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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1375690
審判番号 不服2020-9580  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-08 
確定日 2021-06-30 
事件の表示 特願2015-217792「蛍光体層被覆光半導体素子およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-119454〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成27年11月5日(優先権主張平成26年12月17日)の出願であって、その後の主な手続きの経緯は、以下のとおりである。

平成29年12月22日 :出願人名義変更届の提出
平成30年11月 5日 :出願審査請求書・手続補正書の提出
令和元年 5月10日付け:拒絶理由通知(同年5月21日発送)
同年 8月 7日 :意見書・手続補正書の提出
同年10月10日付け:拒絶理由通知(同年10月15日発送)
令和2年 1月14日 :意見書・手続補正書の提出
同年 3月 5日付け:補正の却下の決定(同年3月10日送達)
同年 3月 5日付け:拒絶査定(同年3月10日送達)
同年 7月 8日 :審判請求書・手続補正書の提出

第2 令和2年7月8日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月8日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正内容
本件補正は、特許請求の範囲についてするものであり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項5(令和元年8月7日付け手続補正後のもの)に、

「【請求項5】
発光装置であって、
下表面、該下表面に相対する第一上表面、及び第一側面を有する光半導体素子と、
前記第一上表面及び前記第一側面を覆い且つ前記第一上表面及び前記第一側面に直接接触し、第二側面及び第二上表面を有する蛍光体層と、
前記第二上表面を覆い且つ前記第二上表面に直接接触し、第三上表面を有する透明層と、を含み、
前記第一上表面と前記第二上表面との間に厚さがあり、前記第一側面と前記第二側面との間に距離があり、前記厚さ/前記距離が1?2.5の間にあり、前記発光装置の-85°?85°方向における色度差が0.02よりも低い、発光装置。」とあったものを、

本件補正後に、項番を一つ繰り上げて、
「【請求項4】
発光装置であって、
下表面、該下表面に相対する第一上表面、及び第一側面を有する光半導体素子と、
前記第一上表面及び前記第一側面を覆い且つ前記第一上表面及び前記第一側面に直接接触し、第二側面及び第二上表面を有する蛍光体層と、
前記第二上表面を覆い且つ前記第二上表面に直接接触し、第三上表面を有する透明層と、を含み、
前記第一上表面と前記第二上表面との間に厚さがあり、前記第一側面と前記第二側面との間に距離があり、前記厚さ/前記距離が1.9よりも大きく且つ2.5以下である、前記発光装置の-85°?85°方向における色度差が0.02よりも低い、発光装置。」と補正する内容を含むものである(なお、下線は、当審で付したものである。)。

2 補正目的
(1)本件補正は、本件補正前の請求項5に係る発明を特定するために必要な「厚さ/距離」の数値範囲について、「1?2.5の間にあり」を、より狭い「1.9よりも大きく且つ2.5以下である」と限定するものであって、その補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(2)よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められることから、本件補正後の請求項4に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「第2 1」に、本件補正後の請求項4として記載したとおりのものである。

(2)引用文献
ア 原査定の拒絶の理由において、引用文献1として引用された特開2010-183035号公報(平成22年8月19日公開 以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(なお、下線は、当審で付した。以下同様。)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に直接的又は間接的に実装される発光素子と、
前記発光素子の側面を被覆する側面被覆部と、前記側面被覆部よりも厚く形成され前記発光素子の上面を被覆する上面被覆部と、を有する蛍光層と、
前記基板上にて前記蛍光層により被覆された前記発光素子を覆うドーム型のレンズ部と、を備えた発光装置。
【請求項2】
前記蛍光層は、蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子が分散された透明材料と、を含み、
前記レンズ部の屈折率は、前記蛍光層の前記透明材料の屈折率と同じ若しくは大きい請求項1に記載の発光装置。」

(イ) 「【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レンズ部がドーム型の発光装置において、装置から放射される光の色ムラを低減することができる。」

(ウ)「【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の一実施形態を示し、図1は発光装置の外観斜視図である。
図1に示すように、発光装置1は、基板2上に直接的に実装されるLED素子3と、LED素子3を全体的に被覆する蛍光層4と、基板2上にて蛍光層4により被覆されたLED素子3を覆うレンズ部5と、を備えている。本実施形態においては、LED素子3から青色光が放射され、当該青色光の一部が蛍光層4にて黄色光に変換されることにより、レンズ部5から装置外部へ白色光が放射される。
【0012】
……
【0018】
ここで、蛍光層4の透明部材42とレンズ部5を同じ材料で形成したので、透明部材42とレンズ部5が同じ屈折率であり、蛍光層4とレンズ部5の界面で全反射が生じることはなく、蛍光層4内に光が閉じ込められることはない。このように、蛍光層4の屈折率と同じ屈折率のレンズ部5を設けたことにより、LED素子3から発せられる光の取り出し効率が高くなる。尚、レンズ部5の屈折率が蛍光層4より高くても、LED素子3から放射される光については、蛍光層4とレンズ部5の界面で全反射することはない。
【0019】
……
【0025】
以下、実施例及び比較例1について説明する。
[実施例]
配光特性のデータを取得するにあたり、1.0mm角のLED素子3を用いて発光素子1を作製した。基板2としてはCuWが内部に埋め込まれたアルミナを用い、基板2の回路パターンをAuSnにより形成した。また、LED素子3は、厚さ0.375mmのサファイア基板にn型層、発光層、p型層の層構成のGaN系半導体層をこの順で形成し、p型層及び発光層の一部を除去してn型層の一部を露出させて作製した。露出させたn型層のn電極としてV/Alを用い、p型層のp電極としてRhを用いた。蛍光層4は、YAGからなる蛍光体粒子41をシリコーン樹脂からなる透明樹脂42に分散させて作製した。蛍光層4の厚さは、側面被覆部43を250μmとし、上面被覆部44を475μmとした。レンズ部5は、シリコーン樹脂として、基板2上にて半径1.25mmの半球状とした。
【0026】
[比較例1]
図2は、比較例1を示す発光装置の断面説明図である。
図2に示すように、比較例1として、蛍光層104の上面被覆部144と側面被覆部143の厚さが同じ発光装置101を作製した。具体的には、蛍光層104の上面被覆部144の厚さを250μmとし、その他の構成を実施例の発光装置1と同様とした。
【0027】
図3は、実施例と比較例1の装置外部へ放射される光について、光軸(LED素子の上面中央に垂直な軸)に対する角度と、色度との関係を示すグラフである。
図3に示すように、比較例1においては、光軸に対する角度が±90°で最大の色度を示し、0°で最小の色度を示した。これに対し、実施例においては、光軸に対する角度が、-60°から+60の範囲で色度がほぼ同じとなり、この範囲で色度の差は殆ど認められなかった。具体的に、比較例において最大の色度と最小の色度の差が約0.6だったところ、実施例において最大の色度と最小の色度の差を約0.3とすることができ色度差を半減することができた。尚、-60°から+60の範囲に限って言えば、比較例の色度差が約0.3であるところ、実施例の色度差は0.1未満である。」

(エ)実施例を示す図1は、以下のものである。

(オ)比較例1を示す図2は、以下のものである。

(カ)図3は、以下のものである。


イ 引用文献に記載された発明
(ア)上記ア(ア)及び(イ)の記載からして、引用文献には、
「色ムラを低減した発光装置であって(摘記(イ))、
基板上に実装される発光素子と、
前記発光素子の側面を被覆する側面被覆部と、前記側面被覆部よりも厚く形成され前記発光素子の上面を被覆する上面被覆部と、を有する蛍光層と、
前記基板上にて前記蛍光層により被覆された前記発光素子を覆うドーム型のレンズ部と、を備え(請求項1)、
前記蛍光層は、蛍光体粒子と、前記蛍光体粒子が分散された透明材料と、を含み、
前記レンズ部の屈折率は、前記蛍光層の前記透明材料の屈折率より大きい(請求項2)、色ムラを低減した発光装置。」が記載されているものと認められる。

(イ)上記ア(ウ)の記載を踏まえて、図1を見ると、上記(ア)の「発光装置」に関して、以下のことが理解できる。
a 当該「発光装置」は、発光素子からの青色光と蛍光層からの黄色光との混合光である白色光を放射すること。
b 当該「発光装置」における「発光素子」は、厚さ0.375mmのサファイア基板にn型層、発光層、p型層の層構成のGaN系半導体層をこの順で形成した、1.0mm角のLED素子であること。
c 当該「発光装置」における「蛍光層」は、YAG蛍光体粒子を透明樹脂に分散させた材料からなり、側面被覆部の厚さは250μm、上面被覆部の厚さは475μmであること。
d 当該「発光装置」における「ドーム型のレンズ部」は、透明樹脂からなる半径1.25mmの半球状であり、光の取り出し効率を高くすること。

(ウ)上記ア(ウ)の記載、図1及び図2を踏まえて、図3を見ると、
当該図3における縦軸は、その表記(Cx)からして、色度図におけるx軸(横軸)であることが理解できる。
なお、Cxにより色ムラを評価できることが技術常識であることについては、例えば、下記の文献を参照(以下、「技術常識)という。)。

(a)国際公開第2013/046674号([0079])
(b)特開2014ー36083号公報(【0040】ないし【0042】、図3及び図4)
(c)特開2013ー157397号公報(【0035】及び図3)
(d)特開2010ー114218号公報(図11及び図12)
ちなみに、(d)特開2010ー114218号公報の図11(c)及び図1(a)は、以下のものである。
図11(c)

図1(a)

また、(a)国際公開第2013/046674号の[0079]には、以下のように記載されている。
「…LED装置を発光させて、発光(白色照明)の色ムラを、コニカミノルタセンシング社製 2次元色彩輝度計CA2000を用いて測定した。2次元色彩輝度計を用いることで2次元的に照射光を評価することができる。得られた照射光内の色度x値の色度差で、色ムラを評価した。色度差が大きいと、照射光内に色ムラがあることを意味する。例えば、照射光内に色ムラがあり、黄色い部分と青い部分とが存在すると、その部分の色度差が大きくなる。色度差に応じて、以下の基準で評価を行った。
照射光内の色度差 x値の差:0.01未満・・・◎
照射光内の色度差 x値の差:0.01以上0.02未満・・・○
照射光内の色度差 x値の差:0.02以上・・・× 」

また、(b)特開2014ー36083号公報の【0040】ないし【0042】には、以下のように記載されている。
「【0040】
青色光と黄色光の強度比が変わり、黄色光の比率が大きくなるので、色度座標(Cx、Cy)が矢印方向(黄色方向)に移動し、黄色みを帯びてくることを示している。
【0041】
色度が角度依存性を示すのは、青色光が蛍光体を含有する透光性樹脂を通過する距離の違いによる。即ち、距離が長いほど青色光は蛍光体に吸収され黄色光に変換される。逆に距離が短いほど、蛍光体に吸収される量が減り、青色光のまま放出される。その結果、角度θにより、青色光と黄色光の比率が変化する。
【0042】
図3に示すように、比較例の半導体発光装置20では、正負両方向とも角度θに応じて略対称にΔCx、ΔCyが増大する角度依存性を示している。ΔCx、ΔCyは、角度θが略20度から70度までは第1の勾配K1で増加している。角度θが70度を超えると、急激に増加している。」

さらに、(c)特開2013ー157397号公報の【0035】には、以下のように記載されている。
「図3(a)は色度Cxの場合、図3(b)は色度Cyの場合である。
ここで、色合いのばらつきは、照射角度に対する色度の差で表される。
例えば、0degにおける色度と、90degまたは-90degにおける色度との差が小さくなるほど色合いのばらつきが小さくなる。
図3(a)、(b)から分かるように、比較例に係る発光装置11においては、色度差ΔCxは0.1程度、色度差ΔCyは0,1以上となる。」

(エ)そして、上記技術常識を踏まえて、再度、図3を見ると、以下のことが理解できる。
a Cxが大きくなることは、黄色光の比率が大きくなることを意味すること(青色光の蛍光層を通過する距離が長くなる)。
b Cxが小さくなることは、青色光の比率が大きくなることを意味すること(青色光の蛍光層を通過する距離が短くなる)。
c 比較例1(■)は、Cxの最大値と最小値の差が大きく、青色光と黄色光の比率の変化が大きいこと(角度依存性が大きい)。
d 実施例(●)は、Cxの最大値と最小値の差(以下「ΔCx」という。)が小さく、青色光と黄色光の比率の変化が小さいこと(角度依存性が小さい)。
e 角度0°における比較例1のCxは小さく、実施例と比較して黄色光の比率が小さいこと(比較例1では、実施例と比較して蛍光層の上面被覆部が薄いこと)。
f 実施例においては、光軸に対する角度が-85°から+85°の範囲において、ΔCxは略0.03であること(なお、【0027】に記載された「0.3」、「0.6」及び「0.1」は、それぞれ、「0.03」、「0.06」及び「0.01」の誤記と認められる。)。

(オ)上記(ア)ないし(エ)の検討からして、引用文献には、実施例に関する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「色ムラを低減した発光装置であって、
基板上に実装される青色発光素子と、
前記青色発光素子の側面を被覆する厚さ250μmの側面被覆部と、前記側面被覆部よりも厚く形成され前記青色発光素子の上面を被覆する厚さ475μmの上面被覆部と、を有するYAG蛍光体粒子を透明樹脂に分散させた材料からなる蛍光層と、
前記基板上にて前記蛍光層により被覆された前記青色発光素子を覆う透明樹脂からなる半径1.25mmのドーム型のレンズ部と、を備え、
前記青色発光素子は、厚さ0.375mmのサファイア基板にn型層、発光層、p型層の層構成のGaN系半導体層をこの順で形成した、1.0mm角の発光素子であり,
前記ドーム型のレンズ部の屈折率は、前記蛍光層の前記透明材料の屈折率より大きく、
光軸に対する角度が-85°から+85°の範囲において、ΔCxは略0.03である、色ムラを低減した発光装置。」

(3)対比
ア 引用発明の「色ムラを低減した発光装置」は、本願補正発明の「発光装置」に相当する。
以下、同様に、
「『厚さ0.375mmのサファイア基板にn型層、発光層、p型層の層構成のGaN系半導体層をこの順で形成した、1.0mm角の』『青色発光素子』」は、「下表面、該下表面に相対する第一上表面、及び第一側面を有する光半導体素子」に、
「青色発光素子の側面を被覆する厚さ250μmの側面被覆部と、前記側面被覆部よりも厚く形成され前記青色発光素子の上面を被覆する厚さ475μmの上面被覆部と、を有するYAG蛍光体粒子を透明樹脂に分散させた材料からなる蛍光層」は、「第一上表面及び第一側面を覆い且つ前記第一上表面及び前記第一側面に直接接触し、第二側面及び第二上表面を有する蛍光体層」に、それぞれ、相当する。

イ(ア)本願補正発明の「透明層」に関連して、本願明細書には、以下の記載がある。
「【0217】
第1実施形態では、LED2と、蛍光体層3と、透明層4とを、それぞれ、平面視略矩形状に形成しているが、その形状は、特に限定さない。
【0218】
さらに、第1実施形態では、図1に示すように、透明層4を断面視略矩形状に形成しているが、例えば、図示しないが、上面が湾曲する断面ドーム形状(あるいは凸レンズ形状)に形成することもできる。その場合には、距離zは、蛍光体層3の上面31から、透明層4の最上面までの距離である。
【0219】
さらに、透明層4を、上側に向かって平断面が小さくなる略錐形状、具体的には、四角錐形状、三角錐形状などの多角錘形状に形成することもできる。」

(イ)上記記載からして、本願補正発明の「透明層」の形状は、断面視略矩形状だけに限らず、上面が湾曲する断面ドーム形状を包含するものと解される。

(ウ)してみると、引用発明の「基板上にて蛍光層により被覆された青色発光素子を覆う半径1.25mmのドーム型のレンズ部」は、本願補正発明の「第二上表面を覆い且つ前記第二上表面に直接接触し、第三上表面を有する透明層」に相当する。

ウ 上記ア及びイからして、本願補正発明と引用発明とは、
「発光装置であって、
下表面、該下表面に相対する第一上表面、及び第一側面を有する光半導体素子と、
前記第一上表面及び前記第一側面を覆い且つ前記第一上表面及び前記第一側面に直接接触し、第二側面及び第二上表面を有する蛍光体層と、
前記第二上表面を覆い且つ前記第二上表面に直接接触し、第三上表面を有する透明層と、を含む」点で一致する。

エ 引用発明において、「上面被覆部」の厚さ「475μm」は、青色発光素子の上面を覆う蛍光層の厚さであり、「側面被覆部」の厚さ「250μm」は、青色発光素子の側面と蛍光層の外側側面との距離であるといえるから、厚さ/距離は「1.9」(475/250)となる。
よって、本願補正発明と引用発明とは、「第一上表面と第二上表面との間に厚さがあり、第一側面と第二側面との間に距離があり、前記厚さ/前記距離が所定の範囲である」点で一致する。

オ 引用発明は、「色ムラを低減した発光装置」であって、「光軸に対する角度が-85°から+85°の範囲において、ΔCxは略0.03」であり、Cxに関しての色度の角度依存性が小さいことから、-85°から+85°の範囲における色度差についても、所定値以下であると認められる。
よって、本願補正発明と引用発明とは、
「発光装置の-85°?85°方向における色度差が所定値Aよりも低い」点で一致する。

カ 上記アないしオの検討から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
〈一致点〉
「発光装置であって、
下表面、該下表面に相対する第一上表面、及び第一側面を有する光半導体素子と、
前記第一上表面及び前記第一側面を覆い且つ前記第一上表面及び前記第一側面に直接接触し、第二側面及び第二上表面を有する蛍光体層と、
前記第二上表面を覆い且つ前記第二上表面に直接接触し、第三上表面を有する透明層と、を含み、
前記第一上表面と前記第二上表面との間に厚さがあり、前記第一側面と前記第二側面との間に距離があり、前記厚さ/前記距離が所定の範囲である、前記発光装置の-85°?85°方向における色度差が所定値Aよりも低い、発光装置。」

キ 一方、両者は、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
「厚さ/距離」の「所定の範囲」に関して、
本願補正発明は、「1.9よりも大きく且つ2.5以下である」のに対して、
引用発明は、1.9である点。

〈相違点2〉
「色度差」の「所定値A」に関して、
本願補正発明は、「0.02よりも低い」のに対して、
引用発明は、ΔCxは略0.03である点。

(4)判断
ア 上記〈相違点1〉について検討する。
(ア)引用文献の【0026】等の記載によれば、比較例1は上面被覆部の厚さが250μm(厚さ/距離=1.0)であるのに対して、実施例ではその厚さを475μm(厚さ/距離=1.9)とすることで、色ムラを低減することができたものであるから、色ムラをさらに低減するように上面被覆部の厚さをより厚くする動機はあるといえ、引用発明において、上面被覆部の厚さを、より厚い、例えば、480μm(厚さ/距離=1.92)とすることに何ら困難性は認められず、そのことを妨げる特段の事情は認められない。

(イ)また、本願明細書の【0146】の「(4)距離yを距離αで除した値(y/α)は、例えば、1以上、好ましくは、1.2以上であり、また、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下である。y/αが上記上限以下であれば、色ムラを抑制することができる。」との記載からして、「厚さ/距離」の値は、「好ましくは1.2以上2.0以下」であり、表2の各実施例を見ても、「1.4」の場合に、発光強度を含むすべての評価が良好であって、「1.9」及び「2.5」に臨界的な技術的意義は認められない。

(ウ)よって、引用発明において、上記〈相違点1〉に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記〈相違点2〉について検討する。
(ア)上記アで検討したように、引用発明において、上記〈相違点1〉に係る本願補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)してみると、上記〈相違点1〉に係る本願補正発明の構成を採用した引用発明は、上記〈相違点2〉に係る本願補正発明の構成を除く本願補正発明の構成を有することになるから、自ずと、本願補正発明と同様に、発光装置の-85°?85°方向における色度差が0.02よりも低いものと認められる。
仮に、自ずと備えるものではないとしても、広い角度にわたって色ムラが生じないように、引用発明において、側面被覆部の厚さなどを最適化して、ΔCx(略0.03)をより小さくすることで、発光装置の-85°?85°方向における色度差を0.02よりも低くすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本願補正発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求書における主張について
請求人は、「(2)補正後の請求項4-7に係る発明」において、引例文献には、蛍光層(側面被覆部250μm、上面被覆部475μm)の厚さ/距離を1.9とした発明が開示されているだけである旨主張する。
当審注:審判請求書における引例1は、審決で引用する引用文献である。

しかしながら、上記(4)アでも説示したように、引用文献の請求項1等の記載に接した当業者であれば、上面被覆部の厚みの上限が実施例の「475μm」に限定されるものではないことは、容易に理解し得ることである。
よって、請求人の主張は採用できない。

4 本件補正についてのむすび
本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成2年7月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和元年8月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1」に記載のとおりのものである。
以下、念のため、再掲する。

「【請求項5】
発光装置であって、
下表面、該下表面に相対する第一上表面、及び第一側面を有する光半導体素子と、
前記第一上表面及び前記第一側面を覆い且つ前記第一上表面及び前記第一側面に直接接触し、第二側面及び第二上表面を有する蛍光体層と、
前記第二上表面を覆い且つ前記第二上表面に直接接触し、第三上表面を有する透明層と、を含み、
前記第一上表面と前記第二上表面との間に厚さがあり、前記第一側面と前記第二側面との間に距離があり、前記厚さ/前記距離が1?2.5の間にあり、前記発光装置の-85°?85°方向における色度差が0.02よりも低い、発光装置。」

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記「第2 3(2)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
(1)本願発明は、前記「第2 3(3)、(4)」で検討した本願補正発明を特定するために必要な「厚さ/距離」の数値範囲について、「1.9よりも大きく且つ2.5以下である」を、より広い「1?2.5の間にあり」としたものに相当する。

(2)そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに数値範囲を限定した本願補正発明が、前記「第2 3(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-01-22 
結審通知日 2021-01-26 
審決日 2021-02-12 
出願番号 特願2015-217792(P2015-217792)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村井 友和  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 近藤 幸浩
星野 浩一
発明の名称 蛍光体層被覆光半導体素子およびその製造方法  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
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