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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1376395
審判番号 不服2020-10438  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-27 
確定日 2021-07-29 
事件の表示 特願2016-528984「画像処理装置、画像処理方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月23日国際公開、WO2015/194075〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月27日(優先権主張 平成26年6月18日)を国際出願日とする日本語特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 3月11日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 5月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月16日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 4月17日付け:拒絶査定(同年4月28日送達、以下「原査定」という。)
令和 2年 7月27日 :審判請求書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和2年1月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
入力画像の被写体を表示領域から実物大で表示するように前記入力画像のサイズを調整する画像サイズ調整部と、
前記表示領域が存する空間の第1の基底面と前記表示領域との位置関係に基づいて、前記入力画像のサイズが調整された実物大画像の、前記表示領域における表示位置を決定する表示位置決定部と、を具備し、
前記表示位置決定部は、
前記実物大画像から、前記被写体が存する空間の第2の基底面の位置についての情報を取得する第2の基底面情報取得部を有し、
前記第1の基底面の位置と前記実物大画像中の前記第2の基底面の位置とを一致させることが可能に前記表示位置を決定する
画像処理装置。」


第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
本願発明は下記の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1. 特開2009-17279号公報
引用文献2.倉地 紀子,CGテクノロジーの根幹を知る CORE vol.07,CG WORLD vol.119,日本,株式会社ワークスコーポレーション,第119巻


第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-17279号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審が付したもので、以下同様である。

「【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1にかかる画像データ表示システム10aのシステム構成を示す図である。同図に示すように、画像データ表示システム10aは、測定装置2、撮像装置3、サーバ装置4、表示装置5a、画像データ出力装置20aを含んで構成される。
【0020】
測定装置2は、3次元の立体構造を有する物体(立体物)である物体1(ソファー、ミルクチーズケーキ、自動車、傘、指輪等)の長さを測定する装置である。具体的な例では、巻尺、定規、光学式距離測定装置等である。
【0021】
撮像装置3は、物体1を撮影し、立体物の平面投影画像である物体画像を取得する装置であり、例えばカメラが相当する。なお、撮像装置3が生成する物体画像のデータ形式はどのようなものであってもよく、例えば、RGB(Red Green Blue)信号等のアナログ信号形式や、MPEG(Moving Picture Experts Group)-1、MPEG-2、MPEG-4、H-263、H-264等のデジタル信号形式を用いることができる。
【0022】
サーバ装置4は、ユーザから、撮像装置3が取得した物体画像と、その表示サイズ及び長さ情報と、の入力を受け付け、画像データ出力装置20aに送信する。 ここで、表示サイズ及び長さ情報について説明する。まず、ユーザは、サーバ装置4に対して上記物体画像の表示サイズを入力する。この表示サイズは、2次元のディスプレイである表示装置5aが上記物体画像を表示する際の表示サイズであり、センチメートルやインチ等の長さを示す情報である。すなわち、2次元の上記物体画像を含む最小の矩形枠の縦横の寸法である。例えば、56cm×30cmのようなものである。そして、ユーザは、測定装置2を用いて、入力した表示サイズで上記物体画像が表示される際に丁度実物大長さとなる部分の長さを測定する。長さ情報は、この測定の対象となった部分の両端位置を示す情報(上記物体画像内での位置座標)と、測定結果としての長さを示す情報と、を含む情報である。上記両端位置は、物体画像を見たユーザが、実物大長さを実感しやすい位置とすることが好適であり、例えば後述する図4に示すようなミルクチーズケーキでは、上面の画面横方向最長部の両端位置とすることが好適である。また、後述する図20に示すような「開いた傘」では、傘布部の画面横方向の最長部の両端とすることが好適である。なお、以下では、表示サイズと長さ情報とをまとめて表示関連情報と称することがある。
【0023】
表示装置5aは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、その他の表示デバイスであり、表示装置5aの表示面は、例えばドットマトリクス(平面上においてマトリクス状に整列配置された多数の表示ドットからなるマトリクス)により構成される。この表示装置5aは、画像データ出力装置20aに備えられるものであってもよいし、画像データ出力装置20aとは別体の装置であってもよい。以下では、表示装置5aと画像データ出力装置20aとは別体の装置であるとして説明する。表示装置5aの具体的な処理については、画像データ出力装置20aの説明の後に説明する。
【0024】
以下、画像データ出力装置20aについて説明する。図2は、画像データ出力装置20aの詳細構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、画像データ出力装置20aは、物体画像取得部21、表示関連情報取得部22、出力用画像データ生成部30a、ユーザインターフェイス部50、画像データ送信部80を含んで構成される。また、図3は、画像データ出力装置20aの処理フローを示す図である。以下、図2及び図3を参照しながら、画像データ出力装置20aについて説明する。
【0025】
物体画像取得部21は通信デバイスであり、上記物体画像をサーバ装置4から受信する(ステップS1)。表示関連情報取得部22も通信デバイスであり、上記長さ情報及び上記表示サイズをサーバ装置4から受信する(表示サイズ取得手段、ステップS2)。
【0026】
出力用画像データ生成部30aは情報処理デバイスであり、上記長さ情報から、上記両端位置の位置座標と該両端位置の間の実物大長さとを取得する。そして、取得した各位置座標を示すとともに、取得した実物大長さを示すデータ(文字列)を含む指示画像データを生成・取得する(指示画像データ取得手段、ステップS3)。そして、上記物体画像と上記指示画像データと上記表示サイズとを含む出力用画像データを生成・取得する(ステップS4)。
【0027】
画像データ送信部80は有線、無線、又は赤外線を用いて通信を行う通信デバイスであり、出力用画像データ生成部30aが生成した出力用画像データを表示装置5aに出力する(出力手段、ステップS5)。」

「【0039】
図6は、表示装置5aによる上記表示をより分かりやすく説明するための説明図である。同図の例では、表示サイズが56cm×30cmであり、表示装置5aには、この表示サイズを含む出力用画像データが入力される。表示装置5aは、入力された出力用画像データに基づいて描画処理を行って画像を取得し、表示サイズが56cm×30cmの表示領域のドットサイズまで伸縮してから表示する。こうして表示される画像は、56cm×30cmの表示領域に丁度収まることになる。」

「【0041】
以上説明したように、実施形態1によれば、立体物の画像を2次元のディスプレイを用いて実物大表示する際、指示画像により、実物大長さとなっている部分を明示できる。
【0042】
また、表示装置5aにおいて表示される画像を見た者は、上記文字列により指示された部分の長さを知ることができる。さらに、画像データ出力装置20aは、表示装置5aに表示サイズを出力することにより、物体画像の実物大表示を実現できる。」

「【0099】
[実施形態9]
実施形態9も、実施形態1の応用例である。本実施形態では、表示装置5aに表示される物体の地上高さを、実物の高さと適合させる例について説明する。
【0100】
図24(A)は、表示対象物としての自動車を実物の自動車よりも大きな画面サイズの表示装置5aに表示したものである。遠くから見る広告・宣伝の目的では、図24(A)のように自動車全体を表示装置5aに表示することが望ましいが、購買の目的で自動車の大きさを体感したい場合には、表示する自動車の地上高さを実物に合わせることが望ましい。そこで、画像データ出力装置20aに、表示装置5aの設置高さ(表示部分の一番下の部分の地面からの高さ)を、予め入力しておく。また、長さ情報には、物体の高さ方向の長さ(高さ情報)も含めておく。画像データ出力装置20aは、サーバ装置4から受信した長さ情報から高さ情報を取得し、取得した高さ情報と予め入力された設置高さとに基づき、物体画像の画面内表示位置を制御することにより、図24(B)に示すような、実物高さでの表示を実現する。なお、この例では、高さが実際どれくらいあるのかをユーザに分かりやすくするために、高さ方向の指示画像データを表示することが望ましい。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



「【図6】



「【図24】




(2)引用発明の認定
上記(1)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「サーバ装置4から受信した撮像装置3が取得した物体画像と表示サイズとを含む出力用画像データに基づいて描画処理を行って画像を取得し、表示サイズが56cm×30cmの表示領域のドットサイズまで伸縮してから表示することにより、物体画像の実物大表示を実現できる表示装置5aと(【0022】?【0027】、【0039】、【0042】)、
前記サーバ装置4から受信した、測定装置2を用いて測定した部分の両端位置を示す情報(上記物体画像内での位置座標)と、測定結果としての長さを示す情報とを含む長さ情報から高さ情報を取得し、取得した高さ情報と、予め入力された表示装置5aの設置高さ(表示部分の一番下の部分の地面からの高さ)に基づき、物体画像の画面内表示位置を制御することにより、表示装置5aに表示される物体の地上高さを、実物の高さと適合させる手段を、有する(【0022】、【0099】、【0100】、【図24】)、
画像データ出力装置20a。」

2 引用文献2に記載された事項の認定
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である「倉地 紀子,CGテクノロジーの根幹を知る CORE vol.07,CG WORLD vol.119,日本,株式会社ワークスコーポレーション,第119巻」(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(77頁左欄13?18行)
「この復元では、まずデータ画像の中で物体の影だと想定される部分(周囲と著しく色が異なっている部分)のアウトラインを検出する。次に、このアウトラインの内部で、物体と地面とが接していると予測される点(接点)を検出。」

「【C-2】影の算出



(2)引用文献2に記載された事項の認定
上記(1)を総合すると、引用文献2には、次の事項が記載されているものと認められる。

<引用文献2記載事項>
「データ画像の中で物体の影だと想定される部分(周囲と著しく色が異なっている部分)のアウトラインを検出し、このアウトラインの内部で、物体と地面とが接していると予測される点(接点)を検出すること。」


第5 対比
1 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「サーバ装置4から受信した撮像装置3が取得した物体画像」、「物体」は、それぞれ本願発明の「入力画像」、「被写体」に相当する。
また、引用発明の「表示サイズが56cm×30cmの表示領域のドットサイズまで伸縮してから表示することにより、物体画像の実物大表示を実現できる」ことは、本願発明の「表示領域から実物大で表示するように前記入力画像のサイズを調整する」ことに相当する。
そして、引用発明の「表示装置5a」は、本願発明の「画像サイズ調整部」に相当する。
よって、引用発明の「サーバ装置4から受信した撮像装置3が取得した物体画像と表示サイズとを含む出力用画像データに基づいて描画処理を行って画像を取得し、表示サイズが56cm×30cmの表示領域のドットサイズまで伸縮してから表示することにより、物体画像の実物大表示を実現できる表示装置5a」は、本願発明の「入力画像の被写体を表示領域から実物大で表示するように前記入力画像のサイズを調整する画像サイズ調整部」に相当する。

(2)引用発明の「地面」は、本願発明の「表示領域が存する空間の第1の基底面」に相当するから、引用発明の「表示装置5aの設置高さ(表示部分の一番下の部分の地面からの高さ)」は、本願発明の「表示領域が存する空間の第1の基底面と前記表示領域との位置関係」に相当する。したがって、引用発明の「前記サーバ装置4から受信した、測定装置2を用いて測定した部分の両端位置を示す情報(上記物体画像内での位置座標)と、測定結果としての長さを示す情報とを含む長さ情報から高さ情報を取得し、取得した高さ情報と、予め入力された表示装置5aの設置高さ(表示部分の一番下の部分の地面からの高さ)に基づ」くことは、本願発明の「前記表示領域が存する空間の第1の基底面と前記表示領域との位置関係に基づ」くことに相当する。
また、引用発明の「物体画像の画面内表示位置を制御することにより、表示装置5aに表示される物体の地上高さを、実物の高さと適合させる手段」は、本願発明の「前記入力画像のサイズが調整された実物大画像の、前記表示領域における表示位置を決定する表示位置決定部」に相当する。
よって、引用発明の「前記サーバ装置4から受信した、測定装置2を用いて測定した部分の両端位置を示す情報(上記物体画像内での位置座標)と、測定結果としての長さを示す情報とを含む長さ情報から高さ情報を取得し、取得した高さ情報と、予め入力された表示装置5aの設置高さ(表示部分の一番下の部分の地面からの高さ)に基づき、物体画像の画面内表示位置を制御することにより、表示装置5aに表示される物体の地上高さを、実物の高さと適合させる手段」は、本願発明の「前記表示領域が存する空間の第1の基底面と前記表示領域との位置関係に基づいて、前記入力画像のサイズが調整された実物大画像の、前記表示領域における表示位置を決定する表示位置決定部」に相当する。

(3)引用発明の「画像データ出力装置20a」は、本願発明の「画像処理装置」に相当する。

2 一致点及び相違点
上記1の検討を総合すると、本願発明と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
入力画像の被写体を表示領域から実物大で表示するように前記入力画像のサイズを調整する画像サイズ調整部と、
前記表示領域が存する空間の第1の基底面と前記表示領域との位置関係に基づいて、前記入力画像のサイズが調整された実物大画像の、前記表示領域における表示位置を決定する表示位置決定部と、を具備する、
画像処理装置。

<相違点>
本願発明では、「表示位置決定部は、前記実物大画像から、前記被写体が存する空間の第2の基底面の位置についての情報を取得する第2の基底面情報取得部を有し、前記第1の基底面の位置と前記実物大画像中の前記第2の基底面の位置とを一致させることが可能に前記表示位置を決定する」ものであるのに対して、引用発明では、そのような構成を有していない点。


第6 判断
1 相違点について
上記相違点について検討する。
引用発明は、測定装置2を用いて測定した部分の両端位置を示す情報と、測定結果としての長さを示す情報とを含む長さ情報から高さ情報を取得し、取得した高さ情報と、予め入力された表示装置5aの設置高さ(表示部分の一番下の部分の地面からの高さ)に基づき、物体画像の画面内表示位置を制御することにより、表示装置5aに表示される物体の地上高さを、実物の高さと適合させるものである。
ここで、長さ情報から取得される高さ情報が、測定装置2を用いて測定した部分の高さの情報と、当該測定した部分の上下方向の両端位置を示す情報となることは明らかである。そして、表示装置5aの設置高さ(表示部分の一番下の部分の地面からの高さ)と、測定装置2を用いて測定した部分の高さの情報は、ともにスカラー量であり、これらのみで、表示装置5aに表示される物体の地上高さを実物の高さと適合させることは不可能であるから、前記上下方向の両端位置を示す情報(自動車の場合は、屋根と、タイヤと地面が接する部分を示す情報)のいずれかを用いる必要があることは明らかである。このとき、上下方向の両端方向のいずれの位置を用いるかは、引用文献1には記載されていないが、高さを揃える場合に、通常は下の位置で合わせることが一般的であることから、引用発明においても、表示装置5aに表示される物体の地上高さを、実物の高さと適合させるために、サーバ装置4から受信した長さ情報から取得した高さ情報のうち、測定装置2を用いて測定された物体画像内での物体の下端を示す位置座標と地面が一致するように、物体画像の表示位置を下方向に移動させているものと認められる。
そして、引用文献2には、前記第4の2の「(2)引用文献2に記載された事項の認定」において示したとおり、「データ画像の中で物体の影だと想定される部分(周囲と著しく色が異なっている部分)のアウトラインを検出し、このアウトラインの内部で、物体と地面とが接していると予測される点(接点)を検出すること」が記載されており、データ画像における物体の下端を、画像解析により特定することが、本願優先日前に公知の技術であったことが認められる。
そうしてみれば、引用発明及び引用文献2に記載された事項は、いずれも画像内の物体の下端を検出するという共通の課題を有するものであり、かつ物体の下端を検出するのに画像解析技術を用いる方が、測定装置2を用いるものより、ユーザの手間が省けることは明らかであるから、引用発明において、画像内での物体の下端を検出する手段として、測定装置2を用いるものに代えて、引用文献2に記載の画像解析を用いるものを適用し、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 請求人の主張について
(1)請求人の主張
請求人は、審判請求の理由において、次の主張をしている。
<主張1>
(審判請求書5頁22行?6頁1行)
「しかしながら、引用文献2には、接点の検出目的は、影情報を取得し、その影情報を用いて別の背景画像に合成することでありますから、第2の基底面にあたる接点の座標位置(例えば、自動車であれば、4本のタイヤの接点のうち、表示領域の下面から近い接点)をわざわざ特定する必要はありませんし、そのような接点を特定の基準点に一致させることについても記載や示唆はありません。また、引用文献2は合成することが目的となっておりますので、第2の基底面にあたる接点以外の接点も検出する必要がありますが、本願発明はそれを必要としておりません。さらに、引用文献2の接点の検出目的から、引用文献1に適用する動機付けはありません。」

<主張2>
(審判請求書6頁2?11行)
「また、引用文献1は、そもそも物体の高さ情報をもとに物体の表示位置を決定していますが、本願発明は、第2の基底面を第1の基底面にあわせるもので高さ情報を必要としておりません。ゆえに、引用文献1を用いても本願発明の「基底面を現実空間の基底面の位置と一致させる構成」には至らないと思料致します。
以上のように、引用文献1では、あらかじめ取得した物体の高さ情報と表示装置の設置高さとに基づき物体画像の画面内表示位置を制御する(段落[0100])ものであるから、わざわざ物体(被写体)の高さが既知となっている中で、取得した画像から「第2の基底面」に相当する位置を検出して表示位置を決定する必要はそもそもありません。つまり、引用文献2に記載の技術を引用文献1に適用する動機はなく、むしろその組み合わせには無理があります。」

(2)請求人の主張について

ア 主張1について
引用文献2は、物体と地面が接している部分を画像解析により検出することが、本願優先日前に公知であったことを示すものであり、このような画像解析を用いる技術が、特定の目的に限られず、広く用いられるものであることは明らかである。よって、引用文献2に記載された事項において、地面と接する部分を検出する目的が、引用発明と異なることのみをもって、引用文献2に記載された事項を適用することを阻害するものといえないことは明らかである。
したがって、当該主張1は採用できない。

イ 主張2について
上記「1 相違点について」において述べたように、引用発明において、表示装置5aに表示される物体の地上高さを実物の高さと適合させる場合に、物体の高さ情報だけでなく、物体の上下方向の両端位置を示す情報のいずれかが必要であることは明らかであり、高さを揃える場合に、通常は下の位置で合わせることが一般的であることから、物体画像内での物体の下端を検出する必要があることも明らかである。
よって、物体の高さが既知となっている中で、取得した画像から「第2の基底面」に相当する位置を検出して表示位置を決定する必要がないという請求人の主張は失当である。
したがって、当該主張2は採用できない。


3 小括
上記1及び2に検討したとおり、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明、引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明によって奏される効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
審理終結日 2021-05-28 
結審通知日 2021-06-01 
審決日 2021-06-14 
出願番号 特願2016-528984(P2016-528984)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 健二  
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 濱本 禎広
岸 智史
発明の名称 画像処理装置、画像処理方法及びプログラム  
代理人 高橋 満  
代理人 千葉 絢子  
代理人 関根 正好  
代理人 白鹿 智久  
代理人 金子 彩子  
代理人 中村 哲平  
代理人 大森 純一  
代理人 折居 章  
代理人 金山 慎太郎  

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