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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1376290
審判番号 不服2021-1638  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-05 
確定日 2021-08-03 
事件の表示 特願2016- 53235「ハードマスクのための金属誘電体膜の蒸着」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開,特開2016-181687,請求項の数(26)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年3月17日(パリ条約による優先権主張2015年3月24日,米国(US))の出願であって,平成28年8月24日及び平成31年3月15日に手続補正がされ,令和2年3月17日付けで拒絶理由通知がされ,同年9月17日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年10月1日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,令和3年2月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(令和2年10月1日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。

1 本願の請求項1,2,5?7,9,10に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3項に該当し,特許を受けることができないか,引用文献1に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許を受けることができない。

2 本願の請求項3,4,8,11?27に係る発明は,引用文献1?4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2008/0113110号明細書
2.特表2013-507008号公報
3.米国特許出願公開第2007/0231487号明細書
4.国際公開第2013/133110号

第3 本願発明
本願請求項1?26に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明26」という。)は,令和3年2月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1,26は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
基板上に炭化タングステン膜を蒸着するための方法であって,
プラズマ強化化学蒸着(PECVD)処理チャンバ内に前記基板を配置する工程と,
搬送ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
誘電体前駆体ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
金属前駆体ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
前記PECVD処理チャンバ内でプラズマを生成する工程と,
PECVDを用いて,500℃未満の処理温度で前記基板上に炭化タングステン膜を蒸着する工程と,
を備え,
前記炭化タングステン膜は,ナノ結晶である,方法。」

「【請求項26】
基板上に炭化タングステン膜を蒸着するための方法であって,
プラズマ強化化学蒸着(PECVD)処理チャンバ内に前記基板を配置する工程と,
搬送ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
誘電体前駆体ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
金属前駆体ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
前記PECVD処理チャンバ内でプラズマを生成する工程と,
PECVDを用いて,500℃未満の処理温度で前記基板上に炭化タングステン膜を蒸着する工程と,
を備え,
前記誘電体前駆体ガスに対する前記金属前駆体ガスの割合は,20%より大きい,方法。」

なお,本願発明2?12は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明13?23も,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明24は,本願発明1に対応する物の発明であり,本願発明25は,本願発明13に対応する物の発明である。

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国特許出願公開第2008/0113110号明細書)には,次の事項が記載されている。なお,引用文献1の記載事項は,当審の訳文で示す(下線は当審が付した。)。
「発明の詳細な説明
[0003] 1.発明の分野
[0004] 本発明は,金属炭化物膜に関する。特に,本発明は気相成長法によって金属炭化物膜を成長させる方法に関する。」

「特定の実施形態の詳細な説明
[0021] 本発明は,有利には,基板を気相金属供給源化学物質(又は金属化合物),炭素含有化合物の1つ以上のプラズマ励起種及び還元剤と接触させることによって,反応室内の基板上に金属,好ましくは遷移金属炭化物膜を形成することを可能にする。炭素含有化合物は,アルカン,アルケン又はアルキンであることが好ましい。金属化合物は,好ましくは,チタン(TI),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf),バナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),クロム(Cr),モリブデン(Mo),タングステン(W),マンガン(Mn),レニウム(Re),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),銀(Ag),金(Au),パラジウム(Pd),白金(Pt),ロジウム(Rh),イリジウム(Ir),ルテニウム(Ru)及びオスミウム(Os)からなる群から選択される1種以上の金属を含む。還元剤は,プラズマ励起水素種であることが好ましい。還元剤は,ハロゲン原子及び/又は酸素原子を含む望ましくない化学種を除去する。有利には,低レベルの不純物を有する膜が形成される。
・・・
プラズマ強化CVD法
[0062] CVDは,2種以上の反応物を反応空間に導入し,同時に基板表面と接触させて,金属炭化物膜などの膜を製造する堆積プロセスである。好ましい実施形態によれば,CVDを用いた金属炭化膜の形成は,基板表面を気相金属化合物及び炭素含有化合物のプラズマ励起種と同時に接触させることを含む。表面は,好ましくはCVDプロセスに影響されやすい。
[0063] 好適な実施形態によれば,金属源材料(金属化合物)と炭素含有化合物のプラズマ励起種とを集合的に反応空間に導入することにより,反応空間内に配置された基板上に金属炭化物膜を成長させる。ソース材料は,堆積時間の少なくとも一部と同時に反応空間内に存在する。ソース材料は,反応チャンバ内に配置された基板と接触し,それによってそれらが互いに反応して,基板の表面上に金属炭化物膜を形成する。浸炭(又は還元)反応で形成された副生成物(もしあれば)は,好ましくは揮発性であり,過剰の反応物と共に反応空間から除去することができる。あるいは,除去と組み合わせて,ポンプシステムによって生成された真空を使用して,反応空間から副生成物を除去することができる。
[0064] CVD-タイプのプロセスに適したソース材料としては,元素の周期表におけるグループ4,5,6,7,8,9,10及び/又は11の元素の揮発性又はガス状化合物が挙げられるが,これらに限定されるものではない。特に,好ましい方法により形成される膜は,Ti,Zr,Hf,V,Nb,TaCr,Mo,W,Mn,Re,Fe,Co,Ni,Cu,Ag,Au,Pd,Pt,Rh,Ir,Ru(及び/又はOs)の炭化物を含むことができる。本発明の方法には,これらのガス状又は揮発性の化合物を用いることが好ましい。
[0065] いくつかの実施形態では,本発明において使用される金属源化合物は,好ましくは,上記金属のハロゲン化物である。ハロゲン化物化合物には,各金属のフッ化物,塩化物,ヨウ化物及び臭化物が含まれる。なお,ハロゲンは,塩素,臭素,フッ素又はヨウ素と金属原子との間の少なくとも1つの結合を含む任意の揮発性化合物を使用することができる。一例として,形成される金属炭化物膜が炭化タンタルである場合,このプロセスに適した金属化合物は,TaBr_(w),TaCl_(x),TaF_(y)及びTaI_(Z)からなる群から選択することができ,ここで,w,x,y及びzは1?6である。特に,タンタルのハロゲン化物には,TaF_(5),TaCl_(5),TaBr_(5)及びTaI_(5)が含まれる。
[0066] 他の実施形態では,使用される金属源化合物は,好ましくは金属有機化合物,より好ましくは金属シクロペンタジエニル又は金属ジアルキルアミド化合物である。いくつかの実施形態では,1つ以上の金属源化合物又は材料が提供されてもよい。上記のように,使用することができる金属ジアルキルアミド化合物には,限定されないが,Ta(NR_(2))_(5)及びTa(NR)(NR_(2))_(3)が含まれ,ここで,R=CH_(3)又はCH_(2)CH_(3),及びTa(NR’R”)_(5)であり,ここで,R’=CH_(3)及びR”=CH_(2)CH_(3)である場合,タンタルトリス(ジエチルアミノ)t-ブチン酸(TBTDET)が,金属源化合物として使用され得る。他の有機化合物,例えば,次のような有機化合物が挙げられる,Cp_(2)TiCl,(CH_(3))_(3)SiCH_(2))_(3)Ti及びCpTa(ブタジエン)_(2)を使用することもできる。
[0067] プラズマ励起種が形成される炭素含有化合物,本明細書では浸炭剤とも呼ばれる。炭素含有化合物は,アルカン(例えば,CH_(4)),アルケン(例えば,C_(2)H_(4)),アルキン(例えば,C_(2)H_(2))及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。いくつかの実施形態では,好ましい炭素含有化合物は,ハロゲン化アルカン,アルケン及びアルキンを含むいくつかの特定の実施形態では,炭素含有化合物はメタン(CH_(4))である。他の実施形態では,炭素含有化合物は,四臭化炭素(Br_(4))である。いくつかの実施形態では,炭素含有化合物は,反応空間に導入され,プラズマは,その場で,すなわち,反応空間において生成される。他の実施形態では,炭素含有化合物のプラズマ励起種は,遠隔プラズマ発生器内で形成され,反応空間内の基板に向けられる。
・・・
[0069] 一実施形態では,プラズマ強化CVD-タイププロセスによって金属炭化物膜を形成は,以下のステップを含む。
[0070] 1.金属化合物及び炭素含有化合物のプラズマ励起種を,基板を含む反応空間に導入する工程;
[0071] 2.金属化合物と炭素含有化合物のプラズマ励起種を基板に同時に接触させる工程;
[0072] 3.過剰な金属化合物,炭素含有化合物のプラズマ,及び反応副生成物(もしあれば)をパージ及び/又は排気する工程
[0073] ステップ1-3を繰り返して,所望の厚さの金属炭化物膜を形成することができる。好ましい実施形態では,水素プラズマのような還元剤が,金属又は金属炭化物膜を還元するために,ステップ2及び/又は3の後に反応空間に導入される。還元剤は,工程1-3で形成される各サイクルの間,又は複数のサイクルを実施した後に導入することができる。水素プラズマは,水素ガスを反応器に供給し,反応空間(すなわち,その場)又は外部(すなわち,その場外)で,遠隔プラズマ発生器を使用して,炭素含有化合物のプラズマ励起種を形成することによって,その場で提供することができる。
[0074] 本明細書で説明するCVDタイプのプロセスでは,基板は好ましくは約100℃?約700℃,より好ましくは約200℃?約550℃の温度に維持され,チャンバは好ましくは約200mTorr?約10Torr,より好ましくは約1Torr?約8Torrの圧力に維持される。
[0075] このように,基板表面に金属炭化膜が形成される。前述の実施形態のいくつかは,例として説明されるであろう。」

以上によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「プラズマ強化CVD-タイププロセスによって基板表面に金属炭化物膜を形成する方法であって,
基板を約200℃?約550℃の温度に維持する工程と,
Wのフッ化物である金属化合物及びメタン(CH_(4))である炭素含有化合物のプラズマ励起種を,基板を含む反応空間に導入する工程と,
プラズマを反応空間で生成する工程と,
前記金属化合物及び前記炭素含有化合物のプラズマ励起種を前記基板に同時に接触させる工程と,
過剰な金属化合物,炭素含有化合物のプラズマ,及び反応副生成をパージ及び/又は排気する工程とを備える方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特表2013-507008号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0020】
図1Bは,図1Aの切欠構造206内において形成された拡散隔膜212を含む切欠構造207を示している。拡散隔膜212には,例えば,タンタル(Ta)含有膜(例えば,タンタル(Ta),窒化タンタル(TaN),炭化タンタル(TaC),炭窒化タンタル(TaCNを含有)),チタン含有膜(例えばチタン(Ti),窒化チタン(TiN),炭化チタン(TiC),炭窒化チタン(TiCN)を含有),タングステン(W)含有膜(例えば,タングステン(W),窒化タングステン(WN),炭化タングステン(WC),炭窒化タングステン(WCN)を含有),あるいはこれらの組合せが含まれてもよい。組合せとしては,別々の膜,すなわちタンタル膜,窒化タンタル膜,チタン膜,窒化チタン膜,窒化タングステン膜を二つ以上含んでいてもよく,例えば,タンタル膜/窒化タンタル膜,チタン膜/窒化チタン膜,窒化タンタル膜/窒化チタン膜,あるいは窒化タンタル膜/窒化タングステン膜の各組み合わせでもよい。拡散隔膜212の厚みは,たとえば,約1nmから約10nm,約2nmから約5nm,例えば約4nmであってもよい。拡散隔膜212は,物理蒸着法(PVD),イオン化物理蒸着法(iPVD),熱化学蒸着法,パルス化学蒸着法,プラズマ増強化学蒸着法(PECVD),原子層堆積法(ALD),プラズマ増強原子層堆積法(PEALD),あるいはスパッタ法といった,本技術分野において通常の技術を有する者に知られるさまざまな蒸着方法によって,フィルム蒸着装置のなかで蒸着されてもよいが,蒸着方法はこれらに限定されるものではない。例えば,拡散隔膜212は高アスペクト比の切欠構造207において均等に形成されてもよい。
【0021】
拡散隔膜212の蒸着には,多種多様なタンタル含有前駆体,チタン含有前駆体,及びタングステン含有前駆体が用いられている。タンタル含有前駆体の代表的な例としては, Ta(NMe_(2))_(5) (ペンタキス(ジエチルアミド)タンタル,PDMAT), Ta(NEtMe)_(5) (ペンタキス(エチルメチルアミド)タンタル,PEMAT),(^(t)BuN)Ta(NMe_(2))_(3)(tert-ブチリミド・トリス(ジメチルアミド)タンタル,TBTDMT), (^(t)BuN)Ta(NEt_(2))_(3) (tert-ブチリミド・トリス(ジエチルアミド)タンタル, TBTDET), (^(t)BuN)Ta(NEtMe)_(3) (tert-ブチリミド・トリス(エチルメチルアミド)タンタル,TBTEMT), (EtMe_(2)CN)Ta(NMe_(2))_(3) (tert-アミリミド・トリス(ジメチルアミド)タンタル,TAIMATA),(^(i)PrN)Ta(NEt_(2))_(2) (イソプロピリミド・トリス(ジエチルアミド)タンタル,IPTDET),Ta_(2)(OEt)_(10) (タンタルペンタエトキシド,TAETO),(Me_(2)NCH_(2)CH_(2)O)Ta(OEt)_(4) (ジメチルアミノエトキシタンタル・テトラエトキシド,TATDMAE),及び,TaCl_(5) (五塩化タンタル)がある。チタン含有前駆体の代表的な例としては,Ti(NEt_(2))_(4) (テトラキス(ジエチルアミド)チタン,TDEAT),Ti(NMeEt)_(4) (テトラキス(エチルメチルアミド)チタン,TEMAT), Ti(NMe_(2))_(4) (テトラキス(ジメチルアミド)チタン,TDMAT),Ti(THD)_(3)(トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)チタン),及び,TiCl_(4) (四塩化チタン)がある。タングステン含有前駆体の代表的な例としては,W(CO)_(6) (タングステンヘキサカルボニル),WF_(6) (六フッ化タングステン),及び,(^(t)BuN)_(2)W(NMe_(2))_(2) (ビス(tert-ブチリミド)ビス(ジメチルアミド)タングステン,BTBMW)がある。これらの前駆体において,以下の略記が用いられている。 すなわち,Me(メチル),Et(エチル),^(i)Pr(イソプロピル),^(t)Bu(tert-ブチル),及び,THD(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)である。実施例よっては,アンモニア(NH_(3)) やヒドラジン(N_(2)H_(4))といった窒素含有ガスが,拡散隔膜212の蒸着の際に窒素源として利用されていてもよい。また,本発明のいくつかの実施例によれば,拡散隔膜212が省略されてもよい。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(米国特許出願公開第2007/0231487号明細書)には,次の事項が記載されている。なお,引用文献3の記載事項は,当審の訳文で示す。
「[0046] 第1の処理材料供給システム140及び第2の処理材料供給システム142は,第1の処理材料を処理チャンバ110に,第2処理材料を処理チャンバ110内に交互に導入するように構成される。第1の材料及び第2の材料の導入の交互の変更は,周期的であってもよく,又は第1及び第2の材料の導入の間の可変時間期間を有する周期的なものであってもよい。第1の処理材料は,例えば,基板125上に形成される膜内に見いだされる主たる原子又は分子種を有する組成物のような膜前駆体を含むことができる。例えば,膜前駆体は,固相,液相,又は気相として発生することができ,また,キャリアガスを用いて又は用いずに気相で処理チャンバ110に供給してもよい。第2の処理材料は,例えば,基板125上に形成される膜中に見いだされる原子又は分子種を有していてもよい還元剤を含むことができる。例えば,還元剤は,固相,液相,又は気相として発生することができ,キャリアガスを用いて又は用いずに気相で処理チャンバ110に供給することができる。
・・・
[0050] 別の例として,炭化タングステン又は炭窒化タングステンを堆積させる場合,第1の処理材料は,ビス(tert-ブチルイミド)ビス(ジメチルアミド)タングステン,フェニルイミド錯体Cl_(4)(CH_(3)CN)W(NPh),イソプロピルイミド錯体Cl_(4)(CH_(3)CN)W(NiPr),又はアリルイミド錯体Cl_(4)(CH_(3)CN)W(NC_(3)H_(5))を含むことができ,第2の処理材料は,H_(2),NH_(3),N_(2)及びH_(2),N_(2)H_(4),NH(CH_(3))_(2)又はN_(2)H_(3)CH_(3),又はそれらの組合せを含むことができる。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(国際公開第2013/133110号)には,次の事項が記載されている。
「(第1の実施形態)
図1は,本発明の一態様に係るプラズマCVD装置を概略的に示す断面図である。
プラズマCVD装置は成膜チャンバー101を有しており,この成膜チャンバー101の上部には蓋102が配置されている。成膜チャンバー101に蓋102をすることにより,成膜チャンバー101内には成膜室103が形成される。
この成膜室103内の下方には被成膜基板(図示せず)を保持するステージ電極104が配置されており,このステージ電極104は高周波電源106に電気的に接続されている。ステージ電極104はRF印加電極としても作用し,また基板ホルダーとしても機能する。ステージ電極104の周囲及び下部はアースシールド105によってシールドされている。
成膜室103内の上方には,ステージ電極104に対向して平行の位置にガスシャワー電極107が配置されている。これらは一対の平行平板型電極である。ガスシャワー電極107の周囲及び上部はアースシールド108によってシールドされている。また,ガスシャワー電極107は接地電位に接続されている。ガスシャワー電極107は,原料ガスを成膜チャンバー101内にシャワー状に導入するガスシャワー部材としても機能する。」(明細書3頁16?31行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「プラズマ強化CVD」は,本願発明1の「プラズマ強化化学蒸着(PECVD)」に相当する。
そして,引用発明において,「Wのフッ化物である金属化合物」及び「メタン(CH_(4))である炭素含有化合物」から「金属炭化物膜」を形成していることからすると,当該「金属炭化物膜」は,炭化タングステン膜であるといえるから,引用発明の「プラズマ強化CVD-タイププロセスによって基板表面に金属炭化物膜を形成する方法」は,本願発明1の「基板上に炭化タングステン膜を蒸着するための方法」に相当する。

イ 引用発明の「Wのフッ化物である金属化合物」,「メタン(CH4)である炭素含有化合物」は,それぞれ,本願発明1の「金属前駆体ガス」,「誘電体前駆体ガス」に相当する。

ウ 引用発明における「プラズマ強化CVD-タイププロセス」を,プラズマ強化CVD処理チャンバ内で行うことは技術常識であるから,引用発明は,プラズマ強化CVD処理チャンバ内に「基板」を配置する工程,「メタン(CH_(4))である炭素含有化合物」をプラズマ強化CVD処理チャンバに供給する工程,「Wのフッ化物である金属化合物」をプラズマ強化CVD処理チャンバ内に供給する工程,プラズマ強化CVD処理チャンバ内で「プラズマを生成する」工程を備えているといえる。

エ 引用発明の「プラズマ強化CVD-タイププロセスによって基板表面に金属炭化物膜を形成する方法」は,「基板を約200℃?約550℃の温度に維持する工程」を備えているから,プラズマ強化CVDを用いて,約200℃?約550℃の処理温度で基板上に炭化タングステン膜を形成する工程を備えているといえる。
そうすると,本願発明1と引用発明とは,「PECVDを用いて,500℃未満の処理温度で前記基板上に炭化タングステン膜を蒸着する工程」を備えている点で共通する。

オ 以上から,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
「基板上に炭化タングステン膜を蒸着するための方法であって,
プラズマ強化化学蒸着(PECVD)処理チャンバ内に前記基板を配置する工程と,
誘電体前駆体ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
金属前駆体ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
前記PECVD処理チャンバ内でプラズマを生成する工程と,
PECVDを用いて,500℃未満の処理温度で前記基板上に炭化タングステン膜を蒸着する工程と,
を備える,方法。」

<相違点>
相違点1:本願発明1は,「搬送ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程」を備えているのに対し,引用発明は,そのような工程を備えているかどうか不明な点。

相違点2:「炭化タングステン膜」について,本願発明1は,「ナノ結晶である」であるのに対し,引用発明は,ナノ結晶であるかどうか不明な点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み相違点2から検討する。
ア 前記(1)アで検討したように,引用発明の「金属炭化物膜」は,炭化タングステン膜であるところ,引用文献1には,基板の処理温度範囲が約200℃?約550℃であることは記載されているものの,炭化タングステン膜を形成するための具体的な実施例(製造条件)は記載されていない。また,引用文献1には,炭化タングステン膜をナノ結晶とすることは何ら記載も示唆もされていない。
そうすると,引用発明の炭化タングステン膜がナノ結晶であるとはいえない。
したがって,相違点2は実質的な相違点である。
よって,本願発明1は,引用発明であるとはいえない。

イ 前記アで検討したとおり,引用文献1には,基板の処理温度範囲が約200℃?約550℃であることは記載されているものの,炭化タングステン膜を形成するための具体的な実施例(製造条件)は記載されていない。また,引用文献1には,炭化タングステン膜をナノ結晶とすることは何ら記載も示唆もされていない。
そして,引用文献2?4のいずれにも,炭化タングステン膜をナノ結晶とすることについては,何ら記載も示唆もされていない。また,炭化タングステン膜をナノ結晶とすることが,本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって,引用発明に引用文献2?4に記載された発明を適用したとしても,相違点2に係る本願発明1の構成は得られない。
よって,相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明及び引用文献2?4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2?23について
本願発明2?12は,本願発明1を減縮した発明であり,また,本願発明13?23も,本願発明1を減縮した発明であり,いずれも本願発明1の「炭化タングステン膜は,ナノ結晶である」と同一の構成を有しているから,本願発明1と同様の理由により,本願発明2,5?7,9は,引用発明であるとはいえないし,また,本願発明2?23は,引用発明及び引用文献2?4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明24,25について
本願発明24は,本願発明1に対応する物の発明であり,また,本願発明25は,本願発明13に対応する物の発明であり,いずれも,本願発明1の「炭化タングステン膜は,ナノ結晶である」と同一の構成を有しているから,本願発明1と同様の理由により,引用発明及び引用文献2?4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明26について
(1)対比
前記1(1)における本願発明1と引用発明との対比を参酌すると,本願発明26と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
「基板上に炭化タングステン膜を蒸着するための方法であって,
プラズマ強化化学蒸着(PECVD)処理チャンバ内に前記基板を配置する工程と,
誘電体前駆体ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
金属前駆体ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程と,
前記PECVD処理チャンバ内でプラズマを生成する工程と,
PECVDを用いて,500℃未満の処理温度で前記基板上に炭化タングステン膜を蒸着する工程と,
を備える方法。」

<相違点>
相違点3:本願発明26は,「搬送ガスを前記PECVD処理チャンバに供給する工程」を備えているのに対し,引用発明は,そのような工程を備えているかどうか不明な点。

相違点4:「前記誘電体前駆体ガスに対する前記金属前駆体ガスの割合」について,本願発明26は,「20%より大きい」のに対し,引用発明は,上記割合が不明な点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み相違点4から検討する。
前記1(2)アで検討したとおり,引用文献1には,基板の処理温度範囲が約200℃?約550℃であることは記載されているものの,炭化タングステン膜を形成するための具体的な実施例(製造条件)は記載されていない。
そして,引用文献2?4のいずれにも,プラズマ強化CVD-タイププロセスによって基板表面に炭化タングステン膜を形成する際に,メタン(CH_(4))である炭素含有化合物に対するWのフッ化物である金属化合物の割合を20%より大きくすることについては,何ら記載も示唆もされていない。また,プラズマ強化CVD-タイププロセスによって基板表面に炭化タングステン膜を形成する際に,メタン(CH_(4))である炭素含有化合物に対するWのフッ化物である金属化合物の割合を20%より大きくすることが,本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって,引用発明に引用文献2?4に記載された発明を適用したとしても,相違点4に係る本願発明26の構成は得られない。
よって,相違点3について判断するまでもなく,本願発明26は,引用発明及び引用文献2?4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1,2,5?7,9は,引用発明ではないし,また,本願発明1?26は,引用文献1?4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-07-14 
出願番号 特願2016-53235(P2016-53235)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 智之鈴木 聡一郎  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 河本 充雄
小川 将之
発明の名称 ハードマスクのための金属誘電体膜の蒸着  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  
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