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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1375797
審判番号 不服2020-10092  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-20 
確定日 2021-07-27 
事件の表示 特願2019- 88681「医薬品管理システムおよび医薬品管理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月12日出願公開、特開2020-184236、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年5月8日の出願であって、令和元年11月28日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和2年4月7日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、令和2年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 この出願の請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2002-149819号公報
引用文献2.特開2011-62331号公報
引用文献3.特開2018-63516号公報
引用文献4.特開2006-89163号公報
引用文献5.株式会社ITC総合研究所 他,SEがはじめて学ぶ在庫管理 業務知識とシステム作りがすべてわかる,株式会社日本実業出版社,2009年09月10日,第1版,P.188-190

第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、令和2年7月20日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりのものである。(下線部は、補正箇所である。)

<本願発明1>
「【請求項1】
医薬品の流通業者から医療機関に配送された医薬品を保管する保管手段と、
医薬品と医薬品の所有者とを対応付けて管理する管理テーブルを記憶する記憶部と、
前記保管手段に保管された医薬品が持ち出されたことを読取センサからの出力信号を基に検知する検知手段と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記保管手段から医薬品が持ち出されたことを前記検知手段が検知してから医薬品の使用を示す所定期間が経過すると、前記管理テーブルにおいて前記持ち出された医薬品に対応付けられた所有者を前記医療機関に変更することを特徴とする、
医薬品管理システム。」

本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明6は、本願発明1の医薬品管理システムの保管手段、記憶部、検知手段が行う処理を含む医薬品管理方法に係る発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1(特開2002-149819号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。下線は、注目箇所に当審が付した。

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、病院や薬局における薬品在庫管理や薬品卸企業の卸業務管理の効率化に係わる薬品卸業務管理システムに関するものである。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、薬品卸売業者が設置したコンピュータシステムを利用し、病院や薬局での薬品の消化状況や在庫状態から需要を予測して、薬品を納入する業務形態を構築するための薬品卸業務管理システムを提供することを目的とするものである。
【0008】
【解決を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成したものであって、請求項1の発明は、薬品卸業者側に設置されたホストコンピュータと、前記ホストコンピュータに接続された病院や薬局の薬品の在庫情報を記憶する記憶装置と、病院や薬局に設置され、前記ホストコンピュータと通信手段で接続されるコンピュータとを有し、前記コンピュータと前記通信手段とを介して前記病院や薬局で消費した薬品の払出し情報を前記ホストコンピュータに伝送して、前記記憶装置に記憶し、前記ホストコンピュータで、前記病院や薬局側での薬品の消費傾向から適正納入期限及び納入量を推定して、前記薬品卸業者が適正量の薬品を前記病院や薬局に納入し、かつ前記病院や薬局側の薬品の払出し情報から実質消化した薬品量を演算処理して求めて、前記病院や薬局への請求額を決定するようにしたことを特徴とする薬品卸業務管理システムである。
【0018】
図1は、本発明の薬品卸業務管理システムの一実施形態を示しており、本実施形態についてその業務形態から説明する。先ず、本実施形態における業務形態は、同図に示したように、卸企業2は、製薬企業1から薬品(医療用医薬品)を仕入れて、これらの薬品を所定の包装単位で病院3(3_(1 ),3_(2 ),…)の元倉庫Wや薬局(調剤薬局)4(4_(1 ),…)の倉庫Wに納入して管理する。病院3では、元倉庫から払出単位で薬品を払い出して調剤部に保管される。薬品は消費者(患者)5に対し、医師の処方箋に基づいて、調剤部や調剤薬局4から渡される。
【0019】
卸企業2は、元倉庫,倉庫Wから払い出された薬品の消費量を算出して、例えば月毎に集計して実質的払出し量を求めて、請求額を決定し、かつ安全在庫数が確保されるように、薬品を元倉庫や倉庫Wに納入して補充し、在庫切れが発生しないように管理する。卸企業2には、病院3と薬局4からの通信手段を介して刻々消費データが提供され、かつその消費データ(払出し情報)から使用薬品の消費傾向を推定し、需要予測を行い、薬品毎の安全在庫数等を算出している。消費データには、病院の病棟等の消費施設の情報が入力されている。
【0020】
なお、上記の払出単位とは、薬品卸業務管理において、薬品を管理する上で適宜に設定した消費量を基準とする単位であり、各病院3或いは病院3の各病棟によって、異なった単位となる場合と同一の場合とがある。勿論、一個を一払出単位とする場合もある。薬品は、倉庫Wから払出単位で調剤部や調剤薬局へと移動する。この払出単位は、各病院3や薬局4の消費規模から適宜に推定して設定することができる。また、錠剤等の個数は、払出単位数からが算出することができる。また、一払出単位とするケースには、バーコ-ドラベルが貼付されて倉庫Wに納入される。一払出単位の薬品は、払出単位毎に薬品の使用期限管理を含めた在庫管理が行われる。一方、薬品の倉庫Wへの納入は、納入単位量で行われる。なお、薬品の病院3や薬局4(倉庫)への納入周期と一回の納入単位量は、相互に関連し、例えば多量に消費される薬品の場合、一回の納入単位量を多くすれば、納入周期を長くすることができる。
【0021】
また、元倉庫,倉庫Wの在庫状況は、病院3や薬局4の管理者(薬剤師)がコンピュータで確認することができる。卸企業2、病院3或いは薬局4では、同一の在庫管理データを基準として、在庫管理がなされる。無論、病院3や薬局4の管理者は、必要に応じて、薬品の納品請求が可能である。この納品請求は、直ちに支払義務が発生する性質のものではなく、納品請求によって、薬品は一旦病院3の元倉庫Wや薬局4の倉庫Wに納入され、倉庫Wからの薬品の払出しによって、実質的な支払義務が発生する。
【0022】
次に、本発明の薬品卸業務管理システムの一実施形態について、図1を参照して説明する。卸企業2には、ホストコンピュータ9が設置されて、ホストコンピュータ9と在庫データベースが格納される記憶装置10とが接続されている。記憶装置10には、各病院3と薬局4の入出庫状況の各データが格納されている。病院3には、コンピュータ12と携帯用端末装置14とが設けられている。薬局4には、コンピュータ14が設けられ、その規模に応じて、携帯用端末装置等が設けられる。卸企業2のホストコンピュータ9は、病院3のコンピュータ12或いは薬局4のコンピュータ14と通信回線11で接続されている。通信回線11は、専用回線や公衆回線、ISDN或いはインターネットの何れの通信手段でもよい。また、ホストコンピュータ9とコンピュータ12とを接続するためのこれらの通信手段は、何れの通信手段でもよい。なお、各通信手段には、それぞれ固有のインターフェースが必要である。また、ホストコンピュータ9は、集中処理方式や分散処理方式或いは集中処理方式と分散処理方式とを組み合わせたコンピュータシステムを含め、さらには、パーソナルコンピュータやサーバ用コンピュータ等を含めたものである。
【0023】
在庫データベース用の記憶装置10には、例えば、図2に示したように、各病院3_(1 ),3_(2 ),…の名前、所在地等のデータが格納され、病院A,B…の下位には、薬品の商品名,一般名,薬品識別コード,規格,剤形,包装形態(入数),商品単価,薬価基準,払出単位,薬効,のみ方等の薬品情報が格納される記憶領域E_(21)?E_(31),…が設けられ、さらに商品名又は一般名の下位には、納入番号,納入期日,使用期限(薬効期限),納入数量,払出数量,在庫数量等を記憶する記憶領域e_(1 )?e_(6 )…が設けられている。
【0025】
一方、病院3には、元倉庫Wが設置され、卸企業2は、薬品を安定在庫が維持するように、元倉庫Wに納入し、元倉庫Wでは、薬品の最適な環境が維持されている。病院3には、ホストコンピュータ9と通信回線11とで接続されるコンピュータ12が設置されている。コンピュータ12は、ハンディーターミナル(携帯端末装置)13からの払出しデータを取り込み、通信回線11を介して自動的にホストコンピュータ9に転送する機能を有する。ハンディーターミナル13は、元倉庫Wから薬品を払出す際に、薬品名,数量,部署等がテンキー等の入力手段で入力され、或いはバーコードによる薬品データが入力されて記憶され、この払出しデータは、コンピュータ12から通信回線11を経て、ホストコンピュータ9へと送信される。
【0032】
次に、請求額算出手段9dについて説明する。請求額算出手段9dは、月単位で請求を行うものとし、各薬品に対して、当月の期首在庫量と期末在庫量と納入量とから実質の払出し量が下記の演算式に基づいて算出される。請求額算出手段は、各薬品毎に演算処理が行われる。このようにして、各薬品の請求額が求められ、出力装置に出力することができる。無論、病院や薬局に対しての薬品の払出し量に対しての代金の請求は、通信手段で行ってもよい。病院や薬局は、金融機関を通して支払いがなされる。なお、支払いは、手形,現金でなされる場合もある。
【0033】
下記式では、倉庫Wに納入された量を納入量とし、倉庫Wから払い出されて消費(消化)された薬品の使用量を、実質的消化払い量とし、在庫管理期間を期首と期末とで区分けしている。当期請求額(当期支払い対象額)は、在庫管理期間内で使用された薬品に対する請求額であり、各薬品毎に請求される。





引用文献1の上記記載によれば、次のことがいえる。
(1)【0022】、図1の記載によれば、引用文献1には、卸企業2に在庫データベースが格納される記憶装置と、当該記憶装置10と接続されたホストコンピュータ9とを設置し、病院3に、元倉庫11とコンピュータ12と携帯用端末装置13とを有し、卸企業2のホストコンピュータ9と病院3のコンピュータ12とが通信回線11で接続された薬品卸業務管理システムが記載されている。

(2)【0018】、【0025】の記載によれば、卸企業2は、製薬企業1から医療用医薬品を仕入れて、これらの薬品を所定の包装単位で病院3の元倉庫Wに納入して管理し、元倉庫Wでは、薬品の最適な環境が維持されている。よって、「卸企業2」は、「製薬企業1から医薬品を仕入れて病院に納入する」ものであり、「元倉庫」は「卸企業から病院に納入された医薬品を保管する」ものである。

(3)【0020】の記載によれば、薬品の払い出し単位とするケースにはバーコードラベルが貼付されている。

(4)【0023】、図2の記載によれば、「記憶装置が記憶する在庫データベース」は、表形式で「各病院と、病院A,B…の下位に、薬品の商品名等の薬品情報と、商品名又は一般名の下位に、納入番号,納入期日,使用期限(薬効期限),納入数量,払出数量,在庫数量等の項目を有する」ものである。

(5)【0025】、図1の記載によれば、携帯用端末装置13、携帯端末装置、ハンディーターミナル13はいずれも同じものを表すことは明らかである。そして、携帯端末装置はバーコードにより薬品データを入力するものである。
また、【0008】、【0019】、【0025】の記載によれば、元倉庫Wから薬品を払い出す際に、携帯端末装置が、バーコードにより薬品データを入力し、この払出しデータを、コンピュータ12が取り込み、払出しデータは、コンピュータ12から通信回線を経て、ホストコンピュータ9へと送信され、ホストコンピュータ9は、払出数量等の払出し情報を記憶装置10に記憶し、薬品の消費傾向から適正納入期限及び納入量を推定して、薬品卸業者が適正量の薬品を病院や薬局に納入し、また、病院や薬局側の薬品の払出し情報から実質消化した薬品量を演算処理して求めて、前記病院や薬局への請求額を決定する。
ここで、ホストコンピュータは、払出しデータを、記憶装置10に記憶するものであり、記憶装置10への記憶は、記憶装置10の在庫データベースに記憶されることは明らかである。
してみると、ホストコンピュータ9は、「倉庫から薬品を払出す際に、携帯端末装置が、バーコードにより薬品データを入力し、この払出しデータを、コンピュータ12が取り込み、払出しデータは、コンピュータ12から通信回線11を経て、ホストコンピュータ9へと送信され、ホストコンピュータ9は、払出数量等の払出し情報を、在庫データベースに記憶する」ものである。

(6)以上、(1)?(5)によると、引用文献1には、
「製薬企業1から医薬品を仕入れて病院に納入する卸企業2に、在庫データベースが格納される記憶装置10と、当該記憶装置10と接続されたホストコンピュータ9とを有し、病院3に、元倉庫11とコンピュータ12と携帯用端末装置13とを有し、卸企業2のホストコンピュータ9と病院3のコンピュータ12とが通信回線11で接続された薬品卸業務管理システムにおいて、
前記元倉庫Wは、卸企業2から病院3に納入された医薬品を保管し、薬品の払い出し単位とする薬品のケースにはバーコードラベルが貼付されており、
前記在庫データベースは、各病院3と、病院A,B…の下位に、薬品の商品名等の薬品情報と、商品名又は一般名の下位に、納入番号,納入期日,使用期限(薬効期限),納入数量,払出数量,在庫数量等の項目を有する表形式であり、
元倉庫Wから薬品を払出す際に、携帯端末装置が、バーコードにより薬品データを入力し、この払出しデータを、コンピュータ12が取り込み、払出しデータは、コンピュータ12から通信回線11を経て、ホストコンピュータ9へと送信され、ホストコンピュータ9は、払出数量等の払出し情報を、在庫データベースに記憶する、
薬品卸業務管理システム。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用文献2(特開2011-62331号公報)
原査定に引用された引用文献2には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。

【0014】
従来の手術室の薬剤管理カートの課題は、薬剤ごとに保管履歴又は準備利用履歴を管理しようとすると、多大な労力を必要とすることである。
【0017】
本発明は、これら課題を解決し、多大な労力が不要で、簡易に薬剤の履歴を個別管理できる薬剤管理方法および薬剤管理装置を提供することを目的とする。
【0080】
図11に示される返却薬剤検出フローチャートを、一定間隔(例えば、0.1秒おきに)に繰り返し行うことで返却薬剤を検出することができる。
【0081】
まず、薬剤管理部40が行う返却薬剤検出は、収納部20、21に保持されるすべての薬剤の検出が行われる(ステップS21)。薬剤情報には薬剤管理番号が含まれており、ステップS21で検出されたすべての薬剤管理番号を薬剤検出の度に収納薬剤記録部49へ記録する(ステップS22)。
【0082】
ステップS22の後、薬剤管理部40は取出し薬剤を算出する。収納薬剤記録部49は、薬剤検出の度に収納部20、21に存在するすべての薬剤の薬剤管理番号が記録される。そのため、薬剤検出の時まで存在していたが、このタイミングで不在になっていた薬剤があれば、取出し薬剤と特定する(ステップS23)。
【0083】
取出し薬剤が存在すれば、取出し薬剤の薬剤名を表示部22に表示する(ステップS24)。
【0084】
ステップS24の後、または、ステップS23で取出し薬剤が存在しなかった場合、薬剤管理部40は返却薬剤を算出する。収納薬剤記録部49は、時間ごとに収納部20、21に存在するすべての薬剤の薬剤管理番号が記録されている。よって、収納部20、21に存在しているが、直前の時間まで不在で、再度、ステップS21で検出された薬剤管理番号が存在すると、その薬剤を返却薬剤と特定する(ステップS25)。
【0085】
ステップS23で、返却薬剤がなければ終了し、再度、返却薬剤検出フローチャートを繰り返す。
【0086】
返却薬剤が存在すれば、収納薬剤記録部49から薬剤の収納部20、21に不在であった時間を算出し、この不在時間を準備利用時間とする(ステップS26)。
【0087】
そして、ここで算出された準備利用時間と未利用時間とを比較する(ステップS27)。未利用時間とは、薬剤を収納部20、21から取り出すが、取り出した薬剤が取出し間違だと気づいてすぐに返却したことを意味する時間である。ここでは、未利用時間として10秒の時間を設定する。
【0088】
未利用時間以下であれば準備利用されていないとして、取り間違え薬剤の薬剤名と、取り間違えたメッセージを表示部22へ表示する(ステップS28)。そして、繰り返し返却薬剤の検出が行われる。
【0089】
一方、未利用時間より長いと、準備利用された薬剤と判断され、準備利用された薬剤のRFIDタグ39に返却情報を記録する(ステップS29)。この時の返却情報には、準備利用時間を含むが、準備利用時間の他に、手術室温度を含めてもよい。この手術温度は、準備利用されている時間の手術室の温度で、手術環境記録部48から抽出する。

以上の記載によると、引用文献2には、
「薬剤が取り出された時間が未利用時間より長いと、準備利用されたと判断して記録する」という技術事項が記載されている。

3 引用文献3(特開2018-63516号公報)
原査定に引用された引用文献3には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。

【0042】
図2には、上記のような不都合を改善するための、本実施例に係る医薬品在庫管理システムにおける医薬品5の流通の態様を示す。図2において医薬品5の実際の流通経路は実線矢印で、情報の経路は破線矢印で示されている。本実施例においては、医薬品5(医薬品自体若しくは医薬品の梱包)にその医薬品5のIDが記録された識別素子5aを取り付ける。また、識別素子5aによる医薬品5の識別情報を検知可能な読取センサ6a及び内部の温度履歴情報の取得が可能な温度センサ6bを、環境維持運搬手段としての保冷コンテナ6に取り付ける。そして、読取センサ6a及び温度センサ6bの出力信号は、無線通信により情報管理装置8に送信され、必要に応じ記録される。これにより、所定のIDを有する医薬品5が、保冷コンテナ6内に収納されているか否かの情報と、保冷コンテナ6内の温度履歴情報がリアルタイムに記録可能となっている。
【0058】
なお、上記の医薬品在庫管理システムにおいては、医薬品メーカー1と流通業者2、流通業者2と医療機関等3の間の医薬品5の移動時には、保冷コンテナ6、16を用いて医薬品5の温度管理を行うこととしたが、本発明における環境維持運搬手段はこれに限られない。例えば、冷蔵車の冷蔵庫、冷凍車の冷凍庫、保冷専用車両または航空機または船舶の荷台等に直接、医薬品5を収納して運搬しても構わない。しかしながら、この場合には、冷蔵車、冷凍車と、冷蔵保管庫7、17の間の医薬品5の移換え時間、温度を管理し、記録可能としておくことが望ましい。また、医療機関等3が購入し、且つ所有権を持つ医薬品5の流通業者2または医薬品メーカー1への返品、または保険薬局から保険薬局間への医薬品5の移動等における運搬等は、上記の設備やシステムを備える道路運送法や貨物自動車運送事業法に基づく貨物自動車運送事業者が実施することが望ましい。なお、識別素子5aの医薬品5への取付け場所については、医薬品メーカー1の製造工場や保管施設であってもよく、その国については特に限定されない。
【0072】
次に、図5におけるステップS18に示すように、流通センター2bにおいて返品(入帳)可否判断が行われる。ここでは、温度履歴情報の他、使用期限情報や流通情報等を基に返品の可否が判断される。例えば、温度履歴情報において医薬品5の周囲温度がそのID情報で定められた温度範囲(例えば2?8℃)から外れた時間が4時間以下で、外れた際の温度が25℃以下(この場合、外れた程度は17℃以下ということになる)であった場合であって、且つ、使用期限までの残存期間が6カ月以上であって、且つ、包装変更やリコール対象の医薬品でない場合に、返品を可としてもよい。
【0073】
具体的な数値はこの数値に限定されないが、定められた温度範囲から外れた時間、外れた程度及び、使用期限までの残存期間の少なくとも一の条件に基づいて、返品の可否を判断してもよい。例えば、温度履歴情報において医薬品5の周囲温度がそのID情報で定められた温度範囲(例えば2?8℃、1?30℃、15?25℃等)から外れた時間がある場合には、他の条件に関わらず返品不可としても構わない。なお、上記における返品の可否判断の条件は、医薬品5の添付文書(仕様)やGDP(Good Distribution Practice)に基づいて定めることが望ましい。
【0074】
また、ステップS18における返品の可否判断は、中間サーバ8bにおいて自動的に行われるようにし、可否の結果が自動的に表示されるようにしてもよい。この判断に必要な情報は全て、保冷コンテナサーバ8c及び、冷蔵保管庫サーバ8dから送信されているので、送信された情報と、別途記憶された閾値とを比較することで返品の可否判断を行ってもよい。その場合には、中間サーバ8bが本発明における判定手段に相当する。
【0077】
一方、ステップS18において返品可と判断された場合には、ステップS25に示すように流通業者2のオペレーションセンター2aによって返品対応がなされ、ステップS26に示すように流通業者2の流通センター2bにおいて返品完了の入力がなされる。これにより、ステップS27に示すように医療機関等3から流通業者2の流通センター2bまでの配送時における温度情報の他、BOXID、時刻情報、識別素子データ等が中間サーバ8bに送信される。そして、ステップS28に示すように操作実績ログが記録される。
【0080】
なお、上記の医薬品在庫管理システムにおいては、医薬品メーカー1と流通業者2、流通業者2と医療機関等3の間の医薬品5の移動時には、保冷コンテナ6、16を用いて医薬品5の温度管理を行うこととしたが、本発明における環境維持運搬手段はこれに限られない。例えば、冷蔵車の冷蔵庫、冷凍車の冷凍庫、保冷専用車両または航空機または船舶の荷台等に直接、医薬品5を収納して運搬しても構わない。しかしながら、この場合には、冷蔵車、冷凍車と、冷蔵保管庫7、17の間の医薬品5の移換え時間、温度を管理し、記録可能としておくことが望ましい。また、医療機関等3が購入し、且つ所有権を持つ医薬品5の流通業者2または医薬品メーカー1への返品、または保険薬局から保険薬局間への医薬品5の移動等における運搬等は、上記の設備やシステムを備える道路運送法や貨物自動車運送事業法に基づく貨物自動車運送事業者が実施することが望ましい。

4 引用文献4(特開2006-89163号公報)
原査定に引用された引用文献4には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。

【0160】
従って、物品51の荷受人は、その物品51に貼付られた非接触ICタグ55(若しくは内装や取り付けによって物品51に対応付けられた非接触ICタグ55)のデータを読み取るだけで、現実の流通過程を知ることができる。
【0161】
非接触ICタグ55のデータから解ることを具体的に説明すると、図示の例では、レコードNo.1?8に示す緯度及び経度の情報から生産者や輸送業者が特定できる。
【0162】
レコードNo.1に示すように最初は常温(+25℃)に置かれていたものが、レコードNo.4?6の一定期間-10℃の温度で保管されながら輸送されていたことが解る。
【0163】
レコードNo.4?6の倉庫内アドレスにより、一定時間倉庫内に保管されたことがわかる。このとき、レコードNo.4でパレットナンバが変わっているため、ある管理用パレット30から他の管理用パレット30へ積み替えられたことが解る。
【0164】
レコードNo.6では衝撃を受けたことが解り、このとき温度が+10℃まで上昇していたことも解る。 最後にレコードNo.8で元の管理用パレット30に積み替えられ、常温状態(+30℃)に置かれていたことが解る。
【0165】
また、コントローラ32内のメモリには、図12のデータ説明図に示すように、位置、時刻、温度、湿度、衝撃、及びタグIDの各項目(フィールド)を有するデータを、物流履歴として時系列で追加記録していき、これを保持することができる。
【0166】
従って、非接触ICタグ55に記録しているデータが改竄された場合であっても、コントローラ32内のデータと照合することで改竄を検出することができる。
【0167】
コントローラ32内のデータからわかることを具体的に説明すると、図示の例では、レコードNo.1?9の緯度及び経度の情報から生産者や輸送業者が特定できる。レコードNo.1にて最初は常温(+25℃)に置かれていたものが、レコードNo.2?8の一定期間-10℃の温度で保管されながら輸送されていたことが解る。

5 引用文献5(株式会社ITC総合研究所 他,SEがはじめて学ぶ在庫管理 業務知識とシステム作りがすべてわかる,株式会社日本実業出版社,2009年09月10日,第1版,P.188-190)
原査定に引用された引用文献5には、次のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。

「 評価に関する共通的な事項
モノの在庫金額の評価は「在庫場所ごと」に行ないます。モノには生産工程内の仕掛品も含まれます。生産工程や生産設備近くの資材置場などへの原材料や仕掛品の出入りを表わすのに「入庫」「出庫」という用語はふさわしくないので、第8章と第9章では「受入れ」「払出し」という用語を使います。

「受入れ」「払い出し」の定義
受入れ:倉庫への入庫、資材等置場に持ち込まれること。前工程、資材等置場、あるいは、倉庫などから工程に投入されること
払出し:倉庫からの出庫や資材等置場からほかに持ち出すこと。工程完了したモノを次工程や資材等置場・倉庫などに引き渡すこと」(P188-189、「86 在庫金額の計算方法」)


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「薬品卸業務管理システム」は、医薬品を管理するものであるから、本願発明1と同様の「医薬品管理システム」といえる。

イ 引用発明における「卸企業2」は、医薬品を仕入れて病院に納入する企業であるから、「流通業者」といえる。よって、引用発明の「卸企業」は、本願発明1の「流通業者」に相当する。また、引用発明の「病院3」は医療を行う機関であることは明らかであるから、引用発明の「病院3」は本願発明1の「医療機関」に相当する。さらに、医薬品を病院に納入する際に、通常、医薬品は配送されるため、引用発明の「納入された医薬品」は本願発明1の「配送された医薬品」といえる。
よって、引用発明の「卸企業2から病院3に納入された医薬品を保管する」「元倉庫」は、本願発明1の「医薬品の流通業者から医療機関に配送された医薬品を保管する保管手段」に相当する。

ウ 引用発明における「在庫データベース」は「薬品の商品名等の薬品情報と、商品名又は一般名の下位に、納入番号,納入期日,使用期限(薬効期限),納入数量,払出数量,在庫数量等の」医薬品についての項目を有し、各病院や薬局の各医薬品の需要予測や実質的払出量が算出されるものであるから、引用発明の「在庫データベース」は医薬品の管理を行うために用いられるものである。
そして、引用発明の「在庫データベース」は「表形式であ」ることから「管理テーブル」であるといえ、引用発明の「記憶装置10」は、本願発明1と同様の「記憶部」といえる。
よって、引用発明の「各病院3と、病院A,B…の下位に、薬品の商品名等の薬品情報と、商品名又は一般名の下位に、納入番号,納入期日,使用期限(薬効期限),納入数量,払出数量,在庫数量等の項目を有する表形式」の「在庫データベースが格納される記憶装置10」と本願発明1の「医薬品と医薬品の所有者とを対応付けて管理する管理テーブルを記憶する記憶部」とは、いずれも「医薬品を管理する管理テーブルを記憶する記憶部」という点で共通する。

エ 引用発明は、「薬品データ」を、携帯端末装置が「バーコードにより」「入力」する構成であることから、引用発明の「携帯端末装置」は本願発明1の「読取センサ」に相当する構成を有している。
また、引用発明において、元倉庫から薬品を払い出すことは、元倉庫から薬品を持ち出すことを表すことは明らかであり、引用発明における、携帯端末装置がバーコードを入力した結果の、携帯端末装置からのコンピュータ12への取り込み、コンピュータ12からホストコンピュータ9への送信は、携帯端末装置に入力されたバーコードを基にした出力信号がホストコンピュータ9に送信されることであるから、引用発明における、「コンピュータ12から通信回線11を経て、ホストコンピュータ9へと送信され」る払出しデータは、本願発明の「前記保管手段に保管された医薬品」が持ち出された際の「読取センサからの出力信号」に相当する。
そして、引用発明において、「ホストコンピュータ9」へ送信された「元倉庫Wから薬品を払出す際」の「払出しデータ」は、ホストコンピュータ9が、在庫データベースに、払出数量等の払出し情報として記憶するものであることから、引用発明の「ホストコンピュータ9」は、送信された払出しデータを基に、医薬品が払い出された、すなわち、持ち出されたという情報を検知していることは明らかである。
したがって、引用発明は、本願発明1の「前記保管手段に保管された医薬品が持ち出されたことを読取センサからの出力信号を基に検知する検知手段」、に相当する構成を有している。

オ 一般的に、コンピュータはCPU等のプロセッサを備えるものであるから、引用発明の「ホストコンピュータ9」は、プロセッサを備え、それゆえ、引用発明の「薬品卸業務管理システム」は、プロセッサを備えることは明らかである。
そして、引用発明において、「ホストコンピュータ9」が行う処理は、ホストコンピュータ9が備えるプロセッサにより行われることは明らかである。
そうすると、引用発明の「払出し情報を、在庫データベースに記憶する」処理は、ホストコンピュータ9、すなわち、プロセッサが行うものであるから、引用発明の「ホストコンピュータ9」が「払出し情報を、在庫データベースに記憶する」ことと、本願発明1の「前記プロセッサは、前記保管手段から医薬品が持ち出されたことを前記検知手段が検知してから医薬品の使用を示す所要期間が経過すると、前記管理テーブルにおいて前記持ち出された医薬品に対応付けられた所有者を前記医療機関に変更する」こととは、いずれも、「プロセッサは、前記保管手段から医薬品が持ち出されたことを前記検知手段が検知したことに基づいて前記管理テーブルを変更する」という点で共通する。

カ したがって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりである。

[一致点]
「医薬品の流通業者から医療機関に配送された医薬品を保管する保管手段と、
医薬品を管理する管理テーブルを記憶する記憶部と、
前記保管手段に保管された医薬品が持ち出されたことを読取センサからの出力信号を基に検知する検知手段と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
プロセッサは、前記保管手段から医薬品が持ち出されたことを前記検知手段が検知したことに基づいて前記管理テーブルを変更する、
医薬品管理システム。」

[相違点1]
記憶部の管理テーブルが、本願発明1では、「医薬品」と「医薬品の所有者とを対応付けて管理する」のに対し、引用発明では、医薬品の所有者の情報を含まない点。

[相違点2]
「プロセッサ」による「前記保管手段から医薬品が持ち出されたことを前記検知手段が検知したことに基づいて前記管理テーブルを変更する」処理が、本願発明1では、保管手段から医薬品が持ち出されたことを検知してから医薬品の使用を示す所定期間が経過すると、持ち出された医薬品に対応付けられた所有者を、当該医薬品が配送された医療機関に変更する処理であるのに対し、引用発明では、単に、医薬品が持ち出されたことを記憶する処理である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1、2は関連するものであるから、相違点1、2をまとめて検討する。
引用発明は、管理テーブルが医薬品の情報を有し、プロセッサが、医薬品が持ち出されたことを検知手段が検知したことに基づいて医薬品が持ち出されたことを記憶する構成ではあるものの、管理テーブルは医薬品の所有者を管理するものでなく、医薬品の所有者に関する処理を行うものでもない。したがって、引用発明の管理テーブルを医薬品と医薬品の所有者を対応づけて管理するものとする動機はなく、医薬品が持ち出されたことを検知して、持ち出された医薬品に対応付けられた所有者を、当該医薬品が配送された医療機関に変更するものとする動機もない。
また、引用文献2には、「薬剤が取り出された時間が未利用時間より長いと、準備利用されたと判断して記録する」という技術事項が記載されているものの、薬剤の所有者を変更するものではない。そして、薬剤が準備利用されたか否かと薬剤の所有者とは関係がないため、引用発明と引用文献2に記載の技術事項を組み合わせたとしても、医薬品が持ち出されたことを検知してから医薬品の使用を示す所定期間が経過すると、持ち出された医薬品に対応付けられた所有者を、当該医薬品が配送された医療機関に変更することが、当業者が容易に想到し得た事項ということはできない。

さらに、引用文献3、引用文献4、引用文献5は、いずれも、相違点2に係る構成を開示するものではない。
したがって、引用発明、及び、拒絶査定において引用された引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が上記相違点1、2に係る構成を容易に想到し得たということはできない。
そして、本願発明1は、本願明細書に記載された、医療機関は患者に投与するタイミングで容易に保管手段から医薬品を持ち出すことができ、そのため、患者に対する適切なタイミングでの医薬品の投与を担保しつつ、医療機関等が医薬品を在庫として保有することによるリスクを低減することができる(【0009】)、医療機関が意図した医薬品とは異なる医薬品を保管手段から取り出してしまった途端に当該医薬品が請求対象となることが抑制される(【0010】)、複数の流通業者から配送される医薬品をひとつの保管手段に保管した場合でも、保管されたそれぞれの医薬品がどの流通業者から配送されたものであるかを特定することができ、ひとつの保管手段内に複数の流通業者からの医薬品を保管させることができる(【0012】)という作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明であり、上記相違点2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様に、当業者であっても、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明6について
本願発明6は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「医薬品と医薬品の所有者とを対応付けて管理する管理テーブルを記憶する記憶部」、「前記プロセッサは、前記保管手段から医薬品が持ち出されたことを前記検知手段が検知してから医薬品の使用を示す所定期間が経過すると、前記管理テーブルにおいて前記持ち出された医薬品に対応付けられた所有者を前記医療機関に変更する」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が、引用発明、拒絶査定において引用された引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-07-06 
出願番号 特願2019-88681(P2019-88681)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 吉田 誠
相崎 裕恒
発明の名称 医薬品管理システムおよび医薬品管理方法  
代理人 特許業務法人秀和特許事務所  
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