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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H02M
審判 全部申し立て 特123条1項5号  H02M
管理番号 1375863
異議申立番号 異議2019-700784  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-10-02 
確定日 2021-05-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6496329号発明「電力増幅器出力と負荷電圧クランプ回路の絶縁を組み合わせるための変圧器を組み込んだ電源回路」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6496329号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、〔10-18〕、〔19-24〕について訂正することを認める。 特許第6496329号の請求項1ないし24に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6496329号の請求項1ないし24に係る特許についての出願は、2015年6月29日(パリ条約による優先権主張 2014年6月30日 米国、2015年6月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年3月15日にその特許権の設定登録がされ、同年4月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 1年10月 2日 :特許異議申立人岡田誠により特許異議の申立て
令和 1年12月 5日付け:取消理由通知
令和 2年 3月 9日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 2年 5月19日付け:訂正拒絶理由通知
令和 2年 7月14日 :特許権者による意見書の提出
令和 2年10月 2日 :特許異議申立人岡田誠による意見書の提出
令和 2年10月27日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和 3年 2月 2日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
令和 3年 3月19日 :特許異議申立人岡田誠による意見書の提出

令和2年3月9日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げたものとみなす。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和3年2月2日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「負荷に電流を供給する変圧器」と記載されているのを、「AC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」に訂正する(請求項1を引用する請求項2から6、9も同様に訂正する)。
さらに、特許請求の範囲の請求項1に「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し」と記載されているのを、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し」に訂正する(請求項1を引用する請求項2から6、9も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の記載が請求項5を引用しているのを、請求項1を引用するように訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7の記載が請求項1を引用しているのを、従属関係を解消するように訂正する(請求項7を引用する請求項8も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「負荷に電流を供給する変圧器」と記載されているのを、「プラズマチャンバにAC出力を供給する変圧器」に訂正する(請求項10を引用する請求項11から15も同様に訂正する)。
さらに、特許請求の範囲の請求項10に「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと」と記載されているのを、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限することと」に訂正する(請求項10を引用する請求項11から15も同様に訂正する)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項15の記載が請求項14を引用しているのを、請求項10を引用するように訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項16の記載が請求項10を引用しているのを、従属関係を解消するように訂正する(請求項16を引用する請求項17、18も同様に訂正する)。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項19に「負荷に電流を供給する変圧器」と記載されているのを、「AC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20、21も同様に訂正する)。
さらに、特許請求の範囲の請求項19に「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと」と記載されているのを、「受け取って変換するための前記手段とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと」に訂正する(請求項19の記載を引用する請求項20、21も同様に訂正する)。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項22の記載が請求項19を引用しているのを、従属関係を解消するように訂正する(請求項22を引用する請求項23、24も同様に訂正する)。

(11)訂正事項11
明細書の段落【0016】の【図42】に続く記載中に「絶縁された組ダイオードの整流」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオードの整流」に訂正する。

(12)訂正事項12
明細書の段落【0016】の【図43】に続く記載中に「絶縁された組ダイオードの整流」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオードの整流」に訂正する。

(13)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし9は、請求項2ないし9が、訂正の対象である請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし9に対応する訂正後の請求項1ないし9も一群の請求項である。
訂正前の請求項10ないし18は、請求項11ないし18が、訂正の対象である請求項10を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項10ないし18に対応する訂正後の請求項10ないし18も一群の請求項である。
訂正前の請求項19ないし24は、請求項20ないし24が、訂正の対象である請求項19を直接又は間接的に引用する関係にあるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項19ないし24に対応する訂正後の請求項19ないし24も一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-9〕、請求項〔10-18〕及び請求項〔19-24〕について請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-9〕、請求項〔10-18〕及び請求項〔19-24〕について請求されたものである。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
本件特許に係る出願(特願2016-574954号)は、特許法第184条の4第1項の「外国語特許出願」である国際出願PCT/US2015/038338(以下、「本件国際出願」という。)が、同法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされたものである。
したがって、本件訂正請求に係る訂正事項のうち、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものについて、同条第5項を適用する際の「外国語書面出願」及び「外国語書面」は、同法第184条の19の規定により、それぞれ「第184条の4第1項の外国語特許出願」及び「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」となるので、同法第126条第5項で規定する「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」は、「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」となる。
すなわち、本件訂正請求に係る訂正事項のうち、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものについて、同条第5項を適用する際の「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」は、国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面となる(以下、「国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」を「基準明細書等」という。)。
そして、「国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面の中の説明」の「翻訳文」及び「図面」を「明細書等」という。また、当該「明細書の翻訳文」、「請求の範囲の翻訳文」、「図面」及び「図面の翻訳文」を、それぞれ、「明細書」、「特許請求の範囲」、「図面」という。

(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、請求項1に記載されている「負荷」、「電流を供給する変圧器」を、それぞれ「AC信号によって駆動される負荷」、「AC出力を供給する変圧器」に限定するものである。
さらに、訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に記載されている「整流器およびクランプ回路」が「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し」とあるのを、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し」に限定するものである。
したがって、許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)明細書の段落【0019】には「電圧インバータ回路は全体的に10で示されており、11における直流(DC)電圧源入力および12における交流(AC)出力を有する。」、同段落【0105】には「図37は、負荷90にAC信号を供給するように並列に結合された回路の半分AとBを有する回路を表すものである。」と記載されている。
また、同段落【0128】には「電力増幅器に含まれる2つの出力は、交流(AC)出力信号を出力する。」と記載されており、図42から電力増幅器の2つの出力が変圧器T1に入力され、変圧器T1の出力端子が負荷に接続されていることが見て取れるので、変圧器T1は交流(AC)出力信号が入力され、負荷へ交流(AC)出力信号を供給することが読み取れる。
これらの記載を総合すると、「AC信号によって駆動される負荷」、「AC出力を供給する変圧器」は、明細書及び図面の記載から自明な事項であるといえる。

(イ)明細書の段落【0003】には「電力増幅器から引き出され負荷に供給される電流が特定のしきい値を超過するなど、不整合状態(たとえば負荷インピーダンスの増加)および/または他の状態が発生すると、ある期間にわたって電力増幅器に被害が生じることがある。」と、電力増幅器と負荷との間にインピーダンスの増加など不整合状態が発生すると、電力増幅器に被害が生じることがあるという課題が示されている。
そして、同段落【0154】には「前述の例は、不整合負荷状態の間、電力増幅器を保護するものである。不整合負荷状態は、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していないときを指す。電源回路に含まれる整流器およびクランプ回路は、たとえば変圧器の巻線比を調整することにより、適切な(または所定の)保護電圧に整合され得る。電圧クランプ保護は、DC電流経路に設けられるのではなく、絶縁されたやり方でAC電流経路に設けられる。たとえば図42?図44および図48、図49の整流器およびクランプ回路は、供給された電力のDC-AC変換の後に、変圧器の下流に設けられる。これは、クランプ電圧制御の順応性を向上させ、回路構成要素を最小限にする(たとえば電圧クランプのために使用されるダイオードの数を最小限に抑える)。クランプ電圧は、0?V+の間の電圧範囲ばかりではなく、V-?0の間の電圧範囲も制御される。これによって、AC電圧の振幅およびクランプを調整することが可能になる。」と、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していない不整合負荷状態の間、クランプ回路がAC電流経路の電圧を保護電圧にクランプすることが記載されている。
さらに、同段落【0141】に「図46のシミュレーションプロットのシミュレーションに関して、100μsにおいて負荷のインピーダンスが増加し始め、それによって電力増幅器の出力電流が増加する。」と、負荷のインピーダンスが増加することにより、電力増幅器との間でのインピーダンス不整合状態が生じて、出力電流が増加することが記載されている。
そうすると、段落【0154】記載の電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していない不整合負荷状態とは、電力増幅器と負荷との間のインピーダンス不整合状態と理解できる。
よって、「電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプ」することは、明細書及び図面の記載から自明な事項であるといえる。

(ウ)したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項1は上述のとおり、訂正前の請求項1に係る発明について特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
基準明細書等の特許請求の範囲の請求項4には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されている。
そうすると、訂正前の請求項4に記載されている「絶縁された組ダイオード整流器」は、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」の誤訳である。
したがって、特許請求の範囲の請求項4に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
基準明細書等の特許請求の範囲の請求項4には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されているので訂正事項2は、基準明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項2は誤訳の訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
請求項5において「全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオード」と記載しているにもかかわらず、請求項5を引用する訂正前の請求項6において「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」と記載されており請求項6の記載が明確でなかったものを、請求項6の引用先を請求項1にすることよって明確にするものであり、許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
明細書の段落【0016】には「【図44】電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する別の電源回路を説明する図である。」及び【0137】には「図44の整流器およびクランプ回路は、ダイオードCR1、CR2を含む。図44の整流器およびクランプ回路は、図42、図43の整流器およびクランプ回路とは異なり、ダイオードCR3およびCR4を含まない。」と記載されいることから、明確になった「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」は、明細書等に記載した事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項3は請求項6の「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」の記載を変更しておらず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項7について、請求項1との引用関係を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、請求項10に記載されている「負荷」、「電流を供給する変圧器」を、それぞれ「プラズマチャンバ」、「AC出力を供給する変圧器」に限定するものである。
さらに、訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項10に記載されている「整流器およびクランプ回路」が「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限する」とあるのを、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限する」に限定するものである。
したがって、許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(ア)明細書の段落【0096】に「図30は、本明細書で説明された選択される電源が、システムにおいてプラズマチャンバを制御するために使用され得る制御システムを表すものである。・・・プラズマコントローラ60は、電圧発生器68によってプラズマチャンバに印加されるべき所望の入力電力を割り出す。・・・電源72からの電圧出力は、電源72とプラズマチャンバ52の間のインピーダンスを整合させる整合回路74に入力される。」との記載されているので、「負荷」が、具体的には「プラズマチャンバ」であることは明らかである。
また、同段落【0128】には「電力増幅器に含まれる2つの出力は、交流(AC)出力信号を出力する。」と記載されており、図42から電力増幅器の2つの出力が変圧器T1に入力され、変圧器T1の出力端子が負荷に接続されていることが見て取れるので、変圧器T1は交流(AC)出力信号が入力され、負荷へ交流(AC)出力信号を供給することが読み取れる。そうすると、「AC出力を供給する変圧器」は上記記載から自明な事項である。

(イ)上記(ア)で検討したように、「負荷」が、具体的には「プラズマチャンバ」であることは明らかである。
そして、明細書の段落【0003】には「電力増幅器から引き出され負荷に供給される電流が特定のしきい値を超過するなど、不整合状態(たとえば負荷インピーダンスの増加)および/または他の状態が発生すると、ある期間にわたって電力増幅器に被害が生じることがある。」と、電力増幅器と負荷との間にインピーダンスの増加など不整合状態が発生すると、電力増幅器に被害が生じることがあるという課題が示されている。
また、同段落【0154】には「前述の例は、不整合負荷状態の間、電力増幅器を保護するものである。不整合負荷状態は、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していないときを指す。電源回路に含まれる整流器およびクランプ回路は、たとえば変圧器の巻線比を調整することにより、適切な(または所定の)保護電圧に整合され得る。電圧クランプ保護は、DC電流経路に設けられるのではなく、絶縁されたやり方でAC電流経路に設けられる。たとえば図42?図44および図48、図49の整流器およびクランプ回路は、供給された電力のDC-AC変換の後に、変圧器の下流に設けられる。これは、クランプ電圧制御の順応性を向上させ、回路構成要素を最小限にする(たとえば電圧クランプのために使用されるダイオードの数を最小限に抑える)。クランプ電圧は、0?V+の間の電圧範囲ばかりではなく、V-?0の間の電圧範囲も制御される。これによって、AC電圧の振幅およびクランプを調整することが可能になる。」と、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していない不整合負荷状態の間、クランプ回路がAC電流経路の電圧を保護電圧にクランプすることが記載されている。
さらに、同段落【0141】に「図46のシミュレーションプロットのシミュレーションに関して、100μsにおいて負荷のインピーダンスが増加し始め、それによって電力増幅器の出力電流が増加する。」と、負荷のインピーダンスが増加することにより、電力増幅器との間でのインピーダンス不整合状態が生じて、出力電流が増加することが記載されている。
そうすると、段落【0154】記載の電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していない不整合負荷状態とは、電力増幅器と負荷との間のインピーダンス不整合状態と理解できる。
よって、「前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限する」ことは、明細書及び図面の記載から自明な事項であるといえる。

(ウ)したがって、訂正事項5は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるといえ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項5は上述のとおり、訂正前の請求項10に係る発明について特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
基準明細書等の特許請求の範囲の請求項13には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されている。
そうすると、訂正前の請求項13に記載されている「絶縁された組ダイオード整流器」は、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」の誤訳である。
したがって、特許請求の範囲の請求項13に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
基準明細書等の特許請求の範囲の請求項13には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されているので訂正事項6は、基準明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項6は誤訳の訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的
請求項14において「全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオード」と記載しているにもかかわらず、請求項14を引用する訂正前の請求項15において「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」と記載されおり請求項15の記載が明確でなかったものを、請求項15の引用先を請求項10にすることよって明確にするものであり、許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について
明細書の段落【0016】には「【図44】電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する別の電源回路を説明する図である。」及び【0137】には「図44の整流器およびクランプ回路は、ダイオードCR1、CR2を含む。図44の整流器およびクランプ回路は、図42、図43の整流器およびクランプ回路とは異なり、ダイオードCR3およびCR4を含まない。」と記載されいることから、明確になった「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」は、明細書等に記載した事項であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項7は請求項15の「絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオード」の記載を変更しておらず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項8について
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項10を引用する請求項16について、請求項10との引用関係を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項19に記載されている「負荷」、「電流を供給する変圧器」を、それぞれ「AC信号によって駆動される負荷」、「AC出力を供給する変圧器」に限定するものである。
さらに、訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項19に記載されている「整流器およびクランプ手段」が「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限すること」とあるのを、「受け取って変換するための前記手段とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限すること」に限定するものである。
ここで、「受け取って変換するための前記手段」は、「第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するための手段」のことであり、即ち、DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器といえるものである。
そうすると、訂正事項1で検討したのと同様な理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(10)訂正事項10について
訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項19を引用する請求項22について、請求項19との引用関係を解消するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(11)訂正事項11について
ア 訂正の目的
基準明細書等の段落[0049]には「FIG. 42 illustrates a power supply circuit incorporating a power amplifier and an isolated quad-diode rectification and clamping circuit in accordance with the present disclosure;」と記載されている。
そうすると、訂正前の明細書の段落【0016】の【図42】に続く記載中の「絶縁された組ダイオード整流器」は、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」の誤訳である。
したがって、明細書の段落【0016】の【図42】に続く記載中に「絶縁された組ダイオードの整流」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオードの整流」にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
基準明細書等の段落[0049]には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されているので訂正事項11は、基準明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項11は誤訳の訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(12)訂正事項12について
ア 訂正の目的
基準明細書等の段落[0050]には「FIG. 43 illustrates a power supply circuit incorporating a power amplifier and an isolated quad-diode rectification and clamping circuit in accordance with the present disclosure;」と記載されている。
そうすると、訂正前の明細書の段落【0016】の【図43】に続く記載中の「絶縁された組ダイオード整流器」は、「絶縁された4つ組みダイオード整流器」の誤訳である。
したがって、明細書の段落【0016】の【図43】に続く記載中に「絶縁された組ダイオードの整流」と記載されているのを、「絶縁された4つ組みダイオードの整流」にする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤訳の訂正を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
基準明細書等の段落[0050]には「an isolated quad-diode rectifier」と記載されているので訂正事項12は、基準明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項12は誤訳の訂正をするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3.訂正の適否についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕、請求項〔10-18〕、請求項〔19-24〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし24に係る発明(以下「本件発明1」-「本件発明24」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。
【請求項2】
前記第1の巻線が1次巻線であり、前記第2の巻線が2次巻線であり、前記第3の巻線が3次巻線である請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記4つのダイオードが、絶縁された4つ組みダイオード整流器の構成で配置されている請求項3に記載の電源回路。
【請求項5】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項1に記載の電源回路。
【請求項6】
前記複数のダイオードが、絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求1に記載の電源回路。
【請求項7】
電源回路であって、
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路と、
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)第2の制御信号を受け取り、
前記第2の制御信号に基づいて、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、
前記変圧器が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項8】
前記制御信号および前記第2の制御信号が、それぞれ、第1の電力増幅器を、前記第2の電力増幅器に対して同相または逆相で動作させる請求項7に記載の電源回路。
【請求項9】
前記電力増幅器が、フルブリッジ構成に配置された複数のスイッチを含む請求項1に記載の電源回路。
【請求項10】
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してプラズマチャンバにAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。
【請求項11】
前記第1の巻線が1次巻線であり、前記第2の巻線が2次巻線であり、前記第3の巻線が3次巻線である請求項10に記載の電源回路。
【請求項12】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項13】
前記4つのダイオードが、絶縁された4つ組みダイオード整流器の構成で配置されている請求項12に記載の電源回路。
【請求項14】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項15】
前記複数のダイオードが、絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項16】
電源回路であって、
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように構成されている整流器およびクランプ回路と、
第2の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、
前記変圧器が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項17】
前記電力増幅器が、前記第2の電力増幅器に対して同相または逆相で動作する請求項16に記載の電源回路。
【請求項18】
前記電力増幅器と前記第2の電力増幅器が同一のユニットまたは別個のユニットである請求項16に記載の電源回路。
【請求項19】
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するための手段と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む、変圧のための手段であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取り、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取り、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧のための手段と、
受け取って変換するための前記手段とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように配置された複数のダイオードを含んでいる整流器およびクランプ手段とを備える電源回路。
【請求項20】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項19に記載の電源回路。
【請求項21】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項19に記載の電源回路。
【請求項22】
電源回路であって、
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するための手段と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む、変圧のための手段であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取り、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取り、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧のための手段と、
前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように配置された複数のダイオードを含んでいる整流器およびクランプ手段と、
第2の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するための第2の手段とを備え、
前記変圧のための手段が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項23】
前記変換するための手段が、前記変換するための第2の手段に対して同相または逆相で動作する請求項22に記載の電源回路。
【請求項24】
前記変換するための手段と前記変換するための第2の手段が同一のユニットまたは別個のユニットである請求項22に記載の電源回路。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和2年10月27日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)(新規性)請求項1ないし6、9、19ないし21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし6、9、19ないし21に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、請求項1ないし6、10ないし15、19ないし21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし6、10ないし15、19ないし21に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2)(進歩性)請求項1ないし6、9、19ないし21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし6、9、19ないし21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献1:特開2004-40962号公報(甲第2号証)
引用文献2:特開昭58-26498号公報(令和2年10月2日提出の特許異議申立人による意見書の参考資料1)

2 引用文献の記載事項、引用発明
(1)引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様)。
「【0036】
図1は、本実施の形態のDC電源1の回路構成を示す図である。
同図によれば、DC電源1には、商用電源2から供給される3相交流電力が入力される。そして、DC電源1は、入力される交流電力を直流電力に変換し、プラズマ発生装置4へ出力する。即ち、DC電源1は、AC-DCコンバータとして機能する。
【0037】
また、DC電源1は、ブレーカ3、整流器11、直流フィルタ12、インバータ13、変圧器14、整流回路15、平滑コンデンサCF2、逆電圧発生回路20、着火電源回路30及び電力回生回路40を備えている。
【0038】
整流器11は、整流素子であるダイオード等を用いた3相全波整流回路であり、ブレーカ3を介して入力される3相交流電力を整流し、直流電力に変換する。整流器11の出力正端子は、直流フィルタ12の後述する直流リアクトルLF1の一端に、出力負端子は、直流フィルタ12の後述する平滑コンデンサCF1の他端に、それぞれ接続されている。
【0039】
直流フィルタ12は、直流リアクトルLF1と平滑コンデンサCF1とからなるLCフィルタであり、整流器11にて整流された直流電力を平滑する。
直流リアクトルLF1は、その一端が整流器11の出力正端子に、他端が平滑コンデンサCF1の一端に、それぞれ接続されている。」

「【0041】
インバータ13は、ブリッジ接続された4つの半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4及び共振リアクトルLRと共振コンデンサCFとが直列接続された直列共振タンクからなる直列共振型インバータである。
【0042】
半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4は、例えばIGBT等であり、そのゲートに入力される電圧信号(以下、「ゲート信号」という。)により、コレクタ-エミッタ間の導通/遮断状態(即ち、半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4のON/OFF)が制御される。」

「【0047】
そして、インバータ13は、相対向する2対の半導体スイッチ、即ち半導体スイッチQ1、Q4の対及び半導体スイッチQ2、Q3の対が交互にON/OFFを繰り返して、直流フィルタ12から入力される直流電力を、略正弦波交流に変換する。」

「【0049】
変圧器14は、相互に電磁結合された一次巻線14a及び二次巻線14bからなる変圧器であり、一次巻線14aに印加される交流電圧を、一次巻線14aと二次巻線14bとの巻線比に従って変圧し、二次巻線14bに発生する。
【0050】
一次巻線14aは、巻始めが共振リアクトルLRの他端に、巻終りが共振コンデンサCRの他端に、それぞれ接続されている。
二次巻線14bは、巻始めが整流回路15の後述するダイオードD1、D2の接続点に、巻終りが整流回路15の後述するダイオードD3、D4の接続点に、それぞれ接続されている。更に、二次巻線14bの巻始めには、着火電源回路30の後述する三次巻線31aの巻終わりが、巻終りには、着火電源回路30の後述する三次巻線31bの巻始めが、それぞれ接続されている。
【0051】
整流回路15は、ブリッジ接続されたダイオードD1、D2、D3、D4からなり、変圧器14の二次巻線14bに発生される交流電力を整流する。
即ち、ダイオードD1のカソードとダイオードD2のアノードとが接続され、ダイオードD3のカソードとダイオードD4のアノードとが接続されている。また、ダイオードD1、D3の各アノードが互いに接続され、ダイオードD2、D4の各カソードが互いに接続されている。」

「【0122】
次に、電力回生回路40について説明する。
図1によれば、電力回生回路40は、変圧器14の一次巻線14aと電磁結合された三次巻線41、4つのダイオードがブリッジ接続されてなる整流器42、直流リアクトルLF4及び平滑コンデンサCF4からなる直流フィルタ43、ダイオードD7及び半導体スイッチQ7より構成される。」

「【0129】
三次巻線41に発生する交流電力は、整流器42及び直流フィルタ43により整流・平滑される。半導体スイッチQ7がONすると、直流リアクトルLF4を介して短絡電流が流れ、直流リアクトルLF4内にエネルギーが蓄積される。
【0130】
一方、半導体スイッチQ7がOFFとなると、直流リアクトルLF4内に蓄積されていたエネルギーが開放され、電位的には整流器42の出力電圧に重畳した形で、平滑コンデンサCF1に向かって放出される。この様に、本回路はいわゆる昇圧型チョッパ回路であるが、この動作により、平滑コンデンサCF1から送出された電力を、再び平滑コンデンサCF1に回生できることになる。」

「【0132】
ところが、出力設定を更に軽くしていくと、インバータ13による供給電力が出力設定値を上回るようになる。即ち、負荷に必要でない電力まで送出されることになり、DC電源1は制御不能となる。このため、軽負荷時には、インバータ13の発生電力と、負荷での消費電力との差分に相当する電力を、電源側へ回生させる必要がある。そこで、軽負荷時には、電力回生回路30を機能させることで、設定出力以上の電力を電源側に回生させ、安定した制御を実現できる。」

上記記載及び図1より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「入力される交流電力を直流電力に変換し、プラズマ発生装置4へ出力するDC電源1であって(【0036】)、
DC電源1は、整流器11、直流フィルタ12、インバータ13、変圧器14、整流回路15、平滑コンデンサCF2、逆電圧発生回路20及び電力回生回路40を備えており(【0037】)、
整流器11は、交流電力を整流し直流電力に変換するものであり、整流器11の出力端子は、直流フィルタ12に接続されており(【0038】)、
直流フィルタ12は、直流リアクトルLF1と平滑コンデンサCF1とからなり、整流器11にて整流された直流電力を平滑するものであり、出力がインバータ13に接続され(【0039】、図1)、
インバータ13は、ブリッジ接続された4つの半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4及び共振リアクトルLRと共振コンデンサCFとが直列接続された直列共振タンクからなる直列共振型インバータであり(【0041】)、半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4は、そのゲートに入力される電圧信号により、コレクタ-エミッタ間の導通/遮断状態が制御され(【0042】)、直流フィルタ12から入力される直流電力を、略正弦波交流に変換し(【0047】)、
変圧器14は、一次巻線14a、二次巻線14b及び三次巻線41からなる変圧器であり、一次巻線14aに印加される交流電圧を変圧し、二次巻線14bに発生するものであり(【0049】、【0122】)、
一次巻線14aは、巻始めが共振リアクトルLRの他端に、巻終りが共振コンデンサCRの他端に、それぞれ接続され(【0050】)、
二次巻線14bは、整流回路15、平滑コンデンサCF2及び逆電圧発生回路20をとおして、プラズマ発生装置4へ電力を出力し(図1)、
整流回路15は、二次巻線14bに発生される交流電力を整流し(【0051】)、
電力回生回路40は、変圧器14の一次巻線14aと電磁結合された三次巻線41、4つのダイオードがブリッジ接続されてなる整流器42、直流リアクトルLF4及び平滑コンデンサCF4からなる直流フィルタ43、ダイオードD7及び半導体スイッチQ7より構成され(【0122】)、
三次巻線41に発生する交流電力は、整流器42により整流され、半導体スイッチQ7がONすると、直流リアクトルLF4を介して短絡電流が流れ、直流リアクトルLF4内にエネルギーが蓄積され(【0129】)、半導体スイッチQ7がOFFとなると、直流リアクトルLF4内に蓄積されていたエネルギーが開放され、平滑コンデンサCF1に向かって放出されることにより(【0130】)、軽負荷時に、インバータ13の発生電力と、負荷での消費電力との差分に相当する電力を、電源側へ回生する(【0132】)、
DC電源1。」

(2)引用文献2には、次の事項が記載されている。
a 「第1図は、この様子を示す図であり、交流電源を全波整流した脈流の直流電圧(イ)がインバータによって(ロ)の様な交流電圧に変換され、放電灯には(ハ)の様に休止期間を有する電流が流れる。」(第3欄第6-9行)

b 「第2図において、(1)は交流電源、(2)は整流回路、(3)はインバータであり、ここでは、共振回路を備えた、プッシュプル形トランジスタインバータで構成され、(6a),(6b)はトランジスタ、(7a),(7b)は抵抗、(8)は出力トランスであり、リーケージトランスで構成され、(8c)はコレクタ巻線、(8B)はベース巻線、(8F)はフィラメント巻線、(8S)は出力巻線であり、(9)は共振用コンデンサ、(10)は高調波チョークコイルである。(4)は放電灯、(5)は補助直流電源であり、出力トランス(8)の1次側に巻かれた補助巻線(8K)、整流回路(11)、コンデンサ(12)、ダイオード(13)から構成されている。」(第3欄第19行-第4欄第11行)

c 「以上の様に構成された装置に於て、交流電源(1)が投入されると、インバータ(3)は、ベース帰還巻線(8B)等の作用により、周知の如く自励発振を行ない、出力トランス(8)の各巻線に高周波電圧を発生し、放電灯を点灯する。」(第4欄第12-16行)

d 「ここで、補助巻線(8K)に発生した電圧からコンンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の端子電圧のピーク値がVcpてあるとすれば、インバータ(3)の入力電圧は、第1図(二)の様になる。ここでVpは、整流回路(2)の出力直流電圧のピーク値である。
コンデンサ(12)の充電々荷がTなる期間中はインバータ(3)に供給されるので、インバータ(3)のコレクタ巻線(8c)の電圧は、第1図(へ)の様になり、従って、放電灯(4)に流れる電流は(ホ)の様に連続的な、休止期間の無い電流が流れる。」(第4欄第20行-第5欄第10行)

e 「第3図は本発明による装置の実施例を示し、図に於て、(1)は交流電源、(2)は整流回路、(3)は第2図の装置と同様に構成されたインバータであり、(8)は出力トランスであり、この出力トランスはリーケージトランスで構成され、(8S)は出力巻線、(4)は放電灯、(5)は補助直流電源で、(8K)はリーケージトランス(8)の出力巻線(8S)側に巻かれた補助巻線、(11)は整流回路、(12)はコンデンサ、(13)はダイオードである。
以上の様に構成された装置に於て、交流電源(1)が投入されると第2図の装置と同様の動作により、インバータ(3)は動作し、出力トランス(8)の各巻線には高周波電圧が発生する。」(第6欄第20行-第7欄第12行)

f 「補助直流電源(5)の整流回路(11)の構成(例えば、チョークコイルを付加してチョークインプット形の全波整流回路にするなど)」(第9欄第3-6行)

g 上記記載及び図面より、引用文献2には第3図の装置に関して(上記e)、次の技術的事項が記載されている。
・上記eに、第3図の装置のインバータ(3)は第2図の装置と同様に構成されインバータであり、同様に動作することが記載されているので、上記c及び第3図の記載より、交流電源(1)を整流回路(2)で整流した直流電圧を受け取り、ベース帰還巻線(8B)等の作用により自励発振を行ない、出力トランス(8)の各巻線に高周波電圧を発生し、放電灯を点灯するインバータ(3)が読み取れる。
・交流電源(1)を整流回路(2)で整流した直流電圧は、脈流である(上記a、第1図(イ))。
・出力トランス(8)は、コレクタ巻線(8c)、ベース巻線(8B)、出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)を備え、出力トランス(8)の1次側にコレクタ巻線(8c)及びベース巻線(8B)が巻かれ、2次側に出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)が巻かれ、出力巻線(8S)が放電灯(4)に接続されている(上記b、上記e、第3図)。
・インバータ(3)は、エミッタが整流回路(2)に接続され、コレクタがコレクタ巻線(8c)に接続され、ベースがベース帰還巻線(8B)に接続されたトランジスタ(6a)(6b)を備えている(上記c、第3図)。
・補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続される補助直流電源(5)を備える(上記e、第3図)。
・補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給される(上記d)。

h 第3図の装置に着目すると、上記技術的事項より引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「交流電源(1)を整流回路(2)で整流した脈流の直流電圧を受け取り、ベース巻線(8B)等の作用により自励発振を行ない、出力トランス(8)の各巻線に高周波電圧を発生し、放電灯を点灯するインバータ(3)であって、
出力トランス(8)は、コレクタ巻線(8c)、ベース巻線(8B)、出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)を備え、
出力トランス(8)の1次側にコレクタ巻線(8c)及びベース巻線(8B)が巻かれ、2次側に出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)が巻かれ、出力巻線(8S)が放電灯(4)に接続されており、
インバータ(3)は、エミッタが整流回路(2)に接続され、コレクタがコレクタ巻線(8c)に接続され、ベースがベース巻線(8B)に接続されたトランジスタ(6a)(6b)を備え、
補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続される補助直流電源(5)を備え、
補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給される、
装置。」

i 上記c及び第3図より、次の技術が見て取れる。
「出力トランス(8)の出力巻線(8S)に、高周波電圧によって駆動される放電灯(4)を接続する」こと。

3 引用発明1を主たる発明とする場合の当審の判断
(1)本件発明1との対比、判断
ア 対比
本件発明1と引用発明1を対比する。
(ア)引用発明1の「交流電力」、当該交流電力を整流し直流電力に変換する「整流器11」、及び整流器11にて整流された直流電力を平滑する「直流フィルタ12」は、本件発明1の「第1の電源」に相当する。

(イ)引用発明1の「一次巻線14a」、「二次巻線14b」、「三次巻線41」、「変圧器14」、「整流器42」は、本件発明1の「第1の巻線」、「第2の巻線」、「第3の巻線」、「変圧器」、「整流器」に相当する。

(ウ)引用発明1の「インバータ13」は、本件発明1の「DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」に相当する。
そして、引用発明1は「整流器11にて整流された直流電力を平滑する」「直流フィルタ12」の「出力がインバータ13に接続され」ているので、引用発明1の「インバータ13」が「直流電力」を受けとっていることは、本件発明1の「電力増幅器」が「第1の電源からの直流(DC)電圧」を受け取ることに相当する。
また、引用発明1の「インバータ13」は、「半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4」が「そのゲートに入力される電圧信号により、コレクタ-エミッタ間の導通/遮断状態が制御され」るものなので、(本件発明1の「制御信号」に相当する)電圧信号を制御装置から受け取っていることが明らかである。
したがって、引用発明1の「半導体スイッチQ1、Q2、Q3、Q4は、そのゲートに入力される電圧信号により、コレクタ-エミッタ間の導通/遮断状態が制御され、直流フィルタ12から入力される直流電力を、略正弦波交流に変換」する「インバータ13」は、本件発明1の「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」に相当する。

(エ)
a 引用発明1の「一次巻線14a、二次巻線14b及び三次巻線41からなる変圧器」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器」に相当する。
b 引用発明1の「インバータ13」は「直流電力を、略正弦波交流に変換し」、「インバータ13」に「共振リアクトルLRと共振コンデンサCFとが直列接続され、」「一次巻線14aは、巻始めが共振リアクトルLRの他端に、巻終りが共振コンデンサCRの他端に、それぞれ接続され」ているので、引用発明1の「一次巻線14a」が「略正弦波交流」を受け取っていることは、本件発明1の「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されて」いることに相当する。
c 引用発明1の「変圧器14」が「一次巻線14aに印加される交流電圧を変圧し、二次巻線14bに発生する」ことは、本件発明1の「前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されて」いることに相当する。
d 引用発明1は「二次巻線14bは、整流回路15、平滑コンデンサCF2及び逆電圧発生回路20をとおして、プラズマ発生装置4へ電力を出力し」ており、「整流回路15は、二次巻線14bに発生される交流電力を整流し」ているので、「整流回路15」、「平滑コンデンサCF2」、「逆電圧発生回路20」及び「プラズマ発生装置4」は、「交流電力」によって駆動される負荷であるといえる。そうすると、引用発明1の「二次巻線14bは、整流回路15、平滑コンデンサCF2及び逆電圧発生回路20をとおして、プラズマ発生装置4へ電力を出力」することは、本件発明1の「前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する」ことに相当する。
上記a?dを総合すると、引用発明1の「一次巻線14a、二次巻線14b及び三次巻線41からなる変圧器」であって、「一次巻線14aに印加される交流電圧を変圧し、二次巻線14bに発生するものであり、一次巻線14aは、巻始めが共振リアクトルLRの他端に、巻終りが共振コンデンサCRの他端に、それぞれ接続され、二次巻線14bは、整流回路15、平滑コンデンサCF2及び逆電圧発生回路20をとおして、プラズマ発生装置4へ電力を出力」する「変圧器」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」に相当する。

(オ)引用発明1の「電力回生回路40」が「三次巻線41に発生する交流電力」を「整流器42により整流」することは、本件発明1の「前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流」することに相当する。
また、引用発明1の「電力回生回路40」が「三次巻線41に発生する交流電力」を「平滑コンデンサCF1に向かって放出されることにより、」「電源側へ回生する」ことは、本件発明1の「(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源」「に電力を戻す」ことに相当するから、引用発明1と本件発明1とは、「(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻す」ことで一致しているといえる。
そして、引用発明1の「電力回生回路40」が「インバータ13の発生電力と、負荷での消費電力との差分に相当する電力を、電源側へ回生する」ことは、「負荷」に供給される「インバータ13の発生電力」のうち「二次巻線14b」に出力される電力を「電源側へ回生する」ことにより制限しているので、「二次巻線14b」の出力電圧をクランプしているといえ、本件発明1の「(ii)」「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限」することに相当する。
そうすると、引用発明1の「変圧器14の一次巻線14aと電磁結合された三次巻線41、4つのダイオードがブリッジ接続されてなる整流器42、直流リアクトルLF4及び平滑コンデンサCF4からなる直流フィルタ43、ダイオードD7及び半導体スイッチQ7より構成され」る「電力回生回路40」は、本件発明1の「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)」「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路」に相当する。
但し、出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、引用発明1は「軽負荷時」に行う点で相違する。

(カ)引用発明1の「インバータ13」と、「変圧器14」と、「電力回生回路40」とを備える「DC電源1」は、本件発明1の「電力増幅器」と、「変圧器」と、「整流器およびクランプ回路」とを備える「電源回路」に相当する。

すると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。」
(相違点1)
出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、引用発明1は「軽負荷時」に行う点。

イ 判断
(ア)特許法第29条第1項(新規性)について
本件発明1と引用発明1とは上記相違点1を有するので、本件発明1は引用文献1に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

(イ)特許法第29条第2項(進歩性)について
上記相違点1について検討する。
引用発明1の「電力回生回路40」は、「半導体スイッチQ7」を「ON」「OFF」することにより、「軽負荷時に、インバータ13の発生電力と、負荷での消費電力との差分に相当する電力を、電源側へ回生」している。
そうすると、引用発明1は、軽負荷時に半導体スイッチQ7の制御を行って電力を電源側へ回生しているといえるが、半導体スイッチQ7の制御は、インバータ13と二次巻線14bにおける整流回路15のインピーダンス不整合状態に応答して行っていない。
そして、引用文献1には半導体スイッチQ7の制御を、インバータ13と二次巻線14bにおける整流回路15のインピーダンス不整合状態に応答して行うことの記載も示唆もない。
したがって、引用発明1に基づいて、上記相違点1の構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととではない。
よって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(2)本件発明2ないし6、9との対比、判断
本件発明2ないし6、9も、本件発明1の上記相違点1に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2ないし6、9は引用文献1に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明2ないし6、9は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
また、本件発明1と同じ理由により、本件発明2ないし6、9は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明2ないし6、9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(3)本件発明19ないし21との対比、判断
本件発明19ないし21も、本件発明1の上記相違点1に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明19ないし21は引用文献1に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明19ないし21は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
また、本件発明1と同じ理由により、本件発明19ないし21は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明19ないし21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

4 引用発明2を主たる発明とする場合の当審の判断
(1)本件発明1との対比、判断
ア 対比
本件発明1と引用発明2を対比する。
(ア)引用発明2の「コレクタ巻線(8c)」、「出力巻線(8S)」、「補助巻線(8K)」、「出力トランス(8)」、「整流回路(11)」は、本件発明1の「第1の巻線」、「第2の巻線」、「第3の巻線」、「変圧器」、「整流器」に相当する。

(イ)引用発明2の「交流電源(1)」及び当該交流電源(1)を整流した直流電圧を出力する「整流回路(2)」は、本件発明1の「第1の電源」に相当する。

(ウ)引用発明2の「インバータ(3)」が「整流回路(2)で整流した脈流の直流電圧を受け取」ることは、本件発明1の「電力増幅器」が「第1の電源からの直流(DC)電圧」を受け取ることに相当する。
また、引用発明2は「ベース巻線(8B)」が「トランジスタ(6a)(6b)」の「ベース」に接続されて、「ベース巻線(8B)等の作用により自励発振を行な」うのであるから、「ベース巻線(8B)」の信号に基づいて「トランジスタ(6a)(6b)」を制御して自励発振を行なっている。そうすると、引用発明の「ベース巻線(8B)等」が、本件発明1の「制御モジュール」に相当し、「ベース巻線(8B)」の信号が、「制御信号」に相当するといえる。
したがって、引用発明2の「整流回路(2)で整流した脈流の直流電圧を受け取り、ベース巻線(8B)等の作用により」「高周波電圧を発生」する「インバータ(3)」は、本件発明1の「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」に相当する。

(エ)
a 引用発明2の「コレクタ巻線(8c)、」「出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)」を備える「出力トランス(8)」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器」に相当する。
b 引用発明2は「トランジスタ(6a)(6b)」の「コレクタ」が「高周波電圧」を出力することは明らかであるので、「コレクタ巻線(8c)」が「トランジスタ(6a)(6b)」の「コレクタ」「に接続され」ていることは、本件発明1の「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されて」いることに相当する。
c 上記bを踏まえると、引用発明2の「出力トランス(8)の1次側にコレクタ巻線(8c)」「が巻かれ、2次側に出力巻線(8S)」「が巻かれ」ていることは、本件発明1の「前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されて」いることに相当する。
d 引用発明2は「出力トランス(8)の各巻線に高周波電圧を発生し、放電灯を点灯する」のであるから、「出力巻線(8S)が放電灯(4)に接続されて」いることは、本件発明1の「前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する」ことに相当する。
上記a?dを総合すると、引用発明2の「コレクタ巻線(8c)、」「出力巻線(8S)及び補助巻線(8K)」を備え」る「出力トランス(8)」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」に相当する。

(オ)
a 引用発明2は「補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され」ているので、「補助巻線(8K)に発生した電圧」を整流している、このことは、本件発明1の「前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流」することに相当する。
b 引用発明2は「整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続され」ているので、「補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給」されることにより、「補助巻線(8K)に発生した電圧」を「ダイオード(13)」を通して、「インバータ(3)」と接続される「整流回路(2)の出力」に戻しているといえる。
そうすると、引用発明2の「補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給」することは、本件発明1の「(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻す」ことに相当する。
c 引用発明2の「整流回路(2)」の出力電圧は、「脈流の直流電圧」である。
ここで、引用発明2は「補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続される補助直流電源(5)を備え、補助巻線(8K)に発生した電圧からコンデンサ(12)が充電され、コンデンサ(12)の充電々荷がインバータ(3)に供給され」ているので、「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である「脈流の直流電圧」以上になったとき、「インバータ(3)」から「放電灯(4)」へ供給されるべき電流の一部を「補助巻線(8K)」及び「ダイオード(13)」を通して「整流回路(2)の出力」に戻している。
そして、本件明細書の段落【0131】に「動作中、整流器およびクランプ回路によって供給される整流された電圧が、端子V+における電位よりも大きければダイオードの対CR1/CR4またはCR2/CR3のうちの1つが導通して、第1の電源に電流を戻す。これは、電圧クランプをもたらして第1の電源に電流を戻し、このことが出力端子における電圧を制限する。これが、結果として、出力フィルタに設けられた増幅器の出力電力および出力電流を制限し、したがって負荷に供給される出力電力を制限する。」と記載されていることに鑑みると、上述した引用発明2の「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である脈流の直流電圧以上になったとき、電流の一部を「補助巻線(8K)」及び「ダイオード(13)」を通して「整流回路(2)の出力」に戻すことは、本件発明1の「(ii)」「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限」することに相当する。
上記a?cを総合すると、引用発明2の「補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続される補助直流電源(5)」は、本件発明1の「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)」「前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路」に相当する。
但し、出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、引用発明2は「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である脈流の直流電圧以上になったときに行う点で相違する。

(カ)引用発明2の「インバータ(3)」と、「出力トランス(8)」と、「補助直流電源(5)」とを備える「装置」は、本件発明1の「電力増幅器」と、「変圧器」と、「整流器およびクランプ回路」とを備える「電源回路」に相当する。

すると、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。」
(相違点2)
出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、引用発明2は「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である脈流の直流電圧以上になったときに行う点。

イ 特許法第29条第1項(新規性)についての判断
本件発明1と引用発明2とは上記相違点2を有するので、本件発明1は引用文献2に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

ウ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、令和3年3月19日の意見書において、「特許権者のいう『安定したインピーダンス』とは、平均インピーダンスを指しており、インバータ周波数単位で考えれば、放電灯は安定した負荷を提供していないといえます。つまり、固定周波数で発振するインバータですが、引用文献2に記載の回路はインピーダンス不整合状態に常時応答する回路であることは、当業者にとって自明であるといえます。」(第2頁)と主張している。
しかしながら、上記「ア (オ)c」で検討したように、引用発明2において、「インバータ(3)」から「放電灯(4)」へ供給されるべき電流の一部を「整流回路(2)の出力」に戻すことは、「補助巻線(8K)」及び「整流回路(11)」を通して「コンデンサ(12)」に電荷が蓄積されて、「コンデンサ(12)」の充電電圧が「整流回路(2)」の出力である脈流の直流電圧以上になったとき行われるのであって、インバータ(3)と放電灯(4)との間のインピーダンス不整合状態に応答して行うものではない。
そして、このことは、引用発明2が「補助巻線(8K)に整流回路(11)が接続され、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)及びダイオード(13)に接続され、ダイオード(13)の出力が整流回路(2)の出力に接続され」ているので、仮に、インピーダンス不整合状態に応答して補助巻線(8K)に、整流回路(2)の出力を超える電圧が発生したとしても、整流回路(11)の出力がコンデンサ(12)に接続されていることから、直ちに整流回路(11)が導通するものでないことからも明らかである。
よって、特許異議申立人の上記主張を採用するこことができない。

(2)本件発明2ないし6との対比、判断
本件発明2ないし6も、本件発明1の上記相違点2に係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2ないし6は引用文献2に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明2ないし6、9は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

(3)本件発明10ないし15との対比、判断
本件発明10ないし15も、本件発明1の上記相違点2に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明10ないし15は引用文献2に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明10ないし15は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

(4)本件発明19ないし21との対比、判断
本件発明19ないし21も、本件発明1の上記相違点2に対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明19ないし21は引用文献2に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明19ないし21は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

5 まとめ
以上のことより、当該取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由により、本件発明1ないし6、9ないし15、19ないし21に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第1項(新規性)、特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関して、
ア 請求項1、2、10、11及び19に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、
イ 請求項1ないし6、9、10ないし15、19ないし21に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、請求項7及び8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している。

甲第1号証:特開2003-219644号公報
甲第2号証:特開2004-40962号公報(本決定における引用文献1)
甲第3号証:特開2018-29455号公報

(2)各号証の記載
ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている。
「【0003】 このような問題点を解決する回路として、特開平9-149649号公報などに開示された技術がある。この技術は、一般的なダイオードのキャリアライフタイムに比べてキャリアライフタイムの大幅に長い電荷蓄積ダイオードと電圧クランプ手段、代表的なものとしてはコンデンサとを直列接続した回路を、保護すべきスイッチング半導体素子と並列に接続したことが特徴である。その回路を用いたDC-DCコンバータの回路構成を図3に示す。
【0004】 このコンバータ回路は、商用交流電源と整流回路などからなる直流入力電源1、この直流入力電源1と直列に接続されたトランス2の1次巻線2aとMOSFETなどのようなスイッチング半導体素子3、スイッチング半導体素子3と並列に接続された電荷蓄積ダイオード4とコンデンサのような電圧クランプ手段5との直列接続体、直流入力電源1の正極と、電荷蓄積ダイオード4と電圧クランプ用コンデンサ5との接続点間に接続された放電用抵抗6、スイッチング半導体素子3に並列に接続された共振用コンデンサ7と逆並列のダイオード8、トランス2の2次巻線2bと直列に接続された整流用ダイオード9、フライホイーリング用ダイオード10、フィルタ回路を構成するインダクタ11とコンデンサ12、出力電圧が一定になるようにスイッチング半導体素子3を制御するパルス幅制御回路13からなり、テレビ受像回路のような家電製品などからなる負荷14が接続される。」

「【0006】 ここで、電圧クランプ用コンデンサ5は比較的キャパシタンスの大きなものであり、負荷変動の比較的小さな領域ではスイッチング半導体素子3の両端の電圧をほぼ一定の電圧に維持する。電圧クランプ用コンデンサ5の電圧は、トランス2の励磁エネルギーと漏れインダクタンスと配線のインダクタンスに蓄えられたエネルギーによる充電と、電荷蓄積ダイオード4の逆方向導通時の放電、抵抗値の大きい抵抗6を通しての放電とが釣り合う電圧で安定し、前記インダクタンスとコンデンサ7との共振により直流入力電源1の電圧よりも高い電圧に維持される。また、電荷蓄積ダイオード4はスイッチング半導体素子3のスイッチング周期以上の長いキャリアライフタイムを有する。」

「【0009】
【発明が解決しようとする課題】 以上述べたように、特開平9-149649号公報などに開示された従来のフォワードコンバ-タ回路では、電荷蓄積ダイオード4と電圧クランプ用コンデンサ5とからなるスナバ回路の働きによりスイッチング半導体素子3のターンオフ時に不要な過電圧が印加されるのを防ぐと共に、トランス2の漏れインダクタンスや配線のインダクタンスに蓄えられたエネルギーの大部分を直流入力電源1へ戻しているので、スナバ損失を小さくできるというメリットを有する優れた技術である。」

「【0020】 図1により本発明にかかる第1の実施例を説明する。この実施例は図1に示す回路構成になっており、各回路部品間の接続は図示のとおりである。図1において、図3で参照した記号と同一の記号は相当する回路部品を示すものとする。電荷蓄積ダイオ-ド4は、スイッチング半導体素子3のスイッチング周期以上の長いキャリアライフタイムを有する。キャリアライフタイムの長いダイオ-ドは、通常の短いものに比べて本質的に逆方向導通を長時間保持する特性を有するが、蓄積電荷と等しい電荷が逆方向から注入された時点で、ダイオ-ドの逆方向阻止能力が回復する。」

「【0022】 この発明の重要な構成は、電圧クランプ用コンデンサ5に充電手段を設けたところにあり、この実施例ではトランス2に第3の巻線2cと、第3の巻線2cに誘起される交流電圧を整流する整流器15とからなる充電回路を電圧クランプ用コンデンサ5に跨がって接続している。この充電回路の第3の巻線2cは、電圧クランプ用コンデンサ5がほぼ一定電圧にあるときには、その一定電圧よりも小さな電圧を誘起する巻数となっている。このコンバータ回路の動作については、前記充電手段に関連する動作を除いて、特開平9-149649号公報に記載のコンバータ回路の場合とほぼ同様であるのでコンバータ回路全体の動作については説明を省略する」

ここで、段落【0020】に「図1において、図3で参照した記号と同一の記号は相当する回路部品を示すものとする。」と記載されているので、図3の回路を参照しながら、第1の実施例に着目すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた甲第1号証の記載箇所を示す。)。
「商用交流電源と整流回路からなる直流入力電源1と、
直流入力電源1と直列に接続されたトランス2の1次巻線2aとスイッチング半導体素子3と(【0004】)、
スイッチング半導体素子3と並列に接続された電荷蓄積ダイオード4と電圧クランプ用コンデンサ5からなるスナバ回路と(【0004】、【0009】)、
電圧クランプ用コンデンサ5に跨がって接続される、トランス2の第3の巻線2cと、第3の巻線2cに誘起される交流電圧を整流する整流器15とからなる充電回路と(【0022】)、
トランス2の2次巻線2bと、
トランス2の2次巻線2bに接続された整流用ダイオード9、フライホイーリング用ダイオード10、フィルタ回路、負荷14と、
スイッチング半導体素子3を制御するパルス幅制御回路13からなる(【0004】)、
DC-DCコンバータ(【0003】)。」

イ 甲第3号証には、次の事項が記載されている。
「【0016】
以下、本発明のスイッチング電源装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態のスイッチング電源装置10は、入力電源12から入力された入力電圧Viを所定の電圧Vo1,Vo3に変換し、第一及び第二の外部負荷14,16に供給する装置であり、図1に示すように、3つのスイッチングコンバータ18,36,54により構成されている。
【0017】
第一のコンバータ18は、第一トランス20を介して互いに絶縁された第一入力側回路22及び第一出力側回路24を有し、第一入力側回路22に入力された入力電圧Viを第一出力電圧Vo1に変換し、第一出力側回路24に接続された第一の外部負荷14に向けて出力する。第一のコンバータ18の出力は、例えば大電力のメイン出力となる。
【0018】
図2に示すように、第一のコンバータ18は、主スイッチング素子26、第一トランス20、出力整流回路28及び出力平滑回路30で構成されたシングルエンディッドフォワード方式の電力変換部と、第一出力側回路24に設けられた出力制御信号生成部32及び第一入力側回路22に設けられたPWM変調回路34で構成された出力制御部を有している。
【0019】
電力変換部の主スイッチング素子26は、後述するPWM変調回路34に駆動されてオンオフし、入力電源12から供給された入力電圧Viを一定の周期で断続する。第一トランス20は、入力巻線20a及び出力巻線20bを有し、主スイッチング素子26のスイッチング動作によって発生した断続電圧が入力巻線20aに印加され、ほぼ相似形の電圧を出力巻線20bから出力する。」

(3)本件発明1と甲1発明との対比、判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明の「1次巻線2a」、「2次巻線2b」、「第3の巻線2c」、「トランス2」は、それぞれ、本件発明1の「第1の巻線」、「第2の巻線」、「第3の巻線」、「変圧器」に相当する。

(イ)甲1発明の「直流入力電源1」は、商用交流電源を整流回路で整流し直流を出力しているので、本件発明1の「(i)第1の電源」に相当する。

(ウ)甲1発明の「パルス幅制御回路13」は、直流入力電源1と直列に接続されたスイッチング半導体素子3を制御するのであるから、本件発明1の「(ii)制御モジュール」に相当するといえる。

(エ)甲1発明の「直流入力電源1と直列に接続され」「パルス幅制御回路13」によって制御される「スイッチング半導体素子3」と本件発明1とは、「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて」動作する装置である点で共通する。
但し、動作する装置が、本件発明1は「前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」であるのに対して、甲1発明は「直流入力電源1と直列に接続された」「スイッチング半導体素子3」である点で相違する。

(オ)甲1発明の「トランス2」は、「1次巻線2a」、「2次巻線2b」及び「第3の巻線2c」を含んでいる。
そうすると、甲1発明の「トランス2」は、本件発明1の「第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器」に相当する。
但し、本件発明1は「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」であるに対して、甲1発明はそのような特定がない点で相違する。

(カ)甲1発明に「整流器15」及び「電圧クランプ用コンデンサ5」とあるが、これらは、「電荷蓄積ダイオード4」及び「トランス2の第3の巻線2c」と共に「スナバ回路」として動作するものであるから、本件発明1の「整流器およびクランプ回路」に相当するものではない。
そうすると、本件発明1は「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点で相違する。

(キ)甲1発明の「DC-DCコンバータ」と本件発明1とは、「電源回路」である点で共通する。

すると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて動作する装置と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器とを備える電源回路。」
(相違点3)
動作する装置が、本件発明1は「前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」であるのに対して、甲1発明は「直流入力電源1と直列に接続された」「スイッチング半導体素子3」である点。
(相違点4)
本件発明1は「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器」であるに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
(相違点5)
本件発明1は「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。

イ 判断
(ア)特許法第29条第1項(新規性)について
本件発明1と甲1発明とは上記相違点3ないし5を有するので、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。

(イ)特許法第29条第2項(進歩性)について
まず、上記相違点5について検討する。
甲第2号証に記載された技術的事項は、上記「第4 2 (1)」に引用発明1として記載したとおりである。
そして、上記「第4 3 (1)」「ア 対比」に示したとおり、本件発明1と甲第2号証に記載された技術とは、出力端子における電圧をクランプして負荷に供給される出力電力を制限することが、本件発明1は「前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して」行われるのに対して、甲第2号証に記載された技術は「軽負荷時」に行う点で相違する。
そうすると、たとえ、甲1発明に甲第2号証に記載された技術を適用しても、相違点5に係る構成を得ることはできない。
したがって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない

よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(4)本件発明2、10、11及び19と甲1発明との対比、判断
本件発明2、10、11及び19は、上記相違点3ないし5に係る構成、又は対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2、10、11及び19は甲第1号証に記載された発明ではない。
したがって、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件発明2、10、11及び19は係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでない。
また、本件発明1と同じ理由により、本件発明2、10、11及び19は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明2、10、11及び19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(5)本件発明3ないし6、9、12ないし15、20、21と甲1発明との対比、判断
本件発明3ないし6、9、12ないし15、20、21は、上記相違点3ないし5に係る構成、又は対応する構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明3ないし6、9、12ないし15、20、21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(6)本件発明7と甲1発明との対比、判断
ア 対比
本件発明7は、訂正前の請求項1を引用する請求項7に係る発明である。
したがって、本件発明1と甲1発明との対比を踏まえると(上記「(3) ア」)、本件発明7と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「電源回路であって、
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて動作する装置と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器とを備える電源回路。」
(相違点6)
動作する装置が、本件発明7は「前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器」であるのに対して、甲1発明は「直流入力電源1と直列に接続された」「スイッチング半導体素子3」である点。
(相違点7)
本件発明7は「前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧器」であるに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
(相違点8)
本件発明7は「複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
(相違点9)
本件発明7は「(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)第2の制御信号を受け取り、前記第2の制御信号に基づいて、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、前記変圧器が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。

イ 判断
まず、上記相違点9について検討する。
甲第3号証には、3つのスイッチングコンバータ18,36,54により構成され、入力電源12から入力された入力電圧Viを所定の電圧Vo1,Vo3に変換し、第一及び第二の外部負荷14,16に供給するスイッチング電源装置10が記載されている(上記「(2) イ」)。
しかし、甲第3号証には、電力増幅器に加えて、DC電圧を第2の交流出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、変圧器が第4の巻線をさらに備え、第4の巻線が第2の交流出力信号を受け取るように構成する技術は記載されていない。
また、甲第2号証に記載された技術(引用発明1)にも、電力増幅器に加えて、DC電圧を第2の交流出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、変圧器が第4の巻線をさらに備え、第4の巻線が第2の交流出力信号を受け取るように構成する技術は記載されていない。
そうすると、甲1発明、又は甲1発明に甲第2号証に記載された技術を適用したものに、甲第3号証に記載された技術を適用しても、相違点9に係る構成を得ることはできない。
したがって、本件発明7は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

よって、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(7)本件発明8と甲1発明との対比、判断
本件発明8は、上記相違点6ないし9に係る構成を備えるものであるから、本件発明8と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証及び甲第2号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

(8)特許法第29条第1項、特許法第29条第2項についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。

2 特許法第36条6項第1号(サポート要件)、特許法第36条6項第2号(明確性)について
(1)請求項6について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項6に関して、
「本件特許の請求項6に記載された発明は、絶縁された2つのダイオード整流器を有するが、本件明細書に『ダイオード整流器』は説明されていない。
従って、本件特許の請求項6に記載された発明は本件明細書の説明に記載されておらず、明確でもないから、本件特許の請求項6は特許法第36条第6項第1号、第2号の規定に該当し、特許を受けることができない。」と主張している。(特許異議申立書第24頁)
しかしながら、明細書の段落【0016】には「【図44】電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する別の電源回路を説明する図である。」と記載されており、図44には、絶縁された2つのダイオード整流器が記載さている。また、「絶縁された2つのダイオード整流器」は、明確な記載である。
したがって、請求項6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されており、かつ、明確である。

(2)請求項15について
請求項15に記載された「絶縁された2つのダイオード整流器」についても、請求項6の記載と同様であるから、請求項15に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されており、かつ、明確である。

(3)請求項16ないし18について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前の請求項16に関して、
(ア)「本願特許明細書には、整流器およびクランプ回路の電流供給先として第2の電源が記載されているが(本件明細書段落0132)、直流電圧を出力することは記載されていない。」
(イ)「また、本件特許の請求項16が引用する請求項10には『第2の電源』が記載されているものの、本件特許の請求項16には、『第2の電源』と記載され、『前記第2の電源』とは記載されていないから、別々の電源を意味していると考えられる。」
(ウ)「また、本件特許の請求項16に記載された発明は、電力増幅器と第2の電力増幅器の二個の増幅器を有している。そのように二個の増幅器を有する発明は、本件明細書添付の図48、図49に記載されているが、二個の電力増幅器は第1の電源から直流電圧を受け取っており、本件明細書と図48、49とには、第1の電源から直流電圧を受け取る電力増幅器しか記載されていない。」
「従って、本件特許の請求項16に記載された発明は、本件明細書、図面には記載されておらず、また、特許を受けようとする発明が不明確であるから特許法第36条第6項第1号、第2号の規定によって特許を受けることができない。」(特許異議申立書第34頁)

イ 当審の判断
(ア)の主張について
明細書の段落【0132】には「図42に示された構成の代替として、整流器およびクランプ回路の出力が、第1の電源の端子V+、V-ではなく第2の電源に接続されてよい。これによって、整流器およびクランプ回路のクランプ電圧を、電位V+およびV-以外のレベルに設定することが可能になる。」と、「整流器およびクランプ回路」の接続先として、「第2の電源」が記載されているので、第2の電源が直流電圧を出力することは自明な事項である。

(イ)の主張について
訂正前の請求項10に記載された「第2の電源」と、訂正前の請求項16に記載された「第2の電源」は、同じ用語を使用しているので、特段のことわりが無い限り、同じ電源と解釈でき明確である。
なお、訂正前の請求項10を引用する請求項16は、本件訂正請求により独立請求項になったが、明確であることにかわりはない。

(ウ)の主張について
明細書の段落【0132】に「図49?図49の構成も、第2の電源および/または放散回路を含むように変更されてよい。」と記載されているので、請求項16に記載された第2の電源から直流(DC)電圧を受け取るように構成された第2の電力増幅器は、明細書に記載されていないとまではいえない。

よって、請求項16に係る発明及び請求項16を引用する請求項17、18に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されており、かつ、明確である。

(4)請求項22ないし24について
請求項22に記載された「第2の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するための第2の手段」についても、請求項16の記載と同様であるから、上記請求項16についての検討を踏まえると、請求項22に係る発明及び請求項22を引用する請求項23、24に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されており、かつ、明確である。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。

3 特許法第49条第6号(原文新規事項)について(当審注:特許異議申立の理由においては、特許法第113条第5号である。)
(1)請求項4について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(第21-23頁)において、訂正前の請求項4に関して、概略、次の主張をしている。
訂正前の請求項4に「絶縁された組ダイオード整流器」と記載されてるが、国際出願日における国際出願の請求の範囲には「4. The power supply circuit of claim 3 wherein the four diodes are arranged in an isolated quad-diode rectifier configuration.」と記載されており、「絶縁された組ダイオード整流器」は記載されていない。
よって、請求項4に係る発明は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されていない。

イ 当審の判断
本件訂正請求により、請求項4は「絶縁された4つ組みダイオード整流器」と訂正されたので、請求項4に係る発明は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されたものとなった。

(2)請求項13について
ア 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書(第32頁)において、訂正前の請求項13に関して、概略、次の主張をしている。
訂正前の請求項13には、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されていない「組ダイオード整流器」が記載されている。

イ 当審の判断
本件訂正請求により、請求項13は「絶縁された4つ組みダイオード整流器」と訂正されたので、請求項13に係る発明は、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載されたものとなった。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張を採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1ないし24に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1ないし24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電力増幅器出力と負荷電圧クランプ回路の絶縁を組み合わせるための変圧器を組み込んだ電源回路
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、交流電力を供給するための電源に関し、より詳細には電源の電力増幅器を保護するための回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線周波数(RF)エネルギーは、様々な産業において、誘導加熱、誘電加熱、およびプラズマ励起による材料の処理のために使用されている。プラズマ励起は、誘導結合、容量結合、真の電磁(EM)波結合、マイクロ波結合の形をとることができる。このRFエネルギーを供給する発生器は、コンマ数ワットを供給する単一のA級トランジスタ増幅器から数千ワットを供給する自己発振管(電子管)発生器に及ぶ多数の回路トポロジーを利用する。
【0003】
半導体製造業は、ミクロンサイズおよびサブミクロンサイズのフィルムの堆積およびエッチングにRFプラズマを利用する。この用途のための一般的な電源は、電源周波数の変圧器/整流器/キャパシタの直流電源および高周波数の電力増幅器から成り得る。一般的な電力および周波数の値は、20キロワットまでと、400KHz?100.0MHzの範囲内とであり得るが、そのように限定されなくてよい。電源または発電機は、100:1の出力負荷範囲にわたって1%または2%の精度に制御可能な電力を有するであろう。通常、発電機は、通常は50オームに規定された負荷に出力するように特に構成されているが、不整合負荷に対しても故障することなく、任意の負荷を駆動することができるべきである。電力増幅器から引き出され負荷に供給される電流が特定のしきい値を超過するなど、不整合状態(たとえば負荷インピーダンスの増加)および/または他の状態が発生すると、ある期間にわたって電力増幅器に被害が生じることがある。一般的な保護機構は、電力を低減するものである。たとえば、対応して電流または消費電力を低減するように、比例増幅器の駆動レベルが低下される。50オームのシステムでは、一般的な50オームからの変化が、反射電力として測定され得る。反射電力を制限するために駆動レベルが低下される。
【0004】
図1は、逆相の正弦波によって駆動されるスイッチすなわちトランジスタS1、S2を有する一般的な変圧器結合のプッシュプル式RF電力増幅器を示す。5素子の高調波除去フィルタは、インダクタL1、L2ならびにキャパシタC1、C2、およびC4を含む。高調波除去フィルタは、一般的には高純度または一定の正弦波出力を保証するものである。AB級またはB級であり得る、バイアスのない構成が示されている。一般的には、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)または金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のいずれかが使用される。変圧器T1は、通常は28Vまたは50Vの所与のDC供給電圧のために必要な電力と整合するように選択された比を有する。詳細な回路は、通信用に使用される広帯域HF/VHF電力増幅器の設計に関する標準的な業界の慣行に従う。
【0005】
図1の増幅器には1つの利点があるが、いくつかの欠点がある。利点は、広帯域の設計において、単に駆動周波数すなわち入力周波数を変化させることによって、出力周波数が容易に変化されることである。所与の出力周波数に対して、出力フィルタのみを変更すればよい。増幅器の基本的な線形性/純度が十分に優れていれば、すべてがなしで済む。図1の回路には、効率が悪くトランジスタの消費電力が大きいという欠点がある。効率は、理論上70%を超えることができないが、一般的には高々50%である。大きい消費電力に対処するために、多くの用途に使用されるRFトランジスタは、高価で特別な酸化ベリリウム(BEo)の低熱抵抗技術を採用することが多い。このRFトランジスタは、空冷または水冷の大きいヒートシンクを必要とすることが多い。RF線形増幅器の設計において大量のデータが公表されている。発生器を設計しようとするあらゆる電源製造業者が、トランジスタ製造業者の高信頼度の応用回路を使用することができる。
【0006】
図2に見られるように、図2の回路は、高効率および低消費電力を提供する別の動作モードを利用するものである。図2の回路の駆動信号は矩形波に固定されており、その結果、トランジスタは、ここではリニアモードではなくスイッチングモードで動作する。すなわち、図1のスイッチすなわちトランジスタS1、S2は、完全オンと完全オフの間で動作する。図2のスイッチすなわちトランジスタS1、S2は、完全オンから完全オフへ切り換わることによって動作する。このとき変圧器T1の出力は矩形波である。インダクタL1、L2およびキャパシタC1、C2を含んでいる4素子フィルタが、必要な基本周波数をフィルタリングして正弦波の出力を産出する。高調波電流を除去するために、フィルタが誘導性入力をもたらすように、キャパシタC4が除去されている。トランジスタの電圧および変圧器の電圧は矩形波であるが、電流は正弦波である。このとき効率は100%であり得、一般的には80?95%の範囲内に入る。そのような回路は、通常、増幅器ではなく共振コンバータまたは共振インバータと称される。
【0007】
図2の回路にはいくつかの欠点がある。フィルタは、固定されているかまたは狭い周波数範囲または動作帯域のみが可能であるように、特定の出力周波数向けに十分に選択されている。また、出力電力を直接制御することはできない。図1と異なり、図2の回路は、ラインまたは出口の電圧に対して直接接続することができない。むしろ、図2に対するDC入力は、一般的にはスイッチングモードコンバータを使用して実現された追加の電力コンバータを使用して調整しなければならない。さらに、負荷の不整合によって、フィルタとトランジスタの間に大きい循環電流が生じることがある。DC入力電流を制限しても、循環電流は必ずしも制限されない。
【0008】
特にE級増幅器に関して、E級増幅器は高効率を提供するスイッチングモードの増幅器トポロジーである。そのトポロジーのために、一般的にはトランジスタであるE級増幅器のスイッチング素子は、最大の消費電力が生じる活性領域においてほとんど時間を費やさない。この構成において、E級増幅器のスイッチング素子は、トランジスタではなくむしろスイッチのように動作する。すなわち、このスイッチング素子は、その時間の大部分を遮断領域または飽和領域のいずれかにおいて費やす。
【0009】
設計者は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)として知られているスイッチングモードの技術を使用することにより、E級増幅器の効率をさらに改善する。ZVSは、E級増幅器のスイッチング素子が遷移中に活性領域を通過するのを防止する。スイッチング素子の出力に誘導負荷を加えることにより、スイッチング素子の出力における寄生キャパシタンスおよびスワンピングキャパシタンスがゼロボルトまで放電されてから、スイッチング素子が遮断領域から飽和領域へ移行しようとする。インダクタとキャパシタが協働して、直列共振回路を形成し、スイッチング素子の出力に誘導負荷を与える。共振回路の周波数は、増幅器の動作周波数未満である。このとき、共振回路のインダクタが共振回路を支配し、トランジスタに対する誘導負荷を生成する。
【0010】
ZVSを遂行するために、スイッチング素子は、デバイスチャネルが遮断領域にあるときでも、マイナスのドレイン-ソース電流を通し得るように設計しなければならない。MOSFETがソースに対する基板接続において固有のボディダイオードを有するので、そのような要件は、MOSFETがE級増幅器のトポロジーのスイッチング素子に関する好ましい選択であることを示唆する。バイポーラ接合トランジスタ(BJT)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの他のトランジスタも選択され得るが、そのような構成は、エミッタ-コレクタ接合にわたって高速のダイオードを配置する必要がある。
【0011】
E級増幅器の主要な利益は、主としてデバイスの電力損失が低減することにより、E級トポロジーにおいて使用される同じトランジスタから、他のトポロジーよりも大きいRF電力が実現され得ることである。他方では、E級増幅器は、RF出力から除去しなければならないかなりの2次高調波エネルギーを生成する。そのようなトポロジーは、一般的にはRF電力が負荷に送出される前にフィルタリングする少なくとも1つの追加の段を必要とする。
【0012】
先に論じられたように、インダクタおよびキャパシタから成る直列共振回路は、増幅器の動作周波数未満の共振周波数を有する。負荷はキャパシタ、インダクタ、および抵抗の任意の組合せであり得るが、負荷と、共振回路との直列結合が増幅器の動作周波数と等しい共振周波数を有するような値を有するキャパシタのみであると、スイッチング素子を通る電流は無限の値に近づく可能性がある。結果として、トランジスタに被害が生じる可能性がある。しかしながら、一般的なE級増幅器の適用は、増幅器出力の反射電力をクランプする外部制御ループを利用することによってトランジスタの被害を防止する。制御ループは、反射電力が事前設定の限界を超過したことを一旦感知すると、反射電力が所定の限度に一致するまでDCレールの電圧を低下させる。制御ループは、トランジスタに対する衝撃を防止するために迅速に反応しなければならない。トランジスタに対する衝撃は、RF増幅器の入力電力を低下させてゼロにすることによっても防止することができる。しかしながら、プラズマ処理の用途では、そのような行為は、プラズマが消失するという望ましくない結果をもたらす恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
電力増幅器を含む電源回路は、(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御信号を受け取るように構成されている。電源は、制御信号に基づいて、直流電圧を交流(AC)出力信号に変換する。変圧器は第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む。第1の巻線がAC出力信号を受け取る。第2の巻線は、AC出力信号に基づく出力電流を受け取り、出力端子を介して負荷に電流を供給する。整流器およびクランプ回路は複数のダイオードを含む。ダイオードは、第3の巻線にわたる電圧を整流し、出力端子における電圧をクランプし、第3の巻線から第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている。
【0014】
電源回路に含まれる電力増幅器は、第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、直流電圧を交流(AC)出力信号に変換する。変圧器は第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む。第1の巻線がAC出力信号を受け取る。第2の巻線は、AC出力信号に基づく出力電流を受け取り、出力端子を介して負荷に電流を供給する。整流器およびクランプ回路は複数のダイオードを含む。ダイオードは、第3の巻線にわたる電圧を整流すること、出力端子における電圧をクランプすること、および第3の巻線から第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも2つを行うように構成されている。
【0015】
本開示の適用可能性のさらなる領域が、発明を実施するための形態、特許請求の範囲および図面から明らかになるであろう。発明を実施するための形態と具体例とは、説明の目的のみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】前述のように従来技術において実行された回路トポロジーの図である。
【図2】前述のように従来技術において実行された回路トポロジーの図である。
【図3】電源の回路図である。
【図4】組み合わされた出力を生成するために直列に接続された回路を示す図である。
【図5】組み合わされた電力出力を生成するために並列に接続された回路を示す図である。
【図6】単一のクランプダイオード対によって保護されたスイッチングブリッジの半分を示す図である。
【図7】共振回路および出力を供給する単一のスイッチと、回路を保護する単一のダイオードクランプ対とを示す図である。
【図8】図7の回路の3レベルの実装形態の図である。
【図9】ハーフブリッジインバータおよび保護回路を示す図である。
【図10】特定のスイッチングデバイスに依拠した、スイッチングデバイス向けの代替構成を示す図である。
【図11】特定のスイッチングデバイスに依拠した、スイッチングデバイス向けの代替構成を示す図である。
【図12】特定のスイッチングデバイスに依拠した、スイッチングデバイス向けの代替構成を示す図である。
【図13】クランプダイオードのうちの1つと並列にキャパシタを有する回路を示す図である。
【図14】クランプダイオードの各々と並列にキャパシタを有する回路を示す図である。
【図15】一連のキャパシタおよびダイオードにわたって分割された電圧を有する回路を示す図である。
【図16】保護回路の中にインダクタンスおよびRC回路が見られる回路を示す図である。
【図17】フィルタ回路網の動作を改善するためのMOSFET回路を示す図である。
【図18】デバイスのキャパシタンスに対処するためのインバータの代替入力回路向けの回路を示す図である。
【図19】複数のFETを使用して実施された、デバイスのキャパシタンスに対処するためのインバータ回路を示す図である。
【図20】図18の入力回路に対する改善を示す図である。
【図21】追加のLC直列回路を有するインバータを示す図である。
【図22】クランプ電圧を変化させるための電源回路を示す図である。
【図23】図22のインバータとともに使用するための代替の定電圧シンク機構を示す図である。
【図24】図22のインバータとともに使用するための代替の定電圧シンク機構を示す図である。
【図25】図22のインバータとともに使用するための代替の定電圧シンク機構を示す図である。
【図26】図22のインバータとともに使用するための代替の定電圧シンク機構を示す図である。
【図27-1】保護回路を内蔵する例示的ハーフブリッジインバータから得られた波形を示す図である。
【図27-2】保護回路を内蔵する例示的ハーフブリッジインバータから得られた波形を示す図である。
【図28】保護回路を内蔵しない例示的ハーフブリッジインバータからの比較の波形を示す図である。
【図29】電源用制御回路のブロック図である。
【図30】保護回路を利用するプラズマシステムに関するブロック図である。
【図31】図30の制御回路用の整合回路(matching network)を示す図である。
【図32】シングルエンド増幅器を示す回路図である。
【図33】シングルエンド増幅器の第2の構成を示す回路図である。
【図34】図33の回路の動作を説明する波形を示す図である。
【図35】図33の回路の動作を説明する波形を示す図である。
【図36】図33の回路の動作を説明する波形を示す図である。
【図37】プッシュプル構成に配置された1対のシングルエンド増幅器を表す回路を説明する図である。
【図38】プッシュプル構成に配置され、負荷のバランスをとることするための追加回路を含む、1対のシングルエンド増幅器を表す回路を説明する図である。
【図39】並列の構成に配置された1対のシングルエンド増幅器を表す回路を説明する図である。
【図40】並列かつプッシュプル構成に配置されたシングルエンド増幅器を表す回路を説明する図である。
【図41】並列に配置されて出力にフィルタが付加されている1対のシングルエンド増幅器を表す回路を説明する図である。
【図42】電力増幅器と、絶縁された4つ組みダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する電源回路を説明する図である。
【図43】電力増幅器のスイッチと、絶縁された4つ組みダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する別の電源回路を説明する図である。
【図44】電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流と、本開示によるクランプ回路とを内蔵する別の電源回路を説明する図である。
【図45】電圧の整流もクランプもない電源回路を説明する図である。
【図46】クランプダイオード保護なしで負荷インピーダンスの変化からもたらされる図45の電源回路の電力増幅器の出力電流の例示的プロットである。
【図47】本開示によるクランプダイオード保護がある状態で負荷インピーダンスの変化からもたらされる図42の電源回路の電力増幅器の出力電流の例示的プロットである。
【図48】互いに同相の電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流およびクランプの回路とを内蔵する一方で、電力増幅器の出力電圧を結合する電源回路を説明する図である。
【図49】互いに逆相の電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流およびクランプの回路とを内蔵する一方で、電力増幅器の出力電圧を結合する電源回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面では、参照番号は、類似の要素および/または同一の要素を識別するために再利用されることがある。
【0018】
好ましい実施形態の以下の説明は、本来例示でしかなく、本明細書で提供される開示、その応用、または使用法を限定するようには意図されていない。
【0019】
図3を参照して、電圧インバータ回路は全体的に10で示されており、11における直流(DC)電圧源入力および12における交流(AC)出力を有する。図の説明において、スイッチは、一般にSの後に数字が続く記号を使用して参照され、キャパシタはCの後に数字が続く記号を使用して参照され、インダクタはLの後に数字が続く記号を使用して参照され、ダイオードはDの後に数字が続く記号を使用して参照され、変圧器はTの後に数字が続く記号を使用して参照されることに最初から留意されたい。さらに、全体的に対称なトポロジーを有する回路において、全体的に類似した対称な要素を示すために、上記の参照記号のそれぞれに文字接尾部が続くことがある。
【0020】
スイッチS1、S2は、信号源すなわち発生器13から、それぞれの逆相の矩形波信号を入力として受け取る。矩形波信号は、スイッチS1またはS2のいずれかをオンにする場合は常にインダクタL1にわたる電圧の極性を逆にするやり方でスイッチS1、S2をオンにする。信号源13がそのようなやり方でスイッチS1、S2を駆動したとき、スイッチS1、S2とキャパシタC3が協働してDC入力信号を反転させてAC信号にしたものがインダクタL1に印加される。これは12における交流出力を生成し、DC成分はキャパシタC4によって阻止される。12における出力信号の周波数は、信号源13によって出力される信号の周波数に依拠する。インダクタL1、L2およびキャパシタC1、C2を備える4素子の高調波フィルタは、全体的に前述のように動作する。インダクタL1およびキャパシタC1が高調波フィルタの第1段を形成し、インダクタL2およびキャパシタC2が高調波フィルタの第2段を形成する。出力フィルタは、インダクタL1に入力される信号の高調波成分を除去して、出力正弦波の純度を改善し、一般的には50オームである出力インピーダンスに対して、所与の入力電圧に関する所要出力電力を整合させる。
【0021】
上記で論じたように、図1および図2の回路は、不整合負荷によって生成される大きい循環電流に対して非常に脆弱であり得る。第1段の高調波フィルタと第2段の高調波フィルタの間に挿入された1対のクランプダイオードまたは整流器D1およびD2が、電流を循環させることによって、可能性のある被害を緩和する。ダイオードD2は、DC入力源11のマイナスレールからノードXまで延在する。ダイオードD1は、ノードXからDC入力源11のプラスレールまで延在する。動作において、回路が、ノードXを、どちらかの方向へレール電圧を超えて駆動しようとすると、そのレールに関連したダイオードがオンになって導電性になる。ダイオードがオンになるとノードXをレール電圧にクランプし、過剰な電圧および/または電流を、インバータへ、詳細には入力源11およびキャパシタC3へフィードバックする。より詳細には、回路が、ノードXを、DC入力源11のプラスレールにおける電圧を超えて駆動しようとすると、ダイオードD1がオンになって、DC入力電圧源11およびキャパシタC3へ戻る、スイッチS2のボディダイオードを含む電流経路をもたらす。同様に、回路が、ノードXを、DC電源11のマイナスレール未満へ駆動しようとすると、ダイオードD2が導電性になって、DC入力源11およびキャパシタC3へ戻る、スイッチS1のボディダイオードを含む電流経路をもたらす。不整合負荷の影響が周波数とともに増加するとき、図3の回路によって、インバータが、従来は達成するのが困難であった周波数において使用され得る。
【0022】
図4は、直列に配置された2つの電源回路の出力を説明するものである。図4は、フルブリッジ構成に配置された2つの半分AおよびBを含む。図4の回路では、2つの半分AおよびBのそれぞれに印加されるスイッチング信号間の位相を変化させることによって、出力12における電力を調整することができる。
【0023】
図4の第1の半分に含まれる1対のスイッチS1A、S2Aが、信号源13Aによって出力された1対のAC信号を受け取る。スイッチS1A、S2Aは、DC電源11のマイナス電圧レールとプラス電圧レールの間で直列に接続されている。スイッチS1A、S2Aからの出力が印加されるインダクタL1Aが、インダクタL2AおよびキャパシタC1A、C2Aと組み合わされて2段の4素子高調波フィルタを形成する。第1のクランプダイオードD1Aのマイナス端子すなわちカソードがDC入力源11のプラスレールに接続されており、プラス端子すなわちアノードがインダクタL1AとL2Aの間に接続されている。第2のクランプダイオードD2Aのプラス端子すなわちアノードがDC電源11のマイナス端子に接続されており、マイナス端子すなわちカソードがクランプダイオードD1Aのプラス端子に接続されている。高調波フィルタからの出力が、変圧器T1の第1の終端タップに接続されている。
【0024】
クランプダイオードD1A、D2Aが、図4の回路の左半分を保護する。回路が、ノードXAにおける電圧を、DC電源11のプラスレールを超えて駆動しようとしたとき、ダイオードD1Aが導電性になることにより、ノードXAにおける電圧を、ほぼDC入力源11のプラスレール電圧にクランプし、DC入力源11およびキャパシタC3へ戻る経路をもたらす。同様に、回路が、ノードXAをDC入力源11のマイナスレール電圧未満に駆動しようとしたとき、ダイオードD2Aがオンになって、ノードXAにおける電圧をほぼDC入力源11のマイナスレール電圧にクランプし、DC入力源11およびキャパシタC3へ戻る回路経路をもたらすことにより、図4の回路の左半分を保護する。
【0025】
図4の回路は、スイッチS1B、S2Bを含んでいる第2の半分Bも含む。信号源13Bは、スイッチS1B、S2Bに対して1対のAC信号を出力する。信号源13A、13Bは、単一のユニットへと組み合わされ得ることに留意されたい。半分Bは、インダクタL1B、L2BおよびキャパシタC1B、C2Bを備える4素子の2段高調波フィルタも含む。半分Bには、半分Aにおいて説明されたように、1対のクランプダイオードD1B、D2Bも配置されている。回路の半分Bからの出力が、変圧器T1の終端タップに接続されている。回路の半分Bは、回路の半分Aに関して説明されたように動作する。変圧器T1は、回路の半分AおよびBと出力12の間を絶縁する。回路半分AとBは、変圧器T1の入力コイルを介して直列に接続されている。
【0026】
回路の半分AとBは、それぞれの半分を制御しているスイッチング信号間の位相を変えると出力12における電力が変化するように、直列に結合されている。具体的には、スイッチS1AおよびスイッチS1Bの作動も停止も同時に行われるとき、スイッチS1A、S1Bは同相または0度の位相で動作すると称される。反対に、スイッチS1Bがオンのときは常にスイッチS1Aがオフであり、スイッチS1Bがオフのときは常にスイッチS1Aがオンであれば、両スイッチは、逆相すなわち180度の位相角であると称される。類似の用語が、スイッチS2A、S2Bのそれぞれに当てはまる。位相コントローラ14が、それぞれの回路の半分の間の相対的位相を変化させるために、それぞれの回路の半分AとBの間の位相を割り出し、信号源13A、13Bのそれぞれに出力信号を供給する。出力12における最大電力は、回路の半分AとBが180度の位相すなわち逆相で動作するときに生じる。出力12における最小電力は、回路の半分AとBが0度の位相または同相で動作するときに生じる。位相がゼロのとき、それぞれの半分には、負荷インピーダンスにかかわらず開回路が見える。変圧器T1は、出力を直列で効果的に結合し、出力12の前に阻止キャパシタを設ける必要はない。それぞれの回路の半分AおよびBの高調波フィルタを形成する回路素子は、0度の位相角におけるゼロ出力を保証するために、一致する必要があり、すなわち等しくなければならない。たとえば、L1A、L2A、C1A、およびC2Aの値は、L1B、L2B、C1B、およびC2Bの値と等しくするべきである。
【0027】
図5は、並列に結合された第1の回路の半分Aと第2の回路の半分Bとを説明するものである。回路の半分Aに含まれるスイッチの対S1A、S2Aは、信号源13Bと組み合わされて単一のユニットを形成し得る信号発生器13Aから、それぞれのAC入力信号を受け取る。スイッチS1AとS2Aは、DC入力源11のそれぞれのプラス電圧レールとマイナス電圧レールの間で直列に接続されている。スイッチS1A、S2Aからの出力は、インダクタL1A、L2AおよびキャパシタC1A、C2Aを備える4素子の2段高調波フィルタに印加される。
【0028】
DC入力源11のそれぞれのプラスレールとマイナスレールの間に、1対のクランプダイオードD1AとD2Aが直列に配置されている。ダイオードD1Aのマイナス端子すなわちカソードはDC電源のプラスレールに接続されており、ダイオードD1Aのプラス端子すなわちアノードはノードXAに接続されている。ダイオードD2Aのマイナス端子すなわちカソードはノードXAに接続されており、ダイオードD2Aのプラス端子すなわちアノードはDC電源11のマイナスレールに接続されている。回路の半分Aからの出力が、DC入力源11のマイナスレールと4素子フィルタからの出力の間の電圧によって割り出される。フィルタからの出力は、出力信号のあらゆるDC成分を阻止する阻止キャパシタC4に印加される。キャパシタC4は出力12にも接続されている。動作において、回路が、DC電源11のそれぞれのマイナスレールおよびプラスレールによって規定された所定のしきい値を超えてノードXAを駆動しようとしたとき、クランプダイオードD1A、D2Aは、DC入力源11およびキャパシタC3への回路経路をもたらすことによって、回路の半分Aの回路要素を保護する。
【0029】
回路の半分Bは、回路の半分Aと同様に配置されており、回路の半分Aと同じやり方で動作する。図5に示されるような回路の半分AとBの並列接続において、それぞれの半分AとBの間の動作の位相を変化させると出力12における電力が変化する。具体的には、回路の半分AとBが、0度すなわち同相で動作するとき、出力12において最大電力が生成される。反対に、回路の半分AとBが180度すなわち逆相で動作するとき、短絡が出現して、出力12に最小電力が出現する。位相コントローラ14は、それぞれの回路の半分AとBの間の相対位相を制御するために、信号発生器13A、13Bのそれぞれに制御信号を供給する。180度の位相角において、それぞれの回路の半分には、このとき、負荷インピーダンスにかかわらず短絡が見える。キャパシタC2AとC2Bが並列であるため、単一の素子へと結合され得ることに留意されたい。それぞれの回路の半分AおよびBの高調波フィルタを形成する回路素子は、180度の位相角におけるゼロ出力を保証するために、一致する必要があり、すなわち等しくなければならない。たとえば、L1A、L2A、C1A、およびC2Aの値は、L1B、L2B、C1B、およびC2Bの値と等しくするべきである。
【0030】
図6が表す回路が有する回路の半分AとBは、協働して、出力12の前の共通要素に信号を印加する。回路の半分Aに含まれる対のスイッチS1AとS2Aは、DC入力源11のそれぞれのプラス電圧レールとマイナス電圧レールの間で直列に配置されている。スイッチS1A、S2Aからの出力はインダクタL1Aに入力される。信号源すなわち発生器13Aは、スイッチS1A、S2Bの作動を制御するAC信号を出力する。回路の半分Bに含まれる対のスイッチS1BとS2Bは、DC入力源11のそれぞれのプラス電圧レールとマイナス電圧レールの間で直列に配置されている。スイッチS1B、S2Bからの出力はインダクタL1Bに入力される。信号源すなわち発生器13Bは、信号源13Aとともに単一のユニットへと組み合わされてよく、それぞれのスイッチS1B、S2Bの作動および停止を制御するAC信号を供給する。
【0031】
1対のクランプダイオードD1、D2が、それぞれのスイッチ対S1A、S2AおよびS1B、S2Bと並列に配置されている。クランプダイオードD1、D2は、回路の半分A、Bのいずれかが、ノードXYを、DC入力源11のそれぞれのプラスレールおよびマイナスレールによって規定された所定の電圧を超えて駆動しようとしたとき、DC入力源11およびキャパシタC3へ戻る回路経路をもたらす。
【0032】
DC電源11のマイナス電圧レールとノードXYの間にキャパシタC1が配置されている。DC電源11のマイナスレールとノードXYの間の電圧によって、インダクタL1A、L2B、L2およびキャパシタC1、C2によって形成された高調波フィルタの第2段を形成する、インダクタL2およびキャパシタC2によって定義されたフィルタに対する入力電圧が定義される。キャパシタC1は、それぞれのインダクタL1A、L2Bと協働して高調波フィルタの第1段をもたらす。信号は、阻止キャパシタC4によってDC成分を除去されてから出力12に出力される。
【0033】
クランプダイオードD1、D2は、回路の半分A、Bのいずれかが、ノードXYを、DC電源11のプラス電圧レール?マイナス電圧レールの範囲を超えて駆動しようとしたとき、DC電源11およびキャパシタC3へ戻る回路経路をもたらす。したがって、回路の半分A、Bのいずれが前述の所定のしきい値を超えてノードXYを駆動しても、クランプダイオードD1、D2が、DC電源11およびキャパシタC3へ戻る回路経路をもたらすことによって図6の回路を保護するように動作する。
【0034】
図6の回路は、信号源13A、13Bのそれぞれに対する制御信号を生成することによって回路の半分AとBの間の相対位相を制御するための位相コントローラ14も含む。図6において、回路の半分AとBが同相すなわち0度の位相角で動作するとき、出力12に供給される電力が最小になり、回路の半分AとBが逆相すなわち180度の位相角で動作するとき、出力12に供給される電力が最大になる。図6の回路において、180度の位相角におけるゼロ出力を保証するために、インダクタL1とL1Bが一致しなければならない。
【0035】
図7は、出力12にAC信号を供給するように並列に結合された回路の半分AとBを有する回路を表すものである。回路の半分Aを参照して、スイッチS1Aは信号源13AからAC信号を受け取る。スイッチS1Aは、DC電源11のそれぞれのマイナス電圧レールとプラス電圧レールの間の転流インダクタL3Aと直列に配置されている。スイッチS1Aと並列にキャパシタC6Aが配置されている。転流インダクタL3AとキャパシタC6Aは、協働して、回路の半分Aがシングルエンドのインバータ機能をもたらすように、タンク回路を形成する。タンク回路は半波整流された正弦波形を出力する。阻止キャパシタC7Aは、スイッチS1Aおよび転流インダクタL3Aから出力された信号からDC成分を除去する。キャパシタC7Aは、図8に見られるように、ACを互いに結合して、それぞれのデバイスにわたって同じAC電圧を保証する。L3AとL3Bが、均等分配を促進するために交差結合され得ることに留意されたい。インダクタL3AとL1Aの比が、スイッチS1Aのストレスの変化量を決定する。インダクタL3Aを通る電流が、インダクタL1Aを通る電流と比較して相対的に大きければ、インダクタL1Aを通じての負荷による変化は、スイッチS1Aに対するストレス上の影響が限定的であろう。図7の回路には、均一な高調波が生成され、C7AにわたるDC電圧が負荷に左右されるという欠点がある。これは、いくらかの負荷変動の下で過渡的な充電電流が流れ得ることを意味する。阻止キャパシタC7Aのから出力がインダクタL1Aに入力される。
【0036】
第2の回路の半分Bは、信号源13Bによって出力されたAC信号によって駆動されるスイッチS1Bを含む。スイッチS1Bは、DC入力源11のそれぞれのマイナスレールとプラスレールの間の転流インダクタL3Bに対して直列である。スイッチS1Bと並列にキャパシタC6Bが配置されている。転流インダクタL3BおよびキャパシタC6Bがタンク回路を形成する。スイッチS1BおよびインダクタL3Bからの出力は、信号からDC成分を除去する阻止キャパシタC7Bに印加される。インダクタL1BはキャパシタC7Bに接続されている。
【0037】
インダクタL1AとL1BはノードXZにおいて相互に接続され、インダクタL2およびキャパシタC2に出力を供給する。キャパシタC2のもう一方の端子はDC電圧源11のマイナスレールに接続されている。DC電圧源11のマイナスレールとノードXZの間にキャパシタC1が接続されている。したがって、インダクタL1A、L2およびキャパシタC1、C2は、回路の半分Aからの出力に対する2段の高調波フィルタを形成する。同様に、インダクタL1B、L2およびキャパシタC1、C2は、回路の半分Bからの出力に対する2段の高調波フィルタを形成する。阻止キャパシタC4は、出力12に供給される信号からDC成分を除去する。
【0038】
図7は、電圧源11のそれぞれのプラスレールとマイナスレールの間で直列に配置された1対のクランプダイオードD1、D2も含む。ダイオードD1のマイナス端子すなわちカソードはDC電源11のプラスレールに接続されており、ダイオードD1のプラス端子すなわちアノードはノードXZに接続されている。ダイオードD2のマイナス端子すなわちカソードはノードXZに接続されており、ダイオードD2のプラス端子すなわちアノードはDC電源11のマイナスレールに接続されている。
【0039】
回路の半分A、Bのいずれかが、ノードXZにおける電圧を、所定のしきい値を超えて駆動しようとしたとき、クランプダイオードD1、D2のうちの1つがオンになることにより、ノードXZからDC電源11およびキャパシタC3へ戻す回路経路をもたらす。たとえば、図7の回路がDC電源11のプラスレールを超える電圧へとノードXZを駆動しようとしたとき、ダイオードD1が導電性になることにより、過剰な電圧および電流をDC入力源11およびキャパシタC3へ戻す回路経路をもたらす。同様に、回路が、ノードXZの電圧を、DC入力源11のマイナスレールの電圧未満へと駆動しようとしたとき、ダイオードD2が導電性になり、DC入力源11およびキャパシタC3へ戻る回路経路をもたらす。
【0040】
図7の回路の半分AとBは並列に配置されている。スイッチS1AおよびスイッチS1Bを制御する制御信号の相対位相が同相すなわち0度のとき、出力12が最大電力を受け取る。反対に、スイッチS1Aの駆動信号とスイッチS1Bの駆動信号の間の位相が逆相すなわち180度のとき、出力12が最小電力を受け取る。位相コントローラ14は、信号源13A、13Bのそれぞれに入力信号を供給することにより、回路の半分AとBの間の相対位相を変化させる。それぞれの回路の半分AおよびBの高調波フィルタを形成する回路素子は、180度の逆相を保証するために、一致する必要があり、すなわち等しくなければならない。たとえば、L1A、L2A、C1A、およびC2Aの値は、L1B、L2B、C1B、およびC2Bの値と等しくするべきである。
【0041】
図7の回路の特有の問題は、高周波での動作中に、同じ回路経路の内部でスイッチを交互に駆動することが、一般により困難になることである。インダクタL3および関連するキャパシタC6によって形成されたタンク回路を利用することにより、一般に、特定の回路の半分のスイッチングに要求される精度が緩和される。
【0042】
図8は、図8のシングルエンドのインバータ回路の3レベルの実装形態を表すものである。図8は1対の回路の半分A、Bを含み、それぞれの対が、プライム(’)、ダブルプライム(”)、およびトリプルプライム(’’’)によって示された3つのレベルを含む。回路の半分Aを参照して、各レベルが、信号源13AからAC信号を受け取るスイッチS1Aを含む。スイッチS1AはインダクタL3Aに接続し、キャパシタC6Aと並列に配置されている。インダクタL3AとキャパシタC6Aは、協働してタンク回路を形成する。インダクタL3AおよびスイッチS1Aからの出力は、インダクタL3AおよびスイッチS1Aの出力からDC成分を除去する阻止キャパシタC7Aに入力される。スイッチS1AとインダクタL3Aの直列接続に対してキャパシタC5Aが並列に配置されている。それぞれのスイッチS1A’、S1A’’、S1A’’’が、信号源13Aからアナログ信号を受け取る。
【0043】
キャパシタC5A’、C5A’’、C5A’’’が3つのレベルを分離する。それぞれのキャパシタC5A’、C5A’’、C5A’’’が電流を通してDCを阻止し、したがって各段のそれぞれのAC部分の電流ループをもたらす。キャパシタC7A’、C7A’’、C7A’’’が、それぞれのレベルの出力を互いにAC結合し、これらのインピーダンスは、対象の周波数において無視できるものである。したがって、それぞれのレベルが、ほぼ等しい電圧を有する。たとえば、DC入力源11が300ボルトの電圧を出力すると、それぞれのキャパシタにわたる電圧は100ボルトになる。したがって、それぞれのレベルの回路の半分Aは、DC電源による電圧出力のうちの1/3のみを扱えばよい。
【0044】
同様に、回路の半分Bに含まれる3つのレベルのそれぞれが、インダクタL3Bと直列に接続されたスイッチS1Bを有する。上記で論じたように、スイッチS1Bは、インダクタL3Bとタンク回路を形成しているキャパシタC6Bに対しても並列に接続されている。阻止キャパシタC7Bが、インダクタL3BおよびスイッチS1Bの出力からDC成分を除去する。各レベルが、キャパシタC5Bとも並列に接続されている。各素子が、回路の半分Aに関して前述のように動作する。それぞれのスイッチS1B’、S2B’’、S3B’’’が、信号発生器13BからAC信号を受け取る。
【0045】
回路の半分Aの3つのレベルからの出力が結合されてインダクタL1Aに入力される。インダクタL1Aは、インダクタL2およびキャパシタC1、C2と協働して、回路の半分Aから出力される高調波成分を除去するための2段の高調波フィルタを形成する。同様に、それぞれのレベルの回路の半分Bからの出力が組み合わされてインダクタL1Bに入力され、インダクタL1Bも、インダクタL2およびキャパシタC1、C2と協働して、回路の半分Bから出力されるAC信号から高調波成分を除去するための2段の高調波フィルタを形成する。高調波フィルタの出力に阻止キャパシタC4が接続されて、出力12に供給された信号のDC成分を除去する。
【0046】
図8は、DC入力源11のそれぞれのプラス電圧レールとマイナス電圧レールの間で直列に配置された1対のクランプダイオードD1、D2も含む。クランプダイオードD1とD2は、回路の半分のいずれかが、ノードXZを、DC入力源11のそれぞれのプラスレールおよびマイナスレールによって規定された所定のしきい値を超えて駆動しようとしたとき、協働して、DC電源11およびキャパシタC3へ戻る回路経路をもたらす。動作において、回路の半分のいずれかが、ノードXZを、DC入力源11のプラスレールよりも高い電圧へと駆動しようとしたとき、ダイオードD1がオンになって、DC入力源11およびキャパシタC3へ戻る回路経路を生成する。同様に、回路の半分A、Bのいずれかが、ノードXZの電圧を、DC入力源11のマイナスレール未満へと駆動しようとしたとき、ダイオードD2がオンになり、DC入力源11およびキャパシタC3へ戻る回路経路を生成する。
【0047】
動作において、回路の半分AとBの間の相対位相が、出力12に供給される電力を決定する。回路の半分AとBの間の相対位相が0度すなわち同相であるとき、出力12は最大電力を受け取る。反対に、それぞれの回路の半分AとB用のスイッチを駆動するAC信号間の相対位相が180度すなわち逆相であるとき、出力12は最小の電力を受け取る。
【0048】
図8の回路の特別な利点は、電圧源11のそれぞれのマイナスとプラスレールの間で直列に3つの回路を配置することにより、それぞれのレベルが、DC電源11のそれぞれのマイナスレールからプラスレールにわたる全電圧の1/3しか扱わないことである。これによって、それぞれのレベルが扱うのは、単一レベルの実装形態における全電圧ではなく、入力電圧の1/3のみであるため、約300ボルトのDC入力を有する電源向けの400?500ボルトのデバイスを利用することが可能になる。そのような400?500ボルトのデバイスは広く入手可能であり、300ボルトの入力システム向けに最適の特性をもたらす。
【0049】
図9は、保護回路を有するインバータの回路図を示す。図9の回路の電圧レールにわたって300ボルトのDC電圧が印加される。第1のキャパシタC3-1は、400ボルト(V)の能力を有する2.2マイクロファラド(μF)のキャパシタとして具現され、第2のキャパシタC3-2は、380Vの能力を有する220μFキャパシタとして具現され、これらが電圧レールの間で並列に配置されている。信号源(図示せず)によって、絶縁変圧器T3の端子に第1のAC信号が印加される。変圧器T4の入力に、信号源(図示せず)から第2のAC信号が印加される。
【0050】
変圧器T3から出力が、22オーム(Ω)の抵抗を介して、1対のスイッチS1-1、S1-2に入力される。同様に、変圧器T4から出力が、22オーム(Ω)の抵抗を介して第2のスイッチ対S2-1、S2-2に入力される。これらのスイッチはIRF740パッケージから選択されている。スイッチ対S1-1とS1-2は並列に配置されており、スイッチ対S2-1とS2-2も同様である。単一スイッチの対のデュアルスイッチのそのような並列の配置は、それぞれのスイッチの電流ハンドリング要件を軽減する。スイッチ対S1、S2からの出力が入力される10.3マイクロヘンリー(μH)のインダクタL1は、13.2μHのインダクタL2、30ナノファラッド(nF)のキャパシタC1、および10nFのキャパシタC2と協働して、スイッチS1、S2の出力から高調波を除去するための4素子の高調波フィルタをもたらす。阻止キャパシタC4は、400Vの能力を有する2.2μFのキャパシタとして具現される。
【0051】
クランプダイオードD1およびD2が、DC電源11のそれぞれのプラス電圧レールとマイナス電圧レールの間で直列に配置されている。クランプダイオードD1、D2は、好ましくはパッケージHFAT660から選択される。
【0052】
前述の回路は、一般的には限定された周波数範囲にわたって動作する。LC回路網が一般に低域通過フィルタであるため、最大電力スループットは周波数に反比例する。また、周波数が低下すると、高調波からの歪みが出現し始めるはずである。少なくとも30%の帯域幅にわたって、満足すべき動作が観測された。
【0053】
DC電圧源との間にクランプダイオードが接続され得る複数のLC回路網に給電する電圧源インバータを有する他の回路が存在する。ハーフブリッジのインバータ回路が説明されているが、フルブリッジでシングルエンドのインバータも含まれることを理解されたい。本明細書で説明されたように、これらのLC回路網の値およびクランプ点は好ましいものであって有利に選択されており、その結果、過度の循環エネルギーが電源に戻され得、過大な電流および電圧の蓄積が防止され、それによって構成要素が保護される。加えて、そのような選択は、電源インバータにおいて電流が常に誘導的に見えることを保証し得、ダイオード回復の配慮に対処する。そのような回路網には、出力、クランプ点、およびインバータトランジスタの整合を促進するため、または絶縁をもたらすために、変圧器が含まれてよい。
【0054】
さらに、電力レベルが位相関係によって制御され得るように、本明細書で説明した回路網に対して2つの電圧源インバータが接続されてよい。本明細書で説明した位相関係に加えて、非対称回路網は、より複雑な位相関係をもたらすことになる。対称回路網は、最大電力の位相および最小電力の位相が周波数に左右されないはずであるという利点をもたらす。
【0055】
本明細書で説明されたタイプの上記の位相変調回路は、可能性のある3つの設計上の問題を浮き彫りにする。
【0056】
第1に、特定の限定された条件下で、DC電力が一方のブリッジ側から他方へと循環する。これが生じたとき、それでもなおFETは誘導によってオフになる(see inductive turn off)が、全体のサイクルにわたって平均すると、FETは最終的に整流している。すなわち、より多くの電荷が、FETを通って順方向ではなく逆方向に流れる。結果的に、逆方向の電流がボディダイオードをオンにするほど十分に大きければ、トランジスタがオフになるときボディダイオードが完全には回復しないはずであり、消費電力が大きくなる。この作用は、デバイスが熱くなるとき、ボディダイオードの電圧降下の負の温度係数によって強調されることになり、熱暴走を引き起こす可能性がある。
【0057】
この第1の問題は、低周波数において、損失を容認することにより、または逆方向の絶縁ダイオードを使用することによって対処され得る。より高い周波数では、FETは、逆電流がそのチャネルによって常に処理されるように、十分に低い抵抗を有するように選択すべきである。これは、低電圧デバイスを用いると、そのオン抵抗が電圧の2.5乗に比例する一方でダイオードの電圧降下が電圧とは無関係であるため、達成するのがより容易である。
【0058】
第2に、LC回路網が小さい位相において共振状態になり、出力の振幅が、したがって順方向電力が、比較的大きくなるまでクランプされないとき、高利得の条件が存在する。この状態は、デバイスを損なうことにはならないが、制御の精度に影響を及ぼすはずである。
【0059】
この第2の問題は、非常に正確で安定した位相コントローラまたは変調器の設計を利用することにより、または出力回路網に抵抗を挿入してQを低下させ、位相特性を拡大することによって対処され得る。50オームの電力の1%または2%しか必要としない抵抗を利用すれば十分と思われる。この問題が出現するのは、純粋な無効負荷といったいささか人為的な条件の間に生じ得ることなど、負荷において消費される実電力がない場合のみである。一般に、プラズマチャンバ、ケーブル、および整合回路が、Qを十分に低下させるはずである。
【0060】
第3に、この位相対電力の制御特性は、様々な劣った整合条件下の屈曲または変化を示すことがある。たとえば、位相がゼロから最大値へスムーズに変化するとき、電力は、ゼロから増加してわずかに減少し、次いで増加し続ける。これは、非線形なプラズマのインピーダンス/電力の関数に関連して振動を引き起こす可能性がある。
【0061】
この問題は性質上理論的なものであり、現実的ではないであろう。制御アルゴリズムは、3:1の電圧定在波比(VSWR)よりも優れた整合において通常は消滅する屈曲をジャンプするだけでよい。また、電力制御特性は、無限のVSWR円の少なくとも半分については屈曲がなく、そのため、ケーブル長さ、パイ回路網などを利用して、VSWR円のどこかに負荷を配置することができる。実際上、図6の回路は、屈曲がそれほど顕著でなく、一般的には実際上到達し得ない最大電力の近くで生じるという点で、図4よりも優れている。
【0062】
本明細書で説明された回路は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を利用するものである。MOSFETは、対象になり得る(of likely interest)、1メガヘルツ(MHz)よりも高い周波数においてバイポーラ接合トランジスタ(BJT)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)よりも一般に優れている。
【0063】
図10?図12は、MOSFET、BJT、またはIGBTのトランジスタのうちの1つを使用して上記回路のスイッチを実施するための構成を表すものである。図10は、前述の回路において使用されるようなMOSFETを示す。MOSFETは、MOSFETの設計において本質的な阻止ダイオードを含む。図11は、BJT 20および逆並列ダイオード22を示す。前述の回路では、BJT 20を使用してスイッチを実施するとき、クランプダイオードD1、D2がアクティブになったとき回路経路をもたらすために、逆並列ダイオード22が含まれていなければならない。
【0064】
同様に、図12は、本明細書で開示されたスイッチを実施するとき、およびIGBTを利用するときに好ましい構成を示すものである。図12は、IGBT 24と、図11の逆並列ダイオード22と類似の機能をもたらす逆並列ダイオード26とを示す。適切なスイッチングおよび回路経路の機能をもたらす他のスイッチングデバイスまたは回路の組合せも、MOSFETの代わりに使用され得ることに留意されたい。
【0065】
図13?図15は、D1、D2に関して説明された代替のダイオードクランプ回路を表すものである。図13は、ダイオードD1、D2およびキャパシタC1を含むダイオードクランプ回路を表す。この回路は上記で説明されている。図14および図15は、ダイオードD1、D2およびキャパシタC1の代替構成を使用している実装形態を示す。それぞれの回路において、キャパシタC1は、図14に示されるように、それぞれのダイオードにわたって配置された半分の値の同じキャパシタを2つ利用して実施されてよい。同一のキャパシタC1/2は、デカップリングキャパシタC3(図14には示されていない)によって効果的に並列結合されている。デカップリングキャパシタC3は、動作周波数に対して容量が大きく、そのインピーダンスが無視され得ることにより、回路の物理的配置および構成要素の電力共有を支援する。
【0066】
図15に示されるように、より高い周波数において、それぞれのダイオードD1、D2について2つのダイオードを直列に使用するのが有利であり得る。一般により低い電圧のダイオードは、より小さい逆回復電荷を有する。2つのダイオードを直列にすると、各ダイオードを通って同一の電荷が流れる。各ダイオードにわたってC1を分割すると、AC電圧の等しい共有が保証される。
【0067】
図16に示されるように、クランプ回路のさらなる変形形態では、インダクタL6が、クランプダイオードD1、D2とフィルタリングキャパシタC1の接合の間に、L1と直列に配置されている。インダクタL6は、好ましくは小さい値である。これは、ダイオードのオン/オフの切換えを和らげることができ、整流効率を向上させる。ダイオードD1、D2がオフになるときの高周波リンギングを減衰させるために、キャパシタC7および抵抗R1によって形成されたスナバ回路が必要とされることがある。これも、正確に選択すれば、2つの並列のブリッジ回路間の位相角度が小さいときなど、LC回路網が低出力において共振状態になる場合のQが大きい状況を軽減するのに寄与するはずである。
【0068】
上記で論じたように、LCフィルタ回路網が小さい位相において共振状態になり、振幅の位相が増加し、したがって順方向電力の位相が増加するまで、クランプされない場合に存在する高い利得状態の結果として、電力の制御精度が損なわれる可能性がある。これは、非常に正確で安定した位相変調器の設計、または、Qを低下させ、かつ位相特性を拡大するのに十分な値を有する抵抗を出力網に接続することによって対処され得る。50オームの電力の約1?2%を消費すれば、この問題に対処するのに十分であると思われる。一般的には、これが生じるのは、テスト条件における純理論的な無効負荷といったいくぶん人為的な条件下など、負荷において消費される電力が小さい場合のみである。実際上、ケーブル、整合回路、および負荷が、十分にQを低下させるはずである。位相シフトが大きければ、クランプダイオードが共振を防止する。
【0069】
あるいは、Qは、位相が小さいときに限ってクランプ点に抵抗を挿入する(switching in)ことによって選択的に低下されてよい。これは、値が小さいときオンになるように設定された(set to come on for low values)、位相変調器の要求に応じるコンパレータを使用して達成され得る。次いで、コンパレータは、電力需要が小さいときなど位相差が比較的小さいときに作動されるMOSFETスイッチの形をとり得るリレーを駆動することができる。図17は、クランプ点において抵抗を選択的に挿入するための回路を示す。図17に示されるように、電圧振幅がクランプダイオードによって制限され、しかもMOSFETが両方向に導通するので、MOSFET SRが有利に使用され得る。バイアス抵抗器R3、R4が、電圧振幅をSRの範囲内に集中させることができる。R2は十分な減衰をもたらすように選択されており、C8はDC成分がR2およびMOSFET SRを流れるのを阻止する。SRに対する入力は、一般的には制御回路によって供給される。C8から出力は、ダイオードD1とD2の相互接続に接続される。
【0070】
動作周波数が増加すると、一般的にはスイッチを実施しているFETのキャパシタンスが、回路の動作に対してより有効な効果を有する。図18はハーフブリッジ回路への拡張を示す。
【0071】
図18において、キャパシタC3(図示せず)に対して並列にキャパシタC5が配置されている。キャパシタC5とスイッチS1、S2の出力の間の相互接続の間にインダクタL3が挿入されている。インダクタL3は、FET S1、S2の出力およびミラーキャパシタンスを充放電するのに十分な誘導電流が常に流れることを保証する。インダクタL3は、出力およびクランプ回路網が容量性負荷の電流が流れることを許す場合、その電流が誘導性に見えることも保証する。
【0072】
上記で論じたように、特定の状況下で、一方のブリッジ側からもう一方の側へDC電力が循環することがある。その結果、FET S1、S2が誘導でオフになっていても(still see inductive turn off)、全体のサイクルにわたって平均すると、FET S1、S2は最終的に整流している。すなわち、より多くの電荷が順方向ではなく逆方向に流れる。結果的に、電流が、FETに含まれるボディダイオードを逆転させてオンにするほど十分に大きければ、FETのトランジスタがオフになるとき、FETスイッチが完全には回復されず、電力消費が大きくなるはずである。これは、FETデバイスが熱くなるとき、ボディダイオードの電圧降下の負の温度係数によって強調されることになり、熱暴走を引き起こす可能性がある。
【0073】
これも上記で論じたように、低周波数において、この状況は、損失を容認すること、または逆方向の絶縁ダイオード(reverse isolation diodes)を使用することによって対処され得る。より高い周波数では、FETは、逆電流がそのFETチャネルによって常に処理されるように、十分に低いオン抵抗を有するように選択すべきである。これは、低電圧デバイスを用いると、そのオン抵抗が電圧の2.5乗に比例する一方でダイオードの電圧降下が電圧とは無関係であるため、達成するのがより容易である。
【0074】
図19に示されるように、S1-1、S1-2とS2-1、S2-2との2組の低電圧FETが直列に接続されてよい。これらのFETは、一般的には、並列の2つのFETデバイスと比較して、オン抵抗が1/4であり、それぞれの電圧降下が1/2になるはずである。したがって、ダイオード構成に関するしきい値電流は2倍になる。図19において、それぞれのスイッチS1-1、S1-2、S2-1、S2-2と並列に各キャパシタC6が配置され得る。等しい電圧の共有を保証するばかりでなく、有効なデバイスキャパシタンスを増すためにキャパシタC6が必要とされることがある。等しい電圧を共有し、アンバランス電流のみを通すことが、キャパシタC7によってさらに促進される。この構成において、高速回復エピタキシアルダイオードFET(FREDFET)スイッチには、逆方向の回復充電が低減されるという利点がある。
【0075】
図20は、図18の回路に対するさらに別の改善を示すものである。キャパシタC5のそれぞれに対して2つのクランプダイオードDI1、DI2が並列に挿入されている。ダイオードDI1、DI2は、接合における電流または電圧を電源へ戻すために整流するように選択されている。これは、図18におけるような誘導電流を循環させて、FET S1、S2の電荷を蓄える性質の方向を変え、また、FET S1、S2からのDC成分を吸収して、これを電源レールに戻す。これは、一方のブリッジから他方のブリッジへ流れるあらゆるDCを扱うことができ、FETボディダイオードの回復の問題にも対処することができる。キャパシタC5およびダイオードDI1、DI2は、主要なクランプ機構と同様に直列および並列の結合に構成され得るが、一般的には、必要とされる電力処理能力はより小さいものでよい。可変周波数の動作が望まれる場合、図20の回路には、ダイオードDI1、DI2が常に導通するようにL3およびC5が選択されている限り、ターンオフ電流が周波数と無関係にほぼ同一のままであるというさらなる利点がある。
【0076】
図21に示されている、図20の回路に対する改善は、インダクタL5およびキャパシタC5を含んでいる追加のLC直列回路を含む。共振周波数が電源の1次周波数とその3次高調波の間にあるように、インダクタL5およびキャパシタC5の値を適切に選択することにより、インダクタL3を通る電流が周波数とともに増加し、DC電流がほぼ一定に保たれる。
【0077】
マイナスレールおよびプラスレールにより、不整合効果に応答し、電圧および/または電流をインバータにフィードバックすることを可能にする所定のポイントにクランプするための好都合な基準電圧が与えられるが、クランプダイオードを、何らかの他の所定の電圧源にわたってクランプが生じるように接続することも可能である。回路が時々過剰な電圧および電流を消費しなければならないので、代替電圧源の参照は、好ましくは定電圧シンクを参照することを含む。
【0078】
図22は、マイナス電圧レールおよびプラス電圧レール以外の電圧を参照する回路を説明するものである。ツェナーダイオードZ1がクランプ用の高い基準電圧を設定し、ツェナーダイオードZ2がクランプ用の低い基準電圧を設定するように、インダクタL1とインバータスイッチS1、S2の間に阻止キャパシタC4が挿入されている。ツェナーダイオードZ1とZ2が、ポイントAとBの間で、アノードどうしで直列に接続されており、その結果、一方は、ポイントXの電圧がプラスに駆動されると導通して加熱することによってエネルギーを消費し、他方は、ポイントXにおける電圧がマイナスに駆動されると導通してエネルギーを消費することになる。一方のダイオードが整流器モードで動作するとき、他方のデバイスはツェナーモードで動作する。
【0079】
実際上、ツェナーダイオードZ1、Z2は、高速ではうまく切り換わらない。この状況は、ツェナーダイオードD1、D2の代わりに図23の構成を代用することによって補償され得る。図23では、ツェナーダイオードZ1が普通のダイオードDZ1とカソードどうしで直列に接続され、ツェナーダイオードZ2が普通のダイオードDZ2とアノードどうしで直列に接続されている。次いで、これらのツェナーダイオードと普通のダイオードの直列接続が並列に配置される。この構成では、ツェナーダイオードZ1、Z2は整流モードで動作する必要はない。
【0080】
現在、特に大きい電力定格のツェナーダイオードは入手可能ではないというさらなる問題がある。現在、ツェナーダイオードの最大電力定格は約70Wである。さらに、比較的大きい電力定格のツェナーダイオードは、一般的には高価である。しかしながら、トランジスタは、非常に大きい電力定格において比較的低コストであり、容易に入手可能である。ツェナーの制限を克服するためのやり方の1つには、図24に示されるものなどのアクティブなツェナー回路を使用するものがある。図24において、ツェナーダイオードZAは、主として、ツェナーダイオードZAよりも約100倍大きい電力レベルを消費するように構成されたトランジスタTAをオンにするように機能する。トランジスタTAの消費電力は、アクティブなツェナー回路の利得の関数である。
【0081】
図24を参照して、ダイオードZAがツェナーモードのとき、以下の式が当てはまる。
V=V_(2)+V_(BE)、ここでV_(BE)≒0.6vであり、
I=I_(2)+I_(Q)、ここでI_(Q)≒HFE×I_(2)、HFE≒100であって、
その結果、I_(Q)>>I_(2)、かつP_(Q)>>P_(2)である。
【0082】
上記の式から理解されるように、トランジスタTAを通る電流は、ツェナーダイオードZAを通る電流よりもはるかに大きく、トランジスタTAによって消費される電力はツェナーダイオードZAによって消費される電力よりもはるかに大きい。
【0083】
図25は、インバータのマイナスレールおよびプラスレール以外の電圧基準を設定するための代替機構を表すものである。具体的には、図25は、ダイオードDB1A、DB2A、DB1B、DB2Bを備えるダイオードブリッジを示す。ダイオードブリッジの半分にわたってツェナーダイオードZBが接続されている。したがって、マイナスの波形でもプラスの波形でも、電圧がしきい値電圧を超えたとき、ツェナーダイオードZBはツェナーモードになる。図26が表すダイオードブリッジ機構は図25のものに類似であるが、図24に類似のトランジスタTAおよびツェナーダイオードZAの機構を含むことにより、消費電力が増加する。
【0084】
図24?図26のダイオードブリッジ回路はいくつかの利点をもたらす。第1に、必要なツェナーダイオードは2つではなく1つだけであるため、設計はコストが下がる。第2に、2つのツェナーダイオードの機構を使用して得られる一貫しないクランプ電圧ではなく、ツェナーダイオードを1つだけ使用して、一貫したクランプ電圧を得ることができる。第3に、普通のダイオードは、ツェナーダイオードよりも、一致させるのが容易である。
【0085】
図27は、保護回路を有する電源の例示的回路の実装形態に関して測定された波形を示すものである。DC300Vの入力について、整合状態と不整合状態の下で、動作波形および電力レベルを記録した。負荷インピーダンスは50オームにおいて整合され、また、不整合の負荷インピーダンスは、開回路、短絡、ならびに誘導性無効と容量性無効の両方の12、25、50、100および200オームを使用した。図27a?図27mを参照すると、それぞれの図が、1?4と分類された4つの波形を含んでいる。波形1は、インダクタL1の出力、入力など、MOSFETのドレイン電圧を一目盛につき200ボルトで示す。波形2は、L1を通る電流を一目盛につき10アンペアで示す。波形3は、クランプ電圧すなわちダイオードD1とD2の間のノードにおける電圧であり、一目盛につき約200ボルトである。波形4は、クランプダイオードの電流であり、一目盛につき10アンペアである。これらの規定は、図27および図28の出力波形のそれぞれに当てはまるものである。選択された値は、最悪の動作条件が見いだされることを保証するのに十分な無限のVSWRにおける12の個別のポイントを与える。下記の表は主要なパラメータのリストである。
【0086】
【表1】

【0087】
負荷が開回路から短絡へと誘導的に回転し、次いで再び容量的に回転して戻るとき、FET電流は誘導性に保たれ、50オームの値よりも40%弱だけ大きい。DC電流の消費量は、50オームの値の1/6でしかない。クランプダイオードD1、D2は、50オームの負荷に対してわずかに導通するように見られるが、回路網をわずかに再調整することによって解消され得るはずである。しかしながら、これは、効率または有効な保護にとって重要なことではない。
【0088】
対比として、図28は、クランプ回路なしで実施された375KHzのハーフブリッジインバータの出力波形を表すものである。試験中、試験デバイスは、デバイスの破壊を防止するように手動で供給電圧を低減することによって保護された。下記の表は主要なパラメータのリストである。このとき、保護は、供給電圧を低減することによって達成されている。
【0089】
【表2】

【0090】
誘導負荷インピーダンスが低減されるにつれてFET電流がより大きくなる。12オームにおいて電源が300Vに維持されると、順方向電力は50オームの値よりも大きく750Wに達することになる。短絡のとき、L1が回路網の残りと共振して、わずか42Vから750Wが生成される。300Vにおいて、順方向RF電力は約38kWになり、DC電力は4.6kWになり、ピークトランジスタ電流は100Aになるはずである。
【0091】
負荷が容量的にスイングしてインピーダンスが上昇し始めるとき、FETには容量性負荷がかかる。この状況は、電流が依然として適度であってもFETが大きいダイオード回復損失を被るので、共振前に見られた大きい誘導電流よりも問題になる可能性がある。さらに、整流のdv/dtの障害(commutating dv/dt failure)のリスクもある。最後の3つのグラフでは、明瞭さのためにスケールが変更されていることに留意されたい。
【0092】
図29は発電機用の制御回路を表すものである。制御回路20は、入力電圧を受け取るフィルタのソフトスタート整流器22を含む。整流器22は、過電圧保護用の回路ブレーカを含み得る。補助の電力感知ユニット(PSU)24は、制御回路に給電するためのより低い電圧信号を生成する。冷却ファン26は、発電機回路を冷却する。
【0093】
フィルタのソフトスタート整流器22からの出力を印加される任意選択のDCスイッチ28が、複数の電力増幅器30a、30b、30c、30dに対するDC電圧の印加を制御する。電力の全体を扱うための1つの増幅器を必要とするのではなく、電力処理を4つの増幅器の間で分割するために、4つの電力増幅器30a?30dが並列で使用されている。あるいは、電力増幅器30a?30dの機能を1つまたは多数の電力増幅器が実行してもよい。駆動回路32は、それぞれの電力増幅器30a?30dのそれぞれスイッチングを制御するためのスイッチング信号を生成する。
【0094】
電力増幅器30a?30dからの出力を入力される結合および絶縁の変圧器34は、電力増幅器30a?30dからの出力のそれぞれを1つの信号へと結合する。結合回路34は、電力増幅器を出力から絶縁するための絶縁変圧器を含み得る。結合および絶縁の変圧器34は、結合された信号を、電力信号をフィルタリングしてから出力を生成するフィルタおよび電力感知の回路36に出力する。回路36の電力感知部分は、フィードバック信号を供給して位相変調器の保護回路38を制御する。
【0095】
位相制御変調器回路(Control phase modulator circuit)38は、アナログまたはデジタルの電子回路を使用して実施されてよい。回路38は、DCスイッチ28、駆動回路32、およびフロントパネル制御回路40のそれぞれに対して制御信号を出力する。それぞれの電力増幅器30a?30dの内部でスイッチングの位相を変化させることにより、対応して出力電力が変化され得る。したがって、位相制御変調器回路38は、フィルタおよび電力感知の回路36からの入力に従って電力増幅器の位相を変化させる。フロントパネル制御回路40は、オペレータに情報を提供し、所望の位相変化および結果としての出力電力の変化も可能にする。
【0096】
図30は、本明細書で説明された選択される電源が、システムにおいてプラズマチャンバを制御するために使用され得る制御システムを表すものである。制御システム50は、集積回路を製作するために使用され得るものなどのプラズマチャンバ52を含む。プラズマチャンバ52は、1つまたは複数のガス入口54と、1つまたは複数のガス出口56とを含む。ガスの入口54および出口56により、プラズマチャンバ52の内部に対するガスの導入および排出が可能になる。プラズマチャンバ52の内部の温度は、プラズマチャンバ52に印加される熱制御信号58によって制御され得る。プラズマコントローラ60がプラズマチャンバから受け取る入力には、チャンバ内の真空のレベルを示す真空信号62と、電圧信号64と、入口のガス流量と出口のガス流量の間の比を示す信号66とが含まれる。当業者なら認識するように、プラズマコントローラ60は、他の入力も受け取ってよく、他の出力も生成してよい。プラズマコントローラ60は、電圧発生器68によってプラズマチャンバに印加されるべき所望の入力電力を割り出す。電圧発生器68は、プラズマコントローラ60から入力信号を受け取るマイクロプロセッサ70または他の類似のコントローラを含む。マイクロプロセッサ70は、所望の周波数および電力定格の電圧信号を出力する電源72に対して制御信号を生成する。電源72からの電圧出力は、電源72とプラズマチャンバ52の間のインピーダンスを整合させる整合回路74に入力される。
【0097】
図31は、図30の整合回路70向けに実施され得るものなどの整合回路80を表すものである。整合回路80は、望ましくは負荷82によって与えられる出力インピーダンスを用いて50オームの入力インピーダンスと整合する。整合回路80は、第1の可変キャパシタ84、第2の可変キャパシタ86、およびインダクタ88を含む、πフィルタのトポロジーに構成されている。キャパシタ84、86は可変キャパシタとして実施されており、その結果、フィルタ回路網のキャパシタンスは、50オームの入力と負荷82の間のインピーダンスを整合させるように適切に変化され得る。コントローラ88は、整合したインピーダンスに従って変化するフィードバック信号を受け取って、それぞれのキャパシタ84、86のキャパシタンスを変化させる制御信号を生成する。当業者なら、変圧器または固定回路網などの他の整合回路の構成も実施され得ることを理解するであろう。
【0098】
図32を参照して、図32は、シングルエンド増幅器、より詳細にはE級増幅器を表すものである。本明細書において使用される類似の参照数字は、類似の動作を遂行する構成装置を参照することに留意されたい。図32が表すスイッチすなわちトランジスタS1は、DC電源11の1対の電圧レールV+とV-の間のインダクタL3に対して直列に配置されている。スイッチS1は、信号源すなわち発生器13から制御信号を受け取る。スイッチS1に対して並列に配置されているキャパシタC6は、インダクタL3とともに並列共振回路を形成する。スイッチS1と、インダクタL3と、キャパシタC6とが組み合わされて、シングルエンド増幅器を形成するように協働する。増幅器の出力において、インダクタL1とクランプダイオードD1は、協働して誘導クランプ回路を形成する。誘導クランプ回路が、スイッチS1の出力と負荷90の間に置かれており、図1?図31を参照しながら上記で説明されたものと同様に動作する。インダクタL1とキャパシタC4は、スイッチS1の出力における高調波フィルタを連携して形成し、フィルタリングされた信号を負荷90に供給する。
【0099】
クランプダイオードD1が、マイナスレールV-とノードXの間に置かれている。クランプダイオードD1のアノードはマイナス電圧レールV-に接続されており、カソードはノードXに接続されている。図32の回路が所定のしきい値を超えてノードXを駆動しようとすると、ダイオードD1がオンになることにより、ノードXの電圧を一般的には2V(Vはレール電圧)ボルトの所定値にクランプする。
【0100】
構成の1つでは、キャパシタC6、インダクタL1、およびキャパシタC4の値は、負荷が適切に整合している場合にはダイオードD1が導通しないように選択される。そのような値を選択すると、望ましくない高調波の生成が低減する。しかしながら、代替構成では、高調波の存在が許容できると考えられる場合には、負荷が整合していてもダイオードD1が導通するように、これらの値が選択されてよい。
【0101】
図32のダイオードD1は、インダクタL1とキャパシタC4の接合と、グランドとの間に、いくらかの寄生キャパシタンスを導入する。このキャパシタンスが過大になると、負荷90に対する電力供給が損なわれる可能性がある。しかしながら、図32の回路にわずかな修正を施すと、クランプダイオードD1の寄生キャパシタンスを有利に利用することができる。
【0102】
図33を参照して、ダイオードD1と並列にキャパシタC1が配置され、キャパシタC4の機能がわずかに変更される。この修正により、図33のキャパシタC1は、図32のキャパシタC4の機能を遂行する。このとき、図33のキャパシタC4はDC阻止キャパシタンスとなり、結果的に、比較的大きいキャパシタンス値を有するべきである。図33の回路には、インダクタL1とキャパシタC1の共振周波数が増幅器の動作周波数になり得るというさらなる利益がある。この構成において、インダクタL1とキャパシタC1が協働して、スイッチS1の出力における高調波フィルタを形成する。図32に関して説明されたように、図33のクランプダイオードD1は、マイナス電圧レールV-とノードXの間を相互に接続する。図33の回路がノードXを所定のしきい値未満に駆動しようとすると、ダイオードD1がオンになることにより、ノードXの電圧を一般的には2Vボルトの所定値にクランプする。
【0103】
図34?図36は、図33の回路の動作を説明する波形を表すものである。図34は図33のノードAにおける予期された波形を表し、図35は図33のノードXにおける予期された波形を表す。見られるように、ノードAにおける予期された波形は半波整流された正弦波である。インダクタL3を通るDC電流が一定であれば、ノードAにおけるピーク電圧はDCレール電圧のπ倍(π×V)になる。好ましくは、インダクタL1およびキャパシタC1の値は、負荷が整合するときダイオードD1のカソード(ノードX)の電圧がグランドに近づくように選択される。ノードAにおける電圧波形の基本成分がπ×V/2であるので、インダクタL1とキャパシタC2の特性インピーダンスは整合負荷インピーダンスのπ/2倍である。この関係は、図34および図35の波形に表されている。動作において、ノードAに現れる波形には、かなりの2次(偶数)高調波成分が含まれている(is embedded)。この2次高調波成分のうちのいくらかは、ノードXの波形に現れる(is passed onto)。図36の波形は、シミュレーションによって割り出されたノードAおよびノードXにおける電圧を表すものである。
【0104】
図37は、図36のシミュレーション波形に関して論じられたようなE級増幅器によって出力される偶数高調波に対処するための構成を表すものである。具体的には、図37は、図33に表されるようにプッシュプル構成に配置された1対のE級増幅器を表す。類似の参照数字は類似の構成要素を指し、そのような参照数字は、並列配置のそれぞれの半分に関連した構成要素を指すためにAまたはBなどの付加的な接尾部表記を含み得ることに再び留意されたい。
【0105】
図37は、負荷90にAC信号を供給するように並列に結合された回路の半分AとBを有する回路を表すものである。それぞれの回路の半分AおよびBが、一般に、図34に関して上記で説明されたようにE級増幅器の構成を含む。変圧器T2は、それぞれの回路の半分からの出力を負荷90に印加するために結合するように、キャパシタC4の出力において、それぞれの半分AとBを接合する。スイッチS1AとS1Bは、位相コントローラ14が信号発生器13A、13Bに対して出力した信号に従って、互いに180度の逆相で駆動される。それぞれのキャパシタC4AおよびC4Bからの出力は、変圧器T2によって結合される。好ましくは、変圧器T2は、それぞれの回路の半分の最大の結合を可能にする。そのような最大の結合は、ダイオードD1AおよびD1Bのそれぞれのカソード(マイナス端子)におけるピーク電圧の制御を可能にし、その結果、それぞれの電圧がDCレール電圧の2倍にクランプされる。
【0106】
好ましくは、変圧器T2によってもたらされる結合は、回路の半分の両方、結果的に両方の増幅器の、バランスのとれた装荷を保証する。図37の整合負荷90は、一般的には、2つの増幅器のうちの1つだけの整合インピーダンスの1/2のインピーダンスである。設計者は、一般的には、より低い出力インピーダンスよりも高い出力インピーダンスを好む。整合負荷インピーダンスを4倍に増加するために、図37の回路に任意選択の平衡不平衡変成器が追加されてよい。
【0107】
図38は、より高い出力インピーダンスをもたらすための、図37に対する修正を表すものである。図38を参照して、図38は図37と同様に構成されており、それぞれの回路の半分の出力には追加の変圧器T3が配置されている。したがって、図38の変圧器T2には、磁化電流、偶数次高調波電流、およびダイオード電流が印加される。図38の変圧器T2は、負荷電流を受け取らない。したがって、図38の変圧器T2は、図37の変圧器T2よりもかなり小さくパッケージ化され得る。さらに、図38の回路は変圧器T2なしでも動作することができるが、変圧器T2はダイオードD1AおよびD1Bにわたるピーク電圧を最小化する。
【0108】
データを送信するために周波数変調または位相変調が利用されるとき、設計者は、一般的にはE級増幅器の構成を選択する。他方では、振幅変調は、増幅器入力が一定のままでなければならないので、E級増幅器に対して特定の障害を提起する。振幅変調および出力電力制御を実施するためのやり方の1つには、DCレール電圧を変化させるものがある。DCレール電圧を変化させるやり方は、あらゆる増幅器に対して有効であるが、本明細書で説明された誘導性クランプにより、別の制御方法を実施することが可能になる。
【0109】
本明細書で説明されたような誘導性クランプを内蔵する増幅器は、スイッチの被害なしで、事実上あらゆる負荷に対して動作することができる。したがって、これらの増幅器の2つ以上を、並列および/または直列のプッシュプル構成に結合することが可能である。次いで、出力電力は、増幅器間の位相差を変化させることによって制御され得る。
【0110】
図39は、並列に配置された1対のE級増幅器を表す。図39の構成は、特に最大電力を供給することを対象とするものである。図37および図38に関して、最大の出力電力を達成するために、スイッチS1AとS1Bは180度の逆相で動作する。図37および図38において、出力電力を最小にするためには、スイッチS1AとS1Bは同相で動作する。図39の設計を用いて、しかしながら、スイッチS1’とS1’’が同相で動作するとき最大の出力電力が達成され、S1’とS1’’が180度の逆相で動作するとき最小電力が達成される。
【0111】
図40は、シングルエンド増幅器の並列プッシュプル式の実装形態を表すものである。具体的には、第1の対の増幅器はプッシュプル構成の第1の半分を示す。増幅器は、1対の電圧レールの間に、トランジスタS1A’およびS2A’’と直列のインダクタL3A’およびL3A’’を備える。それぞれのスイッチS1A’およびS2A’’が、それぞれのキャパシタC6A’およびC6A’’と並列である。インダクタL1A’、L1A’’が、それぞれのスイッチS1AおよびS2A’’の出力に配置されており、第1の端子においてフィルタキャパシタC1Aに加えられている。C1Aのもう一方の端子はグランドに接続されている。クランプダイオードD1AがキャパシタC1Aと並列に配置されており、阻止キャパシタC4Aが負荷90と直列に配置されており、阻止キャパシタC4Aと負荷90を結合したものがダイオードD1Aと並列である。プッシュプル構成の第2の半分も同様に構成される。プッシュプル構成のそれぞれの半分がトランジスタT2によって結合されており、トランジスタT2は、図37および図38に関して上記で説明されたように動作する。
【0112】
位相コントローラ14は、信号発生器13A’、13A’’、13B’、および13B’’のそれぞれに対して出力信号を生成する。好ましくは、位相コントローラ14は、プッシュプル構成のそれぞれの半分A、Bを180度の逆相で動作させる。位相コントローラ14は、それぞれの半分の内部で、信号発生器13A’、13A’’、13B’、および13B’’に送られる制御信号を変化させることができる。信号発生器13A’と13A’’が同相で動作するとき、プッシュプル構成の回路の半分Aは最大電力を出力し、信号発生器13A’と13A’’が逆相で動作するとき、回路の半分Aは電力を出力しない。制御信号発生器13B’および13B’’も同様に動作する。図40の回路は、単一の反転した構成の出力から偶数次の高調波を除去するように動作する。
【0113】
図41は図39の回路を表すものであるが、負荷90と並列に追加のインダクタL4を含むように変更されている。この構成は、所望の負荷インピーダンスが電力増幅器の出力インピーダンスよりも高いとき役に立つ。この構成は、偶数次の高調波を除去するのをさらに支援する。図41の構成は、誘導性フィルタL4の追加を伴って、図39に関して説明されたようにゆっくりと動作する。
【0114】
負荷90は、無効成分を含んでいるとき、特別な問題を提起する。位相シフト制御を使用するとき、スイッチS1’またはS1”のうちの1つにマイナスの実インピーダンスがかかる可能性がある。回路が、DCレールによって配達されたエネルギーをスイッチS1’またはS2”を介してDCレールに返そうとしたとき、マイナスの実インピーダンスが生じる。そのような状況は、組込みボディダイオードの内部の逆回復状況によってスイッチが被害を受ける可能性がある。この問題は、より高速のボディダイオードを有するMOSFETを使用すること、またはMOSFETにわたって低い順方向電圧降下を与えるショットキー整流器などの高速ダイオードを使用することによって補正され得る。
【0115】
図33に示されるE級増幅器の特定の構成要素の値に関して、ダイオードD1は、一般に、かろうじて活性化されるが、負荷90が適切に整合しているときには導通しないのが望ましい。キャパシタC4は、DC阻止キャパシタであり、その無効インピーダンスは負荷90のインピーダンスよりもはるかに小さいものであるべきである。スイッチS1の破壊電圧は、プラスDCレール電圧V+の値の少なくとも5倍である。キャパシタC6の破壊電圧は、DCレール電圧V+の値の少なくとも35倍である。インダクタL1とL2は等しいインダクタンスを有し、キャパシタC6とC1も同様に等しいキャパシタンス値を有する。負荷90に送られる電力Pは以下の式(1)で定義され、
【0116】
【数1】

【0117】
ここで、
Vはレール11に印加される電圧であり、
Rは負荷90のインピーダンスである。
C6およびC1のキャパシタンスCは以下の式(2)で定義され、
【0118】
【数2】

【0119】
ここで、
F_(op)は増幅器の動作周波数であり、
Rは負荷90のインピーダンスである。
インダクタL1およびL3のインダクタンスLは以下の式(3)で定義され、
【0120】
【数3】

【0121】
ここで、
F_(op)はE級増幅器の動作周波数であり、
Rは負荷90のインピーダンスである。
【0122】
インダクタL1とL3のインダクタンス値は等しくなくてよく、C6とC6のキャパシタンス値は等しくなくてよい。さらに、インダクタL3およびキャパシタC6は、図36に示されるVdsの電圧波形を変化させるように調整されてよい。たとえば、ピーク電圧が低減され得、図36の偽の(fake)波形の対称性は、インダクタL1およびキャパシタC1の値を調整することによって改善され得る。しかしながら、そのような調整は、ZVSスイッチングに悪影響を与える恐れがある。
【0123】
図1?図31に関して論じられた回路の変更および置換は、適切な場合には図32?図41において同様に実施され得ることが当業者には理解されよう。
【0124】
以下の図42?図44および図48?図49に示される電源回路および/または1つまたは複数の部分が、図3?図9、図22、図29?図30、図32?図33および図37?図41に示される回路の1つまたは複数の部分に適用され得る。たとえば、図42?図44の電源回路のそれぞれが、図3?図4の回路のすべてまたは一部分に適用可能であり得る。別の例として、図42?図44の電源回路は、信号源13A、13Bおよび位相コントローラ14を除く図4の回路のすべてまたは一部分に適用可能であり得る。信号源13A、13Bおよび位相コントローラ14は、図42?図44の電力増幅器のスイッチに制御信号(または駆動信号)を供給するように変更されてよく、かつ/または接続されてよい。以下の図には電位V+、V-が示されている。電位は、以下でV+、V-として識別される。
【0125】
以下の図では、回路要素に対してC1、C2、C3、L1、T1、W1、W2、W3などの回路要素識別子が与えられている。別々の図の同一識別子を有する回路要素は、同一の構成で同一の値を有してよく、異なる構成で異なる値を有してもよい。たとえば、図42のキャパシタンスC2は、図43のキャパシタンスC2と同一のキャパシタンスも異なるキャパシタンスも有し得る。
【0126】
また、以下の図において、複数の整流器およびクランプ回路が開示される。整流器とクランプ回路は交換可能である。たとえば、図42の整流器およびクランプ回路が図44の整流器およびクランプ回路で置換されてよく、図44の整流器およびクランプ回路が図42の整流器およびクランプ回路で置換されてよい。別の例として、図42の整流器およびクランプ回路が、図47および/または図48の整流器およびクランプ回路を置換し得る。
【0127】
図42は電源回路を示す。電源回路は、電力増幅器、キャパシタンスC2、インダクタンスL1、変圧器T1、キャパシタンスC3および出力フィルタを含む。電力増幅器は第1の電源に接続されており、V+およびV-として識別される電位を有する端子にわたる直流(DC)電圧を受け取る(以後、端子は端子V+、V-と称される)。電力増幅器は制御モジュールにも接続されており、制御モジュールから1つまたは複数の制御信号(または駆動信号)を受け取る。駆動信号は、示されるような正弦波の信号でよく、矩形波の信号でよく、または電力増幅器のスイッチの状態を制御するのに使用されるデジタル信号でもよい。スイッチの例が図43に示されている。
【0128】
電力増幅器に含まれる2つの出力は、交流(AC)出力信号を出力する。第1の出力はキャパシタンスC2に接続される。キャパシタンスC2はDC阻止キャパシタンスである。キャパシタンスC2と、インダクタンスL1と、変圧器T1の1次巻線とが直列に接続されている。キャパシタンスC2およびインダクタンスL1は、(i)電力増幅器の第1の出力と、(ii)変圧器T1の1次巻線W1の第1の終端との間に接続されている。1次巻線W1の第2の終端は、電力増幅器の第2の出力に接続されている。
【0129】
変圧器は、1次巻線W1、2次巻線W2、および補助巻線(または第3の巻線)W3を含む。2次巻線W2の第1の終端は、出力端子(または接合端子)、キャパシタンスC3、および出力フィルタの入力に接続されている。2次巻線の第2の終端はグランド基準端子に接続されている。キャパシタンスC3はフィルタとして動作し、出力端子に接続されており、(i)2次巻線W2の第1の終端とグランド基準端子の間、および(ii)出力フィルタとグランド基準端子の間に接続されている。出力フィルタの出力は負荷(たとえば前述の負荷のうちの1つ)に供給される。フィルタの入力は出力端子に接続されている。出力フィルタの出力インピーダンスは、負荷の入力インピーダンスと整合し得る。
【0130】
補助巻線W3は、整流器およびクランプ回路に接続されている。整流器およびクランプ回路は、出力端子における電圧の全波整流をもたらし、出力端子の電圧を制限する。整流器およびクランプ回路はダイオードCR1?CR4を含む。補助巻線W3の第1の終端が、ダイオードCR1のアノードおよびダイオードCR3のカソードに接続されている。第3の巻線の第2の終端が、ダイオードCR2のアノードおよびダイオードCR4のカソードに接続されている。互いに接続されたダイオードCR3およびCR4のアノードが、第1の電源と電力増幅器とに接続された端子V-に接続されている。互いに接続されたダイオードCR1およびCR2のカソードが、第1の電源と電力増幅器とに接続された端子V+に接続されている。
【0131】
動作中、整流器およびクランプ回路によって供給される整流された電圧が、端子V+における電位よりも大きければダイオードの対CR1/CR4またはCR2/CR3のうちの1つが導通して、第1の電源に電流を戻す。これは、電圧クランプをもたらして第1の電源に電流を戻し、このことが出力端子における電圧を制限する。これが、結果として、出力フィルタに設けられた増幅器の出力電力および出力電流を制限し、したがって負荷に供給される出力電力を制限する。出力端子(またはキャパシタンスC3に接続された接合端子)の電圧を制限することによって、電力増幅器からの電流の過大な引出(excessive draw of current)が防止される。補助巻線W3にわたる電圧がプラスであって、端子V+における電位およびダイオードCR1のしきい値電圧よりも大きければ、ダイオードCR1およびCR4が導通する。補助巻線W3にわたる電圧がマイナスであって、その大きさが、端子V+における電位およびダイオードCR2のしきい値電圧よりも大きければ、ダイオードCR2およびCR3が導通する。
【0132】
図42に示された構成の代替として、整流器およびクランプ回路の出力が、第1の電源の端子V+、V-ではなく第2の電源に接続されてよい。これによって、整流器およびクランプ回路のクランプ電圧を、電位V+およびV-以外のレベルに設定することが可能になる。第2の電源における電力は、第1の電源に戻されてよい。これは、たとえばコンバータ回路によって生じ得る。それに加えて、またはその代わりに、整流器およびクランプ回路の出力は、抵抗および/またはツェナーダイオードを含む放散回路に接続されてよく、この回路は、出力端子から受け取った電力を消費するために使用され得る。図43?図44および図49?図49の構成も、第2の電源および/または放散回路を含むように変更されてよい。
【0133】
整流器およびクランプ回路は、1つまたは複数の所定の保護電圧に整合するAC結合回路である。言い換えれば、整流器およびクランプ回路は、出力端子における電圧を所定の保護電圧にクランプするように構成されている。たとえば、出力端子におけるクランプ電圧は、(i)ダイオードCR1の順バイアスのしきい値電圧と電位V+の合計、および(ii)電位V-からダイオードCR2の順バイアスのしきい値電圧の合計を引いたものでよい。したがって、ダイオードの順バイアスのしきい値電圧が同一(たとえばVt)であれば、出力端子における電圧範囲は、(Vt+V+)と(V--Vt)との間にクランプされる。
【0134】
変圧器T1の巻線比は任意でよく、または、適切なクランプ保護をもたらして出力端子における出力電圧を適切に制限するように、あらかじめ設定されたものでもよい。変圧器T1の巻線比は、(i)コイルW1とW2の間、および(ii)コイルW1とW3の間の巻線比を含む。
【0135】
図43は別の電源回路を示す。この電源回路は図42の電源回路に類似である。図43は、電力増幅器に含まれ得る増幅器の例示的スイッチQ1?Q4を説明するものである。スイッチQ1?Q4はMOSFETスイッチでよい。電力増幅器はフルブリッジ増幅器である。第1のハーフブリッジ増幅器はスイッチQ1、Q2を含む。第2のハーフブリッジ増幅器はスイッチQ3、Q4を含む。スイッチQ1とQ2は端子V+とV-の間で直列に接続されている。スイッチQ3とQ4は端子V+とV-の間で直列に接続されている。スイッチQ1、Q2はスイッチQ3、Q4と並列に接続されている。キャパシタンスC1は、スイッチQ1、Q2と並列に接続されてよく、またスイッチQ3、Q4と並列に接続されてよい。キャパシタンスC1およびスイッチQ1?Q4は端子V+、V-に供給されたDC電圧をAC電圧に変換するように構成されており、スイッチQ1?Q4はそのように動作する。スイッチQ1?Q4のそれぞれが制御入力を有し、それぞれの制御信号(または駆動信号)を受け取る。
【0136】
図44が示す別の電源回路は、電力増幅器(たとえば図42?図43の電力増幅器のうちの1つ)、キャパシタンスC2、C3、インダクタンスL1、変圧器T1、出力フィルタ、ならびに整流器およびクランプ回路を含む。変圧器T1は、1次巻線W1、2次巻線W2、および補助巻線W3を含む。整流器およびクランプ回路は全波整流をもたらし、変圧器の2次巻線W2の第1の終端と出力フィルタの入力の間の出力端子(または接合)における電圧をクランプする。
【0137】
図44の整流器およびクランプ回路は、ダイオードCR1、CR2を含む。図44の整流器およびクランプ回路は、図42、図43の整流器およびクランプ回路とは異なり、ダイオードCR3およびCR4を含まない。ダイオードCR3およびCR4の代わりに、補助巻線W3が、端子V-に接続されている中央タップを含む。ダイオードCR1、CR2のアノードは、それぞれ補助巻線W3の終端に接続されている。ダイオードCR1、CR2のカソードは、端子V+に接続されている。整流器およびクランプ回路の構成は、図42および図43の整流器およびクランプ回路に対してダイオードの数を4つから2へと減少させる一方で、同一または類似の整流およびクランプ保護をもたらす。
【0138】
図44の整流器およびクランプ回路は、出力端子における電圧を所定の保護電圧にクランプするように構成されている。
【0139】
図45は、図41?図43において説明された電圧整流およびクランプ機能のない、従来知られている電源回路を示す。電源回路は、電力増幅器、キャパシタンスC2、インダクタンスL1、変圧器T1、キャパシタンスC3、および出力フィルタを含む。電力増幅器は、端子V+、V-を介してDC電圧および制御信号(または駆動信号)を受け取る。電力増幅器の第1の出力とインダクタンスの間にキャパシタンスC2が接続されている。キャパシタンスと、インダクタンスと、変圧器T1の1次巻線とが直列に接続されている。変圧器T1の第2の終端は、電力増幅器の第2の出力に接続されている。(i)変圧器T1の2次巻線の第1の終端と(ii)出力フィルタの入力の間に出力端子が接続されている。2次巻線の第2の終端はグランド基準に接続されている。出力端子とグランド基準の間にキャパシタンスC3が接続されている。出力フィルタの出力は負荷に接続される。
【0140】
図46は、図45の電源回路に関する例示的シミュレーションプロットを示すものである。シミュレーションプロットは、図45の電力増幅器の出力電流の、対応する負荷の変化による時間に対する変化を示す。図45の電源回路のような、補助巻線およびダイオードクランプ回路が用意されていない非保護の電源回路では、出力端子(または接合)における電圧が増加する可能性がある。電圧が、電力増幅器に被害をもたらし得るレベルに増加する恐れがある。
【0141】
図46のシミュレーションプロットのシミュレーションに関して、100μsにおいて負荷のインピーダンスが増加し始め、それによって電力増幅器の出力電流が増加する。シミュレーションプロットは、電力増幅器からの電流が少なくとも500μsまで増加し続けることを示す。これは過大な放散に至る可能性があり、可能性としては電力増幅器の故障をもたらし、したがって電源回路の故障をもたらす。
【0142】
図47は、図42の電源回路用の電力増幅器の出力電流の例示的シミュレーションプロットを示すものである。このプロットは、図42の電力増幅器の出力電流の、対応する負荷の変化による時間に対する変化を示す。100μsにおいて負荷インピーダンスが増加し始める。図42の電源回路が整流器およびクランプ回路を含んでいるので、電力増幅器の出力電流はクランプされ、増加し続けるのではなく制限される。負荷のインピーダンスが変化することによって出力電流が増加するが、出力電流は電流の所定レベルを超えないようにクランプされる。整流器およびクランプ回路の支援を伴って、電力増幅器の出力電流はわずかに増加して、負荷のインピーダンスにかかわらずピーク制限に迅速に到達する。出力電流は横ばい状態になり、安全な動作範囲にとどまる。
【0143】
図48に示される電源回路は、互いに同相の電力増幅器と、整流器およびクランプ回路とを内蔵する一方で、電力増幅器の出力電圧を結合するものである。電源回路は、電力増幅器1?n、変圧器T1、キャパシタンスC3、出力フィルタ、ならびに整流器およびクランプ回路を含む。電力増幅器1?nは、上記で開示された他の電力増幅器(たとえば図42?図44の電力増幅器の1つまたは複数)に類似して動作してよく、かつ/または構成されてよい。電力増幅器1?nは、電源からそれぞれの対の端子V+、V-を介してDC電圧を受け取る。電力増幅器1?nのそれぞれが、同一の制御信号(または駆動信号)あるいは同一の制御信号(または駆動信号)の組を受け取ってよい。これによって、電力増幅器1?nの各スイッチが、他の電力増幅器1?nのうちの1つの対応するスイッチと同相で動作する。
【0144】
電力増幅器1?nは、それぞれの第1の出力および第2の出力を含む。第1の出力は、それぞれのキャパシタンスC2.1?C2.nに接続されている。キャパシタンスC2.1?C2.nは、それぞれのインダクタンスL1.1?L1.nおよび変圧器T1の1次コイルと直列に接続されている。インダクタンスL1.1?L1.nは、キャパシタンスC2.1?C2.nと1次コイルW1.1?W1.nの第1の終端の間に接続されている。電力増幅器1?nの第2の出力は、1次コイルW1.1?W1.nの第2の終端に接続されている。
【0145】
変圧器は、巻線W1.1?W1.n、W2、W3を含む。2次巻線W2の第1の終端は、出力端子、キャパシタンスC3および出力フィルタに接続されている。2次巻線の第2の終端およびキャパシタンスC3はグランド基準に接続されている。出力フィルタは負荷に接続されており、フィルタリングした電力を負荷に伝送する。
【0146】
電源回路は、複数の電力増幅器1?nの、単一の整流器およびクランプ回路を含む。これは、回路要素を最小化する一方で、電力増幅器1?nのすべてに対する保護をもたらす。整流器およびクランプ回路は、補助巻線W3、第1のダイオードCR1、および第2のダイオードCR2を含む。補助巻線W3の第1の終端は、第1のダイオードCR1のアノードに接続されている。補助巻線W3の第2の終端は、第2のダイオードCR2のアノードに接続されている。ダイオードCR1、CR2のカソードは、電源のプラス端子および/または電力増幅器1?nの端子V+に接続されてよい。補助巻線W3に含まれる中央タップは、電源のマイナス端子および/または電力増幅器1?nの端子V-に接続されてよい。ダイオードCR1、CR2のカソードおよび中央タップに供給される、整流器およびクランプ回路の出力は、電力増幅器1?nに接続された電源とは別の電源に接続されてよい。
【0147】
動作において、変圧器T1は、電力増幅器1?nから受け取った電力を1次コイルW1.1?W1.nにおいて結合する。結合された電力は、主として2次コイルW2に供給される。結合された電力のうちのいくらかは整流器およびクランプ回路に供給されてよい。これは、ダイオードCR1、CR2のそれぞれの順バイアスのしきい値電圧をVtとして、出力端子における電圧が(Vt+V+)以上であるとき、またはV--Vt以下であるとき、特に当てはまる。
【0148】
電源回路のこの構成により、出力端子において、共通負荷に対して、それぞれの電源の電力を加法的に結合して供給するように複数のRF源を結合すること(すなわち複数の電力増幅器からの出力電力を結合すること)が可能になる。これは、電力消費要素を使用しない効率的な結合をもたらす一方で、複数の動作モード下の相互の絶縁をもたらす。動作モードは、正常モード、クランプモード、および電力増幅器故障モードを含み得る。正常モードの間、電力増幅器1?n(またはRF源)からの電力(または電流)は、変圧器T1によってコヒーレントに加算される。クランプモードの間、電力が結合される一方で、出力端子において電圧がクランプされる。電力増幅器故障モードの間、故障した電力増幅器における短絡状態または開回路状態が存在するように、電力増幅器1?nのうちの1つまたは複数が故障していることがある。故障した電力増幅器のために、出力端子における電圧が、正常モードの間に供給される電圧から増加するかまたは減少する可能性がある。出力端子における電圧の大きさが所定レベルまで増加すると、整流器およびクランプ回路の対応する1つまたは複数のダイオードが順方向に導通して、増加したエネルギーを電源に戻す。これによって、故障していない1つまたは複数の電力増幅器が保護される。
【0149】
図49は、互いに逆相の電力増幅器と、絶縁された2つのダイオードの整流およびクランプの回路とを内蔵する一方で、電力増幅器の出力電圧を結合する電源回路を示すものである。図49の電源回路は図48の電力増幅器回路に類似しており、電力増幅器1?n、キャパシタンスC2.1?C2.n、インダクタンスL1.1?L1.n、変圧器T1、キャパシタンスC3、出力フィルタ、ならびに整流器およびクランプ回路を含む。
【0150】
図49の電源回路は、図48の電源回路と異なり、位相シフト制御モジュールに接続された入力端子を含む。位相シフト制御モジュールは、それぞれの電力増幅器に接続された任意数の出力を有し得る。位相シフト制御モジュールは、入力端子において受け取った1つまたは複数の制御信号(または駆動信号)の位相をシフトして、電力増幅器2?nに位相シフト信号を供給する。位相シフト制御モジュールは、電力増幅器の出力信号の間の位相シフト関係を制御し、結果として、出力信号を結合する態様を制御する。電力増幅器2?nの出力信号は、電力増幅器1の出力信号に対して-180°?180°の間の違相であり得る。電力増幅器2?nの出力信号は、電力増幅器1の出力信号から、位相を、同一量または異なる量だけシフトされてよい。電力増幅器の出力信号のうちの2つが逆相に近ければ近いほど、これら2つの出力信号が相殺しあう度合いが大きくなる。電力増幅器の出力信号のうちの2つが同相に近ければ近いほど、これら2つの信号が互いに加算される度合いが大きくなって、供給電力が増加する。
【0151】
図48?図49の電力増幅器には単一の制御信号(または駆動信号)が供給されると示されているが、任意数の制御信号(または駆動信号)が電力増幅器のそれぞれに供給されてよい。一例として、図43に示されるように、電力増幅器のそれぞれが4つのスイッチを含んでよい。これらのスイッチが、それぞれの制御信号(または駆動信号)を受け取ってよい。この例では、電力増幅器のそれぞれが4つの制御信号(または駆動信号)を受け取る。別の例として、図43を参照すると、スイッチQ1、Q3が第1の制御信号(または駆動信号)を受け取ってよい。スイッチQ2、Q4が第2の制御信号(または駆動信号)を受け取ってよい。
【0152】
また、図48?図49の構成については、整数値nは2以上でよい。一実施形態では、nは2または3に限定される。別の実施形態では、nは偶数に限定される。
【0153】
図42?図44および図48?図49の整流器およびクランプ回路は、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合しているとき整流器として動作し得る。図42?図44および図48?図49の整流器およびクランプ回路は、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していないとき、整流と電圧クランプの両方を遂行し得る。
【0154】
前述の例は、不整合負荷状態の間、電力増幅器を保護するものである。不整合負荷状態は、電源回路の出力インピーダンスが負荷インピーダンスと整合していないときを指す。電源回路に含まれる整流器およびクランプ回路は、たとえば変圧器の巻線比を調整することにより、適切な(または所定の)保護電圧に整合され得る。電圧クランプ保護は、DC電流経路に設けられるのではなく、絶縁されたやり方でAC電流経路に設けられる。たとえば図42?図44および図48、図49の整流器およびクランプ回路は、供給された電力のDC-AC変換の後に、変圧器の下流に設けられる。これは、クランプ電圧制御の順応性を向上させ、回路構成要素を最小限にする(たとえば電圧クランプのために使用されるダイオードの数を最小限に抑える)。クランプ電圧は、0?V+の間の電圧範囲ばかりではなく、V-?0の間の電圧範囲も制御される。これによって、AC電圧の振幅およびクランプを調整することが可能になる。
【0155】
前述の説明は本来例示でしかなく、本開示、その用途、または使用法を限定するようには意図されていない。本開示の広範な教示は様々な形態で実施され得る。したがって、本開示は特定の例を含んでいるが、図面、明細書、および以下の特許請求の範囲を検討すれば他の修正形態が明らかになるはずであるので、本開示の真の範囲はそのように限定されるべきではない。本明細書で使用される慣用句「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」は、非排他的論理和を使用した論理の(AまたはBまたはC)を意味するように解釈されるべきであって、「Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、およびCの少なくとも1つ」を意味するよう解釈されるべきでない。方法の範囲内の1つまたは複数のステップが、本開示の原理を変えることなく、異なる順序で(または同時に)実行され得ることを理解されたい。
【0156】
また、構成要素間の物理的関係を説明するために様々な用語が使用されている。第1の要素が第2の要素に対して「接続される」、「係合する」、または「結合される」と言及されるとき、第1の要素は、第2の要素に対して直接接続されてよく、係合してよく、配置されてよく、加えられてよく、または結合されてよく、あるいは介在要素が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素に対して、「直接接続されている」、「直接係合している」、または「直接結合されている」と言及されたとき、介在要素は存在し得ない。第1の要素が第2の要素に対して「接続される」、「係合する」、または「結合さる」と明示することは、第1の要素が第2の要素に対して「直接接続され得る」、「直接係合し得る」、または「直接結合され得る」ことを意味する。要素間の関係を説明するために使用される他の用語は、同様に(たとえば、「?の間に」に対する「直接?の間に」、「?に隣接する」に対する「?に直接隣接する」など)解釈されるべきである。
【0157】
以下の定義を含んでいる本出願では、「モジュール」または「コントローラ」という用語は、「回路」で置換され得る。「モジュール」という用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログ、またはアナログ/デジタル混合のディスクリート回路、デジタル、アナログ、またはアナログ/デジタル混合の集積回路、組合せ論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行する(共用の、専用の、またはグループの)プロセッサ回路、プロセッサ回路によって実行されるコードを記憶する(共用の、専用の、またはグループの)メモリ回路、説明された機能をもたらす他の適切なハードウェア構成要素、あるいはシステムオンチップなどにおける上記のいくつかまたはすべての組合せを指してよく、これらの一部分でよく、またはこれらを含んでよい。
【0158】
モジュールは1つまたは複数のインターフェース回路を含み得る。いくつかの例では、インターフェース回路は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット、広域ネットワーク(WAN)、またはそれらの組合せに接続された、有線または無線のインターフェースを含み得る。本開示の何らかの所与のモジュールの機能性は、インターフェース回路を介して接続された複数のモジュールの間に分散されてよい。たとえば、複数のモジュールは負荷平衡を可能にし得る。さらなる例では、(遠隔モジュールまたはクラウドモジュールとしても知られている)サーバモジュールが、クライアントモジュールに代わっていくつかの機能性を達成してもよい。
【0159】
上記で使用されたコードという用語は、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはマイクロコードを含んでよく、また、プログラム、ルーチン、関数、クラス、データ構造、および/またはオブジェクトを指してもよい。共用プロセッサ回路という用語は、複数のモジュールからのいくつかまたはすべてのコードを実行する単一のプロセッサ回路を包含する。グループプロセッサ回路という用語は、追加のプロセッサ回路と組み合わせて、1つまたは複数のモジュールからのいくつかまたはすべてのコードを実行するプロセッサ回路を包含する。複数のプロセッサ回路に対する言及は、個別のダイ上の複数のプロセッサ回路、単一ダイ上の複数のプロセッサ回路、単一プロセッサ回路の複数のコア、単一プロセッサ回路の複数のスレッド、または上記のものの組合せを包含する。共用メモリ回路という用語は、複数のモジュールからのいくつかまたはすべてのコードを記憶する単一のメモリ回路を包含する。グループメモリ回路という用語は、追加のメモリと組み合わせて、1つまたは複数のモジュールからのいくつかまたはすべてのコードを記憶するメモリ回路を包含する。
【0160】
メモリ回路という用語は、コンピュータ可読媒体という用語のサブセットである。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体という用語は、媒体(搬送波など)によって伝搬する一時的な電気信号または電磁気信号を包含せず、したがって、コンピュータ可読媒体という用語は、有形かつ非一時的なものと見なされ得る。非一時的かつ有形のコンピュータ可読媒体の限定的でない例には、不揮発性メモリ回路(フラッシュメモリ回路またはマスクROM回路など)、揮発性メモリ回路(静的ランダムアクセスメモリ回路および動的ランダムアクセスメモリなど)、ならびに磁気記憶装置(磁気テープまたはハードディスクドライブなど)および光学記憶装置などの補助記憶装置が含まれる。
【0161】
本出願において説明された装置および方法は、コンピュータプログラムで具現された1つまたは複数の特定の機能を実行するように汎用コンピュータを構成することによってもたらされた専用コンピュータによって、部分的にまたは完全に実施され得る。コンピュータプログラムは、少なくとも1つの非一時的な有形のコンピュータ可読媒体に記憶されたプロセッサ実行可能命令を含む。コンピュータプログラムは、記憶データを含んでよく、または記憶データに依存してもよい。コンピュータプログラムは、専用コンピュータのハードウェアと相互作用する基本入出力システム(BIOS)、専用コンピュータの特定のデバイスと相互作用するデバイスドライバ、1つまたは複数のオペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、バックグラウンドサービスおよびアプリケーションなどを含み得る。
【0162】
コンピュータプログラムは、(i)アセンブラコード、(ii)コンパイラによってソースコードから生成されたオブジェクトコード、(iii)インタープリタによって実行するためのソースコード、(iv)ジャストインタイムコンパイラによってコンパイルして実行するためのソースコード、(v)HTML(ハイパーテキストマークアップランゲージ)またはXML(エクステンシブルマークアップランゲージ)などの構文解析用の説明テキストなどを含み得る。単なる例として、ソースコードは、C、C++、C#、Objective-C、Haskell、Go、SQL、Lisp、Java(登録商標)、ASP、Perl、Javascript(登録商標)、HTML5、Ada、ASP(アクティブサーバページ)、Perl、Scala、Erlang、Ruby、Flash(登録商標)、Visual Basic(登録商標)、Lua、またはPython(登録商標)で書かれ得る。
【0163】
ある要素が「?するための手段」という慣用句を使用して明確に記述された場合、または方法の請求項が「?するための動作」もしくは「?するためのステップ」という慣用句を使用する場合を除けば、特許請求の範囲において記述された要素のいかなるものも、米国特許法第112条(f)の意味の範囲内のミーンズプラスファンクション要素であるようには意図されていない。
【符号の説明】
【0164】
10 電圧インバータ回路
11 直流(DC)電圧源入力
12 交流(AC)出力
13 信号源
13’ 信号源
13A 信号源
13A’ 信号源
13A” 信号源
13B 信号源
13B’ 信号源
13B” 信号源
14 位相コントローラ
20 制御回路
22 ソフトスタート整流器
24 電力感知ユニット(PSU)
26 冷却ファン
28 DCスイッチ
30a 電力増幅器
30b 電力増幅器
30c 電力増幅器
30d 電力増幅器
32 駆動回路
34 結合および絶縁の変圧器
36 フィルタおよび電力感知の回路
38 位相制御変調器
40 フロントパネル制御回路
52 プラズマチャンバ
54 ガス入口
56 ガス出口
58 熱制御信号
60 プラズマコントローラ
62 真空信号
64 電圧信号
66 入口のガス流量と出口のガス流量の間の比を示す信号
68 電圧発生器
70 マイクロプロセッサ
72 電源
74 整合回路
80 整合回路
82 負荷
84 第1の可変キャパシタ
86 第2の可変キャパシタ
88 インダクタ
90 負荷
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記電力増幅器とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。
【請求項2】
前記第1の巻線が1次巻線であり、前記第2の巻線が2次巻線であり、前記第3の巻線が3次巻線である請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項1に記載の電源回路。
【請求項4】
前記4つのダイオードが、絶縁された4つ組みダイオード整流器の構成で配置されている請求項3に記載の電源回路。
【請求項5】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項1に記載の電源回路。
【請求項6】
前記複数のダイオードが、絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項1に記載の電源回路。
【請求項7】
電源回路であって、
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)制御モジュールからの制御信号を受け取り、前記制御信号に基づいて前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、(i)前記第3の巻線にわたる電圧を整流し、(ii)前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限し、(iii)前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すように構成されている整流器およびクランプ回路と、
(i)第1の電源からの直流(DC)電圧、および(ii)第2の制御信号を受け取り、
前記第2の制御信号に基づいて、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、
前記変圧器が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項8】
前記制御信号および前記第2の制御信号が、それぞれ、第1の電力増幅器を、前記第2の電力増幅器に対して同相または逆相で動作させる請求項7に記載の電源回路。
【請求項9】
前記電力増幅器が、フルブリッジ構成に配置された複数のスイッチを含む請求項1に記載の電源回路。
【請求項10】
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介してプラズマチャンバにAC出力を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、前記電力増幅器とAC電流経路における前記プラズマチャンバとの間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記プラズマチャンバに供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように構成されている整流器およびクランプ回路とを備える電源回路。
【請求項11】
前記第1の巻線が1次巻線であり、前記第2の巻線が2次巻線であり、前記第3の巻線が3次巻線である請求項10に記載の電源回路。
【請求項12】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項13】
前記4つのダイオードが、絶縁された4つ組みダイオード整流器の構成で配置されている請求項12に記載の電源回路。
【請求項14】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項15】
前記複数のダイオードが、絶縁された2つのダイオード整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項10に記載の電源回路。
【請求項16】
電源回路であって、
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するように構成された電力増幅器と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む変圧器であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取るように構成されており、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧器と、
複数のダイオードを備える整流器およびクランプ回路であって、前記ダイオードが、前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように構成されている整流器およびクランプ回路と、
第2の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するように構成された第2の電力増幅器とを備え、
前記変圧器が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項17】
前記電力増幅器が、前記第2の電力増幅器に対して同相または逆相で動作する請求項16に記載の電源回路。
【請求項18】
前記電力増幅器と前記第2の電力増幅器が同一のユニットまたは別個のユニットである請求項16に記載の電源回路。
【請求項19】
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するための手段と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む、変圧のための手段であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取り、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取り、前記第2の巻線が出力端子を介してAC信号によって駆動される負荷にAC出力を供給する変圧のための手段と、
受け取って変換するための前記手段とAC電流経路における前記負荷との間のインピーダンス不整合状態に応答して前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように配置された複数のダイオードを含んでいる整流器およびクランプ手段とを備える電源回路。
【請求項20】
前記複数のダイオードが、ダイオードブリッジ整流器の構成に配置された4つのダイオードをさらに備える請求項19に記載の電源回路。
【請求項21】
前記複数のダイオードが、全波ブリッジ整流器の構成に配置された対のダイオードをさらに備える請求項19に記載の電源回路。
【請求項22】
電源回路であって、
第1の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を交流(AC)出力信号に変換するための手段と、
第1の巻線、第2の巻線、および第3の巻線を含む、変圧のための手段であって、前記第1の巻線が前記AC出力信号を受け取り、前記第2の巻線が前記AC出力信号に基づく出力電流を受け取り、前記第2の巻線が出力端子を介して負荷に電流を供給する変圧のための手段と、
前記出力端子における電圧をクランプして前記負荷に供給される出力電力を制限することと、前記第3の巻線にわたる電圧を整流することまたは前記第3の巻線から前記第1の電源または第2の電源に電力を戻すことのうちの少なくとも1つとを行うように配置された複数のダイオードを含んでいる整流器およびクランプ手段と、
第2の電源から直流(DC)電圧を受け取って、前記DC電圧を第2の交流(AC)出力信号に変換するための第2の手段とを備え、
前記変圧のための手段が第4の巻線をさらに備え、前記第4の巻線が前記第2のAC出力信号を受け取るように構成されている電源回路。
【請求項23】
前記変換するための手段が、前記変換するための第2の手段に対して同相または逆相で動作する請求項22に記載の電源回路。
【請求項24】
前記変換するための手段と前記変換するための第2の手段が同一のユニットまたは別個のユニットである請求項22に記載の電源回路。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-04-20 
出願番号 特願2016-574954(P2016-574954)
審決分類 P 1 651・ 54- YAA (H02M)
P 1 651・ 537- YAA (H02M)
P 1 651・ 113- YAA (H02M)
P 1 651・ 121- YAA (H02M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 匡  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 須原 宏光
山田 正文
登録日 2019-03-15 
登録番号 特許第6496329号(P6496329)
権利者 エムケーエス インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
発明の名称 電力増幅器出力と負荷電圧クランプ回路の絶縁を組み合わせるための変圧器を組み込んだ電源回路  
代理人 村山 靖彦  
復代理人 松尾 直樹  
代理人 阿部 達彦  
復代理人 野村 進  
復代理人 野村 進  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
復代理人 松尾 直樹  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

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