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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1376349
審判番号 不服2019-14654  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-01 
確定日 2021-07-21 
事件の表示 特願2017-533730「ピロリドン誘導体、オリゴマー及びポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日国際公開、WO2016/040962、平成29年10月12日国内公表、特表2017-530192〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2015年9月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年9月14日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、出願後の主な手続の経緯は次のとおりである。
平成29年10月11日 :手続補正書の提出
平成30年 7月 2日付け:拒絶理由通知
平成31年 1月10日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 1年 6月27日付け:拒絶査定
令和 1年11月 1日 :審判請求書及び誤訳訂正書の提出
令和 2年 4月 3日 :上申書の提出
令和 2年 4月27日 :上申書の提出

第2 令和1年11月1日提出の誤訳訂正書による補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年11月1日提出の誤訳訂正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正による明細書の補正
(1)明細書の補正の内容
本件補正のうち、明細書についての補正は、【0038】の記載を以下のとおり補正するものである。

ア 本件補正前の【0038】の記載
「【0038】
[式中、
Qは、示されるように環に窒素を導入するために反応する第一級アミンを有する任意の実体であり;
Wは、N、O、S又は(CH_(2))nであり、ここでnは0又は1であり;
R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であり得るアミド基である)であり;そして
mは、1?4である]で表される、蛍光性環状アミド、環状尿素、環状ウレタン及び環状アミノアミド又はアミド尿素化合物を提供し、但し、前記式(I)の化合物は、存在するそのような環状アミド、尿素、ウレタン又は環状アミド実体を有さないQH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、蛍光する。」

イ 本件補正後の【0038】の記載
「【0038】
[式中、
Qは、示されるように環に窒素を導入するために反応する第一級アミンを有する任意の実体であり;
Wは、N、O、S又は(CH_(2))nであり、ここでnは0又は1であり;
R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル);又はポリマー上の部分であり得るアミド基であり;そして
mは、1?4である]で表される、蛍光性環状アミド、環状尿素、環状ウレタン及び環状アミノアミド又はアミド尿素化合物を提供し、但し、前記式(I)の化合物は、存在するそのような環状アミド、尿素、ウレタン又は環状アミド実体を有さないH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、蛍光する。」

(2)外国語書面の記載
明細書の【0038】に対応する外国語書面の記載は、以下のとおりである。
「wherein:
Q is any entity that has a primary amine that reacts to introduce a nitrogen in the ring as shown;
W is N, O, S or (CH_(2))_(n) where n is 0 or 1 ;
R^(2)is -C(0)OH; -C(0)0(C_(1)-C_(4) alkyl); -C(0)-NHR^(5) wherein R^(5) is C_(1)-C_(4) alkyl or an amido group that can be a moiety on a polymer; and m is 1-4;
with the proviso that the compound of Formula (I) fluoresces at least 10x the value of its base compound which is QH_(2) not having such cyclic amides, urea, urethanes or cyclic amino amide entities present.」(外国語書面第11頁第1?2行)

(3)明細書の補正の判断
上記(1)によれば、【0038】の補正は、
「R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であり得るアミド基である)であり」
であったのを
「R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル);又はポリマー上の部分であり得るアミド基であり」
とするものであるから、「ポリマー上の部分であり得るアミド基」が、補正前は、R^(5)の選択肢として記載されていたのをR^(2)の選択肢に変更するものといえる。
一方、外国語書面の対応する記載は、上記(2)のとおり、「R^(2) is -C(0)OH; -C(0)0(C_(1)-C_(4) alkyl); -C(0)-NHR^(5) wherein R^(5) is C_(1)-C_(4) alkyl or an amido group that can be a moiety on a polymer」であるから、「ポリマー上の部分であり得るアミド基」である「an amido group that can be a moiety on a polymer」は、外国語書面において、R^(5)の選択肢として記載されており、R^(2)の選択肢としては記載されていない。
したがって、「ポリマー上の部分であり得るアミド基」は、R^(5)の選択肢として翻訳されるべきであり、補正前は、R^(5)の選択肢として記載されていたのをR^(2)の選択肢に変更する補正である【0038】の補正は、誤訳の訂正を目的とした補正とはいえない。
そして、R^(2)の選択肢として「ポリマー上の部分であり得るアミド基」は、この出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本願当初明細書等」という。)には、記載されておらず、当業者の技術常識によれば、本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるといえる理由もない。
したがって、明細書の【0038】についての補正は、誤訳の訂正を目的としたものではなく、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内でした補正でもないから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(4)明細書の補正についての請求人の主張
請求人は、誤訳訂正書の【訂正の理由等】の(訂正の理由1)において、以下のとおり、明細書の【0038】の補正は、誤訳の訂正を目的としたものであると主張している。

「国際公開第2016/040962パンフレットの第11頁第1?2行には、「R^(2) is -C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4) alkyl); -C(O)-NHR^(5) wherein R^(5) is C_(1)-C_(4) alkyl or an amido group that can be a moiety on a polymer」と記載されていたところ、誤訳訂正前は「R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であり得るアミド基である)であり」と翻訳していた(本願明細書の段落[0038]に対応))。しかしながら、「ポリマー上の部分であり得るアミド基」はR^(2)の選択肢の1つであるから、このことを明確にするために、「R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であり得るアミド基である)であり」を、『R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル);又はポリマー上の部分であり得るアミド基であり』に誤訳訂正する。「ポリマー上の部分であり得るアミド基」はR^(2)の選択肢の1つであることは、本願の図3Cの化合物(43)、(44)、及び図3Dの化合物(54)によっても支持されている。」

しかし、外国語書面に記載された、「ポリマー上の部分であり得るアミド基」である「an amido group that can be a moiety on a polymer」は、R^(5)の選択肢として記載されており、R^(2)の選択肢としては記載されていないから、【0038】の補正が誤訳の訂正を目的としたものとはいえないことは、上記(3)のとおりである。
そして、請求人が主張する図3Cの化合物(43)、(44)、及び図3Dの化合物(54)の化学構造は以下のとおりであるところ、

化合物(43)と(54)は、ポリマーでさえないから、いずれも、R^(2)が「ポリマー上の部分であり得るアミド基」である化合物と理解することはできない。また、化合物(44)は、ポリマーの繰り返し単位のような構造が記載されているが、この個別具体的な化合物(44)が記載されていることに基づいて、化合物(44)以外のR^(2)が「ポリマー上の部分であり得るアミド基」である化合物が記載されていると認識することはできない。
したがって、請求人の主張は、採用できない。

(5)明細書の補正についての小括
以上のとおり、本件補正による明細書【0038】の補正は、誤訳の訂正を目的としたものではなく、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内でした補正でもないから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

2.本件補正による特許請求の範囲の補正
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含むものであるところ、補正後の請求項1の記載は、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
下記式:
【化1】

[式中、
Qは、ピロリドン環に窒素原子を与える少なくとも1つの第一級アミンを含む化合物の残基であり、
Qは、アミン末端樹枝状ポリマー;アミン末端デンドロン;(C_(1)-C_(20)アルキル)アミン;(C_(1)-C_(20)ヒドロキシアルキル)アミン;(C_(1)-C_(20)アルキル)エーテルアミン;(C_(6)-C_(18)アリール)アミン;(C_(6)-C_(14)アリールC_(1)-C_(4)アルキル)アミン;X-Z-N-(ここで、Xは、H、-OH、-NH_(2)、-SH又は-CO_(2)Hであり、Zは、C_(1)-C_(18)アルキル、(C_(6)-C_(12))アリール(C_(6)-C_(12))アリーレン、又は(C_(6)-C_(12))アルキルアリーレンである);ベンジルアミン、下記式:
【化2】

(式中、R^(2)は-NH_(2)、-OH又は-C(O)OHであり、そしてR^(3)及びR^(4)は独立に、-H又はC_(1)-C_(4)アルキル又は-CH_(2)OHである)の化合物;第一級アミンを有する脂肪/親油性物質;第一級アミンを有するタンパク質;第一級アミンのリジン、グリシン、トリプトファン、チロシン又はフェニルアラニンを有するアミノ酸;図3A及び図3Bに記載の小有機分子由来の第一級アミン;及び、線状、架橋、分岐もしくは樹枝状ポリマー、又はナノ粒子の表面上の第一級アミン、から成る群より選ばれ;
Pyrはピロリドン部分であり;
xは、1?Qに存在する第一窒素の総数であり;
R^(2)は、-C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル); -C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル);C(O)-NH_(2)、又は-C(O)NH-ポリマーであり;そして
但し、総ピロリドン部分の分子量は、100KDa以下であり、そして式(IV)の化合物は15nm以下である。]
で表される化合物を蛍光マーカーとして含む組成物。」

(2)本件補正前の請求項2の記載
本件補正後の請求項1は、本件補正前の、平成31年1月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2を補正するものであるところ、当該請求項2の記載は、次のとおりである。

「【請求項2】
下記式:
【化2】

[式中、
Qは、ピロリドン環に窒素原子を与える少なくとも1つの第一級アミンを含む化合物の残基であり;
Pyrはピロリドン部分であり;
xは、1?Qに存在する第一窒素の総数であり;
R^(2)は、-C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル); -C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であってもよいアミド基である)であり;そして
但し、式(IV)の分子量は、100KDa以下であり、そして式(IV)の化合物は15nm以下である。]
で表される化合物を蛍光マーカーとして含む組成物。」

(3)補正事項
上記(1)、(2)によれば、本件補正は、以下の補正事項A、Bを含む。

(補正事項A)
式(IV)におけるQの定義について、
「Qは、ピロリドン環に窒素原子を与える少なくとも1つの第一級アミンを含む化合物の残基であり;」
であったのを
「Qは、ピロリドン環に窒素原子を与える少なくとも1つの第一級アミンを含む化合物の残基であり、
Qは、アミン末端樹枝状ポリマー;アミン末端デンドロン;(C_(1)-C_(20)アルキル)アミン;(C_(1)-C_(20)ヒドロキシアルキル)アミン;(C_(1)-C_(20)アルキル)エーテルアミン;(C_(6)-C_(18)アリール)アミン;(C_(6)-C_(14)アリールC_(1)-C_(4)アルキル)アミン;X-Z-N-(ここで、Xは、H、-OH、-NH_(2)、-SH又は-CO_(2)Hであり、Zは、C_(1)-C_(18)アルキル、(C_(6)-C_(12))アリール(C_(6)-C_(12))アリーレン、又は(C_(6)-C_(12))アルキルアリーレンである);ベンジルアミン、下記式:
【化2】

(式中、R^(2)は-NH_(2)、-OH又は-C(O)OHであり、そしてR^(3)及びR^(4)は独立に、-H又はC_(1)-C_(4)アルキル又は-CH_(2)OHである)の化合物;第一級アミンを有する脂肪/親油性物質;第一級アミンを有するタンパク質;第一級アミンのリジン、グリシン、トリプトファン、チロシン又はフェニルアラニンを有するアミノ酸;図3A及び図3Bに記載の小有機分子由来の第一級アミン;及び、線状、架橋、分岐もしくは樹枝状ポリマー、又はナノ粒子の表面上の第一級アミン、から成る群より選ばれ;」
と補正する。

(補正事項B)
式(IV)におけるR^(2)の定義について、
「R^(2)は、-C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル); -C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であってもよいアミド基である)であり;」
であったのを
「R^(2)は、-C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル); -C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル);C(O)-NH_(2)、又は-C(O)NH-ポリマーであり;」
と補正する。

(4)補正事項Aの補正の適否
ア 本願当初明細書等の記載
本願当初明細書等には、次の事項が記載されている。(以下、「摘記(A-1)」?「摘記(A-5)」という。)

(A-1)「【請求項1】
下記式:
【化1】

[式中、
Qは、示されるように環に窒素を導入するために反応する第一級アミンを有する任意の実体であり;
Wは、N、O、S又は(CH_(2))nであり、ここでnは0又は1であり;
R^(2)は、-C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル); -C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であり得るアミド基である)であり;そして
mは、1?4である。]
で表される、蛍光性環状アミド、環状尿素、環状ウレタン及び環状アミノアミド又はアミド尿素化合物(但し、前記式(I)の化合物は、存在するそのような環状アミド、尿素、ウレタン又は環状アミド実体を有さないQH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、蛍光する)。
【請求項2】
その発光が、400-850nmの可視近赤外領域にある、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式:
【化2】

[式中、
Qは、式(IV)の化合物中に窒素原子を導入するために反応する少なくとも1つの第一級アミンを有し、そしてピロリドン部分の一部になる任意の実体であり;
xは、1?Qに存在する第一窒素の総数であり;
R^(2)は、-C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル); -C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であり得るアミド基である)であり;そして
但し、総ピロリドン部分は、100KDa以下の分子量を有し、そして式(IV)の化合物は15nm以下である。]
で表される化合物。
【請求項4】
インビボ生物学的注入及びイメージング用途のために適切である、固有蛍光(IF)、低毒性及び低補体活性化性質を示す、式(IV)のMW調節されたピロリドン部分含有の式(IV)のポリマー組成物である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が細胞に対して非免疫原性である、請求項1又は4に記載の化合物。
【請求項6】
R^(2)が、-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル)又は-C(O)OHである、請求項1又は3に記載の化合物。
【請求項7】
Wが(CH_(2))n(ここで、nは1であり);そしてmは1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Qが、アミン末端樹枝状ポリマー又はアミン末端デンドロンである、請求項1又は3に記載の化合物。
【請求項9】
Qが、(C_(1)-C_(20)アルキル) アミン、 (C_(1)-C_(20)ヒドロキシルアルキル) アミン、(C_(1)-C_(20)アルキルエーテル) アミン、C_(6)-C_(14)アリール又は (C_(6)-C_(14)アリールC_(1)-C_(4)アルキル) アミンである、請求項1又は3に記載の化合物。
【請求項10】
下記式(III):
【化3】

[式中、
Rは、C_(1)-C_(18)アルキル、C_(6)-C_(12)アリール、C_(6)-C_(12)アリーレン, (C_(1)-C_(12)アルキル) C_(6)-C_(12)アリーレンであり;そして
X=Yは独立に、H、-OH、-NH_(2、)-SH、-CO_(2)H、アルキン、アジド(すなわち、クリック試薬)、又は任意の適切な反応性部分/誘導体であり、それらは所望の/標的化された基質、例えばペプチド、タンパク質、抗体、酵素、ポリ核酸、薬物、ナノ粒子、微粒子、リポソーム、ミセル、デンドリマー、デンドロン、デンドリマーソーム(dendrimersomes)、医薬品、又は他の生物学的実体又はそれらのフラグメントへのピロリジン化試薬を結合するために必要とされる。]
を有する、活性化されたピロリジノン化試薬が製造される、請求項1又は3に記載の化合物。
【請求項11】
-CO_(2)Hの医薬的に許容できる塩及びエステルがまた含まれる、請求項1、4及び10に記載の化合物。
【請求項12】
蛍光により種々のシステム、試験、植物又は動物及びヒトにおける部分及び流体を追跡し、そして請求項1に記載の式(I)の化合物を用いて蛍光により前記部分の位置をモニターするか、又は検出するための方法。
【請求項13】
請求項4又は10に記載の化合物を、PEG化においてPEGの代わりに使用する方法。
【請求項14】
下記式:
【化4】

[式中、
Q及びWは、請求項1の式(I)におけるように定義され;そしてxは2又は3である]
の4?14の成分を有する蛍光大環状アミド。
【請求項15】
蛍光により種々のシステム、試験、植物又は動物及びヒトにおける部分及び流体を追跡し、そして請求項14に記載の式(II)の化合物を用いて蛍光により前記部分の位置をモニターするか、又は検出するための方法。
【請求項16】
請求項3に記載の式(IV)の化合物の調製方法であって、請求項3に記載のQと、任意にはメタノール中、ITA、ITE、又はDMIの試薬とを、種々の第一級アミン部分と試薬との間の所望の化学量論比で、反応させ、ここで得られる式(IV)の化合物は、ピロリドン部分の100KDa以下、好ましくは50KDa以下の全分子量を有し、そして式(IV)の化合物のサイズが15nm以下、好ましくは10nm以下である、方法。」(特許請求の範囲)

(A-2)「【発明の概要】
【0036】
発明の簡単な概要
本発明は、下記式:
【0037】
【化4】

【0038】
[式中、
Qは、示されるように環に窒素を導入するために反応する第一級アミンを有する任意の実体であり;
Wは、N、O、S又は(CH_(2))nであり、ここでnは0又は1であり;
R^(2)は、-C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル); -C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であり得るアミド基である)であり;そして
mは、1?4である]で表される、蛍光性環状アミド、環状尿素、環状ウレタン及び環状アミノアミド又はアミド尿素化合物を提供し、但し、前記式(I)の化合物は、存在するそのような環状アミド、尿素、ウレタン又は環状アミド実体を有さないQH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、蛍光する。
【0039】
その発光が400-850nmの可視近赤外領域にあり、そして細胞に対して非免疫原性である、式(I)の化合物。
【0040】
式(I)の好ましい化合物は、R^(2)が、-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル)又は-C(O)OHであり、特にここでアルキルはメチルであり;Wが(CH_(2))n(ここで、nは1である)であり;そしてmが1であり、特に好ましくは、Qがアミン末端樹枝状ポリマー又はアミン末端デンドロンであるそれらの化合物である。Q中のいくつかのアミンは、(C_(1)-C_(20)アルキル) アミン、 (C_(1)-C_(20)ヒドロキシルアルキル) アミン、(C_(1)-C_(20)アルキルエーテル) アミン、C_(6)-C_(14)アリール又は(C6-C_(14)アリールC_(1)-C_(4)アルキル) アミンである。
【0041】
式(I)の化合物は、蛍光により種々のシステム、試験、植物又はヒトにおける部分及び流体を追跡し、そしてその蛍光により前記部分の位置をモニターするか、又は検出する方法に使用される。従って、それらの化合物は、トレーサー、バイオセンサー、又はイメージング剤として作用し、光退色を妨げるか、又はLEDディスピレイを増強することができる。
・・・
【0046】
式(I)における適切なQ部分であるいくつかの第一級アミンは、X-Z-N-であり、ここでXは、-NH_(2)、-OH、又は-C(O)OHであり、そしてZは、次のものである:(C_(1)-C_(18)アルキル)、 (C_(6)-C_(12))アリール、 (C_(6)-C_(12)) アリーレン、又は(C_(6)-C_(12)) アルキルアリーレン、例えば (C_(1)-C_(20)アルキル)アミン; (C_(1)-C_(20)ヒドロキシルアルキル)アミン; (C_(1)-C_(20)アルキル) エーテルアミン; ベンジルアミン、又は下記式:
【0047】
【化6】

【0048】
[式中、R^(2)は-NH_(2)、-OH又は-C(O)OHであり、そしてR^(3)及びR^(4)は独立に、-H又はC_(1)-C_(4)アルキル又は-CH_(2)OHである];その表面上に第一級アミンを有する、デンドリマー、デンドロン又は樹枝状ポリマー;環化される場合、蛍光ミセルをもたらす両親媒性界面活性剤を形成することができる、第一級アミンを有する脂肪/親油性実体、第一級アミン又は一般的アミン酸、例えばリシン、グリシン、トリプトファン、チロシン及び/又はフェニルアラニンの何れかを有するタンパク質。
【0049】
式(I)実体において適切なQ部分である第一級アミンは、(1)小有機分子、(2)4つの主要ポリマー構造型、例えば線状、架橋された、分岐及び樹枝状ポリマー型の何れかに由来する、オリゴマー及びポリマー(DENDRIMERS, DENDRONS, AND DENDRITIC POLYMERS, Tomalia, D.A., Christensen, J.B. and Boas, U. (2012) Cambridge University Press, New York, N.Y.)(両有機及び無機組成物(すなわち、シリカ、無機酸化物、金属カルコゲナイド、フラーレン、等)を含む)、又は(3)(Chapter 8, DENDRIMERS, DENDRONS, AND DENDRITIC POLYMERS, Tomalia, D.A., Christensen, J.B. and Boas, U. (2012) Cambridge University Press, New York, N.Y.)に記載されるような、定義されたソフト又はハードナノ要素(すなわち、ナノ粒子)の何れかにより提示され得る。」(【0036】?【0049】)

(A-3)「【0155】
実施例1:第一級アミンからのN-アルキル-4-カルボメトキシピロリジノンの一般的調製
カルボン酸に対して直交反応性を示す種々の官能基を含むモノ第一級アミン(すなわち、-NH_(2))を、対応する4-カルボン酸ピロリドンに、高収率で転換することができる。それらの生成物は、Dean-Stark装置を用いて、約125℃で、トルエンの存在下で種々の化学量論的量の第一級アミン及びカルボン酸を加熱することにより得られた。予測される化学量論的量の水の除去の後(約2?3時間後)、生成物を、UV線(265?395nm)に暴露される場合、若干のレベル/程度の蛍光を示す、吸湿性の粉末球固形物又は脆いガラス状物として得る。生成物を、FTIR、^(1)H-NMR、^(13)C-NMR及びUV / 可視蛍光測定法により特徴づけた(図3C、化合物26-37、表2)。
【0156】
化学量論:[第一級アミン部分:ITA]=[1:1]は、式(I)の化合物を提供し、ここでWは1であり;R^(2)は-CO_(2)Hであり;mは1であり;そしてQはX-R-Nであり;そして[第一級アミン部分:ITA/ITE]=[4:1]は、式(I)の化合物を提供し、ここでWは1であり;R^(2)は-CO_(2)Hであり;mは1であり;そしてQはR(X)Nであり、ここでRはC_(2)-C_(18)アルキレン、-(NHCH_(2)CH_(2))n、アリーレン、アルキルアリーレン、オリゴマー、大環状、融合された二環、線状ポリ(アミド)であり、nは0、1?4であり;そしてXは、-OH、-NR^(2)、NHR、-SH、-CO_(2)Hである。それらの化合物をさらに反応せしめ、線状ポリマーにピロリドン環を含むポリマーを、又は2つのピロリドン部分を含む複素環式実体として形成することができる。より特定には、反応は次の通りに記載され得る。
【0157】
15mlのメタノールに溶解された0.5mmolの第一級アミンの溶液に、50mmolのDMI(7.9g)を添加した。溶液を、RTで一晩、攪拌し、そして次に、溶媒を、真空下での蒸留により除去し、所望の生成物を得た。図3C上の構造、化合物番号26-37、及び表2中のデータを参照のこと。
【0158】
それらの中間体の続く反応は、PEG及びポリ(オキサゾリン)タイプのオリゴマーに類似すると思われる、予測される線状-ポリ(アミド-ピロリドン)(PAMPyr)高分子を生成する。例えば、モノ-BOC-NR(X)NH_(2)開始剤単位、続くDMI及び過剰のNH_(2)R(X)NH_(2)による線状反復成長により、数回の反復の後に下記に示される一般構造を有する高分子が得られる:
【0159】
【化22】

【0160】
しかしながら、得られる主要生成物タイプは、Rのスペーサー長に依存すると思われる。スペーサー長Rが長い場合、得られる主要生成物は、線状-ポリ(アミド-ピロリドン)(PAMPyr)高分子であると思われる。スペーサーRが分子内環形成に適している場合、図3Dに示されるような融合された二環式ピロリドン生成物及び/又は大環状ピロリドン生成物(化合物40及び41)のいずれかを得ることができる。」(【0155】?【0160】)

(A-4)「【0249】
下記表2は、それらの一般的手順により製造される式(I)の化合物についてのデータを提供する。それらの化合物の化学構造は、図3A-Dに示され;比較例構造は図4に示される。さらに、それらの化合物について得られた蛍光が提供される。
【0250】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

」(【0249】?【0250】)

(A-5)「

」(【図3A】?【図3D】)

イ 補正事項Aの判断
(ア)補正事項Aにより追加された式(IV)のQの選択肢
上記(3)によれば、補正事項Aは、式(IV)のQの選択肢として、以下の(a)?(o)を追加するものである。
(a)アミン末端樹枝状ポリマー
(b)アミン末端デンドロン
(c)(C_(1)-C_(20)アルキル)アミン
(d)(C_(1)-C_(20)ヒドロキシアルキル)アミン
(e)(C_(1)-C_(20)アルキル)エーテルアミン
(f)(C_(6)-C_(18)アリール)アミン
(g)(C_(6)-C_(14)アリールC_(1)-C_(4)アルキル)アミン
(h)X-Z-N-(ここで、Xは、H、-OH、-NH_(2)、-SH又は-CO_(2)Hであり、Zは、C_(1)-C_(18)アルキル、(C_(6)-C_(12))アリール(C_(6)-C_(12))アリーレン、又は(C_(6)-C_(12))アルキルアリーレンである)
(i)ベンジルアミン
(j)下記式:
【化2】

(式中、R^(2)は-NH_(2)、-OH又は-C(O)OHであり、そしてR^(3)及びR^(4)は独立に、-H又はC_(1)-C_(4)アルキル又は-CH_(2)OHである)の化合物
(k)第一級アミンを有する脂肪/親油性物質
(l)第一級アミンを有するタンパク質
(m)第一級アミンのリジン、グリシン、トリプトファン、チロシン又はフェニルアラニンを有するアミノ酸
(n)図3A及び図3Bに記載の小有機分子由来の第一級アミン
(o)線状、架橋、分岐もしくは樹枝状ポリマー、又はナノ粒子の表面上の第一級アミン

(イ)本願当初明細書等に記載された式(IV)
本願当初明細書等の請求項3には、式(IV)が記載され、請求項8には、請求項3を引用してQが「アミン末端樹枝状ポリマー又はアミン末端デンドロン」であると記載され、請求項9には、請求項3を引用してQの選択肢として「(C_(1)-C_(20)アルキル)アミン、(C_(1)-C_(20)ヒドロキシアルキル)アミン、(C_(1)-C_(20)アルキル)エーテルアミン」及び「(C_(6)-C_(14)アリールC_(1)-C_(4)アルキル)アミン」が記載されている(摘記(A-1))。
したがって、式(IV)のQの選択肢として、上記(a)アミン末端樹枝状ポリマー、(b)アミン末端デンドロン、(c)(C_(1)-C_(20)アルキル)アミン、(d)(C_(1)-C_(20)ヒドロキシアルキル)アミン、(e)(C_(1)-C_(20)アルキル)エーテルアミン及び(g)(C_(6)-C_(14)アリールC_(1)-C_(4)アルキル)アミン、すなわち、(a)?(e)、(g)を追加する補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてした補正といえる。
しかし、本願当初明細書等において、式(IV)が記載されているのは特許請求の範囲のみであって、発明の詳細な説明又は図面には式(IV)は記載されておらず、本願当初明細書等には、式(IV)のQの選択肢として上記(f)、(h)?(o)は記載されていない。

(ウ)本願当初明細書等に記載された式(I)
本願当初明細書等の【0040】、【0046】?【0049】には、式(IV)ではなく、式(I)のQの定義が記載されている(摘記(A-2))。
式(I)と式(IV)は異なる化合物であり、そのうえ、式(I)のQは環の一部を構成する基であるのに対して、式(IV)のQは環の一部を構成する基ではないから、式(I)のQの定義と式(IV)のQの定義は異なるものとみるべきであるが、仮に、式(I)のQの定義を、式(IV)のQの定義とみたとしても、以下のとおり、本願当初明細書等には、上記(f)、(h)?(o)の全ての選択肢について記載されてはいない。

本願当初明細書等の【0040】には、(f)、(h)?(o)はいずれも記載されておらず、【0046】?【0048】には、「X-Z-N-」であって、Xが、「-NH_(2)、-OH、又は-C(O)OH」、Zが、「(C_(1)-C_(18)アルキル)、 (C_(6)-C_(12))アリール、 (C_(6)-C_(12)) アリーレン、又は(C_(6)-C_(12)) アルキルアリーレン」であるものが記載されている(摘記(A-2))。
そうすると、上記(h)の一部である「X-Z-N-(ここで、Xは、-OH、-NH_(2)又は-CO_(2)Hであり、Zは、C_(1)-C_(18)アルキル又は(C_(6)-C_(12))アルキルアリーレンである)」については、式(I)のQの選択肢として記載されているものの、(h)の「X-Z-N-」のうち、Xが「H又は-SH」であるもの、Zが「(C_(6)-C_(12))アリール(C_(6)-C_(12))アリーレン」であるものは、式(I)のQの選択肢として記載されていない。
さらに、「(i)ベンジルアミン、(j)下記式:
【化2】

(式中、R^(2)は-NH_(2)、-OH又は-C(O)OHであり、そしてR^(3)及びR^(4)は独立に、-H又はC_(1)-C_(4)アルキル又は-CH_(2)OHである)の化合物」は、上記【0046】?【0048】において、Zの選択肢として記載されており、Qの選択肢としては記載されていない。
そのうえ、Zの選択肢として、上記【0046】?【0048】には、「環化される場合、蛍光ミセルをもたらす両親媒性界面活性剤を形成することができる、第一級アミンを有する脂肪/親油性実体、第一級アミン又は一般的アミノ酸、例えばリシン、グリシン、トリプトファン、チロシン及び/又はフェニルアラニンの何れかを有するタンパク質」が記載されており、「環化される場合、蛍光ミセルをもたらす両親媒性界面活性剤を形成することができる」もの以外の「(k)第一級アミンを有する脂肪/親油性物質;(l)第一級アミンを有するタンパク質」は記載されておらず、「第一級アミンのリジン、グリシン、トリプトファン、チロシン又はフェニルアラニン」を有する「タンパク質」は記載されていても、「(m)第一級アミンのリジン、グリシン、トリプトファン、チロシン又はフェニルアラニンを有するアミノ酸」自体は選択肢として記載されていない。
さらに、本願当初明細書等の【0049】には、式(I)のQの選択肢として、「線状、架橋された、分岐及び樹枝状ポリマー型のいずれかに由来する、オリゴマー及びポリマー」と「定義されたソフト又はハードナノ要素(すなわち、ナノ粒子)」は記載されていても、「(o)線状、架橋、分岐もしくは樹枝状ポリマー、又はナノ粒子の表面上の第一級アミン」は記載されていない。

以上によれば、仮に、式(I)のQの定義を式(IV)のQの定義とみたとしても、上記(f)、(h)?(o)のうち、本願当初明細書等に記載されているといえるのは、(h)の一部である「X-Z-N-(ここで、Xは、-OH、-NH_(2)又は-CO_(2)Hであり、Zは、C_(1)-C_(18)アルキル又は(C_(6)-C_(12))アルキルアリーレンである)」のみであり、その他の選択肢については式(I)のQの選択肢としてさえも記載されていない。
さらに、仮に、式(I)のQの選択肢であるX-Z-N-におけるZの定義として記載された選択肢を、式(IV)のQの選択肢とみたとしても、本願当初明細書等に記載されているといえるのは、せいぜい、「(i)ベンジルアミン、(j)下記式:
【化2】

(式中、R^(2)は-NH_(2)、-OH又は-C(O)OHであり、そしてR^(3)及びR^(4)は独立に、-H又はC_(1)-C_(4)アルキル又は-CH_(2)OHである)の化合物」にすぎない。
そして、その他の選択肢、すなわち、(f)の(C_(6)-C_(18)アリール)アミン、(h)の「X-Z-N-」のうち、Xが「H又は-SH」であるもの、Zが「(C_(6)-C_(12))アリール(C_(6)-C_(12))アリーレン」であるもの、(k)?(o)は、本願当初明細書等において、式(I)のQの選択肢としても記載されておらず、さらに、Qの選択肢であるX-Z-N-におけるZの定義としても記載されていない。

(エ)本願当初明細書等に記載された具体例
本願当初明細書等には、実施例1に、式(I)の化合物として、QがX-R-N、R(X)Nであるものが記載されているが(摘記(A-3))、式(IV)の化合物であることは記載されておらず、また、補正事項Aにより追加された式(IV)のQの選択肢は、X-R-NでもR(X)Nでもない。また、実施例1以外の実施例をみても、式(IV)の化合物の具体例であることは記載されておらず、また、実施例として個別具体的に記載された化合物から、これら個別具体的な化合物以外の補正事項Aにより追加された式(IV)のQの選択肢を認識することはできない。
さらに、図3A-Dには、具体的な化合物の化学構造が記載されているが(摘記(A-5))、本願当初明細書等の【0249】には、図3A-Dは、表2の式(I)の化合物であることが記載されているから(摘記(A-4))、図3A-Dに記載された化合物は、式(IV)ではなく式(I)の化合物として記載されている。そして、図3A-Dの中に、式(IV)の化合物にも該当するものが含まれるとしても、図3A-Dに個別具体的に記載された化合物から、これら個別具体的な化合物以外の補正事項Aにより追加された式(IV)のQの選択肢を認識することはできない。
したがって、本願当初明細書等に記載された具体例を検討しても、補正事項Aにより追加された式(IV)のQの選択肢が、本願当初明細書等に記載されているとはいえない。

(オ)補正事項Aについて請求人の主張
請求人は、誤訳訂正書の【訂正の理由等】の(訂正の理由2)において、
「特許請求の範囲の訂正は、一般補正で対応できる訂正事項である。
ただし、訂正後の請求項1の「R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル);C(O)-NH_(2)、又は-C(O)NH-ポリマーであり」は、訂正後の本願明細書の段落[0038]を根拠とする。」
と主張しているから、Qの選択肢を追加する補正事項Aの補正は、誤訳の訂正を目的としたものではない。
そして、請求人は、審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】の1.(2)-2)において、補正事項Aは、本願当初明細書等の【0040】、【0046】?【0049】、図3A、図3Bに基づくものであり、【0048】の「脂肪/親油性実体」は、「脂肪/親油性物質」に置き換えたものであると主張している。
しかし、本願当初明細書等の【0040】、【0046】?【0049】、図3A、図3Bを検討しても、補正事項Aにより追加された式(IV)のQの選択肢が記載されているとはいえないことは、上記(ウ)、(エ)のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。

ウ 補正事項Aについての小括
以上のとおり、補正事項Aにより式(IV)のQの選択肢として追加された選択肢(a)?(o)のうち、(f)、(h)?(o)は、本願当初明細書等に記載されていない。
そして、仮に、式(I)のQの定義や式(I)のQの選択肢であるX-Z-N-におけるZの定義として記載された選択肢を、式(IV)のQの選択肢とみたとしても、本願当初明細書等には、上記(f)、(h)?(o)の全てが記載されているとはいえない。
そして、式(IV)のQの選択肢として、これらの選択肢が、当業者であれば、本願当初明細書等のすべての記載を総合して導き出せる技術的事項であるといえる理由もない。
したがって、補正事項Aの補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、補正事項Aを含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(5)補正事項Bの補正の適否
ア 補正事項Bにより追加された式(IV)のR^(2)の選択肢
上記(3)によれば、補正事項Bにより、式(IV)のR^(2)の選択肢として、C(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーが追加された。

イ 本願当初明細書等における式(IV)のR^(2)の記載
本願当初明細書等の請求項3には、式(IV)が記載されているが、式(IV)のR^(2)の選択肢として、上記C(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーは記載されておらず、請求項3以外の特許請求の範囲全体の記載をみても、R^(2)の選択肢としてC(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーは記載されていない(摘記(A-1))。
そして、上記(4)イ(イ)でも述べたとおり、本願当初明細書等には、特許請求の範囲以外に式(IV)について記載されていないから、本願当初明細書等には、式(IV)のR^(2)の選択肢としてC(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーは記載されていない。
また、本願当初明細書等の【0038】、【0040】、【0048】には、式(I)のR^(2)の定義や【化6】のR^(2)の定義が記載されているが、その選択肢にも、C(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーは含まれていない(摘記(A-2))。
さらに、上記(4)イ(エ)でも述べたとおり、実施例や図3A-Dに具体的に記載された化合物は、式(IV)ではなく式(I)の化合物であり、仮に、実施例や図3A-Dの中に、式(IV)の化合物にも該当するものが含まれるとしても、R^(2)に相当する、ピロリドン環の4位の置換基として、C(O)-NH_(2)又は-C(O)NH-ポリマーを有する化合物は記載されていない。
したがって、本願当初明細書等には、補正事項Bにより、式(IV)のR^(2)の選択肢として追加されたC(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーは記載されておらず、また、式(IV)以外の式(I)のR^(2)や【化6】のR^(2)としてもC(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーは記載されていない。

ウ 補正後の【0038】について
誤訳訂正書の【訂正の理由等】には、(訂正の理由2)として、
「特許請求の範囲の訂正は、一般補正で対応できる訂正事項である。
ただし、訂正後の請求項1の「R^(2)は、-C(O)OH;-C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル);-C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル);C(O)-NH_(2)、又は-C(O)NH-ポリマーであり」は、訂正後の本願明細書の段落[0038]を根拠とする。」
と記載されている。
明細書の【0038】の補正が、誤訳の訂正を目的としたものではなく、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内の補正でもないことは、上記1.のとおりであるが、仮に、補正後の【0038】の記載を検討したとしても、補正後の【0038】の記載は、【0037】に記載された式(I)で表される化合物の定義を記載したものであるから(摘記(A-2))、補正後の【0038】のR^(2)の記載も、式(I)のR^(2)について記載したものであり、式(IV)のR^(2)について記載したものではない。
したがって、式(IV)のR^(2)の選択肢としてC(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーを追加する補正は、補正後の【0038】に記載した事項の範囲内においてされた補正とはいえない。

また、仮に、式(I)のR^(2)の定義を式(IV)のR^(2)の定義とみたとしても、補正後の【0038】の記載は、上記1.(1)イのとおりであるところ、補正後の【0038】には、R^(2)の選択肢として、C(O)-NH_(2)も-C(O)NH-ポリマーも記載されていない。
したがって、仮に、式(I)のR^(2)の定義を式(IV)のR^(2)の定義とみたとしても、式(IV)のR^(2)の選択肢としてC(O)-NH_(2)と-C(O)NH-ポリマーを追加する補正が、補正後の【0038】に記載した事項の範囲内においてされた補正ということはできない。

エ 補正事項Bについて請求人の主張
請求人は、補正事項Bによる補正について、上記ウのとおり、誤訳訂正書の【訂正の理由等】の(訂正の理由2)において補正の根拠を主張し、審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】の1.(2)-2)においても同じ主張をしている。
しかし、上記(訂正の理由2)を検討しても、補正事項Bによる補正が、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてした補正とはいえないことは、上記ウのとおりであり、請求人の主張は、採用することができない。

オ 補正事項Bについての小括
以上のとおりであるから、補正事項Bによる補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、補正事項Bを含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(6)特許請求の範囲の補正についての小括
以上のとおり、補正事項A、Bを含む特許請求の範囲についての本件補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年1月10日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
下記式:
【化1】

[式中、
Qは、示されるように環に窒素を与える第一級アミンを含む化合物の残基であり;
Wは、N、又は(CH_(2))nであり、ここでnは0又は1であり;
R^(2)は、-C(O)OH; -C(O)O(C_(1)-C_(4)アルキル); -C(O)-NHR^(5)(ここで、R^(5)は、C_(1)-C_(4)アルキル、又はポリマー上の部分であるアミド基である)であり;そして
mは、1?4である。]
で表される、環状アミド、環状尿素、環状アミノアミド又は環状アミド尿素化合物を蛍光マーカーとして含む組成物(但し、前記式(I)の化合物は、存在するそのような環状アミド、環状尿素、環状アミノアミド又は環状アミノ尿素化合物の残基を有さないQH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である。)。」

2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「平成30年7月2日付け拒絶理由通知書に記載した理由2、5-6」であり、理由5、6は次のとおりである。

「5.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
6.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」

そして、原査定の「備考」欄には、上記理由5、6について、請求項1を査定の対象とし、概略、次のことが記載されている。

「明細書段落[0083]-[0145]及び実施例には、・・・4-カルボキシ-2-ピロリドン誘導体を製造する方法及び該ピロリドン誘導体を用いてPAMAM-ピロリドンデンドリマーを製造したことが記載されるのみである。また、表2には、図3A-3Dに示される化合物等について得られた蛍光に関するデータが記載され、化合物32はフルオレセイン-Naの10分の1程度の蛍光を有することが示されるものの、・・・4-カルボキシ-2-ピロリドン構造を有する化合物であっても所望の蛍光特性を有しない化合物が含まれると理解される。
そして、補正後の請求項1に記載の式(I)の化合物は、環を構成する原子、環の大きさ及び/又は環上の置換基の組合せによって、該4-カルボキシ-2-ピロリドン以外の多種多様な構造を有する化合物を含むものであるから、発明の詳細な説明には、式(I)の化合物全般が蛍光マーカーとして使用できることが記載されているとはいえない。
また、上記のような発明の詳細な説明の記載、及び、出願時の技術常識を考慮すると、補正後の請求項1に記載の式(I)に包含される化合物全般を製造し、その発光特性を確認するためには、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤が必要であるといえる。」

3.当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以上を踏まえ、検討する。

ア 本願発明の特許請求の範囲の記載
本願発明の特許請求の範囲の記載は、上記1.に記載したとおりである。

イ 発明の詳細な説明の記載
本願明細書等の発明の詳細な説明には、上記第2の2.(4)アで示した摘記(A-1)?(A-5)の他に、次の事項が記載されている。(以下、「摘記(ア)」?「摘記(カ)」という。)

(ア)「【0001】
発明の分野
本発明は一般的に、ポリ(エチレングリコール)(PEG)を用いて得たものと同様に、生物学的材料のマスキング剤として、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)の誘導体/類似体、すなわちポリ(ピロリドン)大環系、オリゴマー及び低分子量ポリマーの使用に関する。さらに、小分子ピロリドン中間体(すなわち、モノマー前駆体)、及びそれらの誘導体から得られた新規なポリ(ピロリドン)オリゴマー/ポリマーは、従来の光化学及び蛍光パラダイムにより説明され得ない独特な固有蛍光(IV)又は非従来の蛍光(NTF)特性を示す。それらの化合物、すなわちオリゴマー及びポリマーは、生物学的用途、細胞イメージング、遺伝子トランスフェクション、バイオセンシング、蛍光指向性外科的切除、薬物送達、法医学、鉱物/宝石の特徴付け、油田増強及び診断、偽造製品検出、流体/水流に関連するトレーサー研究、蛍光増白剤及びLEDディスプレイの改良などのための薬物のマスキングに種々の用途を有する。」(【0001】)

(イ)「【0005】
POX化
PEGオリゴマーの化学的性質(すなわち、酸化的、酵素的安定性又は慢性的使用による免疫原性問題及びより高いMW画分による)に関連する多くの欠点のために(G.T. Hermanson, Chapter 18 in Bioconjugate Techniques, Second Ed., (2008) 707-742)、代わりのポリマー型及び組成物について積極的に探究して来た。これは、PEGの代替物としてのポリ(オキサゾリン)の有用性及び潜在的利点を記載する、Zalipsky et al. (S. Zalipsky, et al., J. Pharm. Sci., (1996), 85, 133-137を参照のこと)による初期報告につながった。」(【0005】)

(ウ)「【0031】
2001年初期、ポリ(アミノアミン)(PAMAM)デンドリマーが、何れか既知の従来の蛍光パラダイムにより機械的に説明され得なかった固有の蛍光特性を示すために、Tucker et al., (S. Tucker et al., Applied Spectroscopy, 2001, 55, 679-683)により報告されている。デンドリマーに観察される、この新規の非従来の蛍光(NTF)は一般的に、250-400nm間に励起放射線を必要として、続いて可視領域から近赤外領域(すなわち、400-750nm)に及ぶ特徴的な発光バンドを生成するために、基底状態に緩和する。」(【0031】)

(エ)「【0072】
議論1
ピロリドン化
より高い分子量画分(すなわち、>20KDa;下記参照のこと)を除いて、何れの既知の生理学的問題を伴わないで、ヒト(すなわち、50万人を超えるヒト対象において75歳以上)における注射可能な合成ポリマーとしてPVPを使用する広範な肯定的経験を考慮して、それらのピロリドン組成物の本発明の使用は、PEG化又はPOx化の何れかの代替物である。PEG化及びPOX化の両者は、PVPよりもヒト自体の欠点を有し、そしてPVPよりも、ヒトにおいて、はるかに少ないインビボ記録を有する。さらに、PEG化及びPOX化生成物に対するPVPのそれらの新しいピロリドン類似体の付加的特徴は、予想外の固有の蛍光特性である。それらの蛍光特性は、生物学的細胞をイメージングし、そしてインビボ輸送及び生体分布をモニターするためには非常に重要であることが示されている。」(【0072】)

(オ)「【0083】
プロセスの議論
PEG化試薬の代わりの代替物として本質的に蛍光性の小分子ピロリドン中間体、オリゴマー及びポリマーを合成するための方法/プロセス
それらの小ピロリドン分子は、第一級アミンとイタコン酸又はその誘導体(すなわち、エステル、アミド、無水物)との反応を包含する単純な工程により容易に調製される。この一般的な第一級アミン+イタコン酸誘導体反応スキームは、それらのピロリドン中間体のMW、及び所望する低分子量ピロリドンポリマーのMWを制御するために使用され得、それらのすべては、インビボ用途のために適切な予想外の固有蛍光(IF)を示す。それらの戦略は、以下の流れ図(スキーム2)で例示されている。
【0084】
【化13】

【0085】
このスキームにおいて、RはH又はC_(1)-C_(4)アルキルであり;R′はC_(1)-C_(18)アルキルである。」(【0083】?【0085】)

(カ)「【0251】
それらの化合物の1つがデンドリマーに結合され、そして種々の細胞系における生物学的目的について試験される場合、結果が、下記実施例Iに提供される。
【0252】
実施例I:PAMAMピロリドン末端デンドリマーの合成
【0253】
【化36】


【0254】
このデンドリマーは、効用を示すために以下の方法で試験された。
インビボでの効用
細胞培養
・・・
【0255】
接種及び流出の検出
インビトロ摂取研究を、自家蛍光G4 PAMAM-ピロリドンデンドリマー(実施例Iにおいて調製された)を用いて実施した。・・・適切なインキュベーション期間の後、細胞をPBSにより洗浄し、500μlの培地に懸濁し、そしてすぐに、紫色レーザー(405nm)及びパシフィックブルーバンドパスフィルター(450/50nm)を用いて、Becton LSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences, USA)により分析した。
【0256】
共焦点顕微鏡法
共焦点顕微鏡画像を、405nmレーザーダイオード及びInTune励起レーザーシステムを備えたZeiss LSM780顕微鏡(Carl Zeiss Micro Imaging, USA)を用いて、6300倍率で得た。細胞を、96ウェルガラス底プレート上で増殖し、そして5.0%CO_(2)を含む、37℃での加湿雰囲気下で24時間、100μMのG4-PAMAM-ピロリドンデンドリマー(実施例Iにおいて調製された)と共にインキュベートした。・・・最終的に、固定され、そして三重染色された細胞を画像化し、青色チャネル(励起405nm、発光410-470nm)でのPAMAM-ピロリドンデンドリマー、緑色チャネル(励起490nm、発光510-575nm)での原型質膜、及び遠赤色チャネル(励起595nm、発光600-740nm)での核の固有蛍光を可視化した。」(【0251】?【0256】)

ウ 本願発明の解決しようとする課題
本願発明は、上記1.のとおり、式(I)で表される化合物を蛍光マーカーとして含む組成物であって、ただし、式(I)の化合物は、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物を含む組成物に関する発明である。
一方、発明の詳細な説明の【0001】には、本発明は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)を用いて得たものと同様の、生物学的材料のマスキング剤としてのポリ(ビニルピロリドン)(PVP)の誘導体/類似体の使用に関し、さらに、独特な固有蛍光(IV)又は非従来の蛍光(NTF)特性を示すものであること(摘記(ア))、【0005】には、上記PEGの代替物としてPOX(ポリ(オキサゾリン))が知られていたこと(摘記(イ))、【0072】には、本発明の使用は、PEG化又はPOX化の何れかの代替物であり、付加的特徴は、予想外の固有の蛍光特性であること、それらの蛍光特性は、生物学的細胞をイメージングし、そしてインビボ輸送及び生体分布をモニターするために非常に重要であることが記載されている(摘記(エ))。
そして、発明の詳細な説明の【0031】の記載からみて、上記「独特な固有蛍光(IV)又は非従来の蛍光(NTF)」とは、「250-400nm間に励起放射線を必要として、続いて可視領域から近赤外領域(すなわち、400-750nm)に及ぶ特徴的な発光バンド」であると認められるから(摘記(ウ))、本願発明における「式(I)の化合物は、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物」とは、波長の範囲は正確には一致しないものの、概ね、式(I)の化合物は、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍の、「独特な固有蛍光(IV)又は非従来の蛍光(NTF)」を示す化合物であることを特定していると理解できる。

以上によれば、本願発明の解決しようとする課題は、独特な固有蛍光(IV)又は非従来の蛍光(NTF)を示すことで、ポリエチレングリコールやポリオキサゾリンの代替物として生物学的細胞のイメージングなどに用いることができる、本願発明の「式(I)の化合物を蛍光マーカーとして含む組成物であって、ただし、式(I)の化合物は、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物である組成物」の提供であると認められる。

エ 一般的な記載について
発明の詳細な説明の【0036】?【0041】には、式(I)の化合物が記載され、式(I)の化合物は、「QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、蛍光する」こと、「その発光が400-850nmの可視近赤外領域」にあること、蛍光により種々の用途に使用されることが記載されている(摘記(A-2))。
そうすると、発明の詳細な説明には、「200?385nmで励起後」であることは記載されていないが、概ね、本願発明について一般的な記載がされているといえる。
しかし、式(I)の化合物が、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物であり、また、式(I)の化合物全体について、蛍光マーカーとして有用で、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであることは、具体的に確認されていない。

オ 合成方法について
発明の詳細な説明の【0083】?【0085】には、PEG化試薬の代替物としての蛍光性の小分子ピロリドン中間体、オリゴマー及びポリマーを合成するための方法として、第一級アミンとイタコン酸又はその誘導体との反応を包含する以下の反応スキームが記載され、それらのすべては、インビボ用途のために適切な予想外の固有蛍光(IF)を示すことが記載されている(摘記(オ))。

上記スキーム中、第一級アミンとイタコン酸誘導体が反応して生成する4位に-CO_(2)Rを有する2-ピロリドン誘導体は、式(I)において、Q=R’?N、W=(CH_(2))_(n)、n=1、R^(2)=-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4)アルキル)、m=1である化合物に相当するから、発明の詳細な説明には、式(I)に含まれる化合物の一種である、4位に-COORを有する2-ピロリドン誘導体の合成方法と、それらのすべてがインビボ用途のために適切な予想外の固有蛍光(IF)を示すとの一般的な記載がされているといえる。
しかし、式(I)の化合物が、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物であり、また、式(I)の化合物全体について、蛍光マーカーとして有用で、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであることは、具体的に確認されていない。

カ 実施例1について
発明の詳細な説明の【0155】に記載された実施例1には、図3Cに化合物26-37として化学構造が示された生成物を調製し、生成物は、UV線(265?395nm)に暴露される場合、若干のレベルの蛍光を示すこと、生成物をUV/可視蛍光測定法により特徴付けた結果を表2に示したことが記載されている(摘記(A-3))。
そして、図3Cによれば、上記化合物26-37のうち、化合物29以外の化合物26-28、30-37は、いずれも、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」であって、式(I)に該当する化合物であることが理解できる(摘記(A-5))。
しかし、表2には、左の列に化合物の番号として上記26-37が記載されていても、左から2列目から4列目には、「励起最大(nm)」、「発光最大(nm)」、「相対的対応/g」の項目が記載されているのみであるから(摘記(A-4))、化合物26-37が、ある程度の蛍光を示すことが記載されているだけで、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物であり、また、式(I)の化合物全体について、蛍光マーカーとして有用で、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであることは、具体的に記載されていない。

キ 図3A-D、表2について
発明の詳細な説明の【0249】には、表2は、式(I)の化合物のデータであり、化合物の化学構造は、図3A-Dに示され、それらの化合物について得られた蛍光が提供されると記載されている(摘記(A-4))。
上記図3A-Dに記載された62個の化合物のうち、例えば、化合物26-28、30-37は、上記カで述べたとおり、いずれも、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」であって、式(I)に該当する化合物であることが理解でき、化合物26-28,30-37以外の化合物であっても、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」である化合物については、同様に、式(I)に該当する化合物であることが理解できる。
しかし、図3A-Dに記載された化合物のうち、例えば、化合物4は、C=O基を含む環が存在しないから、式(I)の化合物には該当せず、化合物8は、C=O基を含む環は存在しても、当該環上には、式(I)で定義されるR^(2)が存在しないから、式(I)の化合物には該当しない。また、化合物40は、N置換ピロリドン環の4位のカルボン酸誘導体が、式(I)で定義されるR^(5)を満たさないから、式(I)の化合物には該当しない。
このように図3A-Dには、式(I)に該当しない化合物が多数記載されており、式(I)に該当する化合物としては、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」が記載されているのみであると認められる。
そして、上記カのとおり、表2には、表2記載の化合物が、ある程度の蛍光を示すことは記載されていても、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物であり、また、式(I)の化合物全体について、蛍光マーカーとして有用で、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであることは、具体的に記載されていない。

ク 実施例Iについて
発明の詳細な説明の【0251】?【0256】には、実施例Iとして、PAMAMピロリドン末端デンドリマーについて、詳細な製造方法は記載されていないものの、一般的な反応スキームが【化36】に記載され、PAMAMピロリドン末端デンドリマーを用いたインビボでの効用として、紫色レーザー(405nm)及びパシフィックブルーバンドパスフィルター(450/50nm)を用いて分析したこと、青色チャネル(励起405nm、発光410-470nm)でのPAMAM-ピロリドンデンドリマー蛍光を可視化したことが記載されている(摘記(カ))。
上記PAMAMピロリドン末端デンドリマーは、【化36】に記載された化学構造式からみて、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」であって、式(I)の化合物に相当するから、上記実施例Iの記載によれば、発明の詳細な説明には、式(I)に含まれる化合物の一種であるPAMAMピロリドン末端デンドリマーを蛍光マーカーとして含む組成物が、蛍光マーカーとして用いることができることが具体的に記載されているといえる。
しかし、PAMAMピロリドン末端デンドリマーが、QH_(2)である基本化合物、すなわち、ピロリドン末端を有さない「PAMAMデンドリマー」の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物であることは記載されていないから、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであることが具体的に記載されているということはできない。
そのうえ、発明の詳細な説明の【0031】には、PAMAMデンドリマーが、固有の蛍光特性を示すことが2001年の論文に報告されており、このデンドリマーに観察される非従来の蛍光(NTF)は、一般的に、250-400nm間に励起放射線を必要として、続いて可視領域から近赤外領域(すなわち、400-750nm)に及ぶ特徴的な発光バンドを生成することが記載されている(摘記(ウ))。
そうすると、PAMAMデンドリマーは、それ自体で固有又は非従来の蛍光を示すものであるから、PAMAMピロリドン末端デンドリマーの固有又は非従来の蛍光には、PAMAMデンドリマー部分が少なからず寄与していると理解でき、PAMAMデンドリマーの末端に4-カルボキシ-2-ピロリドンが置換していることで、その固有又は非従来の蛍光が少なくとも10倍となることは、実際に、PAMAMデンドリマーとPAMAMピロリドン末端デンドリマーの蛍光を確認しなければ、当業者は認識することができないといえる。
したがって、実施例Iの記載からは、PAMAMピロリドン末端デンドリマー、すなわち、式(I)の化合物が、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物であり、また、式(I)の化合物全体について、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであると認識することはできない。

ケ 本願発明のサポート要件の適合性
以上によれば、発明の詳細な説明には、上記エのとおり、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであるとの一般的な記載はされていても、具体的に記載されているのは、上記オ?キのとおり、式(I)の化合物の一種である「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」である、いくつかの化合物がある程度の蛍光を示すこと、上記クのとおり、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」であるPAMAMピロリドン末端デンドリマーを蛍光マーカーとして含む組成物が、蛍光マーカーとして用いることができることのみであって、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できること、特に「QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物を含む組成物」の提供を解決できることは、発明の詳細な説明に具体的に記載されておらず、また、具体的な記載や示唆がなくとも、当業者であれば、本願出願時の技術常識に照らし、上記課題を解決できると認識できるといえる理由もない。
また、本願発明の式(I)の化合物は、Qが「示されるように環に窒素を与える第一級アミンを含む化合物の残基」であり、WがNであって良く、(CH_(2))_(n)においてn=0、すなわち、(CH_(2))_(n)が存在しなくても良く、(CH_(2))_(m)のmが1?4であることが特定されているから、式(I)の化合物には、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」とは、環を構成する原子、環の大きさ、環上の置換基の種類が全く異なる多種多様な化合物が含まれるといえる。そして、発明の詳細な説明に、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」のいくつかがある程度の蛍光を示すことが記載されていても、それとは、環を構成する原子、環の大きさ、環上の置換基の種類が全く異なる多種多様な化合物について、同様に蛍光を示すと当業者が認識できるとはいえない。
そうすると、式(I)の化合物は、その全体にわたって蛍光を示す化合物であると認識することができるものではなく、そのうえ、具体的に製造され、ある程度の蛍光を示すことが確認された「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」を含む組成物であっても本願発明の課題を解決することができると認識することはできないことは上記のとおりであるから、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」とは、環を構成する原子、環の大きさ、環上の置換基の種類が全く異なる多種多様な化合物を含む組成物である本願発明は、当業者であれば、本願発明の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものではない。

コ サポート要件についての小括
以上のとおり、本願発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、当業者が、本願発明の解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が本願出願時の技術常識に照らし、上記課題を解決できると認識できる範囲のものともいえないから、本願発明の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しない。

(2)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)について
発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(いわゆる実施可能要件)に適合しているというためには、物の発明にあっては、当業者が、その物を製造することができ、使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載したものであるか否かを検討して判断すべきものである。
本願発明は、式(I)の化合物を蛍光マーカーとして含む組成物の発明であるから、本願発明について実施可能要件を満たしているというためには、式(I)の化合物を含む組成物を、当業者が、製造することができ、少なくとも蛍光マーカーとして使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載したものである必要がある。
以上を踏まえ、検討する。

ア 本願発明の実施可能要件の適合性
発明の詳細な説明の【0083】?【0085】には、式(I)に含まれる化合物の一種である、4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体の合成方法として、第一級アミンとイタコン酸誘導体を反応させる一般的な方法が記載され(摘記(オ))、実施例1には、実験条件の詳細は記載されていないものの、4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体を製造し、それが若干の蛍光を示したことが記載され(摘記(A-3))、表2には、一般的手順により製造される式(I)の化合物のデータが記載され、それらの化学構造は図3A-Dに示され、それらの化合物について得られた蛍光が記載されている(摘記(A-4)、(A-5))。そして、図3A-Dに記載された化合物のうち、式(I)に該当する化合物は、「4位に-CO(O)H又は-CO(O)(C_(1)-C_(4))アルキル基を有し、N位に置換基を有する、2-ピロリドン誘導体」、すなわち、「4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体」のみであることは、上記(1)キでも述べたとおりである。
そうすると、本願発明のうち、式(I)の化合物が、「4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体」である発明については、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載に基づいて、製造することができ、蛍光マーカーとして使用し得ることが、ある程度理解できるといえる。
しかし、上記(1)ケでも述べたとおり、本願発明の式(I)の化合物には、「4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体」とは、環を構成する原子、環の大きさ、環上の置換基の種類が全く異なる多種多様な化合物が含まれるところ、上記第一級アミンとイタコン酸誘導体を反応させる方法は、第一級アミン由来のN原子とイタコン酸誘導体由来の炭素原子が環を形成することで4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体が生成するから、4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体とは環を構成する原子、環の大きさが異なる化合物は、この反応では合成することはできないと認められる。
そして、発明の詳細な説明には、これら多種多様な化合物をどのように製造するのかについて記載されておらず、その記載や示唆がなくとも、当業者であれば、式(I)の化合物を含む組成物全体について製造することができるといえる理由はない。
また、「4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体」がある程度の蛍光を示すとしても、式(I)に含まれる「4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体」とは、環を構成する原子、環の大きさ、環上の置換基の種類が全く異なる多種多様な化合物が同様に蛍光を示すことは、発明の詳細な説明に具体的に記載されておらず、その記載や示唆がなくとも、当業者であれば、式(I)の化合物全体が蛍光を示し、式(I)の化合物を含む組成物全体について蛍光マーカーとして使用することができるといえる理由はない。
したがって、本願発明は、式(I)の化合物が、「4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体」である場合以外について、その全体にわたり、当業者が、製造することができ、蛍光マーカーとして使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

実施可能要件についての小括
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明は、物の発明である本願発明について、当業者が、製造することができ、使用することができるように明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に適合しない。

(3)請求人の主張について
請求人は、サポート要件と実施可能要件について、以下のア?ウの主張をしている。

ア 「今般の補正により、式(I)の化合物を、実際に製造し、その蛍光特性を試験した化合物(本願明細書の段落[0250]の[表2-1]?[表2-3]、及び図3A?3D)に減縮しました。また、本願明細書の例えば段落[0083]?[0145]には、式(I)の化合物の製造方法が一般的に記載され、実施例には多数の式(I)の化合物の製造例が記載されています。図3A?3Dからも明らかなように、「Q」は、窒素原子のソースであり、それに結合し得る別の化合物の多くの原子を有します。したがって、デンドリマーはそのように窒素原子に結合することができ、R^(2)に結合するのではありません。
したがって、補正後の請求項1に記載の化合物が、実際に製造され、その蛍光特性が確認された化合物を超えるものを含んでいたとしても、それらは、式(I)の化合物の製造方法の一般的記載及び実施例の記載から、当業者が十分に実施できる蓋然性が高いものであります。」(意見書第4頁第36?47行)

イ 「本願明細書には、式(IV)の化合物の製造方法に関する一般的な記載があり、段落[0250]の[表2-1]?[表2-3]、及び図3A?3Dには、式(IV)の化合物の製造例、及び蛍光特性が記載されております。
したがって、訂正後の請求項1に記載の化合物が、実際に製造され、その蛍光特性が確認された化合物を超える範囲のものを含んでいたとしても、それらは、式(IV)の化合物の製造方法の一般的記載及び実施例の記載から当業者が十分に製造でき、また、段落[0250]の[表2-1]?[表2-3]の記載から式(IV)の化合物が所望の蛍光特性を有する蓋然性が高いと考えられます。」(審判請求書第6頁第21行?第5頁第1行)

ウ 「今般の補正により、式(I)の化合物を、実際に製造し、その蛍光特性を評価した式(IV)の化合物に減縮しました。4-カルボキシ-2-ピロリドン誘導体及びPAMAM-ピロリドンデンドリマーの製造例は、本願明細書の段落[0083]?[0145]、実施例、図3A?3D等に記載され、蛍光特性の評価は、本願明細書の段落[0250]の[表2-1]?[表2-3]に記載されております。また、補正後の請求項1の化合物が、実際に製造され、その蛍光特性が確認された化合物を超える範囲のものを含んでいたとしても、それらは、式(IV)の化合物の製造方法の一般的記載及び実施例の記載から当業者が十分に製造できる蓋然性が高いと考えます。
さらに、審査官殿は、本願明細書の表2に記載の、本願発明化合物の「相対的対応」値が、比較例化合物(PVP、化合物D)と比べて同程度以下である点を指摘しておられますが、表2は、各々の化合物が当該表に記載の励起最大波長及び発光最大波長を有し、実際に蛍光マーカーとして使用し得ることを示すものであります(本願明細書の段落[0256]?[0264]等もご参照)。「相対的対応」値がどのようにして求められた値であるかは不明でありますが、本願発明化合物とはまったく構造の異なる化合物を比較の対照として、それに比べて本願発明化合物が蛍光が弱いため、サポート要件及び実施可能要件を満たさないと判断されるのはいささか早計かと思います。本願発明の化合物は、中性で強い固有の蛍光を示し、所望の波長を有し、低毒性・生体適合性であり、細胞内在化を示します。これの特徴は本願明細書の段落[0148]、[0256]?[0264]等に具体的に記載されています。細胞等での蛍光検出のためには、蛍光強度が強いばかりでなく、低毒性・生体適合性、細胞内在化のような特性も重要であります。
よって、補正後の請求項1?6に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び同法第36条第4項第1号には当たらないものであると思料いたします。」(令和2年4月3日提出の上申書第2頁下から2行?第3頁第20行)

上記ア?ウによれば、請求人は、概略、発明の詳細な説明には、4-カルボキシ-2-ピロリドン誘導体及びPAMAM末端ピロリドンデンドリマーの製造例と、それらの蛍光特性を評価したことが記載されており、また、本願発明が、実際に製造し、蛍光特性を評価した化合物を超える範囲のものであるとしても、発明の詳細な説明の一般的な記載から、当業者が製造できる蓋然性が高いこと、さらに、表2に記載された化合物の蛍光が、比較例よりも弱いとしても、表2は、蛍光マーカーとして使用し得ることを示していること、細胞等の蛍光検出のためには、蛍光強度が強いばかりではなく、低毒性、生体適合性、細胞内在化のような特性も重要であることを挙げて、本願発明は、サポート要件と実施可能要件を満たすと主張していると認められる。

しかし、発明の詳細な説明に、4-カルボキシ-2-ピロリドン誘導体の製造方法の一般的な記載や4-カルボキシ-2-ピロリドン誘導体及びPAMAM末端ピロリドンデンドリマーの製造例と、それらの蛍光特性を評価したことが記載されていても、4-カルボキシ-2-ピロリドン誘導体及びPAMAM末端ピロリドンデンドリマーが、「QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物」であることは具体的に記載されておらず、本願発明が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであると認識することはできないこと、また、式(I)の化合物は、「4位にカルボキシル基を有する2-ピロリドン誘導体」とは、環を構成する原子、環の大きさ、環上の置換基の種類が全く異なる多種多様な化合物を含むから、本願発明は、式(I)の化合物が、これら多種多様な化合物である場合全体について、当業者が、本願発明の解決しようとする課題を解決できるものであると認識することができるものではなく、また、製造することができ、蛍光マーカーとして使用することができる程度に、発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載したものともいえないことは、上記(1)、(2)で述べたとおりである。

そして、細胞等の蛍光検出のためには、蛍光強度が強いばかりではなく、低毒性、生体適合性、細胞内在化のような特性も重要であるとしても、本願発明の解決しようとする課題が、「式(I)の化合物を蛍光マーカーとして含む組成物であって、ただし、式(I)の化合物は、QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である化合物である組成物」の提供である以上、本願発明の解決しようとする課題を解決することができると認識するためには、式(I)の化合物が、「QH_(2)であるその基本化合物の値の少なくとも10倍、200?385nmで励起後に蛍光し、その発光は400?850nmの可視近赤外領域である」ことを認識することができる必要があり、そのように認識できないこと、また、式(I)の化合物が、その全体にわたって蛍光を示す化合物であるとも認識できないことは、上記(1)、(2)で述べたとおりである。
したがって、請求人の主張は、採用することができない。

また、請求人は、令和2年4月3日提出の上申書及び同年同月27日提出の上申書において、手続補正書(案)を提示して補正の機会を希望しているが、この出願は、すでに3回の補正の機会があり、いずれの補正も特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないことは、拒絶理由通知書及び原査定の備考欄に記載され、又は、上記第2の補正の却下の理由で記載したとおりであるところ、上記上申書には、当該手続補正書(案)における補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすといえる理由が具体的に説明されていない。そして、特許法では、拒絶査定不服審判の請求と同時に補正することが認められているが、既にその補正はされており、これ以上の補正の機会は特許法に定められたものではなく、補正の機会をさらに与える必要性はない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合せず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合しない。

第4 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないから、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2021-02-12 
結審通知日 2021-02-16 
審決日 2021-03-05 
出願番号 特願2017-533730(P2017-533730)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C07D)
P 1 8・ 537- Z (C07D)
P 1 8・ 55- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早乙女 智美  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 井上 千弥子
齊藤 真由美
発明の名称 ピロリドン誘導体、オリゴマー及びポリマー  
代理人 青木 篤  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 三橋 真二  
代理人 南山 知広  
代理人 鶴田 準一  
代理人 胡田 尚則  
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