源が“資源の有効期間を示すために使われる時間属性”を含むものであるのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

<相違点2>
本件補正発明は,“受付部によって,時間属性に基づいて,資源が有効期限切れかどうかを判別する段階とを含み”,“前記受付部が前記時間属性に基づいて,前記資源が有効期限切れでないことを判別する場合,当該方法はさらに:”“前記受付部によって,前記受付部に記憶されている前記資源の値を資源要求者に送る段階”を含むのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

<相違点3>
本件補正発明は,“受付部が,時間属性に基づいて,資源が有効期限切れであることを判別する場合”に受付部に記憶されている資源の値を更新するものであるのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

<相違点4>
本件補正発明は,「受付部に記憶されている最終修正時刻属性値は資源サーバーに記憶されている最終修正時刻属性値と異なる」のに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。

(4)当審の判断

上記相違点について検討する。

ア <相違点1>?<相違点3>について
上記「(2)(2-2)イ」に示したとおり,上記引用文献2には,以下の技術が記載されている(再掲)。

「リソースのキャッシングであって,
キャッシュコンテンツは属性を有することができ,属性はmaxAgeを含み得るものであり,属性maxAgeは,キャッシュされたリソースの年齢が指定された秒数を超えた後は,キャッシュされたリソースは新鮮ではないと見なされることを示すものであり,
NA2は,M2M server1にリソース検索要求を発行し,
M2M server1は,NA2からの要求を受信すると,キャッシュされたコピーを見つけることができるものであって,
M2M server1は,キャッシュされたリソースのmaxAge属性をチェックし,maxAgeがまだ0を超えている場合,キャッシュされたリソースを直接返す場合があり,maxAgeの有効期限が切れている場合,M2M server1は更新要求を発行する,
リソースのキャッシング。」

引用文献2に記載の上記技術は,リソースのキャッシングにおいて,リソース検索要求が発行されると,キャッシュされたリソースのmaxAge属性をチェックし,maxAgeがまだ0を超えている場合,キャッシュされたリソースを直接返し,maxAgeの有効期限が切れている場合,M2M server1は更新要求を発行する技術である。
ここで,引用文献2に記載の前記「maxAge属性」は,「キャッシュされたリソースの年齢が指定された秒数を超えた後は,キャッシュされたリソースは新鮮ではないと見なされる」ものであるから,キャッシュされたリソースの経過時間が指定された秒数を超えた後は,新しいリソースではないと見なされるといえるから,本件補正発明の“資源の有効期間を示すために使われる時間属性”に相当し,引用発明の「maxAgeがまだ0を超えている場合」,「maxAgeの有効期限が切れている場合」とは,それぞれ本件補正発明の“有効期限切れでないことを判別する場合”,“資源が有効期限切れであることを判別する場合”に相当するものである。
さらに,引用文献2に記載の「キャッシュされたリソースを直接返」すこと,「M2M server1は更新要求を発行する」ことは,それぞれ本件補正発明の“記憶されている資源の値を資源要求者に送る段階”,“資源の値を更新する段階”に対応するものである。

してみると,引用文献2には,“資源が資源の有効期間を示すために使われる時間属性を含み”,“時間属性に基づいて,前記資源が有効期限切れかどうかを判別”し、“前記資源が有効期限切れでないことを判別する場合”,“記憶されている前記資源の値を前記資源要求者に送”り,“資源が有効期限切れであることを判別する場合”,“資源の値を更新する”技術が開示されているといえる。

引用発明と引用文献2に記載の上記技術は,ともに,マシンツーマシンM2M通信システムにおけるキャッシング技術という共通の技術分野に属するものである。
さらに,引用文献1の上記Dには,
「判定基準を1時間とし、データ取得装置7からデータの取得要求があった日時から1時間以内のデータがプロキシ装置5のデータ保存部501に残っている場合は、データ提供装置4にデータの取得要求を行わず、データ保存部501に保存されているデータを応答としてデータ取得装置7に送信してもよい。」
と記載されており,引用文献1の上記記載は,プロキシ装置のデータ保存部に残っているデータが,データの取得要求があった日時から1時間以内という有効期限が切れていない場合は,プロキシ装置のデータ提供装置にデータの取得要求を行わず,当該データ保存部に保存されているデータをデータ取得装置に送信することを示唆するものである。

通信システムにおいて,通信するデータを削減して通信負荷の軽減を図ることは自明な共通の課題であるところ,引用文献1に記載の前述の示唆に基づいて,引用発明に引用文献2に記載の技術を適用し,
資源が“資源の有効期間を示すために使われる時間属性”を含み,
“受付部によって,時間属性に基づいて,資源が有効期限切れかどうかを判別する段階とを含み”,“前記受付部が前記時間属性に基づいて,前記資源が有効期限切れでないことを判別する場合,当該方法はさらに:”“前記受付部によって,前記受付部に記憶されている前記資源の値を資源要求者に送る段階”を含み,
“受付部が,時間属性に基づいて,資源が有効期限切れであることを判別する場合”に受付部に記憶されている資源の値を更新する
とすることは,当業者であれば容易に想到し得たものである。

イ <相違点4>について
引用発明は,「保存されている保存データと,応答に含まれる差分データとを合成し,これによって更新データを生成する」ものであるところ,応答に含まれる差分データは,既に保存されていた保存データより新しいデータであることは自明であるから,データ保存部に保存されているデータの「最終更新日時」は,データ提供装置からの応答に含まれる差分データ,すなわちデータ提供装置に保存されているデータの「最終更新日時」とは“異なる”ことも明らかである。
よって,上記相違点4は,実質的な相違点であるとはいえない。

ウ 小括

上記ア及びイで検討したとおり,相違点1?相違点4に係る構成は,引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび

よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明の認定

令和2年6月17日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和1年9月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,上記「第2[理由]1(2)」に記載された下記のとおりのものである(再掲)。

「 マシンツーマシンM2M通信システムに適用される資源取得方法であって:
受付部によって、資源を取得するために資源要求者によって送られた第一の要求を受領する段階であって、前記第一の要求は前記資源の資源識別子を担持し、前記資源が、前記資源の有効期間を示すために使われる時間属性および最終修正時刻属性を含む、段階と;
前記受付部によって、前記資源識別子に基づいて、前記受付部が前記資源を記憶していることを判別する段階と;
前記受付部によって、前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れかどうかを判別する段階とを含み、
前記受付部が前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れでないことを判別する場合、当該方法はさらに:
前記受付部によって、前記受付部に記憶されている前記資源の値を前記資源要求者に送る段階を含み、
前記受付部が、前記時間属性に基づいて、前記資源が有効期限切れであることを判別する場合、当該方法はさらに:
前記受付部によって、前記資源サーバーから受領された属性値内容に基づいて前記受付部に記憶されている前記資源の値を更新する段階であって、前記受領された属性値内容は、前記受付部に記憶されている前記資源の属性値に対して変化している属性値内容であり、前記受付部に記憶されている最終修正時刻属性値は前記資源サーバーに記憶されている最終修正時刻属性値と異なる、段階と;
前記受付部によって、前記資源の前記更新された値を前記資源要求者に送る段階とを含む、
方法。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?3,5?9に係る発明は,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び引用文献2に記載された発明に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,この出願の請求項4,10に係る発明は,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?引用文献3に記載された発明に記載された技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1.特開2002-55870号公報
引用文献2.米国特許出願公開第2015/0055557号明細書
引用文献3.特開2009-9592号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献1,引用文献2,及びその記載事項は,上記「第2[理由]2(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は,上記「第2[理由]2(1)」で検討した本件補正発明の「資源の更新された値」について,「前記受付部に記憶されており変化しない属性値内容と、前記資源サーバーから受領された属性値内容とを含む」との限定を削除するものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2[理由]2(3),(4)」に記載したとおり,引用発明及び引用文献2に記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び引用文献2に記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-01-22 
結審通知日 2021-01-26 
審決日 2021-02-12 
出願番号 特願2018-558470(P2018-558470)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原 秀人  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 月野 洋一郎
山崎 慎一
発明の名称 資源取得方法および関係した装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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