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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
管理番号 1375824
審判番号 不服2019-14819  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-05 
確定日 2021-07-07 
事件の表示 特願2018- 55094「プラットフォームに搭載されたモバイルコミュニケータおよびそれと通信する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月16日出願公開,特開2018-129843〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は,2014年(平成26年)2月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年2月11日 米国,2013年11月8日 米国)を国際出願日とする特願2015-557206号の一部を平成30年3月22日に分割した出願であって,平成31年3月5日付けで拒絶理由が通知され,令和元年6月6日に手続補正がなされ,令和元年6月26日付けで拒絶査定がされ,令和元年11月5日に拒絶査定不服審判が請求されると共に同時に手続補正がなされ,令和2年5月29日付けで当審が拒絶理由を通知し,令和2年8月25日に手続補正がなされ,令和2年9月24日付けで当審が拒絶理由を通知し,令和2年12月17日に手続補正がなされたものである。


2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,令和2年12月17日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものと認める。

「第1アンテナと,
前記第1アンテナとは異なる第2アンテナと,
前記第1アンテナ,前記第2アンテナ,または前記第1アンテナと前記第2アンテナの両方を囲むように構成されたレードーム筐体と,
制御部を備え,
前記制御部は,
(i)前記第2アンテナを制御してデータ通信することなく前記第1アンテナを制御してデータを通信し,
(ii)前記(i)工程におけるデータ通信の開始の後に受け取った信号インジケータに応じて,前記第2アンテナを介した通信をテストし,
(iii)前記第1アンテナの使用に関連する第1信号と前記第2アンテナの使用に関連する第2信号を比較し,
(iv)前記(iii)工程における比較に基づいて前記第2信号が前記第1信号よりも高い信号品質又は大きい信号電力を有すると決定するならば,前記(i)工程の前記第1アンテナを介した通信を終了して前記第2アンテナを介した通信を開始し,
(v)前記(iii)工程における比較に基づいて前記第1信号が前記第2信号よりも高い信号品質又は大きい信号電力を有すると決定するならば,前記第2アンテナを介した更なる通信を行うことなく前記(i)工程の前記第1アンテナを介した通信を継続する,プラットフォームに搭載されたモバイルコミュニケータ。」


3.当審の拒絶理由

一方,当審において令和2年5月29日付けで通知した拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要は下記のとおりである。

2(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

■理由2(進歩性)
●請求項 :1
・引用文献:1-2

したがって,本願発明1は,引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたと認められる。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2001-111467号公報
2.米国特許第6111542号明細書


4.引用例

(1)引用例1について

当審拒絶理由で通知した特開2001-111467号公報(以下,「引用例1」という。下線は当審が付与。)には,

「【0012】また,地球局が地上の固定局ではなく,車,電車,船,飛行機などに搭載された移動局の場合,地球局の緯度,経度によって衛星との通信可能な仰角範囲が変動する。この場合,移動局の現在位置(座標)に応じて仰角範囲を補正しなければ,衛星切替タイミングではもちろんのこと通常での衛星追尾も,正確には行えなくなるという問題がある。
【0013】本発明の目的は,従来技術の問題点を克服し,衛星切り替え時においても信号が途切れることがなく,安定な送受信を確保できる準静止型衛星を追尾する通信方法および装置を提供することにある。また,移動局の場合にも,衛星切り替え時を含む正確な衛星追尾による安定な送受信を確保できる通信装置及び通信システムを提供することにある。」

「【0031】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施形態を詳細に説明する。まず,準静止軌道衛星の一例として,長楕円軌道衛星(HEO)について説明し,次に,衛星追尾型通信方式の複数の実施例を説明する。」

「【0039】〔実施例1〕図5は,衛星切替タイミングで2個のアンテナの追尾方法を示す概念図である。準静止軌道衛星110,111は,それぞれ所定の時間間隔をおいて代表して示す軌道130上を左から右側へ移動している。軌道上の位置135と位置136の区間140の仰角範囲α0に衛星があるとき,図示では衛星111と地上局のアンテナ121との送受信が可能となる。衛星111が軌道上を右から左へ移動すると,その間,アンテナ121は常に衛星111の方向を追尾し,両者間の送信受信を続けている。通信中の衛星111が位置136を通過すると,アンテナ121から衛星111を見た仰角αが低くなり,通信が困難になる。この時,次の衛星110が位置135を通過するので,この衛星110を追尾するアンテナがあれば,地球局との送受信は途切れることなく継続できる。
【0040】実施例1の通信システムでは,地上局に2基のアンテナ120,121を設け,アンテナ121が衛星111を追尾しているとき,アンテナ120が軌道上の位置135に向けて待機し,衛星タイミングになると衛星110の追尾を開始する。つまり,衛星111が位置136を通過して,アンテナ121による送受信が不能となるときには,アンテナ120が位置135に現われた衛星120の追尾を開始する。従って,位置135と位置136の仰角範囲α0に,短時間(衛星切り替りタイミングに,アンテナ120が追尾を開始できる時間)だけ衛星110と衛星111が並存すれば,地球局との送信は途切れることがない。
【0041】本システムの長楕円軌道衛星は,サービス対象エリアの地上局との仰角範囲に常時,1機の衛星が存在するように制御されている。実際には,各軌道周期が誤差を伴うので,その誤差をカバー可能な時間だけ,2つの衛星が同時に仰角範囲に存在する重複期間を設けて運行している。従って,この重複期間には衛星111,衛星110双方との通信が可能になるので,地球局は両者の信号強度などから一方を選択する。やがて,衛星111との送受信は不可能になると,アンテナ121による追尾を終了し,アンテナ120による追尾だけとなる。この後,アンテナ121は位置135に向けて初期設定され,次の衛星が現われるまで待機することになる。
【0042】図1は,実施例1の衛星自動追尾型通信装置の機能ブロック図を示す。2基のアンテナ11,11’は,雨風をしのぐためのレドーム16,16’で覆われている。アンテナ11,11’がそれぞれ別の衛星を追尾し,衛星からの信号を受けて,受信RF12,12’で受信する。
【0043】アンテナ11の姿勢(方位)を制御して衛星を追尾するために,センサ17からの信号と受信RF12による衛星からの受信信号とを制御装置13に取り込む。制御装置13は衛星を追尾する方位制御を行い,駆動装置14を動かしてアンテナ11を,衛星(例えば,図5の衛星111)の方向に向ける。
【0044】センサ17は角速度や慣性モーメントを測定する加速度計やジャイロからなり,地球局が移動局である場合の位置情報を検出する。地球局が固定局の場合は,センサ17を省略してもよく,あらかじめ求まる時間と衛星方位のデータベースを利用することもできる。
【0045】また,制御装置13から追尾中のアンテナ111の方位を衛星位置演算装置15に取り込み,次の衛星(例えば,図5の衛星110)の位置を算出して,制御装置13’に渡す。制御装置13’はその衛星位置から衛星切替タイミングと判断すると,追尾開始指令を出して駆動装置14によるアンテナ11’の追尾を開始する。これにより,アンテナ11’は待機中の追尾始点方位から衛星110の方向に向きを移動し,以後は上述したアンテナ11の場合と同様の追尾が行われる。一方,先に追尾していた衛星(例えば,図5の衛星111)の位置が切り替えタイミングの位置136を通過したとき,制御装置13は追尾終了指令を送信し,駆動装置14を動かしてアンテナ11を追尾始点方位(位置135)に向けて待機させる。
【0046】ここで,追尾始点方位は,たとえば図5の仰角範囲α0の位置135に向けられている。ただし,図6のように,位置135より更に先の位置を追尾始点方位として待機し,衛星位置演算装置15で演算された次の衛星位置がその追尾始点に到達したときに,制御装置13が追尾開始指令を出すようにしてもよい。これによれば,衛星からの信号が微弱な段階で追尾が始まるので,追尾が早いタイミングで成功し,2つの衛星の重複期間が短くてすむ。また,仰角範囲が変動する移動局の場合に好都合である。
【0047】衛星切替タイミングにおいては,アンテナ11,11’の両方から受信される。受信RF12,12’により抽出された受信信号は,受信切り替え装置25により信号強度の大きい方を選択される。この選択された信号は,受信装置21を介して表示装置22に画面表示される。これにより,衛星切替タイミングにおいても,途切れのない受信が可能になる。」
【図1】

【図5】


の記載がある。
ここで,【0039】の「衛星111が軌道上を右から左へ移動すると,その間,アンテナ121は常に衛星111の方向を追尾し,両者間の送信受信を続けている。」については,「準静止軌道衛星110,111は,それぞれ所定の時間間隔をおいて代表して示す軌道130上を左から右側へ移動している。」の記載と図1を参照すれば,「衛星111が軌道上を左から右へ移動すると」の誤りであることが明らかである。
また,【0040】の「位置135に現われた衛星120の追尾を開始する。」は,【0039】の記載及び図5によれば,「位置135に現れた衛星110の追尾を開始する。」の誤りであり,【0045】の「制御装置13から追尾中のアンテナ111」は,【0042】の記載及び図1によれば,「制御装置13から追尾中のアンテナ11」の誤りであることが明らかであるから,引用例1には,

「車,電車,船,飛行機などに搭載された移動局である地球局であって,移動局の場合にも,衛星切り替え時を含む正確な衛星追尾による安定な送受信を確保できる通信装置であり,
長楕円軌道衛星(HEO)は,準静止軌道衛星の一例であり,
準静止軌道衛星110,111は,それぞれ所定の時間間隔をおいて代表して示す軌道130上を左から右側へ移動しており,
衛星111と地上局のアンテナ121との送受信が可能となり,衛星111が軌道上を左から右へ移動すると,その間,アンテナ121は常に衛星111の方向を追尾し,両者間の送信受信を続けており,
衛星111が位置136を通過して,アンテナ121による送受信が不能となるときには,アンテナ120が位置135に現われた衛星110の追尾を開始し,
長楕円軌道衛星は,サービス対象エリアの地上局との仰角範囲に常時,1機の衛星が存在するように制御され,各軌道周期が誤差を伴うので,その誤差をカバー可能な時間だけ,2つの衛星が同時に仰角範囲に存在する重複期間を設けて運行しているから,この重複期間には衛星111,衛星110双方との通信が可能になるので,地球局は両者の信号強度などから一方を選択するものであって,衛星111との送受信は不可能になると,アンテナ121による追尾を終了し,アンテナ120による追尾だけとなり,
この後,アンテナ121は位置135に向けて初期設定され,次の衛星が現われるまで待機することになり,
2基のアンテナ11,11’は,雨風をしのぐためのレドーム16,16’で覆われており,
アンテナ11,11’がそれぞれ別の衛星を追尾し,
駆動装置14を動かしてアンテナ11を,衛星111の方向に向け,追尾中の衛星111の方位を衛星位置演算装置15に取り込み,
センサ17は角速度や慣性モーメントを測定する加速度計やジャイロからなり,地球局が移動局である場合の位置情報を検出し,
制御装置13から追尾中のアンテナ11の方位を衛星位置演算装置15に取り込み,次の衛星110の位置を算出して,制御装置13’に渡し,制御装置13’はその衛星位置から衛星切替タイミングと判断すると,追尾開始指令を出して駆動装置14によるアンテナ11’の追尾を開始し,
衛星切替タイミングにおいては,アンテナ11,11’の両方から受信され,受信RF12,12’により抽出された受信信号は,受信切り替え装置25により信号強度の大きい方を選択され,この選択された信号は,受信装置21を介して表示装置22に画面表示される,
地球局。」(以下,「引用発明」という。)

の発明が記載されている。

(2)引用例2について

当審拒絶理由で通知した米国特許第6111542号明細書(以下,「引用例2」という。下線は当審が付与。)には,

「Among these satellite communication systems, use of satellite constellations designed with both polar and inclined orbits have been proposed.」(1欄22-24行)
(当審訳:
これらの衛星通信システムの中で,極軌道と傾斜軌道の両方に設計された衛星群の使用が提案されている。)

「Also, the present invention is applicable to satellite communication systems having satellites which orbit the earth at any angle of inclination including polar, equatorial, inclined, or other orbital pattern.」(3欄25-28行)
(当審訳:
また,本発明は,極,赤道,傾斜や他のパターンを含む任意の傾斜角で地球を旋回する衛星を有する衛星通信システムに適用可能である。)

「Each antenna unit 300 includes two electronically steerable antenna subunits 310 mounted on antenna holder 320.」(5欄54-55行)
(当審訳:
各アンテナユニット300は,アンテナ保持部320に取付けられた2つの電子的走査可能アンテナサブユニット310を含む。)

「Antenna subunit holders 324 each are shaped to have a surface for holding an electronically steerable antenna subunit 310, such as a phased array antenna unit, as described in more detail below with reference to FIGS.4-5.」(5欄66行-6欄2行)
(当審訳:
アンテナサブユニット保持部324は,図4-5を用いて下記に詳細に記載するように,フェーズドアレイアンテナユニットのような電子的走査可能アンテナサブユニット310を保持するための表面を有している。)

「In a preferred embodiment of the present invention, radome 365 is used to cover and protect electronically steerable antenna subunits 310.」(6欄16行-18行)
(当審訳:
この発明の一実施例においてレドーム365は,電子的走査可能アンテナサブユニット310を覆って保護する。)

「Thus, in a preferred embodiment of the present invention, the thickness of radome 365 is different for a radome used on receive antenna unit 220 and transmit antenna unit because in system 100 (FIG.1) different frequencies are used on the uplink (to transmit signals from user terminals 110, FIG.1) and on the downlink (when receiving signals from satellites 120, FIG.1).」(6欄24-30行)
(当審訳:
このように,この発明の一実施例において,システム100(図1)において,アップリンク(図1のユーザ端末110からの送信信号)とダウンリンク(図1の衛星120からの受信信号)で用いられる周波数が異なっているから,レドーム365の厚さは,受信アンテナユニット220と送信アンテナユニットで用いられるレドームで異なっている。)

「Dual electronically steerable antenna subunits 310 desirably are included in each antenna unit 300.」(7欄10-12行)
(当審訳:
2つの電子的操作可能アンテナサブユニット310は,各アンテナユニット300に含まれる。)

「In a preferred embodiment, electronically steerable antenna subunits comprise phased array antennas.」(7欄15-17行)
(当審訳:
一実施例において,電子的走査可能アンテナサブユニットは,フェーズドアレイアンテナを含む。)

「Thus, the antenna system, through direction from the user terminal and/or from one or more control systems of the communication system, selects one satellite of satellites 611 and 612 to which it will establish communication through a hand-off procedure.」(9欄4-8行)
(当審訳:
したがって,アンテナシステムは,ユーザ端末から及び/又は通信システムの1つ以上の制御システムからの指示を通して,ハンドオフ手順を行って通信を確立し,衛星611と612から1つの衛星を選択する。)

「FIG.9 illustrates a flow chart of a method for operating rotating electronically steerable antenna system in accordance with a preferred embodiment of the present invention. Method 900 desirably is executed by a user terminal in a satellite communication system having multiple satellites.」(10欄10-14行)
(当審訳:
図9は,本発明の好ましい実施例による電子的操作可能アンテナシステムを操作する方法のフローチャートを示す。方法900は,複数衛星を有する衛星通信システムのユーザ端末で実行される。)

「This selection process desirably is carried out in antenna unit controller 260 (FIG.2) of user terminal 110 based on algorithms executed by controller 260 using information concerning periodicity of the satellite constellation which is available to controller 260 on a real-time basis and/or through monitoring of signal strength and/or through analysis of information contained in memory device 270 (FIG.2).
In step 920, a second satellite within coverage area 610 is selected in anticipation of establishing a link with the second satellite. In step 930, antenna unit controller 260 directs movement of mechanically rotatable base 330 (FIG.3) so as to effectuate rotation of antenna holder 320 by an amount sufficient to place the first satellite within a field of view of a first electronically steerable antenna subunit and to place a second satellite within a field of view of a second electronically steerable antenna subunit.」(10欄37-53行)
(当審訳:
この選択プロセスは,ユーザ端末110のアンテナユニット制御装置260(図2)において,制御装置260がリアルタイムで利用可能な衛星群の周期性に関連した情報を用いた制御装置260によって実行されるアルゴリズムに基づいて,及び/又は,信号強度の監視を通して,及び/又は,メモリ装置270(図2)内に含まれている情報の解析を通して,実行される。
ステップ920では,第2衛星とのリンク確立を見越して,エリア610をカバーする第2衛星が選択される。ステップ930では,アンテナユニット制御装置260は,機械的回転可能なベース330(図3)の移動を指示し,第1衛星を第1電子的操作可能アンテナサブユニットの視野に配置し,第2衛星を第2伝的操作可能アンテナサブユニットの視野に配置するのに十分な量で,アンテナ保持部320を回転する。)

「In step 940, a communication link is established with the first satellite through the first electronically steerable antenna subunit.」(11欄24-26行)
(当審訳:
ステップ940では,第1電子的操作可能アンテナサブユニットを用いて第1衛星と通信リンクを確立する。)

「Thus, in step 960, a communication link is established with a second satellite, such as satellite 616 (FIG.8), through the second electronically steerable antenna subunit while maintaining the first communication link with the first satellite through the first electronically steerable antenna subunit. The communication link established in step 960 can comprise a "make-before-break" connection which is made in anticipation of executing a hand-off from the first satellite to the second satellite. Then, in step 970, a communication between system 100 and user terminal 110 could be handed-off from the first satellite to second satellite.
Note that the steps of method 900 are not necessarily in sequential order and could be reordered without departing from the scope of the present invention. For example, step 960 could before step 950 or even before step 930 in alternate embodiments of the present invention. Similarly, step 970 could be executed after step 950 if it is not critical that a make-before-break connection is established (e.g. for bursty transmissions that do not require a continuous link).」(11欄55行-12欄6行)
(当審訳:
したがって,ステップ960では,第1電子的操作可能アンテナサブユニットを用いて第1衛星と第1通信リンクが確立されているときに,第2電子的操作可能サブアンテナユニットを用いて,例えば衛星616(図8)のような第2衛星と通信リンクが確立される。ステップ960の通信リンクは,第1衛星から第2衛星へのハンドオフを見越して行われる「切断前接続」コネクションを含むことができる。次に,ステップ970では,システム100とユーザ端末110の間の通信が第1衛星から第2衛星にハンドオフすることができる。
方法900のステップは,連続した順序の必要はなく,本発明の範囲から逸脱しない範囲で再順序可能である。例えば,本発明の代替実施例においては,ステップ960はステップ950の前やステップ930の前に行っても良い。同様に,切断前接続が重要でない場合(例えば,バースト的な転送には継続したリンクは必要ない)には,ステップ970はステップ950の後に行なっても良い。)

の記載があるから,引用例2によれば,

「極軌道と傾斜軌道の両方の衛星群に対応した衛星通信システムのユーザ端末において,第1電子的操作可能サブアンテナを用いた第1衛星との通信リンクから第2電子的操作可能サブアンテナを用いた第2衛星との通信リンクへのハンドオフを行うにあたり,衛星選択のプロセスが,制御装置260において,リアルタイムで利用可能な衛星群の周期性に関連した情報を用いた制御装置260によって実行されるアルゴリズムに基づいて,及び/又は,信号強度の監視を通して,及び/又は,メモリ装置270内に含まれている情報の解析を通して,実行される。」

(以下,「周知技術1」という。)

ことは,周知である。


5.本願発明と引用発明の対比

本願発明と上記引用発明を対比する。

引用発明の地球局は,飛行機などに搭載された移動局であるから,プラットフォームに搭載されたモバイルコミュニケータであるといえる。

引用発明の「アンテナ121」及び「アンテナ11」は,衛星切り換え前に衛星111との間で送受信を行う同一のアンテナであって,本願発明の「第1アンテナ」に相当し,
引用発明の「アンテナ120」及び「アンテナ11’」は,衛星切り換え後に衛星120との間で送受信を行う同一のアンテナであって,「アンテナ121」及び「アンテナ11」とは別のアンテナであるから,本願発明の「前記第1アンテナとは異なる第2アンテナ」に,相当する。

引用発明の「レドーム16,16’」は,アンテナ11,11’を覆うから,本願発明の「前記第1アンテナ,前記第2アンテナを囲むように構成されたレードーム筐体」に相当する。

引用発明の「制御装置13」「制御装置13’」「衛星位置演算装置15」は,全体として「制御部」であるといえる。

引用発明は,「アンテナ121は常に衛星111の方向を追尾し,両者間の送信受信を続けて」いるから「前記第1アンテナを制御してデータを通信し」ているといえる。
ここで,使用していないアンテナは,「次の衛星が現われるまで待機する」のであるから,「前記第2アンテナを制御してデータ通信することな」いことは明らかである。
つまり,引用発明は,「(i)前記第2アンテナを制御してデータ通信することなく前記第1アンテナを制御してデータを通信し」ているといえる。

引用発明は,「次の衛星110の位置を算出して,制御装置13’に渡し,制御装置13’はその衛星位置から衛星切替タイミングと判断すると,追尾開始指令を出して駆動装置14によるアンテナ11’の追尾を開始」しており,「次の衛星110」の「位置」は「インジケータ」であるから,「前記(i)工程におけるデータ通信の開始の後に受け取ったインジケータに応じて,前記第2アンテナを介した通信」を行うものであり,さらに,アンテナ11’から受信された受信RF’は,「信号強度」がアンテナ11から受信された受信RFより大きくなるまでは受信装置21への信号として選択されないから「アンテナ11’の追尾を開始」したことは「第2アンテナを介した通信をテスト」しているものであるといえる。
すなわち,引用発明は「(ii)前記(i)工程におけるデータ通信の開始の後に受け取ったインジケータに応じて,前記第2アンテナを介した通信をテストし」ているといえる。

引用発明は,「受信切り替え装置25により信号強度の大きい方を選択される」から,「(iii)前記第1アンテナの使用に関連する第1信号と前記第2アンテナの使用に関連する第2信号を比較」しているといえる。

引用発明は,「受信切り替え装置25により信号強度の大きい方を選択される」から,「比較に基づいて前記第2信号が前記第1信号よりも大きい信号電力を有すると決定するならば,前記第2アンテナを介した通信を開始」し,「比較に基づいて前記第1信号が前記第2信号よりも大きい信号電力を有すると決定するならば,前記(i)工程の前記第1アンテナを介した通信を継続する」ものであるといえる。
ここで,「前記第2アンテナを介した通信を開始」した場合,「前記第1アンテナを介した通信」は,「受信切り替え装置25」で選択されなくなるから,「前記第1アンテナを介した通信を終了」しているといえる。
また,「前記(i)工程の前記第1アンテナを介した通信を継続」した場合,「前記第2アンテナを介した通信」は,「受信切り替え装置25」で選択されないから,「前記第2アンテナを介した更なる通信を行うこと」がないものである。
すなわち,引用発明は「(iv)前記(iii)工程における比較に基づいて前記第2信号が前記第1信号よりも大きい信号電力を有すると決定するならば,前記(i)工程の前記第1アンテナを介した通信を終了して前記第2アンテナを介した通信を開始し」ており,「(v)前記(iii)工程における比較に基づいて前記第1信号が前記第2信号よりも大きい信号電力を有すると決定するならば,前記第2アンテナを介した更なる通信を行うことなく前記(i)工程の前記第1アンテナを介した通信を継続する」ものであるといえる。

したがって,本願発明と引用発明は,

「第1アンテナと,
前記第1アンテナとは異なる第2アンテナと,
前記第1アンテナ,前記第2アンテナ,を囲むように構成されたレードーム筐体と,
制御部を備え,
前記制御部は,
(i)前記第2アンテナを制御してデータ通信することなく前記第1アンテナを制御してデータを通信し,
(ii)前記(i)工程におけるデータ通信の開始の後に受け取ったインジケータに応じて,前記第2アンテナを介した通信をテストし,
(iii)前記第1アンテナの使用に関連する第1信号と前記第2アンテナの使用に関連する第2信号を比較し,
(iv)前記(iii)工程における比較に基づいて前記第2信号が前記第1信号よりも大きい信号電力を有すると決定するならば,前記(i)工程の前記第1アンテナを介した通信を終了して前記第2アンテナを介した通信を開始し,
(v)前記(iii)工程における比較に基づいて前記第1信号が前記第2信号よりも大きい信号電力を有すると決定するならば,前記第2アンテナを介した更なる通信を行うことなく前記(i)工程の前記第1アンテナを介した通信を継続する,プラットフォームに搭載されたモバイルコミュニケータ。」

で一致し,下記の点で相違する。

インジケータについて,本願発明1は,信号インジケータであるのに対し,引用発明は,次の衛星の位置である点。


6.当審の判断

上記相違点について検討する。

ユーザ端末が第1電子的操作可能サブアンテナを用いた第1衛星との通信リンクから第2電子的操作可能サブアンテナを用いた第2衛星との通信リンクへのハンドオフを行うにあたり,衛星群の周期性に関連した情報,すなわち衛星位置に関する情報を用いることや,信号強度を用いることは周知である(周知技術1)から,衛星切替タイミングとして,衛星位置による代わりに,信号強度,すなわち信号インジケータにより衛星切替えタイミングを把握するようにすることは,容易に想到しうることである。


7.むすび

以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-01-28 
結審通知日 2021-02-02 
審決日 2021-02-18 
出願番号 特願2018-55094(P2018-55094)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01Q)
P 1 8・ 121- WZ (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久々宇 篤志西村 純  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 吉田 隆之
衣鳩 文彦
発明の名称 プラットフォームに搭載されたモバイルコミュニケータおよびそれと通信する方法  
代理人 アクシス国際特許業務法人  

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