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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2021700843 審決 特許
令和2行ケ10038 審決取消請求事件 判例 特許
不服20208797 審決 特許
令和2行ケ10004 審決取消請求事件 判例 特許
令和2行ケ10056 審決取消請求事件 判例 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12P
管理番号 1376157
審判番号 不服2019-8088  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-18 
確定日 2021-07-14 
事件の表示 特願2016-503216「細胞培養培地及び抗体を産生する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月18日国際公開、WO2014/145091、平成28年 5月16日国内公表、特表2016-513478〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成26年3月14日(パリ条約による優先権主張 2013年3月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年2月12日付けで拒絶査定がなされ、令和1年6月18日に拒絶査定不服の審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、令和2年6月16日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年10月23日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1?44に係る発明は、令和2年10月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?44に記載されたものであり、そのうち請求項18に係る発明(以下、「本願発明18」という。)は次のとおりのものと認める。
「【請求項18】
ベバシズマブもしくはその抗原結合性断片をコードする核酸を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培養する際に使用するための細胞培養培地であって、(i)約10.0mg/L?約20.0mg/Lのインスリン;(ii)約300nM?約400nMの銅;及び(iii)約1.3mMのシスチンを含む、細胞培養培地。」

第2 当審の拒絶理由について
令和2年6月16日付けの当審の拒絶理由は、この出願の請求項1?49に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特表2011-507551号公報

第3 当審の判断
1 引用文献の記載事項
引用文献1(特表2011-507551号公報)には次の事項が記載されている。
(1-1)
「【請求項1】
細胞培養上清中で異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養する方法であって、ここでは、該細胞培養上清は、X±0.9℃に設定される温度で維持され、ここでは、Xは35.1から36.5までの値を有し、ただし該温度は37℃未満に設定される、方法。
・・・
【請求項46】
前記哺乳動物細胞が、CHO細胞またはBHK細胞のような齧歯類の細胞である、請求項1?45のいずれかに記載の方法。」
(1-2)
「【0002】
発明の分野
本発明は、哺乳動物細胞、具体的には、異種タンパク質および/または組み換え体タンパク質を分泌する哺乳動物細胞、そしてさらに具体的には、血液凝固第VIII因子(本明細書中以後、「第VIII因子」または単に「FVIII」)、ADAMTS-13、フューリン、あるいは凝固第VII因子(本明細書中以後、「第VII因子」または単に「FVII」のような血中タンパク質を分泌する哺乳動物細胞を培養するためのプロセスに関する。」
(1-3)
「【0036】
組み換え体タンパク質を発現する安定なCHO細胞クローンを調製する好ましい方法は以下のとおりである。DHFR欠損CHO細胞株DUKX-BIIは、原則として米国特許第5,250,421号(Kaufmanら、Genetics Institute,Inc.)に記載されているように、関連する組み換え体タンパク質の発現が可能なDHFR発現ベクターでトランスフェクトされる。トランスフェクションは、メトトレキセートについて選択される。組み換え体タンパク質の発現をコードする関連領域とDHFR遺伝子の増幅は、漸増濃度のメトトレキセートの中での細胞の増殖によって行われる。適切である場合には、CHO細胞株は、原則として米国特許第6,100,061号(Reiterら、Immuno Aktiengesellschaft)に記載されているとおりに、血清および/またはタンパク質を含まない培地の中での増殖に適応させられ得る。」
(1-4)
「【0037】
宿主細胞株を培養するために選択される基底培地は本発明については重要ではなく、哺乳動物細胞を培養するために適している当該分野で公知のもののうちの任意の1つ、またはそれらの組み合わせであり得る。ダルベッコ改変イーグル培地、Ham’s F-12培地、Eagle’s最小必須培地、およびRPMI-1640培地などの培地が市販されている。組み換え体インシュリンのような増殖因子の添加は随意である。
・・・
【0039】
好ましい培地としては、米国特許第6,171,825号(Bayer,Inc)および米国特許第6,936,441号(Baxter AG)に開示されているものが挙げられる。
【0040】
米国特許第6,171,825号の培地は、組み換え体インシュリン、鉄、ポリオール、銅、および状況に応じた他の微量金属が補充された、改変Dulbecco’s最少必須培地とHam’s F-12培地(重量で50:50)からなる。
【0041】
インシュリンは組み換え体でなければならず、「Nucellin」インシュリンとしてEli Lillyから入手することができる。これは、0.1μg/ml?20μg/ml(好ましくは、5μg/ml?15μg/ml、または約10μg/ml)で添加することができる。鉄は、好ましくは、Fe^(2+)イオンの形態(例えば、FeSO_(4)・EDTAとして提供される)であり、5μM?100μM(好ましくは、約50μm)で存在し得る。適切なポリオールとしては、約1000?約16000までの範囲の分子量を有しているポリ(オキシエチレン)とポリ(オキシプロピレン)の非イオン性ブロックコポリマーが挙げられる。特に好ましいポリオールはPluronic F-68(BASF Wyandotte)であり、これは、8400の平均分子量を有し、ポリ(オキシプロピレン)(20重量%)のセンターブロックと、両方の末端にあるポリ(オキシエチレン)のブロックからなる。これは、Unichema Chemie BVからSynperonic F-68として入手することもできる。他のものとしては、Pluronics F-61、F-71、およびF-108が挙げられる。銅(Cu^(2+))は、50nM?800nMのCuSO_(4)、好ましくは100nM?400nM、便宜的には約250nM等量で添加され得る。微量金属(例えば、マンガン、モリブデン、ケイ素、リチウム、およびクロム)のパネルを含めることにより、第VIII因子の生産のさらなる増大を誘導することができる。BHK細胞は、このタンパク質を含まない基本培地の中ではかなり増殖する。」
(1-5)
「【0042】
米国特許第6,936,441号の培地もまた、DMEMとHam’s F12との50/50混合物をベースとするが、これには、0.1g/lから100g/lの間、好ましくは1g/lから5g/lの間で大豆ペプトンまたは酵母抽出物も含まれる。特に好ましい実施形態では、大豆抽出物(例えば、大豆ペプトン)が使用され得る。大豆ペプトンの分子量は50kD未満、好ましくは10kD未満であり得る。350ダルトンの平均分子量を有している限外濾過された大豆ペプトンの添加は、組み換え体である細胞株の生産性に特に有効であることが証明されている。これは、全部で約9.5%の窒素含有量と、約13%または約7%?10%の遊離のアミノ酸の含有量を有している大豆単離物である。」
(1-6)
「【0045】
別の好ましい実施形態では、以下のアミノ酸混合物が、上記培地にさらに添加される:L-アスパラギン(0.001g/l?1g/l;好ましくは、0.01g/l?0.05g/l;特に好ましくは、0.015g/l?0.03g/l)、L-システイン(0.001g/l?1g/l;好ましくは、0.005g/l?0.05g/l;特に好ましくは、0.01g/l?0.03g/l)、L-シスチン(0.001g/l?1g/l;好ましくは、0.01g/l?0.05g/l;特に好ましくは、0.015g/l?0.03g/l)、L-プロリン(0.001g/l?1.5g/l;好ましくは、0.01g/l?0.07g/l;特に好ましくは、0.02g/l?0.05g/l)、L-トリプトファン(0.001g/l?1g/l;好ましくは、0.01g/l?0.05g/l;特に好ましくは、0.015g/l?0.03g/l)、およびL-グルタミン(0.05g/l?10g/l;好ましくは、0.1g/l?1g/l)。これらのアミノ酸は、個別に、または組み合わせて培地に添加され得る。上記アミノ酸を全て含むアミノ酸混合物の組み合わせた添加が特に好ましい。」
(1-7)
「【0065】
本発明の最初の3つの態様のいずれかの方法によって生産された異種タンパク質または組み換え体タンパク質は、好ましくは、血中タンパク質である。「血中タンパク質」には、本発明者らは、ヒトまたは動物の血液中に存在するか、または存在する可能性がある任意のタンパクを含め、これには、静脈内使用のために操作されたタンパク質が含まれる。適している血中タンパク質としては、血清アルブミン、血液凝固第I、II、III、V、VII、VIII、IX、X、XI、XII、およびXIII因子、フューリン、フォン・ヴィレブランド因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、インターロイキン、インターフェロン、メタロプロテアーゼ(例えば、ADAMTSプロテアーゼ(例えば、ADAMTS-13))、免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、またはIgE)および免疫グロブリン断片が挙げられる。適している抗体または免疫グロブリン断片としては、Fab様分子(Betterら(1988)Science 240、1041);Fv分子(Skerraら(1988)Science 240、1038):V_(H)およびV_(L)パートナードメインが可撓性オリゴペプチドを介して連結させられた単鎖Fv(ScFv)分子(Birdら(1988)Science 242、423:Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,5879)、および単離されたV領域を含む単一ドメイン抗体(dAbs)(Wardら(1989)Nature 341、544)が挙げられる。免疫グロブリンおよびそれらの断片は「ヒト化」することができる。言い換えると、齧歯類起源の可変ドメインを、ヒト起源の定常ドメインに融合させることができる。その結果、得られる抗体は、齧歯類のもとの抗体の抗原特異性を保持する(Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6851-6855)。」
(1-8)
「【0106】
(実施例1)
基本的な細胞培養
FVIIIの生産
典型的な培養物は、Kaufmanら(1989)Mol.Cell.Biol.9:1233-1242および米国特許第5,250,421号に記載されている、第VIII因子とフォン・ヴィレブランド因子とを同時に発現するように形質転換された10A1C6 CHO細胞株のサブクローンを使用して、バイオリアクターの中で確立される。特定のサブクローンを、動物に由来する生成物を含まない標準的な培地への適応と、マイクロプレートの中でのサブクローニングによって得た。
【0107】
標準的な培養培地は以下のとおりである:
DMEM/Ham’s F12 50/50 11.76g/kg
これには以下を添加した:
L-グルタミン 0.6g/kg
エタノールアミン 1.53mg/kg
Synperonic F68 0.25g/kg
NaHCO_(3 )2g/kg
大豆ペプトン 4g/kg
CuSO_(4.)5H_(2)O 17.02mg/kg 。
【0108】
基本のDMEM/Ham’s F12 50/50培地には、4.3ppbのCu^(2+)を完全培地に含めるために十分な1.3mg/kgのCu^(2+)が含まれる。
【0109】
ADAMTS-13の生産
CHO DUKX-B11細胞を、ADAMTS-13遺伝子を導入するためにリン酸カルシウム共沈法を使用してトランスフェクトした。細胞をネオマイシン選択条件下で培養し、メトトレキセートとG418での処理の後で選択した。無血清への適応後、細胞をサブクローニングし、サブクローン640-2を生産用クローン(production clone)として選択した。
【0110】
標準的な培養培地は、US2007/0212770(Grillbergerら;Baxter International Inc.,Baxter Healthcare S.A.)に開示されている培地をベースとする、血清を含まない、インシュリンを含まない、オリゴペプチドを含まない培地である。
【0111】
フューリンの生産
CHO DUKX-B11細胞を、フューリン遺伝子を導入するために、リン酸カルシウム共沈法を使用してトランスフェクトした。細胞を、ヒポキサンチン、チミジン、およびグリシンを含まないDHFR培地で選択した。生産用クローン488-3は、サブクローニングと100nMのメトトレキセートを含む培地中での選択によって同定し、その後、無血清に適応させた。
【0112】
標準的な培養培地は、US2007/0212770(Grillbergerら;Baxter International Inc.,Baxter Healthcare S.A.)に開示されている培地をベースとする、血清を含まない、インシュリンを含まない、オリゴペプチドを含まない培地である。
【0113】
FVIIの生産
CHO DUKX-B11細胞を、FVIIとVKORC(ビタミンKエポキシドレダクターゼ複合体)を同時発現することができる2シストロン性のベクターでトランスフェクトした。遺伝子発現はCMVプロモーターによって駆動され、内部リボゾーム侵入部位(IRES)はFVII遺伝子とVKORC遺伝子との間に配置されている。細胞を、リン酸カルシウム共沈法を使用してトランスフェクトした。選択培地には、200μg/mlのハイグロマイシンBを含めた。細胞を無血清条件下でサブクローニングし、高発現サブクローン1E9を生産用クローンとして選択した。1E9を、連続培養条件下での増殖、生産性、および安定性に関して有利な特性を有しているとして選択した。安定性は、ケモスタット様式で2ヶ月間評価した。
【0114】
標準的な培養培地は、米国特許第6,936,441号(Baxter AG)に開示されている培養培地をベースとし、特に、2.5g/Lのダイズペプトンと5mg/Lのインシュリン(Nucellin(登録商標);Eli LillyまたはNovolin(登録商標)、Novo Nordisk)とを含めた。」

2 引用発明の認定
引用文献1は、培養上清中に異種タンパク質を分泌するCHO細胞等の哺乳動物細胞を培養する方法を開示する文献であって(上記(1-1)、(1-2)、(1-8))、異種タンパク質として免疫グロブリンやその断片を採用すること(上記(1-7))、適した培地として米国特許第6,171,825号に記載されたもの(1-4)が例示されている。そして、異種タンパク質を分泌する哺乳動物細胞は、当該タンパク質の発現が可能な発現ベクターでトランスフェクトして作成するのが通常であるから(上記(1-3))、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。
「免疫グロブリン及び免疫グロブリン断片の発現が可能な発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を培養する際に使用するための細胞培養培地であって、50nM?800nM、好ましくは100nM?400nM、便宜的には約250nMの濃度の銅、及び0.1μg/ml?20μg/ml、好ましくは5μg/ml?15μg/ml、又は約10μg/mlの濃度のインシュリンを含む、細胞培養培地。」

3 対比
本願発明18と引用発明とを対比すると、引用発明の「免疫グロブリン及び免疫グロブリン断片の発現が可能な発現ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を培養する際に使用するための細胞培養培地」は、本願発明18の「ベバシズマブもしくはその抗原結合性断片をコードする核酸を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培養する際に使用するための細胞培養培地」に対応する。そして、ベバシズマブは組換え型ヒト化モノクローナル抗体であることから(本願明細書段落【0004】)、引用発明の免疫グロブリンと本願発明18のベバシズマブは抗体である点で共通している。さらに、発現ベクターは発現させるタンパク質をコードする核酸を含み、トランスフェクトにより細胞に含まれるようになるものである。また、引用発明の「インシュリン」は本願発明18の「インスリン」に相当する。したがって、本願発明18と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。

(一致点)
「抗体及びその抗原結合性断片をコードする核酸を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培養する際に使用するための細胞培養培地であって、銅及びインスリンを含む、細胞培養培地。」

(相違点)
(相違点1)
抗体が、本願発明18は、「ベバシズマブ」であるのに対して、引用発明は、「免疫グロブリン」との特定に留まるものである点
(相違点2)
細胞培養培地が、本願発明18は「約1.3mMのシスチン」を含むものであるのに対して、引用発明はシスチンを含むことが特定されていない点
(相違点3)
培地中の銅の濃度について、本願発明18は、「約300nM?約400nM」と特定されているのに対して、引用発明は、「50nM?800nM、好ましくは100nM?400nM、便宜的には約250nM」である点
(相違点4)
培地中のインスリンの濃度について、本願発明18は、「約10.0mg/L?約20.0mg/L」と特定されているのに対して、引用発明は、「0.1μg/ml?20μg/ml、好ましくは5μg/ml?15μg/ml、又は約10μg/ml」(すなわち0.1mg/L?20mg/L、好ましくは5mg/L?15mg/L、又は約10mg/L)である点

4 判断
ア 相違点1について
引用発明の培地を使用する培養方法において、免疫グロブリン又は免疫グロブリン断片として、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞発現系で生成されることが周知のベバシズマブ(必要であれば、特表2001-509817号公報 特許請求の範囲、第32頁第9?23行等を参照されたい。)を採用することは、当業者が適宜成し得たことである。
イ 相違点2について
引用文献1には、好ましい実施形態として、培地にさらにL-シスチン(0.001g/l?1g/l)等のアミノ酸を添加することが記載されている(上記(1-6)。L-シスチンの分子量を240.3g/mоlとして計算すると、L-シスチンの濃度は約4.2μM?約4.2mMである。)。ここで、組み換えタンパク質の収率を改善する目的で培地の組成を最適化することは当業者が通常行うことであるから、引用発明の培地にL-シスチンを約4.2μM?約4.2mM程度の濃度で添加することや、さらにその最適な濃度範囲を検討し、約1.3mMなどの濃度とすることは当業者が容易に想到できたことである。
ウ 相違点3、4について
相違点3の銅の濃度及び相違点4のインスリンの濃度は、いずれも本願発明18の濃度範囲と引用発明の濃度範囲とで相当部分重複するものである。そして、組み換えタンパク質の収率を改善する目的で培地の組成を最適化しようとして、引用発明の培地において、銅及びインスリンの濃度範囲をさらに検討することは当業者が容易に想到できたことである。
エ 効果について
本願明細書の実施例1-4に記載されているように、339nMの濃度の銅や、1%の動物由来加水分解物及び0.25%の植物由来加水分解物等を含む基底細胞培養培地を使用する条件で、かつ特定の培養温度シフトを含む培養手順で培養する条件において、インスリンやシスチン等の添加の効果が確認されている。しかしながら、当該効果は、引用文献1に記載された発明と比較して顕著なものとは認められない。
以上ア?エからみて、本願発明18は、引用発明及び引用文献1の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

第4 むすび
以上のとおり、この出願の請求項18に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2021-02-04 
結審通知日 2021-02-09 
審決日 2021-02-25 
出願番号 特願2016-503216(P2016-503216)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C12P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植原 克典  
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 小暮 道明
千葉 直紀
発明の名称 細胞培養培地及び抗体を産生する方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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