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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B31B
管理番号 1375872
異議申立番号 異議2021-700161  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-15 
確定日 2021-07-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6741396号発明「製袋方法および製袋機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6741396号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6741396号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成27年1月21日を出願日とするものであって、令和2年7月29日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年2月15日に特許異議申立人大野恵子(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第6741396号の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
連続した包装袋の樹脂フィルムからなる基材を長手方向に間欠的に搬送しながら、前記樹脂フィルムからなる基材を熱シールして包装袋を成形する製袋方法であって、
前記樹脂フィルムからなる基材を熱シールする工程は、前記樹脂フィルムからなる基材のシール箇所を、前記樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の両側から対向する押圧部材で押圧しながら加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記シール箇所を、前記樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の両側から対向する押圧部材で押圧しながら冷却する冷却工程とを有し、
前記冷却工程では、前記押圧部材により同一のシール箇所を間欠的搬送の1ピッチ又は2ピッチ以上押圧しながら冷却し、そのうち最初の1ピッチにおいて前記押圧部材が凹部を有することにより、前記シール箇所に凸の基材加工部を形成し、
前記最初の1ピッチの押圧部材は、前記樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の片側に金型を有し、その反対側にゴム台を有し、前記金型は、前記樹脂フィルムからなる基材側の面に前記凹部を有することを特徴とする製袋方法。
【請求項2】
前記基材加工部が形成される前記シール箇所は、前記包装袋の胴部、底部、注出口周辺部から選択される少なくとも一つに設けられることを特徴とする請求項1に記載の製袋方法。
【請求項3】
前記基材加工部の少なくとも一つは、視覚的効果を有することを特徴とする請求項1または2に記載の製袋方法。
【請求項4】
前記基材加工部の少なくとも一つは、触覚的効果を有することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の製袋方法。
【請求項5】
前記基材加工部の少なくとも一つは、包装袋の形状保持、包装袋の持ちやすさ、包装袋の開封のしやすさ、包装袋から内容物の注出のしやすさから選択される少なくとも1つの効果を有することを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の製袋方法。
【請求項6】
連続した包装袋の樹脂フィルムからなる基材を供給する供給手段と、
前記樹脂フィルムからなる基材を長手方向に間欠的に搬送する搬送手段と、
前記樹脂フィルムからなる基材を熱シールして包装袋を成形する熱シール手段とを備え、
請求項1?5のいずれか1項に記載の製袋方法を行う製袋機であって、
前記熱シール手段は、
前記樹脂フィルムからなる基材のシール箇所を、前記樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の両側から対向する押圧部材で押圧しながら加熱する加熱手段と、
前記加熱手段で加熱された前記シール箇所を、前記樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の両側から対向する押圧部材で押圧しながら冷却する冷却手段とを備え、
前記冷却手段では、前記押圧部材により同一のシール箇所を間欠的搬送の1ピッチ又は2ピッチ以上押圧しながら冷却し、そのうち最初の1ピッチにおいて前記押圧部材が凹部を有することにより、前記シール箇所に凸の基材加工部を形成し、
前記最初の1ピッチの押圧部材は、前記樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の片側に金型を有し、その反対側にゴム台を有し、前記金型は、前記樹脂フィルムからなる基材側の面に前記凹部を有することを特徴とする製袋機。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下に示す甲第1?6号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件発明1?6に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。

理由
本件発明1?6は、甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。

[引用文献等一覧]
甲1:特開2008-254747号公報
甲2:特開昭47-2135号公報
甲3:実公昭50-30379号公報
甲4:特開2008-100467号公報
甲5:特開2001-301063号公報
甲6:太田三郎、佐藤寛編,「包装用フィルム概論 改訂版」,株式会社東洋紡パッケージング・プラン・サービス,2012年(平成24年)4月1日 改訂3版発行,p.245?249

第4 引用文献の記載
1.甲1
(1)甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、該パウチの前記ヒートシール部のシール面に複数の凸部からなるエンボス部を形成したパウチであって、前記凸部は、前記シール面の表裏面に交互に形成されることを特徴とする、パウチ。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチの把持性および使用性を向上するとともに、内容物の識別が可能なユニバーサルデザインに基づくパウチに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その課題は、主に、フィルムの外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、パウチの把持性や使用性を向上するとともに、内容物や開封箇所の識別性を向上した、ユニバーサルデザインに基づくパウチを提供することである。さらには、パウチを使用する消費者の動向や、パウチをつかむ指先の大きさや形状に対する調査を行ない精査した結果に基づき、誰にでも使いやすいパウチを提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載の発明は、フィルムの外周をヒートシールしてなるパウチにおいて、該パウチの前記ヒートシール部のシール面に複数の凸部からなるエンボス部を形成したパウチであって、前記凸部は、前記シール面の表裏面に交互に形成されることを特徴とする簡単な構成により、パウチを把持する指先が滑ることを防ぐすべり止めの効果を有する、把持性を向上したパウチを提供することが可能である。
よって、パウチ開封時に、パウチを強固につまみパウチの開封を少ない力で以って容易に行なうことが可能であり、パウチを安定して把持しつつ内容物を注ぎだすことが可能である。さらには、パウチ毎にエンボス部の形状を異ならせることにより、パウチの内容物を識別することが可能な識別性を付与することが可能である。」
「【0016】
本発明に係るパウチ10の一例としては、図1に示すように、フィルムの周囲をヒートシール(上シール1、左シール2、右シール3、底シール4)してなるパウチ10であって、該パウチ10の底部分8は、自立可能な舟形形状の底部8を有するスタンドパウチである。そして、該パウチの前記左シール2部分の幅広なシール面2には、複数の凸部7からなる、エンボス部9が形成されており、該エンボス部9の上方には、パウチ10を開封する際の起点となるノッチ5が形成されている。
【0017】
前記エンボス部9は、図1(a)に示すように、表シール面aに複数の凸部7が形成されるとともに、該凸部7の直下には、後述する、裏シール面bに形成された凸部7'により生じる凹部6'が形成されている。このため、パウチ表側aのエンボス部9は、凸部7-凹部6'-凸部7-凹部6'が交互に形成され、他方、図1(b)に示すように、パウチ裏側のエンボス部9'は、凹部6-凸部7'-凹部6-凸部7'が交互に形成されている。
【0018】
そして、このエンボス部9、9'により、後述する、パウチ10の把持性や使用性を向上する効果のみならず、さらには内容物の識別性を付与することが可能である。特に、前記スタンドパウチ10の左右シール2,3部分にエンボス部9を形成することにより、シール面の強度がより高まり、スタンドパウチ10の安定した胴部保型性や自立性を奏することが可能である。」
「【0020】
前記エンボス部9は、詳しくは、図2(a)に示すように、パウチ10の左シール部2の表シール面aに、横長の形状を有する凸部7が複数形成されてなるエンボス部9を形成しており、特に、前記凸部7は、図2(b)に示すように、パウチ10の側面視において、シール面a、bの上方から下方へと、表シール面aに形成される凸部7と、裏シール面bに形成される凸部7'とが、複数かつ交互に形成されている。
【0021】
すなわち、前記1の凸部7は、図3に示すように、表シール面aに凸部7が形成されるとともに、該凸部7の裏シール面bには、前記凸部7を金型により成型する際に生じる窪みからなる凹部6が形成されている。他方、裏シール面bの凸部7'の場合、該凸部7'の表シール面aに凹部6'が形成されている。
【0022】
よって、表シール面aに形成される前記エンボス部9は、・・・凸部7-凹部6'-凸部7-凹部6'・・・の凹凸形状が交互に形成されてなるエンボス部9を形成し、他方、裏シール面bに形成される前記エンボス部9'は、・・・凸部7'-凹部6-凸部7'-凹部6・・・の凹凸形状が交互に形成されてなるエンボス部9'を形成することとなる。
【0023】
このように、左シール部分2の表裏シール面a、bに、それぞれ凹凸形状が複数かつ交互に形成されてなるエンボス部9,9'を形成することが可能である。
【0024】
よって、パウチ10を把持した際に、図4に示すように、指先が表裏のシール面a、bにそれぞれ触れるため、パウチ10を持つ指先が前記凹凸部分7,6'に入り込み、たとえ内容物の入った重量の重いパウチ10を片手で把持しても、指先がすべることなくパウチ10のシール部分を、強固かつ安定して把持することが可能な滑り止め効果を奏することが可能である。
【0025】
前記エンボス部9の凸部7を形成する方法の一例としては、パウチ10の外周部分にヒートシールHを施した直後の、冷却工程において、前記エンボス部9を形成することが可能である。
【0026】
この場合、図5(a)に示すように、フィルムFの一端にヒートシールHを施した直後において、エンボス部9を形成するための所望の凹凸形状を有する金型A,Bを用いて、エンボス部9を形成することが可能である。
前記金型は、表シール面aに凸部7を形成するための雄型Aと雌型A'とからなり、他方、裏シール面bに凸部7'を形成するための雄型Bと雌型B'とからなる。
【0027】
そして、フィルムFを点線矢印方向へと流すとともに、図5(b)に示すように、ヒートシールH部分において、金型A、A'で挟み込む(点線矢印)ことにより、図6(a)に示すように、表シール面aの凸部7を形成した後、さらに、図6(b)に示すように、金型B、B'で、前記ヒートシール部Hを挟むことにより(点線矢印)、図7(a)に示すように、裏シール面bの凸部7を形成することが可能である。このようにして、図7(b)に示すように、フィルムFの表裏シール面a、bに、前記凸部7を交互に形成することが可能であり、前記凸部7の形成に伴い凹部6を交互に形成することが可能である。
【0028】
このように、本発明のパウチ10は、パウチ10のヒートシール面に、複数の凸部7を交互に形成してなる前記エンボス部9を形成することにより、強力な滑り止め効果を有する把持性および使用性を向上したパウチ10を提供することが可能である。そして、前記エンボス部9は、表シール面aの凸部7を形成する金型Aと、裏シール面bの凸部7を形成する金型Bとを用いて、簡単に形成することが可能である。」
「【0043】
前記パウチ10の前記フィルムFとしては、主にプラスチックフィルムを主体とする積層フィルムFが用いられ、例えば、各種食品用パウチに用いられている従来公知の積層フィルムFを用いることができ、特に限定されるものではない。積層フィルムFの構成は、内容物の種類や充填後の加圧加熱殺菌時に加えられる加熱条件などによって適宜選定することができる。
【0044】
また、前記積層フィルムFの、前記基材層の一例としては、耐熱性の優れた2軸延伸プラスチックフィルムが使用可能できるが、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)を使用するのが好ましい。また、積層フィルムの前記中間層としては、アルミニウム箔(AL)、2軸延伸ナイロン(ON)、アルミニウ箔と2軸延伸ナイロンの積層フィルムを使用することができる。そして、積層フィルムの前記熱接着性樹脂層としては、変性ポリプロピレン樹脂(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が使用できるが、エラストマー成分をブレンドしたポリプロピレン樹脂を使用するのが好ましい。前記基材層と前記中間層と前記熱接着性樹脂層はウレタン系接着剤を使用したドライラミネーションにより積層され、積層フィルム構成の一例としては、例えば、PET/ON/AL/PP、PET/AL/ON/PP、PET/AL/PP、PET/ON/PP等が挙げられる。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図4】


「【図5】


「【図6】


「【図7】



「フィルムFを点線矢印方向へと流すとともに、図5(b)に示すように、ヒートシールH部分において、金型A、A'で挟み込む(点線矢印)ことにより、図6(a)に示すように、表シール面aの凸部7を形成した後、さらに、図6(b)に示すように、金型B、B'で、前記ヒートシール部Hを挟むことにより(点線矢印)、図7(a)に示すように、裏シール面bの凸部7を形成することが可能である。」(【0027】)の記載、並びに、図6の金型A、A'に対するフィルムFの流し方からみて、最初に前記金型A、A’により表シール面aの凸部7を形成した後、該シール面を挟み込んだ後に離れた金型A、A’の間を通して金型B、B’方向へフィルムFを流し、次に同一のシール箇所を金型B、B’により裏シール面bの凸部7を形成することが可能であることが理解できる。
また、「エンボス部9を形成するための所望の凹凸形状を有する金型A,Bを用いて、エンボス部9を形成することが可能である。前記金型は、表シール面aに凸部7を形成するための雄型Aと雌型A'とからなり」(【0026】)の記載から、凸部7が形成される表シール面a側に雌型(A’)を有し、その反対側である裏シール面b側に雄型(A)を有することが理解できる。
また、同記載及び「図7(b)に示すように、フィルムFの表裏シール面a、bに、前記凸部7を交互に形成することが可能であり、前記凸部7の形成に伴い凹部6を交互に形成することが可能である。」(【0027】)の記載から、雌型(A’)は、表シール面a側に、凸部7に対応する凹部を有し、雄型(A)は、裏シール面b側に、凹部6に対応する凸部を有することが理解できる。

(2)上記記載及び図面から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「プラスチックフィルムからなるフィルムFをヒートシールしてパウチを成形する方法であって、
前記プラスチックフィルムからなるフィルムFをヒートシールする工程は、前記プラスチックフィルムからなるフィルムFのシール箇所を、加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記シール箇所を、前記プラスチックフィルムからなるフィルムFの厚さ方向の両側から対向する雄型(A、B)と雌型(A’、B’)からなる金型で押圧しながら冷却する冷却工程とを有し、
前記冷却工程では、最初に前記金型A、A’により表シール面aの凸部7を形成した後、該シール面を挟み込んだ後に離れた金型A、A’の間を通して金型B、B’方向へフィルムFを流し、次に同一のシール箇所を金型B、B’により裏シール面bの凸部7を形成することが可能であり、
前記最初の金型A、A’は、前記プラスチックフィルムからなるフィルムFの厚さ方向の片側(表シール面a)に雌型(A’)を有し、その反対側(裏シール面b)に雄型(A)を有し、前記雌型(A’)は、前記プラスチックフィルムからなるフィルムF側の表シール面aに前記凹部を有し、前記雄型(A)は、前記プラスチックフィルムからなるフィルムF側の裏シール面bに凸部を有するパウチを成形する方法。」

2.甲2
(1)甲2には、次の事項が記載されている。
「本発明はレフレツクス光反射用材料に関する。
このような材料の光源に対して輝く光線の戻るこの材料の特性は、道路安全用途においてかつまた照明陳列において、用いるため、これらの材料を益々評判よくしている。道路標識、保護衣服、手押車カバーおよびこのタイプの目標は通常の標識および目標より夜分大きい視野を有する、なぜならば、視野の外に分散される反射光線の量が極めて小さく、しかも、反射光線が、光源、例えば接近する自動車のヘツドライトに向つて自動的に戻るせまい光線に集中するからである。」(12ページ右下欄3?13行)
「本発明において用いるため適する透明または半透明のプラスチツク物質は、固体状態において透明または半透明でありかつ少なくとも1.35の屈折率を有する任意の熱可塑性または熱硬化性プラスチツクス物質を包含する。熱可塑性物質は、これらの物質が従来のシートエンボス機によりエンボスされる容易性の点において好ましい。」(14ページ右上欄9?15行)
「一つの表面上に一つまたは一つより多い凸レンズエンボスを有する透明または半透明のプラスチツクス物質の層は、従来のエンボス用ローラーまたはダイスを用いるこのプラスチツクス物質の予備形成シートの一つの表面をエンボスすること、適当な輪郭を有する押し出しダイス中で直接にこのプラスチツク物質を形成すること、または適当な輪郭を有する押し出しダイス中でこのプラスチツクを押し出すことを包含する任意の手段により造られる。用いられる技術はプラスチツク物質の本質によりまた所望される凸レンズエンボスの本質によりある程度支配される。プラスチツクス物質が可撓性P.V.Cであり、そして所望のエンボスが非凹入部を包含する時、適当な技術は、その表面に一つまたは一つより凹面部を有するエンボス用ローラーを用いる前形成シートの従来の熱エンボス加工である。」(14ページ左下欄7行?右下欄3行)
「このP.V.Cシートを過剰加熱ローラー上に通すことにより、これを約130°に予備加熱し、エンボスされる表面を次に、6フイート/分の速度でかつ加熱器から0.5インチの距離において、5キロワツト/平方フイートで走つている寸法4.5インチ×2.5インチのElstein赤外線加熱器の下に通すことにより、この表面をフラツシ加熱した。シートを次に、水冷却金属エンボス用ローラーとゴム被覆ローラーとを含むエンボス用ニツプの間に直ちに通した。エンボスP.V.Cシートの表面上の単離レンズの基底の直径が0.0054インチであるような深さと曲率0.007インチの半径の球の部分の形状を有する六角形に密接している凹所で、用いられたエンボス用ローラーは彫刻された。」(16ページ左上欄11行?右上欄5行)
「実施例5
実施例1において与えられた処方に従つて造られかつ0.008インチの厚さを有する透明P.V.Cシート(A)と、Gravure Silver PDM 14347 INK(Colora InK ComPany of Harowにより造られた)を用いて印刷された反射面的45%を含有する全体的抽象模様{この模様の残分は Gravure Red G.V. 29919 InK(Coates Bros. InKs Lid. of ST. Mary Cray により造られた)を用いて印刷されている}で予め印刷された類似のシート(B)とを、積層しそして次の方法でエンボス加工した。
この二つのシート(A)と(B)とを、シート(B)の印刷表面がシート(A)の一つの表面と接触するようにエンボス加工-積層用機中に共に供給しついで、約160℃に維持されかつ20フイート/分の円周速度で走つている各直径18インチの金属ローラーと各面を引き続いて接触させることにより、この複合物を約150℃に予備加熱した。シート(A)の外部表面を次に、1KW/50平方インチの加熱器供給熱量を与えるために配列された放射要素の列を含む、8インチの距離で間のあけられた赤外線加熱器にシート(A)の表面を向けて、垂直に下に向けてこの複合物を通すことによりフラツシ加熱した。この複合物を次に、直径5インチの実施例1において述べられた水冷却エンボス用ローラーと直径5インチのゴム被覆ローラーとからなるエンボス加工用ニツプ中に、シート(A)と(B)との積層を、六角形に緻密に接触しているレンズで、シート(A)の表面を同時にエンボス加工しながら実施するように、シート(A)の表面をこのエンボス用ローラと接触させて、垂直に下に向けて、通した。」(17ページ左上欄4行?右上欄16行)

(2)上記記載から、甲2には、実施例5に着目すると次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「透明P.V.Cシート(A)と予め印刷された類似のシート(B)とを積層した複合物のシート(A)にエンボス加工するレフレツクス光反射用材料の製造方法において、シート(A)とシート(B)とを20フイート/分で走つている金属ローラーと接触させて予備加熱し、赤外線加熱器でフラツシ加熱し、水冷却エンボス用ローラーとゴム被覆ローラーとからシート(A)にエンボス加工するものであり、水冷却エンボス用ローラーには、シート(A)の表面上の単離レンズの基底の直径が0.0054インチであるような深さと曲率0.007インチの半径の球の部分の形状を有する六角形に密接している凹所になるように彫刻されていること。」

3.甲3
(1)甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「この考案は立体印刷物の作製装置に関するもので、立体印刷物はいわゆるレンチキユラーレンズ面を成形した熱可塑性合成樹脂の連続フイルムと特殊な印刷を施した印刷紙との接着によつて構成される型のもので、特に印刷済の印刷紙を枚葉式に供給する作製装置に関するものである。」(第1欄25?30行)
「第1図において、熱可塑性合成樹脂の連続フイルムを一定張力で送り出す装置として、例えばロールフイルムを保持するリールスタンド1は輪転印刷機の公知の2本掛タレツト式給紙装置と全く同一の構造をもち、軸2上に固定された二対の腕3,3’の両端に設けられた軸受によつて、2本の熱可塑性合成樹脂のロールフイルム4,4’が回転可能に保持される。巻出されたフイルム5に張力を与えるためのブレーキ機構、フイルムの巾方向位置を調整するためのサイドレイ機構、ならびに使用済のロールと新ロールとを装着交換するための軸2の回転構等はすべて一般の輪転印刷機の給紙装置に於て公知の機構であるから図示および説明を省略する。フイルムを送るためのガイドロール群を符号6で示す。
ドラツグロール7および加熱ロール8,9は一対のフレーム12,12’に取付けられ、第1の電動機(図示せず)からギヤ、チエーン等の手段によつて関連的に駆動され、フイルムを型ロール15まで送り込む。ロールフイルムを段階的かつ両面交互に加熱する加熱装置としての加熱ロール8および9は別置(図示せず)の装置によつて加熱された油の内部環流、あるいは直接ロール内部に設けた電熱器等の適宜な手段によつて必要な温度に加熱される。ロール8と9とは加熱熱源を制御することによりそれぞれ異なる所要温度を与えることもできるので、たとえばロール8を50°ないし250℃、ロール9を100°ないし350℃のように温度差をもたせることによつて、フイルムを段階的かつ両面交互に加熱することができる。耐熱ゴムロール10,11はそれぞれ加熱ロール8および9に自重またはばね加圧等によつて接触回転し、フイルムとロール面との間への空気の流入を防止してフイルムをロール面へ密着させ、フイルムの均一な加熱を保証する。さらにゴムロール10は加熱ロール8の円周に沿つて矢印10’方向に移動することができ、任意の位置にセツトできるようになっている。したがつて、フイルムの材質、厚さ、および機械速度等の条件に応じて、2本の加熱ロールのそれぞれの熱源容量を変化させる方法と、ロール100のセツト位置を変えて巻付長さを調整する方法とを併用することにより、フイルムの成型加工に最適の温度条件を容易に得ることができる。また温度上昇に伴うフイルムの伸びに対応するため、ロールの周速はロール7→8→9の順に少しづつ早くなるよう伝動比および直径を定めてある。
成形接着装置として、冷却型ロール15の表面にはレンチキユラーレンズを成形する逆かまぼこ状の溝がねじ状に刻まれており、内部には冷却水が循環している。レンチキユラーレンズはかまぼこ状の凹凸溝が細かいピツチをもつてねじ状に平行等間隔に連続したものである。公知の例における型ロールの溝の方向はロールの軸方向に直角かつ平行のものであった。しかしこのように多数の微細な溝を平行かつ等ピツチに刻設することは溝を1木切るごとに割出し送りを行ないかつ一定の切込み量をその都度与えて断続的に切削しなければならないので非常にむずかしく、多くの時間と費用を要することはいうまでもない。この考案で用いる型ロールはこのような欠点を解決するため、上記したように旋削加工による細密ねじ状の型ロールを使用してある。この場合にはかまぼこ状の先端形状を有するバイトを用いて精密旋盤により連続的に容易にかつ短時間で高精度の型ロールを製作することができる特長を有する。型ロール15の軸受部は偏心構造をもち、圧ロール16との間の印圧を任意に調節することができる。
自動枚葉給紙機23は一般の枚葉印刷機に用いられるものと全く同一の構造機能をもち、給紙台24上に積重ねられた印刷紙25を圧ロール16の1回転につき1枚づつ順次矢印方向に給送する。圧ロール16は表面にゴムブランケツトを巻いたもので、その外径は型ロール15の外径と等しく、かつグリツパー機構1組(図示せず)を有する。
このグリツパー機構は図示しないが、通常の枚葉印刷機の圧ロールに用いられるものと同様で、ロール外周上にカムによつて開閉する一列のくわえ爪群を有し、紙の先端をスインググリツパーから受取ると同時に爪が閉じてくわえ、型ロールとの加圧点Pの直後において爪が開いて紙を離す機構である。給紙機23から1枚づつ送り出された紙は前当20および横当(図示せず)によつて印刷紙の図柄とレンチキユラーレンズとの関係位置を正確に保ついわゆる見当合せが行はれ、スインググリツパー26によって圧ロールグリツパーに受渡され、加圧点Pへ向つて進行する。スインググリツパーは第1図に扇形で示した範囲を往復揺動する部材の先端にカムによつて開閉するくわえ爪群を有するもので、給紙側の右端位置において給紙機から送り出され見当合せされた紙の先端を爪が閉じてくわえ、左方へ揺動しその左端位置で爪が開いて圧ロールのグリツパーに紙を渡すものである。したがつて加熱されたフィルム5’が型ロール15と圧ロール16との加圧点Pにおいて加圧成形されると同時に、印刷紙はフイルムのレンズ面の反対側に加圧接着され、その直後に圧ロールグリツパーは開いて紙を離すので紙はフィルムと共に進行する。
すでに述べたように、型ロール15にはねじ状の逆かまぼこ型溝が刻設されているので、フイルム上に成形されるレンズ溝の方向はフイルムの進行方向と平行ではなく、ねじのリード角だけ斜になる。この角度は極めて小さいものではあるが、立体印刷物を構成するためには紙の印刷面の方向はフイルムの溝方向と正確に一致しなげればならない。」(第3欄3行?第5欄21行)

(2)上記記載及び図面から、甲3には、次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。
「熱可塑性合成樹脂のフイルムと印刷紙との接着による立体印刷物におけるフイルム上にレンチキユラーレンズを成形する方法において、給紙機から送り出された印刷紙と加熱されたフイルムとを成形接着装置で加圧成形すると同時に接着し、フイルムにレンチキユラーレンズを形成するものであり、成形接着装置として、冷却型ロール15と表面にゴムブランケツトを巻いた圧ロール16を有し、冷却型ロール15の表面には、フイルムにレンチキユラーレンズを成形する逆かまぼこ状の溝がねじ状に刻まれていること。」

第5 当審の判断
1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「プラスチックフィルム」、「フィルムF」、「ヒートシール」、「パウチ」、「パウチを成形する方法」、「シール箇所」、「加熱工程」「雄型(A、B)と雌型(A’、B’)からなる金型」、「冷却工程」、「凹部」、「凸部」、「雌型(A’)」は、それぞれ本件発明1の「樹脂フィルム」、「基材」、「熱シール」、「包装袋」、「製袋方法」、「シール箇所」、「加熱工程」、「押圧部材」、「冷却工程」、「凹部」、「凸部」、「金型」にそれぞれ相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明1とは、次の点で一致し、かつ、相違する。

<一致点>
「樹脂フィルムからなる基材を熱シールして包装袋を成形する製袋方法であって、
樹脂フィルムからなる基材を熱シールする工程は、前記樹脂フィルムからなる基材のシール箇所を、加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された前記シール箇所を、前記樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の両側から対向する押圧部材で押圧しながら冷却する冷却工程とを有し、
前記冷却工程では、前記押圧部材が凹部を有することにより、前記シール箇所に凸の基材加工部を形成し、
前記押圧部材は、前記樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の片側に金型を有し、前記金型は、前記樹脂フィルムからなる基材側の面に前記凹部を有する製袋方法。」

<相違点1>
本件発明1の「製袋方法」は、「連続した包装袋の樹脂フィルムからなる基材を長手方向に間欠的に搬送」するものであり、冷却工程では「押圧部材により同一のシール箇所を間欠的搬送の1ピッチ又は2ピッチ以上押圧しながら冷却し、そのうち最初の1ピッチにおいて」「押圧部材」によりシール箇所に凸の基材加工部を形成するのに対し、甲1発明の「パウチを成形する方法」は、「最初に前記金型A、A’により表シール面aの凸部7を形成した後、該シール面を挟み込んだ後に離れた金型A、A’の間を通して金型B、B’方向へフィルムFを流し、次に同一のシール箇所を金型B、B’により裏シール面bの凸部7を形成することが可能」であるものの、連続した包装体の樹脂フィルムの搬送に関して、明らかではない点。

<相違点2>
本件発明1の「最初の1ピッチの押圧部材」は、樹脂フィルムの厚さ方向にみてその片側に凹部を有する金型を有し、その反対側に「ゴム台」を有するものであるのに対し、甲1発明は、最初の金型A、A’は、前記プラスチックフィルムからなるフィルムFの厚さ方向の片側(表シール面a)に雌型(A’)を有し、その反対側(裏シール面b)に雄型(A)を有し、前記雌型(A’)は、前記プラスチックフィルムからなるフィルムF側の表シール面aに前記凹部を有し、前記雄型(A)は、前記プラスチックフィルムからなるフィルムF側の裏シール面bに凸部を有するものである点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
上記に例示した甲2記載事項及び甲3記載事項は、樹脂フィルムからなる基材と印刷シートとが積層された積層シートにおける樹脂フィルムからなる基材面に、光学作用を有する凹凸形状を成形する方法において、樹脂フィルムからなる基材の厚さ方向の片側に冷却ローラーを押圧部材として有し、その反対側にゴムローラーを有し、当該ローラーが、樹脂フィルムからなる基材に成形する凹凸形状に対応する凹凸形状を有するものである。
そうすると、甲1発明の包装袋の製袋方法に対し、甲2記載事項及び甲3記載事項は光学作用を有する凹凸を備えたフィルムに関する技術であり、両者は技術分野が異なり、前提とする技術も異なることから、甲1発明に上記記載事項を適用する動機付けはない。
また、上記記載事項は、ゴムローラーが冷却ローラーとともに積層物を挟んで連続的に搬送する際に、冷却ローラーによって、積層シートにおける樹脂フィルムからなる基材に凹凸形状を成形するものである。
他方、甲1発明は、フィルムFに対して、雄型(A)と雌型(A’)からなる金型で押圧しながら冷却することで、表シール面aに凸部7を形成するとともに、該凸部の裏シール面bに凹部6を形成するものである(上記第4の1.(1)【0021】、【0026】、【0027】を参照。)。
そうすると、甲1発明における雄型(A)と雌型(A’)からなる金型の一方である雌型(A’)と、上記記載事項における搬送ローラーであるゴムローラーとは、甲1発明がフィルムFを成型すべくもっぱら上下方向に押圧するものであるのに対し、上記記載事項のものは、樹脂フィルムを冷却ローラーとともに挟んで搬送するという動作を伴うもので、両者は動きやフィルムFに作用する力等が全く異なるものであるから、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記1.(2)で検討した相違点2と同じ相違点を含むものであるので、同じ理由により、当業者が甲1発明、甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-06-22 
出願番号 特願2015-9573(P2015-9573)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B31B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西山 智宏小川 悟史  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 藤井 眞吾
久保 克彦
登録日 2020-07-29 
登録番号 特許第6741396号(P6741396)
権利者 藤森工業株式会社
発明の名称 製袋方法および製袋機  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 貞廣 知行  
代理人 大浪 一徳  

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