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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B25J
管理番号 1376345
審判番号 不服2019-3859  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-27 
確定日 2021-07-21 
事件の表示 特願2015-547223「運動実演の装置並びにシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月19日国際公開、WO2014/091378、平成28年3月3日国内公表、特表2016-506305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年12月12日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成29年10月27日付けで拒絶理由が通知され、それに対して、平成30年5月2日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月23日付けで拒絶査定がなされ、平成31年2月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。

第2.平成31年2月26日付けの特許請求の範囲を補正する手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成31年2月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成31年2月26日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年5月2日付けの手続補正書により補正された)下記Aに示す記載を、下記Bに示す記載へと補正するものである。

A 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
身体運動を実演するプログラムが組み込まれたロボットであって、運動の音楽伴奏が恒久的に固定されることなく取り替えられ、運動の音楽伴奏は公開された音楽から構成され、音楽伴奏のリズムが運動に一致することを特徴とするロボット。」

B 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「 【請求項1】
以下を含む、身体運動を実演するようにプログラムされたロボットを含むシステム。
a:マイクロコントローラー
b:メモリ
c:モーションパーツ
d:スピーカー
e:リモコン
マイクロコントローラ、メモリ、動作部品およびスピーカーは、恒久的に接続されて1つのハウジング内に収容されている。
前記ロボットはインターネットを介して遠隔サーバに接続することができ、遠隔サーバのデータベースとロボットのメモリとの間でデータを交換することができます。
データベースから身体運動の音楽伴奏が提供され、その音楽の音楽伴奏は公開された音楽からなり、その音楽伴奏はリズムを有し、その音楽伴奏は恒久的に固定されておらず入れ替えることができる。そのリズムは一分間当たりの拍数を使用する計算により決定され、その音楽伴奏は前記の運動に対して適切なリズムを持つデータベースから提供される音楽伴奏からの運動と照合され。」(アンダーラインは補正箇所を示す。)

本件補正によって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る「ロボット」の発明が「ロボットを含むシステム」の発明とされ、さらに、「以下を含む」として、
「a:マイクロコントローラー
b:メモリ
c:モーションパーツ
d:スピーカー
e:リモコン
マイクロコントローラ、メモリ、動作部品およびスピーカーは、恒久的に接続されて1つのハウジング内に収容されている。
前記ロボットはインターネットを介して遠隔サーバに接続することができ、遠隔サーバのデータベースとロボットのメモリとの間でデータを交換することができます。
データベースから身体運動の音楽伴奏が提供され、その音楽の音楽伴奏は公開された音楽からなり、その音楽伴奏はリズムを有し、その音楽伴奏は恒久的に固定されておらず入れ替えることができる。そのリズムは一分間当たりの拍数を使用する計算により決定され、その音楽伴奏は前記の運動に対して適切なリズムを持つデータベースから提供される音楽伴奏からの運動と照合され。」
が追加された。

2.本件補正の適否についての判断
2-1.本件補正の目的
(1)請求項1に関する補正について
本件補正における請求項1に関する補正の内容について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1において追加された事項のうち、
「a:マイクロコントローラー
b:メモリ
c:モーションパーツ
d:スピーカー
e:リモコン
マイクロコントローラ、メモリ、動作部品およびスピーカーは、恒久的に接続されて1つのハウジング内に収容されている。」
という事項及び
「前記ロボットはインターネットを介して遠隔サーバに接続することができ、遠隔サーバのデータベースとロボットのメモリとの間でデータを交換することができます。」
という事項については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の「ロボット」について限定を付加するものであって、補正後の請求項1に係る発明は補正前の請求項1に係る発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。

しかしながら、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1において追加された事項のうち、
「ロボットを含むシステム」
及び
「データベースから身体運動の音楽伴奏が提供され、その音楽の音楽伴奏は公開された音楽からなり、その音楽伴奏はリズムを有し、その音楽伴奏は恒久的に固定されておらず入れ替えることができる。そのリズムは一分間当たりの拍数を使用する計算により決定され、その音楽伴奏は前記の運動に対して適切なリズムを持つデータベースから提供される音楽伴奏からの運動と照合され。」
については、「ロボット」以外の「データベース」を含む「システム」に関する事項である。

そうすると、このような補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでなく、さらに、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明、請求項の削除を目的とするものでもない。

(2)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2.独立特許要件
上記のとおり、本件補正の目的は、特許請求の範囲の減縮に該当しないが、仮に、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下 、「本件補正発明」という。)は、以下の理由により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(1)特許請求の範囲の請求項1-7の記載の明確性要件
本件補正発明は、以下に述べるように、本件補正後の請求項1?7の記載に不備があり、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)を満たしていないものであるから、本件補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

ア.請求項1の「そのリズムは一分間当たりの拍数を使用する計算により決定され」という記載について、「一分間当たりの拍数を使用する計算」がどのようなものであるのかが不明である。例えば、何の「一分間当たりの拍数」をどのように「使用」してどのような「計算」によりリズムが「決定」されるものであるのか不明である。

イ.請求項1の「その音楽伴奏は前記の運動に対して適切なリズムを持つデータベースから提供される音楽伴奏からの運動と照合され。」という記載について、
まず、「前記の運動に対して適切なリズムを持つ」という修飾句が「データベース」と「データベースから提供される音楽伴奏」のいずれを修飾するのかが不明である。
仮に「データベース」を修飾するとした場合、「データベース」が持つ「前記の運動に対して適切なリズム」とは、特に「データベースから提供される音楽伴奏」とどのような関係をもつものであるのか不明である。
他方、「データベースから提供される音楽伴奏」を修飾するとした場合、該「音楽伴奏」は「前記の運動に対して適切なリズムを持つ」とされているのにもかかわらず、「・・・データベースから提供される音楽伴奏からの運動」に対して、改めて「照合され」ることの意義が不明である。
また、「・・・データベースから提供される音楽伴奏からの運動」は、「提供される音楽伴奏」からどのように関連づいたどのような「運動」であるのかが不明であり、その意味内容が不明である。
さらに、「音楽伴奏」が上記の「運動」とどのような観点で「照合され」、当該「照合」が請求項1に記載の他の事項とどのような関係にあるのか(他の事項にどのように反映されるのか等)が不明である。
なお、上記の記載の「照合され。」は、「照合される。」の誤記と認める。

ウ.請求項1の「その音楽伴奏はリズムを有し、・・・そのリズムは一分間当たりの拍数を使用する計算により決定され、その音楽伴奏は前記の運動に対して適切なリズムを持つデータベースから提供される音楽伴奏からの運動と照合され。」という記載について、「一分間当たりの拍数を使用する計算により決定され」た「音楽伴奏」の「リズム」と、「前記の運動に対して適切なリズムを持つデータベースから提供される音楽伴奏」の「リズム」の関係が不明である。

エ.上記ア.?ウ.については、請求項1を引用する請求項2-4においても同様に記載に不備がある。また、請求項5-7においても、上記ア.-ウ.と同様な記載があり、請求項1と同様に記載に不備がある。

(2)小括
したがって、仮に、本件補正の目的が、特許請求の範囲の減縮に該当するとしても、本件補正発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないため、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

2-3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する上に、仮に、本件補正の目的が同法同条同項第2号に該当するとしても、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明の内容
平成31年2月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成30年5月2日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.1.Aに記載したとおりである。

2.引用文献記載の発明
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2005-231012号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

「【0013】
さらに本発明においては、胴体部に多段階の関節機構を有する複数の腕部がそれぞれ連結されたロボット装置の制御方法において、供給される音楽データに基づく音楽からリズムを抽出する第1のステップと、リズムに基づいて各腕部の平均移動速度の範囲を決定する第2のステップと、各腕部が動作する際に描く軌道を当該各腕部の平均移動速度と共に動作パターンとして予め記憶しておき、複数の動作パターンの中から決定された範囲に合う動作パターンを選択的に読み出す第3 のステップとを設けるようにした。
【0014】
この結果ロボット装置では、ユーザが選曲した音楽のリズムに合う最適な動作パターンに応じたダンスを踊ることができ、かくして従来のようにユーザが事前にロボット装置に音楽ごとにその音楽に応じた動作パターンを教示させておくといった手間や煩雑さを回避することができる。
【0015】
さらに本発明においては、撮像結果として得られるフレーム画像内に含まれる顔画像及び手画像を認識した後、当該顔画像に対する手画像の相対位置関係に基づいて、フレーム画像内を移動する手画像の軌道を検出し、当該検出された手画像の軌道をロボット用のサイズに変換して得られた動作パターンを記憶しておくようにした。
【0016】
この結果ロボット装置では、ユーザが所望する動作パターンをユーザ自身の動きを画像認識しながらロボット自身の動きとして学習することができ、かくして従来のようにユーザがロボット装置の手足を直接手にとりながら教示する方法を事前に行うといった手間や煩雑さを回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
上述のように本発明によれば、胴体部に多段階の関節機構を有する複数の腕部がそれぞれ連結されたロボット装置において、各腕部が動作する際に描く軌道を当該各腕部の平均移動速度と共に動作パターンとして記憶する動作記憶手段と、供給される音楽データに基づく音楽からリズムを抽出するリズム抽出手段と、リズムに基づいて各腕部の平均移動速度の範囲を決定する速度範囲決定手段と、決定された範囲に合う動作パターンを動作記憶手段から選択的に読み出す動作選択手段とを設けるようにしたことにより、ユーザが選曲した音楽のリズムに合う最適な動作パターンに応じたダンスを踊ることができ、かくしてエンターテインメント性を格段と向上させ得るロボット装置を実現できる。
【0018】
また本発明によれば、胴体部に多段階の関節機構を有する複数の腕部がそれぞれ連結されたロボット装置の制御方法において、供給される音楽データに基づく音楽からリズムを抽出する第1のステップと、リズムに基づいて各腕部の平均移動速度の範囲を決定する第2のステップと、各腕部が動作する際に描く軌道を当該各腕部の平均移動速度と共に動作パターンとして予め記憶しておき、複数の動作パターンの中から決定された範囲に合う動作パターンを選択的に読み出す第3のステップとを設けるようにしたことにより、ユーザが選曲した音楽のリズムに合う最適な動作パターンに応じたダンスを踊ることができ、かくしてエンターテインメント性を格段と向上させ得るロボット装置の制御方法を実現できる。」

「【0041】
ROM(Read Only Memory)73は、プログラムやデータを恒久的に格納する読み出し専用メモリである。ROM73に格納されるプログラム・コードには、ロボット1の電源投入時に実行する自己診断テスト・プログラムや、ロボット1の動作を規定する制御プログラムなどが挙げられる。
【0042】
ロボット1の制御プログラムには、CCDカメラ60やマイクロホン61などの各種センサからの入力を処理してシンボルとして認識する「センサ入力・認識処理プログラム」、短期記憶などの記憶動作を司りながらセンサ入力と所定の行動制御モデルとに基づいてロボット1の行動を制御する「行動制御プログラム」、行動制御モデルに従って各関節モータの駆動やスピーカ63の音声出力などを制御する「駆動制御プログラム」などが含まれる。」

「【0048】
(2)ロボット1のソフトウェア構成
図6は、ROM73(図5)に格納された制御プログラム群により構成されるロボット1の行動制御システム80の機能構成を模式的に示したものである。
【0049】
この行動制御システム80は、オブジェクト指向プログラミングを採り入れて実装されている。この場合、各ソフトウェアは、データとそのデータに対する処理手続きとを一体化させた「オブジェクト」というモジュール単位で扱われる。また各オブジェクトは、メッセージ通信と共有メモリを使ったオブジェクト間通信方法によりデータの受け渡しとInvokeを行うことができる。」

「【0061】
(3)動作記憶制御機能及びダンス選択制御機能に関する行動制御システム80の処理次にこのロボット1に搭載されている動作記憶制御機能及びダンス選択制御機能について説明する。このロボット1 には、ユーザの手の軌道(動作する際に描く一定の経路)に基づく動作パターンを予め動作データベース87(図6)に記憶しておく動作記憶制御機能と、BGM(background music)データベース88(図6)から選択的に再生される音楽の特徴に合わせて動作データベース87から最適な動作パターンを読み出して当該動作パターンに応じたダンスを踊らせるダンス選択制御機能とが搭載されている。そしてこれら動作記憶制御機能及びダンス選択制御機能は、主として図6について上述した行動制御システム80における各種処理により実現されている。」

「【0098】
(3-2)ダンス選択制御機能
またダンス選択制御機能に関する行動制御システム80の処理内容としては、図8に示すフローチャートRT2において、ユーザによって選曲された音楽のリズム(又はビート)を抽出するリズム抽出処理(ステップSP11)と、当該抽出した音楽のリズムに基づいてロボット1の左右の手の平均移動速度の範囲を決定した後、その範囲に合う動作パターンを選択して出力する動作選択処理(ステップSP12)とに分類される。
【0099】
まずリズム抽出処理における行動制御システム80では、BGM選択部89がユーザが指定した音楽を表す音楽データS11をBGMデータベース88から読み出して行動選択制御部85及び出力管理部86にそれぞれ送出する。
【0100】
行動選択制御部85は、BGM選択部89によって選択された音楽データS11がBGMデータベース88から与えられると、当該音楽データS11に基づく音楽の基本要素のうちリズムを抽出する。
【0101】
基本的に音楽は、メロディ(旋律)、ハーモニ(和音)及びリズム(拍子)の3種類の要素から構成される。このうちリズムは、連続する一定の拍子を意味し、当該拍子の速度(テンポ)を1分間に4分音符がいくつ入るかを単位として表すようになされている。
【0102】
具体的に行動選択制御部85は、BGMデータベース88から読み出した音楽データS11をローパスフィルタ(図示せず)を介して低周波数成分(数〔Hz〕?数十〔Hz〕)検出した後、所定レベルに設定した閾値を基準として、当該音楽データS11における信号レベルのピークの立ち上がりを順次検出する。
【0103】
続いて行動選択制御部85は、得られた信号レベルの各ピークの立ち上がり時点から所定期間だけデータを無視する期間(ピーク幅)を設定し、そのピーク幅を除いた信号波形を解析するようにして、各ピーク同士の間隔(ピーク間隔)を計算する。
【0104】
このようにして行動選択制御部85は、音楽データS11における信号レベルのピーク間隔の平均値を求めた後、当該ピーク間隔の平均値を表す周波数をリズム(拍子)として得ることができる。
【0105】
続いて動作選択処理における行動制御システム80では、行動選択制御部85は、リズム抽出処理において抽出した音楽データS11に基づく音楽のリズムを、その周波数の値に従い複数のクラスに分類する。本実施の形態の場合、音楽のリズムの周波数が0Hz〕以上5〔Hz〕未満の範囲を第1のクラスと、5〔Hz〕以上10〔Hz〕未満の範囲を第2のクラスと、10〔Hz〕以上30〔Hz〕未満の範囲を第3のクラスと、30〔Hz〕以上の範囲を第4のクラスと分類する。
【0106】
そして音楽のリズムに対してロボット1の手の移動速度がどの程度が適当であるかをユーザが主観的に決定する必要があるため、行動選択制御部85は、音楽のリズムを周波数レベルで分類した4つのクラスについて、当該各クラスごとにロボット1の左右の手の平均移動速度の範囲を割り当てる。すなわち本実施の形態の場合、ロボット1の左右の手の平均移動速度を、第1のクラスには0〔cm/sec〕以上2〔cm/sec〕未満の範囲を、第2のクラスには2〔cm/sec〕以上4〔cm/sec〕未満の範囲を、第3のクラスには4〔cm/sec〕以上8〔cm/sec〕未満の範囲を、第4 のクラスには8〔cm/sec〕以上の範囲をそれぞれ割り当てるようになされている。
【0107】
このように音楽のリズムとロボット1の左右の手の平均移動速度とは図9に示すような対応表として表わされる。この対応表によると、例えば現在の音楽のリズムが8〔Hz〕と検出された場合、ロボット1の左右の手の平均移動速度が、第2 のクラスすなわち2〔cm/sec〕以上4〔cm/sec〕未満の範囲にある動作パターンを選択すれば良いことがわかる。
【0108】
やがて行動選択制御部85は、動作データベース87に記憶されている複数の動作パターンデータS10のうち、現在の音楽のリズムに対応するロボット1 の左右の手の平均移動速度の範囲を決定した後、当該範囲内にある平均移動データを含む動作パターンデータS10を乱数を用いてランダムに選択して読み出す。
【0109】
かくして出力管理部86は、BGM選択部89によって選択された音楽データS11がBGMデータベース88から与えられると共に、行動選択制御部85から動作パターンデータS10が与えられると、この音楽データS11に基づく音楽を再生すると同時に当該音楽のリズムに合う最適な動作パターンを再現させることができる。
【0110】
このように行動制御システム80では、上述のようなダンス選択制御機能を実行することにより、ユーザが指定した音楽のリズムに合わせて最適な動作パターンを選択して、当該動作パターンに応じたダンスを踊らせることができる。」

「【0111】
(4)本実施の形態による動作及び効果
以上の構成において、ロボット1では、ユーザの指示によりユーザ自身が左右の手を用いて所望の動作を行うと、当該左右の手の軌道をユーザの顔に対する相対位置関係に基づいて検出した後、当該検出したユーザの左右の手の軌道をその平均移動速度と共にロボット用のサイズに変換して動作パターンとして記憶しておく。
【0112】
このようにロボット1では、ユーザが所望する動作パターンをユーザ自身の動きを画像認識しながらロボット自身の動きとして学習することができ、この結果、従来のようにユーザがロボット1の手足を直接手にとりながら教示する方法を事前に行うといった手間や煩雑さを回避することができる。
【0113】
続いてロボット1は、ユーザの操作に応じて所望の音楽が選曲されると、当該選曲された音楽のリズムを抽出してそのリズムに基づいてロボット1の左右の手の平均移動速度の範囲を決定した後、その範囲に合う動作パターンを予め記憶された動作パターンの中から選択することにより、ユーザが選曲した音楽のリズムに合う最適な動作パターンに応じたダンスを踊ることができる。
【0114】
例えばリズムの速い曲であればロボット1の手先の平均移動速度が比較的速い動作パターンを選択する一方、リズムの遅い曲であればロボット1の手先の平均移動速度が比較的遅い動作パターンを選択することが可能となる。
【0115】
このようにロボット1では、ユーザが選曲した音楽のリズムに合う最適な動作パターンに応じたダンスを踊ることができ、この結果、従来のようにユーザが事前にロボット1に音楽ごとにその音楽に応じた動作パターンを教示させておくといった手間や煩雑さを回避することができる。
【0116】
以上の構成によれば、このロボット1において、ユーザ自身が行った動作を画像認識しながら当該動作に応じた左右の手の軌道をその平均移動速度と共にロボット用のサイズに変換して動作パターンとして記憶しておき、選曲された音楽から抽出したリズムに基づいてロボット1の左右の手の平均移動速度の範囲を決定して当該範囲に合う動作パターンを選択するようにしたことにより、選曲した音楽のリズムに合う最適な動作パターンに応じたダンスを踊ることができ、この結果、ロボット1の踊りを面白くかつバリエーション豊富に発現させることができ、かくしてエンターテインメント性を格段と向上させ得るロボットを実現できる。」

「【0123】
また行動選択制御部(動作選択手段)85は、単に動作パターンを選択する以外にも、選択した動作パターンを逐次的に繋ぎ合わせるようにしても良い。例えば、ロボット1が音楽を再生しながら10秒ごとに当該音楽のリズムの抽出と動作パターンの選択とを行うようにすれば、より一層選曲された音楽の状態に合わせた細かい動作パターンの選択をすることができる。
【0124】
さらに上述のように本実施の形態においては、複数種類の音楽データS11を予め記憶しておく音楽記憶手段を、図6に示す行動制御システム80におけるBGMデータベース88から構成し、外部から指定された音楽に対応する音楽データS11をリズム抽出対象とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成のものを広く適用するようにしても良い。
【0125】
またBGMデータベース(音楽記憶手段)88には、予め音楽データS11を記憶させておく以外にも、例えばインターネット等のネットワークを介して種々の音楽サーバ( 図示せず) から必要に応じて複数種類の音楽データS11をダウンロードするように設定しておくようにしても良い。この結果、ロボット1では、記憶しておく音楽の種類をより豊富にすることができて非常に便利である。
【0126】
さらに上述のように本実施の形態においては、BGMデータベース(音楽記憶手段)88に予め音楽データS11を記憶させておくようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ロボット1の背景に流れる音楽をマイクロホン( 音楽収音手段)61を用いて収音した後、当該収音した音楽について行動選択制御部(リズム抽出手段)85がリアルタイムでリズムを抽出するようにしても良い。この結果、ロボット自体に音楽の再生機能を設ける必要がなくて済み、環境にかかわらずバリエーション豊富なダンスを踊らせることができる。」

「【図5】



「【図6】



「【図8】



「【図9】



(2)引用文献の認定事項
上記【0041】、【0042】及び【図5】の記載からみて、ROM73には、ロボット1の動作を規定する制御プログラムなどが格納され、制御プログラムには、ロボット1の行動を制御する行動制御プログラムなどが含まれていると認められる。
また、上記【0048】、【0049】、【図5】及び【図6】の記載からみて、ロボット1の行動制御システム80は、ROM73に格納された制御プログラム群により構成されるものであると認められる。
さらに、上記【0061】、【0106】-【0110】、【0113】-【0115】、【図6】、【図8】及び【図9】の記載からみて、行動制御システム80における各種処理により、動作データベース87に記憶されている複数の動作パターンから最適な動作パターンを選択して当該動作パターンに応じたダンスを踊るものであると認められる。
そうすると、上記(1)の記載事項からみて、引用文献には、ダンスを踊る(各種処理を行う行動制御システム80を構成する)制御プログラムが(ROM73に)格納されたロボット1、すなわち、「ダンスを踊る制御プログラムが格納されたロボット1」が記載されていると認められる。

(3)引用文献記載の発明
上記(1)の記載事項及び(2)の認定事項より、引用文献には、次の発明が記載されている。
「ダンスを踊る制御プログラムが格納されたロボット1であって、ダンスのBGMの再生がインターネット等のネットワークを介して種々の音楽サーバからダウンロードした複数種類のBGMの音楽データS11の再生とされ、ダンスのBGMの再生はインターネット等のネットワークを介して種々の音楽サーバからダウンロードした複数種類のBGMの音楽データS11から構成され、BGMの再生のリズムに合う最適な動作パターンでダンスを踊るロボット1。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3.本願発明と引用文献記載の発明との対比・判断
(1)対比
本願発明と引用文献記載の発明とを対比する。

ア.本願発明における「身体運動」について、「運動」は「体育・保健や楽しみのために身体を動かすこと。スポーツ。」(広辞苑 第六版)を意味することから、「身体運動」についても略同様な意味をもつものと解される。そして、「ダンス」は、音楽に合わせて身体を動かして楽しむことであるといえるから、引用文献記載の発明における「ダンス」は本願発明における「身体運動」及び「運動」に相当し、さらに、引用文献記載の発明における「ダンスを踊る」ことは本願発明における「身体運動を実演する」ことに相当する。

イ.また、引用文献記載の発明における「制御プログラム」は本願発明における「プログラム」に相当し、同様に、「制御プログラムが格納された」ことは「プログラムが組み込まれた」ことに、「ロボット1」は「ロボット」に、それぞれ相当する。

ウ.さらに、引用文献記載の発明における「BGMの再生」は、ロボット1のダンスの背景に音楽を流すことであるから、本願発明における「音楽伴奏」に相当し、引用文献記載の発明における「ダンスのBGMの再生がインターネット等のネットワークを介して種々の音楽サーバからダウンロードした複数種類のBGMの音楽データS11の再生とされ」ることは、かかる複数種類のBGMの音楽データS11にはインターネット等のネットワークを介して種々の音楽サーバから新たにダウンロードされたものも含まれるといえるから、本願発明における「恒久的に固定されることなく取り替えられ」ることに相当する。

エ.さらにまた、引用文献記載の発明における「インターネット等のネットワークを介して種々の音楽サーバからダウンロードした複数種類のBGMの音楽データS11」は、本願発明における「公開された音楽」に相当するといえる。

オ.さらにまた、引用文献記載の発明における(ロボット1が)「BGMの再生のリズムに合う最適な動作パターンでダンスを踊る」ことは、その際に、BGMの再生のリズムはダンスの踊りに一致していることになるから、本願発明における「音楽伴奏のリズムが運動に一致する」に相当する。

(2)小括
したがって、本願発明と引用文献記載の発明は、
「身体運動を実演するプログラムが組み込まれたロボットであって、運動の音楽伴奏が恒久的に固定されることなく取り替えられ、運動の音楽伴奏は公開された音楽から構成され、音楽伴奏のリズムが運動に一致するロボット。」
の点で一致し、相違点はない。

4.請求人の主張について
(1)請求人の主張の内容
請求人は、審判請求書において、引用文献(すなわち、原査定において引用文献1として拒絶の理由に引用された、上記特開2005-231012号公報)については、以下のように主張している。

ア.「はじめに、引用文献1は踊るロボットに関する記述であり、運動を実演するロボットとはまったく異なるものです。
身体運動とは、身体に対する影響が最大限肯定的なものとなるようにデザインされたものであり、ダンスはその性質を異としています。ダンスは、練習し技術を披露して、パフォーマンスの効果を示すためにデザインされたものです。ダンスにおいては、より複雑な(美しい)動きをすればするほど良いとされます。それとは対照的に運動は、非常にシンプルな動きの反復による非常に簡単な構成となっています。このようなダンスと運動の機械論的な相違は、素人の方だけでなく、芸術的スキルを有する人々の仕事にとっても非常に大切なことです。スキルを有する人にとっても、ダンスと身体運動の間のツール適応を行うことは、わかりやすくシンプルで直球的なことではありません。」

イ.「次に、テクノロジーの観点からより重要だと言えることは、引用文献1は運動の、あるいはましてやダンスの音楽伴奏に関することではなく、選択された音楽と一致するダンスに関連することです(音楽にダンスが伴う)。
この重要な違いをより明確に強調するために、我々はクレームを音楽伴奏と身体運動の一致に関するより正確な表現で修正している(「身体運動の音楽伴奏が提供される」)。これは、ロボットが選択された音楽に合ったダンスを踊る参考文献1と明確に区別するためです。特許文献1のロボットは、ユーザが選択したダンスに合わせて音楽の音楽伴奏を提供することを可能にしていない。
私の発明にとって、運動の音楽伴奏を変更可能なものにするという特徴は不可欠なものです。運動をしている人は何にも増して、自分がしたい運動がしたいものです。私の発明において可能となった異なる音楽が聞こえる状況下でそれができると、より楽しむことができます。一方、引用文献1では、音楽は最初に選択されたものであり、ロボットはその音楽にあったダンスを踊らなくてはなりません。
したがって要約すると、参考文献1は、「身体運動を実演するようにプログラムされた」、「それによって身体運動の音楽伴奏が提供される」、および「音楽伴奏が身体運動と一致する」という特徴を開示していない。(音楽に合った運動とは異なる)」

(2)請求人の主張の検討
しかしながら、これらの各主張については、以下のとおりである。

ア.上記(1)ア.の主張について
上記3.(1)ア.において説示したように、本願発明における「身体運動」及び「運動」には、引用文献記載の発明における「ダンス」も含まれると解するのが相当である。
請求人は、「身体運動」は、シンプルな動きを反復するだけの簡単なものであるのに対して、「ダンス」は、より複雑な美しい動きである旨を主張しているが、「身体運動」が簡単で、「ダンス」が複雑であるなどと限定して解するべき根拠がないから、請求人の上記(1)の主張は採用することができない。

イ.上記(1)イ.の主張について
まず、上記第2.のとおり、本件補正は却下されたため、本願発明(すなわち、本願の請求項1に係る発明)は、上記第2.1.Aに記載したとおりである。

請求人は、引用文献記載の発明におけるロボットは、ユーザーが選択した音楽に合わせたダンスを踊るのに対して、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明のロボットは、プログラムされた身体運動に合わせて音楽伴奏を変更可能とする旨を主張しているが、当該主張は本件補正を前提とするものであり、上記のとおり本件補正は却下されたから、当該主張は前提を欠くことになり、失当である。

したがって、請求人の上記(1)イ.の主張は採用することができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-02-03 
結審通知日 2021-02-09 
審決日 2021-03-03 
出願番号 特願2015-547223(P2015-547223)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B25J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 貞光 大樹  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 河端 賢
青木 良憲
発明の名称 運動実演の装置並びにシステム  
代理人 西尾 敬子  
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