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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02G
管理番号 1375878
異議申立番号 異議2021-700129  
総通号数 260 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-04 
確定日 2021-07-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6737407号発明「非オーム性組成物およびその製造方法、ケーブル中間接続用ユニット並びにケーブル終端接続用ユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6737407号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6737407号の請求項1?13に係る特許についての出願は,2018年6月11日に国際出願され,令和2年7月20日にその特許権の設定登録がされ,令和2年8月5日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,令和3年2月4日に特許異議申立人伊東沙織(以下,「申立人」という。)は,特許異議の申立てを行った。


第2 本件発明

特許第6737407号の請求項1?13の特許に係る発明(以下,「本件発明1」?「本件発明13」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
電力ケーブルの接続部分の外周上に配置される筒状のケーブル中間接続用ユニットであって、
筒状の絶縁筒と、
前記絶縁筒の内周面に設けられる、非オーム性組成物から形成される非オーム性抵抗層と、
前記非オーム性抵抗層上に設けられる内部半導電層と、を備え、
前記非オーム性組成物は、熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマと、印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する非オーム性を有するバリスタ粒子と、を含み、前記バリスタ粒子は、最大粒子径が30μm以下、体積粒度分布における累積50%粒子径D50が1.0μm以上10μm以下、累積90%粒子径D90が2.0μm以上25μm以下であり、D90/D50が2.5以下である、
ケーブル中間接続用ユニット。
【請求項2】
前記バリスタ粒子は、最大粒子径が10μm以下である、請求項1に記載のケーブル中間接続用ユニット。
【請求項3】
前記ベースポリマは、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃)が35以上60以下であるゴムである、請求項1又は2に記載のケーブル中間接続用ユニット。
【請求項4】
前記ベースポリマは、エチレン-プロピレン-ジエンゴムである、請求項1?3のいずれか1項に記載のケーブル中間接続用ユニット。
【請求項5】
前記バリスタ粒子は、酸化亜鉛バリスタである、請求項1?4のいずれか1項に記載のケーブル中間接続用ユニット。
【請求項6】
前記非オーム性組成物は、前記バリスタ粒子を前記ベースポリマに対して体積比率で0.2以上0.5以下の範囲で含む、請求項1?5のいずれか1項に記載のケーブル中間接続用ユニット。
【請求項7】
前記バリスタ粒子は、シラン化合物を含む表面処理層を有する、請求項1?6のいずれか1項に記載のケーブル中間接続用ユニット。
【請求項8】
前記非オーム性抵抗層は直流絶縁破壊強度が7kV/mm以上、インパルス絶縁破壊強度が10kV/mm以上である、請求項1?7のいずれか1項に記載のケーブル中間接続用ユニット。
【請求項9】
前記バリスタ粒子は、金属酸化物を含む結晶部、および前記結晶部とは異なる金属酸化物を含む粒界部を有し、表面に前記粒界部が存在するように形成されている、請求項1?8のいずれか1項に記載のケーブル中間接続用ユニット。
【請求項10】
碍管内に収容される電力ケーブルの外周に配置される筒状のケーブル終端接続用ユニットであって、
筒状の絶縁筒と、
前記絶縁筒の内周面に設けられる、非オーム性組成物から形成される非オーム性抵抗層と、を備え、
前記非オーム性組成物は、熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマと、印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する非オーム性を有するバリスタ粒子と、を含み、前記バリスタ粒子は、最大粒子径が30μm以下、体積粒度分布における累積50%粒子径D50が1.0μm以上10μm以下、累積90%粒子径D90が2.0μm以上25μm以下であり、D90/D50が2.5以下である、ケーブル終端接続用ユニット。
【請求項11】
熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマと、
印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する非オーム性を有するバリスタ粒子と、を含み、
前記バリスタ粒子は、最大粒子径が30μm以下、体積粒度分布における累積50%粒子径D50が1.0μm以上10μm以下、累積90%粒子径D90が2.0μm以上25μm以下であり、D90/D50が2.5以下である、非オーム性組成物。
【請求項12】
印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する非オーム性を有するバリスタ粗大粒子を粉砕し、最大粒子径が30μm以下、体積粒度分布における累積50%粒子径D50が1.0μm以上10μm以下、累積90%粒子径D90が2.0μm以上25μm以下であり、D90/D50が2.5以下であるバリスタ粒子を得る粉砕工程と、
前記バリスタ粒子と、熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマとを混合する混合工程と、を有する、非オーム性組成物の製造方法。
【請求項13】
前記粉砕工程では、前記バリスタ粗大粒子を気流式で粉砕する、請求項12に記載の非オーム性組成物の製造方法。」


第3 異議申立理由の概要

本件発明1?本件発明3,本件発明5,本件発明6,本件発明8および本件発明10は,甲第1号証(特開昭54-137651号公報),甲第2号証(特開2016-160173号公報),甲第3号証(特開2010-285321号公報),甲第4号証(特開2003-57868号公報),及び甲第5号証(特表2014-518500号公報)に記載された発明,並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
本件発明4は,甲第1号証?甲第5号証,及び甲第6号証(特開2013-212045号公報)に記載された発明,並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
本件発明7は,甲第1号証?甲第5号証,及び甲第7号証(特開2012-142377号公報)に記載された発明,並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
本件発明9は,甲第1号証?甲第5号証,甲第8号証(特開2016-17161号公報),及び甲第9号証(特開2002-170704号公報)に記載された発明,並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
本件発明11?本件発明13は,甲第1号証?甲第4号証に記載された発明,並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものである。
したがって,本件発明1?本件発明13は,特許法29条2項の規定に違反して登録されたものであるから,同法113条2号の規定により登録を取り消されるべきものである。


第4 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要

本件発明11?本件発明13に対して,当審が令和3年3月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。

本件発明11?本件発明13は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に想到することができたものであって,本件発明11?本件発明13は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。

2 甲号証の記載

(1)甲第1号証(特開昭54-137651号公報)に記載された事項及び引用発明
甲第1号証には,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「本発明は圧力を加えると、ある電圧値で急激に抵抗の低くなる感圧電圧非直線抵抗素子に関するものである。
従来、圧力を検知する素子として、半導体のpn接合などを利用した感圧ダイオード,圧電効果を利用した圧電素子などが知られている。しかしこれらの素子は、圧力による変化が連続的であり、圧力を検知して、スイッチング的に動作させたい時には、連続的変化を他の素子を用いてスイッチング的変化に変換してやることが必要であった。
本発明は以上のような状況に鑑み、ある電圧を加えておいて、圧力を増していくと、スイッチング的に電流の増加する感圧電圧非直線抵抗素子を提供せんとするものであり、以下その一実施例を詳細に説明する。」(1ページ左下欄10行?右下欄4行)

B 「90モル%のZnOにBi_(2)O_(3)(0.5モル%),CoO(1.0モル%),MnO(0.5モル%),Sb_(2)O_(3)(1.0モル%),SiO_(2)(7モル%)を充分混合の後、粉砕して微粒子とした。得られた微粒子を1000℃で、1時間焼成を行った。焼成によって、微粒子が焼結して固まるので、これをもう一度粉砕し5μm以下の粒子とした。ついでこれを熱硬化性の液体状シリコンゴムに30体積%加え、充分混合の後、直径5mm,厚み0.2mmの型に流しこみ、70℃の温度で24時間放置し、熱硬化させた。熱硬化後型を取り去り、得られた円板状ゴムの両面に導電性接着剤により1対の対向電極を設けた。得られた素子の微細構造を第1図に示す。第1図において、1はZnOを主成分とする電圧非直線性微粒子で、いくつかのZnO粒子と、加えられた添加物からなる粒界層から成っている。2はシリコンゴム、3は電極である。すなわちZnOを主成分とする電圧非直線抵抗微粒子が、いくつもシリコンゴム中に分散して存在し、その空隙がシリコンゴムで埋められた構造となっている。」(1ページ右下欄5行?2ページ左上欄4行)

C 「また用いる微粒子の大きさは細かいほど、均一に分散するため特性の安定なものが得られる。そのためには30μm以下の粒子が好ましい。一方、電圧非直線抵抗機能を実現するためには、一つの微粒子中に、最低1つのZnO粒子と粒界層を含むことが必要である。このような粒子が形成される大きさは、最も小さなもので0.5μm程度であった。したがって用いる微粒子の粒径としては0.5?30μmのものが望ましい。」(2ページ右上欄11?19行)

D 「

第1図」

以上によれば,甲第1号証は,以下の発明(以下「引用発明」という。)を開示していると認められる。

「圧力を加えると,ある電圧値で急激に抵抗の低くなる感圧電圧非直線抵抗素子であって,
ZnOを主成分とする微粒子を焼成し,前記微粒子を粉砕し5μm以下の粒子としてこれを熱硬化性の液体状シリコンゴムに加え,熱硬化させて,得られた円板状ゴムの両面に1対の対向電極を設け,
ZnOを主成分とする電圧非直線抵抗微粒子が,いくつもシリコンゴム中に分散して存在し,その空隙がシリコンゴムで埋められた構造となっていて,
用いる微粒子の大きさは細かいほど,均一に分散するため特性の安定なものが得られ,30μm以下の粒子,望ましくは,粒径としては0.5?30μmのものである,
感圧電圧非直線抵抗素子。」

(2)甲第2号証(特開2016-160173号公報)に記載された事項
甲第2号証には,次の事項が記載されている。

A 「【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性酸化亜鉛粉及びこれを含む導電性組成物に関する。

…(中略)…

【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化亜鉛は、大気中に長時間曝されると炭酸ガスを吸着して炭酸亜鉛化し、そのことに起因して導電性が低下してしまう。また、光触媒作用によって水酸化亜鉛化してしまい、同様に導電性が低下してしまう。特に、導電性だけでなく透明性を必要とする用途においては、一次粒径が小さい酸化亜鉛が望まれるところ、粒径が小さくなるに連れて、上述の炭酸亜鉛化や水酸化亜鉛化が一層起こりやすくなる。したがって酸化亜鉛の経時劣化を抑制することが重要である。
【0007】
したがって本発明の課題は酸化亜鉛粉の改良にあり、更に詳細には導電性の経時劣化が効果的に抑制された酸化亜鉛粉を提供することにある。

…(中略)…

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性の経時劣化が効果的に抑制された酸化亜鉛粉が提供される。」

B 「【0021】
本発明の酸化亜鉛粉は、一次粒子径D_(TEM)が上述の範囲内であることのほか、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D_(50)が好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、更に好ましくは0.1μm以上7.0μm以下であり、一層好ましくは0.3μm以上5.0μm以下である。粒径D_(50)がこの範囲内であることによって、本発明の酸化亜鉛粉を配合してなる導電性組成物は、その塗布性が良好になり、あるいは塗膜の導電性が良好になる。これらの利点を一層顕著なものとする観点から、本発明の酸化亜鉛粉は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積90容量%における体積累積粒径D_(90)が好ましくは0.3μm以上30μm以下であり、更に好ましくは0.3μm以上21μm以下であり、一層好ましくは0.3μm以上10μm以下である。
【0022】
本発明の酸化亜鉛粉は、粒径D_(50)及びD_(90)の値が上述の範囲内であることを条件として、D_(50)とD_(90)との比であるD_(50)/D_(90)の値が0.3以上1以下であることが好ましく、0.35以上1.0以下であることが更に好ましく、0.4以上1.0以下であることが一層好ましい。D_(50)/D_(90)の値は酸化亜鉛粉中の酸化亜鉛粒子の粒度分布の指標になるものであるところ、この値が上述の範囲内である酸化亜鉛粉は、粒度分布がシャープなものになる。そのような酸化亜鉛粉を用いて導電性組成物を調製すると、該導電性組成物はその塗布性が良好になったり、塗膜の導電性が良好になったりする。」

以上によれば,甲第2号証は,以下の技術的事項(以下,「甲2記載事項」という。)を開示していると認められる。

「導電性酸化亜鉛粉及びこれを含む導電性組成物において,
粒径が小さくなるに連れて,炭酸亜鉛化や水酸化亜鉛化が一層起こりやすくなって発生する酸化亜鉛の経時劣化を抑制し,導電性の経時劣化が効果的に抑制された酸化亜鉛粉を提供するため,
累積体積50容量%における体積累積粒径D_(50)が0.1μm以上10μm以下である酸化亜鉛粉を配合してなる導電性組成物は,その塗布性が良好になり,あるいは塗膜の導電性が良好になり,これらの利点を一層顕著なものとする観点から,累積体積90容量%における体積累積粒径D_(90)が0.3μm以上30μm以下であり,
酸化亜鉛粉中の酸化亜鉛粒子の粒度分布の指標になるD_(50)/D_(90)の値が0.3以上1以下である酸化亜鉛粉は,粒度分布がシャープなものになり,そのような酸化亜鉛粉を用いて導電性組成物を調製すると,該導電性組成物はその塗布性が良好になったり,塗膜の導電性が良好になったりすること。」

(3)甲第3号証(特開2010-285321号公報)の記載
甲第3号証には,次の事項が記載されている。

A 「【請求項1】
原料粉末として、平均粒径のD50が1μm以下、D90が1.5μm以下である酸化亜鉛粉末と、平均粒径のD50が1μm以下、D90が1μm?10μmである酸化ガリウム粉末とを用い、かかる酸化亜鉛粉末と酸化ガリウム粉末とを、質量比で(90?99.9):(0.1?10)の割合で混合し、得られた混合粉末を冷間で成形し、得られた成形体を、焼結炉内容積1m^(3)当たり10L/分?200L/分の割合で空気または酸素を導入しながら800℃まで加熱し、800℃から焼結温度までの温度範囲を0.3℃/分?3℃/分の昇温速度で昇温した後、1200℃?1400℃の焼結温度に10?20時間保持することにより焼結させることを特徴とする、酸化亜鉛系焼結体の製造方法。」

B 「【0010】
特に、本発明の酸化亜鉛系焼結体の製造方法では、原料粉末として、平均粒径のD50が1μm以下、D90が1.5μm以下である酸化亜鉛粉末と、平均粒径のD50が1μm以下、D90が1μm?10μmである酸化ガリウム粉末とを用いることを特徴とする。」

C 「【0019】
上記範囲内の粉末を用いると、(1)焼結体密度が5.2g/cm^(3)以上、(2)体積抵抗率が2×10^(-2)Ω・cm以下、(3)平均結晶粒径が2?10μm、(4)最大空孔径が2μm以下の高密度で低抵抗の焼結体が、割れや反りが入ることなく、安定して製造できる。この範囲外の粉末の場合、原料粉末の平均粒径がいずれも1μm以下である場合でも、高密度で低抵抗の焼結体が得られたとしても、割れや反りが発生する可能性が高くなってしまい、安定して、歩留まりよく焼結体を得ることが困難となる。」

D 「【0065】
【表1】



(4)甲第4号証(特開2003-57868号公報)の記載
甲第4号証には,次の事項が記載されている。

A 「【0030】また本発明の現像剤において、導電性微粉末は、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンから選ばれる少なくとも一種の酸化物を含有していることが好ましい。」

B 「【0501】<導電性微粉末の例1>アルミニウム元素を含有する、抵抗が100Ω・cmの酸化亜鉛微粉末(一次粒子の個数平均粒径が0.1μmであり、一次粒子が凝集した粒子径が0.7?7μmの凝集体からなる)をジメチルシリコーンオイル1質量%で表面処理し、表面処理後解砕することにより、抵抗が1000Ω・cmの酸化亜鉛微粉末を得た。これを導電性微粉末B-1とした。
【0502】表面処理方法としては、加熱型混合機に酸化亜鉛微粉末99質量部とトルエンで希釈したジメチルシリコーンオイル1質量部とを加え、80℃で攪拌混合しながら溶媒を除去した。その後混合を続けながら120℃で30分間加熱処理を行った。室温に戻した後に解砕処理を行い、導電性微粉末B-1を得た。
【0503】この導電性微粉末B-1は、一次粒子の個数平均粒径が0.1μmであり、一次粒子が凝集した粒子径が0.5?7μmの凝集体からなっていた。この導電性微粉末B-1は白色であり、後述する実施例18で用いる画像形成装置で画像露光に用いられるレーザービームスキャナーの露光光波長740nmにあわせて、波長740nmの光源及びX-Rite社製310T透過型濃度計を用いて、上記波長域における透過率を測定したところ、透過率は35%であった。
【0504】導電性微粉末の抵抗は、底面積2.26cm^(2)の円筒内に約0.5gの粉体試料を入れ、粉体試料の上下に配置された上下電極間に15kgの加重を行うと同時に100Vの電圧を印加し抵抗値を計測、その後正規化して比抵抗を算出した。
【0505】導電性微粉末の粒度分布は、純水10mlに微量の界面活性剤を添加し、これに導電性微粉末の試料10mgを加え、超音波分散機(超音波ホモジナイザー)にて10分間分散した後、リキッドモジュールを取り付けたコールター社製、LS-230型レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、0.04?2000μmを粒子径の測定範囲とし、測定時間90秒、測定回数1回で測定し、得られる体積基準の粒度分布から10%体積径D_(10)、50%体積径D_(50)及び90%体積径D_(90)を算出した。
【0506】また、導電性微粉末は、走査型電子顕微鏡にて3000倍及び3万倍で、一次粒子及び凝集体の状態を観察した。
【0507】<導電性微粉末の例2>アルミニウム元素を含有する、抵抗が100Ω・cmの酸化亜鉛微粉末(一次粒子の個数平均粒径が0.1μmであり、一次粒子が凝集した粒子径が0.7?7μmの凝集体からなる)に分級操作を施すことにより、一次粒子の個数平均粒径が0.1μmであり、一次粒子が凝集した粒子径が0.7?4μmの凝集体からなる酸化亜鉛微粉末(抵抗が400Ω・cm)を得た。これを導電性微粉末B-2とした。この導電性微粉末B-2の740nmの波長域における透過率は38%であった。
【0508】<導電性微粉末の例3>上記導電性微粉末B-2にジメチルシリコーンオイル1質量%で表面処理を施し、表面処理後解砕することにより、抵抗が2000Ω・cmの酸化亜鉛微粉末を得た。これを導電性微粉末B-3とした。
【0509】表面処理方法としては、加熱型混合機に導電性微粉末B-2 99質量部と、トルエンで希釈したジメチルシリコーンオイル1質量部とを加え、80℃で攪拌混合しながら溶媒を除去した。その後混合を続けながら120℃で30分間加熱処理を行った。室温に戻した後、解砕処理を行い導電性微粉末B-3を得た。
【0510】この導電性微粉末B-3の740nmの波長域における透過率は40%であった。この導電性微粉末B-3は、一次粒子の個数平均粒径が0.1μmであり、一次粒子が凝集した粒子径が0.3?3μmの凝集体からなっていた。
【0511】<導電性微粉末の例4>上記導電性微粉末B-2にイソプロピルトリイソステアロイルチタネート1質量%で表面処理を施し、表面処理後解砕することにより、抵抗が1500Ω・cmの酸化亜鉛微粉末を得た。これを導電性微粉末B-4とした。
【0512】表面処理方法としては、加熱型混合機に導電性微粉末B-2 99質量部と、トルエンで希釈したイソプロピルトリイソステアロイルチタネート1質量とを加え、80℃で攪拌混合しながら溶媒を除去した。その後混合を続けながら120℃で30分間加熱処理を行った。更に150℃でキュアした後室温に戻し、解砕処理を行い導電性微粉末B-4を得た。
【0513】この導電性微粉末B-4は白色であり、740nmの波長域における透過率は40%であった。この導電性微粉末B-4は、一次粒子の個数平均粒径が0.1μmであり、一次粒子が凝集した粒子径が0.5?3μmの凝集体とからなっていた。
【0514】<導電性微粉末の例5>上記導電性微粉末B-2にステアリン酸亜鉛2質量%で表面処理を施し、処理後解砕することにより、抵抗が5000Ω・cmの酸化亜鉛微粉末を得た。これを導電性微粉末B-5とした。
【0515】この導電性微粉末B-5は白色であり、740nmの波長域における透過率は40%であった。この導電性微粉末B-5は、一次粒子の個数平均粒径が0.1μmであり、一次粒子が凝集した粒子径が0.5?3μmの凝集体からなっていた。」

3 当審の判断

(1)本件発明11について

ア 対比
本件発明11と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「熱硬化性の液体状シリコンゴム」は,「ZnOを主成分とする微粒子を焼成し,前記微粒子を粉砕し5μm以下の粒子としてこれを熱硬化性の液体状シリコンゴムに加え,熱硬化させて」,「円板状ゴム」を形成するものであるところ,引用発明の当該「液体状シリコンゴム」は,本件発明11の「熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマ」と,“ゴムを含むベースポリマ”である点で共通するから,引用発明と本件発明11とは,“熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマ”を含む点で一致する。

(イ)引用発明の「ZnOを主成分とする電圧非直線抵抗微粒子」は,ZnOに所定の添加物を添加した材料が,バリスタ特性,すなわち印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する性質を持つことが技術常識(後記,甲第8号証(第5 2(5)C)参照。)であることから,本件発明11の「印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する非オーム性を有するバリスタ粒子」に相当するといえる。

(ウ)引用発明の「用いる微粒子の大きさ」,すなわち,「ZnOを主成分とする電圧非直線抵抗微粒子」は,「30μm以下の粒子,望ましくは,粒径としては0.5?30μmのものである」から,上記(イ)の認定を踏まえると,引用発明と本件発明11とは,下記の相違点で相違するものの,“バリスタ粒子は,最大粒子径が30μm以下である”点で一致する。

(エ)以上,上記(ア)?(ウ)で検討した内容を踏まえると,本件発明11と引用発明とは,次の点で一致し,また相違する。

〈一致点〉
熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマと,
印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する非オーム性を有するバリスタ粒子と,を含み,
前記バリスタ粒子は,最大粒子径が30μm以下である,非オーム性組成物。

〈相違点〉
本件発明11の「バリスタ粒子」が,「体積粒度分布における累積50%粒子径D50が1.0μm以上10μm以下、累積90%粒子径D90が2.0μm以上25μm以下であり、D90/D50が2.5以下である」のに対し,引用発明の「ZnOを主成分とする電圧非直線抵抗微粒子」の粒度分布がどのようなものであるかが特定されていない点。

イ 判断
上記相違点を検討する。
本件発明11は,非オーム性組成物に関するものであり(【0001】),1対の電力ケーブルを,互いに軸を一致させつつ突き合わせて直線状に接続することがあり,このとき,例えば1対の電力ケーブルの導体同士を圧縮スリーブで圧縮接続し,その周囲にケーブル中間接続用ユニットを装着させたり(【0003】),電力ケーブルと架空送電線などとを接続するために,ケーブル終端接続部が設けられることがあり,ケーブル終端接続部は,例えば,電力ケーブルが挿入され電力ケーブルとの間に絶縁媒体が充填される碍管を有していて,このとき,電力ケーブルは,一端から段階的に剥がされ,ケーブル導体,ケーブル絶縁体およびケーブル外部半導電層は,電力ケーブルの一端側からこの順で露出しており,このうちケーブルの絶縁体露出部とケーブルの外部半導電層露出部の電界を緩和する目的で終端接続用ユニットを装着させるものにおいて(【0005】),当該,ケーブル中間接続用ユニットやケーブル終端接続用ユニットには,電力ケーブルの接続部分での電気的特性をより安定させる観点から,電界集中をより緩和できることが求められ,また,高電圧で所望の電気的特性を維持できるように電気的な破壊強度が高いことも求められていることを解決しようとする課題とし(【0012】),熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマと, 印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する非オーム性を有するバリスタ粒子と,を含み, 前記バリスタ粒子は最大粒子径が30μm以下である,非オーム性組成物を提供することを目的としてなされたものと認められる。(【0009】)
一方,引用発明は,圧力を加えると,ある電圧値で急激に抵抗の低くなる感圧電圧非直線抵抗素子に関するものであって,従来,圧力を検知する素子として,半導体のpn接合などを利用した感圧ダイオード,圧電効果を利用した圧電素子などが知られていたところ,これらの素子は,圧力による変化が連続的であり,圧力を検知して,スイッチング的に動作させたい時には,連続的変化を他の素子を用いてスイッチング的変化に変換してやることが必要であり,以上のような状況に鑑み,ある電圧を加えておいて,圧力を増していくと,スイッチング的に電流の増加する感圧電圧非直線抵抗素子を提供するものであって(2(1)A),とりわけ,「ZnOを主成分とする微粒子」の「大きさは細かいほど,均一に分散するため特性の安定なものが得られ,30μm以下の粒子,望ましくは,粒径としては0.5?30μmのもの」であるものの,この「ZnOを主成分とする微粒子」,すなわちバリスタ粒子の粒度分布をどのようなものとするかについては,上記アで検討したとおり,「粒径としては0.5?30μmのもの」とすることのみ特定されている。
一方,甲第2号証には,上記相違点に係る構成を一部に含む上記2(2)に示した,甲2記載事項が記載されていると認められるところ,そのうち,「酸化亜鉛粉」,すなわちZnO粉の粒度分布につき,「累積体積50容量%における体積累積粒径D_(50)が0.1μm以上10μm以下」,「累積体積90容量%における体積累積粒径D_(90)が0.3μm以上30μm以下」,「D_(50)/D_(90)の値が0.3以上1以下」とすることの記載があるものの,これらは,主に「導電性酸化亜鉛粉及びこれを含む導電性組成物において」,「酸化亜鉛の経時劣化を抑制し,導電性の経時劣化」を「効果的に抑制」するためになされたものであって,本件発明11の課題である,電界集中をより緩和できることや,高電圧で所望の電気的特性を維持できるように電気的な破壊強度を高いものとするために,ZnO粉の粒度分布を上記のとおりとすることの記載は無い。
そして,甲第1号証には,引用発明において,甲2記載技術を用いることを動機付ける記載は認められず,単に同じ材料(ZnO)の粒径及び粒度分布が似通った範囲のものであることの記述をもって,引用発明及び甲2記載技術に基づいて,本件発明11をなすことが,当業者によって容易になし得たとまではいえない。
さらに,本件発明11は,この相違点によって,成形体として非オーム性抵抗層を形成したときに,所望のバリスタ特性を発現させつつ,絶縁破壊強度を高く維持することができるという,引用発明や甲2記載技術に比して,格別な効果をもたらすことからしても,本件発明11は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易になし得たものとすることはできない。
また,上記2に示した甲第3号証及び甲第4号証にも,上記相違点に係る構成は記載されておらず,当業者にとって自明な事項であるとも周知技術であるともいえない。

ウ 小括
以上のとおり,本件発明11は,甲第1号証?甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)本件発明12について
本件発明12は,本件発明11と概ねそのカテゴリー表現のみ異なるものであるから,本件発明11と同じ理由により,甲第1号証?甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(3)本件発明13について
本件発明13は,本件発明12をさらに限定するものであって,本件発明12と同じ理由により,甲第1号証?甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(4)小括
以上判断したとおり,本件発明11?本件発明13は,甲第1号証?甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 本件発明1?本件発明10についての特許異議申立理由について

申立人は,本件発明1?10について,特許異議申立書において,本件発明1?本件発明3,本件発明5?本件発明6,本件発明8および本件発明10は,甲第1号証,甲第2号証,甲第3号証,甲第4号証,及び甲第5号証に記載された発明,並びに周知技術に基づいて,本件発明4は,甲第1号証?甲第5号証,及び甲第6号証に記載された発明,並びに周知技術に基づいて,本件発明7は,甲第1号証?甲第5号証,及び甲第7号証に記載された発明,並びに周知技術に基づいて,本件発明9は,甲第1号証?甲第5号証,甲第8号証,及び甲第9号証に記載された発明,並びに周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を取り消されるべきものであると主張するので,以下これを検討する。

2 各甲号証の記載

(1)甲第1号証?甲第4号証の記載
甲第1号証?甲第4号証の記載は,上記第3 2に記載したとおりである。

(2)甲第5号証(特表2014-518500号公報)の記載及び甲5発明
甲第5号証には,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0020】
図1は、電場制御デバイスが設けられたケーブル結合部12の概略断面図である。高電圧ケーブル結合部12は、それぞれケーブル結合部12用に適切に準備されているケーブル導体1と、ケーブル絶縁体2と、半導体接地層8とから成る高電圧ケーブルを備えている。接続部3が、電流接続デバイスとして設けられている。
【0021】
電場制御デバイスは、内側偏向部4と、抵抗性電場勾配層5と、絶縁層6すなわち結合絶縁部と、半導体層7すなわちケーブル結合部12のマントル(mantle)とを備えることができる。
【0022】
内側偏向部4は、ケーブル結合部12の取り付けの間、接続部3を介して、高電圧ケーブルのケーブル導体1に電気的に接続される。そのために、接続部3は導電性である。内側偏向部4は電気的に半導電性である。例えばケーブル結合部12のマントルである半導体層7と、半導体接地層8とは、代わりに、電気的に導電性の材料から成っていてもよい。
【0023】
抵抗性電場勾配層5は、非直線的な電流電圧特性を有し、電場制御の目的のために適合されている。ケーブル結合部12の製作の間、抵抗性電場勾配層5は、高電圧ケーブルのケーブル絶縁体2に沿って配置され、一端部(図1における右側)において、高電圧ケーブルの半導体接地層8に電気的に接続される。一位置(図1における左側)において、抵抗性電場勾配層5は、内側偏向部4に電気的に接続され、それによって高電圧ケーブルのケーブル導体1に電気的に接続されることになる。
【0024】
絶縁層6は、抵抗性電場勾配層5の上に配置され、抵抗性電場勾配層5の一位置から一端部に向かって少なくとも延びつつ、例えば先細電場制御形状によって、抵抗性電場勾配層5の一端部に到達することなく途切れている。半導体層7は、絶縁層6の上に配置され、抵抗性電場勾配層5の一位置から一端部に向かって少なくとも延び、絶縁層6の端部を過ぎる。それによって、外側三重点11を、抵抗性電場勾配層5、絶縁層6、および半導体層7の交差位置に定めることができる。」

B 「【0068】
一般的に、電場制御デバイスは、ケーブル結合部、ケーブル終端部、およびケーブル接続部などの様々な高電圧部品で使うことができるが、開閉装置および真空遮断器におけるブッシングとしても使うことができる。ここでは、図面で示されるような鏡面対称が必要とは限らない。軸線方向において、デバイス全体が図面で示されている。」

C 「

図1」

以上,A?Cの記載から,甲第5号証には次の発明(以下,「甲5発明」という。)が記載されているといえる。

「電場制御デバイスが設けられたケーブル結合部12であって,前記ケーブル結合部12は,ケーブル導体1と,ケーブル絶縁体2と,半導体接地層8とから成る高電圧ケーブルを備え,
前記電場制御デバイスは,内側偏向部4と,抵抗性電場勾配層5と,絶縁層6すなわち結合絶縁部とを備え,
前記抵抗性電場勾配層5は,非直線的な電流電圧特性を有し,前記高電圧ケーブルのケーブル絶縁体2に沿って配置され,前記高電圧ケーブルの半導体接地層8に電気的に接続され,
前記電場制御デバイスは,ケーブル接続部で使うことができる,
ケーブル接合部12。」

(3)甲第6号証(特開2013-212045号公報)の記載
甲第6号証には,次の事項が記載されている。

A 「【0010】
ポリアニリンは、電界平坦化材料の電気抵抗の非線形性(すなわち、増加する電界にしたがって減少する抵抗)を与え、その結果、電界平坦化材料は、非線形電気抵抗を有する。したがって、本発明による電界平坦化材料は、非線形な電界平坦化材料であるのが好ましい。」

B 「【0019】
エラストマー・ポリマーは、エチレン・プロピレンジエンモノマ(EPDM)ゴム、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、及びシリコーン・ゴム(たとえば、液状シリコーン・ゴム(LSR)または高温加硫(HTV)ゴム)またはこれらの混合物から選択することができる。」

(4)甲第7号証(特開2012-142377号公報)の記載
甲第7号証には,次の事項が記載されている。

A 「【0026】
ここで、図1は、本発明に係る実施の形態の非直線抵抗材料10の第2の充填剤30としてZnOウィスカを使用したときの、第1の充填剤20と第2の充填剤30とが形成する導電パスを説明するための非直線抵抗材料10を模式的に示した図である。図2は、本発明に係る実施の形態の非直線抵抗材料10の第2の充填剤30としてSiC粒子を使用したときの、第1の充填剤20と第2の充填剤30とが形成する導電パスを説明するための非直線抵抗材料10を模式的に示した図である。図3は、本発明に係る実施の形態の非直線抵抗材料10の第2の充填剤30としてZnO粒子を使用したときの、第1の充填剤20と第2の充填剤30とが形成する導電パスを説明するための非直線抵抗材料10を模式的に示した図である。」

B 「【0032】
ZnOウィスカの表面は、シランカップリング処理されていることが好ましい。シランカップリング処理することで、エポキシ樹脂とのぬれ性を向上させることができる。シランカップリング処理に使用するシランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、メトキシシラン、エトキシシランなどを使用することができる。」

(5)甲第8号証(特開2016-17161号公報)の記載
甲第8号証には,次の事項が記載されている。

A 「【0026】
上記特定のセルロース繊維(B成分)の数平均繊維径・最大繊維径は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、固形分率で0.05?0.1重量%の微細セルロースの水分散体を調製し、その分散体を、親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)の観察用試料とする。なお、大きな繊維径の繊維を含む場合には、ガラス上へキャストした表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。そして、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。その際に、得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し、20本以上の繊維が交差するよう、試料および観察条件(倍率等)を調節する。そして、この条件を満たす観察画像を得た後、この画像に対し、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を、電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る(したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる)。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径および数平均繊維径を算出する。」

B 「【0032】
そして、上記特定のセルロース繊維(B成分)が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TEMPO)等のN-オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いて酸化されたものであり、上記酸化反応により生じたアルデヒド基およびケトン基が、還元剤により還元されたものであると、上記特定のセルロース繊維を容易に得ることができるようになり、機能膜形成用組成物として、より良好な結果を得ることができるようになるため、好ましい。また、上記還元剤による還元が、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH_(4))によるものであると、上記観点から、より好ましい。」

C 「【0065】
ここで、酸化亜鉛バリスタからなるセラミックアレスタ素子(避雷器)は、酸化亜鉛を主成分とし、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化アンチモンなどの添加物を加えて空気中で焼結させると、n型半導体である酸化亜鉛からなるグレイン(粒子)と、酸化ビスマスを主成分とする液相の粒界(バウンダリー)から構成される多結晶体のセラミックスが得られる。このセラミックス焼結体に電圧を印加すると、比較的抵抗が低い酸化亜鉛粒子間に存在する高い絶縁性の酸化ビスマス系粒界に電界が掛かり、一定電圧を超えるとトンネル効果により一気に低抵抗となる。この特性を利用して、電源ラインに並列に接続することで、電源に一定電圧以上の電圧が掛かると短絡する特性から、数百V以下の低電圧領域ではバリスタ素子とし、1千V以上では避雷器として利用されている。酸化亜鉛バリスタをアレスタ(避雷器)として利用する場合、常に電源電圧が印加された状態となり、大気中の水分や不純物により焼結体の縁面が低抵抗となり沿面で放電が起こると、漏れ電流として損失となる。また一定電流以上の漏れ電流が発生すると、それを起点として絶縁破壊に至るケースが生じる場合がある。そのためアレスタ素子の縁面に高い絶縁抵抗を有するガラス層を塗布焼成し、漏れ電流の発生を抑制している。しかしこの縁面のガラス絶縁層は刷毛塗りで行うため、均一とはならず絶縁性にばらつきを有している。一方で均一に塗布する目的でスプレー法が検討されたが、スプレー液の沈降により塗布できなくなる場合や、塗布してもダレが生じて均一な絶縁機能膜にはならない場合が多発した。そのため、上記セラミックアレスタ素子の絶縁機能膜材料として、本発明の機能膜形成用組成物が有効となる。」

(6)甲第9号証(特開2002-170704号公報)の記載
甲第9号証には,次の事項が記載されている。

A 「【0003】ところでバリスターとしては、旧くはSiCやSeなどが使用されてきたが、酸化亜鉛バリスター(以下、ZNVと略記する)が開発されるにおよび、その優れた非直線特性から現在ではバリスターの主流となっている。
【0004】かかるZNVの中でも代表的なのは、ZnOとBi_(2)O_(3),Pr_(2)O_(3),Sb_(2)O_(3),MnO,CoO,Cr_(2)O_(3)などの添加物を含むセラミックであり、ZnOに上記の様な添加物を加え、粉砕、混合した後、バインダーを加えて造粒した粉体を任意の形状に圧縮成形し、1100?1400℃の恒温で焼結することによって製造される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このZNVは、ZnO粒子と前記添加物成分からなる粒界相とスピネル構造からなり、ZnO粒子の比抵抗が極めて小さいのに対し、粒界相の比抵抗が桁違いに大きいことから、ZNVの電極間に印加された電圧はその殆どが粒界相に加わり、その結果として顕著なバリスター特性を発現すると考えられている。しかし、その理論的究明は十分に為されているとは言えない。」

3 判断

(1)本件発明1について

ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。

(ア)甲5発明の,「高電圧ケーブル」,「ケーブル結合部12」,及び「半導体接地層8」はそれぞれ,本件発明1の「電力ケーブル」,「電力ケーブルの接続部分」,及び「内部半導電層」に相当する。

(イ)甲5発明の「ケーブル結合部12」は,「電場制御デバイスが設けられ」,当該「電場制御デバイスは,ケーブル接続部で使うことができる」ものであるところ,上記(ア)の認定を踏まえると,“電力ケーブルの接続部分の外周上に配置”されていて,その形状は“筒状”であるといえることから,甲5発明と本件発明1とは,“電力ケーブルの接続部分の外周上に配置される筒状のケーブル中間接続用ユニット”である点で一致する。

(ウ)甲5発明の「絶縁層6すなわち結合絶縁部」は「高電圧ケーブル」の周囲を覆っていて,“筒状”であるといえるから,本件発明1の「筒状の絶縁筒」に相当する。

(エ)甲5発明の「抵抗性電場勾配層5」は,「非直線的な電流電圧特性を有する」ものであるところ,本件発明1の「非オーム性抵抗層」に相当する。そして,上記2(4)Cに示される図1の「絶縁層6」と「抵抗性電場勾配層5」の関係,及び上記(ウ)の認定を踏まえると,甲5発明と本件発明1とは,下記の点(相違点a)で相違するものの,“前記絶縁筒の内周面に設けられる,非オーム性抵抗層”を備える点で一致する。

(オ)甲5発明の「半導体接地層8」はまた,「前記高電圧ケーブルのケーブル絶縁体2に沿って配置され」るとともに,「抵抗性電場勾配層5」は,「前記高電圧ケーブルの半導体接地層8に電気的に接続され」るところ,上記(ア)の認定を踏まえると,「半導体接地層8」は,「抵抗性電場勾配層5」上に設けられているといえることから,上記(エ)の認定を踏まえ,甲5発明と本件発明1とは,“前記非オーム性抵抗層上に設けられる内部半導電層”を備える点で一致する。

(カ)以上,(ア)?(オ)の認定から,本件発明1と甲5発明とは,次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
電力ケーブルの接続部分の外周上に配置される筒状のケーブル中間接続用ユニットであって,
筒状の絶縁筒と,
前記絶縁筒の内周面に設けられる,非オーム性抵抗層と,
前記非オーム性抵抗層上に設けられる内部半導電層と,を備える
ケーブル中間接続用ユニット。

〈相違点a〉
本件発明1の「非オーム性抵抗層」が,「非オーム性組成物から形成される」ものであるのに対し,甲5発明は,その特定が無い点。

〈相違点b〉
本件発明1の「非オーム性組成物」は,「熱可塑性樹脂およびゴムの少なくとも1つを含むベースポリマと、印加電圧に対して体積抵抗率が非線形に変化する非オーム性を有するバリスタ粒子と、を含」むとともに,「前記バリスタ粒子」は,「最大粒子径が30μm以下、体積粒度分布における累積50%粒子径D50が1.0μm以上10μm以下、累積90%粒子径D90が2.0μm以上25μm以下であり、D90/D50が2.5以下である」のに対し,甲5発明は,そのような構成を有しない点。

イ 判断
事案に鑑み,先に相違点bについて検討する。
相違点bは,上記第4 3(1)アの相違点である,「バリスタ粒子」が,「体積粒度分布における累積50%粒子径D50が1.0μm以上10μm以下、累積90%粒子径D90が2.0μm以上25μm以下であり、D90/D50が2.5以下である」ことを含むものである。
そして,上記第4 3(1)イに示したとおり,このことは,甲第2号証に記載された甲2記載事項において,一部重なる範囲が開示されているものの,甲5発明において,「非直線的な電流電圧特性を有」するところの「抵抗性電場勾配層5」として,そのような材料を用いることの動機付けはなく,したがって甲5発明,及び甲2記載事項に基づいて本件発明1をなすことは,当業者にとって容易とはいえない。
また,上記第4 2(1)?(4)に示した甲第1号証?甲第4号証にも,上記相違点bに係る構成は記載されておらず,当業者にとって自明な事項であるとも周知技術であるともいえない。

ウ むすび
したがって,本件発明1は,その他相違点aについて判断するまでもなく,甲第1号証?甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(2)本件発明2?本件発明9について
本件発明2?本件発明9は,本件発明1をさらに限定するものであって,本件発明1が甲第1号証?甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたとはいえない以上,同様に,甲第1号証?甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また,本件発明2?本件発明9が共通に含む上記相違点bに係る構成は,その他上記2(3)?(6)に示した甲第6号証?甲第9号証にも記載されていないから,本件発明2?本件発明9は,甲第1号証?甲第9号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(3)本件発明10について
本件発明10は,本件発明1と,電力ケーブルにおいて用いられる箇所が異なるのみであって,本件発明1と同様,上記(1)で示したとおり,甲第1号証?甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

(4)小括
以上のとおり,本件発明1?本件発明10は,甲第1号証?甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 むすび

したがって,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1?13に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に請求項1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-06-25 
出願番号 特願2019-528997(P2019-528997)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H02G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久保 正典  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山崎 慎一
山澤 宏
登録日 2020-07-20 
登録番号 特許第6737407号(P6737407)
権利者 住友電気工業株式会社
発明の名称 非オーム性組成物およびその製造方法、ケーブル中間接続用ユニット並びにケーブル終端接続用ユニット  
代理人 白鳥 昌宏  
代理人 福岡 昌浩  
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