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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1376257
審判番号 不服2021-854  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-21 
確定日 2021-08-03 
事件の表示 特願2017-549689「開口容器の飲料中の炭酸化レベルを測定するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月 6日国際公開、WO2016/161091、平成30年 4月26日国内公表、特表2018-511800、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2016年(平成28年)3月31日(パリ条約による優先権主張 2015年4月3日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和2年2月17日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月14日付けで手続補正がされ、同年9月16日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和3年1月21日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年9月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-17に係る発明は、以下の引用文献1-2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることが出来ない。

引用文献等一覧
1.特開2009-156647号公報
2.米国特許出願公開第2003/0029228号明細書

第3 本願発明
本願請求項1-17に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明17」という。)は、令和2年5月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-17に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
開口容器の飲料中の二酸化炭素体積レベルを測定するための方法であって、
開口容器の飲料を開口容器に入れて提供することと、
ある量の前記飲料を、少なくとも槽を部分的に満たすように、前記開口容器から、前記開口容器とは異なる槽に移送することと、
前記槽に対して蓋を固定して、前記ある量の飲料を含む封入体積を形成することと、
プローブを前記蓋に挿貫して、前記飲料に接触させることと、
前記飲料のサンプルを、前記槽から二酸化炭素測定器具へ移送することと、
前記サンプルの二酸化炭素体積レベルを定量的に決定することとを含む、方法。」

なお、本願発明2-17は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-156647号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。

「【0001】
本発明は、グラス、ジョッキなど飲用容器で実際に飲用する状態でのガス含有飲料、特にビールなどのガス含有飲料のガス圧を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸含有飲料であるビールのガス圧は、ビールの香味や泡の形成に重要な影響を与えることが知られており、このガス圧は、商品設計の際には、味覚への重要なファクターとして設定されるものである(例えば、非特許文献1、2参照。)。」

「【0007】
以上のように、ビール等において、その注ぎ方がガス圧に影響し、味が変わることは周知でありながら、飲用容器に注がれた後の開放状態であって、実際に飲用される状態でのビールのガス圧が測定された報告例はない。」

「【0010】
また、これら特許文献1、2に開示されるものは、実際に飲用する状態でのビールのガス圧の測定についてのものではない。一方、注出後のサンプルの測定についての報告はあるが(例えば、非特許文献5参照。)、特殊な容器に注出後、更に分析装置にサンプルを移し変える作業が必要であり、その間の時間経過や、移し変え作業によりガス圧が変化するため、消費者が実際に飲用するのと同じ状況でのガス含有飲料のガス圧が測定できているとはいい難い。」

「【0011】
本発明の課題は、従来行われていなかったグラス、ジョッキなどの飲用容器に注出後の、実際に飲用される状態でのガス含有飲料、特にビールなどのガス含有飲料のガス圧を測定する手段を提供することにある。」

「【0035】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本発明は、ビール、発泡酒、雑酒、シャンパンなどの炭酸ガス含有アルコール飲料、サイダーなどの炭酸ガス含有非アルコール飲料(清涼飲料水)、さらには、単一の飲料だけではなく炭酸水を用いたフィズといったカクテルなどの混合飲料について、ガス圧の測定について適用ができるものである。また、測定対象となるガスは、炭酸ガスのみならず、窒素その他の飲料に供し得るガスも含まれる。」

「【0039】
本実施例1は、図1に示すごとく、飲用容器としてビールグラス1を用い、このビールグラス1にビール2を注ぎ、このビール2を圧力測定部30に供給することで、ビール2に含有するガス圧を測定する例とするものである。
【0040】
そして、図1に示すごとく、本実施例1のガス圧測定装置100では、ガス圧の測定対象となるビール2が注がれたビールグラス1の収容空間11を形成する筐体部10と、前記ビールグラス1内に挿入されるサンプリング部としてのニードル21と、前記収容空間11内を規定の圧力にするための圧力供給部22と、前記ニードル21からサンプリングされた測定対象であるビール2を取り込んで、該ビール2のガス圧を測定するための圧力測定部30と、を具備する構成としている。また、前記筐体部10は、測定台40の上に設置される。また、筐体部10、ニードル21、及び、圧力供給部22は、安全シールド50内に設置されることとなっている。
【0041】
以下、各部について説明すると、図2に示すごとく、筐体部10は、ビールグラス1を収容する収容空間11を構成する上側収容部12と下側収容部13を組み立てて構成される。上側収容部12、及び、下側収容部13は、それぞれ、有底の筒状部12a・13aを有し、この筒状部12a・13aを連通させることで一連の筒状の収容空間11が構成されることとしている。また、上側収容部12の下部には雌ネジ部12bが設けられ、下側収容部13の上部には雄ネジ部13bが設けられ、上側収容部12を下側収容部13に対して締め付け固定できるようになっている。また、上側収容部12を回転させて締め付けを緩めることにより、下側収容部13から取外すことで、下側収容部13の筒状部13aを開放できるようになっている。なお、本実施例のように、筐体部10は、ねじ込み式にて一体化される構成とする他、例えば、上側収容部12と下側収容部13とを嵌合させる、いわゆる嵌め込み式にて一体化される構成とし、一体化の際にビールグラス1の揺れを最小限に抑制する構成としてもよい。
・・・
【0044】
また、図2に示すごとく、上側収容部12の上部中央には、上下方向に貫通する貫通穴12eが設けられており、該貫通穴12eの上部開口は、アダプター20の下部に設けた密閉蓋部23によって閉じられる。また、貫通穴12eには、前記密閉蓋部23から下方に向かって突出されるニードル21が挿通されるようになっている。
【0045】
また、図2に示すごとく、前記密閉蓋部23には、前記貫通穴12eに連通する連通路にて構成される圧力供給部22が設けられている。前記圧力供給部22には、押圧ガス圧供給管24を介して、図示せぬガス圧供給装置から圧力の高い押圧ガス(例えば、4Mpaの押圧エアー(押圧空気))が供給され、この押圧ガスが、前記貫通穴12eを介して収容空間11内に供給されるようになっている。なお、この押圧ガスは、費用や簡便さの観点からエアー(大気中の空気)が好ましいが、測定対象に含有されているガス以外であれば、エアー、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス及びヘリウムガスなど各種のガスを用いることができる。例えば一般的な炭酸ガス含有飲料の場合はエアーや窒素ガス、海外の一部ビールのように測定対象が窒素ガス含有である場合は窒素ガス以外のガスを用いることが望ましい。
【0046】
また、図2に示すごとく、前記密閉蓋部23は、ゴム、樹脂などからなる弾性部材に構成され、その下端面23aを貫通穴12eに当着させることによって、貫通穴12eが閉じられるように構成されている。
【0047】
また、図2に示すごとく、収容空間11には、圧力Pの押圧ガスが前記圧力供給部22から供給され、収容空間11内が圧力Pに保たれるようになっている。この圧力Pによって、ビール2の上面が下方に押圧されて、前記ニードル21の先からビール2が流入されて、ニードル21内を上昇していくようになっている。なお、ニードル21は、ステンレスなどからなる管状部材であって、内部にビール2が流通できるように構成され、ビール2を採取するためのサンプリング部として機能するものである。」

「【0052】
また、図1に示すごとく、前記ニードル21にてサンプリングされるビール2のガス圧を測定する圧力測定部30は、測定対象となる液体をその内部に流通、又は、貯溜させることで、液体中に含まれるガスの圧力を測る形態のものであり、市販のものを利用することができ、特にその具体的な構成については限定されるものではない。また、圧力測定部30は、炭酸ガスだけでなく、他のガス成分の圧力をも測定できる構成のものであってもよい。また、ここでは、前記ニードル21にてサンプリングされるビール2を、外気に触れさせないままに圧力測定部30に供給することが重要となる。これにより、ビールグラス1に注がれたビール2に含まれるガス圧が、大気開放による低下を生じることなく、略直接的に測定することが可能となる。
【0053】
以上の構成において、ガス圧の測定時には、図1に示すごとく、安全シールド50内にビールグラス1を収容した筐体部10をセットする。そして、図2に示すごとく、前記アダプター20が下降され、前記密閉蓋部23の貫通穴12eが密閉蓋部23によって塞がれる。また、ニードル21が下降され、ビールグラス1内のビール2の中へ挿入される。また、前記圧力供給部22からは、貫通穴12eを介して収容空間11内へ圧力の高い押圧ガスPが供給されて、収容空間11内が高圧の状態に保持され、この収容空間11内の高圧にビール2の液面が下方に押され、これにより、前記ニードル21の先端21aへとビール2が流入し、サンプリングされる。
【0054】
そして、図1に示すごとく、サンプリングされたビール2は、ニードル21、及び、ニードル21と接続されるサンプリング管27を介して、圧力測定部30へと供給され、圧力測定部30によって、そのガス圧が測定され、その測定結果が、表示部31に表示される。」

(2)引用文献1の図面
引用文献1には次の図面がある。
【図1】


【図2】


(3)引用発明
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ビールグラス1に注がれたビール2に含まれる炭酸ガスのガス圧をガス圧測定装置100により測定する方法であって、
ガス圧測定装置100は、ガス圧の測定対象となるビール2が注がれたビールグラス1の収容空間11を形成する筐体部10と、ビールグラス1内に挿入されるサンプリング部としてのニードル21と、収容空間11内を規定の圧力にするための圧力供給部22と、ニードル21からサンプリングされた測定対象であるビール2を取り込んでビール2のガス圧を測定するための圧力測定部30と、を具備し、
筐体部10はビールグラス1を収容する収容空間11を構成する上側収容部12と下側収容部13を組み立てて構成され、上側収容部12の下部には雌ネジ部12bが設けられ、下側収容部13の上部には雄ネジ部13bが設けられ、上側収容部12を下側収容部13に対して締め付け固定できるようになっており、
上側収容部12の上部中央には上下方向に貫通する貫通穴12eが設けられており、貫通穴12eの上部開口はアダプター20の下部に設けた密閉蓋部23によって閉じられ、また、貫通穴12eには密閉蓋部23から下方に向かって突出されるニードル21が挿通されるようになっており、
密閉蓋部23には貫通穴12eに連通する連通路にて構成される圧力供給部22が設けられ、圧力供給部22にはガス圧供給装置から圧力の高い押圧ガスが供給され、この押圧ガスが貫通穴12eを介して収容空間11内に供給されるようになっており、
ガス圧の測定時には、
ビール2がビールグラス1に注がれ、
ビール2が注がれたビールグラス1が筐体部10の収容空間11に収容され、
アダプター20が下降され貫通穴12eが密閉蓋部23によって塞がれ、また、ニードル21が下降されビールグラス1内のビール2の中へ挿入され、
圧力供給部22から貫通穴12eを介して収容空間11内へ圧力の高い押圧ガスPが供給されて収容空間11内が高圧の状態に保持され、この収容空間11内の高圧にビール2の液面が下方に押され、これにより、ニードル21の先端21aへとビール2が流入しサンプリングされ、サンプリングされたビール2はニードル21及びニードル21と接続されるサンプリング管27を介して圧力測定部30へと供給され、
圧力測定部30によってそのガス圧が測定される、
方法。」

2.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(米国特許出願公開第2003/0029228号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。

「[0001] The present invention relates to a method and also a device for selectively determining the content quantities of gases, such as carbon dioxide, nitrogen and/or oxygen, for example, dissolved in liquids, more particularly beverages, and also for ascertaining the solubility (solubilities) and/or saturated vapour pressure(s) thereof in the said liquids.」
(当審訳:「[0001] 本発明は、二酸化炭素、窒素および/または酸素などの、例えば液中、より詳細には飲料中に溶解しているガスの含有量を選択的に測定し、また当該液中のそれらの溶解度及び/又は飽和蒸気圧を検出するための方法及びデバイスに関するものである。」)

「[0101] The embodiment of the new analyser instrument 1 shown in FIG. 1 is formed with a housing connection 210 penetrating the wall 101 of a pipe 100 or vessel containing the liquid 10 for analysis and projecting into the sample liquid 10, the said connection ending?upwardly in the drawing ?with an annular edge 212 within which is arranged or stretched a membrane 7 made of an elastomeric material which adjoins the said edge fluid-tight and is located in a plane-surface basic geometry G0.」
(当審訳:「[0101] 図1に見られる新たな分析器具1の実施形態は、分析される液体10を収容した管100または容器の壁101を貫通し液体試料10中に突出するハウジング接続部210で形成され、当該接続部は図中上向きで可撓性の材料で形成される膜7が配置されるまたは延伸される環状周縁部212で終端し、膜7は前記周縁部に流体密に隣接し平面である基本形状G0で配置される。」)

「[0103] Guided through the membrane 7, fluid-tight, is a hollow piston rod 3, by means of which a piston head 220 having a cavity 225 is movable upwardly in the direction away from the membrane 7, or in reverse. The piston 220 has an approximately flat cylinder-shape recess 201 directed towards the membrane 7 of the housing connection 210 and fully open towards the said membrane, the annular edge 222 of the said recess bearing a sealing ring 223 extending around it.
[0104] Into the said recess 201 with its non-changeable interior wall 22 project the sensor parts or sensor surfaces of a pressure sensor 4 and a temperature sensor 5 proceeding from the piston cavity 225 and penetrating the partition 226 thereof separating it from the recess 201.」
(当審訳:「[0103] 中空ピストンロッド3は膜7を通って流体密に案内され、これによりキャビティ225を有するピストンヘッド220は膜7から離れる上方向にまたは逆方向に移動可能となっている。ピストン220は、ハウジング接続部210の膜7の方に向き当該膜の方に完全に開いた略平坦なシリンダ状凹部201を有し、前記凹部の環状縁部222はその周囲に延在する封止リング223を有する。
[0104] 変形しない内部壁22からなる前記凹部201へと圧力センサ4及び温度センサ5のセンサ部品又はセンサ表面は突出し、ピストン空洞225から出発してそれを前記凹部201から分離する隔壁226を貫通する。」)

「[0105] The analyser 1 according to the invention is shown in FIG. 1 in a closed position enclosing the sample liquid 10 so as to effect a fluid-seal by means of the annular seal 223. In this closed position a measuring chamber 2 is formed with an interior space 20 having a defined standard measuring chamber volume, in which is located an oscillating element 62 operable in a non-contact manner by the aforementioned magnet-operated drive 61 in the piston cavity 225 to accelerate the establishing of equilibrium pressure.
[0106] In the measuring chamber 2 just defined, the membrane 7 forms a shape-variable region 21 of the wall of the chamber interior space, which may be converted in its shape or surface geometry from the basic geometry G0 into other surface shapes Gl or G2, the non-variable region 22 thereof being defined substantially by the internal wan of the recess 201.
[0107] When the surface geometry thereof is changed to the two geometries Gl and G2, for example, there occurs a first, smaller, increase in the volume of the measuring chamber interior space 20 and then a second, larger, such measuring chamber interior space volume increase.
[0108] After each of these volume increases - after appropriate cavitation-generating stirring by means of the oscillator 62, operable in a non-contact manner by means of the magnet-operated drive 61, to accelerate the establishing of the equilibrium pressure in the measuring chamber 2 - as well as the temperature ascertained by means of the temperature-measuring probe 5, the equilibrium pressure establishing in the measuring chamber 2 is ascertained by means of the pressure-measuring probe 4. The measured pressure values obtained in this way form the basis for ascertaining the content quantities of dissolved gases in the sample liquid 10 and also the solubility (solubilities) and/or said vapour pressure(s) thereof.」
(当審訳:「[0105] 本発明に係る分析器具1は図1に環状シール223によって流体シールをもたらすために液体試料10を囲む閉じ位置において示される。この閉じ位置では、測定チャンバ2は定義された標準測定室容積を備える内部空間20により形成され、内部空間20には平衡圧力の確立を促進するためにピストンキャビティ225の後述する磁石操作駆動装置61によって非接触で動作される発振素子62が配置される。
[0106] 上記に定義された測定室2では膜7はチャンバの内部空間の壁面の形状可変部21を形成し、膜7はその形状または表面形状は基本的形状G0から他の表面形状のG1またはG2に変更され、その非可変領域22は凹部201の内壁によって実質的に画定されている。
[0107] その面形状がその2つの形状G1及びG2に変更されるとき、例えば、第1に測定室の内部空間20の容積は小さな増加を生じ、そして第2に測定室の内部空間の容積は大きな増加を生じる。
[0108] これらの容積の増加のそれぞれの後-測定室2内の平衡圧力の確立を加速させるための、磁石操作駆動装置61により非接触式で動作可能な、発振器62による適切なキャビテーション発生撹拌の後-温度測定プローブ5によって検出された温度と同様に、測定室2内の平衡圧は圧力測定プローブ4により検出される。このようにして得られた圧力測定値は、試料液10に溶解した気体の含有量、また溶解度及び/又は蒸気圧を確認するための基礎を形成する。」)

「[0118] ・・・The equilibrium pressure and the temperature are measured and from these the carbon dioxide content is calculated.」
(当審訳:「[0118] ・・・平衡圧力と温度とが測定され、これらから二酸化炭素含有量が算出される。」)

(2)引用文献2の図面
引用文献2には次の図面がある。

Fig.1


(3)引用文献2に記載の技術
したがって、上記引用文献2には次の技術が記載されていると認められる。

「飲料中に溶解している二酸化炭素の含有量を測定する方法であって、
膜7が配置される環状周縁部212で終端するハウジング接続部210を、分析される液体10を収容した容器の壁101を貫通させて液体試料10中に突出させ、
膜7の方に向き当該膜の方に完全に開いた略平坦なシリンダ状凹部201を有し封止リング223を有するピストン220が膜7から離れる上方向にまたは逆方向に移動可能であり、
環状シール223によって流体シールをもたらす閉じ位置で、測定チャンバ2が内部空間20により形成され、
膜7の形状が基本的形状G0から他の表面形状のG1またはG2に変更されて測定室の内部空間20の容積は増加を生じ、
容積の増加の後に、温度測定プローブ5により温度を、圧力測定プローブ4により測定室2内の平衡圧を、それぞれ検出し、
平衡圧力と温度とから二酸化炭素含有量を算出する、
方法。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明の「ビールグラス1」は本願発明1の「開口容器」に相当し、そして、引用発明の「ビールグラス1に注がれたビール2に含まれる炭酸ガスのガス圧を」「測定する方法」は、本願発明1の「開口容器の飲料中の二酸化炭素体積レベルを測定するための方法」と、「『開口容器の飲料中の二酸化炭素』『レベルを測定するための方法』」で共通する。

(イ)引用発明の「ビール2がビールグラス1に注がれ」は、本願発明1の「開口容器の飲料を開口容器に入れて提供すること」に相当する。

(ウ)引用発明において「筐体部10はビールグラス1を収容する収容空間11を構成する上側収容部12と下側収容部13を組み立てて構成され、上側収容部12の下部には雌ネジ部12bが設けられ、下側収容部13の上部には雄ネジ部13bが設けられ、上側収容部12を下側収容部13に対して締め付け固定できるようになって」いるから、「ビール2が注がれたビールグラス1が筐体部10の収容空間11に収容され」る際には、まずビール2が注がれたビールグラス1が下側収容部13内に配置され、次に上側収容部12がビールグラス1が配置された下側収容部13に対して締め付け固定されると認められる。また、上側収容部12をビールグラス1が配置された下側収容部13に対して締め付け固定してビールグラス1を収容する収容空間11を構成することは、ビールグラス1を中に入れて閉じ込める、すなわち、封入しているといえる。よって、引用発明の「下側収容部13」、「上側収容部12」は、それぞれ、本願発明1の「槽」、「蓋」に相当し、そして、引用発明の「ビール2が注がれたビールグラス1が筐体部10の収容空間11に収容され」は、本願発明1の「ある量の前記飲料を、少なくとも槽を部分的に満たすように、前記開口容器から、前記開口容器とは異なる槽に移送することと、前記槽に対して蓋を固定して、前記ある量の飲料を含む封入体積を形成すること」と、「『ある量の前記飲料を、少なくとも槽を部分的に満たすように、』『槽に移送することと』、『槽に対して蓋を固定して、前記ある量の飲料を含む封入体積を形成すること』」で共通する。

(エ)引用発明において「上側収容部12の上部中央には上下方向に貫通する貫通穴12eが設けられており」、「貫通穴12eには密閉蓋部23から下方に向かって突出されるニードル21が挿通されるようになって」いるから、「ニードル21が下降されビールグラス1内のビール2の中へ挿入され」る際には、ニードル21は上側収容部12の貫通穴12eを挿通すると認められる。よって、引用発明の「ニードル21」は本願発明1の「プローブ」に相当し、そして、引用発明の「ニードル21が下降されビールグラス1内のビール2の中へ挿入され」は本願発明1の「プローブを前記蓋に挿貫して、前記飲料に接触させること」に相当する。

(オ)引用発明の「ニードル21の先端21aへとビール2が流入しサンプリングされ、サンプリングされたビール2はニードル21及びニードル21と接続されるサンプリング管27を介して圧力測定部30へと供給され」は、本願発明1の「前記飲料のサンプルを、前記槽から二酸化炭素測定器具へ移送すること」と、「『前記飲料のサンプルを』、『槽から二酸化炭素測定器具へ移送すること』」で共通する。

(カ)引用発明の「圧力測定部30によってそのガス圧が測定される」は、本願発明1の「前記サンプルの二酸化炭素体積レベルを定量的に決定すること」と、「『前記サンプルの二酸化炭素』『レベルを定量的に決定すること』」で共通する。

イ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

【一致点】
「開口容器の飲料中の二酸化炭素レベルを測定するための方法であって、
開口容器の飲料を開口容器に入れて提供することと、
ある量の前記飲料を、少なくとも槽を部分的に満たすように、槽に移送することと、
槽に対して蓋を固定して、前記ある量の飲料を含む封入体積を形成することと、
プローブを前記蓋に挿貫して、前記飲料に接触させることと、
前記飲料のサンプルを、槽から二酸化炭素測定器具へ移送することと、
前記サンプルの二酸化炭素レベルを定量的に決定することとを含む、方法。」

【相違点1】
本願発明1は、
「ある量の前記飲料を、少なくとも槽を部分的に満たすように、前記開口容器から、前記開口容器とは異なる槽に移送」し、
「前記槽に対して蓋を固定して、前記ある量の飲料を含む封入体積を形成」し、
「前記飲料のサンプルを、前記槽から二酸化炭素測定器具へ移送する」のに対し、
引用発明は、
「ある量の前記飲料を、少なくとも槽を部分的に満たすように」、開口容器を槽内に配置することで、「槽に移送し」、
開口容器が配置された「槽に対して蓋を固定して、前記ある量の飲料を含む封入体積を形成」し、
「前記飲料のサンプルを」、開口容器が配置された「槽から二酸化炭素測定器具へ移送する」点。
【相違点2】
本願発明1は、「前記サンプルの二酸化炭素体積レベルを定量的に決定する」のに対し、
引用発明は、「前記サンプルの二酸化炭素レベルを定量的に決定する」が、「二酸化炭素レベル」はガス圧である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用文献1には、引用発明において、飲料を開口容器から開口容器とは異なる槽に移送し、飲料のサンプルをその槽から二酸化炭素測定器具へ移送するという構成(以下「構成ア」という。)を採用することを示唆する記載はなく、また、当該構成アを採用する動機付けも認められない。
また、引用文献1には「本発明の課題は、従来行われていなかったグラス、ジョッキなどの飲用容器に注出後の、実際に飲用される状態でのガス含有飲料、特にビールなどのガス含有飲料のガス圧を測定する手段を提供することにある。」(段落【0011】)と記載されているところ、仮に引用発明において上記構成アを採用すると、開口容器の飲料の二酸化炭素を実際に飲用される状態で測定することができないことになり、引用文献1の上記課題が解決されないことになるのは明らかである。
また、引用文献2には、上記「第4」「2.」「(3)」で示した技術が開示されているが、上記構成アについては記載も示唆もない。
よって、引用発明において上記構成アを採用することは当業者が容易に想到できたことではない。
ここで、引用文献1には「特殊な容器に注出後、更に分析装置にサンプルを移し変える」(段落【0010】)という記載がある。しかし、当該記載は引用文献1における従来技術に関するものであり、「その間の時間経過や、移し変え作業によりガス圧が変化するため、消費者が実際に飲用するのと同じ状況でのガス含有飲料のガス圧が測定できているとはいい難い。」(段落【0010】)という問題が存在することが指摘されているのだから、当業者が当該記載を参照しても引用発明において上記構成アを採用するとは考えられず、むしろ上記構成アを採用する上での阻害要因である。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-17について
本願発明2-17も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-17は、当業者が引用発明及び拒絶査定において引用された引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-07-19 
出願番号 特願2017-549689(P2017-549689)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野田 華代  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 蔵田 真彦
井上 博之
発明の名称 開口容器の飲料中の炭酸化レベルを測定するための方法  
代理人 松谷 道子  

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