• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件  H01L
審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1375868
異議申立番号 異議2019-700923  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-20 
確定日 2021-05-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6515842号発明「半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6515842号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6515842号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 理由
第1 手続の経緯
特許第6515842号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成28年3月10日に出願され、平成31年4月26日にその特許権の設定登録がされ、令和1年5月22日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和1年11月20日 : 請求項1に係る特許について、特許異議申立人伊藤泰和による特許異議の申立て
令和2年 2月18日付け: 取消理由通知書
令和2年 4月17日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(これに対する特許異議申立人伊藤泰和による意見書の提出はされなかった。)
令和2年 8月 5日付け: 訂正拒絶理由通知書
令和2年11月30日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
令和3年 1月13日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 3月16日 : 特許異議申立人伊藤泰和による意見書の提出

第2 訂正の適否について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
令和3年1月13日付けの訂正請求書による訂正は、「特許第6515842号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲とおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上である」と記載されているのを、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び請求項3から請求項9も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」と記載されているのを、「請求項1または請求項2に記載の半導体装置であって、」に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5から請求項9も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」と記載されているのを、「請求項1、請求項2、請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6から請求項9も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」と記載されているのを、「請求項1、請求項2、請求項4、請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」に訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7から請求項9も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」と記載されているのを、「請求項1、請求項2、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」に訂正する(請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8及び請求項9も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」と記載されているのを、「請求項1、請求項2、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」と記載されているのを、「請求項1、請求項2、請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置であって、」に訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の段落【0006】において、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上である」と記載されているのを、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」に訂正する。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項1?9について、請求項2?9はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?9に対応する訂正後の請求項〔1?9〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 各訂正事項についての訂正要件の適合性の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上である」として、n型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差において、下限値のみを特定し、上限値については何ら特定されていない。これに対して、訂正後の請求項1は、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」との記載により、訂正後の請求項1におけるn型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差の上限値を具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本件特許の願書に添付した本件特許の願書に添付した明細書(以下、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を「本件特許明細書等」という。)の段落【0070】に基づいて導き出される構成である。
また、訂正事項1は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものでない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内における訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件においては、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、訂正前の請求項3に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されることになる。よって、以下5で詳述する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項4が「請求項1から請求項3のいずれか1項」の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2により請求項3を削除したことに伴って、訂正後の請求項4において、請求項3を引用しないものとし、新たな請求項1または請求項2を引用するものとする訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、ないし、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、訂正前の請求項4に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されることになる。よって、以下5で詳述する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項5が「請求項1から請求項4のいずれか1項」の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2により請求項3を削除したことに伴って、訂正後の請求項5において、請求項3を引用しないものとし、新たな請求項1、請求項2、請求項4のいずれか1項を引用するものとすることを目的とするための訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、ないし、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項4は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、訂正前の請求項5に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下5で詳述する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項6が「請求項1から請求項5のいずれか1項」の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2により請求項3を削除したことに伴って、訂正後の請求項6において、請求項3を引用しないものとし、新たな請求項1、請求項2、請求項4、請求項5のいずれか1項を引用するものとするための訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、ないし、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項5は第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、訂正前の請求項6に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下5で詳述する。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項7が「請求項1から請求項6のいずれか1項」の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2により請求項3を削除したことに伴って、訂正後の請求項7において、請求項3を引用しないものとし、新たな請求項1、請求項2、請求項4から請求項6のいずれか1項を引用するものとするための訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、ないし、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項6は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、訂正前の請求項7に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下5で詳述する。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項8が「請求項1から請求項7のいずれか1項」の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2により請求項3を削除したことに伴って、訂正後の請求項8において、請求項3を引用しないものとし、新たな請求項1、請求項2、請求項4から請求項7のいずれか1項を引用するものとするための訂正である。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、ないし、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項7は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、訂正前の請求項8に係る訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下5で詳述する。

(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項9が「請求項1から請求項8のいずれか1項」の記載を引用する記載であるところ、訂正事項2により請求項3を削除したことに伴って、訂正後の請求項9において、請求項3を引用しないものとし、新たな請求項1、請求項2、請求項4から請求項8のいずれか1項を引用するものとするための訂正である。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、ないし、同法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

ウ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項8は、第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、訂正前の請求項9に係る訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。よって、以下5で詳述する。

(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正事項1により訂正前の請求項1を訂正後に新たな請求項1とする訂正に伴い、特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることから、訂正事項9についても、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、訂正事項1に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために、願書に添付した明細書の段落【0006】の記載を、訂正後の請求項1に対応させるための訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、訂正事項9に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

4 明細書の訂正と関係する請求項について
願書に添付した明細書の段落【0006】は、訂正事項9によって訂正された。段落【0006】には、請求項1に対応する形態が記載されている。ここで、請求項1?9は一群の請求項である。したがって、訂正事項9は、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。

5 独立特許要件について
訂正事項2ないし8は、いずれも第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むことから、特許異議の申立てがされていない請求項3ないし9に係る訂正事項2ないし8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。

(1)本件訂正発明
本件訂正後の請求項3ないし9に係る発明(以下、それぞれ順に、「本件訂正発明3」ないし「本件訂正発明9」という。また、本件訂正後の請求項1、請求項2に係る発明をそれぞれ「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」という。)は、本件訂正後の請求項3ないし9に記載された、次のとおりのものである。

ア 本件訂正発明3
(削除)

イ 本件訂正発明4
「請求項1または請求項2に記載の半導体装置であって、
前記窒化物半導体は、アルミニウムとインジウムとの少なくとも一方を含む、半導体装置。」

ウ 本件訂正発明5
「請求項1、請求項2、請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、1.0×10^(18)cm^(-3)以上である、半導体装置。」

エ 本件訂正発明6
「請求項1、請求項2、請求項4、請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記p型半導体領域に含まれるp型不純物は、マグネシウムと亜鉛との少なくとも一方を含む、半導体装置。」

オ 本件訂正発明7
「請求項1、請求項2、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記n型半導体領域に含まれるn型不純物は、ケイ素とゲルマニウムとの少なくとも一方を含む、半導体装置。」

カ 本件訂正発明8
「請求項1、請求項2、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、前記第2電極と接触する面から離れるほど低くなる、半導体装置。」

キ 本件訂正発明9
「請求項1、請求項2、請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記n型半導体領域と前記第1電極とが接触する面と、前記p型半導体領域と前記第2電極とが接する面とは、異なる平面上にある、半導体装置。」

ク なお、本件訂正発明1及び本件訂正発明2は、以下のとおりものである。
(ア)本件訂正発明1
「半導体装置であって、
ガリウムを含む窒化物半導体から形成されたn型半導体領域と、
前記n型半導体領域と接し、前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域と、
前記n型半導体領域とオーミック接触する第1電極と、
前記p型半導体領域とオーミック接触する第2電極と、を備え、
前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、
前記同じ金属は、パラジウム、ニッケル、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属であり、
前記n型半導体領域のp型不純物濃度と、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、実質的に同じであり、
前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である、半導体装置。」

(イ)本件訂正発明2
「請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1電極と前記第2電極とは同一の電極である、半導体装置。」

(2)特許異議申立人が異議申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2009-283692号公報
甲第2号証:特開2009-177110号公報
甲第3号証:特開平9-232632号公報
甲第4号証:国際公開第2011/108615号
特許異議申立人は、本件特許の請求項1に係る発明について、甲第1号証を主引例とする進歩性の取消理由を主張している。

また、本件特許の請求項1に係る発明について、以下の引用文献1に記載された発明及び以下の引用文献2?4に記載された周知技術に基づく、進歩性についての取消理由(決定の予告)が通知されている。
引用文献1:特開2009-283692号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2015-56486号公報(周知例として引用)
引用文献3:特開2014-13886号公報(周知例として引用)
引用文献4:国際公開第2011/108615号(甲第4号証。周知例として引用。)
周知例1 :特開2009-177110号公報(甲第2号証)

また、本件特許の請求項4?9に係る発明については、取消理由(決定の予告)で、以下の引用文献5、6も引用されている。
引用文献5:特開平6-275868号公報
引用文献6:特開2014-116483号公報

次に、特許異議申立てがされていない請求項3ないし9に係る訂正事項2ないし8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件について検討する。
本件訂正発明3は、訂正前の請求項3を削除するものであり、独立特許要件を満たし、本件訂正発明4ないし9は、訂正前の請求項1に記載された構成を全て含み、さらに限定した発明であることから、以下、本件訂正発明4ないし9について、進歩性に係る独立特許要件について検討する。

(3)引用文献等の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1(特開2009-283692号公報)の記載及び引用文献1に記載された発明
(ア)取消理由通知(決定の予告)で引用された引用文献1(特開2009-283692号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
「【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1実施形態)
図1に、半導体装置100の要部断面図を模式的に示す。図1の断面図は半導体装置100の単位構造を示しており、この単位構造が紙面左右方向に繰り返し形成されている。 半導体装置100は、縦型の電界効果型トランジスタである。半導体基板1の裏面には、チタンとアルミニウムを材料とするドレイン電極18が設けられている。ドレイン電極18の表面に、窒化ガリウム(GaN)を材料とするn^(+)型の半導体層(ドレイン層)20が設けられている。ドレイン層20は、ドレイン電極18に電気的に接続している。ドレイン層20の表面に、窒化ガリウムを材料とするn型半導体層22が設けられている。n型半導体層22には、溝17が分散して形成されている。後述するが、溝17は、n型半導体層22の表面の一部をエッチングして形成される。以下の説明では、n型半導体層22のエッチングされなかった範囲を、突部12と称することがある。突部12上の一部に、窒化ガリウムを材料とするn^(+)型のn型領域10が設けられている。本明細書では、突部12とn型領域10を併せて、アパーチャ領域14と称することがある。
【0028】
窒化ガリウムを材料とするボディ領域(p型窒化物半導体層)16が、溝17内に設けられている。なお、半導体装置100では、ボディ領域16が、突部12上の一部にも設けられている。一対のボディ領域16は、アパーチャ領域14によって隔てられている。半導体装置100は、p型ボディ領域16とn型アパーチャ領域14が隣接する構造を有している。
【0029】
ボディ領域16の表面に、窒化ガリウムを材料とするn^(+)型のソース領域(第三のn型領域)4が設けられている。ソース領域4は、半導体基板1の表層部分に設けられている。n^(+)型ソース領域4は、p型ボディ領域16によってn型半導体層22とn型アパーチャ領域14から隔てられている。ソース領域4の一部とボディ領域16の一部の表面上に、ソース電極2が設けられている。ソース電極2は、チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とし、ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続している。半導体基板1の表面上で一対のソース電極2の間に、ゲート絶縁膜8が設けられている。ゲート絶縁膜8の表面に、ニッケルを材料とするゲート電極6が設けられている。ゲート電極6は、ゲート絶縁膜8を介して、アパーチャ領域14と、アパーチャ領域14とソース領域4を隔てているボディ領域16と、ソース領域4の一部に対向している。なお、ゲート電極6は、アパーチャ領域14とソース領域4を隔てているボディ領域16にだけ対向していてもよい。また、ゲート電極6の材料として、ニッケルに代えて、アルミニウム、金、白金又は多結晶シリコンを使用することもできる。
【0030】
ここで、n^(+)型ドレイン層20の不純物濃度はおよそ1×10^(18)cm^(-3)であり、n型半導体層22の不純物濃度はおよそ1×10^(16)cm^(-3)であり、n型領域10の不純物濃度はおよそ1×10^(20)cm^(-3)であり、p型ボディ領域16の不純物濃度はおよそ1×10^(19)cm^(-3)であり、n^(+)型ソース領域4の不純物濃度はおよそ1×10^(20)cm^(-3)である。すなわち、n型領域10の不純物濃度は、n型半導体層22の突部12の不純物濃度よりも濃い。」

「【0033】
半導体装置100の製造方法を説明する。 まず、図2に示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を利用して、n^(+)型半導体層(ドレイン層)20の表面に、n型半導体層22を結晶成長させる。次に、図3に示すように、n型半導体層22の表面に、開孔24aを有するマスク層(SiO_(2)膜)24を形成し、n型半導体層22の表面からドライエッチングする(溝形成工程)。図2の矢印で示された範囲のn型半導体層22がエッチングされる。マスク層24に覆われているn型半導体層22はエッチングされない。溝形成工程は、n型半導体層22の一部に、突部12を形成する工程ということもできる。
【0034】
次に、図4に示すように、MOCVD法を利用して、n型半導体層22の表面上に、p型窒化物半導層26を結晶成長させる(p型窒化物半導体層形成工程)。p型窒化物半導体層形成工程では、溝17内だけでなく、突部12の表面にもp型窒化物半導層26を結晶成長させる。p型窒化物半導体層26には、p型不純物としてマグネシウム(Mg)が含まれている。次に、図5に示すように、p型窒化物半導体層26の表面に、開孔28aを有するマスク層28を形成し、開孔28aに向けてn型不純物をイオン注入する(n型領域形成工程)。具体的には、シリコンをドーズ量1×10^(15)?1×10^(16)cm^(-2)、加速電圧10?1000keVで注入する。n型領域形成工程を経て、n型領域10が完成する。換言すると、p型窒化物半導体層26の一部が、n型領域10に変質する。n型領域10は、p型窒化物半導体層26の表面から突部12にまで達している。図5では、p型窒化物半導体層26(図4を参照)のうち、シリコンがイオン注入された範囲に符号10を付し、イオン注入されなかった範囲に符号16を付している。符号16は、図1のボディ領域16に対応している。
【0035】
n型領域形成工程では、n型領域10がp型窒化物半導体層26の表面からn型半導体層22の突部12に達するように、n型不純物をイオン注入する。換言すると、n型の半導体領域(n型領域10とn型の突部12)がp型窒化物半導体層26を分断するように、n型不純物をp型窒化物半導体層26に向けてイオン注入する。図中の矢印は、n型不純物がイオン注入される範囲を示している。なお、図5では、n型不純物が、突部12の上部に位置するp型窒化物半導体層26にだけイオン注入されており、溝17内のp型窒化物半導体層26にはイオン注入されていない。n型不純物をp型窒化物半導体層26の深部までイオン注入することなく、p型窒化物半導体層26をn型領域10によって分断することができる。なお、n型不純物は、主にp型窒化物半導体層26にイオン注入されており、突部12内にほとんどイオン注入されない。そのため、図1に示すように、半導体基板1の表面ではアパーチャ領域14の不純物濃度が濃く(n型領域10)、半導体基板1の深部ではアパーチャ領域14の不純物濃度が薄い(突部12)関係が得られる。
【0036】
次に、マスク層28を除去し、ボディ領域16の表面に開孔を有するマスク層(図示省略)を形成し、ボディ領域16の表面の一部にn型不純物をイオン注入し、ソース領域(第三のn型領域)4(図1を参照)を形成する。このときに、ソース領域4がn型半導体層22に達しないように、ボディ領域16に向けてn型不純物をイオン注入する。その後、ゲート絶縁膜8、ゲート電極6、ソース電極2及びドレイン電極18を形成する。なお、n型領域10を形成する工程に先立って、ソース領域4を形成する工程を実施してもよい。また、アパーチャ領域14とソース領域4を隔てているボディ領域16にだけゲート電極6を対向させる場合、ゲート絶縁膜をマスク層としてn型領域10及びソース領域4を形成することもできる。すなわち、n型領域10を形成する工程と、ソース領域4を形成する工程と、ゲート絶縁膜8を形成する工程は、任意の順序で実施することができる。」

(イ)上記記載から、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体装置であって、
ドレイン層20の表面に、窒化ガリウムを材料とするn型半導体層22が設けられており、
n型半導体層22には、溝17が分散して形成されており、
溝が形成されなかった突部12上の一部に、窒化ガリウムを材料とするn^(+)型のn型領域10が設けられており、
窒化ガリウムを材料とするボディ領域(p型窒化物半導体層)16が、溝17内に設けられており、
ボディ領域16の表面に、窒化ガリウムを材料とするn^(+)型のソース領域(第三のn型領域)4が設けられており、
ソース領域4の一部とボディ領域16の一部の表面上に、ソース電極2が設けられ、ソース電極2は、チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とし、ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続しており、
p型ボディ領域16の不純物濃度はおよそ1×10^(19)cm^(-3)であり、n^(+)型ソース領域4の不純物濃度はおよそ1×10^(20)cm^(-3)であり、
前記半導体装置の製造方法は、
n型半導体層22の表面上に、p型窒化物半導層26を結晶成長させる工程であって、p型窒化物半導体層26には、p型不純物としてマグネシウム(Mg)が含まれている工程(p型窒化物半導体層形成工程)と、
次に、n型不純物をイオン注入して、p型窒化物半導体層26の一部を、n型領域10に変質させ、イオン注入させなかった範囲をボディ領域16とする工程(n型領域形成工程)と、
ボディ領域16の表面に開孔を有するマスク層を形成し、ボディ領域16の表面の一部にn型不純物をイオン注入し、ソース領域(第三のn型領域)4を形成する工程と、
その後、ゲート絶縁膜8、ゲート電極6、ソース電極2及びドレイン電極18を形成する工程とを備える方法である、半導体装置。」

イ 引用文献2(特開2015-56486号公報)の記載
「【0018】
n型のGaN層14の上に、p型のGaN層(第2のGaN系半導体層)16を備えている。p型のGaN層16は、例えば、Mg(マグネシウム)をp型不純物として含有する。p型のGaN層16は、エピタキシャル成長層である。
【0019】
p型のGaN層16は、n型のGaN層14側の低不純物濃度領域16aと、n型のGaN層14と反対側の高不純物濃度領域16bとを備える。低不純物濃度領域16aは、MOSFET100のチャネル領域として機能する。また、高不純物濃度領域16bは、チャネル領域に接続される電極を形成するための、チャネルコンタクト領域として機能する。
【0020】
低不純物濃度領域16aのp型不純物濃度は、例えば、5×10^(15)以上5×10^(16)cm^(-3)以下である。また、高不純物濃度領域16bのp型不純物濃度は、例えば、1×10^(18)以上1×10^(22)cm^(-3)以下である。
・・・
【0023】
n型のGaN層18は、例えば、Si(シリコン)をn型不純物として含有する。n型のGaN層(第3のGaN系半導体層)18は、n型のGaN層14よりもn型不純物濃度が高い。n型のGaN層18のn型不純物濃度は、例えば、1×10^(18)以上1×10^(22)cm^(-3)以下である。」

「【0045】
結果的に、n型のGaN層(第3のGaN系半導体層)18には、p型のGaN層(第2のGaN系半導体層)16、特に、高不純物濃度領域16bと略同一濃度のp型不純物が含有されることになる。」

「【0063】
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置および半導体装置の製造方法は、第1の電極と第2の電極とが同一材料であること以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については、記述を省略する。
【0064】
図7は、本実施形態の半導体装置であるMOSFETの構成を示す模式断面図である。
【0065】
MOSFET200は、n型のGaN層(第3のGaN系半導体層)18上の第1の電極(第1のソース電極)22と、p型のGaN層(第2のGaN系半導体層)16の高不純物濃度領域16b上の第2の電極(第2のソース電極)24が、同一材料である。第1の電極22、および、第2の電極24は、例えば、Ti(チタン)/Al(アルミニウム)/Ti(チタン)の積層構造を備える。そして、第1の電極(第1のソース電極)22と、第2の電極(第2のソース電極)24が同一の層で形成されている。
【0066】
本実施形態によれば、第1の電極22と第2の電極24とが同一材料であることで、MOSFET200の製造工程が簡略化できる。したがって、生産性に優れ、低コストのMOSFET200が実現できる。」

ウ 引用文献3(特開2014-13886号公報)の記載
「【実施例1】
【0032】
図1は、実施例1の縦型ダイオードの構成を示した図である。実施例1の縦型ダイオードは、図1に示すように、基板10と、基板10上に位置するn層11と、n層11上に位置するp層12と、を有している。また、基板10のn層11形成側とは反対側の面には、n電極13が基板10に接して位置し、p層12上の一部領域にはp電極14が位置している。また、実施例1の縦型ダイオードは、保護膜16、フィールドプレート電極17によるフィールドプレート構造を有している。また、実施例1の縦型ダイオードは平面視において円形であり、その直径は200μmである。なお、平面視における形状は円形以外でもよく、矩形などであってもよい。矩形とする場合には、その角を丸めることが望ましい。耐圧性能を向上させることができる。・・・(略)・・・
【0036】
n電極13はTi/Alからなり、p電極14はNi/Auからなる。ここで「/」は積層であることを意味し、A/BはA層を成膜した後B層を成膜することを意味する。以下、材料の説明において同様である。n電極13としては、n型のIII 族窒化物半導体に対してオーミックコンタクトをとれる材料が好ましい。たとえば、Ti/Al/Ni/Au、TiN/Al、Pd/Ti/Alなども用いることができる。また、p電極14も同様に、p型のIII 族窒化物半導体に対してオーミックコンタクトをとれる材料が好ましく、たとえば、Pd/Au、Co/Auなども用いることができる。」

「【実施例2】
【0057】
図7は、実施例2の縦型トレンチゲートMOSFETの構成を示した図である。実施例2の縦型トレンチゲートMOSFETは、基板20と、基板20上に位置するn-GaNからなるn層21と、n層21上に位置するp-GaNからなるp層22と、p層22上に位置するn-GaNからなる高濃度n層23と、を有している。また、トレンチゲート構造を有している。すなわち、高濃度n層23表面(p層22側とは反対側の面)からp層22を貫通してn層21に至るトレンチ24が形成されており、n層23表面のトレンチ24の開口近傍から側面、底面にかけて連続するゲート絶縁膜25を有し、トレンチ24内部にゲート絶縁膜25に接触するゲート電極26を有している。
【0058】
また、高濃度n層23の表面には、p層22に達する溝27が形成され、高濃度n層23、p層22の双方に接触するソース電極28が設けられている。これにより、ソース電極としての機能を有するとともにp層22のホールを適宜排出することができ、耐圧性能を安定させることができる。また、基板20の裏面(n層21が形成されている側とは反対側の面)には、ドレイン電極29が設けられている。・・・(略)・・・
【0061】
実施例2の縦型トレンチゲートMOSFETの各構成について、以下より詳しく説明する。
【0062】
高濃度n層23は、ソース電極28と良好なオーミック接触が得られるよう高いn型不純物濃度を有している。たとえば、1.0×10^(18)/cm^(3 )?1.0×10^(20)/cm^(3 )である。p層22のp型不純物濃度は、高濃度n層23よりも低いか同等であり、たとえば1.0×10^(17)/cm^(3 )?1.0×10^(20)/cm^(3 )である。n層21のn型不純物濃度は、p層22よりも低く、たとえば、1.0×10^(15)/cm^(3 )?1.0×10^(17)/cm^(3 )である。このように高濃度n層23、p層22、n層21の不純物濃度を設計しているため、空乏層の大部分はp層22とn層23のpn接合界面33からn層21側に広がる。このように不純物濃度を設計することで、n層23、p層22、n層21の構造が耐圧性能に与える影響を低減し、実施例2の縦型トレンチゲートMOSFETの耐圧設計を容易にしている。
【0063】
基板30、ソース電極28、ドレイン電極29については、実施例1の基板10、n電極13と同様の構成、およびその変形を採用することができる。なお、実施例2では溝27を設けてソース電極28が高濃度n層23とp層22の双方に接触する構成としているが、高濃度n層23のみに接触するようにしてもよいし、p層22に接触するホール排出用の電極を、ソース電極28とは別に設けてもよい。」

エ 引用文献4(国際公開第2011/108615号)の記載
「技術分野
[0001] 本発明は、半導体トランジスタに関し、更に詳しくは、GaN系半導体から成る活性層を有する半導体トランジスタに関する。
背景技術
[0002] 窒化ガリウム系半導体トランジスタ(以下、GaN系半導体トランジスタ)は、例えば、GaN系半導体から成る活性層と、活性層上に形成されたゲート絶縁膜とを有する。このゲート絶縁膜としては、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、SiN_(x)、GaO_(x)、HfO_(2)等が用いられている。」

「[0016] 以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る半導体トランジスタの構成を示す断面図である。半導体トランジスタ11は、GaN系半導体からなる活性層を有するGaN系半導体トランジスタである。半導体トランジスタ11は、基板1上に形成されたバッファ層2と、バッファ層2上にIII族窒化物半導体を用いて形成されたp型の活性層(p-GaN)3と、活性層3上に形成された第1及び第2の絶縁膜6,7からなるゲート絶縁膜と、を有する。
[0017] さらに、半導体トランジスタ11は、活性層3上に上記ゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極8gと、ゲート電極8gに対応して形成され、ソース電極10s及びドレイン電極10dにそれぞれオーミック接触するn^(+)型ソース領域5s及びn^(+)型ドレイン領域5dとを有する。」

「[0024] 以下、半導体トランジスタ11の製造方法について説明する。まず、図4Aに示すように、有機金属気相成長(MOCVD)法によりサファイア、SiC、Si、GaN等の基板1上に、AlN又はGaNよりなる厚さ20nm程度のバッファ層2と、厚さ1μm程度のp-GaN層3を順に成長する。p型ドーパントとしては、例えばMgが用いられ、そのドーパント濃度は、例えば1×10^(16)?1×10^(17)/cm^(3)とする。なお、基板1上に成長されるGaN等は、MOCVD法に限られるものではなく、ハイドライド気相成長(HVPE)法、分子線エピタキシー(MBE)法等の他の成長法を用いてもよい。
[0025] 次に、図4Bに示すように、p-GaN層3上にフォトレジスト4を塗布し、これを露光、現像してソース領域とドレイン領域に開口を形成した後に、その開口を通してn型ドーパント、例えばシリコンを注入してn^(+)型ソース領域5s、n^(+)型ドレイン領域5dを形成する。この場合、n型ドーパント濃度を、例えば1×10^(18)?2×10^(20)/cm^(3)とする。」

「[0033] 続いて、図6Cに示すように、フォトレジスト9を除去した後に、別のフォトレジスト(不図示)を用いたリフトオフ法により、図1に示すように、ソース領域5s上にソース電極10sを形成すると同時に、ドレイン領域5d上にドレイン電極10dを形成する。ソース電極10s、ドレイン電極10dは、Ti/Al、Ti/AlSi、Mo等の膜からなり、ドレイン領域5d、ソース領域5sを構成するn^(+)-GaN層に対してオーミック接触している。以上の工程を経ることで、図1に示す半導体トランジスタ11を製造できる。」

オ 引用文献5、6
(ア)引用文献5(特開平6-275868号公報)の記載
「【0013】
【実施例】[実施例1]MOCVD法を用い、サファイア基板の上にGaNよりなるバッファ層を約200オングストロームと、その上にノンドープのGaN層を2μmの膜厚で成長させ、そのGaN層の上にMgをドープしたGa_(0.9)Al_(0.1)N層を0.2μm成長させる。MgドープGa_(0.9)Al_(0.1)N層成長後、基板をアニーリング装置に入れ、窒素雰囲気中700℃で10分間アニーリングし、MgドープGa_(0.9)Al_(0.1)N層をさらに低抵抗化してp型とする。ホール測定の結果、このMgドープp型Ga_(0.9)Al_(0.1)N層の正孔キャリア濃度は1×10^(17)/cm^(3)であった。」

「【0016】
[実施例3]実施例1のノンドープGaN層の上に、Siをドープしたn型In_(0.1)Ga_(0.9)N層を0.2μm成長させた後、その上にNiの合金を蒸着して電極を付着する。なおこのSiドープIn_(0.1)Ga_(0.9)N層の電子キャリア濃度は2×10^(19)/cm^(3)であった。後は実施例1と同様にアニーリングした後、電極間の電流電圧特性を測定して、Siドープn型In_(0.1)Ga_(0.9)N層と電極とのオーミック接触を調べたところ、図1、Aと同一の直線が得られ、オーミック接触が確認された。」

(イ)引用文献6(特開2014-116483号公報)の記載
「【0015】
A.実施形態:
A1.半導体素子の構成:
図1は、半導体素子10の構成を、模式的に示す断面図である。半導体素子10は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体素子である。本実施形態では、半導体素子10は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。図1には、説明を容易にするために、相互に直交するXYZ軸が図示されている。以降の図3?6についても同様である。
【0016】
半導体素子10は、基板110と、第1のN型半導体層120と、P型半導体層130と、第2のN型半導体層140と、リセス220と、ゲート電極用トレンチ250と、絶縁膜255と、アイソレーション用トレンチ170と、ドレイン電極210と、Pボディ電極230と、ソース電極240と、ゲート電極260と、を備える。半導体素子10は、NPN型の半導体素子であり、第1のN型半導体層120と、P型半導体層130と、第2のN型半導体層140とが順に積層した構造を有する。半導体素子10は、リセス220を中心としたXZ平面に対して対称な構造を有しているが、図1には、半導体素子10の一部を簡略化して示している。
・・・(略)・・・
【0021】
リセス220は、Pボディ電極230を形成するための、第2のN型半導体層140の表面からP型半導体層130に到達する凹部である。アイソレーション用トレンチ170は、半導体素子10を他の半導体素子が形成された領域から分離するための、第2のN型半導体層140の表面から第1のN型半導体層120に到達する凹部である。ゲート電極用トレンチ250は、ゲート電極260を形成するための、第2のN型半導体層140の表面から第1のN型半導体層120に到達する凹部である。
【0022】
なお、リセス220の形状は、P型半導体層130が第2のN型半導体層140側に露出していれば、例えば段差状の形状やV字型の形状等の他の形状であってもよい。また、ゲート電極用トレンチ250の形状は、第2のN型半導体層140の表面から第1のN型半導体層120に到達していれば、例えばV字型の形状等他の形状であってもよい。同様にアイソレーション用トレンチ170の形状は、第1のN型半導体層120が第2のN型半導体層140側に露出していれば、例えば段差状の形状やV字型の形状等の他の形状であってもよい。また、アイソレーション用トレンチ170は、例えば、半導体素子10があらかじめ他の半導体素子と分離されていたり、イオン注入等の他の方法によって半導体素子10が他の半導体素子から分離されるのであれば、必ずしも半導体素子10に形成されていなくともよい。」

(4)本件訂正発明4について
ア 対比
本件訂正発明1を引用する本件訂正発明4と引用発明とを対比する。
(ア)本件訂正発明4は、本件訂正発明1を引用する発明であるところ、引用発明の「窒化ガリウムを材料とするn^(+)型のソース領域(第三のn型領域)4」は、本件訂正発明4の「ガリウムを含む窒化物半導体から形成されたn型半導体領域」に相当する。

(イ)引用発明の「窒化ガリウムを材料とするボディ領域(p型窒化物半導体層)16」は、本件訂正発明4の「前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域」に相当し、引用発明において、ソース領域4は、「ボディ領域16の表面の一部にn型不純物をイオン注入し、ソース領域(第三のn型領域)4を形成する工程」によって形成されるから、当該「ボディ領域16」は、ソース領域4に接する領域であるといえる。
したがって、本件訂正発明4と引用発明とは、「前記n型半導体領域と接し、前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域」を備える点で一致する。

(ウ)本件訂正発明4の「前記n型半導体領域とオーミック接触する第1電極と、前記p型半導体領域とオーミック接触する第2電極と、を備え、前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、前記同じ金属は、パラジウム、ニッケル、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属であり」と、引用発明の「ソース領域4の一部とボディ領域16の一部の表面上に、ソース電極2が設けられ、ソース電極2は、チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とし、ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続しており」とを対比する。
引用発明において、ソース電極2は、「チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とし、ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続して」いるから、ソース領域4とオーミック接触する電極であるとともに、ボディ領域16とオーミック接触する電極であり、また、当該電極は、チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とする、金属から主に形成されているといえる。
したがって、本件訂正発明4と引用発明とは、「前記n型半導体領域とオーミック接触し、前記p型半導体領域とオーミック接触する電極と、を備え、前記電極は、金属から主に形成されており、前記金属は、ニッケル」である点で一致する。

(エ)引用発明の「半導体装置」は、「前記半導体装置の製造方法」が、「p型窒化物半導層26を結晶成長させる工程であって、p型窒化物半導体層26には、p型不純物としてマグネシウム(Mg)が含まれている工程(p型窒化物半導体層形成工程)と、次に、n型不純物をイオン注入して、p型窒化物半導体層26の一部を、n型領域10に変質させ、イオン注入させなかった範囲をボディ領域16とする工程(n型領域形成工程)と、ボディ領域16の表面に開孔を有するマスク層を形成し、ボディ領域16の表面の一部にn型不純物をイオン注入し、ソース領域(第三のn型領域)4を形成する工程」とを備える方法であるところ、p型窒化物半導体層26に含まれているマグネシウムの濃度がボディ領域16のマグネシウム濃度となり、また、ソース領域4は、「ボディ領域16の表面の一部にn型不純物をイオン注入」して形成するから、ソース領域4のマグネシウム濃度もp型窒化物半導体層26の上記マグネシウム濃度と実質的に同じであることは明らかである。
したがって、本件訂正発明4と引用発明とは、「前記n型半導体領域のp型不純物濃度と、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、実質的に同じ」である点で一致する。

(オ)引用発明は、「n^(+)型ソース領域4の不純物濃度はおよそ1×10^(20)cm^(-3)」であるところ、n型半導体領域の「不純物濃度」は、通常は「n型不純物濃度」を意味することが当該技術分野における技術常識である(例えば、上記(2)に記載の周知例1(特開2009-177110号公報、後記の甲第2号証)の段落【0035】等を参照。)から、当該「不純物濃度」はn型不純物濃度を意味すると解される。
したがって、引用発明は、ソース領域4において、n型不純物濃度は、「およそ1×10^(20)cm^(-3)」であり、また、上記エから、p型不純物濃度は、p型窒化物半導体層26のマグネシウム濃度、すなわち、p型ボディ領域17の不純物濃度の「およそ1×10^(19)cm^(-3)」である。
したがって、引用発明は、ソース領域4において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差が、およそ0.9×10^(20)cm^(-3)であると解される。

(カ)以上から、本件訂正発明4と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「半導体装置であって、
ガリウムを含む窒化物半導体から形成されたn型半導体領域と、
前記n型半導体領域と接し、前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域と、
前記n型半導体領域とオーミック接触し、
前記p型半導体領域とオーミック接触する電極を備え、
前記電極は、金属から主に形成されており、
前記金属は、ニッケルであり、
前記n型半導体領域のp型不純物濃度と、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、実質的に同じである、半導体装置。」

<相違点>
<相違点1>
本件訂正発明4は、「前記n型半導体領域とオーミック接触する第1電極と、前記p型半導体領域とオーミック接触する第2電極と、を備え、前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、前記同じ金属は、ニッケルであ」るのに対し、引用発明では、「ソース領域4の一部とボディ領域16の一部の表面上に、ソース電極2が設けられ」、「ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続しており」、本件訂正発明4のように、「第1電極」と「第2電極」とを備える上記のようなものではない点。

<相違点2>
本件訂正発明4は、「前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」のに対し、引用発明は、およそ0.9×10^(20)cm^(-3)であると解される点。

<相違点3>
本件訂正発明4は、「前記窒化物半導体は、、アルミニウムとインジウムとの少なくとも一方を含む」ものであるのに対し、引用発明の「n型半導体層22」は、そのようなものではない点。

イ 判断
(ア)相違点2について
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。

a 引用発明において、「p型ボディ領域16の不純物濃度はおよそ1×10^(19)cm^(-3)であり、n^(+)型ソース領域4の不純物濃度はおよそ1×10^(20)cm^(-3)であり」、上記ア(オ)で検討したとおり、ソース領域4において、n型不純物濃度は、「およそ1×10^(20)cm^(-3)」であり、また、上記エから、p型不純物濃度は、「およそ1×10^(19)cm^(-3)」である。
したがって、引用発明は、ソース領域4において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差が、およそ0.9×10^(20)cm^(-3)であると解されるものの、引用文献1には、ソース領域4(n型半導体領域)における、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差」に着目したとする記載も示唆もない。

b 一方、n型半導体領域とp型半導体領域と前記n型半導体領域とオーミック接触する電極と前記p型半導体領域とオーミック接触する電極とを備えるGaN系半導体装置において、前記n型半導体領域のn型不純物濃度の数値範囲として、1×10^(20)cm^(-3)程度あるいはそれ以上の数値範囲とすること、更には、1×10^(20)cm^(-3)程度あるいはそれ以上であって、4.0×10^(20)cm^(-3)以下の数値範囲とすることは周知技術であり、例えば、上記の引用文献2?4には、下記のように記載されている。

c 引用文献2には、「高不純物濃度領域16bのp型不純物濃度は、例えば、1×10^(18)以上1×10^(22)cm^(-3)以下である」(段落【0020】)、「n型のGaN層18のn型不純物濃度は、例えば、1×10^(18)以上1×10^(22)cm^(-3)以下である。」(【0023】)と記載されている。
また、引用文献2には、「結果的に、n型のGaN層(第3のGaN系半導体層)18には、p型のGaN層(第2のGaN系半導体層)16、特に、高不純物濃度領域16bと略同一濃度のp型不純物が含有されることになる。」(【0045】)と記載されている。
更に、引用文献2には、「第1の電極22、および、第2の電極24は、例えば、Ti(チタン)/Al(アルミニウム)/Ti(チタン)の積層構造を備える。」(段落【0065】)と記載されている。)

d 引用文献3には、「図7は、実施例2の縦型トレンチゲートMOSFETの構成を示した図である。実施例2の縦型トレンチゲートMOSFETは、基板20と、基板20上に位置するn-GaNからなるn層21と、n層21上に位置するp-GaNからなるp層22と、p層22上に位置するn-GaNからなる高濃度n層23と、を有している。」(段落【0057】)、「高濃度n層23は、ソース電極28と良好なオーミック接触が得られるよう高いn型不純物濃度を有している。たとえば、1.0×10^(18)/cm^(3 )?1.0×10^(20)/cm^(3 )である。p層22のp型不純物濃度は、高濃度n層23よりも低いか同等であり、たとえば1.0×10^(17)/cm^(3 )?1.0×10^(20)/cm^(3 )である。」(【0062】)と記載されている。
更に、引用文献3には、「n電極13としては、n型のIII 族窒化物半導体に対してオーミックコンタクトをとれる材料が好ましい。たとえば、Ti/Al/Ni/Au、TiN/Al、Pd/Ti/Alなども用いることができる。また、p電極14も同様に、p型のIII 族窒化物半導体に対してオーミックコンタクトをとれる材料が好ましく、たとえば、Pd/Au、Co/Auなども用いることができる。」(段落【0036】)と記載されている。

e 引用文献4には、GaN系半導体トランジスタに関し、「p型の活性層(p-GaN)3」(段落[0016])、「ソース電極10s及びドレイン電極10dにそれぞれオーミック接触するn^(+)型ソース領域5s及びn^(+)型ドレイン領域5dとを有する。」(段落[0017])、「p-GaN層3を順に成長する。p型ドーパントとしては、例えばMgが用いられ、そのドーパント濃度は、例えば1×10^(16)?1×10^(17)/cm^(3)とする。」(段落[0024])、「p-GaN層3上にフォトレジスト4を塗布し、これを露光、現像してソース領域とドレイン領域に開口を形成した後に、その開口を通してn型ドーパント、例えばシリコンを注入してn^(+)型ソース領域5s、n^(+)型ドレイン領域5dを形成する。この場合、n型ドーパント濃度を、例えば1×10^(18 )?2×10^( 20)/cm^(3 )とする。」(段落[0025])と記載されている。
更に、引用文献4には、「ソース電極10s、ドレイン電極10dは、Ti/Al、Ti/AlSi、Mo等の膜からなり」と記載されている。

f また、上記cから、引用文献2に記載の技術は、n型のGaN層18において、n型不純物濃度の数値範囲が1×10^(18)以上1×10^(22)cm^(-3)以下であるので、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差が、1×10^(18)?1×10^(22)cm^(-3)程度のものも含むと解される。
上記dから、引用文献3に記載の技術は、n-GaNからなる高濃度n層23において、高濃度n層23の不純物濃度の上限値が1.0×10^(20)/cm^(3)であるので、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差が、1×10^(20)/cm^(3)程度のものも含むと解される。
上記eから、引用文献4には、GaN系半導体トランジスタに関し、n^(+)型ソース領域5s及びn^(+)型ドレイン領域5dにおいて、n^(+)型ソース領域5sの不純物濃度の上限値が2×10^(20)/cm^(3)であるので、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差が、およそ2×10^(20)cm^(-3)程度のものも含むと解される。
しかしながら、引用文献2?4には、p型半導体領域におけるp型不純物濃度の数値範囲と、当該p型半導体領域にn型不純物を注入して形成したn型半導体領域(引用文献2、4を参照。)におけるn型不純物濃度の数値範囲が開示されているに過ぎず、n型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差に着目したとする記載も示唆もない。
また、上記(3)オ(ア)、(イ)に摘記の引用文献5、6にも、n型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差に着目したとする記載や示唆はない。

g 一方、本件訂正発明4は、「前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」というものであり、「『n型不純物濃度とp型不純物濃度の差』の上限値を『1.0×10^(21)cm^(-3)以下』とすることにより、n型半導体領域の表面の荒れを抑制できる。」(本件特許明細書の段落【0009】)というものであり、また、「より低い接触抵抗を得る観点から、『n型不純物濃度とp型不純物濃度の差』は、『1.0×10^(20)cm^(-3)以上』であることがいっそう好ましく、イオン注入による半導体の表面の荒れを抑制する観点から、『n型不純物濃度とp型不純物濃度の差』は、『4.0×10^(20)cm^(-3)以下』であることがより好ましい。」(本件特許明細書の段落【0070】)というものである。

しかも、本件訂正発明4は、「半導体装置であって」、「前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、前記同じ金属は、パラジウム、ニッケル、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属であ」るものであるが、上記c?eのとおり、引用文献2?4に記載された半導体装置は、そのようなものではない。

そうすると、「ボディ領域16の表面に、窒化ガリウムを材料とするn^(+)型のソース領域(第三のn型領域)4が設けられており、ソース領域4の一部とボディ領域16の一部の表面上に、ソース電極2が設けられ、ソース電極2は、チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とし、ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続して」いる引用発明において、引用文献2?6に記載された技術的事項を参酌しても、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差」に着目して、その数値範囲を、「1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」と限定することは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。そして、仮に、引用発明において、「n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」と限定することに想到し得たとしても、その結果として、より低い接触抵抗を得ることと、イオン注入による半導体の表面の荒れを抑制することという格別顕著な効果を得られることを、当業者が予測し得たとは認められない。

h したがって、引用発明において、引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて、相違点2に係る本件訂正発明4の構成とすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。

(イ)よって、上記相違点1、3について判断するまでもなく、本件訂正発明4は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)特許異議申立人伊藤泰和は、令和3年3月16日に提出した意見書において、「n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差を「1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下」にすることは、n型半導体領域に電極をオーミック接触させる場合の「普通の濃度範囲」です。」と主張する。
しかしながら、上記a?fで検討したとおり、引用文献2?6には、n型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差に着目したとする記載や示唆はないから、n型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差を所定の数値範囲とすることが、n型半導体領域に電極をオーミック接触させる場合の「普通の濃度範囲」であるというかかる主張には理由がない。

(5)本件訂正発明5ないし9について
本件訂正発明5ないし9は、本件訂正発明4の「前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」と同一の構成を備えるものであるから、上記(4)に示した理由と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(6)独立特許要件についてのまとめ
上記(1)アのとおり、本件訂正発明3は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、独立特許要件を満たし、上記(4)、(5)のとおり、本件訂正発明4ないし9は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反せず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、本件訂正後の請求項3ないし9に係る係る訂正事項2ないし8による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合する。

6 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであり、本件訂正請求のうち、特許異議の申立てがされていない請求項3ないし9に係る訂正事項2ないし8による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合するから、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(上記「本件訂正発明1」)は、上記「第2」「5(1)ク(ア)」に記載のとおりのものである。

第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許(以下「本件発明1」という。)に対して、当審が令和2年11月30日に特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件発明1は、上記引用文献1に記載の発明及び上記引用文献2?4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

2 引用文献、甲号証の記載
(1)引用文献1の記載と引用発明
ア 取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献1(特開2009-283692号公報。甲第1号証)には、上記「第2」「5(3)ア(ア)」に示す事項が記載されている。

イ したがって、引用文献1には、上記「第2」「5(3)ア(イ)」に記載の引用発明が記載されていると認められる。

(2)引用文献2の記載
取消理由通知(決定の予告)において周知例として提示した引用文献2(特開2015-56486号公報)には、上記「第2」「5(3)イ」に示す事項が記載されている。

(3)引用文献3の記載
取消理由通知(決定の予告)において周知例として提示した引用文献3(特開2014-13886号公報)には、上記「第2」「5(3)ウ」に示す事項が記載されている。

(4)引用文献4の記載
取消理由通知(決定の予告)において周知例として提示した引用文献4(国際公開2011/108615号。甲第4号証)には、上記「第2」「5(3)エ」に示す事項が記載されている。

(5)甲第2号証の記載
甲第2号証(特開2009-177110号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。 図1は、本発明の第1の実施形態に係る窒化物半導体素子の構造を説明するための模式的な断面図である。 この窒化物半導体素子は、基板1と、基板1の一方面に形成された窒化物半導体積層構造部2とを備えている。
【0032】
基板1としては、たとえば、サファイア基板などの絶縁性基板や、GaN基板、ZnO基板、Si基板およびSiC基板などの導電性基板を適用することができる。この実施形態では、導電性基板が適用される。 窒化物半導体積層構造部2は、基板1に積層されたn^(-)型のGaN(窒化ガリウム)からなるn^(-)型層3(第1層)と、n-型層3に積層されたp型不純物を含むGaNからなるp型層4(第2層)とを備えている。
・・・(略)・・・
【0034】
トレンチ5は、断面略V字形に形成されており、積層方向に直交する方向に延びるストライプ状に形成されている。また、トレンチ5は、図1では図示されていないが、そのストライプ方向と直交する幅方向(以下、この方向を単に「幅方向」ということがある。)に一定の間隔を空けて複数形成されている。 p型層4において、トレンチ5の傾斜した側面(後述する壁面8)の上部から、幅方向に広がるトレンチ5の周辺領域は、p型不純物よりもn型不純物が高濃度に含有されるn^(+)型領域6(n型領域)である。一方、p型層4において、n^(+)型領域6以外の領域は、n型不純物よりもp型不純物が高濃度に含有されるボディ領域7である。
【0035】
n^(+)型領域6は、n^(-)型層3よりも高い不純物濃度でn型不純物がイオン注入された領域であり、その濃度は、たとえば、1×10^(18)?1×10^(20)cm^(-3)である。一方、n^(-)型層3のn型不純物濃度は、たとえば、1×10^(16)?1×10^(17)cm^(-3)である。 また、トレンチ5の傾斜した側面は、n^(-)型層3、ボディ領域7および^(n+)型領域6に跨がる壁面8を形成している。
・・・(略)・・・
【0040】
ゲート絶縁膜9には、p型層4の最表面21を露出させる開口12および開口13が形成されている。具体的には、開口12は、n^(+)型領域6の、積層界面に平行な最表面22を露出させる開口である。一方、開口13は、ボディ領域7の、積層界面に平行な最表面23を露出させる開口である。 そして、開口12から露出するn^(+)型領域6には、開口12を介して、ソース電極14が形成されている。ソース電極14は、たとえば、Tiと、このTiに積層されたAlからなるTi/Al合金などの金属を用いて形成することができ、n^(+)型領域6に電気的に接続されている。ソース電極14を、Alを含む金属で形成しておくことにより、ソース電極14とn^(+)型領域6との間の接合部で良好なオーミック特性を得ることができる。ソース電極14は、その他、MoもしくはMo化合物(たとえば、モリブデンシリサイド)、TiもしくはTi化合物(たとえば、チタンシリサイド)、またはWもしくはW化合物(たとえば、タングステンシリサイド)を用いて形成してもよい。
【0041】
一方、開口13から露出するボディ領域7には、開口13を介して、ボディ用電極15が形成されている。ボディ用電極15は、たとえば、Niと、このNiに積層されたAuとからなるNi/Au合金、Pd/Au合金、Pd/Ti/Au合金、Pd/Pt/Au合金およびPtなどの金属を用いて形成することができ、ボディ領域7に電気的に接続されている。上記した金属は、主としてp型不純物を含むIII族窒化物半導体に対するコンタクト抵抗が低い。そのため、ボディ用電極15を、上記した金属で形成しておくことにより、ボディ用電極15とボディ領域7との間で良好なオーミック特性を得ることができる。また、ボディ用電極15は、配線(図示せず)を介してソース電極14と電気的に接続されている。」

(6)甲第3号証の記載
甲第3号証(特開平9-232632号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0027】この半導体発光素子は、絶縁性のサファイア基板11上に窒化ガリウム系化合物半導体からなるn型層12とp型層13とを積層したp-n接合ウエハにおいて、前記p型層13及びn型層12の表面上には、同一の金属からなるp側電極14及びn側電極15がそれぞれ形成されている。
・・・(略)・・・
【0029】前記p側電極14及びn側電極15の電極材料としては、p側及びn側共に、より良好なオーミック特性を得るために、本実施形態では、Ni(ニッケル)とTi(チタン)とAu(金)を積層した合金を用いている。但し、この電極材料としては、Au、Pd(パラジュウム)、Ti、Pt(白金)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、Al(アルミニューム)、Co(コバルト)、Rh(ロジューム)、Ir(イリジューム)、Mn(マンガン)、V(バナジューム)、Sc(スカンジューム)、Mg(マグネシューム)、Zr(ジルコニューム)などの金属単体やこれらの金属より構成される合金、さらにはこれらの金属や合金からなる層構造としてもよい。例えば、NiとAuを積層した合金、またはTiとAuを鏡層した合金であっても、良好なオーミック特性を得ることができる。」

3 当審の判断
(1)対比
本件訂正発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「窒化ガリウムを材料とするn^(+)型のソース領域(第三のn型領域)4」は、本件訂正発明1の「ガリウムを含む窒化物半導体から形成されたn型半導体領域」に相当する。

イ 引用発明の「窒化ガリウムを材料とするボディ領域(p型窒化物半導体層)16」は、本件訂正発明1の「前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域」に相当し、引用発明において、ソース領域4は、「ボディ領域16の表面の一部にn型不純物をイオン注入し、ソース領域(第三のn型領域)4を形成する工程」によって形成されるから、当該「ボディ領域16」は、ソース領域4に接する領域であるといえる。
したがって、本件訂正発明1と引用発明とは、「前記n型半導体領域と接し、前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域」を備える点で一致する。

ウ 本件訂正発明1の「前記n型半導体領域とオーミック接触する第1電極と、前記p型半導体領域とオーミック接触する第2電極と、を備え、前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、前記同じ金属は、パラジウム、ニッケル、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属であり」と、引用発明の「ソース領域4の一部とボディ領域16の一部の表面上に、ソース電極2が設けられ、ソース電極2は、チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とし、ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続しており」とを対比する。
引用発明において、ソース電極2は、「チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とし、ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続して」いるから、ソース領域4とオーミック接触する電極であるとともに、ボディ領域16とオーミック接触する電極であり、また、当該電極は、チタン、アルミニウム、ニッケル及び金を材料とする、金属から主に形成されているといえる。
したがって、本件訂正発明1と引用発明とは、「前記n型半導体領域とオーミック接触し、前記p型半導体領域とオーミック接触する電極を備え、前記電極は、金属から主に形成されており、前記金属は、ニッケル」である点で一致する。

エ 引用発明の「半導体装置」は、「前記半導体装置の製造方法」が、「p型窒化物半導層26を結晶成長させる工程であって、p型窒化物半導体層26には、p型不純物としてマグネシウム(Mg)が含まれている工程(p型窒化物半導体層形成工程)と、次に、n型不純物をイオン注入して、p型窒化物半導体層26の一部を、n型領域10に変質させ、イオン注入させなかった範囲をボディ領域16とする工程(n型領域形成工程)と、ボディ領域16の表面に開孔を有するマスク層を形成し、ボディ領域16の表面の一部にn型不純物をイオン注入し、ソース領域(第三のn型領域)4を形成する工程」とを備える方法であるところ、p型窒化物半導体層26に含まれているマグネシウムの濃度がボディ領域16のマグネシウム濃度となり、また、ソース領域4は、「ボディ領域16の表面の一部にn型不純物をイオン注入」して形成するから、ソース領域4のマグネシウム濃度もp型窒化物半導体層26の上記マグネシウム濃度と実質的に同じであることは明らかである。
したがって、本件訂正発明1と引用発明とは、「前記n型半導体領域のp型不純物濃度と、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、実質的に同じ」である点で一致する。

オ 引用発明は、「n^(+)型ソース領域4の不純物濃度はおよそ1×10^(20)cm^(-3)」であるところ、n型半導体領域の「不純物濃度」は、通常は「n型不純物濃度」を意味することが当該技術分野における技術常識である(例えば、上記「第2」「5(2)」に記載の周知例1(特開2009-177710号公報、上記「2(5)」に摘記の甲第2号証)の段落【0035】等を参照。)から、当該「不純物濃度」はn型不純物濃度を意味すると解される。
したがって、引用発明は、ソース領域4において、n型不純物濃度は、「およそ1×10^(20)cm^(-3)」であり、また、上記エから、p型不純物濃度は、p型窒化物半導体層26のマグネシウム濃度、すなわち、p型ボディ領域17の不純物濃度の「およそ1×10^(19)cm^(-3)」である。
したがって、引用発明は、ソース領域4において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差が、およそ0.9×10^(20)cm^(-3)であると解される。

カ 以上から、本件訂正発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「半導体装置であって、
ガリウムを含む窒化物半導体から形成されたn型半導体領域と、
前記n型半導体領域と接し、前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域と、
前記n型半導体領域とオーミック接触し、
前記p型半導体領域とオーミック接触する電極を備え、
前記電極は、金属から主に形成されており、
前記金属は、ニッケルであり、
前記n型半導体領域のp型不純物濃度と、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、実質的に同じである、半導体装置。」

<相違点>
<相違点A>
本件訂正発明1は、「前記n型半導体領域とオーミック接触する第1電極と、前記p型半導体領域とオーミック接触する第2電極と、を備え、前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、前記同じ金属は、ニッケルであ」るのに対し、引用発明では、「ソース領域4の一部とボディ領域16の一部の表面上に、ソース電極2が設けられ」、「ソース領域4とボディ領域16の双方に電気的に接続しており」、本件訂正発明1のように、「第1電極」と「第2電極」とを備える上記のようなものではない点。

<相違点B>
本件訂正発明1は、「前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である」のに対し、引用発明は、およそ0.9×10^(20)cm^(-3)であると解される点。

(2)判断
ア 相違点Bについて
事案に鑑み、まず相違点Bについて検討する。
甲第2号証、甲第3号証の記載事項は、上記「2(5)、(6)」に記載したとおりであり、甲第2号証、甲第3号証には、n型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差に着目したとする記載や示唆はない。
したがって、上記相違点Bは、上記「第2」「5(4)ア(カ)」に記載した「相違点2」と同じであるから、上記「第2」「5(4)イ(ア)」で相違点2について判断したのと同様の理由で、引用発明において、引用文献2?6、甲第2号証、甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、相違点Bに係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者であっても容易になし得たことではない。

イ よって、上記相違点Aについて検討するまでもなく、本件訂正発明1は、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2?6、甲第2号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(3)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人伊藤泰和は、令和3年3月16日に提出した意見書において、「n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差を「1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下」にすることは、n型半導体領域に電極をオーミック接触させる場合の「普通の濃度範囲」です。」と主張する。
しかしながら、上記「第2」「5(4)イ(ウ)」に記載したとおり、引用文献2?6には、n型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差に着目したとする記載や示唆はないから、n型半導体領域におけるn型不純物濃度とp型不純物濃度の差を所定の数値範囲とすることが、n型半導体領域に電極をオーミック接触させる場合の「普通の濃度範囲」であるというかかる主張には理由がない。
よって、本件訂正発明1は、引用文献1ないし引用文献4並びに甲第2号証及び甲第3号証(すなわち、甲第1号証ないし甲第4号証及び引用文献2、引用文献3)が開示する発明から、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体材料として窒化ガリウム(GaN)を用い、p型不純物を含むp型半導体領域とn型不純物を含むn型半導体領域とを備える半導体装置が知られている(例えば、特許文献1など)。
【0003】
特許文献1において、n型半導体領域と接するソース電極は、n型半導体領域とオーミック特性を得るために、チタン(Ti)およびアルミニウム(Al)により形成されており、p型半導体領域と接するボディ電極は、p型半導体領域とオーミック特性を得るために、ニッケル(Ni)により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-177110号公報
【特許文献2】特開平7-045867号公報
【特許文献3】特開平9-064337号公報
【特許文献4】特開2006-313773号公報
【特許文献5】特許第4175157号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、n型半導体領域と接する電極と、p型半導体領域と接する電極とは、異なる材料により形成されている。しかし、n型半導体領域と接する電極と、p型半導体領域と接する電極とを異なる材料により形成する場合、それぞれの電極を異なる工程において形成する必要があり、製造工程が煩雑になる。このため、n型半導体領域と接する電極と、p型半導体領域と接する電極とを同じ材料により形成する技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、半導体装置であって、
ガリウムを含む窒化物半導体から形成されたn型半導体領域と、
前記n型半導体領域と接し、前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域と、
前記n型半導体領域とオーミック接触する第1電極と、
前記p型半導体領域とオーミック接触する第2電極と、を備え、
前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、
前記同じ金属は、パラジウム、ニッケル、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属であり、
前記n型半導体領域のp型不純物濃度と、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、実質的に同じであり、
前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である、半導体装置である。
また、本発明は以下の形態として実現することも可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、半導体装置が提供される。この半導体装置は、ガリウムを含む窒化物半導体から形成されたn型半導体領域と、前記n型半導体領域と接し、前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域と、前記n型半導体領域とオーミック接触する第1電極と、前記p型半導体領域とオーミック接触する第2電極と、を備え、前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、前記同じ金属は、パラジウム、ニッケル、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属であり、前記n型半導体領域のp型不純物濃度と、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、実質的に同じであり、前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(19)cm^(-3)以上である。この形態の半導体装置によれば、第1の電極と第2の電極とが同じ金属から主に形成されているため、製造時の煩雑さを軽減できる。
【0008】
(2)上述の半導体装置において、前記第1電極と前記第2電極とは同一の電極であってもよい。この形態の半導体装置によれば、半導体装置の微細化が可能となる。
【0009】
(3)上述の半導体装置において、前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(21)cm^(-3)以下であってもよい。この形態の半導体装置によれば、n型半導体領域の表面の荒れを抑制できる。
【0010】
(4)上述の半導体装置において、前記窒化物半導体は、アルミニウムとインジウムとの少なくとも一方を含んでもよい。この形態の半導体装置においても、第1の電極と第2の電極とを同じ金属から形成させることの妨げにならない。
【0011】
(5)上述の半導体装置において、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、1.0×10^(18)cm^(-3)以上であってもよい。この形態の半導体装置によれば、良好なオーミック接触を得ることができる。
【0012】
(6)上述の半導体装置において、前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、5.0×10^(19)cm^(-3)以上であってもよい。この形態の半導体装置によれば、より良好なオーミック接触を得ることができる。
【0013】
(7)上述の半導体装置において、前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上であってもよい。この形態の半導体装置によれば、さらに良好なオーミック接触を得ることができる。
【0014】
(8)上述の半導体装置において、前記p型半導体領域に含まれるp型不純物は、マグネシウムと亜鉛との少なくとも一方を含んでもよい。この形態の半導体装置においても、第1の電極と第2の電極とを同じ金属から形成させることの妨げにならない。
【0015】
(9)上述の半導体装置において、前記n型半導体領域に含まれるn型不純物は、ケイ素とゲルマニウムとの少なくとも一方を含んでもよい。この形態の半導体装置においても、第1の電極と第2の電極とを同じ金属から形成させることの妨げにならない。
【0016】
(10)上述の半導体装置において、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、前記第2電極と接触する面から離れるほど低くなってもよい。この形態の半導体装置によれば、p型半導体領域と第2電極との接触抵抗を軽減できる。
【0017】
(11)上述の半導体装置において、前記n型半導体領域と前記第1電極とが接触する面と、前記p型半導体領域と前記第2電極とが接する面とは、異なる平面上にあってもよい。この形態の半導体装置によれば、第1の電極と第2の電極とが同じ金属から主に形成されているため、製造時の煩雑さを軽減できる。
【0018】
本発明は、半導体装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、半導体装置の製造方法や、上述の製造方法を用いて半導体装置を製造する装置などの形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の半導体装置によれば、第1の電極と第2の電極とが同じ金属から主に形成されているため、製造時の煩雑さを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態における半導体装置の構成を模式的に示す断面図。
【図2】第1実施形態における半導体装置の製造方法を示す工程図。
【図3】結晶成長後の基板の状態を模式的に示す断面図。
【図4】膜が形成された状態を模式的に示す断面図。
【図5】マスクが形成された状態を模式的に示す断面図。
【図6】イオン注入がp型半導体領域に行われた状態を模式的に示す断面図。
【図7】キャップ膜が形成された状態を模式的に示す断面図。
【図8】第1評価試験に用いた半導体素子の構成を模式的に示す断面図。
【図9】上方(+Z軸方向側)から半導体素子の構成を模式的に示す図。
【図10】第1評価試験の結果を示す図。
【図11】第2評価試験の結果を示す図。
【図12】第3評価試験の結果を示す図。
【図13】第2実施形態における半導体装置の構成を模式的に示す断面図。
【図14】第3実施形態における半導体装置の構成を模式的に示す断面図。
【図15】変形例を示す模式図。
【図16】変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.第1実施形態
A-1.半導体装置の構成
図1は、第1実施形態における半導体装置100の構成を模式的に示す断面図である。半導体装置100は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置100は、縦型トレンチMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。本実施形態では、半導体装置100は、電力制御に用いられ、パワーデバイスとも呼ばれる。
【0022】
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。図1のXYZ軸のうち、X軸は、図1の紙面左から紙面右に向かう軸である。+X軸方向は、紙面右に向かう方向であり、-X軸方向は、紙面左に向かう方向である。図1のXYZ軸のうち、Y軸は、図1の紙面手前から紙面奥に向かう軸である。+Y軸方向は、紙面奥に向かう方向であり、-Y軸方向は、紙面手前に向かう方向である。図1のXYZ軸のうち、Z軸は、図1の紙面下から紙面上に向かう軸である。+Z軸方向は、紙面上に向かう方向であり、-Z軸方向は、紙面下に向かう方向である。
【0023】
半導体装置100は、基板110と、半導体層112と、p型半導体領域114と、n型半導体領域116と、を備える。p型半導体領域114は、半導体層114とも呼び、n型半導体領域116は、半導体層116とも呼ぶ。半導体装置100は、さらに、絶縁膜130と、第1電極141と、第2電極144と、ゲート電極142と、ドレイン電極143とを備え、また、トレンチ122,128を有する。
【0024】
半導体装置100の基板110は、X軸およびY軸に沿って広がる板状を成す半導体である。本実施形態では、基板110は、ガリウム(Ga)を含む窒化物半導体から主に形成されている。本実施形態では、基板110は、主に、窒化ガリウム(GaN)から形成されている。本明細書の説明において、「Xから主に形成されている」とは、モル分率においてXを90%以上含有することを意味する。本実施形態では、基板110は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。
【0025】
半導体装置100の半導体層112は、基板110の+Z軸方向側に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる第1の半導体層である。本実施形態では、半導体層112は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、半導体層112は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。本実施形態では、半導体層112に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、約1×10^(16)cm^(-3)である。本実施形態では、半導体層112は、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)によって基板110の上に形成された層である。本実施形態では、半導体層112の厚さ(Z軸方向の長さ)は、約10μm(マイクロメートル)である。
【0026】
半導体装置100のp型半導体領域114は、半導体層112の+Z軸方向側に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる第2の半導体層である。p型半導体領域114は、ガリウム(Ga)を含む窒化物半導体により形成されている。本実施形態において、p型半導体領域114は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。
【0027】
本実施形態では、p型半導体領域114は、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有するp型半導体の領域である。本実施形態では、p型半導体領域114に含まれるマグネシウム(Mg)濃度の平均値は、1.0×10^(18)cm^(-3)である。本実施形態では、p型半導体領域114は、MOCVDによって半導体層112の上に形成された層である。本実施形態では、p型半導体領域114の厚さ(Z軸方向の長さ)は、約1.2μmである。
【0028】
半導体装置100のn型半導体領域116は、p型半導体領域114の+Z軸方向側の一部に位置し、X軸およびY軸に沿って広がる第3の半導体層である。n型半導体領域116は、ガリウム(Ga)を含む窒化物半導体により形成されている。本実施形態において、p型半導体領域114は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、n型半導体領域116は、ケイ素(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。
【0029】
本実施形態では、n型半導体領域116は、p型半導体領域114の+Z軸方向側の一部に対してケイ素(Si)のイオン注入が行われたことにより形成された領域である。このため、p型半導体領域114のp型不純物濃度と、n型半導体領域116のp型不純物濃度は、実質的に同じである。また、p型半導体領域114とn型半導体領域116とは接している。なお、「実質的に同じ濃度」とは、濃度の差が±10倍以内であることを示す。本実施形態では、n型半導体領域116に含まれるケイ素(Si)濃度の平均値は、2.1×10^(20)cm^(-3)である。このため、本実施形態において、n型半導体領域116のp型不純物濃度と実質的に同じ濃度とは、2.1×10^(19)cm^(-3)以上2.1×10^(21)cm^(-3)以下の濃度を指す。
【0030】
n型半導体領域116において、n型不純物濃度とp型不純物濃度との差は、1.0×10^(19)cm^(-3)以上である。本実施形態では、n型不純物濃度とp型不純物濃度との差は、2.1×10^(20)cm^(-3)である。
【0031】
半導体装置100のトレンチ122は、半導体層112,114,116に形成され、半導体層112,114,116の厚さ方向(-Z軸方向)に落ち込んだ溝部である。トレンチ122は、n型半導体領域116の+Z軸方向側からp型半導体領域114及びn型半導体領域116を貫通し、半導体層112に至る。本実施形態では、トレンチ122は、半導体層112,114,116に対するドライエッチングによって形成される。
【0032】
半導体装置100のトレンチ128は、p型半導体領域112,114に形成され、半導体層112,114の厚さ方向(-Z軸方向)に落ち込んだ溝部である。トレンチ128は、p型半導体領域114の+Z軸方向側からp型半導体領域114を貫通し、半導体層112に至る。トレンチ128は、基板110上に形成された他の素子から半導体装置100を分離するために用いる。本実施形態では、トレンチ128は、n型半導体領域116より-X軸方向側に位置する。本実施形態では、トレンチ128は、p型半導体領域112,114に対するドライエッチングによって形成される。
【0033】
半導体装置100の絶縁膜130は、電気絶縁性を有する膜である。絶縁膜130は、トレンチ122の内側から外側にわたって形成されている。本実施形態では、絶縁膜130は、トレンチ122の内側に加え、p型半導体領域114およびn型半導体領域116における+Z軸方向側の面、並びに、トレンチ128の内側にわたって形成されている。本実施形態では、絶縁膜130は、二酸化ケイ素(SiO_(2))から主に形成されている。本実施形態では、絶縁膜130は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって形成された膜である。
【0034】
絶縁膜130は、コンタクトホール121と、コンタクトホール124とを有する。コンタクトホール121は、絶縁膜130を貫通してn型半導体領域116に至る貫通孔である。コンタクトホール124は、絶縁膜130を貫通してp型半導体領域114に至る貫通孔である。本実施形態では、コンタクトホール121,124は、絶縁膜130に対するウェットエッチングによって形成される。
【0035】
半導体装置100の第1電極141は、コンタクトホール121に形成された電極である。第1電極141は、n型半導体領域116とオーミック接触する。ここで、オーミック接触とは、ショットキー接触ではなく、コンタクト抵抗が比較的低い接触を意味する。本実施形態では、第1電極141は、パラジウム(Pd)から主に形成されている。
【0036】
半導体装置100の第2電極144は、コンタクトホール124に形成された電極である。第2電極144は、p型半導体領域114とオーミック接触する。本実施形態では、第2電極144は、第1電極141の材料と同じ金属であるパラジウム(Pd)から主に形成されている。
【0037】
半導体装置100のゲート電極142は、絶縁膜130を介してトレンチ122に形成された電極である。本実施形態では、ゲート電極142は、アルミニウム(Al)から主に形成されている。ゲート電極142に電圧が印加された場合、p型半導体領域114に反転層が形成され、この反転層がチャネルとして機能することによって、第1電極141とドレイン電極143との間に導通経路が形成される。
【0038】
半導体装置100のドレイン電極143は、基板110の-Z軸方向側の面に形成された電極である。ドレイン電極143は、基板110とオーミック接触する。本実施形態では、ドレイン電極143は、チタン(Ti)から形成されている層にアルミニウム(Al)から形成されている層を積層した後にアニール処理(熱処理)した電極である。
【0039】
A-2.半導体装置の製造方法
図2は、第1実施形態における半導体装置100の製造方法を示す工程図である。まず、製造者は、基板110を用意する。本実施形態では、基板110は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されており、ケイ素(Si)をドナー元素として含有するn型半導体である。
【0040】
製造者は、基板110の上に半導体層112,114をこの順に、結晶成長によって形成する(工程P110)。本実施形態では、製造者は、MOCVDを用いて半導体層112,114を形成する。
【0041】
図3は、結晶成長後の基板110の状態を模式的に示す断面図である。本実施形態では、半導体層112は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成され、ケイ素(Si)を第1のドナー元素として含有するn型半導体である。また、本実施形態では、p型半導体領域114は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成され、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有するp型半導体である。図3に示すとおり、基板110の上に半導体層112が形成され、半導体層112の上にp型半導体領域114が形成されている。なお、p型半導体領域114におけるp型不純物濃度は、結晶成長の条件を調整することにより、所望の濃度に調整することができる。
【0042】
結晶成長(工程P110(図2参照))の後、製造者は、p型半導体領域114中のマグネシウム(Mg)を活性化させるための熱処理を行う(工程P115)。
【0043】
熱処理(工程P115)の後、製造者は、p型半導体領域114の上からドナー元素をイオン注入する(工程P120)。本実施形態では、製造者は、第2のドナー元素としてケイ素(Si)をp型半導体領域114の中にイオン注入する。具体的には、まず、製造者は、p型半導体領域114の上に膜を形成する。
【0044】
図4は、膜210が形成された状態を模式的に示す断面図である。膜210は、イオン注入にて注入される不純物のp型半導体領域114における分布を調整するために用いる。つまり、膜210は、p型半導体領域114に注入されるドナー元素をp型半導体領域114の表面近傍に集めるために用いる。また、膜210は、イオン注入に伴うp型半導体領域114における表面の損傷を防止する機能も有する。本実施形態において、膜210として、膜厚が30nmである二酸化ケイ素(SiO_(2))の膜を用いる。本実施形態では、製造者は、プラズマCVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)によって膜210を形成する。次に、製造者は、膜210上の一部にマスク220を形成する。
【0045】
図5は、マスク220が形成された状態を模式的に示す断面図である。マスク220は、p型半導体領域114のドナー元素を注入しない領域の上に形成される。本実施形態では、製造者は、フォトレジスト(Photoresist)によってマスク220を形成する。本実施形態では、マスク220の膜厚は、約2μmである。
【0046】
次に、製造者は、p型半導体領域114の上からドナー元素をイオン注入する(工程P120)。本実施形態では、製造者は、p型半導体領域114に対してドナー元素であるケイ素(Si)をイオン注入する。本実施形態において、イオン注入の回数は、2回であり、イオン注入の態様を以下に示す。
<イオン注入の態様>
・1回目
加速電圧:50keV
ドーズ量:1×10^(15)cm^(-2)
・2回目
加速電圧:100keV
ドーズ量:1×10^(15)cm^(-2)
【0047】
図6は、イオン注入がp型半導体領域114に行われた状態を模式的に示す断面図である。イオン注入により、膜210のうちマスク220に覆われていない部分の下において、p型半導体領域114にドナー元素が注入された領域としてイオン注入領域116Aが形成される。
【0048】
イオン注入領域116Aにおけるn型不純物濃度は、膜210の材質や膜厚、イオン注入の加速電圧やドーズ量を調整することにより所望の濃度に調整することができる。なお、イオン注入領域116Aは、注入されたn型不純物がドナー元素として機能するように活性化されていないため、n型の導電性を有していない。このため、イオン注入領域116Aは、抵抗が高い領域である。
【0049】
次に、製造者は、p型半導体領域114にドナー元素を注入した後、p型半導体領域114の表面から膜210及びマスク220を除去する。本実施形態では、製造者は、ウェットエッチングによってマスク220及び膜210を除去する。以上により、イオン注入(工程P120(図2参照))が完了する。
【0050】
イオン注入(工程P120)を行った後、製造者は、n型半導体領域116におけるドナー元素を活性化させるために活性化アニール(工程P130)を行う。活性化アニールにおいて、製造者は、p型半導体領域114を加熱することによって、n型の導電性を有するn型半導体領域116をp型半導体領域114の上に形成する。まず、製造者は、p型半導体領域114及びイオン注入領域116Aの上にキャップ膜240を形成する。
【0051】
図7は、キャップ膜240が形成された状態を模式的に示す断面図である。キャップ膜240は、加熱に伴うp型半導体領域114及びイオン注入領域116Aにおける表面の損傷を防止する機能を有する。本実施形態では、製造者は、プラズマCVDによってキャップ膜240を形成する。また、本実施形態では、キャップ膜240は、窒化ケイ素(SiN)から主に形成されており、膜厚は、約50nmである。
【0052】
次に、製造者は、p型半導体領域114及びイオン注入領域116Aを加熱する。p型半導体領域114及びイオン注入領域116Aを加熱する温度は、800℃以上1250℃以下であることが好ましい。本実施形態では、製造者は、次の条件で熱処理を行う。
<熱処理の条件>
雰囲気ガス:窒素
加熱温度:1150℃
加熱時間:4分
【0053】
熱処理により、イオン注入領域116Aがn型半導体領域116となる。熱処理の後、製造者は、p型半導体領域114及びイオン注入領域116A(n型半導体領域116)の上からキャップ膜240を除去する。本実施形態では、製造者は、ウェットエッチングによってキャップ膜240を除去する。以上により、活性化アニール(工程P130(図2参照))が完了する。
【0054】
活性化アニール(工程P130)を行った後、製造者は、ドライエッチングによってトレンチ122,128を形成する(工程P140)。本実施形態では、製造者は、塩素系ガスを用いたドライエッチングによってトレンチ122,128を形成する。
【0055】
トレンチ122,128を形成した後(工程P140)、製造者は、絶縁膜130を形成する(工程P150)。本実施形態では、製造者は、p型半導体領域114及びn型半導体領域116の+Z軸方向側に露出した表面に対して、ALDによって絶縁膜130を成膜する。
【0056】
その後、製造者は、第1電極141と、第2電極144と、ゲート電極142と、ドレイン電極143とを形成する(工程P160)。具体的には、製造者は、絶縁膜130にコンタクトホール121,124(図1参照)をウェットエッチングによって形成する。その後、製造者は、同一の工程において、コンタクトホール121に第1電極141を形成し、コンタクトホール124に第2電極144を形成する。第1電極141および第2電極144を形成した後、製造者は、トレンチ122の上に絶縁膜130を介してゲート電極142を形成する。ゲート電極142を形成した後、製造者は、基板110の上にドレイン電極143を形成する。これらの工程を経て、半導体装置100が完成する。
【0057】
A-3.効果
第1実施形態によれば、第1電極141と第2電極144とが同じ金属から主に形成されているため、第1電極141と第2電極144とを同じ工程により形成することができる。このため、製造時の煩雑さを軽減できる。
【0058】
また、第1電極141と第2電極144とを異なる工程により形成する場合、フォトレジストによる複数回のマスク形成が必要となる。しかし、第1電極141と第2電極144とを同じ工程により形成することができるため、マスク形成を行う回数を軽減できる。この結果として、マスク形成の回数に起因する設計誤差についても少なくすることができ、半導体装置の微細化が可能となる。
【0059】
なお、第1電極141と第2電極144とを同じ金属から主に形成させることを可能とするためには、n型半導体領域116とオーミック接触が得られ、かつp型半導体領域114ともオーミック接触が得られる条件であることが必要となる。本実施形態の半導体装置100がこの条件を満たすことを裏付ける評価試験を以下に示す。
【0060】
A-4.第1評価試験
図8は、第1評価試験に用いた半導体素子300の構成を模式的に示す断面図である。図8には、図1と同様に、XYZ軸が図示されている。半導体素子300は、基板310と、バッファ層311と、半導体層312と、p型半導体領域320と、n型半導体領域330と、電極341,344とを備える。半導体素子300は、伝送線路モデル(Transfer Length Model:TLM)に基づく方法により接触抵抗を測定するために用いる素子である。
【0061】
半導体素子300の基板310は、サファイアから主に形成されている。半導体素子300のバッファ層311は、基板310の上にMOCVDによって形成された層である。
【0062】
半導体素子300の半導体層312は、バッファ層311の上にMOCVDによって形成された層である。半導体層312は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている真性半導体(i型半導体)である。
【0063】
半導体素子300のp型半導体領域320は、半導体層312の上にMOCVDによって形成された領域である。p型半導体領域320は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成され、マグネシウム(Mg)をアクセプタ元素として含有するp型半導体である。半導体素子300は、p型半導体領域320中のマグネシウム(Mg)を活性化させるための熱処理が予め行われている。
【0064】
半導体素子300のn型半導体領域330は、p型半導体領域320に対するイオン注入によって形成された領域である。このため、n型半導体領域330におけるp型不純物濃度は、p型半導体領域320におけるp型不純物濃度と同じである。n型半導体領域330は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている領域である。なお、p型半導体領域320の構造は、半導体装置100のp型半導体領域114と対応する、n型半導体領域330の構造は、半導体装置100のn型半導体領域116と対応する。
【0065】
電極341は、n型半導体領域330と接する電極であり、電極344は、p型半導体領域320と接する電極である。なお、電極341は、半導体装置100の第1電極141と対応する。電極344は、半導体装置100の第2電極144と対応する。
【0066】
図9は、上方(+Z軸方向側)から半導体素子300の構成を模式的に示す図である。電極341のX軸方向の幅は、電極344のX軸方向の幅と同じであり、200μmである。また、電極341は、それぞれ4個ずつY軸方向に並んで配されており、Y軸方向におけるそれぞれの電極344の間隔は、+Y軸方向側から順に、5μm、10μm、15μmである。電極344の配置についても同様である。この評価試験では、互いに隣接する電極341同士に電流を流し、また、互いに隣接する電極344同士に電流を流すことにより、接触抵抗を測定する。
【0067】
図10は、第1評価試験の結果を示す図である。図10において、各項目は以下の内容を意味する。「電極」の項目は、電極341および電極344の材料及び厚さを示す。「p型不純物Mg濃度(Na)[cm^(-3)]」は、n型半導体領域330におけるp型不純物であるマグネシウム(Mg)の濃度[cm^(-3)]を示す。「n型不純物Si濃度(Nd)[cm^(-3)]」は、n型半導体領域330におけるn型不純物であるケイ素(Si)の濃度[cm^(-3)]を示す。「Nd-Na[cm^(-3)]」は、n型不純物Si濃度(Nd)[cm^(-3)]からp型不純物Mg濃度(Na)[cm^(-3)]を差し引いた濃度[cm^(-3)]を示す。濃度は、いずれも二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定した値を示す。なお、各濃度は、電極と接する面における濃度を測定することが好ましいが、二次イオン質量分析法により分析する際、最表面では正確な分析が困難であるため、最表面から深さが25nmの地点における濃度を示す。
【0068】
「接触抵抗[Ω・cm^(2)]」は、伝送線路モデル(Transfer Length Model:TLM)に基づく方法により接触抵抗を測定した値[Ω・cm^(2)]を示す。この項目における「‐」とは、抵抗が高すぎるために接触抵抗が評価できなかったことを示す。また、「評価結果」は、接触抵抗を以下のように評価した結果である。
・A:接触抵抗が、2.0×10^(-4)Ω・cm^(2)以下の場合
・B:接触抵抗が、2.0×10^(-4)Ω・cm^(2)より大きく、2.0×10^(-3)Ω・cm^(2)以下の場合
・C:接触抵抗が、2.0×10^(-3)Ω・cm^(2)より大きく接触抵抗が評価できなかった場合
【0069】
一般に、n型GaNに対してパラジウム(Pd)やニッケル(Ni)を用いた電極を形成する場合、オーミック特性が得られないことが知られている(例えば、「A.C.Schmits,et al.Journal of Electric Materials,Vol.27,No.4,p.255-260(1998)」参照)。しかし、図10に示す実施例1から7の結果から、「Nd-Na[cm^(-3)]」が1.0×10^(19)cm^(-3)以上である場合、接触抵抗が低く、n型半導体領域330に対してパラジウム(Pd)やニッケル(Ni)を用いた電極を形成した場合においても、オーミック特性が得られることが分かる。なお、「Nd-Na[cm^(-3)]」がより小さい6.0×10^(18)cm^(-3)である場合、比較例1及び2に示すように、n型半導体領域330に対してパラジウム(Pd)やニッケル(Ni)を用いた電極を形成した場合においても、オーミック特性が得られないことが分かる。
【0070】
より低い接触抵抗を得る観点から、「Nd-Na[cm^(-3)]」は、1.7×10^(19)cm^(-3)以上であることが好ましく、3.0×10^(19)cm^(-3)以上であることがより好ましく、5.0×10^(19)cm^(-3)以上であることがさらに好ましく、1.0×10^(20)cm^(-3)以上であることがよりいっそう好ましい。一方、イオン注入による半導体の表面の荒れを抑制する観点から、「Nd-Na[cm^(-3)]」は、1.0×10^(21)cm^(-3)以下であることが好ましく、4.0×10^(20)cm^(-3)以下であることがより好ましい。また、「p型不純物Mg濃度(Na)[cm^(-3)]」は、1.0×10^(18)cm^(-3)以上であることが好ましい。
【0071】
A-5.第2評価試験
試験者は、第1評価試験の実施例2と実施例7のサンプルを用いて、接触抵抗と熱処理の有無及び熱処理温度との関係を評価した。
【0072】
図11は、第2評価試験の結果を示す図である。図11において、「熱処理温度[℃]」は、熱処理の温度を示し、他の項目は図10と同じ内容を意味する。「熱処理温度[℃]」の項目において「なし」とは、熱処理を行っていないとこを示す。熱処理条件は、窒素雰囲気下にて5分とした。なお、図10における実施例2と図11における実施例8は同じ結果を示し、図10における実施例7と図11における実施例13は同じ結果を示す。
【0073】
図11に示す結果から、熱処理の有無や熱処理温度の差により、接触抵抗は大きく変動しないことが分かる。つまり、「Nd-Na[cm^(-3)]」が1.0×10^(19)cm^(-3)以上である場合、熱安定性の高い半導体装置が得られることが分かる。また、電極を形成後に、熱処理を行ってもよく、行わなくてもよいことが図11に示す結果から分かる。
【0074】
A-6.第3評価試験
試験者は、第1評価試験の電極として用いたパラジウム(Pd)やニッケル(Ni)の変わりに、電極としてその他の金属を用いた場合に、p型半導体領域320に対するオーミック特性が得られるかどうかの評価を行った。
【0075】
図12は、第3評価試験の結果を示す図である。この試験では、試験者は、IV特性からオーミック特性が得られるかどうかを評価した。パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)の代わりの電極として、半導体と接触する側から順にチタン(Ti)層(厚み:30nm)と、アルミニウム(Al)層(厚み:300nm)とを積層した電極(「比較電極」とも呼ぶ)を用いた。
【0076】
図12において、紙面左側から順に、(i)電極としてパラジウム(Pd)を用いた場合の結果と、(ii)電極としてニッケル(Ni)を用いた結果と、(iii)比較電極を用いた結果を示す。図12において、縦軸は電流[mA]を示し、横軸は電圧[V]を示す。
【0077】
図12に示す結果から、電極としてパラジウム(Pd)やニッケル(Ni)を用いた場合において、電極と半導体との間にオーミック特性が得られることが分かった。一方、比較電極を用いた場合において、±5V以上の電圧を印加するまで電流が流れず、比較電極と半導体との間にオーミック特性が得られないことが分かった。換言すると、パラジウム(Pd)やニッケル(Ni)では、p型GaNに対してオーミック特性が得られたが、比較電極では、p型GaNに対してオーミック特性が得られないことが分かった。
【0078】
B.第2実施形態
図13は、第2実施形態における半導体装置100Aの構成を模式的に示す断面図である。半導体装置100Aは、第1実施形態における半導体装置100と比較して、第1電極141及び第2電極144が同一の電極141Aで形成されている点が異なるが、それ以外は同じである。つまり、半導体装置100Aは、第1実施形態における第1電極141及び第2電極144の機能を有し、第1実施形態における第1電極141及び第2電極144が連続してつながっている電極141Aを備える。このような形態とすることにより、半導体装置100Aの微細化が可能となる。第1実施形態では、第1電極141と第2電極144とを接触させないために、フォトレジストによるパターニングの限界寸法を考慮する必要があるが、第2実施形態では、第1実施形態に比べて、そのようなことを考慮しなくてよい。
【0079】
C.第3実施形態
図14は、第3実施形態における半導体装置100Bの構成を模式的に示す断面図である。半導体装置100Bは、第1実施形態における半導体装置100と比較して、p型半導体領域114と第2電極144との間に、p型半導体領域118を備える点が異なるが、それ以外は同じである。本実施形態において、p型半導体領域118は、p型不純物であるマグネシウム(Mg)濃度がp型半導体領域114よりも高い層である。本実施形態において、p型半導体領域のp型不純物濃度は、第2電極144と接触する面から離れるほど低くなる。このような形態とすることにより、p型半導体領域118と第2電極144との接触抵抗を低くすることができる。なお、第3実施形態の半導体装置100Bにおいて、第1電極141と第2電極144とは異なる電極として形成されているが、第1電極141と第2電極144とは同一の電極により形成されていてもよい。
【0080】
D.他の実施形態
本発明は、上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0081】
上述の実施形態において、第2電極144とp型半導体領域114とが接する面と、第1電極141とn型半導体領域116とが接する面とは同一平面上である。しかし、本発明はこれに限られない。第2電極144とp型半導体領域114とが接する面と、第1電極141とn型半導体領域116とが接する面とは同一平面上でなく、異なる平面上であってもよい。
【0082】
図15及び図16は、変形例を示す模式図であり、第2電極144とp型半導体領域114とが接する面と、第1電極141とn型半導体領域116とが接する面とは同一平面上でない態様を示す模式図である。図15において、第2電極144とp型半導体領域114Cとが接する面が、第1電極141とn型半導体領域116とが接する面よりも下方(-Z軸方向側)に位置する。図16において、第1電極141とn型半導体領域116とが接する面が、第2電極144とp型半導体領域114Dとが接する面よりも下方(-Z軸方向側)に位置する。なお、図16において、n型半導体領域116の下方には、基板110が配されているが、Z軸方向におけるn型半導体領域116と基板110との間に、p型半導体領域114Dが配されていてもよい。
【0083】
本発明が適用される半導体装置は、上述の実施形態で説明した縦型トレンチMOSFETに限られず、例えば、pn接合ダイオードや、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などであってもよい。
【0084】
上述の実施形態において、第1電極141と第2電極144とは、パラジウム(Pd)から主に形成されている。しかし、本発明はこれに限らない。パラジウム(Pd)の変わりに、ニッケル(Ni)や白金(Pt)を用いてもよい。これらの元素は、いずれも第10族元素であり、物理化学的な特性が似ている。また、パラジウム(Pd)の仕事関数は5.12eVであり、ニッケル(Ni)の仕事関数は5.15eVであり、白金(Pt)の仕事関数は5.65eVである。つまり、これらの元素の仕事関数はいずれも5.1eV以上であり、この点においてもこれらの元素の特性が似ている。
【0085】
上述の実施形態において、基板の材質は、窒化ガリウム(GaN)に限らず、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)でもよく、窒化インジウムガリウム(InGaN)でもよく、窒化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInN)でもよい。また、アルミニウムやガリウムやインジウムの配合比は特に限定されない。
【0086】
上述の実施形態において、p型半導体領域114に含まれるアクセプタ元素は、マグネシウム(Mg)であるが、例えば、亜鉛(Zn)を用いてもよい。
【0087】
上述の実施形態において、n型半導体領域116に含まれるドナー元素は、ケイ素(Si)であるが、例えば、ゲルマニウム(Ge)を用いてもよい。
【0088】
上述の実施形態において、イオン注入の回数は、1回であってもよいし、2回であってもよいし、3回以上であってもよい。イオン注入の条件(例えば、加速電圧およびドーズ量など)は、適宜調整できる。膜210の膜厚は、イオン注入の条件に応じて、適宜変更してよい。また、膜210の材質は、二酸化ケイ素(SiO_(2))に限らず、窒化ケイ素(SiN)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))であってもよい。
【0089】
上述の実施形態において、絶縁膜の材質は、電気絶縁性を有する材質であればよく、二酸化ケイ素(SiO_(2))の他、窒化ケイ素(SiNx)、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO_(2))、酸化ハフニウム(HfO_(2))、酸窒化ケイ素(SiON)、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸窒化ジルコニウム(ZrON)、酸窒化ハフニウム(HfON)などの少なくとも1つであってもよい。絶縁膜は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。絶縁膜を形成する手法は、ALDに限らず、ECRスパッタであってもよいし、ECR-CVDであってもよい。
【符号の説明】
【0090】
100…半導体装置
100A…半導体装置
100B…半導体装置
110…基板
112…半導体層
114…p型半導体領域(半導体層)
114C…p型半導体領域
114D…p型半導体領域
116…n型半導体領域(半導体層)
116A…イオン注入領域
118…p型半導体領域
121…コンタクトホール
122…トレンチ
124…コンタクトホール
128…トレンチ
130…絶縁膜
141…第1電極
141A…電極
142…ゲート電極
143…ドレイン電極
144…第2電極
210…膜
220…マスク
240…キャップ膜
300…半導体素子
310…基板
311…バッファ層
312…半導体層
320…p型半導体領域
330…n型半導体領域
341…電極
344…電極
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
ガリウムを含む窒化物半導体から形成されたn型半導体領域と、
前記n型半導体領域と接し、前記窒化物半導体から形成されたp型半導体領域と、
前記n型半導体領域とオーミック接触する第1電極と、
前記p型半導体領域とオーミック接触する第2電極と、を備え、
前記第1電極と、前記第2電極とは、同じ金属から主に形成されており、
前記同じ金属は、パラジウム、ニッケル、白金からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属であり、
前記n型半導体領域のp型不純物濃度と、前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、実質的に同じであり、
前記n型半導体領域において、n型不純物濃度とp型不純物濃度の差は、1.0×10^(20)cm^(-3)以上4.0×10^(20)cm^(-3)以下である、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記第1電極と前記第2電極とは同一の電極である、半導体装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置であって、
前記窒化物半導体は、アルミニウムとインジウムとの少なくとも一方を含む、半導体装置。
【請求項5】
請求項1、請求書2、請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、1.0×10^(18)cm^(-3)以上である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1、請求書2、請求項4、請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記p型半導体領域に含まれるp型不純物は、マグネシウムと亜鉛との少なくとも一方を含む、半導体装置。
【請求項7】
請求項1、請求書2、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記n型半導体領域に含まれるn型不純物は、ケイ素とゲルマニウムとの少なくとも一方を含む、半導体装置。
【請求項8】
請求項1、請求書2、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記p型半導体領域のp型不純物濃度は、前記第2電極と接触する面から離れるほど低くなる、半導体装置。
【請求項9】
請求項1、請求書2、請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記n型半導体領域と前記第1電極とが接触する面と、前記p型半導体領域と前記第2電極とが接する面とは、異なる平面上にある、半導体装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-04-28 
出願番号 特願2016-46903(P2016-46903)
審決分類 P 1 652・ 856- YAA (H01L)
P 1 652・ 121- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 市川 武宜柴垣 宙央  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 恩田 春香
小田 浩
登録日 2019-04-26 
登録番号 特許第6515842号(P6515842)
権利者 豊田合成株式会社
発明の名称 半導体装置  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ