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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1376172
審判番号 不服2020-9711  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-10 
確定日 2021-07-15 
事件の表示 特願2018-553818「ヘッドマウントディスプレイ、表示制御装置、表示制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日国際公開、WO2018/101162〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)11月24日(優先権主張 平成28年12月1日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、その後の手続の概要は、次のとおりである。
令和 元年 9月10日付け:拒絶理由通知
令和 元年11月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月10日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(原査定の謄本の送達日:令和2年4月21日)
令和 2年 7月10日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は、令和元年11月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の請求項1の記載により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイであって、
所定周波数での無線通信により映像送信装置から映像を受信する所定周波数通信部と、
ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される場合に、前記所定周波数通信部により受信される映像を、前記ヘッドマウントディスプレイの表示部に表示させる装着後映像表示制御部と、
前記ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される前に、前記所定周波数通信部による受信以外の方法により取得される映像を、前記表示部に表示させる装着前映像表示制御部と、
を含むことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の本願発明についての拒絶の理由は、次のとおりである。

本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった次の引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.国際公開第2016/013269号公報
引用文献2.特開2004-258123号公報

第4 引用文献等
1 引用文献1
(1)引用文献1に記載された事項
国際公開第2016/013269号(平成28年1月28日国際公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。

「[0034]図1には、本明細書で開示する技術を適用したヘッド・マウント・ディスプレイ100を頭部に装着しているユーザーを正面から眺めた様子を示している。
[0035]ヘッド・マウント・ディスプレイ100は、ユーザーが頭部又は顔部に装着した際にユーザーの眼を直接覆い、画像視聴中のユーザーに没入感を与えることができる。また、シースルーのタイプとは相違し、ヘッド・マウント・ディスプレイ100を着用したユーザーは現実世界の風景を直接眺めることはできない。但し、ユーザーの視線方向の風景を撮影する外側カメラ312を装備し、その撮像画像を表示することにより、ユーザーは間接的に現実世界の風景を眺める(すなわち、ビデオ・シースルーで風景を表示する)ことができる。勿論、ビデオ・シースルー画像に対し、AR(Augmented Reality:拡張現実感)画像などの仮想的な表示画像を重ね合わせて見せることができる。また、表示画像は、外側(すなわち他人)からは見えないので、情報表示に際してプライバシーが守られ易い。
[0036]図1に示すヘッド・マウント・ディスプレイ100は、帽子形状に類似した構造体であり、着用したユーザーの左右の眼を直接覆うように構成されている。ヘッド・マウント・ディスプレイ100本体の内側の左右の眼に対向する位置には、ユーザーが観察する表示パネル(図1では図示しない)が配設されている。表示パネルは、例えば有機EL素子や液晶ディスプレイなどのマイクロ・ディスプレイや、網膜直描ディスプレイなどのレーザー走査方式ディスプレイで構成される。
[0037]ヘッド・マウント・ディスプレイ100本体前面のほぼ中央には、周囲画像(ユーザーの視界)入力用の外側カメラ312が設置されている。また、ヘッド・マウント・ディスプレイ100本体の左右の両端付近にそれぞれマイクロフォン103L、103Rが設置されている。左右ほぼ対称的にマイクロフォン103L、103Rを持つことで、中央に定位した音声(ユーザーの声)だけを認識することで、周囲の雑音や他人の話声と分離することができ、例えば音声入力による操作時の誤動作を防止することができる。
[0038]また、ヘッド・マウント・ディスプレイ100本体の外側には、ユーザーが指先などを使ってタッチ入力することができるタッチパネル315が配設されている。図示の例では、左右一対のタッチパネル315を備えているが、単一又は3以上のタッチパネル315を備えていてもよい。
[0039]図2には、図1に示したヘッド・マウント・ディスプレイ100を着用したユーザーを上方から眺めた様子を示している。図示のヘッド・マウント・ディスプレイ100は、ユーザーの顔面と対向する側面に、左眼用及び右眼用の表示パネル104L、104Rを持つ。表示パネル104L、104Rは、例えば有機EL素子や液晶ディスプレイなどのマイクロ・ディスプレイや網膜直描ディスプレイなどのレーザー走査方式ディスプレイで構成される。表示パネル104L、104Rの表示画像は、虚像光学部101L、101Rを通過するにより拡大虚像としてユーザーに観察される。また、眼の高さや眼幅にはユーザー毎に個人差があるため、着用したユーザーの眼と左右の各表示系とを位置合わせする必要がある。図2に示す例では、右眼用の表示パネルと左眼用の表示パネルの間に眼幅調整機構105を装備している。
[0040]図3には、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の内部構成例を示している。以下、各部について説明する。
[0041]制御部301は、ROM(Read Only Memory)301AやRAM(Random Access Memory)301Bを備えている。ROM301A内には、制御部301で実行するプログラム・コードや各種データを格納している。制御部301は、RAM301Bへロードしたプログラムを実行することで、画像の表示制御を始め、ヘッド・マウント・ディスプレイ100全体の動作を統括的にコントロールする。
[0042]なお、ROM301Aに格納するプログラムとして、使用の開始時に実行する認証処理プログラム、外側カメラ312で撮影したシースルー画像や再生動画像を画面表示する表示制御プログラムを挙げることができる。また、ROM301Aに格納するデータとして、当該ヘッド・マウント・ディスプレイ100に固有の識別情報、当該ヘッド・マウント・ディスプレイ100を使用するユーザーを認証するための認証情報(例えば、暗証番号やパスワード、生体情報)などのユーザー属性情報などを挙げることができる。」

「[0045]状態情報取得部304は、当該ヘッド・マウント・ディスプレイ100本体、又は当該ヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したユーザーの状態情報を取得する機能モジュールである。状態情報取得部304は、自ら状態情報を検出するための各種センサーを装備していてもよいし、これらのセンサー類の一部又は全部を備えた外部機器(例えば、ユーザーが身に付けているスマートフォンや腕時計、その他の多機能端末)から通信部305(後述)を介して状態情報を取得するようにしてもよい。
[0046]状態情報取得部304は、ユーザーの頭部動作を追跡するために、例えばユーザーの頭部の位置及び姿勢の情報又は姿勢の情報を取得する。ユーザーの頭部動作を追跡するために、状態情報取得部304は、例えば3軸ジャイロ・センサー、3軸加速度センサー、3軸地磁気センサーの合計9軸を検出可能なセンサーとする。また、状態情報取得部304は、GPS(Global Positioning System)センサー、ドップラー・センサー、赤外線センサー、電波強度センサーなどのいずれか1つ又は2以上のセンサーをさらに組み合わせて用いてもよい。また、状態情報取得部304は、位置姿勢情報の取得に、携帯電話基地局情報やPlaceEngine(登録商標)情報(無線LANアクセスポイントからの電測情報)など、各種インフラストラクチャーから提供される情報をさらに組み合わせて用いるようにしてもよい。図3に示す例では、頭部動作追跡のための状態取得部304は、ヘッド・マウント・ディスプレイ100に内蔵されるが、ヘッド・マウント・ディスプレイ100に外付けされるアクセサリー部品などで構成するようにしてもよい。後者の場合、外付け接続される状態取得部304は、頭部の姿勢情報を例えば回転マトリックスの形式で表現し、Bluetooth(登録商標)通信などの無線通信やUSB(Universal Serial Bus)のような高速な有線インフェース経由でヘッド・マウント・ディスプレイ100本体に送信する。
[0047]また、状態情報取得部304は、上述したユーザーの頭部動作の追跡の他に、当該ヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したユーザーの状態情報として、例えば、ユーザーの作業状態(ヘッド・マウント・ディスプレイ100の装着の有無)や、ユーザーの行動状態(静止、歩行、走行などの移動状態、手や指先によるジェスチャー、瞼の開閉状態、視線方向、瞳孔の大小)、精神状態(ユーザーが表示画像を観察中に没頭若しくは集中しているかなどの感動度、興奮度、覚醒度、感情や情動など)、さらには生理状態を取得する。また、状態情報取得部304は、これらの状態情報をユーザーから取得するために、外側カメラ312や、機械スイッチなどからなる装着センサー、ユーザーの顔を撮影する内側カメラ、ジャイロ・センサー、加速度センサー、速度センサー、圧力センサー、体温又は気温を検知する温度センサー、発汗センサー、脈拍センサー、筋電位センサー、眼電位センサー、脳波センサー、呼気センサー、ガス・イオン濃度センサーなどの各種の状態センサー、タイマー(いずれも図示しない)を備えていてもよい。また、状態情報取得部304は、ヘッド・マウント・ディスプレイをユーザーの頭部に装着した際に、ユーザーの額に当接する動きに連動して、ヘッド・マウント・ディスプレイ100がユーザーに装着されたことを検出する装着センサー(例えば、特許文献8を参照のこと)を利用して、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の装着の有無を検出するようにしてもよい。」

「[0049]外側カメラ312は、例えばヘッド・マウント・ディスプレイ100本体前面のほぼ中央に配置され(図2を参照のこと)、周囲画像を撮影することができる。ユーザーは、入力操作部302の操作、内側カメラや筋電位センサーなどで認識される瞳孔の大小や音声入力を通じて、外側カメラ312のズームを調整することができるものとする。また、状態情報取得部304で取得したユーザーの視線方向に合わせて外側カメラ312のパン、チルト、ロール方向の姿勢制御を行なうことで、外側カメラ312でユーザーの自分目線の画像すなわちユーザーの視線方向の画像を撮影することができる。外側カメラ312の撮影画像を、表示部309に表示出力することができ、また、撮影画像を通信部305から送信したり記憶部306に保存したりすることもできる。」

「[0052]通信部305は、外部機器(図示しない)との通信処理、並びに通信信号の変復調並びに符号化復号処理を行なう。外部機器として、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を使用する際の視聴コンテンツを供給するコンテンツ再生装置(ブルーレイ・ディスク又はDVDプレイヤー)や、ストリーミング・サーバーを挙げることができる。また、制御部301は、外部機器への送信データを通信部305から送出する。
[0053]通信部305の構成は任意である。例えば、通信相手となる外部機器との送受信動作に使用する通信方式に応じて、通信部305を構成することができる。通信方式は、有線、無線のいずれの形態であってもよい。ここで言う通信規格として、MHL(Mobile High-definition Link)やUSB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High Definition Multimedia Interface)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)通信やBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信、ANTなどの超低消費電力無線通信、IEEE802.11sなどで規格化されたメッシュ・ネットワークなどを挙げることができる。あるいは、通信部305は、例えばW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、LTE(Long Term Evolution)などの標準規格に従って動作する、セルラー無線送受信機であってもよい。
[0054]記憶部306は、SSD(Solid State Drive)などで構成される大容量記憶装置である。記憶部306は、制御部301で実行するアプリケーション・プログラムや各種データを記憶している。例えば、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を使用して、視聴するコンテンツを記憶部306に格納する。
[0055]画像処理部307は、制御部301から出力される画像信号に対して画質補正などの信号処理をさらに行なうとともに、表示部309の画面に合わせた解像度に変換する。そして、表示駆動部308は、表示部309の画素を行毎に順次選択するとともに線順次走査して、信号処理された画像信号に基づく画素信号を供給する。
[0056]表示部309は、例えば有機EL(Electro-Luminescence)素子や液晶ディスプレイなどのマイクロ・ディスプレイ、あるいは、網膜直描ディスプレイなどのレーザー走査方式ディスプレイで構成される表示パネルを有する。虚像光学部310は、表示部309の表示画像を拡大投影して、ユーザーには拡大虚像として観察させる。
[0057]なお、表示部309で出力する表示画像として、コンテンツ再生装置(ブルーレイ・ディスク又はDVDプレイヤー)やストリーミング・サーバーから供給される商用コンテンツ(仮想世界)、外側カメラ312の撮影画像(ユーザーの視界画像などの現実世界の画像)などを挙げることができる。
[0058]音声処理部313は、制御部301から出力される音声信号に対して音質補正や音声増幅、入力された音声信号などの信号処理をさらに行なう。そして、音声入出力部314は、音声処理後の音声を外部出力、並びにマイクロフォン(前述)からの音声入力を行なう。
[0059]本実施例に係るヘッド・マウント・ディスプレイ100は、遮光性、すなわち、着用したユーザーの眼を覆う。そして、表示部309には、映画などの商用コンテンツや、コンピューター・グラフィックスなどで表現された画像を表示する。虚像光学部310は、表示部309の表示画像を拡大投影して、適当な画角となる拡大虚像としてユーザーに観察させ、例えば映画館で視聴しているような臨場感を再現する。ユーザーは、表示部309に表示される仮想世界に没入体験することができる。
[0060]また、本実施例に係るヘッド・マウント・ディスプレイ100は、バッテリー(図示しない)により駆動し、さまざまな省電力機能を装備している。例えば、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを装着センサー(前述)で検出し、装着状態のときのみ表示部309に画像を表示し、それ以外のときには(主電源がオンであっても)表示部309を画面非表示状態にして、消費電力をセーブする。」

「[0062]また、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の使用を開始するタイミングは、主電源をオンにしたときではなく、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを装着センサー(前述)で検出したときとする。したがって、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の主電源をオンにしても、ユーザーが頭部又は顔部に装着していなければ認証処理は起動しない。ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを検出すると認証処理が開始され、認証画面が表示される。
[0063]ユーザーは、遮光性のヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着すると、両眼が覆われ、視界が奪われ、目隠しされたのと同じ状態になる。そこで、本実施形態では、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を頭部又は顔部に装着したことを装着センサー(前述)で検出し、その使用を開始すると、図4に示すように、初期画面401として、外側カメラ312で撮影したビデオ・シースルー画像を表示部309に即座に表示する。したがって、ユーザーは、ヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着すると、すぐに視界を取り戻して、周囲の風景を観察することができる。その後、ユーザーの操作などに応じて、外部入力される商用コンテンツ(映画など)の表示画面に遷移してもよい。」

「[0067]図6には、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の画面遷移例を示している。
[0068]装着センサーなどを備えた状態情報取得部304が、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを検出したことをトリガーにして、ヘッド・マウント・ディスプレイ100は、非装着状態601から装着状態602へ遷移する。
[0069]この状態遷移に応答して、表示部309は、非表示画面611から初期画面612へ遷移する。この初期画面612では、外側カメラ312で撮影したビデオ・シースルー画像613が表示される。したがって、ユーザーは、ヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着すると、すぐに視界を取り戻して、周囲の風景を観察することができる。すなわち、ユーザーは、常に自分の周囲の様子が分かるので、安全を確保することができる。
[0070]その後、入力操作部302に対するユーザーの操作などに応じて、外部入力される商用コンテンツ(映画など)の表示画面621に遷移してもよい。このようにユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着することによりビデオ・シースルー画像613が表示され、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の通常使用が開始されるが、その後、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を取り外したことを装着センサーなどが検出すると、非装着状態601に復帰する。そして、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を再び装着したことを検出すると、上記と同様の認証処理が繰り返し実行される。」

「[図1]



「[図2]



「[図3]



「[図4]



「[図6]



(2)引用文献1の記載から認定できる事項
引用文献1の段落[0040]及び図3の記載から、引用発明1に記載の発明の「ヘッド・マウント・ディスプレイ」が制御部301、通信部305、記憶部306、画像処理部307、表示駆動部308、表示部309、虚像光学部310、状態情報取得部304を内部構成として備えていることが理解できる。

(3)引用発明の認定
前記(1)に摘記した記載事項及び上記(2)で認定した点を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、確認を容易にする目的で、段落番号、図面番号等を各段落の末尾に示した。

<引用発明>
「帽子形状に類似した構造体であり、着用したユーザーの左右の眼を直接覆うように構成されているヘッド・マウント・ディスプレイ100であって、([0036]、図1)
ヘッド・マウント・ディスプレイ100は、ユーザーの顔面と対向する側面に、左眼用及び右眼用の表示パネル104L、104Rを持ち、表示パネル104L、104Rの表示画像は、虚像光学部101L、101Rを通過することにより拡大虚像としてユーザーに観察されるものであって、([0039]、図2)
ヘッド・マウント・ディスプレイ100本体前面のほぼ中央には、周囲画像(ユーザーの視界)入力用の外側カメラ312が設置されており、([0037]、図1)
ヘッド・マウント・ディスプレイ100を着用したユーザーは現実世界の風景を直接眺めることはできず、ユーザーの視線方向の風景を撮影する外側カメラ312を装備し、その撮像画像を表示することにより、ユーザーは間接的に現実世界の風景を眺める(すなわち、ビデオ・シースルーで風景を表示する)ことができ、ビデオ・シースルー画像に対し、AR(拡張現実感)画像などの仮想的な表示画像を重ね合わせて見せることができるものであり、([0035])
ヘッド・マウント・ディスプレイ100は、制御部301、通信部305、記憶部306、画像処理部307、表示駆動部308、表示部309、虚像光学部310、状態情報取得部304を内部構成として備えており、(前記(2)、[0040]、[図3])
制御部301は、ROM301AやRAM301Bを備えており、ROM301A内には、制御部301で実行するプログラム・コードや各種データが格納されており、制御部301は、RAM301Bへロードしたプログラムを実行することで、画像の表示制御を始め、ヘッド・マウント・ディスプレイ100全体の動作を統括的にコントロールするものであり、([0041]、[図3])
ROM301Aに格納するプログラムとしては、使用の開始時に実行する認証処理プログラム、外側カメラ312で撮影したシースルー画像や再生動画像を画面表示する表示制御プログラムがあり、ROM301Aに格納するデータとしては、当該ヘッド・マウント・ディスプレイ100に固有の識別情報、当該ヘッド・マウント・ディスプレイ100を使用するユーザーを認証するための認証情報(例えば、暗証番号やパスワード、生体情報)などのユーザー属性情報などがあり、([0042]、図3)
通信部305は、外部機器との通信処理、並びに通信信号の変復調並びに符号化復号処理を行なうものであり、外部機器としては、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を使用する際の視聴コンテンツを供給するコンテンツ再生装置(ブルーレイ・ディスク又はDVDプレイヤー)や、ストリーミング・サーバーがあり、([0052])
通信部305は、通信相手となる外部機器との送受信動作に使用する通信方式に応じて構成することができ、通信方式は、有線、無線のいずれの形態であってもよく、通信規格としては、MHLやUSB、HDMI(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)通信やBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信、ANTなどの超低消費電力無線通信、IEEE802.11sなどで規格化されたメッシュ・ネットワークなどであり、([0053])
記憶部306は、制御部301で実行するアプリケーション・プログラムや各種データを記憶しており、例えば、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を使用して、視聴するコンテンツが格納され、([0054])また、外側カメラ312が撮影した撮影画像が保存されるものであり、([0049])
画像処理部307は、制御部301から出力される画像信号に対して画質補正などの信号処理をさらに行なうとともに、表示部309の画面に合わせた解像度に変換するものであり、([0055])
表示駆動部308は、表示部309の画素を行毎に順次選択するとともに線順次走査して、信号処理された画像信号に基づく画素信号を供給するものであり、([0055])
表示部309は、映画などの商用コンテンツや、コンピューター・グラフィックスなどで表現された画像を表示するものであり、([0059])
表示部309で出力する表示画像としては、コンテンツ再生装置(ブルーレイ・ディスク又はDVDプレイヤー)やストリーミング・サーバーから供給される商用コンテンツ(仮想世界)、外側カメラ312の撮影画像(ユーザーの視界画像などの現実世界の画像)などであることができ、([0057])
虚像光学部310は、表示部309の表示画像を拡大投影して、適当な画角となる拡大虚像としてユーザーに観察させるものであり、([0059])
状態情報取得部304は、ヘッド・マウント・ディスプレイ100本体、又はヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したユーザーの状態情報を取得する機能モジュールであり、([0045])
状態情報取得部304は、ヘッド・マウント・ディスプレイをユーザーの頭部に装着した際に、ユーザーの額に当接する動きに連動して、ヘッド・マウント・ディスプレイ100がユーザーに装着されたことを検出する装着センサーを利用して、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の装着の有無を検出するものであり、([0047])
該装着センサーなどを備えた状態情報取得部304は、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを検出したことをトリガーにしてヘッド・マウント・ディスプレイ100を非装着状態601から装着状態602へ遷移させ、([0068]、図6)
この状態遷移に応答して、表示部309は、非表示画面611から初期画面612へ遷移し、この初期画面612では、外側カメラ312で撮影したビデオ・シースルー画像613が表示され、ユーザーは、ヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着すると、すぐに視界を取り戻して、周囲の風景を観察することができるため、ユーザーは、常に自分の周囲の様子が分かるので、安全を確保することができ、([0069]、図6)
その後、入力操作部302に対するユーザーの操作などに応じて、外部入力される商用コンテンツ(映画など)の表示画面621に遷移する、([0070]、図6)
ヘッド・マウント・ディスプレイ100。」

2 引用文献2
(1)引用文献2に記載された技術事項
特開2004-258123号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、頭部装着型表示装置に対して出力する画像を、頭部装着型表示装置を装着するユーザ以外に対して設けられた表示装置に対しても出力する表示制御を行う技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、現実空間の画像に三次元モデリングされたCG(Computer Graphics)による画像を重畳した画像を生成し、観察者に提示することで、この観察者にあたかも現実空間中にCGで表現された物体(仮想物体)が存在しているかのように見せることができる複合現実感提示装置が存在する。
【0003】
これは、現実空間の画像を撮像するための現実空間撮像手段(たとえばビデオカメラ)と、仮想空間において現実空間撮像手段の視点の位置から見たCGを生成するCG生成手段と、両者を合成して表示することのできる表示手段(たとえばHMD(ヘッドマウントディスプレイ)またはモニタ)からなる装置である。
(中略)
【0010】
また、観察者を複数設けることも可能である。その場合、現実空間を撮影するビデオカメラと表示装置(HMDなど)、位置姿勢センサを観察者の数だけ用意し、夫々の観察者の視点位置姿勢に応じた現実空間画像と仮想空間画像との合成画像を生成し、夫々の観察者に対して提示すればよい。
【0011】
さらに、実際にHMDを装着して複合現実空間を体験している体験者以外にも観衆がいる場合、体験者が見ている映像と同じ映像(体験者の視点から見た映像) を、観衆用の映像表示装置(ディスプレイ)に表示することがある。この場合は、観察者のHMDの映像表示部に表示される画像と同じ画像を観衆用のディスプレイに表示するという構成をとればよい。このようにすると、実際にHMDを装着していなくとも、体験者がどのような映像体験をしているのかを複数の観衆に同時に理解させることができる。
【0012】
このように従来から、複数の体験者で複合現実空間を共有するシステムがあった(例えば、特許文献1を参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開2002-271817号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来のシステムでは、体験者が上記複合現実空間を体験し終わった後にHMDを置き台などに戻した際もHMDに取り付けられているビデオカメラは意味のない映像を撮影しつづけるため、観衆用映像表示装置にも無意味な(観衆にとって興味のない)映像が表示されてしまい、展示の効果が薄れてしまう、といった問題があった。また、上記複数の体験者で複合現実空間を共有するシステムには”観衆用の映像表示装置”は備わっていなかった。
【0015】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、HMDが使用されているか否かに応じて、観衆用の表示装置に表示させる画像を切り替える技術を提供することを目的とする。」

「【0021】
図1は、本実施形態に係るシステムの基本構成を示す図である。本実施形態に係るシステムは、HMDが有する表示部、及びHMDを装着していない観衆に対して設けられた表示装置に対して複合現実空間画像(現実空間画像上に仮想空間画像が重畳された画像)を出力するが、HMDの使用の有無に応じて、表示装置に表示する表示内容を切り替える処理を行う。まず、同図を用いて、本実施形態に係るシステムの構成について説明する。
【0022】
同図において180はコンピュータで、一般にはPC(パーソナルコンピュータ)やワークステーションなどに代表されるものである。コンピュータ180は、CPU101、第1のメモリ103,第2のメモリ104、I/F150,151,153,HDD(ハードディスクドライブ)152,そしてこれらを繋ぐバス102により構成されている。
【0023】
CPU101はコンピュータ180全体の制御を行うと共に、I/F150,151,153を介してのデータ通信を制御したり、後述の各処理を制御したりする。
【0024】
第1のメモリ103は後述の各処理を行うためのプログラムをHDD152からロードして一時的に記憶する為のメモリである。このプログラムは、撮像部110、仮想空間画像生成部111、視点位置姿勢検出部112、使用状態判定部113の各部により構成されており、CPU101が各部に対応するプログラムを実行することで、その機能を実現する。なお、各部についての詳細は後述する。またこのプログラムはこの4つの各部をすべて含むものであっても良いし、各部をいくつかのプログラムにより表現させても良い。
【0025】
第2のメモリ104は画像メモリ120、視点位置姿勢データメモリ121を備えると共に、以下説明する各処理において一時的に記憶するデータを保持する為のメモリである。
【0026】
なお同図ではプログラムを記憶するためのメモリとデータを記憶するためのメモリは別個のメモリとしているが、これに限定されるものではなく、同一メモリ上に夫々のプログラム、データを記憶させても良い。
【0027】
I/F150は分配器109をコンピュータ180に接続するためのもので、コンピュータ180が生成した複合現実空間画像はこのI/F150を介して分配器109に出力される。
【0028】
I/F151はセンサ本体105をコンピュータ180に接続するためのもので、センサ本体105により得られるセンサ106の位置姿勢を示す信号はこのI/F151を介してコンピュータ180に入力される。
【0029】
I/F153はHMD107に備わっている撮像装置108をコンピュータ180に接続するためのもので、撮像装置108により得られた現実空間の画像はこのI/F152を介してコンピュータ180に入力される。
【0030】
HDD152は後述する各データを保存していると共に、第1のメモリ103にロードされるプログラムを保存している。そして必要に応じてプログラムは第1のメモリ103に、データは第2のメモリに夫々ロードされる。
【0031】
なお、プログラム、データのロード形態はこれに限定されるものではなく、コンピュータ180をインターネットやLANなどのネットワークに接続し、ネットワーク上の装置からダウンロードするようにしても良いし、CD-ROMやDVD-ROMなどの記憶媒体からロードするようにしても良い。
【0032】
分配器109は、コンピュータ180が生成した複合現実空間画像をHMD107、観衆用表示装置110とに出力するためのものである。観衆用表示装置110は、HMDを装着していない観衆に対して設けられたものであって、ここにHMD107の表示部(不図示)に表示される画像と同じ画像を表示することで、観衆はHMD107を装着している観察者が見ている複合現実空間画像と同じものを見ることができ、観察者と同様に複合現実空間を体感することができる。
【0033】
107はHMDで、不図示の表示部を有しており、ここにHMD107に備え付けられた撮像装置108が撮像した現実空間の画像に仮想空間の画像が重畳された複合現実空間画像が表示される。この複合現実空間画像はコンピュータ180により生成され、分配器109を介してHMD107の不図示の表示部に出力されるものである。
【0034】
また、HMD107には撮像装置108に加えてセンサ106(例えば磁気センサ等)が備え付けられている。センサ106はセンサ本体105に接続されており、周知の技術でもってセンサ106、センサ本体105によってセンサ106の位置姿勢を示す信号がセンサ本体105から出力される。
【0035】
以上の構成を備えるシステムが行う上記表示切り替え処理について、同処理のフローチャートを示す図2を参照して説明する。なお、同図のフローチャートに従ったプログラムは第1のメモリ103に格納された各部により構成されたプログラムであって、このプログラムをCPU101が実行することで、コンピュータ180は図2に示したフローチャートに従った処理を実現することができる。
【0036】
まず、撮像装置108により撮像された現実空間の画像はI/F153を介してコンピュータ180に入力されるので、撮像部110は入力された現実空間の画像を第2のメモリ104の画像メモリ120に記録する(ステップS200)。撮像装置108は常に現実空間を撮像しているので、撮像部110は画像メモリ120に逐次現実空間の画像を記録する処理を行う。なお本ステップにおける処理は以下の各ステップによる処理と平行に並列処理によって行っても良い。次に、視点位置姿勢検出部112はセンサ本体105から入力されたセンサ106の位置姿勢を示す信号に基づいてHMD107(視点)の位置姿勢を求め、求めた位置姿勢のデータを第2のメモリ104中の視点位置姿勢データメモリ121に書き込む(ステップS201)。
【0037】
ここで、センサ本体105から入力される信号は「センサ106の位置姿勢」を示すものであるので、予め「HMD107(視点)」とセンサ106との位置関係を求めておき、第2のメモリ104に保持しておく。よってこの位置関係を用いることで、センサ本体105から入力された信号に基づいて視点の位置姿勢を求めることができる。以下ではこの視点の位置姿勢を「HMD107の位置姿勢」とする。
【0038】
またここで位置姿勢のデータとは、位置(x、y、z)と姿勢(roll,pitch,yaw)を示す為の6つのパラメータのデータである。
【0039】
次に、使用状態判定部113は、HMD107が観察者に使用されているか否かを判断する(ステップS202)。この使用の有無の判定については詳しくは後述する。
【0040】
使用状態判定部113が「HMD107は使用中である」と判定した場合、本システムは通常通り、HMD107と表示装置110とに複合現実空間画像を表示させるための処理を行うので、まず仮想空間画像生成部111は、視点位置姿勢データメモリ121に書き込まれた「HMD107の位置姿勢データ」を用いて、この位置姿勢における視点から見た仮想空間の画像を生成する(ステップS203)。仮想空間のデータはHDD152内に仮想空間データ131として保存されているので、必要に応じて第2のメモリ104内の空きエリアにロードして用いる。
【0041】
なお仮想空間は予め設定された有限のサイズの空間であるので、仮想空間データは当然この有限空間内における仮想物体や壁、床などのオブジェクトの仮想データの幾何学形状やテクスチャ、配置位置などのデータである。任意の位置姿勢における視点から見た仮想空間の画像の生成処理については周知の技術であるので、その説明は省略する。
【0042】
これにより、HMD107の位置姿勢に応じた仮想空間画像を生成することができる。なお、生成する仮想空間画像は画像メモリ120に記録される。これにより、先に画像メモリ120上に記憶された現実空間画像上に仮想空間画像が重畳されることになるので、結果として画像メモリ120上には複合現実空間画像が生成されている。そして生成された複合現実空間画像はCPU101がI/F150、分配器109を介してHMD107、表示装置110とに出力する。その結果、複合現実空間画像はHMD107の不図示の表示部と表示装置110とに表示される(ステップS205)。
【0043】
一方、使用状態判定部113が「HMD107は使用されていない」と判定した場合、本システムは、表示装置110に表示する画像を切り替える必要がある(表示装置110に表示される画像はHMD107の不図示の表示部にも表示されるので、結果としてHMD107の不図示の表示部に表示される画像も切り替わることになる)。これは例えば、観察者がHMD107を頭部からはずして所定の場所に置いた場合(即ちHMD107を使用しなくなった場合)、表示装置110の表示画面上には床の画像や、仮想空間として設定された空間外の画像(すなわち複合現実空間を体感するための空間外の画像)等、複合現実空間を体感するための画像以外が表示装置110にも出力されてしまう。よって本実施形態ではHMD107が使用されていないと判断された場合には、他の画像(代替画像)を表示する。即ち表示する画像を複合現実空間画像から代替画像に切り替える。
【0044】
この代替画像としては、例えばHMD107を使用していたときに過去に生成した複合現実空間画像であっても良いし、展示物の紹介画像やロゴマークの画像、次の観察者に対する文章画像であっても良い。例えば代替画像として、HMD107を使用していたときに過去に生成した複合現実空間画像を用いる場合、コンピュータ180は生成した複合現実空間画像を任意の期間だけHDD152に保存しておき、それを代替画像(この場合動画像)として表示装置110の表示画面上に再生する。
【0045】
HDD152には代替画像データ123が保存されており、代替画像データ123が代替画像そのものを表している場合には仮想空間画像生成部111はこの代替画像データ123を画像メモリ120上に出力する処理を行う(ステップS206)。また、代替画像を代替画像データ123に基づいて生成する様な場合(例えば代替画像データ123が3次元画像の幾何学形状やテクスチャなどのデータである場合)、これに基づいて代替画像を生成し、画像メモリ120上に記録する(ステップS206)。
【0046】
そして画像メモリ120上に記録された代替画像はCPU101がI/F150、分配器109を介してHMD107、表示装置110とに出力する。その結果、代替画像はHMD107の不図示の表示部と表示装置110とに表示される(ステップS205)。
【0047】
以上の処理は、処理を終える指示がコンピュータ180に入力されるまで行われる(ステップS208)。」

「【0063】
また本実施形態ではHMD107としてビデオシースルー方式のものを用いたが、これに限定されるものではなく、光学シースルー方式のものであっても良い。」

「【図1】



「【図2】



「【図4】



(2)引用文献2に記載された技術事項の認定
前記(1)に摘記した事項を総合すると、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる(以下「引用文献2記載事項」という。)。

<引用文献2記載事項>
「HMDが有する表示部、及びHMDを装着していない観衆に対して設けられた表示装置に対して複合現実空間画像(現実空間画像上に仮想空間画像が重畳された画像)を出力するが、HMDの使用の有無に応じて、表示装置に表示する表示内容を切り替える処理を行うシステムであって、(【0021】)
このシステムは、コンピュータ180、HMD107、表示装置110を含み、(【図1】)
HMD107は、表示部を有し、撮像装置108が撮像した現実空間の画像に仮想空間の画像が重畳された複合現実空間画像が表示部に表示されるビデオシースルー方式のものであり、(【0033】、【0063】)
表示装置110は、HMDを装着していない観衆に対して設けられ、HMD107の表示部に表示される画像と同じ画像を表示するものであり、(【0032】)
コンピュータ180の使用状態判定部113が「HMD107は使用中である」と判定した場合、複合現実空間画像がHMD107の表示部と表示装置110に表示され、(【0040】、【0042】)
コンピュータ180の使用状態判定部113が「HMD107は使用されていない」と判定した場合、代替画像がHMD107の表示部と表示装置110に表示され、(【0043】、【0046】)
代替画像としては、例えばHMD107を使用していたときに過去に生成した複合現実空間画像であっても良いし、展示物の紹介画像やロゴマークの画像、次の観察者に対する文章画像であっても良い、(【0044】)
システム。」

3 引用文献3(技術常識を示す文献)
(1)引用文献3に記載された事項
当審で新たに引用する特開2013-114160号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

「【0019】
本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1には、表示システムの構成例が、ブロック図により示されている。また、図2には、表示装置及び制御装置の外観図が示されている。表示システムは、表示装置100(ヘッドマウントディスプレイ)と、制御装置200(コントローラー)とを備える。
【0020】
ユーザーは、表示装置100(眼鏡型)を頭部に装着することにより、表示装置100の画像取り出し部に表示された所定画像(例えば、メニュー画像、アイコン画像)を見ることができる。表示装置100の画像取り出し部は、表示装置100の外界からの光の少なくとも一部が透過するように構成されている。これにより、ユーザーは、表示装置100を頭部に装着したまま、表示装置100の画像取り出し部を通して制御装置200を見ることができる。また、ユーザーは、制御装置200の操作面に対して操作入力をすることができる。
【0021】
まず、表示装置の構成例を説明する。
表示装置100は、左眼用表示部110Aと、右眼用表示部110Bとを備える。左眼用表示部110Aと右眼用表示部110Bとは互いに左右対称の構成を有するため、ここでは、左眼用表示部110Aの構成例についてのみ説明する。」

「【0036】
電源が投入された場合、シーケンス制御部164Aは、センサー初期化データを初期化データ記憶部163Aから取得する。また、シーケンス制御部164Aは、表示用補正データを、補正データ記憶部162Aから取得する。」
「【0037】
さらに、シーケンス制御部164Aは、表示用補正データに応じた値を、デバイス制御部165Aが有する表示用レジスターに設定する。これにより、シーケンス制御部164Aは、表示装置100の表示デバイス毎の個体ばらつきを補正することができる。」
「【0038】
なお、シーケンス制御部164A(パターン生成部)は、表示装置100が起動中であることをユーザーに示すための画像(以下、「起動ロゴ画像」という)が画像取り出し部に表示されるように、デバイス制御部165Aが有する表示用レジスターに所定値を設定してもよい。ここで、シーケンス制御部164Aは、表示装置100が備える画像記憶部(不図示)に予め記憶されている起動ロゴ画像データを、制御装置200との通信が確立される前でも、制御装置200から独立してデバイス制御部165Aに転送する。これにより、シーケンス制御部164Aは、デバイス制御部165Aを介して、起動ロゴ画像を画像取り出し部に表示させることができる。」

「【図1】



「【図2】



(2) 技術常識の認定
引用文献3には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献3記載事項」という。)。

[引用文献3記載事項]
「表示装置100(ヘッドマウントディスプレイ)と、制御装置200(コントローラー)を備える表示システムにおいて、(【0019】)
ユーザーは、表示装置100(眼鏡型)を頭部に装着することにより、表示装置100の画像取り出し部21A、21Bに表示された所定画像(例えば、メニュー画像、アイコン画像)を見ることができ、(【0020】、【図2】)
電源が投入された場合、表示装置100のシーケンス制御部164A、164Bは、センサー初期化データを初期化データ記憶部163A、163Bから取得し、(【0036】、【0021】)
シーケンス制御部164A、164Bは、表示装置100が起動中であることをユーザーに示すための画像(以下、「起動ロゴ画像」という)が画像取り出し部21A、21Bに表示されるように、表示装置100のデバイス制御部165A、165Bが有する表示用レジスターに所定値を設定し、
シーケンス制御部164A、165Bは、表示装置100が備える画像記憶部に予め記憶されている起動ロゴ画像データを、制御装置200との通信が確立される前でも、制御装置200から独立してデバイス制御部165A、165Bに転送し、これにより、シーケンス制御部164A、164Bは、デバイス制御部165A、164Bを介して、起動ロゴ画像を画像取り出し部21A、21Bに表示させること。(【0038】、【0021】)」

上記引用文献3記載事項に例示されるように、次の事項は、技術常識であると認められる。

<技術常識>
「ヘッドマウントディスプレイとコントローラーを備える表示システムにおいて、電源が投入された場合、起動ロゴ画像データをヘッドマウントディスプレイの表示部に表示させ、ヘッドマウントディスプレイが起動中であることをユーザーに示すために、起動ロゴ画像データをヘッドマウントディスプレイの画像記憶部に予め記憶し、ヘッドマウントディスプレイの制御部が、コントローラーから独立して、その表示を制御すること。」

第5 対比
(1)本願発明と引用発明の構成ごとの対比
ア 本願発明と引用発明は、「ヘッドマウントディスプレイ」の発明である点で一致する。

イ(ア) 引用発明の「ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を使用する際の視聴コンテンツを供給するコンテンツ再生装置(ブルーレイ・ディスク又はDVDプレイヤー)や、ストリーミング・サーバー」などの「外部機器」は、本願発明の「映像送信装置」に相当し、引用発明の「外部機器」から「供給」される「視聴コンテンツ」は、本願発明の「映像送信装置」から「受信」する「映像」に相当する。
(イ) 引用発明の「通信部305」は、「外部機器との通信処理」を「行なう」ものであるから、上記の検討内容も踏まえると、引用発明の「通信部305」は、本願発明の「映像送信装置から映像を受信する」「通信部」に相当する。
ここで、引用発明の「通信部305」の「通信方式」が「無線」の「形態」であることは、本願発明の「無線通信により」「映像を受信する」ことに相当する。
また、引用発明の「通信部305」の「通信規格」は、「Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)通信やBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信、ANTなど」であるところ、「Wi-Fi(登録商標)」は、2.4GHz帯、5GHz帯、60GHz帯の周波数帯を使用しており、「Bluetooth(登録商標)通信」、「BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信」及び「ANT」は、2.4GHz帯の周波数帯を使用していることは、技術常識であるから、引用発明における、このような「通信規格」を用いた「無線」の「通信処理」は、本願発明の「所定の周波数での無線通信」に相当する。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)の検討内容を踏まえると、引用発明の「通信部305」は、本願発明の「所定周波数での無線通信により映像送信装置から映像を受信する所定周波数通信部」に相当し、本願発明と引用発明は、「所定周波数での無線通信により映像送信装置から映像を受信する所定周波数通信部」を含む点で一致する。

ウ(ア) 引用発明の「状態情報取得部304」は、「ヘッド・マウント・ディスプレイをユーザーの頭部に装着した際に、ユーザーの額に当接する動きに連動して、ヘッド・マウント・ディスプレイ100がユーザーに装着されたことを検出する装着センサーを利用して、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の装着の有無を検出するもの」であるところ、この「状態情報取得部304」が「ヘッド・マウント・ディスプレイ100の装着」が「有」であると「検出する」ことは、本願発明の「ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される」ことに相当する。
(イ) 引用発明の「表示部309」は、「映画などの商用コンテンツや、コンピューター・グラフィックスなどで表現された画像を表示するもの」であるから、本願発明の「前記ヘッドマウントディスプレイの表示部」に相当する。
また、引用発明の「表示部309」では、「入力操作部302に対するユーザーの操作などに応じて、外部入力される商用コンテンツ(映画など)の表示画面621に遷移する」ところ、この「外部入力される商用コンテンツ(映画など)」は、「外部機器」から「供給」される「視聴コンテンツ」であるから、本願発明の「前記所定周波数通信部により受信される映像」に相当する。
そうすると、引用発明の「表示部309」において、「外部入力される商用コンテンツ(映画など)の表示画面621に遷移する」ことは、本願発明の「前記所定周波数通信部により受信される映像を、前記ヘッドマウントディスプレイの表示部に表示」することに相当する
(ウ) 引用発明においては、「状態情報取得部304は、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを検出したことをトリガーにしてヘッド・マウント・ディスプレイ100を非装着状態601から装着状態602へ遷移させ」、「この状態遷移に応答して、表示部309は、非表示画面611から初期画面612へ遷移し、この初期画面612では、外側カメラ312で撮影したビデオ・シースルー画像613が表示され」、「その後、入力操作部302に対するユーザーの操作などに応じて、外部入力される商用コンテンツ(映画など)の表示画面621に遷移する」。
ここで、引用発明において「ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを検出したことをトリガー」にすることは、本願発明において「ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される場合」であることに相当する。
前記ウ(イ)の検討内容を踏まえると、引用発明において、「ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを検出したことをトリガーにして」、「表示部309」において「外部入力される商用コンテンツ(映画など)の表示画面621に遷移する」ことは、本願発明の「ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される場合に、前記所定周波数通信部により受信される映像を、前記ヘッドマウントディスプレイの表示部に表示させる」ことに相当する。
(エ) 引用発明の「制御部301」は、「画像の表示制御を始め、ヘッド・マウント・ディスプレイ100全体の動作を統括的にコントロールするもの」であるところ、「ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを検出したことをトリガーにして」行われる「状態遷移」は、「制御部301」が行うものであるといえる。また、「この状態遷移に応答して」「表示部309」において行われる画面遷移も、「制御部301」が「画像処理部307」及び「表示駆動部308」を介して行う制御であるといえる。
そして、「制御部301」が行うこれらの制御は、「ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着したことを検出したことをトリガーにして」行われる「画像の表示制御」であるから、引用発明の「制御部301」は、本願発明の「装着後映像表示制御部」に相当する。
(オ) 前記(ア)から(エ)の検討内容を踏まえると、引用発明の「制御部301」は、本願発明の「ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される場合に、前記所定周波数通信部により受信される映像を、前記ヘッドマウントディスプレイの表示部に表示させる装着後映像表示制御部」に相当する。したがって、本願発明と引用発明は、「ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される場合に、前記所定周波数通信部により受信される映像を、前記ヘッドマウントディスプレイの表示部に表示させる装着後映像表示制御部」を含む点で一致する。

(2)本願発明と引用発明の一致点及び相違点
上記(1)の対比内容を総合すると、本願発明と引用発明は、次の一致点において一致し、相違点において相違する。
ア 一致点
「ヘッドマウントディスプレイであって、
所定周波数での無線通信により映像送信装置から映像を受信する所定周波数通信部と、
ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される場合に、前記所定周波数通信部により受信される映像を、前記ヘッドマウントディスプレイの表示部に表示させる装着後映像表示制御部と、
を含むヘッドマウントディスプレイ。」


イ 相違点
本願発明は、「前記ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される前に、前記所定周波数通信部による受信以外の方法により取得される映像を、前記表示部に表示させる装着前映像表示制御部」を含むのに対して、引用発明は、「ヘッド・マウント・ディスプレイ100の装着」が「有」であると「検出」されないときは、「状態遷移」が起きず、「表示部309」の画面遷移も起きず、「非表示画面611」のままである点。

第6 判断
1 相違点について
(1)引用文献2には、「観衆用映像表示装置にも無意味な(観衆にとって興味のない)映像が表示されてしまい、展示の効果が薄れてしまう、といった問題」を解決するため、「HMDが有する表示部、及びHMDを装着していない観衆に対して設けられた表示装置に対して複合現実空間画像(現実空間画像上に仮想空間画像が重畳された画像)を出力するが、HMDの使用の有無に応じて、表示装置に表示する表示内容を切り替える処理を行うシステム」において、「「HMD107は使用中である」と判定した場合、複合現実空間画像がHMD107の表示部と表示装置110に表示され」、「「HMD107は使用されていない」と判定した場合、「ロゴマークの画像」等を「代替画像」として「HMD107の表示部と表示装置110に表示」することが開示されている(「引用文献2記載事項」、前記第4の2(2)参照)。
ここで、上記「「HMD107は使用されていない」と判定した場合」は、本願発明の「前記ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される前」に対応するところ、引用文献2記載事項では、このような場合でも「HMD107の表示部」を非表示状態とするのではなく、「ロゴマークの画像」等を「代替画像」として「HMD107の表示部」に「表示」している。
してみれば、引用発明の「ヘッド・マウント・ディスプレイ100」の使用形態においても、ユーザー以外の観衆に対して、ユーザーが見る映像と同じ映像を表示する表示装置を設けることは可能であり、当該表示装置に観衆にとって興味のある映像を表示するために、「前記ユーザが前記ヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される前」に「代替画像」を表示することは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、その際、引用発明においては、「記憶部306」には、「例えば、ユーザーがヘッド・マウント・ディスプレイ100を使用して、視聴するコンテンツが格納され」、「外側カメラ312が撮影した撮影画像が保存される」のであるから、これらを代替画像として選択することは、当業者が適宜なし得ることである。そして、「記憶部306」に格納された画像は、「前記所定周波数通信部による受信以外の方法により取得される映像」に相当する。
そうすると、引用文献2記載事項が、ヘッドマウントディスプレイ未装着時における省電力状態での表示を実現するという目的から離れていたとしても、引用発明に引用文献2記載事項を適用することにより、結果として相違点に係る本願発明の構成に到達し得たと評価せざるをえない。
なお、引用発明の「ヘッド・マウント・ディスプレイ100」の使用形態が、ユーザー以外の観衆に対する表示装置を設けることを前提としていないとの立場からみても、引用発明と引用文献2記載事項は、ビデオ・シースルー方式のヘッド・マウント・ディスプレイの装着状態に応じて、その表示部の表示内容を変更するという点で共通するから、なお適用の余地はあるというべきであり、上記結論を変えるものではない。


(2)また、引用発明においては、「この状態遷移に応答して、表示部309は、非表示画面611から初期画面612へ遷移し、この初期画面612では、外側カメラ312で撮影したビデオ・シースルー画像613が表示され、ユーザーは、ヘッド・マウント・ディスプレイ100を装着すると、すぐに視界を取り戻して、周囲の風景を観察することができるため、ユーザーは、常に自分の周囲の様子が分かるので、安全を確保することができ」とされているから、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の装着有りと検出される前のユーザーは自分の周囲の様子が分からず、画面も非表示画面であるため、不安な状況におかれているといえる。
このような不安な状況をできるだけ解消するために、引用発明において、「消費電力をセーブする」「省電力機能」(引用文献1の段落[0060]参照)を若干でも緩和して、電源投入直後の装着有りと判定される前であっても、例えば、装着センサーで検知する前に外側カメラ312等の別のセンサによりヘッド・マウント・ディスプレイ100が動かされたことを検知して、表示部309の画面を装着よりも早めに表示状態とすることは、当業者には動機はあるというべきである。
そして、「取り戻」される「視界」に相当する画像は、「外側カメラ312」により得られるものであるから、「前記所定周波数通信部による受信以外の方法により取得される映像」に相当する。
そうすると、上記(1)の検討内容とは別の観点からみても、相違点に係る本願発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が結果として容易に想到し得たものと評価せざるをえない。

(3)さらには、「ヘッドマウントディスプレイとコントローラーを備える表示システムにおいて、電源が投入された場合、起動ロゴ画像データをヘッドマウントディスプレイの表示部に表示させ、ヘッドマウントディスプレイが起動中であることをユーザーに示すために、起動ロゴ画像データをヘッドマウントディスプレイの画像記憶部に予め記憶し、ヘッドマウントディスプレイの制御部が、コントローラーから独立して、その表示を制御すること。」は技術常識である(前記第4の7(1)[技術常識]を参照。)。
してみれば、この技術常識に照らして、引用発明において、電源を投入した直後であって、ユーザがヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される前に、ヘッド・マウント・ディスプレイ100の記憶部306に格納されたロゴマーク画像の表示制御をヘッド・マウント・ディスプレイ100の制御部301が行うようにして、本願発明の「装着前映像表示制御部」のごとく構成することは、当業者が当然なし得たことである。ここで、記憶部306に格納されたロゴマーク画像は、通信部305による受信以外の方法により取得された映像に相当する。
そうすると、上記(1)及び(2)とは別の観点からみても、相違点に係る本願発明の構成は、引用発明に基づいて当業者が結果として容易に想到し得たものと評価せざるをえない。

(4)以上検討のとおり、引用発明、引用文献2記載事項及び技術常識に基づいて、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別の困難性はない。

2 効果について
一般に電子機器において、電源投入直後にロゴなどを表示し、動作を開始していることを示すことは、あまりにも常識にすぎず(前記第4の3(2)の技術常識も参照)、本願発明の奏する「ユーザーがヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される前に映像を表示部に表示することで、ユーザーの不安が緩和される。」という作用効果は、上記技術常識に係る構成が備える自明なものにすぎず、当該構成の効果として、当業者の予測を超える格別顕著なものということはできない。

3 請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は、審判請求書において、次のア及びイの主張をしている。
ア 請求人の主張1
装着前映像表示制御部が、ユーザがヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される前に、所定周波数通信部による受信以外の方法により取得される映像を、表示部に表示させること」は、引用文献1にも引用文献3にも記載も示唆もされていない。また、引用文献1にも引用文献3にも、ユーザがヘッドマウントディスプレイを装着し終わるまでにおけるユーザの不安を緩和させることについて、記載も示唆もされていない。したがって、本願発明は進歩性を有する。

イ 請求人の主張2
展示の効果が薄れることを防ぐためには表示装置110に表示される画像を代替画像に切り替えれば充分であり、HMD107に表示されている画像を代替画像に切り替えなくても展示の効果が薄れることを防ぐという引用文献2に記載の発明の目的は達成されるのであり、ユーザがヘッドマウントディスプレイを装着し終わるまでにおけるユーザの不安を緩和させることについて全く触れられていないから、引用文献2に、装着前映像表示制御部が、ユーザがヘッドマウントディスプレイを装着したと判定される前に、所定周波数通信部による受信以外の方法により取得される映像を、当該ヘッドマウントディスプレイの表示部に表示させることが技術的思想として開示されているとは到底認められない。したがって、本願発明は進歩性を有する。

(2)請求人の主張についての検討
引用文献2記載事項が、ヘッドマウントディスプレイ未装着時における省電力状態での表示を実現するという目的から離れていたとしても、当業者が結果として本願発明の構成に容易に想到し得たものであると評価せざるをえないことは、前記1(1)において説示したとおりである。また、その他の推考過程によっても、当業者が結果として本願発明の構成に容易に想到し得たものであると評価せざるをえないことは、前記1(2)又は1(3)において説示したとおりである。請求人の主張1及び主張2は、これらの論理を否定するものではないから、前記1の結論を左右するものとは認められない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び技術常識に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-05-06 
結審通知日 2021-05-11 
審決日 2021-05-28 
出願番号 特願2018-553818(P2018-553818)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 清水 靖記
濱野 隆
発明の名称 ヘッドマウントディスプレイ、表示制御装置、表示制御方法及びプログラム  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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