ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L |
---|---|
管理番号 | 1376226 |
審判番号 | 不服2020-12583 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-09-08 |
確定日 | 2021-08-04 |
事件の表示 | 特願2018-223394「システム構造解析装置、システム構造解析方法、及びシステム構造解析プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020- 88718、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年11月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和元年12月26日付け:拒絶理由通知書 令和2年 2月27日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 6月 8日付け:拒絶査定(原査定) 令和2年 9月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年6月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2011-113122号公報 2.特開2010-122133号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、令和2年9月8日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 複数の機器を含むシステムの構造を示すシステム構造データであって、前記機器の間の依存関係を表す所定の文法に従って記述された複数の行を含むシステム構造データに基づいて、前記システムの構造を解析する解析部を備え、 前記所定の文法は、一の前記機器と他の前記機器との間の依存関係、一の前記機器と他の複数の前記機器の全てとの間の依存関係、一の前記機器と他の複数の前記機器のいずれか1つとの間の依存関係、並びに、一の前記機器と他の前記機器及びさらに他の複数の前記機器のいずれか1つとの間の依存関係を表すものであり、 前記解析部は、前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、前記システムの構造を解析する、 システム構造解析装置。 【請求項2】 前記解析部は、前記複数の機器のうちの一の前記機器が与えられたときに、前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、前記システムにおいて該一の機器の影響が及ぶ前記機器を推定する、 請求項1に記載のシステム構造解析装置。 【請求項3】 前記解析部は、前記複数の機器のうちの故障している複数の前記機器が与えられたときに、前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、該故障している複数の機器において原因となった前記機器を推定する、 請求項1又は2に記載のシステム構造解析装置。 【請求項4】 前記システム構造データを作成するデータ作成部をさらに備える、 請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム構造解析装置。 【請求項5】 前記システムは、複数の前記機器によって構成される冗長構成を含む、 請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム構造解析装置。 【請求項6】 前記システムは、複数の前記機器によって形成される循環構造を含む、 請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム構造解析装置。 【請求項7】 システム構造解析装置によって実行されるシステム構造解析方法であって、 複数の機器を含むシステムの構造を示すシステム構造データであって、前記機器の間の依存関係を表す所定の文法に従って記述された複数の行を含むシステム構造データに基づいて、前記システムの構造を解析する解析ステップを含み、 前記所定の文法は、一の前記機器と他の前記機器との間の依存関係、一の前記機器と他の複数の前記機器の全てとの間の依存関係、一の前記機器と他の複数の前記機器のいずれか1つとの間の依存関係、並びに、一の前記機器と他の前記機器及びさらに他の複数の前記機器のいずれか1つとの間の依存関係を表すものであり、 前記解析ステップは、前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、前記システムの構造を解析することを含む、 システム構造解析方法。 【請求項8】 前記解析ステップは、前記複数の機器のうちの一の前記機器が与えられたときに、前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、前記システムにおいて該一の機器の影響が及ぶ前記機器を推定することを含む、 請求項7に記載のシステム構造解析方法。 【請求項9】 前記解析ステップは、前記複数の機器のうちの故障している複数の前記機器が与えられたときに、前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、該故障している複数の機器において原因となった前記機器を推定することを含む、 請求項7又は8に記載のシステム構造解析方法。 【請求項10】 前記システム構造データを作成するデータ作成ステップをさらに含む、 請求項7から9のいずれか一項に記載のシステム構造解析方法。 【請求項11】 前記システムは、複数の前記機器によって構成される冗長構成を含む、 請求項7から10のいずれか一項に記載のシステム構造解析方法。 【請求項12】 前記システムは、複数の前記機器によって形成される循環構造を含む、 請求項7から11のいずれか一項に記載のシステム構造解析方法。 【請求項13】 コンピュータに実行させるシステム構造解析プログラムであって、 複数の機器を含むシステムの構造を示すシステム構造データであって、前記機器の間の依存関係を表す所定の文法に従って記述された複数の行を含むシステム構造データに基づいて、前記システムの構造を解析する解析ステップを含み、 前記所定の文法は、一の前記機器と他の前記機器との間の依存関係、一の前記機器と他の複数の前記機器の全てとの間の依存関係、一の前記機器と他の複数の前記機器のいずれか1つとの間の依存関係、並びに、一の前記機器と他の前記機器及びさらに他の複数の前記機器のいずれか1つとの間の依存関係を表すものであり、 前記解析ステップは、前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、前記システムの構造を解析することを含む、 システム構造解析プログラム。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1、引用発明について (1)原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。) 「【請求項1】 複数の部品により構成される対象システムについて部品に発生した障害の影響を分析する障害影響分析装置において、 データを記憶する記憶装置と、データを処理する処理装置と、依存記憶部と、障害検出部と、原因範囲抽出部と、障害調査部と、影響範囲抽出部とを有し、 上記依存記憶部は、上記記憶装置を用いて、上記対象システムを構成する複数の部品それぞれについて、上記部品の動作が依存する他の部品を表わす依存データを記憶し、 上記障害検出部は、上記処理装置を用いて、上記複数の部品のうち少なくともいずれかの部品について、上記部品に障害が発生しているか否かを検出し、 上記原因範囲抽出部は、上記処理装置を用いて、上記依存記憶部が記憶した依存データに基づいて、障害が発生していると上記障害検出部が判定した部品の動作が依存する他の部品を抽出して、原因範囲部品とし、 上記障害調査部は、上記処理装置を用いて、上記原因範囲抽出部が抽出した原因範囲部品について、上記原因範囲部品に障害が発生しているか否かを調査し、 上記影響範囲抽出部は、上記処理装置を用いて、上記依存記憶部が記憶した依存データに基づいて、上記複数の部品のうち障害が発生していると上記障害検出部または上記障害調査部が判定した部品に動作が依存する他の部品を抽出して、影響範囲部品とすることを特徴とする障害影響分析装置。 【請求項2】 上記原因範囲抽出部は、上記処理装置を用いて、上記依存記憶部が記憶した依存データに基づいて、上記対象システムを構成する複数の部品間の依存関係を辿ることにより、障害が発生していると上記障害検出部が検出した部品の動作が依存する他の部品をすべて抽出して、原因範囲部品とすることを特徴とする請求項1に記載の障害影響分析装置。 【請求項3】 上記障害影響分析装置は、更に、依存種別記憶部と、影響内容判定部とを有し、 上記依存種別記憶部は、上記記憶装置を用いて、上記部品の動作が他の部品に依存する依存関係の種別を表わす依存種別データを記憶し、 上記影響内容判定部は、上記処理装置を用いて、上記依存種別記憶部が記憶した依存種別データに基づいて、上記影響範囲抽出部が抽出した影響範囲部品に対してどのような影響が及ぶかを判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の障害影響分析装置。」 「【0057】 図11は、この実施の形態における実行システム801を構成する部品の依存関係の一例を示す図である。 長円は、実行システム801を構成する部品を表わす。なお、長円内の符号は、図2?図5で部品に付した符号に一致させている。 矢印は、依存関係を表わし、矢印の根元に位置する部品が、矢印の先に位置する部品に依存していることを表わす。例えば、部品「831a」は、部品「851」に依存していることを表わす。 矢印の分岐点に位置する黒丸は、通常の依存関係を表わす。すなわち、矢印の根元に位置する部品は、分岐した矢印の先に位置する複数の部品それぞれに依存する。例えば、部品「811」は、部品「821」に依存し、かつ、部品「822」にも依存する。 矢印の分岐点に位置する白抜き丸は、冗長依存関係を表わす。すなわち、矢印の根元に位置する部品は、分岐した矢印の先に位置する複数の部品に冗長依存する。例えば、部品「821」は、冗長関係にある部品「831a」および部品「831d」に依存する。 矢印の分岐点に位置する十字を含む丸は、分散依存関係を表わす。すなわち、矢印の根元に位置する部品は、分岐した矢印の先に位置する複数の部品に分散依存する。例えば、部品「860b」は、分散関係にある部品「861b」および「861f」に依存する。」 「【図11】 ![]() 」 「【0081】 図15は、この実施の形態における障害影響分析装置100の動作の一例を説明する図である。 間隔の狭い右斜め斜線によるハッチングは、障害が検出された部品を表わす。間隔の広い右斜め斜線によるハッチングは、原因範囲抽出部122が抽出した原因範囲部品を表わす。 例えば、部品「834」に障害が発生していることを障害検出部121が検出した場合、原因範囲抽出部122は、依存関係の種類を問わず、部品「834」が依存しているすべての部品を抽出し、原因範囲部品とする。」 「【図15】 ![]() 」 「【0082】 図16は、この実施の形態における障害影響分析装置100の動作の一例を説明する図である。 障害調査部123は、原因範囲抽出部122が抽出した原因範囲部品すべてについて、障害発生の有無を調査し、例えば、5つの部品「841」「860a」「861a」「833b」「842b」に障害が発生していることを検出する。 【0083】 この例の場合、障害が発生している部品の分布から見て、障害の根本的な原因である一次障害は、2つの部品「861a」「842b」にあり、それ以外の障害は、一次障害の影響による二次障害であることが予測できる。 障害影響分析装置100は、更に、一次障害を判別する一次障害判別部を有する構成であってもよい。例えば、一次障害判別部は、CPU911を用いて、依存記憶部116が記憶した依存データが表わす依存関係と、障害記憶部124が記憶した障害検出データが表わす部品とに基づいて、障害が検出された部品について、その部品が直接的あるいは間接的に依存している部品に障害が検出されたか否かを判定する。その部品が直接的あるいは間接的に依存している部品に障害が検出されていない場合、一次障害判別部は、CPU911を用いて、その部品の障害が一次障害であると判定する。一次障害判別部は、CPU911を用いて、判別した結果を表わすデータ(以下「一次障害データ」と呼ぶ。)を生成する。影響範囲通知部132は、CPU911を用いて、影響範囲データとともに、一次障害判別部が生成した一次障害データを障害影響表示装置802に通知する。これにより、一次障害が発生している部品を管理者が特定するのを助けることができるので、障害からの復旧を早めることができる。 一方、障害が影響する範囲を知りたいだけであれば、一次障害と二次障害を区別する必要はない。したがって、一次障害判別部はなくてもよい。」 「【図16】 ![]() 」 「【0084】 図17は、この実施の形態における障害影響分析装置100の動作の一例を説明する図である。 交差する斜線によるハッチングは、影響範囲抽出部131が抽出した影響範囲部品を表わす。影響範囲抽出部131は、障害検出部121あるいは障害調査部123のどちらかが障害を検出した部品について、そのいずれかの部品に依存する部品をすべて抽出し、影響範囲部品とする。この例では、障害検出部121が障害を検出した部品「834」と、障害調査部123が障害を検出した5つの部品「841」「860a」「861a」「833b」「842b」の部品とを合わせた6つの部品を基点とし、依存関係の種類を問わず、影響範囲抽出部131は、そのいずれかに依存する部品をすべて抽出する。」 「【図17】 ![]() 」 「【0085】 このように、障害影響分析装置100は、検出した障害が二次障害である可能性を考慮して、依存先方向へ探索することにより、実行システム801で発生している障害を洗い出す。障害影響分析装置100は、洗い出した障害を基点としてその影響が及ぶ範囲を特定するので、いずれの障害が一次障害であるかを判別する必要はなく、障害の影響が及ぶ範囲を正しく特定することができる。」 (2)上記記載(特に下線部)によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 〈引用発明〉 「複数の部品により構成される対象システムについて部品に発生した障害の影響を分析する障害影響分析装置において、 データを記憶する記憶装置と、データを処理する処理装置と、依存記憶部と、障害検出部と、原因範囲抽出部と、障害調査部と、影響範囲抽出部と、依存種別記憶部と、影響内容判定部とを有し、 上記依存記憶部は、上記記憶装置を用いて、上記対象システムを構成する複数の部品それぞれについて、上記部品の動作が依存する他の部品を表わす依存データを記憶し、 上記依存種別記憶部は、上記記憶装置を用いて、上記部品の動作が他の部品に依存する依存関係の種別を表わす依存種別データを記憶し、 上記障害検出部は、上記処理装置を用いて、上記複数の部品のうち少なくともいずれかの部品について、上記部品に障害が発生しているか否かを検出し、 上記原因範囲抽出部は、上記処理装置を用いて、上記依存記憶部が記憶した依存データに基づいて、上記対象システムを構成する複数の部品間の依存関係を辿ることにより、障害が発生していると上記障害検出部が検出した部品の動作が依存する他の部品をすべて抽出して、原因範囲部品とし、 上記障害調査部は、上記処理装置を用いて、上記原因範囲抽出部が抽出した原因範囲部品について、上記原因範囲部品に障害が発生しているか否かを調査し、 上記影響範囲抽出部は、上記処理装置を用いて、上記依存記憶部が記憶した依存データに基づいて、上記複数の部品のうち障害が発生していると上記障害検出部または上記障害調査部が判定した部品に動作が依存する他の部品を抽出して、影響範囲部品とし、 上記影響内容判定部は、上記処理装置を用いて、上記依存種別記憶部が記憶した依存種別データに基づいて、上記影響範囲抽出部が抽出した影響範囲部品に対してどのような影響が及ぶかを判定する、障害影響分析装置。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶理由に引用された引用文献2には、図6、7及び図11、12とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。) 「【0015】 図1に示すように、故障箇所特定システム1は、論理関係抽出装置3、データフロー監視装置5、故障箇所特定装置7等から構成される。論理関係抽出装置3およびデータフロー監視装置5の処理結果は、故障箇所特定装置7が利用する。故障箇所特定装置7は、ユーザに対して、故障箇所の特定につながる適切な情報を提示する。 【0016】 論理関係抽出装置3は、診断対象のシステム構成から論理関係を抽出する。論理関係は、論理演算子(∧(かつ)、∨(または)、?(でない)、→(ならば)等)を用いた論理式として表される。データフロー監視装置5は、診断対象の協調システムの運用中にデータフローを監視する。故障箇所特定装置7は、論理関係抽出装置3およびデータフロー監視装置5の処理結果に基づいて、故障箇所を特定する。」 「【0037】 図6は、第1の実施の形態に係る診断対象のシステム構成の1例を示す図である。図6に示すように、本実施の形態においては、4つのコンポーネントが直列的に協調して動作する。コンポーネントAはデータフローd1を出力し、コンポーネントBはデータフローd1を入力する。コンポーネントBはデータフローd2を出力し、コンポーネントCはデータフローd2を入力する。コンポーネントCはデータフローd3を出力し、コンポーネントDはデータフローd3を入力する。 【0038】 図7は、図6に関する論理式を示す図である。図7では、図6に示すシステム構成の普遍的な関係を示す論理式(論理演算子∧(かつ)、∨(または)、?(でない)、→(ならば)等を用いた式)が示されている。論理関係抽出装置3の制御部31(論理式抽出手段)は、システム構成入力手段によって入力されたシステム構成の情報から、各コンポーネントを探索し、「コンポーネントが正常」かつ「入力が正常」ならば「出力が正常」という関係を論理式として抽出する。但し、入力がないコンポーネントについては、「コンポーネントが正常」ならば「出力が正常」という関係を論理式として抽出する。また、出力がないコンポーネントについては、論理式を抽出しない。 【0039】 図7の例では、論理関係抽出装置3の制御部31は、コンポーネントAを探索し、「コンポーネントAが正常」ならば「出力であるデータフローd1が正常」という関係を論理式101として抽出する。次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、コンポーネントBを探索し、「コンポーネントBが正常」かつ「入力であるデータフローd1が正常」ならば「出力であるデータフローd2が正常」という関係を論理式102として抽出する。次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、コンポーネントCを探索し、「コンポーネントCが正常」かつ「入力であるデータフローd2が正常」ならば「出力であるデータフローd3が正常」という関係を論理式103として抽出する。 【0040】 そして、論理関係抽出装置3の制御部31は、自明な等式「X→Y=?X∨Y」に従って、論理式101を論理式104に変換する。この変換は、故障箇所特定装置7が扱いやすいデータにする為である。次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、自明な等式「X→Y=?X∨Y」と「?(X∧Y)=?X∨?Y」(ド・モルガンの法則)に従って、論理式102を論理式105に変換する。同様に、論理関係抽出装置3の制御部31は、論理式103を論理式106に変換する。論理式104から論理式106は、システム構成の普遍的な関係を示す論理式として、故障箇所特定装置7が利用する。」 「図11は、第2の実施の形態に係る診断対象のシステム構成の1例を示す図である。図11に示すように、本実施の形態においては、コンポーネントB、C、Dが循環的に協調して動作する。コンポーネントAはデータフローd1を出力し、コンポーネントBはデータフローd1を入力する。コンポーネントBはデータフローd2を出力し、コンポーネントDはデータフローd2を入力する。コンポーネントDはデータフローd4を出力し、コンポーネントCはデータフローd4を入力する。コンポーネントCはデータフローd3を出力し、コンポーネントBはデータフローd3を入力する。 【0055】 図12は、図11に関する論理式を示す図である。図12では、図11に示すシステム構成の普遍的な関係を示す論理式が示されている。論理関係抽出装置3の制御部31(論理式抽出手段)は、システム構成入力手段によって入力されたシステム構成の情報から、各コンポーネントを探索し、「コンポーネントが正常」かつ「入力が正常」ならば「出力が正常」という関係を論理式として抽出する。但し、入力がないコンポーネントについては、「コンポーネントが正常」ならば「出力が正常」という関係を論理式として抽出する。また、出力がないコンポーネントについては、論理式を抽出しない。 【0056】 更に、論理関係抽出装置3の制御部31(論理式抽出手段)は、システム構成入力手段によって入力されたシステム構成の情報から、データフローの循環部分(=ループ)を探索し、「ループ内にある全てのコンポーネントが正常」かつ「関連するデータフローのうちループ内に無いものが正常」ならば「ループ内の全てのデータフローは正常」という関係を論理式として抽出する。ここで、ループの探索は、システム構成図を有向グラフとして捉え、例えば、深さ優先探索アルゴリズムによって実現できる。深さ優先探索とは、あるノード(図11等におけるコンポーネント)から、目的のノードが見つかるか、または子のないノードに行き着くまで深く伸びていく探索である。ループの探索では、目的のノードとは、既に通ったことのあるノードである。 【0057】 図12の例では、論理関係抽出装置3の制御部31は、コンポーネントAを探索し、「コンポーネントAが正常」ならば「出力であるデータフローd1が正常」という関係を論理式201として抽出する。次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、コンポーネントBを探索し、「コンポーネントBが正常」かつ「入力であるデータフローd1が正常」かつ「入力であるデータフローd3が正常」ならば「出力であるデータフローd2が正常」という関係を論理式202として抽出する。次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、コンポーネントCを探索し、「コンポーネントCが正常」かつ「入力であるデータフローd4が正常」ならば「出力であるデータフローd3が正常」という関係を論理式203として抽出する。次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、コンポーネントDを探索し、「コンポーネントDが正常」かつ「入力であるデータフローd2が正常」ならば「出力であるデータフローd4が正常」という関係を論理式204として抽出する。 【0058】 次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、ループ「B→D→C」を検出し、「ループ内にあるコンポーネントB、C、Dが正常」かつ「関連するデータフローのうちループ内に無いデータフローd1が正常」ならば「ループ内のデータフローd2は正常」という関係を論理式205として抽出する。次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、「ループ内にあるコンポーネントB、C、Dが正常」かつ「関連するデータフローのうちループ内に無いデータフローd1が正常」ならば「ループ内のデータフローd3は正常」という関係を論理式206として抽出する。次に、論理関係抽出装置3の制御部31は、「ループ内にあるコンポーネントB、C、Dが正常」かつ「関連するデータフローのうちループ内に無いデータフローd1が正常」ならば「ループ内のデータフローd4は正常」という関係を論理式207として抽出する。 【0059】 そして、論理関係抽出装置3の制御部31は、自明な等式「X→Y=?X∨Y」と「?(X∧Y)=?X∨?Y」(ド・モルガンの法則)に従って、論理式201?207を論理式208?214に変換する。論理式208?214は、システム構成の普遍的な関係を示す論理式として、故障箇所特定装置7が利用する。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 ア.本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「複数の部品により構成される対象システム」は、本願発明1の「複数の機器を含むシステム」に相当する。 (イ)引用発明の依存記憶部に記憶する「上記対象システムを構成する複数の部品それぞれについて、上記部品の動作が依存する他の部品を表わす依存データ」及び依存種別記憶部に記憶する「上記部品の動作が他の部品に依存する依存関係の種別を表わす依存種別データ」は、本願発明1の「複数の機器を含むシステムの構造を示すシステム構造データであって、前記機器の間の依存関係を表す所定の文法に従って記述された複数の行を含むシステム構造データ」と「複数の機器を含むシステムの構造を示すシステム構造データであって、前記機器の間の依存関係を表すシステム構造データ」である点で共通する。 (ウ)引用発明の「上記処理装置を用いて、上記依存記憶部が記憶した依存データに基づいて、上記対象システムを構成する複数の部品間の依存関係を辿ることにより、障害が発生していると上記障害検出部が検出した部品の動作が依存する他の部品をすべて抽出」する「原因範囲抽出部」、「上記依存記憶部が記憶した依存データに基づいて、上記複数の部品のうち障害が発生していると上記障害検出部または上記障害調査部が判定した部品に動作が依存する他の部品を抽出して、影響範囲部品」とする「影響範囲抽出部」及び「上記依存種別記憶部が記憶した依存種別データに基づいて、上記影響範囲抽出部が抽出した影響範囲部品に対してどのような影響が及ぶかを判定する」「影響内容判定部」は、本願発明1の「前記機器の間の依存関係を表す所定の文法に従って記述された複数の行を含むシステム構造データに基づいて、前記システムの構造を解析」し、「前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、前記システムの構造を解析する」「解析部」と、「前記機器の間の依存関係を表すシステム構造データに基づいて、前記システムの構造を解析」する「解析部」である点で共通する。 (エ)引用発明の「障害影響分析装置」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「システム構造解析装置」に相当する。 イ.そうしてみると、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「複数の機器を含むシステムの構造を示すシステム構造データであって、前記機器の間の依存関係を表すシステム構造データに基づいて、前記システムの構造を解析する解析部を備え、 前記解析部は、前記システムの構造を解析する、 システム構造解析装置。」 (相違点) 本願発明1の「システム構造データ」は、「前記機器の間の依存関係を表す所定の文法に従って記述された複数の行」を含むものであって、前記「所定の文法」は、「一の前記機器と他の前記機器との間の依存関係」、「一の前記機器と他の複数の前記機器の全てとの間の依存関係」、「一の前記機器と他の複数の前記機器のいずれか1つとの間の依存関係」、並びに、「一の前記機器と他の前記機器及びさらに他の複数の前記機器のいずれか1つとの間の依存関係」を表すものであり、「システムの構造を解析する解析部」は、「前記行のそれぞれについて論理演算を行って真理値を求めることによって、前記システムの構造を解析する」ものであるのに対し、引用発明の「依存データ」は、「上記対象システムを構成する複数の部品それぞれについて、上記部品の動作が依存する他の部品」を表し、「依存種別データ」は「上記部品の動作が他の部品に依存する依存関係の種別を表わす」ものであって、前記「依存関係の種別」には、「通常の依存関係」、「冗長依存関係」、「分散依存関係」(引用文献1【0057】の記載参照。)が含まれており、影響範囲抽出部は、依存データに基づいて、上記複数の部品のうち障害が発生していると上記障害検出部または上記障害調査部が判定した部品に動作が依存する他の部品を抽出して、影響範囲部品とし、影響内容判定部は、依存種別データに基づいて、影響範囲抽出部が抽出した影響範囲部品に対してどのような影響が及ぶかを判定するものである点。 (2)相違点についての判断 引用文献2には、「診断対象のシステム構成から論理関係を抽出し、論理関係は、論理演算子(∧(かつ)、∨(または)、?(でない)、→(ならば)等)を用いた論理式として表す」という技術的事項が記載されているものの、引用発明の「依存データ」は、「上記対象システムを構成する複数の部品それぞれについて、上記部品の動作が依存する他の部品」を表し、「依存種別データ」は「上記部品の動作が他の部品に依存する依存関係の種別を表わす」ものにすぎず、部品それぞれの依存関係を論理式として表す必要性はないから、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用する動機付けを見出すことはできない。 また、引用発明には、「上記部品の動作が他の部品に依存する依存関係の種別を表わす依存種別」として「一の部品と他の部品及びさらに他の複数の部品のいずれか1つとの間の依存関係を表すもの」について、記載も示唆もされておらず、一方、引用文献2には、診断対象のシステム構成の論理関係を表す論理式を論理演算して真理値を求めることによって、システムの構造を解析することについて、記載も示唆もされていないから、仮に、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用したとしても上記相違点に係る本願発明1の構成となるものではない。 そして、上記相違点に係る本願発明1の構成が、本願の出願前に当該技術分野における周知技術とあったともいえない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-6について 本願発明2-6は、本願発明1を限定するものであり、上記相違点1に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明7、13について 本願発明7及び本願発明13は、それぞれ本願発明1に対応する方法の発明及びプログラムの発明であり、上記相違点1に係る本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明8-12について 本願発明8-12は、本願発明7を限定するものであるから、本願発明7と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-07-20 |
出願番号 | 特願2018-223394(P2018-223394) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H04L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 平井 嗣人 |
特許庁審判長 |
角田 慎治 |
特許庁審判官 |
▲吉▼田 耕一 富澤 哲生 |
発明の名称 | システム構造解析装置、システム構造解析方法、及びシステム構造解析プログラム |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 江口 昭彦 |