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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1375859
異議申立番号 異議2019-700662  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-23 
確定日 2021-04-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6499581号発明「難燃性シートまたはフィルム、及びそれを用いた製品及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6499581号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?7、12]、[8]、[9]、「10]、[11]について訂正することを認める。 特許第6499581号の請求項1ないし5及び7ないし12に係る特許を維持する。 特許第6499581号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6499581号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)6月18日(優先権主張 平成25年6月26日)を国際出願日とする出願であって、平成31年3月22日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、特許掲載公報が同年4月10日に発行され、その後、その特許に対し、令和1年8月23日に特許異議申立人 サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされた。
当審において、令和1年12月19日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、令和2年2月21日に訂正請求書及び意見書を提出し、当審から、令和2年5月1日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年7月6日に意見書を提出し、令和2年11月20日付けで取消理由<決定の予告>を通知したところ、特許権者は、令和3年2月16日に訂正請求書(当該訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出した。
なお、令和2年2月21日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和3年2月16日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5ないし7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、異議申立人に再度の意見書の提出の機会は与えない。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし35のとおりである。ここで、訂正事項1ないし8は、訂正前の請求項1?7及び12の一群の請求項に係る訂正であり、訂正事項9ないし15は、訂正前の請求項8に係る訂正であり、訂正事項16ないし22は、訂正前の請求項9に係る訂正であり、訂正事項23ないし29は、訂正前の請求項10に係る訂正であり、訂正事項30ないし35は、訂正前の請求項11に係る訂正であるから、これらの訂正は一群の請求項及び請求項ごとの訂正である。なお、下線は、訂正箇所に合議体が付したものである。

(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1にて、「一般式(1)または(2)または(3)で示されるリン系難燃剤」と記載されているところを、「一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤」に訂正し、一般式(3)及び一般式(3)に関する記載を削除する。
請求項1を引用する請求項2?5、7及び12も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1にて、「厚さ0.01?0.22mmのシートまたはフィルム」と記載されているところを、「厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルム」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2?5、7及び12も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1にて、「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、炭素数1?6のアルキル基、またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」と記載されているところを、
「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2?5、7及び12も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項1にて、「X1はアリーレン基を示す」と記載されているところを、「X1はアリーレン基を示し、前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジー2,6-キシレニルホスフェート)を含む」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2?5、7及び12も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項1にて、「式(2)中、tは3?25の整数であ」る、と記載されているところを、「式(2)中、tは3?8の整数であ」る、に訂正する。
請求項1を引用する請求項2?5、7及び12も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項1にて、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す」と記載されているところを、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2?5、7及び12も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7を請求項1?5のいずれかに従属させる。

(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項8にて、「一般式(1)または(2)または(3)で示されるリン系難燃剤」と記載されているところを、「一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤」に訂正し、一般式(3)及び一般式(3)に関する記載を削除する。

(10)訂正事項10
訂正前の特許請求の範囲の請求項8にて、「厚さ0.01?0.25mmのシートまたはフィルム」と記載されているところを、「厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルム」に訂正する。

(11)訂正事項11
訂正前の特許請求の範囲の請求項8にて、「厚み分布が平均厚みの±10%以内」と記載されているところを、「厚み分布が平均厚みの±9%以内」に訂正する。

(12)訂正事項12
訂正前の特許請求の範囲の請求項8にて、「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、炭素数1?6のアルキル基、またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」と記載されているところを、「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」に訂正する。

(13)訂正事項13
訂正前の特許請求の範囲の請求項8にて、「X^(1)はアリーレン基を示す」と記載されているところを、「X^(1)はアリーレン基を示し、前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジー2,6-キシレニルホスフェート)を含む」に訂正する。

(14)訂正事項14
訂正前の特許請求の範囲の請求項8にて、「式(2)中、tは3?25の整数であ」る、と記載されているところを、「式(2)中、tは3?8の整数であ」る、に訂正する。

(15)訂正事項15
訂正前の特許請求の範囲の請求項8にて、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す」と記載されているところを、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である」に訂正する。

(16)訂正事項16
訂正前の特許請求の範囲の請求項9にて、「一般式(1)または(2)または(3)で示されるリン系難燃剤」と記載されているところを、「一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤」に訂正し、一般式(3)及び一般式(3)に関する記載を削除する。

(17)訂正事項17
訂正前の特許請求の範囲の請求項9にて、「厚さ0.01?0.25mmのシートまたはフィルム」と記載されているところを、「厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルム」に訂正する。

(18)訂正事項18
訂正前の特許請求の範囲の請求項9にて、「厚み分布が平均厚みの±10%以内」と記載されているところを、「厚み分布が平均厚みの±9%以内」に訂正する。

(19)訂正事項19
訂正前の特許請求の範囲の請求項9にて、「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、炭素数1?6のアルキル基、またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」と記載されているところを、
「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」に訂正する。

(20)訂正事項20
訂正前の特許請求の範囲の請求項9にて、「X^(1)はアリーレン基を示す」と記載されているところを、「X^(1)はアリーレン基を示し、前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジー2,6-キシレニルホスフェート)を含む」に訂正する。

(21)訂正事項21
訂正前の特許請求の範囲の請求項9にて、「式(2)中、tは3?25の整数であ」る、と記載されているところを、「式(2)中、tは3?8の整数であ」る、に訂正する。

(22)訂正事項22
訂正前の特許請求の範囲の請求項9にて、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す」と記載されているところを、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である」に訂正する。

(23)訂正事項23
訂正前の特許請求の範囲の請求項10にて、「一般式(1)または(2)または(3)で示されるリン系難燃剤」と記載されているところを、「一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤」に訂正し、一般式(3)及び一般式(3)に関する記載を削除する。

(24)訂正事項24
訂正前の特許請求の範囲の請求項10にて、「厚さ0.01?0.25mmのシートまたはフィルム」と記載されているところを、「厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルム」に訂正する。

(25)訂正事項25
訂正前の特許請求の範囲の請求項10にて、「厚み分布が平均厚みの±10%以内」と記載されているところを、「厚み分布が平均厚みの±9%以内」に訂正する。

(26)訂正事項26
訂正前の特許請求の範囲の請求項10にて、「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、炭素数1?6のアルキル基、またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」と記載されているところを、
「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」に訂正する。

(27)訂正事項27
訂正前の特許請求の範囲の請求項10にて、「X^(1)はアリーレン基を示す」と記載されているところを、「X^(1)はアリーレン基を示し、前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジー2,6-キシレニルホスフェート)を含む」に訂正する。

(28)訂正事項28
訂正前の特許請求の範囲の請求項10にて、「式(2)中、tは3?25の整数であ」る、と記載されているところを、「式(2)中、tは3?8の整数であ」る、に訂正する。

(29)訂正事項29
訂正前の特許請求の範囲の請求項10にて、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す」と記載されているところを、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である」に訂正する。

(30)訂正事項30
訂正前の特許請求の範囲の請求項11にて、「一般式(1)または(2)または(3)で示されるリン系難燃剤」と記載されているところを、「一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤」に訂正し、一般式(3)及び一般式(3)に関する記載を削除する。

(31)訂正事項31
訂正前の特許請求の範囲の請求項11にて、「難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により形成して箱形に加工」という記載を、「難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により、前記難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から成型される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%に制御された難燃性シートまたはフィルムの端部に形成して箱形に加工」に訂正する。

(32)訂正事項32
訂正前の特許請求の範囲の請求項11にて、「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、炭素数1?6のアルキル基、またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」と記載されているところを、
「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」に訂正する。

(33)訂正事項33
訂正前の特許請求の範囲の請求項11にて、「X^(1)はアリーレン基を示す」と記載されているところを、「X^(1)はアリーレン基を示し、前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジー2,6-キシレニルホスフェート)を含む」に訂正する。

(28)訂正事項34
訂正前の特許請求の範囲の請求項11にて、「式(2)中、tは3?25の整数であ」る、と記載されているところを、「式(2)中、tは3?8の整数であ」る、に訂正する。

(35)訂正事項35
訂正前の特許請求の範囲の請求項11にて、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す」と記載されているところを、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正前の請求項1?7及び12の一群の請求項に係る訂正について
ア 訂正事項1?6に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1にて「一般式(1)または(2)または(3)で示されるリン系難燃剤」と記載されているところ、「または(3)」を削除し、一般式(3)及び一般式(3)に関する記載を削除する、同じく「厚さ0.01?0.22mmのシートまたはフイルム」と記載されているところを、「厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフイルム」に、同じく「式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、炭素数1?6のアルキル基、またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基」と記載されているところ、「炭素数1?6のアルキル基、または」を削除する、同じく「X^(1)はアリーレン基を示す」と記載されているところを、「X^(1)はアリーレン基を示し、前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジー2,6-キシレニルホスフェート)を含む」に、同じく「式(2)中、tは3?25の整数であ」る、と記載されているところを、「式(2)中、tは3?8の整数であ」るに、同じく「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す」と記載されているところを、「R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である」に訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 請求項1に係る上記訂正事項1ないし6の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 請求項1に係る上記訂正事項1ないし6の訂正により訂正される請求項2?5、7及び12についても同様である。

エ 訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ 訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の特許請求の範囲の請求項7が従属する請求項について、「請求項1?6のいずれか」とあるのを「請求項1?5のいずれか」に訂正するものであり、従属関係の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ まとめ
訂正前の請求項1?7及び12という一群の請求項に係る訂正事項1ないし8は、上記アないしオのとおりであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので適法なものである。

(2)訂正前の請求項8に係る訂正について
訂正前の請求項8に係る訂正である訂正事項9ないし15は、訂正前の請求項8に対してなされているものであるが、その内容は、訂正事項1ないし7と同じであるから、その判断は、上記(1)におけるアないしオのとおりであり、訂正前の請求項8に係る訂正事項9ないし15は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので適法なものである。

(3)訂正前の請求項9に係る訂正について
訂正前の請求項9に係る訂正である訂正事項16ないし22は、訂正前の請求項9に対してなされているものであるが、その内容は、訂正事項18の除き、訂正事項1ないし7と同じであるから、その判断は、上記(1)におけるアないしオのとおりである。
訂正事項18については、厚み分布についての範囲を「±10%以内」から「±9%以内」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そうすると、訂正前の請求項9に係る訂正である訂正事項16ないし22は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので適法なものである。

(4)訂正前の請求項10に係る訂正について
訂正前の請求項10に係る訂正である訂正事項23ないし29は、訂正前の請求項10に対してなされているものであるが、その内容は、訂正事項16ないし22と同じであるから、その判断は、上記(3)のとおりであり、訂正前の請求項10に係る訂正事項23ないし29は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので適法なものである。

(5)訂正前の請求項11に係る訂正について
訂正前の請求項11に係る訂正である訂正事項30ないし35は、訂正前の請求項11に対してなされているものであるが、その内容は、訂正事項31を除き、訂正事項16、19ないし22と同じであるから、その判断は、上記(3)のとおりである。
訂正事項31については、「難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により形成して箱形に加工」という記載を、「難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により、前記難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から成型される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%に制御された難燃性シートまたはフィルムの端部に形成して箱形に加工」に訂正するもので、「枠をフィルムインサート成形により形成して箱形に加工」する技術的特徴に関して限定を加えているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項31の訂正は、願書に添付した明細書の段落【0142】、【0145】及び実施例(段落【0160】の表3等)に関する記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そうすると、訂正前の請求項11に係る訂正である訂正事項30ないし35は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので適法なものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?7、12]、[8]、[9]、[10]、[11]について、訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、令和3年2月16日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御され、
UL94規格における難燃性がVTM-0である難燃性シートまたはフィルム。
【化2】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X1はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化3】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1種または2種以上の無機充填剤12質量部以下をさらに含有する、請求項1に記載の難燃性シートまたはフィルム。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、さらに、カーボンブラックを含有し、前記カーボンブラックの含有量が前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.0001?10質量部であり、前記難燃性シートまたはフィルムの全光線透過率が5%以下である請求項2に記載の難燃性シートまたはフィルム。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、フィブリル化性能を有するフルオロポリマー0.001質量部以上0.75質量部以下をさらに含有する、請求項1?3のいずれかに記載の難燃性シートまたはフィルム。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、酸化防止剤および紫外線吸収剤の群から選択される1種または2種以上の安定剤をさらに含有する、請求項1?4のいずれかに記載の難燃性シートまたはフィルム。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載の難燃性シートまたはフィルムを、内部に電池を収容するために箱型または袋型に加工した電池パック用ケース。
【請求項8】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御された難燃性シートまたはフィルムを2枚重ね、四辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容した、電池パック用ケース。
【化5】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X^(1)はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化6】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項9】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御された難燃性シートまたはフィルムを折り畳み、三辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容可能にした、電池パック用ケース。
【化8】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X^(1)はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化9】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項10】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御された難燃性フィルムを円筒状に丸め、天面および底面を、射出成形で加工した前記難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる蓋材により密封し、内部に電池を収容した、電池パック用ケース。
【化11】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X^(1)はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化12】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項11】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により、
前記難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御された難燃性シートまたはフィルムの端部に形成して箱型に加工し、容器内部に電池を収容した、電池パック用ケース。
【化14】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X^(1)はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化15】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項12】
請求項7に記載の電池パック用ケースに電池を収容した電池パック。」

第4 特許異議申立書に記載した理由の概要

令和1年8月23日に異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(特許法第29条第2項:甲1に基づく進歩性)

本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、下記の甲第1号証に記載された発明、甲第1ないし7号証に記載の技術事項並びに技術常識あるいは周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 申立理由2(特許法第29条第2項:甲2に基づく進歩性)

本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、下記の甲第2号証に記載された発明、甲第1号証及び甲第3ないし7号証に記載の技術事項並びに技術常識あるいは周知技術に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 申立理由3(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)

本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、下記に記載の3点で発明の詳細な説明に記載したものでなく、本件特許の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(1)カーボンブラックを含む場合以外に遮光性が付与されることが実証されていない。
(2)シートまたはフィルムの成形時におけるTD方向の厚み分布を平均厚みの±9%以内に制御するための技術的手段が不明である。
(3)シートまたはフィルムの成形時におけるTD方向の厚み分布を測定する手段が不明である。

4 申立理由4(特許法第36条第4項第1号:実施可能要件)

本件特許の発明の詳細は説明の記載は、上記3に記載の3点で、当業者がその実施をすることができる程度に明権かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

5 申立理由5(特許法第36条第6項第2号:明確性要件)

本件特許の特許請求の範囲の請求項1、6?11の記載は、物の発明において製造方法が記載されているから特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定される要件を満たしていないから、本件特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

6 証拠方法

甲第1号証 :中国特許出願公開第102863772号
甲第2号証 :国際公開第2010/002011号
甲第3号証 :特開2008-285507号公報
甲第4号証 :特開2006-52401号公報
甲第5号証 :韓国特許出願公開第10-2010-0073926号
甲第6号証 :国際公開第2012/067108号
甲第7号証 :国際公開第00/62354号

表記については、特許異議申立書の記載に従った。
甲第1号証から甲第7号証については、それぞれ「甲1」から「甲7」という。

第5 当審が通知した取消理由<決定の予告>の概要

令和2年11月20日付けで通知した取消理由<決定の予告>は、おおむね次のとおりである。

「取消理由3(進歩性)本件特許の請求項1ないし12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

・・・
取消理由3(進歩性)について
(1) 刊行物等
甲1ないし甲7
・・・
取消理由A(明確性要件)本件特許の請求項1ないし5及び7ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

本件特許の独立請求項である請求項1、8、9、10、11に記載の「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布」について、それぞれの請求項においてその分布について数値範囲が特定されているが、当該厚み分布の求め方について、発明の詳細な説明の記載には全く記載されておらず、厚み分布の求め方が当業者の技術常識であって記載がなくとも自明な事項とも認められない。さらに、異議申立人が令和2年7月7日に提出した意見書に添付した実験結果によれば、厚み分布を測定する間隔によって、各請求項に記載の「樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布」の値が変化するものといえる。
そうすると、本件特許の独立請求項である請求項1、8、9、10、11に記載の「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布」についての数値範囲の特定は、明確でない。」

第6 取消理由についての当審の判断

当合議体は、以下に記載のとおり、上記第5に記載の取消理由3(進歩性)及び取消理由A(明確性)には理由がないと判断する。
1 取消理由3(進歩性)について
(1)刊行物等
甲1ないし甲7
ア 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
(ア) 甲1の記載事項
甲1には以下の記載がある。なお、甲1については該当箇所の抄訳のみを示し、抄訳は、特許異議申立書の記載をおおむね利用した。

「1. 以下の重量比:
45%?99%のポリカーボネート樹脂、0.5%?40%のハロゲンフリー難燃剤、0.1%?2%の抗ドリップ剤、0.2%?10%の改質剤、及び0.2%?3%の添加剤で原料を含むことを特徴とする、超薄型のハロゲンフリー難燃性ポリカーボネートフィルム。
2. 前記ハロゲンフリー難燃剤が、無機難燃剤、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、窒素含有難燃剤、硫黄含有難燃剤、膨張型難燃剤、及び有機アリールスルホネート難燃剤からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の超薄型のハロゲンフリー難燃性ポリカーボネートフィルム。」(特許請求の範囲の1.及び2.)

「[0002] ポリカーボネート(PC)は多くのバランスの取れた機械的特性、寸法安定性及び耐熱性を有しており、特にその優れた耐衝撃強度及びクリープ耐性で知られている。PC樹脂は90%を超える可視光透過性、高温の熱分解温度、及び優れた電気絶縁特性を有する。それは機械、自動車、航空宇宙、建築、電子、電気、事務及び家庭用品において広く使用されている。」(段落[0002])

「[0006] 従来技術において0.100mm未満の膜厚を有するポリカーボネートフィルムの難燃性及び超薄形成における技術的な問題点を解決するために、本発明は超薄型のハロゲンフリー難燃性ポリカーボネートフィルムを提供し、その難燃性の評価は0.025mmから0.100mmの厚さの範囲内でUL94 VTM-0等級に達し、耐熱性指数は80℃から130℃に達し得る。さらに、超薄型のハロゲンフリー難燃性ポリカーボネートフィルムは安定した性能を有し、環境にも優しい。また、その調製方法も提供する。」(段落[0006])

「[0017] ポリカーボネートフィルムの調製方法において、押出機のスクリューの曲線の設計及びT-ダイの改善により、超薄型の難燃性フィルムの厚さの均一性が確保され、公差変動範囲は小さくなる。」(段落[0017])

(イ) 甲1に記載された発明
甲1の特許請求の範囲の1.及び段落[0006]、[0017]の記載からみて、甲1には、次のとおりの発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「重量比が45%?99%のポリカーボネート樹脂、0.5%?40%のハロゲンフリー難燃剤、0.1%?2%の抗ドリップ剤、0.2%?10%の改質剤、及び0.2%?3%の添加剤の原料を含むポリカーボネート樹脂組成物から成形される難燃性フィルムであって、0.025mmから0.100mmの厚さの範囲内でUL94 VTM-0である、超薄型のハロゲンフリー難燃性ポリカーボネートフィルム。」

イ 甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
(ア) 甲2の記載事項
甲2には以下の記載がある。

「請求の範囲
1. ポリカーボネート樹脂からなり、厚みが0.2?2.0mmのシートであって、該シートを180℃で10分間加熱処理した際、押出方向(MD)の加熱収縮率が2?8%の範囲であり、シートの幅方向(TD)における加熱収縮率の標準偏差が1.5以下であることを特徴とするシート。
2. シートの幅方向(TD)における厚みの標準偏差が8以下である請求項1記載のシート。
・・・
4. (i)ポリカーボネート樹脂をTダイスからシート状に溶融押出し、
(ii)シートを冷却ロールで挟持加圧することにより冷却し、
(iii)シートを転送ロールにより移送する、
各工程を含む請求項1記載のシートを製造する方法であって、
冷却ロールで挟持加圧する際の圧延荷重を2?10トンの範囲とすることを特徴とする方法。」(特許請求の範囲の1.、2.及び4.)

「ポリカーボネート樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらにその効果が発現する量の各種添加剤、無機充填剤を添加してもよい。各種添加剤としては、ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有することができる。かかる熱可塑性樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、および各種熱可塑性エラストマ一(例えば、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2-ポリブタジエン系、塩化ビニル系、フッ素系[フッ素ゴム]、アイオノマー樹脂、塩素化ポリエチレン、シリコーン系等)などがあげられる。また難燃剤(臭素化ビスフェノール、臭素化ポリスチレン、臭素化ビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、トリフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、赤リン、有機スルホン酸アルカリ金属塩類など)、難燃助剤(アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモンなど)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンなど)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系化合物など)、熱安定剤(リン系化合物)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤、着色剤等が挙げられる。また無機充填剤としては、ガラスビーズ、タルク、マイカなどが挙げられる。」(第10頁第27行?第11頁第18行)

「本発明のポリカーボネート樹脂シートの厚みは、0.2?2.0mm、好ましくは0.2?1.5mm、より好ましくは、0.3?1.0mmの範囲である。 0.2mmより薄いと押出成形性力が低下し、2.0mmより厚いと熱成形時の成形加工性が低下する。」(第12頁第12行?同頁第15行)

「また、該シートの幅方向(TD)における厚みの標準偏差は、好ましくは8以下、より好ましくは5以下である。下限は0が好ましいが、実用的には3以上であってもよい。厚みの標準偏差が上記範囲内であると均一賦型性に優れる点で好ましい。」(第12頁第16行?同頁第19行)

「本発明によれば、得られたポリカーボ-ト樹脂シートを使用して熱成形等により成形加工された自動車のメーターパネル盤、計器パネル、家電製品(洗濯機、電子レンジ等)のメンブレンスイッチパネル、携帯電話等のハウジング部品、ダミー缶、ダミーボトル等の各種成形品も提供される。」(第13頁第17行?同頁第20行)

「実施例1?4および比較例1?2
図1で示す装置を設けた押出機によりシートを製造した。Tダイは幅1200mmで第1、第2、第3冷却ロールはいずれも直径300mmの鏡面ロールを使用し、ビスフェノールAとホスゲンから界面重合法により製造した粘度平均分子量24000のポリカーボネート樹脂パウダーを280℃に設定したT型ダイスより吐出量280kg/hrで押出し、Tダイから押出した溶融樹脂を挟時保持(両面タッチ)方式で、第1冷却ロールと第2冷却ロールとでシートを表1記載の圧力で狭持保持加圧し、第3冷却ロールでさらに冷却し、次いでシートの両端部をトリミングして幅900mmのシートを押出した。
第1冷却ロール、第2冷却ロール、および第3冷却ロールのそれぞれの温度は、115℃、115℃、および145℃に設定し、成形を実施した。
なお、シートを狭持保持加圧した際の圧延荷重は、第1冷却ロールの左端部のロードセルの値と、第1冷却ロールの右端部のロードセルの値を測定した。得られたシートの特性を表1に示す。」(第16頁第13行?第26行)



」(第18頁?第19頁)

(イ) 甲2に記載された発明
甲2の特許請求の範囲の1.及び2.の記載からみて、甲2には、次のとおりの発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「ポリカーボネート樹脂からなり、厚みが0.2?2.0mmのシートであって、該シートを180℃で10分間加熱処理した際、押出方向(MD)の加熱収縮率が2?8%の範囲であり、シートの幅方向(TD)における加熱収縮率の標準偏差が1.5以下であり、シートの幅方向(TD)における厚みの標準偏差が8以下であるシート。」

(2)本件発明1と甲1発明との対比について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「0.5%?40%のハロゲンフリー難燃剤」は、ポリカーボネート樹脂を100質量部として換算すると、0.5?89質量部のハロゲンフリー難燃剤であるから、本件発明1の「リン系難燃剤を含む難燃剤」と、配合量は取り得る範囲として重複し、「難燃剤」という限りにおいて一致する。
甲1発明の「ポリカーボネート樹脂組成物から成形される難燃性フィルム」は、本件発明1の「ポリカーボネート樹脂組成物から成形される」「難燃性シートまたはフィルム」に相当する。
甲1発明の難燃性フィルムの厚さは「0.025mmから0.100mm」であるから、本件発明1の難燃性シートまたはフィルムの厚さの「0.01?0.1mm」と重複一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。

<一致点>
「ポリカーボネート樹脂に難燃剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであって、
UL94規格における難燃性がVTM-0である、難燃性シートまたはフィルム。」

<相違点1>
ポリカーボネート樹脂に配合する難燃剤に関し、本件発明1は、「下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む
【化2】(イメージ省略)
[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X1はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化3】(イメージ省略)
[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]」
であってその配合量に関し、「ポリカーボネート樹脂100質量部に対し」、「7?30質量部」と特定するのに対し、甲1発明は、ハロゲンフリー難燃剤であって、その配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し「0.5?89質量部」との特定である点。

<相違点2>
本件発明1は、「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布に関し、平均厚みの±9%以内に制御され」と特定するのに対し、甲1発明は、このようには特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1について
相違点1に係る特定の難燃剤については、異議申立人の提示したいずれの証拠にも記載はない。そして、本件特許の優先日の時における当業者において、ポリカーボネート樹脂に用いる難燃剤として相違点1に係る難燃剤をポリカーボネート樹脂100質量部に対し7?30質量部用いることが技術常識であったともいえない。
そうすると、甲1発明における難燃剤として、相違点1に係る特定の難燃剤を特定量配合することは、当業者において容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、薄くても優れた難燃性を有するシートまたはフィルムを得るという格別の効果を奏するものである。
してみれば、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明1と甲2発明との対比について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲2発明の「ポリカーボネート樹脂からな」る「シート」は、本件発明1の「ポリカーボネート樹脂組成物から成形される」「シートまたはフィルム」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。

<一致点>
「ポリカーボネート樹脂組成物から成形されるシートまたはフィルム。」

<相違点3>
シートまたはフィルムの厚みに関し、本件発明1は、「0.01?0.1mm」と特定するのに対し、甲2発明は、「0.2?2.0mm」である点。

<相違点4>
ポリカーボネート樹脂組成物に関し、本件発明1は、「下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有する
【化2】(イメージ省略)
[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X1はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化3】(イメージ省略)
[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]」と特定するのに対し、甲2発明は、このようには特定しない点。

<相違点5>
本件発明1は、「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布に関し、平均厚みの±9%以内に制御され」と特定するのに対し、甲2発明は、「シートの幅方向(TD)における厚みの標準偏差が8以下である」と特定する点。

<相違点6>
シートまたはフィルムに関し、本件発明1は、[難燃性」であって、「UL94規格における難燃性がVTM-0である難燃性」と特定するのに対し、甲2発明は、このようには特定しない点。

事案にかんがみ、まず、相違点4について検討する。
相違点4に係る特定の難燃剤については、異議申立人の提示したいずれの証拠にも記載はない。そして、本件特許の優先日の時における当業者において、ポリカーボネート樹脂に用いる難燃剤として相違点3に係る難燃剤をポリカーボネート樹脂100質量部に対し7?30質量部用いることが技術常識であったともいえない。
そうすると、甲2発明において、相違点4に係る特定の難燃剤を特定量配合することは、当業者において容易に想到し得たこととはいえない。
そして、本件発明1は、薄くても優れた難燃性を有するシートまたはフィルムを得るという格別の効果を奏するものである。
してみれば、相違点3、5及び6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明2ないし7及び12と甲1発明及び甲2発明との対比
本件特許発明2ないし7及び12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明又は甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明8ないし10と甲1発明との対比
本件発明8ないし10と甲1発明とを対比すると、上記(2)での検討と同様であって、上記(2)における相違点1及び2に加えて、以下の点でそれぞれ相違している。

<本件発明8との相違点7>
本件発明8は、「難燃性シートまたはフィルムを2枚重ね、四辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容した、電池パック用ケース」と特定するのに対し、甲1発明は、このようには特定しない点。

<本件発明9との相違点8>
本件発明9は、「難燃性シートまたはフィルムを折り畳み、三辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収納可能にした、電池パック用ケース」と特定するのに対し、甲1発明は、このようには特定しない点。

<本件発明10との相違点9>
燃性シートまたはフィルムに関し、本件発明10は、「難燃性シートまたはフィルムを、円筒状に丸め、天面及び底面を、射出成形で加工した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる蓋材で密封し、内部に電池を収容した、電池パック用ケース」と特定するのに対し、甲1発明は、このようには特定しない点。

本件発明8ないし10と甲1発明との相違点について検討すると、相違点1は、上記(2)での検討のとおりであるから、当業者といえども、容易に想到し得たものとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8ないし10は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明8ないし10と甲2発明との対比
本件発明8ないし10と甲2発明とを対比すると、上記(3)での検討と同様であって、上記(3)における相違点3ないし6に加えて、以下の点でそれぞれ相違している。

<本件発明8との相違点7’>
本件発明8は、「フィルムを2枚重ね、四辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容した、電池パック用ケース」と特定するのに対し、甲2発明は、このようには特定しない点。

<本件発明9との相違点8’>
本件発明9は、「難燃性シートまたはフィルムを折り畳み、三辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収納可能にした、電池パック用ケース」と特定するのに対し、甲2発明は、このようには特定しない点。

<本件発明10との相違点9’>
本件発明10は、「難燃性シートまたはフィルムを、円筒状に丸め、天面及び底面を、射出成形で加工した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる蓋材で密封し、内部に電池を収容した、電池パック用ケース」と特定するのに対し、甲2発明は、このようには特定しない点。

本件発明8ないし10と甲2発明との相違点について検討すると、相違点4は、上記(3)での検討のとおりであるから、当業者といえども、容易に想到し得たものとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8ないし10は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)本件発明11と甲1発明との対比
本件発明11と甲1発明とを対比すると、上記(2)における検討と同様であって、上記(2)での相違点1及び2に加えて、下記の点でも相違する。

<相違点10>
本件発明11は、「難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により」「難燃性シートまたはフィルムの端部に形成して箱形に加工し、容器内部に電池を収容した、電池パックケース」と特定するのに対し、甲1発明は、このようには特定しない点。

以下、相違点について検討すると、相違点1については、上記(2)での検討のとおりであるから、当業者といえども、容易に想到し得たものとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明11は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(8)本件発明11と甲2発明との対比
本件発明11と甲2発明とを対比すると、上記(3)における検討と同様であって、上記(3)での相違点3ないし6に加えて、下記の点でも相違する。

<相違点10’>
本件発明10は、「難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により」「難燃性シートまたはフィルムの端部に形成して箱形に加工し、容器内部に電池を収容した、電池パックケース」と特定するのに対し、甲2発明は、このようには特定しない点。

以下、相違点について検討すると、相違点4については、上記(3)での検討のとおりであるから、当業者といえども、容易に想到し得たものとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明11は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(9)まとめ
以上のとおりであるから、上記取消理由<決定の予告>で通知した、取消理由3(進歩性)には、理由がない。

2 取消理由A(明確性)について
(1) 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。

(2) 判断
本件特許の出願時において、シートまたはフィルムの厚みを測定する機器として、非接触型であるレーザー式、X線方式、エアー方式、静電容量式、分光緩衝式のもの、接触型であるリニアゲージ式のものであって、連続的に測定できる機器が知られており、当業者が本件特許の明細書の実施例及び比較例におけるような厚み分布を測定しようとすれば、上記のよく知られた測定機器を用いて、フィルムのTD方向の幅全域において連続的に厚みの測定を行い、得られた平均値、最大値及び最小値の結果に基づき、厚み分布の値が算出されるものと当業者においては当然に理解し、それらの値は具体的に特定できるといえる。
そうすると、本件発明1ないし5及び7ないし12に関して、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

第7 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
異議申立人が主張する申立理由1および2は、取消理由3と同旨であるから、取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立ての理由は、申立理由3ないし5であるので、これらについて以下検討する。

1 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、物の発明の場合には、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
これを踏まえ、以下検討する。

(2)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明の記載には、以下の記載がある。なお、下線については当審において付与したものである。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物を含むシートまたはフィルムに関するものである。さらに詳しくは、難燃性、耐熱性、耐湿熱性、低収縮性、成形加工性、表面外観、インサート密着性に優れるシートまたはフィルム、及びそのシートまたはフィルムを用いた難燃性電池パック用ケース等の製品に関する。」

イ 「【0005】
また、これらの難燃性ポリカーボネート材料の用途の1つとして樹脂の射出成形により得られる電池パックが知られている(例えば、特許文献5?8参照)。近年、製品の小型化、薄肉化が進むのに伴い、電池パックは大容量ながらより小型のものが求められている。そのため、電池を収容する電池パック用ケースにはより薄肉のものが必要とされるが、一般的な製法である射出成形では極めて高い流動性が必要であり、現行のリン系難燃剤とポリカーボネートを組み合わせた材料では流動性、強度、耐熱性のバランスが得られず、製品として使用することはできなかった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、ポリカーボネート樹脂に難燃剤を含有させた難燃樹脂組成物を、例えばTダイを備え付けた押出機にて板状に押出し冷却することにより作製した難燃性シート、フィルムについて、厚み分布を均一にすることにより難燃性の高いシート、フィルムの提供、さらに、例えばカーボンブラックを添加することにより遮光性も付与した難燃シート、フィルムを提供することを課題とする。特に、シートまたはフィルムについては、一般的に、薄いものほど難燃性の付与が困難になるところ、本発明においては、薄くても優れた難燃性を有するシートまたはフィルムの提供を課題とする。
【0008】
さらに、本発明では、高い難燃性を備えた薄肉製品、特に、電子製品に用いられる電池パック用ケースとその製造方法を提供することを課題とする。」

ウ 「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に特定のリン系難燃剤を含有させた難燃性樹脂組成物を薄肉シートまたはフィルム化する際、厚みを均一に制御することにより難燃性に優れ、さらに色ムラが少なく遮光性に優れ、外観の良好なシート、またはフィルムとなることを見出した。
【0010】
さらに、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、難燃性の高い薄肉シート、フィルムを、内部に電池を収容するために箱型、または袋型に加工することにより難燃性に優れる電池パック用ケースとなることを見出した。」

エ 「【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、特定のリン系難燃剤を含有したポリカーボネート樹脂組成物から形成されるシート・フィルムにおいて、特定の薄肉TD方向の厚み分布精度を高めることにより、色ムラが少なく・難燃性・耐屈曲性に優れた成形品を提供することができる。また、例えば所定量のカーボンブラックを併用することで、さらに高い難燃性および遮光性に優れた薄肉シート・フィルム成形品を提供することができる。さらに本発明の薄肉シート・フィルムは超音波溶着性に優れるため、電池パック用包装体としての利用が可能である。」

オ 「【0028】
[2.ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂の種類に、特に制限は無い。また、ポリカーボネート樹脂は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
・・・
【0064】
[3.難燃剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤を、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、7?30質量部含有する。このように難燃剤を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。難燃剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、7?20質量部がより好ましく、10?15質量部がさらに好ましい。
【0065】
本願発明においては、難燃剤として、リン系難燃剤を用いることにより、難燃性、および流動性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
【0066】
本発明におけるリン系難燃剤としては、分子中にリンを含む化合物であり、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、特に好ましいものとしては、熱安定性の面から、式(1)で表される縮合型リン酸エステル化合物や、式(2)であらわされる環状ホスファゼン化合物、および(3)で表される直鎖状ホスファゼン化合物が挙げられる。
・・・
【0079】
式(2)で表される環状ホスファゼン化合物としては、R^(5)及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。このようなアリール基又はアルキルアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、ベンジル基等が挙げられるが、なかでもR^(5)及びR^(6)がフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120?130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。
また、式(2)中、tは3?25の整数を表すが、なかでもtが3?8の整数である化合物が好ましく、tの異なる化合物の混合物であってもよい。なかでも、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
・・・
【0137】
[10.難燃性シートまたはフィルムの製造方法]
本発明の難燃性シートまたはフィルムは、難燃剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される。この成形体の模様、色彩、寸法などに制限はなく、その用途に応じて任意に設定することが出来る。また、共押出、熱ラミネーションにより難燃剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物からなる層と別の熱可塑性樹脂層を多層化してもよい。
【0138】
難燃性シートまたはフィルムの製造方法に特に制限はなく、公知のシート、フィルムの製造方法を広く採用できる。例えば、上記製造方法で予め製造したペレット状ポリカーボネート樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて平板状に押出し、冷却ロールにより冷却することにより所望の難燃性シートまたはフィルムを得ることが出来る。また、ポリカーボネート樹脂、リン系難燃剤等の各成分を、各種混合機を用いて混合した材料を、直接Tダイを備えた押出機にて平板状に押出し、冷却ロールにより冷却することにより難燃性シートまたはフィルム化することも出来る。
【0139】
また、シートまたはフィルム化の際、Tダイのリップ開度を調整することによりシートまたはフィルムの厚さが均一となる。さらに、押出機とTダイの間にギアポンプを配置し、樹脂流れの脈動を抑制することにより、厚み精度がさらに向上する。また、シートまたはフィルム成形の際、溶融樹脂が最初に接触する冷却ロールの速度と川下側のロール速度の速度比を合わせることにより、加熱収縮率の小さいシートまたはフィルムを得ることができる。このようにして得られた、厚み精度が高く加熱収縮率の小さいシートまたはフィルムを用い、二次加工によってケース等を容易に製造することができる。さらに、シートまたはフィルムに難燃剤として環状ホスファゼンを含有させた場合、湿熱条件下の物性低下が特に少なく、さらに耐衝撃性が良好なシートまたはフィルムが得られる。
【0140】
本発明において、シートまたはフィルムの厚さを均一に制御し、全光線透過率を5%以下に抑制することにより、難燃性が高く容器にした際に中身が見えない外観が良好なシートまたはフィルムが得られる。シートまたはフィルムのTD方向の厚みを均一に制御するには、シートまたはフィルム化の際、Tダイのリップ開度を調整することにより均一な厚み分布とする。さらに、フィルム・シート成形時における樹脂流動方向に平行な方向(MD方向)の厚み分布を均一にするため、押出機とTダイの間にギアポンプを配置し、樹脂の流れの脈動を抑えることも出来る。さらに、シートまたはフィルム成形の際、溶融樹脂が最初に接触する冷却ロールの速度と川下側のロール速度の速度比を合わせることにより、加熱収縮率の小さいシートまたはフィルムとすることが出来る。加熱収縮率の小さいシートまたはフィルムは、電池パックケースにした際に、電池の過熱等の影響で部材のシートまたはフィルムが収縮し、応力が生じて破断する問題を解消する効果があり好適である。シートまたはフィルムの加熱収縮率(JIS-K-7133, 120℃,30分)は、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましい。
【0141】
厚み分布を均一に制御することにより、収縮率が均一となり、溶着時の均一性や強度が向上する効果が得られる。これは、シール強度のバラつきを抑えることが可能である等の理由による。厚み分布は平均厚みの±10%以内が好ましく、±5%以内がより好ましく、±3%以内がさらに好ましい。このような本発明においては、ポリカーボネート樹脂組成物からなる難燃シートまたはフィルムを超音波溶着または加熱溶着により溶着させ、容器に加工することが出来る。また、シートまたはフィルム表面にシボ加工を施すことにより熱シール強度をさらに向上させることが出来、さらに外観も良好となる。これに対し、厚み分布が±10%以上であると、シートまたはフィルムの収縮率が均一とならず、強度が低下する上に、外観が悪く、容器に加工した場合、薄い部分で内容物が透けて見えてしまうという問題がある。内容物が透けて見えないためには、シートまたはフィルムの全光線透過率は5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0142】
[11.難燃性シートまたはフィルムの性状]
ポリカーボネート樹脂組成物から形成される本発明のシートまたはフィルムの厚さは、0.01?0.25mmであり、好ましくは0.02?0.22mm、より好ましくは0.03?0.08mmである。また、本発明のシートまたはフィルムの厚み分布は、平均厚みの±10%以内に制御され、好ましくは±5%以内、より好ましくは±3%以内に制御され、特に、MD方向に比べて制御が困難なTD方向の厚みがこのように制御される。この結果、シートまたはフィルムの外観が良好になり、内容物、例えば電池等がシートまたはフィルムの薄い領域においてのみ、外部から視認可能となってしまうことが防止される。
・・・
【0144】
[12.電池パック用ケースおよび電池パックの製造]
本発明の電池パック用ケースは、難燃性シートまたはフィルムを重ねて超音波溶着もしくは熱シールで溶着したり、難燃剤を含有させたポリカーボネート樹脂組成物をシートまたはフィルムの端部にフィルムインサート成形で形成する等、任意の形状に加工することにより製造可能である。より具体的には、本発明の難燃性シートまたはフィルムを2枚重ね、内部に電池が収容可能となるように、四辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工する。また、本発明の難燃性シートまたはフィルムを折り畳み、内部に電池が収容可能となるように、三辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工する。
上述の場合、ヒートシールもしくは超音波溶着により溶着したシートまたはフィルム間のシール強度は、0.2kgf/15mm以上であり、好ましくは1kgf/15mm以上、より好ましくは2kgf/15mm以上である。
【0145】
また、難燃性シートまたはフィルムを真空成形または圧空成形で予め加工した後、熱溶着、超音波溶着、フィルムインサート成形によって、任意の形状に加工してもよい。より具体的には、射出成形で加工した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の蓋材により、内部に電池を収容可能としつつ、円筒状に丸めた難燃性フィルムの天面および底面を密封する。また、難燃性フィルムの端部に、フィルムインサート成形により難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の枠を形成し、容器内部に電池を収容可能な箱型に加工する。
【0146】
また、本発明の電池パックは、上述のように製造された電池パック用ケースに、電池を収納したものである。」

カ 「【実施例】
・・・
【0148】
[樹脂ペレット製造]
後述する表に記した各成分を、後述する表に記した割合(質量比)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた二軸押出機(東芝機械社製、TEM35B)に供給し、スクリュー回転数300rpm、吐出量25kg/時間、バレル温度240℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0149】
[フィルム製造]
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、Tダイを備えたフィルム成形用単軸押出機(プラエンジ社製、PLAENGI-EXTRUDER 型式PSV-30)に供給し、スクリュー回転数40rpm、バレル温度260℃の条件で押出し、平板状に押出された溶融樹脂を冷却ロール(ロール温度110℃)にて冷却し、ポリカーボネート樹脂組成物のフィルム(幅約200mm)を得た。この工程においては、厚さ0.2mmのシートを製造する場合において、ロール速度1.0m/min、ピンチロール1.1m/minに設定した。また他の厚みに変更する際はロール速度/ピンチロール速度比を一定にし、両引取速度を変更した。
【0150】
[難燃性評価]
各ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、上述の方法で得られたUL試験用試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94VTMとは、円筒状に巻き、クランプに垂直に取り付けたフィルム試験片に20mmのバーナーの炎で3秒間接炎を2回行った際の燃焼挙動により難燃性を評価する方法であり、VTM-0、VTM-1及びVTM-2の難燃性を有するためには、以下の表1に示す基準を満たすことが必要となる。
・・・
【0158】
以下、実施例1?16、および比較例1?11の組成を表2?4に、性状を表3?4にまとめた。
【0159】
【表2】

【0160】
【表3】

【0161】
【表4】

【0162】
表3、および4から明らかなとおり、実施例1?16においては、リン化合物を含む難燃剤(B-1またはB-2)を含んでいて難燃性が高く、TD方向の厚みがほぼ均一なシートまたはフィルムが得られた。特に、薄いシートまたはフィルムにおいては、通常、難燃性に劣る傾向が認められるのに対し、0.04?0.2mmの薄さにも関わらず、上述の多くの実施例においてVTM-0の優れた難燃性が実現された。また、フィルム成形性についても、いずれの実施例も優れた結果を示した。また特に、実施例3?16においては、カーボンブラックを添加したところ、遮光性が高く外観が良好で、燃焼時間も短縮され、電池パックにした際に内容物が透けて見えにくいシートまたはフィルムが得られた。
なお、実施例13においては、ポリカーボネート樹脂100質量部に対してリン化合物を含む難燃剤を30質量部使用しており、他の実施例の13.5質量部よりも難燃剤を多量に用いた。このように、難燃剤を30質量部使用した実施例13においても、難燃性のみならずフィルム成形性が良好であり、また、遮光性、外観も優れていた。このため、少なくとも、ポリカーボネート樹脂100質量部に対してリン化合物を含む難燃剤を約10質量部?30質量部の割合で使用すれば、良好な結果が得られることが確認された。」

(3)判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明1ないし5及び7ないし12の各発明特定事項について上記(2)のとおり具体的かつ矛盾なく記載され、その具体的な例も記載されていることから、当業者であれば、本件発明1ないし5及び7ないし12をどのように実施するのか理解できるものであり、本件特許の出願時の技術常識及び上記(2)オ及びカの記載を参考にすることによって、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1ないし5及び7ないし12を実施することができるといえる。

(4)異議申立人の主張の検討
異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4 2(1)ないし(3)の3点を主張するので、それらの点について以下、検討する。
ア「(1)カーボンブラックを含む場合以外に遮光性が付与されることが実証されていない。」について
実施可能要件の判断の基準は上記(1)のとおりであり、これに照らすと、異議申立人の(1)に関する主張は、実施可能要件の判断に影響しない。
イ「(2)シートまたはフィルムの成形時におけるTD方向の厚み分布を平均厚みの±9%以内に制御するための技術的手段が不明である。」について
シートまたはフィルムの成型時におけるTD方向の厚み分布を平均厚みの±9%以内とする手段については、上記(2)オの段落【0139】【0140】に具体的に記載されていて、当業者は、当該記載に基づきこれらの手段を利用して本件発明1ないし5、7ないし12を実施することができるから、異議申立人の主張は失当であって採用できない。
ウ「(3)シートまたはフィルムの成形時におけるTD方向の厚み分布を測定する手段が不明である。」について
上記第6 2(1)に記載のとおり、当業者はシートまたはフィルムの成形時のTD方向の厚み分布について、技術常識に基づいて測定できるといえるから、異議申立人の主張は失当であって採用できない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する申立理由3には、理由がない。

2 申立理由4(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は、上記第3に記載のとおりである。

(3)明細書の発明の詳細な説明の記載
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、上記1(2)のとおりの記載がある。

(4)発明の課題
本件特許の明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】によると、本件特許発明が解決しようとする課題(以下、単に「発明の課題」という。)は、「難燃性の高いシート、フィルムの提供」及び「高い難燃性を備えた薄肉製品、特に、電子製品に用いられる電池パック用ケースの提供」である。

(5)サポート要件についての判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に特定のリン系難燃剤を含有させた難燃性樹脂組成物を薄肉シートまたはフィルム化する際、厚みを均一に制御することにより難燃性に優れ、さらに色ムラが少なく遮光性に優れ、外観の良好なシート、またはフィルムとなることを見出した。・・・発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、難燃性の高い薄肉シート、フィルムを、内部に電池を収容するために箱型、または袋型に加工することにより難燃性に優れる電池パック用ケースとなることを見出した」(段落【0009】【0010】)こと、難燃剤に関して「[3.難燃剤]本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤を、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、7?30質量部含有する。このように難燃剤を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。難燃剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、7?20質量部がより好ましく、10?15質量部がさらに好ましい。本願発明においては、難燃剤として、リン系難燃剤を用いることにより、難燃性、および流動性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が得られる。本発明におけるリン系難燃剤としては、分子中にリンを含む化合物であり、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、特に好ましいものとしては、熱安定性の面から、式(1)で表される縮合型リン酸エステル化合物や、式(2)であらわされる環状ホスファゼン化合物、および(3)で表される直鎖状ホスファゼン化合物が挙げられる。」こと(段落【0063】?【0065】)、シートまたはフィルムの成型時におけるTD方向の厚み分布を平均厚みの±9%以内とすることに関して、「厚み分布を均一に制御することにより、収縮率が均一となり、溶着時の均一性や強度が向上する効果が得られる。これは、シール強度のバラつきを抑えることが可能である等の理由による。厚み分布は平均厚みの±10%以内が好ましく、±5%以内がより好ましく、±3%以内がさらに好ましい。このような本発明においては、ポリカーボネート樹脂組成物からなる難燃シートまたはフィルムを超音波溶着または加熱溶着により溶着させ、容器に加工することが出来る。また、シートまたはフィルム表面にシボ加工を施すことにより熱シール強度をさらに向上させることが出来、さらに外観も良好となる。これに対し、厚み分布が±10%以上であると、シートまたはフィルムの収縮率が均一とならず、強度が低下する上に、外観が悪く、容器に加工した場合、薄い部分で内容物が透けて見えてしまうという問題がある。内容物が透けて見えないためには、シートまたはフィルムの全光線透過率は5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
[11.難燃性シートまたはフィルムの性状]ポリカーボネート樹脂組成物から形成される本発明のシートまたはフィルムの厚さは、0.01?0.25mmであり、好ましくは0.02?0.22mm、より好ましくは0.03?0.08mmである。また、本発明のシートまたはフィルムの厚み分布は、平均厚みの±10%以内に制御され、好ましくは±5%以内、より好ましくは±3%以内に制御され、特に、MD方向に比べて制御が困難なTD方向の厚みがこのように制御される。この結果、シートまたはフィルムの外観が良好になり、内容物、例えば電池等がシートまたはフィルムの薄い領域においてのみ、外部から視認可能となってしまうことが防止される。」(段落【0141】、【0142】)と記載されていて、これらの条件を満たす実施例が記載されており、これらの記載から、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、特定のリン系難燃剤を7?30質量部含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御されたシートまたはフィルムを用いることにより、「難燃性の高いシート、フィルムの提供」及び「高い難燃性を備えた薄肉製品、特に、電子製品に用いられる電池パック用ケースの提供」をすることができることと理解できる。

そうすると、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、「ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、特定のリン系難燃剤を7?30質量部含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御されたシートまたはフィルム」との特定事項を有する「シートまたはフィルム」及び該「シートまたはフィルム」を加工した「電池パック用ケース」であれば、発明の課題を解決できると認識する。

そして、本件発明1ないし5、7ないし12は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できるものである。

(6)異議申立人の主張の検討
異議申立人は、特許異議申立書において、申立理由4に関して、申立理由3と併合した主張、すなわち、上記2(4)に記載の主張をするので、それぞれについて検討する。
ア 「(1)カーボンブラックを含む場合以外に遮光性が付与されることが実証されていない。」について
上記(5)での検討のとおり、本件発明の課題は、あくまで「難燃性の高いシート、フィルムの提供」及び「高い難燃性を備えた薄肉製品、特に、電子製品に用いられる電池パック用ケースの提供」であるから、異議申立人の主張は、失当であって採用できない。
イ「(2)」及び「(3)」について
本件発明1ないし5、7ないし12が、サポ-ト要件をしているといえるのは上記(5)のとおりである。そして、シートまたはフィルムの成型時におけるTD方向の厚み分布を平均厚みの±9%以内とする手段については、上記(2)オの段落【0139】【0140】に具体的に記載されているし、当業者はシートまたはフィルムの成形時のTD方向の厚み分布について、技術常識に基づいて測定できるといえるから、異議申立人の上記主張は失当であって採用できない。

(7)まとめ
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する申立理由4には、理由がない。

3 申立理由5(明確性要件)について
(1)取消理由<決定の予告>に採用しなかった申立理由5の具体的理由は次のとおりである。
ア 本件発明1は、「難燃性シートまたはフィルム」という物の発明であるが「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御され」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、その物の製造方法が記載されているといえる。
イ 本件発明8は、「電池パック用ケース」という物の発明であるが「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御され」との記載及び「難燃性シートまたはフィルムを2枚重ね、四辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容した」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、その物の製造方法が記載されているといえる。
ウ 本件発明9は、「電池パック用ケース」という物の発明であるが「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御され」との記載及び「難燃性シートまたはフィルムを折り畳み、三辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容可能にした」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、その物の製造方法が記載されているといえる。
エ 本件発明10は、「電池パック用ケース」という物の発明であるが「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御され」との記載及び「難燃性フィルムを円筒状に丸め、天面および底面を、射出成形で加工した前記難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる蓋材により密封し、内部に電池を収容した」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、その物の製造方法が記載されているといえる。
オ 本件発明11は、「電池パック用ケース」という物の発明であるが「難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により形成して箱型に加工し、容器内部に電池を収容した」との記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、その物の製造方法が記載されているといえる。
カ ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、なんら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとはいえない。

(2)明確性要件の判断基準
明確性要件の判断基準は、上記第6 2(1)のとおりである。

(3)判断
本件特許の特許請求の範囲には不明確な記載はなく、かつ、本件特許明細書の記載も特許請求の範囲の記載と矛盾するものではないから、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

(4)異議申立人の主張の検討
異議申立人が主張する「前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御され」との記載については、単にシートまたはフィルムの構造又は特性を特定しているにすぎないものであって、当該記載が、その物の製造方法が記載されている記載とはいえないから、異議申立人の主張は失当であり、採用できない。
また、異議申立人が主張する「電池パック用ケース」に係る「難燃性シートまたはフィルムを2枚重ね、四辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容した」、「難燃性シートまたはフィルムを折り畳み、三辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容可能にした」、「「難燃性フィルムを円筒状に丸め、天面および底面を、射出成形で加工した前記難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる蓋材により密封し、内部に電池を収容した」、「難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により形成して箱型に加工し、容器内部に電池を収容した」との記載についても、実質的にシートまたはフィルムの構造又は特性を特定しているにすぎないものであって、当該記載が、その物の製造方法が記載されている記載とはいえないから、異議申立人の主張は失当であり、採用できない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する申立理由5には、理由がない。

第8 むすび

上記第6及び第7のとおり、本件特許の請求項1ないし5及び7ないし12に係る特許は、取消理由<決定の予告>に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5及び7ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項6に係る特許は、訂正により削除されたため、異議申立人による本件特許の請求項6に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御され、
UL94規格における難燃性がVTM-0である難燃性シートまたはフィルム。
【化2】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X1はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化3】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1種または2種以上の無機充填剤12質量部以下をさらに含有する、請求項1に記載の難燃性シートまたはフィルム。
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、さらに、カーボンブラックを含有し、前記カーボンブラックの含有量が前記ポリカーボネート樹脂100質量部に対して0.0001?10質量部であり、前記難燃性シートまたはフィルムの全光線透過率が5%以下である請求項2に記載の難燃性シートまたはフィルム。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、フィブリル化性能を有するフルオロポリマー0.001質量部以上0.75質量部以下をさらに含有する、請求項1?3のいずれかに記載の難燃性シートまたはフィルム。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂組成物が、酸化防止剤および紫外線吸収剤の群から選択される1種または2種以上の安定剤をさらに含有する、請求項1?4のいずれかに記載の難燃性シートまたはフィルム。
【請求項6】削除
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載の難燃性シートまたはフィルムを、内部に電池を収容するために箱型または袋型に加工した電池パック用ケース。
【請求項8】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御された難燃性シートまたはフィルムを2枚重ね、四辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容した、電池パック用ケース。
【化5】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X^(1)はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化6】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項9】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御された難燃性シートまたはフィルムを折り畳み、三辺をヒートシールもしくは超音波溶着によりパウチ状袋型に加工して内部に電池を収容可能にした、電池パック用ケース。
【化8】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X^(1)はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化9】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項10】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御された難燃性フィルムを円筒状に丸め、天面および底面を、射出成形で加工した前記難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる蓋材により密封し、内部に電池を収容した、電池パック用ケース。
【化11】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X^(1)はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化12】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項11】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、下記一般式(1)または(2)で示されるリン系難燃剤を含む難燃剤7?30質量部を含有する難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からなる枠をフィルムインサート成形により、
前記難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から成形される厚さ0.01?0.1mmのシートまたはフィルムであり、前記シートまたはフィルムの成形時における樹脂流動方向に垂直な方向(TD方向)の厚み分布が平均厚みの±9%以内に制御された難燃性シートまたはフィルムの端部に形成して箱型に加工し、容器内部に電池を収容した、電池パック用ケース。
【化14】

[式(1)中、R^(1)、R^(2)、R^(3)およびR^(4)は、それぞれ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6?20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の整数であり、X^(1)はアリーレン基を示し、
前記式(1)で示されるリン系難燃剤は、少なくとも1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)を含む。]
【化15】

[式(2)中、tは3?8の整数であり、R^(5)、及びR^(6)は、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示し、
前記式(2)で示されるリン系難燃剤において、t=3のものが50質量%以上、t=4のものが10?40質量%、t=5以上のものが合わせて30質量%以下である。]
【請求項12】
請求項7に記載の電池パック用ケースに電池を収容した電池パック。」
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-04-12 
出願番号 特願2015-524001(P2015-524001)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩田 行剛  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 大島 祥吾
植前 充司
登録日 2019-03-22 
登録番号 特許第6499581号(P6499581)
権利者 MGCフィルシート株式会社 三菱瓦斯化学株式会社
発明の名称 難燃性シートまたはフィルム、及びそれを用いた製品及びその製造方法  
代理人 杉山 共永  
代理人 実広 信哉  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 杉山 共永  
代理人 鈴木 康仁  
代理人 小林 浩  
代理人 小林 浩  
代理人 潮 太朗  
代理人 小林 浩  
代理人 杉山 共永  
代理人 潮 太朗  
代理人 潮 太朗  
代理人 鈴木 康仁  
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