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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F16F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 F16F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F16F 審判 全部申し立て 2項進歩性 F16F |
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管理番号 | 1375858 |
異議申立番号 | 異議2020-700496 |
総通号数 | 260 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-08-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-07-16 |
確定日 | 2021-04-16 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6633169号発明「空気ばねおよび回り込み抑制部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6633169号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?11〕について訂正することを認める。 特許第6633169号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6633169号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成30年11月21日に出願され、令和1年12月20日にその特許権の設定登録がされ、令和2年1月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年7月16日に特許異議申立人藤江桂子(以下「特許異議申立人1」という。)により、また、令和2年7月21日に特許異議申立人飯島光輝(以下「特許異議申立人2」という。)により、それぞれ請求項1?11に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年 7月16日 :特許異議申立人1による特許異議の申立て 令和2年 7月21日 :特許異議申立人2による特許異議の申立て 令和2年10月 9日付け:取消理由通知書 令和2年12月11日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 令和3年 1月15日 :特許異議申立人1による意見書の提出 令和3年 1月19日 :特許異議申立人2による意見書の提出 第2 訂正の請求についての判断 1 訂正の内容 令和2年12月11日に特許権者により提出された訂正請求書による本件訂正請求の訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(5)のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?11〕について請求されたものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有する、空気ばね」 と記載されているのを、 「前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい、鉄道車両用空気ばね」 に訂正する。請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?11についても同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2?8に、 「空気ばね」 と記載されているのを、 「鉄道車両用空気ばね」 に訂正する。請求項2?8のそれぞれを直接又は間接的に引用する請求項4?8及び11についても同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項9に、 「前記側端面は、軸方向と平行な方向に延在する垂直部をさらに有し、前記垂直部は、軸方向の下側において前記傾斜部に連なる、請求項1に記載の空気ばね」 と記載されているのを、 「前記側端面外周部は、軸方向と平行な方向に延在する、請求項1に記載の鉄道車両用空気ばね」 に訂正する。請求項9を直接又は間接的に引用する請求項10及び11についても同様に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10に、 「前記垂直部と前記傾斜部とがなす角度は、140°以上175°以下である、請求項9に記載の空気ばね」 と記載されているのを、 「前記側端面外周部と前記傾斜部とがなす角度は、140°以上175°以下である、請求項9に記載の鉄道車両用空気ばね。」 に訂正する。請求項10を引用する請求項11についても同様に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項11に、 「前記内部空間に連通可能に構成された連結軸をさらに備えた、請求項1?請求項10のいずれか1項に記載の空気ばね」 と記載されているのを、 「前記内部空間に連通可能に構成された連結軸をさらに備え、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が第1距離の場合には、前記ダイアフラムは前記傾斜部から離間し、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第1距離よりも小さい第2距離の場合には、前記ダイアフラムは前記傾斜部と接し、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第2距離の場合には、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第1距離の場合よりも硬いばね特性を有する、請求項1?請求項10のいずれか1項に記載の鉄道車両用空気ばね」 に訂正する。 2 訂正の要件 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「傾斜部」を有する「側端面」について、「前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有」することを限定し、さらに「側端面」が有する「傾斜部」が、「前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」ことを具体的に特定することで、さらに限定するものである。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1における「空気ばね」を、「鉄道車両用空気ばね」として、それが「鉄道車両用」であることを具体的に特定することで、さらに限定するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、上記「ア」のとおり、訂正前の請求項1に係る発明を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 「側端面」について、願書に添付した明細書の段落【0049】には、「側端面14は、たとえば第1外周部14a(垂直部14a)と第2外周部14b(傾斜部14b)とを有している。第1外周部14aは、上端面13と連なり、かつ軸方向Yと平行な方向に延在する。第2外周部14bは、第1外周部14aと連なりかつ軸方向Yの下側に向かうにつれて径方向Xの幅が大きくなるように設けられている。言い換えれば、第2外周部14bは、径方向Xの外側方向の成分と、軸方向Yの下側方向の成分とを有する方向に延在している。第2外周部14bは、軸方向Yの下側において第1外周部14aと連なっている。第1外周部14aは、軸方向Yに対して傾斜していてもよい。」と記載されている。また、同段落【0082】には、「軸方向Yおよび径方向Xの各々に平行な断面において、軸方向Yに対する第2外周部14bの接線(第2接線72)の傾き(第2角度θ2)は、軸方向Yに対する第1外周部14aの接線(第1接線71)の傾き(第1角度θ1)よりも大きい。」と記載されている。そして、「(前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる)側端面外周部」が同段落【0049】に記載された「上端面13」および「第2外周部14b」と連なる「第1外周部14a(垂直部14a)」を指すことは明らかといえる。 また、「空気ばね」が「鉄道車両用」であることについて、同段落【0072】には、「空気ばねは、主に鉄道車両用のサスペンションに利用されるものである」と記載されている。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、訂正前の請求項2ないし8における「空気ばね」を、「鉄道車両用空気ばね」として、それが「鉄道車両用」であることを具体的に特定することで、さらに限定するものである。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、上記「ア」のとおり、訂正前の請求項2に係る発明を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 「空気ばね」が「鉄道車両用」であることについて、願書に添付した明細書の段落【0072】には、「空気ばねは、主に鉄道車両用のサスペンションに利用されるものである」と記載されている。 よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3) 訂正事項3について ア 訂正の目的の適否 上記「(1)」のように、訂正事項1により、「側端面」について、「前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置して」いることを限定したこと、及び「(前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる)側端面外周部」が明細書に記載された「第1外周部14a(垂直部14a)」を指すことから、訂正事項3は、訂正前の請求項9における「前記側端面は、軸方向と平行な方向に延在する垂直部をさらに有し、前記垂直部は、軸方向の下側において前記傾斜部に連なる」を、「前記側端面外周部は、軸方向と平行な方向に延在する」として、上記訂正事項1との整合をとったものである。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項9における「空気ばね」を、「鉄道車両用空気ばね」として、それが「鉄道車両用」であることを具体的に特定することで、さらに限定するものである。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、上記「ア」のとおり、訂正前の請求項3に係る発明を減縮し、また、明瞭でない記載の釈明をするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 「空気ばね」が「鉄道車両用」であることについて、願書に添付した明細書の段落【0072】には、「空気ばねは、主に鉄道車両用のサスペンションに利用されるものである」と記載されている。 よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4) 訂正事項4について ア 訂正の目的の適否 上記「(1)」のとおり、訂正事項1により、「側端面」について、「前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置して」いることを限定したこと、及び「(前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる)側端面外周部」が明細書に記載された「第1外周部14a(垂直部14a)」を指すことから、訂正事項4は、訂正前の請求項10における「前記垂直部」を、「前記側端面外周部」として、上記訂正事項1との整合をとったものである。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項4は、訂正前の請求項10における「空気ばね」を、「鉄道車両用空気ばね」として、それが「鉄道車両用」であることを具体的に特定することで、さらに限定するものである。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は、上記「ア」のとおり、訂正前の請求項10に係る発明を減縮し、また、明瞭でない記載の釈明をするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 「空気ばね」が「鉄道車両用」であることについて、願書に添付した明細書の段落【0072】には、「空気ばねは、主に鉄道車両用のサスペンションに利用されるものである」と記載されている。 よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (5) 訂正事項5について ア 訂正の目的の適否 訂正事項5は、訂正前の請求項11における「空気ばね」について、 「前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が第1距離の場合には、前記ダイアフラムは前記傾斜部から離間し、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第1距離よりも小さい第2距離の場合には、前記ダイアフラムは前記傾斜部と接し、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第2距離の場合には、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第1距離の場合よりも硬いばね特性を有する」として、 その「ダイアフラム」の「傾斜部」との接離関係を特定するとともに、その「ばね特性」を具体的に特定することで限定するものである。 また、訂正事項5は、訂正前の請求項11における「空気ばね」を、「鉄道車両用空気ばね」として、それが「鉄道車両用」であることを具体的に特定することで、さらに限定するものである。 よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は、上記「ア」のとおり、訂正前の請求項11に係る発明を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 「空気ばね」の「ダイアフラム」の「傾斜部」との接離関係について、願書に添付した明細書の段落【0053】には、「回り込み抑制部材10の表面には、上面板31と下面板20との軸方向Yの間隔が第1距離H1の場合にはダイアフラム4から離間しており、かつ上面板31と下面板20との軸方向Yの間隔が第1距離H1よりも小さい第2距離H2の場合にはダイアフラム4と接している部分がある。具体的には、当該部分は、たとえば第1外周部14aおよび第2外周部14bなどである。当該部分は、第2外周部14bだけであってもよい。」と記載されている。 また、「空気ばね」の「ばね特性」について、同段落【0056】には、「軸方向Yの間隔が第1距離H1でのバネ定数よりも軸方向Yの間隔が第2距離H2におけるバネ定数の方が硬くなる。」と記載されており、同段落【0061】には、「上面板31と下面板20との間隔が小さい場合において、当該間隔に対する有効受圧面積の低減率を低減又は増加することができる。結果として、当該間隔が大きい(言い換えれば、圧縮変位が小さい)範囲においては、軟らかいばね特性を実現し、かつ当該間隔が小さい(言い換えれば、圧縮変位が大きい)範囲においては、硬いばね特性を実現することができる。」と記載されている。 そして、「空気ばね」が「鉄道車両用」であることについて、同段落【0072】には、「空気ばねは、主に鉄道車両用のサスペンションに利用されるものである」と記載されている。 よって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 3 小括 上記「2」のとおり、訂正事項1ないし5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 また、上記「1」のとおり、訂正事項1ないし5に係る訂正は、一群の請求項ごとに当該請求をしているものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。 そして、本件特許異議の申立てにおいては、訂正前のすべての請求項1ないし11について特許異議の申立てがされているため、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 よって、訂正事項1ないし5に係る訂正は、訂正の要件を満たしている。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?11〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記「第2」のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 [本件発明1] 「【請求項1】 上面板と、 前記上面板に対面する下面板と、 前記上面板と前記下面板とを連結し、前記上面板と前記下面板との間に内部空間を形成するダイアフラムと、 回り込み抑制部材とを備え、 前記回り込み抑制部材は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイアフラムが前記回り込み抑制部材の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記回り込み抑制部材は、前記下面板の外周に設けられており、 前記下面板は、前記下面板の側面から径方向に延在する突出部を含み、 前記回り込み抑制部材は、前記突出部に接しており、 前記回り込み抑制部材は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、 前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい、鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明2] 「【請求項2】 前記回り込み抑制部材は、第1部材と、前記第1部材を支持する第2部材とにより構成されており、 前記第2部材は、前記突出部に接している、請求項1に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明3] 「【請求項3】 前記回り込み抑制部材は、第1部材から構成されており、 前記第1部材は、前記突出部に接している、請求項1に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明4] 「【請求項4】 前記第1部材は、ゴム材料から構成されている、請求項2または請求項3に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明5] 「【請求項5】 前記第1部材は、樹脂材料から構成されている、請求項2または請求項3に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明6] 「【請求項6】 前記第1部材は、金属材料から構成されている、請求項2または請求項3に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明7] 「【請求項7】 前記回り込み抑制部材の下端部は、前記突出部の下端部よりも、軸方向の下側に位置する、請求項1?請求項6のいずれか1項に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明8] 「【請求項8】 前記下面板に対して、前記上面板とは反対側に位置する積層ゴムをさらに備え、 前記突出部は、径方向において、前記積層ゴムと前記回り込み抑制部材との間に設けられている、請求項1?請求項7のいずれか1項に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明9] 「【請求項9】 前記側端面外周部は、軸方向と平行な方向に延在する、請求項1に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明10] 「【請求項10】 前記側端面外周部と前記傾斜部とがなす角度は、140°以上175°以下である、請求項9に記載の鉄道車両用空気ばね。」 [本件発明11] 「【請求項11】 前記内部空間に連通可能に構成された連結軸をさらに備え、 前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が第1距離の場合には、前記ダイアフラムは前記傾斜部から離間し、 前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第1距離よりも小さい第2距離の場合には、前記ダイアフラムは前記傾斜部と接し、 前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第2距離の場合には、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第1距離の場合よりも硬いばね特性を有する、請求項1?請求項10のいずれか1項に記載の鉄道車両用空気ばね。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 本件訂正前の請求項1ないし11に係る特許に対して、当審が令和2年10月9日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1 (新規性)本件特許の請求項1、2、4、8及び11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例1ないし4に記載された発明であるから、請求項1、2、4、8及び11に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 2 (進歩性)本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例1ないし4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <引用例一覧> 1:特開2002-187548号公報(特許異議申立人1が提出した甲第1号証) 2:特開2017-44229号公報(特許異議申立人1が提出した甲第2号証;特許異議申立人2が提出した甲第3号証) 3:特許第4614557号公報(特許異議申立人1が提出した甲第3号証;特許異議申立人2が提出した甲第1号証に係る出願の特許掲載公報) 4:特開2012-197893号公報(特許異議申立人2が提出した甲第2号証) 5:特開2005-36860号公報(特許異議申立人1が提出した甲第4号証) 6:特開2014-163423号公報(特許異議申立人1が提出した甲第5号証) 7:特開2008-115959号公報(特許異議申立人1が提出した甲第6号証) 8:特開2011-190883号公報(特許異議申立人1が提出した甲第7号証) 第5 当審の判断 1 引用発明 (1) 引用例1に記載の事項 引用例1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両のボルスタレル台車用空気ばねに関し、特に、空気ばねを構成するゴム製部材の変形や、磨耗を低減し、ひいては長寿命化を図り得る空気ばねに関する。」 「【0013】更に好ましくは、前記ゴム座は、前記ダイヤフラムに接触するコーナ部を有し、該コーナ部の縦断面において、前記ゴム製部材の前記ダイヤフラムとの接触部の曲率半径が、前記ダイヤフラムの肉厚の2倍以上に形成される。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る空気ばねの概略構成を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る空気ばね1は、ダイヤフラム2と、ダイヤフラム2を支持する内筒3及び外筒4とを備えている。ここで、内筒3は、シアーパック5と、ダイヤフラム2に接触し該ダイヤフラム2を支持するゴム座6とを備えている。ゴム座6は、ダイヤフラム2に接触するゴム製部材7と、ゴム製部材7を支持する裏当て金8とを備えている。また、ダイヤフラム2に接触する外筒4の内側にもゴム製部材7が備えられおり、前記ゴム座6と同様の機能を奏するように構成されている。 【0015】斯かる構成を有する空気ばね1は、図8に示すように、使用に際し、車体10と台車11の間に装着され、高さ調整機構9によりダイヤフラム2が膨張した状態で車体10を支持する。」 「【0026】例えば、図2に示すように、ゴム製部材7の接触面μが円弧状に形成されている部分では、裏当て金8の支持面γは、前記円弧と同心であり、且つ、ゴム製部材7の肉厚分だけ小さい曲率半径の形状が決定されることになる。また、ゴム製部材の接触面μが直線上に形成されている部分では、裏当て金8の支持面γも前記接触面μに平行な直線とし、全体としてゴム製部材7の拘束を最小限化する形状とされている。」 「【0030】図4に示すように、曲率半径Rを大きくすることによって、最大接触面圧は低減する。特に、曲率半径Rをダイヤフラム2の肉厚tの2倍以上にすることにより、最大接触面圧の絶対値が低くなり、ゴムの磨耗耐久性能を保持でき、長寿命化が期待できるということが分かった。」 「【図1】 」 「【図2】 」 そして、特に、引用例1の図1及び図2の記載内容からして、「ゴム座6」は、上端面と上端面と連なる側端面とを含み、側端面は縦断面において円弧状に形成され、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有するといえ、また、その存在により、空気ばねの高さ方向に圧縮され外筒4と内筒3との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、「ダイヤフラム2」が下側に回り込むことを抑制可能といえる。 また、側端面は、上端面および傾斜部の各々と連なる部分である側端面外周部をさらに有し、傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する側端面外周部の接線の傾きよりも小さい、といえる。 斯界の技術常識を考慮し、上記記載事項を総合して整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。 [引用発明1] 「外筒4と、 前記外筒4に対面する内筒3と、 前記外筒4と前記内筒3とを連結し、前記外筒4と前記内筒3との間に内部空間を形成するダイヤフラム2と、 ゴム座6とを備え、 前記ゴム座6は、前記外筒4と前記内筒3との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイヤフラム2が前記ゴム座6の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記ゴム座6は、前記内筒3の外周に設けられており、 前記内筒3は、前記内筒3の側面から径方向に延在する突出部を含み、 前記ゴム座6は、前記突出部に接しており、 前記ゴム座6は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、 前記側端面は、縦断面において円弧状に形成され、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい、鉄道車両のボルスタレル台車用空気ばね1。」 (2) 引用例2に記載の事項 引用例2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。 「【0001】 本発明は、例えば鉄道車両等の車体と台車との間に配設される空気ばね装置に関する。」 「【0022】 以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る空気ばね装置を説明する。 図1に示すように、空気ばね装置1は、例えば鉄道車両等の図示されない車体と台車との間に配設され、上部材2および下部材3と、これらの両部材2、3に両端開口部4a、4bが各別に連結され、内部に大気圧以上の加圧気体が封入される筒状膜部材4と、下部材3に連結された筒状の補助弾性体6と、を備えている。 上部材2および下部材3にそれぞれ、筒状膜部材4内が排気された状態で互いに摺動自在に当接する当接部11、18が各別に備えられている。」 「【0025】 下板7には、下方に向けて突出し、かつ軸線Oと同軸に配置された連通筒部7aが形成されている。連通筒部7aの内側は、軸線O方向の全長にわたって連通しており、その上部の内周面に雌ねじ部が形成されている。この雌ねじ部には、空気ばね装置1を吊り上げる際に吊りボルトが螺着される。連通筒部7aの内側は、補助弾性体6の内側と連通している。連通筒部7aには、例えば、筒状膜部材4内に空気などの気体を給排する図示しない気体供給手段や補助タンクなどが気密に接続される。」 「【0028】 下部材3は、複数の当接部18と、表面19cに当接部18が固着された複数の保持部19と、保持部19を、当接部18が固着された表面19cの反対側の裏面19b側から支持する基部20と、を備えている。図示の例では、保持部19に軸線O方向に貫く貫通孔19aが形成されている。基部20において、保持部19の貫通孔19aと対向する位置に装着孔20aが形成されている。そして、貫通孔19aおよび装着孔20aに一体に連結軸22が挿入されることにより、保持部19が基部20に固定されている。 【0029】 当接部18は、テフロン(登録商標)より耐摩耗性に優れる、例えば分子量が約200万の超高分子ポリエチレン等で形成され、保持部19は、金属より軽い、例えばPA66をガラス繊維で強化した樹脂材料等で形成され、基部20は、例えば球状黒鉛鋳鉄等で形成される。なお、当接部18を形成する樹脂材料の分子量は、保持部19を形成する樹脂材料の分子量より多くなっており、当接部18は、保持部19を形成する樹脂材料より摩擦係数の低い樹脂材料で形成されている。 【0030】 基部20は、環状の底壁部21を有する有底筒状に形成され、底壁部21の下面に、補助弾性体6のゴム板9が加硫接着されている。基部20は軸線Oと同軸に配設されている。基部20の下端部には、全周にわたって連続して延在し、かつ径方向の外側に向けて突出するフランジ部20bが形成されている。基部20に、筒状膜部材4の下端開口部4bが気密に外嵌されている。フランジ部20bの外周縁部に、上方に向けて突出し、全周にわたって延びる突条部が形成されている。フランジ部20bには環状のゴム座16が配設されており、ゴム座16が、フランジ部20bにおける上面および外周面を覆っている。ゴム座16には、全周にわたって連続して延びる補強金具16aが埋設されている。補強金具16aには、フランジ部20bの突条部が嵌合される凹溝が形成されている。筒状膜部材4の下端開口部4b側の端部は、ゴム座16上に配置されている。」 「【図1】 」 そして、特に、引用例2の図1の記載内容からして、「ゴム座16」は、上端面と上端面と連なる側端面とを含み、側端面は縦断面において円弧状に形成され、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有するといえ、また、その存在により、空気ばね装置1の高さ方向に圧縮され上部材2と下部材3との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、「筒状膜部材4」が下側に回り込むことを抑制可能といえる。 また、側端面は、上端面および傾斜部の各々と連なる部分である側端面外周部をさらに有し、傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する側端面外周部の接線の傾きよりも小さい、といえる。 斯界の技術常識を考慮し、上記記載事項を総合して整理すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認めることができる。 [引用発明2] 「上部材2と、 前記上部材2に対面する下部材3と、 前記上部材2と前記下部材3とを連結し、前記上部材2と前記下部材3との間に充填空間Sを形成する筒状膜部材4と、 ゴム座16とを備え、 前記ゴム座16は、前記上部材2と前記下部材3との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記筒状膜部材4が前記ゴム座16の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記ゴム座16は、前記下部材3の外周に設けられており、 前記下部材3は、前記下部材3の周壁部24から径方向に延在するフランジ部20bを含み、 前記ゴム座16は、前記フランジ部20bに接しており、 前記ゴム座16は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、 前記側端面は、縦断面において円弧状に形成され、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい、鉄道車両の空気ばね装置1。」 (3) 引用例3に記載の事項 引用例3には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、鉄道車両用台車に関し、詳細には、空気ばねを用いて車体傾斜を行う鉄道車両用台車に関する。」 「【0018】 空気ばね4は、空気の配給若しくは排出により膨張若しくは縮小する本体部40と、この本体部40の変形を規制する変形規制板43、44とを具備し、本体部40は、平面視円形に形成され、車体前後軸縦断面視において、円弧状で外側ほど離間する扁平な中央部41と、外側に斜めに垂れ下がる側部42と、を備えている。この空気ばね4は、本体部40の中央部41および側部42がこのような構造とされていることにより、上下方向のストロークおよび左右(横)方向のストロークを大きくとることができるようになっている。 また、本体部40の上方および下方には、本体部40の変形を規制する上下一対の傘状の変形規制板43、44が、所定の傾斜角を有するように設けられている。ここで、車体傾斜時の上下面間相対角度の変化を考慮して、上面側の変形規制板43は、下面側の変形規制板44に比べて傾斜角が緩やかになっている。そして、空気ばね4が横移動した場合に、この変形規制板43、44により適度な横剛性が生ずるようになっている。 更に、上面側変形規制板43と下面側変形規制板44とがスムーズに接面するように、夫々の表面は車両の前後方向を軸とした円筒曲面とされている。 【0019】 また、下面側変形規制板44の下部には、空気ばね4の上下面接面時にも無理な力を緩衝出来るように、ゴム層と金属層が積層されて構成された緩衝ゴム45が設けられている。調整弁13は、弁本体13aと、切換レバー13bとを備え、弁本体13aが枕梁3に回転アーム14を介して回動可能に支持され、切換レバー13bも回転アーム14の軸回りに回動可能とされている。そして、切換レバー13bの先端は、台車100中央側に位置し、回転アーム14の自由端(先端)は回動支持点の直上に位置するように構成されている。切換レバー13bの先端には、垂直に高さ調整ロッド15が連結されている。この高さ調整ロッド15の他端は車体台枠下面に回転可能に軸支されている。」 「【0023】 まず、車体Sに超過遠心力が作用すると、車体Sは左へ移動を始め、車体中心位置がOからO’に移動する。このとき、空気ばね4には、上下の変形規制板43、44によって適度の横剛性が付与されているので、超過遠心力の大きさに応じて左に変位する。車体Sが左に変位すると、車体連結ロッド17が左に押され、連結棒16を左に押す。すると、連結棒16は左右の回転アーム14先端を同時に左に変位させ、調整弁13の弁本体13aが左廻りに回転させられる。これにより、夫々の切換レバー13bは調整弁13に対して相対的に右廻りに回動する。このとき、左右の切換レバー13bは前後中心軸に関して対称配置となっているので、右の切換レバー13bは、調整弁13に対して上向きに変位し、左の切換レバー13bは調整弁13に対して下向きに変位したことと等価となる。」 「【図1】 」 「【図5】 」 そして、特に、引用例3の図1及び図5の記載内容からして、「下面変形規制板44」は、側端面を含み、側端面は所定の傾斜角を有し、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有するといえ、また、その存在により、空気ばね4の高さ方向に圧縮され上面板と下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、本体部40(「ダイアフラム」)が下側に回り込むことを抑制可能といえる。 また、側端面は、所定の傾斜角を有し、傾斜部と連なる部分である側端面外周部をさらに有するということもでき、傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと等しい、といえる。 斯界の技術常識を考慮し、上記記載事項を総合して整理すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認めることができる。 [引用発明3] 「上面板と、 前記上面板に対面する下面板と、 前記上面板と前記下面板とを連結し、前記上面板と前記下面板との間に内部空間を形成する本体部40と、 傘状の下面変形規制板44とを備え、 前記下面変形規制板44は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記本体部40が前記下面変形規制板44の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記下面変形規制板44は、前記下面板の外周に設けられており、 前記下面変形規制板44は、側端面を含み、 前記側端面は、所定の傾斜角を有して軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、所定の傾斜角を有し、前記傾斜部と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと等しい、鉄道車両用台車の空気ばね4。」 (4) 引用例4に記載の事項 引用例4には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。 「【0001】 本発明は、主としてボルスタレス台車が採用されている鉄道車両の緩衝装置として設置使用される車両用空気ばねに使用される下面板の製造方法に関するものである。」 「【0022】 以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。 図1は空気ばねを例示した縦断側面図であり、本発明は少なくともゴム座部、好ましくはゴム座部と上面ゴム部の表面に潤滑ゴム層を形成する製造方法に特徴を有するものであるが、得られた上面板、下面板を使用した空気ばねの構成は従来の空気ばねと同じである。空気ばね10は上面板16、可とう性部材18及び下面板20からなり、大きな変位を吸収する大変形吸収部と該大変形吸収部を支持するとともに可とう性部材の内部に圧縮空気を供給する空気通路を有する円筒状の積層ゴム支持体24から構成されている。積層ゴム支持体24は環状円板26とゴム層28が複数接着積層されたものであり、振動の緩衝作用を有する。積層ゴム支持体24の下部には円筒部を通じて空気室に圧縮空気を送る接続ノズル29が設けられている。 【0023】 可とう性部材18は内径部が開口した略ドーナツ状(断面略C字状)であり、タイヤに類似した形状、構造を有するものであって開口部の端部は上面側、下面側それぞれ外面側に凸状の上面ビード部19a、下面ビード部19bが形成され、該上下のビード部19a、19bにはタイヤと同様にビードワイヤ(図示せず)が内径周方向に配設されている。可とう性部材18は補強材としてテキスタルコードが埋設された加硫ゴム膜にて形成され、補強材はタイヤと同様にバイアス状に配設され、補強材の端部はビードワイヤに巻き付けられた構造になっている。ビードワイヤを含むビード部19a、19bはそれぞれセルフシール方式もしくは締結方式により上面板16とストッパー受台11及び下面板20とストッパー30に固定されている。上面板16は上面環状支持体12と該上面環状支持体12の少なくとも可とう性部材18との接触側に接着形成された上面ゴム部14を備えている。また下面板20は下面環状支持体35と該環状支持体の少なくとも可とう性部材との接触側に接着形成されたゴム座部を備えている。 【0024】 上面板16の外周側は下方、すなわち可とう性部材の側に傾斜する傾斜面が形成されている。また可とう性部材18は上下のビード部19a、19bの中心面より下方、すなわち下面板20側に偏心するように構成されている。かかる構成によって可とう性部材が水平方向(前後左右方向)に変形する外力を受けた場合において、傾斜面がストッパーとして作用し、変形に対抗する反力が形成される。上面板16を構成する上面環状支持体12は平坦であって上面ゴム部だけを傾斜面を形成するように構成してもよく、別途ストッパーを設ける場合には上面板16が平坦であってもよい。 【0025】 図2には本発明の下面板20のゴム座部34部分を拡大して例示した。下面板20は本発明の製造方法により製造した実施形態であり、環状支持部材35と該環状支持部材35の可とう性部材18との接触側である上面から外側端部下面に及んでゴム座部が形成されており、該ゴム座部34は非潤滑ゴム層33とその外面、すなわち可とう性部材18と接触する面に皮膜状に形成された潤滑ゴム層31とからなる。環状支持体35の内径に近い部分では、可とう性部材との接触はあるが、摺動は小さい。従って潤滑ゴム層31は部分的に、すなわち少なくとも可とう性部材との摺動が強く発生する部分を含むように形成されていることが好ましい。 【0026】 皮膜状に形成する潤滑ゴム層31の厚さは0.05mm以上であることが好ましく、液状の原料ゴム組成物の塗布・乾燥の繰り返し回数により調整することができる。厚くてもよいが、液状の潤滑性ゴム原料組成物の塗布回数が多くなり、乾燥時間も長く必要となる。潤滑ゴム層31の厚さは0.5mm以下であることが好ましい。皮膜状の潤滑ゴム層の厚さが薄すぎる場合にはポリ四フッ化エチレンを含んだ層が摩耗消滅する場合があり、その場合には摺動による可とう性部材の摩耗が発生する場合が生じる。塗装により形成された潤滑ゴム層は厚さが均一に形成できる結果、ばらつきによる薄い皮膜発生を防止でき、かかる特徴も空気ばねの耐久性向上に寄与する。 【0027】 液状の、好ましくは溶液状の潤滑ゴム原料組成物の塗布方法は特に限定されず、刷毛塗り法、スプレー塗装法などが使用可能である。潤滑ゴム原料組成物は鋼鉄製の環状支持部材の露出面まで塗装してもよく、かかる構成によれば鋼鉄製の環状支持部材の防錆効果も得られ、空気ばねの耐久性がより向上する。 【0028】 図3は図1に例示の空気ばねの上面板16を拡大した断面図である。上面板16は下面板と同様に上面環状支持部材12と該上面環状支持部材12に上面ゴム部16が接着形成されており、上面ゴム部16は非潤滑ゴム層14とその可とう性部材18と接触する表面側に形成された潤滑ゴム層15とから構成されている。外周部はストッパー部として形成されている。」 「【図1】 」 「【図2】 」 また、特に、引用例4の図1及び図2の記載内容からして、「ゴム座部34」は、上端面と上端面と連なる側端面とを含み、側端面は縦断面において円弧状に形成され、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有するといえ、また、その存在により、空気ばね10の高さ方向に圧縮されストッパー受台11及び上面板16とストッパー30との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、「可とう性部材18」が下側に回り込むことを抑制可能といえる。 そして、側端面は、上端面および傾斜部の各々と連なる部分である側端面外周部をさらに有し、傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい、といえる。 斯界の技術常識を考慮し、上記記載事項を総合して整理すると、引用例4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認めることができる。 [引用発明4] 「ストッパー受台11及び上面板16と、 前記ストッパー受台11及び上面板16に対面するストッパー30と、 前記ストッパー受台11及び上面板16と前記ストッパー30とを連結し、前記ストッパー受台11及び上面板16と前記ストッパー30との間に内部空間を形成する可とう性部材18と、 下面板20とを備え、 前記下面板20は、前記ストッパー受台11及び上面板16と前記ストッパー30との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記可とう性部材18が前記下面板20の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記下面板20は、前記ストッパー30の外周に設けられており、 前記ストッパー30は、前記ストッパー30の側面から径方向に延在する突出部を含み、 前記下面板20は、前記突出部に接しており、 前記下面板20は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、 前記側端面は、縦断面において円弧状に形成され、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい、鉄道車両用空気ばね10。」 2 本件発明1について (1) 引用発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「外筒4」は、本件発明1の「上面板」に相当し、同様に、 「内筒3」は、「下面板」に、 「ダイヤフラム2」は、「ダイアフラム」に、 「ゴム座6」は、「回り込み抑制部材」に、 「鉄道車両のボルスタレル台車用空気ばね1」は、「鉄道車両用空気ばね」に、 それぞれ相当する。 また、本件発明1の「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」ことと、引用発明1の「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」こととは、「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である」ことで共通しているといえる。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「上面板と、 前記上面板に対面する下面板と、 前記上面板と前記下面板とを連結し、前記上面板と前記下面板との間に内部空間を形成するダイアフラムと、 回り込み抑制部材とを備え、 前記回り込み抑制部材は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイアフラムが前記回り込み抑制部材の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記回り込み抑制部材は、前記下面板の外周に設けられており、 前記下面板は、前記下面板の側面から径方向に延在する突出部を含み、 前記回り込み抑制部材は、前記突出部に接しており、 前記回り込み抑制部材は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、 前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である、鉄道車両用空気ばね。」 <相違点1> 「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である」ことに関し、本件発明1は「軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」のに対し、引用発明1は「軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」点。 イ 判断 上記相違点1について、検討する。 引用発明1の「側端面は、縦断面において円弧状に形成され」るのであって、「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」のであるから、その「小さい」ものをして「大きい」ものとすることは、動機づけがあるとはいえない。 そして、引用発明1の「側端面は、縦断面において円弧状に形成され」ることで、引用例1の段落【0030】に記載された「曲率半径Rを大きくすることによって、最大接触面圧は低減する。特に、曲率半径Rをダイヤフラム2の肉厚tの2倍以上にすることにより、最大接触面圧の絶対値が低くなり、ゴムの磨耗耐久性能を保持でき、長寿命化が期待できる」旨の効果を奏するものである。 そうすると、仮に、特許異議申立人1が提出した、甲第4号証(引用例5):特開2005-36860号公報及び甲第7号証(引用例8):特開2011-190883号公報、並びに、特許異議申立人2が提出した、甲第5号証:米国特許第9636963号明細書、甲第7号証:特公昭50-37338号公報及び甲第8号証:特開平10-299808号公報に、空気ばねのダイヤフラムと呼べるものが接する部材が、「上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」形状・構造であることが、それぞれ記載されているとしても、引用発明1をして、本件発明1の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ここで、特に、特許異議申立人2が提出した、甲第5号証:米国特許第9636963号明細書には、「side wall 456(側壁456)」に関し、「It will be appreciated that the side wall can have any suitable cross-sectional shape, profile and/or configuration, such as being approximately linear (as shown in FIG. 3) or curvilinear (as shown in FIG. 4), for example.(側壁は、例えば、ほぼ直線状(図3に示されている)、または曲線状(図4に示されている)など、任意の適切な断面形状、輪郭、および/または構成を有することができることが理解されよう。)」(9欄30ないし33行)と記載されているとしても、これから導けることは、「側壁」の「任意の適切な断面形状、輪郭、および/または構成」は、必要に応じて設定されるといったことである。このことは、仮に引用発明1が必要とするのであれば、いかなる形状であっても採用できるといったことはいえるとしても、引用発明1の「側端面」の形状を任意に採用できることを意味するものとはいえないし、また、引用発明1をして、本件発明1の上記相違点1に係る構成とすることを動機づけるものともいえない。 さらに、特許異議申立人1が提出した、甲第4号証及び甲第7号証、並びに、特許異議申立人2が提出した、甲第7号証及び甲第8号証は、本件発明1の「回り込み抑制部材」に相当するものを備えていないから、この点からしても、それぞれに記載された事項を、引用発明1に適用する動機づけがあるとはいえない。 なお、特許異議申立人1が提出した、甲第5号証(引用例6):2014-163423号公報及び甲第6号証(引用例7):特開2008-115959号公報、並びに、特許異議申立人2が提出した、甲第4号証:特開2009-24142号公報及び甲第6号証:特開2013-108558号公報には、本件発明1の上記相違点1に係る構成が記載も示唆もされていない。 そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることから、願書に添付した明細書の段落【0059】及び【0060】に記載されているように、「上面板31と下面板20との軸方向Yの間隔」に関し、「当該間隔が小さくなる(圧縮変位は大きくなる)に従って有効受圧面積が減少する場合(符号A)と、当該間隔に対する有効受圧面積の変化率が一定である場合(符号B)と、当該間隔が小さくなる(圧縮変位は大きくなる)に従って有効受圧面積が増加する場合(符号C)とを含む(図8参照)」うちの、「当該間隔が小さくなる(圧縮変位は大きくなる)に従って有効受圧面積が減少する場合(符号A)と、当該間隔に対する有効受圧面積の変化率が一定である場合(符号B)」とを排除しているといえる。 そうすると、本件発明1の上記相違点1に係る構成が排除する構成を引用発明1が備えるといえるから、引用発明1をして、本件発明1の上記相違点1に係る構成とすることは、阻害要因があるというべきである。 ウ 小括 以上によれば、本件発明1は、引用発明1ではなく、また、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 引用発明2について ア 対比 本件発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「上部材2」は、本件発明1の「上面板」に相当し、同様に、 「下部材3」は、「下面板」に、 「充填空間S」は、「内部空間」に、 「筒状膜部材4」は、「ダイアフラム」に、 「ゴム座16」は、「回り込み抑制部材」に、 「下部材3の周壁部24」は、「下面板の側面」に、 「フランジ部20b」は、「突出部」に、 「鉄道車両の空気ばね装置1」は、「鉄道車両用空気ばね」に、 それぞれ相当する。 また、本件発明1の「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」ことと、引用発明2の「傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」こととは、「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である」ことで共通しているといえる。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「上面板と、 前記上面板に対面する下面板と、 前記上面板と前記下面板とを連結し、前記上面板と前記下面板との間に内部空間を形成するダイアフラムと、 回り込み抑制部材とを備え、 前記回り込み抑制部材は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイアフラムが前記回り込み抑制部材の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記回り込み抑制部材は、前記下面板の外周に設けられており、 前記下面板は、前記下面板の側面から径方向に延在する突出部を含み、 前記回り込み抑制部材は、前記突出部に接しており、 前記回り込み抑制部材は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、 前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である、鉄道車両用空気ばね。」 <相違点2> 「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である」ことに関し、本件発明1は「軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」のに対し、引用発明2は「軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」点。 イ 判断 上記相違点2について、検討する。 引用発明2の「側端面は、縦断面において円弧状に形成され」るのであって、「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」のであるから、その「小さい」ものをして「大きい」ものとすることは、動機づけがあるとはいえず、むしろ、本件発明1の上記相違点2に係る構成が排除する構成を引用発明2が備えるといえるから、阻害要因があるというべきである。 そうすると、上記相違点1について検討したことと同様に、引用発明2をして、本件発明1の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明1は、引用発明2ではなく、また、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 引用発明3について ア 対比 本件発明1と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「本体部40」は、本件発明1の「ダイアフラム」に相当し、同様に、 「下面変形規制板44」は、「回り込み抑制部材」に、 「鉄道車両用台車の空気ばね4」は、「鉄道車両用空気ばね」に、 それぞれ相当する。 また、本件発明1の「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」ことと、引用発明3の「傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと等しい」こととは、「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である」ことで共通しているといえる。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「上面板と、 前記上面板に対面する下面板と、 前記上面板と前記下面板とを連結し、前記上面板と前記下面板との間に内部空間を形成するダイアフラムと、 回り込み抑制部材とを備え、 前記回り込み抑制部材は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイアフラムが前記回り込み抑制部材の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記回り込み抑制部材は、前記下面板の外周に設けられており、 前記回り込み抑制部材は、側端面を含み、 前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、前記傾斜部と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である、鉄道車両用空気ばね。」 <相違点ア> 本件発明1は「前記下面板は、前記下面板の側面から径方向に延在する突出部を含み、回り込み抑制部材は、前記突出部に接して」いるのに対し、引用発明3では、「前記下面板は、前記下面板の側面から径方向に延在する突出部を含」むか否か明らかでなく、「前記下面変形規制板44は、前記突出部に接して」いるかも不明である点。 <相違点イ> 本件発明1は「回り込み抑制部材は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含」み、さらに「側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周をさらに有」するのに対し、引用発明3では「下面変形規制板44は、側端面を含」むものの、上端面を含むか否か明らかでなく、側端面が「上端面と連なる」か不明であり、さらに側端面は「前記傾斜部と連なる側端面外周部をさらに有」するものの、側端面外周部が「上端面と連なる」か不明である点。 <相違点3> 「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である」ことに関し、本件発明1は「軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」のに対し、引用発明3は「軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと等しい」点。 イ 判断 事案に鑑み、まず上記相違点3について、検討する。 引用発明3の「傘状の下面変形規制板44」の「側端面は、所定の傾斜角を有して」いて、「所定の傾斜角を有」する「側端面外周部をさらに有し」ているのであって、「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと等しい」のであるから、その「等しい」ものをして「大きい」ものとすることは、動機づけがあるとはいえず、むしろ、本件発明1の上記相違点3に係る構成が排除する構成を引用発明3が備えるといえるから、阻害要因があるというべきである。 そして、引用発明3の「傘状の下面変形規制板44」の「側端面は、所定の傾斜角を有して」いることで、引用例3の段落【0018】に記載された「本体部40の上方および下方には、本体部40の変形を規制する上下一対の傘状の変形規制板43、44が、所定の傾斜角を有するように設けられている。ここで、車体傾斜時の上下面間相対角度の変化を考慮して、上面側の変形規制板43は、下面側の変形規制板44に比べて傾斜角が緩やかになっている。そして、空気ばね4が横移動した場合に、この変形規制板43、44により適度な横剛性が生ずる」旨の効果を奏するものである。 そうすると、上記相違点1について検討したことと同様に、引用発明3をして、本件発明1の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 以上によれば、上記相違点ア及び相違点イについて検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 引用発明4について ア 対比 本件発明1と引用発明4とを対比する。 引用発明4の「ストッパー受台11及び上面板16」は、本件発明1の「上面板」に相当し、同様に、 「ストッパー30」は、「下面板」に、 「可とう性部材18」は、「ダイアフラム」に、 「下面板20」は、「回り込み抑制部材」に、 「鉄道車両用空気ばね10」は、「鉄道車両用空気ばね」に、 それぞれ相当する。 また、本件発明1の「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」ことと、引用発明4の「傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」こととは、「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である」ことで共通しているといえる。 そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「上面板と、 前記上面板に対面する下面板と、 前記上面板と前記下面板とを連結し、前記上面板と前記下面板との間に内部空間を形成するダイアフラムと、 回り込み抑制部材とを備え、 前記回り込み抑制部材は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイアフラムが前記回り込み抑制部材の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記回り込み抑制部材は、前記下面板の外周に設けられており、 前記下面板は、前記下面板の側面から径方向に延在する突出部を含み、 前記回り込み抑制部材は、前記突出部に接しており、 前記回り込み抑制部材は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、 前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である、鉄道車両用空気ばね。」 <相違点4> 「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きと所定の関係である」ことに関し、本件発明1は「軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい」のに対し、引用発明4は「軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」点。 イ 判断 上記相違点4について、検討する。 引用発明4の「側端面は、縦断面において円弧状に形成され」るのであって、「傾斜部は、側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも小さい」のであるから、その「小さい」ものをして「大きい」ものとすることは、動機づけがあるとはいえず、むしろ、本件発明1の上記相違点4に係る構成が排除する構成を引用発明4が備えるといえるから、阻害要因があるというべきである。 そうすると、上記相違点1について検討したことと同様に、引用発明4をして、本件発明1の上記相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 以上によれば、本件発明1は、引用発明4ではなく、また、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2ないし11について 本件発明2ないし11は、少なくとも、本件発明1の発明特定事項を全て含んだ鉄道車両用空気ばねの発明である。 本件発明1が上記「2(1)」ないし「2(4)」に説示のとおり、引用発明1、2及び4ではなく、また、引用発明1ないし4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、同様の理由により、本件発明2及び4も引用発明1、2及び4ではなく、本件発明8及び11も引用発明2及び4ではなく、また、本件発明2ないし11も引用発明1ないし4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 特許異議申立人の意見について 特許異議申立人1は令和3年1月15日付け意見書において、概ね、引用発明3において引用例8に記載された事項を適用する動機づけがあり、また、本件発明1と引用発明3及び引用例8に記載されたものの作用は共通する旨主張するとともに、本件発明1の相違点3に係る構成は、特殊なものではなく、引用例8の他に、例えば特許異議申立人2が提出した甲第5号証(米国特許第9636963号明細書)にも記載されているように、周知の技術的事項である旨主張して、本件発明1は引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。また、特許異議申立人2は令和3年1月19日付け意見書において、概ね、特許異議申立人2が提出した甲第5号証(米国特許第9636963号明細書)には、本件発明1の相違点3に係る構成が記載され、また、その記載事項を引用発明3に適用する動機づけが記載されている旨主張するとともに、本件発明1の相違点3に係る構成は、特許異議申立人2が提出した甲第7号証(特公昭50-37338号公報)及び甲第8号証(特開平10-299808号公報)に記載されているように周知の技術的事項である旨主張して、本件発明1は引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。 しかしながら、上記「2(3)」及び「2(1)」に既に説示したとおり、本件発明1は引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 5 まとめ 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件の請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立人1は、その特許異議申立書において、概ね次の(1)及び(2)に係る特許異議申立理由を主張し、特許異議申立人2は、その特許異議申立書において、概ね次の(3)に係る特許異議申立理由を主張する。 (1) 請求項1の「回り込み抑制部材」は、機能的記載であり、そして、その機能がどのような構成によって発揮されるかが、発明の詳細な説明を参酌しても明確でない(72ページ7ないし9行)から、本件発明1ないし11は特許法第36条第6項第2号の規定に違反している。 (2) 請求項1の「回り込み抑制部材」の「回り込み抑制」の機能を発揮するための具体的構成が、「側端面」が「軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部」を備えることのみにあるとするならば、それは発明の詳細な説明に記載されたことではない(73ページ5ないし10行)から、本件発明1ないし6、8及び11は特許法第36条第6項第1号及び同法第36条第4項第1号に違反する。 (3) 本件発明3及び5ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例3又は引用例4に記載された発明である(33ページ5ないし10行、35ページ12ないし17行、40ページ下から1行ないし41ページ5行、及び、42ページ11ないし19行)から、本件発明3及び5ないし7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 2 上記各主張については、次のとおり採用できない。 (1) 請求項1の「回り込み抑制部材」は、請求項1において「前記回り込み抑制部材は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイアフラムが前記回り込み抑制部材の下側に回り込むことを抑制可能に構成されて」いるとの所定の機能に係る特定がされているとともに、「下面板」の「突出部」に接すること並びに「上端面」、「側端面」、「傾斜部」及び「側端面外周部」といった形状・構造も具体的に特定されている。そして、当該具体的形状・構造を備えること、及び当該所定の機能を有することで、ダイアフラムの回り込みを抑制できるものであることを当業者が把握できる。したがって、「回り込み抑制部材」は明確でないとまではいえないから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するとはいえない。 よって、上記主張については、採用できない。 (2) 本件発明1ないし11は、願書に添付した明細書の段落【0002】ないし【0005】に記載の従来技術の課題(「通常の乗り心地を良好に保ちつつ、空気ばねが圧縮される場合において、上面板と下面板との接触を抑制可能な空気ばねを提供すること」(【0005】))に鑑み、かかる課題を、同段落【0025】に記載の構成(「回り込み抑制部材10は、上端面13と、上端面13と連なる側端面14とを含んでいてもよい。側端面14は、軸方向Yの下側に向かうにつれて径方向Xの幅が大きくなるように設けられた傾斜部14bを有していてもよい」こと)、及び同段落【0061】に記載の構成(「回り込み抑制部材10は、上面板31と下面板20との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した(空気ばねの高さ方向に圧縮された)際に、ダイアフラム4が回り込み抑制部材10の下側に回り込むことを抑制可能に構成されている」こと)を具備することによって、同段落【0061】に記載の効果(「上面板31と下面板20との間隔が小さい場合において、当該間隔に対する有効受圧面積の低減率を低減又は増加することができる。結果として、当該間隔が大きい(言い換えれば、圧縮変位が小さい)範囲においては、軟らかいばね特性を実現し、かつ当該間隔が小さい(言い換えれば、圧縮変位が大きい)範囲においては、硬いばね特性を実現することができる。そのため、当該間隔が小さい場合において、上面板31と下面板20とが接触することを抑制することができる。その結果、たとえば毎時300km以上の高速で走行させた場合においても、良好な乗り心地を維持することが期待できる。さらに、高速走行時に限らず、空気ばねに対し、上下方向に急激な加速度が入力された場合においても上面板31と下面板20が接触することなく、良好な乗り心地を維持することが期待できる」効果)を奏して、課題を解決したものといえる。 そうすると、本件発明1は当該構成(「回り込み抑制部材は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイアフラムが前記回り込み抑制部材の下側に回り込むことを抑制可能に構成されて」いる構成、及び「回り込み抑制部材は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有する」構成)を含むから、当業者は、本件発明1が上記課題を解決できると把握することができる。そして、本件発明2ないし11も当該構成を含むものである。 したがって、本件発明1ないし6、8及び11は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に違反するとはいえない。 また、当該構成は、上記のとおり同段落【0025】及び【0061】に記載されており、少なくとも、同段落【0038】ないし【0065】において「(第1実施形態)」として詳細に記載されている。しかも、係る記載が当業者における技術常識からみて実施できないとの証拠もない。 したがって、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1ないし6、8及び11の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に違反するとはいえない。 よって、上記主張については、採用できない。 (3) 上記「第5」の「2(3)」及び「2(4)」に説示したことからすると、本件発明1は引用例3又は引用例4に記載された発明ではないし、また、本件発明3及び5ないし7は少なくとも本件発明1の発明特定事項を全て含むから、本件発明3及び5ないし7も引用例3又は引用例4に記載された発明ではない。 よって、上記主張については、採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件の請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 上面板と、 前記上面板に対面する下面板と、 前記上面板と前記下面板とを連結し、前記上面板と前記下面板との間に内部空間を形成するダイアフラムと、 回り込み抑制部材とを備え、 前記回り込み抑制部材は、前記上面板と前記下面板との少なくとも一方が互いに近づく方向に移動した際に、前記ダイアフラムが前記回り込み抑制部材の下側に回り込むことを抑制可能に構成されており、 前記回り込み抑制部材は、前記下面板の外周に設けられており、 前記下面板は、前記下面板の側面から径方向に延在する突出部を含み、 前記回り込み抑制部材は、前記突出部に接しており、 前記回り込み抑制部材は、上端面と、前記上端面と連なる側端面とを含み、 前記側端面は、軸方向の下側に向かうにつれて径方向の幅が大きくなる傾斜部を有し、 前記側端面は、前記上端面および前記傾斜部の各々と連なる側端面外周部をさらに有し、 前記傾斜部は、前記側端面外周部に対して軸方向の下側に位置しており、 軸方向および径方向の各々に平行な断面において、軸方向に対する前記傾斜部の接線の傾きは、軸方向に対する前記側端面外周部の接線の傾きよりも大きい、鉄道車両用空気ばね。 【請求項2】 前記回り込み抑制部材は、第1部材と、前記第1部材を支持する第2部材とにより構成されており、 前記第2部材は、前記突出部に接している、請求項1に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項3】 前記回り込み抑制部材は、第1部材から構成されており、 前記第1部材は、前記突出部に接している、請求項1に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項4】 前記第1部材は、ゴム材料から構成されている、請求項2または請求項3に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項5】 前記第1部材は、樹脂材料から構成されている、請求項2または請求項3に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項6】 前記第1部材は、金属材料から構成されている、請求項2または請求項3に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項7】 前記回り込み抑制部材の下端部は、前記突出部の下端部よりも、軸方向の下側に位置する、請求項1?請求項6のいずれか1項に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項8】 前記下面板に対して、前記上面板とは反対側に位置する積層ゴムをさらに備え、 前記突出部は、径方向において、前記積層ゴムと前記回り込み抑制部材との間に設けられている、請求項1?請求項7のいずれか1項に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項9】 前記側端面外周部は、軸方向と平行な方向に延在する、請求項1に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項10】 前記側端面外周部と前記傾斜部とがなす角度は、140°以上175°以下である、請求項9に記載の鉄道車両用空気ばね。 【請求項11】 前記内部空間に連通可能に構成された連結軸をさらに備え、 前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が第1距離の場合には、前記ダイアフラムは前記傾斜部から離間し、 前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第1距離よりも小さい第2距離の場合には、前記ダイアフラムは前記傾斜部と接し、 前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第2距離の場合には、前記上面板と前記下面板との軸方向の距離が前記第1距離の場合よりも硬いばね特性を有する、請求項1?請求項10のいずれか1項に記載の鉄道車両用空気ばね。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-04-07 |
出願番号 | 特願2018-218584(P2018-218584) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(F16F)
P 1 651・ 113- YAA (F16F) P 1 651・ 537- YAA (F16F) P 1 651・ 536- YAA (F16F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 熊谷 健治 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
田村 嘉章 杉山 健一 |
登録日 | 2019-12-20 |
登録番号 | 特許第6633169号(P6633169) |
権利者 | 東海旅客鉄道株式会社 住友電気工業株式会社 |
発明の名称 | 空気ばねおよび回り込み抑制部材 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |