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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61M
管理番号 1375822
審判番号 不服2019-12852  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-27 
確定日 2021-07-07 
事件の表示 特願2017-173152号「セフロキシムの安全送達システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年3月15日出願公開、特開2018-38821号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)2月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年2月15日、欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特願2013-553897号の一部を平成29年9月8日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。
平成30年 8月30日付け:拒絶理由通知
同年12月 4日提出:意見書
令和 元年 5月22日付け:拒絶査定
同年 9月27日提出:審判請求書及び同時の手続補正書
令和 2年 8月25日付け:拒絶理由通知
同年12月 1日提出:意見書及び手続補正書

第2 本願発明
令和2年12月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「 別個に、
(a)計量したセフロキシムを滅菌充填した、貫通可能な滅菌バイアル、
(b)前記貫通可能なバイアル中のセフロキシム1mg当たり、0.1mlの滅菌等張塩溶液を入れた容器、
(c)前記等張塩溶液を前記貫通可能なバイアルに移送し、前記等張塩溶液中に10m g/mlの濃度にて溶解したセフロキシムのアリコートを前記貫通可能なバイアルから移動する手段、および
(d)雄ルアーフィッティングを備えた1つ又は複数の滅菌した送達シリンジであって 、各送達シリンジが少なくとも0.1mlの放出可能な液体を入れることができ、放出可能な液体の充填体積0.1mlを示す印を含有する送達シリンジ
を含む、セフロキシム安全送達システム。」

第3 拒絶の理由
令和2年8月25日付けで当審が通知した拒絶理由の理由2は、概略次のとおりのものである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願(優先日)前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧:
1.特開2009-45140号公報
2.国際公開第2009/138644号

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下、同様。)。
(1)「従来、薬剤の安定性を保つために薬液を凍結乾燥させバイアル本体内に密封した薬剤バイアルが使用されている。この薬剤バイアルを使用した乾燥製剤の溶解は次のようにして行われる。まず、溶解液の入っているアンプルと薬剤バイアルを用意する。該薬剤バイアルは、バイアル本体内に乾燥製剤が収容され、口部はバイアルゴムを金属板でカシメて密封している。そして、針を備えたシリンジでアンプルから溶解液を吸引して取り出し、次に薬剤バイアルへシリンジから針を介して溶解液を注入して移し替え、バイアル中で乾燥製剤を溶解液中に溶解する。その後薬液をシリンジ中に吸い取り、人体への注射等に使用される。また、上記の薬剤溶解作業では、溶解液量の調整が行われることがあり、この場合はアンプルからの溶解液量を調整して溶解したり、製造した薬液を複数回に分けてシリンジに吸い取ることもある。」(段落【0002】)

(2)「しかし、この方法では、バイアルゴムへの針の抜き差し操作が非常に多くて煩雑であり、しかもアンプルを開口した状態で作業するので無菌的操作が困難であり汚染を完全に防止できないという問題がある。また、針を用いたバイアルゴムへの突き刺し操作により、ゴムのコアリングが発生するという問題もある。そこで、このような問題を解決するものとして、例えばダブルチャンバー型のシリンジが提供されている。このものは、シリンジ本体内を複数のガスケットによって複数室に区画し、乾燥製剤と溶解液を封入し、プランジャの操作で両者を混合溶解させて使用するものである。また、他の例として、乾燥製剤溶解キットが提供されている。このものは、乾燥製剤が収容された薬剤バイアルと溶解液を充填したプレフィルドシリンジとを両頭針で接続したものである。(例えば、特許文献1参照。)」(段落【0003】)

(3)「次にプランジャ13を押し込んで溶解液Lをバイアル本体1内に注入して混合溶解を行い、薬液Dをシリンジ本体5に吸引する。それによって、被溶解薬剤Bの溶解作業が容易且つ確実に実行される。また、使用時に針の抜き差し操作はほとんどなく、他のバイアルも使用しないので汚染のおそれもない。また、溶解液量の調整もシリンジの溶解液量を見ながら任意の量に容易に調整される。尚、プレフィルドシリンジ7のシリンジ本体5の周胴部に目盛りが設けられている場合は、この目盛りを見て所定の溶解液量を薬剤バイアル3に正確に注入することができる。」(段落【0038】)

上記(1)の特に下線部の記載からすれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「(a)針の抜き差しが行われるバイアルゴムを有する薬剤を密封した薬剤バイアル、
(b)溶解液の入っているアンプル、
(c)溶解液を薬剤バイアルに移し替え、乾燥製剤を溶解液中に溶解した薬液をバイアルから吸い取る針、および
(d)薬液を吸い取るシリンジ
からなる薬剤溶解作業のための構成。」

2.引用文献2の記載(当審訳は、ファミリーである特表2011-519587号公報による。)
(1)「


(訳:水晶体嚢胞切除は治療介入(intervention)であり、白内障のために不透明になった眼の水晶体を摘出して人工器官と取り替えることを目的として、病院の医療班や眼科医の手で行われている。
治療介入は通常、局所麻酔の下で、先ず角膜、次いで眼の前室(front chamber)内の水晶体嚢を切開する作業と、水晶体の核を超音波によって粉砕した上で取り出す作業とから成る。その後、折り畳んだ可撓性の移植組織を水晶体嚢内に挿入すると、そこで移植組織が展開する。そして、執刀者が展開後の移植組織の位置を中央に合わせる。
残念ながら、術前予防や術後予防の措置が通常施されるにもかかわらず、水晶体嚢胞切除が、失明の原因ともなる術後感染症につながる事例は数多い。
そこで、こうした感染症を防ぐために、治療介入の終了段階において眼の前室を閉じる前に、セフロキシムなどの抗生物質を投与する必要がある。保健機関は、水溶媒0.1ミリリットル(mL)に対して1ミリグラム(mg)を1ドーズとして抗生物質を投与することを推奨している。
しかし、水晶体嚢胞切除後の感染症を防止するのに適した抗生物質(特にセフロキシム)は、1ドーズを250mg?1.5グラム(g)の範囲にしなければ利用できない。これでは、水晶体嚢胞切除後の感染症の防止という目的から見て、1ドーズがあまりに大きく、販売承認の指標を満たすことができない。 その上、そうした抗生物質は急速に不安定になるため、前もって調製しておくことができない。よって、溶液に入れるのは投与の数秒前でなければならない。
そうして、少量ドーズの抗生物質を少量の溶媒に溶かして投与する作業には、実施の安全性(特に、1ドーズあたりの量の精度)に関して大きな困難が伴う。
病院勤務または個人開業の眼科医でも、薬剤の数量(parameter)の調整に慣れていなければ、既存の種類のせいぜい1/250の調製を行うことすら容易ではない。更に、それを少量の水溶媒に溶かすとなれば、調製後の1ドーズの量の精度は不確実にならざるをえない。これでは、上記指標について販売承認を受けることはできない。
そうした問題を緩和するために病院の薬局が用いる手段は冷凍である。病院の薬局では、適当な数のドーズ分を調製して、それらを冷凍しておく。
しかし、こうした調製は病院内で行われるため、バッチ単位で工業生産される薬の場合とは違い、製造および分析的点検に関して管理された手続きを受けることはない。よって薬の管理について信頼性が低く、患者への投与に先立ってドーズをどのように解凍するかも考慮されていない。
加えて、製造する有効成分が極少量で容器も小型である従前型の薬品製造現場では、以下の問題が生じている。その問題とは、具体的には、空中の微粒子による汚染に関するもの、有効成分の安定性の低さ、そして、使用前に物質を取り出して溶かす操作に関するものである。また、それ以外にも、抗生物質を溶かす生理的血清を0.1mLだけ格納したアンプルの開封についても、操作やアンプルを切る作業に困難がある。加えて、小型の容器を2種類扱うため、両者の混同や置き間違いが生じやすい。)

第5 対比
1.引用発明の「針の抜き差しが行われるバイアルゴムを有する薬剤を密封した薬剤バイアル」は、針の抜き差しが行われるバイアルゴムを有し、上記第4の1.(2)の下線部に記載されているように無菌的操作を予定しているから、薬剤バイアル内の薬剤は滅菌充填されているものと認められ、本願発明の薬剤を「滅菌充填した、貫通可能な滅菌バイアル」に相当する。
2.引用発明の「溶解液の入っているアンプル」は、貫通可能なバイアル中の薬剤の溶解液を入れる点で、本願発明の「溶液を入れた容器」と一致する。
3.引用発明の「針」は、溶解液を薬剤バイアルに移し替え、乾燥製剤を溶解液中に溶解した薬液をバイアルから吸い取るものであるから、「溶解液を貫通可能なバイアルに移送し、溶解液中に溶解した薬剤のアリコートを貫通可能なバイアルから移動する」点で、本願発明の「手段」と一致する。
4.引用発明の「シリンジ」は、薬液を吸い取るものであるから、「放出可能な液体を入れることができる」点で、本願発明の「送達シリンジ」と一致する。
5.引用発明の「針」は「シリンジ」に備えられたものであって、通常分解可能に取り付けられるものであるから、「針」と「シリンジ」は別々の構成要素として存在しているものと認められる。
よって、引用発明の「薬剤バイアル」、「アンプル」、「針」及び「シリンジ」は、別個に構成されたものと把握できる。
6.引用発明は、上記「薬剤バイアル」、「アンプル」、「針」及び「シリンジ」を含むものであり、機能及び構成上、本願発明の「安全送達システム」に相当する。


上記1.?6.からすると、本願発明と引用発明は、以下の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
「別個に、
(a)薬剤を滅菌充填した、貫通可能な滅菌バイアル、
(b)前記貫通可能なバイアル中の薬剤の溶解液を入れた容器
(c)前記溶解液を前記貫通可能なバイアルに移送し、前記溶解液中に溶解した薬剤のアリコートを前記貫通可能なバイアルから移動する手段、および
(d)放出可能な液体を入れることができる送達シリンジ
を含む、安全送達システム。」

【相違点】
1.本願発明は、貫通可能な滅菌バイアルに充填した薬剤が計量したセフロキシムであり、容器に入れた溶解液がセフロキシム1mg当たり、0.1mlの滅菌等張塩溶液であり、手段は前記等張塩溶液を貫通可能なバイアルに移送し、前記等張塩溶液中に10mg/mlの濃度にてセフロキシムを溶解した溶液を貫通可能なバイアルから移動するものであるのに対し、引用発明は、薬剤および溶解液の特定がない点。
2.本願発明は、送達シリンジが雄ルアーフィッティングを備えているのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。
3.本願発明は、送達シリンジが少なくとも0.1mlの放出可能な液体を入れることができ、放出可能な液体の充填体積0.1mlを示す印を含有するのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

第6 判断
以下、上記相違点について検討する。
1.相違点1について
白内障手術における感染症予防のための抗生物質投与に用いる薬剤と溶解液の組合せとして、薬剤をセフロキシムとし、これを1mg当たり、0.1mlの水溶媒(人体に適用するものであることからすれば、滅菌等張塩溶液であるものと認められる。)に溶解したものを1ドーズとして調整することは、引用文献2に記載されているように従来から知られた技術である。
そして、上記第4の2.の「残念ながら、術前予防や術後予防の措置が通常施されるにもかかわらず、水晶体嚢胞切除が、失明の原因ともなる術後感染症につながる事例は数多い。そこで、こうした感染症を防ぐために、治療介入の終了段階において眼の前室を閉じる前に、セフロキシムなどの抗生物質を投与する必要がある。保健機関は、水溶媒0.1ミリリットル(mL)に対して1ミリグラム(mg)を1ドーズとして抗生物質を投与することを推奨している。」という記載からすれば、当該調整においては1ドーズ毎の溶液を正確に調整することが必要であったといえるから、当該調整にあたっては、薬剤であるセフロキシムは計量され、これを溶解する水溶媒は、当該セフロキシムが溶解された後の溶液が10mg/ml(=1mg/0.1ml)の濃度になるような量として用意すべきことは、当業者であれば当然に理解できる。
ここで、上記第4の1.(1)に記載されているように、引用発明は、薬剤を溶解液に無菌状態で溶解して溶解薬液を調整するものであるところ、調整する対象に具体的に何を採用するかは、実施に際してその使用者が適宜選択できるものである。
してみれば、引用発明において、薬剤および溶解液の具体的な薬剤と溶解液について、例えば引用文献2記載の技術にしたがって上記相違点1における本願発明のごとくすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。

2.相違点2について
引用発明のシリンジは、手段としての針と結合して使用するものであることが一般的であるところ、針とシリンジの結合部の針側に雌ルアーフィッッティングを、またシリンジ側に雄ルアーフィッティングを設けて、両者を結合する構成は、針とシリンジからなる注射器等の技術分野において従来より慣用される手段にすぎない。
よって、引用発明のシリンジに雄ルアーフィッティングを設けること、すなわち、上記相違点2における本願発明のごとくすることは、当業者が容易になし得ることである。

3.相違点3について
引用文献1の上記第4の1.(3)に記載されているように、シリンジに充填体積を示す印を設けることは、引用発明のシリンジも当然に予定しているといえる。
そして、引用文献2の記載から、0.1mlを1ドーズとしてセフロキシムが溶解した薬液を投与することが推奨されていることを踏まえると、引用発明のシリンジに充填体積を示す印を設けるにあたっては、シリンジとして少なくとも0.1mlの放出可能な液体を入れることができるものを用いて、放出可能な液体の充填体積0.1mlを示す印を設けるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得ることと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2記載の技術から当業者が予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

 
別掲
 
審理終結日 2021-02-08 
結審通知日 2021-02-09 
審決日 2021-02-22 
出願番号 特願2017-173152(P2017-173152)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 井上 哲男
宮崎 基樹
発明の名称 セフロキシムの安全送達システム  
代理人 山尾 憲人  
代理人 江間 晴彦  
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